説明

光拡散フィルム

【課題】未延伸フィルムであって耐熱性、平面性および透明性に優れた光拡散フィルム用基材ならびに光拡散層から構成される光拡散フィルムを提供する。
【解決手段】ジオール単位中の1〜80モル%が環状アセタール骨格を有するジオール単位とジカルボン酸単位で構成されたポリエステル樹脂からなるフィルム基材ならびに拡散ビーズおよびバインダー樹脂からなる光拡散層で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光線を均一に拡散する光拡散フィルムに関するものである。さらに詳しくは、本発明は、特に液晶表示装置のバックライトに用いられる光源の光を均一に拡散するための光拡散フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエチレンテレフタレート延伸フィルム(以下、PET延伸フィルム)は、その優れた機械的強度、耐熱性および高温での寸法安定性を生かし、液晶表示ディスプレイの光拡散フィルムの基材として用いられている。
【0003】
しかしながら、近年、液晶表示板のコントラストの向上や大型化のために、光源であるバックライト光源の光量アップが必要となっているが、従来のPETフィルムは、延伸させて、耐熱性を向上させるも、使用中に温度が上昇し、その耐熱性の不足のため、光量アップができないという問題がある。ポリイミドとポリエチレンテレフタレートからなる原反フィルムを2軸延伸させて耐熱特性を向上させた光拡散板用フィルムが開示されている(特許文献1参照。)。しかしながら、延伸のコストは従来のPET延伸フィルムと同様に発生している。
【特許文献1】特開2002−341114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、未延伸フィルムであって耐熱性、平面性および透明性に優れた光拡散フィルム用基材ならびに光拡散層から構成される光拡散フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意研究した結果、特定のフィルム基材ならびに光拡散層から構成される光拡散フィルムであることにより上記課題を解決できる光拡散フィルム用基材ならびに光拡散層から構成される光拡散フィルムを得ることができることを見出した。
すなわち本発明は、ジオール単位中の1〜80モル%が環状アセタール骨格を有するジオール単位とジカルボン酸単位で構成されたポリエステル樹脂からなるフィルム基材ならびに拡散ビーズおよびバインダー樹脂からなる光拡散層から構成される光拡散フィルムに関するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のポリエステル樹脂からなる光拡散フィルム用フィルム基材は、溶融Tダイ押出法によって製造され、その生産スピードが格段に速く、安価に生産することが可能であり、未延伸フィルムにおいても、その耐熱性が著しく優れているので、性能と生産性を同時に満足する効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、ジオール単位中の1〜80モル%が環状アセタール骨格を有するジオール単位とジカルボン酸単位で構成されたポリエステル樹脂からなるフィルム基材ならびに光を拡散させる拡散ビーズおよび該拡散ビーズを固定するバインダー樹脂からなる光拡散層から構成される光拡散フィルムである。
本発明に用いるポリエステル樹脂中の環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合は1〜80モル%であることが好ましい。環状アセタール骨格を有するジオール単位を1モル%以上含むことにより、ポリエステル樹脂の結晶性の低下とガラス転移温度の上昇が同時に達成され、当該樹脂から得られるポリエステルフィルムは透明性、耐熱性が向上する。加えて当該ポリエステルフィルムは切断や打ち抜きなどの加工時にヒゲの発生が抑制される等加工性が向上し、更には溶融押出し時の厚み斑の低減等、光学的性能の向上がなされる。一方、ポリエステル樹脂中の環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合が80モル%を超えるとポリエステル樹脂の結晶性が増加し、得られるポリエステルフィルムの透明性が低下する事がある。従って、環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合は、ポリエステルフィルムの耐熱性、透明性、加工性、光学的性能の面から1〜80モル%とするのが好ましく、更には1〜60モル%、より好ましくは5〜60モル%、特には15〜60モル%が好ましい。
【0008】
本発明に使用するポリエステル樹脂のジオール構成単位中の環状アセタール骨格を有するジオール単位は一般式(1):
【化3】


または一般式(2):
【化4】


で表される化合物に由来する単位が好ましい。一般式(1)と(2)において、RおよびRはそれぞれ独立して、炭素数が1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数が3〜10の脂環式炭化水素基、及び炭素数が6〜10の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる炭化水素基を表す。RおよびRは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、又はこれらの構造異性体が好ましい。これらの構造異性体としては、例えば、イソプロピレン基、イソブチレン基が例示される。Rは炭素数が1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数が3〜10の脂環式炭化水素基、及び炭素数が6〜10の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる炭化水素基を表す。Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、又はこれらの構造異性体が好ましい。これらの構造異性体としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基が例示される。一般式(1)及び(2)の化合物としては、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサン等が特に好ましい。
