説明

光水分解反応用光触媒および光水分解反応用光触媒の製造方法

【課題】光水分解反応用の触媒であって、同一粒子上に酸化反応用および還元反応用双方の助触媒を併せ持ち、光照射下における光水分解反応速度を飛躍的に増大させることができる、効率的で工業的に有利な水分解反応用光触媒を提供する。
【解決手段】光半導体(10)、酸化反応助触媒(20)および還元反応助触媒(30)を備え、光半導体(10)に酸化反応助触媒(20)および還元反応助触媒(30)が担持されてなる光水分解反応用光触媒であって、光半導体(10)が、可視光領域の光を利用するものである光水分解反応用光触媒(100)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光水分解反応用光触媒および光水分解反応用光触媒の製造方法に関し、詳細には、酸化反応および還元反応用の助触媒を併せ持ち、可視光領域の光を利用して水分解反応を行う光触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽エネルギーなどの再生可能エネルギーを利用した高性能な光エネルギー変換システムを実用化することは、地球温暖化の抑制、および枯渇しつつある化石資源依存からの脱却を目指す観点から、近年になって急激にその重要性が増している。中でも、太陽エネルギーを用いて水を分解し水素を製造する技術は、現行の石油精製、アンモニア、メタノールの原料供給技術としてのみならず、燃料電池をベースとした来たる水素エネルギー社会において、必須とされる技術である。
【0003】
光触媒による水分解反応は、1970年代から広く研究されている(非特許文献1)。これらの光触媒においては、例えばZrOのように単独で十分な活性を示すものもあるが、多くの場合、助触媒が大きな役割を果たしている。様々な光触媒において、水素発生用(還元反応用)の助触媒としてPtなどの貴金属や、RuO、NiOなどを光触媒上に担持すると、反応速度が著しく向上することが知られている(非特許文献1)。
【0004】
光触媒粒子上での酸性水溶液中における水の分解反応は、次のように推定されている。すなわち、
O +2h→1/2O2+2H(1)
2H+2e→H(2)
助触媒の効果は、これら反応の活性化エネルギーを低下させて反応を促進することにある。しかしながら、助触媒が
+1/2O→HO (3)
で表される燃焼反応を触媒してしまうと、これは水分解反応の逆反応であるので好ましくない。従って、助触媒には(1)、(2) は触媒しながらも(3)は触媒しないものが使用される。
【0005】
1981年にTiOにPtとRuOの二種類の助触媒を担持すると水素生成速度が向上する例が報告され、それぞれ還元反応用、酸化反応用の助触媒として機能していると説明されているが(非特許文献2)、その後、この追試に成功したという例は見当たらない。現在では、TiOをはじめとする水を完全分解できる安定な光触媒は一般的にバンドギャップが大きく、かつ価電子帯上端のエネルギー準位がO/HOの酸化還元電位よりも十分に低い準位にあるため、必ずしも酸素発生用(酸化反応用)の助触媒は効果がないと考えられており(非特許文献3、4)、水素発生用(還元反応用)の助触媒を用いた研究が活発に行われている。
【0006】
太陽光はそのエネルギーの大部分が可視光領域にあるため、太陽光で効率的に水分解を行うためには、光触媒が可視光領域の光を利用できることが好ましい。2000年以降になって可視光領域の光エネルギーで犠牲試薬を使用せずに水を完全分解することができ、かつ水中で安定である光触媒が発表されるようになった(非特許文献4)。これら光触媒でもPtなどの貴金属やRuO、NiOを水素発生用助触媒として使用すると効果があることが報告されている(非特許文献1、5)。
【0007】
一段階での水の完全分解反応を実現できる可視光応答型の光触媒はこれまで還元反応用の助触媒としてRh2−xCrを担持したGaN:ZnO(非特許文献6)などが知られている。これは400nm付近での水分解反応の量子収率が5%程度であり、太陽光を利用した水素製造用の光触媒として注目されている。しかしながら、これらを産業的に利用するためには、更なる性能の向上が望まれていた。
【0008】
一方、これら可視光応答型の光触媒では、IrO、RuOなどの酸化反応用の助触媒が反応を促進することが知られている(非特許文献7、8)。しかしながらこれらは全て犠牲試薬としてAgイオンを含む系や、IO/IもしくはFe3+/Fe2+ などのメディエーターを含む系で、一段階での水の完全分解反応における酸化反応助触媒の効果は実証されていなかった。
【0009】
すなわち、還元反応用、酸化反応用の両方の助触媒を担持した光触媒がそれぞれの効果を発揮するような光触媒はいまだ製造されておらず、その製造方法も見出されていなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Chem.Soc.Rev.,2009,38,253-278
【非特許文献2】J. Am. Chem. Soc., 1981, 103, 4685-4690.
【非特許文献3】J. Photochem. Photobio. A:Chem 108, (1997) 1-35
【非特許文献4】日本化学会誌 1984, (2), 258-263.
【非特許文献5】J. Phys. Chem. C, 2007, 111, 7851 - 7861.
【非特許文献6】Chem. Mater. 2010, 22, 612-623.
【非特許文献7】J. Phys. Chem. A 2002, 106, 6750-6753.
