説明

光散乱用熱収縮性フィルム

【課題】使用する時点での必要な散乱様態に合わせて、熱収縮性を利用して計画的に光散乱の度合いを一様又は部分的に調整できるような熱収縮性フィルムを供給すること。
【解決手段】最大熱収縮率が30%以上で、主収縮方向と直交方向の熱収縮率が55℃〜105℃の温度域に極小値を有する熱収縮性フィルムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光散乱用熱収縮性フィルムに関する。特に収縮むらが少なく、一方向収縮性に優れた収縮結果を与え、必要に応じ、隣接するフィルム同士の溶剤による接着加工が出来ることにより、異方性光散乱の度合いを部分的に調整できる熱収縮性フィルムを提供する。
【背景技術】
【0002】
熱収縮性フィルムは、収縮性という機能を有するため、適用する物体に接着剤や留め具等の固定手段を用いず、フィルムから発生する収縮力と賦形性によって対象物に積層一体化する事が出来る。従って積層や被覆することによる対象物の機械的保護ばかりでなく、結束、封緘、などの機能も有する。
【0003】
更に、収縮フィルム自体に特殊な機能を有する場合、積層することで対象物に後付けにてその特殊機能を付加することができる。この性質は内容物の保護(保存、流通)と表示、及び意匠性が主目的である包装分野に於いて有効に用いられている。
【0004】
例えば瓶(ガラス製及びプラスチック製のボトルを含む)や缶などの各種容器、及び長尺物(パイプ、棒、木材、各種棒状体など)、又は枚葉体等の被覆用、結束用、外装用、又は封緘用、として利用されている。
【0005】
具体的には、表示、保護、結束、及び機能化による商品価値の向上などを目的として、瓶のキャップ部、肩部、及び胴部の一部、又は全体を被覆する用途に用いられる。
【0006】
更に、箱、瓶、板、棒、ノートなどを複数個ずつ集積して包装する用途や、被包装物にフィルムを密着させて該フィルムにより包装する(スキンパッケージ)用途などにも用いられる。
【0007】
上記フィルムの素材としては、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、脂肪属系ポリオレフィン、及びその誘導体、塩酸ゴムなどが用いられる。通常、これらのフィルムをチューブ状に成形し、例えば瓶に被せたり、パイプなどを集積した後、熱収縮させることにより包装、又は結束が行われる。
【0008】
このように様々な性状の素材を用いる結果、素材ごとに共通あるいは固有の得失が存在する。
【0009】
即ち、前記従来のフィルムはいずれも耐熱性が乏しく、高温でのボイル処理やレトルト処理に耐えることができないため、食品、衛生用品、医薬品用途に適用する場合、高温での殺菌処理ができないという欠点がある。例えばレトルト処理を行うと、前記従来のフィルムは処理中に破損し易い。
【0010】
ポリ塩化ビニルフィルムに言及すれば、このフィルムは、熱収縮特性は極めて良好であるものの、印刷時インクとの接着性が悪く、又、該樹脂に特徴的な添加剤のゲル状物を生成しやすいため、フィルムの印刷面にピンホールを発生し易い。更に、廃棄、焼却された場合の環境汚染の問題がある。
【0011】
ポリスチレンフィルムは密度が低く、リサイクル工程での分離に有利であるが、耐熱性に乏しい。又、製造後に経時的に収縮するため収縮による印刷ピッチの変化を生じ、高精度の印刷を行うことができない。更に印刷インクに含まれる溶剤に一部溶解、又は膨潤し良好な印刷が難しかった。
【0012】
ポリエステルフィルムに関しては、一般に、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、等に優れるという利点を有する。しかし望ましい収縮特性、接着性等を達成するためには精密な製造条件の制御技術が必要である。
【0013】
以上のように、使用する素材による違いは有るものの、熱収縮フィルムが持つ有用性から、従来、他の素材が使用されてきた分野にも熱収縮フィルムが用いられるようになっている。とくに従来から熱収縮性フイルムが用いられてきた包装材料分野のみならず、工業材料用にも利用される分野がある。
【0014】
