説明

光拡散層用塗布組成物、反射防止フィルム及びその製造方法、並びに反射防止フィルムを用いた偏光板及び画像表示装置

【課題】 反射防止性その他の光学性能に優れた反射防止フィルム、およびその反射防止フィルムを安定に提供するための製造方法および塗布組成物を得ること。また、このようなフィルムを用いて反射防止処理がされている偏光板、画像表示装置を提供すること。
【解決手段】 透明支持体上に塗布組成物から形成される光拡散層を有する反射防止フィルムにおいて、該塗布組成物が、樹脂粒子と、該樹脂粒子とのI/O値の差が1.0以上である有機溶媒とを含有することを特徴とする反射防止フィルム、その製造方法、並びにそれを用いた偏光板及び画像表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散層用塗布組成物、反射防止フィルム及びその製造方法、並びに反射防止フィルムを用いた偏光板及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置(LCD)は大画面化が進み、反射防止フィルムを配置した液晶表示装置が増大している。反射防止フィルムは、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような様々な画像表示装置において、外光の反射や像の映り込みによるコントラスト低下を防止するために、ディスプレイの表面に配置される(例えば特許文献1参照)。
【0003】
反射防止フィルムに反射防止能を付与するための一手段として、光拡散層が設置されることがある。この層に粒子を含有させることで、効果の一つとして防眩性を発現させることができる。防眩性は反射防止フィルムの表面形状に大きく依存し、光拡散層に含有される樹脂粒子が表面凹凸を大きくすることで、反射光を散乱させ、像の映り込みを減らしている。樹脂粒子による防眩性はその機構の一つとして例えば、塗布から電離放射線硬化までの間に生じる粒子どうしの凝集性を制御することによって発現されている。このため凝集作用が強いと防眩性も強くなるのが一般的である。
【0004】
他方、このような、防眩性反射防止フィルムにおいて、視認性を良くするためにヘイズをできるだけ小さくすることが要求される。ヘイズを小さくするための方法として、例えば樹脂粒子の含有量を減らすことや、表面凹凸の形状を制御することが挙げられる。さらに、防眩性への寄与が小さいがヘイズには影響するような、層内部に埋没した粒子によって発生するヘイズを少なくすることも挙げられる。層内部で発生するヘイズを減らすための一つの方法として、樹脂粒子とバインダーの屈折率をできるだけ近づけることが行われる。
しかしながら反射防止フィルムの光拡散層に用いられるバインダーと樹脂粒子の屈折率を近づけると、通常その構造が類似する場合が多いためにバインダーと樹脂粒子の親和性が増し、反面、相対的に樹脂粒子どうしの凝集力が弱まって表面凹凸が小さくなるという問題があり、以前から対策が望まれていた。
【0005】
一方、液晶表示装置において、偏光板は不可欠な光学材料であり、一般に、偏光膜を2枚の保護フィルムが保護する構造を有している。これらの保護フィルムに反射防止機能やその他の光学的機能を付与することができれば、視認性の向上や表示装置の薄手化が可能となる。
【0006】
偏光板に用いる保護フィルムは、偏光膜と貼り合わせるうえで十分な密着性を有していることが必要である。偏光膜との密着性を改良する手法として、保護フィルムを鹸化処理して、保護フィルムの表面を親水化処理することが通常行われている。
【特許文献1】特開2004−170901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、反射防止性その他の光学性能に優れた反射防止フィルム、およびその反射防止フィルムを安定に提供するための製造方法および光拡散層用塗布組成物を得ることである。本発明の別の目的は、このようなフィルムを用いて反射防止処理がされている偏光板、画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、下記構成の反射防止フィルム、その製造方法、塗布組成物並びにその反射防止フィルムを用いた偏光板及び画像表示装置により達成された。
【0009】
本発明は、以下のとおりである。
1. 反射防止フィルムの光拡散層を形成するための光拡散層用塗布組成物であって、樹脂粒子と、該樹脂粒子とのI/O値の差が1.0以上である有機溶媒とを含有することを特徴とする光拡散層用塗布組成物。
2. 前記樹脂粒子とのI/O値の差が1.0未満である有機溶媒をさらに含有することを特徴とする上記1に記載の光拡散層用塗布組成物。
3. 前記樹脂粒子とのI/O値の差が1.0以上である有機溶媒のI/O値が1.0以上であることを特徴とする上記1又は2に記載の光拡散層用塗布組成物。
4. 前記樹脂粒子とのI/O値の差が1.0以上である有機溶媒が、その分子構造の中に水酸基を有することを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の光拡散層用塗布組成物。
5. 前記樹脂粒子とのI/O値の差が1.0以上である有機溶媒が、その分子構造の中に少なくとも2個の水酸基を有することを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の光拡散層用塗布組成物。
6. 前記樹脂粒子とのI/O値の差が1.0以上である有機溶媒が、その分子構造の中に、イオウ原子又は窒素原子を有することを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の光拡散層用塗布組成物。
7. 全有機溶媒量に対して、前記樹脂粒子とのI/O値の差が1.0以上である有機溶媒を3質量%〜40質量%の範囲で含むことを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の光拡散層用塗布組成物。
8. 前記樹脂粒子とのI/O値の差が1.0以上である有機溶媒の沸点が90℃〜250℃であることを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載の光拡散層用塗布組成物。
9. 前記樹脂粒子とのI/O値の差が1.0未満である有機溶媒の沸点が70℃〜150℃であることを特徴とする上記1〜8に記載の光拡散層用塗布組成物。
10. 前記樹脂粒子のI/O値が2.0以下であることを特徴とする上記1〜9のいずれかに記載の光拡散層用塗布組成物。
11. 透明支持体上に、上記1〜10のいずれかに記載の光拡散層用塗布組成物から形成される光拡散層を有する反射防止フィルム。
12. 前記樹脂粒子とのI/O値の差が1.0以上である有機溶媒を含有していることを特徴とする上記11に記載の反射防止フィルム。
13. 前記光拡散層にマトリックス形成用バインダーをさらに含み、該マトリックス形成用バインダーの屈折率が1.45〜1.90であり、かつ該マトリックス形成用バインダーと前記樹脂粒子の屈折率差が0〜0.30であることを特徴とする上記11又は12に記載の反射防止フィルム。
14. 前記光拡散層の膜厚が3μm〜10μmの範囲であり、かつ前記樹脂粒子の平均粒径が該光拡散層の膜厚に対して、30%〜100%の範囲であることを特徴とする上記11〜13に記載の反射防止フィルム。
15. 前記光拡散層の上に、光拡散層よりも屈折率が低い低屈折率層が設けられていることを特徴とする上記11〜14のいずれかに記載の反射防止フィルム。
16. 前記低屈折率層が中空シリカ微粒子を含有することを特徴とする上記15に記載の反射防止フィルム。
17. 前記低屈折率層が下記一般式(2)で表される含フッ素化合物の架橋又は重合反応により形成されたものであることを特徴とする上記11〜16のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【0010】
【化1】

