説明

光拡散層転写シート、光拡散板の製造方法、光拡散板、拡散レンズアレイシート、フレネルレンズシート、透過型スクリーン及び背面投射型ディスプレイ装置

【課題】 光拡散剤が混入された光拡散層とこの光拡散層が接着された透明基板とを備えた光拡散板を製造するのに際して、その製造工程に困難を要することなくコストを低減し、光拡散層の薄型化を図って解像度の低下を抑制し、かつ、種々の不具合が生じるのを抑制する。
【解決手段】 光拡散剤が混入されるとともに常温あるいは加熱によって粘着性を有し、かつ、活性エネルギー線が照射されたときに硬化して接着性を発揮する光拡散転写層51と、光拡散転写層51の一方の面51Aに貼着され、光拡散転写層51が硬化した後にこの光拡散転写層51から離型可能な第1の離型フィルム52と、光拡散転写層51の他方の面51Bに貼着され、光拡散転写層51が硬化する前にこの光拡散転写層51から離型可能な第2の離型フィルム53と、を備えた光拡散層転写シートを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばリアプロジェクションテレビ等の背面投射型ディスプレイ装置の透過型スクリーンに用いられる光拡散板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、透過型スクリーンを備えた背面投射型ディスプレイ装置として知られるリアプロジェクションテレビは、光源としてのプロジェクタから投射される映像光を、反射鏡によって反射させて略長方形平板状をなす透過型スクリーンの背面に入射させることにより、この透過型スクリーンの前面側に位置する観察者が、透過型スクリーンを透過して出射する映像光を観察することができるように構成されたものである。
【0003】
透過型スクリーンは、入射光の方向を整えて出射光とするフレネルレンズシートと、このフレネルレンズシートからの出射光を拡散させるレンチキュラーレンズアレイシート(拡散レンズアレイシート)とを備えている。
このような透過型スクリーンにおけるレンチキュラーレンズアレイシートは、そのレンチキュラーレンズアレイ(拡散レンズアレイ)によってスクリーンの左右方向(水平方向)に拡散させた光をスクリーンの上下方向(垂直方向)に拡散させるための光拡散板を備えており、また、フレネルレンズシートも、レンチキュラーレンズアレイシートの拡散作用を補うための光拡散板を備えていることがある。
【0004】
光拡散板としては、例えば、光拡散剤が混入された光拡散層とこの光拡散層が接着された透明基板とを備えたものが一般的に用いられている。
このような光拡散板の製造方法の一例として、光拡散剤が混入された樹脂を含んだ溶剤を透明基板に塗布して乾燥させることにより、光拡散層が透明基板に接着されてなる光拡散板を得る方法(例えば特許文献1参照)や、光拡散フィルムを接着剤で透明基板に接着したり、光拡散剤が混入された樹脂を共押出成形することにより、光拡散板を得る方法が知られている。
【特許文献1】特開2004−77781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前者の方法は、溶剤を透明基板に塗布する工程に困難を要して、光拡散板の製造コストの増大を招くという問題があり、また、後者の方法は、光拡散層の薄型化が困難となって解像度の低下を招くという問題や、光拡散フィルムと透明基板とに用いられる材料が異なる場合に環境特性によって反り・浮き等の不具合が生じたり、共押出成形では光拡散剤を分散配合させることに起因してシートの外観不良や成形精度の低下、強度不足等の不具合が生じるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、光拡散剤が混入された光拡散層とこの光拡散層が接着された透明基板とを備えた光拡散板を製造するのに際して、その製造工程に困難を要することなくコストを低減し、光拡散層の薄型化を図って解像度の低下を抑制し、かつ、種々の不具合が生じるのを抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は、光拡散剤が混入されるとともに常温あるいは加熱によって粘着性を有し、かつ、活性エネルギー線が照射されたときに硬化して接着性を発揮する光拡散転写層と、前記光拡散転写層の一方の面に貼着されたフィルムと、を備えていることを特徴とする光拡散層転写シートを提供するものである。
