光接続用ユニット
【課題】メカニカルスプライスを用いて光ファイバを接続する作業における、光ファイバ同士の突き合わせ確認を容易に実現する技術の開発。
【解決手段】メカニカルスプライス30を保持するスプライスホルダ部21の両側に、光ファイバケーブル1端末に固定した引留用固定部材120を引き留めるケーブル引留部22を備え、スプライスホルダ部21とケーブル引留部22との間のファイバ案内台部23上に、光ファイバケーブルの光ファイバ2のケーブル引留部からメカニカルスプライスへの挿入を案内する一対のファイバガイド壁27を有し、該ファイバガイド壁27に切欠部27bが形成されている光接続用ユニット10を提供する。
【解決手段】メカニカルスプライス30を保持するスプライスホルダ部21の両側に、光ファイバケーブル1端末に固定した引留用固定部材120を引き留めるケーブル引留部22を備え、スプライスホルダ部21とケーブル引留部22との間のファイバ案内台部23上に、光ファイバケーブルの光ファイバ2のケーブル引留部からメカニカルスプライスへの挿入を案内する一対のファイバガイド壁27を有し、該ファイバガイド壁27に切欠部27bが形成されている光接続用ユニット10を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブル端末に露出させた光ファイバ同士の接続に用いることができる光接続用ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光ファイバケーブル(光ケーブル)端末に露出させた光ファイバ同士を接続するメカニカルスプライス(光ファイバ接続器)と、このメカニカルスプライスを用いて接続されたそれぞれの光ファイバケーブルをメカニカルスプライスの両端に組み付ける光ファイバ接続用治具とで構成される光ファイバ接続ユニットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−26166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、メカニカルスプライスを用いて光ファイバを接続する作業における、光ファイバ同士の突き合わせ確認を容易に実現できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明では以下の構成を提供する。
第1の発明は、メカニカルスプライスと、該メカニカルスプライスを長手方向中央部のスプライスホルダ部に保持し、長手方向両端部に、光ファイバケーブル端末に固定した引留用固定部材を保持するケーブル引留部を具備する細長形状のユニット本体とを有し、前記ユニット本体は、前記スプライスホルダ部と前記ケーブル引留部とを連結する連結ベース部上に、前記光ファイバケーブル端末から突出させた光ファイバの前記メカニカルスプライスへの挿入を案内する一対のファイバガイド壁を有し、該一対のファイバガイド壁にはその上端から窪む切欠部が形成され、前記メカニカルスプライスに挿入して互いに突き合わせた光ファイバに突き当て力を作用させることで、前記光ファイバの前記一対のファイバガイド壁間に確保されたファイバ案内溝に挿入された部分に、前記ファイバ案内溝の溝底から浮き上がる撓み部を形成可能である光接続用ユニットを提供する。
第2の発明は、前記ファイバガイド壁の前記切欠部が形成された部位は、前記連結ベース部からの突出寸法が最小の箇所から前記連結ベース部の長手方向の少なくとも一方の端部に行くにしたがって前記連結ベース部からの突出寸法が増大するテーパ状に形成されている第1の発明の光接続用ユニットを提供する。
第3の発明は、前記スプライスホルダ部は、前記メカニカルスプライスを収容する溝状の空間の延在方向両端に、前記メカニカルスプライスの長手方向の両端面を突き当てて位置決めするストッパ壁部を有し、前記ケーブル引留部は、前記引留用固定部材を収容する溝状の空間に収容された前記引留用固定部材の前端を当接させる固定部材ストッパ壁部を有し、前記一対のファイバガイド壁間に確保されたファイバ案内溝の延在方向一端が、前記スプライスホルダ部の前記ストッパ壁部に切欠状に形成された第1ファイバ挿通部に連通され、前記ファイバ案内溝の延在方向他端が前記ケーブル引留部の前記固定部材ストッパ壁部に切欠状に形成された第2ファイバ挿通部に連通されている第1または第2の発明の光接続用ユニットを提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、メカニカルスプライスの半割りの素子間にて互いに突き合わせた光ファイバに作用させた突き当て力によって、前記光ファイバに、スプライスホルダ部とケーブル引留部との間に確保されたファイバ案内溝の溝底から浮き上がる撓み部を形成できる。すなわち、突き当て力を作用させた光ファイバに、特定方向(ファイバ案内溝の溝底から浮き上がる方向)に湾曲する撓み部を形成できる。そして、本発明に係る光接続用ユニットは、ファイバ案内溝を形成する一対のファイバガイド壁に形成された切欠部によって、光ファイバに形成された撓み部を簡単に観察することができる。
したがって、本発明によれば、メカニカルスプライスを用いて光ファイバを接続する作業において、光ファイバ同士の突き合わせ確認を容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る実施形態の光接続用ユニットの構造を示す全体斜視図である。
【図2】図1の光接続用ユニットを図1とは異なる方向から見た構造を示す斜視図である。
【図3】図1の光接続用ユニットの構造を示す平面図である。
【図4】図1の光接続用ユニットのユニット本体の構造を示す斜視図である。
【図5】図4のユニット本体を図4とは別の方向から見た構造を示す斜視図である。
【図6】図4のユニット本体を下面側から見た構造を示す斜視図である。
【図7】図1の光接続用ユニットのケーブル引留部の構造を説明する斜視図である。
【図8】図1の光接続用ユニットのメカニカルスプライス用工具を示す斜視図である。
【図9】図8のメカニカルスプライス用工具の、介挿部材が突設されている面の側(介挿片突出側)から見た構造を示す図である。
【図10】図8のスプライス用工具の、介挿部材が突設されている介挿片突出側とは反対の裏面側から見た構造を示す図である。
【図11】(a)は図8のメカニカルスプライス用工具の支持板中央傾斜面と操作片中央傾斜面との関係を示す断面図、(b)は支持板端部傾斜面と操作片端部傾斜面との関係を示す断面図である。
【図12】図8のメカニカルスプライス用工具とユニット本体の連結ベース部との関係を説明する拡大図である。
【図13】図8のメカニカルスプライス用工具の介挿部材(介挿片)とメカニカルスプライスの3つの蓋部材との関係を説明する図である。
【図14】図1の光接続用ユニットに使用されるメカニカルスプライスの一例を示す斜視図である。
【図15】図14のメカニカルスプライスの構造を説明する分解斜視図である。
【図16】図14のメカニカルスプライスの構造を説明する断面図である。
【図17】図14のメカニカルスプライスの半割りの素子と介挿部材との関係を説明する断面図である。
【図18】図1の光接続用ユニットのファイバガイド壁から上方に光ファイバの撓み部が突出した状態を説明する図である。
【図19】図1の光接続用ユニットのスプライスホルダ部のホルダ底壁部の窓孔とメカニカルスプライスの第2クランプ部との関係を示す下面図である。
【図20】図1の光接続用ユニットのケーブル引留部の構造を説明する断面図(モデル図)である。
【図21】光ファイバケーブル端末に固定した状態で、図1の光接続用ユニットのケーブル引留部に挿入する引留用固定部材の一例を説明する斜視図である。
【図22】光ファイバケーブルの一例を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る1実施形態の光接続用ユニットについて、図面を参照して説明する。
図1〜図3に示すように、ここで説明する光接続用ユニット10は、光ファイバケーブル同士の接続(光接続)に適用可能なものである。
光接続用ユニット10によって互いに接続する光ファイバケーブル1の一方に図中符号11、他方に図中符号12を付記する。
【0009】
図22に示すように、光ファイバケーブル1(光ファイバケーブル11、12)は、光ファイバ2と、可撓性を有する線状の抗張力体3とを互いに並行になるように合成樹脂製の外被4によって一括被覆した構成のものである。
抗張力体3としては、例えばアラミド繊維等の抗張力繊維からなるものや、鋼線等を挙げることができる。
光ファイバ2は、裸光ファイバ2aの外周面(側面)を被覆2bで覆った構成の被覆付き光ファイバであり、例えば光ファイバ心線や光ファイバ素線等が挙げられる。裸光ファイバ2aは、例えば石英系光ファイバである。また、被覆2bは、例えば紫外線硬化性樹脂やポリアミド樹脂などを1層または複数層、ほぼ同心円状に被覆した樹脂被覆である。
光ファイバケーブル1としては、インドアケーブル、ドロップケーブル等が挙げられる。
なお、図中、符号11の光ファイバケーブルの光ファイバ2に符号11a、符号12の光ファイバケーブルの光ファイバ2に符号12aを付記する。
【0010】
光接続用ユニット10は、光ファイバケーブル11、12端末に露出(突出)させた光ファイバ11a、12a同士を突き合わせ接続して、光ファイバケーブル11、12同士を互いに接続するものである。
前記光接続用ユニット10は、細長形状のユニット本体20の長手方向中央部のスプライスホルダ部21に、半割りの素子31、32間に光ファイバを挟み込むメカニカルスプライス30(以下、単にスプライスとも言う)を保持した概略構成となっている。
なお、本明細書においては、光接続用ユニット10について、図1、図2の上側、図3紙面手前側を上、図1、図2の下側、図3紙面奥側を下、として説明する。
【0011】
この光接続用ユニット10のユニット本体20は、その長手方向両端部に、光ファイバケーブル11、12の端末に固定した引留用固定部材120を収容して引き留めるケーブル引留部22を有している。
また、このユニット本体20は、長手方向中央部のスプライスホルダ部21と長手方向両端部のケーブル引留部22との間を連結する連結ベース部23c上に、ケーブル引留部22側からスプライス30の半割りの素子31、32間に挿入する光ファイバ2を案内するためのファイバガイド壁27及びファイバ案内溝27aが設けられた構成のファイバ案内台部23を有する。ファイバ案内台部23は、スプライスホルダ部21とユニット本体20長手方向両端部のケーブル引留部22との間にそれぞれ設けられている。
ファイバ案内台部23の具体的構成は後述する。
【0012】
前記スプライス30は、半割りの素子(後述のベース部材31及び押さえ蓋32)を断面コ字形あるいはC形(図示例では断面コ字形)で延在する細長形状のクランプばね33の内側に一括保持した構造である。このスプライス30は、前記クランプばね33の弾性によって半割りの素子31、32間に光ファイバを挟み込むことができる。
また、前記光接続用ユニット10は、前記スプライス30の半割りの素子31、32間に割り入れた介挿片41(介挿部材)が突設されているメカニカルスプライス用工具40(以下、単に、スプライス用工具とも言う)を具備する。半割りの素子31、32間に介挿片(介挿部材)を割り入れたスプライス30を、以下、介挿部材付きスプライス(介挿部材付きメカニカルスプライス)とも言う。図示例の介挿部材付きスプライス30Aは、スプライス30の半割りの素子31、32間に、スプライス用工具40の介挿片41を割り入れた構成のものである。
【0013】
介挿部材付きスプライス30Aは、半割りの素子31、32間が、介挿片41によって、クランプばね33の弾性に抗して、光ファイバ11a、12aの挿入が可能な程度に押し開かれている。
前記スプライス30の半割りの素子31、32間には、ユニット本体20長手方向両側から、前記ユニット本体20のケーブル引留部22に挿入した光ファイバケーブル11、12端末から突出する光ファイバ11a、12aを挿入できる。素子31、32間に両側から挿入した光ファイバ11a、12aは素子31、32間にて突き合わせ接続できる。
スプライス30は、光ファイバ11a、12a同士を突き合わせた後、素子31、32間から介挿片41を抜き去ることで、光ファイバ11a、12aをクランプばね33の弾性によって素子31、32間に把持固定する。その結果、スプライス30は、光ファイバ11a、12aの突き合わせ接続状態を保つ。
【0014】
図14〜図16に示すように、前記光接続用ユニット10のスプライス30は、細長板状のベース部材31と、該ベース部材31の長手方向に沿って配列設置した3つの蓋部材321、322、323によって構成される押さえ蓋32とを、断面コ字形あるいはC形(図示例では断面コ字形)で延在する細長形状のクランプばね33の内側に一括保持した構成になっている。このスプライス30は、全体として、ベース部材31の長手方向に沿う方向を長手方向とする細長形状に形成されている。
このスプライス30は、ベース部材31(ベース側素子)と蓋部材321、322、323(蓋側素子)とからなる半割り把持部材34を有する。ベース部材31と蓋部材321、322、323とは、クランプばね33の弾性によって互いに閉じ合わせ方向に弾性付勢されている。
【0015】
ベース部材31の長手方向に沿って配列設置した3つの蓋部材321、322、323のうち、中央に位置する符号322の蓋部材を、以下、中央蓋、該中央蓋322の両側の蓋部材321、323をサイド蓋とも言う。また、サイド蓋のうち、符号321の蓋部材を、以下、第1サイド蓋、符号323の蓋部材を、以下、第2サイド蓋とも言う。
【0016】
図14〜図16に例示した断面コ字状のクランプばね33は、1枚の金属板を成形したものである。このクランプばね33は、細長板状の背板部33aの両側から、該背板部33aの長手方向全長にわたって、背板部33aに垂直に側板部33bが張り出された構成になっている。
一対の側板部33bの一方はベース部材31の蓋部材321、322、323に対向する対向面31aとは反対の背面に当接し、他方の側板部33bは蓋部材321、322、323のベース部材31に対向する対向面321a、322a、323aとは反対の背面に当接する。クランプばね33は、ベース部材30と蓋部材321、322、323とを、互いに対向する対向面31a、321a、322a、323aを閉じ合わせる方向に弾性付勢している。
【0017】
図15、図16に示すように、スプライス30のベース部材31の対向面31aは、ベース部材31の長手方向全長にわたって延在形成されている。このベース部材31の前記対向面31aの長手方向(延在方向)中央部には、光ファイバケーブル11、12の光ファイバ11a、12a先端に口出しされた裸光ファイバ2a同士を突き合わせ接続(光接続)可能に互いに高精度に位置決め、調心するための調心溝31bが形成されている。この調心溝31bは、ベース部材31の長手方向に沿って延在形成されたV溝である。但し、調心溝31bとしてはV溝に限定されず、例えば断面半円状の溝や、U溝等も採用可能である。
【0018】
前記調心溝31bは、ベース部材31の前記対向面31aの中央蓋323に対向する部分に形成されている。
ベース部材31の前記対向面31aの第1、第2サイド蓋321、323に対向する部分には、前記調心溝31bに比べて溝幅を大きくした被覆部挿入溝31c、31dが形成されている。被覆部挿入溝31c、31dは、ベース部材31長手方向において前記調心溝31bの延長上に延在形成されている。
被覆部挿入溝31c、31dと調心溝31bとの間には、被覆部挿入溝31c、31dから調心溝31b側に行くにしたがって溝幅が小さくなるテーパ状のテーパ溝31e、31fが形成されている。各被覆部挿入溝31c、31dは、前記テーパ溝31e、31fを介して調心溝31bと連通されている。
【0019】
前記被覆部挿入溝31c、31dは、光ファイバケーブル11、12の光ファイバ11a、12aの被覆2bが除去されていない被覆付き部分(被覆部)を、前記調心溝31bによって位置決めしたときの裸光ファイバ2aと同軸上に位置決めする。
図示例のスプライス30において、被覆部挿入溝31c、31dは調心溝31bに比べて溝幅を大きくしたV溝である。但し、被覆部挿入溝31c、31dとしてはV溝に限定されず、例えば断面半円状の溝や、U溝等も採用可能である。
【0020】
第1、第2サイド蓋321、323の対向面321a、323aの、ベース部材31の被覆部挿入溝31c、31dに対向する部位は、光ファイバ11a、12aの被覆部を被覆部挿入溝31c、31dに押さえ込む平坦なファイバ押さえ面とされている。
また、被覆部挿入溝31c、31dは、光ファイバ2の被覆部外径に鑑みて、光ファイバ2の被覆部の軸線に垂直の断面の一部のみを収納し、被覆部の被覆部挿入溝31c、31dに収納されない部分がベース部材31の対向面31aからサイド蓋321、323側に突出するように、その延在方向に垂直の断面の形状及び寸法が調整される。これにより、介挿部材付きスプライス30Aのスプライス30から介挿片41を抜き去ったときに、クランプばね33の弾性によって、サイド蓋321、323とベース部材31との間に光ファイバ11a、12aの被覆部をしっかりと把持固定できる。
【0021】
中央蓋322の対向面322aの、ベース部材31の調心溝31bに対向する部位は、光ファイバ11a、12aの裸光ファイバ2aを調心溝31bに押さえ込む平坦なファイバ押さえ面とされている。
また、調心溝31bは、光ファイバ2の裸光ファイバ2a外径に鑑みて、裸光ファイバ2aの軸線に垂直の断面の一部のみを収納し、裸光ファイバ2aの該調心溝31bに収納されない部分がベース部材31の対向面31aから中央蓋322側に突出するように、その延在方向に垂直の断面の形状及び寸法が調整される。これにより、介挿部材付きスプライス30Aのスプライス30から介挿片41を抜き去ったときに、クランプばね33の弾性によって、中央蓋322とベース部材31との間に裸光ファイバ2aをしっかりと把持固定できる。
【0022】
なお、スプライスは、被覆部挿入溝を、ベース部材31及び第1サイド蓋321の互いに対向する対向面の一方又は両方、ベース部材31及び第2サイド蓋323の互いに対向する対向面の一方又は両方に形成した構成を採用できる。
被覆部挿入溝を、ベース部材31及び第1サイド蓋321の互いに対向する対向面の両方に形成する場合は、光ファイバ2の被覆部の被覆部挿入溝に収納されない部分が、ベース部材31と第1サイド蓋321との間に存在するように、各被覆部挿入溝の延在方向に垂直の断面の形状及び寸法を調整する。このことは、ベース部材31及び第2サイド蓋323の互いに対向する対向面の両方に被覆部挿入溝を形成する場合も同様である。
【0023】
