説明

光沢コーティング錠の製造方法

【課題】光沢化剤を用いなくても、錠剤に光沢やつやを付与することができる簡便な方法を提供する。
【解決手段】素錠表面にフィルムコーティング剤液を噴霧する工程と、この工程で得られたコーティング錠にさらに水を噴霧する工程とを有する光沢コーティング錠の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡便に光沢を有するコーティング錠を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内服の錠剤には、商品価値、視認性の向上、服用性の向上を目的として、錠剤表面に光沢やつやを付与する。錠剤表面に光沢やつやを付与するためには、カルナウバロウ等の光沢化剤を含有するコーティング剤を噴霧して、素錠をコーティングする方法が用いられてきた。しかしながら、光沢化剤を添加することにより、コーティング膜強度の上昇による錠剤の崩壊遅延や、刻印部分の目詰まり、服用時の味が悪くなる等の嗜好性の低下等の問題があった。以上のことから、簡便な方法で、光沢化剤を用いることなく、錠剤に光沢やつやを付与する方法が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−191904号公報
【特許文献2】特開平5−294829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、光沢化剤を用いなくても、錠剤に光沢やつやを付与することができる簡便な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、素錠にコーティング剤を含有するコーティング液を噴霧終了した後に、固形分を含まない水を噴霧することで、驚くべきことに、コーティング錠剤表面に光沢が表れ、外観が非常にきれいなコーティング錠が得られることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0006】
従って、本発明は下記光沢コーティング錠の製造方法を提供する。
[1].素錠表面にフィルムコーティング剤液を噴霧する工程と、この工程で得られたコーティング錠にさらに水を噴霧する工程とを有する光沢コーティング錠の製造方法。
[2].水の噴霧量が、フィルムコーティング剤液を噴霧する工程で得られたコーティング錠に対して、5〜50質量%である[1]記載の光沢コーティング錠の製造方法。
[3].フィルムコーティング剤液中のフィルムコーティング剤が、水溶性高分子化合物及び/又は乳化された難溶性高分子化合物である[1]又は[2]記載の光沢コーティング錠の製造方法。
[4].フィルムコーティング剤液中のフィルム剤が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウムから選ばれる1種又は2種以上の化合物である[1]〜[3]のいずれかに記載の光沢コーティング錠の製造方法。
[5].フィルムコーティング量が、素錠に対して1〜50質量%である[1]〜[4]のいずれかに記載の光沢コーティング錠の製造方法。
[6].水を噴霧する工程において、水を噴霧されているコーティング錠の温度を35〜55℃に調整する[1]〜[5]のいずれかに記載の光沢コーティング錠の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光沢化剤を用いなくても、錠剤に光沢やつやを付与することができる簡便な方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の光沢コーティング錠の製造方法は、素錠表面にフィルムコーティング剤液を噴霧する工程と、この工程で得られたコーティング錠にさらに水を噴霧する工程とを有するものである。
【0009】
(1)素錠表面にフィルムコーティング剤液を噴霧する工程
[素錠]
素錠は特に限定されず、医薬錠剤、サプリメント、錠菓等の全てのものに応用できる。例えば、医薬錠剤としては、以下のような生理活性成分を配合することができる。