工業材料分野への収縮フィルムの応用としては、ケミカルコンデンサーの外装、電池の外装および結束、電線結束用チューブ、等がすでに知られている。一方電子情報分野に於いてはLCD等のディスプレイに用いられる高透明フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、反射フィルム、プリズムシート、に加え、光散乱フィルムが知られている。本発明では異方散乱フィルムの一例を提案する。
従来光異方散乱フィルムとしては、例えば主成分である樹脂の海成分中に非相溶の糸引き状の島成分を樹脂やフィラーによって形成するもの、同様に樹脂中に細長い空洞を形成するもの、またフィルム表面に筋状の凹凸を機械的又は他の方法で形成するもの等が知られている。そしてこれらは使用する時点で最初から寸法安定性に優れ、安定した散乱性能を有した製品として供給されるものである。
【0015】
【特許文献1】欧州特許EP210646B
【特許文献2】欧州特許EP0271928B
【特許文献3】日本国特許 特開2003−004913
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、光異方散乱用に熱収縮フィルムを適用することにより、従来の光散乱フィルムには無い特徴を付与するものであり、その解決すべき課題とするところは、使用する時点で最初から寸法安定性に優れ、安定した散乱性能を有した製品として供給されるものではなく、使用する時点での必要な散乱様態に合わせて、熱収縮性を利用して計画的に光散乱の度合いを一様又は部分的に調整できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明の光散乱用熱収縮性フィルムは、最大熱収縮率が5%以上あればよく、30%以上であれば更に良い。50%以上あればより散乱度合いの調整幅が広がる。
該熱収縮性フィルムの原料としては、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アクリル、ポリアミド等収縮性を有するものであれば何れも用いられる。とくにポリエステルを用いる場合、構成するグリコール成分としてネオペンチルグリコール及び/又はシクロヘキサンジメタノールを含むことが望ましい。
【0018】
又、上記目的を達成するために、本発明の光散乱用熱収縮性フィルムは、主収縮方向と直交方向の熱収縮率が55℃〜105℃の温度域に極小値を有することが望ましい。
【0019】
更に、上記目的を達成するために、本発明の光散乱用熱収縮性フィルムは、交点収縮率が2%以上であることが望ましい。
【0020】
更に、上記目的を達成するために、本発明の光散乱用熱収縮性フィルムは、隣接するフィルム同士の溶剤接着が可能なことが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の光散乱用熱収縮性フィルムは、最大熱収縮率が5%、好ましくは30%以上である。ポリエステルを用いて実現する場合、構成するグリコール成分としてネオペンチルグリコール及び/又はシクロヘキサンジメタノールを含むため、ポリエステル固有の耐熱性を有し、自然収縮による経時変形がなく、製品としての適用時に機械的信頼性が向上する。
【0022】
又、本発明の光散乱用熱収縮性フィルムは、主収縮方向と直交方向の熱収縮率が55℃〜105℃の温度域に極小値を有することができ、一方向収縮性に優れるため収縮方向と直交方向の全域に亘る散乱のばらつきを生じない。
【0023】
更に、本発明の光散乱用熱収縮性フィルムは、交点収縮率が2%以上であることができ、結果として熱収縮の極めて局部的な斑を防ぐ特性が得られ、局部的な光散乱の異常部分が発生することを抑える。
【0024】
更に、本発明の光散乱用熱収縮性フィルムは、必要に応じ溶剤接着が可能なことから、機器組み込み時に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明に用いられる熱収縮性フィルムを構成するために使用できるポリエステル原料は、ポリエステル系樹脂組成物である。ポリエステル系樹脂としては、ジカルボン酸成分として、芳香族ジカルボン酸、それらのエステル形成誘導体、脂肪族ジカルボン酸の1種以上を用い、多価アルコール成分と重縮合した公知の(共重合)ポリエステルを用いることができる。
【0026】