【0009】
また、環状アセタール骨格を有するジオール単位以外のジオール構成単位としては、特に制限はされないが、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール類;1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,3−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,4−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,5−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,6−デカヒドロナフタレンジメタノール、2,7−デカヒドロナフタレンジメタノール、テトラリンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロドデカンジメタノール等の脂環式ジオール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテル化合物類;4,4’−(1−メチルエチリデン)ビスフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール(ビスフェノールZ)、4,4’−スルホニルビスフェノール(ビスフェノールS)等のビスフェノール類;前記ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物;ヒドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルベンゾフェノン等の芳香族ジヒドロキシ化合物;及び前記芳香族ジヒドロキシ化合物のアルキレンオキシド付加物等のジオール単位が例示できる。ポリエステル樹脂の機械強度、耐熱性、及びジオールの入手の容易さを考慮するとエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールのジオール単位が好ましく、エチレングリコール単位が特に好ましい。
【0010】
本発明に用いるポリエステル樹脂のジカルボン酸構成単位としては、特に制限はされないが、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸、ペンタシクロドデカンジカルボン酸、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−カルボキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、5−カルボキシ−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−カルボキシエチル)−1,3−ジオキサン、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸単位;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2−メチルテレフタル酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸に由来する単位が例示できる。ポリエステル樹脂の機械強度、耐熱性を考慮すると芳香族ジカルボン酸に由来する単位が好ましく、ジカルボン酸の入手の容易さを考慮するとテレフタル酸、イソフタル酸、および2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する単位が特に好ましい。なお、ポリエステル樹脂のジカルボン酸構成単位は1種類から構成されても、2種類以上から構成されても良い。
【0011】
ポリエステル樹脂には、溶融粘弾性や分子量などを調整するために、本発明の目的を損なわない範囲でブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコールなどのモノアルコールに由来する単位やトリメチロールプロパン、グリセリン、1,3,5−ペンタントリオール、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールに由来する単位、安息香酸、プロピオン酸、酪酸などのモノカルボン酸に由来する単位、トリメリット酸、ピロメリット酸など多価カルボン酸に由来する単位、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、ヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸に由来する単位を含んでもよい。
【0012】