そして、本発明の光拡散板の製造方法は、光拡散剤が混入された光拡散層とこの光拡散層が接着された透明基板とを備えた光拡散板の製造方法であって、本発明の光拡散層転写シートの前記光拡散転写層を前記透明基板に貼着する工程と、前記透明基板に貼着された前記光拡散転写層に活性エネルギー線を照射し、前記光拡散転写層を硬化させて前記透明基板に接着する工程と、を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光拡散層転写シートによれば、その光拡散転写層自体が粘着性を有しているため、この光拡散転写層を透明基板に直接貼着してから硬化させるだけで、つまり、光拡散層転写シートにおける光拡散転写層を透明基板に転写するだけで、光拡散層が透明基板に接着されてなる光拡散板を容易に製造することができる。
このような光拡散板の製造工程は、ドライプロセスであって従来のような溶剤を透明基板に塗布する工程が必要にならないため、この製造工程に困難を要することがなく、光拡散板の製造コストを低減することができる。また、光拡散転写層は、光拡散剤が混入されるとともに粘着性を有し、かつ、活性エネルギー線が照射されたときに硬化して接着性を発揮する材料を含んだ溶剤、例えば粘接着剤を含んだ溶剤を、フィルムに塗布して乾燥させることによって形成可能であるため、透明基板に転写形成された光拡散層の薄型化を図って解像度の低下を抑制することができる。さらに、光拡散層を透明基板に転写形成することから、環境特性によって前述したような種々の不具合が生じてしまうようなおそれも少ない。
【0009】
ここで、前述のようにして製造された光拡散板が、例えばフレネルレンズシートに備えられる場合には、前記フィルムを前記光拡散転写層から離型させることなくそのままの状態で保護フィルムとして使用することもできるが、前記フィルムを前記光拡散転写層から離型させることもできる。
つまり、本発明の光拡散層転写シートにおいて、前記フィルムは、前記光拡散転写層が硬化した後にこの光拡散転写層から離型可能な離型フィルムであってもよく、この場合、本発明の光拡散板の製造方法において、前記光拡散転写層を硬化させて前記透明基板に接着する工程の後に、硬化した前記光拡散転写層から前記離型フィルムを離型させる工程を備えていることになる。
このような光拡散板の製造方法では、光拡散転写層に貼着されている側の離型フィルムの表面形状を適宜選定することにより、この離型フィルムの表面形状を、透明基板に接着された光拡散層の表面に転写することができる。つまり、例えば拡散レンズアレイシートに備えられる光拡散板の場合には、その光拡散層の表面に平滑性を容易に付与することができるし、例えばフレネルレンズシートに備えられる光拡散板の場合には、その光拡散層の表面にマット性を容易に付与することができる。
【0010】
また、本発明の光拡散層転写シートは、前記光拡散転写層の他方の面に貼着され、前記光拡散転写層が硬化する前にこの光拡散転写層から離型可能な第2の離型フィルムを備えていてもよく、この場合、前記光拡散層転写シートの前記光拡散転写層を前記透明基板に貼着する工程の前に、本発明の光拡散層転写シートの前記第2の離型フィルムを前記光拡散転写層から離型させる工程を備えていることになる。
このような光拡散層転写シートでは、その取扱い性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付した図面を参照しながら説明する。
本実施形態による背面投射型ディスプレイ装置としてのリアプロジェクションテレビ(全体構成は図示を省略する)は、筐体と、前面側(図1中の右側)を筐体の外部へ露出させるとともに背面側(図1中の左側)を筐体の内部へ露出させた略長方形平板状をなす透過型スクリーン10(図1参照)と、筐体内に配置され、透過型スクリーンの背面に対して映像光Lを投射する光源としてのプロジェクタと、同じく筐体内に配置され、プロジェクタから投射される映像光Lの光路を偏向させる少なくとも1枚の反射鏡とを備えている。
【0012】
透過型スクリーン10は、図1に示すように、フレネルレンズシート20と、レンチキュラーレンズアレイシート(拡散レンズアレイシート)30とを備えている。フレネルレンズシート20は、レンチキュラーレンズアレイシート30の拡散作用を補うための光拡散板55Aと、入射光の方向を整えて出射光とするフレネルレンズ21とを有している。レンチキュラーレンズアレイシート30は、フレネルレンズシート20からの出射光をスクリーンの左右方向(水平方向)に拡散させるレンチキュラーレンズアレイ(拡散レンズアレイ)31と、このレンチキュラーレンズアレイ31からの出射光をスクリーンの上下方向(垂直方向)に拡散させる光拡散板55Bとを有している。
これらフレネルレンズシート20、レンチキュラーレンズアレイシート30は、透過型スクリーン10の背面側(入射側、図1中の左側)から前面側(出射側、図1中の右側)にかけて順次配置されているとともに、互いに略平行となるように配置されている。
【0013】
