光束の位置変化検出装置
【課題】光束の検出器への入射位置の変化が微小な場合においても感度良く光束の位置の変化を検出することが可能となる光束の位置変化検出装置を提供する。
【解決手段】光束101の位置変化検出装置であって、検出装置は、2つ以上の画素を有し、光束101の光照射量を信号値として検出する検出器102によって構成され、検出器102で検出された信号値に基づき、2つ以上の画素に入射する光束101が第1の入射位置から第2の入射位置へ変化する位置変化を検出するための演算を行う演算手段103を備え、演算手段103は、重み付け係数S/N2をIに乗じた演算値に基づいて演算するように構成されている。S:位置変化によって生じると想定される検出器102の各画素における信号値の変化量、N:光束101が第1の入射位置にあるときの検出器102の各画素で検出される信号値の標準偏差、I:検出器102の各画素で検出される信号値
【解決手段】光束101の位置変化検出装置であって、検出装置は、2つ以上の画素を有し、光束101の光照射量を信号値として検出する検出器102によって構成され、検出器102で検出された信号値に基づき、2つ以上の画素に入射する光束101が第1の入射位置から第2の入射位置へ変化する位置変化を検出するための演算を行う演算手段103を備え、演算手段103は、重み付け係数S/N2をIに乗じた演算値に基づいて演算するように構成されている。S:位置変化によって生じると想定される検出器102の各画素における信号値の変化量、N:光束101が第1の入射位置にあるときの検出器102の各画素で検出される信号値の標準偏差、I:検出器102の各画素で検出される信号値
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光束の位置変化検出装置に関し、特に、光束を検出器で検出してその光束の検出器上での位置の変化を感度良く検出する光束の位置変化検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光束を物体表面に投光し、光束の位置を距離位置等の計測点とすることが測量技術で開発されている。
このような測量技術の一つとして、特許文献1では長距離の投光では拡がって大きな面積を有する光束となることを利用し、この拡がった光束の位置を演算する方法が提案されている。
この方法では、座標値に信号値又はその増加函数を重みとして平均値を求め、光束の位置を演算する。
そして、光束の位置の変化を検出する場合、光束の位置を演算し、位置の変化前後での演算値の差により検出する。
【0003】
一方、特許文献2では、X線の物体による屈折効果を利用したX線撮像方法が提案されている。
この方法では、X線源から発生したX線を物体に照射し、物体からの透過X線をX線光学手段によって、検出器上の2画素以上の画素領域にまたがり、かつ離散的にX線を集光する。
物体によるX線の屈折により、物体がある状態と物体が無い状態では、検出器へのX線の入射位置が異なる。
隣接する2画素間の出力差と出力和の比を、物体のない状態と物体のある状態で比較することにより、物体によるX線の屈折効果に関する像を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−185520号公報
【特許文献2】特開2008−200358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のものにおける方法では、光束の検出器への入射位置の変化が微小であった場合、その変化を感度良く検出する上で課題を有している。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、光束の検出器への入射位置の変化が微小な場合においても感度良く光束の位置の変化を検出することが可能となる光束の位置変化検出装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光束の位置変化検出装置は、光束を検出する検出器を備え、該検出器で検出された光束の検出器上での位置の変化を検出する光束の位置変化検出装置であって、
前記検出器は、2つ以上の画素を有し、前記光束の光照射量を信号値として検出する検出器によって構成され、
前記検出器で検出された前記信号値に基づき、前記2つ以上の画素に入射する光束が第1の入射位置から第2の入射位置へ変化する位置変化を検出するための演算を行う演算手段を備え、
前記演算手段は、重み付け係数S/N2をIに乗じた演算値に基づいて演算するように構成されていることを特徴とする。
但し、
S:前記位置変化によって生じると想定される前記検出器の各画素における信号値の変化量
N:前記光束が前記第1の入射位置にあるときの前記検出器の各画素で検出される信号値の標準偏差
I:前記検出器の各画素で検出される信号値
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光束の検出器への入射位置の変化が微小な場合においても感度良く光束の位置の変化を検出することが可能となる光束の位置変化検出装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態における検出装置の構成例を説明する図。
【図2】本発明の実施形態における検出器に入射する光束について説明する図。
【図3】本発明の実施形態における検出結果の例について説明する図。
【図4】本発明の実施例における検出装置の構成例を説明する図。
【図5】本発明の実施例における分割素子について説明する図。
【図6】本発明の実施例における検出器について説明する図。
【図7】本発明の実施例におけるX線の入射位置の変化について説明する図。
【図8】本発明の実施例における検出器の一部について説明する図。
【図9】本発明の実施例における光束の位置変化検出装置を用いて作成した像の一部分のラインプロファイルについて説明する図。
【図10】本発明の実施例における像の一部分について説明する図。
