説明

光拡散装置

【課題】耐久性を向上させることができる光拡散装置を提供する。
【解決手段】光拡散装置1では、Z軸方向に平行な軸線を有するコイル18及びY軸方向に平行な軸線を有するコイル17に電流を流すことにより可動枠11を駆動し、拡散素子2を光軸Lに対して垂直なXY平面に沿って移動させる。この拡散素子2の移動により、レーザ光を拡散させ、プロジェクタAからの映像Bにおけるスペックルノイズを除去する。このように、マグネット13,14とコイル17,18との協働によって、ベース部10から離間して配置された可動枠11と共に拡散素子2を移動させ、可動体30を非接触で移動させることにより、部品の劣化などを生じ難くし、耐久性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、レーザ光源を有する小型のディスプレイ装置(プロジェクタ等)に適用される光拡散装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、下記特許文献1に記載された光拡散装置が知られている。この光拡散装置は、赤色レーザ、青色レーザ、及び緑色レーザを備えたディスプレイ装置に内蔵され、拡散素子が、これらのレーザ光源から出射されたレーザ光の光軸上に配置されている。このディスプレイ装置では、レーザ光源から出射されたレーザ光は、ダイクロックビームスプリッタによって反射され、光拡散装置の拡散素子を通過する。拡散素子を通過したレーザ光は、光変調器によって画像に変換されて反射され、この画像がレンズを通ってスクリーンに映し出される。
【0003】
ここで、この光拡散装置の拡散素子は、軸を介してモータに連結されており、モータによって回転する。この拡散素子の回転により、レーザ光の干渉によるスペックルノイズ(ちらつき)を除去している。より詳しくは、モータによって拡散素子を十分速く回転させることにより、スペックルノイズをスクリーン上で動き回らせ、人の目によってスペックルノイズが感知されないようにしている。この光拡散装置における拡散素子の回転速度は、例えば約30〜40rpm程度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−208089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光拡散装置では、スペックルノイズを除去するため、拡散素子を常時回転させる必要がある。上述した従来の光拡散装置では、モータを長時間駆動させることになるため、耐久性が不十分であった。そのため、耐久性の向上が望まれていた。
【0006】
本発明は、耐久性を向上させることができる光拡散装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る光拡散装置は、レーザ光源を有するディスプレイ装置に設けられ、レーザ光源から出射されるレーザ光の光軸上に配置される拡散素子を備えた光拡散装置であって、ディスプレイ装置内に固定されるベース部と、拡散素子を保持すると共に、ベース部から離間して配置された拡散素子保持部と、ベース部及び拡散素子保持部に両端が固定され、拡散素子保持部をベース部に対して移動可能に支持する複数本のワイヤと、互いに対向して配置されたマグネットとコイルとを有し、ベース部及び拡散素子保持部のいずれか一方にマグネットが固定され、他方にコイルが固定されてなる駆動部と、を備え、コイルは、軸線の方向が互いに異なる第1のコイル及び第2のコイルからなり、マグネットは、レーザ光の光軸に対して平行な方向に着磁されており、拡散素子は、駆動部によって拡散素子保持部が駆動されることにより、光軸に対して垂直な面に沿って移動することを特徴とする。
【0008】
この光拡散装置によれば、駆動部のコイルは、軸線の方向が互いに異なる第1のコイル及び第2のコイルからなる。駆動部のマグネットは、レーザ光の光軸に対して平行な方向に着磁されている。第1のコイル及び第2のコイルに電流が流れると、フレミングの左手の法則に従って拡散素子保持部が駆動され、拡散素子は、光軸に対して垂直な面に沿って移動する。この拡散素子の移動により、レーザ光が拡散され、ディスプレイ装置からの映像におけるスペックルノイズが除去される。このように、マグネットとコイルとの協働によって、ベース部から離間して配置された拡散素子保持部と共に拡散素子を移動させるので、拡散素子をモータに連結して回転させる場合に比して、部品の劣化などが生じ難い。よって、耐久性を向上させることができる。さらに、従来のように拡散素子をモータで回転させる場合、軸は光軸からずらして配置されるため、円板状の拡散素子を光軸上に位置させるには拡散素子の径を大きくする必要があり、スペース効率が悪い。本発明の光拡散装置では、そのような軸は不要のため、拡散素子を小型化することができ、装置のコンパクト化を図ることができる。
