説明

光拡散板

液晶ディスプレイのバックライトユニットや照明装置などに用いられる光拡散板を開示する。特に、本発明は、ポリカーボネート樹脂とポリスチレン樹脂との混合物をベース樹脂とした基材層を有する光拡散板を提供する。この光拡散板は、高耐熱性及び高耐湿性により寸法安定性が高く、高温多湿な条件下でも、撓み現象が殆ど発生せず、光源に長時間曝されても黄変度が低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ(LCD)のバックライトユニットや照明装置などに用いられる光拡散板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光拡散板としては、(1)表面に物理的に凹凸加工を施して得られた光拡散板(特許文献1)、(2)ポリエステル樹脂などの透明基材上に、微粒子含有透明樹脂からなる光拡散層をコートして得られた光拡散板(特許文献2)、(3)透明樹脂中にビーズを溶融混練し、これを押出成形して得られた光拡散板(特許文献3)、(4)2種以上の透明な熱可塑性樹脂を溶融混練して形成される、海島構造を持つ光拡散板(特許文献4)などが開示されている。
【0003】
上記(1)及び(2)の光拡散板は、表面に形成された凹凸、あるいはコートされた光拡散層によって光拡散効果を得る表面光拡散板である。一方、上記(3)及び(4)の光拡散板は、基材の内部にも光拡散成分を持つ光拡散板である。
【0004】
通常、主としてメチルメタクリレート樹脂を用いて製造された光拡散板は、全光線透過率などの光特性に優れるという利点がある。しかしながら、そのような光拡散板は寸法安定性が低いため、冷陰極蛍光ランプやLEDなどの光源と共に使用され、点灯及び消灯によって温度変化が生じると、光拡散板の水分吸収率が変動し易く、この結果、撓み、皺、あるいはクラッキングに至る変形の問題がある。すなわち、高温多湿な条件下で撓み現象などの変形が生じるという問題がある(特許文献5,6)。
【0005】
かかる問題を解決するために、吸収能を低下させ得るメチルメタクリレート−スチレン樹脂が使用された多層シートが提案された(特許文献7,8)。しかしながら、ここで使用されている樹脂は、本質的に耐光性が十分でなく、使用条件によっては着色などの劣化の問題が生じることもある。樹脂の耐光性を向上させる公知の方法の1つは紫外線吸収剤の添加であるが、耐光性が低い一部の樹脂ではその効果が十分ではない。
【特許文献1】特開平4−275501号公報
【特許文献2】特開平6−59108号公報
【特許文献3】特開平6−123802号公報
【特許文献4】特開平9−311205号公報
【特許文献5】特開平7−100985号公報
【特許文献6】特開平8−198976号公報
【特許文献7】特開2004−37483号公報
【特許文献8】大韓民国特許出願公開第2003−95262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、上述した従来の問題を解決するため、光拡散板について鋭意研究を重ねた。その結果、高い耐熱性及び低い吸収性により、高温多湿な条件下でも高い寸法安定性を示し、表面層の耐光性により、光源に長時間曝されても黄変現象が生じない光拡散板を開発し、本発明を完成するに至った。
【0007】
そこで、本発明の目的は、寸法安定性が高く、高温多湿な条件下でも撓み現象が殆ど発生しない光拡散板を提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、高い寸法安定性を有しながらも、より低い価格で製造することが可能な光拡散板を提供することにある。
【0009】
また、本発明のさらなる目的は、黄変現象が殆ど発生しない光拡散板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、ポリカーボネート樹脂をベース樹脂として含む基材層を有する光拡散板を提供する。
【0011】
また、本発明は、ポリカーボネート樹脂とポリスチレン樹脂との混合物をベース樹脂として含む基材層を有する光拡散板を提供する。
【0012】
前記ポリカーボネート樹脂は、ジヒドロキシフェノールとホスゲンとの反応、又はジヒドロキシフェノールとカーボネート前駆体との反応によって製造された、鎖状及び分枝状の芳香族ポリカーボネートのホモポリマーよりなる群から選択することができる。
【0013】