芳香族ジカルボン酸として、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−1,4−もしくは−2,6−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等が挙げられる。またこれらのエステル誘導体としてはジアルキルエステル、ジアリールエステル等の誘導体が挙げられる。
【0027】
又、脂肪族ジカルボン酸としては、ダイマー酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シュウ酸、コハク酸等が挙げられる。また、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の多価のカルボン酸を、必要に応じて併用してもよい。
【0028】
多価アルコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ダイマージオール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等のアルキレングリコール、ビスフェノール化合物、又はその誘導体のアルキレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。また、多価アルコールではないが、ε−カプロラクトンも使用可能である。
【0029】
本発明の熱収縮性フィルムを構成するポリエステル原料は、単独でもよく、2種以上を混合して用いてもよい。単独のホモポリマーを用いる場合は、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエチレンテレフタレート以外のホモポリエステルが好ましい。ポリエチレンテレフタレート単独では、熱収縮性が発現し難いからである。
【0030】
熱収縮特性の点からは、ガラス転移温度(Tg)の異なる2種以上のポリエステルをブレンドして使用することが好ましい。ポリエチレンテレフタレートと共重合ポリエステル(2種以上であってもよい)を混合して使用することが好ましいが、共重合ポリエステル同士の組み合わせであってもよい。また、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート同士を組み合わせたり、これらと他の共重合ポリエステルを組み合わせて用いることもできる。
【0031】
最も熱収縮特性的に好ましいのは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、エチレングリコールとネオペンチルグリコールとの混合ジオール成分とテレフタル酸とからなる共重合ポリエステル、の3種類のブレンドタイプである。2種以上のポリエステルを併用する場合は、前記したように、それぞれのポリマーのチップをホッパ内でブレンドすることが、生産効率の点からは好ましい。
【0032】
ポリエステルは常法により溶融重合することによって製造できるが、ジカルボン酸類とグリコール類とを直接反応させ得られたオリゴマーを重縮合する、いわゆる直接重合法、ジカルボン酸のジメチルエステル体とグリコールとをエステル交換反応させたのちに重縮合する、いわゆるエステル交換法等が挙げられ、任意の製造法を適用することができる。又、その他の重合方法によって得られるポリエステルであってもよい。ポリエステルの重合度は、固有粘度にして0.3〜1.3dl(デシリットル)/gのものが好ましい。
【0033】
ポリエステルには、着色やゲル発生等の不都合を起こさないようにするため、酸化アンチモン、酸化ゲルマニウム、チタン化合物等の重合触媒以外に、酢酸マグネシウム、塩化マグネシウム等のMg塩、酢酸カルシウム、塩化カルシウム等のCa塩、酢酸マンガン、塩化マンガン等のMn塩、塩化亜鉛、酢酸亜鉛等のZn塩、塩化コバルト、酢酸コバルト等のCo塩を、ポリエステルに対して、各々金属イオンとして300ppm以下、リン酸、又はリン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル等のリン酸エステル誘導体を燐(P)換算で200ppm以下、添加してもよい。
【0034】
上記重合触媒以外の金属イオンの総量がポリエステルに対し300ppm、またP量が200ppmを超えるとポリマーの着色が顕著になるのみならず、ポリマーの耐熱性や耐加水分解性が著しく低下するため好ましくない。
【0035】
