説明

光拡散粘着剤溶液及びその製造方法並びに表示モジュールユニット

【課題】 本発明は、優れた光拡散性及び光透過率を有する光拡散粘着層を形成することができ、この光拡散粘着層の濁度を容易に調整することができる光拡散粘着剤溶液を提供する。
【解決手段】 本発明の光拡散粘着剤溶液は、アクリル系粘着剤、合成樹脂粒子、及び、分岐を有するアルキル基を含有する有機化合物を含むことを特徴とするので、合成樹脂粒子が有機化合物中に均一に分散されており、光拡散粘着剤溶液を塗布、乾燥させて得られる光拡散粘着層は、優れた光拡散性、透明性及び粘着性を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散粘着剤溶液及びその製造方法並びに表示モジュールユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置は、携帯電話や電子手帳などの電子機器の表示装置として多く用いられている。このような小型電子機器に用いられる液晶表示装置としては、サイドライト型バックライト方式の液晶表示装置が採用されている。
【0003】
上記サイドライト型バックライト方式の液晶表示装置は、一般的に、反射シート、導光板、光拡散シート、プリズムシートなどの光学フィルムが積層状態とされた上で合成樹脂製のバックライト筐体内に配設され、この積層状の光学フィルム上にテープ基材を介して液晶表示パネルが積層一体化されていると共に、導光板の側方にランプリフレクタが設けられてLED(Light Emitting Diode)などの光源が配設されている。
【0004】
上記光拡散シートは、導光板から放射された光を拡散させて液晶表示パネルに光をできるだけ均一に入射させ、表示画面全体が均一な輝度となるようにするための光学フィルムである。
【0005】
近年、液晶表示装置の更なる薄型化、軽量化が要望され、この光拡散シートを従来のように合成樹脂フィルムから形成するのではなく、光学フィルム同士を一体化させている粘着剤層に光拡散性を付与することによって、拡散シートを省略して液晶表示装置の薄型化、軽量化を図る技術が開発されている。
【0006】
特許文献1には、光透過性の無着色粒子を分散含有して光拡散性を示す光透過性の粘着層からなり、その光拡散性が、垂直入射光の垂直透過方向に対し10度又は30度傾斜した方向における透過光の強度を前者I10、後者I30としたとき100×I30/I10で定義される光拡散率に基づいて10%以下であることを特徴とする拡散粘着層が開示されている。
【0007】
上記拡散粘着層は、段落番号〔0010〕に記載の通り、粘着性物質と光透過性の無着色粒子の混合物を汎用の印刷方法で支持基材に塗布、乾燥させることによって形成されているが、無着色粒子を粘着性物質に均一に分散させることが難しく、拡散粘着層の透明性が低下し或いは拡散粘着層の透光性が不均一になるといった問題点の他に、拡散粘着層の粘着性が低下するといった問題点も有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−347006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、優れた光拡散性及び光透過率を有する光拡散粘着層を形成することができ、この光拡散粘着層の濁度を容易に調整することができる光拡散粘着剤溶液及びその製造方法並びに表示モジュールユニットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の光拡散粘着剤溶液は、アクリル系粘着剤、合成樹脂粒子、及び、分岐を有するアルキル基を含有する有機化合物を含むことを特徴とする。
【0011】
又、本発明の光拡散粘着剤溶液の製造方法は、分岐を有するアルキル基を含有する有機化合物中に合成樹脂粒子を分散させて分散液を作製し、この分散液とアクリル系粘着剤とを混合することを特徴とする。
【0012】
更に、本発明の表示モジュールユニットは、枠状のバックライト筐体の内周面にパネル配設用段部が形成され、このパネル配設用段部上に表示パネルが配設されていると共に、上記バックライト筐体内に複数枚の光学フィルムが積層状態にて配設されてなる表示モジュールユニットであって、上記光学フィルムのうちの一枚の光学フィルムは、アクリル系粘着剤、合成樹脂粒子、及び、分岐を有するアルキル基を含有する有機化合物を含む光拡散粘着剤溶液を塗布、乾燥させて得られた光拡散粘着層を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光拡散粘着剤溶液は、アクリル系粘着剤、合成樹脂粒子、及び、分岐を有するアルキル基を含有する有機化合物を含むことを特徴とするので、合成樹脂粒子が光拡散粘着剤溶液中に均一に分散されており、光拡散粘着剤溶液を塗布、乾燥させて得られる光拡散粘着層は、優れた光拡散性、透明性及び粘着性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の表示モジュールユニットを示した縦分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の光拡散粘着剤溶液は、アクリル系粘着剤、合成樹脂粒子、及び、分岐を有するアルキル基を含有する有機化合物を含む。