光接続用ユニット10を用いて互いに接続する光ファイバ11a、12aは、裸光ファイバ2aの径(外径)が互いに同じものである。また、ここでは、光ファイバケーブル11、12として、互いに同様の構成のものを用いているものとして説明する。
但し、光ファイバケーブル11、12としては、裸光ファイバ2aの径以外の構成が互いに異なるものも使用可能である。また、光ファイバ11a、12aの被覆部径は、互いに異なっていても良い。この場合は、スプライスの長手方向両側の被覆部挿入溝を光ファイバ11a、12aの被覆部径に対応させて、互いに異なる構成としても良い。
【0024】
図15、図16に示すように、クランプばね33の一対の側板部33bは、それぞれ、スプライス30の押さえ蓋32の3つの蓋部材321、322、323に対応する3つの部分に分かれている。押さえ蓋32に当接する側板部33b(図15、図16において上側の側板部33b)は、第1サイド蓋321と中央蓋322との境界、及び中央蓋322と第2サイド蓋323との境界に対応する位置にそれぞれ形成されたスリット状の切り込み部33dによって、3つの蓋部材321、322、323に対応する3つの部分に分断されている。ベース部材31に当接する側板部33bは、蓋部材321、322、323に当接する側板部33bの切り込み部33dに対応する位置に形成された切り込み部33dによって、3つの蓋部材321、322、323に対応する3つの部分に分断されている。
【0025】
クランプばね33は、第1サイド蓋321とベース部材31とを保持する第1クランプばね部331と、中央蓋322とベース部材31とを保持する第2クランプばね部332と、第2サイド蓋323とベース部材31とを保持する第3クランプばね部333とを有する。第1〜3クランプばね部331〜333は、互いに独立したクランプばねとして機能する。
なお、図15、図16等において、第1クランプばね部331の一対の側板部に符号331b、第2クランプばね部332の一対の側板部に符号332b、第3クランプばね部333の一対の側板部に符号333bを付記する。
【0026】
スプライス30は、3つのクランプばね部に対応する3つのクランプ部を有する。
すなわち、このスプライス30は、第1クランプばね部331の内側に第1サイド蓋321とベース部材31とを保持した第1クランプ部と、第2クランプばね部332の内側に中央蓋322とベース部材31とを保持した第2クランプ部と、第3クランプばね部333の側に第2サイド蓋323とベース部材31とを保持した第3クランプ部とを有する。
3つのクランプ部は、それぞれ、個々のクランプ部に対応するクランプばね部の弾性によって、半割りの素子(ベース部材31(ベース側素子)と蓋部材(蓋側素子))の間に光ファイバを把持固定できる。
【0027】
スプライス30について、クランプばね33の両側の側板部33bの間隔方向、すなわち図3、図15、図16における上下方向を、以下、幅方向とも言う。
クランプばね33の両側の側板部33bは、半割り把持部材34を介して、その幅方向両側に配置されている。
【0028】
図1〜図5に示すように、図示例の光接続用ユニット10のユニット本体20は、プラスチック製の一体成形品である。
このユニット本体20のスプライスホルダ部21は、ユニット本体20の長手方向中央部にユニット本体20長手方向に沿って延在する細長に形成されたホルダ底壁部21aと、該ホルダ底壁部21a上に立設した2つのホルダ側壁部241、242とを有する。2つのホルダ側壁部241、242は、前記ホルダ底壁部21aの幅方向両側に立設され、ユニット本体20長手方向に延在形成されている。
また、このスプライスホルダ部21は、そのホルダ底壁部21aの長手方向における両端上に立設したストッパ壁部251、252を有する。
【0029】
スプライスホルダ部21において、スプライス30は、ホルダ底壁部21aと2つのホルダ側壁部241、242とにより三方から囲まれる溝状の空間(スプライス収容空間21c)に収容されている。
また、スプライス30は、その長手方向の両端面をストッパ壁部251、252に突き当ててユニット本体20に対してその長手方向に位置決めされている。
【0030】
2つのホルダ側壁部241、242は、ユニット本体20長手方向に垂直の方向である幅方向両側に立設されている。
前記ストッパ壁部251、252は、ユニット本体20長手方向に直交する向きで立設されている。そして、スプライスホルダ部21は、2つのホルダ側壁部241、242とストッパ壁部251、252とによって構成される平面視四角枠状のホルダ外周壁の内側に、スプライス30を位置決めして収納している。
【0031】
前記スプライス30の素子31、32間に割り入れたスプライス用工具40の介挿片41は、2つのホルダ側壁部241、242の片方(符号241のホルダ側壁部)に形成された介挿部材挿通孔24a(図4〜図6参照)に通されている。以下、2つのホルダ側壁部241、242のうち、介挿部材挿通孔24aが形成されているホルダ側壁部241を第1ホルダ側壁部、他方のホルダ側壁部242を第2ホルダ側壁部とも言う。
【0032】
前記介挿部材挿通孔24aは、第1ホルダ側壁部241の厚みを貫通して、該第1ホルダ側壁部241の第2ホルダ側壁部242に対面する内面と、該内面とは反対の外面とに開口している。
スプライス30は、クランプばね33の背板部33aを第2ホルダ側壁部242に対面させ、クランプばね33の一対の側板部33bの片方をホルダ底壁部21aに当接させてスプライスホルダ部21内に収容されている。すなわち、スプライス30は、半割り把持部材34を介してクランプばね33の背板部33aとは反対の側(開放側)を第1ホルダ側壁部241に対面させてスプライスホルダ部21内に収容されている。
【0033】
また、図4〜図6に示すように、図示例のユニット本体20のスプライスホルダ部21のホルダ底壁部21aは、その中央部に窓孔21bが形成された四角枠状に形成されている。図示例の窓孔21bは角孔状に形成されている。
また、図19に示すように、前記窓孔21bは、スプライス30の第2クランプばね部332の一対の側板部332bのうち、スプライスホルダ部21の一対のホルダ側壁部241、242間の溝状のスプライス収容空間21cの溝底側に配置された側板部332bに対応する位置に形成されている。
スプライス30の第2クランプばね部332のスプライス収容空間21c溝底側の側板部332bを、以下、下部側板部ともいう。また、この下部側板部に、図中符号322sを付記する。
【0034】
図示例の光接続用ユニット10は、その平面視(あるいは図19に示す下面視)において、スプライス30の第2クランプばね部332の下部側板部332sの全体が前記窓孔21bの内側に位置する。スプライス30の第2クランプばね部332の下部側板部332sは、スプライスホルダ部21のホルダ底壁部21aに接触していない。
なお、図示例の光接続用ユニット10において、スプライス30の第2クランプばね部332の下部側板部332sは、ユニット本体20のスプライスホルダ部21の窓孔21bを介して、その全体が、ユニット本体20の下面20a側から目視可能である。
【0035】
また、図1、図13等に示すように、図示例のユニット本体20のスプライスホルダ部21のホルダ側壁部242のスプライス収容空間21cに臨む内面側には、スプライス30のクランプばね33の背板部33aのうち第1、第3クランプばね部331、333に位置する部分を当接させる当接突起21e(図4等参照。第2当接突起)が突設されている。当接突起21eは、ホルダ側壁部242の内面側の、ユニット本体20長手方向に沿って延在するスプライス収容空間21cの延在方向(長手方向)に互いに離隔する2カ所に突設されている。
【0036】
前記スプライス30の半割り把持部材34は、クランプばね33の一対の側板部33bの開放側端部からクランプばね33の背板部33aとは反対の側に張り出した部分(開放側張り出し部)を有する。スプライスホルダ部21のホルダ側壁部241のスプライス収容空間21cに臨む内面側には、スプライス30の第1、第3クランプ部331、333における半割り把持部材34の開放側張り出し部を当接させる当接突起21d(図5等参照。第1当接突起)が突設されている。
当接突起21dは、ホルダ側壁部241の内面側の、スプライス収容空間21cの延在方向(長手方向)に互いに離隔する2カ所に突設されている。なお、この当接突起21dは、ホルダ側壁部241において、介挿部材挿通孔24aを避けた位置に形成されている。
【0037】
前記スプライスホルダ部21において、スプライス30は、そのクランプばね33の背板部33aのうち第1、第3クランプばね部331、333に位置する部分をホルダ側壁部242内面側の当接突起21eに当接させ、第1、第3クランプ部331、333における半割り把持部材34の開放側張り出し部をホルダ側壁部241内面側の当接突起21dに当接させて収容されている。
したがって、スプライスホルダ部21に収容されたスプライス30のクランプばね33のうち、第2クランプばね部332に位置する部分は、スプライスホルダ部21のホルダ側壁部242に接触しない。
【0038】
すなわち、図示例の光接続用ユニット10において、スプライス30の第2クランプばね部332を含む第2クランプ部は、スプライスホルダ部21のホルダ側壁部241、242及びホルダ底壁部21aに接触していない。図示例の光接続用ユニット10において、スプライス30の第2クランプ部は、介挿片41の抜き去り時に、光ファイバケーブル1の光ファイバ2の裸光ファイバ2aの把持固定を、スプライスホルダ部21のホルダ側壁部241、242及びホルダ底壁部21aとの接触の影響を受けることなく実現する。このため、光接続用ユニット10は、スプライス30の第2クランプ部における裸光ファイバ2aの調心精度の確保に有利である。このことは、裸光ファイバ2a同士の低損失での突き合わせ接続に有効に寄与する。
【0039】
図8、図9に示すように、この実施形態の光接続用ユニット10のスプライス用工具40は、スプライス30の半割りの素子31、32間に割り入れた介挿片41が、該介挿片41のスプライス30からの抜き去り操作を行う抜き去り用操作部42から突出された構成になっている。
図示例のスプライス用工具40はプラスチック製の一体成形品である。
但し、スプライス用工具としてはプラスチック製の一体成形品に限定されず、複数部材によって組み立てた構成のものであっても良い。
【0040】
前記スプライス用工具40の前記抜き去り用操作部42は、前記介挿片41が片面側に突設された細長板状の介挿片支持板部43と、該介挿片支持板部43の両側にその長手方向に沿って延在形成された一対の弾性操作片44とを有する。
一対の弾性操作片44は、介挿片支持板部43の介挿片41が突設されている側の面(介挿片突設面43a)の長手方向に垂直の幅方向両側に設けられている。また、一対の弾性操作片44は、その延在方向(長手方向)両端が、介挿片支持板部43の長手方向両端と繋がっている。弾性操作片44は、その長手方向両端において前記介挿片支持板部43の長手方向両端に一体化して設けられている。弾性操作片44の長手方向両端部は、介挿片支持板部43の長手方向両端からその幅方向に張り出すように形成されている。弾性操作片44の延在方向両端部の間の部分は、介挿片支持板部43から若干の隙間を介して介挿片支持板部43の長手方向に沿って延在配置されている。
【0041】
この抜き去り用操作部42は、介挿片支持板部43長手方向に沿う方向の寸法が、一対の弾性操作片44の間隔方向の寸法に比べて大きい細長形状に形成されている。
また、この抜き去り用操作部42は、その長手方向両端部に、ユニット本体20のスプライスホルダ部21とケーブル引留部22との間の連結ベース部23c(図1〜図3等参照)の上面23aに当接する上面当接突部42aと、前記連結ベース部23cの前記上面23aとは反対の下面23b(図6、図12参照)に当接する下面当接突部42bとを有する。
【0042】
上面当接突部42a及び下面当接突部42bは、抜き去り用操作部42の一対の弾性操作片44の間隔方向である幅方向(操作部幅方向)に互いに離隔させて設けられている。
スプライス用工具40の抜き去り用操作部42は、ユニット本体20の長手方向におけるスプライスホルダ部21の両側の連結ベース部23cを、長手方向両端部の上面当接突部42aと下面当接突部42bとの間に挟み込むようにしてユニット本体20に組み付けることができる。
【0043】
なお、上面当接突部42aは、ファイバ案内台部23の連結ベース部23cの上面23aの幅方向片側の端部に当接する。このため、上面当接突部42aは、連結ベース部23cの上面23a中央部にユニット本体20長手方向に沿って延在する一対のファイバガイド壁27に接触しない。
【0044】
抜き去り用操作部42は、全体として、介挿片支持板部43の介挿片突設面43aに垂直の方向を厚み方向とする扁平形状に形成されている。介挿片41は、抜き去り用操作部42から、その厚み方向の片面側に突出している。以下、抜き去り用操作部42の厚み方向における両側のうち、介挿片41が突出している側を介挿片突出側、該介挿片突出側とは反対の側を裏面側とも言う。
上面当接突部42a及び下面当接突部42bは、抜き去り用操作部42の介挿片突出側に突設されている。
【0045】
図示例のスプライス用工具40の抜き去り用操作部42の一対の弾性操作片44は、その介挿片突出側のほぼ全体(下面当接突部42bを除く)が、介挿片支持板部43の介挿片突設面43aと重なる同一仮想平面上に位置する。スプライス用工具40は、抜き去り用操作部42の一対の弾性操作片44及び介挿片支持板部43の介挿片突出側を、スプライスホルダ部21のホルダ側壁部241に当接させてユニット本体20に設けられている。
一対の弾性操作片44の介挿片突出側が位置する仮想平面を、以下、仮想当接面42c(図11(a)、(b)、図12参照)とも言う。スプライス用工具40は、抜き去り用操作部42の一対の弾性操作片44及び介挿片支持板部43の前記仮想当接面42cに位置する部分を、スプライスホルダ部21のホルダ側壁部241に当接させてユニット本体20に設けられている。
【0046】
なお、スプライス用工具としては、介挿片支持板部43の介挿片突設面43aが、一対の弾性操作片44の介挿片突出側が位置する仮想平面に重なる位置にある構成に限定されない。スプライス用工具としては、介挿片支持板部43が、一対の弾性操作片44の介挿片突出側が位置する仮想平面から抜き去り用操作部42裏面側に、若干、ずれた位置に設けられている構成も採用可能である。
【0047】
介挿片41は、介挿片支持板部43の長手方向の4箇所に突設されている。
図14に示すように、スプライス30の半割り把持部材34における、前記クランプばね33の背板部33aとは反対側(以下、開放側)に露出する側面には、前記介挿部材41を挿入するための介挿部材挿入穴35が開口されている。図15に示すように、この介挿部材挿入穴35は、ベース部材31及び3つの蓋部材321、322、323の対向面31a、321a、322a、323aの互いに対応する位置に形成された介挿部材挿入溝31g、321c、322c、323cによって、ベース部材31と蓋部材321、322、323との間に確保されている。
【0048】
なお、介挿部材挿入穴35は、半割り把持部材34の開放側の側面から、調心溝31b、被覆部挿入溝31c、31d、321b、323bに達しない深さで形成される。
また、介挿部材挿入穴35としては、ベース部材31及び蓋部材321、322、323の片方のみに形成した介挿部材挿入溝によって確保した構成も採用可能である。
【0049】
図14に示すように、図示例のスプライス30において、前記介挿部材挿入穴35は、中央蓋322におけるベース部材31長手方向両端部に対応する2箇所と、第1サイド蓋321及び第2サイド蓋323のベース部材31長手方向に沿う方向の中央部に対応する位置の、計4箇所に形成されている。
スプライス用工具40の4つの介挿片41の介挿片支持板部43における突設位置は、スプライス30の4箇所の介挿部材挿入穴35に対応している。また、ユニット本体20の第1ホルダ側壁部241の介挿部材挿通孔24aも、スプライス用工具40の4つの介挿片41、及びスプライス30の4箇所の介挿部材挿入穴35に対応して、ユニット本体20長手方向の4箇所に形成されている。
なお、スプライス用工具40の介挿片41は、その板厚が、操作部幅方向と一致する向きで、介挿片支持板部43に突設されている。
【0050】
図13に示すように、この光接続用ユニット10のスプライス用工具40の介挿片41は、スプライス30のベース部材31と押さえ蓋32との間に、板状に形成された先端部41a(以下、先端介挿部とも言う)を割り込ませている。
但し、介挿片41は、半割りの素子31、32間を、クランプばね33の弾性に抗して、光ファイバ2の挿入が可能な程度に押し開き、かつ素子31、32間から抜き去り可能なものであれば良く、板状のものに限定されない。介挿片としては、例えば柔軟なシート状のもの、ロッド状のもの等も採用可能である。
【0051】
また、スプライスとしては、半割り把持部材34に介挿部材挿入穴35が形成されていない構成も採用可能である。
図8に示すように、スプライス用工具40の板状の介挿片41の先端介挿部41aは、その先端が先細りのテーパ状に形成されている。この介挿片41は、スプライス30の半割り把持部材34から抜き去った後に、その先端介挿部41aを、ベース部材31と押さえ蓋32との間に押し込んで割り込ませる(介挿部材付きスプライスを組み立てる)ことが可能である。
また、光ファイバ接続用ユニット10は、スプライス30から介挿部材を取り外した状態で現場に供給し、現場にて、スプライス30の素子31、32間に介挿部材を割り込ませて介挿部材付きスプライスを組み立てても良い。
【0052】
図1〜図3に示すように、光接続用ユニット10のユニット本体20のケーブル引留部22は、引留部底壁部22aと、該引留部底壁部22aの幅方向両側に立設された2つの引留部側壁部22bとを有する。
そして、このケーブル引留部22は、引留部底壁部22aと2つの引留部側壁部22bとにより三方から囲まれる溝状の空間(以下、固定部材収容空間22hとも言う)に、光ファイバケーブル1端末に固定した引留用固定部材120を収容する。
【0053】
また、ケーブル引留部22は、前記空間に収容した引留用固定部材120のスプライスホルダ部21からの距離を縮める前進を規制する固定部材ストッパ壁部22cと、引留用固定部材120の後端部にその後側から係合する弾性係止片22dとを有する。
前記弾性係止片22dは、ケーブル引留部22の2つの引留部側壁部22bにそれぞれ形成されている。
【0054】