このとき、耐熱性、耐加水分解性等の点で、P量(P)と総金属イオン量(M)とのモル原子比(P/M)は、0.4〜1.0であることが好ましい。モル原子比(P/M)が0.4未満、又は1.0を超える場合には、フィルムが着色したり、フィルム中に粗大粒子が混入することがあるため好ましくない。
【0036】
上記金属イオン、リン酸、及びその誘導体の添加時期は特に限定しないが、一般的には、金属イオン類は原料仕込み時、すなわちエステル交換前、又はエステル化前に、リン酸類は重縮合反応前に添加するのが好ましい。また、必要に応じて、シリカ、二酸化チタン、カオリン、炭酸カルシウム等の微粒子を添加してもよい。
【0037】
ポリエステル樹脂としては、1種、又は複数種のポリエステルの共重合モノマー種、共重合比、ブレンド配合比、延伸条件のコントロール等、後述の実施例記載の方法にて、本発明の物性値を示す特性、及び超音波接着性、熱接着性及び溶剤接着性をもたせることができる。とくに溶剤接着に用いる溶剤としては、溶解性パラメータ(SP値)が8.0〜13.8のもの、好ましくは、テトラヒドロフラン、ジオキソラン等を用いることが出来る。
【0038】
本発明に用いられるポリエステル樹脂には静電密着性、易滑性、延伸性、加工適性、耐衝撃性等を向上するため、また、粗面化、不透明化、空洞化、軽量化等の理由により他の樹脂、発泡剤、可塑化剤、相溶性調製剤、無機粒子、有機粒子、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等を適量配合したものを適宜練りこみ法、CCF法やマルチプライヤー法を用いた積層法、インラインコート、オフラインコート等のコート法、にて適用することができる。
【0039】
上記ポリエステル樹脂は、既知の方法(例えば、押し出し法、カレンダー法)によりフィルム状に成形される。フィルムの形状は、例えば平面状、又はチューブ状であり、特に限定されない。
【0040】
延伸方法としては通常の方法が採用される。それには例えば、ロール延伸法、長間隙延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法がある。これらの方法のいずれにおいても、延伸は逐次2軸延伸、同時2軸延伸、1軸延伸、及びこれらの組み合わせにより行われる。上記2軸延伸では縦横方向の延伸は同時に行われてもよいが、どちらか一方を先に行う逐次2軸延伸が効果的であり、その縦横の順序はどちらが先でもよい。
【0041】
延伸倍率は1.0倍から6.0倍の範囲で任意に設定され、所定の一方向の倍率と該方向と直行する方向の倍率が同じであっても異なっていてもよいが、請求項を満足するためには好ましい延伸倍率が存在する。延伸工程においてはフィルムを構成するポリエステル樹脂が有するガラス転移温度(Tg)以上の、例えば(Tg+100℃)以下の温度で予熱を行うのが好ましい。
【0042】
延伸後の熱固定では、例えば延伸を行った後に、30℃〜150℃の加熱ゾーンを約1秒〜30秒通すことが推奨される。又、フィルムの延伸後であって熱固定を行う前、もしくは行った後に、所定の度合で弛緩処理を行ってもよい。
【0043】
更に、上記延伸後、伸張あるいは緊張状態に保ってフィルムにストレスをかけながら冷却する工程、あるいは、該処理に引き続いて緊張状態を解除した後も冷却工程を付加してもよい。得られるフィルムの厚さは6μm〜250μmの範囲が好ましい。
【0044】
特に、本発明の光散乱用熱収縮性ポリエステル系フィルムを作成する場合、欧州特許EP210646Bの記載を参考とすれば、主収縮方向と直角方向に1.0倍〜2.0倍の延伸後、主収縮方向に延伸し、更に主収縮方向に追加の付加的延伸を行うことで、主収縮方向と直交方向の収縮率が55℃〜105℃の温度域に極小値を有する特性、ひいては主収縮方向の一方向にのみ均一に収縮する特性を得ることが出来る。従って散乱フィルムの非収縮方向の均一性が得られる。
【0045】
更に、欧州特許EP0271928Bの記載を参考とすれば、主収縮方向延伸において(Tg+80℃)以下の温度で予熱し、主収縮方向延伸中の前半90%までの温度よりも、残りの10%域の温度を低下させて行い、ごくわずかに追加延伸を行うことで交点収縮率が増加することになり、該交点収縮率を2%以上、好ましくは5%以上とすることが出来る。結果として熱収縮の局部的斑を防止する特性が得られ、光散乱の局部的異常が防げる。
