説明

光感受性微粒子を作製するための方法、その水性組成物およびそれを用いて調製した物品

【課題】光感受性特性を示すコア/シェル微粒子を組み込んだ材料において、微粒子内の光感受性材料の特性が制御され得る製品をもたらすこと。
【解決手段】少なくとも部分的に光感受性微粒子または少なくとも部分的に架橋された光感受性ポリマー微粒子を形成するために適合された、有効量の少なくとも一種の光感受性材料および少なくとも一種の重合可能成分の水性組成物が記載される。光感受性ポリマー微粒子が、一体表面ドメインおよび内部ドメインから作製され、ここで、表面および/または内部ドメインのうちの少なくとも1つが、光感受性である。このような微粒子の水性分散物、このような微粒子を作製する方法、および光感受性ポリマー微粒子を組み込む光学要素のような光感受性物品もまた記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、光感受性微粒子を形成するための水性組成物、光感受性ポリマー微粒子、およびこのような微粒子を作製するための方法に関する。本発明はまた、光感受性ポリマー微粒子の水性分散物、およびこの光感受性ポリマー微粒子を含む物品に関する。
【背景技術】
【0002】
光感受性材料は、電磁放射腺(赤外線、可視光線および紫外線、ならびに誘導放射またはレーザーによる光増幅が挙げられる)に対する応答を示す。この応答は、1つの型の発光であり、ここで、可視光線は露光後の光感受性材料(例えば、蛍光材料またはリン光材料)によって放射される;材料(例えば、非線形の光学材料)を通過する電磁放射腺の波長の変化が存在する;または色の可逆変化が存在する(例えば、フォトクロミック材料)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
光感受性材料によって示される現象を利用する製品(例えば、光記憶素子およびディスプレイ素子のような光学素子)が存在する。光感受性特性を示すコア/シェル微粒子を組み込んだ材料は公知であるが、微粒子内の光感受性材料の特性が制御され得る製品をもたらすことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(項目1)
有効量の少なくとも1種の光感受性材料、ならびに少なくとも1種の実質的に親水性のモノマーおよび少なくとも1種の実質的に疎水性のモノマーを含む少なくとも1種の重合可能成分を含む水性組成物であって、該水性モノマーおよび該疎水性モノマーが、組み合わされて、該光感受性材料が会合する該重合可能成分の微粒子を少なくとも部分的に形成するように適合されている、水性組成物。
(項目2)
有効量の少なくとも1種の光感受性材料、ならびに少なくとも1種の親水性官能基および少なくとも1種の疎水性の官能基を含む少なくとも1種の重合可能成分を含む水性組成物であって、該少なくとも1種の光感受性材料および少なくとも1種の重合可能成分が、少なくとも部分的に架橋された光感受性ポリマー微粒子を形成するように適合されている、水性組成物。
(項目3)
項目2に記載の水性組成物であって、前記光感受性材料が、蛍光材料、リン光材料、非線形光学材料、フォトクロミック材料またはこれらの混合物から選択される、水性組成物。
(項目4)
項目2に記載の水性組成物であって、前記親水性官能基が、少なくとも1種の実質的に親水性のモノマーによって提供され、前記疎水性官能基が、少なくとも1種の実質的に疎水性のモノマーによって提供される、水性組成物。
(項目5)
項目4に記載の水性組成物であって、前記重合可能成分が、さらに、前記実質的に親水性のモノマーおよび前記実質的に疎水性のモノマーとは異なる少なくとも1種の共重合可能材料を含む、水性組成物。
(項目6)
項目4に記載の水性組成物であって、重合の際に、前記実質的に疎水性のモノマーが、前記実質的に親水性のモノマーの重合によって形成されるポリマーのガラス転移温度より高いかまたは等しいガラス転移温度を有するポリマーを形成する、水性組成物。
(項目7)
項目4に記載の水性組成物であって、重合の際に、前記実質的に疎水性のモノマーが、前記実質的に親水性のモノマーの重合によって形成されるポリマーのガラス転移温度より低いガラス転移温度を有するポリマーを形成する、水性組成物。
(項目8)
項目2に記載の水性組成物であって、前記重合可能成分が、架橋材料と反応性である官能性をさらに含む、水性組成物。
(項目9)
少なくとも部分的に架橋された光感受性ポリマー微粒子であって、該少なくとも部分的に架橋された光感受性ポリマー微粒子が、一体表面ドメインおよび内部ドメインを含む少なくとも部分的に重合した成分を含み、該表面ドメインが、少なくとも1つの実質的に親水性の領域を含み、該内部ドメインが、少なくとも1つの実質的に疎水性の領域を含み、そして該表面および/または内部ドメインの少なくとも1つが光感受性である、少なくとも部分的に架橋された光感受性ポリマー微粒子。
(項目10)
項目9に記載の少なくとも部分的に架橋された光感受性ポリマー微粒子であって、光感受性である前記表面および/または内部ドメインが、蛍光材料、リン光材料、非線形光学材料、フォトクロミック材料またはこれらの混合物から選択される有効量の少なくとも1種の光感受性材料を含む、少なくとも部分的に架橋された光感受性ポリマー微粒子。
(項目11)
項目10に記載の少なくとも部分的に架橋された光感受性ポリマー微粒子であって、前記有効量の少なくとも1種の光感受性材料が、前記光感受性ポリマー微粒子から実質的に抽出可能でない、少なくとも部分的に架橋された光感受性ポリマー微粒子。
(項目12)
項目9に記載の少なくとも部分的に架橋された光感受性ポリマー微粒子であって、前記光感受性ポリマー微粒子が、架橋剤と反応性であるか、磁性を有するか、磁性応答性であるか、導電性であるか、二色性であるか、着色性であるか、またはこれらの組み合わせである微粒子を形成するように適合されている、少なくとも部分的に架橋された光感受性ポリマー微粒子。
(項目13)
項目9に記載の少なくとも部分的に架橋された光感受性ポリマー微粒子であって、該光感受性ポリマー微粒子の平均粒子サイズが、10〜10,000ナノメートルの範囲内である、少なくとも部分的に架橋された光感受性ポリマー微粒子。
(項目14)
項目9に記載の少なくとも部分的に架橋された光感受性ポリマー微粒子の、水性分散物。
(項目15)
光感受性ポリマー物品であって、該光感受性ポリマー物品が、少なくとも部分的に架橋された光感受性ポリマー微粒子を含み、該少なくとも部分的に架橋された光感受性ポリマー微粒子が、一体表面ドメインおよび内部ドメインを含む少なくとも部分的に重合された成分を含み、ここで、該該表面ドメインが、少なくとも1つの実質的に親水性の領域を含み、該内部ドメインが、少なくとも1つの実質的に疎水性の領域を含み、そして該表面および/または内部ドメインの少なくとも1つが光感受性である、光感受性ポリマー物品。
(項目16)
項目15に記載の光感受性ポリマー物品であって、前記物品が光学要素である、光感受性ポリマー物品。
(項目17)
項目16に記載の光感受性ポリマー物品であって、前記光学要素が、光学メモリ要素、ディスプレイ要素、眼科用要素、ウィンドウ要素、または鏡要素から選択される、光感受性ポリマー物品。
(項目18)
項目17に記載の光感受性ポリマー物品であって、前記眼科用要素が、矯正レンズ、非矯正レンズ、コンタクトレンズ、眼内レンズ、拡大レンズ、保護レンズまたはバイザーから選択される、光感受性ポリマー物品。
(項目19)
光感受性物品であって、以下:
a)基材;および
b)該基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部に接続された少なくとも部分的に硬化されたコーティング組成物であって、該コーティング組成物が、有効量の少なくとも部分的に架橋された光感受性ポリマー微粒子を含み、該少なくとも部分的に架橋された光感受性ポリマー微粒子が、一体表面ドメインおよび内部ドメインを含む少なくとも部分的に重合された成分を含み、ここで、該該表面ドメインが、少なくとも1つの実質的に親水性の領域を含み、該内部ドメインが、少なくとも1つの実質的に疎水性の領域を含み、そして該表面および/または内部ドメインの少なくとも1つが光感受性である、少なくとも部分的に硬化されたコーティング組成物、
を含む、光感受性物品。
(項目20)
項目19に記載の光感受性物品であって、前記基材が、ガラス、石、布地、セラミック、金属、木、紙、またはポリマー性有機材料から選択される材料である、光感受性物品。
(項目21)
項目19に記載の光感受性物品であって、前記基材材料が、ガラス、セラミック、またはポリマー性有機材料である、光感受性物品。
(項目22)
項目21に記載の光感受性物品であって、前記基材が、非着色基材、着色基材、フォトクロミック基材、着色フォトクロミック基材、直線偏光基材、円形偏光基材、楕円偏光基材、または反射基材から選択される、光感受性物品。
(項目23)
項目19に記載の光感受性物品であって、前記少なくとも部分的に硬化されたコーティング組成物が、接着剤、ペイント、またはインクである、光感受性物品。
(項目24)
項目23に記載の光感受性物品であって、前記コーティング組成物が、接着剤である、光感受性物品。
(項目25)
項目24に記載の光感受性物品であって、前記光感受性物品が、さらに、前記コーティング組成物の少なくとも1つの表面の少なくとも一部に接続された第1の少なくとも1つの部分的に硬化されたポリマーシートを含む、光感受性物品。
(項目26)
項目25に記載の光感受性物品であって、前記光感受性物品が、さらに、第2の少なくとも部分的に硬化されたポリマーシートを含み、該第2のポリマーシートが、前記基材に隣接しており、該コーティング組成物によって前記第1のポリマーシートに接続されている、光感受性物品。
(項目27)
項目26に記載の光感受性物品であって、前記第1のポリマーシートおよび前記第2のポリマーシートの少なくとも1つが、光感受性である、光感受性物品。
(項目28)
項目19に記載の光感受性物品であって、前記コーティング組成物が、少なくとも部分的に配列された異方性材料を含み、前記架橋された光感受性ポリマー微粒子が、該異方性材料と少なくとも部分的に整列している、光感受性物品。
(項目29)
項目19に記載の光感受性物品であって、前記光感受性物品が、光学メモリ要素、眼科用要素、ディスプレイ要素、ウィンドウ要素、または鏡要素から選択される光学要素である、光感受性物品。
(項目30)
項目29に記載の光感受性物品であって、前記眼科用要素が、矯正レンズ、非矯正レンズ、コンタクトレンズ、眼内レンズ、拡大レンズ、保護レンズまたはバイザーから選択される、光感受性物品。
(項目31)
項目29に記載の光感受性物品であって、前記光学要素が、スクリーン、モニター、またはセキュリティー要素から選択されるディスプレイ要素である、光感受性物品。
(項目32)
項目31に記載の光感受性物品であって、前記セキュリティー要素が、アクセスカードおよびパス;流通証券および非流通証券;政府文書;消費者用品;クレジットカード;または商品タグ、ラベルおよび包装を含む、光感受性物品。
(項目33)
光学要素であって、以下:
a)第1表面を有する第1基材;
b)第2表面を有する第2基材であって、該第2基材の第2表面が、該第1基材の該第1表面と向かい合う、第2基材;および
c)該第1表面と該第2表面との間に位置する材料であって、該材料が、有効量の少なくとも部分的に架橋された光感受性ポリマー微粒子を含み、該少なくとも部分的に架橋された光感受性ポリマー微粒子が、一体表面ドメインおよび内部ドメインを含む少なくとも部分的に重合された成分を含み、ここで、該該表面ドメインが、少なくとも1つの実質的に親水性の領域を含み、該内部ドメインが、少なくとも1つの実質的に疎水性の領域を含み、そして該表面および/または内部ドメインの少なくとも1つが光感受性である、材料、
を含む、光学要素。
(項目34)
項目33に記載の光学要素であって、前記光学要素が、光学メモリ要素、ディスプレイ要素、眼科用要素、ウィンドウ要素、または鏡要素から選択される、光学要素。
(項目35)
項目34に記載の光学要素であって、前記ディスプレイ要素が、スクリーン、モニター、液晶セル、有機発光デバイス、またはセキュリティー要素から選択される、光学要素。
(項目36)
項目33に記載の光学要素であって、前記光学要素が、有機発光デバイスであり、前記第1表面が、アノードであり、前記第2表面が、カソードであり、それらの間に位置する材料が、放射性材料であり、該放射性材料が、該アノードおよび該カソードと電気的に接触している、光学要素。
(項目37)
光感受性微粒子を作製するための方法であって、以下:
a)有効量の少なくとも1種の光感受性材料および少なくとも1種の重合可能成分の水性分散物を確立する工程であって、該少なくとも1種の重合可能成分が、少なくとも1種の親水性官能基および少なくとも1種の疎水性官能基を含む、工程;および
b)a)の分散物を、少なくとも部分的に微粒子を形成するのに十分な条件に供する工程、
を包含する、方法。
(項目38)
項目37に記載の方法であって、該方法が、さらに以下:
c)前記b)の少なくとも1つの重合可能成分を少なくとも部分的に重合する工程、
を包含する、方法。
(項目39)
項目38に記載の方法であって、前記親水性官能基が、少なくとも1つの実質的に親水性のモノマーによって提供され、前記疎水性官能基が、少なくとも1つの実質的に疎水性のモノマーによって提供される、方法。
(項目40)
項目39に記載の方法であって、前記重合可能成分が、さらに、前記実質的に親水性のモノマーまたは前記実質的に疎水性のモノマーとは異なる、少なくとも1種の共重合可能材料を含む、方法。
(項目41)
光感受性微粒子を作製するための方法であって、以下:
a)少なくとも1種の実質的に親水性のプレポリマー成分の水性分散物を確立する工程であって、必要に応じて、有効量の少なくとも1種の光感受性材料を含む、工程;
b)少なくとも1種の実質的に疎水性のプレポリマー成分の水性分散物を確立する工程であって、必要に応じて、有効量の少なくとも1種の光感受性材料を含む、工程;ならびに
c)a)およびb)の混合物を、少なくとも部分的に微粒子を形成するのに十分な条件に供する工程であって、該微粒子が、有効量の少なくとも1つの光感受性材料を含む、工程、
を包含する、方法。
(項目42)
項目41に記載の方法であって、さらに、以下:
d)c)の重合可能成分を少なくとも部分的に重合させる工程、を包含する、方法。
(項目43)
項目46に記載の方法であって、前記光感受性材料が、蛍光材料、リン光材料、非線形光学材料、フォトクロミック材料またはこれらの混合物から選択される、方法。
(項目44)
有効量の少なくとも1種のフォトクロミック材料、ならびに少なくとも1種の実質的に親水性のモノマーおよび少なくとも1種の実質的に疎水性のモノマーを含む少なくとも1種の重合可能成分を含む水性組成物であって、該少なくとも1種のフォトクロミック材料および少なくとも1種の重合可能成分が、少なくとも部分的に架橋されたフォトクロミックポリマー微粒子を形成するように適合されている、水性組成物。
(項目45)
項目44に記載の水性組成物であって、前記実質的に親水性のモノマーまたは前記実質的に疎水性のモノマーとは異なる、少なくとも1種の共重合可能材料をさらに含む、水性組成物。
(項目46)
項目44に記載の水性組成物であって、前記フォトクロミック材料が、無機フォトクロミック材料、有機フォトクロミック材料、またはこれらの混合物から選択される、水性組成物。
(項目47)
項目46に記載の水性組成物であって、前記フォトクロミック材料が、ピラン、オキサジン、フルギド、フルギミド、ジアリールエテンまたはこれらの混合物から選択される有機フォトクロミック材料である、水性組成物。
(項目48)
項目46に記載の水性組成物であって、前記フォトクロミック材料が、銀ハライド、カドミウムハライド、銅ハライド、ユーロピウム(II)、セリウム(III)、またはこれらの混合物を含む無機フォトクロミック材料である、水性組成物。
(項目49)
項目44に記載の水性組成物であって、重合の際に、前記実質的に疎水性のモノマーが、前記実質的に親水性のモノマーの重合によって形成されるポリマーのガラス転移温度未満のガラス転移温度を有するポリマーを形成する、水性組成物。
(項目50)
項目44に記載の水性組成物であって、前記実質的に親水性のモノマーが、剛性セグメントを形成するために適合されたウレタン材料を含み、前記実質的に疎水性のモノマーが、可撓性セグメントを形成するために適合されたウレタン材料を含む、水性組成物。
(項目51)
項目45に記載の水性組成物であって、前記共重合可能材料が、イソシアネート含有材料;エポキシ基含有材料;カルボキシ基含有材料;カルボネート基含有材料;エチレン性不飽和基含有材料;シリル基含有材料、またはこれらの混合物から選択される、水性組成物。
(項目52)
少なくとも部分的に架橋されたフォトクロミックポリマー微粒子であって、該微粒子が、一体表面ドメインおよび内部ドメインを含む少なくとも1種の重合された成分を含み、ここで、該該表面ドメインが、少なくとも1つの実質的に親水性の領域を含み、該内部ドメインが、少なくとも1つの実質的に疎水性の領域を含み、そして該表面および/または内部ドメインの少なくとも1つが少なくとも1つのフォトクロミック材料である、少なくとも部分的に架橋されたフォトクロミックポリマー微粒子。
(項目53)
項目52に記載の少なくとも部分的に架橋されたフォトクロミックポリマー微粒子であって、前記フォトクロミック材料が、無機フォトクロミック材料、有機フォトクロミック材料またはこれらの混合物から選択される、少なくとも部分的に架橋されたフォトクロミックポリマー微粒子。
(項目54)
項目53に記載の少なくとも部分的に架橋されたフォトクロミックポリマー微粒子であって、前記フォトクロミック材料が、粒子形態であるか、フォトクロミックポリマーであるか、フォトクロミックオリゴマーであるか、あるいは該微粒子の表面および/または内部ドメインと反応性の少なくとも1つの官能基を含み、該フォトクロミック材料が該微粒子から実質的に抽出不可能であることを提供する、少なくとも部分的に架橋されたフォトクロミックポリマー微粒子。
(項目55)
項目52に記載の少なくとも部分的に架橋されたフォトクロミックポリマー微粒子であって、該フォトクロミックポリマー微粒子の平均粒子サイズが、40〜1,000ナノメートルの範囲内である、少なくとも部分的に架橋されたフォトクロミックポリマー微粒子。
(項目56)
項目52に記載の少なくとも部分的に架橋されたフォトクロミックポリマー微粒子であって、該フォトクロミックポリマー微粒子が、架橋材料と反応性であるか、磁性を有するか、磁性応答性であるか、導電性であるか、二色性であるか、着色性であるか、またはこれらの組み合わせである微粒子を形成するように適合されている、少なくとも部分的に架橋されたフォトクロミックポリマー微粒子。
(項目57)
少なくとも部分的に硬化されたポリマー有機材料および有効量の少なくとも部分的に架橋されたフォトクロミックポリマー微粒子を含むフォトクロミック物品であって、該微粒子が、一体表面ドメインおよび内部ドメインを含む少なくとも1種の重合可能成分の重合生成物であり、ここで、該表面ドメインが、少なくとも1つの実質的に親水性の領域を含み、該内部ドメインが、少なくとも1つの実質的に疎水性の領域を含み、そして該表面および/または内部ドメインの少なくとも1つがフォトクロミックである、フォトクロミック物品。
(項目58)
項目57に記載のフォトクロミック物品であって、前記ポリマー有機材料が、熱硬化性ポリマー有機材料、熱可塑性ポリマー有機材料、またはこれらの混合物から選択される、フォトクロミック物品。
(項目59)
項目57に記載のフォトクロミック物品であって、前記ポリマー性有機材料が、ポリ(C〜C12アルキルメタクリレート)、ポリ(オキシアルキレンジメタクリレート)、ポリ(アルコキシル化フェノールメタクリレート)、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、熱可塑性ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリスルフチオウレタン、ポリ(ウレア−ウレタン)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリスチレン、ポリ(αメチルスチレン)、コポリ(スチレン−メチルメタクリレート)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、ポリビニルブチラール、あるいは、ビス(アリルカルボネート)モノマー、多官能性アクリレートモノマー、多官能性メタクリレートモノマー、ジエチレングリコールジメタクリレートモノマー、ジイソプロペニルベンゼンモノマー、エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレートモノマー、エチレングリコールビスメタクリレートモノマー、ポリ(エチレングリコール)ビスメタクリレートモノマー、エトキシル化フェノールビスメタクリレートモノマー、アルコキシル化多価アルコールポリアクリレートモノマー、スチレンモノマー、ウレタンアクリレートモノマー、グリシジルアクリレートモノマー、グリシジルメタクリレートモノマー、ジアリリデンペンタエリスリトールモノマーまたはこのようなモノマーの混合物から選択される、フォトクロミック物品。
(項目60)
項目57に記載のフォトクロミック物品であって、前記物品が、光学要素である、フォトクロミック物品。
(項目61)
項目60に記載のフォトクロミック物品であって、前記光学要素が、矯正レンズ、非矯正レンズ、コンタクトレンズ、眼内レンズ、拡大レンズ、保護レンズまたはバイザーから選択される眼科用要素である、フォトクロミック物品。
(項目62)
フォトクロミックコーティングされた物品であって、以下:
a)基材;および
b)該基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部に接続された、少なくとも部分的に硬化されたフォトクロミックコーティングであって、該フォトクロミックコーティングが、フィルム形成ポリマーおよび有効量の少なくとも部分的に架橋されたフォトクロミックポリマー微粒子を含み、該微粒子が、一体表面ドメインおよび内部ドメインを含み、該表面ドメインが、少なくとも1つの実質的に親水性の領域を含み、該内部ドメインが、少なくとも1つの実質的に疎水性の領域を含み、そして該表面および/または内部ドメインの少なくとも1つがフォトクロミック材料を含む、少なくとも部分的に硬化されたフォトクロミックコーティング、
を含む、フォトクロミックコーティングされた物品。
(項目63)
項目62に記載のフォトクロミックコーティングされた物品であって、前記フィルム形成ポリマーが、熱硬化性ポリマー材料、熱可塑性ポリマー材料、またはこのようなポリマー材料の混合物から選択される、フォトクロミックコーティングされた物品。
(項目64)
項目63に記載のフォトクロミックコーティングされた物品であって、前記フィルム形成ポリマーが、ポリウレタン、ポリ(ウレア−ウレタン)、アミノプラスト樹脂、ポリシロキサン、ポリ無水物、ポリアクリルアミド、エポキシ樹脂、またはポリ(メタ)アクリレートから選択される熱硬化性ポリマー材料である、フォトクロミックコーティングされた物品。
(項目65)
項目62に記載のフォトクロミックコーティングされた物品であって、前記基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部に接続されたプライマーコーティングをさらに含む、フォトクロミックコーティングされた物品。
(項目66)
項目62に記載のフォトクロミックコーティングされた物品であって、前記基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部に接続された、少なくとも部分的に摩耗抵抗性のコーティングをさらに含む、フォトクロミックコーティングされた物品。
(項目67)
項目66に記載のフォトクロミックコーティングされた物品であって、フォトクロミックコーティングと摩耗抵抗性コーティングとの間に挿入された移行部コーティングをさらに含む、フォトクロミックコーティングされた物品。
(項目68)
項目62に記載のフォトクロミックコーティングされた物品であって、前記基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部に接続された、少なくとも部分的に反射防止性のコーティングをさらに含む、フォトクロミックコーティングされた物品。
(項目69)
前記基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部に接続された偏光ポリマー性コーティングまたはシートをさらに備える、項目62に記載のフォトクロミックコーティング物品。
(項目70)
前記基材が、紙、ガラス、セラミック、木、石、布地、金属またはポリマー性有機材料から選択される、項目62に記載のフォトクロミックコーティング物品。
(項目71)
前記基材がポリマー性有機材料であり、そして該ポリマー性有機材料が、ポリ(C−C12アルキルメタクリレート)、ポリ(オキシアルキレンジメタクリレート)、ポリ(アルコキシル化フェノールメタクリレート)、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、熱可塑性ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリスルフィチオウレタン(polysulfithiourethan)、ポリ(ウレア−ウレタン)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリスチレン、ポリ(αメチルスチレン)、コポリ(スチレン−メチルメタクリレート)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、ポリビニルブチラール、またはビス(アリルカーボネート)モノマー、多官能性アクリレートモノマー、多官能性メタクリレートモノマー、ジエチレングリコールジメタクリレートモノマー、ジイソプロペニルベンゼンモノマー、エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレートモノマー、エチレングリコールビスメタクリレートモノマー、ポリ(エチレングリコール)ビスメタクリレートモノマー、エトキシル化フェノールビスメタクリレートモノマー、アルコキシル化多価アルコールポリアクリレートモノマー、スチレンモノマー、ウレタンアクリレートモノマー、グリシジルアクリレートモノマー、グリシジルメタクリレートモノマー、ジアリリデンペンタエリトリトールモノマー、もしくはそれらの混合物から調製されたポリマーから選択される、項目70に記載のフォトクロミックコーティング物品。
(項目72)
前記基材が光学要素である、項目71に記載のフォトクロミックコーティング物品。
(項目73)
前記光学要素は、矯正レンズ、非矯正レンズ、コンタクトレンズ、眼内レンズ、拡大レンズ、保護レンズまたはバイザーから選択される眼科的要素である、項目72に記載のフォトクロミックコーティング物品。
(項目74)
フォトクロミック複合品であって、
a)基材;ならびに
b)該基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部に接続された少なくとも部分的に硬化されたフォトクロミックポリマー性シートであって、該フォトクロミックポリマー性シートは、有効量の少なくとも部分的に架橋されたフォトクロミックポリマー性微粒子を含み、該微粒子は、一体表面(integral surface)ドメインおよび内部ドメインを含み、ここで、該表面ドメインは、少なくとも1つの実質的に親水性の領域を含み、該内部ドメインは、少なくとも1つの実質的に疎水性の領域を含み、そして該内部ドメインおよび/または表面ドメインの少なくとも一方は、少なくとも1つのフォトクロミック材料を含む、フォトクロミックポリマー性シート、
を含む、フォトクロミック複合品。
(項目75)
前記フォトクロミックポリマー性シートは、熱硬化性ポリマー性材料、熱可塑性ポリマー性材料またはそれらの混合物を含む、項目74に記載のフォトクロミック複合品。
(項目76)
前記フォトクロミックポリマー性シートは、熱可塑性ポリウレタンを含む、項目75に記載のフォトクロミック複合品。
(項目77)
前記フォトクロミックポリマー性シートの表面上に接続された少なくとも部分的に摩耗抵抗性の保護ポリマー性シートをさらに含む、項目74に記載のフォトクロミック複合品。
(項目78)
前記保護ポリマー性シートは、熱硬化性ポリマー性材料、熱可塑性ポリマー性材料またはそれらの混合物を含む、項目77に記載のフォトクロミック複合品。
(項目79)
前記保護ポリマー性シートは、熱可塑性ポリカーボネートを含む、項目78に記載のフォトクロミック複合品。
(項目80)
前記フォトクロミック複合品は光学要素である、項目74に記載のフォトクロミック複合品。
(項目81)
前記光学要素は、矯正レンズ、非矯正レンズ、コンタクトレンズ、眼内レンズ、拡大レンズ、保護レンズまたはバイザーから選択される眼科的要素である、項目80に記載のフォトクロミック複合品。
(項目82)
フォトクロミック複合品であって、
a)基材;
b)該基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部に接続されたフォトクロミック接着剤の少なくとも部分的に硬化されたコーティングであって、該フォトクロミック接着剤は接着材料および有効量の少なくとも部分的に架橋したフォトクロミックポリマー性微粒子を含み、該微粒子は、一体表面ドメインおよび内部ドメインを含み、ここで該表面ドメインは、少なくとも1つの実質的に親水性の領域を含み、該内部ドメインは、少なくとも1つの実質的に疎水性の領域を含み、そして該内部ドメインおよび/または表面ドメインの少なくとも一方は、少なくとも1つのフォトクロミック材料を含む、コーティング;ならびに
c)該フォトクロミック接着性コーティングに接続された第一の少なくとも部分的に硬化されたポリマー性シート、
を含む、フォトクロミック複合品。
(項目83)
前記フォトクロミック物品は、第二の少なくとも部分的に硬化したポリマー性シートをさらに含み、該第二のポリマー性シートは、前記基材に隣接し、前記フォトクロミック接着性コーティングによって前記第一のポリマー性シートに接続されている、項目82に記載のフォトクロミック複合品。
(項目84)
前記第一のポリマー性シートおよび第二のポリマー性シートの少なくとも一方がフォトクロミックである、項目83に記載のフォトクロミック複合品。
(項目85)
前記物品が光学要素である、項目82に記載のフォトクロミック複合品。
(項目86)
前記物品が、眼科的要素である、項目83に記載のフォトクロミック組成物。
(項目87)
前記物品は、セキュリティー要素である、項目84に記載のフォトクロミック化合物。
(項目88)
前記眼科的要素は、矯正レンズ、非矯正レンズ、コンタクトレンズ、眼内レンズ、拡大レンズ、保護レンズまたはバイザーから選択される、項目86に記載のフォトクロミック複合物。
(項目89)
少なくとも部分的に架橋したフォトクロミックポリマー性微粒子を作製するための方法であって、該方法は、以下:
a)有効量の少なくとも1つのフォトクロミック材料および少なくとも1つの重合可能な成分の水性分散物を確立する工程であって、該少なくとも1つの重合可能な成分が、少なくとも1つの実質的に親水性のモノマーおよび少なくとも1つの実質的に疎水性のモノマーを含む、工程;
b)a)の分散液を、該重合可能な成分および該フォトクロニック材料の微粒子を少なくとも部分的に形成するのに十分な条件に供する工程;ならびに
c)該重合可能な成分を、少なくとも部分的に重合する工程、
を包含する、方法。
(項目90)
前記b)の条件は、高せん断応力条件である、項目89に記載の方法。
(項目91)
少なくとも部分的に架橋したフォトクロミックポリマー性微粒子を作製するための方法であって、該方法は、
a)水性組成物中に少なくとも1つの実質的に親水性のエチレン不飽和モノマーを含む実質的に親水性のプレポリマーを提供する工程であって、該実質的に親水性のプレポリマーは、必要に応じて、有効量の少なくとも1つのフォトクロミック材料をさらに含む、工程;
b)水性組成物中に少なくとも1つの実質的に疎水性のエチレン不飽和モノマーを含む実質的に疎水性のプレポリマーを提供する工程であって、該実質的に疎水性のプレポリマーは、必要に応じて、有効量の少なくとも1つのフォトクロミック材料をさらに含む、工程;
c)a)とb)との混合物を、少なくとも部分的にフォトクロミック微粒子を形成するのに十分な条件に供する工程;および
d)重合可能な成分を少なくとも部分的に重合する工程、
を包含する、方法。
(項目92)
c)において、前記a)とb)との混合物に共重合可能な材料を加える工程をさらに包含する、項目91に記載の方法。
(項目93)
前記b)のプレポリマーは、有効量の少なくとも1つのフォトクロミック材料を含む、項目91に記載の方法。
(項目94)
少なくとも1つの前記フォトクロミック材料は、少なくとも1つの重合可能な基を含む有機フォトクロミック材料である、項目93に記載の方法。
(項目95)
水性組成物であって、該組成物は、少なくとも1つの実質的に親水性のプレポリマー、少なくとも1つの実質的に疎水性のプレポリマー、および有効量の少なくとも1つの有機フォトクロミック材料を含む少なくとも1つの重合可能な成分を含み、該フォトクロミック材料は、少なくとも1つの重合可能な基を含み、該重合可能な成分は、少なくとも部分的に架橋したフォトクロミックポリマー性微粒子を形成するのに適合している、水性組成物。
