説明

光沢付与装置および画像形成装置

【課題】要求された光沢度に任意に対応することができるとともに、光沢度付与制御時間を短くできる光沢付与装置を提供する。
【解決手段】定着装置300の下流に配置された光沢付与装置301は、加熱ローラ36、テンションローラ37、光沢付与ベルト30、加圧ローラ40を有している。光沢付与ベルト30の内部には冷却ファン41と、ベルトの移動方向上下流側に移動可能なベルト吸引ダクト39が配置されている。光沢付与ベルト30は吸引されると円弧状に変形し、これにより用紙Pは曲率分離される。ベルト吸引ダクト39の位置を調整することで光沢度を調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体(以下、用紙又はシートともいう)に粉体粒子状の像形成物質(以下、トナーともいう)で形成された未定着画像を定着した後に、画像の光沢度をさらに上昇させるための光沢付与装置、該光沢付与装置を有する複写機、プリンタ、ファクシミリ、印刷機、プロッタ、これらのうち少なくとも1つを備えた複合機等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やファクシミリあるいはプリンタさらには印刷機などの画像形成装置においては、記録用紙などのシート上に転写されて担持されている未定着画像を加熱定着することにより複写物や記録物を得ることができる。
また、記録用紙の種類も多岐にわたる。特に、写真やコンピュータグラフィックスなどのフルカラー画像においては、面内が均一な画像光沢度を有し、高画質がより強く求められる。
例えば、特許文献1などのように、一度仮定着を行った画像を、再び下流側に設けた画像光沢調整手段により平面状態にある外周面にそのトナーのある被記録材側を圧接させて所定の距離だけ搬送してから剥離することで、そのトナーを無端状ベルトの外周面の状態にならわせるように流動させ、画像の光沢を調整して出力を行うことが提案されている。
画像面と接する部分の張架されたベルトの内外から冷却フィンやファンによりトナー像および用紙を冷却している。
画像の光沢度を制御する方法として、特許文献2や特許文献3では、定着面の温度を制御することが提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
用紙の種類や画像によって、任意に光沢度を制御することが望ましいが、特許文献1記載の装置では、全てにおいて画一的に冷却する構成であり、上記要求に応えられなかった。
特許文献2や3では、定着面の温度によって画像光沢度を制御しているが、通紙される速度に対して設定される温度に安定移行するまでに時間がかかり、待ち時間が生じることを避けられなかった。
【0004】
本発明は、このような現状に鑑みてなされたもので、要求された光沢度に任意に対応することができるとともに、光沢度付与制御時間を短くできる光沢付与装置、該光沢付与装置を備えた画像形成装置の提供を、その主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、未定着画像を記録媒体に定着させる定着手段の下流側に設けられ、定着された画像の光沢度を少なくとも1対の加圧部材のニップを通過させることで向上させ、前記加圧部材の画像に光沢付与を行う面側が、張架された無端状のベルトで構成される光沢付与装置において、前記ベルトの内周側に、記録媒体を分離可能に前記ベルトを吸引するベルト吸引手段を有することを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光沢付与装置において、前記ベルト吸引手段は、前記ベルトの移動方向の上下流側に移動可能であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の光沢付与装置において、前記ベルト吸引手段は、前記ベルトの内周側に該ベルトの移動方向に沿って複数設けられ、これらのベルト吸引手段を選択的に動作させることによって記録媒体の分離位置を変更することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のうちのいずれか1つに記載の光沢付与装置において、前記ベルト吸引手段の前記ベルトとの接触部分が、摩擦を低減する形状を有していることを特徴とする。