図7に示すように、図示例の光接続用ユニット10のユニット本体20の前記弾性係止片22dは、ケーブル引留部22の引留部側壁部22bにおいて、その後端(スプライスホルダ部21とは反対の側)から前側(スプライスホルダ部21側)に向かって延在する上下一対のスリット22jの間に位置する部分である弾性片22eの後端に、引留用固定部材120に係合させる係合爪22fを突設したものである。前記係合爪22fは、ケーブル引留部22の2つの引留部側壁部22bの互いに対向する相手側の引留部側壁部22bに向かって弾性片22e後端から突出している。
なお、前記スリット22jは、引留部側壁部22bの前端には達していない。
【0055】
前記弾性係止片22dは、光ファイバケーブル1端末とともにケーブル引留部22にその後側から挿入した引留用固定部材120の後端部に、その後側から前記係合爪22fを係合させることで、引留用固定部材120の前記スプライス40から離隔する方向の変位を規制する引留手段として機能する。
なお、ケーブル引留部22の後側からの挿入によってケーブル引留部22に収容した引留用固定部材120の前記スプライス40から離隔する方向の変位(スプライス40からの後退)を規制する引留手段としては、前記弾性係止片22dに限定されない。この引留手段としては、例えば、ケーブル引留部22に枢着した係合片などであっても良い。
【0056】
引留用固定部材120は、光ファイバケーブル1端末の外周を取り囲むようにして設けられ、該端末に固定、一体化される。
図21は、引留用固定部材120の具体例を示す。
ここでは、引留用固定部材120として、光ファイバケーブル1端末をその両側から把持して光ファイバケーブル1端末に固定して取り付けられる外被把持部材を用いている。以下、引留用固定部材120が外被把持部材を指す場合、引留用固定部材120を外被把持部材とも言う。
この外被把持部材120は、光ファイバケーブル1を嵌め込むケーブル嵌合溝122が形成された断面コ字形の把持ベース121と、前記把持ベース121のケーブル嵌合溝122の溝幅方向両側の側壁部125の一方に枢着された押さえ蓋123とを有する。
【0057】
この外被把持部材120は、把持ベース121の一対の側壁部125の互いに対向する面に複数突設した把持用突起125cを、ケーブル嵌合溝122に嵌め込まれた光ファイバケーブル1の外被3に食い込ませて、一対の側壁部125の間に光ファイバケーブル1を把持固定できる。把持ベース121は、底壁部124の片面側に突設された一対の側壁部125の間に前記ケーブル嵌合溝122が確保された断面コ字形の部材である。ケーブル嵌合溝122の溝幅方向は、該ケーブル嵌合溝122を介して両側の側壁部125の間隔方向を指す。なお、図示例の外被把持部材120の把持用突起125cは、ケーブル嵌合溝122の深さ方向に延在する断面三角形状の突条に形成されている。
【0058】
そして、この外被把持部材120は、前記押さえ蓋123が他方の側壁部125から離隔する開放状態にて把持ベース121を光ファイバケーブル1端末に外嵌めして固定した後、押さえ蓋123を把持ベース121の一対の側壁部125の底壁部124とは反対側の端部間におけるケーブル嵌合溝122の開口部を閉じる閉位置に回動し、該押さえ蓋123を他方の側壁部125に係止して、光ファイバケーブル1端末に取り付けられる。
【0059】
図示例の外被把持部材120はプラスチック製の一体成形品である。前記押さえ蓋123は、一対の側壁部125の一方(以下、第1側壁部とも言う。図中符号125aを付記する)の突端に、ヒンジ部として機能する薄肉部126を介して繋がっている。この押さえ蓋123は、前記薄肉部126によって、前記ケーブル嵌合溝122の延在方向に沿う軸線を以て、把持ベース121の第1側壁部125aに対して回転可能に枢着されている。なお、把持ベース121の一対の側壁部125の他方について、以下、第2側壁部125bとも言う。
【0060】
図示例の外被把持部材120の押さえ蓋123はL字板状に形成されている。この押さえ蓋123は、前記薄肉部126を介して把持ベース121の第1側壁部125aに枢着されている天板部123aと、この天板部123aの前記薄肉部126とは反対側の端部から該天板部123aに垂直に形成された係止板部123bとを有する。この押さえ蓋123は、前記天板部123aを把持ベース121の一対の側壁部125の突端に当接してケーブル嵌合溝122の開口部を閉じる閉じ位置に配置したときに、前記係止板部123bを把持ベース121の第2側壁部125bのケーブル嵌合溝122とは反対側の外面に重ね合わせることができる。そして、押さえ蓋123は、前記係止板部123bに形成されている係止用窓孔123cに、把持ベース121の第2側壁部125b外面に突設されている係止用爪125dを入り込ませることで把持ベース121に係止され、把持ベース121に対する閉じ状態を安定維持できる。
【0061】
図示例の外被把持部材120(引留用固定部材)は、前記把持ベース121のケーブル嵌合溝122の延在方向に沿う前後方向の片端から突出する一対の前側突壁部127を有している。一対の前側突壁部127は、把持ベース121の両側の側壁部125a、125bから、該側壁部125a、125bを把持ベース121前後方向に沿って延長するように突出する板片状に形成されている。
【0062】
なお、外被把持部材としては、図示例の構成に限定されない。外被把持部材としては、例えば、押さえ蓋を、前記係止板部123bを省略し、前記天板部123aに、把持ベース121の第2側壁部125bの突端に係合する係合部を設けた構造の押さえ蓋に変更した構成等も採用可能である。また、外被把持部材としては、把持ベースのみからなる構成も採用可能である。また、外被把持部材としては、プラスチック製の一体成形品に限定されず、複数部材によって組み立てた構成のものも採用可能である。
引留用固定部材としては、外被把持部材に限定されず、例えば光ファイバケーブル1端末外周に接着剤による接着固定、熱溶着などによって固定する部材などであっても良い。
【0063】
図4に示すように、図示例のケーブル引留部22には、引留用固定部材120を固定した光ファイバケーブル1端末(以下、固定部材付きケーブル端末1a)の、ケーブル引留部22へのその後方からの挿入を円滑にする挿入補助スライダ26が設けられている。この挿入補助スライダ26は、引留部底壁部22a上をケーブル引留部22の前後方向にスライド移動可能に設けられた細長板状のスライダ本体26a上に押圧力受け突起26bを突設した構造になっている。
この挿入補助スライダ26は、前記スライダ本体26aの押圧力受け突起26bから後側に延出する部分である固定部材載置部26c上に固定部材付きケーブル端末1aを載置できる。
【0064】
図20に示すように、前記挿入補助スライダ26は、ケーブル引留部22の引留部底壁部22a上でのスライド移動によって、スライダ本体26aの押圧力受け突起26bから前側の部分を、固定部材ストッパ壁部22c下部及び該固定部材ストッパ壁部22cに一体化している連結ベース部23cの下部に形成されているスライダ挿入孔28に挿入できる。
スライダ挿入孔28は、固定部材ストッパ壁部22cの固定部材収容空間22hに臨む後面に開口するスライダ入り口からユニット本体20長手方向に沿ってスプライスホルダ部21に向かって延在形成されている。また、スライダ挿入孔28のスライダ入り口は、ケーブル引留部22の固定部材ストッパ壁部22cにその上端から窪む切欠状に形成された第2ファイバ挿通部22gの下方に位置している。
【0065】
なお、図6に示すように、図示例のユニット本体20は、スプライスホルダ部21のホルダ底壁部21aの下面と、各ケーブル引留部22の引留部底壁部22aの下面と、各ファイバ案内台部23の連結ベース部23cの下面23bとが互いに面一に連続してなる下面20aとが互いに面一に連続してなる下面20aを有する。
但し、ユニット本体としては、ホルダ底壁部21a下面と、2つの引留部底壁部22aの下面と、2つの連結ベース部下面23bとが互いに面一に連続する下面20aを構成するに限定されない。ユニット本体としては、例えば、連結ベース部下面23bが引留部底壁部22a下面に比べて上側に位置する構成なども採用可能である。
【0066】
前記挿入補助スライダ26は、ケーブル引留部22の引留部底壁部22a上でのスライド移動によって、スライダ本体26aの押圧力受け突起26bから前側の部分を前記スライダ挿入孔28に挿入して、前記押圧力受け突起26をケーブル引留部22の固定部材ストッパ壁部22cに当接できる。前記押圧力受け突起26は、固定部材ストッパ壁部22cにおけるスライダ挿入孔28のスライダ入り口と第2ファイバ挿通部22gとの間に位置する部分である受け突起当接部22kに当接できる。前記挿入補助スライダ26は、前記押圧力受け突起26bが、ケーブル引留部22前端の固定部材ストッパ壁部22c(より具体的には受け突起当接部22k)に当接する位置が、ケーブル引留部22に対する前進限界位置となっている。
【0067】
スプライスホルダ部21のストッパ壁部251、252には、光ファイバケーブル端末に露出させた光ファイバ2を挿通させる切欠状の第1ファイバ挿通部25aが形成されている。また、ケーブル引留部22前端の固定部材ストッパ壁部22cには、光ファイバケーブル端末に露出させた光ファイバ2を挿通させる切欠状の前記第2ファイバ挿通部22gが形成されている。
【0068】
ユニット本体20のファイバ案内台部23の連結ベース部23c上には、光ファイバケーブル1の光ファイバ2の前記ケーブル引留部22からスプライス30の素子31、32間への挿入を案内する一対のファイバガイド壁27が突設されている。一対のファイバガイド壁27は、ユニット本体20の幅方向に間隔を開けて連結ベース部23c上に突設され、ユニット本体20長手方向に延在形成されている。ユニット本体20は、一対のファイバガイド壁27の間に確保された隙間を、光ファイバ2を案内するファイバ案内溝27aとして用いることができる。
【0069】
一対のファイバガイド壁27の間のファイバ案内溝27aはユニット本体20長手方向に延在している。このファイバ案内溝27aの延在方向一端は、スプライスホルダ部21のストッパ壁部251、252に切欠状に形成された第1ファイバ挿通部25aに連通されている。前記ファイバ案内溝27aの延在方向他端は、ケーブル引留部22の前記固定部材ストッパ壁部22cに切欠状に形成された第2ファイバ挿通部22gに連通されている。
【0070】
図4、図5に示すように、第1ファイバ挿通部25aは、ストッパ壁部251、252の上端から下方へ窪み、その底部がファイバ案内溝27aの溝底と連続する溝状に形成されている。
第2ファイバ挿通部22gは、固定部材ストッパ壁部22cの上端から下方へ窪む切欠状になっている。この第2ファイバ挿通部22gの底部は、ファイバ案内溝27aの端部から固定部材ストッパ壁部22cの固定部材収容空間22hに臨む後面にわたって、前記後面側に行くにしたがって末広がりに拡張するテーパ状凹所22iとされている。
第2ファイバ挿通部22g、ファイバ案内溝27a、第1ファイバ挿通部25aは、ケーブル引留部22からスプライスホルダ部21に収容されているスプライス30の被覆部挿入溝への光ファイバ2の円滑な挿入を実現するファイバ誘導手段として機能する。
【0071】
この光接続用ユニット10を用いて光ファイバケーブル11、12同士を接続する作業は、まず、光ファイバケーブル11、12端末に引留用固定部材120を固定して固定部材付きケーブル端末1aを組み立て、ケーブル引留部22に対して前進限界位置から後側にずれた位置に移動しておいた挿入補助スライダ26の固定部材載置部26c上に固定部材付きケーブル端末1aを載置する。外被把持部材120は、前側突壁部127が突出している前側を固定部材ストッパ壁部22cに向けた姿勢で固定部材載置部26c上に載置する。
そして、固定部材付きケーブル端末1aを、挿入補助スライダ26の固定部材載置部26c上に載置状態のままケーブル引留部22前端の固定部材ストッパ壁部22cに向かって前進(固定部材ストッパ壁部22cからの距離を縮めるように移動)させる。
なお、挿入補助スライダ26に載せる固定部材付きケーブル端末1aの光ファイバケーブル端末には、予め光ファイバ2を突出状態に露出させておく。
【0072】
ケーブル引留部22の引留部底壁部22aの上面(挿入補助スライダ26がスライド移動する面)は、連結ベース部23cの上面23aに比べて下方に位置する。
固定部材付きケーブル端末1aは、挿入補助スライダ26の固定部材載置部26c上に載置したときに、光ファイバケーブル1端末から突出する光ファイバ2が、ファイバ案内溝27aの溝底部の延長上に配置される構成とする。これにより、固定部材付きケーブル端末1aの前進によって、光ファイバ2をファイバ案内溝27aに円滑に挿入できる。
光ファイバ2は、固定部材付きケーブル端末1aのケーブル引留部22に対する前進によって、ファイバ案内溝27aの溝底、第1ファイバ挿通部25aの底部を前進させる。
【0073】
固定部材付きケーブル端末1aは、挿入補助スライダ26の押圧力受け突起26bを押圧しながら前進する。このため、固定部材付きケーブル端末1aの前進に伴い挿入補助スライダ26も一体的に前進する。既述の外被把持部材120を用いて組み立てた固定部材付きケーブル端末1aは、外被把持部材120の前側突壁部127前端によって固定部材ストッパ壁部22cを押圧しながら前進する。
固定部材付きケーブル端末1aは、前進限界位置に達した挿入補助スライダ26を、引留用固定部材120と固定部材ストッパ壁部22cとの間に挟み込んだときの位置が、ケーブル引留部22に対する前進限界位置である。
【0074】
固定部材付きケーブル端末1aは、ケーブル引留部22に対する前進限界位置まで前進させる。固定部材付きケーブル端末1aは、前記前進限界位置に前進させることで、ケーブル引留部22の弾性係止片22dが係合して前進限界位置に保持される。
【0075】
スプライス30の素子31、32間に挿入する光ファイバケーブルの光ファイバ2の先端には、予め、裸光ファイバ2aを口出ししておく。
また、互いに接続する光ファイバケーブル11、12の光ファイバ2の引留用固定部材120からの突出長は、光ファイバ2同士が、スプライス30の調心溝31b長手方向中央部で突き当たり、かつ、各光ファイバケーブル11、12の固定部材付きケーブル端末1aがケーブル引留部22に対する前進限界位置に達したときに、光ファイバ2に若干の撓み部(図18の撓み部5)が形成される長さとする。
【0076】
介挿部材付きスプライス30Aにおけるベース部材31と各蓋部材321、322、323との間の開放量は、スプライス用工具40の介挿片41の板状の先端介挿部41aの厚み寸法によって設定できる。
例えば、図17に示すように、ベース部材31とサイド蓋(図示例では第2サイド蓋323)との間の介挿片41の介挿による開放量は、光ファイバ2が、被覆部挿入溝31dとサイド蓋323の対向面323aとの間の領域(ファイバ収納領域。図16の符号FS参照)から脱落せず、ファイバ収納領域内に挿通された状態を保てる範囲とする。ファイバ収納領域FS(図16参照)は、被覆部挿入溝と、該被覆部挿入溝が形成されている素子(図示例ではベース部材31)の対向面に垂直の方向における、前記被覆部挿入溝に対面する素子の前記被覆部挿入溝に対面する部分との間の領域である。
なお、図16においては、光ファイバ2の被覆部を挿入した被覆部挿入溝の溝底付近に確保されるクリアランス(図17参照)の図示を省略している。
【0077】
中央蓋322とベース部材31との間の介挿片41の介挿による開放量は、光ファイバ2先端に口出しされた裸光ファイバ2aが、調心溝31bと中央蓋322の対向面322aとの間の領域(裸光ファイバ収納領域FS2)から脱落しない範囲とする。
裸光ファイバ収納領域FS2(図16参照)は、調心溝31bと、該調心溝31bが形成されている素子(図示例ではベース部材31)の対向面31aに垂直の方向における、中央蓋322の対向面322aの前記調心溝31bに対面する部分との間の領域である。
【0078】
光ファイバ2先端に口出しした裸光ファイバ2aは、固定部材付きケーブル端末1aのケーブル引留部22に対する前進によって、ファイバ案内溝27aから、スプライス30のファイバ収納領域FS(図16参照)を介して裸光ファイバ収納領域へ挿入できる。
スプライス30の半割り把持部材34には、その長手方向両端面から先細りのテーパ状に窪むテーパ状凹所34aが開口している。図16に示すように、テーパ状凹所34aの奥端は前記ファイバ収納領域FSと連通している。
【0079】
また、図1〜図3に示すように、既述のように、スプライスホルダ部21に位置決めして収容されたスプライス30は、半割り把持部材34の長手方向両端面がスプライスホルダ部21のストッパ壁部251、252に突き当てられている。また、前記スプライス30は、半割り把持部材34の端面における前記テーパ状凹所34aの開口部の中央部が、ファイバ案内溝27aの底部及び第1ファイバ挿通部25aの底部に位置合わせされている。
このため、ファイバ案内溝27aからスプライス30のファイバ収納領域FSへの光ファイバ2の挿入は円滑に行える。
【0080】
また、図18に示すように、前記光接続用ユニット10のファイバガイド壁27には切欠部27bが形成されている。
図4、図5、図18に示すように、前記ファイバガイド壁27は、スプライスホルダ部21からケーブル引留部22側に行くにしたがって連結ベース部23cから上方への突出寸法が減少するテーパ状に形成された撓み支持壁部27cと、この撓み支持壁部27cのケーブル引留部22側の端部からケーブル引留部22まで連結ベース部23cから上方への突出寸法が一定でユニット本体20長手方向に延在する下部延在壁部27dとを有する。このファイバガイド壁27は、撓み支持壁部27c上端部からケーブル引留部22側が下方へ窪む切欠部27bとなっている。
【0081】
前記光接続用ユニット10を用いて光ファイバケーブル11、12同士を接続する作業においては、光ファイバケーブル11、12端末から突出状態に露出させた光ファイバ2を、それぞれ、ユニット本体20の長手方向両側のケーブル引留部22からファイバ案内溝27aを介してスプライス30のファイバ収納領域FS(図16)に挿入して、光ファイバ2先端の裸光ファイバ2a同士を、調心溝31bに沿う裸光ファイバ収納領域FS2の延在方向(長手方向)中央部にて突き合わせる。
【0082】
前記光接続用ユニット10は、互いに接続する光ファイバケーブル11、12の固定部材付きケーブル端末1aをケーブル引留部22に対する前進限界位置に到達させたときには、スプライス30の素子間にて光ファイバ2同士が突き合わせ接続状態となり、かつ、図18に示すように、光ファイバ2の撓み部5が、連結ベース部23cから上方へ浮き上がるように形成される。光接続用ユニット10は、ファイバガイド壁27に切欠部27が形成されているため、光ファイバ2の撓み部5を目視等によって容易に確認できる。