(項目96)
項目95に記載の水性組成物であって、該組成物は、少なくとも1つの共重合可能な材料をさらに含み、該共重合可能な材料は、前記フォトクロミック材料、前記実質的に親水性のプレポリマーおよび前記実質的に疎水性のプレポリマーとは異なる、水性組成物。
(項目97)
前記少なくとも1つの共重合可能な材料は、イソシアネート含有材料、ヒドロキシル基含有材料、エチレン不飽和基含有材料またはそれらの混合物から選択される、項目96に記載の水性組成物。
(項目98)
前記有機フォトクロミック材料は、前記重合可能な成分の固体の総重量の50重量%までの量で存在する、項目95に記載の水性組成物。
(項目99)
前記重合可能な成分は、該重合可能な成分の固体の総重量に基づいて、2〜25重量%の前記親水性プレポリマー、2〜25重量%の前記疎水性プレポリマー、1〜45重量%の前記有機フォトクロミック材料、および5〜95重量%の前記少なくとも1つの共重合可能な材料を含む、項目96に記載の水性組成物。
(項目100)
項目95に記載の水性組成物であって、前記有機フォトクロミック材料は、以下:
(a)3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,11,13−トリメチル−13−(2−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)−3H,13H−インデノ[2,1−f]ナフト[1,2−b]ピラン;
(b)3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−6,7−ジメトキシ−13−ブチル−13−(2−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)−3H,13H−インデノ[2,1−f]ナフト[1,2−b]ピラン;
(c)3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6−メトキシ−7−モルホリノ−13−エチル−13−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)−3H,13H−インデノ[2,1−f]ナフト[1,2−b]ピラン;
(d)3−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−3−(4−モルホリノフェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2,1−f]ナフト[1,2−b]ピラン;
(e)3−(4−メトキシフェニル)−3−(4−フルオロフェニル)−6,7−ジメトキシ−13−エチル−13−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)−)−3H,13H−インデノ[2,1−f]ナフト[1,2−b]ピラン;
(f)3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,11,13−トリメチル−13−ヒドロキシ−3H,13H−インデノ[2,1−f]ナフト[1,2−b]ピラン;または
(g)それらの混合物、
から選択される、水性組成物。
(項目101)
前記実質的に親水性のプレポリマーは、剛性セグメントを形成するのに適合しているウレタン(メタ)アクリレートプレポリマーを含み、前記実質的に疎水性のプレポリマーは、可撓性セグメントを形成するのに適合しているウレタン(メタ)アクリレートプレポリマーを含む、項目95に記載の水性組成物。
(項目102)
一体表面ドメインおよび内部ドメインを含む、少なくとも部分的に架橋したフォトクロミックポリマー性微粒子であって、該表面ドメインは、少なくとも1つの実質的に親水性の領域を含み、該内部ドメインは、少なくとも1つの実質的に疎水性の領域を含み、そして該内部ドメインは、少なくとも1つの有機フォトクロミック材料を含む、少なくとも部分的に架橋したフォトクロミックポリマー性微粒子。
(項目103)
前記有機フォトクロミック材料は、ピラン、オキサジン、フルギド、フルギミド、ジアリールエテンまたはそれらの混合物から選択される、項目102に記載の少なくとも部分的に架橋したフォトクロミックポリマー性微粒子。
(項目104)
前記有機フォトクロミック材料は、ピラン、オキサジン、フルギド、フルギミドまたはそれらの混合物から選択される熱可逆的なフォトクロミック材料である、項目102に記載の少なくとも部分的に架橋したフォトクロミックポリマー性微粒子。
(項目105)
前記有機フォトクロミック材料は、ジアリールエテン、フルギド、フルギミドまたはそれらの混合物から選択される熱可逆的ではないフォトクロミック材料である、項目102に記載の少なくとも部分的に架橋したフォトクロミックポリマー性微粒子。
(項目106)
前記有機フォトクロミック材料は、フォトクロミック−二色性材料である、項目104に記載の少なくとも部分的に架橋したフォトクロミックポリマー性微粒子。
(項目107)
前記フォトクロミックポリマー性微粒子が、磁性材料、磁気応答性材料、導電性材料、二色性材料、有色材料またはそれらの組み合わせをさらに含む、項目102に記載の少なくとも部分的に架橋したフォトクロミックポリマー性微粒子。
(項目108)
前記フォトクロミックポリマー性微粒子は、架橋している材料と反応性の官能基をさらに含む、項目102に記載の少なくとも部分的に架橋したフォトクロミックポリマー性微粒子。
(項目109)
前記フォトクロミックポリマー性粒子は、50〜200nmの平均粒子サイズを有する、項目102に記載の少なくとも部分的に架橋したフォトクロミックポリマー性微粒子。
(項目110)
項目102に記載の少なくとも部分的に架橋したフォトクロミックポリマー性微粒子を含む、フォトクロミック物品。
【発明を実施するための形態】
【0005】
(発明の詳細な説明)
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、その参照を1つに明確かつ無条件に限定しない限り、複数の参照を含む。
【0006】
本明細書の目的のため、他に示されない限り、本明細書および特許請求の範囲において使用される成分の量、反応条件、および他のパラメータを表す全ての数字は、全ての場合において用語「約」により修飾されていると理解されるべきである。従って、反対に示されない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲において記載される数値パラメータは近似値であり、この近似値は、本発明により得られるように求められる所望の特性に依存して変動し得る。最低限でも、そして特許請求の範囲に対する等価物の原則の適用を制限する企図としてでもなく、各々の数値パラメータは、報告される有意な桁数を考慮し、そして通常の四捨五入技術の適用によって、少なくとも解釈されるべきである。
【0007】
本明細書中の全ての数値範囲は、記載される数値範囲内の全ての数値および全ての数値範囲を含む。本発明の広範な範囲を記載する数値範囲および数値パラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例において記載される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、いずれの数値も、本質的に、それぞれの試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を含んでいる。
【0008】
本発明は、種々の非限定的な実施形態を含む。このような実施形態の1つは、有効量の少なくとも1種の光感受性材料および少なくとも1種の重合可能成分を含む水性組成物であり、この重合可能成分は、少なくとも1種の実質的に親水性のモノマーと少なくとも1種の実質的に疎水性のモノマーとを含み、この親水性モノマーとこの疎水性モノマーとは、組み合わされて上記光感受性材料が会合するこれら重合可能な成分の微粒子を少なくとも部分的に形成するように適合される。用語「モノマー」は、単独のモノマー単位、および2〜3個のモノマー単位を含むオリゴマーを含む。別の非限定的な実施形態は、少なくとも1種の光感受性材料の有効量および少なくとも1種の重合可能な成分を含む水性組成物を提供し、この重合可能な成分は、少なくとも1つの親水性官能基および少なくとも1つの疎水性官能基を含み、上記光感受性材料およびその重合可能な成分は、少なくとも部分的に架橋された光感受性ポリマー微粒子を形成するように適合される。さらなる非限定的な実施形態は、光感受性材料がフォトクロミック材料である水性組成物を提供する。なおさらなる非限定的な実施形態は、重合可能な成分が、少なくとも1種の実質的に親水性のプレポリマー、少なくとも1種の実質的に疎水性のプレポリマー、および少なくとも1つの重合可能な基を含む少なくとも1種の有機フォトクロミック材料の有効量を含み、この重合可能な成分は、少なくとも部分的に架橋されたフォトクロミックのポリマー微粒子を形成するように適合される。
【0009】
さらなる非限定的な実施形態に従い、その重合可能な成分は、実質的に親水性のモノマーおよび実質的に疎水性のモノマーのうちの少なくとも1つと共重合可能(copolymerizable)である材料をなおさらに含み得、この材料は以後「共重合可能な材料」と称される。さらに、重合可能な成分は、架橋性材料と反応するように適合され、ホスト材料と適合可能であるように適合され、そして以後記載される光感受性ポリマー微粒子と組み合わされる特性を有するように適合される官能性を有し得る。
【0010】
句「結合して光感受性材料が会合される重合可能な成分の微粒子を少なくとも部分的に形成するように適合されること」は、少なくとも部分的に形成された微粒子へと自己構築するのに適している重合可能な構成をいう。微粒子の自己構築は、重合可能な成分を含む、実質的に親水性のモノマーの親水性官能基と実質的に疎水性のモノマーの疎水性官能基とに関連した親水性と疎水性との差異による。光感受性材料は、親水性光感受性材料、疎水性光感受性材料、または得られた微粒子または重合可能な成分と化学的または物理的に会合するのを可能にする別の特性を有する光感受性材料の選択によって、微粒子と組み合わされ得る。
【0011】
微粒子形成後、それら微粒子は代表的には重合される。句「少なくとも部分的に架橋されたポリマー微粒子を少なくとも部分的に重合し形成すること」とは、モノマーのうちのいくらかから全てが反応し結合して鎖状のポリマー性材料を形成し、そしてこれらの鎖状のポリマー性材料のうちのいくらかから全てにある反応基が反応し架橋して、それらの鎖のうちのいくらかから全てが内部結合されたポリマー性ネットワークを形成する、重合可能な構成をいう。前述の反応基は、当業者に公知の重合反応を受け得る化学反応基である。このような重合可能な基の非限定的な例としては、メタクリロイルオキシ、アクリロイルオキシ、ビニル、アリル、カルボキシル、アミノ、メルカプト、エポキシ、ヒドロキシ、およびイソシアネートが挙げられる。
【0012】
1つの非限定的な実施形態に従い、本発明の水性組成物は、広範に変動し得る量の水を含む。1つの非限定的な実施形態において、この水の量は、30重量%〜100重量%未満の量の範囲であり得、本明細書中に記載されるすべての数値範囲について先に特定したように、この範囲内の全ての数値および全ての数値範囲を含む。別の非限定的な実施形態において、この水性組成物は、広範に変動し得る量(例えば、1重量%未満の正の量から70重量%までの範囲)で有機溶媒を含み得る。水および有機溶媒の重量%は、水と有機溶媒(存在する場合)との総重量で除算して100で積算した、水または有機溶媒のいずれかの重量に基づく。
【0013】
水性組成物に含まれ得る有機溶媒の型は、広範に変動し得る。1つの非限定的な実施形態において、水性組成物は極性溶媒(例えば、アルコール)および非極性溶媒(例えば、炭化水素溶液)を含み得る。水性組成物中に含まれ得る有機溶媒の非限定的な例としては、以下が挙げられる:プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、n−ブタノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、ミネラルスピリット、N−メチルピロリジノン、トルエン、TEXANOL(登録商標)溶媒(これは2,2,4−トリメチル−1,1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートであると報告されており、そしてEastman Chemical Co.より利用可能である)、およびこれら溶媒の混合物。さらなる非限定的な実施形態において、有機溶媒の使用は、架橋されたポリマー微粒子を形成するのを助け得る。必要とされる場合、有機溶媒のいくらかまたは全ては、当業者に公知の方法(例えば、40℃未満の温度での共沸蒸留または減圧蒸留)によってその水性組成物から除去され得る。
【0014】
別の非限定的な実施形態において、補助(アジュバント)材料(例えば、重合可能な成分を処理するのを助けるかまたは生じる微粒子に対して所望される特徴を付与する、慣用的な成分)もまた水性組成物に組み込まれ得る。このような成分の非限定的な例としては、レオロジー制御剤、界面活性剤、開始剤、触媒、硬化阻害剤、還元剤、酸、塩基、保存剤、架橋性材料、フリーラジカルのドナー、フリーラジカルのスカベンジャー、安定化剤(例えば、紫外線安定剤および熱安定剤)、および接着促進剤(例えば、有機官能性のシラン、シロキサン、チタネートおよびジルコネート)が挙げられ、これら補助材料は当業者に公知である。
【0015】
先に述べたように、水性組成物は、少なくとも1種の重合可能な成分を含み、この重合可能な成分は少なくとも1種の実質的に親水性のモノマーおよび少なくとも1種の実質的に疎水性のモノマーを含む。本明細書中で使用される場合、用語「実質的に親水性のモノマー」および用語「実質的に疎水性のモノマー」とは、一方を他方と比較して相対的に親水性のモノマーまたは相対的に疎水性のモノマーをいう。重合可能な成分のうちの実質的に親水性のモノマーは、実質的に疎水性のモノマーよりも親水性である。従って、重合可能な成分のうちの実質的に疎水性のモノマーは、実質的に親水性のモノマーよりも疎水性である。材料の親水性/疎水性の特徴を決定する1つの方法は、周知である親水性−親油性バランス(HLB)数である。HLB数は一般に1〜20の範囲であり、1は油溶性材料でありそして20は水溶性材料である。この系を使用して、実質的に疎水性として本明細書中で指される材料は10未満のHLBを示し、一方実質的に親水性として指される材料は10より大きいHLBを示す。
【0016】
実質的に親水性のモノマー 対 実質的に疎水性のモノマーの比率は、広範に変動し得る。1つの非限定的な実施形態において、重合可能な成分中の実質的に親水性のモノマーと実質的に疎水性のモノマーとの重量%は、重合可能な成分の総固形物重量100%に基づき、各々2重量%〜98重量%の範囲であり得る。実質的に親水性のモノマー 対 実質的に疎水性のモノマーの比率の非限定的な例は、20:80および50:50である。
【0017】
別の非限定的な実施形態において、実質的に親水性のモノマーは、通常の混合手段を使用した水中への溶解に適合性であり、この溶解に親和性を有し、そして/またはこの溶解が少なくとも部分的に可能である。本発明の重合可能なモノマー成分中に使用される実質的に親水性のモノマーは、当業者に公知の親水性モノマーをいずれも含み得る。このような親水性のモノマーの非限定的な例としては、以下のような親水性官能基を含むモノマーが挙げられる:酸官能基;ヒドロキシル官能基;ニトリル官能基;アミノ官能基;アミド官能基;カルバメート官能基;イオン性官能基(例えば、四級アンモニウム基またはスルホニウム基);またはこのような官能基の混合。
【0018】
なおさらなる非限定的な実施形態において、重合可能な成分を調製するために使用されるモノマーの疎水性および親水性の程度は、当業者に公知であるように、変動し得る。重合可能な成分の実質的に疎水性のモノマーは、実質的に親水性のモノマーへと転換され得る。1つの非限定的な実施形態において、重合可能な成分の疎水性モノマー上のイソシアネート基は、このイソシアネート基を有機官能性シラン(例えば、アミノプロピルトリエトキシシラン)と反応させることによってシロキサン基により官能化され得る。水中での分散の際、加水分解可能な基(例えば、アルコキシシラン)は、少なくとも部分的に加水分解されて親水性シラノール基を形成する。アルコールまたはそれ自身との反応が可能である場合、これらの親水性基は疎水性基に戻り得る。同様の官能化プロセスは、重合し架橋した光感受性ポリマー微粒子上で利用可能なイソシアネート基により実施され得る。
【0019】
このような疎水性から親水性への転換に適切な有機官能性シランの非限定的な例としては、以下が挙げられる:(3−アクリルオキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、アリトリエトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、カルボキシメチルトリエトキシシラン、エポキシブチルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトメトキシメチル−ジエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、(メタクリルオキシメチル)ジメチルエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、スチリルエトキシトリメトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ウレイドプロピルトリメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、またはこれらの混合物。
【0020】
有機官能性シランに加え、実質的に親水性にされ得る他の実質的に疎水性の材料としては、当業者に公知であるように、例えば、アルコキシル化メラミン、フェノール−ホルムアルデヒド、ウレア−ホルムアルデヒドが挙げられ、これらは水中での酸触媒作用の際に実質的に親水性の基を形成する。
【0021】
親水性酸官能基を含むモノマーの非限定的な例としては、以下が挙げられる:アクリル酸、メタクリル酸、β−カルボキシエチルアクリラート、アクリルオキシプロピオン酸、2−アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、アクリル酸(3−スルホプロピル)エステル、クロトン酸、ジメチロールプロピオン酸、フマル酸、フマル酸のモノ(C〜C17)アルキルエステル、マレイン酸、マレイン酸のモノ(C〜C17)アルキルエステル、イタコン酸、イタコン酸のモノ(C〜C17)アルキルエステル、およびこれらの混合物。
【0022】
親水性ヒドロキシル官能基を含むモノマーの非限定的な例としては、以下が挙げられる:2−ヒドロキシエチルメタクリラート、2−ヒドロキシエチルアクリラート、ヒドロキシプロピルメタクリラート、ヒドロキシプロピルアクリラート、ヒドロキシブチルメタクリラート、ヒドロキシブチルアクリラート、ヒドロキシメチルエチルアクリラート、ヒドロキシメチルプロピルアクリラート、ジカプロラクトンアクリラート、ジエタノールアミン、ジメタノールアミン、またはこれらの混合物。ニトリル官能基を含むモノマーの非限定的な例としては、メタクリロニトリルおよびアクリロニトリルが挙げられる。
【0023】
親水性アミノ官能基を含むモノマーの非限定的な例としては、以下が挙げられる:アリルアミン、ジメチルアリルアミン(dimethlallylamine)、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリラート、2−(t−ブチルアミノ)エチルメタクリラート、4−アミノスチレン、ジメチルアミノエトキシビニルエーテル、およびN−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド。
【0024】
親水性イオン性官能基を含むモノマーの非限定的な例としては、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、2−トリメチルアンモニウムエチルアクリル酸クロライド、およびビニルベンジルジメチルスルホニウムクロライドが挙げられる。
【0025】
親水性アミド官能基を含むモノマーの例としては、メタクリルアミドおよびアクリルアミドが挙げられる。
【0026】
親水性カルバメート官能基を含むモノマーの非限定的な例としては、以下が挙げられる:アリルカルバメート、ビニルカルバメート、ヒドロキシエチルカルバメートとメタクリル酸無水物との反応生成物、およびイソフォロンジイソシアネートを有するヒドロキシエチルカルバメートとヒドロキシエチルアクリラートとの反応生成物。
【0027】
親水性ビニル官能基を含むモノマーの非限定的な例としては、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、およびビニルプロピオネートが挙げられる。
【0028】
1つの非限定的な実施形態において、疎水性モノマーは、親水性官能基を実質的に含まず、そして通常の混合手段を使用した水中への溶解に実質的に不適合であり、この溶解に対してほとんど親和性を有さず、そして/またはこの溶解の最小のみを可能にするモノマーを含む。別の非限定的な実施形態において、本発明の重合可能な成分において使用される疎水性モノマーとしては、当業者に公知な疎水性モノマーをいずれも挙げられ得る。疎水性官能基の非限定的な例としては、4個以上の炭素原子を有する炭化水素が挙げられる。このような官能基のさらなる例は、以降の疎水性モノマーの記載において挙げられる。
【0029】
疎水性モノマーの非限定的な例としては、フリーラジカル重合可能なモノマーが挙げられ、このモノマーとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:ビニル芳香属性モノマー(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレンおよびビニルトルエン);ビニルハライドおよびビニリデンハライド(例えば、塩化ビニルおよび塩化ビニリデン);ビニルエステル;ビニルエーテル、ビニルブチラート、アクリル酸およびメタクリル酸のアルキルエステル(アルキル基に4個〜17個の炭素原子を有するものであり、ブチルメタクリラート、ブチルアクリラート、シクロヘキシルメタクリラート、シクロヘキシルアクリラート、2−エチルヘキシルメタクリラート、2−エチルヘキシルアクリラート、ブチルヘキシルメタクリラート、ブチルヘキシルアクリラート、イソオクチルメタクリラート、イソオクチルアクリラート、イソデシルメタクリラート、イソデシルアクリラート、イソボロニルメタクリラート、イソボロニルアクリラート、ラウリルメタクリラートおよびラウリルアクリラートが挙げられる);ならびにこれらの混合物。
【0030】
他の適切な疎水性モノマーとしては、実質的に加水分解不能な置換基(例えば、3個以上の炭素原子を含むアルコキシル基)を有する有機官能性シランが挙げられる。
【0031】
非限定的な実施形態において、重合可能な成分は少なくとも1種の共重合可能な材料を含み、この材料は、少なくとも1種の実質的に親水性のモノマーとも少なくとも1種の実質的に疎水性のモノマーとも異なる。別の非限定的な実施形態において、この共重合可能な材料は、実質的に親水性のモノマーと反応されて実質的に親水性のプレポリマーを形成し、そして/または実質的に疎水性のモノマーと反応されて実質的に疎水性のプレポリマーを形成する。
【0032】
別の非限定的な実施形態において、共重合可能な材料は、実質的に親水性のモノマーおよび実質的に疎水性のモノマーのうちの少なくとも1つと共重合可能である材料のいずれでもあり得る。1つの非限定的な実施形態において、共重合可能な材料は、構造骨格形成材料である。共重合可能な材料の非限定的な例は、以下から選択され得る:エチレン性(ethylenically)不飽和の基を含む材料;当業者に公知のイソシアネート含有材料、例えば、イソシアネートと、相当反応性の他の材料(例えば、ポリオール)との反応生成物(この反応生成物は少なくとも1つのイソシアネート基を有する);当業者に公知のヒドロキシル基含有モノマー;当業者に公知のエポキシ基含有モノマー;当業者に公知のカルボキシ基含有モノマー;当業者に公知のカルボネート基含有モノマー、例えば、少なくとも1つのカルボネート基を含むポリオールとビニルモノマーとの反応生成物、ならびに少なくとも1つのカルボネート基を含むポリオールと、1つの反応性イソシアネート基および少なくとも1つの重合可能な二重結合(米国特許出願公開第2003/0136948号(これは本明細書中で参考として援用される)の段落[0041]〜[0065]に記載されるもの)を含むイソシアネートとの反応生成物;またはこのような共重合可能な材料の混合物。
【0033】
1つの非限定的な実施形態において、共重合可能な材料としては、シリル基含有材料、例えば、少なくとも1つの重合可能な基を有する有機官能性シラン(例えば、先に記載した有機官能性シラン)が挙げられる。
【0034】
エチレン性不飽和の基を含むモノマーのような共重合可能な材料の非限定的な例としては、以下から選択される官能基を有するビニルモノマーおよびエチレン性不飽和モノマーが挙げられる:ヒドロキシル、カルボキシル、アミノ、メルカプト、(メタ)アクリロイルオキシ(例えば、アクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシ)、イソシアネートまたはこれらの混合(これらは当業者に公知である)。1つの非限定的な実施形態において、共重合可能な材料は、2つ以上の重合可能な同じ基、または2つ以上の重合可能な異なる基を有し得る。別の非限定的な実施形態において、共重合可能な材料は、(メタ)アクリル酸モノマーから選択され、このモノマーはヒドロキシル、アミノ、メルカプトまたはこれらの混合から選択される少なくとも1つの官能基を有する。
【0035】
1つの非限定的な実施形態において、重合可能な成分の形成において使用される実質的に親水性のモノマーおよび/または実質的に疎水性のモノマーは、当業者に公知であるように、重合の際にそれぞれのポリマーのガラス転移温度によって提供される特性のために選択される。例えば、室温(例えば23℃)より高いガラス転移温度を有するポリマーを形成するモノマーは、剛性または硬性のポリマーを形成する傾向があり、一方室温より低いガラス転移温度を有するポリマーを形成するモノマーは、軟性または可撓性である傾向がある。ポリマー微粒子を形成するために使用されるモノマーの特性は、光感受性材料の性能に影響を与え得る。例えば、活性化状態および不活性化状態を示す立体構造変化に依存する有機性フォトクロミック材料の場合、1つの非限定的な実施形態において、軟性および可撓性環境がより可動性を可能にし、そして性能の向上を可能にし得るか、または剛性および硬性環境がより低い可動性を可能にし、そして性能の低下を引き起こし得る。重合可能な成分と、光感受性材料の性能に影響を与え得る特性を有する材料とを配合することは、その光感受性ポリマー微粒子に、得られる光感受性材料の性能を制御し得る環境を持たせることを可能にする。
【0036】
重合の際に、実質的に親水性のモノマーおよび実質的に疎水性のモノマーは、それぞれポリマーを形成し、それぞれのガラス転移温度は、大きく変動し得る。非限定的な一実施形態において、実質的に疎水性のモノマーの重合の際に形成されるポリマーのガラス転移温度は、実質的に親水性のモノマーの重合の際に形成されるポリマーのガラス転移温度以上である。代替的な非限定的な実施形態において、実質的に疎水性のモノマーの重合の際に形成されたポリマーのガラス転移温度は、実質的に親水性のモノマーの重合の際に形成されたポリマーのガラス転移温度より低い。
【0037】
さらなる非限定的な実施形態において、実質的に疎水性のモノマーは、重合の際に23℃未満、例えば、22.9℃〜−100℃または22℃〜−90℃のガラス転移温度を有するポリマーを形成するように適合される。なおさらなる非限定的な実施形態において、実質的に親水性のモノマーは、重合の際に23℃以上、例えば、23℃〜130℃または24℃〜100℃のガラス転移温度を有するポリマーを形成するように適合される。
【0038】
なおさらなる非限定的な実施形態において、実質的に親水性のモノマーおよび/または実質的に疎水性のモノマーは、実質的に柔軟性のない部分および/または実質的に可撓性の部分を形成するように適合されたウレタン材料であってもよい。適切な型の部分を形成するために、構成成分、例えばイソシアネートおよびポリオールを選択することにより、柔軟性のない部分または可撓性の部分を形成するためにウレタン材料を調製するという概念は、当業者に公知である。例えば、米国特許第6,187,444号の第3段49行目〜第4段46行目にある硬質部分および軟質部分の考察を参照のこと、この開示は、本明細書中に参考として援用される。ウレタン材料の柔軟性のない部分は、使用する際に破壊することなく曲げるのが容易ではない剛性を、生じた材料に付与する材料である。ウレタン材料の可撓性の部分は、しなやかかつ曲げることが可能であるか、または直線から変形させることができるか、または破壊することなく形成することが可能な材料を生じる材料である。非限定的な実施形態において、実質的に疎水性のモノマーは、ウレタン材料(例えば、ウレタン(メタ)アクリレートプレポリマーであり、これは、可撓性部分を形成するように適合され、実質的に親水性のモノマーは、ウレタン材料(例えば、ウレタン(メタ)アクリレートプレポリマーであり、柔軟性のない部分を形成するように適合される。代替的な非限定的な実施形態において、実質的に疎水性のモノマーは、柔軟性のない部分を形成するように適合されるウレタン材料であり、実質的に親水性のモノマーは、可撓性部分を形成するように適合されたウレタン材料である。
【0039】
本発明のウレタン材料は、イソシアネートとポリオール、アミンおよび/またはチオールとを用いて調製され得、これらは大きく変動し得る。適切な材料および方法は、ウレタン調製の分野の当業者に公知である。
【0040】
ウレタン形成成分(例えば、ヒドロキシル基、メルカプト基および/またはアミノ基を有する有機成分およびイソシアネート)は、合わされて本発明のウレタン材料を生成し、その構成要素の相対量は、代表的に反応性のヒドロキシル基、メルカプト基および/またはアミノ基の利用可能な数に対する反応性のイソシアネート基の利用可能な数の比として表され、例えば、NCO:Xの当量比として表され、Xは、OH、SH、NHおよび/またはNHである。例えば、一NCO当量の重量のイソシアネート成分が、一X当量の重量のヒドロキシル基含有成分、メルカプト基含有成分および/またはアミノ基含有成分と反応する場合、1.0:1.0のNCO:Xの比が得られる。ウレタン材料は、大きく変動し得るNCO:Xの当量比を有する。例えば、非限定的な一実施形態において、NCO:Xの当量比は、0.3:1.0と3.0:1.0との間の範囲であり得、その間の範囲は全て含まれる。その比が1.0:1.0より大きい場合、過剰のイソシアネート基は、当業者に公知であるように、ブロックされ得、そして/またはさらに例えば、尿素または有機官能性シランと反応して親水性基を形成し得る。
【0041】
イソシアネート成分の非限定的な例としては、遊離の、例えば、適切なブロッキング剤でブロックされたか、または部分的にブロックされたイソシアネート含有構成要素を有する修飾または非修飾のイソシアネートが挙げられ、当業者に公知であるように、以下:トルエン−2,4−ジイソシアネート;トルエン2,6−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;パラフェニレンジイソシアネート;ビフェニルジイソシアネート;3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニレンジイソシアネート;テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート;ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート;2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート;リジンメチルエステルジイソシアネート;ビス(イソシアネートエチル)フマレート;イソホロンジイソシアネート;エチレンジイソシアネート;ドデカン−1,12−ジイソシアネート;シクロブタン−1,3−ジイソシアネート;2−ヘプチル−3,4−ビス(9−イソシアネートノニル)−1−ペンチル−シクロヘキサン;シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート;シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネートまたはメチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート);メチルシクロヘキシルジイソシアネート;ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート;ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート;ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート;ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネート;m−テトラメチルキシレンジイソシアネート;p−テトラメチルキシレンジイソシアネート;パーヒドロジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;パーヒドロジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートまたはこれらの混合物から選択される。
