光測定装置、光測定方法、及び光測定プログラム
【課題】試料から放出された光を含む画像において、経時的に輝度値が変化する画素を特定すること。
【解決手段】この光測定装置1は、試料からの光を測定する光測定装置であって、試料からの光を含む二次元光像の動画像データを取得する動画像取得部40と、動画像データに対して解析処理を行う解析処理部51とを備える。解析処理部51は、複数のウェルに対応する領域を構成する複数の画素における輝度値の経時変化を示す輝度値データを取得する輝度値データ取得部52aと、輝度値データから輝度値のピーク値とボトム値とを抽出する輝度値抽出部52bと、ピーク値とボトム値とに基づいて輝度値の変化の状態を評価する評価値を計算し、評価値の繰り返し状態に基づいて複数の画素から解析の対象となる対象画素を特定する画素特定部52cと、を含む。
【解決手段】この光測定装置1は、試料からの光を測定する光測定装置であって、試料からの光を含む二次元光像の動画像データを取得する動画像取得部40と、動画像データに対して解析処理を行う解析処理部51とを備える。解析処理部51は、複数のウェルに対応する領域を構成する複数の画素における輝度値の経時変化を示す輝度値データを取得する輝度値データ取得部52aと、輝度値データから輝度値のピーク値とボトム値とを抽出する輝度値抽出部52bと、ピーク値とボトム値とに基づいて輝度値の変化の状態を評価する評価値を計算し、評価値の繰り返し状態に基づいて複数の画素から解析の対象となる対象画素を特定する画素特定部52cと、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心筋細胞から放出される光を測定する光測定装置、光測定方法、及び光測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
創薬分野では、心筋細胞などの試料に投与した薬品の影響を、試料から放出された光に基づいて評価する場合がある。特許文献1には、試料からの光に対する測定感度を向上することが可能な光測定装置が開示されている。この装置では、光検出画像上でウェルに対応して設定される測定領域に対して、測定領域内での二次元の輝度値分布と所定の輝度値閾値とを比較して、測定領域から解析処理の対象となる解析領域を抽出する。そして解析領域内での輝度値のデータを解析データとして解析処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−278985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された光測定装置では、解析対象となる画素を特定する場合に、測定領域内での二次元の輝度値分布と所定の輝度値閾値とを比較して解析領域を抽出する。このため、測定領域内に心筋細胞と心筋細胞ではない細胞があり、いずれも輝度値閾値を超える輝度値を有する光を放出しているとき、心筋細胞の領域のみを解析領域として設定することが難しい。また、心筋細胞は拍動し、心筋細胞の領域は経時変化するので、心筋細胞の境界を設定することが困難である。
【0005】
上述した問題点に鑑みて、本発明は、心筋細胞を含む試料から放出された光を含む画像において、経時的に輝度値が変化する心筋細胞の像を構成する画素を特定可能な光測定装置、光測定方法、及び光測定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するため、本発明の光測定装置は、心筋細胞を含む試料を保持する保持部を有する試料ケースによって保持された心筋細胞から放出された光を測定する光測定装置であって、試料ケースの保持部の内部に保持された試料から放出された光を含む試料ケースの二次元光像を検出して、二次元光像の動画像データを取得する動画像取得手段と、動画像データに対して解析処理を行う解析処理手段と、を備え、解析処理手段は、動画像データに含まれる保持部に対応する領域から、保持部に対応する領域を構成する複数の画素における輝度値の経時変化を示す輝度値データを取得する輝度値データ取得手段と、輝度値データから輝度値のピーク値とボトム値とを抽出する輝度値抽出手段と、輝度値データにおいて繰り返し現れる輝度値の経時変化を評価する評価値をピーク値とボトム値とに基づいて計算し、評価値に基づいて複数の画素から心筋細胞の像を構成する対象画素を特定する画素特定手段と、を含む。
【0007】
或いは、本発明の光測定方法は、心筋細胞を含む試料を保持する保持部を有する試料ケースによって保持された心筋細胞から放出された光を測定する光測定方法であって、試料ケースの保持部の内部に保持された試料から放出された光を含む試料ケースの二次元光像を検出して、二次元光像の動画像データを取得する動画像取得ステップと、動画像データに対して解析処理を行う解析処理ステップと、を備え、解析処理ステップは、動画像データに含まれる保持部に対応する領域から、保持部に対応する領域を構成する複数の画素における輝度値の経時変化を示す輝度値データを取得する輝度値データ取得ステップと、輝度値データから輝度値のピーク値とボトム値とを抽出する輝度値抽出ステップと、輝度値データにおいて繰り返し現れる輝度値の経時変化を評価する評価値をピーク値とボトム値とに基づいて計算し、評価値に基づいて複数の画素から心筋細胞の像を構成する対象画素を特定する画素特定ステップと、を含む。
【0008】
或いは、本発明の光測定プログラムは、心筋細胞を含む試料を保持する保持部を有する試料ケースによって保持された心筋細胞から放出された光を測定する光測定プログラムであって、コンピュータを、動画像取得手段によって取得された、試料ケースの保持部の内部に保持された試料から放出された光を含む試料ケースの二次元光像を検出した動画像データに対し、動画像データに含まれる保持部に対応する領域から、保持部に対応する領域を構成する複数の画素における輝度値の経時変化を示す輝度値データを取得する輝度値データ取得手段、輝度値データから輝度値のピーク値とボトム値とを抽出する輝度値抽出手段、輝度値データにおいて繰り返し現れる輝度値の経時変化を評価する評価値をピーク値とボトム値とに基づいて計算し、評価値に基づいて複数の画素から心筋細胞の像を構成する対象画素を特定する画素特定手段、として機能させる。
【0009】
このような、光測定装置、光測定方法、或いは光測定プログラムによれば、試料ケースの保持部内に保持された心筋細胞を含む試料からの光を含む試料ケースの二次元光像を検出して、二次元の動画像データを取得する。次に、動画像データを構成する複数の画素における輝度値の経時変化を示す輝度値データを取得して、輝度値データから輝度値のピーク値とボトム値とを取得する。そして、ピーク値とボトム値とに基づいて、解析の対象となる心筋細胞の像を構成する画素を特定する。従って、経時的に輝度値が変化する光が繰り返し放出されている心筋細胞の像を構成する画素を特定することができる。
【0010】
本発明の光測定装置は、評価値が、ピーク値とボトム値との差分により得られる輝度値の振幅であってもよい。これによれば、一定の輝度値を有する光が放出されている領域の画素では輝度値の振幅はゼロであるので、所定の振幅閾値を設定することにより、閾値以上の輝度値の振幅を有する画素のみを特定することができる。従って、経時的に輝度値が変化する光が繰り返し放出されている心筋細胞の像を構成する画素を好適に特定することができる。
【0011】
本発明の光測定装置は、評価値が、ボトム値に対するピーク値の比率により得られる輝度値の変化率であってもよい。これによれば、一定の輝度値を有する光が放出されている領域の画素では輝度値の変化率は1であるので、所定の変化率閾値を設定することにより、閾値以上の輝度値の変化率を有する画素のみを特定することができる。従って、経時的に輝度値が変化する光が繰り返し放出されている心筋細胞の像を構成する画素を好適に特定することができる。
【0012】
本発明の光測定装置は、画素特定手段が、予め取得された閾値を評価値が超えた回数に基づいて、対象画素を特定してもよい。これによれば、経時的に輝度値が変化する光が繰り返し放出されている心筋細胞の像を構成する画素をより好適に特定することができる。
【0013】