本発明に用いるポリエステル樹脂で特に成形性、耐熱性、機械的性能などを考慮すると環状アセタール骨格を有するジオール単位が3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン単位であり、環状アセタール骨格を有するジオール単位以外のジオール構成単位がエチレングリコール単位であり、ジカルボン酸構成単位がテレフタル酸単位、イソフタル酸単位、および2,6−ナフタレンジカルボン酸単位から選ばれる1種類以上のジカルボン酸単位であることが好ましい。ジカルボン酸構成単位が2,6−ナフタレンジカルボン酸単位である場合、特に容易にポリエステル樹脂の耐熱性、機械的性能が向上する。
【0013】
本発明に用いるポリエステル樹脂の極限粘度は成形方法や用途に応じて適宜選択することができる。本発明に用いるポリエステル樹脂ではフェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの質量比6:4の混合溶媒を用いた25℃での測定値で0.5〜1.5dl/gの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.2dl/gであり、更に好ましくは0.6〜1.0dl/gである。極限粘度がこの範囲にある場合、本発明に用いるポリエステル樹脂は成形性及び機械的性能のバランスに優れる。
【0014】
本発明に用いるポリエステル樹脂のガラス転移温度は用途に応じて適宜選択することができるが、85℃以上であることが好ましく、より好ましくは90℃以上、特に好ましくは94℃以上である。ガラス転移温度が上記範囲にある場合、本発明に用いるポリエステルフィルム基材は耐熱性に優れる。
【0015】
本発明に用いるポリエステル樹脂を製造する方法は特に制限はなく、従来公知のポリエステルの製造方法を適用することができる。例えばエステル交換法、直接エステル化法等の溶融重合法、又は溶液重合法等を挙げることができる。直接エステル化法においては、ジカルボン酸を環状アセタール骨格を有しないジオールでエステル化した後、低酸価化してから環状アセタール骨格を有するジオールを反応させる事が必要な場合もある。製造時に用いるエステル交換触媒、エステル化触媒、重縮合触媒等の各種触媒、エーテル化防止剤、熱安定剤、光安定剤等の各種安定剤、重合調整剤等も従来既知のものを用いることができ、これらは反応速度やポリエステル樹脂の色調、安全性、熱安定性、耐候性、自身の溶出性などに応じて適宜選択される。
【0016】
本発明に用いるポリエステル樹脂には、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、増量剤、艶消し剤、乾燥調節剤、帯電防止剤、沈降防止剤、界面活性剤、流れ改良剤、乾燥油、ワックス類、フィラー、着色剤、補強剤、表面平滑剤、レベリング剤、硬化反応促進剤、増粘剤などの各種添加剤、成形助剤を添加することができる。また、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、ポリイミド樹脂、AS樹脂、環状アセタール骨格を有しないポリエステル樹脂等の樹脂、又はこれらのオリゴマーを添加することもできる。これらの添加剤や樹脂、オリゴマーは、環状アセタール骨格を有するポリエステル樹脂、あるいはブレンドする環状アセタール骨格を有しないポリエステル樹脂やポリカーボネート樹脂の製造段階で添加しても良いし、製造後に添加しても良い。また、成形時に添加しても良い。
【0017】
次いで、本発明に用いるポリエステル樹脂からなるフィルム基材について述べる。フィルム基材を製造する方法は、上記ポリエステル樹脂を用いた溶融押出法、流延法などが挙げられるが、経済性とフィルムの性能とのバランスから溶融押出法が好ましい。
【0018】
溶融押出法について更に詳述する。本発明に用いるフィルム基材は従来公知の方法を用いて製膜することができる。溶融押出法としては、Tダイ押出法、インフレーション法など挙げられるが、厚みが安定したフィルム基材を得るという点からはTダイ押出法が望ましい。上記ポリエステル樹脂を溶融させる装置としては一般的に用いられる押出機を使用すればよく、単軸押出機でも多軸押出機でもよい。押出機は一つ以上のベント有していても良く、ベントを減圧にして溶融している樹脂から水分や低分子物質などを除去してもよい。また、押出機の先端あるいは下流側には必要に応じて金網フィルターや焼結フィルター、ギヤポンプを設けても良い。ダイは、Tダイ、コートハンガーダイ、フィッシュテールダイ、スタックプレートダイなどを用いることができる。
【0019】
押出温度は200〜300℃であることが好ましく、より好ましくは210〜280℃、特に好ましくは220〜270℃である。押出温度が上記範囲にある場合、得られるフィルム基材の平滑性や透明性、色調、機械物性等のバランスに優れる。
【0020】
ダイから押出された溶融樹脂の冷却方法は従来公知の方法を用いることができる。一般的には冷却ドラムにて冷却することができる。本発明に使用するポリエステル樹脂は実質的に非晶性の樹脂であるため、冷却ドラムの温度は幅広く設定することが可能である。厚みが安定したフィルム基材を得るには冷却ドラムの温度はポリエステル樹脂のガラス転移温度の上下30℃とするのが好ましく、さらに好ましくはポリエステル樹脂のガラス転移温度の上下20℃、特に好ましくはポリエステル樹脂のガラス転移温度の上下10℃である。
【0021】
フィルム基材の厚みは要求仕様により任意に設定が可能である。通常用いられるフィルム基材の厚さは50〜150μmであるので、光を拡散する拡散ビーズの粒径1〜50μmとコーティングバインダーの厚み約10〜20μmを考慮すると、フィルム基材の厚みは40〜100μmにすることが望ましい。
【0022】