前記ベース樹脂は、ポリカーボネート樹脂とポリスチレン樹脂とを1:9〜9:1の重量比で混合したものを含むことができる。
【0014】
前記ポリカーボネート樹脂は、ASTM D1238に準拠した300℃、1.2kg荷重における溶融指数(MI)が8〜30g/10minであってもよい。
【0015】
前記ポリスチレン樹脂は、ASTM D1238に準拠した200℃、5kg荷重における溶融指数(MI)が0.5〜3g/10minであってもよい。
【0016】
前記光拡散板は、前記基材層の片面又は両面に形成され、アクリル系樹脂又はスチレン−アクリル系コポリマー樹脂をベース樹脂として含む表面層をさらに有してもよい。
【0017】
前記アクリル系樹脂は、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸シクロアルキルエステル、アクリル酸シクロアルキルエステル、メタクリル酸アリールエステル、及びアクリル酸アリールエステルよりなる群から選択された少なくとも1つのモノマーから得られたホモポリマー、コポリマー、又はそれらの混合物とすることができる。
【0018】
前記スチレン−アクリル系コポリマー樹脂は、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸シクロアルキルエステル、アクリル酸シクロアルキルエステル、メタクリル酸アリールエステル、及びアクリル酸アリールエステルよりなる群から選択された少なくとも1つのアクリル系モノマーと、スチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、及びp−メトキシスチレンよりなる群から選択された少なくとも1つのスチレン系モノマーとのコポリマーとすることができる。
【0019】
前記スチレン−アクリル系コポリマー樹脂は、アクリル系モノマーとスチレン系モノマーとを6:4〜2:8の重量比で反応させて得ることができる。
【0020】
前記表面層は、フッ素系樹脂又はフッ素系樹脂粒子をさらに含んでもよい。
【0021】
前記基材層又は表面層は、前記基材層又は表面層の組成物の総重量に対して0.1〜35重量%の光拡散剤をさらに含んでもよい。
【0022】
前記光拡散剤は、粒径が0.2〜50μmであってもよい。
【0023】
前記表面層は、前記光拡散剤の突出によるエンボス形状を有し、表面粗度が1〜50μmであってもよい。
【0024】
前記基材層又は表面層は、前記基材層又は表面層の組成物の総重量に対して0.01〜5重量%の光安定剤をさらに含んでもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0026】
本発明において、光拡散板は、ポリカーボネート樹脂単独、又はポリカーボネート樹脂とポリスチレン樹脂との混合物をベース樹脂として含む基材層を有する。
【0027】
ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性、光透過率、耐寒性、及び電気的特性に優れる上、特に高い耐熱性及び耐吸収性を有しているため、寸法安定性が非常に優れており、使用温度範囲が広い。したがって、この樹脂は、光学レンズ、光ディスク材料、ヘルメット、保護具、カバー類などに主として用いられている。
【0028】
本発明に用いられるポリカーボネート樹脂は、一般に用いられている芳香族ポリカーボネート樹脂であり、ジヒドロキシフェノールとホスゲンとの反応、又はジヒドロキシフェノールとカーボネート前駆体との反応によって製造された、鎖状及び分枝状のカーボネートのホモポリマー、ポリエステルコポリマー、又はそれらの混合物を含む。上記ジヒドロキシフェノールの例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(すなわち、ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、及び1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンが挙げられ、上記カーボネート前駆体の例としては、ジフェニルカーボネート、カルボニルハライド、及びジアリルカーボネートが挙げられる。
【0029】
ポリカーボネート樹脂は、ASTM D1238に準拠した300℃、1.2kg荷重における溶融指数(MI)が7〜30g/10minの範囲であることが好ましい。
【0030】
ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性、耐吸収性、及び光透過率に優れているが、多少価格が高いという欠点がある。よって、このポリカーボネート樹脂を、屈折率が同程度で価格が相対的に低いポリスチレン樹脂と混合することもでき、これにより、ポリカーボネート樹脂の剛性を補強し、製造原価中の原材料費を減少させ、光学特性及び機械特性を維持、向上させることができる。
【0031】
ベース樹脂を製造するために用いられるポリスチレン樹脂は、硬くて無色透明であり、電気的特性もよく、大量生産により価格が安いため、厨房用品や文具、家具などの日用品、車両用大型成形品やテレビジョンキャビネットなどの電化製品などで活用されている。
【0032】
本発明に使用されるポリスチレン樹脂は、ASTM D1238に準拠した200℃、5kg荷重における溶融指数(MI)が0.5〜3g/10minであることが好ましい。
【0033】
ポリカーボネート樹脂とポリスチレン樹脂とを混合するため、これらの樹脂を、スクリュー直径30mmの二軸押出機を使用して、200〜300℃、好ましくは250℃の温度、250rpmのモータスピードで溶融混練することができる。
【0034】
この際、ポリカーボネート樹脂とポリスチレン樹脂とは、1:9〜9:1の割合で混合される。ポリカーボネートの柔軟性及び寸法安定性の利点を活かし、ポリスチレンの高い耐吸収性及び強度の利点を活かすためには、それぞれの含有量を少なくとも10%以上にすべきである。
【0035】
本発明の光拡散板は、ベース樹脂を含む基材層のみからなる単層の光拡散板であってもよく、基材層の片面又は両面にさらに表面層が形成された多層の光拡散板であってもよい。
【0036】
多層の光拡散板の場合、上述した基材層に加えて、基材層の片面又は両面に表面層が形成されている。表面層のベース樹脂としては、特に限定されないが、アクリル系樹脂又はスチレン−アクリル系コポリマー樹脂を使用することができる。
【0037】
上記アクリル系樹脂は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートなどのメタクリル酸アルキルエステル;メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートなどのアクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシルメタクリレート、2−メチルシクロヘキシルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレートなどのメタクリル酸シクロアルキルエステル;シクロヘキシルアクリレート、2−メチルシクロヘキシルアクリレートなどのアクリル酸シクロアルキルエステル;フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレートなどのメタクリル酸アリールエステル;フェニルアクリレート、ベンジルアクリレートなどのアクリル酸アリールエステルの中から選択される少なくとも1つのモノマーから得られたホモポリマー又はコポリマーであることが好ましい。
【0038】
上記スチレン−アクリル系コポリマー樹脂は、アクリル系モノマーとしては上述した樹脂を使用し、スチレン系モノマーとしてはスチレン又は置換されたスチレンを使用して製造することができる。置換されたスチレンとしては、α−メチルスチレンなどのアルキルスチレン、クロロスチレンなどのハロゲン化スチレン、ビニルスチレンなどが挙げられる。必要に応じて、2種以上のスチレン系モノマーを組み合わせて使用してもよい。
【0039】
特に、本発明で使用するスチレン−アクリル系共重合樹脂は、アクリル系モノマーとスチレン系モノマーとが9:1〜1:9の割合で、より好ましくは6:4〜1:9の割合で共重合される。基材層との結合力を考慮すると、上記割合で使用することが好ましい。
【0040】
また、本発明の表面層は、フッ素系樹脂又はフッ素系樹脂粒子をさらに含んでいてもよい。
【0041】
フッ素系樹脂は、熱安定性、電気的特性、化学的耐久性、耐候性、耐光性、耐酸素性などに優れる上、水分吸収率が殆どなく、高い耐熱性により使用温度範囲が250〜300℃と高い。また、この樹脂は表面摩擦性にも優れるため、現在、各種弁、ポンプ、タンク、フィルタ、パイプ、ケーブル、コンピュータ、宇宙産業などに適用されている。