本発明の光測定装置は、画素特定手段が、評価値の平均値と予め取得された閾値とを比較して、対象画素を特定してもよい。これによれば、経時的に輝度値が変化する光が繰り返し放出されている画素をより好適に特定することができる。
【0014】
本発明の光測定装置は、解析処理手段が、対象画素の輝度値データを解析データとして、解析処理を行うデータ処理手段をさらに含んでいてもよい。これによれば、画素特定部により特定された心筋細胞の像を構成する画素の輝度値データを用いて評価を行うことができる。これ故、心筋細胞から放出された光に対する測定感度を向上させた解析処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明による光測定装置、光測定方法、及び光測定プログラムによれば、試料から放出された光を含む画像において、経時的に輝度値が変化する心筋細胞の像を構成する画素を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】光測定装置の一実施形態を模式的に示す構成図である。
【図2】マイクロプレートの構成の一例を示す斜視図である。
【図3】図2に示したマイクロプレートの断面構造を示す側面断面図である。
【図4】データ解析装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図5】光測定方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【図6】輝度値データの例を説明するための図である。
【図7】解析結果の表示の一例を示す図である。
【図8】記録媒体に記録されたプログラムを実行するためのコンピュータのハードウェア構成を示す図である。
【図9】記録媒体に記録されたプログラムを実行するためのコンピュータの斜視図である。
【図10】光測定方法の一適用例を説明するための図である。
【図11】光測定方法の他の適用例を説明するための図である。
【図12】光測定方法のさらに他の適用例を説明するための図である。
【図13】光測定方法のさらに他の適用例を説明するための図である。
【図14】光測定方法のさらに他の適用例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明による光測定装置、光測定方法、及び光測定プログラムの実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
図1は、本発明による光測定装置1の一実施形態を模式的に示す構成図である。また、図2は、マイクロプレート20の構成の一例を示す斜視図である。また、図3は、図2に示したマイクロプレート20の断面構造を示す側面断面図である。本実施形態による光測定装置1は、試料ケースとしてマイクロプレート20を用い、マイクロプレート20によって保持された状態で測定位置Pに配置された試料S(図3参照)からの蛍光を測定するための装置である。
【0019】
また、試料Sは、心筋細胞を含む細胞である。また、本発明による光測定装置、光測定方法、及び光測定プログラムは、蛍光測定以外にも、例えば燐光や発光など、試料からの光を測定する光測定に一般に適用可能である。以下、光測定装置1の構成について説明する。
【0020】
図1に示す光測定装置1は、データ取得装置10、励起光源30、及びデータ解析装置50を備えて構成されている。データ取得装置10は、蛍光測定の対象となる心筋細胞を含む試料Sを保持したマイクロプレート20が内部に収容される暗箱15と、暗箱15の内部に設置されて測定位置Pに配置された試料Sからの蛍光の測定に用いられる動画像取得部40とを有している。
【0021】
本実施形態において試料ケースとして用いられているマイクロプレート20は、図2及び図3に示すように、複数のウェル(保持部)21が二次元アレイ状に並設された板状部材であり、その複数のウェル21のそれぞれにおいて、試料Sを保持可能な構成となっている。図2に示した構成例では、複数のウェル21として、8×12=96個のウェル21が二次元アレイ状に配置されている。また、このマイクロプレート20の底面22は、試料Sに照射される蛍光測定用の励起光、及び試料Sから放出される蛍光を透過可能な材質によって形成されている。なお、一般に光測定装置1においては、マイクロプレート20の底面22は、測定対象となる試料Sからの光を透過可能な材質によって形成されていれば良い。
【0022】
暗箱15内においては、マイクロプレート20は、蛍光観察用の開口を有するマイクロプレートホルダ11によって保持されている。また、これらのマイクロプレート20及びホルダ11に対して、暗箱15内で所定の方向を搬送方向(図1中においては、右側から左側へと向かう方向)とするマイクロプレート搬送機構12が設置されている。
【0023】
搬送機構12でのマイクロプレート20の搬送方向に対して搬入側となる暗箱15の一方側には、試料Sが保持された測定前のマイクロプレート20を所定枚数(例えば、25枚)ストックしておくための搬入側マイクロプレートストッカー13が設置されている。また、マイクロプレート20の搬送方向に対して搬出側となる暗箱15の他方側には、測定後のマイクロプレート20をストックしておくための搬出側マイクロプレートストッカー14が設置されている。
【0024】
このような構成において、搬入側マイクロプレートストッカー13から暗箱15内へと搬入されたマイクロプレート20は、マイクロプレートホルダ11によって保持されるとともに搬送機構12によって搬送される。そして、マイクロプレート20は測定位置Pで一旦停止させられ、この状態で、マイクロプレート20によって保持された試料Sに対して必要な光測定が行われる。測定完了後、マイクロプレート20は再び搬送機構12によって搬送され、搬出側マイクロプレートストッカー14へと搬出される。なお、図1においては、搬送機構12、及びストッカー13、14については、マイクロプレート20を搬入、搬送、搬出するための具体的な構成の図示を省略している。
【0025】
蛍光測定の実行時にマイクロプレート20、及びそれに保持された試料Sが配置される測定位置Pに対し、測定位置Pの上方には、マイクロプレート20のウェル21内に試薬等を注入するための分注装置16が設置されている。また、測定位置Pの下方には、ウェル21内に収容された試料Sからマイクロプレート20の底面22を介して放出される蛍光の検出に用いられる動画像取得部40が設置されている。
【0026】
動画像取得部40は、マイクロプレート20のウェル21内に保持された試料Sからの光を含むマイクロプレート20の二次元光像を検出して、二次元光像の動画像データを取得する動画像取得手段である。本実施形態においては、動画像取得部40は、複数の画素が二次元に配列された二次元画素構造を有し、試料Sから放出される蛍光による二次元の光検出画像である蛍光画像を取得可能な撮像装置45を有している。この撮像装置45としては、例えば高感度のCCDカメラやCMOSイメージカメラを用いることができる。また、必要があれば、カメラの前段にイメージ増倍管、リレーレンズ等を配置して動画像取得部40を構成しても良い。
【0027】
また、マイクロプレート20が配置される測定位置Pと、撮像装置45との間には、導光光学系41が設置されている。導光光学系41は、複数のウェル21のそれぞれに試料Sが保持されたマイクロプレート20を底面22側からみた二次元光像を撮像装置45へと導く光学系である。導光光学系41の具体的な構成については、マイクロプレート20及び撮像装置45の構成等に応じ、必要な機能(例えば集光機能、光像縮小機能等)を実現可能な光学素子によって適宜構成すれば良い。そのような光学素子としては、例えばテーパファイバがある(特開2001−188044号公報参照)。
【0028】
また、図1においては、さらに、導光光学系41と撮像装置45との間に、必要に応じて蛍光の導光光路上への光学フィルタの配置、切換等を行うことが可能な光学フィルタ部42が設置されている。ただし、このような光学フィルタ部42については、不要であれば設けなくても良い。
【0029】
