説明

光架橋性ポリロタキサン、該光架橋性ポリロタキサンを有する組成物、及び該組成物由来の架橋体、並びにこれらの製造方法

【課題】耐傷性、低ヒステリシスロスなどを有する光架橋性ポリロタキサン、該光架橋性ポリロタキサンを有する組成物など及びそれら組成物からの架橋体、並びにそれらの製造方法の提供。
【解決手段】環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる擬ポリロタキサンの両端に前記環状分子が脱離しないように封鎖基を配置してなるポリロタキサンの環状分子が−M−Y(Mは下記式IIで表され、Xは、炭素数1〜8の直鎖状アルキレン基などを示し、nは平均値1〜10であり、Yは、光重合性基を有する基である)で表される基を有する光架橋性ポリロタキサン、該光架橋性ポリロタキサンを有する組成物など及び該組成物由来の架橋体、並びにそれらの製造方法により、上記課題を解決する。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリロタキサンを構成する環状分子が光架橋性基を有する光架橋性ポリロタキサン、該光架橋性ポリロタキサンのみから本質的になる組成物、該光架橋性ポリロタキサンを有する組成物、及びそれらの組成物由来の架橋体、並びにこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリロタキサンは、それが有する粘弾特性などにより、種々の応用が考えられ、種々の材料が開発されている。
特許文献1は、ポリロタキサンとポリロタキサン以外のポリマー、即ち他のポリマーの少なくとも一部とが環状分子を介して結合する材料を開示する。具体的には、特許文献1は、架橋剤添加によって、ポリロタキサンと他のポリマーとを結合させる実施例;及び光重合性基をポリロタキサン及び他のポリマーに付与し、紫外線照射により両者を結合する実施例;を開示する。
【0003】
特許文献2は、ポリロタキサン分子同士またはポリロタキサン分子と他のポリマーが光架橋反応により結合する材料を開示する。具体的には、特許文献2は、ポリロタキサンを親水性または水溶性とし(ヒドロキシプロピル化ポリロタキサン、メチル化ポリロタキサンなど)、さらに光架橋基(光重合性基)を導入し、これらのポリロタキサンの水溶液に紫外線照射して透明性の高いゲル、架橋体を開示する。
【0004】
特許文献3は、ポリロタキサンのシクロデキストリンの水酸基を疎水基で修飾されてなる疎水性ポリロタキサンを開示する。特に、ε-カプロラクトンでシクロデキストリンを修飾し、ポリロタキサンの溶媒、例えばトルエン、酢酸エチル、アセトンへの溶解性を改良することを目的とすることを開示する。ただし、実施例における疎水性ポリロタキサンは、ε-カプロラクトンによる修飾度は低く、0.02程度のものしか開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2005−095493号公報。
【特許文献2】WO2006−088200号公報。
【特許文献3】WO2007−026578号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2は、光架橋によりポリロタキサンと他のポリマーとを架橋させることを開示するが、得られる架橋体の特性については、単にハイドロゲルの粘弾性や光学特性を改善することのみであり、その他の特性については何ら開示されていない。
また、特許文献3は、シクロデキストリンの水酸基を疎水基で修飾されてなる疎水性ポリロタキサンを開示し、溶媒への溶解性について改善することを開示するが、光架橋については一切開示も示唆もされていない。
さらには、一般のポリアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ゴムなどの材料において、特に、変形を連続的に繰り返す環境で使用される場合(例えば、印刷版、塗料、電気機器のロール部品、緩衝材など)、機械エネルギーの一部が熱で損失すること(ヒステリシスロス)を抑えることで、伸縮後の小さな残存歪、繰り返し耐性、劣化の抑制などの向上が要求されるが、まだ不十分である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明の目的は、先行技術、特に特許文献1及び2並びに特許文献3からは予期し得ない特性、例えば耐傷性、低ヒステリシスロスなどを有する、光架橋性ポリロタキサン、該光架橋性ポリロタキサンのみから本質的になる組成物、該光架橋性ポリロタキサンを有する組成物、それら組成物からの架橋体を提供することにある。
また、本発明の目的は、上記目的に加えて、又は上記目的以外に、上記の特性を有する、光架橋性ポリロタキサンの製造方法、該光架橋性ポリロタキサンのみから本質的になる組成物の製造方法、該光架橋性ポリロタキサンを有する組成物の製造方法、それら組成物からの架橋体の製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明者らは、次の発明を見出した。
また、本発明者らは、後述の光架橋性ポリロタキサンを用いることにより、本来ポリロタキサンが有する粘弾性及びそれにより生じうる柔軟性及び/又は伸縮性のみならず、耐傷性、低ヒステリシスロスなどにおいて優れた特性を示す架橋体及び該架橋体用組成物を提供できることを見出した。
【0009】
<1> (A)光架橋性ポリロタキサン;のみから本質的になる光架橋組成物であって、
該光架橋性ポリロタキサンは、ポリロタキサンの環状分子が下記式Iで表される基を有し、
該ポリロタキサンは、環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる擬ポリロタキサンの両端に環状分子が脱離しないように封鎖基を配置してなる、上記組成物。
式I中、Mは下記式IIで表され、
Xは、炭素数1〜8の直鎖状アルキレン基又はアルケニレン基;炭素数3〜20の分岐鎖状アルキレン基又はアルケニレン基;前記アルキレン基又はアルケニレン基の一部が−O−結合または−NH−結合で置換されてなるアルキレン基又はアルケニレン基;または前記アルキレン基の水素の一部が、水酸基、カルボキシル基、アシル基、フェニル基、ハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されてなるアルキレン基;であり、nは平均値1〜10、好ましくは2.0〜9.0、より好ましくは3.0〜6.0であり、
Yは、光重合性基を有する基である。
【0010】
【化1】

【0011】
<2> (A)光架橋性ポリロタキサン;を有する光架橋組成物であって、
該光架橋性ポリロタキサンは、ポリロタキサンの環状分子が上記式I(式IのM及びYは上記と同じ定義を有する)で表される基を有し、
ポリロタキサンは、環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる擬ポリロタキサンの両端に前記環状分子が脱離しないように封鎖基を配置してなる、上記組成物。
<3> 上記<2>において、該組成物はさらに(B)光架橋性化合物;を有するのがよく、
該(B)光架橋性化合物は、下記式III’−1〜III’−4(式中、R33及びR34は各々独立に、H又はCHであり、m2は0又は1であり、*は、該化合物の重合体と直接結合するか又は第2のスペーサ基を介して該重合体と結合する箇所を示す)からなるY’群から選ばれる少なくとも1種の基を、該化合物の分子中に、少なくとも2個有する重合体であるのがよい。
【0012】
【化2】

【0013】
<4> 上記<1>〜<3>のいずれかにおいて、Mが、ラクトンモノマー及び/又は環状カーボネートモノマー由来の重合体であるのがよい。
<5> 上記<1>〜<4>のいずれかにおいて、Yが、下記式III−1〜III−4(式中、R31及びR32は各々独立に、H又はCHであり、m1は0又は1であり、*は式IのMと直接結合するか又は第1のスペーサ基を介してMと結合する箇所を示す)からなる群から選ばれる基を少なくとも1種有するのがよい。
【0014】
【化3】

【0015】
<6> 上記<1>〜<5>のいずれかにおいて、Mがラクトンからの開環重合体であり、Yが式III−1を有する基であるのがよい。
<7> 上記<6>において、Mのラクトンがε-カプロラクトンであり、Yがアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有するのがよく、例えばYがアクリロイルオキシエチルカルバモイル基及び/又はメタクリロイルオキシエチルカルバモイル基であるのがよい。
【0016】
<8> 上記<3>〜<7>のいずれかにおいて、(B)光架橋性化合物の重合体は、その平均重量分子量が300〜1万、好ましくは350〜8000、より好ましくは400〜5,000であるのがよい。
<9> 上記<3>〜<8>のいずれかにおいて、(B)光架橋性化合物は、下記式IV−1〜IV−4からなる群から選択される1種であるのがよい。
式IV−1〜IV−4中、
41は、H又はCHであり、
42は、炭素数1〜8の直鎖状アルキル基又はアルケニル基、炭素数3〜20の分岐鎖状アルキル基又はアルケニル基、前記アルキル基又はアルケニル基の一部が−O−結合または−NH−結合で置換されてなるアルキル基又はアルケニル基、または前記アルキル基又はアルケニル基の水素の一部が、水酸基、カルボキシル基、アシル基、フェニル基、ハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されてなるアルキル基又はアルケニル基であり、
43は、炭素数1〜8の直鎖状アルキレン基又はアルケニレン基、炭素数3〜20の分岐鎖状アルキレン基又はアルケニレン基、もしくは−Si(CH−基であり、
44は、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、イソシアヌル酸、ジイソシアヌル酸、トリアジン、ベンゼン、またはそれらの誘導体を有する基であり、
M’は、重合体部を有する基であり、
Y’は、上述のY’群から選ばれる少なくとも1種の基を示し、
m2’は0又は1であり、
Zは、各々独立に、単なる結合又は二価の第2のスペーサ基を示し、
r’は3〜6、好ましくは3〜4、より好ましくは3の整数を示す。
また、括弧の記号()は、繰返し単位であることを示す。
【0017】
【化4】