【非特許文献8】Chem. Mater. 2008, 20, 1299-1307.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、光水分解反応用の触媒であって、光半導体上に酸化反応用および還元反応用双方の助触媒を併せ持ち、光照射下における光水分解反応速度を飛躍的に増大させることができる、効率的で工業的に有利な水分解反応用光触媒、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討し、以下の事項を見出すに至った。
(1)光半導体粒子を合成し、この粒子に酸化反応用の助触媒および還元反応用の助触媒を担持する。図1はその概念図である。これら助触媒は、水の還元、もしくは酸化反応を触媒しながらも、水分解の最終生成物である水素と酸素から水を生成する反応は触媒しないものを選択する。
【0013】
(2)それぞれの助触媒を効果的に担持するための手法として、光電着担持法(光還元析出担持法ともいう)と吸着担持法の二種類の手法で行う。助触媒の担持方法としては、含浸担持などの吸着法が一般的であるが、二種類の助触媒それぞれを吸着法で担持すると、吸着サイトをコントロールできないため、一方の助触媒がもう一方の助触媒を被覆してしまったり、互いの助触媒が接触して再結合中心になってしまい効果が出なくなるといった問題があった。これに対し、片方の助触媒は従来どおり吸着法で担持し、もう片方の助触媒(好ましくは還元反応助触媒)を光電着法で担持させるようにすれば、少なくとも後者は光触媒の還元サイトに選択的に担持させることになるので(公知文献J. Phys. Chem. C 2007, 111, 7554-7560)、上記問題は低減される。なお、ここでいう光電着法(光電析法ともよばれる)とは、金属塩を光によって還元し、光半導体粒子表面へ担持させる方法である。
【0014】
(3)助触媒の量は少なすぎても効果がなく、多すぎると助触媒自身が光を吸収・散乱するなどして光触媒の光吸収を妨げたり、再結合中心として働いたりしてかえって触媒活性が低下することが知られている。還元反応用の助触媒の担持量の最適範囲は、文献(Chem. Mater. 2001, 13, 1194-1199、J. Phys. Chem. B 2005, 109, 21915-21921、J. Phys. Chem. B 2006, 110, 13753-13758、Journal of Catalysis 243 (2006) 303-308)によって、光半導体粒子基準で0.1〜4質量%であることが既に知られている。従って、助触媒の担持量としては、光半導体粒子を基準(100質量%)として、酸化反応助触媒の金属担持量は、好ましくは0.01質量%以上1質量%以下、より好ましくは0.01質量以上0.5質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以上0.1質量%以下であり、還元反応助触媒の金属担持量は、好ましくは0.01質量%以上20質量%以下、好ましくは0.01質量%以上15質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以上10質量%以下である。
【0015】
以上の検討事項を元に、本発明者らは以下の発明を完成させた。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、これにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0016】
第1の本発明は、光半導体(10)、酸化反応助触媒(20)および還元反応助触媒(30)を備え、光半導体(10)に酸化反応助触媒(20)および還元反応助触媒(30)が担持されてなる光水分解反応用光触媒であって、光半導体(10)が、可視光領域の光を利用するものである光水分解反応用光触媒(100)である。
【0017】
第1の本発明において、光半導体(10)は、400nm〜1000nmの光(好ましくは420nm〜800nm)を吸収し、かつその価電子帯上端がO/OH(塩基性溶液中)またはO/HO(中性、酸性溶液中)の酸化還元電位よりも低く、かつ伝導体下端がHO/H(中性、塩基性溶液中)またはH/H(酸性溶液中)の酸化還元電位よりも高い光半導体粒子であることが好ましく、該光半導体粒子は二種以上の混合物であってもよい。
【0018】
第1の本発明において、酸化反応助触媒(20)の金属担持量は、光半導体(10)を100質量%として、0.01質量%以上1質量%以下であることが好ましく、還元反応助触媒(30)の金属担持量は、光半導体(10)を100質量%として、0.01質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0019】
第1の本発明において、酸化反応助触媒(20)は、第2〜14族の金属、該金属の金属間化合物、合金、または、これらの酸化物、複合酸化物、窒化物、酸窒化物、硫化物、酸硫化物、あるいは、これらの混合物のいずれかであることが好ましい。ここで、「金属間化合物」とは、2種以上の金属元素から形成される化合物であり、金属間化合物を構成する成分原子比は必ずしも化学量論比でなく、広い組成範囲をもつものをいう。「これらの酸化物、複合酸化物、窒化物、酸窒化物、硫化物、酸硫化物」とは、第2〜14族の金属、該金属の金属間化合物、または、合金の酸化物、複合酸化物、窒化物、酸窒化物、硫化物、酸硫化物をいう。「これらの混合物」とは、以上例示した化合物のいずれか二以上の混合物をいう。また、「酸化物」、「複合酸化物」には、金属の一部が部分的に酸化されているものも含む。また、「窒化物」「硫化物」には金属の一部が部分的に窒化もしくは硫化されているものを含み、「酸窒化物」「酸硫化物」には、酸化物が一部窒化されているものおよび一部硫化されているもの、窒化物もしくは硫化物が一部酸化されているものを含む。
