説明

光拡散素子を有する照明光学系

【課題】複数の光源ユニットを選択的に使用し、且つ、良好な照明性能を実現する照明光学系を提供する。
【解決手段】顕微鏡本体2に着脱可能な複数の光源ユニット1を顕微鏡本体2に選択的に装着する顕微鏡10の照明光学系10aは、光源ユニット1内に配置された照明光を射出する光源と、光源ユニット1内に配置された照明光を顕微鏡本体2に導く第1の光学系と、顕微鏡本体2内に配置された照明光を標本面に照射する第2の光学系10bと、を含む。そして、各光源ユニット1内の第1の光学系は、光拡散素子4を含み、光源ユニット1から射出される照明光の状態を、第2の光学系10bに対して最適化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明光学系に関し、特に、光拡散素子を有する照明光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、顕微鏡の照明光学系では、用途に合わせて最適な照明を実現するために、光拡散素子が広く用いられている。例えば、特許文献1では、光拡散素子が用いられた顕微鏡透過照明装置が開示されている。特許文献1は、光拡散素子をコレクタレンズの射出面側に配置する構成を開示し、また、照明光学系内で複数の光拡散素子を使用する構成も開示している。
【0003】
一般に、図7に例示されるように、顕微鏡100の照明光学系は、光源ユニット101内に配置された光源及び/または光学系と、顕微鏡本体102のフレーム部103内に配置された光学系とから構成されている。また、光源ユニット101(光源ユニット101a、光源ユニット101b、光源ユニット101c)は、顕微鏡本体102のフレーム部103に対して着脱可能に構成されている。このような構成は、光源が劣化し故障した場合などには、故障した光源を新しい光源に光源ユニット101毎交換することで、容易且つ迅速に顕微鏡100を修理することが可能であり、メンテナンス作業の負担が軽減される点で好ましい。光拡散素子104は、このような構成では、通常、顕微鏡本体102のフレーム部103内に配置されている。
【0004】
図8(a)、図8(b)、及び図8(c)は、それぞれ従来の顕微鏡の照明光学系の構成を例示した図である。図8(a)から図8(c)に例示される照明光学系では、いずれも顕微鏡本体のフレーム部内に、光拡散素子が配置されている。
【0005】
図8(a)に例示される照明光学系200は、光源ユニット201内に配置された、光源204及びコレクタレンズ205と、フレーム部内の光学系202内に配置された、光拡散素子206と、視野絞り207と、ミラー208と、視野絞りレンズ209と、開口絞り210と、及び、コンデンサレンズ211と、から構成され、標本面203を照明する。照明光学系200では、光拡散素子206は、コレクタレンズ205から射出される略平行光の光路上であって、フレーム部内の光学系202に配置されている。
【0006】
また、図8(b)に例示される照明光学系300は、光源ユニット301内に配置された光源304と、フレーム部内の光学系302内に配置された、コレクタレンズ305と、光拡散素子306と、視野絞り307と、ミラー308と、視野絞りレンズ309と、開口絞り310と、及び、コンデンサレンズ311と、から構成され、標本面303を照明する。照明光学系300は、コレクタレンズ305がフレーム部内の光学系302に配置されている点が、図8(a)に例示される照明光学系200と異なっている。照明光学系300でも、光拡散素子306は、図8(a)に例示される光拡散素子206と同様に、コレクタレンズ305から射出される略平行光の光路上であって、フレーム部内の光学系302に配置されている。
【0007】
また、図8(c)に例示される照明光学系400は、光源ユニット401内に配置された光源404と、フレーム部内の光学系402内に配置された、第1の光拡散素子405と、コレクタレンズ406と、第2の光拡散素子407と、視野絞り408と、ミラー409と、視野絞りレンズ410と、開口絞り411と、及び、コンデンサレンズ412から構成され、標本面403を照明する。照明光学系400は、光源404とコレクタレンズ406の間であって、フレーム部内の光学系402に、第1の光拡散素子405を含む点が、図8(b)に例示される照明光学系300と異なっている。照明光学系400でも、第2の光拡散素子407は、図8(b)に例示される光拡散素子306と同様に、コレクタレンズ406から射出される略平行光の光路上であって、フレーム部内の光学系402に配置されている。
【0008】