また、マイクロプレート20のウェル21内の試料Sに対し、蛍光画像を取得するための動画像取得部40に加えて、励起光源30が設置されている。この励起光源30は、試料Sに対して蛍光測定用の励起光を供給するための励起光供給手段である。励起光源30の具体的な構成としては、蛍光測定の対象となる試料Sの種類、試料Sに照射する励起光の波長等に応じて適宜構成すれば良いが、例えば、光を供給する照明光源と、励起光の波長の選択、切換を行うための光学フィルタ部とによって構成することができる。また、試料Sに対して行われる光測定の種類により、励起光の供給が不要な場合には、励起光源30を設けない構成としても良い。
【0030】
本実施形態においては、励起光源30は図1に示すように暗箱15に対して外側に配置されており、励起光源30から供給される励起光は、励起光供給用ライトガイド31及び導光光学系41を介して試料Sへと照射される構成となっている。このような構成では、導光光学系41は、マイクロプレート20及び試料Sからの二次元光像を撮像装置45へと導くとともに、励起光源30からの励起光を試料Sへと導くことが可能な光学系として構成される。このような導光光学系41は、例えば、マイクロプレート20からの蛍光を通過させるとともに、励起光源30からの励起光を反射させるダイクロイックミラー等を用いて構成することができる。なお、図1においては、導光光学系41における蛍光及び励起光の光路を、それぞれ実線及び破線によって模式的に示している。
【0031】
これらの動画像取得部40を含むデータ取得装置10、及び励起光源30に対し、データ解析装置50が設けられている。このデータ解析装置50は、動画像取得部40によって取得された光検出画像を含む動画像データに対して解析処理を行う解析処理手段である。また、データ解析装置50は、データ取得装置10及び励起光源30の各部の動作を制御することによって、光測定装置1における試料Sに対する蛍光測定を制御する。また、図1においては、データ解析装置50に対して、測定結果等を表示する表示装置61と、データの入力や蛍光測定に必要な指示の入力等に用いられる入力装置62とが接続されている。
【0032】
以上の構成において、マイクロプレート20のウェル21内に保持され、暗箱15内で測定位置Pに配置された試料Sに対し、ライトガイド31及び導光光学系41を介して、励起光源30から供給された蛍光測定用の励起光が照射される。そして、試料Sから放出された蛍光を含む二次元光像は、導光光学系41を介して撮像装置45へと導かれ、撮像装置45によって二次元光像の動画像データが取得される。動画像取得部40によって取得された蛍光画像を含む動画像データは、データ解析装置50へと送られる。そして、データ解析装置50は、入力された動画像データから心筋細胞の像を構成する画素を特定し、評価等に必要な解析処理を行う。
【0033】
なお、試料ケースは、上述したマイクロプレート20に限定されるものではない。複数の試料Sが、試料ケースとしてシャーレのようなディッシュに保持されてもよい。さらに、顕微鏡を介してシャーレに保持された試料を観察する装置構成であってもよい。
【0034】
図4は、本発明の好適な一実施形態に係る光測定装置1が備えるデータ解析装置50の概略構成を示す機能ブロック図である。
【0035】
データ解析装置50は、動画像データから画素毎の輝度値データを取得し、その輝度値データに基づいて解析対象となる心筋細胞の像を構成する対象画素を特定して、対象画素に対して所定の解析処理を実施するための情報処理装置である。この動画像データは、上述したウェル21内に保持された試料Sから放出される光を含むマイクロプレート20を撮影した画像を、デジタルデータに変換したものである。なお、動画像データは、通信ネットワークやCD−ROM、DVD、半導体メモリ等の記録媒体を介してデータ解析装置50に入力されてもよい。
【0036】
データ解析装置50は、機能的構成要素として、解析処理部51及び閾値記録部54を備える。データ解析装置50は、データ取得装置10、表示装置61及び入力装置62と接続されている。
【0037】
解析処理部51は、機能的構成要素として、領域特定部52及びデータ処理部53を備える。解析処理部51は、データ取得装置10の動画像取得部40によって取得された試料Sの動画像データから心筋細胞の像を構成する対象画素を特定する。また、解析処理部51は、対象画素が有する輝度値データを解析データとして、解析処理を行う解析処理手段である。解析処理部51は、閾値記録部54と接続される。
【0038】
領域特定部52は、輝度値データ取得部(輝度値データ取得手段)52a、輝度値抽出部(輝度値抽出手段)52b、画素特定部(画素特定手段)52cを含んでいる。領域特定部52は、動画像データにおける画素が有する輝度値の経時変化に基づき、ウェル21に対応する測定領域から、心筋細胞の像を構成する対象画素を特定する。領域特定部52は、データ処理部53と接続されている。
【0039】
閾値記録部54は、対象画素を特定するときに用いられる閾値が記録されている。閾値には、例えばピーク値閾値、振幅閾値、及び変化率閾値などがある。閾値記録部54は、領域特定部52から参照可能に構成されている。
【0040】
輝度値データ取得部52aは、動画像取得部40から入力された動画像データに含まれる複数のウェル21に対応する領域から、複数のウェル21に対応する領域を構成する複数の画素における輝度値データを取得する。輝度値データは、画素が有する輝度値の経時変化を示す。輝度値データ取得部52aは、ウェル21の像が含まれた領域を1つの測定領域として、その測定領域を構成する画素毎に輝度値データを取得する。輝度値データ取得部52aにおいて取得された輝度値データは、輝度値抽出部52bに出力される。
【0041】
輝度値抽出部52bは、輝度値データ取得部52aから入力された画素の輝度値データから、ピーク値とボトム値を抽出する。ピーク値とボトム値は、画素特定部52cに出力される。
【0042】
画素特定部52cは、輝度値抽出部52bから入力されたピーク値とボトム値に基づいて、心筋細胞の像を構成する対象画素を特定する。対象画素の情報は、データ処理部53に出力される。対象画素を特定する方法は、後に詳細に説明する。
【0043】
データ処理部(データ処理手段)53は、位相補正部53a、及び輝度値データ処理部53bを含んでいる。データ処理部53は、領域特定部52において特定された対象画素を参照し、対象画素が有する輝度値データを解析データとして、心筋細胞の像を構成する対象画素について解析処理を行う。データ処理部53は、領域特定部52と接続されている。
【0044】
位相補正部53aは、輝度値データにおいて、画素毎の輝度値データの位相をそろえる為に、ボトム値からピーク値に変化するタイミングを補正する。位相補正部53aにより補正された輝度値データは、輝度値データ処理部53bに出力される。
【0045】
輝度値データ処理部53bは、位相補正部53aにより位相補正された輝度値データを、例えばウェル21毎に処理する。輝度値データ処理部53bにより処理されたウェル21毎の輝度値データは、表示装置61に出力される。
【0046】
次に、本実施形態の光測定装置1によって実行される光測定方法を説明すると共に、本実施形態の光測定方法について詳細に説明する。ここでは、動画像データから心筋細胞の像を構成する対象画素を特定する工程を説明する。図5は、本実施形態に係る光測定方法の主要な工程を説明するための図である。
【0047】
工程S10は、データ取得装置10の動画像取得部40により実行され、データ取得装置10を用いてマイクロプレート20のウェル21の内部に保持された心筋細胞を含む試料Sからの光を含むマイクロプレートの二次元光像を検出して、二次元光像の動画像データを取得する(動画像取得ステップ)。ここで、動画像データとは、所定の時間間隔で検出された二次元画像データを経時的に並べた二次元画像データの集まりである。これにより、二次元画像を構成する各画素の輝度値の時間変化を抽出することが可能となる。
【0048】
まず心筋細胞を含む試料Sがウェル21内に保持されたマイクロプレート20の二次元画像を動画像取得部40の撮像装置45で検出して、動画像データを取得する。動画像データは、予め設定された時間の間だけ取得される。動画像データの取得を開始するタイミングは、ウェル21の試料Sに投薬により刺激を与える前であってもよいし、ウェル21の試料Sに刺激を与えた後であってもよい。また、動画像データの取得中に投薬により刺激を与えてもよい。取得された動画像データは、データ取得装置10からデータ解析装置50へ入力される。