【0020】
第1の本発明において、還元反応助触媒(30)は、第3〜13族の金属、該金属の金属間化合物、合金、または、これらの酸化物、複合酸化物、酸窒化物、硫化物、酸硫化物、炭化物、窒化物、あるいは、これらの混合物のいずれかであることが好ましい。ここで、「金属間化合物」は上記と同様であり、「これらの酸化物、複合酸化物、酸窒化物、硫化物、酸硫化物、炭化物、窒化物」とは、第3〜13族の金属、該金属の金属間化合物、合金の酸化物、複合酸化物、酸窒化物、硫化物、酸硫化物、炭化物または窒化物をいう。「これらの混合物」とは、以上例示した化合物のいずれか二以上の混合物をいう。また、「酸化物」、「複合酸化物」には、金属の一部が部分的に酸化されているものも含み、「酸窒化物」には、部分的に窒化された酸化物も含む。また、「窒化物」「硫化物」には金属の一部が部分的に窒化もしくは硫化されているものを含み、「酸窒化物」「酸硫化物」には、酸化物が一部窒化されているものおよび一部硫化されているもの、窒化物もしくは硫化物が一部酸化されているものを含む。
【0021】
第1の本発明において、光半導体(10)は、GaN:ZnO,ZnGeN:ZnO,LaTiON,CaNbON,TaON,Ta,SmTi,LaIn2−xTi、あるいは、Cr,Ta,Ni,SbまたはRhでドープもしくは共ドープしたKTaO,SrTiOまたはTiOのいずれかであることが好ましい。なお、「Cr,Ta,Ni,SbまたはRhでドープもしくは共ドープしたKTaO,SrTiOまたはTiO」は、「KTaO:M」、「SrTiO:M」、「TiO:M」と表示され、この場合Mは、Cr,Ta,Ni,SbまたはRhを表し、これら金属がドープされていることを示す。また、共ドープされている場合は、Mは「M1/M2」と表され、これはM1とM2が共ドープされていること表しており、M1とM2は上記したMと同様の金属を表す。
【0022】
第2の本発明は、光半導体(10)に、酸化反応助触媒(20)と還元反応助触媒(30)を担持させた光水分解反応用光触媒(100)の製造方法であって、
酸化反応助触媒(20)または還元反応助触媒(30)のいずれか一方を吸着担持法により、光半導体(10)に担持させて光触媒中間体を形成する第一工程(S2)、および、工程(S2)で担持していない方の助触媒を光電着担持法により光触媒中間体に担持させる第二工程(S3)、を含む、光水分解反応用光触媒の製造方法である。
【0023】
後者の助触媒を光電着担持法により担持させることで、後者の助触媒は光半導体(10)の還元サイトに選択的に担持されることになり、このため、二種の助触媒、好ましくは後者の吸着サイトをコントロールできるので、一方の助触媒が他方の助触媒を被覆したり、互いの助触媒が接触して再結合中心になってしまい効果が出なくなるといった問題を抑制し、優れた性能を有する光水分解反応用光触媒(100)を製造できる。
【0024】
第2の本発明において、第一工程(S2)が、光半導体(10)に、酸化反応助触媒(20)を担持させる工程であり、第二工程(S3)が、反応中間体に還元反応助触媒(30)を担持させる工程であることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の光水分解反応用光触媒(100)は、所定の光半導体(10)に、酸化反応助触媒(20)および還元反応助触媒(30)の両方を担持してなることで、可視光領域の光を利用して、高い活性で水分解反応を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の光水分解反応用光触媒の触媒設計の概念図である。
【図2】光半導体10のエネルギー構造を示した説明図である。
【図3】本発明の光水分解反応用光触媒100の製造方法を示すフロー図である。
【図4】(a)および(b)は、光触媒による水分解活性評価装置の模式図である。
【図5】実施例1、比較例1および比較例2における光水分解によるガス発生量時間変化である。
【図6】実施例1における助触媒担持量の光触媒活性に対する影響を示す図である。
【図7】実施例2および比較例3における光水分解によるガス発生量時間変化である。
【図8】実施例2における助触媒担持量の光触媒活性に対する影響を示す図である。
【図9】比較例4および比較例5における光水分解によるガス発生量時間変化である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<光水分解用光触媒>
図1に本発明の光水分解反応用光触媒100の触媒設計を表した概念図を示す。本発明の光水分解反応用光触媒100は、光半導体10、酸化反応助触媒20および還元反応助触媒30を備え、光半導体10に酸化反応助触媒20および還元反応助触媒30が担持されてなる。図1において、「C.B.」とは、Conduction Band(伝導帯)を示し、「V.B.」とは、Valence Band(価電子帯)を示す。光半導体10にバンドギャップ以上のエネルギーの光(hν)を照射すると、価電子帯の電子が伝導帯へと励起される。励起された電子(e)は、水素イオンを還元し水素を発生させるが、このときの還元反応を助けるのが還元反応助触媒30である。また、価電子帯に形成された正孔(h)は、水を酸化し酸素を発生させるが、このときの酸化反応を助けるのが酸化反応助触媒20である。
【0028】
(光半導体10)
