説明

光拡散部材、光学シート、バックライトユニット、ディスプレイ装置

【課題】光源の位置に合わせてアライメントを行う必要が無く、正面方向の輝度を向上させ、光強度の視角度依存性を低減し、ランプイメージを低減する拡散部材、光学シート、バックライトユニットおよびディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】ディスプレイの照明光路制御用の拡散部材であって、前記拡散部材は、光拡散透過部材4の上に空気層を介して拡散基材5を積層した構成からなり、前記光拡散透過部材4は、基材1と、前記基材1における観察者と反対面1aに成す凹凸形状3と前記基材1の観察者側1bに成す凹凸形状2によって構成されており、さらに前記拡散基材5は、透明樹脂に光拡散領域が分散されてなり、全光線透過率が40%〜90%、ヘイズ値が98%以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に液晶表示素子を用いたディスプレイ用バックライトユニットにおいて照明光路制御に使用される光拡散部材、光学シートの改良に関するものであり、更には、この光学シートを搭載したバックライトユニット、ディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の大型液晶テレビにおいては、複数本の冷陰極管やLED(Light Emitting Diode)を配置した直下型方式バックライトが採用されている。 画像表示素子と光源との間に光散乱性の強い樹脂板(拡散板)が用いられて、光源としての冷陰極管やLEDなどが視認されないようにされている。
拡散板は、光拡散効果により光を全方位に拡散するため、液晶表示画面を暗くする。また、拡散板の板厚は、光散乱性を高めるために通常1〜5mm程度の厚さを必要とするので、拡散板で少なからず光吸収され、液晶表示画面が暗くなる。
【0003】
また、液晶テレビは年々薄型化していく傾向があるので、拡散板も薄型化される傾向があり、更なる拡散性能の向上が求められている。
【0004】
従来、直下型方式バックライトに使用される拡散板は、光源である冷陰極管から出射される光を拡散させ、輝度ムラ(ランプイメージ)を低減させることを目的としている。しかしながら、完全にランプイメージを消すのは難しい。
【0005】
完全にランプイメージを消すために、無理に拡散粒子を増やした場合には、全光線透過率が下がりすぎ、輝度低下を引き起こす原因となる。
また、全光線透過率を下げないよう拡散板の拡散粒子を減らすと、拡散効果も下がってしまう。
【0006】
特許文献1〜3には、拡散性能を向上させる手段として、拡散板の出射面にレンズ形状を賦形した例が開示されている。たとえば、拡散板の上に凸型曲面を有するレンズシートが配置されている。
このような拡散板では、光源の配置に合わせてレンズの形状を設計し、レンズのアライメントを決定することが必要であり、製造工程が煩雑化する場合がある。また、拡散板の出射面にレンズ形状を賦形することにより、拡散板の全光線透過率が低下して、液晶表示画面を暗くする場合がある。
【0007】
液晶表示画面の輝度を向上させる手段として、米国3M社の登録商標である輝度強調フィルム(Brightness Enhancement Film:BEF)がレンズシートとして広く使用されている。
図5は、BEFの配置の一例を示す断面模式図であり、図6は、BEFの斜視図である。
図5、図6に示すように、BEF185は、部材186上に、断面三角形状の単位プリズム187が一方向に周期的に配列された光学フィルムである。この単位プリズム187は光の波長に比較して大きいサイズ(ピッチ)とされている。
【0008】
BEF185は、“軸外(off−axis)”からの光を集光し、この光を視聴者に向けて“軸上(on−axis)”に方向転換(redirect)または“リサイクル(recycle)”することができる。すなわち、BEF185は、ディスプレイの使用時(観察時)に、軸外輝度を低下させることによって軸上輝度を増大させることができる。ここで言う「軸上」とは、視聴者の視野方向F’に一致する方向であり、一般的にはディスプレイ画面に対する法線方向(図6中に示す視野方向F’)側である。
【0009】
しかしながら、BEF185を用いた場合には、同時に反射/屈折作用による光成分が、視聴者の視野方向F’に進むことなく横方向に無駄に出射されてしまう場合がある。
図7は、光強度と視野方向F’に対する角度との関係を示すグラフであって、線Aは理想的な系の光強度曲線であり、線BはBEF185を用いた前記光学シートから出射される光の光強度曲線である。
図7の線Bに示すように、BEF185を用いた前記光学シートでは、視聴者の視野方向F’、すなわち視野方向F’に対する角度が0°(軸上方向にあたる)における光強度が最も高められるが、視野方向F’に対する角度が±90°近辺には小さな光強度ピーク(サイドローブ)が発生し、横方向から無駄に出射される光も増えてしまっている。
一方、図7の線Aでは、サイドローブが示されず、視野方向F’の光強度も線Bよりも向上されている。
【0010】
BEF185に代表されるレンズシートを用いる際に、透明基材上に拡散フィラーが塗布され、拡散と集光の両方の機能を持つ拡散フィルム(以下、下拡散フィルム)を拡散板とレンズシートとの間に配置することによって、拡散板から出射される拡散光を効率よく集光することができるとともに、拡散板だけでは消しきれない光源の視認性を抑えることができる。
【0011】
さらにまた、レンズシートと液晶パネルとの間に光拡散フィルムを配置した場合には、サイドローブを低減させることができるとともに、規則的に配列されたレンズと液晶画素との間に生じるモアレ干渉縞を防ぐことができる。
しかし、下拡散フィルムおよび光拡散フィルムを用いる方式は、部材数が増加して、ディスプレイの組立て時の作業が煩雑になるとともに、光学シートの間のゴミが混入するなどの問題が生じる。
【0012】
特許文献4には、このような問題を解決するための手段として、前記単位プリズムのみからなる光学フィルムを用いるのではなく、単位レンズを二次元方向に一定のピッチで配列してなるアレイ構造の光学フィルムを用いたバックライトユニットが開示されている。
【0013】
しかし、このような光学フィルムを用いたバックライトユニットにおいては、光源の位置とレンズの位置とのアライメントを行う必要があり、製造工程が煩雑になるという問題が発生した。さらに、光学フィルムを一体積層するために拡散板の出射面を平坦にする必要があるので、拡散板の出射面にレンズを賦形して集光性を高めることができなくなり、視野方向F’の輝度を向上させて画像の視認性を高めるという手段をとることができなくなった。