【0016】
光拡散粘着剤溶液を構成しているアクリル系粘着剤は、特に限定されないが、アルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル同士の共重合体を50重量%以上含有するアクリル系粘着剤、アルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体を50重量%以上含有するアクリル系粘着剤、アルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとその他の官能性モノマーなどの共重合性モノマーとの共重合体を50重量%以上含有するアクリル系粘着剤が好ましく、アルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル同士の共重合体を50重量%以上含有するアクリル系粘着剤がより好ましい。なお、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0017】
そして、アクリル系粘着剤中におけるアルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル成分の含有量は、少ないと、アクリル系粘着剤の粘着性が低下することがあるので、50重量%以上が好ましく、60重量%以上がより好ましい。
【0018】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、不飽和結合を有していない(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ノルマルブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸へキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノルマルデシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。
【0019】
又、上記官能性モノマーの例としては、水酸基を有するモノマー、カルボキシル基を有するモノマー、アミド基を有するモノマー、アミノ基を有するモノマーなどが挙げられる。水酸基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなどが例示される。
【0020】
そして、カルボキシル基を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのα,β−不飽和カルボン酸;マレイン酸ブチルなどのマレイン酸モノアルキル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和二塩基酸、無水マレイン酸などの二塩基酸無水物などが挙げられる。
【0021】
更に、アミド基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミドなどのアルキル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのN−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0022】
又、アミノ基を有するモノマーとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが例示される。上記以外の共重合性モノマーとしては、酢酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、塩化ビニル、アクリロニトリル、エチレン、プロピレンなどが挙げられる。
【0023】
なお、アクリル系粘着剤には、必要に応じて、粘着付与剤、架橋剤などが配合されてもよい。このような粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、ポリテルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、石油系樹脂、テルペン−フェノール樹脂などが挙げられる。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤架橋剤などが挙げられる。