【0049】
工程S11は、データ解析装置50により実行され、工程S10でデータ取得装置10により取得された動画像データに対して解析処理を行う(解析処理ステップ)。工程S11は、解析の対象となる対象画素を特定するステップ(領域特定ステップ)及び対象画素について解析処理を実施するステップ(データ処理ステップ)を有する。
【0050】
工程S20は、データ解析装置50の領域特定部52により実行され、工程S10で取得された動画像データの画素における輝度値データに基づいて、解析の対象となる対象画素を特定する。工程S20は、画素毎の輝度値データを取得するステップ(輝度値データ取得ステップ:S21)、各画素の輝度値データからピーク値とボトム値とを取得するステップ(輝度値抽出ステップ:S22)、及びピーク値とボトム値とに基づいて対象画素を特定するステップ(画素特定ステップ:S23)とを有する。
【0051】
工程S21は、輝度値データ取得部52aにより実行され、画素毎の輝度値データを取得する。ここで、繰り返し現れる輝度値の経時変化の具体例について説明する。繰り返し現れる輝度値の経時変化の具体例は、図6に示された5つのグラフの輝度値の経時変化に例示される。図6(a)を参照すると、輝度値データには輝度値が一定の周期で変化する場合がある。このとき周期C1は1秒程度である。一方、輝度値データには輝度値のピークが現われる周期が時間経過とともに変化する場合がある。図6(b)は輝度値のピークが現われる周期が時間経過とともに長くなる場合であり、周期C2は周期C1よりも長い。また、図6(c)は輝度値のピークが現われる周期が時間経過とともに短くなる場合であり、周期C3は周期C1よりも短い。図6(d)は輝度値のピークが現われる周期が不規則に変化する場合である。また、図6(e)を参照すると、ボトム値からピーク値に変化し、再びボトム値に戻るまでの時間t1、t2、t3が時間経過と共に長くなる場合を示す。なお、繰り返し現れる輝度値の経時変化は、図6に例示されるものに限定されない。
【0052】
再び図5を参照すると、工程S22は、輝度値抽出部52bにより実行され、工程S21において取得された輝度値データからピーク値とボトム値を抽出する。ピーク値は、一つの画素における輝度値データの経時変化から、複数個抽出される。同様に、ボトム値は、一つの画素における輝度値データの経時変化から、複数個抽出される。
【0053】
工程S23では、画素特定部52cにより実行され、工程S22において取得されたピーク値及びボトム値に基づいて、心筋細胞の像を構成する対象画素を特定する。まず、繰り返し現われる輝度値の経時変化の状態を評価する評価値を計算する。この評価値には、ピーク値、輝度値の振幅、及び輝度値の変化率(レシオ値)などがある。ここで、再び図6(a)を参照すると、ピーク値とは、輝度値データに現われるピークの絶対値Lである。ボトム値とは、輝度値データに現われるボトムの絶対値Bである。なお、ボトム値は予め取得されたバックグラウンドの輝度値データをボトム値として用いてもよい。輝度値の振幅とは、ピーク値とボトム値との差分(L−B)である。輝度値の変化率とは、ボトム値に対するピーク値の比率(L/B)である。
【0054】
対象画素の特定は、上記評価値のうち、少なくとも一つの評価値が用いられる。例えば対象画素の特定に用いられる評価値として、以下のような(i)〜(vi)の組み合わせがある。
(i)輝度値の振幅のみを評価値として用いる
(ii)輝度値の変化率のみを評価値として用いる
(iii)ピーク値と、輝度値の振幅とを評価値として用いる
(iv)ピーク値と、輝度値の変化率とを評価値として用いる
(v)輝度値の振幅と、輝度値の変化率とを評価値として用いる
(vi)ピーク値と、輝度値の振幅と、輝度値の変化率とを評価値として用いる
【0055】
評価値と閾値との比較には、評価値が予め設定された閾値を超えた回数に基づいて、対象画素を特定する。例えば、一の画素が有する複数の評価値が、閾値をn回(nは1以上の整数)超えた場合に、当該一の画素は対象画素として特定される。また、評価値の平均値と予め設定された閾値とを比較して、対象画素を特定してもよい。例えば、一の画素が有する複数の評価値の平均値を算出する。そして該平均値が閾値を超えた場合に、当該一の画素は対象画素として特定される。このように、繰り返し現れる輝度値の経時変化が評価値に基づいて評価される。
【0056】
さらに、上記(iii)〜(vi)のように対象画素の特定に複数の評価値を用いるときには、対象画素の特定に用いられた全ての評価値が閾値により規定された条件を満たすときに、当該画素が対象画素として特定される。
【0057】
工程S30は、データ処理部53により実行され、工程S20において特定された心筋細胞の像を構成する対象画素について解析処理を実施する。工程S30は、対象画素の輝度値データを補正するステップ(補正ステップ:S31)及び補正された輝度値データに基づいてデータ処理を行うステップ(輝度値データ処理ステップ:S32)とを有する。
【0058】
工程S31は、位相補正部53aにより実行され、ボトム値からピーク値に変化するタイミングを補正することにより、補正輝度値データを算出する。心筋細胞の位置や投薬により心筋細胞から放射される輝度値の経時変化では、刺激の伝わり方により反応が現われるタイミングにずれが生じる場合がある。例えば、刺激の中心から離れた位置にある心筋細胞の像を構成する画素において反応が現われるタイミングは、刺激の中心に近い位置にある画素において反応が現われるタイミングよりも遅い。これ故、位相補正部53aにより、ボトム値からピーク値に変化するタイミングを複数の画素間で合わせるように補正する。これにより、測定感度を向上させることができる。なお、タイミングのずれが予め設定された時間の範囲内である場合には、工程S31を省略してもよい。
【0059】
工程S32は、輝度値データ処理部53bにより実行され、補正された輝度値データに基づいて輝度値データの処理が行われる。この処理では、例えば、ウェル21における対象画素の輝度値データを二次元画像データ毎に平均した平均輝度値データを各時間で算出する処理が実行される。これにより、特定の時間における細胞からの放出される光の平均輝度を算出することができる。工程S31で位相補正された補正輝度値データを用いて、各時間における平均輝度値データを算出するので、測定感度を向上させることができる。また、ウェル21中に複数の心筋細胞がある場合は、対象画素が構成する心筋細胞の領域毎に対象画素の輝度値データを平均した平均輝度データを算出してもよい。
【0060】
上述した各工程を実施することにより、ウェル21毎または心筋細胞領域毎の平均輝度値データが得られる。ウェル21毎の解析結果を表示装置61に表示する場合には、図7に示すように画面を二次元に配列された複数の表示領域(図7では8×12=96個の表示領域)に区分し、そのそれぞれに対応するウェル21での平均輝度値データの時間変化を表示してもよい。
【0061】
なお、工程S32では、ウェル21毎の輝度値の変化率を算出してもよい。ウェル21毎の輝度値の変化率を算出するときには、まずウェル21における対象画素の輝度値データを平均化する。そして、平均化された輝度値データからピーク値とボトム値とを抽出して、輝度値の変化率を算出してもよい。また、画素毎の輝度値データから画素毎のピーク値とボトム値とを抽出して、画素毎の輝度値の変化率を算出した後に、画素毎の輝度値の変化率を平均化してもよい。
【0062】
上述した光測定方法は、例えば心筋細胞の評価において、心筋細胞の拍動周期の測定に用いることができる。
【0063】
以下、コンピュータを光測定装置1として動作させる光測定プログラムについて説明する。
【0064】
本発明の実施形態に係る光測定プログラムは、記録媒体に格納されて提供される。記録媒体としては、フロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROM、DVD、あるいはROM等の記録媒体、あるいは半導体メモリ等が例示される。
【0065】