【0011】
[一般式(2)中、L21は炭素数1〜10の連結基を表し、m1は0または1を表す。 Xは水素原子またはメチル基を表す。Aは任意のビニルモノマーの重合単位を表し、単一重合単位であっても複数の重合単位で構成されていてもよい。x、y、zはそれぞれの構成重合単位のモル%を表し、30≦x≦60、5≦y≦70、0≦z≦65を満たす値を表す。]
18. 前記透明支持体上のいずれかの層が、下記一般式(a)で表されるオルガノシラン化合物及びその誘導体の少なくともいずれかを含有することを特徴とする上記11〜17のいずれかに記載の反射防止フィルム。
一般式(a) (R10s−Si(Z)4-s
〔一般式(a)中、R10は置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表す。Zは水酸基または加水分解可能な基を表す。sは1〜3の整数を表す。〕
19. 透明支持体上いずれかの層を、塗布液をダイコート法により塗布することにより形成することを特徴とする上記11〜18のいずれかに記載の反射防止フィルムの製造方法。
20. 偏光膜と、該偏光膜の両側に設けられた保護フィルムを有する偏光板において、該保護フィルムの少なくとも一方が、上記11〜18のいずれかに記載の反射防止フィルムであることを特徴とする偏光板。
21. 上記11〜18のいずれかに記載の反射防止フィルム、または上記20に記載の偏光板が画像表示面に配置されていることを特徴とする画像表示装置。
22. 前記画像表示装置が、TN、STN、IPS、VA又はOCBモードの、透過型、反射型又は半透過型の液晶表示装置であることを特徴とする上記21に記載の画像表示装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る光拡散層用塗布組成物を用いて反射防止フィルムを形成することにより、反射防止やその他の諸光学性能に優れた反射防止フィルムが得られる。また本発明の製造方法によれば、該反射防止フィルムを安定に提供することができる。このようなフィルムによって反射防止処理がされている本発明の偏光板、画像表示装置は、視認性に優れた高品質の画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本明細書において、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「(数値I)〜(数値II)」という記載は「(数値I)以上(数値II)以下」の意味を表す。また、「(メタ)アクリロイル」との記載は、「アクリロイル及びメタクリロイルの少なくともいずれか」の意味を表す。「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリル酸」等も同様である。
【0014】
本発明の反射防止フィルムは、透明支持体上に光拡散層を有する。この光拡散層は、樹脂粒子と少なくとも1種の有機溶媒を含有する塗布組成物から形成され、塗布組成物には、樹脂粒子とのI/O値の差が1.0以上である有機溶媒が含まれることを特徴とする。
【0015】
本発明に係るI/O値とは、藤田 穆著「有機性:無機性値による有機概念」、甲田善生著「有機概念図」三共出版(1984年)等に記載の方法によって求めた、「無機性(I)/有機性(O)」値である。I/O値は、有機化合物の色々な物理化学的な性状を予測するための手段の一つとして用いられる。有機性は炭素数の大小の比較で、無機性は炭素同数の炭化水素の沸点の比較で大小が得られる。例えば、(−CH−)(実際はC)1個は有機性値20と決め、無機性は水酸基(−OH)が沸点へ及ぼす影響力から、その無機性値を100と決めたものである。この(−OH)の無機性値100を基準にして他の置換基(無機性基)の値を求めたものが「無機性基表」として示されている。
【0016】
<反射防止フィルム>
〔光拡散層〕
本実施形態に係る光拡散層は光学性能に影響を与える層であって、その塗布組成物は平均粒径が1〜8μmの樹脂粒子、マトリックス形成バインダー用モノマー類、及び有機溶媒を含有する。この有機溶媒としては、後述するように、少なくとも凝集促進性有機溶媒用い、好ましくは凝集促進性有機溶媒及び粒子親和性有機溶媒の2種類の有機溶媒を用いる。
さらに詳しくは、光拡散層を形成する塗布組成物は、電離放射線等で硬化されて形成される透光性ポリマーの原料となる主マトリックス形成バインダー用モノマー類、上記特定粒径の透光性樹脂粒子、及び上記凝集促進性有機溶媒及び粒子親和性有機溶媒を含有し、
必要に応じて、その他の高分子化合物、膜強度を強くするための添加剤、屈折率調節等のための無機微粒フィラー、塗布助剤等を含む。
【0017】
光拡散層の厚さは、通常0.5〜30μm程度で、好ましくは1〜15μm、さらに3〜10μmが好ましい。厚さが該範囲内であると、カール、ヘイズ値、高コスト等の欠点がなく、しかも防眩性と光拡散効果等の調整も容易である。また光拡散層の屈折率は、1.40〜2.00が好ましく、1.45〜1.90がより好ましい。
以下に、本実施形態に係る光散乱層の構成成分ついて説明する。
【0018】
[主バインダー]
光拡散層を形成する主たるマトリックス形成用バインダー(以下、単にバインダーともいう)としては、電離放射線等による硬化後に飽和炭化水素鎖又はポリエーテル鎖を主鎖として有する透光性ポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有する透光性ポリマーであることがさらに好ましい。また、硬化後の主バインダーポリマーは架橋構造を有することが好ましい。
【0019】
硬化後に飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーとしては、エチレン性不飽和モノマー(バインダー前駆体)の重合体が好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、且つ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。
【0020】
光拡散層を形成するためのバインダーポリマーに用いられる、2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル{例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,2,3トリオールトリメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート}、ビニルベンゼン及びその誘導体(例えば、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例えば、ジビニルスルホン)、(メタ)アクリルアミド(例えば、メチレンビスアクリルアミド)等が挙げられる。
【0021】
さらに、2個以上のエチレン性不飽和基を有する樹脂、例えば比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物などのオリゴマー又はプレポリマー等もモノマーとして使用できる。
以上のモノマーは2種以上併用してもよく、また、2個以上のエチレン性不飽和基を有する樹脂はバインダー全量に対して10〜70%含有することが好ましい。
【0022】
2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりに、またはそれに加えて、架橋性官能基を有するモノマーを用いてポリマー中に架橋性官能基を導入し、この架橋性官能基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。
【0023】
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基及び活性メチレン基が含まれる。また、ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステル及びウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果、反応性を示すものであってもよい。
これら架橋性官能基を有するバインダーポリマーは塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
【0024】
光散乱層を高屈折率にするには、モノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子等を含む高屈折率モノマーを用いることが好ましい。
高屈折率モノマーの具体例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4'−メトキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらのモノマーも2種以上併用してもよい。
【0025】
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル重合開始剤又は熱ラジカル重合開始剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。
光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−アルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類が挙げられる。アセトフェノン類の例には、2,2−エトキシアセトフェノン、p−メチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノン及び2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれる。ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−クロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン及びp−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドが含まれる。
【0026】
「最新UV硬化技術」(p.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の「イルガキュア(651,184,907)」等が好ましい例として挙げられる。
【0027】
光ラジカル重合開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
【0028】
光ラジカル重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトン及びチオキサントンが挙げられる。
【0029】
熱ラジカル重合開始剤としては、有機又は無機過酸化物、有機アゾ及びジアゾ化合物等を用いることができる。具体的には、有機過酸化物として過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシド、無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等、アゾ化合物として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(プロピオニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)等、ジアゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等が挙げられる。
【0030】
ポリエーテルを主鎖として有するポリマーは、多官能エポシキシ化合物の開環重合体が好ましい。多官能エポシキ化合物の開環重合は、光酸発生剤または熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。
【0031】
バインダーの屈折率は、マトリックス全体として、好ましくは1.40〜2.00であり、より好ましくは1.45〜1.90であり、更に好ましくは1.48〜1.85であり、特に好ましくは1.51〜1.80である。なお、バインダーの屈折率は、光拡散層の成分から樹脂粒子を除いて測定した値である。
【0032】
光拡散層のバインダーは、該層の塗布組成物の固形分量に対して20〜95質量%の範囲で添加することが好ましい。
【0033】
[樹脂粒子]
樹脂粒子は、ディスプレイ表面で反射する外光を散らして弱めたり、液晶表示装置の視野角(特に下方向視野角)を拡大したりして、観察方向の視角が変化してもコントラスト低下、黒白反転又は色相変化を起こりにくくする作用を有する。
樹脂粒子の具体例としては、例えば架橋ポリメチルメタアクリレート粒子、架橋メチルメタアクリレート−スチレン共重合体粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋メチルメタアクリレート−メチルアクリレート共重合粒子、架橋アクリレート−スチレン共重合粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。さらにはこれらの樹脂粒子の表面にフッ素原子、シリコン原子、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、スルホン酸基、燐酸基等を含む化合物を化学結合させた所謂表面修飾した粒子も好ましく挙げられる。なかでも架橋スチレン粒子、架橋ポリメチルメタアクリレート粒子、架橋メチルメタアクリレート−スチレン共重合体粒子等が好ましい。
【0034】
架橋性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の2官能以上の重合性基を有するモノマーが好ましく用いられる。
【0035】
樹脂粒子は、異なる2種以上の樹脂粒子を併用して用いてもよい。2種類以上の樹脂粒子を用いる場合には、複数種類の粒子の混合による屈折率制御を効果的に発揮するために、最も屈折率の高い樹脂粒子と最も屈折率の低い樹脂粒子との間の屈折率の差が0.02以上、0.10以下であることが好ましく、0.03以上、0.07以下であることが特に好ましい。また大きな粒子径の樹脂粒子で防眩性を付与し、小さな粒子径の樹脂粒子で別の光学特性を付与してもよい。例えば133ppi以上の高精細ディスプレイ用の反射防止フィルムで特に問題とされるギラツキ性と呼ばれるフィルム表面の凹凸(防眩性に寄与)による輝度のムラを改良することが可能である。
【0036】
本発明に係る樹脂粒子の製造法は、懸濁重合、乳化重合、ソープフリー乳化重合、分散重合、シード重合、多段重合法等のいずれの方法で製造されてもよい。これらの製造法は、例えば「高分子合成の実験法」(大津隆行、木下雅悦共著、化学同人社)130頁及び146頁から147頁の記載、「合成高分子」1巻、p.246〜290、同3巻、p.1〜108等に記載の方法、及び特許第2543503号明細書、同第3508304号明細書、同第2746275号明細書、同第3521560号明細書、同第3580320号明細書、特開平10−1561号公報、特開平7−2908号公報、特開平5−297506号公報、特開2002−145919号公報等に記載の方法を参考にすることができる。
【0037】
樹脂粒子のI/O値は0〜3.0が好ましく、0〜2.0がより好ましく、0.03〜1.5がさらに好ましい。樹脂粒子のI/O値を小さくすることにより、通常用いられる有機溶媒(例えば、後述する粒子親和性有機溶媒)とのI/O値が近くなり、分散安定性が良好で反射防止フィルムの製造が容易となる。また、単分散で屈折率が好ましく、廉価で粒子を入手しやすいという利点もある。
樹脂粒子のI/O値を算出するには、構成するモノマーの分子式よりI/O値を求めることができる。共重合体である場合は、各構成単位のI/O値にモル分率を乗じて加算することができる。
【0038】
樹脂粒子とバインダーである透光性樹脂との間の屈折率差は、フィルムの白濁が生じないこと、また光拡散層の種類によっては光拡散効果を得る観点から、0〜0.30であり、0.〜0.20であることが特に好ましい。
【0039】
樹脂粒子の透光性樹脂に対する添加量も、上記と同様な観点から、好ましい範囲が決められる。光拡散層における樹脂粒子の好ましい含有率は、光拡散層の全固形分中2〜40質量%であり、4〜25質量%であることが特に好ましい。
【0040】
樹脂粒子の塗布量は、形成される光拡散層中に含有される粒子量を勘案して、好ましくは10mg/m〜10000mg/m、より好ましくは50mg/m〜4000mg/m、最も好ましくは100mg/m〜1500mg/mの範囲である。
【0041】
樹脂粒子の粒径とこれを含有する光拡散層の膜厚との関係は、樹脂粒子の平均粒径が、一般に、光拡散層の膜厚の20〜110%であるが、30〜100%であることが好ましく、35〜80%がさらに好ましい。平均粒径がこの範囲であると画面の黒しまりに優れ、且つ防眩性にも優れる。
【0042】
樹脂粒子の平均粒径は、後述の微細無機フィラー粒子より大きい粒径であることが好ましく、例えば、平均粒径が1〜8μmの樹脂粒子を用いることができる。平均粒径がこの範囲内にあることで、防眩効果が発現し易くなり、またザラツキ感が生じることがない。
なお、樹脂粒子の平均粒径は、粒子分布から算出することができる。樹脂粒子の粒度分布はコールターカウンター法により測定することができる。
【0043】
樹脂粒子の形状は、真球又は不定形のいずれも使用できる。粒度分布はヘイズ値と拡散性の制御性、塗布面状の均質性から単分散性粒子が好ましい。例えば平均粒子径よりも20%以上粒子径が大きな粒子を粗大粒子と規定した場合、この粗大粒子の割合は全粒子数の1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.01%以下である。このような粒子径分布を持つ粒子は通常の合成反応後に、分級によって得られ、分級の回数を上げることやその程度を強くすることにより、より好ましい分布の粒子を得ることができる。
【0044】
[有機溶媒]
光拡散層用塗布組成物は、上記の樹脂粒子とのI/O値の差が1.0以上である有機溶媒(凝集促進性有機溶媒)を含有する。
この凝集促進性有機溶媒は、塗布組成物の主として塗布後の乾燥工程における、樹脂粒子の凝集挙動に影響を与える。この樹脂粒子の凝集の程度は光拡散効果に関係し、通常は凝集が強いほど光拡散効果が強くなる。製造工程中における樹脂粒子の凝集が発現するタイミングは、好ましくは塗布後の乾燥工程であり、さらにその中の後期であることが好ましい。一般に、乾燥工程の進行した状態においては樹脂粒子の凝集化と固定化が強くなり、凝集化の原因の一つである残留する有機溶媒と樹脂粒子との間の親和性は小さいほうが樹脂粒子どうしの凝集化傾向が強くなり、光拡散効果を強めるために好ましい。
【0045】
凝集促進性有機溶媒と樹脂粒子とのI/O値の差は、好ましくは1.3以上で、さらに好ましくは1.5以上である。差の上限は特にないが、好ましくは8.0以下である。
また、凝集促進性有機溶媒そのもののI/O値は、1.0以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2.0以上がさらに好ましい。
【0046】
この凝集促進性有機溶媒の具体例としては、例えばアルコール系では、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール、イソアミルアルコール等、
ケトン系では、ジアセトンアルコール等、
エステル系では、酢酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル等、
多価アルコールおよびその誘導体系では、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキシレングリコール、1,5−ペンタジオール、グリセリンモノアセテート、グリセリンエーテル類、1,2,6−ヘキサントリオール等、
脂肪酸系では、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、絡酸、イソ絡酸、イソ吉草酸、乳酸等、
窒素化合物系では、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、アセトニトリル等、
イオウ化合物系では、ジメチルスルホキシド等、が挙げられる。
【0047】
これらの具体的有機溶媒の中では、その分子構造の中に水酸基を有するもの(好ましくは2個以上の水酸基を有するもの)、イオウ原子または窒素原子を有するもの、又は、脂肪酸が好ましく、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、エチレングリコールモノアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,2,6−ヘキサントリオール、乳酸が好ましく、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、エチレングリコールモノアセテートがより好ましい。
凝集促進性有機溶媒は、2種以上併用してもよい。
【0048】
凝集促進性有機溶媒は、塗布組成物中の全有機溶媒に対して2質量%〜60質量%含有することが好ましく、3質量%〜40質量%含有することがより好ましく、5質量%〜30質量%含有することが最も好ましい。
【0049】
凝集促進性有機溶媒の沸点は、気化が遅いことにより塗布後の乾燥工程の後半に残留して粒子凝集化を促進しながら、反面、最終的には光拡散層中に残留しないために、沸点が90℃〜250℃の範囲にあることが好ましく、100℃〜220℃がより好ましく、110℃〜200℃が最も好ましい。
また、凝集促進性有機溶媒の沸点は、後述する粒子親和性有機溶媒より高いことが好ましい。
【0050】
なお、凝集促進性有機溶媒は、光拡散層または反射防止フィルムのいずれかの層中に残留溶媒として微量含有していてもよい。微量の残留溶媒は添加物の析出によるフィルムの白化を遅らせる効果がある。残留溶媒はガスクロマトグラフィーによって定量できる。残留溶媒は、0.01〜20000ppm含有するのが好ましく、0.03〜5000ppm含有するのがより好ましい。
【0051】
また、光散乱層を形成する塗布組成物は、上記の凝集促進性有機溶媒の他に、樹脂粒子とのI/O値の差が1.0未満である有機溶媒(粒子親和性有機溶媒)を併用することが好ましい。
この粒子親和性有機溶媒は、I/O値の差が1.0未満と比較的樹脂粒子に近いI/O値を有するため、樹脂粒子だけでなく、樹脂粒子の分散安定性やモノマー、高分子化合物、その他の添加剤等の溶解性を良好に保つことができ、樹脂粒子等の分散安定性を保つことができる。このため、有機溶媒としては、乾燥工程の初期に気化するものであることが好ましい。
【0052】
粒子親和性有機溶媒と樹脂粒子とのI/O値の差は、好ましくは0.8未満で、さらに好ましくは0.6未満である。
また、粒子親和性有機溶媒そのもののI/O値は、0〜2.0が好ましく、0〜1.5がより好ましい。
【0053】
このような粒子親和性有機溶媒としては、溶剤として当業界で広範に用いられる有機溶媒を用いることができる。
粒子親和性有機溶媒の具体例としては、例えばケトン系では、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン等、
アルコール系では、1−ペンタノール、n−ヘキサノール、メチルアミルアルコール等、
エーテル、アセタール系では、1,4ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルフラン、テトラヒドロピラン、ジエチルアセタール等、
エステル系では、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソアミル、酢酸n−アミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル等、
炭化水素系では、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、リグロイン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン、ジビニルベンゼン等、
ハロゲン炭化水素系では、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化エチレン、1,1,1−トリクロルエタン、1,1,2−トリクロルエタン、トリクロルエチレン、テトラクロルエチレン、1,1,1,2−テトラクロルエタン等が好ましい。
これらの中でメチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、1−ペンタノール等が特に好ましい。
粒子親和性有機溶媒は、2種以上使用してもよい。
【0054】
粒子親和性有機溶媒は、塗布組成物中の全有機溶媒に40質量%〜98質量%含有することが好ましく、60質量%〜97質量%含有することがより好ましく、70質量%〜95質量%含有することが最も好ましい。
【0055】
粒子親和性有機溶媒の沸点は、30℃〜210℃が好ましく、40℃〜190℃がより好ましく、70℃〜150℃がさらに好ましい。
なお、上述の凝集促進性有機溶媒に対して相対的に沸点の低い溶媒または蒸気圧の低い溶媒が好ましい。
【0056】
本発明に係る塗布組成物の有機溶媒は、凝集促進性有機溶媒と粒子親和性有機溶媒とを適宜混合して、2種以上用いることが好ましい。凝集促進性有機溶媒に加えて粒子親和性有機溶媒を併用することにより、添加剤類の溶解性や樹脂粒子等の分散安定性を向上させ、光散乱層の形成を容易にすることが可能となる。
【0057】
[高分子化合物]
本発明に係る光拡散層は、高分子化合物を含有してもよい。高分子化合物を添加することで、樹脂粒子の分散安定性(凝集性)に関わる塗布液の粘度調整をより優位に行うことができ、さらには、乾燥過程での固化物の極性を制御して樹脂粒子の凝集挙動を変えたり、乾燥過程での乾燥ムラを減じたりすることもでき、好ましい。
【0058】
高分子化合物は、塗布液に添加する時点で既に重合体を形成しているものを用いる。該高分子化合物としては、例えばセルロースエステル類(例えば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースナイトレート等)、ウレタンアクリレート類、ポリエステルアクリレート類、(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、メタクリル酸メチル/(メタ)アクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸メチル/(メタ)アクリル酸エチル共重合体、メタクリル酸メチル/(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体、メタクリル酸メチル/(メタ)アクリル酸共重合体、ポリメタクリル酸メチル等)、ポリスチレン等の樹脂が好ましく用いられる。
【0059】
高分子化合物は、塗布液の粘度増加効果の発現及び光拡散層の膜強度維持の観点から、光拡散層の全バインダーに対して、好ましくは3質量%〜40質量%、より好ましくは5質量%〜30質量%、さらに好ましくは8質量%〜25質量%の範囲で含有する。含有率が該下限値以上であれば塗布液の粘度増加効果が発現し、また該上限値以下であれば光拡散層の膜強度が低下するなどの不具合が生じない。
【0060】
また、高分子化合物の分子量は質量平均で0.3万〜40万が好ましく、0.5万〜30万がより好ましく、0.5万〜20万がさらに好ましい。分子量がこの範囲であると、塗布組成物の粘度増加効果が十分発現し、溶解時間が短時間であり、しかも不溶解物も少ない。
【0061】
[無機フィラー]
光拡散層には、層の屈折率を高めるため、前記の樹脂粒子に加えて、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、一次粒子の平均粒径が、一般に0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.06μm以下である微細な無機フィラーを含有することも好ましい。
【0062】
前述のように、光散乱層を高屈折率化することも好ましいが、高屈折率の樹脂粒子を用いた光拡散層では、この樹脂粒子との屈折率差を大きくするためにバインダーの屈折率を低くすることも好ましい。このために無機フィラーとして、シリカ微粒子、中空シリカ微粒子等を用いることができる。好ましい粒径は前記の高屈折率化微細無機フィラーと同じである。
【0063】
光拡散層に用いられる微細無機フィラーの具体例としては、TiO、ZrO、Al、In、ZnO、SnO、Sb、ITO(Snをドープした酸化インジウム)、SiO等が挙げられる。TiO及びZrOが高屈折率化の点で特に好ましい。該無機フィラーは表面をシランカップリング処理又はチタンカップリング処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
【0064】
これらの微細無機フィラーの添加量は、光拡散層の全質量の10〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜80質量%であり、特に好ましくは30〜75質量%である。
【0065】
なお、微細無機フィラーは、粒径が光の波長よりも十分短いために散乱が生じず、バインダーポリマーに該フィラーが分散した分散体は光学的に均一な物質の性質を有する。
【0066】
[オルガノシラン化合物]
次ぎに、本発明に係る反射防止フィルムの各層、特に光拡散層に、好ましく用いることができるオルガノシラン化合物について記載する。
皮膜の物理強度(耐擦傷性など)や、皮膜と皮膜に隣接する層の密着性を改良する観点から、透明支持体上にあるいずれかの塗設層のうちの少なくとも1層に、オルガノシラン化合物及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物を添加することが好ましい。
【0067】
オルガノシラン化合物及びその誘導体としては、下記一般式(a)で表される化合物及びその誘導体を用いることができる。好ましいものは、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アルコキシシリル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基を含有するオルガノシラン化合物であり、特に好ましいものはエポキシ基、重合性のアシルオキシ基{(メタ)アクリロイルなど}、重合性のアシルアミノ基(アクリルアミノ、メタクリルアミノなど)を含有するオルガノシラン化合物である。
一般式(a):(R10−Si(Z)4−s
【0068】
一般式(a)中、R10は、置換もしくは無置換のアルキル基又は、置換もしくは無置換のアリール基を表す。アルキル基としてはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル、s−ブチル、ヘキシル、デシル、ヘキサデシル等が挙げられる。アルキル基として好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは1〜6である。アリール基としてはフェニル、ナフチル等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。
【0069】
Zは水酸基又は加水分解可能な基を表す。例えば、アルコキシ基(炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましい。例えばメトキシ基、エトキシ基等が挙げられる)、ハロゲン原子(例えばCl、Br、I等)、及びR12COO(R12は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。例えばCHCOO、CCOO等が挙げられる)で表される基が挙げられ、好ましくはアルコキシ基であり、特に好ましくはメトキシ基又はエトキシ基である。
sは1〜3の整数を表す。好ましくは1又は2であり、特に好ましくは1である。
10又はZが複数存在するとき、複数のR10又はZはそれぞれ異なっていてもよい。
【0070】
10に含まれる置換基としては、特に制限はないが、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素等)、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基(メチル、エチル、i−プロピル、プロピル、t−ブチル等)、アリール基(フェニル、ナフチル等)、芳香族ヘテロ環基(フリル、ピラゾリル、ピリジル等)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、i−プロポキシ、ヘキシルオキシ等)、アリールオキシ基(フェノキシ等)、アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオ等)、アリールチオ基(フェニルチオ等)、アルケニル基(ビニル、1−プロペニル等)、アルコキシシリル基(トリメトキシシリル、トリエトキシシリル等)、アシルオキシ基(アセトキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル等)、カルバモイル基(カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−メチル−N−オクチルカルバモイル等)、アシルアミノ基(アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、アクリルアミノ、メタクリルアミノ等)等が挙げられ、これら置換基は更にこれらの置換基で置換されていてもよい。
【0071】
これらのうちで更に好ましくは水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アルコキシシリル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基である。特に、架橋又は重合性の官能基が好ましく、エポキシ基、重合性のアシルオキシ基{(メタ)アクリロイル}、重合性のアシルアミノ基(アクリルアミノ、メタクリルアミノ)が好ましい。 またこれら置換基は更に上記の置換基で置換されていてもよい。
【0072】
10が複数ある場合は、少なくとも1つが置換アルキル基又は置換アリール基であることが好ましい。一般式(a)で表されるオルガノシラン化合物及びその誘導体の中でも、下記一般式(1−1)で表されるビニル重合性の置換基を有するオルガノシラン化合物及びその誘導体から選択される少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0073】
【化2】