【特許文献1】特開2007−103321号公報
【特許文献2】特開2007−12517号公報
【特許文献3】特開2006−195276号公報
【特許文献4】特開2007−213035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、光源の位置に合わせてアライメントを行う必要が無く、拡散・集光性を向上させて、正面方向(観察者側)の輝度を向上させることができ、光強度の視角度依存性を低減するとともに、ランプイメージを低減する拡散部材、光学シート、バックライトユニットを提供することを目的とする。
【0015】
上記の目的を達成するために、本発明では、以下のような手段を講じる。すなわち、光源の光をディスプレイに導く照明光路制御用の光拡散部材であって、光拡散透過部材と、前記光源と反対側に位置する前記光拡散透過部材の箇所に空気層を介して積層された拡散基材とを備え、前記光源側に位置する前記光拡散透過部材の箇所と、前記光源と反対に位置する前記光拡散透過部材の箇所とに、それぞれ凹凸形状を有する構造となっており、前記拡散基材は透明樹脂に光拡散領域が分散されてなり、前記拡散基材は全光線透過率が40%〜90%、ヘイズ値が98%以上である。
【0016】
本発明の光拡散部材は、前記拡散透過部材における、前記光源側に位置する前記光拡散透過部材の箇所における凹凸形状は、単位レンズが一定のピッチで配列され、かつ前記光源と反対に位置する前記光拡散透過部材の箇所における凹凸形状は単位レンズが一定のピッチで配列され、それら単位レンズのピッチはほぼ同一ピッチであり、前記光源側に位置する前記光拡散透過部材の箇所における単位レンズの中央と、前記光源と反対に位置する前記光拡散透過部材の箇所における単位レンズの中央とは、前記光拡散透過部材の前記光源側と前記光源と反対側とを結ぶ厚さ方向から見たときに約半ピッチずれる位置に配置されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の光拡散部材は、前記光源側に位置する前記光拡散透過部材の箇所における単位レンズの形状が凸曲面形状または三角プリズム形状もしくはマイクロレンズであり、前記凸曲面形状または三角プリズム形状もしくはマイクロレンズは、弧状表面または稜線を有する第一頂部と、前記第一頂部から前記基材へ至る第一傾斜面とを有しており、前記第一頂部に行くに従い、対向する前記第一傾斜面の間の距離が次第に減少するように形成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明の光拡散部材は、前記光源と反対に位置する前記光拡散透過部材の箇所における単位レンズの形状が凸曲面形状または三角プリズム形状であり、前記凸曲面形状または三角プリズム形状は、弧状表面または稜線を有する第二頂部と、前記第二頂部から前記基材へ至る第二傾斜面とを有しており、前記第二頂部に行くに従い、対向する前記第二傾斜面の間の距離が次第に減少するように形成されていることを特徴とする。
【0019】
本発明の光拡散部材は、前記光拡散透過部材は板状の基材を有し、前記単位レンズは前記基材の厚さ方向の両面に設けられ、前記基材の屈折率をnとし、前記光源側に位置する前記基材の面における単位レンズのピッチをPとし、断面視したときに、前記第一傾斜面が前記基材に接合する接合点から前記第一傾斜面への接線が、前記基材の前記光源側に位置する面となす角をθとしたときに、前記基材の厚さTが下記式(1)を満たすことを特徴とする。
【0020】
【数1】

【0021】
本発明の光拡散部材は、前記光拡散領域が光拡散粒子であり、前記拡散基材の厚さが0.1〜5mmであることを特徴とする。
本発明の光拡散部材は、前記透明樹脂が熱可塑性樹脂であり、前記光拡散領域が気泡を含んでなり、前記拡散基材の厚さが25〜500μmであることを特徴とする。
【0022】
本発明の光拡散部材は、前記拡散基材が少なくとも1軸方向に延伸されてなることを特徴とする。
【0023】
本発明の光拡散部材は、前記光拡散透過部材が光拡散粒子を含まないことを特徴とする。
【0024】
本発明の光拡散部材は、前記光拡散透過部材が熱可塑性樹脂からなることを特徴とする。
【0025】
本発明の拡散部材は、前記光拡散透過部材は板状の基材を有し、前記凹凸形状は前記基材の厚さ方向の両面に設けられ、前記基材が熱可塑性樹脂からなり、前記基材が少なくとも1軸方向に延伸されてなるとことを特徴とする。
【0026】
本発明の光拡散部材は、前記拡散基材と前記光拡散透過部材とが接着材又は粘着材により積層されていることを特徴とする。
【0027】
本発明の光学シートは、ディスプレイの照明光路制御用の光学シートであって、前記光学シートは、前記の光拡散部材と光学フィルムとからなり、前記光拡散部材の光源と反対の面に、前記光学フィルムの光源側の面が重ねられて形成されており、前記光学フィルムが、光透過基材と光透過基材用単位レンズとからなり、前記光透過基材の光源と反対の面に複数の前記光透過基材用単位レンズが一定のピッチで配列されており、前記光透過基材用単位レンズの形状が凸曲面形状であり、前記凸曲面形状は、弧状表面を有する第三頂部と、前記第三頂部から前記光透過基材へ至る第三傾斜面とを有しており、前記第三頂部に行くに従い、対向する前記第三傾斜面の間の距離が次第に減少するように形成されていることを特徴とする。
【0028】
本発明の光学シートは、前記光学フィルムと前記拡散部材との間に、複数の光遮蔽部と、前記複数の光遮蔽部の間に位置する光透過用開口部とが設けられており、前記光透過開口部が、前記光透過基材用単位レンズの前記第二頂部に対応して設けられていることを特徴とする。
【0029】
本発明の光学シートは、前記光学フィルムと前記拡散部材が、前記光遮蔽部を介して、粘着材もしくは接着剤により接合されることを特徴とする。
本発明のバックライトユニットは、前述の光学シートと、光源と、を備えることを特徴とする。
本発明のディスプレイ装置は、画素単位での透過/遮光に応じて表示画像を規定する画像表示素子と、前記画像表示素子の背面に、請求項16記載のバックライトユニットを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
上記構成によれば、光源の位置に合わせてアライメントを行う必要が無く、拡散・集光性を向上させて、正面方向(観察者側)の輝度を向上させることができ、光強度の視角度依存性を低減するとともに、ランプイメージを低減する拡散部材、光学シート、バックライトユニットおよびディスプレイ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態である光学シート、バックライトユニットおよびディスプレイ装置の一例を示す断面模式図である。