図8は、記録媒体に記録されたプログラムを実行するためのコンピュータのハードウェア構成を示す図であり、図9は、記録媒体に記憶されたプログラムを実行するためのコンピュータの斜視図である。コンピュータとして、CPUを具備しソフトウエアによる処理や制御を行うサーバ装置、パーソナルコンピュータ等の各種データ処理装置を含む。
【0066】
図8に示すように、コンピュータ70は、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ装置、CD−ROMドライブ装置、DVDドライブ装置等の読取装置72と、オペレーティングシステムを常駐させた作業用メモリ(RAM)73と、記録媒体71に記憶されたプログラムを記憶するメモリ74と、ディスプレイといった表示装置75と、入力装置であるマウス76及びキーボード77と、データ等の送受を行うための通信装置78と、プログラムの実行を制御するCPU79とを備えている。コンピュータ70は、記録媒体71が読取装置72に挿入されると、読取装置72から記録媒体71に格納された光測定プログラムにアクセス可能になり、当該光測定プログラムによって、本実施形態の光測定装置1として動作することが可能になる。
【0067】
図9に示すように、光測定プログラムは、搬送波に重畳されたコンピュータデータ信号79としてネットワークを介して提供されるものであってもよい。この場合、コンピュータ70は、通信装置78によって受信した光測定プログラムをメモリ74に格納し、当該光測定プログラムを実行することができる。
【0068】
以上説明した光測定装置1及びこれを用いた光測定方法によれば、複数のウェル21に対応する領域毎の二次元光像の動画像データを取得する(S10)。次に、動画像データを構成する複数の各画素における輝度値の経時変化を示す輝度値データを取得して(S21)、輝度値データから輝度値のピーク値とボトム値とを抽出する(S22)。そして、ピーク値とボトム値とに基づいて輝度値の変化の状態を評価する評価値を計算し、この評価値の繰り返し状態に基づいて複数の画素から解析の対象となる心筋細胞の像を構成する対象画素を特定する(S23)。このように、画素が有する輝度値の経時変化に基づいて対象領域を特定する。従って、経時的に輝度値が変化する光が繰り返し放出されている心筋細胞の像を構成する画素を特定することができる。さらに、輝度値の経時変化を示す輝度値データに基づいて対象画素を特定しているので、心筋細胞のように拍動により細胞の領域が変化するときであっても、心筋細胞の境界を容易に特定することができる。
【0069】
また、光測定装置1は、評価値が、ピーク値とボトム値との差分により得られる輝度値の振幅であってもよい。これによれば、一定の輝度値である領域の画素では輝度値の振幅はゼロであるので、所定の振幅閾値を設定することにより、閾値以上の輝度値の振幅を有する画素のみを特定することができる。従って、経時的に輝度値が変化する光が繰り返し放出されている心筋細胞の像を構成する画素を好適に特定することができる。
【0070】
また、光測定装置1は、評価値が、ボトム値に対するピーク値の比率により得られる輝度値の変化率であってもよい。これによれば、一定の輝度値である領域の画素では輝度値の変化率は1であるので、所定の変化率閾値を設定することにより、閾値以上の輝度値の変化率を有する画素のみを特定することができる。従って、経時的に輝度値が変化する光が繰り返し放出されている心筋細胞の像を構成する画素を好適に特定することができる。
【0071】
また、光測定装置1は、画素特定部52cが、予め取得された閾値を評価値が超えた回数に基づいて、対象画素を特定してもよい。これによれば、経時的に輝度値が変化する光が繰り返し放出されている心筋細胞の像を構成する画素をより好適に特定することができる。
【0072】
また、光測定装置1は、画素特定部52cが、評価値の平均値と予め取得された閾値とを比較して、対象画素を特定してもよい。経時的に輝度値が変化する光が繰り返し放出されている心筋細胞の像を構成する画素をより好適に特定することができる。
【0073】
また、光測定装置1は、解析処理部51が、対象画素の輝度値データを解析データとして、解析処理を行うデータ処理部53をさらに含んでいる。これによれば、画素特定部52cにより選択された画素の輝度値データを用いて試料Sの評価を行うことができる。これ故、試料Sからの光に対する測定感度を向上させた解析処理を行うことができる。即ち、一のウェル21が占める領域を一つの解析領域とする場合よりも、画素毎の輝度値データに基づいて類似した経時変化をする輝度値データを有する画素を特定して平均を算出するので、心筋細胞の像を構成する画素からの光に対する測定感度を向上させた解析処理を行うことができる。
【0074】
次に、光測定装置1を細胞の評価に用いる例を説明する。
【0075】
前述した実施形態では、評価値としてピーク値、輝度値の振幅、及び輝度値の変化率を用いた。これ以外の評価値として、輝度値の周期を用いてもよい。また、複数の対象画素により構成される領域が有する面積の経時変化を用いてもよい。また、ピーク値、輝度値の振幅、及び輝度値の変化率、輝度値の周期及び面積の経時変化から複数個の評価値を組み合わせて各種解析処理を行ってもよい。さらに、二つの輝度値データが表示された画像に基づいて得られる、蛍光エネルギー移動(FRET)反応の有無を対象画素の特定に用いてもよい。
【0076】
図10(a)に示されるように、測定領域R1において細胞の有無を判定するときには、例えばピーク値を評価値として用いることができる。測定領域R1には心筋細胞の領域A1、心筋細胞ではない細胞の領域A2、及び複数のゴミの領域A3が存在している。測定領域R1に含まれる複数の正方形の一領域は、一画素に対応する。このとき、それぞれの要素が含まれた画素の輝度値に対して、それぞれの要素が含まれた画素の数を整理すると図10(b)を得る。グラフG1は心筋細胞の領域A1における輝度値の度数を示し、グラフG2は心筋細胞ではない細胞の領域A2における輝度値の度数を示す。ここで、所定の輝度値の範囲S1を設定することにより、測定領域R1から心筋細胞の領域A1、及び心筋細胞ではない細胞の領域A2の画像に含まれた画素を特定することができる。
【0077】
図11(a)に示されるように、異なる種類の細胞を含んだ領域において、例えば心筋細胞を特定するときには、輝度値の振幅又は輝度値の変化率を評価値として用いることができる。測定領域R2には、心筋細胞の領域A1、心筋細胞ではない細胞の領域A2が存在している。この心筋細胞は拍動する。この拍動に対応して、図11(b)のグラフG5に示されるように、領域A1に含まれる画素の輝度値は時間的に変化する。一方、心筋細胞ではない細胞は拍動することがないので、グラフG6に示されるように輝度値は一定である。これ故、輝度値の振幅又は輝度値の変化率を用いることにより、測定領域R2から心筋細胞の領域A1の画像に含まれる画素を特定することができる。なお、心筋細胞は、一定の周期C1で拍動するので、輝度値の周期を用いることにより、さらに確実に心筋細胞の領域A1の画像に含まれる画素を特定することができる。
【0078】
図12(a)に示されるように、複数の心筋細胞を含んだ領域R3において、所定の心筋細胞の領域A1aを特定するときには、輝度値の周期を評価値として用いることができる。図12(b)のグラフG7は、心筋細胞の領域A1aに含まれる画素の輝度値の経時変化を示し、グラフG8は心筋細胞の領域A1bに含まれる画素の輝度値の経時変化を示す。例えば心筋細胞の領域A1aにおける輝度値の周期C8と、心筋細胞の領域A1bにおける輝度値の周期C9とは異なっている。これ故、周期C8と周期C9とを比較することにより、所定の心筋細胞を特定することができる。これによれば、心筋細胞ではあるが、解析には適さないものを排除することができる。即ち、より好適な解析対象を特定するスクリーニングの実施に用いることができる。
【0079】
また、複数の互いに異なる心筋細胞、及び心筋細胞でない細胞を含んだ領域において、各細胞を判別するときには、ピーク値と、輝度値の振幅又は輝度値の変化率のいずれか一方と、輝度値の周期を評価値として、組み合わせて用いることができる。これによれば、まず、ピーク値を用いることにより所定のピーク値閾値を超える細胞を特定することができる。即ち、染色状態のよい細胞を特定することができる。そして、輝度値の振幅又は輝度値の変化率のいずれか一方を用いて心筋細胞と心筋細胞ではない細胞とを判別することができる。そして、輝度値の周期を用いて一の心筋細胞と他の心筋細胞とを判別することができる。