【0009】
ここで、第1のコイルを流れる第1の電流及び第2のコイルを流れる第2の電流の時間的変化はそれぞれ正弦波状であり、第1の電流の位相は、第2の電流の位相とは異なっていると好適である。この場合、第1のコイル及び第2のコイルの少なくとも一方には常に電流が流れることとなる。よって、拡散素子は、両端で速度が零になる直線運動をすることなく、常に速度を持って移動することとなり、スペックルノイズがより確実に除去される。
【0010】
また、拡散素子保持部には、ベース部に向けて突出する突出片が形成されており、ベース部には、光軸に対して垂直な第1又は第2の方向において突出片に対向するストッパ部が形成されていると好適である。この構成によれば、光拡散装置に落下衝撃が生じて拡散素子保持部が通常の移動領域を越えて移動した場合であっても、突出片がストッパ部に当接することにより、拡散素子保持部を制止させることができる。これにより、例えばマグネットとコイルとの接触を防ぐことができる。特に、携帯可能なハンディタイプの光拡散装置にあっては、落下させてしまうことも少なくないと考えられるため、上記の構成は効果的である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る光拡散装置が組み込まれたディスプレイ装置の概略図である。
【図2】図1のディスプレイ装置の概略構成を示す斜視図である。
【図3】図1中の光拡散装置を示す斜視図である。
【図4】図3の光拡散装置の分解斜視図である。
【図5】図3の光拡散装置の駆動部を示す斜視図である。
【図6】第1のコイルに電流を流した場合における駆動力の方向を示す図である。
【図7】第2のコイルに電流を流した場合における駆動力の方向を示す図である。
【図8】拡散素子の移動軌跡を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、光拡散装置1が組み込まれたプロジェクタ(ディスプレイ装置)Aの概略構成を示す図であり、図2は、プロジェクタAの概略構成を示す斜視図である。図1及び図2に示すように、プロジェクタAは、スクリーン等に映像Bを投影するためのハンディタイプのディスプレイ装置である。プロジェクタAは、レーザ光源として、赤色レーザ3、青色レーザ4、及び緑色レーザ5を備えている。赤色レーザ3、青色レーザ4、及び緑色レーザ5のそれぞれは、コヒーレント光であるレーザ光を出射する。
【0015】
プロジェクタAは、レーザ3〜5から出射されたレーザ光を集光するための集光系レンズ部6と、集光系レンズ部6で集光されたレーザ光を円板状の拡散素子2によって拡散させる光拡散装置1と、光拡散装置1によって拡散されたレーザ光を映像に変換すると共に反射するLCOS(Liquid Crystal on Silicon)パネル7と、LCOSパネル7からの映像を投影するための投影系レンズ部8と、を備えている。集光系レンズ部6および投影系レンズ部8は、ダイクロイックミラー、ビームスプリッタ、レンズ等を有する。LCOSパネル7は、液晶を用いた反射型のマイクロディスプレイである。これらの集光系レンズ部6、LCOSパネル7、及び投影系レンズ部8としては、公知の技術を用いることができる。
【0016】
光拡散装置1は、プロジェクタAによって投影される映像Bのスペックルノイズを除去するための装置である。光拡散装置1は、集光系レンズ部6と投影系レンズ部8との間に配置されており、その拡散素子2がレーザ光の光軸L上に配置されている。拡散素子2は、XY平面に沿って配置されている。拡散素子2は、利得を持たないレンズ等の光学部品である。拡散素子2の直径は例えば4mm程度であり、光拡散装置1の大きさは例えば10mm角程度である。このように、光拡散装置1は、携帯用の電子機器に内蔵可能で非常に小型の装置である。本実施形態の説明において、光軸Lの延在方向はZ軸方向である。