【0074】
一般式(1−1)において、R11は水素原子、メチル基、メトキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、フッ素原子、又は塩素原子を表す。アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。水素原子、メチル基、メトキシ基、メトキシカルボニル基、シアノ基、フッ素原子、及び塩素原子が好ましく、水素原子、メチル基、メトキシカルボニル基、フッ素原子、及び塩素原子が更に好ましく、水素原子及びメチル基が特に好ましい。
【0075】
11は単結合、*−COO−**、*−CONH−**、*−O−**、又は*−NH−CO−NH−**を表し、単結合、*−COO−**、*−CONH−**が好ましく、単結合、*−COO−**が更に好ましく、*−COO−**が特に好ましい。ここで、*は=C(R11)−に結合する位置を、**はL12に結合する位置を表す。
【0076】
12は2価の連結鎖を表す。具体的には、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、内部に連結基(例えば、エーテル、エステル、アミドなど)を有する置換もしくは無置換のアルキレン基、内部に連結基を有する置換もしくは無置換のアリーレン基が挙げられ、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、内部に連結基を有するアルキレン基が好ましく、無置換のアルキレン基、無置換のアリーレン基、内部にエーテル又はエステル連結基を有するアルキレン基が更に好ましく、無置換のアルキレン基、内部にエーテル又はエステル連結基を有するアルキレン基が特に好ましい。置換基は、ハロゲン、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アリール基等が挙げられ、これら置換基は更に置換されていてもよい。
【0077】
tは0又は1を表す。tとして好ましくは0である。
10は一般式(a)と同義であり、置換もしくは無置換のアルキル基、無置換のアリール基が好ましく、無置換のアルキル基、無置換のアリール基が更に好ましい。
Zは一般式(a)と同義であり、ハロゲン原子、水酸基、無置換のアルコキシ基が好ましく、塩素原子、水酸基、無置換の炭素数1〜6のアルコキシ基が更に好ましく、水酸基、炭素数1〜3のアルコキシ基が更に好ましく、メトキシ基が特に好ましい。Zが複数存在するとき、複数のZはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0078】
一般式(a)、一般式(1−1)の化合物、及びその誘導体は、2種類以上を併用してもよい。
以下に、一般式(a)、一般式(1−1)で表されるオルガノシラン化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0079】
【化3】

【0080】
【化4】

【0081】
これらのうち、(M−1)、(M−2)、及び(M−5)が特に好ましい。
【0082】
本発明において、一般式(a)、一般式(1−1)で表されるオルガノシラン化合物の誘導体とは、一般式(a)、一般式(1−1)で表されるオルガノシラン化合物の加水分解物、部分縮合物などを意味する。以下、本発明で用いるオルガノシラン化合物の好ましい誘導体(加水分解物及び部分縮合物)について説明する。
【0083】
オルガノシラン化合物の加水分解反応及び縮合反応は、一般に触媒の存在下で行われる。触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸類;シュウ酸、酢酸、ギ酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の有機酸類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基類;トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基類;トリイソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシジルコニウム等の金属アルコキシド類;Zr、Ti又はAlなどの金属を中心金属とする金属キレート化合物等が挙げられる。無機酸では塩酸、硫酸、有機酸では、水中での酸解離定数{pKa値(25℃)}が4.5以下のものが好ましく、塩酸、硫酸、水中での酸解離定数が3.0以下の有機酸がより好ましく、塩酸、硫酸、水中での酸解離定数が2.5以下の有機酸が更に好ましく、水中での酸解離定数が2.5以下の有機酸が更に好ましく、メタンスルホン酸、シュウ酸、フタル酸、マロン酸が更に好ましく、シュウ酸が特に好ましい。
【0084】
オルガノシラン化合物の加水分解・縮合反応は、無溶媒でも、溶媒中でも行うことができるが、成分を均一に混合するために有機溶媒を用いることが好ましく、例えばアルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類などが好適である。
【0085】
このうち、アルコール類としては、例えば1価アルコール又は2価アルコールを挙げることができ、このうち1価アルコールとしては炭素数1〜8の飽和脂肪族アルコールが好ましい。
【0086】
これらのアルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテルなどを挙げることができる。
【0087】
また、芳香族炭化水素類の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどを、エーテル類の具体例としては、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど、ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどを、エステル類の具体例としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸プロピレンなどを挙げることができる。
【0088】
これらの有機溶媒は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することもできる。該反応における固形分の濃度は、特に限定されるものではないが、通常1〜90質量%の範囲であり、好ましくは20〜70質量%の範囲である。
【0089】
オルガノシラン化合物の加水分解は、該オルガノシラン化合物の加水分解性基1モルに対して0.3〜2モル、好ましくは0.5〜1モルの水を添加し、上記溶媒の存在下又は不在下に、そして触媒の存在下に、25〜100℃で、撹拌することにより行われる。
【0090】
(金属キレート化合物)
本発明におけるオルガノシラン化合物の加水分解・縮合反応は、一般式R13OH(式中、R13は炭素数1〜10のアルキル基を示す)で表されるアルコールと、一般式R14COCHCOR15(式中、R14は炭素数1〜10のアルキル基、R15は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のアルコキシ基を示す)で表される化合物とを配位子とした、Zr、Ti及びAlから選ばれる金属を中心金属とする、少なくとも1種の金属キレート化合物の存在下で、25〜100℃で撹拌することにより行うことが好ましい。
【0091】
金属キレート化合物は、上記構成のものであれば特に制限なく好適に用いることができる。2種以上の金属キレート化合物を併用してもよい。
【0092】
本発明に用いられる金属キレート化合物は、一般式Zr(OR13p1(R14COCHCOR15p2、Ti(OR13q1(R14COCHCOR15q2、及びAl(OR13r1(R14COCHCOR15r2で表される化合物群から選ばれるものが好ましく、前記オルガノシラン化合物の加水分解物及び部分縮合物の縮合反応を促進する作用をなす。
【0093】
金属キレート化合物中のR13及びR14は、同一又は異なってもよく炭素数1〜10のアルキル基、具体的にはエチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、フェニル基などである。また、R15は、前記と同様の炭素数1〜10のアルキル基のほか、炭素数1〜10のアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基などである。また、金属キレート化合物中のp1、p2、q1、q2、r1及びr2は、それぞれ、p1+p2=4、q1+q2=4、r1+r2=3となる様に決定される整数を表す。
【0094】
これらの金属キレート化合物の具体例としては、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシトリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどのジルコニウムキレート化合物;ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトン)チタニウムなどのチタニウムキレート化合物;ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、ジイソプロポキシアセチルアセトナートアルミニウム、イソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどのアルミニウムキレート化合物などが挙げられる。
【0095】
これらの金属キレート化合物のうち好ましいものは、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムである。これらの金属キレート化合物は、1種単独で又は2種以上混合して使用することができる。また、これらの金属キレート化合物の部分加水分解物を使用することもできる。
【0096】
金属キレート化合物は、前記オルガノシラン化合物に対し、好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.1〜50質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%の割合で用いるのが、加水分解・縮合反応の反応速度、塗膜の耐久性の点で好ましい。
【0097】
本発明に係る反射防止フィルムの各層、特に光拡散層を形成するために用いられる塗布液には、上記オルガノシラン化合物及びその誘導体(加水分解物、部分縮合物)から選ばれる少なくとも1種の化合物、さらに必要に応じて添加される金属キレート化合物などと共に、β−ジケトン化合物及び/又はβ−ケトエステル化合物を添加することが好ましい。
【0098】
上記のβ−ジケトン化合物及びβ−ケトエステル化合物は、一般式R14COCHCOR15で表され、本発明においてはその少なくともいずれかが好ましく用いられる。組成物の安定性向上剤として作用するものである。すなわち、前記金属キレート化合物(ジルコニウム、チタニウム及びアルミニウム化合物)中の金属原子に配位することにより、これらの金属キレート化合物によるオルガノシラン化合物の誘導体(加水分解物、部分縮合物等)などの縮合反応を促進する作用を抑制し、得られる組成物の保存安定性を向上させる作用をなすものと考えられる。β−ジケトン化合物及びβ−ケトエステル化合物を構成するR14及びR15は、前記金属キレート化合物を構成するR14及びR15と同様である。
【0099】
このβ−ジケトン化合物及びβ−ケトエステル化合物の具体例としては、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸−i−プロピル、アセト酢酸−n−ブチル、アセト酢酸−s−ブチル、アセト酢酸−t−ブチル、2,4−ヘキサン−ジオン、2,4−ヘプタン−ジオン、3,5−ヘプタン−ジオン、2,4−オクタン−ジオン、2,4−ノナン−ジオン、5−メチルヘキサン−ジオンなどを挙げることができる。これらのうち、アセト酢酸エチル及びアセチルアセトンが好ましく、特にアセチルアセトンが好ましい。
【0100】
これらのβ−ジケトン化合物及びβ−ケトエステル化合物は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することもできる。本発明においてβ−ジケトン化合物及びβ−ケトエステル化合物から選ばれる化合物は、金属キレート化合物1モルに対し好ましくは2モル以上、より好ましくは3〜20モル用いられ、得られる組成物の保存安定性が向上する。
【0101】
前記オルガノシラン化合物及びその誘導体から選ばれる、少なくとも1種の化合物の添加量は、添加する層により適宜調整される。添加量は層の全固形分に対し、0.1〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜30質量%、さらに好ましくは3〜25質量%、特に好ましくは5〜20質量%である。
【0102】
オルガノシラン化合物は、前記光拡散層に好ましく用いることができるが、その他、例えば低屈折率層や最外層、例えば帯電防止層やハードコート層に好適に用いることができる。
【0103】
[光拡散層の形成方法]
光拡散層は、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル重合開始剤又は熱ラジカル重合開始剤、および樹脂粒子、必要に応じて無機フィラー、塗布助剤、その他の添加剤、少なくとも2種の有機溶媒等を含有する塗布液を調製し、該塗布液を透明支持体上に塗布後、電離放射線又は熱による重合反応により硬化して光拡散層を形成するのが好ましい。電離放射線硬化と熱硬化を合わせて行うことも好ましい。紫外線照射を行う場合、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等が利用できる。紫外線による硬化は、窒素パージ等で酸素濃度が4体積%以下、更に好ましくは2体積%以下、最も好ましくは0.5体積%以下で硬化することが好ましい。
【0104】
〔低屈折率層〕
低屈折率層は、通常、光学機能フィルムの好適な態様である反射防止フィルムの最外層として位置し、防汚層としての機能をも有する。低屈折率層は、含フッ素化合物を含有することが好ましく、特に含フッ素化合物を主体とすることが好ましい。ここで、「含フッ素化合物を主体とする」とは、低屈折率層の中に含まれる構成成分のうち、含フッ素化合物の質量比が最も大きいことを意味し、含フッ素化合物の含有率が、低屈折率層の全質量に対し50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上含まれることがより好ましい。
【0105】
低屈折率層の含フッ素化合物は、架橋性又は重合性の官能基を有する含フッ素化合物の、加熱又は電離放射線硬化による架橋反応又は重合反応により形成することが好ましい。これらは市販のものでもよく、特に限定されないが、例えば熱架橋性の市販の含フッ素化合物としては、ポリシロキサンおよび水酸基含有フッ素ポリマーを含有するJN7228A(JSR(株)製)、JN7228Aに比して塗膜強度を高めたJTA113(同)等が挙げられる。
また、その他の好ましい組成について以下に記載する。
【0106】
[含フッ素化合物]
低屈折率層に含まれる含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50であることが好ましい。より好ましくは1.36〜1.47、さらに好ましくは1.38〜1.45である。
【0107】
含フッ素化合物としては、含フッ素ポリマー、含フッ素シラン化合物、含フッ素界面活性剤、含フッ素エーテルなどが挙げられる。
【0108】
含フッ素ポリマーとしては、フッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーの架橋又は重合反応により合成されたものが挙げられる。フッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーの例には、フルオロオレフィン(例えば、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、フッ素化ビニルエーテル及びフッ素置換アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのエステルが含まれる。
【0109】
含フッ素ポリマーとして、フッ素原子を含む繰り返し構造単位とフッ素原子を含まない繰り返し構造単位からなる共重合体も用いることができる。上記共重合体は、フッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーとフッ素原子を含まないエチレン性不飽和モノマーの重合反応により得ることができる。
【0110】
フッ素原子を含まないエチレン性不飽和モノマーとしては、オレフィン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン及びその誘導体、ビニルエーテル、ビニルエステル、アクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド及びアクリロニトリルが挙げられる。
【0111】
含フッ素シラン化合物としては、パーフルオロアルキル基を含むシラン化合物などが挙げられる。
【0112】
含フッ素界面活性剤は、疎水性部分を構成する炭化水素の水素原子の一部又は全部が、フッ素原子により置換されているもので、その親水性部分はアニオン性、カチオン性、ノニオン性及び両性のいずれであってもよい。
【0113】
含フッ素エーテルは、一般に潤滑剤として使用されている化合物である。含フッ素エーテルとしては、パーフルオロポリエーテル等が挙げられる。
【0114】
低屈折率層の含フッ素化合物としては、架橋又は重合構造が導入された含フッ素ポリマーが特に好ましい。架橋又は重合構造が導入された含フッ素ポリマーは、架橋又は重合性の官能基を有する含フッ素化合物を架橋又は重合させることにより得られる。
【0115】
架橋性又は重合性の官能基を有する含フッ素化合物は、架橋性又は重合性の官能基を有さない含フッ素化合物に、架橋性又は重合性の官能基を側鎖として導入することにより得ることができる。架橋又は重合性の官能基としては、(メタ)アクリロイル、イソシアナート、エポキシ、アジリジン、オキサゾリン、アルデヒド、カルボニル、ヒドラジン、カルボキシル、メチロール及び活性メチレン等の基が挙げられる。さらには、ヒドロキシ、アミノ、スルホ等の基を有してもよい。これらの化合物は、市販品を用いてもよい。
【0116】
低屈折率層の含フッ素化合物は、含フッ素ビニルモノマーから導かれる繰返し単位及び側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する繰返し単位をからなる共重合体を主成分として含有することが好ましい。該共重合体由来の成分は最外層の全質量に対し50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。以下に、低屈折率層に用いられるのに好ましい上記共重合体について説明する。
【0117】
含フッ素ビニルモノマーとしてはフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等)、(メタ)アクリル酸の部分又は完全フッ素化アルキルエステル誘導体類{例えば「ビスコート6FM」(商品名)、大阪有機化学工業(株)製}や“M−2020”(商品名)ダイキン工業(株)製等}、完全又は部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられるが、好ましくはパーフルオロオレフィン類であり、屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から特に好ましくはヘキサフルオロプロピレンである。
【0118】
共重合体のフッ素含率が20〜60質量%となるように含フッ素ビニルモノマーを導入することが好ましく、より好ましくは25〜55質量%であり、特に好ましくは30〜50質量%である。
【0119】
上記共重合体は(メタ)アクリロイル基を有する繰返し単位を有してもよい。側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する繰返し単位は、上記共重合体中に5〜90質量%を占めることが好ましく、30〜70質量%を占めることがより好ましく、40〜60質量%を占めることが特に好ましい。
【0120】
上記共重合体には、上記含フッ素ビニルモノマーから導かれる繰返し単位及び側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する繰返し単位以外に、適宜他のビニルモノマーを共重合させることもできる。これらのビニルモノマーは目的に応じて複数を組み合わせてもよく、共重合体中の0〜65モル%の範囲で導入されていることが好ましく、より好ましくは0〜40モル%、特に好ましくは0〜30モル%である。
【0121】
併用可能なビニルモノマー単位には特に限定はなく、例えばオレフィン類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、スチレン誘導体、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、不飽和カルボン酸類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アクリロニトリル誘導体等を挙げることができる。
【0122】
本発明に用いられる、含フッ素ビニルモノマーから導かれる繰返し単位及び側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する繰返し単位からなる共重合体の好ましい形態として、下記一般式(2)で表されるものが挙げられる。
【0123】
【化5】