なお、光拡散素子としては、入射光を散乱させて拡散する、例えば、拡散板などの光学素子や、入射光を分割して屈折させる、例えば、フライアイレンズなどの光学素子などが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−133308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、光源ユニットは、光源の故障等により、同じ特性の光源ユニットと交換される場合の他に、顕微鏡での観察方法及び/または観察対象の変更に伴って、異なる特性の光源ユニットと交換される場合もある。
光拡散素子は、最適な照明を実現するために用いられるため、特定の光源及び/または光学系からなる光源ユニットに合わせて設定されている。このため、従来の構成では、特定の光源ユニットに最適化された光拡散素子と、異なる特性の光源ユニットとを組み合わせると、照明は最適化されない。従って、照明の最適化の観点からは、異なる特性の光源ユニット間の交換は望ましくない。
【0011】
しかしながら、近年では、顕微鏡用の光源の多様化が進み、光源として、さまざまな異なる特性の光源が使用されるに至っている。それに伴い、異なる特性の光源ユニットを交換して使用したいという要請は強まっている。また、光源の多様化が進んだ結果、現在では、光源間の特性の違いも従来に比べて大きくなっているため、光源ユニットの交換前後での照明性能の維持はさらに困難となっている。
以上のような実情を踏まえ、本発明では、複数の光源ユニットを選択的に使用し、且つ、良好な照明性能を実現する照明光学系を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様は、顕微鏡本体に着脱可能な複数の光源ユニットを顕微鏡本体に選択的に装着する顕微鏡の照明光学系であって、光源ユニット内に配置された、照明光を射出する光源と、光源ユニット内に配置された、照明光を顕微鏡本体に導く第1の光学系と、顕微鏡本体内に配置された、照明光を標本面に照射する第2の光学系と、を含み、第1の光学系は、光拡散素子を含み、光源ユニットから射出される照明光の状態を、第2の光学系に対して最適化する照明光学系を提供する。
【0013】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の照明光学系において、光源と標本面の間の照明光路中の第1の光学系内にのみ、光拡散素子を含む照明光学系を提供する。
【0014】
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載の照明光学系において、複数の光源ユニットの各々は、照明光を略平行光束として射出し、複数の光源ユニットは、略同一の光束径の照明光を射出する照明光学系を提供する。
【0015】
本発明の第4の態様は、第3の態様に記載の照明光学系において、複数の光源ユニットは、照明光の光束の中心軸に対する角度と角度に射出される照明光の強度との関係を示す配光分布の形状が略同一である照明光を射出する照明光学系を提供する。
【0016】
本発明の第5の態様は、第4の態様に記載の照明光学系において、光拡散素子は、光源ユニットから射出される照明光の配光分布を、第2の光学系に対して最適化する照明光学系を提供する。
【0017】
本発明の第6の態様は、第5の態様に記載の照明光学系において、第1の光学系は、さらに、コレクタレンズを含み、コレクタレンズは、照明光を略平行光束に変換し、光源ユニットから射出される照明光の光束径を、第2の光学系に対して最適化する照明光学系を提供する。
【0018】
本発明の第7の態様は、第6の態様に記載の照明光学系において、光拡散素子は、コレクタレンズと顕微鏡本体の間に配置される第1の光拡散素子である照明光学系を提供する。
【0019】
本発明の第8の態様は、第6の態様に記載の照明光学系において、光拡散素子は、光源とコレクタレンズの間に配置される第2の光拡散素子である照明光学系を提供する。
【0020】
本発明の第9の態様は、第6の態様に記載の照明光学系において、光拡散素子は、第1の光拡散素子と、第2の光拡散素子と、を含み、第1の光拡散素子は、コレクタレンズと顕微鏡本体の間に配置され、第2の光拡散素子は、光源とコレクタレンズの間に配置される照明光学系を提供する。
【0021】
本発明の第10の態様は、第7の態様または第9の態様に記載の照明光学系において、複数の光源ユニットに含まれる第1の光拡散素子は、顕微鏡本体と光源ユニットの接触面から、略同一の距離だけ離れた位置に配置される照明光学系を提供する。
【0022】