イブプロフェン、アセトアミノフェン等の解熱鎮痛剤;水酸化アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等の胃粘膜保護成分;アスピリン、エトドラック、メフェナミック、メクロフェナミック、ピロキシカム、イソプロピルアンチピリン、トラネキサム酸等の抗炎症剤;ニトラゼパム、トリアゾラム、フェノバルビタール、アミバルビタ−ル、アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロムワレニル尿素等の催眠・鎮静剤;フェニトイン、メタルビタール、プリミドン、クロナゼパム、カルバマゼピン、バルプロ酸等の抗てんかん剤;塩酸メクリジン、ジメンヒドリナート等の鎮うん剤;イミプラニン、ノキシプチリン、フェネルジン等の抗うつ剤;ハロペリドール、メプロバメート、クロルジアゼポキシド、ジアゼバム、オキサゼバム、スルピリド等の精神神経用剤;パパベリン、アトロピン、エトミドリン等の鎮けい剤;ジゴキシン、ジギトキシン、メチルジゴキシン、ユビデカレノン等の強心剤;ピンドロール、アジマリン、ジソピラミド等の不整脈剤;ヒドロクロロチアジド、スピロノラクトン、トリアムテレン、フロセミド、ブメタニド等の利尿剤;レセルピン、メシル酸ジヒドロエルゴトキシン、塩酸プラゾシン、メトプロロール、プロプラノロール、アテノロール等の抗高血圧剤;ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、ジルチアゼム、ニフェジピン、ジピリダモール等の冠血管拡張剤;ノスカピン、サルブタモール、プロカテロール、ツロプテロール、トラニラスト、臭化水素酸デキストロメトルファン、リン酸ジヒドロコデイン等の鎮咳剤;ブロムヘキシン塩酸塩、アンブロキソール塩酸塩、グアイフェネシン等の去痰剤;ニカルジピン、ピンポセチン等の脳循環改善剤;塩酸メチルエフェドリン等の交感神経興奮剤;エリスロマイシン、ジョサマイシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、リファンピシン、グリセオフルビン等の抗生物質;ジフェンヒドラミン、プロメタジン、メキタジン、クレマスチンフマル酸塩等の抗ヒスタミン剤;トリアムシノロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、プレドニソロン、ダナゾール、メチルテストステロン、酢酸クロルマジノン等のステロイド剤;ビタミンA類、ビタミンB類、ビタミンC類(アスコルビン酸等)、ビタミンD類、ビタミンE類、ビタミンK類、葉酸(ビタミンM類)等のビタミン剤;ジメチコン、ファモチジン、ラニチジン、シメチジン、ニザチジン、メトクロプラミド、ファモチジン、オメプラゾール、スルピリド、トレピブトン、スクラルファート、制酸剤(合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム等)等の消化器系疾患治療剤;ジクマロール、シンナリジン、クロフィブラート、ゲファルナート、ブロベネシド、メルカプトプリン、メトトレキサート、ウルソデスオキシコール酸、メシル酸ジヒドロエルゴタミン、グルクロノラクトン、γ−アミノ酪酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ラクトフェリン、乳性タンパク、システイン、コラーゲン等が挙げられる。
【0010】
素錠の製造方法は特に限定されず、上記生理活性成分を造粒して配合してもよい。造粒方法としては特に限定されず、湿式造粒、乾式造粒等の公知の方法で得ることができる。湿式造粒する際の結合液には、後述する結合剤等を配合することができる。
【0011】
素錠には、必要に応じてその他の原料、例えば、結合剤、崩壊剤等の賦形剤、滑沢剤、香料、矯味剤(甘味料、酸味料等)等を含んでいてもよい。
【0012】
結合剤としては、例えば、澱粉、α化デンプン、ショ糖、ゼラチン、アラビアゴム末、メチルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、プルラン、デキストリン等を用いることができる。
【0013】
賦形剤としては、例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等の崩壊剤;乳糖、コーンスターチ、タルク、結晶セルロース(アビセル等)、粉糖、マンニトール、軽質無水ケイ酸、炭酸カルシウム、L−システインを用いることができる。
【0014】
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレングリコール、タルク、ステアリン酸、ショ糖脂肪酸エステル等を用いることができる。
【0015】
香料としては、例えば、メントール、リモネン、植物精油(ハッカ油、ミント油、ライチ油、オレンジ油、レモン油など)等を用いることができる。
【0016】
甘味料としては、例えば、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビア、グリチルリチン酸二カリウム、アセスルファムカリウム、ソーマチン、スクラロース等を用いることができる。酸味料としては、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、乳酸又はそれらの塩等を用いることができる。