【0007】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の光沢付与装置において、前記接触部分が、回転体で形成されることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のうちのいずれか1つに記載の光沢付与装置において、前記ベルト吸引手段は、前記ベルト吸引手段の位置に用紙先端が差し掛かった時に吸引動作させることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のうちのいずれか1つに記載の光沢付与装置において、前記吸引手段は、減圧した空気を利用したものであることを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項1〜6のうちのいずれか1つに記載の光沢付与装置において、前記吸引手段は、磁力を利用したものであることを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、画像形成装置において、請求1〜8のうちのいずれか1つに記載の光沢付与装置を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ベルト吸引手段により任意の位置で用紙を分離させることができ、用紙自体の光沢度や坪量、あるいはユーザーの任意の光沢度設定値に応じて光沢度を変えることができるとともに、光沢度付与制御時間を短くできる。
また、ベルト表面に接触する部材が無いため、ベルト表面におけるキズ発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の概要構成図である。
【図2】作像ステーションの拡大図である。
【図3】定着手段及び光沢付与装置周辺の詳細図である。
【図4】ベルト吸引ダクトの吸引動作を示す図である。
【図5】ベルトに接触している距離と光沢度との関係を示す特性図である。
【図6】制御ブロック図である。
【図7】第2の実施形態における定着手段及び光沢付与装置周辺の詳細図である。
【図8】第2の実施形態における制御ブロック図である。
【図9】第3の実施形態における定着手段及び光沢付与装置周辺の詳細図である。
【図10】第3の実施形態におけるベルト吸引ダクトの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図を参照して説明する。
図1乃至図6に基いて第1の実施形態を説明する。図1に、本実施形態に係る画像形成装置としてのカラー複写機の概略構成を示す。図中符号100は画像形成装置本体、200は画像形成装置本体100上に取り付けられた画像読取装置を示す。
画像形成装置本体100内には、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4つの作像ステーション10c、10m、10y、10bがタンデム式に並べて設けられている。中間転写体15の移動方向における最上流側には、記録媒体の画像領域における画像部分を除く白地部分又は画像領域全面にクリアトナーによる光沢面を形成するための作像ステーション10clが配置されている。
【0011】
各作像ステーションでは、それぞれドラム状の感光体11cl、11c、11m、11y、11bを備え、その図中時計回りの回転にともない、まず各帯電装置12cl、12c、12m、12y、12bでバイアス電圧を印加して感光体の表面を一様に帯電する。
次いで、複写機にあっては画像読取装置200による読取信号や、プリンタにあってはホストCPからの画像信号や、ファクシミリにあっては電話回線を介して送られてくる送信信号に基づき、共通の書込み装置13から、それぞれレーザ光Lcl、Lc、Lm、Ly、Lbを照射することにより書込みを行い、感光体11cl、11c、11m、11y、11b上に静電潜像を形成する。
その後、各現像装置14cl、14c、14m、14y、14bでトナーを付着してその静電潜像を可視像化し、感光体11cl、11c、11m、11y、11b上に各々各色の単色画像を形成する。
【0012】
感光体11cl、11c、11m、11y、11bに接触して無端ベルト状の中間転写体15が図中反時計回りに走行し、各一次転写装置16cl、16c、16m、16y、16bにより感光体11cl、11c、11m、11y、11b上の各色単色画像をクリアトナーから順に中間転写体15上に一次転写し、転写画像を重ね合わせて中間転写体15上にフルカラー画像を形成する。