光ファイバ2のファイバ案内溝27a内に位置する部分は、撓み部5の形成前は、ファイバ案内溝27aの溝底に配置されている。ファイバ案内溝27aの溝底に位置する光ファイバ2は、連結ベース部23cと一対のファイバガイド壁27とによって三方から囲まれているため、光ファイバ2に形成される撓み部5は、ファイバ案内溝27aの溝底から浮き上がる方向のみに形成される。
【0083】
互いに接続する光ファイバケーブル11、12の端末から突出させた光ファイバ11a、12aの光ファイバケーブル端末からの突出長(あるいは引留用固定部材120からの突出長)は、例えば、スプライス30の裸光ファイバ収納領域FS2にて光ファイバ2の先端同士(具体的には裸光ファイバ2aの先端同士)を突き合わせたときに、光ファイバ11a、12aの一方又は両方に、下部延在壁部27dから上方(切欠部27b)に突出する撓み部5を形成できる長さとする。この場合、光ファイバ2に形成された撓み部5が下部延在壁部27dから上方(切欠部27b)に突出したことを目視等によって簡単に確認できる。このため、スプライス30内での光ファイバ2同士(具体的には裸光ファイバ同士)の突き合わせが達成されたことの確認を簡単に行える。
【0084】
また、光接続用ユニット10は、スプライスホルダ部21の両側のファイバ案内台部23の一方の下部延在壁部27dから上方に位置するように形成された撓み部5を、例えば作業者が手指などでファイバ案内溝27a溝底に向かって押圧することで、光ファイバ2同士の突き合わせ確認をより確実に行える。すなわち、スプライスホルダ部21の両側のファイバ案内台部23の一方の下部延在壁部27dから上方に位置するように形成された撓み部5を、例えば作業者が手指などでファイバ案内溝27a溝底に向かって押圧したとき、他方のファイバ案内台部23の連結ベース部23c上の光ファイバ2の撓み部5のサイズが大きくなる、あるいは他方のファイバ案内台部23の連結ベース部23c上の撓み部5が形成されていない光ファイバ2に撓み部5が形成されることで、光ファイバ2同士の突き合わせ確認をより確実に行える。
【0085】
なお、図16に示すように、ファイバガイド壁27の撓み支持壁部27cと、該撓み支持壁部27cに切欠部27bを介して対面するケーブル引留部22の固定部材ストッパ壁部22cとの間には、作業者が手指を挿入できる離隔距離が確保されている。
このため、下部延在壁部27d上方に浮き上がるように形成された光ファイバ2の撓み部5を、作業者が手指で下方へ押圧することは容易に行える。
【0086】
また、ファイバ案内台部23の連結ベース部23c上の一対のファイバガイド壁27は、下部延在壁部27dの延在方向中央部が、ケーブル引留部22に挿入固定した固定部材付きケーブル端末1aの光ファイバケーブル端末とスプライスホルダ部21内のスプライス30の長手方向の端部との間の離隔方向中央部に位置するように形成されている。光ファイバ2の撓み部5は、ケーブル引留部22に挿入固定した固定部材付きケーブル端末1aの光ファイバケーブル端末とスプライスホルダ部21内のスプライス30の長手方向の端部との間に上に凸のアーチ状をなすように湾曲して形成される。
ファイバ案内溝27a溝底から該ファイバ案内溝27a一対のファイバガイド壁27の下部延在壁部27d上方に浮き上がるように形成された光ファイバ2の撓み部5の頂部は、下部延在壁部27dの延在方向中央部の上方に位置する。このため、下部延在壁部27d上方に浮き上がるように形成された光ファイバ2の撓み部5の頂部を、作業者が手指で下方へ押圧することは容易に行える。
【0087】
一対のファイバガイド壁27の撓み支持壁部27cは、撓み部5のスプライス30側の端部を支持して、撓み部5に、連結ベース部23cから上方へ浮き上がった形状を確保することに有効に寄与する。前記一対のファイバガイド壁27は、光ファイバ2の撓み部5のサイズが比較的サイズが大きい場合でも、前記撓み支持壁部27cによって撓み部5を連結ベース部23cから上方へ浮き上がった状態に支持でき、撓み部5の倒れを防ぐことができる。
【0088】
なお、撓み支持壁部27cは、スプライスホルダ部21からケーブル引留部22側に行くにしたがって連結ベース部23cから上方への突出寸法が減少するテーパ状に限定されず、例えば、ユニット本体20長手方向における延在方向全体にわたって連結ベース部23cから上方への突出寸法が同じになっている形状としても良い。
また、ファイバ案内台部23の一対のファイバガイド壁27は、スプライスホルダ部21のストッパ壁部からケーブル引留部22側に張り出す撓み支持壁部27cを有する構成に限定されない。一対のファイバガイド壁27は、ケーブル引留部22の固定部材ストッパ壁部22cからスプライスホルダ部21側に張り出す撓み支持壁部と、該撓み支持壁部からスプライスホルダ部21まで延在する下部延在壁部とを有する構成としても良い。
また、ファイバ案内台部23の一対のファイバガイド壁27は、スプライスホルダ部21のストッパ壁部からケーブル引留部22側に張り出す撓み支持壁部と、ケーブル引留部22の固定部材ストッパ壁部22cからスプライスホルダ部21側に張り出す撓み支持壁部との間に、下部延在壁部を有する構成も採用可能である。
【0089】
光ファイバ2同士の突き当てが確認できたなら、次いで、スプライス30の素子31、32間からスプライス用工具40の介挿片41を抜き去る。
これにより、光ファイバ11a、12a同士が突き合わせ接続状態のままスプライス30の素子31、32間に把持固定され、光ファイバケーブル11、12同士の接続が完了する。
【0090】
スプライス用工具40は、片手の手指で握ることなどによって、抜き去り用操作部42の一対の弾性操作片44を介挿片支持板部43に接近させるだけで、スプライス30の素子31、32間に介挿されている介挿片41のスプライス30からの抜き去りを簡単に行える。
前記スプライス用工具40は、一対の弾性操作片44を互いの離隔距離を縮める(介挿片支持板部43に接近させる)ように弾性変形させることで、各弾性操作片44に形成されている操作片側傾斜面46を、介挿片支持板部43の幅方向両側に形成されている支持板側傾斜面45に摺動させることができる。
【0091】
スプライス用工具40の一対の弾性操作片44を互いの離隔距離を縮めるように弾性変形させる操作は、例えば図18に示すように、抜き去り用操作部42の一対の弾性操作片44に操作部幅方向両側から互いの離隔距離を縮める方向の押圧力Pを作用させることで実現できる。
なお、操作部幅方向は、図9、図10、図18における上下方向、図11(a)、(b)における左右方向を指す。
【0092】
前記支持板側傾斜面45は、介挿片支持板部43の弾性操作片44に臨む幅方向の端部に、その介挿片突出側から該介挿片突出側とは反対の裏面側に行くに従って、操作部幅方向において、介挿片支持板部43から離隔する前記弾性操作片44に接近する。この支持板側傾斜面45は、介挿片支持板部43の介挿片突設面43a、抜き去り用操作部42の仮想当接面42cに対して傾斜して形成されている。
図11(a)、(b)に示すように、操作片側傾斜面46は、弾性操作片44の介挿片支持板部43に臨む側に、支持板側傾斜面45に対応する位置に形成されている。操作片側傾斜面46は、抜き去り用操作部42の介挿片突出側から裏面側に行くに従って、操作部幅方向において介挿片支持板部43から離隔する。操作片側傾斜面46は、介挿片支持板部43の介挿片突設面43a、抜き去り用操作部42の仮想当接面42cに対して傾斜して形成されている。
【0093】
図8〜図10に示すように、図示例のスプライス用工具40において、支持板側傾斜面45は、介挿片支持板部43の幅方向両側に、介挿片支持板部43の長手方向に概ね均等の3カ所ずつ、計6カ所に形成されている。前記支持板側傾斜面45は、より具体的には、介挿片支持板部43の長手方向中央部及び長手方向両端部において、それぞれ介挿片支持板部43の幅方向両側に形成されている。
【0094】
介挿片支持板部43の長手方向中央部の支持板側傾斜面45(図中符号45aを付記する。以下、支持板中央傾斜面とも言う)は、介挿片支持板部43の幅方向両側に突設された突部43bに形成されている。介挿片支持板部43は、細長板状の支持板部本体43dを有する。前記突部43bは、支持板部本体43dの長手方向中央部の幅方向両側に突設されている。
介挿片支持板部43の長手方向両端部の支持板側傾斜面45(図中符号46bを付記する。以下、支持板端部傾斜面とも言う)は、支持板部本体43dの幅方向両側に切り欠き状に形成された溝状凹所43cの溝底面を構成している。
【0095】
介挿片支持板部43の長手方向両端部の支持板端部傾斜面45bは、介挿片支持板部43の長手方向における形成位置を、スプライス30のベース部材31と第1サイド蓋321との間に介挿される介挿片41(図8〜図10中、符号411を付記する)、ベース部材31と第3サイド蓋323との間に介挿される介挿片41(図8〜図10中、符号413を付記する)に対応させてある。支持板端部傾斜面45bは、介挿片支持板部43の長手方向における介挿片411、413が突設されている部位の幅方向両側に形成されている。
一方、支持板中央傾斜面45aは、介挿片支持板部43長手方向においてスプライス30のベース部材31と中央蓋322との間に介挿される2つの介挿片41(図8〜図10中、符号412を付記する)の間に位置する部位の幅方向に形成されている。
【0096】
操作片側傾斜面46は、介挿片支持板部43の支持板中央傾斜面45a、及び介挿片支持板部43の長手方向両端部の支持板端部傾斜面45b、45bに対応して、弾性操作片44の長手方向中央部と両端部とにそれぞれ形成されている。
弾性操作片44の長手方向中央部の操作片側傾斜面46(図中符号46aを付記する。以下、操作片中央傾斜面とも言う)は、操作部幅方向において支持板中央傾斜面45aに対面させて形成されている。また、操作片中央傾斜面46aは、弾性操作片44の長手方向中央部から介挿片支持板部43側に突出する突部44a(中央突部)に形成されている。
弾性操作片44の長手方向両端部の操作片側傾斜面46(図中符号46bを付記する。以下、操作片端部傾斜面とも言う)は、操作部幅方向において支持板端部傾斜面45bに対面させて形成されている。また、操作片端部傾斜面46bは、弾性操作片44の長手方向両端部から介挿片支持板部43側に突出する突部44bに形成されている。
【0097】
図11(a)に示すように、操作片中央傾斜面46aの、抜き去り用操作部42の仮想当接面42cに対する傾斜角度θ46aは、支持板中央傾斜面45aの前記仮想当接面42cに対する傾斜角度θ45aに比べて若干小さい。
また、図11(b)に示すように、操作片端部傾斜面46bの、抜き去り用操作部42の仮想当接面42cに対する傾斜角度θ46bは、支持板端部傾斜面45bの前記仮想当接面42cに対する傾斜角度θ45bに比べて若干小さい。
操作片中央傾斜面46aと支持板中央傾斜面45aとの間の操作部幅方向の最小離隔距離t1は、操作片端部傾斜面46bと支持板端部傾斜面45bとの間の操作部幅方向の最小離隔距離t2に比べて小さい。
【0098】
前記スプライス用工具40は、一対の弾性操作片44を互いの離隔距離を縮める(介挿片支持板部43に接近させる)ように弾性変形させたときに、操作片側傾斜面46の支持板側傾斜面45に対する摺動によって、介挿片支持板部43をその長手方向両端の間に位置する部分が一対の弾性操作片44に対して抜き去り用操作部42裏面側へ相対的に変位するように弾性変形させることができる。そして、スプライス用工具40は、介挿片支持板部43の長手方向両端の間に位置する部分が一対の弾性操作片44に対して抜き去り用操作部42裏面側へ相対的に変位する結果、スプライス30の素子間に介挿されている介挿片41のスプライス30からの抜き去りを実現できる。
スプライス30の素子間に介挿状態の介挿片41の素子間からの抜き去りは、一対の弾性操作片44の仮想当接面42cに位置する部分をスプライスホルダ部21のホルダ側壁部241に当接させた状態で、介挿片支持板部43の長手方向両端の間に位置する部分を一対の弾性操作片44に対して抜き去り用操作部42裏面側へ変位させて実現する。
【0099】
前記スプライス用工具40は、一対の弾性操作片44を互いの離隔距離を縮めるように弾性変形させると、操作片中央傾斜面46aの支持板中央傾斜面45aに対する摺動が開始した後に、操作片端部傾斜面46bの支持板端部傾斜面45bに対する摺動を開始する。そして、光接続用ユニット10は、スプライス30の第2クランプ部からの介挿片412が抜き去りが完了した後に、第1、第3クランプ部からの介挿片411、413の抜き去りが完了する、時差抜き去りを実現できる。
【0100】
スプライス30は、素子間に割り入れた介挿片411、412、413の時差抜き去りにより、まず、第2クランプ部の半割りの素子(ベース部材31と中央蓋322)間に、光ファイバ11a、12aの互いに突き合わせた裸光ファイバ2a、2aを把持固定する。そして、スプライス30は、第2クランプ部での互いに突き合わせた状態の裸光ファイバ2a、2aの把持固定の完了後に、第1、第3クランプ部の半割りの素子間での光ファイバ11a、12aの被覆部の把持固定を完了する。なお、第1クランプ部の半割りの素子はベース部材31及び第1サイド蓋311であり、第3クランプ部の半割りの素子はベース部材31及び第2サイド蓋313である。
【0101】
なお、スプライス30の素子31、32間からの介挿片41の抜き去りを完了したスプライス用工具40は、ユニット本体20から簡単に離脱させることができる。
【0102】
前記スプライス用工具40は、一対の弾性操作片44を互いの離隔距離を縮めるように弾性変形させるだけで、スプライス30の半割りの素子間に割り入れた状態の介挿片41のスプライス30からの抜き去りを簡単に行える。
また、スプライス用工具40は、スプライス30の素子間に割り入れた(介挿した)状態の介挿片41を素子間から抜き去るための抜き去り機構である抜き去り用操作部42が扁平な形状である。スプライス用工具40は、特許文献1記載の光ファイバ接続用工具に比べて、素子間に割り入れ状態の介挿片の素子間からの抜き去り方向におけるスプライス30からの突出寸法の縮小を容易に実現できる。このため、スプライス用工具、介挿部材付きメカニカルスプライスは、小型化が容易である。
スプライス用工具、介挿部材付きメカニカルスプライスの小型化は、狭隘な作業スペースにおけるスプライスを用いた光ファイバ2同士の接続作業に有利である。
【0103】
以上、本発明を最良の形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の最良の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
光接続用ユニットとしては、上述の実施形態のように、介挿部材付きスプライスの介挿部材をスプライスホルダ部21のホルダ側壁部241の介挿部材挿通孔24aに通した構成に限定されない。光接続用ユニットとしては、スプライス30をそのクランプばね33の背板部33aをスプライスホルダ部21のホルダ底壁部21a上面に当接させ、半割り把持部材34の開放側張り出し部が上端となる向きで、溝状のスプライス収容空間21cの長手方向に沿ってスプライスホルダ部21に収容した構成も採用可能である。この場合、介挿部材付きスプライスとしては、先端介挿部をスプライス30の素子間に割り入れた介挿部材の前記先端介挿部から基端側の部分をスプライス30から上方に突出させた構成を採用できる。
【0104】
介挿部材としては、スプライスの素子間に割り入れる先端部(先端介挿部)から基端側に、スプライスの素子間からの抜き去り操作用の抜き去り用操作部が設けられた構成のものであれば良く、その具体的構成はスプライス用工具40の介挿片41に限定されない。
介挿部材としては、例えば、先端介挿部から基端側に、作業者が手指で把持して、該介挿部材を、スプライスの素子に対してクランプばね33の背板部33aとは反対の抜き去り方向に引っ張り操作するためのハンドル部を有する構成のものも採用可能である。
【符号の説明】
【0105】
1、11、12…光ファイバケーブル、2…光ファイバ、2a…裸光ファイバ、2b…被覆、10…光接続用ユニット、20…ユニット本体、21…スプライスホルダ部、21a…ホルダ底壁部、22…ケーブル引留部、22a…引留部底壁部、22b…引留部側壁部、22c…固定部材ストッパ壁部、22d…引留手段(弾性係止片)、22g…第2光ファイバ挿通部、22h…2つの引留部側壁部と引留部底壁部とにより三方から囲まれる溝状の空間(固定部材収容空間)、23…ファイバ案内台部、23c…連結ベース部、241、242…ホルダ側壁部、25a…第1ファイバ挿通部、251、252…ストッパ壁部、27…ファイバガイド壁、27a…ファイバ案内溝、27b…切欠部、30…スプライス、40…スプライス用工具。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブル端末に露出させた光ファイバ同士の接続に用いることができる光接続用ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光ファイバケーブル(光ケーブル)端末に露出させた光ファイバ同士を接続するメカニカルスプライス(光ファイバ接続器)と、このメカニカルスプライスを用いて接続されたそれぞれの光ファイバケーブルをメカニカルスプライスの両端に組み付ける光ファイバ接続用治具とで構成される光ファイバ接続ユニットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−26166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、メカニカルスプライスを用いて光ファイバを接続する作業における、光ファイバ同士の突き合わせ確認を容易に実現できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明では以下の構成を提供する。
第1の発明は、メカニカルスプライスと、該メカニカルスプライスを長手方向中央部のスプライスホルダ部に保持し、長手方向両端部に、光ファイバケーブル端末に固定した引留用固定部材を保持するケーブル引留部を具備する細長形状のユニット本体とを有し、前記ユニット本体は、前記スプライスホルダ部と前記ケーブル引留部とを連結する連結ベース部上に、前記光ファイバケーブル端末から突出させた光ファイバの前記メカニカルスプライスへの挿入を案内する一対のファイバガイド壁を有し、該一対のファイバガイド壁にはその上端から窪む切欠部が形成され、前記メカニカルスプライスに挿入して互いに突き合わせた光ファイバに突き当て力を作用させることで、前記光ファイバの前記一対のファイバガイド壁間に確保されたファイバ案内溝に挿入された部分に、前記ファイバ案内溝の溝底から浮き上がる撓み部を形成可能である光接続用ユニットを提供する。