【0124】
一般式(2)中、L21は炭素数1〜10の連結基を表し、より好ましくは炭素数1〜6の連結基であり、特に好ましくは炭素数2〜4の連結基であり、直鎖、分岐、環構造を有していてもよく、O、N、Sから選ばれるヘテロ原子を有していてもよい。
【0125】
好ましい例としては、*−(CH−O−**、*−(CH−NH−**、*−(CH−O−**、*−(CH−O−**、*−(CH−O−(CH−O−**、−CONH−(CH−O−**、*−CHCH(OH)CH−O−**、*−CHCHOCONH(CH−O−**{*はポリマー主鎖側の連結部位を表し、**は(メタ)アクリロイル基側の連結部位を表す}等が挙げられる。m1は0又は1を表わす。
【0126】
一般式(2)中、Xは水素原子又はメチル基を表す。硬化反応性の観点から、より好ましくは水素原子である。
【0127】
一般式(2)中、Aは任意のビニルモノマーから導かれる繰返し単位を表わし、ヘキサフルオロプロピレンと共重合可能な単量体の構成成分であれば特に制限はなく、透明支持体など下層への密着性、ポリマーのTg(皮膜硬度に寄与する)、溶媒への溶解性、透明性、滑り性、防塵・防汚性等種々の観点から適宜選択することができ、目的に応じて単一又は複数のビニルモノマーによって構成されていてもよい。
【0128】
好ましい例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、アリルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジルメタアクリレート、アリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリレート類、スチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン等のスチレン誘導体、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸及びその誘導体等を挙げることができるが、より好ましくはビニルエーテル誘導体、ビニルエステル誘導体であり、特に好ましくはビニルエーテル誘導体である。
【0129】
一般式(2)中、x、y、zはそれぞれの構成成分のモル%を表わし、30≦x≦60、5≦y≦70、0≦z≦65を満たす値を表す。好ましくは、35≦x≦55、30≦y≦60、0≦z≦20であり、特に好ましくは40≦x≦55、40≦y≦55、0≦z≦10である。但し、x+y+z=100である。
【0130】
さらに上記共重合体の特に好ましい形態として一般式(2−1)で表されるものが挙げられる。
【0131】
【化6】

【0132】
一般式(2−1)中、X、x、yはそれぞれ一般式(2)と同義であり、好ましい範囲も同じである。
m2は2≦m2≦10の整数を表わし、2≦m2≦6であることが好ましく、2≦m2≦4であることが特に好ましい。
【0133】
Bは任意のビニルモノマーから導かれる繰返し単位を表わし、単一組成であっても複数組成によって構成されていてもよい。例としては、前記一般式(2)におけるAの例として説明したものが当てはまる。
【0134】
z1及びz2はそれぞれの繰返し単位のモル%を表わし、0≦z1≦65、0≦z2≦65を満たす値を表わす。それぞれ0≦z1≦30、0≦z2≦10であることが好ましく、0≦z1≦10、0≦z2≦5であることがさらに好ましい。
一般式(2−1)で表される共重合体としては、40≦x≦60、30≦y≦60、z2=0を満たすものが特に好ましい。
但し、x+y+z1+z2=100である。
【0135】
一般式(2)又は一般式(2−1)で表わされる共重合体の好ましい具体例、合成法として、特開2004−45462号公報の段落[0043]〜[0047]に記載されたものが挙げられる。
【0136】
また含フッ素化合物には、防汚性を付与する目的で、ポリシロキサン構造が導入されていてもよい。導入はブロック共重合、グラフト共重合が好ましい。ポリシロキサン成分の好ましい導入率は、化合物中の0.5〜10質量%であり、より好ましくは1〜5質量%である。
【0137】
本発明において、塗布液中の含フッ素化合物の濃度は、用途に応じて適宜選択されるが0.01〜60質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜50質量%、特に好ましくは1〜20質量%程度である。
【0138】
低屈折率層は、目的に応じて充填剤(例えば、無機微粒子や有機微粒子等)、滑り剤(ジメチルシリコーンなどのポリシロキサン化合物等)、オルガノシラン化合物及びその誘導体、バインダー、界面活性剤等の添加剤を含有することができる。特に、充填剤(例えば、無機微粒子や有機微粒子等)、滑り剤(ジメチルシリコーンなどのポリシロキサン化合物等)を添加することは好ましい。
以下に、低屈折率層に用いる好ましい充填剤、滑り剤等について記載する。
【0139】
[充填剤]
充填剤(例えば、無機微粒子や有機微粒子等)は、低屈折率層の物理強度(耐擦傷性など)を改良する点で、添加することが好ましい。低屈折率層に添加する充填剤としては無機微粒子が好ましく、中でも屈折率が低い二酸化珪素(シリカ)、中空のシリカ、細孔を有するシリカ、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム)などが好ましい。特に好ましいのは二酸化珪素(シリカ)、中空シリカである。これらは化学的表面処理がなされていてもよい。
【0140】
充填剤の添加量は、物理強度、白濁の回避等の観点から、低屈折率層の全質量に対し5〜70質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜50質量%、特に好ましくは20〜40質量%である。
【0141】
充填剤の平均粒径は、低屈折率層の膜厚に対し20〜100%が好ましく、より好ましくは30〜80%、特に好ましくは30〜50%である。
充填剤は、2種類以上を併用してもよい。
【0142】
低屈折率層に添加する充填剤が二酸化珪素微粒子の場合、中空の二酸化珪素微粒子を用いることが特に好ましい。中空の二酸化珪素微粒子は、屈折率が1.17〜1.45であることが好ましく、より好ましくは1.17〜1.40、さらに好ましくは1.17〜1.37である。
ここで、中空の二酸化珪素微粒子の屈折率は、粒子全体としての屈折率を表し、これによって低屈折率層の屈折率を下げることができる。
【0143】
中空の二酸化珪素微粒子は、粒子内の空洞の半径をr、粒子外殻の半径をrとすると、空隙率θが下記数式(1)で表される。
数式(1):θ=(r/r×100
【0144】
空隙率θは10〜60%が好ましく、20〜60%がさらに好ましく、30〜60%であることが最も好ましい。
【0145】
[滑り剤]
滑り剤は、低屈折率層の物理強度(耐擦傷性など)、防汚性を改良する点で添加することが好ましい。滑り剤としては、含フッ素エーテル化合物(パーフルオロポリエーテル、及び、その誘導体など)、ポリシロキサン化合物(ジメチルポリシロキサン、及び、その誘導体など)などが挙げられる。ポリシロキサン化合物が好ましい。
【0146】
ポリシロキサン化合物の好ましい例としては、ジメチルシリルオキシ単位を繰り返し単位として複数個含む化合物の末端及び側鎖の少なくともいずれかに置換基を有するものが挙げられる。ジメチルシリルオキシ単位を繰り返し単位として含む化合物中には、ジメチルシリルオキシ単位以外の構造単位(置換基)を含んでもよい。置換基は同一であっても異なっていてもよく、複数個あることが好ましい。
【0147】
好ましい置換基の例としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、フルオロアルキル基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などを含む基が挙げられる。
【0148】
滑り剤の分子量に特に制限はないが、10万以下であることが好ましく、5万以下であることが特に好ましく、3000〜30000であることが最も好ましい。
【0149】
シロキサン化合物のSi原子含有量には特に制限はないが、5質量%以上であることが好ましく、10〜60質量%であることが特に好ましく、15〜50質量%であることが最も好ましい。
【0150】
特に好ましい滑り剤は、下記一般式(3)で表わされる、架橋性又は重合性の官能基を有するポリシロキサン化合物及びその誘導体{誘導体とは、例えば、一般式(3)で表わされるポリシロキサン化合物の架橋体又は重合体、一般式(3)で表わされる、ポリシロキサン化合物とポリシロキサン化合物以外の架橋又は重合可能な官能基を有する化合物との反応生成物など}である。
【0151】
【化7】

