説明

光拡散性樹脂組成物を用いた光拡散性部材

【課題】
優れた光拡散性を有し、且つ全光線透過率が高く、溶融加工時や使用時の変色を抑えた、照明カバー、照明看板、透過型のスクリーン、各種ディスプレイ、液晶表示装置の光拡散シート等として有用な光拡散性樹脂組成物から得られる光拡散性部材を提供すること
【解決手段】
光拡散性樹脂組成物を含む光拡散性部材において、該光拡散性樹脂組成物が、芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)30〜99重量部と脂環式ポリエステル樹脂(B成分)1〜70重量部を含む樹脂成分(C成分)100重量部に対し、重量平均径が0.7〜30μmの有機光拡散性微粒子を0.05〜20重量部、さらに最長吸収波長が380nm以下の紫外線吸収剤を0.05〜5重量部含むことを特徴とする光拡散性部材

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散性樹脂組成物を用いた光拡散性部材に関する。詳しくは、高い光拡散性、全光線透過率を有し、同時に機械的性質、熱的性質、電気的性質、耐候性に優れ、更に溶融加工時や使用時の変色を抑えた光拡散性樹脂組成物を用いた光拡散性部材に関する。具体的には、各種照明用カバー、照明看板、光透過型スクリーン、各種ディスプレイ、液晶表示装置等の光拡散シートとした際に、優れた効果を奏する、光拡散性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性、耐熱性、透明性に優れた熱可塑性樹脂として幅広い用途があり、さらに、無機ガラスに比べて軽量で、生産性にも優れているので各種照明カバー、照明看板、光透過型スクリーン、各種ディスプレイ、液晶表示装置等の光拡散シートに使用されている。
【0003】
ポリカーボネート樹脂に光拡散性を付与するためには、ガラス、シリカ、水酸化アルミニウム等の無機化合物フィラーの添加も提案されているが、機械的強度の低下、全光線透過率や耐候性の低下、成形加工時や高温での使用時の変色の問題などがあり、実用性に乏しかった。特に最近では、各種表示装置の大型化・薄肉化に加え、光源の輝度や光量が著しく増加しているので、熱や光による変色や強度低下の抑制が強く求められている。
【0004】
このような要求に対応するため、芳香族ポリカーボネート樹脂と有機高分子微粒子を特定の割合で配合した混合物に、特定のリン化合物、トリアルキルホスフェート、ペンタエリスリトールジホスファイト化合物、ヒンダードフェノールからなる光拡散性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
また耐候性の改良された樹脂組成物としては、ポリカーボネート、脂環式ポリエステル樹脂、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンおよびトリアジンに基づく紫外線吸収剤の少なくとも1種および触媒抑制剤(ポリカーボネートや脂環式ポリエステルの合成から残存している可能性のある残留重合触媒を失活させる物質)を含む組成物も開示されている(例えば特許文献2参照)。
【0006】
一方、透明性、耐衝撃性、耐薬品性、耐候性に優れた樹脂組成物としては、脂環族ポリエステルとポリカーボネートを含む樹脂組成物からなるハウジング材(例えば特許文献3参照。)や、電気、電子部品(例えば特許文献4参照。)が提案されている。そして更に、この様な樹脂組成物にはガラス繊維、炭素繊維、タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ミルドガラス、ガラスビーズなどの無機化合物を配合してもよいと記載されている。しかしこれらの樹脂組成物は溶融加工時の熱安定性が低く、黄変が大きいので、光拡散性部材としての使用は困難であり、この様な用途への適応については、記載も示唆も見受けられていない。
【0007】
また、透明性、耐衝撃性、耐薬品性、耐候性に優れた脂環族ポリエステルとポリカーボネートを含む樹脂組成物からなる光学用部品(例えば特許文献5参照)や、延性、耐薬品性、及びメルトフロー特性の改善されたポリカーボネート樹脂と脂環式ポリエステル樹脂からなる透明/半透明成形用組成物が提案されている(例えば特許文献6参照)。
【0008】
【特許文献1】特開2001−323149号公報
【特許文献2】特開平11−130955号公報
【特許文献3】特開2003−110252号公報
【特許文献4】特開2003−113252号公報
【特許文献5】特開2003−176401号公報
【特許文献6】特表2004−514011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし例えば特許文献1に記載のポリカーボネート樹脂組成物は、未だ耐候性が不十分であり、また特許文献2に記載の樹脂組成物でも、ベンゾトリアゾール類化合物やベンゾフェノン、及びトリアジン類化合物の様な紫外線吸収剤を含むが故に初期の色相が悪く、大型の光拡散性部材としは使用に不向きであった。
【0010】
そして特許文献3及び4に記載のポリカーボネート樹脂組成物では、溶融加工時の熱安定性が低く、黄変が大きいので、光拡散性部材としての使用が困難という問題があり、この様な用途への適応については、記載も示唆も見受けられていない。
【0011】
また特許文献5及び6に記載のポリカーボネート樹脂組成物については、任意成分としてABS等のエラストマーの添加や、特殊効果着色剤の添加が記載されてはいるが、これらはヘイズを下げ、光線透過率向上を目的としており、未だ十分な光拡散性を得ることはできないという問題があった。またこれらの樹脂組成物には、例えば低温耐衝撃性向上を目的として、(透明な)エラストマー成分が添加されている例も挙げられてはいる。しかしこのエラストマー成分の平均粒径は一般的に100nm程度と極めて微少であるために、十分な光拡散性が得られないという問題があった。
【0012】
本発明の目的は、優れた光拡散性を有し、且つ全光線透過率が高く、溶融加工時や使用時の変色を抑えた、照明カバー、照明看板、透過型のスクリーン、各種ディスプレイ、液晶表示装置の光拡散シート等として有用な光拡散性樹脂組成物から得られる光拡散性部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は上記問題を解決するため鋭意検討した結果、芳香族ポリカーボネート樹脂に特定の脂環式ポリエステル樹脂と光拡散剤と紫外線吸収剤を配合した樹脂組成物は、優れた光拡散性を有し、且つ全光線透過率が高く、溶融加工時や使用時の変色を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明の要旨は、光拡散性樹脂組成物を含む光拡散性部材において、該光拡散性樹脂組成物が、芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)30〜99重量部と脂環式ポリエステル樹脂(B成分)1〜70重量部を含む樹脂成分(C成分)100重量部に対し、重量平均径が0.7〜30μmの有機光拡散性微粒子を0.05〜20重量部、さらに最長吸収波長が380nm以下の紫外線吸収剤を0.05〜5重量部含むことを特徴とする光拡散性部材に存する。
【発明の効果】
【0014】
本発明における光拡散性樹脂組成物は、光拡散性を有し、且つ全光線透過率が高く、溶融加工時や使用時の変色が抑制されているので、これを成形してなる本発明の光拡散性部材は、照明カバー、照明看板、透過形のスクリーン、信号機レンズ及びレンズカバー、各種ディスプレイ、液晶表示装置の光拡散シート、導光板など、光拡散性の必要な用途に幅広く使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
また、本明細書において、各種化合物が有する「基」は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、置換基を有していてもよい。