【0018】
<10> 上記<1>〜<9>のいずれかにおいて、環状分子は、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンからなる群から選択されるのがよい。
<11> 上記<1>〜<10>のいずれかにおいて、直鎖状分子が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、セルロース系樹脂(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、でんぷん等及び/またはこれらの共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびその他オレフィン系単量体との共重合樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル−スチレン共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートや(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合樹脂などのアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等;及びこれらの誘導体又は変性体、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアニリン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ナイロンなどのポリアミド類、ポリイミド類、ポリイソプレン、ポリブタジエンなどのポリジエン類、ポリジメチルシロキサンなどのポリシロキサン類、ポリスルホン類、ポリイミン類、ポリ無水酢酸類、ポリ尿素類、ポリスルフィド類、ポリフォスファゼン類、ポリケトン類、ポリフェニレン類、ポリハロオレフィン類、並びにこれらの誘導体からなる群から選ばれるのがよく、例えばポリエチレングリコール、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール及びポリビニルメチルエーテルからなる群から選ばれるのがよく、より具体的にはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、及びポリプロピレンからなる群から選ばれるのがよく、特にポリエチレングリコールであるのがよい。
【0019】
<12> 上記<1>〜<11>のいずれかにおいて、直鎖状分子は、その分子量が3,000以上、好ましくは5,000〜100,000、より好ましくは10,000〜50,000であるのがよい。
<13> 上記<1>〜<12>のいずれかにおいて、封鎖基が、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、シルセスキオキサン類、ピレン類、置換ベンゼン類(置換基として、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、スルホニル、カルボキシル、アミノ、フェニルなどを挙げることができるがこれらに限定されない。置換基は1つ又は複数存在してもよい。)、置換されていてもよい多核芳香族類(置換基として、上記と同じものを挙げることができるがこれらに限定されない。置換基は1つ又は複数存在してもよい。)、及びステロイド類からなる群から選ばれるのがよい。なお、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、シルセスキオキサン類、及びピレン類からなる群から選ばれるのが好ましく、より好ましくはアダマンタン基類又はトリチル基類であるのがよい。
【0020】
<14> 上記<1>〜<13>のいずれかにおいて、環状分子がα−シクロデキストリン由来であり、直鎖状分子がポリエチレングリコールであるのがよい。
<15> 上記<1>〜<14>のいずれかにおいて、環状分子が直鎖状分子により串刺し状に包接される際に環状分子が最大限に包接される量を1とした場合、環状分子が0.001〜0.6、好ましくは0.01〜0.5、より好ましくは0.05〜0.4の量で直鎖状分子に串刺し状に包接されるのがよい。
【0021】
<16> 上記<1>及び<10>〜<15>のいずれかに記載される組成物由来の架橋体。
<17> 上記<2>及び<10>〜<15>のいずれかに記載される組成物由来の架橋体。
<18> 上記<2>〜<15>のいずれかに記載される組成物由来の架橋体。
<19> 上記<3>〜<15>のいずれかに記載される組成物由来の架橋体。
【0022】
<20> 上記<16>〜<19>のいずれかにおいて、架橋体は、光照射により、(A)架橋性ポリロタキサンのYを介して架橋されるのがよい。
<21> 上記<19>において、架橋体は、光照射により、(A)架橋性ポリロタキサンのY、及び(B)架橋性化合物のY’が少なくとも架橋されるのがよい。
<22> 上記<16>〜<21>のいずれかにおいて、架橋体は、ヒステリシスロスが25%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下であるのがよい。
【0023】
<23> (A)光架橋性ポリロタキサンの製造方法であって、
(1) 環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる擬ポリロタキサンの両端に環状分子が脱離しないように封鎖基を配置してなるポリロタキサンを準備する工程;
(2) ポリロタキサンの環状分子の一部又は全部に下記式II(式中、Xは、炭素数1〜8の直鎖状アルキレン基又はアルケニレン基;炭素数3〜20の分岐鎖状アルキレン基又はアルケニレン基;前記アルキレン基又はアルケニレン基の一部が−O−結合または−NH−結合で置換されてなるアルキレン基又はアルケニレン基;または前記アルキレン基の水素の一部が、水酸基、カルボキシル基、アシル基、フェニル基、ハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されてなるアルキレン基;であり、nは平均値1〜10、好ましくは2.0〜9.0、より好ましくは3.0〜6.0である)
で表される−M−を導入する工程;
(3) Mに光重合性基を有する基Yを導入して−M−Yを形成する工程;
を有する、上記方法。
【0024】
【化5】

【0025】
<24> (A)光架橋性ポリロタキサン;及び(B)光架橋性化合物;を有する組成物の製造方法であって、
(i) (A)光架橋性ポリロタキサンを準備する工程;
(ii) (B)光架橋性化合物を準備する工程;及び
(iii) (A)光架橋性ポリロタキサン及び(B)光架橋性化合物を混合して、それらを有する組成物を得る工程;
を有し、
工程i)は、
(1) 環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる擬ポリロタキサンの両端に環状分子が脱離しないように封鎖基を配置してなるポリロタキサンを準備する工程;
(2) ポリロタキサンの環状分子の一部又は全部に上記式IIで表される−M−を導入する工程;及び
(3) Mに光重合性基を有する基Yを導入して−M−Yを形成する工程;
を有する、上記方法。
【0026】
<25> (A)光架橋性ポリロタキサン;及び(B)光架橋性化合物;を有する組成物からの架橋体の製造方法であって、
(i) (A)光架橋性ポリロタキサンを準備する工程;
(ii) (B)光架橋性化合物を準備する工程;
(iii) (A)光架橋性ポリロタキサン及び(B)光架橋性化合物を混合して、それらを有する組成物を得る工程;
(iv) 組成物に光重合開始剤を添加する工程;及び
(v) 得られた組成物に光照射し架橋体を形成する工程;
を有し、
工程i)は、
(1) 環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる擬ポリロタキサンの両端に環状分子が脱離しないように封鎖基を配置してなるポリロタキサンを準備する工程;
(2) ポリロタキサンの環状分子の一部又は全部に上記式IIで表される−M−を導入する工程;及び
(3) Mに光重合性基を有する基Yを導入して−M−Yを形成する工程;
を有する、上記方法。
【0027】
<26> 上記<23>〜<25>のいずれかの(2)において、下記式II’(式中、Xは、炭素数1〜8の直鎖状アルキレン基又はアルケニレン基;炭素数3〜20の分岐鎖状アルキレン基又はアルケニレン基;前記アルキレン基又はアルケニレン基の一部が−O−結合または−NH−結合で置換されてなるアルキレン基又はアルケニレン基;または前記アルキレン基の水素の一部が、水酸基、カルボキシル基、アシル基、フェニル基、ハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されてなるアルキレン基;である)の構造を有するモノマーを開環重合して−M−を導入するのがよい。
【0028】
【化6】