本発明の光散乱用熱収縮性フィルムに対する光散乱源の付与方法としては、特開2003−004913を参考として、例えば主成分である樹脂の海成分中に非相溶の糸引き状の島成分を樹脂やフィラーによって形成する方法、同様に樹脂中に細長い空洞を形成する方法、またフィルム表面に筋状の凹凸を機械的に形成する方法、押し出し時又はその後の工程中でロールの接触により腑形加工を行う方法、非収縮層との積層体の収縮に伴う皺を利用する方法、精細な印刷による方法、蒸着による方法等いずれの方法を用いても良い。
【0046】
かくして得られる熱収縮性フィルムは、従来の光散乱用フィルムに散乱度合いの調整機能を付与するものである。そして光散乱度合いの調整が容易で異常部を生じ難いという副次的特徴が得られ、最終の散乱状態の微調整が可能となる。さらに
ポリエステル樹脂を原料に用いた場合、ポリエステル固有の耐熱性を有し、自然収縮による経時変形がなく、工業材料用途にも好適である。
【実施例】
【0047】
以下に実施例にて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。フィルムの評価方法を以下に示す。
【0048】
(1)等方性評価
携帯形光電比色計(柴田化学機器工業社製、COLORIMETER MODEL C−2)を用い、サンプルホルダーを外し、受光用フォトダイオードの入力線を切り離す。可視光用ブルーセンシティブフォトダイオード(BS120)のセンサー面が、5mmφの比色計の入射光絞りの中心から入射光軸の出射側に対し仰角60度、距離21mmとなる位置に取り付け、その信号出力を比色計のフォトダイオード入力を切り離したあとに接続する。漏光を完全に除去した後測定に移る。入射光(白色光)を遮断した状態にてゼロ調整ダイアルにてメーターの0%をあわせる。比色計の5mmφ入射光絞りの上に試料フィルムを1〜10枚(標準2〜5枚)、切り出した方向を揃え重ねて固定する。このとき光軸とセンサーの中心を含む平面に試料フィルムのMD方向が垂直となるようにする。入射光を当て、100%調整ダイアルにてメーターの100%をあわせる。次に試料フィルムを入射光絞りを中心に90度まわし、光軸とセンサーの中心を含む平面に試料フィルムのTD方向が垂直になるようにし、メーターを読む(a%)。さらに同じ向きにフィルムを90度まわしては100%あわせ、a%読みを5回繰り返す。最後にフィルムを取り外し、入射光を当てメーターを読む(B%)。5回のa%読みの平均をA%とすると、等方性評価値:Iは

I=(A−B)/(100−B)

で表される。異方性が大きい程Iは0に近い値をとる。異方性が小さい程Iは1に近い値をとる。この評価法を行う場合、光学的に等価であって感度が類似するものであれば機器の選択は上記に限定されない。
(2)最大熱収縮率
フィルムが収縮する方向を長辺とし、幅15mmとなるように切り出す。この長辺方向に200mmの間隔に標線を記す。この試料に100℃〜150℃の熱風を1分間当てて加熱し、標線間の距離の変化量を測る。この変化量の元の長さに対する100分率を熱収縮率(%)とする。
【0049】
(3)主収縮方向と直交方向の収縮率
前述の欧州特許EP210646Bに準じ、フィルムを、収縮する方向と直交する方向を長辺として幅15mmとなるように切り出す。この長辺方向に200mmの間隔に標線を記す。これらの50℃から5℃ピッチで150℃までの各温度用の試料に各温度の熱風を1分間当てて加熱し、標線間の距離の変化量を測る。この変化量の元の長さに対する100分率を熱収縮率(%)とする。これより収縮温度〜収縮率のグラフを作成し、55℃〜105℃の温度域に極小値を有するかどうかを判定する。
【0050】
(4)交点収縮率
前述の欧州特許EP0271928B(特開昭64−4325)に準じ、熱収縮応力を求める為にテンシロンを使用し、幅20mm、長さ150mm、の試料片を採取してそのフィルムに100mm、の標線を記し、100mmよりも小さく、50mmより大きい任意の寸法(L1)に設定した上下チャックに試料片を装着し、100℃の熱風中で処理し、フィルムを収縮させた。このときの残留収縮応力を求め次式により応力を求めた。
残留収縮応力=収縮力/断面積
又、そのときの収縮率は次式により算出した。
収縮率=(100−L1)/100×100(%)
一方、引張応力は前記残留収縮応力の測定において50%熱収縮させた後に、チャック間距離が50mmより大きく、100mm以下の任意のチャック間距離L2に戻す為に要する引張力を求め次式により引張応力を求めた。