【0152】
一般式(3)中、R31〜R34はそれぞれ独立に炭素数1〜20の置換基を表し、それぞれの基が複数ある場合それらは互いに同じであっても異なっていてもよく、R31、R33又はR34のうち少なくとも一つの基が架橋又は重合性の官能基を表す。
pは1≦p≦4を満たす整数を表す。qは10≦q≦500を満たす整数を表し、rは0≦r≦500を満たす整数を表し、{ }で囲われているポリシロキサン部分はランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。
【0153】
本発明に好適に用いられる低屈折率層は、一般式(3)で表わされる架橋性又は重合性の官能基を有するポリシロキサン化合物及びその誘導体の少なくともいずれかと含フッ素化合物とを含む硬化物を含有することが好ましい。
【0154】
ポリシロキサン化合物及びその誘導体の少なくともいずれかの含有量は、含フッ素化合物に対し、0.1〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜15質量%、特に好ましくは1〜10質量%である。
【0155】
ポリシロキサン化合物及びその誘導体の、好ましい架橋性又は重合性の官能基は、最外層の他の構成成分(含フッ素化合物、バインダー、など)と架橋反応又は重合反応して、結合を形成することができる官能基であればよく、例えば、活性水素原子を有する基(たとえば水酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、メルカプト基、β−ケトエステル基、ヒドロシリル基、シラノール基等)、カチオン重合可能な基(エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基、ビニル基、ビニルオキシ基等)、ラジカル種による架橋又は重合が可能な不飽和二重結合を有する基((メタ)アクリロイル基、アリル基等)、加水分解性シリル基(例えばアルコキシシリル基、アシルオキシシリル基等)、酸無水物、イソシアネート基、求核剤によって置換され得る基(活性ハロゲン原子、スルホン酸エステル等)等が挙げられる。
【0156】
これらの架橋性又は重合性官能基は低屈折率層の構成成分に合わせて適宜選択される。 好ましくは、電離放射線硬化性の官能基である。
【0157】
また、一般式(3)の架橋性又は重合性の官能基は、含フッ素化合物が有する架橋性又は重合性の官能基と、架橋反応又は重合反応することが好ましく、特に好ましい官能基は、カチオン開環重合反応性基(特にエポキシ基、オキセタニル基など)、ラジカル重合反応性基{特に(メタ)アクリロイル基}である。
【0158】
一般式(3)のR32が表す置換基は、炭素数1〜20の置換又は無置換の有機基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、ヘキシル基等)、フッ素化アルキル基(トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等)又は炭素数6〜20のアリール基(例えばフェニル基、ナフチル基等)であり、より好ましくは炭素数1〜5のアルキル基、フッ素化アルキル基又はフェニル基であり、特に好ましくはメチル基である。これらの基はさらにこれらの基で置換されていてもよい。
【0159】
一般式(3)のR31、R33又はR34が架橋性又は重合性の官能基でない場合、上記有機基であることができる。
【0160】
pは1≦p≦4を満たす整数を表す。qは10≦q≦500を満たす整数を表し、好ましくは50≦q≦400であり、特に好ましくは100≦q≦300である。rは0≦r≦500を満たす整数を表わし、好ましくは0≦r≦qであり、特に好ましくは0≦r≦0.5qである。
【0161】
一般式(3)で表わされる化合物のポリシロキサン構造は、その繰り返し単位[−OSi(R32−]が、単一の置換基(R32)のみで構成された単独重合体であってもよく、また異なる置換基を有する繰り返し単位の組み合わせによって構成されたランダム共重合体又はブロック共重合体であってもよい。
【0162】
一般式(3)で表わされる化合物の質量平均分子量は、10〜10であることが好ましく、より好ましくは5×10〜5×10であり、特に好ましくは10〜10である。
【0163】
一般式(3)で表されるポリシロキサン化合物は、市販されているもの、例えば、“KF−100T”、“X−22−169AS”、“KF−102”、“X−22−3701IE”、“X−22−164B”、“X−22−164C”、“X−22−5002”、“X−22−173B”、“X−22−174D”、“X−22−167B”、 “X−22−161AS”、“X−22−174DX”、“X−22−2426”、“X−22−170DX”、“X−22−176D”、“X−22−1821”{以上、信越化学工業(株)製};“AK−5”、“AK−30”、“AK−32”{以上、東亜合成化学(株)製};「サイラプレーンFM−0275」、「サイラプレーンFM−0721」、「サイラプレーンFM−0725」、「サイラプレーンFM−7725」、「サイラプレーンDMS−U22」、「サイラプレーンRMS−033」、「サイラプレーンRMS−083」、「サイラプレーンUMS−182」{以上、チッソ(株)製}等を用いることもできる。また、市販のポリシロキサン化合物が含有する水酸基、アミノ基、メルカプト基等に、架橋性又は重合性官能基を導入することで作製することもできる。
【0164】
一般式(3)で表わされる好ましいポリシロキサン化合物の好ましい具体例としては、特開2003−329804号公報の[0041]〜[0045]に記載されたものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0165】
一般式(3)で表わされるポリシロキサン化合物及びその誘導体の、少なくともいずれかの添加量は、低屈折率層の全固形分に対し、0.05〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜20質量%、更に好ましくは0.5〜15質量%、特に好ましくは1〜10質量%である。
【0166】
[低屈折率層の形成方法]
低屈折率層は、上記含フッ素化合物、さらに必要に応じて、前記充填剤、上記ポリシロキサン化合物及びその誘導体の、少なくともいずれかを溶媒に溶解、又は、分散した塗布液を塗布することにより作製することが好ましい。
【0167】
好ましい溶媒としては、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、エーテル類(テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール、等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、水などを挙げることができる。
【0168】
特に好ましい溶媒としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、エステル類であり、最も好ましい溶媒としては、ケトン類である。ケトン類の中でも、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが特に好ましい。溶媒としては、ケトン系溶媒の含有量が、塗布液に含まれる全溶媒の10質量%以上であることが好ましい。好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。
2種類以上の溶媒を併用することもできる。
【0169】
含フッ素化合物として架橋性又は重合性の官能基を有する含フッ素化合物を用いる場合は、低屈折率層の塗布と同時又は塗布後に、含フッ素化合物を架橋又は重合反応させ、低屈折率層を作製することが好ましい。
この場合、ラジカル重合開始剤としては、熱の作用によりラジカルを発生するもの、又は光の作用によりラジカルを発生するものが好ましい。これらの重合開始剤は前記光拡散層の項で述べたものを用いることができ、前記光拡散層と同様に塗布後に熱硬化又は光ラジカル硬化することが好ましい。また、カチオンで架橋又は重合する官能基を有していれば、カチオン重合開始剤、特に光カチオン重合開始剤を用いて架橋又は重合反応させることが好ましい。
【0170】
バインダーは、前記含フッ素化合物以外のもの、例えばフッ素を含まない高分子化合物、重合性基を有するモノマー類等を用いてもよい。
また、低屈折率層には、前記の成分(含フッ素化合物、重合開始剤、光増感剤、充填剤、滑り剤、バインダーなど)以外に、界面活性剤、帯電防止剤、カップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、などを添加することもできる。
【0171】
[低屈折率層の各物性]
低屈折率層の膜厚は30〜200nmが好ましく、より好ましくは50〜150nm、特に好ましくは60〜120nmである。低屈折率層を防汚層として用いる場合、膜厚は3〜50nmが好ましく、より好ましくは5〜35nm、特に好ましくは7〜25nmである。
【0172】
低屈折率層は、反射防止フィルムの物理強度を改良するために、表面の動摩擦係数が0.25以下であることが好ましい。より好ましくは0.17以下であり、特に好ましくは0.15以下である。
ここで記載した動摩擦係数は、直径5mmのステンレス剛球に0.98Nの荷重をかけ、速度60cm/分で表面を移動させたときの、表面と直径5mmのステンレス剛球の間の動摩擦係数をいう。
【0173】
また、反射防止フィルムの防汚性能を改良するために、フィルム表面の水に対する接触角が90゜以上であることが好ましい。更に好ましくは95゜以上であり、特に好ましくは100゜以上である。
さらに低屈折率層の表面の水に対する接触角は、後述する鹸化処理の前後で変わらないことが望ましく、鹸化処理の前後での変化量が10゜以内であることが好ましく、特に好ましくは5゜以内である。
【0174】
低屈折率層のヘイズは低いほど好ましい。該ヘイズは3%以下であることが好ましく、さらに好ましくは2%以下、特に好ましくは1%以下である。
【0175】
低屈折率層の表面硬度は、JIS K−5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。また、JIS K−5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
【0176】
低屈折率層の屈折率は1.20〜1.55であることが好ましい。より好ましくは1.30〜1.50、更に好ましくは1.35〜1.48、特に好ましくは1.37〜1.45である。
【0177】
低屈折率層には、前記の一般式(a)で表されるオルガノシラン化合物、及び、その誘導体(加水分解物、及び該加水分解物が縮合して生成した架橋ケイ素化合物など)からなる群から選ばれた化合物を含有することも好ましい。
【0178】
〔光拡散層、低屈折率層以外の層〕
本発明の反射防止フィルムは、以上述べた光拡散層、低屈折率層と共に、さらに必要に応じてそれ以外の層を有することができる。
【0179】
[帯電防止層]
本発明の反射防止フィルムは、表面に塵埃(埃など)が付着するのを防止するために、帯電防止層を用いることも好ましい。防塵性は、表面の表面抵抗値を下げることで発現される。表面抵抗値は、1×1013Ω/□以下であることが好ましく、1×1012Ω/□以下であることがより好ましく、1×1010Ω/□以下であることが更に好ましい。
【0180】
帯電防止層は、光拡散層と低屈折率層の間、又は透明支持体と光拡散層の間に設けることが好ましい。
【0181】
帯電防止層を塗布で形成する場合、導電材(電子伝導型の導電性粒子、イオン伝導型の有機化合物など)を結着剤(バインダーなど)に含有させて、帯電防止層を形成することが好ましい。特に、電子伝導型の導電材が、環境の変化を受け難く導電性能が安定するので低湿環境下でも良好な導電性能を発現する点で好ましい。
【0182】
帯電防止層に用いられる好ましい導電材としては、酸化錫、アンチモンをドープした酸化錫(ATO)、酸化インジウム、ITO、酸化亜鉛、アルミニウムをドープした酸化亜鉛、などが挙げられる。
【0183】
導電材の一次粒子の質量平均粒径は、1〜200nmであることが好ましく、より好ましくは1〜100nmである。導電材の比表面積は、10〜400m/gであることが好ましく、20〜200m/gであることがさらに好ましい。
【0184】
導電材の分散においては、分散剤の存在下で、分散媒体中に分散することが好ましい。 分散は、例えばカルボキシル基、スルホン酸基(スルホ基)、リン酸基(ホスホノ基)、スルホンアミド基等の酸性プロトンを有するアニオン性基を有する分散剤を用いることができる。アニオン性の極性基を有する分散剤としては、「ホスファノール(PE−510、PE−610、LB−400、EC−6103、RE−410など)」{東邦化学工業(株)製}、“Disperbyk(−110、−111、−116、−140、−161、−162、−163、−164、−170、−171など)”{ビックケミー・ジャパン(株)製}などが挙げられる。分散剤は、さらに架橋又は重合性の官能基を含有することが好ましい。
【0185】
分散媒体には、沸点が60〜170℃の液体を用いることが好ましい。
中でも、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ブタノール、プロパノ−ル、セロソルブ類(例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル等)が好ましく、特に好ましくは、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンである。
【0186】
導電材は、サンドグラインダーミル(例えば、ピン付きビーズミル)、ダイノミル、高速インペラーミル、アイガーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライター及びコロイドミル、ペイントシェーカーなどのメディア型分散機を用いて分散することが好ましい。
導電材は、分散媒体中でなるべく微細化されていることが好ましく、質量平均粒径は1〜200nmが好ましい。
【0187】
本発明の帯電防止層のバインダー前駆体としては、前記光拡散層に記載の(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーなどが好ましい。
【0188】
帯電防止層の形成は、前記光拡散層と同様の重合開始剤を用い、4体積%以下の雰囲気で電離放射線硬化性化合物の架橋又は重合反応により形成することが好ましい。
【0189】
帯電防止層の膜厚は、用途により適切に設計することができ、透明性を優先して帯電防止層を形成する場合、膜厚は1μm以下であることが好ましく、より好ましくは500nm以下、更に好ましくは200nm以下、特に好ましくは150nm以下である。
また、帯電防止層がハードコート処理されハードコート層を兼ねる場合には、1〜10μmが好ましく、より好ましくは2〜7μm、特に好ましくは3〜5μmである。
【0190】
帯電防止層には、前記の導電材、バインダー以外に、重合開始剤、光増感剤、樹脂、界面活性剤、カップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、などを添加することもできる。
【0191】
[ハードコート層]
本発明の反射防止フィルムには、物理強度を付与するために、透明支持体と低屈折率層などの最外層との間に、ハードコート層を設けることも好ましい。
ハードコート層は、電離放射線硬化性化合物の架橋又は重合反応により形成されることが好ましい。例えば(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の電離放射線硬化性の多官能モノマーや、多官能オリゴマーを含む塗布液を透明支持体上に塗布し、架橋又は重合反応させることにより形成することができる。
ハードコート層は、前記光拡散層の項で詳述した微細な無機フィラーを含有することも好ましい。
【0192】
光重合性官能基を有する光重合性多官能モノマーの具体例としては、光拡散層で例示したものが挙げられ、光重合開始剤、光増感剤を用いて重合することが好ましい。光重合反応は、ハードコート層の塗布及び乾燥後、紫外線照射により行うことが好ましい。
【0193】
ハードコート層の膜厚は、1〜10μmであることが好ましく、より好ましくは2〜7μm、特に好ましくは3〜5μmである。
【0194】
ハードコート層の表面硬度は、JIS K−5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。また、JIS K−5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
【0195】
ハードコート層には、樹脂、分散剤、界面活性剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、などを添加することもできる。
【0196】
またハードコート層には、前記光拡散層の項において詳述したような平均粒径1〜8μmの樹脂粒子を含有させて、防眩性又は散乱性ハードコート層などの光学機能層にすることができ、このことにより、防眩機能、液晶表示装置の視野角拡大機能を付与することができ好ましい。
【0197】
〔透明支持体〕
透明支持体としては、プラスチックフィルムであることが好ましい。プラスチックフィルムとしては、セルロースエステル(例えば、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリスチレン(例えば、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレート及びポリエーテルケトンが含まれる。トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレートが好ましい。
【0198】
またレターデーション低下化合物を含有させることによって、下記数式(2)及び(3)で定義されるReλ及びRthλが、下記数式(4)且つ(5)をみたすことができるようなセルロースアシレートフィルムを用いてもよい。
数式(2):Reλ=(n−n)×d
数式(3):Rthλ={(n+n)/2−n}×d
数式(4):0≦Re630≦10で、且つ|Rth630|≦25
数式(5):|Re400−Re700|≦10で、且つ|Rth400−Rth700|≦35
【0199】
[式中、Reλは波長λnmにおける正面レターデーション値(単位:nm)、Rthλは波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。またnはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さである。]
【0200】
反射防止フィルムを液晶表示装置に用いる場合には、これらの透明支持体のうちトリアセチルセルロースを用いることが好ましい。
【0201】
透明支持体がトリアセチルセルロースフィルムの場合、トリアセチルセルロースを溶媒に溶解することで調整したトリアセチルセルロースドープを、単層流延、複数層共流延の何れかの流延方法により作製したトリアセチルセルロースフィルムであることが好ましい。
【0202】
特に環境保全の観点から、トリアセチルセルロースを低温溶解法又は高温溶解法によって、ジクロロメタンを実質的に含まない溶媒に溶解することで調整した、トリアセチルセルロースドープを用いて作製したトリアセチルセルロースフィルムが好ましい。
【0203】
本発明に好ましく用いられるトリアセチルセルロースフィルムについては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745)に例示されている。
【0204】
上記の透明支持体の膜厚は特に限定されるものではないが、膜厚は1〜300μmがよく、好ましくは30〜150μm、特に好ましくは40〜120μm、最も好ましくは40〜100μmである。
【0205】
透明支持体の光透過率は、80%以上であることが好ましく、86%以上であることがさらに好ましい。
透明支持体のヘイズは低い方が好ましい。2.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましい。
透明支持体の屈折率は、1.40〜1.70であることが好ましい。
【0206】
透明支持体には、赤外線吸収剤又は紫外線吸収剤を添加してもよい。赤外線吸収剤の添加量は、透明支持体の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.05〜10質量%であることがさらに好ましい。
【0207】
また透明支持体には、滑り剤として、不活性無機化合物の粒子を透明支持体に添加してもよい。無機化合物の例には、SiO、TiO、BaSO、CaCO、タルク及びカオリンが含まれる。
【0208】
透明支持体には表面処理を実施してもよい。表面処理の例には、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理及びオゾン酸化処理が含まれる。グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理及び火焔処理が好ましく、グロー放電処理とコロナ放電処理が特に好ましい。
【0209】
〔反射防止フィルムの形成法等〕
本発明において反射防止フィルムを構成する各層は、塗布法により作製したものが好ましい。塗布で形成する場合、各層はディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2,681,294号明細書記載)、又はダイコート法(特開2003−20097号、同2003−211052号、2003−236434号、同2003−260400号、同2003−260402号公報等に記載)により作製することができる。2層以上を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2,761,791号、同2,941,898号、同3,508,947号、同3,526,528号の各明細書、及び原崎勇次著、「コーティング工学」、253頁、朝倉書店(1973年)に記載がある。ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、ダイコートが好ましい。特に、マイクログラビアコート法、ダイコート法が好ましく、ダイコート法が最も好ましい。ダイコート法を用いることにより塗布面状が良好な製品が低コストで得られる。
【0210】
マイクログラビアコート法とは、直径が約10〜100mm、好ましくは約20〜50mmで全周にグラビアパターンが刻印されたグラビアロールを支持体の下方に、且つ支持体の搬送方向に対してグラビアロールを逆回転させると共に、該グラビアロールの表面からドクターブレードによって余剰の塗布液を掻き落として、定量の塗布液を支持体に転写させて塗工することを特徴とする塗布法である。
【0211】
マイクログラビアコート法では、グラビアロールに刻印されたグラビアパターンの線数は50〜800本/インチが好ましく、より好ましくは100〜300本/インチである。グラビアパターンの深度は1〜600μmが好ましく、より好ましくは5〜200μmである。グラビアロールの回転数は3〜800rpmであることが好ましく、より好ましくは5〜200rpmである。支持体の搬送速度は0.5〜100m/分であることが好ましく、より好ましくは1〜50m/分である。
【0212】
また、ダイコート法はバックアップローラに支持されて連続走行するウェブに対して、内部にポケットが形成されているスロットダイから塗布液をビードにして塗布することにより、ウェブ上に塗膜を形成する。スロットダイの先端とウェブとの距離を、ウェブ進行方向に対するスロット部材の上流側と下流側で適度に調節することによって湿潤膜厚が数十μm以下の塗布を精度よく行うことができる。
【0213】
反射防止フィルムの各層を塗布法で作製する上で、層を作製するのに用いる塗布液には、面状改良剤を添加することが好ましい。以下に、面状改良剤について説明する。
【0214】
[面状改良剤]
本発明の透明支持体上のいずれかの層を作製するのに用いる塗布液には、面状故障(塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥など)をよりさらに改良するために、フッ素系及びシリコーン系の少なくともいずれかの面状改良剤を添加することが好ましい。
【0215】
面状改良剤は、塗布液の表面張力を1mN/m以上変化させることが好ましい。ここで、塗布液の表面張力が1mN/m以上変化するとは、面状改良剤を添加後の塗布液の表面張力が、塗布/乾燥時での濃縮過程を含めて、面状改良剤を添加してない塗布液の表面張力と比較して、1mN/m以上変化することを意味する。
好ましくは、塗布液の表面張力を1mN/m以上下げる効果がある面状改良剤であり、更に好ましく2mN/m以上下げる面状改良剤、特に好ましくは3mN/m以上下げる面状改良剤である。
【0216】
フッ素系の面状改良剤の好ましい例としては、フルオロ脂肪族基を含有する化合物(「フッ素系面状改良剤」と略記する)が挙げられる。特に、下記一般式(4)のモノマーに相当する繰り返し単位、及び、下記一般式(5)のモノマーに相当する繰り返し単位を含むアクリル樹脂、メタアクリル樹脂、及びこれらに共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体が好ましい。
【0217】
このような単量体としては、“Polymer Handbook 2nd ed.”、J.Brandrup,“Wiley lnterscience(1975)Chapter 2”,p.1〜483記載のものを用いることが好ましい。
【0218】
具体的には、例えばアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等をあげることができる。
【0219】
【化8】