【発明の効果】
【0029】
本発明により、それぞれが先行技術からは予期し得ない特性、例えば耐傷性、低ヒステリシスロスなどを有する、光架橋性ポリロタキサン、該光架橋性ポリロタキサンのみから本質的になる組成物、該光架橋性ポリロタキサンを有する組成物、それら組成物からの架橋体を提供することができる。
また、本発明により、上記効果以外に、又は上記効果に加えて、上記の特性を有する、光架橋性ポリロタキサンの製造方法、該光架橋性ポリロタキサンのみから本質的になる組成物の製造方法、該光架橋性ポリロタキサンを有する組成物の製造方法、それら組成物からの架橋体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】引張試験の応力−歪曲線からヒステリシスロス値が得られることを説明する図である。
【図2】ヒステリシスロス値を測定するための引張試験の引張と回復とを5回行った履歴を示す図である。図2において、(a)は比較例1、(e)は実施例9の結果を示す。また、(b)、(c)及び(d)は実施例11の結果図である。図中の矢印は1回目の延伸曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、ポリロタキサンを構成する環状分子が光架橋性基を有する光架橋性ポリロタキサン、該光架橋性ポリロタキサンのみから本質的になる組成物、該光架橋性ポリロタキサンを有する組成物、及びそれらの組成物由来の架橋体、並びにこれらの製造方法を提供する。以下、上記の順番で説明する。
【0032】
<ポリロタキサンを構成する環状分子が光架橋性基を有する光架橋性ポリロタキサン>
本発明の光架橋性ポリロタキサンは、ポリロタキサンの環状分子が下記式Iで表される基を有する。
なお、ポリロタキサンは、環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる擬ポリロタキサンの両端に環状分子が脱離しないように封鎖基を配置してなるものを言う。
式I中、Mは下記式IIで表され、Yは、光重合性基を有する基を示す。
式II中、Xは、炭素数1〜8の直鎖状アルキレン基又はアルケニレン基;炭素数3〜20の分岐鎖状アルキレン基又はアルケニレン基;前記アルキレン基又はアルケニレン基の一部が−O−結合または−NH−結合で置換されてなるアルキレン基又はアルケニレン基;または前記アルキレン基の水素の一部が、水酸基、カルボキシル基、アシル基、フェニル基、ハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されてなるアルキレン基;である。好ましくは、Xは、炭素数5〜8の直鎖状アルキレン基;炭素数5〜8の分岐鎖状アルキレン基;前記アルキレン基の一部が−O−結合で置換されてなるアルキレン基であるのがよく、より好ましくは炭素数5〜8の直鎖状アルキレン基;前記アルキレン基の一部が−O−結合で置換されてなるアルキレン基であるのがよい。
式II中、nは平均値1〜10、好ましくは2.0〜9.0、より好ましくは3.0〜6.0である。なお、nは、構造上、整数であるが、Mの導入条件等により、分散性を有するため、整数に限定されない。
【0033】
なお、一例として、nは、次のように計算することができる。即ち、WO2005−080469号(この文献の内容はすべて本明細書に参考として含まれる)記載の方法で作製されたポリロタキサン(直鎖分子:平均分子量3.5万のポリエチレングリコール、環状分子:α−シクロデキストリン(α−CD)、封鎖基:アダマンタンアミン基からなるポリロタキサン)において、H−NMR(DMSO−d6)分析チャートの4−6ppm(α−CDの水酸基のH及びC1のH由来)と3−4ppm(PEGのH)との積分比から、α−CDの包接率が0.25であることが分かった。H−NMR分析は、400MHzのJEOL JNM−AL400(日本電子株式会社製)で行われた。ただし、PEGの−CH−CH−O−繰り返し単位2ユニットがα−CDの厚みに相当するとし、最密に包接された場合を1.0とする。それによって、該ポリロタキサンの理論水酸基価が13.6mmol/gであることが計算される(平均分子量:35000+(35000/88*0.25*972)で、水酸基数:(1/平均分子量)*(35000/88*0.25*18)mmol/g)。さらに、α−CDの一部に修飾基を付与する場合、例えばヒドロキシプロピル基(−CHCH(CH)OH)の場合、同様にH−NMR(DMSO−d6)分析(1ppmのシグナルであるヒドロキシプロピル基のメチル基の積分値を基準に)により、ヒドロキシプロピル基の修飾率が分かる。例えば50%とする。同様な方法で理論水酸基価を算出すると、9.7mmol/gである。さらに、ε−カプロラクトンモノマーを用いて水酸基に開環重合を行う。反応に使用されているモノマーについての消費をガスクロマトグラフィー(GC)(GC−2014 株式会社島津製作所製、使用カラム CBP1−W12−100)で確認する。モノマーの消費量はほとんどと供給量と一致した(ほぼ全て反応した)。従って、目的化合物であるポリカプロラクトンでグラフトされたポリロタキサンにおける[モノマー]/[OH]の値が算出でき、その値を平均nとする。上記の例で、1gのヒドロキシプロピル修飾したポリロタキサンを用いて、4.5gのε−カプロラクトンを使用し、全てが消費された場合、n=(4.5/114.1*1000)/9.7=4.1になる。
【0034】
【化7】

【0035】
Mは、ラクトンモノマー及び/又は環状カーボネートモノマー由来の重合体であるのがよく、好ましくはラクトンからの開環重合体であるのがよい。より好ましくは、Mのラクトンがε-カプロラクトンであり、Mはε-カプロラクトン由来の重合体であるのがよい。この場合、重合度(上記式IIのnと同じ)は、平均値1〜10、好ましくは2.0〜9.0、より好ましくは3.0〜6.0であるのがよい。
【0036】
ラクトンモノマーとして、β−プロピオラクトン、β−メチルプロピオラクトン、L−セリン−β−ラクトン誘導体などの4員環ラクトン;γ−ブチロラクトン、γ-ヘキサノラクトン、γ-ヘプタノラクトン、γ-オクタノラクトン、γ-デカノラクトン、γ-ドデカノラクトン、α-ヘキシル-γ-ブチロラクトン、α-ヘプチル-γ-ブチロラクトン、α-ヒドロキシ-γ-ブチロラクトン、γ-メチル-γ-デカノラクトン、α-メチレン-γ-ブチロラクトン、α, α-ジメチル-γ-ブチロラクトン、D-エリスロノラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、γ-ノナノラクトン、DL-パントラクトン、γ-フェニルγ-ブチロラクトン、γ-ウンデカノラクトン、γ−バレロラクトン、2,2-ペンタメチレン-1,3-ジオキソラン-4-オン、α-ブロモ-γ-ブチロラクトン、γ‐クロトノラクトン、α−メチレン−γ−ブチロラクトン、α−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、β−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトンなどの5員環ラクトン;δ−バレロラクトン、δ-ヘキサノラクトン、δ-オクタノラクトン、δ-ノナノラクトン、δ-デカノラクトン、δ-ウンデカノラクトン、δ-ドデカノラクトン、δ-トリデカノラクトン、δ-テトラデカノラクトン、DL-メバロノラクトン、4-ヒドロキシ-1-シクロヘキサンカルボン酸δ-ラクトンなどの6員環ラクトン;ε−カプロラクトンなどの7員環ラクトン;ラクチド、1,5-ジオキセパン-2-オンを挙げることができるが、これらに限定されない。ラクトンモノマーとして、ε−カプロラクトン、γ−ブチルラクトン、α−メチル−γ−ブチルラクトン、δ−バレロラクトン、ラクチドであるのが好ましく、より好ましくはε−カプロラクトンであるのがよい。
【0037】
環状カーボネートとして、エチレンカーボネート、炭酸プロピレン、炭酸1,2-ブチレン、グリセロール1,2-カルボナート、4-(メトキシメチル)-1,3-ジオキソラン-2-オン、(クロロメチル)エチレンカーボネート、炭酸ビニレン、4,5-ジメチル-1,3-ジオキソール-2-オン、4-クロロメチル-5-メチル-1,3-ジオキソール-2-オン、4-ビニル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジフェニル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-5-メチレン-1,3-ジオキソラン-2-オンなどの5員環カーボネート;1,3-ジオキサン-2-オン、5-メチル-5-プロピル-1,3-ジオキソラン-2-オン、5,5-ジエチル-1,3-ジオキソラン-2-オンなどの6員環カーボネート;などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0038】
式IのYは、光重合性基を有する基を示す。
特に、Yは、下記式III−1〜III−4からなる群から選ばれる基を少なくとも1種有するのがよい。ここで、R31及びR32は各々独立に、H又はCHであり、m1は0又は1であり、*は式IのMと直接結合するか又は第1のスペーサ基を介してMと結合する箇所を示す。
なお、第1のスペーサ基は、二価の基、即ちY及びMと結合する基である。第1のスペーサ基として、−CH−CH−、−C(=O)−NH−CH−CH−、−C(CHNH−C(=O)−、−CH(OH)CH−、−CH2−CH2−O−CH2−CH2−NH−C(=O)−、−CH−CH−C(=O)−、−CH−CH−CH−C(=O)−、−CH−CH−CH−CH−CH−C(=O)−、−CH−CH−NH−C(=O)−O−CH−CH−などを挙げることができるが、これに限定されない。
【0039】
具体的には、例えば、以下の化合物を用いて、Mの末端水酸基と反応させることで、Yを導入することができる。
(メタ)アクリロイルクロリド、(メタ)アクリル酸無水物、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジール(メタ)アクリレート、こはく酸モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、α−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、β−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、p−ビニル安息香酸、p−t−ブチルスチレン、イソシアン酸3-イソプロペニル-α、α-ジメチルベンジル、クロロ酢酸ビニル、3-マレイミドプロピオン酸、3-マレイミドプロピオン酸N-スクシンイミジル、4-マレイミド酪酸N-スクシンイミジル、6-マレイミドヘキサン酸N-スクシンイミジルなど。
【0040】
【化8】