【0042】
さらなる非限定的な実施形態において、ウレタン材料が触媒の存在下で形成される場合、この触媒は、以下:ルイス塩基、ルイス酸および挿入触媒から選択され得、これらは、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第5版、1992、A21巻、p.673〜674に記載され、この開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0043】
ウレタン形成成分として本発明に使用され得る有機ポリオールの非限定的な例としては、(a)ポリカーボネートポリオール;(b)低分子量ポリオール(例えば、500未満の重量平均分子量を有するポリオール(例えば、C−C10脂肪族ジオールなどの脂肪族ジオール、脂肪族トリオール、多価アルコールおよびアルコキシル化低分子量ポリオール));(c)ポリエステルポリオール;(d)ポリエーテルポリオール;(e)アミド含有ポリオール;(f)ポリアクリル酸ポリオール;(g)エポキシポリオール;(h)多価ポリビニルアルコール;(i)ウレタンポリオール;または(j)これらの混合物が挙げられる。上述のポリカーボネートポリオールは、米国特許第5,143,997号第3段43行目〜第6段25行目、および米国特許第5,527,829号第2段10行目〜第3段48行目に開示されるように、当該分野で公知の方法によって形成され得る。他のポリオールは、また米国特許第6,187,444号第7段25行目〜第12段15行目に記載されるように、当該分野で公知の方法によって調製され得る。このような開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0044】
非限定的な一実施形態において、本発明のウレタン材料を調製するために使用される有機ポリオール(例えば、ジオール、トリオールなど)は、プレポリマーまたはイソシアネートを有する付加化合物を形成するために使用され得る。別の非限定的な実施形態において、実質的に親水性のプレポリマーまたは実質的に疎水性のプレポリマーは、それぞれ親水性モノマー(例えば、ジメチロールプロピオン酸)または疎水性モノマー(例えば、C脂肪族ジオール)を、プレポリマーのイソシアネート反応基と反応させることによって調製され得る。このようなプレポリマーは、実質的に親水性または実質的に疎水性のウレタン(メタ)アクリレートプレポリマー(例えば、ウレタンアクリレートプレポリマー、ウレタンメタクリレートプレポリマーまたはこれらの混合物)であり得る。
【0045】
これまでに述べたように、本発明の水性組成物は、少なくとも一種の光感受性材料の有効量を含有する。「有効量の光感受性材料」という用語は、重合可能な成分中の光感受性材料の量であって、適切な波長の電磁放射線を照射したときに、機器または目視による観察によって検出可能な応答(例えば、光感受性材料によって放出される放射線の波長または量の変化、光感受性材料を通過する放射線の波長の変化または光感受性材料の観察される色の変化)を生じる光感受性ポリマー微粒子を生じる量を意味する。「光感受性材料」という用語は、光感受性有機材料、光感受性無機材料またはこれらの混合物を包含するが、着色剤(例えば、顔料および定着した色彩(tint)の色素および従来の二色性色素(二色性の特性が本明細書中以下で考察するようなフォトクロミック材料と関連しない限り))は、包含しない。非限定的な一実施形態において、光感受性材料は、蛍光色素、リン光性色素、非線形光学材料、フォトクロミック材料またはこれらの混合物から選択される。
【0046】
別の非限定的な実施形態において、光感受性材料はさらに上記の重合可能な基を一種以上含む。重合可能な基を光感受性材料に結合させるための種々の方法は、当業者に公知である。例えば、米国特許第6,113,814号第8段42行目〜第22段7行目を参照のこと。この開示は、本明細書中に参考として援用される。使用され得るさらなる方法は、非光感受性材料に官能基を結合させるための方法であり、例えば、米国特許第5,919,846号第2段35行目〜第4段42行目に記載される方法である。非限定的な一実施形態において、光感受性材料は、上記重合可能な成分の鎖様の重合性材料に少なくとも部分的に結合され得る。
【0047】
当業者に公知であるように、蛍光色素およびリン光性色素は、原子または分子が高い電子状態から低い電子状態まで経るときに、可視光を放射する。蛍光色素からの放射に対する暴露後の発光の放射がリン光色素からの放射より早く生じることが二つの色素の間の違いである。
【0048】
当業者に公知である蛍光色素は、本発明の光感受性材料として使用され得る。Haugland,R.P.(1996) Molecular Probes Handbook for Fluorescent Probes and Research Chemicals、第6版を参照のこと。蛍光色素の非限定的な例としては、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ローダミン、ベンゾフェノン、クマリン、フルオレセイン、ペリレンおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0049】
当業者に公知のリン光性色素は、本発明における光感受性材料として使用され得る。リン光性色素の非限定的な例としては、以下:金属リガンド錯体(例えば、トリス(2−フェニピリジン)イリジウム[Ir(ppy)3];2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)[PtOEP])および有機色素(例えば、エオシン(2’,4’,5’,7’−テトラブロモフルオレセイン)、2,2’−ビピリジンおよびエリスロシン(2’,4’,5’,7’−テトラヨードフルオレセイン)が挙げられる。
【0050】
非線形光学材料(NLO)は、明確な結晶構造を有し得、これは、電磁放射線に関して光学的に異方性であるが、また非結晶質(例えば、ガリウム砒素)ならびに種々の発色団(例えば、disperse red 1[2873−52−8] 4−(N−エチル−N−2−ヒドロキシエチル)アミノ−4’−ニトロアゾベンゼンを組み込んだポリマーであってもよい。本明細書中で使用される場合、用語「異方性」とは、少なくとも一つの異なる向きで測定する場合に値が異なる少なくとも一つの特性を有することを意味する。従って、「光学的に異方性の材料」は、少なくとも一つの異なる向きで測定する場合に値が異なる少なくとも一つの光学特性を有する材料である。NLO材料の異方性の性質に基づくと、当業者に公知であるように、材料の順序付けまたは整列は、これらの材料の非線形挙動を十分に利用するために使用される。いくつかのNLO材料は、これらを通過する光を、向き、温度、波長などに依存して変化させる。NLO材料のこの特性の非限定的な例は、低波長の赤色光がリン酸二水素アンモニウムの結晶に入り、高エネルギーを蓄積した光子を放出し、より高い波長の青色光として出ることである。D.Arivuoli、「Fundamentals of nonlinear optical materials」、PRAMANA−journal of physics、第57巻、第5号および6号、2001年11月、12月、p871−873を参照のこと、この開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0051】
当業者に公知のNLO材料は、本発明の光感受性材料として使用され得る。Nalwa,H.S.およびMiyata,S.編、Nonlinear Optics of Organic Molecules and Polymers、CRC、1997を参照のこと。上記の材料に加えて、NLO材料の非限定的な例としては、以下:4−ジメチルアミン−4−ニトロスチルベン;4−[4−(フェニルアゾ)−1−ナフチルアゾ]フェノール;N−エチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−4−(4−ニトロフェニルアゾ)アニリン;および(S)−(−)−1−(4−ニトロフェニル)−2−ピロリジンメタノールが挙げられる。
【0052】
フォトクロミック材料は、少なくとも2種の状態を有し、第一の状態は、第一の吸収スペクトルを有し、第二の状態は、第一の吸収スペクトルとは異なる第二の吸収スペクトルを有し、少なくとも二種の異なる波長の少なくとも化学線に応答して、二つの状態を切り替え得る。例えば、第一の吸収スペクトルにおけるフォトクロミック材料の異性体A(例えば、「透明」状態)は、第一の波長の光に暴露され、第二の吸収スペクトルにおける異性体B(例えば、「着色」状態)に異性化し、これは、第二の異なる波長の光に暴露される場合、または第一の波長の光に暴露される場合、異性体Aに戻る異性化を中断する。代表的に、透明状態のフォトクロミック材料は、「非活性化」と考えられ、着色状態のフォトクロミック材料は、「活性化」であると考えられる。フォトクロミック材料の種類には、熱可逆的なフォトクロミック材料および非熱可逆的なフォトクロミック材料が存在する。熱可逆的なフォトクロミック材料は、少なくとも化学線に応答して第一の状態と第二の状態との間を切り替え、熱エネルギー(例えば、任意の形態の熱)または活性化放射の除去に応答して第一の状態に戻り得る。非熱可逆的(すなわち光可逆的)フォトクロミック材料は、化学線に応答して状態を切り替えるように適合されるが、熱エネルギーに応答して状態を切り替えるようには適合しない。本明細書中で使用される場合、「化学線」は、電磁放射線を意味し、例えば、フォトクロミック材料に応答を引き起こし得る紫外線および可視光線であるが、これらに限定されない。
【0053】
さらなる非限定的な実施形態において、熱可逆的なフォトクロミック材料および非熱可逆的なフォトクロミック材料の両方は、適切な条件下で、フォトクロミック特性および二色性特性(例えば、少なくとも部分的に直線的な偏光)の両方を示すように適合され得、そしてこれはフォトクロミック−二色性材料と称される。本明細書中で使用される場合、「少なくとも部分的に直線的な偏光」は、光波の電場ベクトルのある程度から全ての振動を1方向または1平面に限定することを意味する。以下により詳細に考察されるように、光学的に異方性の材料を含む光感受性物品(例えば、非線形性の光学的材料および/またはフォトクロミック−二色性材料)は、少なくとも部分的に整列され得る。
【0054】
フォトクロミック材料の非限定的な例としては、本発明において光感受性材料として使用され得る種々の広範なフォトクロミック材料が挙げられる。1つの非限定的な実施形態において、フォトクロミック材料は、無機フォトクロミック材料、有機フォトクロミック材料、またはそれらの混合物から選択される。
【0055】
1つの非限定的な実施形態において、無機フォトクロミック材料は、銀ハライド結晶、カドミウムハライド結晶および/または銅ハライド結晶を含む。他の非限定的な無機フォトクロミック材料は、無機ガラス(例えば、ソーダ−石英ガラス)へのユーロピウム(II)および/またはセリウム(III)の添加によって調製され得る。1つの非限定的な実施形態において、無機フォトクロミック材料は、融解ガラスに添加されて、本発明の水性組成物に組み込まれる粒子へと形成され、このような粒子を含む微粒子を形成する。これらのガラス粒子は、公知の種々の多くの方法により形成され得る。無機フォトクロミック材料は、さらに、Kirk Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、第4版、第6巻、322〜325頁に記載される。
【0056】
別の非限定的な実施形態において、フォトクロミック材料は、300ナノメートル〜1000ナノメートルの範囲に少なくとも1つの活性化吸収極大を含む、少なくとも1つの有機フォトクロミック材料であり、当業者に公知のとおりである。さらなる非限定的な実施形態において、有機フォトクロミック材料は、以下(a)および(b)の混合物を含む:(a)400ナノメートル〜550ナノメートル未満の可視λ極大を有する少なくとも1つの有機フォトクロミック材料、および(b)550ナノメートル〜700ナノメートルの可視λ極大を有する少なくとも1つの有機フォトクロミック材料。
【0057】
さらなる非限定的な実施形態において、フォトクロミック材料は、以下のクラスの材料を含み得る:ピラン、オキサジン、フルギド、フルギミド(fulgimide)、ジアリールエテン、またはそれらの混合物。本明細書中に開示される種々の非限定的な実施形態に従い、フォトクロミック材料(単数または複数)は、熱可逆的なフォトクロミック材料および/または非熱可逆的なフォトクロミック材料であり得る。1つの非限定的な実施形態に従い、フォトクロミック材料(単数または複数)は、熱可逆的なピラン、熱可逆的なオキサジン、熱可逆的なフルギド、熱可逆的なフルギミド、またはそれらの混合物から選択される。別の非限定的な実施形態に従い、フォトクロミック材料(単数または複数)は、非熱可逆的なフルギド、非熱可逆的なフルギミド、非熱可逆的なジアリールエテン、またはそれらの混合物である。さらなる非限定な実施形態に従い、フォトクロミック材料は、フォトクロミック−二色性材料である。
【0058】
本明細書中で使用されるフォトクロミックピランの非限定的な例としては、ベンゾピランおよびナフトピランが挙げられ、例えば、ナフト[1,2−b]ピラン、ナフト[2,1−b]ピラン、ならびにインデノ縮合ナフトピラン(例えば、米国特許第5,645,767号の第2段16行〜第12段57行に開示されるもの)および複素環縮合ナフトピラン(例えば、米国特許第5,723,072号の第2段27行〜第15段55行、米国特許第5,698,141号の第2段11行〜第19段45行、米国特許第6,153,126号の第2段26行〜第8段60行、および米国特許第6,022,497号の第2段21行〜第11段46行に開示されるもの(これらの開示は、本明細書中で参考として援用される))、およびスピロ−9−フルオレノ[1,2−b]ピラン、フェナントロピラン、キノリノピラン;フルオロアンテノピランおよびスピロピラン(例えば、スピロ(ベンゾインドリン)ナフトピラン、スピロ(インドリン)ベンゾピラン、スピロ(インドリン)ナフトピラン、スピロ(インドリン)キノリノピランおよびスピロ(インドリン)ピランが挙げられる。ナフトピランおよび相補的な有機フォトクロミック物質は、米国特許第5,658,501号(この開示は、本明細書中で参考として援用される)の第1段64行〜第13段17行に開示される。スピロ(インドリン)ピランはまた、Techniques in Chemistry、第III巻「Photochromism」第3章、Glenn H.Brown編、John Wiley and Sons,Inc.,New York,1971(これもまた、本明細書中で参考として援用される)のテキストに開示される。
【0059】
本明細書中に開示される種々の非限定的な実施形態と組合わせて使用され得るフォトクロミックオキサジンの非限定的な例としては、ベンゾオキサジン、ナフトオキサジン、およびスピロオキサジンが挙げられ、例えば、スピロ(インドリン)ナフトオキサジン、スピロ(インドリン)ナフトオキサジン、スピロ(ベンゾインドリン)ピリドベンゾオキサジン、スピロ(ベンゾインドリン)ナフトオキサジン、スピロ(インドリン)ベンゾオキサジン、スピロ(インドリン)フルオロアンテノオキサジン、およびスピロ(インドリン)キノキサジンが挙げられる。
【0060】
本明細書中に開示される種々の非限定的な実施形態と組合わせて使用され得る熱可逆的なフォトクロミックフルギドまたはフォトクロミックフルギミドの非限定的な例としては、米国特許第4,685,783号(これは、本明細書中で参考として援用される)の第1段57行〜第5段27行に開示されるフルギドおよびフルギミド、ならびに前述のフォトクロミック材料/化合物の任意の混合物が挙げられる。
【0061】
フォトクロミック材料が少なくとも2つのフォトクロミック化合物を含む1つの具体的な非限定的な実施形態に従い、これらのフォトクロミック化合物は、個々のフォトクロミック化合物上の連結基置換基を介して互いと連結され得る。例えば、フォトクロミック材料は、重合可能なフォトクロミック化合物、または母材と適合可能であるように適合されるフォトクロミック化合物(「適合化されたフォトクロミック材料」)であり得る。本明細書中に開示される種々の非限定的な実施形態と組合わせて使用され得る重合可能なフォトクロミック材料の非限定的な例は、米国特許第6,113,814号(この開示は本明細書中で参考として援用される)の第2段23行〜第23段29行に開示される。本明細書中に開示される種々の非限定的な実施形態と組合わせて使用され得る適合化フォトクロミック材料の非限定的な例は、米国特許第6,555,028号(この開示は本明細書中で参考として援用される)の第2段40行〜第25段26行に開示される。1つの非限定的な実施形態において、実質的に親水性である重合可能なフォトクロミック材料は、重合可能な成分中の実質的に親水性のモノマーとして使用され得る。別の非限定的な実施形態において、実質的に疎水性である重合可能なフォトクロミック材料は、重合可能な成分中の実質的に疎水性のモノマーとして使用され得る。
【0062】
他の適切なフォトクロミック基および相補的なフォトクロミック基は、米国特許第6,080,338号の第2欄21行目〜第14欄43行目、同第6,136,968号の第2欄43行目〜第20欄67行目、同第6,296,785号の第2欄47行目〜第31欄5行目、同第6,348,604号の第3欄26行目〜第17欄15行目、同第6,353,102号の第1欄62行目〜第11欄64行目および同第6,630,597号の第2欄16行目〜第16欄23行目に記載される。上記の特許の上記開示は、参考として本明細書に援用される。
【0063】
なおさらに適切なフォトクロミック材料としては、フォトクロミック−二色性材料(例えば、2004年5月17日に出願された米国特許出願連続番号P−108,936(この開示は、参考として本明細書に援用される)の[0020]段落〜[0134]段落に記載される材料)が挙げられる。このような材料は、本明細書の以降に記載されるように、少なくとも部分的に整列される微粒子に偏光特性を提供するために使用され得る。このようなフォトクロミック−二色性化合物の非限定的な例としては、以下が挙げられる:
(1)3−フェニル−3−(4−(4−(3−ピペリジン−4−イル−プロピル)ピペリジノ)フェニル)−13,13−ジメチル−インデノ[2’,3’:3,4]−ナフト[1,2−b]ピラン;
(2)3−フェニル−3−(4−(4−(3−(1−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン−4−イル)プロピル)ピペリジノ)フェニル)−13,13−ジメチル−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(3)3−フェニル−3−(4−(4−(4−ブチル−フェニルカルバモイル)−ピペリジン−1−イル)フェニル)−13,13−ジメチル−6−メトキシ−7−(4−フェニル−ピペラジン−1−イル)インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(4)3−フェニル−3−(4−([1,4’]ビピペリジニル−1’−イル)フェニル)−13,13−ジメチル−6−メトキシ−7−([1,4’]ビピペリジニル−1’−イル)インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(5)3−フェニル−3−(4−(4−フェニル−ピペラジン−1−イル)フェニル)−13,13−ジメチル−6−メトキシ−7−(4−(4−ヘキシルベンゾイルオキシ)−ピペリジン−1−イル)インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;または
(6)このようなピランの混合物。
【0064】
上記のフォトクロミック材料に加えて、熱不可逆性ジアリールエテンフォトクロミック材料の非限定的な例は、米国特許出願第2003/0174560号の[0025]段落〜段落[0086]に記載され、そして熱不可逆性フルギドまたはフンギミドは米国特許第5,631,382号の第2欄35行目〜第12欄8行目に記載される(これらの開示は、参考として本明細書に援用される)。
【0065】
さらなる非限定的な実施形態において、光感受性材料は、以下から選択されるピランを含むフォトクロミック材料である:
(a)3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,11,13−トリメチル−13−(2−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)−3H,13H−インデノ[2,1−f]ナフト[1,2−b]ピラン;
(b)3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−6,7−ジメトキシ−13−ブチル−13−(2−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)−3H,13H−インデノ[2,1−f]ナフト[1,2−b]ピラン;
(c)3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6−メトキシ−7−モルホリノ−13−エチル−13−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)−3H,13H−インデノ[2,1−f]ナフト[1,2−b]ピラン;
(d)3−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−3−(4−モルホ
リノフェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2,1−f]ナフト[1,2−b]ピラン;
(e)3−(4−メトキシフェニル)−3−(4−フルオロフェニル)−6,
7−ジメトキシ−13−エチル−13−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)−)−3H,13H−インデノ[2,1−f]ナフト[1,2−b]ピラン;
(f)3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,11,13−トリメチル−13−ヒドロキシ−3H,13H−インデノ[2,1−f]ナフト[1,2−b]ピラン;または
(g)このようなピランの混合物。
【0066】
少なくとも一つの重合可能な基を含むフォトクロミック材料および重合可能な基を含まないフォトクロミック材料を作製する方法は、当業者に周知である。例えば、限定せずに、3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,11,13−トリメチル−13−(2−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エトキシ−3H,13H−インデノ[2,1−f]ナフト[1,2−b]ピラン(フォトクロミック材料A)は、米国特許第6,113,814号の実施例8(この実施例は、参考として本明細書に援用される)のプロセス(このプロセスの工程7において、ジエチレングリコールの代わりにトリエチレングリコールを使用することを除いて)にしたがって調製され得る。
【0067】
さらなる非限定的な実施形態において、フォトクロミック材料(例えば、3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−6,7−ジメトキシ−13−ブチル−13−(2−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エトキシ−3H,13H−インデノ[2,1−f]ナフト[1,2−b]ピラン(フォトクロミック材料B))は、フォトクロミック材料Aについての上記のプロセスと同じプロセス(米国特許第6,296,785号の実施例16(この実施例は、参考として本明細書に援用される)の生成物が米国特許第6,113,814号の実施例8のプロセスの工程7で使用されることを除いて)を使用して調製され得る。
【0068】
なおさらなる非限定的な実施形態において、フォトクロミック材料(例えば、3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6−メトキシ−7−モルホリノ−13−エチル−13−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)−3H,13H−インデノ[2,1−f]ナフト[1,2−b]ピラン(フォトクロミック材料C))は、2−モルホリノ−3−メトキシ−5,7−ジヒドロキシ−7−エチル−7H−ベンゾ[C]フルオレン(これは、適切に置換した出発材料を使用して、米国特許第6,296,785号の実施例9(この実施例は、参考として本明細書に援用される)の工程2にしたがって調製され得る)と1,1−ビス(4−メトキシフェニル)−2−プロピン−1−オール(これは、当業者に公知の手順を使用して、米国特許第5,458,814号の実施例1(この実施例は、参考として本明細書に援用される)の工程1の方法にしたがって調製され得る)とを反応させることによって調製され得る。
【0069】
別の非限定的な実施形態において、フォトクロミック材料(例えば、(d)3−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2,1−f]ナフト[1,2−b]ピラン(フォトクロミック材料D))は、当業者に公知の手順を使用して、7,7−ジメチル−5−ヒドロキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレンと1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル−1−(4−モルホリノフェニル)−2−プロピン−1−オールとを反応させることによって調製され得る。
【0070】
同様に、さらなる非限定的な実施形態において、フォトクロミック材料(例えば、3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−13−エチル−13−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)−3H,13H−インデノ[2,1−f]ナフト[1,2−b]ピラン(フォトクロミック材料E))は、フォトクロミック材料Aに対して使用されるプロセス(3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−13−エチル−13−ヒドロキシ−3H,13H−インデノ[2,1−f]ナフト[1,2−b]ピランおよびジエチレングリコールをこのプロセスで使用することを除いて)にしたがって調製され得る。
【0071】
別の非限定的な実施形態において、フォトクロミック材料(例えば、(f)3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,11,13−トリメチル−13−ヒドロキシ−3H,13H−インデノ[2,1−f]ナフト[1,2−b]ピラン(フォトクロミック材料F))は、米国特許第5,645,767号の実施例5(この実施例は、参考として本明細書に援用される)の方法にしたがって調製され得る。
【0072】
本明細書に記載される光感受性材料は、種々の材料から選択され得る。非限定的な例としては、単一の光感受性化合物、光感受性化合物の混合物、少なくとも1つの光感受性化合物を含む材料(例えば、ポリマー性樹脂または有機モノマーの溶液)、少なくとも1つの光感受性化合物が化学結合されたモノマーもしくはポリマーのような材料、光感受性ポリマー(例えば、ともに結合したフォトクロミック化合物を含むフォトクロミックポリマー)またはこれらの混合物が挙げられる。
【0073】
一つの非限定的な実施形態において、光感受性材料が少なくとも1つの重合可能な基を含む有機フォトクロミック材料であり、そして共重合可能な材料が存在する場合、重合可能な成分は、重合可能な成分の固体総重量が100パーセントであることに基づき、2重量パーセント〜25重量パーセントの実質的に親水性のプレポリマー、2重量パーセント〜25重量パーセントの実質的に疎水性のプレポリマー、1重量パーセント〜45重量パーセントのフォトクロミック材料および5重量パーセント〜95重量パーセントの1つ以上の共重合可能なモノマーを含む。別の非限定的な実施形態において、重合可能な成分は、10重量パーセント〜25重量パーセントの実質的に親水性のプレポリマー、10重量パーセント〜25重量パーセントの実質的に疎水性のプレポリマー、5重量パーセント〜15重量パーセントのフォトクロミック材料および35重量パーセント〜75重量パーセントの1つ以上の共重合可能なモノマーを含む。重合可能な成分の個々の成分は、各々、上記の範囲を含めたそれぞれの範囲の任意の組み合わせ間の全ての数量に及び得る。一つの非限定的な実施形態において、フォトクロミック有機物は、重合可能な成分の固体総重量のうちの50重量パーセントまでの量で存在する。
【0074】
本発明のさらなる非限定的な実施形態は、完全な表面ドメインと内部ドメインとを備える少なくとも部分的に重合した成分を含む少なくとも部分的に架橋された光感受性ポリマー微粒子であり、この表面ドメインは少なくとも1つの実質的に親水性の領域を含み、この内部ドメインは少なくとも1つの実質的に疎水性の領域を含み、そしてこの表面ドメインおよび/またはこの内部ドメインの少なくとも一方は光感受性である。さらなる非限定的な実施形態において、光感受性である表面ドメインおよび/または内部ドメインは、蛍光材料、リン光性材料、非線形光学材料、フォトクロミック材料またはこれらの混合物から選択される少なくとも1つの光感受性材料の有効量を含む。さらなる非限定的な実施形態において、内部ドメインは、光感受性であるように適合される。なおさらなる非限定的な実施形態において、光感受性材料は実質的に抽出不能であり、なお別の非限定的な実施形態において、光感受性材料はフォトクロミック材料である。
【0075】
少なくとも部分的に架橋されたポリマー微粒子は、水性環境における、重合可能な成分の自己集合および部分的な重合により形成される。微粒子の自己集合の間、実質的に親水性の領域は外部に配向して表面ドメインを形成し、そして実質的に疎水性の領域は内部に配向して内部ドメインを形成する。本明細書において使用される場合、用語「表面ドメイン」は、微粒子の外部の連続的な領域を意味し、そして「内部ドメイン」は、微粒子の内部の連続的な領域を包含し、これらのドメインの全ては欠けるところが無い。
【0076】
なおさらなる非限定的な実施形態において、少なくとも1つの光感受性材料は、実質的に抽出不能であるように適合される。別の非限定的な実施形態において、抽出不能な光感受性材料は、フォトクロミック材料である。さらなる非限定的な実施形態において、フォトクロミック材料は、有機フォトクロミック材料であり、なおさらなる非限定的な実施形態において、有機フォトクロミック材料は、少なくとも1つの重合可能な基により置換される。実質的に抽出不能とは、実質的に抽出不能な光感受性材料の微粒子が、実質的に抽出可能である同一の光感受性材料の微粒子に比べて、より少ない光感受性材料を放出することを意味する。なぜなら、抽出を防止する手段(例えば、光感受性材料に、本明細書の以降に記載される重合可能な成分と反応し得る少なくとも1つの重合可能な基を提供する工程)が取られなかったからである。
【0077】
光感受性ポリマー微粒子からの光感受性材料(例として、有機フォトクロミック材料を使用する)の相対的な抽出性は、実質的に抽出不能なフォトクロミック材料(例えば、本明細書の先に記載されるフォトクロミックA(これは、重合可能な成分と反応し得る少なくとも1つの重合可能な基を有する))のフォトクロミックポリマー微粒子の有効量をこの実施例で使用されるフィルム形成型のコーティング組成物の一方の部分に含め、そして実質的に抽出可能なフォトクロミック材料(例えば、本明細書の先に記載されるフォトクロミックF(重合可能な成分と反応し得る重合可能な基を有さない))のフォトクロミックポリマー微粒子の有効量をこのコーティング組成物のもう一方の部分に含めることにより試験され得る。この説明における用語「有効量」は、活性化時に裸眼で識別できるフォトクロミック効果を生成するのに十分な量のフォトクロミックポリマー微粒子が使用されることを意味する。各々の型のフォトクロミックポリマー微粒子を含むコーティング組成物は、少なくとも部分的なコーティングとしてレンズに適用され、そして本明細書の実施例に記載されるように少なくとも部分的に硬化させる。少なくとも部分的に硬化し、コーティングされたレンズおよび同一の材料からなるコーティングされていないレンズを、それらの適切な波長(例えば、390ナノメートル(nm))での吸光度について各々測定し、フォトクロミック材料の最初の量およびレンズ材料の吸光度を測定する。コーティングされていないレンズの吸光度は、各々のコーティングされたレンズの吸光度から差し引かれ、このようなレンズ材料中に代表的に存在する紫外線安定剤を考慮に入れる。コーティングされたレンズおよびコーティングされていないレンズは、個々の容器の等量の溶媒に浸される。この溶媒(例えば、テトラヒドロフラン(THF))中で、光感受性材料は少なくとも部分的に可溶性であり、溶媒は23°C(例えば、室温)に維持される。30分間隔で、各々のレンズを取り出し、乾燥させて、390nmにおけるそれらの吸光度について試験する。そして、コーティングされていないレンズの吸光度を少なくとも部分的にコーティングされたレンズのそれぞれの吸光度から差し引く。これを、コーティングされたレンズについての吸光度の読みが顕著に変化しなくなるまで続け、このことは、抽出可能な量のフォトクロミック材料が抽出されたことを意味する。