図2に、光半導体10のエネルギー構造を示した。光半導体10を構成する光触媒としては、次の条件を満たしていればいかなる化合物でもよい。(1)光照射によって生成する電子(e)の電位が水素イオンもしくは水分子を水素分子に還元できる電位(H/H)よりも負であること、かつ光照射によって生成する正孔(h)の電位が水もしくは水酸化物イオンを酸素分子に酸化できる電位(O/HO)よりも正であること。(2)光半導体10が水溶液中で光照射され、水分解反応が進行しても安定であること。
【0029】
光半導体10としては、可視光応答型の光半導体を用いることができ、具体的には、BiWO,BiYWO,In(ZnO),InTaO,InTaO:Ni(「光半導体:M」は、光半導体にMをドープしていることを示す。以下同様。),TiO:Ni,TiO:Ru,TiORh,TiO:Ni/Ta(「光半導体:M1/M2」は、光半導体にM1とM2を共ドープしていることを示す。以下同様。),TiO:Ni/Nb,TiO:Cr/Sb,TiO:Ni/Sb,TiO:Sb/Cu,TiO:Rh/Sb,TiO:Rh/Ta,TiO:Rh/Nb,SrTiO:Ni/Ta,SrTiO:Ni/Nb,SrTiO:Cr,SrTiO:Cr/Sb,SrTiO:Cr/Ta,SrTiO:Cr/Nb,SrTiO:Cr/W,SrTiO:Mn,SrTiO:Ru,SrTiO:Rh,SrTiO:Rh/Sb,SrTiO:Ir,CaTiO:Rh,LaTi:Cr,LaTi:Cr/Sb,LaTi:Fe,PbMoO:Cr,RbPbNb10,HPbNb10,PbBiNb,BiVO,BiCuVO,BiSnVO,SnNb,AgNbO,AgVO,AgLi1/3Ti2/3,AgLi1/3Sn2/3,などの酸化物、LaTiON,Ca0.25La0.75TiO2.250.75,TaON,CaNbON,CaTaON,SrTaON,BaTaON,LaTaON,YTa,(Ga1−xZn)(N1−x),(Zn1+xGe)(N)(xは、0−1の数値を表す),TiN,などの酸窒化物、Ta,GaN:Mgなどの窒化物、CdSなどの硫化物、CdSeなどのセレン化物、LnTi(Ln:Pr,Nd,Sm,Gd,Tb,Dy,Ho,およびEr)やLa,Inを含むオキシサルファイド化合物(Chemistry Letters、2007,36,854−855)を含むことができるが、ここに例示した材料に限定されるものではない。
【0030】
また、本発明における光半導体10としては、前記可視光応答型光半導体のほかに、紫外光応答型の光半導体に増感剤を担持したものを用いることもできる。紫外光応答型の光半導体とは、具体的には、TiO,CaTiO,SrTiO,SrTi,SrTi,KLaTi10,RbLaTi10,CsLaTi10,CsLaTiNbO10,LaTiO,LaTi,LaTi,LaTi:Ba,KaLaZr0.3Ti0.7,LaCaTi,KTiNbO,NaTi13,BaTi,GdTi,YTi,(NaTi,KTi,KTi,CsTi,H−CsTi(H−CsはCsがHでイオン交換されていることを示す。以下同様),CsTi11,CsTi13,H−CsTiNbO,H−CsTiNbO,SiO−pillared KTi,SiO−pillared KTi2.7Mn0.3(J. Mol. Catal. A: Chem. 2000, 155, 131))(以上、チタン酸化物);ZrO,Na13
【0031】
Nb17,RbNb17,CaNb,SrNb,BaNb15,NaCaNb10,ZnNb,CsNb11,LaNbO(H−KLaNb,H−RbLaNb,H−CsLaNb,H−KCaNb10,SiO−pillared KCaNb10(Chem.Mater.1996,8,2534.),H−RbCaNb10,H−CsCaNb10,H−KSrNb10,H−KCANaNb13)(以上、Nb酸化物);
【0032】
Ta,KPrTa15,KTaSi13,KTa12,LiTaO,NaTaO,KTaO,AgTaO,KTaO:Zr,NaTaO:La,NaTaO:Sr,NaTa,KTa(pyrochlore),KTa(pyrochlore),CaTa,SrTa,BaTa,NiTa,RbTa17,HLa2/3Ta,KSr1.5Ta10,LiCaTa10,KBaTa10,SrTa15,BaTa15,H1.8Sr0.81Bi0.19Ta,Mg−Ta oxide(Chem.Mater.2004 16, 4304−4310),LaTaO,LaTaO(以上、タンタル酸化物);
【0033】
PbWO,RbWNbO,RbWTaO,CeO:Sr,BaCeO,(Bi,BiMo,BaBiTi15,BiTiNbO,PbMoO,(NaBi)0.5MoO,(AgBi)0.5MoO,(NaBi)WO,(AgBi)0.5WO,Ga1.14In0.86,Ti1.5Zr1.5(PO),NaInO,CaIn,SrIn,LaInO,YxIn−xO,NaSbO,CaSb,CaSb,SrSb,SrSnO,ZnGa,ZnGeO,LiInGeO,Ga,Ga:Znなどである。また、増感剤としては、[Ru(bpy)2+、エリスロシン(erythrosine),亜鉛ポルフィリン、CdSなどがある。
【0034】
また、光半導体10としては、前記可視光応答型光半導体に、p型もしくはn型光半導体を表面に吸着させ、p−n接合を形成させたものを使用することができる。用いる光半導体としては、CuO,CuO,CuI,Cu(InGa)S,Cu(InGa)Se,CuGaS,CuGaSSe,CuGaSe,CdS,CdTe,CdZnTe,CdSe,CuZnSnS,CuGa,CuInS,Cu(InAl)Se,CuIn,CuAlO,CuGaO,SrCu,GaP,GaAs,GaAsP,GaN,InP,InAs,GaInAsP,GaSb,Si,SiC,Ge,ZnS,Feなどの無機系半導体、およびフラーレン誘導体、ポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポリチオフェン誘導体等の有機系半導体を使用することができるが、ここに例示した材料に限定されるものではない。