【0220】
一般式(4)において、R41は水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、水素原子、メチル基がより好ましい。L41は酸素原子、イオウ原子又は−N(R42)−を表し、酸素原子又は−N(R42)−がより好ましく、特に酸素原子が好ましい。R42は水素原子又は、炭素数1〜8のアルキル基を表し、好ましくは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、特に好ましくは水素原子又はメチル基である。aは1〜6の整数を表し、1〜3がより好ましく、1であることが特に好ましい。bは1〜18の整数を表し、4〜12がより好ましく、6〜8が特に好ましい。
フッ素系面状改良剤中に一般式(4)で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーが2種類以上構成成分として含まれていてもよい。
【0221】
【化9】

【0222】
一般式(5)において、R51は水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、水素原子、メチル基がより好ましい。L51は酸素原子、イオウ原子又は−N(R53)−を表し、酸素原子又は−N(R53)−がより好ましく、特に酸素原子が好ましい。R53は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表し、好ましくは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、特に好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0223】
52は水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基、ポリ(アルキレンオキシ)基を含むアルキル基、又は置換もしくは無置換の芳香族基(例えば、フェニル基又はナフチル基)を表す。炭素数1〜12の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基、又は総炭素数6〜18の芳香族がより好ましく、炭素数1〜8の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基が更に好ましい。以下でポリ(アルキレンオキシ)基について説明する。
【0224】
ポリ(アルキレンオキシ)基は、−(OR)−を繰り返し単位とした基であり、Rは2〜4個の炭素原子を有するアルキレン基、例えば−CHCH−、−CHCHCH−、−CH(CH)CH−、−CH(CH)CH(CH)−が挙げられる。
【0225】
上記のポリ(オキシアルキレン)基中のオキシアルキレン単位(前記−OR−)はポリ(オキシプロピレン)におけるように同一であってもよく、また互いに異なる2種以上のオキシアルキレンが不規則に分布されたものであってもよく、直鎖もしくは分岐状のオキシプロピレン又はオキシエチレン単位であってもよく、或いは直鎖もしくは分岐状のオキシプロピレン単位のブロック又はオキシエチレン単位のブロックのように存在するものであってもよい。
【0226】
このポリ(オキシアルキレン)鎖は1つ又はそれ以上の連鎖結合(例えば−CONH−Ph−NHCO−、−S−など:Phはフェニレン基を表す)で連結されたものも含むことができる。連鎖の結合が3つ又はそれ以上の原子価を有する場合には、これは分岐鎖のオキシアルキレン単位を得るための手段を供する。またこの共重合体を本発明に用いる場合には、ポリ(オキシアルキレン)基の分子量は250〜3000が適当である。
【0227】
ポリ(オキシアルキレン)アクリレート及びメタクリレートは、市販のヒドロキシポリ(オキシアルキレン)材料、例えば商品名「プルロニック」{旭電化工業(株)製}、「アデカポリエーテル」{旭電化工業(株)製}、「カルボワックス」(ダウ・ケミカル社製)、「トリトン(Toriton)」(ローム・アンド・ハース社製)及び“P.E.G.”{第一工業製薬(株)製}として販売されているものを、公知の方法でアクリル酸、メタクリル酸、アクリルクロリド、メタクリルクロリド又は無水アクリル酸等と反応させることによって製造できる。別に、公知の方法で製造したポリ(オキシアルキレン)ジアクリレート等を用いることもできる。
【0228】
フッ素系面状改良剤の形成に用いられる、全モノマー量に対する一般式(4)で示されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの量は50モル%以上であることが好ましく、より好ましくは70〜100モル%であり、特に好ましくは80〜100モル%の範囲である。
【0229】
フッ素系面状改良剤の好ましい質量平均分子量は、3000〜100,000が好ましく、6,000〜80,000がより好ましく、8,000〜60,000が更に好ましい。
【0230】
ここで、質量平均分子量は、“TSKgel GMHxL”、“TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL{(商品名)、何れも東ソー(株)製}のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒THF、示差屈折計検出によるポリスチレン換算で表した分子量であり、含有量は、分子量が300以上の成分のピーク面積を100%とした場合の、前記分子量範囲のピークの面積%である。
【0231】
更に、フッ素系面状改良剤の好ましい添加量は、添加する層の塗布液に対して0.001〜5質量%の範囲であり、好ましくは0.005〜3質量%の範囲であり、更に好ましくは0.01〜1質量%の範囲である。
【0232】
以下、フッ素系面状改良剤の具体的な構造の例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお式中の数字は各モノマー成分のモル比率を示す。Mwは質量平均分子量を表す。
【0233】
【表1】

【0234】
【表2】

【0235】
面状改良剤は、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、エーテル類(テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等)、芳香族炭化水素系溶媒(トルエン、キシレン等)を含有する塗布液に用いることが好ましい。特に、ケトン系溶媒が好ましい。ケトン系溶媒の中でも、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが好ましい。
【0236】
また、特にケトン系溶媒を全溶媒の10質量%以上含有する塗布液であることが好ましい。好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。
【0237】
塗布液の溶媒は、ケトン系溶媒以外の溶媒を含んでいてもよい。例えば、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例えば、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン)、エーテルアルコール(例えば、1−メトキシ−2−プロパノール)などがあげられる。
【0238】
透明支持体上に形成する層の塗布液において、面状改良剤を添加するのが特に好ましいのは、ハードコート層、防眩層、帯電防止層、高屈折率層、低屈折率層を形成するための塗布液であり、特に好ましいのはハードコート層、防眩層を形成するための塗布液である。
【0239】
〔反射防止フィルムの物理性能〕
本発明に係る反射防止フィルムは、物理強度(耐擦傷性など)を改良するために、塗布した最外層を有する側の表面の動摩擦係数は0.25以下であることが好ましい。動摩擦係数は、直径5mmのステンレス剛球に0.98Nの荷重をかけ、速度60cm/分で最外層を有する側の表面を移動させたときの、最外層を有する側の表面と直径5mmのステンレス剛球の間の動摩擦係数をいう。より好ましくは0.17以下であり、特に好ましくは0.15以下である。
【0240】
本発明に係る反射防止フィルムのヘイズは、0.5〜60%であることが好ましく、1〜50%であることがさらに好ましく、1〜40%であることが最も好ましい。
さらにまた本発明に係る反射防止フィルムの反射率は、低いほど好ましく、好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.5%以下、更に好ましくは2.0%以下、特に好ましくは1.5%以下である。
【0241】
〔偏光板用保護フィルム〕
本発明の反射防止フィルムを偏光膜の保護フィルム(偏光板用保護フィルム)として用いることができる。この場合、最外層を有する側とは反対側の透明支持体の表面、すなわち偏光膜と貼り合わせる側の表面の水に対する接触角が40°以下であることが好ましい。さらに好ましくは30°以下であり、特に好ましくは25°以下である。接触角を40°以下にすることは、ポリビニルアルコールを主成分とする偏光膜との接着性を改良するのに有効である。この接触角は下記の鹸化処理の処理条件により調整することができる。
【0242】
本発明の反射防止フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いる場合には、その透明支持体としては、トリアセチルセルロースフィルムを用いることが特に好ましい。
【0243】
本発明における偏光板用保護フィルムを作製する手法としては、下記2つの手法が挙げられる。
(1)鹸化処理した透明支持体の一方の面に上記の各層(例えば、帯電防止層、ハードコート層、及び光学機能層である光拡散層、同低屈折率層、同高屈折率層、同最外層など)を塗設する手法。
(2)透明支持体の一方の面に上記の各層(例えば、帯電防止層、ハードコート層、光拡散層、低屈折率層、最外層など)を塗設した後、偏光膜と貼り合わせる側を鹸化処理する手法。
【0244】
上記(1)の手法において、透明支持体の一方の面のみが鹸化処理されている場合、各層は鹸化処理されていない側に塗設する。透明支持体の両方の面が鹸化処理されている場合、各層を塗設する側の鹸化処理した透明支持体の表面をコロナ放電処理、グロー放電処理、火焔処理などの手法により表面処理し、その後、各層を塗設することが好ましい。
【0245】
上記(2)の手法においては、反射防止フィルム全体を鹸化液に浸漬することが好ましい。この場合、反射防止フィルムは各層を有する側の表面を保護フィルムで保護して鹸化液に浸漬し、偏光膜と貼り合わせる側の透明支持体の表面を鹸化処理することもできる。
【0246】
さらにまた、反射防止フィルムの偏光膜と貼り合わせる側の透明支持体の表面に鹸化処理液を塗布して、偏光膜と貼り合わせる側を鹸化処理することもできる。
【0247】
鹸化処理は、保護フィルムの上に各塗設層を設けた後に実施することで、よりコストを削減でき、特に(2)の手法が、偏光板用保護フィルムを安価に製造できる点で好ましい。
【0248】
偏光板用保護フィルムは、防眩性能やその他の光学性能(低反射性能など)、物理性能(耐擦傷性など)、防汚性能(耐汚染性など)、防塵性能などにおいて、本発明の反射防止フィルムで記載した性能を満足することが好ましい。
【0249】
従って、最外層を有する側の表面の表面抵抗値が1×1013Ω/□以下であることが好ましく、1×1012Ω/□以下であることがより好ましく、1×1010Ω/□以下であることが更に好ましい。
最外層を有する側の表面の動摩擦係数は0.25以下であることが好ましい。好ましくは0.17以下であり、特に好ましくは0.15以下である。
【0250】
[鹸化処理]
上記の鹸化処理は、公知の手法、例えば、アルカリ液の中に透明支持体、又は、光学機能フィルムを適切な時間浸漬して実施するのが好ましい。
【0251】
アルカリ液は、水酸化カリウム水溶液、及び/又は、水酸化ナトリウム水溶液であることが好ましい。好ましい濃度は0.5〜3モル/Lであり、特に好ましくは1〜2モル/Lである。好ましいアルカリ液の液温は30〜70℃、特に好ましくは40〜60℃である。
【0252】
アルカリ液に浸漬した後は、フィルムの中にアルカリ成分が残留しないように、水で十分に水洗したり、希薄な酸に浸漬してアルカリ成分を中和したりすることが好ましい。
【0253】
鹸化処理することにより、透明支持体の表面が親水化される。偏光板用保護フィルムは、透明支持体の親水化された表面を偏光膜と接着させて使用する。
【0254】
親水化された表面は、ポリビニルアルコールを主成分とする偏光膜との接着性を改良するのに有効である。
【0255】
鹸化処理は、光拡散層や低屈折率層を有する側とは反対側の透明支持体の表面の水に対する接触角が40°以下になるように実施することが好ましい。更に好ましくは30°以下、特に好ましくは25°以下である。
【0256】
<偏光板>
本発明の偏光板は、偏光膜の保護フィルム(偏光板用保護フィルム)の少なくとも一方に、本発明の反射防止フィルムを有する。偏光板用保護フィルムは、上記のように、最外層を有する側とは反対側の透明支持体の表面、すなわち偏光膜と貼り合わせる側の表面の水に対する接触角が40°以下であることが好ましい。
【0257】
本発明の反射防止フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いることにより、防眩性機能を有する偏光板が作製でき、大幅なコスト削減、表示装置の薄手化が可能となる。
【0258】
また、本発明の反射防止フィルムを2枚の保護フィルムの一方に用い、後述する光学補償フィルムをもう一方に用いた偏光板は、さらに、液晶表示装置の明室でのコントラストを改良し、上下左右の視野角を非常に広げることができるので、好ましい。
【0259】
〔光学補償フィルム〕
光学補償フィルム(位相差フィルム)は、液晶表示画面の視野角特性を改良することができる。
【0260】
光学補償フィルムとしては、公知のものを用いることができるが、視野角を広げるという点では、特開2001−100042号公報に記載されているディスコティック構造単位を有する化合物からなる光学異方性層を有し、該ディスコティック化合物とフィルム面とのなす角度が、光学異方性層の深さ方向で変化していることを特徴とする光学補償フィルムが好ましい。すなわち、ディスコティック構造単位を有する化合物の配向状態としては、例えば、ハイブリッド配向、ベント配向、ツイスト配向、ホモジニアス配向、ホメオトロピック配向等であることが好ましく、ハイブリッド配向であることが特に好ましい。 該角度は、層全体で見ると光学異方性層中で光学補償フィルムの支持体面側からの距離の増加とともに総じて増加していることが好ましい。
【0261】
光学補償フィルムを偏光膜の保護フィルムとして用いる場合、偏光膜と貼り合わせる側の表面が鹸化処理されていることが好ましく、前記の鹸化処理に従って実施することが好ましい。
【0262】
また、光学異方性層が更にセルロースエステルを含んでいる態様、光学異方性層と光学補償フィルムの透明支持体との間に配向層が形成されている態様、該光学異方性層を有する光学補償フィルムの透明支持体が、光学的に負の一軸性を有し、且つ該透明支持体面の法線方向に光軸を有する態様、更に下記数式(6)で示される条件を満足する態様であることも好ましい。
数式(6):20≦{(n+n)/2−n}×d≦400
【0263】
式中、nは面内の遅相軸方向の屈折率(面内の最大屈折率)であり、nは面内の遅相軸に垂直な方向の屈折率、nzは面に垂直方向の屈折率である。また、dは光学異方性層の厚さ(nm)である。
【0264】
<画像表示装置>
反射防止フィルムは、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置に適用することができる。本発明の反射防止フィルムは、その透明支持体側を画像表示装置の画像表示面に接着する。
【0265】
本発明に用いる反射防止フィルム及び偏光板は、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等のモードの透過型、反射型、又は半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。
特にTNモードやIPSモードの液晶表示装置に対しては、特開2001−100043号公報等に記載されているように、上記の光学補償フィルムと反射防止フィルムを保護フィルムとして有する偏光板を用いることで、視野角特性と防眩特性を大幅に改良できる。
【0266】
また、さらに市販の輝度向上フィルム{偏光選択層を有する偏光分離フィルム、例えば、住友3M(株)製の“D−BEF”など}と併せて用いることにより、透過型又は半透過型の液晶表示装置において、さらに視認性の高い表示装置を得ることができる。
さらに、λ/4板と組み合わせることで、反射型液晶用の偏光板や、有機ELディスプレイ用表面保護板として表面及び内部からの反射光を低減するのに用いることができる。
【実施例】
【0267】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0268】
合成例1{高分子化合物(K−1)の合成}
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器に、水300質量部を充填し、これにポリビニルアルコール0.6質量部を加えて溶解した。次ぎに、これにアゾビスイソブチロニトリル2質量部を溶解したメタクリル酸メチル81.6質量部とアクリル酸メチル15.9質量部の混合液を加えた。この混合液をディスパーで5分間攪拌したあと、窒素の雰囲気下、75℃で4時間、弱い攪拌を行いながら反応させた。
反応終了後、得られた反応混合物を遠心分離器で弱く脱水し、生成物を水で洗浄したあと乾燥させて高分子化合物(K−1)を得た。
【0269】
合成例2{ペルフルオロオレフィン共重合体(PF−1)の合成}
ステンレス製の撹拌機付オートクレーブに、酢酸エチル40質量部、ヒドロキシエチルビニルエーテル14.7質量部、及び過酸化ジラウロイル0.55質量部を仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。さらにヘキサフルオロプロピレン(HFP)25質量部をオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は5.4kg/cm(529kPa)であった。該温度を保持し8時間反応を続け、圧力が3.2kg/cm(314kPa)に達した時点で加熱をやめ放冷した。室温まで内温が下がった時点で未反応のモノマーを追い出し、オートクレーブを開放して反応液を取り出した。
【0270】
得られた反応液を大過剰のヘキサンに投入し、デカンテーションにより溶媒を除去することにより沈殿したポリマーを取り出した。さらにこのポリマーを少量の酢酸エチルに溶解してヘキサンから2回再沈殿を行うことによって残存モノマーを完全に除去した。乾燥後ポリマー生成物28質量部を得た。
【0271】
次に上記ポリマー生成物の20質量部をN,N−ジメチルアセトアミド100質量部に溶解し、氷冷下でアクリル酸クロリド11.4質量部を滴下した後、室温で10時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加えて水洗し、有機層を抽出後、濃縮し、得られたポリマーをヘキサンで再沈殿させることにより下記構造のパーフルオロオレフィン共重合体(PF−1)を19質量部得た。得られたパーフルオロオレフィン共重合体の屈折率は1.421であった。
上記パーフルオロオレフィン共重合体PF−1をメチルエチルケトンに溶解し、固形分濃度30%の溶液を得た。
【0272】
【化10】