本発明の実施形態であるディスプレイ装置50は、画像表示素子24とバックライトユニット40とから概略構成されている。また、本発明の実施形態であるバックライトユニット40は、光学シート15とバックライト部32とから構成されている。さらにまた、本発明の実施形態である光学シート15は、光学フィルム9と拡散部材6とから概略構成されている。
【0032】
光学シート15は、拡散部材6の観察者側の面5bに光学フィルム9の観察者と反対側の面10aが、光マスク14を介して、重ねられて形成されている。光学シート15は、ディスプレイの照明光路制御用の光学シートであり、ディスプレイ装置の照明光として用いるために、バックライトからの光の光路を制御するものである。
【0033】
(拡散部材)
本発明の実施形態である拡散部材6(特許請求の範囲の光拡散部材に相当)は、光源の光をディスプレイに導くものであって、拡散基材5と光拡散透過部材4とからなり、拡散基材5の観察者と反対側の面5b(光源側に位置する面5b)に光拡散透過部材4の観察者側の面2a(光源と反対に位置する面2a)が空気層7を介して重ねられて形成されている。
【0034】
(光拡散透過部材)
光拡散透過部材4は、基材1と、観察者側に有する凹凸面2(光源と反対に位置する凹凸面2)と、観察者と反対側面に有する凹凸面3(光源側に位置する凹凸面3)から構成される。
言い換えると、光拡散透過部材4は、光源側に位置する光拡散透過部材4の箇所と、光源と反対に位置する光拡散透過部材4の箇所とに、それぞれ凹凸形状を有する構造となっている。
基材1の観察者側に有する凹凸面2の観察者側の面2aは、拡散基材6の観察者と反対側の面5bと接合されている。
【0035】
基材1は、全光線透過率が80%以上であることが好ましい。全光線透過率が80%以上であれば、正面方向(観察者側)Fへ出射させる光の輝度を低下させることがない。
逆に、全光線透過率が80%未満の場合には、正面方向(観察者側)Fへ出射させる光の輝度低下を生じさせるので好ましくない。なお、全光線透過率は、JIS K7361−1に準拠した測定値である。
【0036】
また、基材1は、ヘイズ値が95%以下であることが好ましい。ヘイズ値が95%を超える場合には、基材1の観察者と反対側の面1aに光照度を拡散させるために凹凸層3を形成しても十分な光拡散効果を得ることが出来ないので好ましくない。また、基材1の観察者側には、光強度の角度依存性を緩和すべく、凹凸面2と空気層が存在するために、ヘイズ値が95%以下でも光強度の角度依存性は十分に緩和することが可能である。なお、ヘイズ値は、JIS K7136に準拠した測定値である。
【0037】
光拡散透過部材4に用いられる材料は、熱可塑性樹脂からなる透明樹脂が好ましく、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系アクリル樹脂、シリコーン系アクリル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィンポリマー、メチルスチレン樹脂、フルオレン樹脂、PET、ポリプロピレンなどを挙げることができる。また、光拡散透過部材4は、少なくとも1軸方向に延伸されていてもよい。
【0038】
光拡散透過部材4には、光拡散粒子が含まれないことがより望ましい。光拡散透過部材4に、光拡散粒子が含有された場合には、光拡散透過部材用単位レンズ28による光拡散効果が弱まってしまうためである。
【0039】
拡散基材5は、全光線透過率が40%〜90%であることが好ましい。全光線透過率が40%未満の場合には、正面方向(観察者側)Fへの出射光の輝度低下を生じさせるので好ましくなく、逆に、全光線透過率が90%を超える場合には、拡散性能が不十分となり、面内輝度の均一性が悪化するので好ましくない。
【0040】
拡散基材5は、ヘイズ値が98%以上であることが好ましい。ヘイズ値が98%未満の場合は、拡散性能が不十分となり、面内輝度の均一性が悪化するので好ましくない。
【0041】
拡散基材5は、透明樹脂に光拡散領域が分散されて形成されている。
前記透明樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などを用いることができ、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系アクリル樹脂、シリコーン系アクリル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィンポリマー、メチルスチレン樹脂、フルオレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンなどを用いることができる。
【0042】
前記光拡散領域は、光拡散粒子からなることが好ましい。好適な拡散性能を容易に得ることができるためである。
前記光拡散粒子としては、無機酸化物または樹脂からなる透明粒子を用いることができる。無機酸化物からなる透明粒子としては、例えば、シリカ、アルミナなどを用いることができる。また、樹脂からなる透明粒子としては、アクリル粒子、スチレン粒子、スチレンアクリル粒子及びその架橋体;メラミン−ホルマリン縮合物の粒子;PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(ペルフルオロアルコキシ樹脂)、FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PVDF(ポリフルオロビニリデン)、及びETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)等のフッ素ポリマー粒子;シリコーン樹脂粒子などを用いることができる。
また、先に記載した透明粒子から2種類以上の透明粒子を組み合わせて使用してもよい。さらにまた、透明粒子の大きさ、形状は、特に規定されない。
【0043】
前記光拡散領域として前記光拡散粒子を用いた場合には、拡散基材26の厚さが0.1〜5mmであることが好ましい。
拡散基板26の厚みが0.1〜5mmである場合には、最適な拡散性能と輝度を得ることができる。逆に、0.1mm未満の場合には、拡散性能が足りず、5mmを超える場合には、樹脂量が多いため吸収による輝度低下が生じる。
【0044】
なお、前記透明樹脂として熱可塑性樹脂を用いた場合には、前記光拡散領域として気泡を用いてもよい。