フレネルレンズシート20は、その入射側に光拡散板55Aが配置されるとともに、その出射側にフレネルレンズ21が配置されるように構成されている。
光拡散板55Aは、詳細については後述するが、光拡散剤が混入された光拡散層51と、この光拡散層51が接着された透明基板54とを備えたものであり、その入射側に光拡散層51が配置されるとともに、その出射側に透明基板54が配置されるように構成されている。
【0014】
レンチキュラーレンズアレイシート30は、その入射側にレンチキュラーレンズアレイ31が配置されるとともに、その出射側に光拡散板55Bが配置されるように構成されており、レンチキュラーレンズアレイ31と光拡散板55Bとが接着剤層33によって互いに接着されている。
レンチキュラーレンズアレイ31は、その入射側に略半円柱状をなす複数のシリンドリカルレンズ(単位レンズ)が互いに略平行となるように配列されてなるレンズアレイが設けられ、その出射側に複数のシリンドリカルレンズによるストライプ状の非集光部を遮光する遮光層(ブラック・ストライプ)32が設けられて構成されている。
光拡散板55Bは、詳細については後述するが、光拡散剤が混入された光拡散層51と、この光拡散層51が接着された透明基板54とを備えたものであり、その入射側に光拡散層51が配置されるとともに、その出射側に透明基板54が配置されるように構成されている。
【0015】
以下、上述のような構成とされた透過型スクリーン10のフレネルレンズシート20及びレンチキュラーレンズアレイシート30に用いられる光拡散板55A,55Bの製造方法について説明する。
まず、図2に示すように、光拡散剤が混入された光拡散転写層51と、光拡散転写層51の一方の面51Aに貼着された第1の離型フィルム52と、光拡散転写層51の他方の面51Bに貼着された第2の離型フィルム53とを備えた光拡散層転写シート50を用意する。
【0016】
光拡散転写層51は、粘着性を有するとともに活性エネルギー線(例えば紫外線)が照射されたときに硬化して接着性を発揮する活性エネルギー線硬化型樹脂に、光拡散剤が混入されたものである。この光拡散転写層51の厚みは、小さすぎると光拡散転写層51の接着性が低下し、大きすぎると後述する溶剤の塗布が困難になることから、5〜100μmに設定されている。
光拡散剤としては、例えば樹脂ビーズやガラスビーズ等が用いられる。ここで、光拡散剤の平均粒径は、小さすぎると光の散乱成分が大きくなり、逆に大きすぎると光の散乱ムラが大きくなってしまうことから、平均粒径が5〜30μmに設定されており、また、光拡散剤の添加量は、少なすぎると拡散特性が小さくなり、多すぎると光拡散転写層51が硬化したときの接着性が低下してしまうことから、活性エネルギー線硬化型樹脂に対して1〜30重量%に設定されている。
【0017】
活性エネルギー線硬化型樹脂としては、例えば紫外線硬化型フォトポリマーが用いられ、具体的には、アクリル系ポリマー、アクリル系モノマー及び光開始剤等を含んだ公知の粘接着剤が用いられる。
このような活性エネルギー線硬化型樹脂の特性については、硬化する前の状態で、再剥離性を確保するために例えば100g/inch程度の粘着性を有し、硬化した後の状態で、接着性を確保するために例えばセロテープ(登録商標)密着性が良好であることが要求される。
【0018】
第1の離型フィルム52としては、例えば光拡散転写層51に貼着される面に対して表面処理が施されていないPETフィルムが用いられ、この第1の離型フィルム52は、光拡散転写層51が硬化した後の状態において光拡散転写層51から容易に離型可能とされている。
第2の離型フィルム53としては、例えば光拡散転写層51に貼着される面に対してフッ素処理、シリコン処理等の表面処理(離型処理)が施されたPETフィルムが用いられ、この第2の離型フィルム53は、光拡散転写層51が硬化する前の状態において光拡散転写層51から容易に離型可能とされている。
つまり、第1の離型フィルム52は、第2の離型フィルム53よりも、光拡散転写層51に対する離型性が低くなっているのである。
【0019】
このような光拡散転写層51の両面51A,51Bに第1の離型フィルム52と第2の離型フィルム53とがそれぞれ貼着されてなる光拡散層転写シート50は、まず、第1の離型フィルム52に対し、光拡散剤が混入された活性エネルギー線硬化型樹脂を含んだ溶剤を塗布して乾燥させて、光拡散転写層51の一方の面51Aに第1の離型フィルム52が貼着された状態とし、次いで、光拡散転写層51の他方の面51Bに対し、第2の離型フィルム53を貼着することによって得ることができる。
【0020】
このような構成とされた光拡散層転写シート50を用いて光拡散板55A,55Bを製造するには、まず、図3(a)に示すように、光拡散層転写シート50の第2の離型フィルム53を光拡散転写層51から離型させて、光拡散転写層51の他方の面51Bを露出させる。