【0273】
合成例3{オルガノシラン化合物(OS)溶液の調製)
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器に、メチルエチルケトン120質量部、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン“KBM−5103”{信越化学工業(株)製}100質量部、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート3質量部を加えて混合したのち、イオン交換水30質量部を加え、60℃で4時間反応させた。室温まで冷却し、オルガノシラン化合物(OS)の溶液を得た。質量平均分子量は1600であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は100%であった。また、ガスクロマトグラフィーによって分析したところ、原料の3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランは殆ど残存していなかった。
【0274】
実施例1
[光拡散層塗布組成物(H−1)の調製]
攪拌機を備えた容器に、ペンタエリスリトールトリアクリレートと、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物「カヤラッドPET−30」{日本化薬(株)製}47.0質量部を充填し、これに重合開始剤「イルガキュア184」{チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製}2.0質量部、前記表1に示したフッ素系面状改良剤(F−12)0.75質量部、オルガノシラン化合物“KBM−5103”{信越化学工業(株)製}10.0質量部、前記合成例1で製造した高分子化合物(K−1)の20質量%トルエン溶液15.0質量部、トルエン23.5質量部、プロピレングリコール4.7質量部を添加して撹拌した。この溶液を塗布したのち、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.51であった。
【0275】
さらにこの混合液に、架橋ポリスチレン粒子(3.5μm、屈折率1.60)をポリトロン分散機にて10000rpmで分散して30質量%トルエン分散液としたもの25.5質量部を添加して撹拌した。孔径30μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して光拡散層塗布組成物(H−1)を調製した。
【0276】
[光拡散層塗布組成物(H−2)〜(H−19)の調製]
前記光拡散層塗布組成物(H−1)に対して、固形分濃度を変えないで、樹脂粒子の種類、有機溶媒の種類、配合比および架橋性モノマー種を変えて、光拡散層塗布組成物(H−2)〜(H−19)を調製した。これら全体の主要構成因子を表3に示した。表中、粒子親和性の有機溶媒種を変更する場合は、粒子分散溶媒や他の素材の溶剤も同時に変更した。
なお、表中の樹脂粒子名、有機溶媒、モノマー種に用いられる略称の詳細、および有機溶媒の沸点、粒子屈折率を以下に示す。
P100 :架橋ポリスチレン粒子。粒径=3.5μm。屈折率=1.60
P70 :架橋ポリ(スチレン/メタクリル酸メチル=70/30)粒子。粒径=3.5μm。屈折率=1.57
P50 :架橋ポリ(スチレン/メタクリル酸メチル=50/50)粒子。粒径=3.5μm。屈折率=1.55
P35 :架橋ポリ(スチレン/メタクリル酸メチル=35/65)粒子。粒径=3.5μm。屈折率=1.53
M100 :架橋ポリメタクリル酸メチル粒子。粒径=3.5μm。屈折率=1.49
MIBK :メチルイソブチルケトン。沸点116℃
MEK :メチルエチルケトン。沸点80℃
PG :プロピレングリコール。沸点188℃
EG :エチレングリコール。沸点198℃
DAA :ジアセトンアルコール。沸点168℃
BD :ブタンジオール。沸点207℃
DMSO :ジメチルスルホキシド。沸点189℃
DMF :N,N-ジメチルホルムアミド。沸点150℃
トルエン :沸点111℃
アノン :シクロヘキサノン。沸点156℃
酢エチ :酢酸エチル。沸点77℃
n−オクタン:沸点126℃
PETA:ペンタエリスリトールトリアクリレートと、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物「カヤラッドPET−30」(日本化薬(株)製)
DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)
【0277】
[比較用光拡散層塗布組成物(RH−1)〜(RH−7)の調製]
前記光拡散層塗布組成物(H−1)〜(H−19)の中の主要な塗布組成物に対して、凝集促進性有機溶媒を用いないか、または凝集促進性有機溶媒に該当しない溶媒を用いた以外は本発明の塗布組成物と同様にして、比較用の光拡散層塗布組成物(RH−1)〜(RH−7)を調製した。これらの主要構成因子も表3に示した。
【0278】
【表3】

【0279】
[低屈折率層用塗布液(L−1)の調製]
屈折率1.42の熱架橋性含フッ素ポリマー“JN7228A”{固形分濃度6質量%、JSR(株)製}13.0質量部に、シリカ微粒子のMEK分散液“MEK−ST−L”{平均粒径45nm、固形分濃度30質量%、日産化学工業(株)製}1.3質量部、前記合成例3で製造したオルガノシラン化合物(OS)溶液0.6質量部、メチルエチルケトン5.0質量部及びシクロヘキサノン0.6質量部を添加して攪拌した。孔径1μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して、低屈折率層形成用塗布液(L−1)を調製した。この塗布液による塗膜の屈折率は1.42であった。
【0280】
[低屈折率層用塗布液(L−2)の調製]
屈折率1.42の熱架橋性含フッ素ポリマー“JN7228A”{固形分濃度6質量%、JSR(株)製}15.0質量部に、シリカ微粒子のMEK分散液“MEK−ST”{平均粒径15nm、固形分濃度30質量%、日産化学工業(株)製}0.6質量部、シリカ微粒子のMEK分散液“MEK−ST−L”{平均粒径45nm、固形分濃度30質量%、日産化学工業(株)製}0.8質量部、前記合成例3で製造したオルガノシラン化合物(OS)溶液0.4質量部、及びメチルエチルケトン3.0質量部、シクロヘキサノン0.6質量部を添加して攪拌した。孔径1μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して、低屈折率層形成用塗布液(L−2)を調製した。この塗布液による塗膜の屈折率は1.42であった。
【0281】
[低屈折率層用塗布液(L−3)の調製]
(中空のシリカ微粒子のMEK分散液の調製)
中空シリカ微粒子ゾル{イソプロピルアルコールシリカゾル、触媒化成工業(株)製、平均粒子径60nm、シェル厚み10nm、シリカ濃度20質量%、シリカ粒子の屈折率1.31、特開2002−79616号公報の調製例4に準じサイズを変更して作製}500質量部に、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)30質量部、及びジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート「ケロープEP−12」{ホープ製薬(株)製)1.5質量部加え混合した後に、イオン交換水9質量部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8質量部を添加した。この分散液500gにほぼシリカの含量一定となるようにメチルエチルケトンを添加しながら、圧力20kPaで減圧蒸留による溶媒置換を行った。分散液に異物の発生はなく、固形分濃度をメチルエチルケトンで調整し20質量%にしたときの粘度は25℃で5mPa・sであった。得られた分散液のイソプロピルアルコールの残存量をガスクロマトグラフィーで分析したところ、1.5質量%であった。
【0282】
(低屈折率層用塗布液L−3の調製)
屈折率1.42の熱架橋性含フッ素ポリマー“JN7228A”{固形分濃度6質量%、JSR(株)製}13.0質量部に、上記中空のシリカ微粒子のMEK分散液(屈折率1.31、平均粒径60nm、固形分濃度20質量%)1.95質量部、前記合成例3で製造したオルガノシラン化合物(OS)溶液0.6質量部、及びメチルエチルケトン4.35質量部、シクロヘキサノン0.6質量部を添加して攪拌した。孔径1μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して、低屈折率層形成用塗布液(L−3)を調製した。この塗布液による塗膜の屈折率は1.40であった。
【0283】
[低屈折率層用塗布液(L−4)の調製]
トリフルオロプロピルトリメトキシシラン100g、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン200g、テトラエトキシシラン1700g、イソブタノール200g、アルミニウムアセチルアセトナート6gをフラスコに仕込み、撹拌した。次に0.25Nの酢酸水500gを少量ずつ滴下した。滴下終了後、室温で3時間撹拌した。その後、ジアセトンアルコール600gを添加して、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して低屈折率層用塗布液(L−4)を調製した。この塗布液による塗膜の屈折率は1.44であった。
【0284】
[低屈折率層用塗布液(L−5)の調製]
前記合成例2で製造したパーフルオロオレフィン共重合体(PF−1)の溶液(固形分濃度30質量%)10.5質量部に、シリカ微粒子のメチルエチルケトン分散液“MEK−ST−L”{平均粒径45nm、固形分濃度30質量%、日産化学工業(株)製}4.5質量部、アクリロイル基を有するポリシロキサン化合物“X−22−164C”{信越化学工業(株)製}0.15質量部、光重合開始剤「イルガキュア907」{チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製}0.23質量部、前記合成例3で製造したオルガノシラン化合物(OS)溶液2.0質量部、メチルエチルケトン81.2質量部及び、シクロヘキサノン2.8質量部を添加して撹拌した。孔径1μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して、低屈折率層形成用塗布液(L−5)を調製した。この塗布液による塗膜の屈折率は1.44であった。
【0285】
[低屈折率層用塗布液(L−6)の調製]
前記合成例2で製造したパーフルオロオレフィン共重合体(PF−1)の溶液(固形分濃度30質量%)10.5質量部に、前記低屈折率層用塗布液L−3において調製した中空のシリカ微粒子のMEK分散液(屈折率1.31、平均粒径60nm、固形分濃度20質量%)6.75質量部、アクリロイル基を有するポリシロキサン化合物“X−22−164C”{信越化学工業(株)製}0.15質量部、光重合開始剤「イルガキュア907」{チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製}0.23質量部、前記合成例3で製造したオルガノシラン化合物(OS)溶液2.0質量部、メチルエチルケトン81.2質量部及び、シクロヘキサノン2.8質量部を添加して撹拌した。孔径1μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して、低屈折率層形成用塗布液(L−6)を調製した。この塗布液による塗膜の屈折率は1.41であった。
【0286】
[帯電防止層用塗布液(AS)の調製]
市販の透明帯電防止用塗料「ペルトロンC−4456S−7」(固形分濃度45%、日本ペルノックス(株)製)100質量部に、メチルエチルケトンを20質量部加えて撹拌した液を帯電防止層形成用塗布液(AS)として用いた。「ペルトロンC−4456S−7」は、分散剤を用いて分散された導電性微粒子ATOを含有する透明帯電防止用塗料である。この塗料による塗膜の硬化後の屈折率は1.57であった。
【0287】
[反射防止フィルムの作製]
(帯電防止層の塗設)
膜厚80μm、幅1340mmのトリアセチルセルロースフィルム“TAC−TD80U”{富士写真フイルム(株)製}上に、帯電防止層用塗布液(ASL)を、スロットダイ塗布方式で、搬送速度25m/分の条件で塗布した。100℃で150秒乾燥した後、窒素パージ(酸素濃度0.5%以下)しながら、240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量500mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させて、帯電防止層(ASL)を有するフィルム(帯電防止フィルム)の試料を作製した。
【0288】
(光拡散層、低屈折率層屈折率層の塗設)
膜厚80μm、幅1340mmのトリアセチルセルロースフィルム“TAC−TD80U”{富士写真フイルム(株)製}上に、又は、前記で作製した帯電防止フィルムの帯電防止層の上に、前記光拡散層用塗布液(H−1)〜(H−19)、並びに比較用塗布液(RH−1)〜(RH−7)をスロットダイ塗布方式で、搬送速度25m/分の条件で塗布した。60℃で150秒乾燥の後、窒素パージ(酸素濃度0.5%以下)しながら、160W/cmの空冷メタルハライドランプ{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照度400mW/cm、照射量250mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させて、光拡散層を有するフィルム試料を作製した。
【0289】
次ぎに前記光拡散層の上に、低屈折率層用塗布液(L−1)〜(L−6)をスロットダイ塗布方式で、搬送速度25m/分の条件で塗布した。それぞれの低屈折率層用塗布液の乾燥、硬化条件は以下のとおりとした。
【0290】
低屈折率層用塗布液(L−1)〜(L−3):120℃で150秒乾燥の後、更に140℃で8分乾燥させてから、窒素パージ(酸素濃度0.5体積%以下)しながら、240W/cmの空冷メタルハライドランプ{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照度400mW/cm、照射量900mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、低屈折率層(最外層)を形成した。
【0291】
低屈折率層用塗布液(L−4):120℃で150秒乾燥の後、更に140℃で20分熱処理して塗布層を硬化させ低屈折率層(最外層)を形成した。
【0292】
低屈折率層用塗布液(L−5)及び(L−6):90℃で30秒乾燥の後、窒素パージ(酸素濃度0.5%以下)しながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600mW/cm、照射量600mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ低屈折率層(最外層)を形成した。
【0293】
本発明に係る反射防止フィルム試料の、前記帯電防止層、前記光拡散層及び前記低屈折率層の塗設組み合わせを、表4に記載した。
【0294】
【表4】