【0016】
[1]芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)
本発明におけるA成分は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂であり、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを、または、これらに併せて少量のポリヒドロキシ化合物等を反応させてなる、直鎖または分岐の熱可塑性の芳香族ポリカーボネート重合体または共重合体である。
【0017】
本発明における(A)芳香族ポリカーボネート樹脂は、特に限定されるものではなく、公知の方法によって製造することができ、例えば、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法等を挙げることができる。
【0018】
原料として使用される芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=テトラブロモビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1−トリクロロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等で例示されるビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等で例示されるビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等で例示されるカルド構造含有ビスフェノール類;4,4'−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルエーテル等で例示されるジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルスルフィド等で例示されるジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルスルホキシド等で例示されるジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルスルホン等で例示されるジヒドロキシジアリールスルホン類;ハイドロキノン、レゾルシン、4,4'−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられる。
【0019】
これらの中で好ましくは、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類であり、特に耐衝撃性の点から好ましくは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[=ビスフェノールA]である。
これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種類でも2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
芳香族ジヒドロキシ化合物と反応させるカーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カーボネートエステル、ハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン;ジフ-ェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類;二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。これらカーボネート前駆体もまた1種類でも2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
また、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂は、三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した、分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂であってもよい。三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)べンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン等で例示されるポリヒドロキシ化合物類、または、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロロイサチン、5,7−ジクロロイサチン、5−ブロムイサチン等が挙げられ、これらの中でも1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。多官能性芳香族化合物は、前記芳香族ジヒドロキシ化合物の一部を置換して使用することができ、その使用量は芳香族ジヒドロキシ化合物に対して0.01〜10モル%の範囲が好ましく、0.1〜2モル%の範囲がより好ましい。
【0022】
界面重合法による反応は、反応に不活性な有機溶媒、アルカリ水溶液の存在下で、通常pHを9以上に保ち、芳香族ジヒドロキシ化合物、ならびに必要に応じて分子量調整剤(末端停止剤)および芳香族ジヒドロキシ化合物の酸化防止のための酸化防止剤を用い、ホスゲンと反応させた後、第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩等の重合触媒を添加し、界面重合を行うことによってポリカーボネートを得る。分子量調節剤の添加はホスゲン化時から重合反応開始時までの間であれば特に限定されない。なお反応温度は例えば、0〜40℃で、反応時間は例えば数分(例えば10分)〜数時間(例えば6時間)である。
ここで、反応に不活性な有機溶媒としては、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。またアルカリ水溶液に用いられるアルカリ化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が挙げられる。
分子量調節剤としては、一価のフェノール性水酸基を有する化合物が挙げられる。一価のフェノール性水酸基を有する化合物としては、m−メチルフェノール、p−メチルフェノール、m−プロピルフェノール、p−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノールおよびp−長鎖アルキル置換フェノールなどが挙げられる。分子量調節剤の使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物100モルに対して、好ましくは50〜0.5モル、より好ましくは30〜1モルである。
重合触媒としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリヘキシルアミン、ピリジン等の第三級アミン類:トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0023】
溶融エステル交換法による反応は、例えば、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応である。
炭酸ジエステルとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート等の炭酸ジアルキル化合物、ジフェニルカーボネートおよびジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート等が例示される。炭酸ジエステルは、好ましくはジフェニルカーボネートまたは置換ジフェニルカーボネートであり、より好ましくはジフェニルカーボネートである。