【図11】特許文献1の演算方法を利用して作成した像の一部分のラインプロファイルについて説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態では、1つの光束の検出器への入射位置が、第1の入射位置から第2の入射位置に変化した時の位置変化を検出する光束の位置変化検出装置の構成例について、図1を用いて説明する。
本実施形態の光束の位置変化検出装置は、図1に示すように、光束101が検出器102に入射するように構成されている。
そして、この検出器102の出力はコンピュータ等の演算手段103に接続され、演算手段103の出力はモニタやプリンタ等の表示手段104に接続されている。
光束101が入射する検出器102は、例えばCCDカメラ等から選択される。また、検出器に入射する光束101は、例えばレーザー投光器で発生したレーザー光や自然光等に適用できる。
ここで、本実施形態における光束の位置変化検出装置は、2つ以上の画素を有し、前記光束の光照射量を信号値として検出する検出器と、演算手段を備え、検出器で検出された光束の検出器上での位置の変化を検出するように構成されている。
そして、上記演算手段は、検出器で検出された上記信号値に基づき、2つ以上の前記画素に入射する光束が第1の入射位置から第2の入射位置へ変化する位置変化を検出するための演算を行う。
この演算は、重み付け係数S/N2をIに乗じた演算値に基づいて行われる。
【0011】
但し、
S:前記位置変化によって生じると想定される前記検出器の各画素における信号値の変化量、
N:前記光束が前記第1の入射位置にあるときの前記検出器の各画素で検出される信号値の標準偏差、
I:前記検出器の各画素で検出される信号値、
である。
【0012】
図2は、画素201、202、203、204の4画素にわたって光束205が入射するようにされた構成例について説明する図である。
この光束205は、円状であるが、例えば四角状のものであってもよい。
以下に、さらに詳細に説明すると、上記演算手段によって、具体的には、つぎように演算が行われる。
光束205が第1の入射位置にある状態で複数回の検出を行うことにより、画素201、画素202、画素203、画素204で検出される信号値の標準偏差N1、N2、N3、N4を演算する。
光束が第1の入射位置から第2の入射位置に変化することによって生じると想定される画素201、画素202、画素203、画素204で検出される信号値の変化量をS1、S2、S3、S4とする。
例えば、光束が第1の入射位置にある状態で複数回の検出を行うことにより、画素201、画素202、画素203、画素204で検出される信号値の平均値H11、H12、H13、H14と、
光束が第2の入射位置にある状態で複数回の検出を行うことにより、画素201、画素202、画素203、画素204で検出される信号値の平均値H21、H22、H23、H24と、を演算する。
そして、S1=H11−H21、S2=H12−H22、S3=H13−H23、S4=H14−H24から、信号値の変化量を求める。
光束が第1、第2の入射位置にある状態は、検出器や光源の移動等により、検出器上の光束の入射位置を変化させて実現する。
また、物体による屈折を利用して、光束を屈折させ、検出器上の光束の入射位置を変化させて実現することも可能である。
【0013】
本実施形態の検出装置においては、このようにして取得した、各画素で検出される信号値の標準偏差Nと、光束が第1の入射位置から第2の入射位置に変化することによって生じると想定される各画素で検出される信号値の変化量Sを用いる。そして、各画素で検出される信号値に対して重み付けを行う。
画素201、画素202、画素203、画素204の信号値に対する重みはS1/N12、S2/N22、S3/N32、S4/N42となる。
次に、光束が検出器に入射している状態で、画素201、画素202、画素203、画素204で検出される信号値I1、I2、I3、I4を検出する。
式(1)によってAの値を演算し、表示手段104に演算結果を表示する。
【0014】
図3のグラフは、前述の演算結果を説明するために、100回の計測例を、検出回数50回目以外は光束が第1の入射位置にあり、検出回数50回目では光束が第2の入射位置にあるように、シミュレーションを用いてデータ列を作成した。
本実施形態の検出装置では、一例として、図3のような検出結果が得られた。
【0015】
つぎに、本検出装置により、第1の入射位置から第2の入射位置への光束の位置の変化を感度良く検出できる理由について説明する。
式(1)における、I1、I2、I3、I4に対する重み付け係数をk1、k2、k3、k4とし、式(2)によってAの値を演算するとする。
【0016】
光束が第1の入射位置にある時のI1、I2、I3、I4を、式(2)に代入した時の演算値をA1とすると、誤差の伝搬式から、A1の標準偏差σ(A1)は次の式(3)として表すことが出来る。このσ(A1)の値は、図3における検出回数50回目以外のAの標準偏差に対応している。
【0017】
光束が第1の入射位置から第2の入射位置に変化した時のAの変化量ΔAは次の式(4)として表す事が出来る。このΔAの値は、図3における検出回数50回目以外の時のAと検出回数50回目の時のAの差分に対応している。
【0018】
ΔA/σ(A1)が大きい程、第1の入射位置から第2の入射位置への光束の位置の変化は検出しやすいと考えられる。
【0019】
式(5)を解く事によって、ΔA/σ(A1)を最大にするk1、k2、k3、k4を算出することができ、その条件はk1=S1/N12、k2=S2/N22、k3=S3/N32、k4=S4/N42となる。
これらの重み付け係数を式(2)に代入すると、式(1)になる。これにより、本検出装置を用いることにより、ΔA/σ(A1)の値が最大となり、第1の入射位置から第2の入射位置への光束の位置変化を感度良く検出できることが分かる。
なお、本実施形態において、特許文献2に記載されている、光束の位置変化を検出する式は式(6)のように表すことができる。
ここで、Mは(I1+I2+I3+I4)の値である。
I1、I2、I3、I4に対する重み付け係数はそれぞれ、1/M、1/M、−1/M、−1/Mである。この重み付け係数は、前述で説明したΔA/σ(A1)を最大とする重み付け係数S1/N12、S2/N22、S3/N32、S4/N42と等しくならない。