【0024】
更に、アクリル系粘着剤としては、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)法によりポリスチレン換算分子量として測定された重量平均分子量が50万〜100万である(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含み且つゲル分率が10〜80重量%であるアクリル系粘着剤が好ましい。このような粘着剤を用いることによって、光拡散粘着剤溶液から形成される粘着剤層の厚みを10μm程度まで薄層化させても充分な粘着力を発現するので好ましい。
【0025】
アクリル系粘着剤のゲル分率は下記の要領で測定された値をいう。アクリル系粘着剤W1(g)を採取し、このアクリル系粘着剤を大過剰の23℃の酢酸エチル中に48時間に亘って浸漬する。しかる後、酢酸エチルから不溶解分を濾過、分離して不溶解分の重量W2を測定し、下記式に基づいてゲル分率を算出することができる。
アクリル系粘着剤のゲル分率(重量%)=100×W2/W1
【0026】
光拡散粘着剤溶液には合成樹脂粒子が含有されている。この合成樹脂粒子を構成している合成樹脂としては、特に限定されず、例えば、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂、カルボキシル基、グリシジル基などを含有する有機変性シリコーン樹脂、ウレタン系樹脂などが挙げられ、アクリル系粘着剤との表面エネルギーが小さく、濡れ性が良好であり、光拡散粘着剤溶液から形成された光拡散粘着層中に合成樹脂粒子をアクリル系粘着剤に馴染ませた状態に分散させて光拡散粘着層の光拡散性を向上させることができるので、アクリル系樹脂が好ましく、光拡散粘着層の屈折率の制御が容易であるので、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体がより好ましい。合成樹脂粒子を構成している合成樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0027】
合成樹脂粒子の全光線透過率は、低いと、光拡散粘着剤溶液から形成される光拡散粘着層の透光性が低下し、表示モジュールユニットの表示画面の輝度が低下することがあるので、90%以上が好ましく、95〜99%がより好ましい。なお、合成樹脂粒子の全光線透過率は、JIS K7105に準拠して測定された値をいう。
【0028】
合成樹脂粒子を構成している合成樹脂の屈折率と、アクリル系粘着剤の屈折率との差は、0.02〜0.06が好ましく、0.03〜0.05がより好ましい。合成樹脂粒子を構成している合成樹脂の屈折率と、アクリル系粘着剤の屈折率との差が小さいと、光拡散粘着剤溶液から形成された光拡散粘着層の光拡散性が低下し、光拡散粘着層の光拡散性を向上させるためには合成樹脂粒子を高い濃度で含有させる必要があり、光拡散粘着層の粘着性が低下するからである。合成樹脂粒子を構成している合成樹脂の屈折率と、アクリル系粘着剤の屈折率との差が大きいと、光拡散粘着剤溶液から形成された光拡散粘着層のヘーズの調整が困難となることがあるからである。なお、合成樹脂粒子及びアクリル系粘着剤の屈折率は、エリプソメーターによって測定された値をいう。
【0029】
合成樹脂粒子の平均粒子径は、小さいと、光拡散粘着剤溶液から形成される光拡散粘着層の光拡散性が低下することがあり、大きいと、光拡散粘着剤溶液から形成される光拡散粘着層の粘着性が低下することがあるので、1〜20μmが好ましく、3〜10μmがより好ましい。なお、合成樹脂粒子の平均粒子径は、JIS R1629に規定された動的光散乱法に準拠して測定された値をいう。
【0030】
光拡散粘着剤溶液中における合成樹脂粒子の含有量は、少ないと、光拡散粘着剤溶液から形成される光拡散粘着層の光拡散性が低下することがあり、多いと、光拡散粘着剤溶液から形成される光拡散粘着層の粘着性が低下することがあるので、アクリル系粘着剤100重量部に対して0.5〜25重量部が好ましい。
【0031】
更に、光拡散粘着剤溶液は、分岐を有するアルキル基を含有する有機化合物が含まれている。分岐を有するアルキル基を含有する有機化合物を用いることによって、光拡散粘着剤溶液中に合成樹脂粒子を凝集させることなく均一に分散させた状態に含有させておくことができる。
【0032】