本発明の第11の態様は、第6の態様乃至第10の態様のいずれか1つに記載の照明光学系において、複数の光源ユニットから選択される任意の2つの光源ユニットをそれぞれ第1の光源ユニット、第2の光源ユニットとし、fc1を第1の光源ユニットに含まれるコレクタレンズの焦点距離とし、fc2を第2の光源ユニットに含まれるコレクタレンズの焦点距離とし、NAL1を第1の光源ユニットに含まれる光源が有する開口数とし、NAL2を第2の光源ユニットに含まれる光源が有する開口数とするとき、以下の条件式
0.8<(NAL2×fc2)/(NAL1×fc1)<1.2 ・・・(1)
を満たす照明光学系を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、複数の光源ユニットを選択的に使用し、且つ、良好な照明性能を実現する照明光学系を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施例に係る顕微鏡の構成を例示した図である。
【図2】本発明の一実施例に係る顕微鏡の光源ユニットの構成例を説明するための図である。
【図3】本発明の一実施例に係る顕微鏡の光源ユニットから射出される照明光の光束径について説明するための図である。
【図4】本発明の一実施例に係る顕微鏡の光源ユニットから射出される照明光の配光分布について説明するための図である。
【図5】本発明の実施例1に係る光源ユニットの構成を例示した図である。
【図6】本発明の実施例1に係る光源ユニットの他の構成を例示した図である。
【図7】従来の顕微鏡の構成を例示した図である。
【図8】従来の顕微鏡の照明光学系を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。まず、はじめに、各実施例に共通する構成と作用について説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施例に係る顕微鏡の構成を例示した図である。図1に例示される顕微鏡10は、複数の光源ユニット1(光源ユニット1a、光源ユニット1b、光源ユニット1c)と、顕微鏡本体2と、を含んで構成されている。また、顕微鏡10の照明光学系10aは、光源ユニット1内に配置され、照明光を射出する光源と、光源ユニット1内に配置され、照明光を顕微鏡本体2に導く光学系(第1の光学系)と、顕微鏡本体2のフレーム部3内に配置され、照明光を標本面に照射する光学系10b(第2の光学系)と、を含んで構成されている。
【0027】
複数の光源ユニット1は、顕微鏡本体2のフレーム部3に対して着脱可能に構成されていて、顕微鏡本体2のフレーム部3に選択的に装着される。また、複数の光源ユニット1(光源ユニット1a、光源ユニット1b、光源ユニット1c)は、それぞれの光学系(第1の光学系)内に光拡散素子4(光拡散素子4a、光拡散素子4b、光拡散素子4c)を含んでいる。光拡散素子としては、例えば、フロスト型の拡散板、オパール型の拡散板、フライアイレンズなどを用いることができる。一方、フレーム部3内に配置された光学系10b(第2の光学系)には、光拡散素子を含まない。
【0028】
顕微鏡10は、光源が劣化し故障した場合などには、故障した光源を新しい光源に光源ユニット1毎交換することで、容易且つ迅速に顕微鏡10を修理することが可能である。このため、顕微鏡10は、メンテナンス作業の負担が軽減される点に関しては、従来の顕微鏡100と同様である。
図2(a)、図2(b)、及び図2(c)は、それぞれ本発明の一実施例に係る顕微鏡の光源ユニットの構成例を説明するための図である。
【0029】
図2(a)は、図1に例示される顕微鏡10の光源ユニット1aの構成を例示した図である。図2(a)に例示される光源ユニット1aは、光源側から順に、照明光を射出する光源5aと、コレクタ6aと、光拡散素子4a(第1の光拡散素子)と、を含んで構成されている。ここで、照明光を顕微鏡本体2に導く光源ユニット1a内の光学系(第1の光学系)は、光拡散素子4a及びコレクタ6aから構成され、光拡散素子4aは、コレクタレンズ6aと顕微鏡本体2の間に配置されている。
【0030】
図2(b)は、図1に例示される顕微鏡10の光源ユニット1bの構成を例示した図である。図2(b)に例示される光源ユニット1bは、光源側から順に、照明光を射出する光源5bと、光拡散素子4b(第2の光拡散素子)と、コレクタ6bと、を含んで構成されている。ここで、照明光を顕微鏡本体2に導く光源ユニット1b内の光学系(第1の光学系)は、光拡散素子4b及びコレクタ6bから構成され、光拡散素子4bは、光源5bとコレクタレンズ6bの間に配置されている。
【0031】