熱可塑性樹脂の内部に形成された気泡の内部表面が光の乱反射を生じさせ、光拡散粒子を分散させた場合と同等以上の光拡散機能を発現させることができる。そのため、拡散基材7の膜厚をより薄くすることが可能となる。
このような拡散基材7として、白色PETや白色PPなどを挙げることができる。白色PETは、PETと相溶性のない樹脂や酸化チタン(TiO2)、硫酸化バリウム(BaSO4)のようなフィラーをPETに分散させた後、該PETを2軸延伸法で延伸することにより、該フィラーの周りに気泡を発生させて形成する。
【0045】
なお、熱可塑性樹脂からなる拡散基材7は、少なくとも1軸方向に延伸されてなればよい。少なくとも1軸方向に延伸されれば、フィラーの周りに気泡を発生させることができるためである。
【0046】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2、6−ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエステル樹脂、イソフタル酸共重合ポリエステル樹脂、スピログリコール共重合ポリエステル樹脂、フルオレン共重合ポリエステル樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、脂環式オレフィン共重合樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエーテル、ポリエステルアミド、ポリエーテルエステル、ポリ塩化ビニル、シクロオレフィンポリマー,およびこれらを成分とする共重合体、またはこれら樹脂の混合物などを用いることができ、特に制限されることはない。
【0047】
前記光拡散領域として気泡を用いた場合には、拡散基材26の厚さが25〜500μmであることが好ましい。
拡散基材26の厚さが25μm未満の場合には、シートのこしが不足し、製造工程やディスプレイ内でしわを発生しやすくなるので好ましくない。また、拡散基材26の厚さが500μmを超える場合には、光学性能に格別問題はないが、剛性が増すためロール状に加工しにくい、スリットが容易にできないなど、従来の拡散板と比較して得られる薄さのメリットが少なくなるので好ましくない。
【0048】
拡散部材6は、拡散基材5と光拡散透過部材4をそれぞれ別々に押出法、射出成型等により形成した後に、接着材又は粘着材により一体化して形成しても良い。たとえば、接着材又は粘着材としては、一般的に用いられるラミネートなどを用いて拡散基材5と光拡散透過部材4を貼り合せることができる。この際に拡散基材5と光拡散透過部材4の間に、空気層を保持することが好ましい。空気層を有することで、光拡散透過部材4の観察者と反対側の面の光源30より入射された光Sが、光拡散透過部材4の観察者側の面に有する凹凸面2より射出される際に、適度に屈折するためである。光が適度に屈折することにより、光輝度の角度依存性が緩和される。
【0049】
なお、光照度を均一化するための凹凸面3は、基材1の観察者と反対側の面1aに、UV硬化樹脂などのような放射線硬化樹脂を用いて成形することができる。
【0050】
さらに、光強度の角度依存性を緩和するための凹凸面2は、基材1の観察者側の面1bに、UV硬化樹脂などのような放射線硬化樹脂を用いて成形することができる。
【0051】
前記凹凸面3に関しては、一度基材上に放射線効果樹脂を用いて成形した後に、基材1の観察者と反対側の面1aに対して接着材又は粘着材により一体化して形成しても良い。この際に基材として使用する材質としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)等が上げられる。
【0052】
さらに前記凹凸面2に関しても、一度基材上に放射線効果樹脂を用いて成形した後に、基材1の観察者と反対側の面1aに対して接着材又は粘着材により一体化して形成しても良い。この際に基材として使用する材質としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)等が上げられる。
【0053】
図1によるバックライトユニットおよびディスプレイ装置においては、光源41から放射された光Hが前記凹凸面3に入射され、前記拡散透過層1の観察者側の面1bに到達するまでに拡散されることにより、輝度の均一化が可能となる。この時点で輝度は均一化されるものの、光の角度依存性は大きいが、光Hが前記1bを通過し、さらに拡散透過層1の観察者側に有する前記凹凸面2を通過することにより、光強度の角度依存性が低減される。これにより、光源の位置に合わせてアライメントを行う必要が無く、正面方向の輝度を向上させ、光強度の視角度依存性を低減し、ランプイメージを低減することが可能である。
【0054】
さらに、前記凹凸面2と前記拡散基材5との間に空気層7を設けることにより、さらに光強度の角度依存性を低減させることが可能である。通常バックライトユニットに使用される熱可塑性樹脂の屈折率は1.45〜1.55である。よって前記拡散透過層4と前記拡散基材5との間に、屈折率1.00の空気が存在することにより、さらなる光拡散効果を望むことができ、しいては光強度の角度依存性低減に効果的である。
【0055】
(光学シート)
図1に示すように、光学シート40は、光学フィルム9と拡散部材6とが重ねられて形成されている。
(光学フィルム)
光学フィルムは9、光透過基材10と光透過基材用単位レンズ11とからなり、光透過基材10の観察者側の面11bには複数の光透過基材用単位レンズ11が一定のピッチで配列されている。
【0056】
光透過基材用単位レンズ11を、光透過基材10の観察者側の面10bに形成することにより、拡散部材6を通過してきた光を正面方向(観察者側)Fに集光させて、正面方向(観察者側)Fの輝度を向上させることができる。
【0057】
光透過基材10の観察者と反対側の面10aは略平坦な面とされており、複数の光マスク14が形成され、さらに拡散部材6が接合されている。
光透過基材10の材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などを用いることができ、拡散部材6に用いた材料を用いてもよい。拡散部材6に用いた材料を接合することで、反りの発生を抑制することができる。
【0058】
光透過基材用単位レンズ11の形状は凸曲面形状であり、この凸曲面形状は、弧状表面を有する第二頂部11aと、第二頂部11aから光透過基材へ至る第二傾斜面11bとを有している。また、光透過基材用単位レンズ11は、第二頂部11aに行くに従い、対向する第二傾斜面11bの間の距離が次第に減少するように形成されている。さらにまた、光透過基材用単位レンズ11は、谷部12により離間されて一定のピッチで形成されている。
【0059】