本発明に用いるフィルム基材の全光線透過率は85%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上である。また、ヘイズは2%以下であることが好ましく、より好ましくは1%以下である。ヘーズがこの値より大きいと、入射光がフィルム内部で拡散し出射光量が減少するため光線透過率が減少する。また、ヘーズは低い程よい。また、その全厚みが好ましくは35〜130μm、さらに好ましくは70〜125μmである。全厚みが35μmより薄いと光拡散板としたときに腰がなく取り扱いにくくなり好ましくない。また、全厚みが130μmよりも厚いと、厚みによる光の吸収量が増加し、光線透過率が下がるため好ましくない。これらの値が上記適正範囲にある場合、フィルム基材として使用するのに十分な性能となる。
【0023】
次に、本発明の光拡散フィルムの構成と製造方法について説明する。
図1に示すように、本発明の光拡散フィルムは、ポリエステル樹脂からなるフィルム基材ならびに拡散ビーズおよび該拡散ビーズを固定するバインダー樹脂から成る光拡散層から構成される。光拡散層は、拡散ビーズ等をバインダー樹脂中に分散させたものである。
拡散ビーズとしては、公知のもの、例えば、ガラス、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニール樹脂およびポリカーボネート樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一種からなる拡散ビーズが挙げられ、ビーズの平均粒径は、好ましくは1〜50μmである。拡散ビーズは、1種を使用してもよいし、2種以上を、例えばブレンドして併用してもよい。光拡散層における拡散ビーズ含有量は、光拡散層の20〜90重量%が良好であり、20重量%未満では光が均一に拡散されず、90重量%を超えると密着性が得られないため好ましくない。
光拡散層は、フィルム基材に塗付して設けることができるが、塗装にあたってはローラー塗り、ロールコーター、スプレー塗装、静電塗装などが適宜選択される。
本発明に用いる光拡散層の厚さは通常0.5μm〜50μm程度とし、好ましくは1μm〜20μm、さらに好ましくは1.5μm〜10μm、最も好ましくは2μm〜6μmにすると良い。
【0024】
光拡散層に用いるバインダー樹脂は、電離放射線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂および紫外線硬化型樹脂からなる群から選ばれた一種以上の樹脂からなり、飽和炭化水素またはポリエーテルを主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーであることがさらに好ましい。また、バインダー樹脂は架橋していることが好ましい。飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーは、エチレン性不飽和モノマーの重合反応により得ることが好ましい。架橋しているバインダー樹脂を得るためには、二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーを用いることが好ましい。
【0025】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの例には、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ジクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,3,5−シクロヘキサントリオールトリメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼンの誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミドが含まれる。これらのなかでも、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの5官能以上のアクリレートが、膜硬度、即ち耐傷性の観点で好ましい。ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物が市販されており、特に好ましく用いられる。
【0026】
これらの二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーは、各種の重合開始剤その他添加剤と共に溶剤に溶解、塗布、乾燥後、電離放射線または熱による重合反応により硬化することができる。
【0027】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりに、架橋性官能基を有するエチレン性不飽和モノマーを用い、架橋性官能基の反応により、架橋構造をバインダー樹脂に導入してもよい。二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーが架橋性官能基を有していてもよい。架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基が例示できる。架橋性官能基として、ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す架橋性官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。これら架橋性官能基を有するバインダー樹脂は塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。エチレン性不飽和モノマーを用い、ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステル、ウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドを、架橋構造を導入するためのモノマーとして混合して利用してもよい。
【0028】