図2(c)は、図1に例示される顕微鏡10の光源ユニット1cの構成を例示した図である。図2(c)に例示される光源ユニット1cは、光源側から順に、照明光を射出する光源5cと、光拡散素子4e(第2の光拡散素子)と、コレクタ6cと、光拡散素子4d(第1の光拡散素子)と、を含んで構成されている。ここで、照明光を顕微鏡本体2に導く光源ユニット1c内の光学系(第1の光学系)は、光拡散素子4c(光拡散素子4d及び光拡散素子4e)及びコレクタ6cから構成されている。また、光拡散素子4dは、コレクタレンズ6cと顕微鏡本体2の間に配置され、光拡散素子4eは、光源5cとコレクタレンズ6cの間に配置されている。
【0032】
光源ユニット1a、光源ユニット1b、及び、光源ユニット1cは、いずれも、図1に例示される顕微鏡本体2のフレーム部3に装着されたときに、光源(光源5a、光源5b、光源5c)から射出された照明光を効率良く標本面に照射し、且つ、標本面を均一に照明するように、設計されている。つまり、各光源ユニット1は、フレーム部3内の光学系10b(第2の光学系)に対して最適化されている。これは、各光源ユニット1内の光学系(第1の光学系)が、光源ユニット1から射出される照明光の状態(光束径や配光分布など)を、フレーム部3内の光学系10b(第2の光学系)に対して最適化するように作用することにより、実現される。
図3は、本発明の一実施例に係る顕微鏡の光源ユニットから射出される照明光の光束径について説明するための図である。
【0033】
図3に例示されるように、各光源ユニット1内のコレクタレンズ6は、光源5からおよそコレクタレンズ6の焦点距離fだけ離れた位置に配置されている。従って、コレクタレンズ6は、光源5から射出された照明光を略平行光束に変換し、光源ユニット1の各々は、照明光を略平行光束として射出する。
【0034】
また、各光源ユニット1は、上述したようにフレーム部3内の光学系10b(第2の光学系)に最適化されていて、フレーム部3内の光学系10bに最適な光束径Dの照明光を射出する。このため、複数の光源ユニット1(光源ユニット1a、光源ユニット1b、光源ユニット1c)は、略同一の光束径Dの照明光を射出する。これは、コレクタレンズ6が光源ユニット1から射出される照明光の光束径を、フレーム部3内の光学系10bに対して最適化することにより実現される。
【0035】
より具体的には、複数の光源ユニット1から選択される任意の2つの光源ユニット1をそれぞれ第1の光源ユニット、第2の光源ユニットとするとき、光源ユニット1は、以下の条件式(1)を満たすことが望ましい。これにより、複数の光源ユニット1(光源ユニット1a、光源ユニット1b、光源ユニット1c)は、略同一の光束径の照明光を射出することができる。
0.8<(NAL2×fc2)/(NAL1×fc1)<1.2 ・・・(1)
【0036】
ここで、fc1は、第1の光源ユニットに含まれるコレクタレンズの焦点距離であり、fc2は第2の光源ユニットに含まれるコレクタレンズの焦点距離である。また、NAL1は第1の光源ユニットに含まれる光源が有する開口数であり、NAL2を第2の光源ユニットに含まれる光源が有する開口数である。
図4は、本発明の一実施例に係る顕微鏡の光源ユニットから射出される照明光の配光分布について説明するための図である。
【0037】
各光源ユニット1は、上述したようにフレーム部3内の光学系10b(第2の光学系)に最適化されていて、フレーム部3内の光学系10bに最適な配光分布の照明光を射出する。このため、複数の光源ユニット1(光源ユニット1a、光源ユニット1b、光源ユニット1c)は、配光分布の形状が略同一の照明光を射出する。これは、光拡散素子4が光源ユニット1から射出される照明光の配光分布を、フレーム部3内の光学系10bに対して最適化することにより実現される。ここで、配光分布とは、光源ユニット1から射出される照明光の光束の中心軸に対する角度θoutと、その角度θoutに射出される照明光の強度と、の関係を示す分布のことである。
【0038】
光源ユニット1から射出される照明光の配光分布は、主に、図4に例示される光源5の大きさHと光拡散素子4の拡散角度NAによって変化する。なお、ここで、拡散角度NAとは、光拡散素子4が平行光束として入射する照明光を拡散させる角度のことである。
【0039】
光源5の大きさHが十分に小さい場合には、光源5は点光源とみなすことができる。この場合、光拡散素子4に入射する照明光は、コレクタレンズ6で変換された略平行光束のみであるので、光拡散素子4に入射する照明光の配光分布は、0度近傍が極端に強い急峻な分布形状を示す。従って、照明光の配光分布を最適な配光分布に変換するためには、比較的大きな光拡散素子4の拡散角度NAが必要となる。