一般的に、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物との混合比率を調整したり、反応時の減圧度を調整したりすることによって、所望の分子量および末端ヒドロキシル基量を有するポリカーボネートが得られる。より積極的な方法として、反応時に別途、末端停止剤を添加する調整方法も周知である。この際の末端停止剤としては、一価フェノール類、一価カルボン酸類、炭酸ジエステル類が挙げられる。末端ヒドロキシル基量は、製品ポリカーボネートの熱安定性、加水分解安定性、色調等に大きな影響を及ぼす。用途にもよるが、実用的な物性を持たせるためには、好ましくは1,000ppm以下であり、より好ましくは700ppm以下である。
また、エステル交換法で製造するポリカーボネートでは、末端ヒドロキシル基量が100ppm以上であることが好ましい。このような末端ヒドロキシル基量とすることにより、分子量の低下を抑制でき、色調もより良好なものとすることができる。従って、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して、炭酸ジエステルを等モル量以上用いるのが好ましく、1.01〜1.30モルの量で用いるのがより好ましい。
エステル交換法によりポリカーボネートを製造する際には、通常エステル交換触媒が使用される。エステル交換触媒は、特に制限はないが、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物が好ましい。また、補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物またはアミン系化合物などの塩基性化合物を併用することも可能である。上記原料を用いたエステル交換反応としては、100〜320℃の温度で反応を行い、最終的には2mmHg以下の減圧下、芳香族ヒドロキシ化合物等の副生成物を除去しながら溶融重縮合反応を行う方法が例示される。
溶融重縮合は、バッチ式または連続的に行うことができるが、本発明の樹脂組成物の安定性等を考慮すると、連続式で行うことが好ましい。エステル交換法ポリカーボネート中の触媒の失活剤としては、該触媒を中和する化合物、例えば、イオウ含有酸性化合物またはそれより形成される誘導体を使用することが好ましい。このような触媒を中和する化合物は、該触媒が含有するアルカリ金属に対して、好ましくは0.5〜10当量、より好ましくは1〜5当量の範囲で添加する。さらに加えて、このような触媒を中和する化合物は、ポリカーボネートに対して、好ましくは1〜100ppm、より好ましくは1〜20ppmの範囲で添加する。
【0024】
本発明で用いる芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は、特に定めるものではないが、溶液粘度から換算した粘度平均分子量[Mv]で、10,000〜50,000の範囲のものが好ましい。芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量を10,000以上とすることにより、機械的強度がより向上する傾向にあり、機械的強度の要求の高い用途に用いる場合により好ましいものとなる。一方、粘度平均分子量を、50,000より以下とすることにより、流動性が低下するのをより改善できる傾向にあり、成形加工性容易の観点からより好ましい。粘度平均分子量は、より好ましくは12,000〜40,000であり、さらに好ましくは14,000〜30,000である。また、粘度平均分子量の異なる2種類以上の芳香族ポリカーボネート樹脂を混合してもよい。もちろん、粘度平均分子量が上記好適範囲外である芳香族ポリカーボネート樹脂を混合してもよい。
【0025】
ここで粘度平均分子量[Mv]とは、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10-40.83、から算出される値を意味する。ここで極限粘度[η]とは各溶液濃度[C](g/dl)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により算出した値である。
【0026】
【数1】

【0027】
また、成形品外観の向上や流動性の向上を図るため、本発明における(A)芳香族ポリカーボネート樹脂は、芳香族ポリカーボネートオリゴマーを含有していてもよい。この芳香族ポリカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量[Mv]は、好ましくは1,500〜9,500であり、より好ましくは2,000〜9,000である。芳香族ポリカーボネートオリゴマーは、A成分の30重量%以下の範囲で使用するのが好ましい。
【0028】
さらに、本発明における(A)芳香族ポリカーボネート樹脂は、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生された芳香族ポリカーボネート樹脂、いわゆるマテリアルリサイクルされた芳香族ポリカーボネート樹脂を使用してもよい。使用済みの製品としては、光学ディスク等の光記録媒体、導光板、自動車窓ガラス・自動車ヘッドランプレンズ・風防等の車両透明部材、水ボトル等の容器、メガネレンズ、防音壁・ガラス窓・波板等の建築部材等が好ましく挙げられる。また、製品の不適合品、スプルー、ランナー等から得られた粉砕品またはそれらを溶融して得たペレット等も使用可能である。再生された芳香族ポリカーボネート樹脂は、A成分の80重量%以下であることが好ましく、より好ましくは50重量%以下である。
【0029】
本発明に関わる脂環式ポリエステル樹脂は、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を主成分とするジカルボン酸成分とジオール成分とを反応させて得られるポリエステル樹脂である。
換言すれば、本発明に関わる脂環式ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分を原料とすることにより得られるものであることに起因して、ジカルボン酸エステルを原料とする場合とは異なりアルキルエステル末端が少ない、即ち、ポリエステルの総末端に対するアルキルエステル末端の割合が5モル%以下、好ましくは1モル%以下の脂環式ポリエステル樹脂である。
【0030】
[2]脂環式ポリエステル樹脂(B成分)
本発明におけるB成分は、(B)脂環式ポリエステル樹脂であり、例えば、ジカルボン酸成分とジオール成分と、必要に応じて他の少量の成分とを、エステル化またはエステル交換反応させ、次いで、重縮合反応させてなるものである。ジカルボン酸成分は、脂環式ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を主成分とする。また、ジオール成分は、脂環式ジオールを主成分とする。
ここで「主成分」とは、例えば、ジカルボン酸成分またはジオール成分に対し、それぞれ、80モル%以上を占めることをいうものとする。
【0031】
脂環式ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体としては、脂環式構造にカルボキシル基が2つ結合したものであれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、1,5−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、2,6−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、2,7−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、およびそのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