【0078】
本発明の光感受性ポリマー微粒子に関して、一つの非限定的な実施形態において、光感受性ポリマー微粒子により放出される抽出可能な光感受性材料の量と比較した、光感受性ポリマー微粒子から放出される実質的に抽出不能な光感受性材料の量は、わずかに少ないから有意に少ないまで変動し得る。別の言い方をすれば、実質的に抽出不能な光感受性材料を含む微粒子は、抽出可能なフォトクロミック材料を含む微粒子より10%〜100%少ない光感受性材料を放出し得る。
【0079】
別の非限定的な実施形態において、光感受性材料のサイズの結果として、少なくとも部分的に架橋されたポリマー微粒子に生じるポリマーネットワーク内に捕捉されることによる捕捉により、光感受性材料は実質的に抽出不能にされ得る。例えば、一つの非限定的な実施形態において、粒子状の光感受性材料(例えば、無機フォトクロミック材料を含む粒子状のガラス)あるいはサイズにより捕捉されることが予測される数の平均分子量および/または立体配置を有するフォトクロミックオリゴマーまたはフォトクロミックポリマーである。別の非限定的な実施形態において、光感受性材料は、例えば、表面ドメインおよび/または内部ドメインと反応性の少なくとも1つの官能基による共有結合によって、ポリマーネットワークへ少なくとも部分的に結合している。さらなる非限定的な実施形態において、光感受性材料は、要因(物理的なサイズ、水素結合および共有結合が挙げられる)の組み合わせにより保持される。
【0080】
一つの非限定的な実施形態において、実質的に抽出不能な有機光感受性材料(例えば、有機フォトクロミック材料)が、それが添加された物理的な相(physical phase)に残ることが観察された。例えば、内部ドメインの実質的に疎水性の領域と会合する実質的に抽出不能な有機フォトクロミック材料は、表面ドメインの実質的に親水性の領域に移動し、結晶化する傾向を示さない。
【0081】
本発明の光感受性ポリマー微粒子のサイズは、広範に変動し得る。例えば、代替の非限定的な実施形態において、本発明の微粒子のサイズは、10ナノメートル(nm)〜10,000nm、または20nm〜5000nm、または30nm〜1500nm、または40nm〜1000nm、または50nm〜500nm、または60nm〜200nmの平均粒子サイズ(例えば、レーザー回折粒子サイズ装置(これは、各々の粒子が球状の形状を有すると仮定して粒子のサイズを測定し、粒子を完全に囲む最小の球体の直径をいう「粒子サイズ」を得る)により決定される体積平均粒子サイズ)の範囲に及び得る。光感受性ポリマー微粒子の平均粒子サイズは、示される値を含む、あらゆる上記の値の間で変動する範囲(例えば、60nm〜120nm)を有する。
【0082】
光感受性ポリマー微粒子の平均粒子サイズが50nm未満である場合、このサイズは、紫外線またはX線レーザー散乱法、原子間力顕微鏡、中性子散乱あるいは当業者に公知の他の方法により決定され得る。平均粒子サイズが50ナノメートルより大きくかつ1000nmまでである場合、平均粒子サイズは、公知の可視レーザー散乱技術にしたがって測定され得るか、またはこれは、透過型電子顕微鏡(「TEM」)像の電子顕微鏡写真を視覚的に調べ、この像により粒子の直径を測定し、そしてTEM像の倍率に基づいて平均粒子サイズを計算することにより決定され得る。平均粒子サイズが1000nmより大きい場合、このサイズは、当業者に公知の光学顕微鏡法を使用して測定され得る。
【0083】
さらなる非限定的な実施形態において、上記の光感受性ポリマー微粒子は、架橋材料と反応するよう適合された官能基を備える。このような官能基はまた、光感受性ポリマー微粒子がホストの材料(例えば、ポリマー有機材料)の成分と反応し、光感受性ポリマー微粒子をホストとより適合性にすることを可能にする。用語「より適合性」により、光感受性ポリマー微粒子とホスト材料との組み合わせが、適合性の欠如の代表的な指標である曇りまたはかすみを示す可能性がより少ないことを意味する。一つの非限定的な実施形態において、反応するように適合された官能基の少なくとも一部は、親水性である(例えば、ヒドロキシル官能基およびカルボキシル官能基)。官能基の非限定的な例としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基、カルバメート基、アミノ基、メルカプト基、アミド基および/または尿素基が挙げられる。
【0084】
架橋材料に関して、一つの非限定的な実施形態において、架橋材料は、反応性不飽和である2つ以上の部位を含む材料、2つ以上の上記の官能基を含む材料、反応性不飽和である1つ以上の部位と1つ以上の上記の官能基とを含む材料、またはこのような架橋材料の混合物から選択される。ヒドロキシル官能基、カルボキシル官能基、アミド官能基およびカルバメート官能基を含む材料のための架橋材料の非限定的な例としては、アミノプラスト樹脂、フェノプラスト樹脂またはこれらの混合物が挙げられる。アミノプラスト樹脂の非限定的な例は、商標CYMEL(例えば、CYMEL(登録商標)327、328、345、350、370および385)の下でCYTEC Industries,Inc.から市販され、そして商標RESIMENEの下でMonsanto Chemical Co.から市販される。
【0085】
別の非限定的な実施形態において、ポリイソシアネートおよびブロックされたポリイソシアネートならびにポリアジリジンは、ヒドロキシル基ならびに一級アミノ基および/または二級アミノ基を含む材料のための架橋材料として使用され得る。本発明の光感受性微粒子のための架橋剤として使用するのに適切なポリイソシアネートおよびブロックされたイソシアネートの非限定的な例は、米国特許第4,546,045号の第5欄16行目〜38行目および米国特許第5,468,802号の第3欄48行目〜60行目(これらの開示は、参考として本明細書に援用される)に記載されるものである。
【0086】
ヒドロキシル基ならびに一級アミノ基および/または二級アミノ基のための架橋材料の非限定的な例としては、当該分野で周知の無水物が挙げられる。架橋材料として使用するために適切な無水物の非限定的な例は、米国特許第4,798,746号の第10欄16行目〜50行目および米国特許第4,732,790号の第3欄41行目〜57行目(これらの開示は、参考として本明細書に援用される)に記載されるものである。
【0087】
カルボキシル官能基のための架橋材料の非限定的な例としては、ポリエポキシドおよびカルボジイミド(例えば、日本のNisshinbo Industries,Incにより製造され、商標CARBODILITEの下で販売される材料)が挙げられる。
【0088】
エポキシ官能基を含む材料のための架橋材料の非限定的な例は、当該分野で周知のポリ酸である。架橋材料として使用するのに適切なポリ酸の非限定的な例は、米国特許第4,681,811号の第6欄45行目〜第9欄54行目(この開示は、参考として本明細書に援用される)に記載されるものである。
【0089】
炭酸塩および妨害されていないエステルのための架橋材料の非限定的な例としては、当該分野で周知のポリアミンが挙げられる。本発明の光感受性ポリマー微粒子のための架橋材料として使用するのに適切なポリアミンの例は、米国特許第4,046,729号の第6欄61行目〜第7欄26行目(この開示は、参考として本明細書に援用される)に記載されるものである。
【0090】
ヒドロキシル官能基を含む材料のための架橋材料の非限定的な例としては、シロキサン、シランおよび/または各々の加水分解産物が挙げられ、これらは、ハードコート(hardcoat)生成コーティング溶液(例えば、PPG Industries,Inc.により販売されるHi−Gard(登録商標)コーティング溶液)の代表的な成分である。さらなる非限定的な例としては、当該分野で周知のシリル置換材料(例えば、トリス[3(トリメトキシシリル)プロピル]イソシアヌレート)が挙げられる。
【0091】
所望し、かつ適切な場合、上記の架橋材料の混合物が使用され得る。
【0092】
一連のさらなる非限定的な実施形態において、架橋材料との反応性およびさらなる物理的な特性(例えば、本明細書の以降に記載されるもの)は、本発明の光感受性ポリマー微粒子に関連し得る。微粒子は、重合可能な成分の形成の間および/または少なくとも部分的に架橋された光感受性ポリマー微粒子の形成後に、このような特性を付与する材料を取り込むことにより、これらの特性を有するように適合し得る。
【0093】
一つの非限定的な実施形態において、光感受性ポリマー微粒子は、微粒子の調製の間および/または微粒子の調製後に、磁性材料および/または磁力反応性の金属酸化物を導入することにより磁性または磁力反応性であるように適合される。このような物質の非限定的な例としては、当業者に公知であるように、超常磁性金属酸化物、常磁性金属酸化物、強磁性金属酸化物(例えば、フェライト)またはこれらの混合物が挙げられる。磁性粒子は、Dynal Biotechから市販されているか、または例えば、米国特許第4,358,388号の第1欄42行目〜第7欄39行目および同第5,356,713号の第1欄47行目〜第5欄12行目(これらの開示は、参考として本明細書に援用される)に開示される方法などの当該分野で認識される方法を使用して調製され得る。
【0094】
別の非限定的な実施形態において、光感受性ポリマー微粒子は、光感受性ポリマー微粒子へ導電性材料を取り込むことによって導電性であり得る。一つの非限定的な実施形態において、導電性充填剤(例えば、炭素充填剤、カーボンブラックまたは金属ファイバー)は、微粒子の調製の間および/または微粒子の調製後に取り込まれ得る。添加される導電性材料の量は、浸透閾値(例えば、微粒子が電流を伝導する充填剤の濃度)に合致するか、またはそれを超える条件で広範に変動し得る。別の非限定的な実施形態において、導電性ポリマーは、重合可能な成分中にこのようなポリマーのモノマーを含めることによって、微粒子に取り込まれ得る。導電性ポリマーの非限定的な例としては、ポリアニリンベースのポリマー、ポリピロールベースのポリマー、ポリチオフェンベースのポリマー、ポリエチレンオキシドベースのポリマーまたはこれらのコポリマーが挙げられる。導電性材料の調製および使用は、当業者に周知の技術を使用して達成され得る。Kirk Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、第4版、Volume 9、「Electrically Conductive Polymers」61頁〜88頁(この開示は、参考として本明細書に援用される)を参照のこと。
【0095】
さらなる非限定的な実施形態において、重合可能な成分および/または微粒子へ非光感受性色素および/または顔料を導入することにより、呈色が光感受性ポリマー微粒子内に取り込まれ得、微粒子を有色にし得る。非光感受性色素および顔料の非限定的な例としては、当業者に公知の広範な種類の有機材料または無機材料が挙げられる。非光感受性色素の非限定的な例としては、固定化チント(例えば、可溶性のチントおよび分散性のチント)が挙げられる。顔料の非限定的な例としては、有機金属酸化物および粉末および有機顔料(例えば、動物顔料、植物顔料または合成顔料)が挙げられる。上記の非光感受性有機色素および顔料は、本明細書の以下で例として二色性材料を使用して検討されるように、重合可能であり得る。
【0096】
有機顔料の非限定的な例としては、キナクリドン、フタロシアニン、イソインドリン、アントラピリミジン、アンタントロン、フラバントロン、ペリノン(perinone)、ピラントロン(pyranthrone)、これらの置換誘導体、およびこれらの混合物が挙げられる。無機顔料の非限定的な例としては、二酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、クロム酸鉛、カーボンブラックまたはこれらの混合物が挙げられる。
【0097】
なおさらなる非限定的な実施形態において、本発明の光感受性ポリマー微粒子は、先に記載されるフォトクロミック−二色性材料および/または従来の二色性材料を取り込み、これらを少なくとも部分的に整列させることにより、少なくとも部分的に偏光性にされ得る。二色性材料は、透過電磁波の2つの直交平面の偏光成分のうちの一方を、他方に比べてより強力に吸収し得る。したがって、二色性材料は、透過電磁波を少なくとも部分的に線形に偏光し得る。しかしながら、二色性材料は透過電磁波の2つの直交する平面の偏光成分の一方を優先的に吸収し得るが、二色性化合物の分子が適切に配置または整列されない場合、透過電磁波の正味の線形偏光は達成されない。すなわち、二色性材料の分子を無作為に配置することにより、個々の分子による選択的な吸収は互いに打ち消しあい、その結果、正味または全体的な偏光効果は達成されない。それゆえ、従来の線形偏光要素を形成するために、二色性材料の分子を他方の材料中に適切に配置または配列させる(例えば、少なくとも部分的に整列させる)ことが一般的に必要とされる。例えば、当業者に公知であるように、ポリマーシートを延伸して、二色性材料と整列させることにより、サングラス用の線形偏光フィルターまたはレンズを製造する。
【0098】
適切な従来の二色性材料の非限定的な例としては、アゾメチン、インジゴイド、チオインジゴイド、メロシアニン、インダン、キノフタロニック(quinophthalonic)色素、ペリレン、フタロペリン、トリフェノジオキサジン、インドロキノキサリン、イミダゾ−トリアジン、テトラジン、アゾ色素および(ポリ)アゾ色素、ベンゾキノン、ナフトキノン、アントロキノン(anthroquinone)および(ポリ)アントロキノン、アントロピリミジノン(anthropyrimidinone)、ヨウ素およびヨウ素酸塩が挙げられる。別の非限定的な実施形態において、二色性材料は重合可能な二色性材料であり得る。すなわち、この非限定的な実施形態にしたがって、二色性材料は、少なくとも1つの重合可能な基を含み得る。例えば、本明細書において限定しないが、少なくとも1つの二色性材料は、少なくとも1つの重合可能な基を末端とする、少なくとも1つのアルコキシ置換基、ポリアルコキシ置換基、アルキル置換基またはポリアルキル置換基を有し得る。
【0099】
本発明の別の実施形態にしたがって、光感受性微粒子を製造するための非限定的な方法が提供され、この方法は、以下の工程を包含する:a)少なくとも1つの光感受性材料および少なくとも1つの重合可能な成分(これは、少なくとも1つの親水性官能基と少なくとも1つの疎水性官能基とを含む)の有効量の水性分散物を確立する工程;およびb)微粒子を少なくとも部分的に形成するのに十分な条件(この条件は、本明細書の以下に記載される)に、a)の分散物を供する工程。別の非限定的な実施形態において、この方法は、c)、b)の少なくとも1つの重合可能な成分を少なくとも部分的に重合させる工程をさらに包含する。さらなる非限定的な方法において、光感受性材料は、フォトクロミック材料である。
【0100】
上記の方法の別の非限定的な実施形態において、親水性官能基は、少なくとも1つの実質的に親水性のモノマーにより提供され、そして疎水性官能基は、少なくとも1つの実質的に疎水性のモノマーにより提供される。さらなる非限定的な実施形態において、重合可能な成分は、この実質的に親水性のポリマーともこの実質的に疎水性のポリマーとも異なる、少なくとも1つの共重合可能な材料をさらに含む。
【0101】
光感受性微粒子を製造するための代替の非限定的な方法が提供され、この方法は、以下の工程を包含する:a)少なくとも1つの光感受性材料の有効量を必要に応じて含む、少なくとも1つの実質的に親水性のプレポリマー成分の水性分散物を確立する工程;b)少なくとも1つの光感受性材料の有効量を必要に応じて含む、少なくとも1つの実質的に疎水性のプレポリマー成分の水性分散物を確立する工程;およびc)微粒子を少なくとも部分的に形成するのに十分な条件(この条件は、本明細書の以下に記載され、この微粒子は、少なくとも1つの光感受性材料の有効量を含む)に、a)とb)との混合物を供する工程。一つの非限定的な実施形態において、この方法は、c)において、a)とb)との混合物に共重合可能な材料を添加する工程をさらに包含する。別の非限定的な実施形態において、この方法は、d)、c)の重合可能な成分を少なくとも部分的に重合させる工程をさらに包含する。本明細書で使用される場合、用語「プレポリマー」は部分的に重合した材料を意味する。
【0102】
上記の代替方法のさらなる非限定的な実施形態において、実質的に親水性のプレポリマーは水性組成物中に実質的に親水性のエチレン性不飽和モノマーを含み、実質的に疎水性のプレポリマーは水性組成物中に実質的に疎水性のエチレン性不飽和モノマーを含み、そして光感受性材料はフォトクロミック材料である。なおさらなる非限定的な実施形態において、フォトクロミック材料は、実質的に疎水性のプレポリマー中に存在し、そしてこのフォトクロミック材料は有機フォトクロミック材料である。なおさらなる非限定的な実施形態において、有機フォトクロミック材料は、少なくとも1つの重合可能な基を含む。
【0103】
別の非限定的な実施形態において、句「微粒子を少なくとも部分的に形成するのに十分な条件に材料を供する」は、材料を高剪断応力条件に供し、材料を微粒子へ粒子化することを包含する。高剪断応力は、当業者に公知である、任意の高剪断応力技術により達成され得る。
【0104】
本明細書で使用される場合、用語「高剪断応力条件」は、高剪断応力技術(例えば、以下に詳細に検討される、液体−液体衝突技術)だけでなく、機械的手段による高速剪断も包含することも意味する。所望される場合、微粒子を形成するための水性組成物の粒子化を達成するのに十分なストレスが適用される限り、水性組成物へストレスを適用するあらゆる様式が利用され得ることが理解されるべきである。
【0105】
水性組成物は、MICROFLUIDIZER(登録商標)乳化機(Massachusetts、NewtonのMicrofluidics Corporationから入手可能である)を使用することにより、適切な剪断ストレス条件に供され得る。MICROFLUIDIZER(登録商標)高圧衝突乳化機は、米国特許第4,533,254号(これは、参考として本明細書に援用される)に詳細に記載される。この装置は、高圧(最大約1.4×10kPa(20,000psi))ポンプおよび乳化が生じる相互作用チャンバーから構成される。一つの非限定的な実施形態において、混合物のプレエマルジョン(pre−emulsion)が調製され、その後、これを高剪断応力に供する。ポンプは、混合物をチャンバーに押し込め、このチャンバーで、混合物は、非常な高速で少なくとも2つのスリットを通過する少なくとも2つの流れに分割されて衝突し、小さな粒子の形成をもたらす(例えば、混合物が「粒子化される」)。
【0106】
1つの非限定的な実施形態において、各水性組成物は、約3.5×10kPaと約1×10kPa(5,000psiと15,000psi)との間の圧力で、複数回にわたって、または少なくとも部分的に形成された微粒子が製造されるまで、乳化器に通される。別の非限定的な実施形態において、この乳化器内の水性組成物の各々の、複数回の通過は、より小さい平均粒子サイズおよびより狭い範囲の粒子サイズ分布を有する微粒子を生じ得る。上述のMICROFLUIDIZER(登録商標)乳化器を使用する場合、応力が、液体と液体との衝突によって付与される。上述のように、少なくとも部分的に形成された微粒子が複数回の通過によってさらにサイズを減少され得るために充分な応力が付与される限り、乳化前の混合物に応力を付与する他のモデルが、利用され得る。例えば、高いせん断応力条件を付与する別の非限定的な方法は、超音波エネルギー、ホモジナイザー、ローター/ステーターミキサーおよび/またはジェット分散器の使用である。
【0107】
さらなる非限定的な実施形態において、少なくとも部分的に形成された光感受性ポリマー微粒子の重合可能な成分の重合は、この組成物に開始量の放射線を照射すること、および/またはこの組成物に、フリーラジカル重合、熱重合、光重合もしくはこれらの組み合わせのような方法によって重合を起こさせ得る開始量の材料(例えば、開始剤)を添加することによって、達成され得る。本発明の光感受性ポリマー微粒子を調製するために使用される材料を重合させるための方法は、当業者に周知であり、これらの周知の技術のうちのいずれも使用され得る。
【0108】
例えば、重合可能な成分は、熱重合によって(例えば、22℃〜150℃の範囲の温度で)、光重合によって、またはこれらの2つの方法の組み合わせによって、少なくとも部分的に重合され得る。温度の範囲は、少なくとも部分的に形成された微粒子中の重合可能な成分の熱重合について記載されているが、本明細書中に開示される以外の温度が使用され得ることが、当業者によって認識される。
【0109】
照射によって重合を開始させるための非限定的な方法としては、重合可能な成分の重合反応を開始させるための、紫外放射線、可視放射線、赤外放射線、マイクロ波放射線、γ線放射線、または電子線放射線の使用が挙げられる。これに続いて、あらゆる未反応の重合可能材料を硬化させるための熱的工程が行われ得る。
【0110】
重合可能な成分の重合は、水性組成物中に、フリーラジカルを発生させ得る開始量の材料(例えば、有機ペルオキシ化合物またはアゾビス(オルガノニトリル)化合物(例えば、開始剤))を含めることによって、なされ得る。熱重合開始剤として使用され得る、適切な有機ペルオキシ化合物の非限定的な例としては、以下が挙げられる:t−ブチルヒドロペルオキシド、ペルオキシ一炭酸エステル(例えば、炭酸第三級ブチルペルオキシイソプロピル);ペルオキシ二炭酸エステル(例えば、ペルオキシ二炭酸ジ(2−エチルヘキシル)、ペルオキシ二炭酸ジ(第二級ブチル)およびペルオキシ二炭酸ジイソプロピル);ジアシルペルオキシド(例えば、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、プロピオニルペルオキシド、アセチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド);ペルオキシエステル(例えば、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシオクチレート、およびt−ブチルペルオキシイソブチレート);メチルエチルケトンペルオキシド、ならびにアセチルシクロヘキサンスルホニルペルオキシド。1つの非限定的な実施形態において、熱開始剤は、得られるポリマー微粒子を脱色せず、そして当業者に公知であるようなさらなる熱を必要としない酸化還元開始剤系において沈殿し得る、熱開始剤である。例えば、G.S.Misraによる「Redox Polymerization」、 Prog.Polym.Sci.第8巻、pp.61−131,1982を参照のこと(その開示は、本明細書中に参考として援用される)。
【0111】
熱重合開始剤として使用され得る、適切なアゾビス(オルガノニトリル)化合物の非限定的な例としては、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)、1,1’−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソブチロニトリルまたはこれらの混合物が挙げられる。
【0112】
重合可能な成分を開始させ、そして重合させるために使用される熱重合開始剤の量は、変動し得、そして使用される特定の開始剤に依存する。重合反応を開始させ、そしてこの反応を維持するために必要とされる量のみが、必要とされる。アゾビス(オルガノニトリル)化合物に関して、1つの非限定的な実施形態において、重合可能な成分100部あたり0.001部と5.0部との間の開始剤(phm)が、使用され得る。代表的に、熱硬化サイクルは、重合可能な成分を開始剤の存在下で、室温から125℃までの範囲の温度で、20分間〜2時間にわたって加熱する工程を包含する。時間の範囲は、少なくとも部分的に形成された微粒子中の重合可能な成分の熱重合について記載されるが、開示される以外の時間間隔が使用され得ることが、当業者によって認識される。
【0113】
重合可能な成分の重合は、光開始剤の存在下で、紫外光および/または可視光を使用して、実施され得る。本明細書中に開示される種々の非限定的な実施形態に従って使用され得る、光開始剤の非限定的な例としては、切断型の光開始剤および引抜型の光開始剤が挙げられる。
【0114】
切断型の光開始剤の非限定的な例としては、アセトフェノン、α−アミノアルキルフェノン、ベンゾインエーテル、ベンゾイルオキシム、アシルホスフィンオキシドおよびビスアシルホスフィンオキシド、またはこのような開始剤の混合物が挙げられる。このような光開始剤の市販の例は、DAROCURE(登録商標) 4265であり、これは、Ciba Chemicals,Inc.から入手可能である。引抜型の光開始剤の非限定的な例としては、ベンゾフェノン、マイケルケトン、チオキサントン、アントラキノン、カンファーキノン、フルオロン、ケトクマリン、またはこのような開始剤の混合物が挙げられる。
【0115】
引抜型の光開始剤は、代表的に、引き抜きのために不安定な水素原子を提供するために添加される、アミンおよび他の水素供与材料のような材料の存在下で、より良好に機能する。代表的な水素供与体は、酸素または窒素に対してα位に、活性水素を有する(例えば、アルコール、エーテルおよび第三級アミン)か、または活性水素が、硫黄に直接結合している(例えば、チオール)。このような添加材料の非存在下では、光開始は、この系内のモノマー、オリゴマー、または他の成分からの水素の引き抜きを介して、依然として起こり得る。
【0116】
別の非限定的な実施形態において、カチオン性光開始剤がまた、上述の光開始剤と組み合わせて使用され得る。引抜型の光開始剤と共に使用されるカチオン性開始剤の非限定的な例は、ブチリルコリントリフェニルブチルボレート、またはこのような材料の組み合わせのような水素供与体である。カチオン性光開始剤のさらなる非限定的な例は、米国特許第5,639,802号の第8欄第59行〜第10欄第46行(この開示は、本明細書中に参考として援用される)に記載される、オニウム塩である。
【0117】
少なくとも部分的に形成された微粒子の重合可能な成分を開始させ、そして重合させるために使用される、光重合開始剤の量は、変動し得、そして使用される特定の開始剤に依存する。重合反応を開始させ、そしてこの反応を維持するために必要とされる量のみが、必要とされる。光重合開始剤は、重合可能な成分の重量に基づいて、0.01重量%〜5重量%の量で使用され得る。
【0118】
光重合のために使用される光源は、紫外光および/または可視光を発光するものから選択される。1つの非限定的な実施形態において、この光源は、水銀灯、FeIおよび/またはGaIをドープされた水銀灯、殺菌灯、キセノンランプ、タングステンランプ、金属ハロゲン化物ランプ、あるいはこのようなランプの組み合わせであり得る。代表的に、光開始剤または光開始剤の組み合わせの吸収スペクトルは、最高の硬化効率のために、電球(例えば、H電球、D電球、Q電球および/またはV電球)のスペクトル出力と一致する。露光時間は、光源の波長および強度、光開始剤、ならびに重合可能な成分に非常に依存し得る。少なくとも部分的に形成された微粒子はまた、電子線プロセス(これは、開始剤の存在を必要としない)を使用することによって、少なくとも部分的に重合され得る。
【0119】
光感受性微粒子中の重合可能な成分の、熱および/または光重合方法を使用する重合のための開始剤および方法のさらなる記載は、米国特許第6,602,603号、第11欄第1行〜第13欄第36行(この開示は、本明細書中に参考として援用される)に開示される。
【0120】
1つの非限定的な実施形態において、本発明は、本発明の少なくとも部分的に架橋した光感受性ポリマー微粒子の水性分散物に関する。さらなる非限定的な実施形態において、上述のプロセスから得られる、光感受性ポリマー微粒子は、実質的に安定な水性分散物として、または不安定な水性組成物として調製され得る。用語「実質的に安定な分散物」とは、光感受性ポリマー微粒子の大部分(例えば、50%より多く)が、静置した際に沈降せず、凝集せず、そして/または綿状に沈殿しないことを意味する。不安定な水性組成物とは、光感受性ポリマー微粒子の50%より多くが、静置した際に沈降する組成物である。いくつかの場合において、当業者に公知であるように、界面活性剤または分散剤が、この分散物を安定化するために存在し得る。本発明の目的で、望ましい場合、微粒子の安定な分散物を製造するために必要な界面活性剤の量は、しばしば、この分散物の安定性を促進する他の成分の使用によって最小にされ得ることが、理解されるべきである。例えば、1つの非限定的な実施形態において、アミンで中和されて水分散性ポリマーを形成し得る酸官能基を含むポリマーは、この微粒子を含有する水性組成物中の他の成分を分散させるために使用され得る。
【0121】
本発明のさらなる実施形態において、光感受性ポリマー微粒子は、水性組成物から回収される。1つの非限定的な実施形態において、当業者に公知である液体−固体分離技術が、使用される。非限定的な例としては、濾過、遠心分離、綿状沈殿および蒸発技術が挙げられる。別の非限定的な実施形態において、ある質量の、少なくとも部分的に架橋した光感受性微粒子が回収される場合、この質量は、振動粉砕によって分散され得る。さらなる非限定的な実施形態において、回収された微粒子は、静電的および/または化学的に処理されて、塊の固体を取り扱う分野の当業者に公知の方法によって、再凝集を最小にし得る。
【0122】
本発明の1つの非限定的な実施形態において、光感受性ポリマー物品が提供される。この物品は、本発明の光感受性ポリマー微粒子を、単独でかまたは本明細書中の以下に記載される少なくとも部分的に硬化したポリマー材料と組み合わせて、含む。別の非限定的な実施形態において、この光感受性物品は、光学素子である。さらなる非限定的な実施形態において、この光学素子は、光学メモリ素子、ディスプレイ要素、眼用要素、窓要素またはミラー要素から選択される。なおさらなる非限定的な実施形態において、この光感受性物品は、眼用要素である。なおさらなる非限定的な実施形態において、この光感受性物品は、本発明の少なくとも部分的に架橋したフォトクロミックポリマー微粒子を含む、フォトクロミック物品である。
【0123】
別の非限定的な実施形態において、本発明のフォトクロミック物品は、少なくとも部分的に硬化したポリマー有機材料と、有効量の本発明の少なくとも部分的に架橋したフォトクロミックポリマー微粒子とを含有し、この微粒子の表面および/または内部領域のうちの少なくとも一方が、フォトクロミックである。1つの非限定的な実施形態において、このポリマー有機材料は、熱硬化性ポリマー有機材料、熱可塑性ポリマー有機材料、またはこのようなポリマー有機材料の混合物から選択され得る。別の非限定的な実施形態において、このポリマー有機材料は、ポリ(C〜C12アルキルメタクリレート)、ポリ(オキシアルキレンジメタクリレート)、ポリ(アルコキシ化フェノールメタクリレート)、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、熱可塑性ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリスルフィチオウレタン(polysulfithiourethan)、ポリ(ウレア−ウレタン)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリスチレン、ポリ(αメチルスチレン)、コポリ(スチレン−メチルメタクリレート)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、ポリビニルブチラール、または、ビス(アリルカーボネート)モノマー、多官能性アクリレートモノマー、多官能性メタクリレートモノマー、ジエチレングリコールジメタクリレートモノマー、ジイソプロペニルベンゼンモノマー、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレートモノマー、エチレングリコールビスメタクリレートモノマー、ポリ(エチレングリコール)ビスメタクリレートモノマー、エトキシ化フェノールビスメタクリレートモノマー、アルコキシ化多価アルコールポリアクリレートモノマー、スチレンモノマー、ウレタンアクリレートモノマー、グリシジルアクリレートモノマー、グリシジルメタクリレートモノマー、ジアリリデンペンタエリトリトールモノマー、あるいはこのようなモノマーの混合物から調製されるポリマーから選択される。
【0124】