第2の発明は、前記ファイバガイド壁の前記切欠部が形成された部位は、前記連結ベース部からの突出寸法が最小の箇所から前記連結ベース部の長手方向の少なくとも一方の端部に行くにしたがって前記連結ベース部からの突出寸法が増大するテーパ状に形成されている第1の発明の光接続用ユニットを提供する。
第3の発明は、前記スプライスホルダ部は、前記メカニカルスプライスを収容する溝状の空間の延在方向両端に、前記メカニカルスプライスの長手方向の両端面を突き当てて位置決めするストッパ壁部を有し、前記ケーブル引留部は、前記引留用固定部材を収容する溝状の空間に収容された前記引留用固定部材の前端を当接させる固定部材ストッパ壁部を有し、前記一対のファイバガイド壁間に確保されたファイバ案内溝の延在方向一端が、前記スプライスホルダ部の前記ストッパ壁部に切欠状に形成された第1ファイバ挿通部に連通され、前記ファイバ案内溝の延在方向他端が前記ケーブル引留部の前記固定部材ストッパ壁部に切欠状に形成された第2ファイバ挿通部に連通されている第1または第2の発明の光接続用ユニットを提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、メカニカルスプライスの半割りの素子間にて互いに突き合わせた光ファイバに作用させた突き当て力によって、前記光ファイバに、スプライスホルダ部とケーブル引留部との間に確保されたファイバ案内溝の溝底から浮き上がる撓み部を形成できる。すなわち、突き当て力を作用させた光ファイバに、特定方向(ファイバ案内溝の溝底から浮き上がる方向)に湾曲する撓み部を形成できる。そして、本発明に係る光接続用ユニットは、ファイバ案内溝を形成する一対のファイバガイド壁に形成された切欠部によって、光ファイバに形成された撓み部を簡単に観察することができる。
したがって、本発明によれば、メカニカルスプライスを用いて光ファイバを接続する作業において、光ファイバ同士の突き合わせ確認を容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る実施形態の光接続用ユニットの構造を示す全体斜視図である。
【図2】図1の光接続用ユニットを図1とは異なる方向から見た構造を示す斜視図である。
【図3】図1の光接続用ユニットの構造を示す平面図である。
【図4】図1の光接続用ユニットのユニット本体の構造を示す斜視図である。
【図5】図4のユニット本体を図4とは別の方向から見た構造を示す斜視図である。
【図6】図4のユニット本体を下面側から見た構造を示す斜視図である。
【図7】図1の光接続用ユニットのケーブル引留部の構造を説明する斜視図である。
【図8】図1の光接続用ユニットのメカニカルスプライス用工具を示す斜視図である。
【図9】図8のメカニカルスプライス用工具の、介挿部材が突設されている面の側(介挿片突出側)から見た構造を示す図である。
【図10】図8のスプライス用工具の、介挿部材が突設されている介挿片突出側とは反対の裏面側から見た構造を示す図である。
【図11】(a)は図8のメカニカルスプライス用工具の支持板中央傾斜面と操作片中央傾斜面との関係を示す断面図、(b)は支持板端部傾斜面と操作片端部傾斜面との関係を示す断面図である。
【図12】図8のメカニカルスプライス用工具とユニット本体の連結ベース部との関係を説明する拡大図である。
【図13】図8のメカニカルスプライス用工具の介挿部材(介挿片)とメカニカルスプライスの3つの蓋部材との関係を説明する図である。
【図14】図1の光接続用ユニットに使用されるメカニカルスプライスの一例を示す斜視図である。
【図15】図14のメカニカルスプライスの構造を説明する分解斜視図である。
【図16】図14のメカニカルスプライスの構造を説明する断面図である。
【図17】図14のメカニカルスプライスの半割りの素子と介挿部材との関係を説明する断面図である。
【図18】図1の光接続用ユニットのファイバガイド壁から上方に光ファイバの撓み部が突出した状態を説明する図である。
【図19】図1の光接続用ユニットのスプライスホルダ部のホルダ底壁部の窓孔とメカニカルスプライスの第2クランプ部との関係を示す下面図である。
【図20】図1の光接続用ユニットのケーブル引留部の構造を説明する断面図(モデル図)である。
【図21】光ファイバケーブル端末に固定した状態で、図1の光接続用ユニットのケーブル引留部に挿入する引留用固定部材の一例を説明する斜視図である。
【図22】光ファイバケーブルの一例を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る1実施形態の光接続用ユニットについて、図面を参照して説明する。
図1〜図3に示すように、ここで説明する光接続用ユニット10は、光ファイバケーブル同士の接続(光接続)に適用可能なものである。
光接続用ユニット10によって互いに接続する光ファイバケーブル1の一方に図中符号11、他方に図中符号12を付記する。
【0009】
図22に示すように、光ファイバケーブル1(光ファイバケーブル11、12)は、光ファイバ2と、可撓性を有する線状の抗張力体3とを互いに並行になるように合成樹脂製の外被4によって一括被覆した構成のものである。
抗張力体3としては、例えばアラミド繊維等の抗張力繊維からなるものや、鋼線等を挙げることができる。
光ファイバ2は、裸光ファイバ2aの外周面(側面)を被覆2bで覆った構成の被覆付き光ファイバであり、例えば光ファイバ心線や光ファイバ素線等が挙げられる。裸光ファイバ2aは、例えば石英系光ファイバである。また、被覆2bは、例えば紫外線硬化性樹脂やポリアミド樹脂などを1層または複数層、ほぼ同心円状に被覆した樹脂被覆である。
光ファイバケーブル1としては、インドアケーブル、ドロップケーブル等が挙げられる。
なお、図中、符号11の光ファイバケーブルの光ファイバ2に符号11a、符号12の光ファイバケーブルの光ファイバ2に符号12aを付記する。
【0010】
光接続用ユニット10は、光ファイバケーブル11、12端末に露出(突出)させた光ファイバ11a、12a同士を突き合わせ接続して、光ファイバケーブル11、12同士を互いに接続するものである。
前記光接続用ユニット10は、細長形状のユニット本体20の長手方向中央部のスプライスホルダ部21に、半割りの素子31、32間に光ファイバを挟み込むメカニカルスプライス30(以下、単にスプライスとも言う)を保持した概略構成となっている。
なお、本明細書においては、光接続用ユニット10について、図1、図2の上側、図3紙面手前側を上、図1、図2の下側、図3紙面奥側を下、として説明する。
【0011】
この光接続用ユニット10のユニット本体20は、その長手方向両端部に、光ファイバケーブル11、12の端末に固定した引留用固定部材120を収容して引き留めるケーブル引留部22を有している。
また、このユニット本体20は、長手方向中央部のスプライスホルダ部21と長手方向両端部のケーブル引留部22との間を連結する連結ベース部23c上に、ケーブル引留部22側からスプライス30の半割りの素子31、32間に挿入する光ファイバ2を案内するためのファイバガイド壁27及びファイバ案内溝27aが設けられた構成のファイバ案内台部23を有する。ファイバ案内台部23は、スプライスホルダ部21とユニット本体20長手方向両端部のケーブル引留部22との間にそれぞれ設けられている。
ファイバ案内台部23の具体的構成は後述する。
【0012】
前記スプライス30は、半割りの素子(後述のベース部材31及び押さえ蓋32)を断面コ字形あるいはC形(図示例では断面コ字形)で延在する細長形状のクランプばね33の内側に一括保持した構造である。このスプライス30は、前記クランプばね33の弾性によって半割りの素子31、32間に光ファイバを挟み込むことができる。
また、前記光接続用ユニット10は、前記スプライス30の半割りの素子31、32間に割り入れた介挿片41(介挿部材)が突設されているメカニカルスプライス用工具40(以下、単に、スプライス用工具とも言う)を具備する。半割りの素子31、32間に介挿片(介挿部材)を割り入れたスプライス30を、以下、介挿部材付きスプライス(介挿部材付きメカニカルスプライス)とも言う。図示例の介挿部材付きスプライス30Aは、スプライス30の半割りの素子31、32間に、スプライス用工具40の介挿片41を割り入れた構成のものである。
【0013】
介挿部材付きスプライス30Aは、半割りの素子31、32間が、介挿片41によって、クランプばね33の弾性に抗して、光ファイバ11a、12aの挿入が可能な程度に押し開かれている。
前記スプライス30の半割りの素子31、32間には、ユニット本体20長手方向両側から、前記ユニット本体20のケーブル引留部22に挿入した光ファイバケーブル11、12端末から突出する光ファイバ11a、12aを挿入できる。素子31、32間に両側から挿入した光ファイバ11a、12aは素子31、32間にて突き合わせ接続できる。
スプライス30は、光ファイバ11a、12a同士を突き合わせた後、素子31、32間から介挿片41を抜き去ることで、光ファイバ11a、12aをクランプばね33の弾性によって素子31、32間に把持固定する。その結果、スプライス30は、光ファイバ11a、12aの突き合わせ接続状態を保つ。
【0014】
図14〜図16に示すように、前記光接続用ユニット10のスプライス30は、細長板状のベース部材31と、該ベース部材31の長手方向に沿って配列設置した3つの蓋部材321、322、323によって構成される押さえ蓋32とを、断面コ字形あるいはC形(図示例では断面コ字形)で延在する細長形状のクランプばね33の内側に一括保持した構成になっている。このスプライス30は、全体として、ベース部材31の長手方向に沿う方向を長手方向とする細長形状に形成されている。
このスプライス30は、ベース部材31(ベース側素子)と蓋部材321、322、323(蓋側素子)とからなる半割り把持部材34を有する。ベース部材31と蓋部材321、322、323とは、クランプばね33の弾性によって互いに閉じ合わせ方向に弾性付勢されている。
【0015】
ベース部材31の長手方向に沿って配列設置した3つの蓋部材321、322、323のうち、中央に位置する符号322の蓋部材を、以下、中央蓋、該中央蓋322の両側の蓋部材321、323をサイド蓋とも言う。また、サイド蓋のうち、符号321の蓋部材を、以下、第1サイド蓋、符号323の蓋部材を、以下、第2サイド蓋とも言う。
【0016】
図14〜図16に例示した断面コ字状のクランプばね33は、1枚の金属板を成形したものである。このクランプばね33は、細長板状の背板部33aの両側から、該背板部33aの長手方向全長にわたって、背板部33aに垂直に側板部33bが張り出された構成になっている。
一対の側板部33bの一方はベース部材31の蓋部材321、322、323に対向する対向面31aとは反対の背面に当接し、他方の側板部33bは蓋部材321、322、323のベース部材31に対向する対向面321a、322a、323aとは反対の背面に当接する。クランプばね33は、ベース部材30と蓋部材321、322、323とを、互いに対向する対向面31a、321a、322a、323aを閉じ合わせる方向に弾性付勢している。
【0017】
図15、図16に示すように、スプライス30のベース部材31の対向面31aは、ベース部材31の長手方向全長にわたって延在形成されている。このベース部材31の前記対向面31aの長手方向(延在方向)中央部には、光ファイバケーブル11、12の光ファイバ11a、12a先端に口出しされた裸光ファイバ2a同士を突き合わせ接続(光接続)可能に互いに高精度に位置決め、調心するための調心溝31bが形成されている。この調心溝31bは、ベース部材31の長手方向に沿って延在形成されたV溝である。但し、調心溝31bとしてはV溝に限定されず、例えば断面半円状の溝や、U溝等も採用可能である。
【0018】
前記調心溝31bは、ベース部材31の前記対向面31aの中央蓋323に対向する部分に形成されている。
ベース部材31の前記対向面31aの第1、第2サイド蓋321、323に対向する部分には、前記調心溝31bに比べて溝幅を大きくした被覆部挿入溝31c、31dが形成されている。被覆部挿入溝31c、31dは、ベース部材31長手方向において前記調心溝31bの延長上に延在形成されている。
被覆部挿入溝31c、31dと調心溝31bとの間には、被覆部挿入溝31c、31dから調心溝31b側に行くにしたがって溝幅が小さくなるテーパ状のテーパ溝31e、31fが形成されている。各被覆部挿入溝31c、31dは、前記テーパ溝31e、31fを介して調心溝31bと連通されている。
【0019】
前記被覆部挿入溝31c、31dは、光ファイバケーブル11、12の光ファイバ11a、12aの被覆2bが除去されていない被覆付き部分(被覆部)を、前記調心溝31bによって位置決めしたときの裸光ファイバ2aと同軸上に位置決めする。
図示例のスプライス30において、被覆部挿入溝31c、31dは調心溝31bに比べて溝幅を大きくしたV溝である。但し、被覆部挿入溝31c、31dとしてはV溝に限定されず、例えば断面半円状の溝や、U溝等も採用可能である。
【0020】
第1、第2サイド蓋321、323の対向面321a、323aの、ベース部材31の被覆部挿入溝31c、31dに対向する部位は、光ファイバ11a、12aの被覆部を被覆部挿入溝31c、31dに押さえ込む平坦なファイバ押さえ面とされている。
また、被覆部挿入溝31c、31dは、光ファイバ2の被覆部外径に鑑みて、光ファイバ2の被覆部の軸線に垂直の断面の一部のみを収納し、被覆部の被覆部挿入溝31c、31dに収納されない部分がベース部材31の対向面31aからサイド蓋321、323側に突出するように、その延在方向に垂直の断面の形状及び寸法が調整される。これにより、介挿部材付きスプライス30Aのスプライス30から介挿片41を抜き去ったときに、クランプばね33の弾性によって、サイド蓋321、323とベース部材31との間に光ファイバ11a、12aの被覆部をしっかりと把持固定できる。
【0021】
中央蓋322の対向面322aの、ベース部材31の調心溝31bに対向する部位は、光ファイバ11a、12aの裸光ファイバ2aを調心溝31bに押さえ込む平坦なファイバ押さえ面とされている。
また、調心溝31bは、光ファイバ2の裸光ファイバ2a外径に鑑みて、裸光ファイバ2aの軸線に垂直の断面の一部のみを収納し、裸光ファイバ2aの該調心溝31bに収納されない部分がベース部材31の対向面31aから中央蓋322側に突出するように、その延在方向に垂直の断面の形状及び寸法が調整される。これにより、介挿部材付きスプライス30Aのスプライス30から介挿片41を抜き去ったときに、クランプばね33の弾性によって、中央蓋322とベース部材31との間に裸光ファイバ2aをしっかりと把持固定できる。
【0022】
なお、スプライスは、被覆部挿入溝を、ベース部材31及び第1サイド蓋321の互いに対向する対向面の一方又は両方、ベース部材31及び第2サイド蓋323の互いに対向する対向面の一方又は両方に形成した構成を採用できる。
被覆部挿入溝を、ベース部材31及び第1サイド蓋321の互いに対向する対向面の両方に形成する場合は、光ファイバ2の被覆部の被覆部挿入溝に収納されない部分が、ベース部材31と第1サイド蓋321との間に存在するように、各被覆部挿入溝の延在方向に垂直の断面の形状及び寸法を調整する。このことは、ベース部材31及び第2サイド蓋323の互いに対向する対向面の両方に被覆部挿入溝を形成する場合も同様である。
【0023】
光接続用ユニット10を用いて互いに接続する光ファイバ11a、12aは、裸光ファイバ2aの径(外径)が互いに同じものである。また、ここでは、光ファイバケーブル11、12として、互いに同様の構成のものを用いているものとして説明する。
但し、光ファイバケーブル11、12としては、裸光ファイバ2aの径以外の構成が互いに異なるものも使用可能である。また、光ファイバ11a、12aの被覆部径は、互いに異なっていても良い。この場合は、スプライスの長手方向両側の被覆部挿入溝を光ファイバ11a、12aの被覆部径に対応させて、互いに異なる構成としても良い。
【0024】
図15、図16に示すように、クランプばね33の一対の側板部33bは、それぞれ、スプライス30の押さえ蓋32の3つの蓋部材321、322、323に対応する3つの部分に分かれている。押さえ蓋32に当接する側板部33b(図15、図16において上側の側板部33b)は、第1サイド蓋321と中央蓋322との境界、及び中央蓋322と第2サイド蓋323との境界に対応する位置にそれぞれ形成されたスリット状の切り込み部33dによって、3つの蓋部材321、322、323に対応する3つの部分に分断されている。ベース部材31に当接する側板部33bは、蓋部材321、322、323に当接する側板部33bの切り込み部33dに対応する位置に形成された切り込み部33dによって、3つの蓋部材321、322、323に対応する3つの部分に分断されている。
【0025】
クランプばね33は、第1サイド蓋321とベース部材31とを保持する第1クランプばね部331と、中央蓋322とベース部材31とを保持する第2クランプばね部332と、第2サイド蓋323とベース部材31とを保持する第3クランプばね部333とを有する。第1〜3クランプばね部331〜333は、互いに独立したクランプばねとして機能する。
なお、図15、図16等において、第1クランプばね部331の一対の側板部に符号331b、第2クランプばね部332の一対の側板部に符号332b、第3クランプばね部333の一対の側板部に符号333bを付記する。
【0026】
スプライス30は、3つのクランプばね部に対応する3つのクランプ部を有する。
すなわち、このスプライス30は、第1クランプばね部331の内側に第1サイド蓋321とベース部材31とを保持した第1クランプ部と、第2クランプばね部332の内側に中央蓋322とベース部材31とを保持した第2クランプ部と、第3クランプばね部333の側に第2サイド蓋323とベース部材31とを保持した第3クランプ部とを有する。
3つのクランプ部は、それぞれ、個々のクランプ部に対応するクランプばね部の弾性によって、半割りの素子(ベース部材31(ベース側素子)と蓋部材(蓋側素子))の間に光ファイバを把持固定できる。
【0027】
スプライス30について、クランプばね33の両側の側板部33bの間隔方向、すなわち図3、図15、図16における上下方向を、以下、幅方向とも言う。
クランプばね33の両側の側板部33bは、半割り把持部材34を介して、その幅方向両側に配置されている。