これらの中でも、炭素数6〜12の脂環式ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体が好ましく、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体がより好ましく、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸がさらに好ましい。1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のような脂環式ジカルボン酸は、エステル形成性誘導体に比べてコストがかからない点から好ましい。
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を採用する場合、そのトランス体とシス体との比率は、好ましくは80/20〜100/0であり、より好ましくは85/15〜100/0であり、さらに好ましくは90/10〜100/0であり、特に好ましくは95/5〜100/0である。このような範囲内とすることにより、得られる脂環式ポリエステル樹脂の耐熱性をより良好なものとすることができる。
【0032】
本発明における(B)脂環式ポリエステル樹脂のジカルボン酸成分は、脂環式ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を、全ジカルボン酸成分に対して、80モル%以上、好ましくは90モル%以上含有するものである。その他のジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。具体的には、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、1,4-フェニレンジオキシジカルボン酸、1,3-フェニレンジオキシジ酢酸、4,4−ジフェニルジカルボン酸、4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4−ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4'−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、コハク酸、グルタン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸およびドデカジカルボン酸、ならびに、これらの炭素数1〜4のアルキルエステル若しくはハロゲン化物等が挙げられる。
【0033】
脂環式ジオール成分としては、脂環式構造に水酸基が2つ結合したものであれば特に限定されるものではないが、5員環または6員環に水酸基が2つ結合した脂環式ジオールであることが好ましい。脂環式ジオールとして、5員環または6員環の脂環式ジオールを用いることにより、得られるポリエステル樹脂の耐熱性を高くすることができる。
このような脂環式ジオールとしては例えば、1,2−シクロペンタンジメタノール、1,3−シクロペンタンジメタノール、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ、[5.2.1.0]デカン等の5員環ジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン等の6員環ジオール等が挙げられる。これらの中でも、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましく、1,4−シクロヘキサンジメタノールがより好ましい。
1,4−シクロヘキサンジメタノールは、メチロール基がパラ位にあるので反応性が高く、高重合度ポリエステルが得やすいこと、高いガラス転移温度のポリエステル樹脂が得られること、および工業生産品であり入手が容易であるという利点がある。1,4−シクロヘキサンジメタノールのトランス体とシス体の比率は60/40〜100/0の範囲内にあることが好ましい。
【0034】
本発明において、ジオール成分としては上記のような脂環式ジオールを全ジオール成分に対して、80モル%以上、好ましくは90モル%以上含有するものである。その他のジオール成分としては、脂肪族ジオール、芳香族ジオール等が挙げられる。脂環式ジオールが80モル%未満では、芳香族ポリカーボネート樹脂との相溶性が劣り透明性が低下し、さらに耐熱性が劣ることがある。
具体的なその他のジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオールおよびヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、ならびに、キシリレングリコール、4,4−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンおよびビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸等の芳香族ジオール等が挙げられる。
【0035】
さらに、本発明における(B)脂環式ポリエステル樹脂は、前記ジオール成分および前記ジカルボン酸成分以外の少量の共重合成分を含んでいてもよい。このような共重合成分としては、グリコール酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸、アルコキシカルボン酸、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ステアリン酸、ベヘン酸、安息香酸、tert−ブチル安息香酸、ベンゾイル安息香酸等の単官能成分、トリカルバリル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ナフタレンテトラカルボン酸、没食子酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、シュガーエステル等の三官能以上の多官能成分等が用いられてもよい。
これらの成分は、B成分の10モル%以下であることが好ましい。
【0036】
本発明において、ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応またはエステル交換反応における使用比率としては、ジオール成分の合計量が、ジカルボン酸成分の合計量に対し、モル比で1〜2倍であるのが好ましい。特に、ジオール成分として1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの高沸点のものを主成分とする場合には、モル比で1〜1.2倍であるのが好ましい。
【0037】
本発明においては、エステル化またはエステル交換反応および重縮合反応における充分な反応速度を得るために触媒を用いるのが好ましい。このような触媒としては、通常エステル化またはエステル交換反応に用いられる触媒であれば特に限定されず、広く公知のものを採用することができる。具体的には、チタン化合物、ゲルマニウム化合物、アンチモン化合物およびスズ化合物などが挙げられる。これらの中でもチタン化合物は、エステル化またはエステル交換反応と続いて行われる重縮合反応の両反応において活性が高いことから好ましい。このようなチタン化合物としては、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−iso−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートまたはこれらの有機チタネートの加水分解物などが挙げられる。これらは、1種類単独でも2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、必要に応じて、マグネシウム化合物やリン化合物などと組み合わせてもよい。触媒の使用量は、生成する(B)脂環式ポリエステル樹脂に対して、好ましくは1〜2000ppm、より好ましくは10〜1000ppm、更に好ましくは50〜1000ppm、特に好ましくは100〜1000ppmである。
【0038】
ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応またはエステル交換反応は、通常150℃から230℃ 好ましくは180℃から220℃で、通常10分乃至10時間、好ましくは30分乃至5時間行われる。
エステル化反応後 反応液は、通常、攪拌機、留出管および減圧付加装置を備えた重縮合槽に移送されるが、エステル化反応槽に減圧付加装置を備えて、一槽でエステル化反応および重縮合反応を行うこともできる。
【0039】
エステル化終了後、反応液に必要に応じて重縮合触媒などを添加し徐々に反応槽内を減圧にしつつ重縮合反応を行う。重合触媒を添加する場合、その量は、エステル化反応またはエステル交換反応触媒との合計で、通常生成するポリエステルに対して合計で50〜2000ppm、好ましくは100〜1000ppmとなる量である。
重縮合は、エステル化反応終了温度乃至300℃以下、好ましくは265℃以下で、通常10分乃至10時間、好ましくは30分乃至5時間行われる。温度が高すぎると、重合反応中に熱分解が起こるためか重合反応が進まない傾向となる。槽内圧力は常圧から最終的に1KPa以下となる圧力であり、好ましくは0.5KPa以下とする。
【0040】
本発明における(B)脂環式ポリエステル樹脂の固有粘度は、0.4〜1.5dl/gが好ましく、中でも0.5〜1.3dl/g、更には0.6〜1.5dl/g、特に0.7〜1.4dl/gであることが好ましい。固有粘度を0.4dl/g以上とすることにより機械的強度がより向上し、1.5dl/g以下とすることにより、流動性がより向上しより成形しやすくなるので好ましい。さらに、得られたポリエステル樹脂は必要に応じて固相重合を行い、より固有粘度の高いものとしてもよい。
ここで、固有粘度は、フェノール/テトラクロロエタン(重量比1/1)混合液を溶媒としてウベローデ型粘度計を用いて30℃で測定することにより求められる。
【0041】
本発明における(B)脂環式ポリエステル樹脂の末端カルボン酸濃度は、70μeq/g以下であることが好ましく、中でも40μeq/g以下、更には30μeq/g以下、特に10μeq/g以下であることが好ましい。末端カルボン酸濃度を70μeq/g以下とすることにより、本発明の樹脂組成物の耐湿熱性がより向上する傾向にあり好ましい。
【0042】
尚、末端酸価のコントロールは、後述の製造において、例えば、原料である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と1,4−シクロヘキサンジメタノールの使用割合のコントロールにより、或いは、ジオール原料としてアルキレンジオール、特に炭素数2〜10のアルキレンジオールを併用することにより、行うことができる。
【0043】
又、本発明に関わる脂環式ポリエステル樹脂の末端酸価を40μeq/gとするためには、例えば、90モル%以上が1,4−シクロヘキサンジカルボン酸であるジカルボン酸成分と、90モル%以上が1,4−シクロヘキサンジメタノールであるジオール成分とを用いる場合に、ジカルボン酸成分1モルに対するジオール成分の割合を1.02〜1.2モル、より好ましくは1.02〜1.1モルとすることが挙げられる。
又、例えば、90モル%以上が1,4−シクロヘキサンジカルボン酸であるジカルボン酸成分と、80〜99.5モル%が1,4−シクロヘキサンジメタノールであり0.5〜20モル%が炭素数2〜10のアルキレンジオールを用いる場合に、ジカルボン酸成分1モルに対してジオール成分を1.02〜1.2モル、より好ましくは1.02〜1.1モル使用する方法等が挙げられる。
【0044】
本発明における(B)脂環式ポリエステル樹脂の融点は、例えば、ジカルボン酸成分として1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を主成分とし、ジオール成分として1,4−シクロヘキサンジメタノールを主成分とする脂環式ポリエステル樹脂の場合、好ましくは200〜250℃、より好ましくは210〜230℃、さらに好ましくは215〜230℃である。
【0045】
本発明に用いる脂環式ポリエステル樹脂においては、そのYellowness Index(YI)が目視にても黄色着色を認識できる程高すぎると、当然、本発明の光拡散性樹脂組成物に使用した場合、透過した映像が黄色くなり、元の映像を再現できない。よって一般的にYIは、18以下、中でも15以下であることが好ましい。又、YIの下限は通常−5程度である。
本発明に関わる脂環式ポリエステル樹脂は、これを用いて成型した厚さ2mmの成形板の光線透過率が低すぎると光拡散性部材とした際に十分光線が透過されず、画面が暗くなる場合があるので、この光線透過率は通常、87%以上、好ましくは87.5%以上、更に好ましくは88%以上である。
【0046】
本発明に用いる脂環式ポリエステル樹脂の原料である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸としては、波長340nmでの光線透過率が大きいことが、得られる脂環式ポリエステル樹脂の光線透過率の点から好ましい。この光線透過率が低すぎると、得られる脂環式ポリエステル樹脂のYI値が増加し、又脂環式ポリエステル樹脂の光線透過率も低くなる傾向がある。具体的には、この光線透過率として、以下の方法により測定した光線透過率(以下、T−340と略記することがある)が、85%以上、中でも87%以上であることが好ましい。
このT−340のは、分光光電光度計を用いて、2規定の水酸化カリウム溶液を光路長10mmの石英セルに入れてゼロ補正をした後、2規定の水酸化カリウム溶液50mlに対して1,4−シクロヘキサンジカルボン酸5.0gの割合で溶解した液を、光路長10mmの石英セルに入れ、該液について測定した波長340nmでの光線透過率である。
【0047】
尚、本発明に用いる脂環式ポリエステル樹脂の原料において、トランス体90モル%以上の原料1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を製造する方法としては、例えば1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のシス体、又はシス体とトランス体との混合物の熱異性化法が挙げられる。シス体とトランス体との水などへの溶解度差を利用した公知の晶析法では、得られる1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のT−340が低く、得られる脂環式ポリエステル樹脂の光線透過率が不十分となる。従って、トランス体の割合が90モル%以上で、T−340が85%以上の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を用いることが好ましいとの観点から、熱異性化法が好ましい。
【0048】
上記熱異性化は、シス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と、トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸との混合物、またはシス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を、不活性雰囲気下で、180℃以上でトランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の融点未満の温度域にて加熱処理することにより行うことができる。なお、本発明でいうトランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の融点は、実際の異性化反応の条件下でのトランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の融点をいう。
【0049】
熱異性化反応圧力は、減圧、常圧又は加圧下のいずれで行うこともできるが、操作の簡便性から考えると通常1.3〜950kPaである。