本発明の1つの非限定的な実施形態において、光学素子としては、以下が挙げられる:光学メモリ素子(例えば、光学メモリおよび画像処理のためのデバイス);眼用要素(例えば、矯正レンズ、非矯正レンズ、コンタクトレンズ、眼内レンズ、拡大レンズ、保護レンズおよび庇);窓要素(例えば、建造物、自動車、オートバイおよび航空機の透明部品、フィルタ、シャッター、および光学スイッチ);ミラー要素;ならびにディスプレイ要素(例えば、スクリーン、モニタ、液晶セル、有機発光デバイスおよびセキュリティー要素)。
【0125】
本明細書中で使用される場合、用語「光学」とは、光および/または映像に関係することまたは関連することを意味する。1つの非限定的な実施形態において、光学メモリ素子としては、画像処理デバイスおよび光学データ格納デバイスが挙げられる。このような光学メモリ素子において、このデバイスと光信号との相互作用は、画像の形態の変化が処理もしくは維持されるまで、または情報の形態の変化がさらに変化もしくは消去されるまで維持されるまでの時間にわたって、これらのデバイスの光学メモリの変化を引き起こす。本明細書中において使用される場合、用語「眼用」とは、眼および視力に関係することまたは関連することを意味する。眼用要素の非限定的な例としては、矯正レンズおよび非矯正レンズ(単一視レンズまたはマルチビジョンレンズ(これは、セグメント化されているかまたはセグメント化されていないマルチビジョンレンズ(例えば、二焦点レンズ、三焦点レンズおよび累進レンズであるが、これらに限定されない)であり得る)が挙げられる)、ならびに視力を(美的にかまたはその他で)矯正するか、保護するか、または増強するために使用される他の要素(コンタクトレンズ、眼内レンズ、拡大レンズ、および保護レンズまたは庇が挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられる。
【0126】
本明細書中において使用される場合、用語「窓」とは、それを通る放射線の透過を可能にするように適合された開口部分を意味する。窓の非限定的な例としては、建造物、自動車および航空機の、透明部品、フィルタ、シャッター、および光学スイッチが挙げられる。本明細書中において使用される場合、用語「ミラー要素」とは、入射光の大部分を鏡のように反射させる表面を意味する。本発明において、反射光は、このミラー要素に接続された光感受性ポリマー微粒子の型によって、改変され得る。
【0127】
本明細書中において使用される場合、用語「ディスプレイ」とは、単語、数字、記号、図案または図の形態の情報の、可視または機械読み取り可能な表現を意味する。ディスプレイ要素およびディスプレイデバイスの非限定的な例としては、スクリーン、モニタ、液晶セル、有機発光デバイスおよびセキュリティー要素が挙げられる。本明細書中において使用される場合、用語「液晶セル」とは、順序付けられ得る異方性材料である液晶材料を含む構造体をいう。能動液晶セルとは、液晶材料が、外力(例えば、電場または磁場)の付与によって、順序付けられた状態と順序付けられていない状態との間で切り替えられ得るセル、または2つの順序付けられた状態の間で切り替えられ得るセルである。受動液晶セルとは、液晶材料が、1つの順序付けられた状態に維持されるセルである。能動液晶セル素子またはデバイスの1つの非限定的な例は、液晶ディスプレイである。
【0128】
本明細書中において使用される場合、用語「順序付ける(order)」とは、例えば、別の構造体または材料と整列させることによって、あるいは他の何らかの力または影響によって、適切な配置または位置にすることを意味する。従って、本明細書中において使用される場合、用語「順序付ける」とは、材料を順序付けるための接触方法(例えば、別の構造体または材料と整列させること)と、材料を順序付けるための非接触方法(例えば、外力または影響への曝露による)との両方を包含する。用語「順序付ける」はまた、接触方法と非接触方法との組み合わせを包含する。
【0129】
液晶材料および他の異方性材料(例えば、非線形光学材料、フォトクロミック−ダイクロミック材料およびダイクロミック染料)を、少なくとも部分的に順序付ける方法の非限定的な例としては、液晶材料を例として使用する本明細書中に開示される種々の非限定的な実施形態に従って、この液晶材料の少なくとも一部を、磁場、電場、線形に偏光した赤外放射線、線形に偏光した紫外放射線、線形に偏光した可視放射線、およびせん断力のうちの少なくとも1つに暴露する工程を包含する。
【0130】
液晶材料を少なくとも部分的に順序付ける上述の方法に加えて、液晶材料は、本明細書中に開示される種々の非限定的な実施形態に従って、この液晶材料の少なくとも一部を、別の材料または構造体(例えば、配向設備)と整列させることによって、少なくとも部分的に順序付けられ得る。本明細書中において使用される場合、用語「配向設備」とは、その設備の少なくとも一部に直接および/または間接的に暴露される、1つ以上の保管の構造体の位置決めを容易にし得る機構である。配向設備に関するさらなる情報は、2004年5月17日に出願された、米国特許出願P−108,935の第[0153]段落〜第[0288]段落(その開示は、本明細書中に参考として援用される)に開示されている。
【0131】
本発明の1つの非限定的な実施形態において、a)第一の表面を有する第一の基板;b)第二の表面を有する第二の基板であって、この第二の基板の第二の表面は、第一の基板の第一の表面に対向する、第二の基板;およびc)この第一の表面とこの第二の表面との間に位置する材料であって、この材料は、有効量の、本発明の少なくとも部分的に架橋した光感受性ポリマー微粒子を含む、材料を備える光学素子が提供される。第一の表面と第二の表面との間に位置する材料は、1つの非限定的な実施形態において、両方の表面から物理的に離れているか、またはこれらの表面のうちの少なくとも一方に接触している。さらなる非限定的な実施形態において、c)の材料は、第一の基板の第一の表面および第二の基板の第二の表面と接触している。
【0132】
別の非限定的な実施形態において、光学素子は、光学メモリ素子、ディスプレイ要素、眼用要素、窓要素またはミラー要素から選択される。さらなる非限定的な実施形態において、このディスプレイ要素は、スクリーン、モニタ、液晶セル、有機発光デバイスまたはセキュリティー要素から選択される。なおさらなる非限定的な実施形態において、この光学素子は、有機発光デバイス「OLED」であり、ここで、第一の表面は、アノードであり、第二の表面は、カソードであり、そしてこれらの表面の間に位置する材料は、発光材料であり、この発光材料は、このアノードおよびこのカソードと電気的に接触している。
【0133】
電流が、このOLEDに印加されると、1つの非限定的な実施形態において、有効量の本発明の光感受性ポリマー微粒子を含有する発光材料中に、このアノードは、ホールを注入し、そしてこのカソードは、電子を注入する。注入されたホールおよび電子の各々は、逆に荷電した電極の方へと移動する。電子およびホールが同じ分子上に局在する場合、「励起子」(これは、励起エネルギー状態を有する局在した電子−ホール対である)が形成される。この励起が、当業者に公知であるような光電子放出機構を介して緩和する場合に、光が発光する。例えば、米国特許第6,687,266号、第2欄第47行〜第18欄第59行(この開示は、本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。さらなる非限定的な実施形態において、少なくとも部分的に架橋した光感受性ポリマー微粒子は、蛍光材料、リン光材料またはこれらの混合物から選択される、有効量の光感受性材料を含有する。
【0134】
セキュリティー要素の非限定的な例としては、有効量の、本発明の少なくとも部分的に架橋した光感受性ポリマー微粒子を有する物品が挙げられ、この微粒子は、この物品の少なくとも1つの表面の少なくとも一部に、組み込まれており、そして/または結合されている。光感受性ポリマー微粒子の有効量とは、この物品の証明を可能にするような、微粒子の量である。有効量の光感受性微粒子は、証明マーク中に局在し得る。このようなセキュリティー要素の非限定的な例としては、アクセスカードおよび許可証(例えば、切符、バッジ、識別カードまたは会員カード、デビットカードなど);譲渡可能な文書および譲渡不可能な文書(例えば、為替、小切手、証文、紙幣、預金の証明書、株式証明書など);政府の公文書(例えば、通貨、免許証、身分証明書、給付金カード、ビザ、パスポート、公式の証明書、証書など);消費材(例えば、ソフトウェア、コンパクトディスク(「CD」)、デジタルビデオディスク(「DVD」)、器具、消費者電気機器、スポーツ用品、車など);クレジットカード;あるいは商品タグ、ラベルおよびパッケージが挙げられるが、これらに限定されない。
【0135】
本明細書中で限定しないが、別の非限定的な実施形態によれば、セキュリティー要素は、透明基材および反射性基材から選択される基材の少なくとも一部に、結合され得る。あるいは、反射性基材が必要とされる特定の非限定的な実施形態によれば、この基材が反射性ではないか、または意図された用途のために充分には反射性ではない場合、反射性材料が、この基材の少なくとも一部にまず適用され得、その後、証明マークがそこに適用される。例えば、少なくとも部分的に反射性であるアルミニウムコーティングが、この基材の少なくとも一部に塗布され得、その後、その上にセキュリティー要素が形成される。なおさらに、セキュリティー要素は、着色されていない基材、着色された基材、フォトクロミック基材、着色されたフォトクロミック基材、少なくとも部分的に線形偏光する基材、少なくとも部分的に円偏光する基材、および少なくとも部分的に楕円偏光する基材から選択される基材の、少なくとも一部に結合され得る。1つの非限定的な実施形態において、セキュリティー要素は、少なくとも部分的に線形偏向するセキュリティー要素である。
【0136】
さらに、上述の非限定的実施形態によるセキュリティー要素は、1つ以上の他のコーティングまたはシートをさらに備えて、米国特許第6,641,874号、第1欄第6行〜第13欄第28行(これは、本明細書中に参考として援用される)に記載されるような、観察角度に依存する特徴を有する多層反射性セキュリティー要素を形成し得る。
【0137】
1つの非限定的な実施形態において、本発明の光感受性物品は、a)基材;およびb)少なくとも部分的に硬化したコーティング組成物を備える。このコーティング組成物は、この基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部に結合されており、このコーティング組成物は、有効量の、少なくとも部分的に架橋した光感受性ポリマー微粒子を含有し、この微粒子の表面領域および/または内部領域のうちの少なくとも一方は、光感受性であるように適合される。1つの非限定的な実施形態において、この基材は、ガラス、石材、布、セラミック(例えば、ゾルゲル材料)、金属、木材、紙またはポリマー有機材料から選択される。さらなる非限定的な実施形態において、この基材は、ガラス、セラミックまたはポリマー材料であり、そして着色されていない基材、着色された基材、フォトクロミック基材、着色されたフォトクロミック基材、少なくとも部分的に線形偏光する基材、少なくとも部分的に円偏光する基材、少なくとも部分的に楕円偏光する基材、または少なくとも部分的に反射性の基材から選択される。
【0138】
本明細書中に開示される種々の非限定的実施形態と組み合わせて基材として使用され得る、ポリマー有機材料の非限定的な例としては、米国特許第6,733,887号、第9欄第55行〜第17欄第7行および米国特許第5,658,501、第15欄第28行〜第16欄第17行(これらの米国特許の開示は、本明細書中に参考として援用される)に開示されるモノマーおよびモノマー混合物から調製される、ポリマー材料(例えば、ホモポリマーおよびコポリマー)が挙げられる。
【0139】
本明細書中で使用される場合、コーティングまたは基材に関して、用語「少なくとも部分的に線形偏向する」とは、放射線を線形偏光させる(例えば、一方向への光波の電場ベクトルの振動のいくらかから全てまでを制限する)ように適合されたコーティングまたは基材をいう。本明細書中で使用される場合、コーティングまたは基材に関して、用語「少なくとも部分的に円偏光する」とは、放射線のいくらかから全てまでを円偏光させるように適合されたコーティングまたは基材をいう。本明細書中で使用される場合、コーティングまたは基材に関して、用語「少なくとも部分的に楕円偏向する」とは、放射線のいくらかから全てまでを楕円偏光させるように適合されたコーティングまたは基材をいう。本明細書中で使用される場合、コーティングまたは基材に関して、用語「フォトクロミック」とは、少なくとも化学線放射に応答して変化する可視放射線についての吸収スペクトルを有する、コーティングまたは基材をいう。さらに、基材に関して本明細書中において使用される場合、用語「着色されたフォトクロミック」とは、着色剤およびフォトクロミック材料を含有し、かつ少なくとも化学線に応答して変化する可視放射線、紫外放射線および/または赤外放射線についての吸収スペクトルを有する基材を意味する。従って、例えば、1つの非限定的な実施形態において、着色されたフォトクロミック基材は、化学線放射線に曝露される場合に、着色剤の第一の色特徴、および着色剤とフォトクロミック材料との組み合わせの第二の色特徴を有し得る。
【0140】
1つの非限定的な実施形態において、コーティング組成物は、液体形態または固体形態であり得、そして少なくとも部分的に硬化するコーティング組成物の少なくとも部分的なコーティングとして塗布され得る。少なくとも部分的なコーティングは、コーティングされる表面のいくらかから全てを覆い、そしてコーティング組成物の硬化可能な成分のいくらかから全てが硬化する(例えば、反応または重合する)。
【0141】
さらなる非限定的な実施形態において、コーティング組成物は、接着剤、塗料、またはインクである。なおさらなる非限定的な実施形態において、このコーティング組成物は、接着剤である。熱可塑性接着剤または熱硬化性接着剤のような接着剤、および本明細書中に記載されるカップリング剤のプライマー組成物は、本発明において使用され得る。塗料(これは、基材の装飾、保護および/または同定のために使用される、染色された液体またはペーストである)ならびにインク(これは、基材への書き込みおよび印刷のために使用される、染色された液体またはペーストである)が、本発明において使用され得る。
【0142】
なおさらなる非限定的な実施形態において、コーティング組成物として接着剤を有する光感受性物品は、コーティング組成物の少なくとも1つの表面に結合した、第一の少なくとも部分的に硬化したポリマーシートをさらに備える。本明細書中において使用される場合、用語「に結合した」とは、物体との直接的な接触、または1つ以上の他の構造体または材料(これらのうちの少なくとも1つが、物体に直接接触している)を介した、物体との間接的な接触を意味する。なおよりさらなる非限定的な実施形態において、光感受性物品は、第二の少なくとも部分的に硬化したポリマーシートをさらに備え、この第二のポリマーシートは、基材に隣接しており、そして接着コーティング組成物によって、第一のポリマーシートに結合している。別の非限定的な実施形態において、光感受性物品は、第一のポリマーシートおよび第二のポリマーシートのうちの少なくとも一方が光感受性である、物品である。
【0143】
本発明のさらなる非限定的な実施形態において、光感受性物品は、基材、およびこの基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部に結合した少なくとも部分的に硬化したコーティング組成物を備え、このコーティング組成物は、少なくとも部分的に順序付けられた異方性材料を含有し、そして少なくとも部分的に架橋した光感受性ポリマー微粒子は、この異方性材料と少なくとも部分的に整列している。
【0144】
本発明の光感受性ポリマー微粒子を含有するコーティング組成物を塗布する非限定的な方法としては、当業者に公知である方法(例えば、スピンコーティング、スプレーコーティング、スプレーおよびスピンコーティング、カーテンコーティング、フローコーティング、ディップコーティング、射出成型、鋳造、ロールコーティング、ワイヤコーティング、およびオーバーモールディング)が挙げられる。非限定的な実施形態によれば、光感受性ポリマー微粒子を含有する少なくとも部分的なコーティングは、型に塗布され、そして基材は、このコーティングの上部に形成されるか、または予め形成された基材が、たとえばオーバーモールディングによって、このコーティングの上部に配置され、そしてこのコーティングが、少なくとも部分的に硬化される。この実施形態において、コーティングは、光感受性ポリマー微粒子を含有する、液体コーティングまたは粉末コーティングとして塗布され得る。本明細書中で以下に記載される、ポリマーシートを備えるフォトクロミック物品もまた、オーバーモールディングプロセスを使用して調製され得る。
【0145】
本発明の別の非限定的な実施形態は、フォトクロミックコーティングされた物品であり、この物品は:a)基材;およびb)この基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部に結合された、少なくとも部分的に硬化したフォトクロミックコーティングを備え、このフォトクロミックコーティングは、フィルム形成ポリマー、および有効量の、本発明の少なくとも部分的に架橋したフォトクロミックポリマー微粒子を含有する。本発明の種々の非限定的な実施形態において、フィルム形成ポリマーの正確な性質は、重要ではない、フォトクロミックポリマー微粒子と適合性である、任意のフィルム形成ポリマー材料が、使用され得る。
【0146】
1つの非限定的な実施形態において、フィルム形成ポリマーは、熱硬化性ポリマー材料、熱可塑性ポリマー材料、またはこのようなポリマー材料の混合物から選択される。別の非限定的な実施形態において、フィルム形成ポリマーは、ポリウレタン、ポリ(尿素−ウレタン)、アミノプラスト樹脂、ポリシロキサン、ポリ無水物、ポリアクリルアミド、エポキシ樹脂またはポリ(メタ)アクリレート(例えば、ポリメタクリレート、ポリアクリレートもしくはこれらの混合物)から選択される、熱硬化性ポリマー材料である。
【0147】
フォトクロミック材料を含有するフィルム形成ポリマーのコーティング組成物の非限定的な例としては、フォトクロミックポリウレタンコーティング(例えば、米国特許第6,187,444号、第3欄第4行〜第12欄第15行に記載されるもの);フォトクロミックアミノプラスト樹脂コーティング(例えば、米国特許第6,432,544号、第2欄第52行〜第14欄第5行および同第6,506,488号、第2欄第43行〜第12欄第23行に記載されるもの);フォトクロミックポリシロキサンコーティング(例えば、米国特許第4,556,605号、第2欄第15行〜第7欄第27行に記載されるもの);フォトクロミックポリ(メタ)アクリレートコーティング(例えば、米国特許第6,602,603号、第3欄第15行〜第7行、同第50, 6,150,430号、第8欄第15行〜第38行および同第6,025,026号、第8欄第66行〜第10欄第32行に記載されるもの);ポリ無水物フォトクロミックコーティング(例えば、米国特許第6,436,525号、第2欄第52行〜第11欄第60行に記載されるもの);フォトクロミックポリアクリルアミドコーティング(例えば、米国特許第6,060,001号、第2欄第6行〜第5欄第40行に記載されるもの);フォトクロミックエポキシ樹脂コーティング(例えば、米国特許第6,268,055号、第2欄第63行〜第15欄第12行に記載されるもの);ならびにフォトクロミックポリ(尿素−ウレタン)コーティング(例えば、米国特許第6,531,076号、第2欄第60行〜第10欄第49行に記載されるもの)が挙げられる。フィルム形成ポリマーに関する、上述の米国特許における開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0148】
本発明のフォトクロミックコーティングされた物品の、一連のさらなる非限定的な実施形態において、少なくとも部分的に硬化したフォトクロミックコーティングは、基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部に結合される。このコーティングされた物品は、この基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部に結合した、プライマーコーティングの少なくとも部分的なコーティングをさらに備える。このコーティングされた物品は、この基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部に結合した、少なくとも部分的に接着する弾性コーティングをさらに備える。このコーティングされた物品は、この基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部に結合した、少なくとも部分的に抗反射性のコーティングをさらに備える。このコーティングされた物品は、フォトクロミックコーティングと耐磨耗コーティングとの間に介在する、移行コーティングの少なくとも部分的なコーティングをさらに備える。そしてこのコーティングされた物品は、この基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部の結合した、少なくとも部分的に偏光するポリマーフィルムまたはコーティングをさらに備える。
【0149】
別の一連の非限定的な実施形態において、上述のコーティングは、基材から以下の順序で、基材の同じ表面の少なくとも一部に結合され得る:プライマー;フォトクロミック;移行;耐磨耗;偏光フィルムもしくはコーティング;抗反射;および耐磨耗;またはプライマー;フォトクロミック;移行;耐磨耗;および抗反射;またはフォトクロミック;移行;および偏光;またはプライマー;フォトクロミック;および偏光;またはプライマー;フォトクロミック;および抗反射。上述のコーティングの多数の異なる組み合わせは、当業者に公知であるように、可能である。上述のコーティングの全ては、基材の1つ以上の表面(例えば、光学基材の両面)に塗布され得る。さらなる非限定的な実施形態において、フォトクロミックコーティングは、代表的に、1つの表面に塗布される。基材は、本明細書中で基材として記載される任意の型の材料であり得る。1つの非限定的な実施形態において、この基材は、光学素子である。別の非限定的な実施形態において、この光学素子は、眼用要素である。
【0150】
本明細書中に開示される種々の非限定的な実施形態と組み合わせて使用され得る、プライマーコーティングの非限定的な例としては、カップリング剤、カップリング剤の少なくとも部分的な加水分解物、およびこれらの混合物を含有するコーティングが挙げられる。本明細書中において使用される場合、「カップリング剤」とは、少なくとも1つの表面上の基と反応し得、結合し得、そして/または会合し得る、少なくとも1つの基を有する材料を意味する。1つの非限定的な実施形態において、カップリング剤は、少なくとも2つの表面(これらの表面は、類似の表面であっても類似していない表面であってもよい)の界面における分子架橋として働き得る。カップリング剤は、別の非限定的な実施形態において、モノマー、プレポリマーおよび/またはポリマーであり得る。このような材料としては、有機金属(例えば、シラン、チタネート、ジルコネート、アルミネート、ジルコニウムアルミネート、これらの加水分解物およびこれらの混合物)が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中において使用される場合、語句「カップリング剤の少なくとも部分的な加水分解物」とは、カップリング剤の加水分解可能な基のうちの少なくともいくつかから全てが加水分解されていることを意味する。本明細書中に開示される種々の非限定的な実施形態と組み合わせて使用するために適切な、プライマーコーティングの他の非限定的な例としては、米国特許第6,025,026、第3欄第3行〜第11欄第40行および米国特許第6,150,430、第2欄第39行〜第7欄第58行(これらの開示は、本明細書中に参考として援用される)に記載されるプライマーコーティングが挙げられる。
【0151】
本明細書中において使用される場合、用語「移行コーティング」とは、2つのコーティングの間の特性の傾斜を生じることを補助するコーティングを意味する。例えば、本明細書中での限定ではないが、移行コーティングは、比較的硬いコーティングと比較的やわらかいコーティングとの間の硬さの勾配を生じることを補助し得る。移行コーティングの非限定的な例としては、米国特許出願公開第2003/0165686号(このコーティングの開示は、本明細書中に参考として援用される)に記載されるような、放射線で硬化するアクリレートベースの薄膜が挙げられる。
【0152】
少なくとも部分的な耐磨耗コーティングの非限定的な例としては、オルガノシラン、オルガノシロキサンを含有する耐磨耗コーティング、無機材料(例えば、シリカ、チタニアおよび/またはジルコニア)に基づく耐磨耗コーティング、紫外線で硬化可能な型の有機耐磨耗コーティング、酸素障壁コーティング、UV遮断コーティング、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0153】
語句「少なくとも部分的に耐磨耗性のコーティングまたはシート」とは、標準的な参照材料より大きい、磨耗に対する耐性を示す、コーティングまたは保護的なポリマー材料の少なくとも部分的なシートをいう。この標準的な参照材料は、例えば、PPG Industries,Incから入手可能な、CR−39(登録商標)モノマーから作製されるポリマーであり、この耐性は、ASTM F−735 Standard Test Method for Abrasion Resistance of Transparent Plastics and Coatings Using the Oscillating Sand Methodに匹敵する方法で試験される。
【0154】
語句「少なくとも部分的に抗反射性のコーティング」とは、このコーティングが塗布される基材の抗反射特性を、この基材の表面によって反射されるぎらぎらする光の量を減少させることによって、そして透明な基材については、コーティングされていない基材と比較した場合の透過率の百分率を増加させることによって、少なくとも部分的に改善するコーティングをいう。抗反射コーティングの非限定的な例としては、金属酸化物、金属フッ化物、または他のこのような材料の単層または多層が挙げられ、これらの層は、本発明の物品に、真空蒸着、スパッタリング、または他の何らかの方法によって、堆積され得る。
【0155】
少なくとも部分的に線形偏光するコーティングの非限定的な例としては、従来のダイクロミック化合物(例えば、先に議論されたものであるが、これらに限定されない)を含有するコーティングが挙げられるが、これらに限定されない。
【0156】
1つの非限定的な実施形態において、本発明の物品は、フォトクロミック複合物品であり、この物品は、a)基材;およびb)この基材の少なくとも1つの表面に結合された、少なくとも部分的に硬化したフォトクロミックポリマーシートを備え、このフォトクロミックポリマーシートは、有効量の、本発明の少なくとも部分的に架橋したフォトクロミックポリマー微粒子を含有する。基材および1つ以上のシートを備える本発明のフォトクロミック物品は、フォトクロミック複合物品と称される。
【0157】
別の非限定的な実施形態において、この基材は、本明細書中で先に記載されたものと同じであり、そしてフォトクロミック複合物品は、光学素子である。さらなる非限定的な実施形態において、この光学素子は、眼用要素である。少なくとも部分的に硬化したポリマーシートの非限定的な例としては、熱硬化性ポリマー材料、熱可塑性ポリマー材料、またはこれらの混合物が挙げられる。1つの非限定的な実施形態において、少なくとも部分的に硬化したポリマーシートは、熱可塑性ポリウレタンを含有する。
【0158】
さらなる非限定的な実施形態において、本明細書中に記載される、本発明のフォトクロミック複合物品は、少なくとも部分的に耐磨耗性の保護ポリマーシートをさらに備え得る。このポリマーシートは、少なくとも部分的に硬化したフォトクロミックポリマーシートの少なくとも1つの表面の、少なくとも一部に結合される。別の非限定的な実施形態において、少なくとも部分的に耐磨耗性の保護ポリマーシートは、熱硬化性ポリマー材料、熱可塑性ポリマー材料、またはこれらの混合物を含有する。さらなる非限定的な実施形態において、少なくとも部分的に耐磨耗性の保護ポリマーシートは、熱可塑性ポリカーボネートを含有する。
【0159】
別の非限定的な実施形態において、本発明のフォトクロミック複合物品は、a)基材;b)この基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部に結合したフォトクロミック接着剤の少なくとも部分的に硬化したコーティングであって、この接着剤は、接着剤および有効量の本発明の少なくとも部分的に架橋したフォトクロミックポリマー微粒子を含有する、コーティング;ならびにc)このフォトクロミック接着コーティングに結合した第一の少なくとも部分的に硬化したポリマーシートを備える。1つの非限定的な実施形態において、このフォトクロミック複合物品は、光学素子である。さらなる非限定的な実施形態において、このフォトクロミック複合物品は、眼用要素である。
【0160】
別の非限定的な実施形態において、フォトクロミック複合物品は、第二の少なくとも部分的に硬化したポリマーシートをさらに備え、この第二のポリマーシートは、基材に隣接しており、そしてフォトクロミック接着コーティングによって、第一のポリマーシートに結合している。さらなる非限定的な実施形態において、第一のポリマーシートおよび第二のポリマーシートのうちの少なくとも一方は、フォトクロミックである。さらなる非限定的な実施形態において、フォトクロミック複合物品は、セキュリティー要素である。
【0161】
さらに、本明細書中に開示される種々の非限定的な実施形態によれば、少なくとも部分的なコーティングおよび/または少なくとも部分的なシートは、少なくとも1種の添加剤を含有し得、この添加剤は、少なくとも部分的なコーティングおよび/またはシートの加工、特性、または性能のうちの1つ以上を容易にし得る。このような添加剤の非限定的な例としては、染料、整列促進剤、運動増強添加剤、光開始剤、熱開始剤、重合抑止剤、溶媒、光安定化剤(例えば、紫外線吸収剤および光安定化剤(例えば、ヒンダードアミン光安定化剤(HALS))であるが、これらに限定されない)、熱安定化剤、離型剤、レオロジー制御剤、レベリング剤(例えば、界面活性剤であるが、これに限定されない)、フリーラジカルスカベンジャー、架橋剤および接着促進剤(例えば、ヘキサンジオールジアクリレートおよびカップリング剤)が挙げられる。
【0162】
本明細書中に開示される種々の非限定的な実施形態による、少なくとも部分的なコーティングおよび/またはシートに存在し得る、染料および顔料の非限定的な例としては、この少なくとも部分的なコーティングおよび/またはシートに望ましい色または他の光学特性を付与し得る、有機染料および無機染料、ならびに有機顔料および無機顔料が挙げられる。
【0163】
本明細書中において使用される場合、用語「整列促進剤」とは、この添加剤が添加される材料の整列の速度および均一性のうちの少なくとも1つを促進し得る添加剤を意味する。本明細書中に開示される種々の非限定的な実施形態による、少なくとも部分的なコーティングおよび/またはシートに存在し得る、整列促進剤の非限定的な例としては、米国特許第6,338,808号、第1欄第48行〜第9欄第40行、および米国特許出願公開第2002/0039627号、段落[0010]〜[0119](整列促進剤のこれらの開示は、本明細書中に参考として援用される)に記載されるものが挙げられる。
【0164】
本明細書中に開示される種々の非限定的な実施形態による、少なくとも部分的なコーティングおよび/またはシートに存在し得る、運動増強添加剤の非限定的な例としては、エポキシ含有化合物、有機ポリオール、および/または可塑剤が挙げられる。このような運動増強添加剤のより具体的な例は、米国特許第6,433,043号、第2欄第57行〜第8欄第37行および米国特許第6,713,536号、第2欄第62行〜第10欄第6行(これらの運動増強添加剤の開示は、本明細書中に参考として援用される)に開示されている。
【0165】
本発明は、以下の実施例において、より具体的に記載される。これらの実施例は、例示のみとして意図される。なぜなら、これらの実施例の多数の改変およびバリエーションが、当業者に明らかであるからである。
【0166】
実施例A〜Jは、フォトクロミック微粒子の水性分散物を製造するために、実施例K〜Sにおける他の成分と組み合わせられて反応させた材料を表す。実施例1〜22は、 実施例K〜Sのフォトクロミック微粒子の水性分散物を組み込む、様々なコーティング組成物を表す。実施例23は、実施例1〜22でコーティングされたレンズの調製および試験を記載する。これらのレンズを、フィッシャー微小硬度、光学密度および退色半減期について試験した。これらの試験の結果を、表12および表13に列挙する。
【実施例】
【0167】
(実施例A)
(親水性ウレタンプレポリマー)
以下の材料を、記載した順序で、電気温度プローブ、機械式スターラー、コンデンサーおよび加熱マントルを備える4つ口丸底フラスコに添加した。
【0168】
【化1】