【0017】
本発明の素錠は、例えば、各種原料を混合し、ロータリー式の打錠機等を用いて打錠することにより製造することができる。素錠の大きさや錠剤硬度は、目的とする錠剤(胃中で溶解する錠剤、口腔用内崩壊錠)により、適宜選択される。本発明の製造方法では、素錠やコーティング錠の性質に影響を与えにくいため、錠剤設計がしやすく、広い錠剤の範囲に適用可能である。
【0018】
[フィルムコーティング剤液]
フィルムコーティング剤液とは、フィルムコーティング剤が溶解又は分散した液(溶液、分散液)をいう。フィルムコーティング剤とは、フィルムコーティング層に含まれるものをいう。具体的には、フィルムコーティング剤液の乾燥により素錠の錠剤表面にフィルム状に形成される高分子化合物(フィルム剤)を必須成分として、必要に応じて展延性を向上させる可塑剤、着色料等を含むものからなる。フィルム剤である高分子化合物としては、水溶性高分子化合物又は乳化された難溶性高分子化合物が挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。なお、「水溶性」、「難溶性」とは、「水溶性高分子化合物」又は「乳化された難溶性高分子化合物」が、フィルムコーティング剤液中に、溶解、分散又は膨潤できればよく、特に限定されない。水溶性高分子化合物としては、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール等のビニル基を有するポリビニル系高分子化合物、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース骨格を有するセルロース系高分子化合物が挙げられる。乳化された難溶性高分子化合物としては、界面活性剤で乳化された難溶性高分子化合物、具体的には、界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられ、難溶性高分子化合物としては、エチルセルロース、メチルセルロース等が挙げられる。
【0019】
フィルムコーティング剤液の溶媒は、水、エタノール、メタノール等から適宜選定されるが、水が好ましい。
【0020】
フィルムコーティング剤液中のフィルムコーティング剤の含有量は、「水溶性高分子化合物」又は「乳化された難溶性高分子化合物」が、フィルムコーティング剤液中に、溶解、分散又は膨潤できる量で適宜選定されるが、通常5〜30質量%である。
【0021】
コーティング量(フィルムコーティング剤液の乾燥固形分)は、目的とする錠剤に合わせて適宜選定されるが、素錠(100質量%)に対して1〜50質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。
【0022】
なお、本発明によれば、光沢化剤を用いなくても、錠剤に光沢やつやを付与することができるため、フィルムコーティング剤液に光沢化剤を含まなくてもよい。光沢化剤としては、カルナウバロウ、サラシミツロウ等が挙げられる。
【0023】
コーティング方法は、素錠表面にフィルムコーティング剤液を噴霧する。コーティングには公知のコーティング装置を用いることができ、例えば、ドラム中で素錠を転がしながら噴霧するタイプのコーティング装置、具体的には、:アクアコーター(自動錠剤コーティング装置・フロイント産業製)等が挙げられる。
【0024】
コーティングの好適な条件は、より光沢を付与する点から、風量:2.0〜4.5m3/min、より好ましくは2.5〜4.0m3/min、噴霧速度:3〜25g/min、より好ましくは5〜20g/min、給気温度:50〜70℃、より好ましくは55〜65℃である。また、スプレー流量、パン回転数は適宜選定されるが、スプレー流量:100〜200NL/min、パン回転数:5〜20rpmの範囲にするとよい。
【0025】
(2)コーティング錠にさらに水を噴霧する工程
上記コーティング後の錠剤に、水を噴霧する。水は固形分を含まなければよく、エタノール等の溶媒を多少(10質量%以下)含んでいてもよい。
【0026】
水の噴霧量は、フィルムコーティング剤液噴霧後のコーティング錠(100質量%)に対して、5〜50質量%が好ましい。水の噴霧量を5質量%以上とすることで、噴霧後の光沢をより効果的に得ることができる。上限は40質量%でもよい。50質量%を超えても噴霧しても、特に効果に変わりはない。噴霧には、上記素錠表面にフィルムコーティング剤液を噴霧する工程と同じ装置を用いることができる。
【0027】
水を噴霧する工程では、水を噴霧されているコーティング錠の温度を35〜55℃、好ましくは40〜50℃に調整するとよい。このような温度範囲に調整することで、より簡便に光沢性を得ることができる。この調整は、給気温度で行い、排気温度を品温として管理する。