更に、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のT−340を85%以上とするためには、シス/トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の混合物、又はシス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を加熱処理する際の不活性雰囲気を、反応系中の気相の酸素濃度4000ppm以下、好ましくは2000ppm以下、更に好ましくは1000ppm以下と調整することが好ましい。系中の酸素濃度が4000ppmより高いと、T−340が85%未満になりやすい。
【0050】
熱異性化により生成したトランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を効率的に取得するには、前記温度域に保持しながら溶融したシス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸中にトランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を析出させて取出す方法がある。
尚、熱異性化法での原料となる、シス体及びトランス体の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の混合物を得る方法は、従来公知の任意の方法により得ればよい。例えば、テレフタル酸を溶媒、水素、水素化触媒存在下で液相核水素化する方法や、テレフタル酸ナトリウムを水、水素、水素化触媒存在下で液相核水素化した後に、酸析する方法が挙げられる。
【0051】
更に、本発明に用いる脂環式ポリエステル樹脂は、ペレット状とした後に、必要に応じて固相重合を行い、更に高い固有粘度のものとしたものを用いてもよい。
本発明に用いる脂環式ポリエステル樹脂は、ジオール単位の80モル%以上が1,4−シクロヘキサンジメタノールであるものが、ポリエステル樹脂の耐熱性の点で好ましい。
又、ジオール単位の80モル%以上99.5モル%以下が1,4−シクロヘキサンジメタノール単位であり、0.5モル%以上20モル%以下が炭素数2〜10のアルキレンジオール単位であるものが好ましく、中でも1,4−シクロヘキサンジメタノール単位が90モル%以上99.5モル%以下であり、炭素数2〜10のアルキレンジオール単位が0.5モル%以上10モル%以下であるものが、耐加水分解性が高いので好ましい。
【0052】
[3]樹脂成分(C成分)について
本発明に用いる樹脂成分(C成分)は、上述した芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)30〜99重量部と、脂環式ポリエステル樹脂(B成分)1〜70重量部を含むものである。芳香族ポリカーボネート樹脂が30重量部未満では、荷重撓み温度や剛性が低く、99重量部を越えると流動性や耐候性の改良効果が小さい。
【0053】
本発明に用いる微粒子は、重量平均径が0.7〜30μmである。本発明に用いる微粒子の重量平均径が0.7μm未満だと光拡散性が低く、光源が透けて見える場合があり、逆に30μmを超えると成形体表面のぎらつきが目立ち、視認性が低下することがある。
また、本発明に用いる微粒子と、樹脂成分(C)の屈折率の差の絶対値は適宜選択して決定すればよいが、小さすぎると光拡散性が低くなる場合があり、逆に大きすぎても光線透過率が低下することがあるので、通常、0.01以上、0.2以下であることが好ましい。
更に、本発明の光拡散性樹脂組成物が優れた光拡散性、全光線透過率、溶融加工時や使用時の耐変色を有するためには、本発明に用いる微粒子は有機光拡散性微粒子である。具体的には例えば、アクリル系及びシリコーン系の光拡散性微粒子から選ばれることが好ましい。
【0054】
上記アクリル系光拡散性微粒子としては、例えば、アクリル系モノマー単独又はアクリル系モノマーとスチレン系モノマーとの共重合比を変化させ、架橋剤を用いて懸濁重合法等で重合した微粒子が挙げられる。アクリル系モノマーとスチレン系モノマーとの共重合比を100:0〜1:99の範囲で変化させることによって、得られる重合体の屈折率は1.493〜1.590の範囲で変化するが、通常、スチレン系モノマーの共重合比が高くなりすぎると、耐光性が低下し、使用中に黄色味を帯びやすくなり、逆にアクリル系モノマーの共重合比が高くなりすぎても、微粒子と樹脂成分(C成分)との屈折率の差が開きすぎて、ぎらつきが目立ち、視認性が低下する場合がある。よって本発明に用いる微粒子として、アクリル−スチレン系共重合体微粒子を用いる場合には、樹脂成分(C成分)を構成する芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)と脂環式ポリエステル樹脂(B成分)の配合率に応じて、アクリル−スチレン系共重合体微粒子の屈折率も調整することが好ましい。
【0055】
上記アクリル系モノマーとしては、たとえば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリレート系モノマー、メチルアクリレート、エチルアクリレート等のアクリレート系モノマーやアクリルアミド等をその代表例として例示でき、スチレン系モノマーとしてはスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等をその代表例として例示できる。またこれらモノマーの重合または共重合にあたってはこれらを主成分として、必要に応じて他のモノマーを共重合することもできる。架橋剤としては、一般的にエチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、1、6−ヘキサンジオール、トリメチルプロパントリメタクリレート、トリメチルプロパントリメタクリレート、トリメチルプロパントリアクリレート等、種々の多官能性モノマーを用いることができる。
【0056】
本発明に用いる微粒子として、シリコーン系の光拡散性微粒子を用いる際には、例えば、屈折率が1.45〜1.46であるシリコーン樹脂微粒子が好ましい。市販のシリコーン系光拡散性微粒子としては、例えば、東芝シリコーン社製トスパールシリーズ、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製トレフィルシリーズ、信越化学工業社製シリコーンパウダーが挙げられる。
【0057】
本発明における、重量平均径が0.7〜30μmの有機光拡散性微粒子の含有量は、樹脂成分(C成分)100重量部に対して、0.05〜10重量部、好ましくは0.1〜10重量部である。この微粒子の含有量が0.05重量部未満では光拡散性が低く、光拡散性部材の肉厚が厚くても光源が透けて見える場合があり、逆に20重量部を超えると、光拡散性部材の肉厚が薄くても全光線透過率の低下や、更には機械的強度や耐熱性が低下する場合がある。
また本発明の光拡散性樹脂組成物における有機光拡散性微粒子の含有量は、光拡散性部材の肉厚の変化に応じて調整することが好ましい。具体的には例えば、光拡散性部材の肉厚が0.1〜2mmの場合には、該微粒子の含有量を樹脂成分(C成分)100重量部に対して1〜10量部とすることが好ましい。また光拡散性部材の肉厚が2mmを超えて5mm以下の場合には、具体的にはアクリル−スチレン系共重合体微粒子を用い、樹脂成分(C成分)100重量部に対する含有量を0.05〜5重量部とすることが好ましい。
【0058】
本発明の光拡散性樹脂組成物には、さらに耐候性を改良するために、最長吸収波長が380nm以下の紫外線吸収剤を含むことが好ましい。
ここで「最長吸収波長」とは、実質的な吸光を示す最長の波長を示し、実質的に吸光を示す波長とは、当該紫外線吸収剤の最大吸収波長における吸光度の1%以上の吸光度を示す波長を言う。また、芳香族ポリカーボネートの特性を損なうことが無いものが好ましい。