よって、特許文献2に記載されている、光束の位置変化を検出する式の重み付け係数ではΔA/σ(A1)は最大にならず、本検出装置の方が、感度が良いことが分かる。
また、特許文献1に記載されている、光束の位置変化を検出する式の重み付け係数も同様にΔA/σ(A1)は最大にならず、本検出装置の方が、感度が良いことが分かる。
【0020】
例えば、光束が第1の入射位置にある状態が、物体がない状態であり、光束が第2の入射位置にある状態が、物体によって屈折した後の状態である場合には、物体による屈折を感度良く検出することができる。
【0021】
つぎに、第1の入射位置が既知であり、第2の入射位置が未知の場合について説明する。
つまり、第1の入射位置から第2の入射位置への位置変化の方向と位置変化量が未知の場合について説明する。
この場合、光束が第2の入射位置にある状態で複数回の検出を行い、各画素で検出される信号値の平均値を求め、この平均値を用いる事によって、S1、S2、S3、S4の値を求めることができない。
そこで、適当なS1、S2、S3、S4を設定し、式(1)を用いて演算を行う。
再度、前述とは異なる値のS1、S2、S3、S4を設定し、演算を行う。
このような処理を複数回繰り返すことにより、図3に示したような検出結果を複数得る。
この検出結果から、最もピークが際立っている検出結果を本検出装置で得た検出結果として採用する。
【0022】
また、第1の入射位置の検出回数の範囲(図3においては検出回数50回目以外)と、第2の入射位置の検出回数の範囲(図3においては検出回数50回目)が既知である場合、得た検出結果に対して、
第1の入射位置の時のAの値の標準偏差σ(A)と、
第1、第2の入射位置の時のAの値の平均値の差分ΔAとから、ΔA/σ(A)を計算し、この値が最大になる検出結果を本検出結果で得た検出結果として採用しても良い。
例えば、光束の入射位置を任意の位置に合わせる場合、本検出装置を利用することにより、精度良く合わせることができる。
光束が第1の入射位置にある状態を、光束が合わせる入射位置にある状態とし、光束が第2の入射位置にある状態を、光束が合わせる位置から変化した入射位置にある状態として、前述の検出を行う。
これにより、光束の合わせる位置からの位置の変化を感度良く検出することができる。
この検出結果を参照して、例えば検出器や光源の移動を行うことにより、光束の入射位置を任意の位置に精度よく合わせることができる。
【実施例】
【0023】
以下に、本発明の実施例について説明する。
本実施例においては、分割素子とX線領域の波長の光束を検出する検出器を用い、物体各点によるX線の屈折から像を得るX線撮像装置の構成例について、図4を用いて説明する。
本実施例のX線撮像装置においては、図4に示されるように、X線を発生させて物体403に対して照射するX線発生源としてのX線源401を備える。
X線源401は、ターゲットがMoのものを使用し、管電圧を40kV、管電流を20mAに設定した。
そして、このX線の光軸上に、分割素子402、検出器404が配置されている。
X線発生手段としてのX線源401から発生したX線は、X線の光軸方向であるZ方向と垂直な方向である、Y方向やX方向に空間的に分割され、物体403の一部分を透過する。
【0024】
各機器の配置として、X線源401から分割素子402の間の距離は157cm、分割素子402から物体403の間の距離は2cm、物体403から検出器404の間の距離は26cmとした。
分割素子402の模式図を図5に示す。分割素子の基材501はX線を遮蔽する効果を有し、X線の吸収率が高いPtのものを用いる。
この他にも、Au、Pb、Ta、Wやこれらの材料の化合物等を用いても良い。基材501には、X線を透過する円状、直径50μmの穴502がX軸方向に170μm、Y軸方向に170μmの間隔で周期的に形成されている。
また、穴502はX軸方向に260個、Y軸方向に26個形成されている。
穴502は、X線を透過する形態であれば、光学素子の基板501を貫通していなくても良い。
また、穴502は、円状のものであるが、例えば四角状のものであってもよい。分割素子402によって分割されたX線は、物体403によって屈折される。物体403を透過したX線は検出器404に照射される。検出器は、画素サイズが50μmのX線フラットパネル検出器を用いた。
この他にも、X線CCDカメラや直接変換型X線2次元検出器、X線ラインセンサ、X線TDI(Time delay integration)検出器などを用いても良い。
物体403と検出器404との間に、X線屈折レンズアレイを設けても良い。このX線屈折レンズアレイは、集光力を有する多数のX線屈折レンズが所定の周期で面内方向に配列されているものである。このX線屈折レンズアレイを用いれば、検出器404上のX線のスポット径を小さくすることができるため、X線の入射位置の変化に対するX線の強度変化が大きくなる。
【0025】
図6に、検出器404の模式図を示す。
検出器404は複数の画素601によって構成されている。分割素子402によって分割されたX線602は、X軸方向、Y軸方向に検出器における4画素の間隔で周期的に、複数の画素601にわたって入射する。
また、X線602は検出器404にX軸方向に260個、Y軸方向に26個入射する。それぞれのX線は、同じ画素に入射しないように離散的に入射する。
検出器404はこの照射されたX線の各画素における信号値を検出する。
また、分割素子402は、移動手段405を有する。移動手段405は、分割素子402のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の移動を行う機構を備える。検出器404により得たX線に関する情報はコンピュータ等の演算手段406により演算され、モニタ等の表示手段407に出力される。
ここで、各分割されたX線に対して番号をつける。検出器上には、X軸方向に260個、Y軸方向に26個の合計6760個の分割されたX線が検出器404に入射しており、1〜6760の番号hをX線に対してつける。