バインダー樹脂は、バインダー樹脂自体の屈折率を高めるために、上記バインダポリマーに加えて、高屈折率を有するモノマーが共重合したポリマーおよび/または高屈折率を有する金属酸化物超微粒子から形成される。高屈折率を有するモノマーの例として、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4'−メトキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。高屈折率を有する金属酸化物超微粒子の例には、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも一つの酸化物からなる粒径100nm以下、好ましくは50nm以下の微粒子を含有することが好ましい。ジルコニウム、チタン、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも一つの酸化物の例としては、ZrO2 、TiO2 、Al2 O3、In2 O3 、ZnO、SnO2 、Sb2 O3 、ITO等が挙げられる。これらの中でも、特にZrO2 が好ましく用いられる。金属酸化物超微粒子の添加量は、バインダー樹脂の全質量の10〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%であると更に好ましい。
【0029】
上記のようなバインダー樹脂に用いるモノマーの硬化方法としては、電子線又は紫外線の照射が挙げられる。
【0030】
例えば、電子線硬化の場合には、コックロフワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される50〜1000KeV、好ましくは100〜300KeVのエネルギーを有する電子線等が使用され、紫外線硬化の場合には超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等が利用できる。
次に、上記した様にして得られた本発明の光拡散フィルムの性能について述べる。本発明の光拡散フィルムは高温での寸法安定性が良好である。従って、液晶表示措置のバックライトを現行の蛍光管からLEDに置き換えても、その発生熱による寸法変化が非常に小さい光拡散フィルムを与える。
以上は、ポリエステル樹脂からなるフィルム基材ならびに拡散ビーズおよび該拡散ビーズを固定するバインダー樹脂から成る光拡散層からなる構成であるが、フィルム基材の少なくともどちらか一方に、マット処理して光拡散フィルムを製造することも可能である。また、溶融Tダイ押出する際に、ポリエステル樹脂とアクリルビーズを練り込み分散させて押出することで光拡散フィルムを製造することもできる。
【実施例】
【0031】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によりその範囲を限定されるものではない。
【0032】
本実施例で使用したポリエステル樹脂およびフィルム基材の評価方法は以下の通りである。
<ポリエステル樹脂の評価方法>
(1)環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合
ポリエステル樹脂中の環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合はH−NMR測定にて算出した。測定装置は日本電子(株)製JNM−AL400を用い、400MHzで測定した。溶媒には重クロロホルムを用いた。
(2)ガラス転移温度
ポリエステル樹脂のガラス転移温度は島津製作所製DSC/TA−50WSを使用し、ポリエステル約10mgをアルミニウム製非密封容器に入れ、窒素ガス(30ml/min)気流中、昇温速度20℃/minで280℃まで加熱、溶融したものを急冷して測定用試料とした。該試料を同条件で測定し、DSC曲線の転移前後における基線の差の1/2だけ変化した温度をガラス転移温度とした。
(3)極限粘度
極限粘度(IVと略す)を測定する試料はポリエステル樹脂0.5gをフェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンの混合溶媒(質量比=6:4)120gに加熱溶解し、濾過後、25℃まで冷却して調製した。装置は(株)柴山科学機械製作所製、毛細管粘度計自動測定装置SS−300−L1を用い、温度25℃で測定を行った。
【0033】
<フィルム基材の評価方法>
(4)厚さ
ソニーマグネスケール(株)製、デジタルマイクロメーターM−30を用いて測定した。
(5)全光線透過率、ヘイズ
JIS−K−7105、ASTM D1003に準じて測定した。フィルムを48時間調湿後、23℃、相対湿度50%の雰囲気下で測定した。使用した測定装置は、日本電色工業社製の曇価測定装置(型式:COH−300A)である。
(6)寸法変化率
JIS−K7133に準じて測定した。約120×120mmに切り出した3枚のフィルム基材に、それぞれ100×100mmの正方形を書き、所定温度の熱風乾燥機内に30分間入れ、押し出し方向、および押し出し方向と直角の方向の寸法変化率を次式により算出し、3つの試験片の平均値をそれぞれの方向の寸法変化率とした。なお、表中押し出し方向をMD方向、押し出し方向と直角の方向をTD方向と記載する。
寸法変化率(%)={(La−Lb)/La}×100
La:熱風乾燥機に入れる前の線の間隔(100mm)
Lb:熱風乾燥機に入れた後の線の間隔
【0034】
<実施例1〜8>
<ポリエステル樹脂の製造>