中でも、本発明に用いる紫外線吸収剤としては、優れた耐光性と色相および高い光線透過率を両立させるために、マロン酸エステル類化合物や、シアノアクリレート類化合物、ベンゾオキサジン類化合物、ヒンダードベンゾエート類化合物を用いることが好ましい。中でも溶融加工時の変色を抑え、優れた耐光変色性と高い光線透過率を同時に満たす点で、マロン酸エステル類化合物やシアノアクリレート類化合物を用いることが好ましい。
【0059】
マロン酸エステル類化合物としては例えば、2−(1−アリールアルキリデン)マロン酸エステル類が挙げられ、具体的にはPR−25(最長吸収波長:360nm)、B−CAP(最長吸収波長:365nm)クラリアントジャパン社製等が挙げられる。
またヒンダードベンゾエート類化合物としては3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイックアシッド、n−ヘキサデシルエステル等が挙げられ、具体的にはUV−2908(最長吸収波長:290nm)サイテック・インダストリーズ社製等が挙げられる。挙げられる。
特に最長吸収波長が300nm以上のものは紫外線吸収効果が高く好ましい。この様なものとしては、例えば先述のマロン酸エステル類等が挙げられる。
尚、本発明における吸光度は、測定機器として島津製作所社製 UV3100を用い、測定条件として、光路長1cmのセルを使用、シクロヘキサンに試料(紫外線吸収剤)を溶解させ10mg/lの濃度としたシクロヘキサン溶液について測定した吸光度を用いる。尚、吸光度は以下の一般式(1)により求めた。
吸光度 :A=log10(l/l) (1)
(但し、lは(内容物の無い)Cellのみの透過光強度を示し、lは試料を入れたCellの透過光強度を示す。)
【0060】
シアノアクリレート類化合物としては、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等が挙げられ、中でもエチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートが好ましい。具体的には、2'−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートとしては、Uvinul3030、Uvinul3035、Uvinul3039(いずれもB.A.S.F.社製)、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートとしてはSEESORB501(シプロ化成社製)、2'−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートとしては、SEESORB 502(シプロ化成社製)等が挙げられる。
【0061】
本発明に用いる紫外線吸収剤の含有量は、樹脂成分(C成分)100重量部に対して、0.05〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部である。紫外線吸収剤の配合率が0.05重量部未満では改良効果が小さく、5重量部を超えても合してもそれ以上の効果は得られず、モールドデボジットが発生する場合がある。
【0062】
また本発明の光拡散性樹脂組成物は、成形品の明度を向上するために、蛍光染料を含有していることが好ましい。蛍光染料としては、具体的には例えば、白色系もしくは青色系の蛍光染料であり、成形品の黄色味を消し、明るさを強める機能がある。成形品の黄色味を消すという点では、機能がブルーイング剤と類似しているが、ブルーイング剤は単に成形品の黄色光を除去するのに対して、蛍光増白剤は波長400nm未満の紫外線を吸収し、そのエネルギーを波長400nm以上の可視光線、特に青紫色の光線に変えて放射する点で異なる。
本発明に用いる白色系又は青色系の蛍光染料としては、従来公知の任意のものを使用できる。中でも耐熱性や揮発ガスの観点から高分子量のものが好ましく、例えば、スチルベンベンゾオキサゾール系、フェニルアリルトリアゾリルクマリン系の蛍光増白剤が挙げられる。
【0063】
上記蛍光染料の含有量は適宜選択して決定すればよいが、蛍光染料の含有率が少なすぎると、成形品の黄色味を消し、明るさを強めるという機能、および紫外線を吸収し可視部の青紫色に放射する機能が十分に発揮されず、逆に多すぎても、添加量の増加に見合う効果の増加が期待できない。よって通常、樹脂成分(C成分)100重量部に対し、0.00001〜1重量部であることが好ましい。
【0064】
本発明においては、光拡散性樹脂組成物の光線透過率と色相の向上のため、リン系熱安定剤を配合するのが好ましい。リン系熱安定剤としては、亜リン酸エステル、リン酸エステル等が好ましい。上記の亜リン酸エステルとしては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、モノブチルジフエニルホスファイト、モノオクチルジフエニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2.6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等の亜リン酸のトリエステル、ジエステル、モノエステル等が挙げられる。
【0065】
上記のリン酸エステルとしては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(ノニルフェニル)ホスフェート、2−エチルフェニルジフェニルホスフェート、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4−ジフエニレンホスフォナイト等が挙げられる。
【0066】
上記のリン系熱安定剤の中では、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2.6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが好ましく、中でもビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイトやトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトが特に好ましい。なお、リン系熱安定剤は、単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0067】
本発明に用いる、リン系熱安定剤の含有量は適宜選択して決定すればよいが、含有量が少なすぎると熱安定剤としての効果が小さく、逆に多すぎても添加量の増加に見合う効果の増加が期待できないばかりか、加水分解が発生し易くなる場合がある。よって通常、含有量は、樹脂成分(C成分)100重量部に対し、通常0.005〜0.2重量部、好ましくは0.01〜0.1重量部である。
【0068】
本発明においては更に、n−オクタデシル−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)ポロピオネート(例えば、チバスペシャリティケミカル社製、商品名:イルガノックス1076)や、テトラキス−[メチレン−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(例えば、チバスペシャリティケミカル社製、商品名:イルガノックス1010)等のフェノール系酸化防止剤を用いてもよい。該酸化防止剤の配合率は、適宜選択して決定すればよいが、含有量が少なすぎると酸化防止剤の効果が小さく、逆に多すぎても添加量の増加に見合う効果の増加が期待できないばかりか、モールドデボジットが発生し易くなる場合がある。よって通常、含有量は、樹脂成分(C成分)100重量部に対して0.01〜2重量部であることが好ましい。
【0069】
本発明の光拡散性樹脂組成物には、必要に応じて例えば、離型剤、帯電防止剤、着色剤、流動性改良剤、難燃剤、凝集防止剤等を更に添加してもよい。
【0070】