分岐を有するアルキル基を含有する有機化合物としては、R1−CO−R2で表されるジアルキルケトン、R3−OHで表されるアルキルアルコールが好ましく、R1−CO−R2で表されるジアルキルケトンがより好ましい。なお、R1、R2、R3はそれぞれ、分岐を有するアルキル基である。R1、R2、R3としては、特に限定されず、例えば、イソブチル基、イソプロピル基、ターチャリーブチル基などが挙げられ、イソブチル基、イソプロピル基が好ましい。なお、分岐を有するアルキル基を含有する有機化合物は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0033】
1−CO−R2で表されるジアルキルケトンとしては、ジイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、イソプロピルイソブチルケトンなどが挙げられ、ジイソブチルケトンが好ましい。
【0034】
3−OHで表されるアルキルアルコールとしては、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ターシャリーブチルアルコールなどが挙げられ、イソプロピルアルコールが好ましい。
【0035】
光拡散粘着剤溶液中における分岐を有するアルキル基を含有する有機化合物の含有量は、少ないと、光拡散粘着剤溶液中における合成樹脂粒子の分散性が低下して合成樹脂粒子が凝集し、光拡散粘着剤溶液から形成される光拡散粘着層の光拡散性が低下することがあり、多いと、光拡散粘着剤溶液の塗布後の乾燥が困難となることがあるので、アクリル系粘着剤100重量部に対して1〜100重量部が好ましく、3〜80重量部がより好ましい。
【0036】
更に、光拡散粘着剤溶液には有機溶媒が含有されていてもよい。このような有機溶媒としては、分岐を有するアルキル基を含有する有機化合物を除いた汎用の溶媒を用いることができ、例えば、酢酸エチル、トルエン、酢酸ブチル、キシレン、メチルエチルケトンなどが挙げられ、酢酸エチル、トルエンが好ましい。なお、有機溶媒は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0037】
光拡散粘着剤溶液中における有機溶媒の含有量は、少ないと、光拡散粘着剤溶液を塗布、乾燥させて得られる光拡散粘着層に筋状の凹凸などの欠陥が生じて光拡散粘着層の光拡散性及び透明性が低下することがあり、多いと、光拡散粘着剤溶液を乾燥させる際に長時間を要するので、アクリル系粘着剤100重量部に対して250〜500重量部が好ましい。
【0038】
次に、光拡散粘着剤溶液の製造方法としては、特に限定されないが、分岐を有するアルキル基を含有する有機化合物中に合成樹脂粒子を添加して均一に分散させて分散液を作製し、この分散液とアクリル系粘着剤とを均一に混合することによって光拡散粘着剤溶液を製造することができる。なお、分散液とアクリル系粘着剤とを混合させるにあたって、アクリル系粘着剤を予め有機溶媒中に溶解又は分散させた上で、分散液とアクリル系粘着剤とを混合することが好ましい。
【0039】
分岐を有するアルキル基を含有する有機化合物中に合成樹脂粒子を均一に分散させて分散液を作製する方法としては、特に限定されず、例えば、分岐を有するアルキル基を含有する有機化合物中に合成樹脂粒子を供給して粒子含有液を作製し、この粒子含有液をホモディスパー、超音波照射装置、ヘンシェルミキサーなどの公知の装置を用いて攪拌することによって有機化合物中に合成樹脂粒子を均一に分散させて分散液を作製する方法が挙げられる。
【0040】
又、上記分散液とアクリル系粘着剤とを均一に混合して光拡散粘着剤溶液を作製する方法としては、特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤中に分散液を供給して混合液を作製し、この混合液をホモディスパー、超音波照射装置、ヘンシェルミキサーなどの公知の装置を用いて攪拌することによって、分散液とアクリル系粘着剤とを均一に混合して光拡散粘着剤溶液を作製する方法が挙げられる。
【0041】
特に、合成樹脂粒子がアクリル系樹脂粒子である場合、分岐を有するアルキル基を含有する有機化合物中に合成樹脂粒子を分散させるにあたって分散剤を必要としない。従って、光拡散粘着剤溶液から形成された光拡散粘着層は、優れた耐湿性及び粘着性を有しており、光拡散粘着剤溶液から形成された光拡散粘着層を備えた表示モジュールユニットは優れた品質を長期間に亘って安定的に維持することができる。なお、分散剤とは、合成樹脂粒子を光拡散粘着剤溶液中に分散させて安定な懸濁液をつくるために用いられる薬剤をいう。上記分散剤としては、例えば、カルボン酸誘導体などのアニオン系界面活性剤、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合誘導体などのノニオン系界面活性剤などが挙げられる。