【0041】
特に、Yは、式III−1を有する基であるのが好ましく、より好ましくはアクリロイルオキシエチルカルバモイル基及び/又はメタクリロイルオキシエチルカルバモイル基を有するのがよい。
【0042】
以下、ポリロタキサンを構成する要素について、それぞれ説明する。
<<環状分子>>
環状分子は、その開口部に直鎖状分子が串刺し状に包接される分子であれば、特に限定されない。
環状分子は、水酸基を有する環状分子であるのがよく、例えば、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンからなる群から選択されるのがよい。環状分子が、水酸基を有する場合、該水酸基の一部が、他の基により置換されてもよい。なお、他の基として、本発明のポリロタキサンを親水性化する親水性化基、本発明のポリロタキサンを疎水性化する疎水性化基、光反応性基などを挙げることができるが、これに限定されない。
【0043】
<<直鎖状分子>>
本発明のポリロタキサンの直鎖状分子は、環状分子の開口部に串刺し状に包接され得るものであれば、特に限定されない。
例えば、直鎖状分子として、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、セルロース系樹脂(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、でんぷん等及び/またはこれらの共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびその他オレフィン系単量体との共重合樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル−スチレン共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートや(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合樹脂などのアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等;及びこれらの誘導体又は変性体、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアニリン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ナイロンなどのポリアミド類、ポリイミド類、ポリイソプレン、ポリブタジエンなどのポリジエン類、ポリジメチルシロキサンなどのポリシロキサン類、ポリスルホン類、ポリイミン類、ポリ無水酢酸類、ポリ尿素類、ポリスルフィド類、ポリフォスファゼン類、ポリケトン類、ポリフェニレン類、ポリハロオレフィン類、並びにこれらの誘導体からなる群から選ばれるのがよい。例えばポリエチレングリコール、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール及びポリビニルメチルエーテルからなる群から選ばれるのがよい。より具体的にはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、及びポリプロピレンからなる群から選ばれるのがよく、特にポリエチレングリコールであるのがよい。
【0044】
直鎖状分子は、その分子量が3,000以上、好ましくは5,000〜100,000、より好ましくは10,000〜50,000であるのがよい。
本発明のポリロタキサンにおいて、環状分子がα−シクロデキストリン由来であり、直鎖状分子がポリエチレングリコールであるのがよい。
【0045】
環状分子が直鎖状分子により串刺し状に包接される際に環状分子が最大限に包接される量を1とした場合、前記環状分子が0.001〜0.6、好ましくは0.01〜0.5、より好ましくは0.05〜0.4の量で直鎖状分子に串刺し状に包接されるのがよい。
なお、環状分子の最大包接量は、直鎖状分子の長さと環状分子の厚さとにより、決定することができる。例えば、直鎖状分子がポリエチレングリコールであり、環状分子がα−シクロデキストリン分子の場合、最大包接量は、実験的に求められている(Macromolecules 1993, 26, 5698-5703を参照のこと。なお、この文献の内容はすべて本明細書に組み込まれる)。
【0046】
<<封鎖基>>
本発明のポリロタキサンの封鎖基は、擬ポリロタキサンの両端に配置され、環状分子が脱離しないように作用する基であれば、特に限定されない。
例えば、封鎖基として、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、シルセスキオキサン類、ピレン類、置換ベンゼン類(置換基として、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、スルホニル、カルボキシル、アミノ、フェニルなどを挙げることができるがこれらに限定されない。置換基は1つ又は複数存在してもよい。)、置換されていてもよい多核芳香族類(置換基として、上記と同じものを挙げることができるがこれらに限定されない。置換基は1つ又は複数存在してもよい。)、及びステロイド類からなる群から選ばれるのがよい。なお、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、シルセスキオキサン類、及びピレン類からなる群から選ばれるのが好ましく、より好ましくはアダマンタン基類又はトリチル基類であるのがよい。
【0047】
<光架橋性ポリロタキサンのみから本質的になる組成物>
本発明は、上述の光架橋性ポリロタキサンのみから本質的になる組成物を提供する。
本願において「のみから本質的になる」とは、組成物中、光架橋性のものが光架橋性ポリロタキサンのみからなり、それ以外の光架橋性のものを含まない一方、それ以外の種々の添加物、例えば光重合開始剤;増感剤;シランカプリング剤;界面活性剤;可塑剤;増粘剤;シリカ微粒子;アルミナ微粒子;顔料;酸化防止剤;静電防止剤;抗菌剤;光安定剤;天然油;光架橋性ポリロタキサンを溶解する溶媒;などは含んでもよいことを意味する。
換言すると、本発明の「光架橋性ポリロタキサンのみから本質的になる組成物」を用いて光架橋を行った場合、得られる架橋体は、光架橋性ポリロタキサンのみに由来する。ただし、上述の添加物は、組成物中に含んでもよい。
なお、光架橋性ポリロタキサンを溶解する溶媒は、上述のMの種類、上述のYの種類、用いる直鎖状分子、用いる環状分子、用いる封鎖基などに依存する。この溶媒の例として、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、塩化メチレン、N、N‘−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどを挙げることができるがこれに限定されない。
【0048】
<光架橋性ポリロタキサンを有する組成物>
本発明は、上述の光架橋性ポリロタキサンを有する組成物も提供する。
本願において「光架橋性ポリロタキサンを有する」、特に「有する」とは、組成物中、光架橋性のものが光架橋性ポリロタキサンのみだけでなく、それ以外の光架橋性のものを含む意味である。組成物は、勿論、それ以外の種々の添加物、例えば上述のもの;光架橋性ポリロタキサンを溶解する溶媒;なども含んでもよいことを意味する。
【0049】
<<(B)光架橋性化合物>>
本発明の上記組成物における、それ以外の光架橋性のものとして、光架橋性化合物;を挙げることができる。即ち、本発明の上記組成物は、(A)光架橋性ポリロタキサンの他に、(B)光架橋性化合物を有するのがよい。
光架橋性化合物は、下記式III’−1〜III’−4からなるY’群から選ばれる少なくとも1種の基を、該化合物の分子中に、少なくとも2個有する重合体であるのがよい。ここで、R33及びR34は各々独立に、H又はCHであり、m2は0又は1であり、*は、該化合物の重合体と直接結合するか又は第2のスペーサ基を介して該重合体と結合する箇所を示す。なお、第2のスペーサ基は、上述の第1のスペーサと同じ定義を有し、該第1のスペーサとは独立に、同じものを用いることができる。
【0050】
【化9】

【0051】
本発明の光架橋性化合物の重合体は、その平均重量分子量が300〜1万、好ましくは350〜8,000、より好ましくは400〜5,000であるのがよい。
【0052】
特に、光架橋性化合物は、下記式IV−1〜IV−4からなる群から選択される1種であるのがよい。
式IV−1〜IV−4中、
41は、H又はCHであり、
42は、炭素数1〜8の直鎖状アルキル基又はアルケニル基、炭素数3〜20の分岐鎖状アルキル基又はアルケニル基、前記アルキル基又はアルケニル基の一部が−O−結合または−NH−結合で置換されてなるアルキル基又はアルケニル基、または前記アルキル基又はアルケニル基の水素の一部が、水酸基、カルボキシル基、アシル基、フェニル基、ハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されてなるアルキル基又はアルケニル基であり、
43は、炭素数1〜8の直鎖状アルキレン基又はアルケニレン基、炭素数3〜20の分岐鎖状アルキレン基又はアルケニレン基、もしくは−Si(CH−基であり、
44は、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、イソシアヌル酸、ジイソシアヌル酸、トリアジン、ベンゼン、またはそれらの誘導体を有する基であり、
M’は、重合体部を有する基であり、
Y’は、上述のY’群から選ばれる少なくとも1種の基を示し、
m2’は0又は1であり、
Zは、各々独立に、単なる結合又は二価の第2のスペーサ基を示し、
r’は3〜6、好ましくは3〜4、より好ましくは3の整数を示す。
また、式IV−1〜IV−4中、括弧の記号()は、繰返し単位であることを示す。
なお、第2のスペーサ基は、具体的には、上述の第1のスペーサ基と同じものを用いることができる。
【0053】
【化10】