【0040】
一方、光源5の大きさHが比較的大きい場合であっても、光源5内の各点から射出される照明光は、それぞれコレクタレンズ6で略平行光束に変換される。しかし、この場合、光源5の中心付近(つまり、コレクタレンズ6の光軸近傍)から射出された照明光は、コレクタレンズ6の光軸と平行な略平行光束に変換されるのに対して、光源5の中心からずれた位置から射出された照明光は、コレクタレンズ6の光軸に対して傾いた略平行光束に変換される。光拡散素子4には光源5の各点から射出された照明光が重なって入射するので、光拡散素子4に入射する照明光の配光分布は、光源5の大きさHが大きいほど角度0度を中心に比較的広い範囲で強い強度を示す。このため、照明光の配光分布を最適な配光分布に変換するために必要な光拡散素子4の拡散角度NAは、光源5の大きさHが小さい場合に比べて、比較的小さくなる。
このように、光源5の大きさHによって、必要とされる光拡散素子4の拡散角度NAは変化する。
【0041】
なお、図4では、光源ユニット1aの構成が例示されているが、特にこれに限られない。光源の大きさと光拡散素子の拡散角度の関係は、光源ユニット1b、光源ユニット1cでも同様の傾向を示す。
【0042】
また、光源ユニット1から射出される照明光の配光分布の形状が同じであっても、フレーム部3内の光学系10bまでの距離が異なる場合には、フレーム部3内の光学系10bに入射した時点での照明光の状態が光源ユニット1毎に異なることになり、好ましくない。このため、各光源ユニット1に含まれる最もフレーム部3に近い光拡散素子4は、顕微鏡本体2と光源ユニット1との接触面から、略同一の距離だけ離れた位置に配置されることが望ましい。特に、光源ユニット1aの光拡散素子4a(第1の光拡散素子)と、光源ユニット1cの光拡散素子4d(第1の光拡散素子)は、顕微鏡本体2と光源ユニット1との接触面から、略同一の距離だけ離れた位置に配置されることが望ましい。
また、例えば、赤外線カットフィルタなどのフィルタ類を、必要により適宜、光源ユニット内に配置してもよい。
【0043】
以上のように各光源ユニット1が構成されることにより、照明光学系10aは、複数の光源ユニット1を選択的に使用することができ、且つ、どの光源ユニット1が選択された場合であっても、良好な照明性能を実現することができる。
【0044】
以下、図面を参照しながら、図1に例示される顕微鏡10の顕微鏡本体2のフレーム部3に対して着脱可能に構成され、フレーム部3に選択的に装着される、光源ユニットの実施例について具体的に説明する。
【実施例1】
【0045】
図5は、本実施例に係る光源ユニットの構成を例示した図である。図6は、本実施例に係る光源ユニットの他の構成を例示した図である。図5に例示される光源ユニット20と図6に例示される光源ユニット30は、図1に例示される顕微鏡本体2のフレーム部3に選択的に装着されて、使用される。
図5に例示される光源ユニット20は、光源側から順に、光源21と、レンズ22aと、レンズ22bと、光拡散素子23と、を含んで構成されている。
レンズ22a及びレンズ22bは、光源21から射出される照明光を略平行光に変換するコレクタレンズ22として機能し、光源ユニット20から射出される照明光の光束径を、図1に例示されるフレーム部3内の光学系10bに対して最適化する。
なお、光源21は、LED光源であり、レンズ22aは、光源側に平面を向けた平凸レンズであり、レンズ22bは、両凸レンズである。
以下、光源ユニット20の各種データについて記載する。
【0046】
光源21から射出される照明光の波長λ、光源21が有する開口数NA、光源21の大きさH、コレクタレンズ22の焦点距離f、光拡散素子23の拡散角度NAは、それぞれ以下のとおりである。
λ=587.56nm、NA=0.6307、H=5mm、
=27.03mm、NA=0.07149
【0047】
光源ユニット20に含まれる光学系のレンズデータは以下のとおりである。なお、ここで、sは面番号を、rは曲率半径(mm)を、dは面間隔(mm)を、ndはd線に対する屈折率を、vdはd線に対するアッベ数を示す。また、第1面S1は、光源21上の面である。また、第3面S3及び第5面S5は非球面である。
光源ユニット20
s r d nd vd
S1 INF 18.9873
S2 INF 10.0000 1.49236 57.86
S3* -20.5940 0.7500
S4 58.0000 9.5000 1.49236 57.86
S5* -80.5000 10.0000
S6 INF 2.0000 1.49236 57.86
S7 INF
【0048】