【0042】
次に、光拡散粘着剤溶液から形成された光拡散粘着層を備えた表示モジュールユニットの一例について説明する。図1に示した表示モジュールユニットのバックライト筐体1は、合成樹脂製の矩形枠状に形成され、上端部には表示パネル2を載置するための平面矩形枠状のパネル配設用段部11がバックライト筐体1の上端面に開口した状態に形成されていると共に、下端部には反射シート3を配設するための反射シート配設用段部12が下端面に開口した状態に平面矩形枠状に形成されている。なお、表示パネル2としては、例えば、液晶表示パネルや有機EL(electroluminescence)パネルなどが挙げられる。
【0043】
そして、バックライト筐体1のパネル配設用段部11上には、バックライト筐体1の上端開口部よりも僅かに小さい大きさの平面矩形状の表示パネル2が枠状の両面粘着テープAを介して配設一体化されていると共に、バックライト筐体1内には複数枚の光学フィルムが互いに積層された状態で配設されている。
【0044】
上記バックライト筐体1内に配設された光学フィルムのうちの一枚の光学フィルム上に、光拡散粘着剤溶液から形成された光拡散粘着層4が積層一体化されている。光学フィルム上に光拡散粘着層4を積層一体化させる方法としては、特に限定されず、光学フィルム上に、光拡散粘着剤溶液をコーティング装置、トップフィードリバースコーターなどを用いて直接塗布して乾燥させて光拡散粘着層4を形成する方法、離型フィルムの離型処理面に光拡散粘着剤溶液を上述の要領で直接塗布して乾燥させて光拡散粘着層4を形成した後、この離型フィルムをその光拡散粘着層4が光学フィルムに対向した状態に光学フィルム上に重ね合わせて、光拡散粘着層4を光学フィルムに転写して積層一体化させる方法などが挙げられる。
【0045】
光拡散粘着剤溶液から形成される光拡散粘着層4の厚さは、薄いと、光拡散粘着層の光拡散性又は粘着性が低下することがあり、厚いと、光拡散粘着層の光透過性や切断加工性が低下することがあるので、5〜100μmが好ましい。
【0046】
図1では、プリズムシート5の下面に光拡散粘着層4が積層一体化されている場合を示したが、他の光学フィルム上に光拡散粘着層4が積層一体化されていてもよい。なお、図1において、6は導光板である。図1では、表示パネル2に対向する光学フィルムがプリズムシート5であるとして説明したが、表示パネル2に対向する光学フィルムは必ずしもプリズムシートである必要はなく、他の光学フィルムであってもよい。上記以外の光学フィルムが適宜、積層されていてもよい。
【0047】
更に、バックライト筐体1の反射シート配設用段部12には反射シート3が配設一体化されていると共に、バックライト筐体1内にはLED(図示せず)が光源として配設されている。
【0048】
上記光拡散粘着剤溶液は、この光拡散粘着剤溶液中に合成樹脂粒子が凝集することなく均一に分散されていると共に、アクリル系粘着剤も均一に溶解しているので、この光拡散粘着剤溶液を塗布、乾燥させて得られる光拡散粘着層は、アクリル系粘着剤中に合成樹脂粒子が均一に分散した状態に形成されている。
【0049】
従って、光拡散粘着剤溶液から形成された光拡散粘着層は、この光拡散粘着層に入射した光を合成樹脂粒子によって拡散した上で表示パネル側に向かって光を放出し、この光によって表示パネル2は均一に照らされ、表示モジュールユニットは優れた表示性能を有している。
【実施例】
【0050】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本実施例に何ら限定されるものでない。
【0051】
(実施例1)
アクリル酸ノルマルブチル70重量部、メタクリル酸ノルマルブチル30重量部、重合開始剤として有機過酸化物(日本油脂社製 商品名「パーロイルL」)0.3重量部及び酢酸エチル300重量部を反応容器内に供給して70℃にて8時間に亘って重合させてアクリル酸ノルマルブチル−メタクリル酸ノルマルブチル共重合体からなるアクリル系粘着剤を作製し、更に、反応溶液に酢酸エチルを加えて、アクリル系粘着剤を25重量%含有するアクリル系粘着剤溶液を得た。アクリル系粘着剤の屈折率は1.475であった。
【0052】
得られたアクリル系粘着剤をテトラヒドロフラン(THF)で50倍に希釈して希釈液を得た。得られた希釈液をフィルター(材質:ポリテトラフルオロエチレン、ポア径:0.2μm)により濾過し測定サンプルを調製した。
【0053】