【0042】
特に、本発明で使用されるフッ素系樹脂又はフッ素系樹脂粒子は、テトラフルオロエチレン(TFE)ホモポリマー、テトラフルオロエチレンとパーフルオロプロピルエーテルとのコポリマー(PFA)、テトラフルオロエチレン(TFE)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマー、テトラフルオロエチレンとエチレンとのコポリマー(ETFE)、及びフッ化ビニリデン(VDF)とテトラフルオロエチレン(TFE)とのコポリマーの中から選択される少なくとも1種を含む。このフッ素系樹脂又はフッ素系樹脂粒子を使用することにより、優れた撥水特性が得られる。したがって、フッ素系樹脂を表面層に含ませることにより、寸法安定性が一層向上し、高温多湿な条件下でも撓み現象が発生しなくなる。
【0043】
表面層に含まれるフッ素系樹脂の含有量は、寸法安定性及び透過性を考慮すると、表面層の全組成物に対して0.5〜35重量%の範囲が好ましく、5〜15重量%の範囲がより好ましい。
【0044】
また、基材層又は表面層は、光拡散剤をさらに含んでいてもよい。この光拡散剤は、通常、基材樹脂とは屈折率が異なり、光の拡散率を高めるために使用される。この目的のためには、様々な有機粒子及び無機粒子を使用することができる。光拡散剤の屈折率が基材樹脂の屈折率と大きく異なる場合には、少ない量でも所望の光拡散効果を得ることができる。一方、屈折率の差が小さい場合には、比較的多い量の光拡散剤を使用する必要がある。
【0045】
有機粒子の代表的な例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、n−ブチルメチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミド、メチロールアクリルアミド、グリシジルメタクリレート、エチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートのポリマー、又はこれらのコポリマー若しくはターポリマーなどのアクリル系ポリマー粒子;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマー粒子;アクリル−オレフィン系コポリマー粒子、上記ホモポリマー、コポリマー、あるいはターポリマーの粒子を形成した後、そのポリマー粒子層上に他の種類のモノマーを覆って得られた多層多成分系粒子、シロキサン系ポリマー粒子、テトラフルオロエチレン系粒子などが挙げられる。
【0046】
無機光拡散粒子の例としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、フッ化マグネシウム、タルク、ガラス、マイカなどが挙げられる。通常、無機粒子に比べて有機粒子の方が光拡散性に優れている。必要に応じて、2種以上の光拡散粒子を組み合わせて使用してもよい。
【0047】
表面層に光拡散剤がさらに含まれる場合、光拡散効果を一層向上させることができる。また、光拡散粒子が表面層の表面に突出してエンボス形状となることにより、無光沢かつ低反射率の表面を得ることができる。この際、表面層の表面粗度は、約0.1〜50μmが好ましい。表面粗度が50μmを超えると表面衝撃強度が不十分となり、粗度が0.1μm未満であれば無光沢効果が低下する。
【0048】
本発明の基材層又は表面層に使用される光拡散剤の含有量は、基材層又は表面層におけるベース樹脂の組成物の総重量に対して0.01〜35重量%の範囲が好ましく、0.5〜15重量%の範囲がより好ましい。光拡散剤の量が0.01重量%未満であれば、十分な光拡散効果及びマスク効果を期待することが困難である。一方、光拡散剤の量が35重量%を超えると、光透過性が悪くなる。光拡散剤の含有量は、ベース樹脂との屈折率の差によって決定できる。
【0049】
また、本発明の基材層又は表面層は、光安定剤を含んでいてもよい。光安定剤の例としては、250nm〜380nmの範囲に吸収極大波長を持つ紫外線吸収剤、又はラジカルスカベンジャ、例えば光安定効果を極大化させることが可能なヒンダードアミン類の紫外線安定剤が挙げられる。これらは、長時間効力を発揮することができなければならず、蒸発又は抽出されてシートから分離又は除去されてはならない。また、基材との相溶性に優れた吸収剤を選択すべきである。
【0050】