【0080】
図13(a)に示されるように、測定領域R4から解析対象となり得ないゴミの領域A3a、A3b、及び背景を特定するときには、ピーク値、輝度値の振幅、輝度値の変化率、及び輝度値の周期を評価値として用いることができる。例えば、図13(b)を参照すると、領域A3aの輝度値データであるグラフG9は飽和しているので、解析対象とはなり得ず、領域A3aはゴミ又は背景として排除される。また、領域A3bの輝度値データであるグラフG10は、ピーク値閾値G11を下回るので、解析対象とはなり得ず、領域A3bはゴミ又は背景として排除される。
【0081】
図14に示されるように、測定領域R5から解析対象となり得ないゴミの領域A3a、A3bを特定するときには、対象画素が構成する領域の面積を評価値として用いることができる。例えば、対象画素として特定された複数の画素e1〜e24からなる領域A3bは、心筋細胞の領域A1と比較して極端に大きい面積を有している。このような極端に大きい面積を有している領域A3bは、心筋細胞等である可能性は低い。これ故、解析対象となり得ないゴミの領域A3bを特定することができる。
【0082】
また、光測定装置1が心筋細胞の像を構成する対象画素の輝度値データを基に評価する際には、輝度値の周期に基づいて心筋細胞の拍動数を検出してもよい。輝度値の変化率と周期とに基づいて不整脈の状態を判定してもよいし、輝度値の変化率と周期とに基づいて細胞に投与された薬剤の効果を判定してもよい。
【符号の説明】
【0083】
1…光測定装置、20…マイクロプレート、21…ウェル、40…動画像取得部、50…データ処理装置、51…解析処理部、52a…輝度値データ取得部、52b…輝度値抽出部、52c…画素特定部、S…試料。
【技術分野】
【0001】
本発明は、心筋細胞から放出される光を測定する光測定装置、光測定方法、及び光測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
創薬分野では、心筋細胞などの試料に投与した薬品の影響を、試料から放出された光に基づいて評価する場合がある。特許文献1には、試料からの光に対する測定感度を向上することが可能な光測定装置が開示されている。この装置では、光検出画像上でウェルに対応して設定される測定領域に対して、測定領域内での二次元の輝度値分布と所定の輝度値閾値とを比較して、測定領域から解析処理の対象となる解析領域を抽出する。そして解析領域内での輝度値のデータを解析データとして解析処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−278985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された光測定装置では、解析対象となる画素を特定する場合に、測定領域内での二次元の輝度値分布と所定の輝度値閾値とを比較して解析領域を抽出する。このため、測定領域内に心筋細胞と心筋細胞ではない細胞があり、いずれも輝度値閾値を超える輝度値を有する光を放出しているとき、心筋細胞の領域のみを解析領域として設定することが難しい。また、心筋細胞は拍動し、心筋細胞の領域は経時変化するので、心筋細胞の境界を設定することが困難である。
【0005】
上述した問題点に鑑みて、本発明は、心筋細胞を含む試料から放出された光を含む画像において、経時的に輝度値が変化する心筋細胞の像を構成する画素を特定可能な光測定装置、光測定方法、及び光測定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するため、本発明の光測定装置は、心筋細胞を含む試料を保持する保持部を有する試料ケースによって保持された心筋細胞から放出された光を測定する光測定装置であって、試料ケースの保持部の内部に保持された試料から放出された光を含む試料ケースの二次元光像を検出して、二次元光像の動画像データを取得する動画像取得手段と、動画像データに対して解析処理を行う解析処理手段と、を備え、解析処理手段は、動画像データに含まれる保持部に対応する領域から、保持部に対応する領域を構成する複数の画素における輝度値の経時変化を示す輝度値データを取得する輝度値データ取得手段と、輝度値データから輝度値のピーク値とボトム値とを抽出する輝度値抽出手段と、輝度値データにおいて繰り返し現れる輝度値の経時変化を評価する評価値をピーク値とボトム値とに基づいて計算し、評価値に基づいて複数の画素から心筋細胞の像を構成する対象画素を特定する画素特定手段と、を含む。
【0007】
或いは、本発明の光測定方法は、心筋細胞を含む試料を保持する保持部を有する試料ケースによって保持された心筋細胞から放出された光を測定する光測定方法であって、試料ケースの保持部の内部に保持された試料から放出された光を含む試料ケースの二次元光像を検出して、二次元光像の動画像データを取得する動画像取得ステップと、動画像データに対して解析処理を行う解析処理ステップと、を備え、解析処理ステップは、動画像データに含まれる保持部に対応する領域から、保持部に対応する領域を構成する複数の画素における輝度値の経時変化を示す輝度値データを取得する輝度値データ取得ステップと、輝度値データから輝度値のピーク値とボトム値とを抽出する輝度値抽出ステップと、輝度値データにおいて繰り返し現れる輝度値の経時変化を評価する評価値をピーク値とボトム値とに基づいて計算し、評価値に基づいて複数の画素から心筋細胞の像を構成する対象画素を特定する画素特定ステップと、を含む。
【0008】
或いは、本発明の光測定プログラムは、心筋細胞を含む試料を保持する保持部を有する試料ケースによって保持された心筋細胞から放出された光を測定する光測定プログラムであって、コンピュータを、動画像取得手段によって取得された、試料ケースの保持部の内部に保持された試料から放出された光を含む試料ケースの二次元光像を検出した動画像データに対し、動画像データに含まれる保持部に対応する領域から、保持部に対応する領域を構成する複数の画素における輝度値の経時変化を示す輝度値データを取得する輝度値データ取得手段、輝度値データから輝度値のピーク値とボトム値とを抽出する輝度値抽出手段、輝度値データにおいて繰り返し現れる輝度値の経時変化を評価する評価値をピーク値とボトム値とに基づいて計算し、評価値に基づいて複数の画素から心筋細胞の像を構成する対象画素を特定する画素特定手段、として機能させる。
【0009】
このような、光測定装置、光測定方法、或いは光測定プログラムによれば、試料ケースの保持部内に保持された心筋細胞を含む試料からの光を含む試料ケースの二次元光像を検出して、二次元の動画像データを取得する。次に、動画像データを構成する複数の画素における輝度値の経時変化を示す輝度値データを取得して、輝度値データから輝度値のピーク値とボトム値とを取得する。そして、ピーク値とボトム値とに基づいて、解析の対象となる心筋細胞の像を構成する画素を特定する。従って、経時的に輝度値が変化する光が繰り返し放出されている心筋細胞の像を構成する画素を特定することができる。
【0010】
本発明の光測定装置は、評価値が、ピーク値とボトム値との差分により得られる輝度値の振幅であってもよい。これによれば、一定の輝度値を有する光が放出されている領域の画素では輝度値の振幅はゼロであるので、所定の振幅閾値を設定することにより、閾値以上の輝度値の振幅を有する画素のみを特定することができる。従って、経時的に輝度値が変化する光が繰り返し放出されている心筋細胞の像を構成する画素を好適に特定することができる。
【0011】
本発明の光測定装置は、評価値が、ボトム値に対するピーク値の比率により得られる輝度値の変化率であってもよい。これによれば、一定の輝度値を有する光が放出されている領域の画素では輝度値の変化率は1であるので、所定の変化率閾値を設定することにより、閾値以上の輝度値の変化率を有する画素のみを特定することができる。従って、経時的に輝度値が変化する光が繰り返し放出されている心筋細胞の像を構成する画素を好適に特定することができる。