【0026】
図7に、X線の屈折による検出器上での入射位置の変化について説明する模式図を示す。
基準X線701(図内実線)は、物体403の存在しない状態の時の分割されたX線を示し、検出器404の画素601の複数の画素にわたって照射されている。
X線702(図内点線)は物体403を透過することによって屈折したX線を示している。
X線702は基準X線701に対して屈折によって検出器404への入射位置が変化する。
【0027】
図8に、物体が存在しない状態の時の、検出器404の一部分について説明する模式図を示す。
X線801は複数の画素にわたって入射するX線を表す。検出器404に入射する6760個のX線はX軸方向、Y軸方向に検出器における4画素の間隔で周期的に入射しており、各X線に対して同じ模式図となる。
ここで、図8の802で示される16画素に対して、1〜16の番号bを付ける。番号hのX線に対して、番号bで検出される信号値をIhbのように表す。
【0028】
本実施例の検出装置を用いて、物体各点によるX線の屈折から像を作成する方法について説明する。
まず、物体が存在する状態の時に検出を行い、各画素で検出される信号値をI2hbと表す。
つぎに、物体が存在しない状態の時に50回検出を行い、各画素で検出される信号値の平均値H1hbと標準偏差Nhbを演算する。
X線の物体に対する複素屈折率nは式(7)で表される。ここで、式(7)における実部は屈折に関係する項であり、虚部は吸収に関係する項である。
【0029】
物体による屈折角度は式(8)、式(9)を用いて求めることができる。ここで、θx、θyは被検知物による屈折のX方向、Y方向への屈折角度、tはX線が透過した物体の厚さである。
【0030】
物体の存在しない状態での分割されたX線の入射位置を第1の入射位置とする。物体によって屈折したX線の入射位置については、X線が物体各点を透過する事により、複数の入射位置が存在する。この複数の入射位置の中から、感度良く第1の入射位置からの位置変化を検出する入射位置を設定し、第2の入射位置とする。
本実施例においては、図4に示す物体403として、カプトンテープを選択した。ここでは、第2の入射位置を、カプトンテープの端部により屈折したX線の入射位置に設定した。
第1の入射位置を原点とした時、第2の入射位置のX方向の位置x2、Y方向の位置y2は式(10)、式(11)を用いて求めることができる。
ここで、Lは物体403から検出器404までの距離である。
【0031】
物体が存在しない状態の時に、X線が第2の入射位置に入射するように移動手段405を用いて、分割素子402を移動する。
つまり、X線がX軸方向にx2、Y軸方向にy2の位置に入射するように、分割素子402の位置を調整する。
この時に、複数回信号値の検出を行い、各画素で検出される信号値の平均値H2hbを演算する。Shb=H2hb−H1hbにより、Shbを演算する。
本実施例においては、物体が存在する状態の時に検出した信号値I2hbに対して、物体が存在しない状態の時に検出した信号値に基づいて求めたShbとNhbを用いて重み付け演算を行い、像を作成する。
式(12)を用いて、Ahの値を演算する。番号hが1〜6760のX線に対して演算を行う事により、6760個のAhの値が求められる。
ここで、Ahの値をコントラストとし、分割素子の穴の位置に対応させて2次元的にAhの値をプロットする事により6760画素の像を作成する。この像が本実施例で得る像となる。
【0032】
本検出装置を用いて像を作成し、像の一部分Pのラインプロファイルを図9に示した。
ここで、Pとは作成した像内における、図10に示したカプトンテープ1001の端部をまたぐ、直線1002の部分である。
図9は10画素分のラインプロファイルであるが、X=5画素にカプトンテープの端部による屈折のピークが見られる。
【0033】
一方、比較例として、特許文献1に記載されている方法で光束の入射位置を演算し、演算値に基づいて像を作成した。
特許文献1では、座標値に信号値を重みとして平均値を求め、検出器に入射した光束の入射位置を演算する。
図8に示した画素802の座標値を原点とし、各画素の座標値を(xhb、yhb)と表す。
xhb、yhbは0〜3の値を持つ。番号hのX線の入射位置(Txh、Tyh)を式(13)、式(14)により演算する。
式(15)により、原点からX線の入射位置の間の距離Bhを演算する。番号hが1〜6760のX線に対して演算を行う事により、6760個のBhの値が求められる。
ここで、Bhの値をコントラストとし、分割素子の穴の位置に対応させて2次元的にBhの値をプロットすることにより6760画素の像を作成する。
【0034】
本実施例と同様に、比較例のものにおける像の一部分Pのラインプロファイルを図11に示した。
カプトンテープの端部による屈折のピークは見られない。
図9と図11を比較することにより、本発明の方が、X線の屈折による検出器上の入射位置の変化を感度良く検出できることが分かる。
【符号の説明】
【0035】
101:光束
102:検出器
103:演算手段
104:表示手段
201:画素
202:画素
203:画素
204:画素
205:光束
【技術分野】
【0001】
本発明は、光束の位置変化検出装置に関し、特に、光束を検出器で検出してその光束の検出器上での位置の変化を感度良く検出する光束の位置変化検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光束を物体表面に投光し、光束の位置を距離位置等の計測点とすることが測量技術で開発されている。
このような測量技術の一つとして、特許文献1では長距離の投光では拡がって大きな面積を有する光束となることを利用し、この拡がった光束の位置を演算する方法が提案されている。
この方法では、座標値に信号値又はその増加函数を重みとして平均値を求め、光束の位置を演算する。
そして、光束の位置の変化を検出する場合、光束の位置を演算し、位置の変化前後での演算値の差により検出する。
【0003】
一方、特許文献2では、X線の物体による屈折効果を利用したX線撮像方法が提案されている。