紫外線吸収剤は、シアノアクリル系、サリチル酸塩系、マロン酸エステル系、オキサルアニルリド系、ジケトン系、ヒドロキシベンゾフェノン系、ヒドロキシベンゾトリアゾール系、有機金属系、及びそれらの混合物よりなる群から選択することができる。
【0051】
紫外線安定剤は、ピペリジニルエステル類、オキサゾリジン及びピペリジノオキサゾリジン類、ピペリジスピロアセタール類、ジアザシクロアルカノン類、及びそれらの混合物よりなる群から選択することができる。
【0052】
光安定剤の含有量は、基材層又は表面層の樹脂組成物の総重量に対して0.01〜5重量%の範囲が好ましく、0.1〜2重量%の範囲がより好ましい。これらは、特に表面層に含有させることにより、基材層の全光線透過率及び物性を低下させることなく、所望の光安定効果を得ることができ、且つ原価節減の効果をもたらすことができる。
【0053】
本発明の光拡散板は、屋内外の各種用途に使用できる。すなわち、看板、照明看板、照明カバー、ガラス陳列ケースに使用でき、好ましくはディスプレイ用光拡散板として使用できる。ディスプレイ用光拡散板の代表的な例としては、液晶ディスプレイバックライト又はエッジライト型バックライト用の光拡散板を挙げることができる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
実施例では、基材層のベース樹脂としてポリカーボネート樹脂(PC)及びポリスチレン樹脂(PS)を使用し、表1の組成比で均一に投入して2軸押出機を用いて250℃の温度で溶融混練した。
【0056】
この際、上記ポリカーボネート樹脂は、ASTM D1238に準拠した300℃、1.2kg荷重における溶融指数(MI)が22g/10minであり、上記ポリスチレン樹脂は、ASTM D1238に準拠した200℃、5kg荷重における溶融指数(MI)が1.5g/10minであった。
【0057】
また、表面層のベース樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、又はアクリル系モノマーとスチレン系モノマーとを常法に従って共重合して製造したスチレン−アクリル系コポリマー樹脂を使用した。
【0058】
光拡散板は、スクリュー直径135mm、60mmの押出機を使用し、共押出して250℃で成形した。基材層のみからなる光拡散板は、基材層の厚さを2.0mmとした。表面層を含む光拡散板は、基材層の片面にのみ表面層を形成した。この際、基材層の厚さを1.0mmとし、表面層の厚さを0.1mmとした。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
【表5】

【0064】
実施例及び比較例における光拡散板の組成において、基材層は、表1のベース樹脂に光拡散剤としてのシリコン樹脂ビーズ(平均粒径2μm)0.2重量部と光安定剤としての紫外線吸収剤B−Cap(Tetra−ethyl−2,2’−(1,4−phenylene−dimethylidene)−bismalonate)0.05重量部とを混合することによって構成された。表面層は、表面層に含まれるベース樹脂単独又は表の組成によるフッ素系樹脂若しくはフッ素系樹脂粒子、光拡散剤としてのシリコン樹脂粒子(平均粒径2μm)2重量部、及び光安定剤としての紫外線吸収剤B−Cap(Tetra−ethyl−2,2’−(1,4−phenylene−dimethylidene)−bismalonate)0.5重量部を混合することによって構成された。
【0065】
上記実施例及び比較例で製造された光拡散板に対して、水分吸収率、撓み、全光線透過率、ヘイズ、黄変度、及び熱変形温度を測定した。測定結果を下記表5〜表8に示す。
【0066】
ここで、水分吸収率は、光拡散板を10×10cmに切断し、水中で25℃、24時間放置した後、重量変化を測定することにより求めた。また、撓みは、シートを20″サイズのバックライトユニットに装着し、60℃、相対湿度75%で96時間放置した後、底部からの四隅の捲れ程度を測定することによって求めた。熱変形温度は、ASTM D648に準拠して測定した。
【0067】
露光後の黄変度は、ASTM D1925規格に準拠してFS−40 313/280ランプを装着したQ−UVテスターで、40℃、240時間の露光を行った後、ASTM D1003に準拠して測定した。全光線透過率及びヘイズは、ASTM D1003に準拠して測定した。
【0068】
【表6】

【0069】