【0012】
本発明の光測定装置は、画素特定手段が、予め取得された閾値を評価値が超えた回数に基づいて、対象画素を特定してもよい。これによれば、経時的に輝度値が変化する光が繰り返し放出されている心筋細胞の像を構成する画素をより好適に特定することができる。
【0013】
本発明の光測定装置は、画素特定手段が、評価値の平均値と予め取得された閾値とを比較して、対象画素を特定してもよい。これによれば、経時的に輝度値が変化する光が繰り返し放出されている画素をより好適に特定することができる。
【0014】
本発明の光測定装置は、解析処理手段が、対象画素の輝度値データを解析データとして、解析処理を行うデータ処理手段をさらに含んでいてもよい。これによれば、画素特定部により特定された心筋細胞の像を構成する画素の輝度値データを用いて評価を行うことができる。これ故、心筋細胞から放出された光に対する測定感度を向上させた解析処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明による光測定装置、光測定方法、及び光測定プログラムによれば、試料から放出された光を含む画像において、経時的に輝度値が変化する心筋細胞の像を構成する画素を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】光測定装置の一実施形態を模式的に示す構成図である。
【図2】マイクロプレートの構成の一例を示す斜視図である。
【図3】図2に示したマイクロプレートの断面構造を示す側面断面図である。
【図4】データ解析装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図5】光測定方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【図6】輝度値データの例を説明するための図である。
【図7】解析結果の表示の一例を示す図である。
【図8】記録媒体に記録されたプログラムを実行するためのコンピュータのハードウェア構成を示す図である。
【図9】記録媒体に記録されたプログラムを実行するためのコンピュータの斜視図である。
【図10】光測定方法の一適用例を説明するための図である。
【図11】光測定方法の他の適用例を説明するための図である。
【図12】光測定方法のさらに他の適用例を説明するための図である。
【図13】光測定方法のさらに他の適用例を説明するための図である。
【図14】光測定方法のさらに他の適用例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明による光測定装置、光測定方法、及び光測定プログラムの実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
図1は、本発明による光測定装置1の一実施形態を模式的に示す構成図である。また、図2は、マイクロプレート20の構成の一例を示す斜視図である。また、図3は、図2に示したマイクロプレート20の断面構造を示す側面断面図である。本実施形態による光測定装置1は、試料ケースとしてマイクロプレート20を用い、マイクロプレート20によって保持された状態で測定位置Pに配置された試料S(図3参照)からの蛍光を測定するための装置である。
【0019】
また、試料Sは、心筋細胞を含む細胞である。また、本発明による光測定装置、光測定方法、及び光測定プログラムは、蛍光測定以外にも、例えば燐光や発光など、試料からの光を測定する光測定に一般に適用可能である。以下、光測定装置1の構成について説明する。
【0020】
図1に示す光測定装置1は、データ取得装置10、励起光源30、及びデータ解析装置50を備えて構成されている。データ取得装置10は、蛍光測定の対象となる心筋細胞を含む試料Sを保持したマイクロプレート20が内部に収容される暗箱15と、暗箱15の内部に設置されて測定位置Pに配置された試料Sからの蛍光の測定に用いられる動画像取得部40とを有している。
【0021】
本実施形態において試料ケースとして用いられているマイクロプレート20は、図2及び図3に示すように、複数のウェル(保持部)21が二次元アレイ状に並設された板状部材であり、その複数のウェル21のそれぞれにおいて、試料Sを保持可能な構成となっている。図2に示した構成例では、複数のウェル21として、8×12=96個のウェル21が二次元アレイ状に配置されている。また、このマイクロプレート20の底面22は、試料Sに照射される蛍光測定用の励起光、及び試料Sから放出される蛍光を透過可能な材質によって形成されている。なお、一般に光測定装置1においては、マイクロプレート20の底面22は、測定対象となる試料Sからの光を透過可能な材質によって形成されていれば良い。
【0022】
暗箱15内においては、マイクロプレート20は、蛍光観察用の開口を有するマイクロプレートホルダ11によって保持されている。また、これらのマイクロプレート20及びホルダ11に対して、暗箱15内で所定の方向を搬送方向(図1中においては、右側から左側へと向かう方向)とするマイクロプレート搬送機構12が設置されている。
【0023】
搬送機構12でのマイクロプレート20の搬送方向に対して搬入側となる暗箱15の一方側には、試料Sが保持された測定前のマイクロプレート20を所定枚数(例えば、25枚)ストックしておくための搬入側マイクロプレートストッカー13が設置されている。また、マイクロプレート20の搬送方向に対して搬出側となる暗箱15の他方側には、測定後のマイクロプレート20をストックしておくための搬出側マイクロプレートストッカー14が設置されている。
【0024】
このような構成において、搬入側マイクロプレートストッカー13から暗箱15内へと搬入されたマイクロプレート20は、マイクロプレートホルダ11によって保持されるとともに搬送機構12によって搬送される。そして、マイクロプレート20は測定位置Pで一旦停止させられ、この状態で、マイクロプレート20によって保持された試料Sに対して必要な光測定が行われる。測定完了後、マイクロプレート20は再び搬送機構12によって搬送され、搬出側マイクロプレートストッカー14へと搬出される。なお、図1においては、搬送機構12、及びストッカー13、14については、マイクロプレート20を搬入、搬送、搬出するための具体的な構成の図示を省略している。
【0025】
蛍光測定の実行時にマイクロプレート20、及びそれに保持された試料Sが配置される測定位置Pに対し、測定位置Pの上方には、マイクロプレート20のウェル21内に試薬等を注入するための分注装置16が設置されている。また、測定位置Pの下方には、ウェル21内に収容された試料Sからマイクロプレート20の底面22を介して放出される蛍光の検出に用いられる動画像取得部40が設置されている。
【0026】
動画像取得部40は、マイクロプレート20のウェル21内に保持された試料Sからの光を含むマイクロプレート20の二次元光像を検出して、二次元光像の動画像データを取得する動画像取得手段である。本実施形態においては、動画像取得部40は、複数の画素が二次元に配列された二次元画素構造を有し、試料Sから放出される蛍光による二次元の光検出画像である蛍光画像を取得可能な撮像装置45を有している。この撮像装置45としては、例えば高感度のCCDカメラやCMOSイメージカメラを用いることができる。また、必要があれば、カメラの前段にイメージ増倍管、リレーレンズ等を配置して動画像取得部40を構成しても良い。
【0027】
また、マイクロプレート20が配置される測定位置Pと、撮像装置45との間には、導光光学系41が設置されている。導光光学系41は、複数のウェル21のそれぞれに試料Sが保持されたマイクロプレート20を底面22側からみた二次元光像を撮像装置45へと導く光学系である。導光光学系41の具体的な構成については、マイクロプレート20及び撮像装置45の構成等に応じ、必要な機能(例えば集光機能、光像縮小機能等)を実現可能な光学素子によって適宜構成すれば良い。そのような光学素子としては、例えばテーパファイバがある(特開2001−188044号公報参照)。
【0028】