第3面S3の非球面係数は、以下のとおりである。
S3 K=-1.0000, A2=0, A4=-2.6200×10-6, A6=2.6000×10-8, A8=-6.8400×10-12, A10=0
【0049】
第5面S5の非球面係数は、以下のとおりである。
S5 K=-1.0000, A2=0, A4=-3.4500×10-6, A6=1.0800×10-8, A8=-9.6000×10-12, A10=0
【0050】
光源ユニット20を、顕微鏡10の顕微鏡本体2のフレーム部3に装着することにより、良好な照明性能を実現する照明光学系10aを提供することができる。
【0051】
また、フレーム部3内の光学系10bに対して最適化された任意の複数の光源ユニットから、観察方法及び/または観察対象に応じて、光源ユニット20を選択的に使用することができる。
【0052】
図6に例示される光源ユニット30は、光源側から順に、光源31と、光拡散素子33aと、コレクタレンズ32と、光源から発せられる熱を吸収する赤外線カットフィルタ34と、光拡散素子33bと、を含んで構成されている。光拡散素子33(光拡散素子33a、光拡散素子33b)は、光源ユニット30から射出される照明光の配光分布を、図1に例示されるフレーム部3内の光学系10bに対して最適化する。
なお、光源31は、ハロゲン光源であり、コレクタレンズ32は、両凸レンズである。
以下、光源ユニット30の各種データについて記載する。
【0053】
光源31から射出される照明光の波長λ、光源31が有する開口数NA、光源31の大きさH、コレクタレンズ32の焦点距離f、光拡散素子33aの拡散角度NAFa、光拡散素子33bの拡散角度NAFbは、それぞれ以下のとおりである。
λ=587.56nm、NA=0.7608、
=2mm、f=26.00mm、
NAFa=0.0941、NAFb=0.1132
【0054】
光源ユニット30に含まれる光学系のレンズデータは以下のとおりである。なお、ここで、sは面番号を、rは曲率半径(mm)を、dは面間隔(mm)を、ndはd線に対する屈折率を、vdはd線に対するアッベ数を示す。また、第1面S1は、光源31上の面である。また、第5面S5は非球面である。
光源ユニット30
s r d nd vd
S1 INF 10.8411
S2 INF 2.0000 1.52287 59.89
S3 INF 0.8500
S4 68.2150 22.0000 1.52287 59.89
S5* -15.1000 1.0000
S6 INF 4.0000 1.52287 59.89
S7 INF 10.1500
S8 INF 2.0000 1.51633 64.15
S9 INF
【0055】
第5面S5の非球面係数は、以下のとおりである。
S5 K=-1.0000, A2=0, A4=-1.3000×10-5, A6=-3.8100×10-9, A8=5.0500×10-11, A10=0
【0056】
光源ユニット30を、顕微鏡10の顕微鏡本体2のフレーム部3に装着することにより、良好な照明性能を実現する照明光学系10aを提供することができる。
【0057】
また、フレーム部3内の光学系10bに対して最適化された任意の複数の光源ユニットから、観察方法及び/または観察対象に応じて、光源ユニット30を選択的に使用することができる。
【0058】
さらに、図5に例示される光源ユニット20と図6に例示される光源ユニット30は、いずれも、フレーム部3内の光学系10bに対して最適化されている。また、光源ユニット20を第1の光源ユニットとし、光源ユニット30を第2の光源ユニットとすると、光源ユニット20及び光源ユニット30は、以下のとおり、条件式(1)を満たしている。
(NAL2×fc2)/(NAL1×fc1)≒19.78/17.04≒1.16
従って、本実施例によれば、光源ユニット20及び光源ユニット30を選択的に使用し、且つ、良好な照明性能を実現する照明光学系10aを提供することができる。
【符号の説明】
【0059】
1、1a、1b、1c、20、30、101、101a、101b、101c、201、301、401・・・光源ユニット、2、102・・・顕微鏡本体、3、103・・・フレーム部、4、4a、4b、4c、4d、4e、23、33、33a、33b、104、206、306、405、407・・・光拡散素子、34・・・赤外線カットフィルタ、203、303、403・・・標本面、5、5a、5b、5c、21、31、204、304、404・・・光源、6、6a、6b、6c、22、32、205、305、406・・・コレクタレンズ、10、100・・・顕微鏡、10a、200、300、400・・・照明光学系、10b、202、302、402・・・フレーム部内の光学系、22a、22b・・・レンズ、207、307、408・・・視野絞り、208、308、309・・・ミラー、209、309、410・・・視野絞りレンズ、210、310、411・・・開口絞り、211、311、412・・・コンデンサレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡本体に着脱可能な複数の光源ユニットを前記顕微鏡本体に選択的に装着する顕微鏡の照明光学系であって、