【0295】
上記表4において、各層の膜厚は、各塗設層の乾燥、UV照射後又は熱処理後の膜厚を示す。
【0296】
[反射防止フィルムの評価]
得られた各反射防止フィルム試料について、以下の項目の評価を行った。結果を表5に示す。
【0297】
(1)表面抵抗の評価
光学機能フィルム試料の低屈折率層(最外層)を有する側の表面の表面抵抗を、超絶縁抵抗/微小電流計“TR8601”{(株)アドバンテスト製}を用いて、25℃、60%RHの条件下で測定した。
【0298】
(2)塵埃除去性の評価
光学機能フィルム試料をモニターに張り付け、モニター表面に塵埃(布団、衣服の繊維屑)を振りかけた。クリーニングクロスで塵埃を拭き取り、塵埃の除去性を調べ、下記3段階で評価した。
○:塵埃が完全に取り除けたもの。
△:塵埃が若干残ったもの(許容範囲内)。
×:塵埃がかなり残ったもの。
【0299】
(3)防眩性の評価
作製した光学機能フィルム試料にルーバーなしのむき出し蛍光灯(8000cd/cm)を映し、その反射像のボケの程度を以下の基準で評価した。
◎ :蛍光灯の輪郭がほとんどわからない。
○ :蛍光灯の輪郭がわずかにわかる。
△ :蛍光灯の周囲が白っぽく見えるが、輪郭は識別できる(許容範囲内)。
△×:蛍光灯がほとんどボケない。
× :蛍光灯がクッキリ見える。
【0300】
(4)平均反射率の評価
分光光度計“V−550”{日本分光(株)製}を用いて、380〜780nmの波長領域において、積分球を用いて、入射角5゜における分光反射率を測定した。分光反射率の評価において、450〜650nmの平均反射率を用いた。
【0301】
【表5】

【0302】
表5の結果より、樹脂粒子と凝集促進性有機溶媒のI/O値の差が1.0以上離れている本発明の試料No.101〜126は、比較例試料No.127〜133(凝集性有機溶媒を用いないか、または有機溶媒を用いても樹脂粒子とのI/O値差が1.0未満の有機溶媒を用いた試料)に比べて、防眩性が強く発現されていることが分かる。
【0303】
実施例2
[画像表示装置の評価]
実施例1−1〜1−26の反射防止フィルム(試料101〜126)を、画像表示装置(TN、STN、IPS、VA、又はOCBのモードの、透過型、反射型又は半透過型の液晶表示装置、及び、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、陰極管表示装置(CRT))のディスプレイ面に装着した。 本発明の反射防止フィルムを用いた画像表示装置は、いずれも防眩性に優れ、また反射防止性、防塵性、耐擦傷性、防汚性にも優れていた。
また、切断面の面積が100μm以上の凹は存在せず、画素サイズが100ppi(100ピクセル/インチ:長さ1インチ当たりに100画素がある)における画像表示装置におけるギラツキ故障の発生が無かった。
【0304】
実施例3
[偏光板用保護フィルムの作製]
1.5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を50℃に保温した鹸化液を調整した。さらに、0.005モル/Lの希硫酸水溶液を調製した。
【0305】
実施例1−1〜1−26の反射防止フィルム(試料101〜126)において、低屈折率層(最外層)を有する側とは反対側の透明支持体の表面を、上記鹸化液を用いて鹸化処理した。鹸化処理した透明支持体表面の水酸化ナトリウム水溶液を、水で十分に洗浄した後、上記の希硫酸水溶液で洗浄し、さらに希硫酸水溶液を水で十分に洗浄して、100℃で十分に乾燥させた。
反射防止フィルムの鹸化処理した側の透明支持体の表面の水に対する接触角を評価したところ、40゜以下であった。このようにして、偏光板用保護フィルムを作製した。
【0306】
[偏光板の作製]
特開2002−86554号公報に記載の偏光膜の一方の面に、PVA{(株)クラレ製“PVA−117H”}3質量%水溶液を接着剤として用いて、前記で作製した本発明の反射防止フィルム(偏光板用保護フィルム)の、鹸化処理した透明支持体(トリアセチルセルロース)面を貼り合わせた。さらに、偏光膜のもう片方の面には、上記と同様にして鹸化処理したトリアセチルセルロースフィルム{富士写真フィルム(株)製「フジタック」、レターデーション値3.0nm}を、同じ接着剤を用いて貼り合わせた。このようにして、本発明の偏光板を作製した。
【0307】
[画像表示装置の評価]
このようにして作製した本発明の偏光板を、TN、STN、IPS、VA、OCBのモードの透過型、反射型、又は、半透過型の液晶表示装置に装着した。このようにして本発明の偏光板を装着した液晶表示装置は、いずれも防眩性に優れ、また反射防止性、防塵性、耐擦傷性、防汚性に優れていた。
【0308】
なお、種々公知化されている偏光膜を用い、また本発明の反射防止フィルム(偏光板用保護フィルム)を用いて、上記と同様に作製した偏光板においても同様の結果が得られた。
【0309】
実施例4
[偏光板の作製]
光学補償フィルム「ワイドビューフィルムSA 12B」{富士写真フイルム(株)製}の、光学異方性層を有する側とは反対側の表面を、実施例3と同様の条件で鹸化処理した。
次ぎに、実施例3と同様な方法で、実施例3で用いたものと同様の偏光膜の一方の面に、実施例3で作製した反射防止フィルム(偏光板用保護フィルム)の、鹸化処理した側の面を貼り合わせ、もう一方の面に、前記光学補償フィルムの鹸化処理した側の面を貼り合わせて、本発明の偏光板を作製した。
【0310】
[画像表示装置の評価]
このようにして作製した本発明の偏光板を、TN、STN、IPS、VA、OCBのモードの透過型、反射型、又は、半透過型の液晶表示装置に装着した。このようにして本発明の偏光板を装着した液晶表示装置は、光学補償フィルムを用いていない偏光板を装着した液晶表示装置よりも、いずれも防眩性に優れ、また明室でのコントラストに優れ、上下左右の視野角が広く、さらに、反射防止性、防塵性、耐擦傷性、防汚性に優れていた。
特に、樹脂粒子の光散乱効果により、下方向の視野角が顕著に広がり、左右方向の黄色味が改善されていた。
【0311】
なお、種々公知化されている偏光膜を用い、また本発明の光学機能フィルム(偏光板用保護フィルム)及び片面鹸化光学補償フィルムを用いて、上記と同様に作製した偏光板においても同様の結果が得られた。
【0312】
実施例5
[画像表示装置の評価]
実施例1−1〜1−26の反射防止フィルム(試料101〜126)を、有機EL表示装置に装着したところ、いずれも防眩性に優れ、また反射防止性、防塵性、耐擦傷性、防汚性に優れていた。
【0313】
実施例6
[偏光板の作製と画像表示装置の評価]
偏光膜の一方の面に実施例3で作製した偏光板用保護フィルム、もう一方の面にλ/4板を有する偏光板を、実施例4と同様にして作製した。得られた偏光板を有機EL表示装置に装着したところ、防眩性が高く、また偏光板を貼ったガラス表面からの光の反射もカットされ、極めて視認性の高い表示装置が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射防止フィルムの光拡散層を形成するための光拡散層用塗布組成物であって、樹脂粒子と、該樹脂粒子とのI/O値の差が1.0以上である有機溶媒とを含有することを特徴とする光拡散層用塗布組成物。
【請求項2】
前記樹脂粒子とのI/O値の差が1.0未満である有機溶媒をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の光拡散層用塗布組成物。
【請求項3】
前記樹脂粒子とのI/O値の差が1.0以上である有機溶媒のI/O値が1.0以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光拡散層用塗布組成物。
【請求項4】
前記樹脂粒子とのI/O値の差が1.0以上である有機溶媒が、その分子構造の中に水酸基を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光拡散層用塗布組成物。
【請求項5】
前記樹脂粒子とのI/O値の差が1.0以上である有機溶媒が、その分子構造の中に、イオウ原子又は窒素原子を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光拡散層用塗布組成物。
【請求項6】
全有機溶媒量に対して、前記樹脂粒子とのI/O値の差が1.0以上である有機溶媒を3質量%〜40質量%の範囲で含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光拡散層用塗布組成物。
【請求項7】
前記樹脂粒子とのI/O値の差が1.0以上である有機溶媒の沸点が90℃〜250℃であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光拡散層用塗布組成物。
【請求項8】
前記樹脂粒子とのI/O値の差が1.0未満である有機溶媒の沸点が70℃〜150℃であることを特徴とする請求項1〜7に記載の光拡散層用塗布組成物。
【請求項9】
前記樹脂粒子のI/O値が2.0以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の光拡散層用塗布組成物。
【請求項10】
透明支持体上に、請求項1〜10のいずれかに記載の光拡散層用塗布組成物から形成される光拡散層を有する反射防止フィルム。
【請求項11】
前記樹脂粒子とのI/O値の差が1.0以上である有機溶媒を含有していることを特徴とする請求項10に記載の反射防止フィルム。
【請求項12】
前記光拡散層にマトリックス形成用バインダーをさらに含み、該マトリックス形成用バインダーの屈折率が1.45〜1.90であり、かつ該マトリックス形成用バインダーと前記樹脂粒子の屈折率差が0〜0.30であることを特徴とする請求項10又は11に記載の反射防止フィルム。
【請求項13】
前記光拡散層の膜厚が3μm〜10μmの範囲であり、かつ前記樹脂粒子の平均粒径が該光拡散層の膜厚に対して、30%〜100%の範囲であることを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項14】
前記光拡散層の上に、光拡散層よりも屈折率が低い低屈折率層が設けられていることを特徴とする請求項10〜13のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項15】
前記低屈折率層が中空シリカ微粒子を含有することを特徴とする請求項14に記載の反射防止フィルム。
【請求項16】
前記透明支持体上のいずれかの層が、下記一般式(a)で表されるオルガノシラン化合物及びその誘導体の少なくともいずれかを含有することを特徴とする請求項10〜15のいずれかに記載の反射防止フィルム。
一般式(a) (R10s−Si(Z)4-s
〔一般式(a)中、R10は置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表す。Zは水酸基または加水分解可能な基を表す。sは1〜3の整数を表す。〕
【請求項17】
透明支持体上いずれかの層を、塗布液をダイコート法により塗布することにより形成することを特徴とする請求項10〜16のいずれかに記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項18】
偏光膜と、該偏光膜の両側に設けられた保護フィルムを有する偏光板において、該保護フィルムの少なくとも一方が、請求項10〜16のいずれかに記載の反射防止フィルムであることを特徴とする偏光板。
【請求項19】
請求項10〜16のいずれかに記載の反射防止フィルム、または請求項18に記載の偏光板が画像表示面に配置されていることを特徴とする画像表示装置。
【請求項20】
前記画像表示装置が、TN、STN、IPS、VA又はOCBモードの、透過型、反射型又は半透過型の液晶表示装置であることを特徴とする請求項19に記載の画像表示装置。

【公開番号】特開2006−206775(P2006−206775A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−21738(P2005−21738)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】