この方法では、X線源から発生したX線を物体に照射し、物体からの透過X線をX線光学手段によって、検出器上の2画素以上の画素領域にまたがり、かつ離散的にX線を集光する。
物体によるX線の屈折により、物体がある状態と物体が無い状態では、検出器へのX線の入射位置が異なる。
隣接する2画素間の出力差と出力和の比を、物体のない状態と物体のある状態で比較することにより、物体によるX線の屈折効果に関する像を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−185520号公報
【特許文献2】特開2008−200358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のものにおける方法では、光束の検出器への入射位置の変化が微小であった場合、その変化を感度良く検出する上で課題を有している。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、光束の検出器への入射位置の変化が微小な場合においても感度良く光束の位置の変化を検出することが可能となる光束の位置変化検出装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光束の位置変化検出装置は、光束を検出する検出器を備え、該検出器で検出された光束の検出器上での位置の変化を検出する光束の位置変化検出装置であって、
前記検出器は、2つ以上の画素を有し、前記光束の光照射量を信号値として検出する検出器によって構成され、
前記検出器で検出された前記信号値に基づき、前記2つ以上の画素に入射する光束が第1の入射位置から第2の入射位置へ変化する位置変化を検出するための演算を行う演算手段を備え、
前記演算手段は、重み付け係数S/N2をIに乗じた演算値に基づいて演算するように構成されていることを特徴とする。
但し、
S:前記位置変化によって生じると想定される前記検出器の各画素における信号値の変化量
N:前記光束が前記第1の入射位置にあるときの前記検出器の各画素で検出される信号値の標準偏差
I:前記検出器の各画素で検出される信号値
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光束の検出器への入射位置の変化が微小な場合においても感度良く光束の位置の変化を検出することが可能となる光束の位置変化検出装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態における検出装置の構成例を説明する図。
【図2】本発明の実施形態における検出器に入射する光束について説明する図。
【図3】本発明の実施形態における検出結果の例について説明する図。
【図4】本発明の実施例における検出装置の構成例を説明する図。
【図5】本発明の実施例における分割素子について説明する図。
【図6】本発明の実施例における検出器について説明する図。
【図7】本発明の実施例におけるX線の入射位置の変化について説明する図。
【図8】本発明の実施例における検出器の一部について説明する図。
【図9】本発明の実施例における光束の位置変化検出装置を用いて作成した像の一部分のラインプロファイルについて説明する図。
【図10】本発明の実施例における像の一部分について説明する図。
【図11】特許文献1の演算方法を利用して作成した像の一部分のラインプロファイルについて説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態では、1つの光束の検出器への入射位置が、第1の入射位置から第2の入射位置に変化した時の位置変化を検出する光束の位置変化検出装置の構成例について、図1を用いて説明する。
本実施形態の光束の位置変化検出装置は、図1に示すように、光束101が検出器102に入射するように構成されている。
そして、この検出器102の出力はコンピュータ等の演算手段103に接続され、演算手段103の出力はモニタやプリンタ等の表示手段104に接続されている。
光束101が入射する検出器102は、例えばCCDカメラ等から選択される。また、検出器に入射する光束101は、例えばレーザー投光器で発生したレーザー光や自然光等に適用できる。
ここで、本実施形態における光束の位置変化検出装置は、2つ以上の画素を有し、前記光束の光照射量を信号値として検出する検出器と、演算手段を備え、検出器で検出された光束の検出器上での位置の変化を検出するように構成されている。
そして、上記演算手段は、検出器で検出された上記信号値に基づき、2つ以上の前記画素に入射する光束が第1の入射位置から第2の入射位置へ変化する位置変化を検出するための演算を行う。
この演算は、重み付け係数S/N2をIに乗じた演算値に基づいて行われる。
【0011】
但し、
S:前記位置変化によって生じると想定される前記検出器の各画素における信号値の変化量、
N:前記光束が前記第1の入射位置にあるときの前記検出器の各画素で検出される信号値の標準偏差、
I:前記検出器の各画素で検出される信号値、
である。
【0012】
図2は、画素201、202、203、204の4画素にわたって光束205が入射するようにされた構成例について説明する図である。
この光束205は、円状であるが、例えば四角状のものであってもよい。
以下に、さらに詳細に説明すると、上記演算手段によって、具体的には、つぎように演算が行われる。
光束205が第1の入射位置にある状態で複数回の検出を行うことにより、画素201、画素202、画素203、画素204で検出される信号値の標準偏差N1、N2、N3、N4を演算する。
光束が第1の入射位置から第2の入射位置に変化することによって生じると想定される画素201、画素202、画素203、画素204で検出される信号値の変化量をS1、S2、S3、S4とする。
例えば、光束が第1の入射位置にある状態で複数回の検出を行うことにより、画素201、画素202、画素203、画素204で検出される信号値の平均値H11、H12、H13、H14と、