上記物性評価の結果、ポリカーボネート樹脂とポリスチレン樹脂とを混合してベース樹脂として使用した単一基材層の光拡散板の場合、高温多湿の条件下でも寸法安定性が比較的優れるが、黄変度は高いことが分かる。
【0070】
【表7】

【0071】
上記物性評価の結果、ポリカーボネート樹脂をベース樹脂として使用した基材層と、基材層の片面に形成された表面層、又はフッ素系樹脂若しくはフッ素系樹脂粒子をさらに含む表面層とを有する光拡散板の場合、寸法安定性に優れることが分かる。
【0072】
したがって、ポリカーボネート樹脂を基材層のベース樹脂として使用する場合、表面層のベース樹脂の種類に関わらず、寸法安定性及び光特性に優れることが分かる。
【0073】
【表8】

【0074】
上記物性評価の結果、ポリカーボネート樹脂とポリスチレン樹脂とを混合してベース樹脂として使用した基材層と、その片面に形成されたPMMA樹脂をベース樹脂を含む表面層とを有する光拡散板の場合、優れた寸法安定性及び黄変度を示すことが分かる。
【0075】
さらに、表面層にフッ素系樹脂又はフッ素系樹脂粒子を含む光拡散板の場合、フッ素系樹脂又はフッ素系樹脂粒子を含まない光拡散板よりも一層優れた寸法安定性を示し、その含有量が増えるほど、さらに優れた寸法安定性を示すことが分かる。
【0076】
したがって、相対的に原価が低いポリスチレン樹脂をポリカーボネート樹脂と混合して基材層のベース樹脂として使用する場合、ポリカーボネート樹脂のみを基材層のベース樹脂として使用する場合と同等以上の寸法安定性を示したので、原価を節減することができることが分かる。
【0077】
【表9】

【0078】
上記物性評価の結果、ポリカーボネート樹脂とポリスチレン樹脂とを混合してベース樹脂として使用した基材層と、その片面に形成されたMS樹脂をベース樹脂として含む表面層とを有する光拡散板の場合、優れた寸法安定性を示すことが分かる。
【0079】
よって、相対的に原価が安いポリスチレン樹脂をポリカーボネート樹脂と混合して基材層のベース樹脂として使用しても、優れた寸法安定性を示すので、原価を節減できることが分かる。
【0080】
【表10】

【0081】
上記物性評価の結果、基材層にポリカーボネート樹脂、又はポリカーボネート樹脂及びポリスチレン樹脂を含まない光拡散板の場合、寸法安定性及び黄変度などの物性が低下したことが分かる。
【0082】
以上より、本発明の光拡散板は、基材層にポリカーボネート樹脂、又はポリカーボネート樹脂とポリスチレン樹脂との混合物を用いることにより、全光線透過率及び光拡散性に優れ、特に高耐熱性及び耐吸収率に優れ、したがって寸法安定性が非常に優れている。また、ポリカーボネート樹脂よりも相対的に安価なポリスチレン樹脂を使用することにより、原価節減の効果を期待することができる。
【0083】
また、本発明の光拡散板は、表面層を設けることにより、長時間光源に曝されたときの黄変度を改善することができる。
【0084】
さらに、本発明の光拡散板は、表面層にフッ素系樹脂又はフッ素系樹脂粒子を含めることにより、寸法安定性が一層向上する上、光源に長時間曝されたときの黄変度がさらに低くなり、物性が一層優れた光拡散板を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上説明したように、本発明は光拡散板を提供する。本発明によれば、光拡散板がポリカーボネート樹脂をベース樹脂とした基材層を有するため、高い耐吸収性に起因して寸法安定性が高く、高温多湿な条件下でも撓み現象が殆ど発生しない。また、表面層をさらに形成し、あるいは表面層にフッ素系樹脂又はフッ素系樹脂粒子をさらに含めることにより、寸法安定性が一層向上する上、光源に長時間曝されても黄変度が非常に低い光拡散板を提供することができる。
【0086】
以上、本発明の好ましい実施形態を参照して説明したが、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び範囲から逸脱することなく、本発明を様々に修正、変更できることを理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂をベース樹脂として含む基材層を有する光拡散板。
【請求項2】
ポリカーボネート樹脂とポリスチレン樹脂との混合物をベース樹脂として含む基材層を有する光拡散板。
【請求項3】