【0054】
<上記組成物由来の架橋体>
本発明は、上記組成物由来の架橋体を提供する。
即ち、本発明は、大別して2種、即ちア)光架橋性ポリロタキサンのみから本質的になる組成物由来の架橋体;及びイ)光架橋性ポリロタキサンを有する組成物由来の架橋体;を提供する。
なお、ア)光架橋性ポリロタキサンのみから本質的になる組成物由来の架橋体は、上述のように、光架橋性ポリロタキサンのみに由来する。一方、イ)光架橋性ポリロタキサンを有する組成物由来の架橋体は、光架橋性ポリロタキサンのみに由来する場合、光架橋性ポリロタキサンとそれ以外の光架橋性のもの、例えば上述の(B)光架橋性化合物に由来する場合がある。
【0055】
上記ア)及び/又はイ)の架橋体は、光照射により、上述の(A)架橋性ポリロタキサンのYを介して架橋されるのがよい。
特に、ア)の架橋体、即ち光架橋性ポリロタキサンのみから本質的になる組成物由来の架橋体は、少なくとも2分子の(A)架橋性ポリロタキサンのY同士を介して架橋されるのがよい。
イ)の架橋体、即ち光架橋性ポリロタキサンを有する組成物由来の架橋体は、少なくとも2分子の(A)架橋性ポリロタキサンのY同士を介して架橋される架橋体;(A)架橋性ポリロタキサンのYとそれ以外の光架橋性のもの、例えば例えば上述の(B)光架橋性化合物のY’とを介して架橋される架橋体;それ以外の光架橋性のもの同士が架橋された架橋体を含むが、本発明の架橋体は、少なくとも(A)架橋性ポリロタキサンのYと(B)架橋性化合物のY’とが少なくとも架橋されるのがよい。
【0056】
本発明の架橋体は、応力−歪曲線における初期弾性率が100MPa以下、好ましくは50MPa以下、より好ましくは25MPa以下であるのがよい。
また、本発明の架橋体は、ヒステリシスロスが25%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下であるのがよい。
【0057】
ここで、ヒステリシスロスとは、JIS K6400に準拠した、変形及び回復の1サイクルにおける機械的エネルギー損失率(ヒシテリシスロス)において、材料の変形の代わりに材料の引張試験による歪を用いたものをいう。
具体的には、長さ30mm×幅4mm×厚さ0.20mmのサンプルを引張試験にかけ、応力−歪曲線を測定する。伸長が有効長さの20%の伸長率と回復におけるもの(一回目の伸長−回復サイクル)を、本願におけるヒステリシスロスとし、該ヒステリシスロスは、図1に示す方法でそれぞれ面積を測定し計算される。
【0058】
ヒステリシスロス(%)=
図1の面積(oabcd)/図1の面積(oabeo)×100。
【0059】
本発明の光架橋性ポリロタキサン、光架橋性ポリロタキサンのみから本質的になる組成物又は光架橋性ポリロタキサンを有する組成物、該組成物由来の架橋体は、ポリロタキサンが有する粘弾性及びそれにより生じうる柔軟性及び/又は伸縮性が求められる分野のみならず、耐傷性が求められるか、及び/又は低いヒステリシスロスが求められる分野へ種々応用される。
これらの分野として、自動車、電化製品、家具などの塗料や塗装用材料;自動社の内装材料;接着や粘着剤;印刷版の材料;歯科衛生材料、機械、自動社などの擦動部材;シーリング材、防水材などの土木建築材料;衣料やスポーツ用品の材料、絶縁材、封止材、伝熱材、導電材のバインダーなどの電子電気材料;絶縁アクチュエーター材料;光学材料、防振・制振・免振材料、化粧品材料、レオロジー制御剤、繊維用材料、医療用生体材料などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0060】
<光架橋性ポリロタキサンの製造方法>
本発明の光架橋性ポリロタキサンは、例えば次の製法により製造することができる:
(1) 環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる擬ポリロタキサンの両端に環状分子が脱離しないように封鎖基を配置してなるポリロタキサンを準備する工程;
(2) ポリロタキサンの環状分子の一部又は全部に上記式IIで表される−M−を導入する工程;及び
(3) Mに光重合性基を有する基Yを導入して−M−Yを形成する工程;
を有することにより、得ることができる。
なお、上記工程の前後にその他の工程を有してもよい。例えば、工程(1)後であって工程(2)前、工程(2)後であって工程(3)前、又は工程(3)工程後に、環状分子に−M−Y以外の基を設ける工程を有してもよい。
【0061】
工程(1)は、ポリロタキサンを準備する工程である。ポリロタキサンは、本願の出願前に発表された文献(例えばWO2005-080469、WO2005-108464及びWO2009-136618(これらの文献は、その内容すべてが参考として本明細書に組み込まれる))を参照することにより、得ることができる。
【0062】
工程(2)は、ポリロタキサンの環状分子の一部又は全部に上記式IIで表される−M−を導入する工程である。
この工程は、下記式II’の構造を有するモノマーを開環重合して−M−を導入するのがよい。
【0063】
【化11】