【0017】
図3及び図4に示すように、光拡散装置1は、プロジェクタA内に固定される樹脂製のベース部10と、拡散素子2を保持すると共に、ベース部10から離間して配置された樹脂製の可動枠(拡散素子保持部)11と、ベース部10及び可動枠11に両端が固定され、可動枠11を支持する4本の導電性のサスペンションワイヤ12A〜12Dと、を備えている。
【0018】
ベース部10は、プロジェクタAの筐体(図示せず)に固定される。ベース部10は、XY平面に平行に配置された略長方形状の板状部10aと、板状部10aに連設されて、XZ平面に平行に配置された板状部10bと、を有しており、X軸方向から見て略L字状をなしている。板状部10aの四隅には、サスペンションワイヤ12A〜12Dの基端が固定される。板状部10aには、光軸Lに対応する位置において、レーザ光の通過を許容する円弧状の切り欠き23が形成されている。
【0019】
可動枠11は、ベース部10の板状部10aと板状部10bとの間に配置されている。可動枠11は、板状部10aからZ軸方向に所定距離離間して板状部10aと略平行に配置された板状部11aと、板状部11aに連設されて、板状部11aからX軸方向に突出すると共に拡散素子2を保持する拡散素子保持枠11bと、板状部11aに連設されて、ベース部10の板状部10aに向けて延びるコイル保持枠11cと、を有している。
【0020】
コイル保持枠11cは、板状部11aのX軸方向における両端部より内側の部分に連設されて、YZ平面に平行に配置された2枚の板状部からなる。板状部11aの四隅には、サスペンションワイヤ12A〜12Dの先端が固定される。コイル保持枠11cは、拡散素子2に近い側に位置するサスペンションワイヤ12A,12Cと、拡散素子2から遠い側に位置するサスペンションワイヤ12B,12Dとの間に配置されている。
【0021】
図3及び図5に示すように、光拡散装置1は、可動枠11及び拡散素子2をXY平面に沿って移動させるための駆動部20を備えている。駆動部20は、ベース部10及び可動枠11によって包囲されるように配置されている。駆動部20は、ベース部10に固定されたマグネット13,14と、可動枠11に固定されたコイル17,18と、を有している。マグネット13,14とコイル17,18とは、Z軸方向において互いに対向して配置されている。
【0022】
駆動部20の構成に関し、より具体的に説明する。マグネット13,14は、大きさの等しい長方形板状をなしており、XY平面に平行に配置されると共に、Z軸方向に互いに所定距離離間して配置されている。マグネット14は、板状部10a側(−Z軸方向側)に配置されており、マグネット13は、板状部11a側(+Z軸方向側)に配置されている。ベース部10には、U字状に成形された金属製のヨーク板16が固定されており、このヨーク板16の内面側にマグネット13,14が固定されている。
【0023】
ベース部10の板状部10aには、+Z軸方向に突出すると共にY軸方向に延在する四角柱状の突出部21,22が形成されている。突出部21及び突出部22は、X軸方向に互いに離間している。ヨーク板16及びマグネット14は、突出部21と突出部22との間に嵌め込まれて固定されている。
【0024】
マグネット13,14は、厚さ方向にN極とS極とが着磁されている。より詳しくは、マグネット13,14は、板状部10a側(−Z軸方向側)にS極が着磁され、板状部11a側(+Z軸方向側)にN極が着磁されている。これにより、マグネット14からマグネット13に向けて+Z軸方向の磁界が形成されている。言い換えれば、マグネット13,14は、光軸Lに対して平行な方向に着磁されている。
【0025】
コイル17は、拡散素子2をY軸方向(第2の方向)に移動させるためのものであり、第2のコイルに相当する。コイル18は、拡散素子2をX軸方向(第1の方向)に移動させるためのものであり、第1のコイルに相当する。
【0026】
コイル17は、Y軸方向に略平行な軸線を有している。コイル17は、コイル保持枠11c内に固定されている。コイル17内には、マグネット13及びヨーク板16の一部が板状部10b側から挿入されている。
【0027】