次に、図3(b)に示すように、ロールRを用いて、光拡散層転写シート50の光拡散転写層51を、その他方の面51Bが例えばアクリル−スチレン共重合樹脂等の透明基板54の表面に密着するようにして、透明基板54に貼着する。このとき、光拡散層51が常温で粘着性を有する場合には、そのまま光拡散層51を透明基板54に貼着すればよい。また、光拡散層51が加熱によって粘着性を有する場合には、ロールRに対して約100°Cの熱を加え、このロールRからの熱によって光拡散層51に粘着性を発揮させるようにして、光拡散層51を透明基板54に貼着する。
【0021】
そして、図3(c)に示すように、光拡散層転写シート50側(図3(c)中の上側)に配置した活性エネルギー線発生手段Uから、第1の離型フィルム52を透過させるようにして、活性エネルギー線を光拡散転写層51に照射する。これにより、光拡散転写層51を硬化させて透明基板54に接着させる。このとき、第1の離型フィルム52が活性エネルギー線を透過させない特性を有しているならば、活性エネルギー線発生手段Uを透明基板54側(図3(c)中の下側)に配置し、透明基板54を透過させるようにして、活性エネルギー線を光拡散転写層51に照射すればよい。
最後に、図3(d)に示すように、硬化した光拡散転写層51から第1の離型フィルム52を離型させることにより、光拡散剤が混入された光拡散層51とこの光拡散層51が接着された透明基板54とを備えた光拡散板55を製造することができる。
【0022】
ここで、上述のようにして製造された光拡散板55が、レンチキュラーレンズアレイシート30に備えられる光拡散板55Bである場合、その光拡散層51のヘイズ度は70〜90%に設定される。
また、光拡散板55Bはレンチキュラーレンズアレイ41に対して接着剤層33によって接着されるため、光拡散層51の一方の面51Aには表面平滑性が付与されており、具体的には、表面粗さRz(JIS B 0601−1994に規定される十点平均粗さRz)が1μm以下、光沢度が90以上に設定されている。これは、硬化する前の光拡散転写層51の一方の面51Aに対して貼着された第1の離型フィルム52の表面形状を平滑面とし、この表面形状を光拡散転写層51の一方の面51Aに転写することによって実現できる。
【0023】
なお、本実施形態による光拡散板55Bは、拡散レンズアレイシートの一例としてのレンチキュラーレンズアレイシート30に備えられるものとして説明されているが、これに限定されることはない。
例えば、本実施形態による光拡散板55Bが備えられる拡散レンズアレイシートは、その拡散レンズアレイの入射側に、複数の単位レンズがマトリックス状に配列されてなるレンズアレイが設けられたマイクロレンズアレイシートであってもよい。また例えば、本実施形態による光拡散板55Bが備えられる拡散レンズアレイシートは、その拡散レンズアレイの入射側に、複数のシリンドリカルレンズ(単位レンズ)が略平行に配列された第1のレンズアレイと複数のシリンドリカルレンズ(単位レンズ)が略平行に配列された第2のレンズアレイとがそれらのシリンドリカルレンズの長さ方向を互いに交差させるように同一平面上に配置されてなるレンズアレイが設けられたクロスレンチレンズシートであってもよい。さらに例えば、その拡散レンズアレイの入射側に、映像光を反射して拡散させる複数の単位レンズが配列されてなるレンズアレイが設けられたプリズムレンズアレイシートであってもよい。
【0024】
ここで、上述のようにして製造された光拡散板55が、フレネルレンズシート20に備えられる光拡散板55Aである場合、その光拡散層51のヘイズ度は50〜70%に設定される。
また、光拡散板55Aにおける光拡散層51の一方の面51Aには、迷光を防止するために表面マット性が付与されており、具体的には、表面粗さRz(JIS B 0601−1994に規定される十点平均粗さRz)が2〜6μm、光沢度が60以下に設定されている。これは、図4に示すように、硬化する前の光拡散転写層51の一方の面51Aに対して貼着された第1の離型フィルム52の表面形状をマット面とし、この表面形状を光拡散転写層51の一方の面51Aに転写することによって実現できる。
【0025】
さらに、光拡散板55Aの光拡散層51には、この光拡散層51の一方の面51Aへのホコリの付着を防止するために帯電防止性が付与されており、具体的には、光拡散層51に帯電防止剤が混入されている。これは、光拡散板55Aの製造工程において、光拡散剤に加えて帯電防止剤が混入された活性エネルギー線硬化型樹脂を含んだ溶剤を第1の離型フィルム52に塗布して乾燥させることによって実現できる。