【0035】
光半導体10としては、前記可視光応答型光半導体が、可視光を直接使用することができ、また製造面での有利さから好ましく、中でも、GaN:ZnO,ZnGeN:ZnO,LaTiON,CaNbON,TaON,Ta,SmTi,LaIn2−xTi、あるいは、Cr,Ta,Ni,SbまたはRhでドープもしくは共ドープしたKTaO,SrTiOまたはTiOのいずれかであることが好ましい。
【0036】
さらに、光半導体10としては、中でも、LaTiON,CaNbON,Ga1−xZn1−x(xは、0〜1の数値を表す。),SmTiを用いることが、光触媒活性が高いこと、地上における存在量が豊富であること、価格が低い点から好ましい。
【0037】
光半導体10は、粒子であることが好ましく、その一次粒子の粒径は、特に限定されるものではないが、通常0.001μm以上、好ましくは0.005μm以上であり、通常500μm以下であり、好ましくは10μm以下である。光半導体10の粒子径は、XRD、TEM、SEM法等公知の手段によって適宜測定することができる。
【0038】
(酸化反応助触媒20および還元反応助触媒30)
上記光半導体10には、酸化反応助触媒20(酸素発生側)および還元反応助触媒30(水素発生側)の双方の助触媒を担持する。酸化反応助触媒20としては、第2〜14族の金属、該金属の金属間化合物、合金、または、これらの酸化物、複合酸化物、窒化物、酸窒化物、硫化物、酸硫化物、あるいは、これらの混合物のいずれかを用いることが好ましい。ここで、「金属間化合物」とは、2種以上の金属元素から形成される化合物であり、金属間化合物を構成する成分原子比は必ずしも化学量論比でなく、広い組成範囲をもつものをいう。「これらの酸化物、複合酸化物、窒化物、酸窒化物、硫化物、酸硫化物」とは、第2〜14族の金属、該金属の金属間化合物、または、合金の酸化物、複合酸化物、窒化物、酸窒化物、硫化物、酸硫化物をいう。「これらの混合物」とは、以上例示した化合物のいずれか二以上の混合物をいう。
【0039】
本発明における酸化反応助触媒20としては、好ましくは、Mg,Ti,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Ga,Ru,Rh,Pd,Ag,Cd,In,Ce,Ta,W,Ir,PtまたはPbの金属、これらの酸化物または複合酸化物であり、より好ましくは、Mn,Co,Ni,Ru,Rh,Irの金属、これらの酸化物または複合酸化物であり、さらに好ましくは、Ir,MnO,MnO,Mn,Mn,CoO,Co,NiCo,RuO,Rh,IrOである。
【0040】
本発明における還元反応助触媒30としては、第3〜13族の金属、該金属の金属間化合物、合金、または、これらの酸化物、複合酸化物、酸窒化物、硫化物、酸硫化物、炭化物、窒化物、あるいは、これらの混合物のいずれかを用いることが好ましい。ここで、「金属間化合物」は上記と同様であり、「これらの酸化物、複合酸化物、酸窒化物、硫化物、酸硫化物、炭化物、窒化物」とは、第3〜13族の金属、該金属の金属間化合物、合金の酸化物、複合酸化物、酸窒化物、硫化物、酸硫化物、炭化物または窒化物をいう。「これらの混合物」とは、以上例示した化合物のいずれか二以上の混合物をいう。
【0041】
還元反応助触媒30としては、好ましくは、Pt,Pd,Rh,Ru,Ni,Au,Fe,NiO,RuO,IrO,Rh,および、Cr−Rh複合酸化物,コアシェル型Rh/Cr,Pt/Cr等を挙げることができる。
【0042】
上記した助触媒の担持量としては、酸化反応助触媒20の金属担持量は、特に限定されないが、光半導体10を基準(100質量%)として、通常0.01質量%以上、1質量%以下、好ましくは上限が0.5質量%以下、より好ましくは上限が0.1質量%以下である。還元反応助触媒30の金属担持量は、特に限定されないが、光半導体10を基準(100質量%)として、通常0.01質量%以上、20質量%以下、好ましくは上限が15質量%以下、より好ましくは上限が10質量%以下である。
ここでいう「金属担持量」とは、担持させた助触媒中の金属元素が占める量をいう。
【0043】
<光水分解反応用光触媒の製造方法>
次に、本発明の光水分解用光触媒100の製造方法について説明する。なお、以下に示す製造方法は、あくまで本発明の光触媒を製造するための方法の一実施形態であって、他の方法を排除する趣旨ではない。
【0044】
図3にフローチャートを示したように、本発明の光水分解反応用光触媒100の製造方法は、光半導体10を準備する工程(S1)、該光半導体10に酸化反応助触媒20または還元反応助触媒30のいずれか一方を吸着担持法により担持させて光触媒中間体を形成する第一工程(S2)、および、第一工程で担持していない方の助触媒を光電着担持法により光触媒中間体に担持させる第二工程(S3)、を含んでいる。
【0045】
工程S1の具体的形態としては、可視光を吸収して光半導体特性を示す光半導体10を調製する方法があり、例えば、GaN:ZnOを準備する方法として、J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 8286.記載の方法が挙げられる。
【0046】
工程S2および工程S3の具体的形態を説明する。
ここで光電着担持法とは、光半導体粒子と金属塩を共存させ、光照射によって金属塩を還元し、金属もしくは金属化合物として光半導体粒子上に担持する方法をいう。