コイル18は、それぞれZ軸方向に略平行な軸線を有する小判型のコイル18aとコイル18bとからなる。コイル18a,18bは、コイル17の板状部10a側に固定されている。コイル18a,18bは、X軸方向に並設されている。コイル18a,18bの巻線は、互いに逆方向に巻かれており、コイル18a,18b同士は互いに結線されている。このようにして、コイル18a,18bを流れる電流がコイル18a,18b同士の隣接する部分で同じ方向(+Y軸方向または−Y軸方向)となるように構成されている(図6(a)及び(b)参照)。コイル18は、コイル17の一部と共に、マグネット13とマグネット14との間に配置されている。
【0028】
可動枠11の板状部11a上には、コイル17及びコイル18のそれぞれに電流を供給するための略長方形状の基板19が固定されている。この基板の四隅には、前述したサスペンションワイヤ12A〜12Dの先端が接続されている。板状部10bに近い側に位置するサスペンションワイヤ12A,12Bによって、基板19を介してコイル18への通電が可能になっている。また、板状部10bから遠い側に位置するサスペンションワイヤ12C,12Dによって、基板19を介してコイル17への通電が可能になっている。
【0029】
上記のようにして、ベース部10に固定されたヨーク板16、マグネット13,14、及び、可動枠11に固定されたコイル17,18によって、駆動部20(図5参照)が構成されている。そして、可動枠11、拡散素子2、コイル17,18、及び基板19によって、ベース部10に対して一体となって移動する可動体30が構成されている。
【0030】
可動体30は、コイル18への通電によって、X軸方向に移動すると共に、コイル17への通電によって、Y軸方向に移動する。これにより、拡散素子2は、XY平面に沿って移動可能になっている。可動体30が移動する間、可動体30は、可撓性のサスペンションワイヤ12A〜12Dによって支持される。
【0031】
さらに、光拡散装置1には、可動体30の過剰な移動を規制するメカストッパ31,32が設けられている。
【0032】
図3、図4、及び図6に示すように、可動枠11の板状部11aには、板状部10bに向けて突出する突出片24が形成されており、ベース部10の板状部10bには、長方形の孔部27が形成されている。突出片24は、孔部27に挿入される。孔部27のX軸方向両側の壁部(ストッパ部)27a,27a及びZ軸方向両側の壁部27b,27b(図4参照)は、突出片24に対向している。
【0033】
可動体30が通常の移動領域を越えてX軸方向(第1の方向)に移動した場合には、突出片24が壁部27a、27aに当接することにより、可動体30を制止させ、マグネット13とコイル17の接触を防止する。また、可動体30が通常の移動領域を越えてZ軸方向に移動した場合には、突出片24が壁部27b,27bに当接することにより、可動体30を制止させ、マグネット13とコイル17、或いは、マグネット14とコイル18の接触を防止する。これらの突出片24、壁部27a、27a、及び壁部27b,27bによって、メカストッパ31が構成されている。
【0034】
図3、図4、及び図7に示すように、可動枠11のコイル保持枠11cには、板状部10aに向けて突出する2つの突出片25,26(突出片26については図2参照)が形成されており、ベース部10の突出部21,22には、直方体状の窪み部28,29が形成されている。突出片25,26は、窪み部28,29内にそれぞれ配置される。窪み部28のY軸方向両側の壁部(ストッパ部)28a,28a及び窪み部29のY軸方向両側の壁部(ストッパ部)29a,29a(図4参照)は、突出片25,26にそれぞれ対向している。
【0035】
可動体30が通常の移動領域を越えてY軸方向(第2の方向)に移動した場合には、突出片25,26が壁部28a、28a及び/または壁部29a、29aに当接することにより、可動体30を制止させ、ヨーク板16とコイル17の接触を防止する。これらの突出片25,26、壁部28a、28a、及び壁部29a,29aによって、メカストッパ32が構成されている。
【0036】