一方、適宜タイミングで各給送ローラ20のうちの1つが選択的に回転し、画像形成装置本体100内の、対応する給紙カセット21から記録媒体(以下「用紙」という)Pを繰り出し、用紙搬送路23を搬送して一対のレジストローラ24間に突き当てて止める。
【0013】
中間転写体15上のフルカラー画像にタイミングを合わせて一対のレジストローラ24が回転し、二次転写装置25によりそのフルカラー画像が用紙Pに二次転写される。
フルカラー画像転写後の用紙Pは用紙搬送路23を上方へと搬送され、定着手段としての定着装置300の定着ニップを通過するとき未定着画像(未定着トナー)が用紙Pに定着される。
ユーザーが光沢度を向上させるためのモードを選択した場合や、用紙の種類によって、用紙Pは光沢付与装置301のニップを通過し、画像形成装置本体100上の排紙スタック装置27上にスタックされる。
光沢度を付与させない場合では、光沢付与装置301のニップが形成されないように、後述する光沢付与ベルト30と加圧ローラ40とが離間された状態で排紙される。
【0014】
一次転写終了後の各感光体11cl、11c、11m、11y、11bは、一次クリーニング装置17cl、17c、17m、17y、17bでクリーニングされて転写残トナーを除去され、初期化される。
二次転写終了後の中間転写体15は、二次クリーニング装置18でクリーニングされて転写残トナーを除去され、初期化される。
図1中、符号28cl、28c、28m、28y、28bは、それぞれ各色現像装置14cl、14c、14m、14y、14bにトナーを補給する各色トナーボトルを示している。
なお、以上の説明では、用紙Pにカラー画像を記録する場合について説明したが、上述した画像形成装置では、選択された単色モードまたは複数色モードに従い、適宜作像ステーション10c、10m、10y、10bのいくつかを選択使用し、モノクロ画像またはカラー画像を任意に形成することができるようになっている。
また、上記説明では、用紙P上の画像が形成されない白地部分が光沢を有しないことによる全体的な光沢性のアンバランスを抑制するために画像部以外もクリアトナーで光沢を付与する構成としたが、作像ステーション10clを動作させないようにしてもよく、あるいは、通常の4連タンデム構成と同様にクリアトナーの作像ステーション10clを設けない構成としてもよい。
図2は、各作像ステーションの構成(同一構成)を示す拡大図である。現像装置14は現像ローラ14−1、現像剤を循環させる2本の攪拌・搬送部材14−2、14−3を有している。一次クリーニング装置17は、クリーニングローラ(ブラシローラを含む)17−1や回収ローラ17−2を有している。
【0015】
図3に基づいて、定着装置300及び光沢付与装置301の構成を説明する。
定着装置300は、定着ローラ301と、加熱ローラ302と、該加熱ローラ302を加熱する電磁誘導方式の加熱手段303と、定着ローラ301と加熱ローラ302とに掛け回された無端状の定着ベルト304と、定着ベルト304を介して定着ローラ301に圧接して定着ニップ部を形成する加圧ローラ305とを備えている。
定着装置300の加熱方式としては、電磁誘導方式ではなく加熱手段303を通常の熱源(ヒータ)として定着ベルト304を直接加熱するようにしてもよい。この場合には加熱ローラ302は単に支持ローラととしてなる。
【0016】
光沢付与装置301は、定着装置300の用紙搬送方向下流側に設けられ、ニップを形成する一対の加圧部材70、40を有している。
一方の加圧部材70は、加熱ローラ36と、テンションローラ37と、これらに張架された光沢付与部材である無端状の光沢付与ベルト30とを有している。
他方の加圧部材としての加圧ローラ40は、光沢付与ベルト30を介して加熱ローラ36に対向圧接し、加熱ローラ36との間でニップを形成するように配置されている。
加熱ローラ36の内部には、熱源としてのハロゲンヒータ33が設けられ、非接触温度センサ56により光沢付与ベルト30表層の温度をモニタし、コントローラ74(図6参照)によって一定の温度に制御される。
加熱ローラ36は、外径がφ30〜50mmで、AlやSUS、またはFeで構成される。加圧ローラ40とのニップを広く形成させるために、ローラ表面にシリコンゴム等の弾性層を0.5〜2mmの厚みで設けても良い。
【0017】
光沢付与ベルト30は、厚みが10〜200μmの耐熱性樹脂であるポリイミド等、もしくはニッケルやSUSなどの金属で構成され、外形は80〜300mmとなっている。表層には、搬送された画像面との密着性を向上させるために5〜50μmの厚さでシリコンゴムからなる密着弾性層を有しても良い。テンションローラ37はφ10〜30mmの外形で、FeやAl、SUSで構成される。