チャージAを、全ての固体が溶解するまで100℃の温度にてフラスコ中で攪拌した。チャージBを添加して、その混合物を80℃に再加熱した。チャージCを15分間にわたって添加して、得られた混合物を3時間80℃に維持した。チャージDを添加して、その混合物を室温まで冷やした。最終生成物は、38.0の酸価および81.4%の固体を有する非常に粘性のある透明の黄色溶液であった。酸価は、KOHを用いて電位差滴定によって測定した。固体の割合は、既知の量の材料をアルミニウム皿に添加し、材料を希釈して、その皿全体にわたって材料をより均一に分布させるためにさらなる水を添加することによって決定した。その皿を、1時間110℃にてオーブンに入れた。次いで、その皿を再び秤量して、残存質量(皿を除く)を最初の質量(皿を除く)で除算して固体の割合を決定した。
【0169】
(実施例B)
(フォトクロミック疎水性ウレタンプレポリマー)
以下の材料を、記載した順序で、電気温度プローブ、機械式スターラー、コンデンサーおよび加熱マントルを備える4つ口丸底フラスコに添加した。
【0170】
【化2】

(1)フォトクロミックAは、3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,11,13−トリメチル−13−(2−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)−3H,13H−インデノ[2,1−f]ナフト[1,2−b]ピランである。
(2)ジイソシアネートは、Cognis Corporationから入手可能である。
【0171】
チャージAをフラスコ中で攪拌して、90℃の温度に加熱した。チャージBを17分間にわたって添加して、混合物を90分間、90℃に維持し、次いで、室温まで冷やした。最終生成物は、1390cpsのBrookfield粘性(スピンドル#3、50rpm、25℃)を有する濃い紫色の液体であった。
【0172】
(実施例C)
(親水性ウレタンプレポリマー)
以下の材料を、記載した順序で、電気温度プローブ、機械式スターラー、コンデンサーおよび加熱マントルを備える4つ口丸底フラスコに添加した。
【0173】
【化3】