前記ポリカーボネート樹脂は、ジヒドロキシフェノールとホスゲンとの反応、又はジヒドロキシフェノールとカーボネート前駆体との反応によって製造された、鎖状及び分枝状の芳香族ポリカーボネートのホモポリマーよりなる群から選択される、請求項1又は2に記載の光拡散板。
【請求項4】
前記ベース樹脂は、ポリカーボネート樹脂とポリスチレン樹脂とを1:9〜9:1の質量比で混合したものである、請求項2に記載の光拡散板。
【請求項5】
前記ポリカーボネート樹脂は、ASTM D1238に準拠した300℃、1.2kg荷重における溶融指数(MI)が8〜30g/10minである、請求項1又は2に記載の光拡散板。
【請求項6】
前記ポリスチレン樹脂は、ASTM D1238に準拠した200℃、5kg荷重における溶融指数(MI)が0.5〜3g/10minである、請求項2に記載の光拡散板。
【請求項7】
前記基材層の片面又は両面に形成され、アクリル系樹脂又はスチレン−アクリル系コポリマー樹脂をベース樹脂として含む表面層をさらに有する、請求項1又は2に記載の光拡散板。
【請求項8】
前記アクリル系樹脂は、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸シクロアルキルエステル、アクリル酸シクロアルキルエステル、メタクリル酸アリールエステル、及びアクリル酸アリールエステルよりなる群から選択された少なくとも1つのモノマーから得られたホモポリマー、コポリマー、又はそれらの混合物である、請求項7に記載の光拡散板。
【請求項9】
前記スチレン−アクリル系コポリマー樹脂は、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸シクロアルキルエステル、アクリル酸シクロアルキルエステル、メタクリル酸アリールエステル、及びアクリル酸アリールエステルよりなる群から選択された少なくとも1つのアクリル系モノマーと、スチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、及びp−メトキシスチレンよりなる群から選択された少なくとも1つのスチレン系モノマーとのコポリマーである、請求項7に記載の光拡散板。
【請求項10】
前記スチレン−アクリル系コポリマー樹脂は、アクリル系モノマーとスチレン系モノマーとを9:1〜1:9の重量比で反応させて得られたものである、請求項7に記載の光拡散板。
【請求項11】
前記スチレン−アクリル系コポリマー樹脂は、アクリル系モノマーとスチレン系モノマーとを6:4〜2:8の重量比で反応させて得られたものである、請求項7に記載の光拡散板。
【請求項12】
前記表面層は、フッ素系樹脂又はフッ素系樹脂粒子をさらに含む、請求項7に記載の光拡散板。
【請求項13】
前記基材層は、前記基材層の組成物の総重量に対して0.1〜35重量%の光拡散剤をさらに含む、請求項1又は2に記載の光拡散板。
【請求項14】
前記基材層又は表面層は、前記基材層又は表面層の組成物の総重量に対して0.1〜35重量%の光拡散剤をさらに含む、請求項7に記載の光拡散板。
【請求項15】
前記光拡散剤は、粒径が0.2〜50μmである、請求項13に記載の光拡散板。
【請求項16】
前記光拡散剤は、粒径が0.2〜50μmである、請求項14に記載の光拡散板。
【請求項17】
前記表面層は、前記光拡散剤の突出によるエンボス形状を有し、表面粗度が1〜50μmである、請求項14に記載の光拡散板。
【請求項18】
前記基材層は、前記基材層の組成物の総重量に対して0.01〜5重量%の光安定剤をさらに含む、請求項1又は2に記載の光拡散板。
【請求項19】
前記基材層又は表面層は、前記基材層又は表面層の組成物の総重量に対して0.01〜5重量%の光安定剤をさらに含む、請求項7に記載の光拡散板。

【公表番号】特表2008−532058(P2008−532058A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553031(P2007−553031)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【国際出願番号】PCT/KR2006/000279
【国際公開番号】WO2006/080798
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(597114649)コーロン インダストリーズ インク (99)
【Fターム(参考)】