得られた測定サンプルをGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)(Water社製 商品名「2690 Separations Model」)に供給して、サンプル流量1ミリリットル/分及びカラム温度40℃の条件下でGPC測定を行い、アクリル系粘着剤のポリスチレン換算分子量を算出した。アクリル系粘着剤は、その重量平均分子量が80万、数平均分子量が25万、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が3.2であった。なお、カラムとして昭和電工社から商品名「GPC LF−804」にて市販されているカラムを用い、検出器として示差屈折計を用いた。
【0054】
一方、ポリプロピレン製の容器内に、ジイソブチルケトン80重量部と攪拌子を供給し、攪拌子をマグネティックスターラーを用いて回転させてジイソブチルケトンを攪拌した。
【0055】
次に、上記容器内のジイソブチルケトン中にメタクリル酸メチル−スチレン共重合体粒子(積水化成品工業社製 商品名「MS10−X8D」、平均粒子径:8μm、屈折率:1.525)20重量部を少しづつ供給した。全てのメタクリル酸メチル−スチレン共重合体粒子をジイソブチルケトン中に供給して樹脂含有液を作製し、この樹脂含有液中の攪拌子を除去し、ホモディスパーを用いて樹脂含有液を1000rpmの回転速度で10分間に亘って攪拌、混合することによって、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体粒子の凝集物を解砕し、ジイソブチルケトン中にメタクリル酸メチル−スチレン共重合体粒子を均一に分散させて分散液を作製した。
【0056】
上記アクリル系粘着剤溶液400重量部に上記分散液4重量部及びエポキシ系硬化剤0.5重量部を供給して混合液を作製し、この混合液をホモディスパーを用いて1500rpmの回転速度で10分間に亘って攪拌することによって、分散液及びエポキシ系硬化剤をアクリル系粘着剤溶液中に均一に混合させて光拡散粘着剤溶液を作製した。
【0057】
上記光拡散粘着剤溶液を真空脱泡した後、50μmのポリエチレンテレフタレート離型フィルム(リンテック社製 商品名「PET−50C」)の離型処理面上に上記光拡散粘着剤溶液を乾燥厚みが60μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布し、光拡散粘着剤溶液を90℃のギアオーブン中にて5分間に亘って乾燥させて酢酸エチル及びジイソブチルケトンを除去し光拡散粘着層を形成して積層シートを作製した。
【0058】
厚みが25μmのポリエチレンテレフタレート離型フィルム(リンテック社製 商品名「PET2501」)を用意し、このポリエチレンテレフタレート離型フィルムの離型処理面上に積層シートをその光拡散粘着層が離型処理面に対向した状態となるように重ね合わせて40℃のオーブン中にて2日間に亘って放置して透明光拡散粘着剤シートを得た。
【0059】
(実施例2)
ジイソブチルケトンの代わりにイソプロピルアルコールを用いたこと以外は実施例1と同様にして光拡散粘着剤溶液及び透明光拡散粘着剤シートを得た。
【0060】
(実施例3)
アクリル系粘着剤溶液400重量部に供給する分散液を4重量部の代わりに100重量部としたこと以外は実施例1と同様にして光拡散粘着剤溶液及び透明光拡散粘着剤シートを得た。
【0061】
(実施例4)
アクリル系粘着剤溶液中に分散液を4重量部の代わりに1重量部添加したこと以外は実施例1と同様にして光拡散粘着剤溶液及び透明光拡散粘着剤シートを得た。
【0062】
(実施例5)
アクリル系粘着剤溶液中に分散液を4重量部の代わりに150重量部添加したこと以外は実施例1と同様にして光拡散粘着剤溶液及び透明光拡散粘着剤シートを得た。
【0063】
(実施例6)
メタクリル酸メチル−スチレン共重合体粒子(積水化成品工業社製 商品名「MS10−X8D」、平均粒子径:8μm、屈折率:1.525)の代わりに、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体粒子(積水化成品工業社製 商品名「MS10−X30D」、平均粒子径:30μm、屈折率:1.525)を用いたこと以外は実施例1と同様にして光拡散粘着剤溶液及び透明光拡散粘着剤シートを得た。
【0064】
(実施例7)
メタクリル酸メチル−スチレン共重合体粒子として、積水化成品工業社から商品名「MS10−X8A」にて市販されているメタクリル酸メチル−スチレン共重合体粒子(平均粒子径:8μm、屈折率:1.560)を用いたこと以外は実施例1と同様にして光拡散粘着剤溶液及び透明光拡散粘着剤シートを得た。
【0065】
(実施例8)