続いて、光拡散装置1の動作について説明する。光拡散装置1には、サスペンションワイヤ12A〜12Dに電気的に接続されて、コイル17及びコイル18への電流の供給を制御する制御部9(図1参照)が設けられている。光拡散装置1では、制御部9によって駆動部20が制御されることにより、可動体30を移動させる。制御部9は、コイル17及びコイル18に同時に電流が流れるように制御するが、以下の図7及び図8を用いた説明では、説明を容易にするために、コイル17及びコイル18のいずれか一方に電流が流れる場合について説明する。
【0037】
図6(a)に示すように、サスペンションワイヤ12Aからサスペンションワイヤ12Bに向けて電流が流されると、コイル18a,18b同士の隣接する部分では、+Y軸方向に電流が流れる。磁界Cは+Z軸方向に形成されているので、可動体30は+X軸方向に移動する(図6(a)中の矢印参照)。
【0038】
図6(b)に示すように、サスペンションワイヤ12Bからサスペンションワイヤ12Aに向けて電流が流されると、コイル18a,18b同士の隣接する部分では、−Y軸方向に電流が流れる。磁界Cは+Z軸方向に形成されているので、可動体30は−X軸方向に移動する(図6(b)中の矢印参照)。
【0039】
図7(a)に示すように、サスペンションワイヤ12Cからサスペンションワイヤ12Dに向けて電流が流されると、コイル17には、+Y軸方向から見て反時計回りに電流が流れる。磁界Cは+Z軸方向に形成されているので、可動体30は+Y軸方向に移動する(図7(a)中の矢印参照)。
【0040】
図7(b)に示すように、サスペンションワイヤ12Dからサスペンションワイヤ12Cに向けて電流が流されると、コイル17には、+Y軸方向から見て時計回りに電流が流れる。磁界Cは+Z軸方向に形成されているので、可動体30は−Y軸方向に移動する(図7(b)中の矢印参照)。
【0041】
制御部9による実際の制御では、コイル18を流れる第1の電流と、コイル17を流れる第2の電流との時間的変化は、それぞれ正弦波状になっており、それらの周期は等しくなっている。さらに、第1の電流の位相は、第2の電流の位相とは90度ずれている。これにより、拡散素子2を含む可動体30は、XY平面に沿って円形の並進運動を行う(図8参照)。拡散素子2は、両端で速度が零になる直線運動をすることなく、円形の並進運動を行う。言い換えれば、コイル18及びコイル17の少なくとも一方には常に電流が流れるため、拡散素子2は、常に速度を持って移動する。更に言い換えれば、拡散素子2は、方向を変えながら、XY平面に沿って2次元的に移動する。
【0042】
以上説明した光拡散装置1によれば、Z軸方向に平行な軸線を有するコイル18及びY軸方向に平行な軸線を有するコイル17に電流が流れると、フレミングの左手の法則に従って可動枠11が駆動され、拡散素子2は、光軸Lに対して垂直なXY平面に沿って移動する。この拡散素子2の移動により、レーザ光が拡散され、プロジェクタAからの映像Bにおけるスペックルノイズが除去される。このように、マグネット13,14とコイル17,18との協働によって、ベース部10から離間して配置された可動枠11と共に拡散素子2を移動させるので、可動体30は非接触で移動することとなる。よって、拡散素子2をモータに連結して回転させる場合に比して、部品の劣化などが生じ難くなっている。その結果として、耐久性が向上されており、従来の光拡散装置よりも長時間安定して駆動させることができる。さらに、拡散素子をモータで回転させる場合のような軸は不要であるため、拡散素子2が小型化されており、光拡散装置1のコンパクト化が図られている。
【0043】
また、第1の電流の位相は、第2の電流の位相とは90度ずれているので、コイル18及びコイル17の少なくとも一方には常に電流が流れる。よって、拡散素子2は、両端で速度が零になる直線運動をすることなく、常に速度を持って移動することとなり、スペックルノイズがより確実に除去される。
【0044】