【0028】
図1〜図5に示すように、図示例の光接続用ユニット10のユニット本体20は、プラスチック製の一体成形品である。
このユニット本体20のスプライスホルダ部21は、ユニット本体20の長手方向中央部にユニット本体20長手方向に沿って延在する細長に形成されたホルダ底壁部21aと、該ホルダ底壁部21a上に立設した2つのホルダ側壁部241、242とを有する。2つのホルダ側壁部241、242は、前記ホルダ底壁部21aの幅方向両側に立設され、ユニット本体20長手方向に延在形成されている。
また、このスプライスホルダ部21は、そのホルダ底壁部21aの長手方向における両端上に立設したストッパ壁部251、252を有する。
【0029】
スプライスホルダ部21において、スプライス30は、ホルダ底壁部21aと2つのホルダ側壁部241、242とにより三方から囲まれる溝状の空間(スプライス収容空間21c)に収容されている。
また、スプライス30は、その長手方向の両端面をストッパ壁部251、252に突き当ててユニット本体20に対してその長手方向に位置決めされている。
【0030】
2つのホルダ側壁部241、242は、ユニット本体20長手方向に垂直の方向である幅方向両側に立設されている。
前記ストッパ壁部251、252は、ユニット本体20長手方向に直交する向きで立設されている。そして、スプライスホルダ部21は、2つのホルダ側壁部241、242とストッパ壁部251、252とによって構成される平面視四角枠状のホルダ外周壁の内側に、スプライス30を位置決めして収納している。
【0031】
前記スプライス30の素子31、32間に割り入れたスプライス用工具40の介挿片41は、2つのホルダ側壁部241、242の片方(符号241のホルダ側壁部)に形成された介挿部材挿通孔24a(図4〜図6参照)に通されている。以下、2つのホルダ側壁部241、242のうち、介挿部材挿通孔24aが形成されているホルダ側壁部241を第1ホルダ側壁部、他方のホルダ側壁部242を第2ホルダ側壁部とも言う。
【0032】
前記介挿部材挿通孔24aは、第1ホルダ側壁部241の厚みを貫通して、該第1ホルダ側壁部241の第2ホルダ側壁部242に対面する内面と、該内面とは反対の外面とに開口している。
スプライス30は、クランプばね33の背板部33aを第2ホルダ側壁部242に対面させ、クランプばね33の一対の側板部33bの片方をホルダ底壁部21aに当接させてスプライスホルダ部21内に収容されている。すなわち、スプライス30は、半割り把持部材34を介してクランプばね33の背板部33aとは反対の側(開放側)を第1ホルダ側壁部241に対面させてスプライスホルダ部21内に収容されている。
【0033】
また、図4〜図6に示すように、図示例のユニット本体20のスプライスホルダ部21のホルダ底壁部21aは、その中央部に窓孔21bが形成された四角枠状に形成されている。図示例の窓孔21bは角孔状に形成されている。
また、図19に示すように、前記窓孔21bは、スプライス30の第2クランプばね部332の一対の側板部332bのうち、スプライスホルダ部21の一対のホルダ側壁部241、242間の溝状のスプライス収容空間21cの溝底側に配置された側板部332bに対応する位置に形成されている。
スプライス30の第2クランプばね部332のスプライス収容空間21c溝底側の側板部332bを、以下、下部側板部ともいう。また、この下部側板部に、図中符号322sを付記する。
【0034】
図示例の光接続用ユニット10は、その平面視(あるいは図19に示す下面視)において、スプライス30の第2クランプばね部332の下部側板部332sの全体が前記窓孔21bの内側に位置する。スプライス30の第2クランプばね部332の下部側板部332sは、スプライスホルダ部21のホルダ底壁部21aに接触していない。
なお、図示例の光接続用ユニット10において、スプライス30の第2クランプばね部332の下部側板部332sは、ユニット本体20のスプライスホルダ部21の窓孔21bを介して、その全体が、ユニット本体20の下面20a側から目視可能である。
【0035】
また、図1、図13等に示すように、図示例のユニット本体20のスプライスホルダ部21のホルダ側壁部242のスプライス収容空間21cに臨む内面側には、スプライス30のクランプばね33の背板部33aのうち第1、第3クランプばね部331、333に位置する部分を当接させる当接突起21e(図4等参照。第2当接突起)が突設されている。当接突起21eは、ホルダ側壁部242の内面側の、ユニット本体20長手方向に沿って延在するスプライス収容空間21cの延在方向(長手方向)に互いに離隔する2カ所に突設されている。
【0036】
前記スプライス30の半割り把持部材34は、クランプばね33の一対の側板部33bの開放側端部からクランプばね33の背板部33aとは反対の側に張り出した部分(開放側張り出し部)を有する。スプライスホルダ部21のホルダ側壁部241のスプライス収容空間21cに臨む内面側には、スプライス30の第1、第3クランプ部331、333における半割り把持部材34の開放側張り出し部を当接させる当接突起21d(図5等参照。第1当接突起)が突設されている。
当接突起21dは、ホルダ側壁部241の内面側の、スプライス収容空間21cの延在方向(長手方向)に互いに離隔する2カ所に突設されている。なお、この当接突起21dは、ホルダ側壁部241において、介挿部材挿通孔24aを避けた位置に形成されている。
【0037】
前記スプライスホルダ部21において、スプライス30は、そのクランプばね33の背板部33aのうち第1、第3クランプばね部331、333に位置する部分をホルダ側壁部242内面側の当接突起21eに当接させ、第1、第3クランプ部331、333における半割り把持部材34の開放側張り出し部をホルダ側壁部241内面側の当接突起21dに当接させて収容されている。
したがって、スプライスホルダ部21に収容されたスプライス30のクランプばね33のうち、第2クランプばね部332に位置する部分は、スプライスホルダ部21のホルダ側壁部242に接触しない。
【0038】
すなわち、図示例の光接続用ユニット10において、スプライス30の第2クランプばね部332を含む第2クランプ部は、スプライスホルダ部21のホルダ側壁部241、242及びホルダ底壁部21aに接触していない。図示例の光接続用ユニット10において、スプライス30の第2クランプ部は、介挿片41の抜き去り時に、光ファイバケーブル1の光ファイバ2の裸光ファイバ2aの把持固定を、スプライスホルダ部21のホルダ側壁部241、242及びホルダ底壁部21aとの接触の影響を受けることなく実現する。このため、光接続用ユニット10は、スプライス30の第2クランプ部における裸光ファイバ2aの調心精度の確保に有利である。このことは、裸光ファイバ2a同士の低損失での突き合わせ接続に有効に寄与する。
【0039】
図8、図9に示すように、この実施形態の光接続用ユニット10のスプライス用工具40は、スプライス30の半割りの素子31、32間に割り入れた介挿片41が、該介挿片41のスプライス30からの抜き去り操作を行う抜き去り用操作部42から突出された構成になっている。
図示例のスプライス用工具40はプラスチック製の一体成形品である。
但し、スプライス用工具としてはプラスチック製の一体成形品に限定されず、複数部材によって組み立てた構成のものであっても良い。
【0040】
前記スプライス用工具40の前記抜き去り用操作部42は、前記介挿片41が片面側に突設された細長板状の介挿片支持板部43と、該介挿片支持板部43の両側にその長手方向に沿って延在形成された一対の弾性操作片44とを有する。
一対の弾性操作片44は、介挿片支持板部43の介挿片41が突設されている側の面(介挿片突設面43a)の長手方向に垂直の幅方向両側に設けられている。また、一対の弾性操作片44は、その延在方向(長手方向)両端が、介挿片支持板部43の長手方向両端と繋がっている。弾性操作片44は、その長手方向両端において前記介挿片支持板部43の長手方向両端に一体化して設けられている。弾性操作片44の長手方向両端部は、介挿片支持板部43の長手方向両端からその幅方向に張り出すように形成されている。弾性操作片44の延在方向両端部の間の部分は、介挿片支持板部43から若干の隙間を介して介挿片支持板部43の長手方向に沿って延在配置されている。
【0041】
この抜き去り用操作部42は、介挿片支持板部43長手方向に沿う方向の寸法が、一対の弾性操作片44の間隔方向の寸法に比べて大きい細長形状に形成されている。
また、この抜き去り用操作部42は、その長手方向両端部に、ユニット本体20のスプライスホルダ部21とケーブル引留部22との間の連結ベース部23c(図1〜図3等参照)の上面23aに当接する上面当接突部42aと、前記連結ベース部23cの前記上面23aとは反対の下面23b(図6、図12参照)に当接する下面当接突部42bとを有する。
【0042】
上面当接突部42a及び下面当接突部42bは、抜き去り用操作部42の一対の弾性操作片44の間隔方向である幅方向(操作部幅方向)に互いに離隔させて設けられている。
スプライス用工具40の抜き去り用操作部42は、ユニット本体20の長手方向におけるスプライスホルダ部21の両側の連結ベース部23cを、長手方向両端部の上面当接突部42aと下面当接突部42bとの間に挟み込むようにしてユニット本体20に組み付けることができる。
【0043】
なお、上面当接突部42aは、ファイバ案内台部23の連結ベース部23cの上面23aの幅方向片側の端部に当接する。このため、上面当接突部42aは、連結ベース部23cの上面23a中央部にユニット本体20長手方向に沿って延在する一対のファイバガイド壁27に接触しない。
【0044】
抜き去り用操作部42は、全体として、介挿片支持板部43の介挿片突設面43aに垂直の方向を厚み方向とする扁平形状に形成されている。介挿片41は、抜き去り用操作部42から、その厚み方向の片面側に突出している。以下、抜き去り用操作部42の厚み方向における両側のうち、介挿片41が突出している側を介挿片突出側、該介挿片突出側とは反対の側を裏面側とも言う。
上面当接突部42a及び下面当接突部42bは、抜き去り用操作部42の介挿片突出側に突設されている。
【0045】
図示例のスプライス用工具40の抜き去り用操作部42の一対の弾性操作片44は、その介挿片突出側のほぼ全体(下面当接突部42bを除く)が、介挿片支持板部43の介挿片突設面43aと重なる同一仮想平面上に位置する。スプライス用工具40は、抜き去り用操作部42の一対の弾性操作片44及び介挿片支持板部43の介挿片突出側を、スプライスホルダ部21のホルダ側壁部241に当接させてユニット本体20に設けられている。
一対の弾性操作片44の介挿片突出側が位置する仮想平面を、以下、仮想当接面42c(図11(a)、(b)、図12参照)とも言う。スプライス用工具40は、抜き去り用操作部42の一対の弾性操作片44及び介挿片支持板部43の前記仮想当接面42cに位置する部分を、スプライスホルダ部21のホルダ側壁部241に当接させてユニット本体20に設けられている。
【0046】
なお、スプライス用工具としては、介挿片支持板部43の介挿片突設面43aが、一対の弾性操作片44の介挿片突出側が位置する仮想平面に重なる位置にある構成に限定されない。スプライス用工具としては、介挿片支持板部43が、一対の弾性操作片44の介挿片突出側が位置する仮想平面から抜き去り用操作部42裏面側に、若干、ずれた位置に設けられている構成も採用可能である。
【0047】
介挿片41は、介挿片支持板部43の長手方向の4箇所に突設されている。
図14に示すように、スプライス30の半割り把持部材34における、前記クランプばね33の背板部33aとは反対側(以下、開放側)に露出する側面には、前記介挿部材41を挿入するための介挿部材挿入穴35が開口されている。図15に示すように、この介挿部材挿入穴35は、ベース部材31及び3つの蓋部材321、322、323の対向面31a、321a、322a、323aの互いに対応する位置に形成された介挿部材挿入溝31g、321c、322c、323cによって、ベース部材31と蓋部材321、322、323との間に確保されている。
【0048】
なお、介挿部材挿入穴35は、半割り把持部材34の開放側の側面から、調心溝31b、被覆部挿入溝31c、31d、321b、323bに達しない深さで形成される。
また、介挿部材挿入穴35としては、ベース部材31及び蓋部材321、322、323の片方のみに形成した介挿部材挿入溝によって確保した構成も採用可能である。
【0049】
図14に示すように、図示例のスプライス30において、前記介挿部材挿入穴35は、中央蓋322におけるベース部材31長手方向両端部に対応する2箇所と、第1サイド蓋321及び第2サイド蓋323のベース部材31長手方向に沿う方向の中央部に対応する位置の、計4箇所に形成されている。
スプライス用工具40の4つの介挿片41の介挿片支持板部43における突設位置は、スプライス30の4箇所の介挿部材挿入穴35に対応している。また、ユニット本体20の第1ホルダ側壁部241の介挿部材挿通孔24aも、スプライス用工具40の4つの介挿片41、及びスプライス30の4箇所の介挿部材挿入穴35に対応して、ユニット本体20長手方向の4箇所に形成されている。
なお、スプライス用工具40の介挿片41は、その板厚が、操作部幅方向と一致する向きで、介挿片支持板部43に突設されている。
【0050】
図13に示すように、この光接続用ユニット10のスプライス用工具40の介挿片41は、スプライス30のベース部材31と押さえ蓋32との間に、板状に形成された先端部41a(以下、先端介挿部とも言う)を割り込ませている。
但し、介挿片41は、半割りの素子31、32間を、クランプばね33の弾性に抗して、光ファイバ2の挿入が可能な程度に押し開き、かつ素子31、32間から抜き去り可能なものであれば良く、板状のものに限定されない。介挿片としては、例えば柔軟なシート状のもの、ロッド状のもの等も採用可能である。
【0051】
また、スプライスとしては、半割り把持部材34に介挿部材挿入穴35が形成されていない構成も採用可能である。
図8に示すように、スプライス用工具40の板状の介挿片41の先端介挿部41aは、その先端が先細りのテーパ状に形成されている。この介挿片41は、スプライス30の半割り把持部材34から抜き去った後に、その先端介挿部41aを、ベース部材31と押さえ蓋32との間に押し込んで割り込ませる(介挿部材付きスプライスを組み立てる)ことが可能である。
また、光ファイバ接続用ユニット10は、スプライス30から介挿部材を取り外した状態で現場に供給し、現場にて、スプライス30の素子31、32間に介挿部材を割り込ませて介挿部材付きスプライスを組み立てても良い。
【0052】
図1〜図3に示すように、光接続用ユニット10のユニット本体20のケーブル引留部22は、引留部底壁部22aと、該引留部底壁部22aの幅方向両側に立設された2つの引留部側壁部22bとを有する。
そして、このケーブル引留部22は、引留部底壁部22aと2つの引留部側壁部22bとにより三方から囲まれる溝状の空間(以下、固定部材収容空間22hとも言う)に、光ファイバケーブル1端末に固定した引留用固定部材120を収容する。
【0053】
また、ケーブル引留部22は、前記空間に収容した引留用固定部材120のスプライスホルダ部21からの距離を縮める前進を規制する固定部材ストッパ壁部22cと、引留用固定部材120の後端部にその後側から係合する弾性係止片22dとを有する。
前記弾性係止片22dは、ケーブル引留部22の2つの引留部側壁部22bにそれぞれ形成されている。
【0054】
図7に示すように、図示例の光接続用ユニット10のユニット本体20の前記弾性係止片22dは、ケーブル引留部22の引留部側壁部22bにおいて、その後端(スプライスホルダ部21とは反対の側)から前側(スプライスホルダ部21側)に向かって延在する上下一対のスリット22jの間に位置する部分である弾性片22eの後端に、引留用固定部材120に係合させる係合爪22fを突設したものである。前記係合爪22fは、ケーブル引留部22の2つの引留部側壁部22bの互いに対向する相手側の引留部側壁部22bに向かって弾性片22e後端から突出している。
なお、前記スリット22jは、引留部側壁部22bの前端には達していない。
【0055】
前記弾性係止片22dは、光ファイバケーブル1端末とともにケーブル引留部22にその後側から挿入した引留用固定部材120の後端部に、その後側から前記係合爪22fを係合させることで、引留用固定部材120の前記スプライス40から離隔する方向の変位を規制する引留手段として機能する。
なお、ケーブル引留部22の後側からの挿入によってケーブル引留部22に収容した引留用固定部材120の前記スプライス40から離隔する方向の変位(スプライス40からの後退)を規制する引留手段としては、前記弾性係止片22dに限定されない。この引留手段としては、例えば、ケーブル引留部22に枢着した係合片などであっても良い。
【0056】
引留用固定部材120は、光ファイバケーブル1端末の外周を取り囲むようにして設けられ、該端末に固定、一体化される。
図21は、引留用固定部材120の具体例を示す。
ここでは、引留用固定部材120として、光ファイバケーブル1端末をその両側から把持して光ファイバケーブル1端末に固定して取り付けられる外被把持部材を用いている。以下、引留用固定部材120が外被把持部材を指す場合、引留用固定部材120を外被把持部材とも言う。
この外被把持部材120は、光ファイバケーブル1を嵌め込むケーブル嵌合溝122が形成された断面コ字形の把持ベース121と、前記把持ベース121のケーブル嵌合溝122の溝幅方向両側の側壁部125の一方に枢着された押さえ蓋123とを有する。
【0057】
この外被把持部材120は、把持ベース121の一対の側壁部125の互いに対向する面に複数突設した把持用突起125cを、ケーブル嵌合溝122に嵌め込まれた光ファイバケーブル1の外被3に食い込ませて、一対の側壁部125の間に光ファイバケーブル1を把持固定できる。把持ベース121は、底壁部124の片面側に突設された一対の側壁部125の間に前記ケーブル嵌合溝122が確保された断面コ字形の部材である。ケーブル嵌合溝122の溝幅方向は、該ケーブル嵌合溝122を介して両側の側壁部125の間隔方向を指す。なお、図示例の外被把持部材120の把持用突起125cは、ケーブル嵌合溝122の深さ方向に延在する断面三角形状の突条に形成されている。
【0058】
そして、この外被把持部材120は、前記押さえ蓋123が他方の側壁部125から離隔する開放状態にて把持ベース121を光ファイバケーブル1端末に外嵌めして固定した後、押さえ蓋123を把持ベース121の一対の側壁部125の底壁部124とは反対側の端部間におけるケーブル嵌合溝122の開口部を閉じる閉位置に回動し、該押さえ蓋123を他方の側壁部125に係止して、光ファイバケーブル1端末に取り付けられる。