光学フィルム5と拡散部材9との間には、複数の光マスク14と、光マスク14を離間する(光マスク14の間に位置する)光透過用開口部13とが設けられている。光マスク14および光透過用開口部13のピッチは、光透過基材用単位レンズ11のピッチとほぼ同じピッチとされている。
光マスク14の位置は、谷部12の位置に対応する位置に形成されている。そのため、光透過用開口部13の位置は、光透過基材用単位レンズ16の第二頂部16aに対応する位置に設けられている。
【0060】
光マスク14は、光を透過させない材料から構成されるとともに、観察者側の面9b上に形成された光透過基材用単位レンズ11を離間する谷部12の位置と対応する位置に形成されるので、光学フィルム5に入射される光は、光マスク14を離間して形成される光透過用開口部13を通り、光透過基材用単位レンズ11に入射するため、拡散部材9を通過してきた光を効率よく正面方向(観察者側)Fへ出射する。
【0061】
さらに、光マスク14は、たとえば金属材料や白色反射材などの光反射性部材から構成することができる。この場合、光マスク14により反射された光は、拡散基材5に戻されて、拡散基材5で再び光拡散された後、正面方向(観察者側)Fへ出射される。この工程が繰り返されることにより、バックライト(光源)30からの光をほとんどすべて正面方向(観察者側)Fへ出射させることができる。
【0062】
本発明の実施形態である拡散部材6は、全光線透過率が40%〜80%、ヘイズ値が98%以上の拡散基材5と、全光線透過率が80%以上、ヘイズ値が95%以下である光拡散透過部材4からなる構成なので、集光・拡散特性を向上させ、ランプイメージを低減することができる。
【0063】
本発明の実施形態である拡散部材6は、拡散基材5と光拡散透過部材4とからなり、拡散基材5の観察者と反対側の面5bに光拡散透過部材4の観察者側に有する2aが空気層7を介して重ねられて形成されている構成であるため、拡散特性を向上させ、ランプイメージを低減することができる。
【0064】
本発明の実施形態である拡散部材6は、拡散基材5が透明樹脂に光拡散粒子を分散させて形成される構成なので、容易に所望の拡散性能を得ることできる。
【0065】
本発明の実施形態である拡散部材6は、拡散基材5が熱可塑性樹脂に気泡を分散させて形成される構成なので、熱可塑性樹脂の内部に形成された気泡の内部表面が光の乱反射を生じさせ、光拡散粒子を分散させた場合と同等以上の光拡散機能を発現させることができる。そのため、拡散基材5の膜厚をより薄くすることが可能となる。
【0066】
本発明の実施形態である拡散部材6は、熱可塑性樹脂に、該熱可塑性樹脂と相溶性のない樹脂や酸化チタン(TiO2)、硫酸化バリウム(BaSO4)のようなフィラーを分散させた後、少なくとも1軸方向に延伸されてなる拡散基材5を有する構成なので、該フィラーの周りに気泡を発生させて形成することができる。そのため、熱可塑性樹脂の内部に形成された気泡の内部表面が光の乱反射を生じさせ、光拡散粒子を分散させた場合と同等以上の光拡散機能を発現させることができる。
【0067】
本発明の実施形態である拡散部材6は、拡散基材5と光拡散透過部材4とが接着材又は粘着材により積層される構成なので、容易に製造することができ、製造工程を簡略化するとともに、製造コストを低減することができる。
【0068】
本発明の実施形態である拡散部材6は、光拡散透過部材5が拡散粒子を含まない構成なので、光拡散透過部材用凹凸面3による拡散効果を低減させない。
【0069】
本発明の実施形態である光学シート15は、光学フィルム9と拡散部材5との間に、複数の光マスク14と、光マスク14を離間する光透過用開口部13を有し、光学フィルム9を構成する光透過基材10の観察者側の面10bに配列された複数の光透過基材用単位レンズ11の第二頂部11aに対応するように光マスク14が形成されている構成なので、透過させる光をほとんど光透過基材用単位レンズ11の第二頂部11aの方向へ出射する光のみとすることができ、正面方向(観察者側)Fへの輝度が向上するようにできる。
【0070】
本発明の実施形態である光学シート15は、光マスク14として光反射性部材を用いる構成なので、光マスク14により透過されない光を拡散基材5に戻して、拡散基材5で再び光拡散させた後、正面方向(観察者側)Fへ出射させる工程を繰り返すことができ、バックライト(光源)30からの光をほとんどすべて正面方向(観察者側)Fへ出射させることができる。
【0071】
(バックライトユニット)
図1に示すように、本発明の実施形態であるバックライトユニット40は、直下型バックライトユニットであり、光学シート15と、バックライト部32とから概略構成されている。また、バックライト部32は、複数のバックライト(光源)30と反射板31とから構成されている。
【0072】
バックライト(光源)30は、たとえば、シリンダー形状の複数の光源を用いることができる。シリンダー形状の複数の光源としては、たとえば、複数の線状の蛍光灯、冷陰極管(CCFL)あるいはLEDなどを用いることができる。
反射板31は、複数のバックライト(光源)30の正面方向(観察者側)Fと反対側に配置され、バックライト(光源)30から全方向に出射された光のうち、正面方向(観察者側)Fと反対側の方向に出射された光を反射させて正面方向(観察者側)Fに出射させることができる。その結果、正面方向(観察者側)Fに出射された光Hは、ほぼバックライト(光源)30から全方向に出射された光となる。このように反射板31を用いることによって、光の利用効率を高めることができる。反射板31としては、光を高効率で反射させる部材であればよく、たとえば、一般的な反射フィルム、反射板などを使用することができる。
【0073】
光学シート15を、複数のバックライト(光源)30の正面方向(観察者側)Fに配置することによって、バックライト(光源)30からの光Sをほぼ取り込むことができる。
光Pは、光学シート52へ入射され、出射光Pとされる。出射光Pは、光学シート15の拡散効果により、バックライト(光源)30のランプイメージがなくされるとともに、光強度の視角度依存性が低減され、さらに、光学シート15の集光効果により、正面方向(観察者側)Fの輝度が向上されて出射される。
【0074】
本発明の実施形態であるバックライトユニット40は、先に記載の光学シート15を備える構成なので、光源30からの光Sを光学シート15に入射させて出射する光Pの光拡散性を向上させ、正面方向(観察者側)Fの輝度を向上させ、光強度の視覚方向の分布を滑らかにするとともに、ランプイメージを低減させることが可能となる。
【0075】
(ディスプレイ装置)