なお、このようなフレネルレンズシート20に備えられる光拡散板55Aの場合、その製造工程の最後で第1の離型フィルム52を光拡散転写層51から剥離させず、この第1の離型フィルム52をそのままの状態で保護フィルムとして使用することもできる。
【0026】
以上説明したような本実施形態の光拡散層転写シート50によれば、その光拡散転写層51自体が粘着性を有しているため、この光拡散転写層51を透明基板54に直接貼着してから硬化させるだけで、つまり、光拡散層転写シート50における光拡散転写層51を透明基板54に転写するだけで、光拡散層51が透明基板54に接着されてなる光拡散板55を容易に製造することができる。
このような光拡散板55の製造工程は、ドライプロセスであって従来のような溶剤を透明基板54に塗布する工程が必要にならないため、この製造工程に困難を要することがなく、光拡散板55の製造コストを低減することができる。また、光拡散転写層51は、光拡散剤が混入されるとともに粘着性を有し、かつ、活性エネルギー線が照射されたときに硬化して接着性を発揮する粘接着剤を含んだ溶剤を、第1の離型フィルム52に塗布して乾燥させることによって形成可能であるため、透明基板54に転写形成された光拡散層51の薄型化を図って解像度の低下を抑制することができる。さらに、光拡散層51を透明基板54に転写形成することから、環境特性によって前述したような種々の不具合が生じてしまうようなおそれも少ない。
【0027】
また、本実施形態では、光拡散層転写シート50における第1の離型フィルム52を、光拡散板55の製造工程の最後で光拡散転写層51から離型させることから、第1の離型フィルム52の表面形状を適宜選定することにより、この第1の離型フィルム52の表面形状を、透明基板54に接着された光拡散層51の表面に転写することができる。そのため、レンチキュラーレンズアレイシート30(拡散レンズアレイシート)用の光拡散板55Bにおける光拡散層51の一方の面51Aに対して平滑性を付与したり、フレネルレンズシート20用の光拡散板55Aにおける光拡散層51の一方の面51Aに対してマット性を付与したりすることが容易となる。なお、マット性を付与するために用いられるマットフィルムとしては、例えばサンドブラスト処理、ケミカルマット処理、練り込みマット処理されたフィルムが使用できる。
【0028】
さらに、本実施形態では、光拡散層転写シート50は、その光拡散転写層51の一方の面51A側に第1の離型フィルム52が貼着されているのに加え、その光拡散転写層51の他方の面51B側に第2の離型フィルム53が貼着されていることから、光拡散層転写シート50の取扱い性を向上させることができる。
なお、光拡散層転写シート50における光拡散転写層51の他方の面51Bには、必ずしも第2の離型フィルム53が貼着されている必要はない。例えば、光拡散転写層51とこの光拡散転写層51の一方の面51Aに貼着された第1の離型フィルム52とからなる光拡散層転写シート50を積層構造(例えば粘着テープ状)とし、光拡散転写層51の他方の面51Bを第1の離型フィルム52に貼着するようにすれば、取扱い性の著しい低下を招くことはない。この場合、光拡散転写層51の一方の面51Aと第1の離型フィルム52との貼着面が、光拡散転写層51の他方の面51Bと第1の離型フィルム52との貼着面よりも先に離型することがないように、第1の離型フィルム52において光拡散転写層51の他方の面51Bに貼着される面に対してフッ素処理、シリコン処理等の表面処理(離型処理)を施しておく必要がある。
【0029】
また、本実施形態による透過型スクリーン10は、本実施形態による光拡散板55Aを有するフレネルレンズシート20と、本実施形態による光拡散板55Bを有するレンチキュラーレンズアレイシート(拡散レンズアレイシート)30とを備えたものとして説明されているが、これに限定されることはない。
例えば、本実施形態による透過型スクリーン10は、本実施形態による光拡散板55Aを有するフレネルレンズシート20と、従来のレンチキュラーレンズアレイシート(拡散レンズアレイシート)とを備えたものであってもよいし、従来のフレネルレンズシートと、本実施形態による光拡散板55Bを有するレンチキュラーレンズアレイシート(拡散レンズアレイシート)30とを備えたものであってもよい。
【0030】