【0059】
図示例の外被把持部材120はプラスチック製の一体成形品である。前記押さえ蓋123は、一対の側壁部125の一方(以下、第1側壁部とも言う。図中符号125aを付記する)の突端に、ヒンジ部として機能する薄肉部126を介して繋がっている。この押さえ蓋123は、前記薄肉部126によって、前記ケーブル嵌合溝122の延在方向に沿う軸線を以て、把持ベース121の第1側壁部125aに対して回転可能に枢着されている。なお、把持ベース121の一対の側壁部125の他方について、以下、第2側壁部125bとも言う。
【0060】
図示例の外被把持部材120の押さえ蓋123はL字板状に形成されている。この押さえ蓋123は、前記薄肉部126を介して把持ベース121の第1側壁部125aに枢着されている天板部123aと、この天板部123aの前記薄肉部126とは反対側の端部から該天板部123aに垂直に形成された係止板部123bとを有する。この押さえ蓋123は、前記天板部123aを把持ベース121の一対の側壁部125の突端に当接してケーブル嵌合溝122の開口部を閉じる閉じ位置に配置したときに、前記係止板部123bを把持ベース121の第2側壁部125bのケーブル嵌合溝122とは反対側の外面に重ね合わせることができる。そして、押さえ蓋123は、前記係止板部123bに形成されている係止用窓孔123cに、把持ベース121の第2側壁部125b外面に突設されている係止用爪125dを入り込ませることで把持ベース121に係止され、把持ベース121に対する閉じ状態を安定維持できる。
【0061】
図示例の外被把持部材120(引留用固定部材)は、前記把持ベース121のケーブル嵌合溝122の延在方向に沿う前後方向の片端から突出する一対の前側突壁部127を有している。一対の前側突壁部127は、把持ベース121の両側の側壁部125a、125bから、該側壁部125a、125bを把持ベース121前後方向に沿って延長するように突出する板片状に形成されている。
【0062】
なお、外被把持部材としては、図示例の構成に限定されない。外被把持部材としては、例えば、押さえ蓋を、前記係止板部123bを省略し、前記天板部123aに、把持ベース121の第2側壁部125bの突端に係合する係合部を設けた構造の押さえ蓋に変更した構成等も採用可能である。また、外被把持部材としては、把持ベースのみからなる構成も採用可能である。また、外被把持部材としては、プラスチック製の一体成形品に限定されず、複数部材によって組み立てた構成のものも採用可能である。
引留用固定部材としては、外被把持部材に限定されず、例えば光ファイバケーブル1端末外周に接着剤による接着固定、熱溶着などによって固定する部材などであっても良い。
【0063】
図4に示すように、図示例のケーブル引留部22には、引留用固定部材120を固定した光ファイバケーブル1端末(以下、固定部材付きケーブル端末1a)の、ケーブル引留部22へのその後方からの挿入を円滑にする挿入補助スライダ26が設けられている。この挿入補助スライダ26は、引留部底壁部22a上をケーブル引留部22の前後方向にスライド移動可能に設けられた細長板状のスライダ本体26a上に押圧力受け突起26bを突設した構造になっている。
この挿入補助スライダ26は、前記スライダ本体26aの押圧力受け突起26bから後側に延出する部分である固定部材載置部26c上に固定部材付きケーブル端末1aを載置できる。
【0064】
図20に示すように、前記挿入補助スライダ26は、ケーブル引留部22の引留部底壁部22a上でのスライド移動によって、スライダ本体26aの押圧力受け突起26bから前側の部分を、固定部材ストッパ壁部22c下部及び該固定部材ストッパ壁部22cに一体化している連結ベース部23cの下部に形成されているスライダ挿入孔28に挿入できる。
スライダ挿入孔28は、固定部材ストッパ壁部22cの固定部材収容空間22hに臨む後面に開口するスライダ入り口からユニット本体20長手方向に沿ってスプライスホルダ部21に向かって延在形成されている。また、スライダ挿入孔28のスライダ入り口は、ケーブル引留部22の固定部材ストッパ壁部22cにその上端から窪む切欠状に形成された第2ファイバ挿通部22gの下方に位置している。
【0065】
なお、図6に示すように、図示例のユニット本体20は、スプライスホルダ部21のホルダ底壁部21aの下面と、各ケーブル引留部22の引留部底壁部22aの下面と、各ファイバ案内台部23の連結ベース部23cの下面23bとが互いに面一に連続してなる下面20aとが互いに面一に連続してなる下面20aを有する。
但し、ユニット本体としては、ホルダ底壁部21a下面と、2つの引留部底壁部22aの下面と、2つの連結ベース部下面23bとが互いに面一に連続する下面20aを構成するに限定されない。ユニット本体としては、例えば、連結ベース部下面23bが引留部底壁部22a下面に比べて上側に位置する構成なども採用可能である。
【0066】
前記挿入補助スライダ26は、ケーブル引留部22の引留部底壁部22a上でのスライド移動によって、スライダ本体26aの押圧力受け突起26bから前側の部分を前記スライダ挿入孔28に挿入して、前記押圧力受け突起26をケーブル引留部22の固定部材ストッパ壁部22cに当接できる。前記押圧力受け突起26は、固定部材ストッパ壁部22cにおけるスライダ挿入孔28のスライダ入り口と第2ファイバ挿通部22gとの間に位置する部分である受け突起当接部22kに当接できる。前記挿入補助スライダ26は、前記押圧力受け突起26bが、ケーブル引留部22前端の固定部材ストッパ壁部22c(より具体的には受け突起当接部22k)に当接する位置が、ケーブル引留部22に対する前進限界位置となっている。
【0067】
スプライスホルダ部21のストッパ壁部251、252には、光ファイバケーブル端末に露出させた光ファイバ2を挿通させる切欠状の第1ファイバ挿通部25aが形成されている。また、ケーブル引留部22前端の固定部材ストッパ壁部22cには、光ファイバケーブル端末に露出させた光ファイバ2を挿通させる切欠状の前記第2ファイバ挿通部22gが形成されている。
【0068】
ユニット本体20のファイバ案内台部23の連結ベース部23c上には、光ファイバケーブル1の光ファイバ2の前記ケーブル引留部22からスプライス30の素子31、32間への挿入を案内する一対のファイバガイド壁27が突設されている。一対のファイバガイド壁27は、ユニット本体20の幅方向に間隔を開けて連結ベース部23c上に突設され、ユニット本体20長手方向に延在形成されている。ユニット本体20は、一対のファイバガイド壁27の間に確保された隙間を、光ファイバ2を案内するファイバ案内溝27aとして用いることができる。
【0069】
一対のファイバガイド壁27の間のファイバ案内溝27aはユニット本体20長手方向に延在している。このファイバ案内溝27aの延在方向一端は、スプライスホルダ部21のストッパ壁部251、252に切欠状に形成された第1ファイバ挿通部25aに連通されている。前記ファイバ案内溝27aの延在方向他端は、ケーブル引留部22の前記固定部材ストッパ壁部22cに切欠状に形成された第2ファイバ挿通部22gに連通されている。
【0070】
図4、図5に示すように、第1ファイバ挿通部25aは、ストッパ壁部251、252の上端から下方へ窪み、その底部がファイバ案内溝27aの溝底と連続する溝状に形成されている。
第2ファイバ挿通部22gは、固定部材ストッパ壁部22cの上端から下方へ窪む切欠状になっている。この第2ファイバ挿通部22gの底部は、ファイバ案内溝27aの端部から固定部材ストッパ壁部22cの固定部材収容空間22hに臨む後面にわたって、前記後面側に行くにしたがって末広がりに拡張するテーパ状凹所22iとされている。
第2ファイバ挿通部22g、ファイバ案内溝27a、第1ファイバ挿通部25aは、ケーブル引留部22からスプライスホルダ部21に収容されているスプライス30の被覆部挿入溝への光ファイバ2の円滑な挿入を実現するファイバ誘導手段として機能する。
【0071】
この光接続用ユニット10を用いて光ファイバケーブル11、12同士を接続する作業は、まず、光ファイバケーブル11、12端末に引留用固定部材120を固定して固定部材付きケーブル端末1aを組み立て、ケーブル引留部22に対して前進限界位置から後側にずれた位置に移動しておいた挿入補助スライダ26の固定部材載置部26c上に固定部材付きケーブル端末1aを載置する。外被把持部材120は、前側突壁部127が突出している前側を固定部材ストッパ壁部22cに向けた姿勢で固定部材載置部26c上に載置する。
そして、固定部材付きケーブル端末1aを、挿入補助スライダ26の固定部材載置部26c上に載置状態のままケーブル引留部22前端の固定部材ストッパ壁部22cに向かって前進(固定部材ストッパ壁部22cからの距離を縮めるように移動)させる。
なお、挿入補助スライダ26に載せる固定部材付きケーブル端末1aの光ファイバケーブル端末には、予め光ファイバ2を突出状態に露出させておく。
【0072】
ケーブル引留部22の引留部底壁部22aの上面(挿入補助スライダ26がスライド移動する面)は、連結ベース部23cの上面23aに比べて下方に位置する。
固定部材付きケーブル端末1aは、挿入補助スライダ26の固定部材載置部26c上に載置したときに、光ファイバケーブル1端末から突出する光ファイバ2が、ファイバ案内溝27aの溝底部の延長上に配置される構成とする。これにより、固定部材付きケーブル端末1aの前進によって、光ファイバ2をファイバ案内溝27aに円滑に挿入できる。
光ファイバ2は、固定部材付きケーブル端末1aのケーブル引留部22に対する前進によって、ファイバ案内溝27aの溝底、第1ファイバ挿通部25aの底部を前進させる。
【0073】
固定部材付きケーブル端末1aは、挿入補助スライダ26の押圧力受け突起26bを押圧しながら前進する。このため、固定部材付きケーブル端末1aの前進に伴い挿入補助スライダ26も一体的に前進する。既述の外被把持部材120を用いて組み立てた固定部材付きケーブル端末1aは、外被把持部材120の前側突壁部127前端によって固定部材ストッパ壁部22cを押圧しながら前進する。
固定部材付きケーブル端末1aは、前進限界位置に達した挿入補助スライダ26を、引留用固定部材120と固定部材ストッパ壁部22cとの間に挟み込んだときの位置が、ケーブル引留部22に対する前進限界位置である。
【0074】
固定部材付きケーブル端末1aは、ケーブル引留部22に対する前進限界位置まで前進させる。固定部材付きケーブル端末1aは、前記前進限界位置に前進させることで、ケーブル引留部22の弾性係止片22dが係合して前進限界位置に保持される。
【0075】
スプライス30の素子31、32間に挿入する光ファイバケーブルの光ファイバ2の先端には、予め、裸光ファイバ2aを口出ししておく。
また、互いに接続する光ファイバケーブル11、12の光ファイバ2の引留用固定部材120からの突出長は、光ファイバ2同士が、スプライス30の調心溝31b長手方向中央部で突き当たり、かつ、各光ファイバケーブル11、12の固定部材付きケーブル端末1aがケーブル引留部22に対する前進限界位置に達したときに、光ファイバ2に若干の撓み部(図18の撓み部5)が形成される長さとする。
【0076】
介挿部材付きスプライス30Aにおけるベース部材31と各蓋部材321、322、323との間の開放量は、スプライス用工具40の介挿片41の板状の先端介挿部41aの厚み寸法によって設定できる。
例えば、図17に示すように、ベース部材31とサイド蓋(図示例では第2サイド蓋323)との間の介挿片41の介挿による開放量は、光ファイバ2が、被覆部挿入溝31dとサイド蓋323の対向面323aとの間の領域(ファイバ収納領域。図16の符号FS参照)から脱落せず、ファイバ収納領域内に挿通された状態を保てる範囲とする。ファイバ収納領域FS(図16参照)は、被覆部挿入溝と、該被覆部挿入溝が形成されている素子(図示例ではベース部材31)の対向面に垂直の方向における、前記被覆部挿入溝に対面する素子の前記被覆部挿入溝に対面する部分との間の領域である。
なお、図16においては、光ファイバ2の被覆部を挿入した被覆部挿入溝の溝底付近に確保されるクリアランス(図17参照)の図示を省略している。
【0077】
中央蓋322とベース部材31との間の介挿片41の介挿による開放量は、光ファイバ2先端に口出しされた裸光ファイバ2aが、調心溝31bと中央蓋322の対向面322aとの間の領域(裸光ファイバ収納領域FS2)から脱落しない範囲とする。
裸光ファイバ収納領域FS2(図16参照)は、調心溝31bと、該調心溝31bが形成されている素子(図示例ではベース部材31)の対向面31aに垂直の方向における、中央蓋322の対向面322aの前記調心溝31bに対面する部分との間の領域である。
【0078】
光ファイバ2先端に口出しした裸光ファイバ2aは、固定部材付きケーブル端末1aのケーブル引留部22に対する前進によって、ファイバ案内溝27aから、スプライス30のファイバ収納領域FS(図16参照)を介して裸光ファイバ収納領域へ挿入できる。
スプライス30の半割り把持部材34には、その長手方向両端面から先細りのテーパ状に窪むテーパ状凹所34aが開口している。図16に示すように、テーパ状凹所34aの奥端は前記ファイバ収納領域FSと連通している。
【0079】
また、図1〜図3に示すように、既述のように、スプライスホルダ部21に位置決めして収容されたスプライス30は、半割り把持部材34の長手方向両端面がスプライスホルダ部21のストッパ壁部251、252に突き当てられている。また、前記スプライス30は、半割り把持部材34の端面における前記テーパ状凹所34aの開口部の中央部が、ファイバ案内溝27aの底部及び第1ファイバ挿通部25aの底部に位置合わせされている。
このため、ファイバ案内溝27aからスプライス30のファイバ収納領域FSへの光ファイバ2の挿入は円滑に行える。
【0080】
また、図18に示すように、前記光接続用ユニット10のファイバガイド壁27には切欠部27bが形成されている。
図4、図5、図18に示すように、前記ファイバガイド壁27は、スプライスホルダ部21からケーブル引留部22側に行くにしたがって連結ベース部23cから上方への突出寸法が減少するテーパ状に形成された撓み支持壁部27cと、この撓み支持壁部27cのケーブル引留部22側の端部からケーブル引留部22まで連結ベース部23cから上方への突出寸法が一定でユニット本体20長手方向に延在する下部延在壁部27dとを有する。このファイバガイド壁27は、撓み支持壁部27c上端部からケーブル引留部22側が下方へ窪む切欠部27bとなっている。
【0081】
前記光接続用ユニット10を用いて光ファイバケーブル11、12同士を接続する作業においては、光ファイバケーブル11、12端末から突出状態に露出させた光ファイバ2を、それぞれ、ユニット本体20の長手方向両側のケーブル引留部22からファイバ案内溝27aを介してスプライス30のファイバ収納領域FS(図16)に挿入して、光ファイバ2先端の裸光ファイバ2a同士を、調心溝31bに沿う裸光ファイバ収納領域FS2の延在方向(長手方向)中央部にて突き合わせる。
【0082】
前記光接続用ユニット10は、互いに接続する光ファイバケーブル11、12の固定部材付きケーブル端末1aをケーブル引留部22に対する前進限界位置に到達させたときには、スプライス30の素子間にて光ファイバ2同士が突き合わせ接続状態となり、かつ、図18に示すように、光ファイバ2の撓み部5が、連結ベース部23cから上方へ浮き上がるように形成される。光接続用ユニット10は、ファイバガイド壁27に切欠部27が形成されているため、光ファイバ2の撓み部5を目視等によって容易に確認できる。
光ファイバ2のファイバ案内溝27a内に位置する部分は、撓み部5の形成前は、ファイバ案内溝27aの溝底に配置されている。ファイバ案内溝27aの溝底に位置する光ファイバ2は、連結ベース部23cと一対のファイバガイド壁27とによって三方から囲まれているため、光ファイバ2に形成される撓み部5は、ファイバ案内溝27aの溝底から浮き上がる方向のみに形成される。
【0083】
互いに接続する光ファイバケーブル11、12の端末から突出させた光ファイバ11a、12aの光ファイバケーブル端末からの突出長(あるいは引留用固定部材120からの突出長)は、例えば、スプライス30の裸光ファイバ収納領域FS2にて光ファイバ2の先端同士(具体的には裸光ファイバ2aの先端同士)を突き合わせたときに、光ファイバ11a、12aの一方又は両方に、下部延在壁部27dから上方(切欠部27b)に突出する撓み部5を形成できる長さとする。この場合、光ファイバ2に形成された撓み部5が下部延在壁部27dから上方(切欠部27b)に突出したことを目視等によって簡単に確認できる。このため、スプライス30内での光ファイバ2同士(具体的には裸光ファイバ同士)の突き合わせが達成されたことの確認を簡単に行える。
【0084】
また、光接続用ユニット10は、スプライスホルダ部21の両側のファイバ案内台部23の一方の下部延在壁部27dから上方に位置するように形成された撓み部5を、例えば作業者が手指などでファイバ案内溝27a溝底に向かって押圧することで、光ファイバ2同士の突き合わせ確認をより確実に行える。すなわち、スプライスホルダ部21の両側のファイバ案内台部23の一方の下部延在壁部27dから上方に位置するように形成された撓み部5を、例えば作業者が手指などでファイバ案内溝27a溝底に向かって押圧したとき、他方のファイバ案内台部23の連結ベース部23c上の光ファイバ2の撓み部5のサイズが大きくなる、あるいは他方のファイバ案内台部23の連結ベース部23c上の撓み部5が形成されていない光ファイバ2に撓み部5が形成されることで、光ファイバ2同士の突き合わせ確認をより確実に行える。
【0085】
なお、図16に示すように、ファイバガイド壁27の撓み支持壁部27cと、該撓み支持壁部27cに切欠部27bを介して対面するケーブル引留部22の固定部材ストッパ壁部22cとの間には、作業者が手指を挿入できる離隔距離が確保されている。
このため、下部延在壁部27d上方に浮き上がるように形成された光ファイバ2の撓み部5を、作業者が手指で下方へ押圧することは容易に行える。
【0086】
また、ファイバ案内台部23の連結ベース部23c上の一対のファイバガイド壁27は、下部延在壁部27dの延在方向中央部が、ケーブル引留部22に挿入固定した固定部材付きケーブル端末1aの光ファイバケーブル端末とスプライスホルダ部21内のスプライス30の長手方向の端部との間の離隔方向中央部に位置するように形成されている。光ファイバ2の撓み部5は、ケーブル引留部22に挿入固定した固定部材付きケーブル端末1aの光ファイバケーブル端末とスプライスホルダ部21内のスプライス30の長手方向の端部との間に上に凸のアーチ状をなすように湾曲して形成される。