引張応力=引張力/断面積
再伸長率=(L2−50)/50×100(%)
上記の残留収縮応力と収縮率、並びに引張応力と再伸長率の両関係を示すグラフより求めた交点に相当する収縮率を交点収縮率と定義する。
【0051】
(実施例1)
PET:20wt%、ネオペンチルグリコール30mol%共重合PET:70wt%、アジピン酸30mol%共重合PET:10wt%を原料として280℃で溶融押出しして厚さ180μmの未延伸シートを得た。該未延伸シートを、ロール延伸機を用い主収縮方向と直角方向に80℃にて1.3倍延伸し、続いてテンター型延伸機を用い130℃で予熱し、延伸域の90%までを85℃、残りの部分を70℃にて延伸し同温度で2秒熱固定を行った。さらに付加的に主収縮方向に65℃で2%延伸を行い、主収縮方向の総延伸倍率を4.5倍とした。得られたフィルムを前述の測定方法で測定したところ、最大熱収縮率は67%の値を示した。又、55℃〜105℃に主収縮方向と直角方向の収縮率の極小値を有し、交点収縮率が17%であった。
【0052】
次にジカルボン酸成分としてジメチルテレフタレート46モル%、ジメチルイソフタレート47モル%及び5−スルホイソフタル酸ナトリウム7モル%を使用し、グリコール成分としてエチレングリコール50モル%及びネオペンチルグリコール50モル%を用いて、常法によりエステル交換反応及び重縮合反応を行う。得られたスルホン酸基含有ポリエステルのガラス転移温度は69℃である。このスルホン酸基含有ポリエステル300部とn−ブチルセロソルブ150部とを加熱撹拌して、粘ちょうな溶液とし、さらに撹拌しつつ水550部を徐々に加えて、固形分30重量%の均一な淡泊色の水分散液を得る。
【0053】
次に2−アミノアニソール−4−スルホン酸100mmolを23℃で4モル/リットルのアンモニア水溶液に撹拌溶解し、ペルオキサ二硫酸アンモニウム100mmolの水溶液を滴下する。滴下終了後23℃で10時間さらに撹拌した後、反応生成物を濾別洗浄、乾燥し、粉末状の共重合体を13gを得る。この共重合体の体積固有抵抗値は12.3Ωcmである。上記重合体3重量部を0.3モル/リットルの硫酸水溶液100重量部に室温で撹拌溶解し導電性組成物を調整する。この時のスルホン化ポリアニリンのスルホン酸基の含有量は100%である。
【0054】
スルホン酸基含有ポリエステルとスルホン化ポリアニリンとの固形分比が70/30、さらに界面活性剤エマルゲン810(花王製)をスルホン化ポリアニリンとの比が8/100となるように混合し、さらに水とイソプロパノールの等量混合液中に加え、総固形分濃度4重量%の塗布液を調整する。上記塗布液をあらかじめ作成した熱収縮性フィルム上にバーコーターを用いてウェトの厚み4μmにて塗布し、55℃の熱風で乾燥する。
得られた積層熱収縮性フイルムを、収縮方向に50℃から150℃まで温度差があるオーブンにて加熱する。結果50℃で加熱した部分は散乱が見られず、150℃で加熱収縮した部分は異方性散乱が見られた。両者の間で等方性評価値の減少は0.5である。
(実施例2)
PET:20wt%、ネオペンチルグリコール30mol%共重合PET:70wt%、アジピン酸30mol%共重合PET:10wt%からなるポリエステル組成物100重量部に対し、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸100mol%、ジオール成分としてブタンジオール95mol%、ポリテトラメチレングリコール(分子量1000)5mol%からなる共重合PBT(還元粘度1.33dl/g)を20重量部の割合で混合したものを原料として280℃で溶融押出しして厚さ180μmの未延伸シートを得た。このときのダイリップでのせん断速度は400sec-1であった。該未延伸シートを、ロール延伸機を用い主収縮方向と直角方向に80℃にて1.3倍延伸し、続いてテンター型延伸機を用い130℃で予熱し、延伸域の90%までを85℃、残りの部分を70℃にて延伸し同温度で2秒熱固定を行った。さらに付加的に主収縮方向に65℃で2%延伸を行い、主収縮方向の総延伸倍率を4.5倍とした。得られたフィルムを前述の測定方法で測定したところ、最大熱収縮率は60%の値を示した。又、55℃〜105℃に主収縮方向と直角方向の収縮率の極小値を有し、交点収縮率が15%であった。