さらに、本実施形態による拡散板55は、透過型スクリーン10に用いられるものとして説明されているが、これに限定されることはなく、例えば、液晶パネルに対してその背面側から光を照射するバックライトユニットに用いられるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態による透過型スクリーンの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の実施形態による光拡散層転写シートの一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の実施形態による拡散板の製造方法の一例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の実施形態による光拡散層転写シートの他の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0032】
10 透過型スクリーン
20 フレネルレンズシート
21 フレネルレンズ
30 レンチキュラーレンズアレイシート(拡散レンズアレイシート)
31 レンチキュラーレンズアレイ(拡散レンズアレイ)
32 遮光層
33 接着剤層
50 光拡散層転写シート
51 光拡散転写層(光拡散層)
52 第1の離型フィルム(離型フィルム、フィルム)
53 第2の離型フィルム
54 透明基板
55,55A,55B 光拡散板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光拡散剤が混入されるとともに常温あるいは加熱によって粘着性を有し、かつ、活性エネルギー線が照射されたときに硬化して接着性を発揮する光拡散転写層と、
前記光拡散転写層の一方の面に貼着されたフィルムと、を備えていることを特徴とする光拡散層転写シート。
【請求項2】
請求項1に記載の光拡散層転写シートであって、
前記フィルムは、前記光拡散転写層が硬化した後にこの光拡散転写層から離型可能な離型フィルムであることを特徴とする光拡散層転写シート。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の光拡散層転写シートであって、
前記光拡散転写層の他方の面に貼着され、前記光拡散転写層が硬化する前にこの光拡散転写層から離型可能な第2の離型フィルムを備えていることを特徴とする光拡散層転写シート。
【請求項4】
光拡散剤が混入された光拡散層とこの光拡散層が接着された透明基板とを備えた光拡散板の製造方法であって、
請求項1に記載の光拡散層転写シートの前記光拡散転写層を前記透明基板に貼着する工程と、
前記透明基板に貼着された前記光拡散転写層に活性エネルギー線を照射し、前記光拡散転写層を硬化させて前記透明基板に接着する工程と、を備えていることを特徴とする光拡散板の製造方法。
【請求項5】
光拡散剤が混入された光拡散層とこの光拡散層が接着された透明基板とを備えた光拡散板の製造方法であって、
請求項2に記載の光拡散層転写シートの前記光拡散転写層を前記透明基板に貼着する工程と、
前記透明基板に貼着された前記光拡散転写層に活性エネルギー線を照射し、前記光拡散転写層を硬化させて前記透明基板に接着する工程と、
硬化した前記光拡散転写層から前記離型フィルムを離型させる工程と、を備えていることを特徴とする光拡散板の製造方法。
【請求項6】
光拡散剤が混入された光拡散層とこの光拡散層が接着された透明基板とを備えた光拡散板の製造方法であって、
請求項3に記載の光拡散層転写シートの前記第2の離型フィルムを前記光拡散転写層から離型させる工程と、
前記光拡散層転写シートの前記光拡散転写層を前記透明基板に貼着する工程と、
前記透明基板に貼着された前記光拡散転写層に活性エネルギー線を照射し、前記光拡散転写層を硬化させて前記透明基板に接着する工程と、を備えていることを特徴とする光拡散板の製造方法。
【請求項7】
請求項4〜請求項6のいずれかに記載の光拡散板の製造方法によって製造されたことを特徴とする光拡散板。
【請求項8】
請求項7に記載の光拡散板を備えていることを特徴とする拡散レンズアレイシート。
【請求項9】
請求項7に記載の光拡散板を備えていることを特徴とするフレネルレンズシート。
【請求項10】
請求項8に記載の拡散レンズアレイシート及び請求項9に記載のフレネルレンズシートのうちの少なくとも一方を備えていることを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項11】
請求項10に記載の透過型スクリーンと、
前記透過型スクリーンの背面に映像光を投射する光源と、を備えていることを特徴とする背面投射型ディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−113113(P2006−113113A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−297551(P2004−297551)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】