光沢付与ベルト30下方には、光沢付与ベルト30から分離された用紙Pを排紙させるための、排紙ガイド45が設けられている。排紙ガイド45は用紙Pに接触して案内する複数のコロ45aを有している。
光沢付与ベルト30の内部には冷却手段としての冷却ファン41が設けられ、不図示の温度センサにより検知された光沢付与ベルト30の内部の表面温度に基づいて制御手段74にて風量、風速がコントロールされる。
冷却手段として、特に限定は無く、ヒートシンクやファン、ヒートパイプ、ペルチェ素子などの冷却装置等を組み合わせて設けて光沢付与ベルト30を冷却しても良い。
【0018】
光沢付与ベルト30の内部(内周側)には、吸引源としてのエア吸引源72(図4参照)に接続されたベルト吸引手段としてのベルト吸引ダクト39が設けられている。ベルト吸引ダクト39は、用紙Pの搬送方向と直交する用紙幅方向において、光沢付与ベルト30と同等の幅を有し、図中矢印の方向(ベルトの移動方向の上下流側、あるいは用紙搬送方向の前後方向)に移動可能になっている。
ベルト吸引ダクト39を移動させる移動手段76(図6参照)としては、例えばネジ送り機構や、タイミングベルトとタイミングプーリによるベルト送り機構を採用することができる。
ベルト吸引ダクト39は、光沢付与ベルト30をその内側から円弧状に維持されたまま吸引する。光沢付与ベルト30は円弧状を維持したまま回転搬送される。
図4に示すように、ベルト吸引ダクト39には引き込み用凹部39aが形成されており、光沢付与ベルト30は吸引によって円弧状に撓んだ形状を維持しながら移動する。
引き込み用凹部39aの光沢付与ベルト30と接触する角部39b、39cは、接触摩擦を低減するために滑らかな湾曲形状ないし丸み形状に形成されている。
光沢付与ベルト30の円弧状の撓みによって曲率の大きい分離部30aが形成され、この分離部30aで用紙Pは分離される。
【0019】
加圧ローラ40は、φ30〜50mmで、FeやAl、SUS等の芯金上に1〜30mmのフッ素ゴムやシリコンゴム等の弾性層を形成しており、さらに最外層には5〜50μmの厚さでフッ素化合物等からなる離型層で構成される。
加圧ローラ40は不図示のカムにより、光沢付与ベルト30に対して接離するように動作可能で、加熱ローラ36との軸間の距離を変えることで、ニップ幅や荷重を可変可能に制御できるようになっている。
また、加圧ローラ40は不図示のモータに接続され、回転駆動して、加熱ローラ40および光沢付与ベルト30、テンションローラ37が従動回転する。
光沢を付与しない場合には、加圧ローラ40は光沢付与ベルト30に対して離間され、この場合には光沢付与装置301は単に用紙搬送路として機能する。
【0020】
印刷動作としては、印刷信号が入力され、作像部にて作られた定着後の用紙Pが、定着装置300を通過し、トナーが用紙Pに定着した状態にて、光沢付与ベルト30を介した加熱ローラ36と加圧ローラ40とで成すニップを通過する。
ニップ部で圧力を加えるとともに、光沢付与ベルト30で熱が加えられ、用紙Pが光沢付与ベルト30に密着したまま搬送される。ニップに入った時点で画像面が加熱され、さらに光沢付与ベルト30に密着し、冷却ファン41によって冷却されながら搬送される。
用紙Pの光沢度や坪量、また、ユーザーの任意の光沢度設定値に基づいて、ベルト吸引ダクト39が任意の位置に移動し、停止する。
【0021】
図5に光沢付与ベルト30から画像を分離させる際の距離と光沢度の関係を示す。距離が長い、つまり、分離時の温度が低いほど、トナー画像の光沢度は高くなる。これは、溶融状態のトナー像が固化し、定着画像部分の表面がベルト表面に倣って平滑化され、光沢度が付与されるためである。
例えば低い光沢度が欲しい場合では、図3中矢印の左側方向に移動した状態でベルト吸引ダクト39が光沢付与ベルト30を吸引し、光沢付与ベルト30の形状を円弧状にすることで、この部分にて密着搬送された画像がその曲率により分離されることになる。
その際、冷却される時間が短くなるため、分離時の温度が高い状態になる。
【0022】
また、逆に高い光沢度が欲しい場合では、図3中矢印の右方向にベルト吸引ダクト39が移動して冷却時間が長い状態になるため、低い温度で分離され、高い画像光沢度が得られる。最も高い光沢度を得るには、ベルト吸引ダクト39を動作させずに、テンションローラ37の部分で分離させる。