【0064】
工程(2)は、用いるポリロタキサン、導入する−M−に依存するが、反応温度として100℃〜130℃、常圧、溶媒としてトルエン、キシレンなどを用い、すず触媒の存在下で行うなどの条件下で行うのがよい。
【0065】
<光架橋性ポリロタキサンのみから本質的になる組成物の製造方法>
光架橋性ポリロタキサンのみから本質的になる組成物は、上述の光架橋性ポリロタキサンを溶媒、その他の添加剤と共に混合することにより得ることができる。
【0066】
<光架橋性ポリロタキサンを有する組成物の製造方法>
光架橋性ポリロタキサンを有する組成物、特に(A)光架橋性ポリロタキサン;及び(B)光架橋性化合物;を有する組成物は、例えば次の方法により得ることができる。
(i) (A)光架橋性ポリロタキサンを準備する工程;
(ii) (B)光架橋性化合物を準備する工程;及び
(iii) (A)光架橋性ポリロタキサン及び(B)光架橋性化合物を混合して、それらを有する組成物を得る工程;
を有することにより得ることができる。
なお、工程i)は、上述の光架橋性ポリロタキサンの製造方法を行うのがよい。
【0067】
<上記組成物由来の架橋体の製造方法>
本発明の架橋体は、例えば次の方法により得ることができる。
例えば、組成物として、光架橋性ポリロタキサンのみから本質的になる組成物を用いる場合、
(iv’)該組成物に光重合開始剤を添加する工程;及び
(v’)得られた組成物に光照射し架橋体を形成する工程;
を有することにより、本発明の架橋体を得ることができる。
【0068】
また、組成物として、光架橋性ポリロタキサンを有する組成物、特に(A)光架橋性ポリロタキサン;及び(B)光架橋性化合物;を有する組成物を用いる場合、
(i) (A)光架橋性ポリロタキサンを準備する工程;
(ii) (B)光架橋性化合物を準備する工程;
(iii) (A)光架橋性ポリロタキサン及び(B)光架橋性化合物を混合して、それらを有する組成物を得る工程;
(iv) 組成物に光重合開始剤を添加する工程;及び
(v) 得られた組成物に光照射し架橋体を形成する工程;
を有することにより、本発明の架橋体を得ることができる。
【0069】
上記(iv)又は(iv’)の光重合開始剤として、キノン類、芳香族ケトン類、ベンゾイン、ベンゾインエーテル類、ビイミダゾール化合物及びその誘導体、N−フェニルグリシン類、チオキサントン類とアルキルアミノ安息香酸との組み合わせ、ビイミダゾール化合物及びその誘導体とミヒラーズケトンとの組み合わせ、アクリジン類、及びオキシムエステル類からなる群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。具体的には、2−エチルアントラキノン、オクタエチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン、3−クロロ−2−メチルアントラキノンなどのキノン類、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン[4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン]、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどの芳香族ケトン類、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、メチルベンゾイン、エチルベンゾインなどのベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、トリアリールイミダゾリル二量体等のビイミダゾール化合物及びその誘導体、N−フェニルグリシン、N−メチル−N−フェニルグリシン、N−エチル−N−フェニルグリシン等のN−フェニルグリシン類、チオキサントン類とアルキルアミノ安息香酸の組み合わせ、例えばエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸エチル、2−クロルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸エチル、イソプロピルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸エチルとの組み合わせ、また、トリアリールイミダゾリル二量体等のビイミダゾール化合物及びその誘導体とミヒラーズケトンとの組み合わせ、9−フェニルアクリジン等のアクリジン類、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−o−ベンゾインオキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等のオキシムエステル類であるのがよい。好ましくは、ジエチルチオキサントン、クロルチオキサントン等のチオキサントン類、ジメチルアミノ安息香酸エチル等のジアルキルアミノ安息香酸エステル類、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、トリアリールイミダゾリル二量体等のビイミダゾール化合物及びその誘導体、9−フェニルアクリジン、N−フェニルグリシン類、及びこれらの組み合わせであるのがよい。なお、トリアリールイミダゾリル二量体等のビイミダゾール化合物及びその誘導体としては、例えば、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体、2,2’,5−トリス−(o−クロロフェニル)−4−(3,4−ジメトキシフェニル)−4’,5’−ジフェニルイミダゾリル二量体、2,4−ビス−(o−クロロフェニル)−5−(3,4−ジメトキシフェニル)−ジフェニルイミダゾリル二量体、2,4,5−トリス−(o−クロロフェニル)−ジフェニルイミダゾリル二量体、2−(o−クロロフェニル)−ビス−4,5−(3,4−ジメトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2−フルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,3−ジフルオロメチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,4−ジフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,5−ジフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,6−ジフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,3,4−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,3,5−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,3,6−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,4,6−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体等を挙げることができるがこれに限定されない。
なお、光重合開始剤を組成物中に含める場合、工程(iv)又は(iv’)は、有しなくてもよい。
【0070】
工程(v)は、組成物に光照射し架橋体を形成する工程である。
光照射は、使用する光重合開始剤、増感剤、サンプルの厚み、形状などの条件に依存するが、基本的には紫外線から可視光線の波長領域(200nm〜450nm)の光線を主成分とする装置であれば使用することが可能である。例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、水銀キセノンランプを光源とする装置であればよい。例えば、波長:365nm;光強度:30〜150mW/cm;照射時間:10秒〜5分間;などの条件で行うのがよい。
なお、工程(v)前に、組成物を従来公知の手法により種々の基材に塗布する工程を有してもよい。これにより、基材に所望の架橋体を形成することができ、該架橋体は、本発明の効果、例えば本来ポリロタキサンが有する粘弾性及びそれにより生じうる柔軟性及び/又は伸縮性のみならず、耐傷性、低ヒステリシスロスなどを有することができる。
【0071】
(実施例)
以下、実施例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0072】
直鎖分子:ポリエチレングリコール(平均分子量3.5万)、環状分子:α−シクロデキストリン(以下、単に「デキストリン」を「CD」と略記する)、封鎖基:アダマンタンアミン基からなるポリロタキサンを、さらにヒドロキシプロピル化した化合物(以下、ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンを「HAPR35」と略記する)を、WO2005-080469(なお、この文献の内容は全て参考として本明細書に組み込まれる)に記載される方法と同様に調製した(α−CD包接率:25%;ヒドロキシプロピル基修飾率:50%;理論水酸基量:9.7mmol/g;ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により平均重量分子量Mw:150,000)。分子量、分子量分布の測定は、TOSOH HLC-8220GPC装置で行った。カラム:TSKガードカラム Super AW-Hと TSKgel Super AWM-H(2本連結)、溶離液:ジメチルスルホキシド/0.01M LiBr、カラムオーブン:50℃、流速:0.5ml/min、試料濃度を約0.2wt/vol%、注入量:20μl、前処理:0.2μmフィルターでろ過、スタンダード分子量:PEO、の条件下で測定した。
【0073】
<1−1.ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンのポリカプロラクトン修飾>
上記で得たヒドロキシプロピル化ポリロタキサン(HAPR35)5gをε-カプロラクトン22.5gに、80℃温度下で溶解させた混合液を得た。この混合液を、乾燥窒素をブローさせながら110℃で1時間攪拌した後、2-エチルヘキサン酸錫(II)の50wt%キシレン溶液0.16gを加え、130℃で6時間攪拌した。その後、キシレンを添加し、不揮発濃度が約35wt%ポリカプロラクトン修飾ヒドロキシプロピル化ポリロタキサン(HAPR35)X−1のキシレン溶液を得た。
得られた修飾ポリロタキサンX−1について、原料HAPR35の理論水酸基量とガスクロマトグラフィー(GC)のモノマー消費量(ほぼ100%)によりポリカプロラクトンの重合度を調べた結果、重合度:4.1であることがわかった。
【0074】
<1−2.ポリカプロラクトン修飾ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンへのアクリロイル基導入>
室温まで冷却したポリカプロラクトン修飾ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンX−1のキシレン溶液にジブチルヒドロキシトルエン(重合禁止剤)0.01gを添加した後、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート7.1gを滴下した。40℃で16時間攪拌し、ポリカプロラクトン修飾ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンにアクリロイルオキシエチルカルバモイル基を導入したアクリロイル化ポリロタキサンA−1のキシレン溶液を得た。GPC測定により、得られたポリロタキサンの重量平均分子量Mwは55万であった。得られたポリロタキサンA−1において、Yはアクリロイル基(−OC(=O)−CH=CH)であって、第1のスペーサ基は−C(=O)−NH−CH−CHであった。
【実施例2】
【0075】
実施例1の<1−1>のε-カプロラクトン22.5gの代わりにε−カプロラクトン21.5g及びα−メチル−γ−ブチロラクトン1.0gを使用した以外、実施例1と同様にして、修飾ポリロタキサンA−2を作製した。GPC測定により、得られたポリロタキサンの平均重量分子量Mwは58万であった。
得られた修飾ポリロタキサンA−2について、原料HAPR35の理論水酸基量とガスクロマトグラフィー(GC)のモノマー消費量(ほぼ100%)によりε-カプロラクトンとα−メチル−γ−ブチロラクトンとの共重合体の重合度を調べた結果、重合度:4.1であることがわかった。
【実施例3】
【0076】
実施例1の<1−1>のε-カプロラクトン22.5gの代わりにε−カプロラクトン43.0g及び炭酸プロピレン2.0gを使用した以外、実施例1と同様にして、修飾ポリロタキサンA−3を作製した。GPC測定により、得られたポリロタキサンの平均重量分子量Mwは56万であった。
得られた修飾ポリロタキサンA−3について、原料HAPR35の理論水酸基量とGCのモノマー消費量(ほぼ100%)によりε−カプロラクトンと炭酸プロピレンとの共重合体の重合度を調べた結果、重合度:9.0であることがわかった。
【実施例4】
【0077】
実施例1のヒドロキシプロピル化ポリロタキサンの代わりに、アセチル化ポリロタキサンを使用した以外、実施例1と同様にして、修飾ポリロタキサンA−4を作製した。GPC測定により、得られたポリロタキサンの平均重量分子量Mwは48万であった。
なお、アセチル化ポリロタキサン(H-NMR分析によりα−CD充填率:27%、アセチル基の修飾率:50%、理論水酸基価:5.4mmol/g;GPCにより平均重量分子量Mw:100,000)は、WO−2005−080469(なお、この文献の内容は全て参考として本明細書に組み込まれる)に記載される方法と同様に調製した。
なお、得られた修飾ポリロタキサンA−4のポリカプロラクトンの重合度は、実施例1と同様、7.3であった。
【実施例5】
【0078】
<ポリカプロラクトン修飾ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンへのメタクリロイル基導入>
実施例1の2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート7.1gの代わりに2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート7.8gを使用した以外、実施例1と同様にして、修飾ポリロタキサンA−5を作製した。GPC測定により、得られたポリロタキサンの平均重量分子量Mwは56万であった。得られたA−5において、Yはメタクリロイル基(−OC(=O)−CH(CH)−CH)であって、第1のスペーサ基は−C(=O)−NH−CH−CHであった。
【実施例6】
【0079】
<ポリカプロラクトン修飾ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンへのアクリロイル基とブチルカルバモイル基の導入>