【0028】
噴霧速度(スプレー液速度)は3〜25g/minが好ましく、5〜20g/minがより好ましい。この範囲でコーティング錠に適度な濡れ性を付与することにより、より簡便に光沢性を得ることができる。3g/min未満だと乾き気味になり、コーティング機のパン内への付着などの影響が発生するおそれがあり、25g/minを超えると、コーティング錠が濡れ気味になり、ピーリング(剥れ)等の別の不具合が発生するおそれがある。
【0029】
水噴霧の好適な条件は、より光沢を付与する点から、風量:2.0〜4.5m3/min、より好ましくは2.5〜4.0m3/min、給気温度:50〜70℃、より好ましくは55〜65℃である。また、スプレー流量、パン回転数は適宜選定されるが、スプレー流量:100〜200NL/min、パン回転数:5〜20rpmの範囲にするとよい。
【0030】
[光沢コーティング錠]
本発明の光沢コーティング錠の光沢は目視により判断できる。また、錠剤の物性は目的とする錠剤(胃中で溶解する錠剤、口腔用内崩壊錠)により、適宜選定されるが、例えば、直径7〜12mm、錠剤硬度が4〜20kgf等にも適用できる。なお、錠剤硬度とは、錠剤を金床の上に垂直に立て、移動プランジャーで錠剤に静的圧力を加え、錠剤が破壊されるまでに要する力を表し、錠剤硬度測定器(富山産業(株))を用いて測定することができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は質量%、比率は質量比を示す。
【0032】
[実施例1]
<素錠の調製:解熱鎮痛成分を含有する粒子の造粒>
イブプロフェン2145g及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(LH−31)858gをポリエチレン製の袋内で混合した後、微粉砕機コロプレックス(パウレック社製,160Z型)に投入し回転数12000rpmの条件で粉砕した。得られた粉砕物1365gとアセトアミノフェン975gを予熱しておいたスパイラフローSFC−5型(フロイント産業製)に投入し、吸気温度55℃、排気風量2.7m3/min、ローター回転数200rpmの条件で流動を開始した。排気温度が43℃以上であることを確認後、結合液(ヒドロキシプロピルセルロース:D−マンニトール:精製水=390:312:6110の水溶液)を、2流体ノズルATF型(穴径φ1.8mm)を用いて100mL/minの液速度で噴霧した。噴霧開始後15分後に液速度を60mL/minに変更し、合計2620g噴霧した。噴霧終了後、吸気温度を65℃に変更し、同様の排気風量で乾燥操作を開始した。排気温度が43℃に達した時点で乾燥操作を終了し、造粒物を得た。得られた造粒物を目開き850μmの篩を用いて全量篩過し(篩上品もへらで潰しながら篩過)、酸型のカルボキシル基を有する解熱鎮痛成分を含有する粒子の造粒物を得た。
【0033】
<素錠の調製:胃粘膜保護成分を含有する粒子の造粒>
乾燥水酸化アルミニウムゲル1200gと低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(LH−21)300gを予め80℃の温水を通水(通水は内容物排出まで継続)した撹拌造粒機(深江工業社製,ハイスピードミキサーFS.GS.10J型)に投入した。投入後、アジテーター300rpm、チョッパー1500rpmの攪拌を開始し、10分間混合後、結合液(ヒドロキシプロピルセルロース:乳酸:水=70:350:1400の水溶液)1820gを910g/minの流速で添加しながら2分間混合した後、添加時間も含め合計10分間攪拌操作を継続し、攪拌を停止した後、撹拌造粒物を造粒機から排出した。得られた攪拌造粒物を予め吸気温度80℃で予熱し、排気温度が60℃となったスパイラフローSFC−5型(フロイント産業(株)製)に投入し、吸気温度80℃、排気風量2.6m3/min、ローター回転数200rpmの条件で乾燥操作を開始した。90分間乾燥操作を継続し、粒状乾燥物を得た。該粒状乾燥物を目開き850μmの篩を用いて篩分けし、篩を通過しなかった粒子を粉砕機(徳寿工作所、フィオーレF−0型(スクリーンφ1.2mm、周波数20Hz))に投入し、粉砕した。得られた粉砕物と目開き850μmの篩を通過した粒子を混合し、制酸剤の造粒品を得た。
【0034】
<素錠の調製:混合工程>
解熱鎮痛成分を含有する粒子の造粒物:胃粘膜保護成分を含有する粒子の造粒物:無水カフェイン:低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(LH−21):ステアリン酸マグネシウム=1750:500:400:200:1になるように各成分を量りとり、ステアリン酸マグネシウムを除く成分を混合機(寿工業(株)、ボーレコンテナミキサー 20L LM−20型)に投入した。20rpmの条件で30分間混合後、ステアリン酸マグネシウムを投入し、20rpmの条件で3分間混合した。