まず、THF、エタノールなどの溶媒に、酸化反応助触媒20もしくは還元反応助触媒30のいずれか一方の助触媒ナノ粒子もしくは助触媒粒子の前駆体を分散させる。この分散液に、調製した光半導体10を懸濁させる。この懸濁液を1〜12時間撹拌し、助触媒ナノ粒子もしくは助触媒粒子の前駆体を光半導体の表面へ吸着させる。懸濁させている際に、超音波処理を行ってもよい。これにより、助触媒ナノ粒子もしくは助触媒粒子の前駆体の光半導体の表面への吸着を促進させることができる。また、助触媒ナノ粒子もしくは助触媒粒子の前駆体の粒子径としては、特に限定されないが、通常1nm以上、好ましくは2nm以上、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
【0047】
上記懸濁液をろ過、または、溶媒をドライアップした後、空気中、50〜500℃で、0.5〜12時間焼成する。このようにして調製した光触媒中間体に、更にもう片方の助触媒を担持させるため、次に担持する助触媒の前駆体を溶解させた溶液(溶媒としては、上記の工程S1におけるものと同様のものを使用できる。)に光触媒中間体を懸濁させる。この懸濁液に、可視光領域の光(λ≧420nm)を室温で空気および酸素の非存在下において数時間照射し、助触媒となる金属もしくは金属酸化物を光電着担持させる。担持する助触媒の種類に応じてこの光電着の手順を繰り返し行う。なお、使用する光半導体10、助触媒(前駆体)20、30の種類に応じて、焼成温度、光電着に要する時間は異なる。
【0048】
助触媒ナノ粒子は、例えば、保護基としてPVA(ポリビニルアルコール)やPVP(ポリビニルピロリドン)を使用するコロイド法など(Polymer J. 1999, 31, 1127-1132., Angew. Chem., Int. Ed. 2007, 46, 5397-5401)に従って合成することができる。
【0049】
助触媒粒子の前駆体としては、助触媒金属の水酸化物、塩化物、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩のほか、各種アルコラート、フェノラート、カルボキシラート、アセチルアセトナート、チオラート、チオカルボキシラート錯体、アンミン錯体、各種アミン錯体、各種置換ピリジン、イミダゾール、ビピリジン、ターピリジン、フェナンスロリン、ポルフィリン錯体、各種ニトリル錯体等を使用することができるが、ここに例示した材料に限定されるものではない。
【0050】
上記した本発明の製造方法において、第一工程(S2)では、酸化反応助触媒20を担持させて、その後の第二工程(S3)では、還元反応助触媒30を担持させることが好ましい。第一工程(S2)において、助触媒を担持後、焼成処理を行うが、第一工程(S2)において先に還元反応助触媒30を担持して焼成処理をすると、還元反応助触媒30の活性が低下してしまう虞があるため、上記の順番とすることが好ましい。
【実施例】
【0051】
(粒子径の測定条件)
以下の実施例において、光半導体の粒子径は、走査型電子顕微鏡(Scanning electron microscope、以下SEM。)により測定した。
測定装置:日立製作所社製:S−4700
【0052】
また、助触媒の粒子径は、透過型電子顕微鏡(Transmission electron microscope、以下、TEM。)により測定した。
測定装置:日本電子(JEOL)社製 JEM−1011
加速電圧:100kV
【0053】
(実施例1、比較例1、2)
<GaN:ZnO(ZnO/GaN≒0.13(モル比))の調製>
1.08gのGaと0.94gのZnOを混合し、アンモニア気流下(250mL・min−1)、825℃で13時間窒化処理を行った。光触媒の生成はXRD(X−ray diffraction)およびEDX(energy dispersive X−ray)によって確認した。拡散反射スペクトルの測定により、調製した光触媒GaN:ZnOのバンドギャップエネルギーは2.68eVであった。
SEM観察による光半導体粒子GaN:ZnOの粒子径は100〜500nmであった。
【0054】
<MnOナノ粒子の調製>
窒素雰囲気下でエタノール(30mL)、蒸留水(40mL)、ヘキサン(70mL)の混合溶媒中にMnCl・4HO(40mmol)とオレイン酸ナトリウム(80mmol)を溶解し、70℃で一晩加熱した。分液漏斗で有機相を分取し、溶媒を留去した後、生成したマンガン−オレイン酸錯体(0.4mmol)を1−オクタデカン(10mL)中で次のような手順で加熱処理を行った。混合物を減圧下120℃で1時間加熱し、続いて温度を10℃・min−1で300℃まで昇温した。300℃でマグネチックスターラーで30分間撹拌した後、室温まで冷却した。生成物を酢酸エチルで洗浄した後、THFに分散させてMnOナノ粒子を得た。TEMでの観察の結果、MnOナノ粒子の平均直径は、9.2±0.4nmであった。
【0055】
<Mn/GaN:ZnOの調製>
調製したGaN:ZnOをMnOナノ粒子(GaN:ZnOに対して、0.01〜0.5質量%Mn)を分散させたTHFに懸濁した。超音波処理を行った後、16−ヒドロキシヘキサデカン酸(20μmol)を含むTHF(5mL)を懸濁液に加え、3時間撹拌した。この処理で全てのMnOナノ粒子はGaN:ZnO表面に吸着した。MnOの吸着したGaN:ZnOを空気中で室温から5K・min−1の速度で400℃まで昇温し、トータルで3時間焼成した。焼成後、MnOはMnに変化したが、粒子サイズに大きな変化は見られなかった。MnOナノ粒子が全量吸着していることはUV−VISスペクトルで確認されており、MnのGaN:ZnOに対する金属担持量は、仕込み量と同じく0.01〜0.5質量%である。
【0056】
<Rh/Cr(core/shell)/GaN:ZnO/Mnの調製>