チャージAを、全ての固体が溶解するまで、100℃の温度にてフラスコ中で攪拌した。チャージBを添加して、混合物を90℃に再加熱した。チャージCを90分間にわたって添加した。チャージDを添加して、得られた混合物を2時間、90℃に維持した。チャージEを添加して、混合物を室温まで冷やした。最終生成物は、25.8の酸価、58.5%の割合の固体、およびをW+のGardner−Holdt粘性(ASTM D1545−89)を有する透明な溶液であった。
【0174】
(実施例D〜I)
(フォトクロミック疎水性ウレタンプレポリマー)
表1中の実施例D〜Iの各々についてグラム量で示される材料を、記載した順序で、電気温度プローブ、機械式スターラー、コンデンサーおよび加熱マントルを備える4つ口丸底フラスコに添加した。
【0175】
チャージAをフラスコ中で攪拌して、90℃の温度に加熱した。チャージBを最大10分間にわたって添加して、混合物を、実施例D(実施例Dは2時間維持した)を除いて1時間、90℃に維持した。大気圧に変わった後で、チャージCを添加して、混合物を、実施例Dおよび実施例Eについては34〜35分間、実施例Fおよび実施例Iについては23分間、実施例Gについては20分間、ならびに実施例Hについては32分間、90℃で維持し、次いで、室温まで冷やした。最終生成物は、表2に示される割合の固体を有する黒っぽい液体であった。
【0176】
【化4】