【0035】
<素錠の調製:打錠工程>
得られた混合物をφ8.5mm(2段R)の杵・臼を装着したロータリー式打錠機(菊水製作所、LIBRA2)を用いて、ターンテーブル回転数20rpm、攪拌フィードシュー回転数60rpm、予圧2kN、本圧6kNの条件で打錠し、固形製剤(素錠)を得た。
【0036】
[コーティング工程]
得られた素錠4500gを予め給気温度60℃で排気温度45℃に暖機運転したアクアコーター48型のパン内に投入後、錠剤の品温が43℃(排気温度)になるまで4rpmの間欠運転予熱を行った。その後、回転数を10rpmに上げて運転を行い、風量3.2m3/min、スプレー圧0.3Mpa、スプレー流量153NL/min、噴霧速度(スプレー液速)17g/minの条件で、オパドライ81W48956(オパドライの主成分:ポリビニルアルコール)の18質量%分散液を、スプレーした。スプレー量が510g(固形乾燥重量91.8g:素錠に対して2質量%)になったらスプレーを止めた。その後、コーティング液を水に変え、同じ条件で1200g(コーティング錠に対して26重量%)をスプレーし、光沢のあるコーティング錠を得た。
【0037】
なお、上記実施例1において、コーティング錠の温度を40〜50℃の範囲にしても、同様に光沢が得られ、また、上記実施例1において、水の噴霧量を230〜2296g(コーティング錠に対して5〜50質量%)の範囲にしても、同様に光沢が得られた。
【0038】
[比較例1]
実施例1におけるコーティング工程において水噴霧を行わずにコーティング錠剤を得た。この錠剤は、光沢がないものであった。
【0039】
上記例で用いた原料を示す。なお、実施例中の量は成分の純分量である。
イブプロフェン:白鳥製薬(株)製、日本薬局方適合品
アセトアミノフェン:岩城製薬(株)製、日本薬局方適合品
無水カフェイン:白鳥製薬(株)製、日本薬局方適合品
乾燥水酸化アルミニウムゲル:協和化学工業(株)製、S−100、日本薬局方適合品
酸化マグネシウム:協和化学工業(株)製、日本薬局方適合品
炭酸マグネシウム:協和化学工業(株)製、日本薬局方適合品
メタケイ酸アルミン酸マグネシウム:富士化学工業(株)製、日本薬局方適合品
乳酸:昭和化工(株)製、日本薬局方適合品
L−HPC(低置換度ヒドロキシプロピルセルロース)(1):信越化学工業(株)製、LH−21、日本薬局方適合品
L−HPC(低置換度ヒドロキシプロピルセルロース)(2):信越化学工業(株)製、LH−31、日本薬局方適合品
HPC−SSL(ヒドロキシプロピルセルロース):日本曹達(株)製、日本薬局方適合品
D−マンニトール:ロケット・ジャパン(株)製、日本薬局方適合品
ステアリン酸マグネシウム:太平化学産業(株)製、植物性、日本薬局方適合品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素錠表面にフィルムコーティング剤液を噴霧する工程と、この工程で得られたコーティング錠にさらに水を噴霧する工程とを有する光沢コーティング錠の製造方法。
【請求項2】
水の噴霧量が、フィルムコーティング剤液を噴霧する工程で得られたコーティング錠に対して、5〜50質量%である請求項1記載の光沢コーティング錠の製造方法。
【請求項3】
フィルムコーティング剤液中のフィルムコーティング剤が、水溶性高分子化合物及び/又は乳化された難溶性高分子化合物である請求項1又は2記載の光沢コーティング錠の製造方法。
【請求項4】
フィルムコーティング剤液中のフィルム剤が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウムから選ばれる1種又は2種以上の化合物である請求項1〜3のいずれか1項記載の光沢コーティング錠の製造方法。
【請求項5】
フィルムコーティング量が、素錠に対して1〜50質量%である請求項1〜4のいずれか1項記載の光沢コーティング錠の製造方法。
【請求項6】
水を噴霧する工程において、水を噴霧されているコーティング錠の温度を35〜55℃に調整する請求項1〜5のいずれか1項記載の光沢コーティング錠の製造方法。

【公開番号】特開2013−87056(P2013−87056A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225529(P2011−225529)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】