Mn/GaN:ZnO(0.13g)をNaRhCl(GaN:ZnOに対して1質量%Rh)水溶液に懸濁し、図4(a)に示す装置を用い、空気の非存在下で可視光(λ>420nm)を4時間照射しRh(III)を金属Rhに光還元した。Rhの析出の後、得られたサンプルをKCrO水溶液(0.8mM、GaN:ZnOに対して
1.5質量%Cr)に懸濁し、再度可視光(λ>420nm)を4時間照射しKCrOをCrに還元した。光照射はカットオフフィルターを備えた300Wキセノンランプを使用した。光照射時には冷却水を使用し溶液温度を室温に保つようにした。生成物を蒸留水でよく洗浄し、70℃で一晩乾燥させた。RhのGaN:ZnOに対する金属担持量は、0.75 質量%であり、CrのGaN:ZnOに対する金属担持量は、0.31質量%である。
【0057】
<Rh/Cr/GaN:ZnOの調製>
前記Rh/Cr/GaN:ZnO/Mnの調製で述べた手法で、原料として、Mn/GaN:ZnO(0.13g)の代わりにGaN:ZnO(0.13g)を使用した他は同様にして、Rh/Cr/GaN:ZnOを調製した。RhのGaN:ZnOに対する金属担持量は、0.75質量%であり、CrのGaN:ZnOに対する金属担持量は、0.31質量%である。
【0058】
<光水分解反応>
光照射装置は、図4(a)に示す装置を使用した(300Wキセノンランプ(λ>420nm)とカットオフフィルターを備えている。)。上記で調製した光触媒0.1gと100mL純水とを閉鎖循環系に接続した反応容器内で数回脱気し、空気の残っていないことを確認した。その後に光照射を開始し、ガスの生成量を測定した。生成ガスの定量はガスクロマトグラフィーを使用した。
【0059】
上記で調製した、「Mn/GaN:ZnO」(比較例1)、「Rh/Cr/GaN:ZnO」(比較例2)、および「Rh/Cr/GaN:ZnO/Mn」(実施例1)の光水分解反応活性を比較した結果を図5に示した。
図5に示すように、酸化反応助触媒であるMnのみを担持した「Mn/GaN:ZnO」(比較例1)は水分解活性を示さなかった。一方還元反応助触媒であるRh/Cr(core−shell)のみを担持した「Rh/Cr/GaN:ZnO」(比較例2)に比べて、両方の助触媒を担持した「Rh/Cr/GaN:ZnO/Mn」(実施例1)(図5のデータに記載の触媒のMn担持量は0.05質量%である。)は、より高い水分解活性を示し、その活性は従来型触媒である「Rh/Cr/GaN:ZnO」(比較例2)の約1.8倍であった。このことから光触媒上に酸化還元用双方の助触媒を担持することの有効性が示された。
【0060】
また、図6に、「Rh/Cr/GaN:ZnO/Mn」を用いた場合における、水分解反応におけるMn担持量の影響を調べた結果を示した(図4(a)の装置を使用、触媒:0.1g、純水100mL、300Wキセノンランプとカットオフフィルター)。図6に示すように、Mn担持量は0.05質量%で最も高い水分解活性を示し、最適担持量は0.01〜0.1質量%であることが分かった。なお、図6に示したMn担持量(質量%)の基準は、光半導体つまり、「GaN:ZnO」である。
【0061】
(実施例2、比較例3)
<Ruナノ粒子の調製>
公知文献(Polymer J. 1999, 31, 1127-1132.)に従いRuナノ粒子を調製した。PVP K−300(ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)、mw=40,000)2.0mmolとRuCl3HO 0.05mmolをエタノール−水混合溶媒(エタノール:水=1:1 v/v)に溶解して50mLとした。混合液を95〜100℃で2時間加熱還流した。
【0062】
<RuO/GaN:ZnOの調製>
前記Mn/GaN:ZnOの調製で述べた手法で、原料にRuナノ粒子を使用したこと、焼成時間をトータルで2時間としたことの他は同様にして、「RuO/GaN:ZnO」を調製した。RuのGaN:ZnOに対する金属担持量は、0.01〜0.1質量%であった。
【0063】
<Rh/Cr(core/shell)/GaN:ZnO/RuOの調製>
前記「Rh/Cr/GaN:ZnO/Mn」の調製で述べた手法で、原料にRuO/GaN:ZnOを使用した他は同様にして、「Rh/Cr(core/shell)/GaN:ZnO/RuO」を調製した。RhのGaN:ZnOに対する金属担持量は、0.75質量%であり、CrのGaN:ZnOに対する金属担持量は、0.31質量%であった。
【0064】
前記のようにして調製した「Rh/Cr/GaN:ZnO」(比較例3)、および、「Rh/Cr/GaN:ZnO/RuO」(実施例2)の光水分解反応活性を図4(b)に示す装置で評価し、比較した結果を図7に示した(触媒:0.15g、純水400mL、450W高圧水銀ランプ(λ>400nm)およびNaNO溶液フィルター)。なお、図7のデータに記載の「Rh/Cr/GaN:ZnO/RuO」触媒のRu担持量は0.03質量%である。
【0065】
実施例1の場合と同様に、還元反応助触媒であるRh/Cr(core−shell)のみを担持した「Rh/Cr/GaN:ZnO」(比較例3)に比べて、両方の助触媒を担持した「Rh/Cr/GaN:ZnO/RuO」(実施例2)はより高い水分解活性を示し、その活性は従来型触媒である「Rh/Cr/GaN:ZnO」(比較例3)の約1.5倍であった。
【0066】
また、図8に、「Rh/Cr/GaN:ZnO/RuO」を用いた場合における水分解反応におけるRu担持量の影響を調べた結果を示した。図8に示すように、Ru担持量は0.03質量%で最も高い水分解活性を示し、最適担持量は0.01〜0.05質量%であることが分かった(図4(b)の装置使用、触媒:0.15g、純水400mL、450W高圧水銀ランプ(λ>400nm)およびNaNO溶液フィルター)。なお、図8に示したRu担持量(質量%)の基準は、光半導体つまり、「GaN:ZnO」である。