ファイバ案内溝27a溝底から該ファイバ案内溝27a一対のファイバガイド壁27の下部延在壁部27d上方に浮き上がるように形成された光ファイバ2の撓み部5の頂部は、下部延在壁部27dの延在方向中央部の上方に位置する。このため、下部延在壁部27d上方に浮き上がるように形成された光ファイバ2の撓み部5の頂部を、作業者が手指で下方へ押圧することは容易に行える。
【0087】
一対のファイバガイド壁27の撓み支持壁部27cは、撓み部5のスプライス30側の端部を支持して、撓み部5に、連結ベース部23cから上方へ浮き上がった形状を確保することに有効に寄与する。前記一対のファイバガイド壁27は、光ファイバ2の撓み部5のサイズが比較的サイズが大きい場合でも、前記撓み支持壁部27cによって撓み部5を連結ベース部23cから上方へ浮き上がった状態に支持でき、撓み部5の倒れを防ぐことができる。
【0088】
なお、撓み支持壁部27cは、スプライスホルダ部21からケーブル引留部22側に行くにしたがって連結ベース部23cから上方への突出寸法が減少するテーパ状に限定されず、例えば、ユニット本体20長手方向における延在方向全体にわたって連結ベース部23cから上方への突出寸法が同じになっている形状としても良い。
また、ファイバ案内台部23の一対のファイバガイド壁27は、スプライスホルダ部21のストッパ壁部からケーブル引留部22側に張り出す撓み支持壁部27cを有する構成に限定されない。一対のファイバガイド壁27は、ケーブル引留部22の固定部材ストッパ壁部22cからスプライスホルダ部21側に張り出す撓み支持壁部と、該撓み支持壁部からスプライスホルダ部21まで延在する下部延在壁部とを有する構成としても良い。
また、ファイバ案内台部23の一対のファイバガイド壁27は、スプライスホルダ部21のストッパ壁部からケーブル引留部22側に張り出す撓み支持壁部と、ケーブル引留部22の固定部材ストッパ壁部22cからスプライスホルダ部21側に張り出す撓み支持壁部との間に、下部延在壁部を有する構成も採用可能である。
【0089】
光ファイバ2同士の突き当てが確認できたなら、次いで、スプライス30の素子31、32間からスプライス用工具40の介挿片41を抜き去る。
これにより、光ファイバ11a、12a同士が突き合わせ接続状態のままスプライス30の素子31、32間に把持固定され、光ファイバケーブル11、12同士の接続が完了する。
【0090】
スプライス用工具40は、片手の手指で握ることなどによって、抜き去り用操作部42の一対の弾性操作片44を介挿片支持板部43に接近させるだけで、スプライス30の素子31、32間に介挿されている介挿片41のスプライス30からの抜き去りを簡単に行える。
前記スプライス用工具40は、一対の弾性操作片44を互いの離隔距離を縮める(介挿片支持板部43に接近させる)ように弾性変形させることで、各弾性操作片44に形成されている操作片側傾斜面46を、介挿片支持板部43の幅方向両側に形成されている支持板側傾斜面45に摺動させることができる。
【0091】
スプライス用工具40の一対の弾性操作片44を互いの離隔距離を縮めるように弾性変形させる操作は、例えば図18に示すように、抜き去り用操作部42の一対の弾性操作片44に操作部幅方向両側から互いの離隔距離を縮める方向の押圧力Pを作用させることで実現できる。
なお、操作部幅方向は、図9、図10、図18における上下方向、図11(a)、(b)における左右方向を指す。
【0092】
前記支持板側傾斜面45は、介挿片支持板部43の弾性操作片44に臨む幅方向の端部に、その介挿片突出側から該介挿片突出側とは反対の裏面側に行くに従って、操作部幅方向において、介挿片支持板部43から離隔する前記弾性操作片44に接近する。この支持板側傾斜面45は、介挿片支持板部43の介挿片突設面43a、抜き去り用操作部42の仮想当接面42cに対して傾斜して形成されている。
図11(a)、(b)に示すように、操作片側傾斜面46は、弾性操作片44の介挿片支持板部43に臨む側に、支持板側傾斜面45に対応する位置に形成されている。操作片側傾斜面46は、抜き去り用操作部42の介挿片突出側から裏面側に行くに従って、操作部幅方向において介挿片支持板部43から離隔する。操作片側傾斜面46は、介挿片支持板部43の介挿片突設面43a、抜き去り用操作部42の仮想当接面42cに対して傾斜して形成されている。
【0093】
図8〜図10に示すように、図示例のスプライス用工具40において、支持板側傾斜面45は、介挿片支持板部43の幅方向両側に、介挿片支持板部43の長手方向に概ね均等の3カ所ずつ、計6カ所に形成されている。前記支持板側傾斜面45は、より具体的には、介挿片支持板部43の長手方向中央部及び長手方向両端部において、それぞれ介挿片支持板部43の幅方向両側に形成されている。
【0094】
介挿片支持板部43の長手方向中央部の支持板側傾斜面45(図中符号45aを付記する。以下、支持板中央傾斜面とも言う)は、介挿片支持板部43の幅方向両側に突設された突部43bに形成されている。介挿片支持板部43は、細長板状の支持板部本体43dを有する。前記突部43bは、支持板部本体43dの長手方向中央部の幅方向両側に突設されている。
介挿片支持板部43の長手方向両端部の支持板側傾斜面45(図中符号46bを付記する。以下、支持板端部傾斜面とも言う)は、支持板部本体43dの幅方向両側に切り欠き状に形成された溝状凹所43cの溝底面を構成している。
【0095】
介挿片支持板部43の長手方向両端部の支持板端部傾斜面45bは、介挿片支持板部43の長手方向における形成位置を、スプライス30のベース部材31と第1サイド蓋321との間に介挿される介挿片41(図8〜図10中、符号411を付記する)、ベース部材31と第3サイド蓋323との間に介挿される介挿片41(図8〜図10中、符号413を付記する)に対応させてある。支持板端部傾斜面45bは、介挿片支持板部43の長手方向における介挿片411、413が突設されている部位の幅方向両側に形成されている。
一方、支持板中央傾斜面45aは、介挿片支持板部43長手方向においてスプライス30のベース部材31と中央蓋322との間に介挿される2つの介挿片41(図8〜図10中、符号412を付記する)の間に位置する部位の幅方向に形成されている。
【0096】
操作片側傾斜面46は、介挿片支持板部43の支持板中央傾斜面45a、及び介挿片支持板部43の長手方向両端部の支持板端部傾斜面45b、45bに対応して、弾性操作片44の長手方向中央部と両端部とにそれぞれ形成されている。
弾性操作片44の長手方向中央部の操作片側傾斜面46(図中符号46aを付記する。以下、操作片中央傾斜面とも言う)は、操作部幅方向において支持板中央傾斜面45aに対面させて形成されている。また、操作片中央傾斜面46aは、弾性操作片44の長手方向中央部から介挿片支持板部43側に突出する突部44a(中央突部)に形成されている。
弾性操作片44の長手方向両端部の操作片側傾斜面46(図中符号46bを付記する。以下、操作片端部傾斜面とも言う)は、操作部幅方向において支持板端部傾斜面45bに対面させて形成されている。また、操作片端部傾斜面46bは、弾性操作片44の長手方向両端部から介挿片支持板部43側に突出する突部44bに形成されている。
【0097】
図11(a)に示すように、操作片中央傾斜面46aの、抜き去り用操作部42の仮想当接面42cに対する傾斜角度θ46aは、支持板中央傾斜面45aの前記仮想当接面42cに対する傾斜角度θ45aに比べて若干小さい。
また、図11(b)に示すように、操作片端部傾斜面46bの、抜き去り用操作部42の仮想当接面42cに対する傾斜角度θ46bは、支持板端部傾斜面45bの前記仮想当接面42cに対する傾斜角度θ45bに比べて若干小さい。
操作片中央傾斜面46aと支持板中央傾斜面45aとの間の操作部幅方向の最小離隔距離t1は、操作片端部傾斜面46bと支持板端部傾斜面45bとの間の操作部幅方向の最小離隔距離t2に比べて小さい。
【0098】
前記スプライス用工具40は、一対の弾性操作片44を互いの離隔距離を縮める(介挿片支持板部43に接近させる)ように弾性変形させたときに、操作片側傾斜面46の支持板側傾斜面45に対する摺動によって、介挿片支持板部43をその長手方向両端の間に位置する部分が一対の弾性操作片44に対して抜き去り用操作部42裏面側へ相対的に変位するように弾性変形させることができる。そして、スプライス用工具40は、介挿片支持板部43の長手方向両端の間に位置する部分が一対の弾性操作片44に対して抜き去り用操作部42裏面側へ相対的に変位する結果、スプライス30の素子間に介挿されている介挿片41のスプライス30からの抜き去りを実現できる。
スプライス30の素子間に介挿状態の介挿片41の素子間からの抜き去りは、一対の弾性操作片44の仮想当接面42cに位置する部分をスプライスホルダ部21のホルダ側壁部241に当接させた状態で、介挿片支持板部43の長手方向両端の間に位置する部分を一対の弾性操作片44に対して抜き去り用操作部42裏面側へ変位させて実現する。
【0099】
前記スプライス用工具40は、一対の弾性操作片44を互いの離隔距離を縮めるように弾性変形させると、操作片中央傾斜面46aの支持板中央傾斜面45aに対する摺動が開始した後に、操作片端部傾斜面46bの支持板端部傾斜面45bに対する摺動を開始する。そして、光接続用ユニット10は、スプライス30の第2クランプ部からの介挿片412が抜き去りが完了した後に、第1、第3クランプ部からの介挿片411、413の抜き去りが完了する、時差抜き去りを実現できる。
【0100】
スプライス30は、素子間に割り入れた介挿片411、412、413の時差抜き去りにより、まず、第2クランプ部の半割りの素子(ベース部材31と中央蓋322)間に、光ファイバ11a、12aの互いに突き合わせた裸光ファイバ2a、2aを把持固定する。そして、スプライス30は、第2クランプ部での互いに突き合わせた状態の裸光ファイバ2a、2aの把持固定の完了後に、第1、第3クランプ部の半割りの素子間での光ファイバ11a、12aの被覆部の把持固定を完了する。なお、第1クランプ部の半割りの素子はベース部材31及び第1サイド蓋311であり、第3クランプ部の半割りの素子はベース部材31及び第2サイド蓋313である。
【0101】
なお、スプライス30の素子31、32間からの介挿片41の抜き去りを完了したスプライス用工具40は、ユニット本体20から簡単に離脱させることができる。
【0102】
前記スプライス用工具40は、一対の弾性操作片44を互いの離隔距離を縮めるように弾性変形させるだけで、スプライス30の半割りの素子間に割り入れた状態の介挿片41のスプライス30からの抜き去りを簡単に行える。
また、スプライス用工具40は、スプライス30の素子間に割り入れた(介挿した)状態の介挿片41を素子間から抜き去るための抜き去り機構である抜き去り用操作部42が扁平な形状である。スプライス用工具40は、特許文献1記載の光ファイバ接続用工具に比べて、素子間に割り入れ状態の介挿片の素子間からの抜き去り方向におけるスプライス30からの突出寸法の縮小を容易に実現できる。このため、スプライス用工具、介挿部材付きメカニカルスプライスは、小型化が容易である。
スプライス用工具、介挿部材付きメカニカルスプライスの小型化は、狭隘な作業スペースにおけるスプライスを用いた光ファイバ2同士の接続作業に有利である。
【0103】
以上、本発明を最良の形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の最良の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
光接続用ユニットとしては、上述の実施形態のように、介挿部材付きスプライスの介挿部材をスプライスホルダ部21のホルダ側壁部241の介挿部材挿通孔24aに通した構成に限定されない。光接続用ユニットとしては、スプライス30をそのクランプばね33の背板部33aをスプライスホルダ部21のホルダ底壁部21a上面に当接させ、半割り把持部材34の開放側張り出し部が上端となる向きで、溝状のスプライス収容空間21cの長手方向に沿ってスプライスホルダ部21に収容した構成も採用可能である。この場合、介挿部材付きスプライスとしては、先端介挿部をスプライス30の素子間に割り入れた介挿部材の前記先端介挿部から基端側の部分をスプライス30から上方に突出させた構成を採用できる。
【0104】
介挿部材としては、スプライスの素子間に割り入れる先端部(先端介挿部)から基端側に、スプライスの素子間からの抜き去り操作用の抜き去り用操作部が設けられた構成のものであれば良く、その具体的構成はスプライス用工具40の介挿片41に限定されない。
介挿部材としては、例えば、先端介挿部から基端側に、作業者が手指で把持して、該介挿部材を、スプライスの素子に対してクランプばね33の背板部33aとは反対の抜き去り方向に引っ張り操作するためのハンドル部を有する構成のものも採用可能である。
【符号の説明】
【0105】
1、11、12…光ファイバケーブル、2…光ファイバ、2a…裸光ファイバ、2b…被覆、10…光接続用ユニット、20…ユニット本体、21…スプライスホルダ部、21a…ホルダ底壁部、22…ケーブル引留部、22a…引留部底壁部、22b…引留部側壁部、22c…固定部材ストッパ壁部、22d…引留手段(弾性係止片)、22g…第2光ファイバ挿通部、22h…2つの引留部側壁部と引留部底壁部とにより三方から囲まれる溝状の空間(固定部材収容空間)、23…ファイバ案内台部、23c…連結ベース部、241、242…ホルダ側壁部、25a…第1ファイバ挿通部、251、252…ストッパ壁部、27…ファイバガイド壁、27a…ファイバ案内溝、27b…切欠部、30…スプライス、40…スプライス用工具。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メカニカルスプライスと、該メカニカルスプライスを長手方向中央部のスプライスホルダ部に保持し、長手方向両端部に、光ファイバケーブル端末に固定した引留用固定部材を保持するケーブル引留部を具備する細長形状のユニット本体とを有し、
前記ユニット本体は、前記スプライスホルダ部と前記ケーブル引留部とを連結する連結ベース部上に、前記光ファイバケーブル端末から突出させた光ファイバの前記メカニカルスプライスへの挿入を案内する一対のファイバガイド壁を有し、該一対のファイバガイド壁にはその上端から窪む切欠部が形成され、
前記メカニカルスプライスに挿入して互いに突き合わせた光ファイバに突き当て力を作用させることで、前記光ファイバの前記一対のファイバガイド壁間に確保されたファイバ案内溝に挿入された部分に、前記ファイバ案内溝の溝底から浮き上がる撓み部を形成可能である光接続用ユニット。
【請求項2】
前記ファイバガイド壁の前記切欠部が形成された部位は、前記連結ベース部からの突出寸法が最小の箇所から前記連結ベース部の長手方向の少なくとも一方の端部に行くにしたがって前記連結ベース部からの突出寸法が増大するテーパ状に形成されている請求項1に記載の光接続用ユニット。
【請求項3】
前記スプライスホルダ部は、前記メカニカルスプライスを収容する溝状の空間の延在方向両端に、前記メカニカルスプライスの長手方向の両端面を突き当てて位置決めするストッパ壁部を有し、
前記ケーブル引留部は、前記引留用固定部材を収容する溝状の空間に収容された前記引留用固定部材の前端を当接させる固定部材ストッパ壁部を有し、
前記一対のファイバガイド壁間に確保されたファイバ案内溝の延在方向一端が、前記スプライスホルダ部の前記ストッパ壁部に切欠状に形成された第1ファイバ挿通部に連通され、前記ファイバ案内溝の延在方向他端が前記ケーブル引留部の前記固定部材ストッパ壁部に切欠状に形成された第2ファイバ挿通部に連通されている請求項1または2に記載の光接続用ユニット。
【請求項1】
メカニカルスプライスと、該メカニカルスプライスを長手方向中央部のスプライスホルダ部に保持し、長手方向両端部に、光ファイバケーブル端末に固定した引留用固定部材を保持するケーブル引留部を具備する細長形状のユニット本体とを有し、
前記ユニット本体は、前記スプライスホルダ部と前記ケーブル引留部とを連結する連結ベース部上に、前記光ファイバケーブル端末から突出させた光ファイバの前記メカニカルスプライスへの挿入を案内する一対のファイバガイド壁を有し、該一対のファイバガイド壁にはその上端から窪む切欠部が形成され、
前記メカニカルスプライスに挿入して互いに突き合わせた光ファイバに突き当て力を作用させることで、前記光ファイバの前記一対のファイバガイド壁間に確保されたファイバ案内溝に挿入された部分に、前記ファイバ案内溝の溝底から浮き上がる撓み部を形成可能である光接続用ユニット。
【請求項2】
前記ファイバガイド壁の前記切欠部が形成された部位は、前記連結ベース部からの突出寸法が最小の箇所から前記連結ベース部の長手方向の少なくとも一方の端部に行くにしたがって前記連結ベース部からの突出寸法が増大するテーパ状に形成されている請求項1に記載の光接続用ユニット。
【請求項3】
前記スプライスホルダ部は、前記メカニカルスプライスを収容する溝状の空間の延在方向両端に、前記メカニカルスプライスの長手方向の両端面を突き当てて位置決めするストッパ壁部を有し、
前記ケーブル引留部は、前記引留用固定部材を収容する溝状の空間に収容された前記引留用固定部材の前端を当接させる固定部材ストッパ壁部を有し、
前記一対のファイバガイド壁間に確保されたファイバ案内溝の延在方向一端が、前記スプライスホルダ部の前記ストッパ壁部に切欠状に形成された第1ファイバ挿通部に連通され、前記ファイバ案内溝の延在方向他端が前記ケーブル引留部の前記固定部材ストッパ壁部に切欠状に形成された第2ファイバ挿通部に連通されている請求項1または2に記載の光接続用ユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図10】
【図11】
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【図13】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2013−88533(P2013−88533A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227446(P2011−227446)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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