図6に示すように、用紙Pの光沢度や坪量、あるいはユーザーの任意の光沢度設定値とベルト吸引ダクト39の移動位置との関係が予め求められて、例えばROMに制御テーブルとして記憶されており、制御手段74は操作パネル77等から入力される上記条件に対応した移動位置をテーブルから抽出し、移動手段76を駆動する。
【0023】
従来のように、光沢付与ベルト30の分離時の温度を冷却ファン41のみで制御するためには、冷却ファン41のパワーを制御する必要があるため、所定温度に設定するまでに時間がかかってしまう。
本発明の方式では、一定の冷却パワーにて、用紙Pの分離位置を可変させることで、冷却された距離、つまり所定の温度の位置で分離することが可能で、任意の光沢度に素早く制御できる。
【0024】
図7及び図8に基づいて第2の実施形態を説明する。なお、上記実施形態と同一部分は同一符号で示し、特に必要がない限り既にした構成上及び機能上の説明は省略して要部のみ説明する(以下の他の実施形態において同じ)。
図7に示すように、本実施形態ではベルト吸引ダクトが光沢付与ベルト30の移動方向に間隔をおいて複数(ここでは3個)設けられている。図8に示すように、各ベルト吸引ダクト39A、39B、39Cは、エアバルブ78a、78b、78cを介してエア吸引源72に接続されており、エアバルブの開閉を制御することで選択的に吸引動作がなされるようになっている。
用紙Pの光沢度や坪量、あるいはユーザーの任意の光沢度設定値とこれに対応した位置のベルト吸引ダクトとの関係が予め求められて、例えばROMに制御テーブルとして記憶されており、制御手段74は操作パネル77等から入力される上記条件に対応したベルト吸引ダクトを選択して選択されたベルト吸引ダクトに対応したエアバルブのみを開き、他のエアバルブを閉じる。
【0025】
印刷動作としては、印刷信号が入力され、作像部にて作られた定着後の用紙Pが、定着装置300を通過し、トナーが用紙に定着した状態にて、光沢付与ベルト30を介した加熱ローラ36と加圧ローラ40とで成すニップを通過する。ニップ部で圧力を加えるとともに、光沢付与ベルト30で熱が加えられ、用紙が光沢付与ベルトに密着したまま搬送される。ニップに入った時点で画像面が加熱され、さらに光沢付与ベルト(冷却付与ベルト)30に密着されながら、冷却ファン41によって冷却搬送される。
用紙の光沢度や坪量、あるいはユーザーの任意の光沢度設定値に基づいて、選択されたベルト吸引ダクト39の一つが吸引動作される。
例えば低い光沢度が欲しい場合では、ベルト移動方向最上流に位置するベルト吸引ダクト39Aが選択されて光沢付与ベルト30を吸引し、光沢付与ベルト30の形状を円弧状にすることで、この部分にて密着搬送された画像がその曲率により分離されることになる。その際、冷却される時間が短くなるため、分離時の温度が高い状態で分離されるため、光沢度が低くなる。
逆に高い光沢度が欲しい場合では、ベルト吸引ダクト39Cが動作して冷却時間が長い状態になるため、低い温度で分離されることになり、高い画像光沢度が得られる。最も高い光沢度を得るには、各ベルト吸引ダクトを動作させずに、テンションローラ37の部分で分離させる。
本実施形態では、移動手段76が不要であり、弁の制御のみでベルト吸引ダクト39の位置を設定できるために、さらに短時間で任意の光沢度を制御可能である。すなわち、分離位置を短時間で設定可能である。
【0026】
図9及び図10に基づいて第3の実施形態を説明する。
図9、図10に示すように、第1の実施形態とほぼ同様の構成であるが、本実施形態では、ベルト吸引ダクト39のエッジ部(引き込み用凹部39cの角部)に回転体としてのコロ46が設けられていることを特徴とする。
光沢付与ベルト30とベルト吸引ダクト39の接触位置にコロ46を設けることで、光沢付与ベルト30とベルト吸引ダクト39の接触摩擦が軽減され、光沢付与ベルトの30の搬送が安定し、また、耐久性も向上できる。
【0027】
次に、第4の実施形態を説明する。
本実施形態では、上記各実施形態の構成において、不図示の用紙検知センサにより用紙の先端位置を検出し、ベルト吸引ダクト39の位置に用紙が差し掛かる直前に吸引動作を行うことを特徴としている。
用紙検知センサは、ベルト吸引ダクト39が最も上流に位置する状態で良好な吸引動作が可能な位置に配置される。
このようにすることで、光沢付与ベルト30とベルト吸引ダクト39の接触時間が軽減され、光沢付与ベルトの30の搬送が安定し、また、耐久性も向上できる。