得られた熱収縮フイルムを、収縮方向に50℃から150℃まで温度差があるオーブンにて加熱する。結果50℃で加熱した部分は等方性評価値0.6の散乱が見られた、150℃で加熱収縮した部分は異方性散乱の増加が見られた。両者の間で等方性評価値の減少は0.3である。
(比較例1)
実施例2において、ロール延伸機を用い主収縮方向と直角方向に80℃にて3.0倍延伸し、続いてテンター型延伸機を用い130℃で予熱し、80℃にて3.0倍延伸し、150℃の温度で5秒間熱固定を行った。最大熱収縮率は2%の値を示した。又、55℃〜105℃に主収縮方向と直角方向の収縮率の極小値を示さず、交点収縮率が1%であった。
得られたフイルムを、収縮方向に50℃から150℃まで温度差があるオーブンにて加熱する。結果50℃で加熱した部分は等方性評価値0.7の散乱が見られた、150℃で加熱収縮した部分は異方性散乱の増加が見られた。両者の間で等方性評価値の減少は0である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の光散乱用熱収縮性フィルムは、最大熱収縮率が5%以上、望ましくは30%以上であり、ポリエステルを用いた場合、構成するグリコール成分としてネオペンチルグリコール及び/又はシクロヘキサンジメタノールを含むため、ポリエステル固有の耐熱性を有し、自然収縮による経時変形がなく、フィルムの機械的信頼性が向上するため工業用分野にも利用可能性がある。
【0056】
又、本発明の光散乱用熱収縮性フィルムは、主収縮方向と直交方向の熱収縮率が55℃〜105℃の温度域に極小値を有することができ、一方向収縮性に優れるため収縮方向と直交方向の光散乱の均一性が得られる。
【0057】
更に、本発明の光散乱用熱収縮性フィルムは、交点収縮率が2%以上であることができ、結果として熱収縮の斑を防止する特性が得られ、局部的に異常な光散乱を防げる。
【0058】
更に、本発明の光散乱用熱収縮性フィルムは、溶剤接着が可能なことから、機器実装に有利である。従って、視覚機器用ディスプレイに組み込み、光透過部や、反射部等に適用して、輝度や色調斑の最終微調整用に用いることが考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムの主収縮方向における最大熱収縮率が、100℃〜150℃の温度域において30%以上であり、加熱収縮により光散乱の度合いが変化することを特徴とする光散乱用熱収縮性フィルム
【請求項2】
主収縮方向と直交方向の熱収縮率が、55℃〜105℃の温度域において極小値を有することを特徴とする請求項1に記載の光散乱用熱収縮性フィルム。
【請求項3】
フィルムの交点収縮率が2%以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光散乱用熱収縮性フィルム。
【請求項4】
光散乱源が主収縮方向に直交する方向に細長い構造であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の光散乱用熱収縮性フィルム。
【請求項5】
フィルムが異方性散乱性であるか又は熱収縮によって異方性散乱性を発現し、その度合いが変化することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の光散乱用熱収縮性フィルム。
【請求項6】
フィルムが異方性散乱性であるか又は熱収縮によって異方性散乱性を発現、増加し、熱収縮後の等方性評価値の減少量が0.1以上であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の光散乱用熱収縮性フィルム。
【請求項7】
熱収縮性フィルムを構成する主たる原料がポリエステルであり、ポリエステルを構成するグリコール成分としてネオペンチルグリコール及び/又はシクロヘキサンジメタノールを含有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の光散乱用熱収縮性ポリエステル系フィルム

【公開番号】特開2007−223284(P2007−223284A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−50140(P2006−50140)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】