光束が第2の入射位置にある状態で複数回の検出を行うことにより、画素201、画素202、画素203、画素204で検出される信号値の平均値H21、H22、H23、H24と、を演算する。
そして、S1=H11−H21、S2=H12−H22、S3=H13−H23、S4=H14−H24から、信号値の変化量を求める。
光束が第1、第2の入射位置にある状態は、検出器や光源の移動等により、検出器上の光束の入射位置を変化させて実現する。
また、物体による屈折を利用して、光束を屈折させ、検出器上の光束の入射位置を変化させて実現することも可能である。
【0013】
本実施形態の検出装置においては、このようにして取得した、各画素で検出される信号値の標準偏差Nと、光束が第1の入射位置から第2の入射位置に変化することによって生じると想定される各画素で検出される信号値の変化量Sを用いる。そして、各画素で検出される信号値に対して重み付けを行う。
画素201、画素202、画素203、画素204の信号値に対する重みはS1/N12、S2/N22、S3/N32、S4/N42となる。
次に、光束が検出器に入射している状態で、画素201、画素202、画素203、画素204で検出される信号値I1、I2、I3、I4を検出する。
式(1)によってAの値を演算し、表示手段104に演算結果を表示する。
【0014】
図3のグラフは、前述の演算結果を説明するために、100回の計測例を、検出回数50回目以外は光束が第1の入射位置にあり、検出回数50回目では光束が第2の入射位置にあるように、シミュレーションを用いてデータ列を作成した。
本実施形態の検出装置では、一例として、図3のような検出結果が得られた。
【0015】
つぎに、本検出装置により、第1の入射位置から第2の入射位置への光束の位置の変化を感度良く検出できる理由について説明する。
式(1)における、I1、I2、I3、I4に対する重み付け係数をk1、k2、k3、k4とし、式(2)によってAの値を演算するとする。
【0016】
光束が第1の入射位置にある時のI1、I2、I3、I4を、式(2)に代入した時の演算値をA1とすると、誤差の伝搬式から、A1の標準偏差σ(A1)は次の式(3)として表すことが出来る。このσ(A1)の値は、図3における検出回数50回目以外のAの標準偏差に対応している。
【0017】
光束が第1の入射位置から第2の入射位置に変化した時のAの変化量ΔAは次の式(4)として表す事が出来る。このΔAの値は、図3における検出回数50回目以外の時のAと検出回数50回目の時のAの差分に対応している。
【0018】
ΔA/σ(A1)が大きい程、第1の入射位置から第2の入射位置への光束の位置の変化は検出しやすいと考えられる。
【0019】
式(5)を解く事によって、ΔA/σ(A1)を最大にするk1、k2、k3、k4を算出することができ、その条件はk1=S1/N12、k2=S2/N22、k3=S3/N32、k4=S4/N42となる。
これらの重み付け係数を式(2)に代入すると、式(1)になる。これにより、本検出装置を用いることにより、ΔA/σ(A1)の値が最大となり、第1の入射位置から第2の入射位置への光束の位置変化を感度良く検出できることが分かる。
なお、本実施形態において、特許文献2に記載されている、光束の位置変化を検出する式は式(6)のように表すことができる。
ここで、Mは(I1+I2+I3+I4)の値である。
I1、I2、I3、I4に対する重み付け係数はそれぞれ、1/M、1/M、−1/M、−1/Mである。この重み付け係数は、前述で説明したΔA/σ(A1)を最大とする重み付け係数S1/N12、S2/N22、S3/N32、S4/N42と等しくならない。
よって、特許文献2に記載されている、光束の位置変化を検出する式の重み付け係数ではΔA/σ(A1)は最大にならず、本検出装置の方が、感度が良いことが分かる。
また、特許文献1に記載されている、光束の位置変化を検出する式の重み付け係数も同様にΔA/σ(A1)は最大にならず、本検出装置の方が、感度が良いことが分かる。
【0020】
例えば、光束が第1の入射位置にある状態が、物体がない状態であり、光束が第2の入射位置にある状態が、物体によって屈折した後の状態である場合には、物体による屈折を感度良く検出することができる。
【0021】
つぎに、第1の入射位置が既知であり、第2の入射位置が未知の場合について説明する。
つまり、第1の入射位置から第2の入射位置への位置変化の方向と位置変化量が未知の場合について説明する。
この場合、光束が第2の入射位置にある状態で複数回の検出を行い、各画素で検出される信号値の平均値を求め、この平均値を用いる事によって、S1、S2、S3、S4の値を求めることができない。
そこで、適当なS1、S2、S3、S4を設定し、式(1)を用いて演算を行う。
再度、前述とは異なる値のS1、S2、S3、S4を設定し、演算を行う。
このような処理を複数回繰り返すことにより、図3に示したような検出結果を複数得る。
この検出結果から、最もピークが際立っている検出結果を本検出装置で得た検出結果として採用する。
【0022】
また、第1の入射位置の検出回数の範囲(図3においては検出回数50回目以外)と、第2の入射位置の検出回数の範囲(図3においては検出回数50回目)が既知である場合、得た検出結果に対して、
第1の入射位置の時のAの値の標準偏差σ(A)と、
第1、第2の入射位置の時のAの値の平均値の差分ΔAとから、ΔA/σ(A)を計算し、この値が最大になる検出結果を本検出結果で得た検出結果として採用しても良い。
例えば、光束の入射位置を任意の位置に合わせる場合、本検出装置を利用することにより、精度良く合わせることができる。
光束が第1の入射位置にある状態を、光束が合わせる入射位置にある状態とし、光束が第2の入射位置にある状態を、光束が合わせる位置から変化した入射位置にある状態として、前述の検出を行う。
これにより、光束の合わせる位置からの位置の変化を感度良く検出することができる。
この検出結果を参照して、例えば検出器や光源の移動を行うことにより、光束の入射位置を任意の位置に精度よく合わせることができる。
【実施例】
【0023】
以下に、本発明の実施例について説明する。