また、常時吸引しなくて済むので光沢付与ベルト30の磨耗を低減できるとともに省電力化を図れる。
【0028】
次に、第5の実施形態を説明する。
上記各実施形態の構成において、光沢付与ベルト30の基材をNi製などの磁性体、または内部に磁性体を分散させた物を用い、吸引ダクト39と類似の形状の少なくとも頂点部分あるいは全体に磁石をベルトに近づける、あるいは遠ざけることで吸引ダクト39の気圧差による吸引力と同様に、光沢付与ベルト30を引き付け、曲率を変化させることができる。
また、電磁石への通電のON・OFFでも切り替えが可能である。磁石としてはフェライト磁石を始めとする既知の磁石が適用可能であるが、磁力と耐熱性に留意すればネオジウム磁石(ネオジ Nd−Fe−B)を80℃以下で用いることが望ましい。サマリウムコバルト磁石(サマコバ Sm−Co)はさらに350℃以下の高温でも利用可能であるが、磁力はやや劣るため、体積を大きくすることで必要な磁力を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0029】
30 ベルトとしての光沢付与ベルト
39 ベルト吸引手段としてのベルト吸引ダクト
40 加圧部材としての加圧ローラ
46 回転体としての回転コロ
70 加圧部材
300 定着手段としての定着装置
301 光沢付与装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】特開2004−325934号公報
【特許文献2】特開2004−258537号公報
【特許文献3】特開2006−030248号公報
【特許文献4】特開2003−233266号公報
【特許文献5】特許第4307888号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未定着画像を記録媒体に定着させる定着手段の下流側に設けられ、定着された画像の光沢度を少なくとも1対の加圧部材のニップを通過させることで向上させ、前記加圧部材の画像に光沢付与を行う面側が、張架された無端状のベルトで構成される光沢付与装置において、
前記ベルトの内周側に、記録媒体を分離可能に前記ベルトを吸引するベルト吸引手段を有することを特徴とする光沢付与装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光沢付与装置において、
前記ベルト吸引手段は、前記ベルトの移動方向の上下流側に移動可能であることを特徴とする光沢付与装置。
【請求項3】
請求項1に記載の光沢付与装置において、
前記ベルト吸引手段は、前記ベルトの内周側に該ベルトの移動方向に沿って複数設けられ、これらのベルト吸引手段を選択的に動作させることによって記録媒体の分離位置を変更することを特徴とする光沢付与装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか1つに記載の光沢付与装置において、
前記ベルト吸引手段の前記ベルトとの接触部分が、摩擦を低減する形状を有していることを特徴とする光沢付与装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光沢付与装置において、
前記接触部分が、回転体で形成されることを特徴とする光沢付与装置。
【請求項6】
請求項1〜5のうちのいずれか1つに記載の光沢付与装置において、
前記ベルト吸引手段は、前記ベルト吸引手段の位置に用紙先端が差し掛かった時に吸引動作させることを特徴とする光沢付与装置。
【請求項7】
請求項1〜6のうちのいずれか1つに記載の光沢付与装置において、
前記吸引手段は、減圧した空気を利用したものであることを特徴とする光沢付与装置。
【請求項8】
請求項1〜6のうちのいずれか1つに記載の光沢付与装置において、
前記吸引手段は、磁力を利用したものであることを特徴とする光沢付与装置。
【請求項9】
請求1〜8のうちのいずれか1つに記載の光沢付与装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−158736(P2011−158736A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20762(P2010−20762)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】