メタクリル酸メチル−スチレン共重合体粒子として、積水化成品工業社から商品名「MBX−8」にて市販されているメタクリル酸メチル−スチレン共重合体粒子(平均粒子径:8μm、屈折率:1.485)を用いたこと、アクリル系粘着剤溶液400重量部に供給する分散液を4重量部の代わりに100重量部としたこと以外は実施例1と同様にして光拡散粘着剤溶液及び透明光拡散粘着剤シートを得た。
【0066】
(比較例1)
ジイソブチルケトンの代わりにメチルエチルケトンを用いたこと以外は実施例1と同様にして光拡散粘着剤溶液及び透明光拡散粘着剤シートを得た。
【0067】
(比較例2)
ジイソブチルケトンの代わりにエタノールを用いたこと以外は実施例1と同様にして光拡散粘着剤溶液及び透明光拡散粘着剤シートを得た。
【0068】
(比較例3)
ジイソブチルケトンの代わりにノルマルヘキサンを用いたこと以外は実施例1と同様にして光拡散粘着剤溶液及び透明光拡散粘着剤シートを得た。
【0069】
(比較例4)
アクリル系粘着剤溶液中に分散液を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして光拡散粘着剤溶液及び透明光拡散粘着剤シートを得た。
【0070】
得られた光拡散粘着剤溶液の粒子分散性、並びに、光拡散粘着層の粘着力、全光線透過率及びヘーズを下記要領にて測定し、その結果を表2に示した。なお、比較例1〜3については、粒子分散性が「×」の評価であったため、光拡散粘着層の粘着力、全光線透過率及びヘーズの測定を行わなかった。
【0071】
(粒子分散性)
光拡散粘着剤溶液を23℃にて2日間に亘って放置した後、光拡散粘着剤溶液を震盪機(シェーカー)を用いて200rpmの回転速度で10分間に亘って攪拌させた。光拡散粘着剤溶液中の粒子が均一に分散しており粒子の凝集物が存在しなかった場合を「○」、光拡散粘着剤溶液中の粒子の凝集物が存在した場合を「×」とした。
【0072】
(粘着力)
光拡散粘着層をポリエチレンテレフタレート離型フィルムから離脱させ、この光拡散粘着層の粘着力をJIS Z0237に準拠して測定した。
【0073】
(全光線透過率)
光拡散粘着層をポリエチレンテレフタレート離型フィルムから離脱させ、この光拡散粘着層の全光線透過率をJIS K7105に準拠して測定した。
【0074】
(ヘーズ)
光拡散粘着層をポリエチレンテレフタレート離型フィルムから離脱させ、この光拡散粘着層のヘーズをJIS K7105に準拠して測定した。
【0075】
【表1】


【表2】

【符号の説明】
【0076】
1 バックライト筐体
2 表示パネル
3 反射シート
4 光拡散粘着層
5 プリズムシート
A 両面粘着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系粘着剤、合成樹脂粒子、及び、分岐を有するアルキル基を含有する有機化合物を含むことを特徴とする光拡散粘着剤溶液。
【請求項2】
合成樹脂粒子がアクリル系樹脂粒子であることを特徴とする請求項1に記載の光拡散粘着剤溶液。
【請求項3】
分岐を有するアルキル基を含有する有機化合物は、アルキル基が分岐を有するジアルキルケトン及びアルキル基が分岐を有するアルキルアルコールからなる群から選ばれた少なくとも一種の有機化合物であることを特徴とする請求項1に記載の光拡散粘着剤溶液。
【請求項4】
分岐を有するアルキル基を含有する有機化合物は、ジイソブチルケトン又はイソプロピルアルコールであることを特徴とする請求項1に記載の光拡散粘着剤溶液。
【請求項5】
有機溶媒として酢酸エチル又はトルエンを含有していることを特徴とする請求項1に記載の光拡散粘着剤溶液。
【請求項6】
分岐を有するアルキル基を含有する有機化合物中に合成樹脂粒子を分散させて分散液を作製し、この分散液とアクリル系粘着剤とを混合することを特徴とする光拡散粘着剤溶液の製造方法。
【請求項7】
枠状のバックライト筐体の内周面にパネル配設用段部が形成され、このパネル配設用段部上に表示パネルが配設されていると共に、上記バックライト筐体内に複数枚の光学フィルムが積層状態にて配設されてなる表示モジュールユニットであって、上記光学フィルムのうちの一枚の光学フィルムは、アクリル系粘着剤、合成樹脂粒子、及び、分岐を有するアルキル基を含有する有機化合物を含む光拡散粘着剤溶液を塗布、乾燥させて得られた光拡散粘着層を有していることを特徴とする表示モジュールユニット。

【図1】
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【公開番号】特開2011−63745(P2011−63745A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216775(P2009−216775)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】