前記光源ユニット内に配置された、照明光を射出する光源と、
前記光源ユニット内に配置された、前記照明光を前記顕微鏡本体に導く第1の光学系と、
前記顕微鏡本体内に配置された、前記照明光を標本面に照射する第2の光学系と、を含み、
前記第1の光学系は、
光拡散素子を含み、
前記光源ユニットから射出される前記照明光の状態を、前記第2の光学系に対して最適化することを特徴とする照明光学系。
【請求項2】
請求項1に記載の照明光学系において、
前記光源と前記標本面の間の照明光路中の前記第1の光学系内にのみ、光拡散素子を含むことを特徴とする照明光学系。
【請求項3】
請求項2に記載の照明光学系において、
前記複数の光源ユニットの各々は、前記照明光を略平行光束として射出し、
前記複数の光源ユニットは、略同一の光束径の前記照明光を射出することを特徴とする照明光学系。
【請求項4】
請求項3に記載の照明光学系において、
前記複数の光源ユニットは、前記照明光の光束の中心軸に対する角度と前記角度に射出される前記照明光の強度との関係を示す配光分布の形状が略同一である前記照明光を射出することを特徴とする照明光学系。
【請求項5】
請求項4に記載の照明光学系において、
前記光拡散素子は、前記光源ユニットから射出される前記照明光の前記配光分布を、前記第2の光学系に対して最適化することを特徴とする照明光学系。
【請求項6】
請求項5に記載の照明光学系において、
前記第1の光学系は、さらに、コレクタレンズを含み、
前記コレクタレンズは、
前記照明光を略平行光束に変換し、
前記光源ユニットから射出される前記照明光の光束径を、前記第2の光学系に対して最適化することを特徴とする照明光学系。
【請求項7】
請求項6に記載の照明光学系において、
前記光拡散素子は、前記コレクタレンズと前記顕微鏡本体の間に配置される第1の光拡散素子であることを特徴とする照明光学系。
【請求項8】
請求項6に記載の照明光学系において、
前記光拡散素子は、前記光源と前記コレクタレンズの間に配置される第2の光拡散素子であることを特徴とする照明光学系。
【請求項9】
請求項6に記載の照明光学系において、
前記光拡散素子は、第1の光拡散素子と、第2の光拡散素子と、を含み、
前記第1の光拡散素子は、前記コレクタレンズと前記顕微鏡本体の間に配置され、
前記第2の光拡散素子は、前記光源と前記コレクタレンズの間に配置されることを特徴とする照明光学系。
【請求項10】
請求項7または請求項9に記載の照明光学系において、
前記複数の光源ユニットに含まれる前記第1の光拡散素子は、前記顕微鏡本体と前記光源ユニットの接触面から、略同一の距離だけ離れた位置に配置されることを特徴とする照明光学系。
【請求項11】
請求項6乃至請求項10のいずれか1項に記載の照明光学系において、
前記複数の光源ユニットから選択される任意の2つの前記光源ユニットをそれぞれ第1の光源ユニット、第2の光源ユニットとし、
c1を前記第1の光源ユニットに含まれる前記コレクタレンズの焦点距離とし、fc2を前記第2の光源ユニットに含まれる前記コレクタレンズの焦点距離とし、NAL1を前記第1の光源ユニットに含まれる前記光源が有する開口数とし、NAL2を前記第2の光源ユニットに含まれる前記光源が有する開口数とするとき、以下の条件式
0.8<(NAL2×fc2)/(NAL1×fc1)<1.2 ・・・(1)
を満たすことを特徴とする照明光学系。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図8】
image rotate

【図1】
image rotate

【図4】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−164158(P2011−164158A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23754(P2010−23754)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】