本発明の光拡散性樹脂組成物の混合及び混練は、通常の熱可塑性樹脂に適用される方法で行えばよく、例えばリボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ドラムタンブラー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリユー押出機、多軸スクリュー押出機等により行うことができる。混練の温度条件は通常、260〜300℃が適当である。
【0071】
本発明の光拡散性樹脂組成物は、一般的な熱可塑性樹脂の成形方法適用でき、例えば生産性の点からペレット状樹脂組成物からの射出成形、射出圧縮成形、押出成形が可能である。さらに押出成形されたシート状成形品からの真空成形、圧空成形等により目的の成形体とすることもできる。
【0072】
本発明の光拡散性樹脂組成物から成形される光拡散性部材としては、液晶表示装置の導光板、拡散板、反射板、保護フィルム、位相差フィルム、および、照明カバー、照明看板、透過形のスクリーン、各種ディスプレイなどが挙げられ、中でも液晶表示装置用の光学部材として、好適に用いることができる。
【実施例】
【0073】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。実施例、参考例及び比較例に用いた原料を表1に示す。尚、実施例、及び比較例に用いた樹脂の製造方法や、各実施例、参考例、比較例における樹脂組成物の評価方法は、以下の通りである。
【0074】
【表1】

【0075】
(1)脂環式ポリエステル樹脂の製造方法
攪拌機、留出管、加熱装置、圧力計、温度計および減圧装置を装備し、容量が100リットルのステンレス製反応器に、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(トランス体:シス体の比率が96:4)101.5重量部、1,4−シクロヘキサンジメタノール(トランス体:シス体の比率が69:31)87重量部およびテトラ−n−ブチルチタネートの6重量%ブタノール溶液0.005重量部を仕込み、反応器内を窒素ガスで置換した。
反応器内を窒素ガスでシールしながら、内温を30分間で150℃に昇温し、さらに150℃から200℃まで1時間をかけて昇温した。次いで、200℃の温度で1時間保持してエステル化反応を行った後、200℃から250℃へ45分間で昇温しつつ、反応器内の圧力を徐々に減圧しながら重縮合反応を行った。反応機内圧力を絶対圧力0.1kPa、反応温度を250℃として4.5時間維持し、重縮合反応を終了した。重縮合反応終了後、得られた樹脂を水中にストランド状に抜き出し、切断してペレット化した。固有粘度は、0.841dl/gであった。
【0076】
<固有粘度の測定方法>
試料約0.25gを、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合溶媒約25mLに、濃度が1.00g/dLとなるように溶解させた後、30℃まで冷却、保持し、全自動溶液粘度計(中央理化社製「2CH型DJ504」)にて、濃度が1.00×10−2g/dLの試料溶液及び溶媒のみの落下秒数を測定し、下式により算出した。
IV=((1+4Kηsp)0.5−1)/(2KC)
ここで、ηsp=η/η−1 であり、ηは試料溶液の落下秒数、ηは溶媒のみの落下秒数、Cは試料溶液濃度(g/dL)、KHはハギンズの定数である。KHは0.33とし、試料の溶解条件は、試料がプレポリマーの場合は110℃で30分間とした。
【0077】
(2)粘度平均分子量(Mv):
ウベローデ粘度計を用いて塩化メチレン中20℃の極限粘度[η]を測定し、以下の式より求めた。
[η]=1.23×10−4×(Mv)0.83
【0078】
(3)色相(YI)評価:
射出成形機(日本製鋼所社製「J50」)により、300℃の温度で成形したプレート(90mm×50mm×3mm)について上記の各測定を行った。測定には分光式色彩計(日本電色工業社製「SE−2000型」)を使用した。
【0079】
(4)耐光性評価:
(3)で成形したプレートにUVを照射し、耐光性評価を行った。UV照射装置はスガ試験機社製Super Xenon Weather Meter、照射強度156W/m、照射時間600時間とした。
【0080】
(5)アイゾット衝撃強度:
射出成形機(名機製作所社製M150)により、300℃で成形した64mm×12.4mm×3.2mmの試験片を用い、ASTM D−256に準拠し測定した。測定はノッチ付きで行った。
【0081】
(6)全光線透過率およびヘイズ:
濁度計(日本電色工業社製NDH−2000型)により(3)で成形した試験片の全光線透過率およびヘイズを測定した。
【0082】
(7)拡散率:
MURAKAMI COLOR RESEARCH LABORATORY社製のGP−5 GONIOPHOTOMETERを用い、測定条件を入射光0°、あおり角0°、受光範囲0°〜90°、光束絞り2.0、受光絞り3.0、の測定条件で(3)で成形した試験片の輝度を測定し、以下の式により拡散率(%)を求めた。
拡散率(%)={(20°の輝度+70°の輝度)/(5°の輝度)×2}×100
【0083】
参考例1、実施例〜5及び比較例1〜6)
表2、3に示す割合で各原料をブレンドした後、スクリュー径40mmのベント付単軸押出機(田辺プラスチックス機械社製「VS−40」)により、シリンダー温度250℃で溶融混練し、ストランドカットによりペレットを得、得られたペレットを120℃で5〜7時間、熱風循環式乾燥機により乾燥した後、前記の条件で評価用成形品を成形した。そして、前記の評価を行ない、その結果を表2及び表3に示した。

下記表2及び表3に記載の、実施例及び比較例の結果を対比すると、実施例〜5では、いずれも同時に、優れた光線透過率(表中の「全光線透過率」が、63.6%以上)、優れた溶融加工時の耐変色(表中の「初期YI」が、17以下)、及び、優れた使用時の耐変色(表中の「UV照射後のYI」が、22以下、及び、表中の「UV照射後のYI」−「初期YI」=ΔYIが、以下)を示しているのに対して、参考例1、比較例1〜6では、光線透過率、溶融加工時の耐変色及び使用時の耐変色について、括弧内に示した特性値のうち、いづれか1以上を充足せず、本発明所期の効果を達成していないことが明らかである。
【0084】
【表2】

【0085】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光拡散性樹脂組成物を含む光拡散性部材において、該光拡散性樹脂組成物が、芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)30〜99重量部と脂環式ポリエステル樹脂(B成分)1〜70重量部を含む樹脂成分(C成分)100重量部に対し、重量平均径が0.7〜30μmの有機光拡散性微粒子を0.05〜20重量部、さらに最長吸収波長が380nm以下の紫外線吸収剤を0.05〜5重量部含むことを特徴とする光拡散性部材。
【請求項2】
請求項1に記載の光拡散性部材において、該光拡散性樹脂組成物の、最長吸収波長が380nm以下の紫外線吸収剤が、マロン酸エステル類及び/又はシアノアクリレート類であることを特徴とする光拡散性部材
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光拡散性部材において、該光拡散性樹脂組成物が、さらに樹脂成分(C成分)100重量部に対して、蛍光染料を0.00001〜1重量部含むことを特徴とする光拡散性部材

【公開番号】特開2012−14195(P2012−14195A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219118(P2011−219118)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【分割の表示】特願2005−301191(P2005−301191)の分割
【原出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【Fターム(参考)】