図1に示すように、本発明の実施形態であるディスプレイ装置50は、画像表示素子24とバックライトユニット40とから構成されている。
画像表示素子24は、2枚の偏光板(偏光フィルム)21、23と、その間に挟持された液晶パネル22とからなる。液晶パネル22は、たとえば、2枚のガラス基板の間に液晶層が充填されて構成されている。
バックライトユニット40から出射された光Pは、偏光フィルター23を介して液晶部22に入射され、偏光フィルター21を介して正面方向(観察者側)Fに出射される。
【0076】
画像表示素子24は、画素単位で光を透過/遮光して画像を表示する素子であることが好ましい。画素単位で光を透過/遮光して画像を表示するものであれば、光学シート40により、正面方向(観察者側)Fへの輝度が向上され、光強度の視角度依存性が低減され、さらに、ランプイメージが低減された光を有効に利用して、画像品位の高い画像を表示させることができる。
画像表示素子24は、液晶表示素子であることが好ましい。液晶表示素子は、画素単位で光を透過/遮光して画像を表示する代表的な素子であり、他の表示素子に比べて、画像品位を高くすることができるとともに、製造コストを低減することができる。
【0077】
本発明の実施形態であるディスプレイ装置50には、拡散フィルム、プリズムシート、偏光分離反射シートなどを配置することにより、画像品質を向上させることも可能である。
【0078】
本発明の実施形態であるディスプレイ装置50は、先に記載の光学シート15を用いることにより光拡散特性を向上させた光Pを利用する構成なので、光強度の視覚方向の分布を滑らかにするとともに、ランプイメージを低減した画像を画像表示素子35に表示することが可能となる。
【0079】
本発明の実施形態であるディスプレイ装置50は、画素単位での透過/遮光に応じて表示画像を規定する画像表示素子24で、先に記載のバックライトユニット50により集光・拡散特性を向上させた光Pを利用する構成であるため、正面方向(観察者側)Fの輝度を向上させ、光強度の視覚方向の分布を滑らかにするとともに、ランプイメージを低減した画像を得ることができる。
【0080】
(実施形態2)
図3は、本発明の実施形態である光学シート、バックライトユニットおよびディスプレイ装置の別の一例を示す断面模式図である。実施形態1と同様の部材には、同様の符号をつけて記載している。
【0081】
実施形態1と異なる点は、光拡散透過部材71は、基材71の観察者側に光屈折用単位レンズ61を有し、かつ観察者と反対側面に凸曲面形状の光拡散透過部材用単位レンズ62を有する点である。
前記基材1の観察者側に形成される光屈折用単位レンズ61は、弧状表面を有する第三頂部61aと、第三頂部61aから基材70へ至る第三傾斜面61bとを有している。また、光屈折用単位レンズ61は、第三頂部61aに行くに従い、対向する第三傾斜面61bの間の距離が次第に減少するように形成されている。さらにまた、光屈折用単位レンズ61は、谷部63により離間されて一定のピッチで形成されている。
前記基材の観察者側と反対側に形成される光拡散透過部材用単位レンズ62は弧状表面を有する第四頂部62aと、第四頂部62aから基材1へ至る第四傾斜面62bとを有している。また、光拡散透過部材用単位レンズ62は、第四頂部62aに行くに従い、対向する第四傾斜面62bの間の距離が次第に減少するように形成されている。さらにまた、光拡散透過部材用単位61は、谷部64により離間されて一定のピッチで形成されている。
さらに前記光屈折用単位レンズ61と前記光拡散透過用単位レンズ62とは平行に配置されており、且つ前記光屈折用単位レンズ61の第三頂部61aと前記光拡散透過部材用単位レンズ同士の谷間64とが向き合うように光拡散透過部材71の光源側と前光源と反対側とを結ぶ厚さ方向から見た状態で半ピッチずらした用に配列されている。
上記の点を除いては、本発明の実施形態であるディスプレイ装置51は、実施形態1とほぼ同様な構成で形成されている。すなわち、ディスプレイ装置51は、画像表示素子24とバックライトユニット40とから構成されている。また、本発明の実施形態であるバックライトユニット40は、光学シート15、バックライト部32とから構成されている。バックライト部32は、バックライト(光源)30および反射板31とから構成されている。本発明の実施形態である光学シート15は、光学フィルム9と拡散部材53とから構成されている。
バックライト(光源)30から光学シート15に入射された光Sは、光学シート15の内部で拡散・集光され、光学フィルム9の光透過基材用単位レンズ11から正面方向(観察者側)Fへ出射光Pとして出射される。
(光拡散透過部材)
前記光拡散透過部材71は前述の通り、前記基材1の観察者側にある光屈折用単位レンズ61と前記基材1の観察者と反対側にある光拡散透過部材用レンズ62が半ピッチずれた状態で平行に配置されている。
かつ前記光拡散透過部材4の屈折率をnとし、前記観察者と反対側の単位レンズのピッチをPとし、断面視したときに、前記第四傾斜面62bが前記基材1に接合する接合点から前記第一傾斜面への接線が、前記基材の観察者と反対側の面となす角をθとしたときに、前記基材の厚さTが下記式(1)を満たす構造となっている。
【0082】
【数1】

【0083】
これにより図3に示すように、上記式(2)の関係が満たされる場合には、図3に示すように、光源からの光は、矢印Sで示すように光拡散透過部材用単位レンズ28に入射され、その凸曲面で矢印Lのように屈折され、光拡散透過部材71の内部で1回集光された後、隣り合う光拡散透過部材用単位レンズ62による拡散光が重なる範囲まで拡散されて、光屈折用単位レンズ61へ出射される。さらに拡散された光線は、光屈折用単位レンズから出射され、拡散基材5の観察者側の面5bに入射され、光線はさらに拡散された後、拡散基材5の観察者面(入射面)26aから正面方向Fへ向けて出射される。
このような光の拡散がなされることにより、ランプイメージを低減することができ、光強度の視角度依存性を低減した出射光とすることができる。なお、ランプイメージの低減とは、線状光源30の光を散乱させて輝度のムラをなくし、なおかつ光源30が透けて見えないようにすることである。
【0084】
しかし、光拡散透過用単位レンズを用いても、図3に示されているような、光拡散透過部材71に対して垂直且つ、光拡散透過部材用単位レンズ61の頂部より入射される光線を拡散させることは困難である。
【0085】
このような光線に対しては、図4に示すように基材1の観察者側に、基材1の観察者と反対側に設けられた光拡散透過部材用単位レンズ61とほぼ同じピッチでなおかつ、前記光拡散透過部材用単位レンズ61と半ピッチずれた状態で光屈折用単位レンズを設け上記のような光線を屈折させることでランプイメージの低減が可能となる。