本実施例においては、分割素子とX線領域の波長の光束を検出する検出器を用い、物体各点によるX線の屈折から像を得るX線撮像装置の構成例について、図4を用いて説明する。
本実施例のX線撮像装置においては、図4に示されるように、X線を発生させて物体403に対して照射するX線発生源としてのX線源401を備える。
X線源401は、ターゲットがMoのものを使用し、管電圧を40kV、管電流を20mAに設定した。
そして、このX線の光軸上に、分割素子402、検出器404が配置されている。
X線発生手段としてのX線源401から発生したX線は、X線の光軸方向であるZ方向と垂直な方向である、Y方向やX方向に空間的に分割され、物体403の一部分を透過する。
【0024】
各機器の配置として、X線源401から分割素子402の間の距離は157cm、分割素子402から物体403の間の距離は2cm、物体403から検出器404の間の距離は26cmとした。
分割素子402の模式図を図5に示す。分割素子の基材501はX線を遮蔽する効果を有し、X線の吸収率が高いPtのものを用いる。
この他にも、Au、Pb、Ta、Wやこれらの材料の化合物等を用いても良い。基材501には、X線を透過する円状、直径50μmの穴502がX軸方向に170μm、Y軸方向に170μmの間隔で周期的に形成されている。
また、穴502はX軸方向に260個、Y軸方向に26個形成されている。
穴502は、X線を透過する形態であれば、光学素子の基板501を貫通していなくても良い。
また、穴502は、円状のものであるが、例えば四角状のものであってもよい。分割素子402によって分割されたX線は、物体403によって屈折される。物体403を透過したX線は検出器404に照射される。検出器は、画素サイズが50μmのX線フラットパネル検出器を用いた。
この他にも、X線CCDカメラや直接変換型X線2次元検出器、X線ラインセンサ、X線TDI(Time delay integration)検出器などを用いても良い。
物体403と検出器404との間に、X線屈折レンズアレイを設けても良い。このX線屈折レンズアレイは、集光力を有する多数のX線屈折レンズが所定の周期で面内方向に配列されているものである。このX線屈折レンズアレイを用いれば、検出器404上のX線のスポット径を小さくすることができるため、X線の入射位置の変化に対するX線の強度変化が大きくなる。
【0025】
図6に、検出器404の模式図を示す。
検出器404は複数の画素601によって構成されている。分割素子402によって分割されたX線602は、X軸方向、Y軸方向に検出器における4画素の間隔で周期的に、複数の画素601にわたって入射する。
また、X線602は検出器404にX軸方向に260個、Y軸方向に26個入射する。それぞれのX線は、同じ画素に入射しないように離散的に入射する。
検出器404はこの照射されたX線の各画素における信号値を検出する。
また、分割素子402は、移動手段405を有する。移動手段405は、分割素子402のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の移動を行う機構を備える。検出器404により得たX線に関する情報はコンピュータ等の演算手段406により演算され、モニタ等の表示手段407に出力される。
ここで、各分割されたX線に対して番号をつける。検出器上には、X軸方向に260個、Y軸方向に26個の合計6760個の分割されたX線が検出器404に入射しており、1〜6760の番号hをX線に対してつける。
【0026】
図7に、X線の屈折による検出器上での入射位置の変化について説明する模式図を示す。
基準X線701(図内実線)は、物体403の存在しない状態の時の分割されたX線を示し、検出器404の画素601の複数の画素にわたって照射されている。
X線702(図内点線)は物体403を透過することによって屈折したX線を示している。
X線702は基準X線701に対して屈折によって検出器404への入射位置が変化する。
【0027】
図8に、物体が存在しない状態の時の、検出器404の一部分について説明する模式図を示す。
X線801は複数の画素にわたって入射するX線を表す。検出器404に入射する6760個のX線はX軸方向、Y軸方向に検出器における4画素の間隔で周期的に入射しており、各X線に対して同じ模式図となる。
ここで、図8の802で示される16画素に対して、1〜16の番号bを付ける。番号hのX線に対して、番号bで検出される信号値をIhbのように表す。
【0028】
本実施例の検出装置を用いて、物体各点によるX線の屈折から像を作成する方法について説明する。
まず、物体が存在する状態の時に検出を行い、各画素で検出される信号値をI2hbと表す。
つぎに、物体が存在しない状態の時に50回検出を行い、各画素で検出される信号値の平均値H1hbと標準偏差Nhbを演算する。
X線の物体に対する複素屈折率nは式(7)で表される。ここで、式(7)における実部は屈折に関係する項であり、虚部は吸収に関係する項である。
【0029】
物体による屈折角度は式(8)、式(9)を用いて求めることができる。ここで、θx、θyは被検知物による屈折のX方向、Y方向への屈折角度、tはX線が透過した物体の厚さである。
【0030】
物体の存在しない状態での分割されたX線の入射位置を第1の入射位置とする。物体によって屈折したX線の入射位置については、X線が物体各点を透過する事により、複数の入射位置が存在する。この複数の入射位置の中から、感度良く第1の入射位置からの位置変化を検出する入射位置を設定し、第2の入射位置とする。
本実施例においては、図4に示す物体403として、カプトンテープを選択した。ここでは、第2の入射位置を、カプトンテープの端部により屈折したX線の入射位置に設定した。
第1の入射位置を原点とした時、第2の入射位置のX方向の位置x2、Y方向の位置y2は式(10)、式(11)を用いて求めることができる。
ここで、Lは物体403から検出器404までの距離である。
【0031】
物体が存在しない状態の時に、X線が第2の入射位置に入射するように移動手段405を用いて、分割素子402を移動する。