充填塔式精留塔、分縮器、全縮器、コールドトラップ、撹拌機、加熱装置、窒素導入管を備えた0.15立方メートルのポリエステル製造装置に表1、2に記載の原料モノマーを仕込み、ジカルボン酸成分に対し酢酸マンガン四水和物0.03モル%の存在下、窒素雰囲気下で215℃迄昇温してエステル交換反応を行った。ジカルボン酸成分の反応転化率を90%以上とした後、ジカルボン酸成分に対して、酸化アンチモン(III)0.02モル%とリン酸トリメチル0.06モル%を加え、昇温と減圧を徐々に行い、最終的に270℃、0.1kPa以下で重縮合を行った。適度な溶融粘度になった時点で反応を終了し、ポリエステル樹脂を製造した。評価結果を表1、2に示す。
尚、表中の略記の意味は下記の通りである。
DMT:ジメチルテレフタレート
NDCM:2,6−ジメチルナフタレート
DMI:ジメチルイソフタレート
EG:エチレングリコール
SPG:3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン
【0035】
〔フィルム基材の製造〕
ポリエステル樹脂を真空ベントと幅550mmコートハンガーダイの付いたスクリュー径50mmφの単軸押出機を用い、シリンダー温度を220〜240℃、ダイ温度240℃、吐出速度30kg/hで溶融押出を行った。押出した溶融樹脂はTg−10℃に設定した1本目と60℃に設定した2本目のロールで冷却し、12m/分で引き取り、厚み80μm、幅長さ480mmのフィルム基材を製造した。評価結果を表1、2に示す。
【0036】
〔光拡散フィルムの製造〕
光拡散層を構成するバインダー樹脂として紫外線硬化型樹脂(日本化薬製DPHA、屈折率1.51)66重量%、硬化開始剤(チバガイギー社製、イルガキュアー184)4重量%、拡散ビーズとしてアクリルビーズ(積水化成品工業MBX-12、平均粒子径12μm、屈折率1.49)30重量%とを混合してメチルエチルケトン/メチルイソブチルケトン(3/7質量比)により固形分24%になるように調整したものを、製造例1で製造したフィルム基材上に、乾燥膜厚が6.0μmになるように塗工、溶剤乾燥後、160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2 、積算照射量300mJ/cm2 の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、光拡散フイルムを作製した。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の光拡散フィルムの構成例

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジオール単位中の1〜80モル%が環状アセタール骨格を有するジオール単位とジカルボン酸単位で構成されたポリエステル樹脂からなるフィルム基材、ならびに拡散ビーズおよびバインダー樹脂からなる光拡散層から構成される光拡散フィルム。
【請求項2】
環状アセタール骨格を有するジオール単位が一般式(1):
【化1】


(式中、RおよびRはそれぞれ独立して、炭素数が1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数が3〜10の脂環式炭化水素基及び炭素数が6〜10の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる炭化水素基を表す。)
または一般式(2):
【化2】


(式中、Rは前記と同様であり、Rは炭素数が1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数が3〜10の脂環式炭化水素基及び炭素数が6〜10の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる炭化水素基を表す。)
で表されるジオールに由来するジオール単位である請求項1記載の光拡散フィルム。
【請求項3】
環状アセタール骨格を有するジオール単位が3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、または5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサンに由来するジオール単位である請求項2記載の光拡散フィルム。
【請求項4】
環状アセタール骨格を有するジオール単位以外のジオール単位が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールから選ばれる1種以上のジオールに由来する請求項1〜3のいずれかに記載の光拡散フィルム。
【請求項5】
ジカルボン酸単位が、テレフタル酸、イソフタル酸、および2,6−ナフタレンジカルボン酸から選ばれる1種以上のジカルボン酸に由来する請求項1〜4のいずれかに記載の光拡散フィルム。
【請求項6】
前記バインダー樹脂が、電離放射線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂および紫外線硬化型樹脂からなる群から選ばれた一種以上の樹脂からなる請求項1〜5のいずれかに記載の光拡散フィルム。
【請求項7】
前記拡散ビーズが、ガラス、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニール樹脂およびポリカーボネート樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一種からなる請求項1〜6のいずれかに記載の光拡散フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2007−171912(P2007−171912A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−208390(P2006−208390)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】