このような構造を用いれば、図4に示すように光拡散透過部材4に対して垂直且つ、光拡散透過部材用単位レンズ61の頂部より入射される光線S1は、基材1を通過する時点で、拡散、屈折が成されない状態であるが、基材1から観察者側に出射される部位が光屈折用単位レンズの谷間となる。この位置は空気層7であるために光は、屈折光Q1として出射されるために、ランプイメージの低減が可能となる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【実施例】
【0086】
(実施例1)
まず、光拡散透過部材を作成した。光拡散透過部材用の基材として、透明で厚みが1.5mm且つ、片面にマット構造を有するPC(ポリカーボネート)板を用意し、このPC板のマット構造を有する面と反対側に、UV樹脂を使用し、シリンドリカルレンズを成形した。これを、実施例1の光拡散透過部材とする。
【0087】
次に、MS(メタクリルスチレン)ベースの拡散基材を用意し、この拡散基材の片面と前記実施例1の光拡散透過部材のマット構造を有する面とを粘着剤を用いて貼り合せた。さらに、一面に光透過基材用単位レンズを備え、他面に前記光透過基材用単位レンズの位置に対応して形成された反射層を有する光学フィルムを準備し、前記拡散基材における、前記実施例1の光拡散透過部材が貼られていない側に、粘着剤を用いて貼り合せ、実施例1の光学シートを作成した。
【0088】
実施例1の光学シートを、冷陰極管との距離が3mmとなるように設定して、なおかつ冷陰極管と冷陰極管との間隔が一律20mmになるように設定して直下式バックライトユニットを作製した。これを、液晶ディスプレイ装置の背面側に設置して、正面側からランプイメージが見えるかどうか確認した。実施例1の光学シートを用いた場合は、ランプイメージは見えなかった。
【0089】
(実施例2)
まず、PS(ポリスチレン)ベースの拡散基材を用意し、一面に光透過基材用単位レンズを備え、他面に前記光透過基材用単位レンズの位置に対応して形成された反射層を有する光学フィルムを準備し、前記拡散基材の片面に粘着剤を介して貼り合せ、実施例2の第一光学シートを作成した。
【0090】
次に、単層押出し成形により光拡散透過部材を作成した。この拡散透過層は観察者と反対側の面に光拡散透層用単位レンズが一定のピッチで並んだ構造を有し、且つ観察者側の面に光屈折層単位レンズが前記光拡散透過部材用単位レンズと同じピッチで並んだ構造となっている。さらにこの光拡散透過部材を垂直に観察したときに、前記光拡散透過部材用単位レンズの頂部と、光屈折用単位レンズの谷部が一致するよう、光屈折用単位レンズは光拡散透過部材用単位レンズと半ピッチずれるようにした。このようにして実施例2の第二光学シートを作成した。
【0091】
実施例2の第二光学シートを冷陰極管との距離が3mmとなるように設定して、なおかつ冷陰極管と冷陰極管との間隔が一律20mmになるように設定して直下式バックライトユニットを作製した。さらに第二光学シートの上に実施例2の第一光学シートを積層した。これを、液晶ディスプレイ装置の背面側に設置して、正面側からランプイメージが見えるかどうか確認した。実施例2の光学シートを用いた場合は、ランプイメージは見えなかった。
【0092】
(比較例1)
比較例としてPS(ポリスチレン)ベースの拡散基材を用意し、一面に光透過基材用単位レンズを備え、他面に前記光透過基材用単位レンズの位置に対応して形成された反射層を有する光学フィルムを準備し、前記拡散基材の片面に粘着剤を介して貼り合せた光学シートを作成した。(比較例1の光学シート)
【0093】
次に、比較例1の光学シートを用いて、実施例1と同様にランプイメージの評価を行った。比較例1の光学シートを用いた場合は、ランプイメージが見え、NGレベルであった。
【0094】
試験例として下記のサンプルを作成した。
【0095】
実施例1において、拡散板の透過率、ヘイズ値、を各種試験するために、試験例1〜6を作成した。その試験例を表1に示す。
【0096】
【表1】

【0097】
実施例2において、拡散板の透過率、ヘイズ値、を各種試験するために、試験例7〜12を作成した。その試験例を表2に示す。
【0098】
【表2】

【0099】
(光学シートの評価)
拡散性の評価は、試験例1〜12の液晶表示装置の液晶表示パネルに白一色の画像を表示し、冷陰極管の垂直方向の輝度を、位置を変えて測定して得られた輝度分布データにより行った。
なお、輝度分布は冷陰極管に対応した波型の分布が得られるので、中心の5本分の冷陰極管に相当する輝度データを抽出して平均輝度を算出した後、平均輝度に対する輝度変化(%)を算出した。この輝度変化の標準偏差σが1%以内であれば、光学シートの拡散性が良好と判定した。
【0100】
上記試験によれば、試験例1,2,4,5,7,8,9、10,11に関しては輝度変化の標準偏差σが1%以内であり、良好と判断した。
しかし、試験例3,6,9,12に関しては、前記標準偏差σが1%を超えたためにNGと判断した。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施形態であるディスプレイ装置の断面模式図である。
【図2】本発明の実施形態であるディスプレイ装置の断面模式図である。
【図3】本発明の実施形態である光拡散透過部材用単位レンズを光線が通過する際の模式図である。
【図4】本発明の実施形態である、光屈折用単位レンズによる、光線の屈折の様子を示す模式図である。
【図5】BEFの配置の一例を示す断面模式図である。
【図6】BEFの斜視図である。
【図7】光強度と視野方向に対する角度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0102】
S,Q…光、P…ピッチ、l…接線、T…基材フィルムの厚さ、θ…基材フィルムの一面と接線lがなす角度、1,70…基材、2…基材1の観察者側に有する凹凸面、3…基材1の観察者と反対側面に有する凹凸面、4,71…光拡散透過部材、5…拡散基材、6…拡散部材、7…空気層、9…光学フィルム、10…光透過基材、10a…光透過基材の観察者と反対側の面、10b…光透過基材の観察者側の面、11…光透過基材用単位レンズ、11a…第二頂部、11b…第二傾斜面、12…光拡散透過基材用単位レンズの谷部、13…光通過用開口部、14…光マスク、15,72…光学シート、21,23…偏光板、22…液晶パネル、24…画像表示素子、30…光源、31…反射板、32…バックライト部、40,41…バックライトユニット、50,51…液晶ディスプレイ、182…拡散フィルム、184…光拡散フィルム、185…BEF、186…透明部材、187…単位プリズム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源の光をディスプレイに導く照明光路制御用の光拡散部材であって、