実施例1の2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート7.1gの代わりに2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート3.5gとブチルイソシアネート2.5gを使用した以外、実施例1と同様にして、修飾ポリロタキサンA−6を作製した。GPC測定により、得られたポリロタキサンの平均重量分子量Mwは59万であった。得られたA−6において、Yはアクリロイル基(−OC(=O)−CH=CH)であって、第1のスペーサ基は−C(=O)−NH−CH−CHであって、さらに、Mの一部がブチルカルバモイル基で修飾されたものであった。
【実施例7】
【0080】
<ポリカプロラクトン修飾ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンへのメタクリロイル基とブチルカルバモイル基の導入>
実施例1の2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート7.1gの代わりに2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート3.9gとブチルイソシアネート2.5gを使用した以外、実施例1と同様にして、修飾ポリロタキサンA−7を作製した。GPC測定により、得られたポリロタキサンの平均重量分子量Mwは60万であった。得られたA−7において、Yはメタクリロイル基(−OC(=O)−CH=CH)であって、第1のスペーサ基は−C(=O)−NH−CH−CHであって、さらに、Mの一部がブチルカルバモイル基で修飾されたものであった。
【実施例8】
【0081】
<ポリカプロラクトン修飾ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンへのα-メチルスチリル基の導入>
実施例1の2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート7.1gの代わりにイソシアン酸3-イソプロペニル-α、α-ジメチルベンジル9.0gを使用した以外、実施例1と同様にして、修飾ポリロタキサンA−8を作製した。GPC測定により、得られたポリロタキサンの平均重量分子量Mwは47万であった。得られたA−8において、Yは3-イソプロペニルベンジル基(−C−C(CH)=CH)であって、第1のスペーサ基は−C(CHNH−C(=O)−であった。
【0082】
<光架橋性オリゴマーの調製例>
[合成例1]
<メタクリロイル基変性ポリカーボネートの合成>
ポリカーボネートジオール(ポリアルキレンカーボネートジオール96wt%以上、1,5−ペンタンジオール2wt%以下、1,6−ヘキサンジオール2wt%以下の組成からなるポリカーボネート、旭化成ケミカルズ株式会社製デュラノール(登録商標)T−5650J、Mn:800)30gに、キシレン18gに溶解した2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製カレンズ(登録商標)MOI)13.3g、ジブチルヒドロキシトルエン(重合禁止剤)0.01g、ジラウリン酸ジブチルすず0.06gをゆっくり滴下し40℃で5時間反応させ、不揮発分71%のメタクリロイル基両末端変性ポリカーボネートオリゴマーB−1を得た。
得られたオリゴマーB−1の平均重量分子量MwをGPCで調べた結果、1270であることがわかった。
【0083】
[合成例2]
<アクリロイル基変性ポリカプロラクトンオリゴマーの合成>
ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業株式会社製プラクセル(登録商標)FA2D)5gをキシレン13.3gに溶解し、ジラウリン酸ジブチルすず0.02gを添加した。この溶液にイソシアヌレート型ヘキサメチレンジイソシアネート(旭化成ケミカルズ株式会社製デュラネート(登録商標)TPA−100)8.3gを添加し、反応させ、不揮発分が50%の分子内に3つのアクリロイル基を有する変性ポリカプロラクトンオリゴマーB−2を得た。
得られたオリゴマーB−2の平均重量分子量MwをGPCで調べた結果、1540であることがわかった。
【0084】
[合成例3]
<メタクリロイル基変性アクリルコポリマーの合成>
撹拌機、還流冷却器及び温度計を備えた反応器に酢酸ブチル9mlを入れ、120℃還流しながら予め調製したブチルアクリレート14g、メチルメタクリレート4g、ヒドロキシエチルメタクリレート2g、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.2gの混合溶液を反応器に2時間かけて滴下した。その後、AIBN0.2gをさらに加え、3時間反応を続けた。室温まで冷却した反応液をヘキサンに注ぎ、沈降した液状物を回収した。回収物に酢酸ブチル20ml、ジブチルヒドロキシトルエン(重合禁止剤)1mg、ジラウリン酸ジブチルすず0.02gを加えて、40℃で攪拌しながら2-メタクリロイルオキシイソシアネートを滴下し、3時間反応させ、不揮発分が約52%の多数のメタクリロイル基を有するアクリルオリゴマー(ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートの共重合体)B−3を得た(H-NMR分析により)。GPCで分析した結果、平均重量分子量Mwが7,500で、分散Mw/Mnが1.8であった。またH-NMRの5.7と6.1ppm付近のCH=C−のHシグナルよりメタクリロイル基が導入されたことが確認された。
【0085】
[合成例4]
<メタクリロイル基変性ポリエチレングリコールオリゴマーの合成>
ポリエチレングリコールメタアクリレート(Aldrich製、Mn:360)2gをキシレン3gに溶解し、ジラウリン酸ジブチルすず0.01gを添加した。この溶液にイソシアヌレート型ヘキサメチレンジイソシアネート(デュラネート(登録商標)TPA−100)1.0gを添加し、反応させ、不揮発分が50%の分子内に3つのメタクリロイル基を有する変性ポリエチレングリコールオリゴマーB−4を得た。
得られたオリゴマーB−4の平均重量分子量MwをGPCで調べた結果、1740であることがわかった。
【0086】
[合成例5]
<アクリロイル基変性ジメチルシロキサン-カプロラクトンブロックコポリマーの合成>
Carbinol (hydroxyl) terminated polydimethylsiloxane caprolactone block polymer) (Azmax製、Mw 5700〜6900)4gをトルエンに溶解し、スズ触媒を添加した。この溶液に2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製カレンズAOI(登録商標))0.22gを添加し、反応させ、両末端アクリロイル基変性ジメチルシロキサン-カプロラクトンブロックコポリマーB−5を得た。
得られたオリゴマーB−5の平均重量分子量MwをGPCで調べた結果、7100であることがわかった。
【実施例9】
【0087】
<光架橋性ポリロタキサンのみからなる組成物由来の架橋体の調製>
実施例1で得られたアクリロイル化ポリロタキサンA−1のキシレン溶液に、光重合開始剤としてIrgacure500(1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトンとベンゾフェノンとの混合物、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)を固形分に対し5wt%添加した。この混合物を剥離剤で処理したガラス基板にバーコーターで塗布し、30mW/cmで90秒紫外線照射後、硬化膜を110℃で1時間乾燥した。この乾燥膜(厚み0.2mm)を剥離し、切り出して(長さ30mm、幅4mm)試験片を作製した。
また、この混合物を黒アクリル板上に0.1mm厚で塗布し、30mW/cmで90秒紫外線照射後、乾燥し、耐傷性試験用の塗布膜を作製した。
【実施例10】
【0088】
実施例9で用いたアクリロイル化ポリロタキサンA−1の代わりに、実施例6で得られたアクリロイル化ポリロタキサンA−6を用いた以外、実施例9と同様にして架橋体の試験片を作製した。
【実施例11】
【0089】
<光架橋性ポリロタキサンを有する組成物由来の架橋体の調製>
実施例1で得られたアクリロイル化ポリロタキサンA−1と合成例1で調製したポリカーボネートオリゴマーB−1を固形分重量比2:8、5:5、7:3の比率でブレンドし、光重合開始剤としてIrgacure500を固形分に対し5wt%添加した。
得られた組成物を剥離剤で処理したガラス基板にバーコーターで塗布し、30mW/cmで90秒紫外線照射後、硬化膜を110℃で1時間乾燥した。この乾燥膜(厚み0.2mm)を剥離し、切り出して試験片を作製した。
また、得られた組成物を黒アクリル板上に0.1mm厚で塗布し、30mW/cmで90秒紫外線照射後乾燥し、耐傷性試験用の塗布膜を作製した。
【実施例12】
【0090】
ポリカーボネートオリゴマーB−1の代わりに、合成例2で得られたオリゴマーB−2を用いた以外、実施例11と同様にして架橋体の試験片を作製した。
【実施例13】
【0091】
ポリカーボネートオリゴマーB−1の代わりに、合成例3で得られたオリゴマーB−3を用いた以外、実施例11と同様にして架橋体の試験片を作製した。
【実施例14】
【0092】
ポリカーボネートオリゴマーB−1の代わりに、合成例4で得られたオリゴマーB−4を用いた以外、実施例11と同様にして架橋体の試験片を作製した。
【実施例15】
【0093】
ポリカーボネートオリゴマーB−1の代わりに、ポリプロピレングリコールジアクリレートB−6(Aldrich製、Mn 900)を用いた以外、実施例11と同様にして架橋体の試験片を作製した。
【実施例16】
【0094】
実施例1で得られたアクリロイル化ポリロタキサンA−1の代わりに、実施例6で得られた修飾ポリロタキサンA−6を用いた以外、実施例11と同様にして架橋体の試験片を作製した。
【実施例17】
【0095】
実施例1で得られたアクリロイル化ポリロタキサンA−1と合成例1で調製したポリカーボネートオリゴマーB−1を固形分重量比7:3の比率でブレンドし、さらに合成例5で調整したジメチルシロキサン-カプロラクトンブロックコポリマーB−5を1%添加した。光重合開始剤にはIrgacure500を固形分に対し5wt%用いた。
得られた組成物を実施例11と同様に硬化させ、架橋体の試験片を得た。
【実施例18】
【0096】
実施例3で得られたアクリロイル化ポリロタキサンA−3と合成例2で調製したオリゴマーB−2を固形分重量比7:3の比率でブレンドした。光重合開始剤にはIrgacure500を固形分に対し5wt%用いた。
得られた組成物を実施例11と同様に硬化させ、架橋体の試験片を得た。
【0097】
(比較例1〜6)
実施例11〜15、17について、ポリロタキサンを添加せずオリゴマー単独で紫外線硬化し、同様の手法でオリゴマー同士の架橋体の試験片C−1〜C−6を得た。
【0098】
<架橋体の特性>
上記の実施例9〜18、及び比較例1〜6で作成した試験片を以下の方法によって評価した。
<<耐折性>>
剥離したシート状のフィルムを180°繰り返し折り曲げて、曲げ筋や破断の確認を行った。その結果、5回試験を行い、変化なしを「○」;5回の試験で若干の曲げ筋あるものを「△」;1回の試験で破断したものを「×」とした。結果を表1に示す。
【0099】
<<耐傷性>>
上述において、黒アクリル板上に作製した試験片について、真鍮製ブラシ(毛材行数3行、線径0.15mm)により試験片の塗膜表面を擦傷し、傷つき度合いを目視により観察した。その結果、傷がつかなったものを「○」;わずかに傷はあるが許容レベルであるものを「△」;すぐに傷がついたものを「×」とした。結果を表1に示す。
【0100】
<<ヒステリシスロス>>
上述の試験法によりヒステリシスロスを測定した。
測定例を図2に示す。図2において、(a)は比較例1、(e)は実施例9の結果を示す。また、(b)、(c)及び(d)は実施例11の結果を示し、それぞれ修飾ポリロタキサンA−1:オリゴマーB−1の重量比が2:8、5:5及び7:3のものを示す。なお、図中の矢印は1回目の延伸曲線を示す。
【0101】
また、図2の引張試験は、引張と回復の回数を5回行ったものであり、それらの履歴が示される。
図2の(e)、即ち実施例9は、履歴がほぼ直線であり、引張と回復の回数を5回行ってもほぼ同じ履歴を示すことがわかる。これをヒステリシスロス値にすると6%であり、値が限りなく0に近く、低ヒステリシスロスであることがわかる。
一方、図2の(a)、即ち比較例1は、5回の履歴がまちまちであることがわかる。これをヒステリシスロス値にすると53%であり、満足するヒステリシスロス値とはなっていないことがわかる。
なお、図2の(b)、(c)及び(d)は、(e)に近い履歴を示し、それぞれヒステリシスロス値が23%、21%及び14%であることがわかる。
【0102】
図2のような引張試験の履歴から、ヒステリシスロス値を求めた。その結果を表1に示す。
【0103】
表1は、上述の特性をまとめた表である。表中、「A」は、用いたポリロタキサン種、「B」は用いた架橋性化合物の種、「A:B」は、用いたポリロタキサンと用いた架橋性化合物の固形分重量比、を示す。
【0104】
表1から、比較例1〜6、即ち光架橋性化合物のみを用いて得られた架橋フィルムは、耐折性、耐傷性及びヒステリシスロスのすべてを満足するものは得られなかった。
一方、本発明の架橋体、即ち実施例9〜18は、耐折性、耐傷性及びヒステリシスロスのすべてを満足していることがわかる。
これらのことから、本発明の光架橋性ポリロタキサン、これを有する組成物、及び該組成物由来の架橋体は、従来のもの(比較例1〜6)と比較して有意な効果、即ち耐折性、耐傷性及びヒステリシスロスのすべてにおいて満足した値をもたらすことができる。
【0105】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)光架橋性ポリロタキサン;のみから本質的になる光架橋組成物であって、
該光架橋性ポリロタキサンは、ポリロタキサンの環状分子が下記式I
(式中、Mは下記式IIで表され、
Xは、炭素数1〜8の直鎖状アルキレン基又はアルケニレン基;炭素数3〜20の分岐鎖状アルキレン基又はアルケニレン基;前記アルキレン基又はアルケニレン基の一部が−O−結合または−NH−結合で置換されてなるアルキレン基又はアルケニレン基;または前記アルキレン基の水素の一部が、水酸基、カルボキシル基、アシル基、フェニル基、ハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されてなるアルキレン基;であり、nは平均値1〜10であり、
Yは、光重合性基を有する基である)
で表される基を有し、
前記ポリロタキサンは、環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる擬ポリロタキサンの両端に前記環状分子が脱離しないように封鎖基を配置してなる、上記組成物。
【化1】