また、ベース部10には、X軸方向において突出片24に対向する壁部27a,27aが形成され、Y軸方向において突出片25,26に対向する壁部28a,28a,29a,29aが形成されているので、光拡散装置1に落下衝撃が生じて可動枠11が通常の移動領域を越えて移動した場合であっても、突出片24,25,26が壁部27a,28a,29aに当接することにより、可動枠11を制止させることができる。これにより、例えばマグネット13とコイル17との接触を防ぐことができる。特に、光拡散装置1のように携帯可能なハンディタイプの光拡散装置にあっては、落下させてしまうことも少なくないと考えられるため、上記の構成は特に効果的である。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態では、ベース部10にマグネット13,14が固定され、可動枠11にコイル17,18が固定される場合について説明したが、これとは逆に、ベース部にコイルが固定され、可動枠にマグネットが固定されてもよい。さらに、サスペンションワイヤは導電性である場合に限られず、非導電性であってもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、拡散素子保持部として可動枠11を用いる場合について説明したが、基板そのものが拡散素子保持部を兼ねてもよい。また、マグネット13,14は、2極以上に着磁されてもよい。また、マグネット13,14のいずれか一方やヨーク板16を省略することもできる。コイル17,18に供給される電流の位相の差異は90度に限られず、他の値であってもよい。拡散素子2は、円運動を行う場合に限られず、頂点を持たないような軌跡を描けばよい。
【0047】
また、上記実施形態では、LCOSパネル7を用いたプロジェクタAに適用される場合について説明したが、本発明の光拡散装置は他のディスプレイ装置に適用されてもよく、例えばデジタルマイクロミラーデバイス(Digital Micromirror Device;DMD)を用いたディスプレイ装置に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…光拡散装置、2…拡散素子、3…赤色レーザ(レーザ光源)、4…青色レーザ(レーザ光源)、5…緑色レーザ(レーザ光源)、10…ベース部、11…可動枠(拡散素子保持部)、12A〜12D…サスペンションワイヤ(ワイヤ)、13,14…マグネット、17…コイル(第2のコイル)、18…コイル(第1のコイル)、20…駆動部、24…突出片、25,26…突出片、27a…壁部(ストッパ部)、28a,29a…壁部(ストッパ部)、A…プロジェクタ(ディスプレイ装置)、L…光軸、X…第1の方向、Y…第2の方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源を有するディスプレイ装置に設けられ、前記レーザ光源から出射されるレーザ光の光軸上に配置される拡散素子を備えた光拡散装置であって、
前記ディスプレイ装置内に固定されるベース部と、
前記拡散素子を保持すると共に、前記ベース部から離間して配置された拡散素子保持部と、
前記ベース部及び前記拡散素子保持部に両端が固定され、前記拡散素子保持部を前記ベース部に対して移動可能に支持する複数本のワイヤと、
互いに対向して配置されたマグネットとコイルとを有し、前記ベース部及び前記拡散素子保持部のいずれか一方に前記マグネットが固定され、他方に前記コイルが固定されてなる駆動部と、を備え、
前記コイルは、軸線の方向が互いに異なる第1のコイル及び第2のコイルからなり、
前記マグネットは、前記レーザ光の光軸に対して平行な方向に着磁されており、
前記拡散素子は、前記駆動部によって前記拡散素子保持部が駆動されることにより、前記光軸に対して垂直な面に沿って移動することを特徴とする光拡散装置。
【請求項2】
前記第1のコイルを流れる第1の電流及び前記第2のコイルを流れる第2の電流の時間的変化はそれぞれ正弦波状であり、前記第1の電流の位相は、前記第2の電流の位相とは異なっていることを特徴とする請求項1記載の光拡散装置。
【請求項3】
前記拡散素子保持部には、前記ベース部に向けて突出する突出片が形成されており、
前記ベース部には、前記光軸に対して垂直な第1又は第2の方向において前記突出片に対向するストッパ部が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の光拡散装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−247752(P2012−247752A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121866(P2011−121866)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】