光拡散透過部材と、前記光源と反対側に位置する前記光拡散透過部材の箇所に空気層を介して積層された拡散基材とを備え、
前記光源側に位置する前記光拡散透過部材の箇所と、前記光源と反対に位置する前記光拡散透過部材の箇所とに、それぞれ凹凸形状を有する構造となっており、
前記拡散基材は透明樹脂に光拡散領域が分散されてなり、
前記拡散基材は全光線透過率が40%〜90%、ヘイズ値が98%以上である、
ことを特徴とする光拡散部材。
【請求項2】
請求項1に記載の光拡散透過部材において、前記光源側に位置する前記光拡散透過部材の箇所における凹凸形状は、単位レンズが一定のピッチで配列され、かつ前記光源と反対に位置する前記光拡散透過部材の箇所における凹凸形状は単位レンズが一定のピッチで配列され、それら単位レンズのピッチはほぼ同一ピッチであり、前記光源側に位置する前記光拡散透過部材の箇所における単位レンズの中央と、前記光源と反対に位置する前記光拡散透過部材の箇所における単位レンズの中央とは、前記光拡散透過部材の前記光源側と前記光源と反対側とを結ぶ厚さ方向から見たときに約半ピッチずれる位置に配置されていることを特徴とする光拡散部材。
【請求項3】
請求項2に記載の光拡散透過部材において、前記光源側に位置する前記光拡散透過部材の箇所における単位レンズの形状が凸曲面形状または三角プリズム形状もしくはマイクロレンズであり、前記凸曲面形状または三角プリズム形状もしくはマイクロレンズは、弧状表面または稜線を有する第一頂部と、前記第一頂部から前記基材へ至る第一傾斜面とを有しており、前記第一頂部に行くに従い、対向する前記第一傾斜面の間の距離が次第に減少するように形成されていることを特徴とする光拡散部材。
【請求項4】
請求項2に記載の光拡散透過部材において、前記光源と反対に位置する前記光拡散透過部材の箇所における単位レンズの形状が凸曲面形状または三角プリズム形状であり、前記凸曲面形状または三角プリズム形状は、弧状表面または稜線を有する第二頂部と、前記第二頂部から前記基材へ至る第二傾斜面とを有しており、前記第二頂部に行くに従い、対向する前記第二傾斜面の間の距離が次第に減少するように形成されていることを特徴とする光拡散部材。
【請求項5】
前記光拡散透過部材は板状の基材を有し、
前記単位レンズは前記基材の厚さ方向の両面に設けられ、
前記基材の屈折率をnとし、前記光源側に位置する前記基材の面における単位レンズのピッチをPとし、断面視したときに、前記第一傾斜面が前記基材に接合する接合点から前記第一傾斜面への接線が、前記基材の前記光源側に位置する面となす角をθとしたときに、前記基材の厚さTが下記式(1)を満たすことを特徴とする請求項3記載の光拡散部材。
【数1】

【請求項6】
前記光拡散領域が光拡散粒子であり、前記拡散基材の厚さが0.1〜5mmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光拡散部材。
【請求項7】
前記透明樹脂が熱可塑性樹脂であり、前記光拡散領域が気泡を含んでなり、前記拡散基材の厚さが25〜500μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光拡散部材。
【請求項8】
前記拡散基材が少なくとも1軸方向に延伸されてなることを特徴とする請求項7に記載の光拡散部材。
【請求項9】
前記光拡散透過部材が光拡散粒子を含まないことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の光拡散部材。
【請求項10】
前記光拡散透過部材が熱可塑性樹脂からなることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の光拡散部材。
【請求項11】
前記光拡散透過部材は板状の基材を有し、
前記凹凸形状は前記基材の厚さ方向の両面に設けられ、
前記基材が熱可塑性樹脂からなり、
前記基材が少なくとも1軸方向に延伸されてなることを特徴とする請求項1に記載の光拡散部材。
【請求項12】
前記拡散基材と前記光拡散透過部材とが接着材又は粘着材により積層されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の光拡散部材。
【請求項13】
ディスプレイの照明光路制御用の光学シートであって、
前記光学シートは、請求項1〜12のいずれか1項に記載の光拡散部材と光学フィルムとからなり、
前記光拡散部材の光源と反対の面に、前記光学フィルムの光源側の面が重ねられて形成されており、
前記光学フィルムが、光透過基材と光透過基材用単位レンズとからなり、
前記光透過基材の光源と反対の面に複数の前記光透過基材用単位レンズが一定のピッチで配列されており、
前記光透過基材用単位レンズの形状が凸曲面形状であり、
前記凸曲面形状は、弧状表面を有する第三頂部と、前記第三頂部から前記光透過基材へ至る第三傾斜面とを有しており、前記第三頂部に行くに従い、対向する前記第三傾斜面の間の距離が次第に減少するように形成されている、
ことを特徴とする光学シート。
【請求項14】
前記光学フィルムと前記拡散部材との間に、複数の光遮蔽部と、前記複数の光遮蔽部の間に位置する光透過用開口部とが設けられており、前記光透過開口部が、前記光透過基材用単位レンズの前記第二頂部に対応して設けられていることを特徴とする請求項13に記載の光学シート。
【請求項15】
前記光学フィルムと前記拡散部材が、前記光遮蔽部を介して、粘着材もしくは接着剤により接合されることを特徴とする、請求項13または14に記載の光学シート。
【請求項16】
請求項13〜15のいずれか1項に記載の光学シートと、光源と、を備えることを特徴とするバックライトユニット。
【請求項17】
画素単位での透過/遮光に応じて表示画像を規定する画像表示素子と、
前記画像表示素子の背面に、請求項16記載のバックライトユニットを備えることを特徴とするディスプレイ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−72453(P2010−72453A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241184(P2008−241184)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】