【請求項2】
(A)光架橋性ポリロタキサン;を有する光架橋組成物であって、
該光架橋性ポリロタキサンは、ポリロタキサンの環状分子が下記式I
(式中、Mは下記式IIで表され、
Xは、炭素数1〜8の直鎖状アルキレン基又はアルケニレン基;炭素数3〜20の分岐鎖状アルキレン基又はアルケニレン基;前記アルキレン基又はアルケニレン基の一部が−O−結合または−NH−結合で置換されてなるアルキレン基又はアルケニレン基;または前記アルキレン基の水素の一部が、水酸基、カルボキシル基、アシル基、フェニル基、ハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されてなるアルキレン基;であり、nは平均値1〜10であり、
Yは、光重合性基を有する基である)
で表される基を有し、
前記ポリロタキサンは、環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる擬ポリロタキサンの両端に前記環状分子が脱離しないように封鎖基を配置してなる、上記組成物。
【化2】

【請求項3】
さらに(B)光架橋性化合物;を有する請求項2記載の組成物であって、
該(B)光架橋性化合物は、下記式III’−1〜III’−4(式中、R33及びR34は各々独立に、H又はCHであり、m2は0又は1であり、*は、該化合物の重合体と直接結合するか又は第2のスペーサ基を介して該重合体と結合する箇所を示す)からなるY’群から選ばれる少なくとも1種の基を、該化合物の分子中に、少なくとも2個有する重合体である、上記組成物。
【化3】

【請求項4】
前記Mが、ラクトンモノマー及び/又は環状カーボネートモノマー由来の重合体である請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
前記Yが、下記式III−1〜III−4(式中、R31及びR32は各々独立に、H又はCHであり、m1は0又は1であり、*は式IのMと直接結合するか又は第1のスペーサ基を介してMと結合する箇所を示す)からなる群から選ばれる基を少なくとも1種有する請求項1〜4のいずれか1項記載の組成物。
【化4】

【請求項6】
前記Mがラクトンからの開環重合体であり、前記Yが式III−1を有する基である請求項1〜5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
前記Mの前記ラクトンがε-カプロラクトンであり、前記Yがアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有する請求項6記載の組成物。
【請求項8】
前記(B)光架橋性化合物の前記重合体は、その平均重量分子量が300〜1万である請求項3〜7のいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
前記(B)光架橋性化合物は、下記式IV−1〜IV−4(式中、
41は、H又はCHであり、
42は、炭素数1〜8の直鎖状アルキル基又はアルケニル基、炭素数3〜20の分岐鎖状アルキル基又はアルケニル基、前記アルキル基又はアルケニル基の一部が−O−結合または−NH−結合で置換されてなるアルキル基又はアルケニル基、または前記アルキル基又はアルケニル基の水素の一部が、水酸基、カルボキシル基、アシル基、フェニル基、ハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されてなるアルキル基又はアルケニル基であり、
43は、炭素数1〜8の直鎖状アルキレン基又はアルケニレン基、炭素数3〜20の分岐鎖状アルキレン基又はアルケニレン基、もしくは−Si(CH−基であり、
44は、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、イソシアヌル酸、ジイソシアヌル酸、トリアジン、ベンゼン、またはそれらの誘導体を有する基であり、
M’は、重合体部を有する基であり、
Y’は、前記Y’群から選ばれる少なくとも1種の基を示し、
m2’は0又は1であり、
Zは、各々独立に、単なる結合又は二価の第2のスペーサ基を示し、
r’は3〜6の整数を示し、
括弧の記号()は、繰返し単位であることを示す)からなる群から選択される1種である請求項3〜8のいずれか1項記載の組成物。
【化5】

【請求項10】
請求項1記載の組成物由来の架橋体。
【請求項11】
請求項2〜9のいずれか1項記載の組成物由来の架橋体。
【請求項12】
請求項3〜9のいずれか1項記載の組成物由来の架橋体。
【請求項13】
前記架橋体は、光照射により、前記(A)架橋性ポリロタキサンの前記Yを介して架橋される請求項10〜12のいずれか1項記載の架橋体。
【請求項14】
前記架橋体は、光照射により、前記(A)架橋性ポリロタキサンの前記Y、及び前記(B)架橋性化合物の前記Y’が少なくとも架橋される請求項12記載の架橋体。
【請求項15】
前記架橋体は、ヒステリシスロスが25%以下である請求項10〜14のいずれか1項記載の架橋体。
【請求項16】
(A)光架橋性ポリロタキサンの製造方法であって、
(1) 環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる擬ポリロタキサンの両端に前記環状分子が脱離しないように封鎖基を配置してなるポリロタキサンを準備する工程;
(2) 前記ポリロタキサンの前記環状分子の一部又は全部に下記式II(式中、Xは、炭素数1〜8の直鎖状アルキレン基又はアルケニレン基;炭素数3〜20の分岐鎖状アルキレン基又はアルケニレン基;前記アルキレン基又はアルケニレン基の一部が−O−結合または−NH−結合で置換されてなるアルキレン基又はアルケニレン基;または前記アルキレン基の水素の一部が、水酸基、カルボキシル基、アシル基、フェニル基、ハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されてなるアルキレン基;であり、nは平均値1〜10である)
で表される−M−を導入する工程;
(3) 前記Mに光重合性基を有する基Yを導入して−M−Yを形成する工程;
を有する、上記方法。
【化6】

【請求項17】
前記(2)において、下記II’の構造を有するモノマーを開環重合して前記−M−を導入する請求項16記載の方法。
【化7】

【請求項18】
(A)光架橋性ポリロタキサン;及び(B)光架橋性化合物;を有する組成物の製造方法であって、
(i) 前記(A)光架橋性ポリロタキサンを準備する工程;
(ii) 前記(B)光架橋性化合物を準備する工程;及び
(iii) 前記(A)光架橋性ポリロタキサン及び前記(B)光架橋性化合物を混合して、それらを有する組成物を得る工程;
を有し、
前記工程i)は、
(1) 環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる擬ポリロタキサンの両端に前記環状分子が脱離しないように封鎖基を配置してなるポリロタキサンを準備する工程;
(2) 前記ポリロタキサンの前記環状分子の一部又は全部に下記式II(式中、Xは、炭素数1〜8の直鎖状アルキレン基又はアルケニレン基;炭素数3〜20の分岐鎖状アルキレン基又はアルケニレン基;前記アルキレン基又はアルケニレン基の一部が−O−結合または−NH−結合で置換されてなるアルキレン基又はアルケニレン基;または前記アルキレン基の水素の一部が、水酸基、カルボキシル基、アシル基、フェニル基、ハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されてなるアルキレン基;であり、nは平均値1〜10である)
で表される−M−を導入する工程;及び
(3) 前記Mに光重合性基を有する基Yを導入して−M−Yを形成する工程;
を有する、上記方法。
【化8】

【請求項19】
(A)光架橋性ポリロタキサン;及び(B)光架橋性化合物;を有する組成物からの架橋体の製造方法であって、
(i) 前記(A)光架橋性ポリロタキサンを準備する工程;
(ii) 前記(B)光架橋性化合物を準備する工程;
(iii) 前記(A)光架橋性ポリロタキサン及び前記(B)光架橋性化合物を混合して、それらを有する組成物を得る工程;
(iv)前記組成物に光重合開始剤を添加する工程;及び
(v)得られた組成物に、光照射し架橋体を形成する工程;
を有し、
前記工程i)は、
(1) 環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる擬ポリロタキサンの両端に前記環状分子が脱離しないように封鎖基を配置してなるポリロタキサンを準備する工程;
(2) 前記ポリロタキサンの前記環状分子の一部又は全部に下記式II(式中、Xは、炭素数1〜8の直鎖状アルキレン基又はアルケニレン基;炭素数3〜20の分岐鎖状アルキレン基又はアルケニレン基;前記アルキレン基又はアルケニレン基の一部が−O−結合または−NH−結合で置換されてなるアルキレン基又はアルケニレン基;または前記アルキレン基の水素の一部が、水酸基、カルボキシル基、アシル基、フェニル基、ハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されてなるアルキレン基;であり、nは平均値1〜10である)
で表される−M−を導入する工程;及び
(3) 前記Mに光重合性基を有する基Yを導入して−M−Yを形成する工程;
を有する、上記方法。
【化9】


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−46917(P2011−46917A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2010−41567(P2010−41567)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(505136963)アドバンスト・ソフトマテリアルズ株式会社 (19)
【Fターム(参考)】