【0067】
(比較例4、5)
<両吸着担持によるRhCr2−x/GaN:ZnO/Mnの調製>
公知文献(J. Phys. Chem. B 2006, 110, 13753-13758)に従って調製を行った。前記Mn/GaN:ZnO(0.3g〜0.4g)をNaRhCl・2HO(GaN:ZnOに対して1.0質量%Rh),Cr(NO)・9HO(GaN:ZnOに対して1.5質量%Cr)を含む3mL〜4mL水溶液に懸濁し、蒸発皿内、ウォーターバス上でガラス棒で撹拌しながら溶媒を蒸発乾燥させた。その後空気中400℃で焼成した。
【0068】
<RhCr2−x/GaN:ZnOの調製>
前記RhCr2−x/GaN:ZnO/Mnの調製で述べた手法で、原料として、Mn/GaN:ZnOの代わりにGaN:ZnOを使用した他は同様にして、「RhCr2−x/GaN:ZnO」を調製した。
【0069】
前記のようにして調製した、「RhCr2−x/GaN:ZnO」(比較例4)、および、「RhCr2−x/GaN:ZnO/Mn」(比較例5)の光水分解反応活性を図4(a)に示す装置で比較した結果を図9に示した(触媒:0.1g、純水100mL、300Wキセノンランプ(λ>420nm))。
【0070】
図9に示すように、還元反応助触媒のみを担持した「RhCr2−x/GaN:ZnO」(比較例4)と、酸化反応および還元反応用の助触媒を双方とも吸着法によって担持した「RhCr2−x/GaN:ZnO/Mn」(比較例5)の光水分解反応活性はほとんど変わらなかった。これは、光電着担持法ではRhメタルの上に選択的に析出していたCrが、吸着担持では酸化反応側の助触媒であるMn上にも析出してしまい、Mnの助触媒機能を阻害していると推定される。このことから、両助触媒を担持するにあたっては、少なくとも一方を光電着によって担持することが重要であることが明らかである。
【0071】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う光水分解用光触媒および光水分解用光触媒の製造方法もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、可視光を利用して水分解反応を行う光触媒の設計および作製手法に新たな可能性を提供する。また、本発明の光触媒を利用して、これまでよりも更に効率的に水分解を進行させるシステムを構築できる。本発明によると、光触媒を用いた効果的な水分解による水素製造技術が提供できる。
【符号の説明】
【0073】
100 光水分解反応用光触媒
10 光半導体
20 酸化反応助触媒
30 還元反応助触媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光半導体、酸化反応助触媒および還元反応助触媒を備え、該光半導体に該酸化反応助触媒および還元反応助触媒が担持されてなる光水分解反応用光触媒であって、
前記光半導体が、可視光領域の光を利用するものである光水分解反応用光触媒。
【請求項2】
前記酸化反応助触媒の金属担持量が、前記光半導体を100質量%として、0.01質量%以上1質量%以下であり、還元反応助触媒の金属担持量が、前記光半導体を100質量%として、0.01質量%以上20質量%以下である、請求項1に記載の光水分解反応用光触媒。
【請求項3】
前記酸化反応助触媒が、第2〜14族の金属、該金属の金属間化合物、合金、または、これらの酸化物、複合酸化物、窒化物、酸窒化物、硫化物、酸硫化物、あるいは、これらの混合物のいずれかである請求項1または2に記載の光水分解反応用光触媒。
【請求項4】
前記還元反応助触媒が、第3〜13族の金属、該金属の金属間化合物、合金、または、これらの酸化物、複合酸化物、酸窒化物、硫化物、酸硫化物、炭化物、窒化物、あるいは、これらの混合物のいずれかである、請求項1〜3のいずれかに記載の光水分解反応用光触媒。
【請求項5】
前記光半導体が、GaN:ZnO,ZnGeN:ZnO,LaTiON,CaNbON,TaON,Ta,SmTi,LaIn2−xTi、あるいは、Cr,Ta,Ni,SbまたはRhでドープもしくは共ドープしたKTaO,SrTiOまたはTiOのいずれかである、請求項1〜4のいずれかに記載の光水分解反応用光触媒。
【請求項6】
光半導体に、酸化反応助触媒と還元反応助触媒とを担持させた光水分解反応用光触媒の製造方法であって、
酸化反応助触媒または還元反応助触媒のいずれか一方を吸着担持法により、前記光半導体に担持させて光触媒中間体を形成する第一工程、および、前記工程で担持していない方の助触媒を光電着担持法により前記光触媒中間体に担持させる第二工程、
を含む、光水分解反応用光触媒の製造方法。
【請求項7】
前記第一工程が、前記光半導体に、前記酸化反応助触媒を担持させる工程であり、前記第二工程が、前記反応中間体に前記還元反応助触媒を担持させる工程である、請求項6に記載の光水分解反応用光触媒の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−173102(P2011−173102A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41040(P2010−41040)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年8月25日 社団法人 日本化学会 コロイドおよび界面化学部会発行の「第62回 コロイドおよび界面化学討論会 講演要旨集」に発表
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【Fターム(参考)】