(3)フォトクロミックBは、3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−6,7−ジメトキシ−13−ブチル−13−(2−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)−3H,13H−インデノ[2,1−f]ナフト[1,2−b]ピランである。
(4)フォトクロミックCは、3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6−メトキシ−7−モルホリノ−13−エチル−13−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)−3H,13H−インデノ[2,1−f]ナフト[1,2−b]ピランである。
(5)フォトクロミックDは、3−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−3−(4−モルホリノフェニル)−13,13−ジメチル)−3H,13H−インデノ[2,1−f]ナフト[1,2−b]ピランである。
(6)フォトクロミックEは、3−(4−メトキシフェニル)−3−(4−フルオロフェニル)−6,7−ジメトキシ−13−エチル−13−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)−3H,13H−インデノ[2,1−f]ナフト[1,2−b]ピランである。
【0177】
(実施例J)
(疎水性ウレタンプレポリマー)
以下の材料を、記載した順序で、電気温度プローブ、オーバーヘッドスターラー、コンデンサーおよび加熱マントルを備える4つ口丸底フラスコに添加した。
【0178】
【化5】

チャージAを大気圧下にてフラスコ中で攪拌し、90℃の温度に加熱した。チャージBを25分間にわたって添加して、混合物を50分間、90℃に維持した。最終生成物は、81.4%の割合の固体およびR+のGardner−Holdt粘性を有するわずかに黄色の液体であった。
【0179】
(実施例K)
(実施例Aおよび実施例Bから形成されたフォトクロミック微粒子の水性分散物)
以下の材料を、以下に記載した順序で添加した。
【0180】
【化6】

(7)Rhodiaから入手可能な非イオン性界面活性剤
ガラスビーカー中でチャージAを攪拌することによってプレエマルジョンを調製した。チャージBを順番に添加している間、プレエマルジョンの132.37gを、8000psiおよび28℃にてMicrofluidizer(登録商標)M110Tに通して15分間再利用した。Microfluidizer(登録商標)M110Tは、MFIC
Corporation,Newton,MAのMicrofluidicsTM部門から入手可能である。得られたマイクロエマルジョンを、オーバーヘッドスターラー、コンデンサー、電気温度プローブおよび窒素注入口を備える4つ口丸底フラスコに移した。チャージCを、混合物として急速に添加し、次いで、チャージDを、30分間にわたって混合物として添加した。チャージDを添加すると、温度は30℃〜33℃に上昇した。最後に、チャージEを添加して、pH8.22を有する乳状の紫色の分散液が生成した。
【0181】
(実施例L)
(実施例Cから形成された微粒子の水性分散物)
以下の材料を、以下に記載した順序で添加した。
【0182】
【化7】

【0183】
【化8】

(8)Cytec,Inc.から入手可能なイソブタノール中の90重量%分散液として販売される部分的にメチル化されたメラミン/ホルムアルデヒド樹脂であることが報告されている。
【0184】
プレエマルジョンを、ステンレス鋼ビーカー中でチャージAを攪拌することによって調製した。このプレエマルジョンを一度、8000psiにてMicrofluidizer M110Tに通過させた。得られたマイクロエマルジョンを、オーバーヘッドスターラー、コンデンサー、電気温度プローブ、および窒素注入口を備える4つ口丸底フラスコに移した。チャージBを使用して、ビーカーおよびMicrofluidizer M110Tをリンスして、フラスコに添加した。チャージCを、混合物として急速に添加し、次いで、チャージDを、混合物として30分間にわたって添加した。チャージDを添加すると、温度は、30℃〜54℃に上昇した。チャージEを、混合物として添加した。チャージFを添加して、pH8.11、39.7センチポアズのBrookfield粘性(スピンドル#1、50rpm、25℃)および36.9%の割合の固体を有する乳状の白色分散液が生成した。
【0185】
(実施例M)
(実施例Aおよび実施例Dから形成されたフォトクロミック微粒子の水性分散物)
以下の材料を、以下に記載した順序で添加した。
【0186】
【化9】

ガラスビーカー中でチャージAを攪拌することによってプレエマルジョンを調製した。チャージBを順番に添加している間、プレエマルジョンの131.8グラムを、8000psiおよび28℃にてMicrofluidizer M110Tに通して15分間再利用した。得られたマイクロエマルジョンを、オーバーヘッドスターラー、コンデンサー、電気温度プローブおよび窒素注入口を備える4つ口丸底フラスコに移した。チャージCを、混合物として急速に添加し、次いで、チャージDを、30分間にわたって混合物として添加した。チャージDをすると、温度は30℃〜33℃に上昇した。最終生成物は、pH8.21および33.1%の割合の固体を有する乳状の灰色分散液であった。
【0187】
(実施例N〜R)
(実施例Aと実施例E、実施例F、実施例G、実施例Hまたは実施例Iおよび実施例Jとから形成されたフォトクロミック微粒子の水性分散物)
表3は、実施例N〜R(以下に記載される順序で使用した)の調製において使用されるグラムでの材料の量を示す。プレエマルジョンを、ガラスビーカー中でチャージAを攪拌することによって調製した。チャージBを順番に添加している間、実施例Nについて53.7g;実施例Oについて73.59g;実施例Pについて60.31g;実施例Qについて57.31gおよび実施例Rについて66.14gの得られたプレエマルジョンを、各々、8000psiおよび70℃にてMicrofluidizer M110Tに通して15分間、再利用した。得られたマイクロエマルジョンを、マグネチックスターラー、コンデンサー、電気温度プローブおよび窒素注入口を備える4つ口丸底フラスコに移した。チャージCを使用してMicrofluidizerをリンスし、次いで、フラスコに添加した。マイクロエマルジョンの温度を23℃に調整した。チャージDを、混合物として急速に添加し、次いで、チャージEを、30分間にわたって混合物として添加した。チャージEを添加すると、温度は24℃〜26℃に上昇した。得られた微小分散液を、表4に示した量が、各々の実施例について維持されるまで減圧下で希釈した。最終生成物は、表4にまた示されるpHおよび固体の割合を有する黒っぽい液体であった。
【0188】
【化10】

【0189】
【化11】

(実施例S)
(実施例Aおよび実施例Bから形成されたフォトクロミック微粒子の水性分散物)
以下の材料を、以下に記載した順序で添加した。
【0190】
【化12】

【0191】
【化13】

オーバーヘッドスターラー、コンデンサー、電気温度プローブおよび空気注入口を備える4つ口丸底フラスコ中でチャージAを攪拌することによって、プレエマルジョンを調製した。プレエマルジョンを60℃に加熱して、チャージBを順番に添加している間、冷やさずに8000psiにてMicrofluidizer(登録商標)M110Tに通して15分間再利用した。冷却水をMicrofluidizer(登録商標)M110Tに付与して、得られたマイクロエマルジョンの温度を25℃に下げた。このマイクロエマルジョンを、オーバーヘッドスターラー、コンデンサー、電気温度プローブおよび窒素注入口を備える4つ口丸底フラスコに移した。チャージCを使用して、Microfluidizer(登録商標)をリンスし、次いで、フラスコに添加した。チャージDを、混合物として急速に添加し、次いで、チャージEを、30分間にわたって混合物として添加した。チャージEをすると、温度は25℃〜30℃に上昇した。得られた乳状の紫色の分散液は、pH6.58、48.3センチポイアズのBrookfield粘性(スピンドル#1、50rpm、25℃)および30.8%の割合の固体を有した。
【0192】
(実施例1〜実施例8)
(架橋剤としてメラミン樹脂を用いた実施例Kのフォトクロミック微粒子の水性分散物のコーティング組成物)
(パートA)
十分な水を実施例Kの材料に添加して、測定値23.2%の割合の固体を得た。得られた溶液を、約1時間攪拌した。
【0193】
(パートB)
表5の実施例1〜8の各々についてグラム量で示される材料を、以下に記載する順序で添加した。
【0194】
攪拌プレート上のビーカー中でマグネチック攪拌棒を用いてチャージAを攪拌している間、チャージBを調整可能なピペットを用いてそれに添加した。得られた混合物を2〜5分間攪拌した。チャージCを、チャージBと同じ様式で添加した。チャージDを添加して得られた混合物を時折、上部から底部を確実に混合するように2〜10回振盪して、20〜45分間攪拌した。攪拌を停止した後、得られた溶液を30〜60分間静止状態のままにして、形成された気泡を取り除いた。
【0195】
【化14】

(9)γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランであることが報告されており、Osi Specialty Chemicalsから入手可能である。
(10)NMP中の5重量%のTINUVIN−144であり、CA#63843−89−0を有すると報告されており、Ciba Specialty Chemicalsから入手可能である。第1の安定剤溶液を、TINUVIN−144が溶解するまで攪拌することによって調製した。
(11)Cytec,Inc.から入手可能なメトキシメチルメチロールメラミン樹脂であることが報告されている。
【0196】
(実施例9〜13)
(実施例9を除く全てにおいて架橋剤としてメラミン樹脂を用いた実施例Lまたは実施例Mのフォトクロミック微粒子の水性分散物のコーティング組成物)
以下の材料を、表6のグラムで示した量で用いたことを除いて、実施例1のパートBの手順に従った。
【0197】
【化15】

(12)フォトクロミック/安定剤を、3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,11,13−トリメチル−13−ヒドロキシ−3H,13H−インデノ[2,1−f]ナフト[1,2−b]ピランであるフォトクロミックF(1.75g)およびNMP(50.0g)中の第1の安定剤(10)における材料として記載されているTINUVIN−144(0.87g)を添加することによって調製した。この材料を攪拌しながら溶解して、溶液を45℃未満に温めて、NMP中に3.3重量%のフォトクロミックFおよび1.7重量%のTINUIVIN−144を有する溶液を得た。
【0198】
(実施例14〜実施例16)
(架橋剤としてポリカルボジイミド;ポリアジリデン;またはイソシアネート官能性オルガノシランを用いた実施例Kのフォトクロミック微粒子の水性分散物のコーティング組成物)
(パートA)
十分な水を実施例Kの材料に添加したことを除いて実施例1の手順に従って、31.4%の固体である本発明の固体の測定値を得た。
【0199】
(パートB)
以下の材料を表7にグラムで示した量で使用したことを除いて、実施例1の手順に従った。
【0200】
【化16】

(13)水中の40%固体として提供された多機能性ポリカルボジイミドであり、日本のNisshinbo Industries,Inc.によって製造されている。
(14)安定剤/接着促進剤を、NMP中の3.5重量%のTINUVIN−144および19.9重量%のA−187接着促進剤を溶解することによって調製した。
(15)NeoResins,Inc.から100%固体として提供されたポリアジリジン。
【0201】
(実施例17)
(架橋剤としてメラミン樹脂を用い、ウレタンジオールを含む、実施例N、実施例Oおよび実施例Pのフォトクロミック微粒子の水性分散物のコーティング組成物)
以下の材料を表8にグラムで示した量において使用したことを除いて、実施例1のパートBの手順に従った。
【0202】
【化17】

(16)Cytec,Inc.製の水中で85%活性として入手可能な高イミノメラミン樹脂であることが報告されている。
(17)水中で88%活性として提供され、King Industries,Inc.から入手可能なウレタンジオールであることが報告されている。
【0203】
(パート4)
以下の材料を、記載した順序でビーカーに添加して、約10分間混合し、実施例17を得た。
【0204】
【化18】

(実施例18〜19)
(架橋剤としてメラミン樹脂を使用し、ウレタンジオールを含む、実施例QまたはRのフォトクロミック微粒子の水性分散物のコーティング組成物)
以下の材料を表9において示した量(g)で使用した以外は、実施例1のパートBの手順に従った。
【0205】
【表9】

(実施例20〜22)
(市販のゾルゲルハードコート生成溶液を使用した、実施例Sのフォトクロミック微粒子の水性分散物のコーティング組成物)
以下の材料を表10に示した量(g)で使用した以外は、実施例1のパートBの手順に従った。
【0206】
【表10】

(18、19および20) HiGard(登録商標)1020コーティング溶液、HiGard(登録商標)1080コーティング溶液、およびHiGard(登録商標)1035コーティング溶液はそれぞれ、PPG Industries,Inc.から市販されているゾルゲルハードコート生成溶液である。
【0207】
(実施例23)
レンズの調製は、パートAに記載する;そのレンズのコーティングは、パートBに記載する;コーティングされたレンズのFischer微小硬さ試験(Microhardness Testing)は、パートCに記載する;そしてそのコーティングされたレンズのフォトクロミック性能試験は、パートDに記載されている。
【0208】
(パートA)
76mmの直径を有する、PDQ(登録商標)コーティングされたGentex(登録商標)ポリカーボネート平面(plano)レンズを、供給されたままで使用したか、あるいは食器洗い界面活性剤および水で洗浄し、脱イオン水でリンスし、そして乾燥させた。実施例1〜13のレンズを、供給されたままで使用し、そして流速100ミリリットル(mL)/分の酸素で、100ワットの電力で1分間、酸素プラズマで処理した。実施例14〜22の清浄レンズを、イオン化空気のバーストで処理して、塵粒を全て除去し、各レンズをコロナ源の下約1インチ(2.54cm)に置き、約200rpmで回転させ、約3〜4秒処理することによって、3DT MultiDyne 1システムにおけるコロナ処理に供した。
【0209】
(パートB)
パートAにおいて調製されたレンズを、スピンコーティングプロセスを介して実施例1〜22の溶液でコーティングした。各実施例の溶液約1〜2mLを、レンズ上に施し、表11に列挙した速度および時間でそのレンズを回転させた。実施例1〜19のコーティングされたレンズを、以下の硬化サイクルによって強制空気オーブンにおいて硬化した:80℃で20分間、5分間にわたって120℃に上げ、120℃で1時間維持し、室温まで冷却する。実施例20〜22のコーティングされたレンズを、60℃で20分間、強制空気オーブンにおいて硬化し、次いで120℃で3時間硬化した。
【0210】
【表11−1】

【0211】
【表11−2】

は、材料のいくらかを回転の前に施し、そしていくらかをレンズの回転の間の1.0秒までに施したことを示す。
【0212】
(パートC)
パートBにおいて調製したコーティングされたレンズを、Fischer Technology,Inc.から入手可能なFischerscope HCV,Model H−100を使用する微小硬さ試験に供した。微小硬さは、ニュートン/mmで測定する。この測定は、そのレンズを約48℃の相対湿度、21〜23℃の温度に少なくとも12時間の条件においた後に行った。各レンズを、2〜5回測定し、得られたデータを平均した。硬さの測定は、15秒間の100ニュートンの負荷の後の2ミクロンの貫通深さにおける硬さとして行った。結果を表11に列挙する。
【0213】
(パートD)
パートBにおいて調製されたコーティングされたレンズを、VARIAN CARY 3 UV−可視スペクトロメータまたは匹敵する機器において、紫外線吸収についてスクリーニングした。390nmにおいて匹敵するUV吸収を有するレンズを、光学ベンチにおいてフォトクロミック応答について試験した。光学ベンチにおける応答試験の前に、上記コーティングされたレンズを、上記フォトクロミック材料を予め活性化するために、光源から14cmの距離において10分間、365nmの紫外光にそのレンズを曝露することによって、調整した。サンプルにおけるUVA照射量を、Licor Model Li−1800分光放射計で測定し、1平方メートル当たり22.2ワットであることを見出した。次いで、サンプルにおけるフォトクロミック材料を退色または不活性化させるために、そのサンプルを10分間、ハロゲンランプ(500W、120V)下に、そのランプから約36cmの距離に置いた。そのサンプルにおける照度を、Licor分光放射計で測定し、21.9Kluxであることを見出した。次いで、このサンプルを、冷却して試験の前に基底状態まで消失させ続けるために、少なくとも1時間暗環境内に保った。
【0214】
フォトクロミック応答を測定するのに使用した光学ベンチを、Oriel Model
#66011 300−ワットキセノンアークランプ、Oriel Model 71445コンピューター制御されたシャッター、短い波長の照射を除去するためのSchott 3mm KG−2帯域通過フィルター、キセノンランプからの光を減弱するためのコーティングされた融合シリカ中性密度(neutral density)フィルター、光線を平行にするための融合シリカ集光レンズ、およびサンプルの温度を維持するための石英ウォーターセル(water cell)/サンプルホルダー(ここに試験されるサンプルが挿入される)に取り付ける。そのウォーターセルにおける温度を、揚水水循環システムで制御し、ここで水は、冷却ユニットのレザバ内に配置された銅製のコイルを通過する。試験サンプルを保持するために使用されるウォーターセルは、活性化またはモニタリング光線のスペクトルの変化を排除するために、前面および後面上に融合シリカシートを含有した。そのウォーターセルを通る濾過された水を、フォトクロミック応答試験のために72°F±2°に維持した。Oriel Photofeedbackユニット、モデル68850を使用して、サンプルの活性化の間、キセノンアークランプの強さを制御した。
【0215】
Ocean Optics LS−1タングステンハロゲン光源を、フォトクロミック応答測定のためのモニタリング光源として使用した。光ファイバーケーブル中に集中された光を平行にし、上記ウォーターセルにおいて、サンプルの中心を垂直に通した。そのサンプルを通した後、光を、2インチの積分球に再び集中し、光ファイバーケーブルによってOcean Optics S2000スペクトロフォトメータに送った。Ocean
Optics OOIBase 32ソフトウェアおよびPPG特許ソフトウェアを、応答を測定し、そして光学ベンチの操作を制御するために使用した。
【0216】
上記光学ベンチ上での上記フォトクロミックサンプルの応答試験のための照射量は、モデルSED033検出計、Bフィルターおよび拡散器を備える検出システムと共に、International Light Research RadiometerモデルIL−1700を使用して、そのサンプルにおいて確立した。1平方メートルのUVA当たりのワットを示す値を表示するために、その放射計の出力表示をLicor 1800−02 Optical Calibration Calibratorに対して補正(係数値設定(factor values set))した。応答試験のためのサンプル点における照射量を、1平方メートルのUVA当たり6.7ワットで、約18Kluxの照度を有するように設定した。上記試験サンプルを、モニタリング光に対して垂直にしながら、垂線から31°で活性化光に曝露した。
【0217】
サンプルが飽和密度に達するまで、そのサンプルを15または30分間、72°Fに制御したウォーターセルにおいて活性化した。その時点で、活性化光線のためのシャッターを閉じた。そのサンプルを、最大約30分間、室内照明条件下で退色する間モニタリングを続けた。サンプルが光学ベンチ上で退色している間に、退色半減期(T 1/2)を各サンプルについて決定した。退色の第一の半減期は、活性化光源の除去(例えば、シャッターを閉じることによる)の後に、レンズ上のコーティングにおけるフォトクロミック材料の活性化形態の飽和ΔODが、72°F(22℃)での活性化の15〜30分後に測定した最大ΔODの1/2に退色する時間間隔(秒)であった。退色の第二の半減期は、レンズ上のコーティングにおけるフォトクロミック材料の活性化形態のΔODが、上記のように測定した最大ΔODの1/4に退色する時間間隔(秒)であった。退色の第三の半減期は、レンズ上のコーティングにおけるフォトクロミック材料の活性化形態のΔODが、上記のように測定した最大ΔODの1/8に退色する時間間隔(秒)であった。各サンプルについて測定した種々の退色半減期は、表13に含まれる。
【0218】
【表12】

【0219】
【表13】

表12における結果は、本発明の実施例1〜22を使用して調製したコーティングのFischer微小硬さ値が10〜147(N/mm)に及ぶことを示す。
【0220】
表13において、実施例1〜22の結果は、コーティングのフォトクロミック性能値は、広範に変動させられ得ることを示した。
【0221】
本発明は、その特定の実施形態の具体的な詳細を参照して説明された。そのような詳細は、添付の特許請求の範囲に含まれるものを除いては、本発明の範囲についての限定とみなされることは意図されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【公開番号】特開2011−6704(P2011−6704A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207359(P2010−207359)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【分割の表示】特願2007−521454(P2007−521454)の分割
【原出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(504175051)トランジションズ オプティカル, インコーポレイテッド (65)
【Fターム(参考)】