つまり、X線がX軸方向にx2、Y軸方向にy2の位置に入射するように、分割素子402の位置を調整する。
この時に、複数回信号値の検出を行い、各画素で検出される信号値の平均値H2hbを演算する。Shb=H2hb−H1hbにより、Shbを演算する。
本実施例においては、物体が存在する状態の時に検出した信号値I2hbに対して、物体が存在しない状態の時に検出した信号値に基づいて求めたShbとNhbを用いて重み付け演算を行い、像を作成する。
式(12)を用いて、Ahの値を演算する。番号hが1〜6760のX線に対して演算を行う事により、6760個のAhの値が求められる。
ここで、Ahの値をコントラストとし、分割素子の穴の位置に対応させて2次元的にAhの値をプロットする事により6760画素の像を作成する。この像が本実施例で得る像となる。
【0032】
本検出装置を用いて像を作成し、像の一部分Pのラインプロファイルを図9に示した。
ここで、Pとは作成した像内における、図10に示したカプトンテープ1001の端部をまたぐ、直線1002の部分である。
図9は10画素分のラインプロファイルであるが、X=5画素にカプトンテープの端部による屈折のピークが見られる。
【0033】
一方、比較例として、特許文献1に記載されている方法で光束の入射位置を演算し、演算値に基づいて像を作成した。
特許文献1では、座標値に信号値を重みとして平均値を求め、検出器に入射した光束の入射位置を演算する。
図8に示した画素802の座標値を原点とし、各画素の座標値を(xhb、yhb)と表す。
xhb、yhbは0〜3の値を持つ。番号hのX線の入射位置(Txh、Tyh)を式(13)、式(14)により演算する。
式(15)により、原点からX線の入射位置の間の距離Bhを演算する。番号hが1〜6760のX線に対して演算を行う事により、6760個のBhの値が求められる。
ここで、Bhの値をコントラストとし、分割素子の穴の位置に対応させて2次元的にBhの値をプロットすることにより6760画素の像を作成する。
【0034】
本実施例と同様に、比較例のものにおける像の一部分Pのラインプロファイルを図11に示した。
カプトンテープの端部による屈折のピークは見られない。
図9と図11を比較することにより、本発明の方が、X線の屈折による検出器上の入射位置の変化を感度良く検出できることが分かる。
【符号の説明】
【0035】
101:光束
102:検出器
103:演算手段
104:表示手段
201:画素
202:画素
203:画素
204:画素
205:光束
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光束を検出する検出器を備え、該検出器で検出された光束の検出器上での位置の変化を検出する光束の位置変化検出装置であって、
前記検出器は、2つ以上の画素を有し、前記光束の光照射量を信号値として検出する検出器によって構成され、
前記検出器で検出された前記信号値に基づき、前記2つ以上の画素に入射する光束が第1の入射位置から第2の入射位置へ変化する位置変化を検出するための演算を行う演算手段を備え、
前記演算手段は、重み付け係数S/N2をIに乗じた演算値に基づいて演算するように構成されていることを特徴とする光束の位置変化検出装置。
但し、
S:前記位置変化によって生じると想定される前記検出器の各画素における信号値の変化量
N:前記光束が前記第1の入射位置にあるときの前記検出器の各画素で検出される信号値の標準偏差
I:前記検出器の各画素で検出される信号値
【請求項2】
前記検出器は、複数の光束が同じ前記画素に入射しないように離散的に入射するように構成され、
前記演算手段は、前記複数の光束に対して前記位置変化を検出するように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光束の位置変化検出装置。
【請求項3】
前記光束を検出する検出器は、X線領域の波長の光束を検出する検出器であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光束の位置変化検出装置。
【請求項1】
光束を検出する検出器を備え、該検出器で検出された光束の検出器上での位置の変化を検出する光束の位置変化検出装置であって、
前記検出器は、2つ以上の画素を有し、前記光束の光照射量を信号値として検出する検出器によって構成され、
前記検出器で検出された前記信号値に基づき、前記2つ以上の画素に入射する光束が第1の入射位置から第2の入射位置へ変化する位置変化を検出するための演算を行う演算手段を備え、
前記演算手段は、重み付け係数S/N2をIに乗じた演算値に基づいて演算するように構成されていることを特徴とする光束の位置変化検出装置。
但し、
S:前記位置変化によって生じると想定される前記検出器の各画素における信号値の変化量
N:前記光束が前記第1の入射位置にあるときの前記検出器の各画素で検出される信号値の標準偏差
I:前記検出器の各画素で検出される信号値
【請求項2】
前記検出器は、複数の光束が同じ前記画素に入射しないように離散的に入射するように構成され、
前記演算手段は、前記複数の光束に対して前記位置変化を検出するように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光束の位置変化検出装置。
【請求項3】
前記光束を検出する検出器は、X線領域の波長の光束を検出する検出器であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光束の位置変化検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−173203(P2012−173203A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37140(P2011−37140)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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