また、図1においては、さらに、導光光学系41と撮像装置45との間に、必要に応じて蛍光の導光光路上への光学フィルタの配置、切換等を行うことが可能な光学フィルタ部42が設置されている。ただし、このような光学フィルタ部42については、不要であれば設けなくても良い。
【0029】
また、マイクロプレート20のウェル21内の試料Sに対し、蛍光画像を取得するための動画像取得部40に加えて、励起光源30が設置されている。この励起光源30は、試料Sに対して蛍光測定用の励起光を供給するための励起光供給手段である。励起光源30の具体的な構成としては、蛍光測定の対象となる試料Sの種類、試料Sに照射する励起光の波長等に応じて適宜構成すれば良いが、例えば、光を供給する照明光源と、励起光の波長の選択、切換を行うための光学フィルタ部とによって構成することができる。また、試料Sに対して行われる光測定の種類により、励起光の供給が不要な場合には、励起光源30を設けない構成としても良い。
【0030】
本実施形態においては、励起光源30は図1に示すように暗箱15に対して外側に配置されており、励起光源30から供給される励起光は、励起光供給用ライトガイド31及び導光光学系41を介して試料Sへと照射される構成となっている。このような構成では、導光光学系41は、マイクロプレート20及び試料Sからの二次元光像を撮像装置45へと導くとともに、励起光源30からの励起光を試料Sへと導くことが可能な光学系として構成される。このような導光光学系41は、例えば、マイクロプレート20からの蛍光を通過させるとともに、励起光源30からの励起光を反射させるダイクロイックミラー等を用いて構成することができる。なお、図1においては、導光光学系41における蛍光及び励起光の光路を、それぞれ実線及び破線によって模式的に示している。
【0031】
これらの動画像取得部40を含むデータ取得装置10、及び励起光源30に対し、データ解析装置50が設けられている。このデータ解析装置50は、動画像取得部40によって取得された光検出画像を含む動画像データに対して解析処理を行う解析処理手段である。また、データ解析装置50は、データ取得装置10及び励起光源30の各部の動作を制御することによって、光測定装置1における試料Sに対する蛍光測定を制御する。また、図1においては、データ解析装置50に対して、測定結果等を表示する表示装置61と、データの入力や蛍光測定に必要な指示の入力等に用いられる入力装置62とが接続されている。
【0032】
以上の構成において、マイクロプレート20のウェル21内に保持され、暗箱15内で測定位置Pに配置された試料Sに対し、ライトガイド31及び導光光学系41を介して、励起光源30から供給された蛍光測定用の励起光が照射される。そして、試料Sから放出された蛍光を含む二次元光像は、導光光学系41を介して撮像装置45へと導かれ、撮像装置45によって二次元光像の動画像データが取得される。動画像取得部40によって取得された蛍光画像を含む動画像データは、データ解析装置50へと送られる。そして、データ解析装置50は、入力された動画像データから心筋細胞の像を構成する画素を特定し、評価等に必要な解析処理を行う。
【0033】
なお、試料ケースは、上述したマイクロプレート20に限定されるものではない。複数の試料Sが、試料ケースとしてシャーレのようなディッシュに保持されてもよい。さらに、顕微鏡を介してシャーレに保持された試料を観察する装置構成であってもよい。
【0034】
図4は、本発明の好適な一実施形態に係る光測定装置1が備えるデータ解析装置50の概略構成を示す機能ブロック図である。
【0035】
データ解析装置50は、動画像データから画素毎の輝度値データを取得し、その輝度値データに基づいて解析対象となる心筋細胞の像を構成する対象画素を特定して、対象画素に対して所定の解析処理を実施するための情報処理装置である。この動画像データは、上述したウェル21内に保持された試料Sから放出される光を含むマイクロプレート20を撮影した画像を、デジタルデータに変換したものである。なお、動画像データは、通信ネットワークやCD−ROM、DVD、半導体メモリ等の記録媒体を介してデータ解析装置50に入力されてもよい。
【0036】
データ解析装置50は、機能的構成要素として、解析処理部51及び閾値記録部54を備える。データ解析装置50は、データ取得装置10、表示装置61及び入力装置62と接続されている。
【0037】
解析処理部51は、機能的構成要素として、領域特定部52及びデータ処理部53を備える。解析処理部51は、データ取得装置10の動画像取得部40によって取得された試料Sの動画像データから心筋細胞の像を構成する対象画素を特定する。また、解析処理部51は、対象画素が有する輝度値データを解析データとして、解析処理を行う解析処理手段である。解析処理部51は、閾値記録部54と接続される。
【0038】
領域特定部52は、輝度値データ取得部(輝度値データ取得手段)52a、輝度値抽出部(輝度値抽出手段)52b、画素特定部(画素特定手段)52cを含んでいる。領域特定部52は、動画像データにおける画素が有する輝度値の経時変化に基づき、ウェル21に対応する測定領域から、心筋細胞の像を構成する対象画素を特定する。領域特定部52は、データ処理部53と接続されている。
【0039】
閾値記録部54は、対象画素を特定するときに用いられる閾値が記録されている。閾値には、例えばピーク値閾値、振幅閾値、及び変化率閾値などがある。閾値記録部54は、領域特定部52から参照可能に構成されている。
【0040】
輝度値データ取得部52aは、動画像取得部40から入力された動画像データに含まれる複数のウェル21に対応する領域から、複数のウェル21に対応する領域を構成する複数の画素における輝度値データを取得する。輝度値データは、画素が有する輝度値の経時変化を示す。輝度値データ取得部52aは、ウェル21の像が含まれた領域を1つの測定領域として、その測定領域を構成する画素毎に輝度値データを取得する。輝度値データ取得部52aにおいて取得された輝度値データは、輝度値抽出部52bに出力される。
【0041】
輝度値抽出部52bは、輝度値データ取得部52aから入力された画素の輝度値データから、ピーク値とボトム値を抽出する。ピーク値とボトム値は、画素特定部52cに出力される。
【0042】
画素特定部52cは、輝度値抽出部52bから入力されたピーク値とボトム値に基づいて、心筋細胞の像を構成する対象画素を特定する。対象画素の情報は、データ処理部53に出力される。対象画素を特定する方法は、後に詳細に説明する。
【0043】
データ処理部(データ処理手段)53は、位相補正部53a、及び輝度値データ処理部53bを含んでいる。データ処理部53は、領域特定部52において特定された対象画素を参照し、対象画素が有する輝度値データを解析データとして、心筋細胞の像を構成する対象画素について解析処理を行う。データ処理部53は、領域特定部52と接続されている。
【0044】
位相補正部53aは、輝度値データにおいて、画素毎の輝度値データの位相をそろえる為に、ボトム値からピーク値に変化するタイミングを補正する。位相補正部53aにより補正された輝度値データは、輝度値データ処理部53bに出力される。
【0045】
輝度値データ処理部53bは、位相補正部53aにより位相補正された輝度値データを、例えばウェル21毎に処理する。輝度値データ処理部53bにより処理されたウェル21毎の輝度値データは、表示装置61に出力される。
【0046】
次に、本実施形態の光測定装置1によって実行される光測定方法を説明すると共に、本実施形態の光測定方法について詳細に説明する。ここでは、動画像データから心筋細胞の像を構成する対象画素を特定する工程を説明する。図5は、本実施形態に係る光測定方法の主要な工程を説明するための図である。
【0047】
工程S10は、データ取得装置10の動画像取得部40により実行され、データ取得装置10を用いてマイクロプレート20のウェル21の内部に保持された心筋細胞を含む試料Sからの光を含むマイクロプレートの二次元光像を検出して、二次元光像の動画像データを取得する(動画像取得ステップ)。ここで、動画像データとは、所定の時間間隔で検出された二次元画像データを経時的に並べた二次元画像データの集まりである。これにより、二次元画像を構成する各画素の輝度値の時間変化を抽出することが可能となる。
【0048】
まず心筋細胞を含む試料Sがウェル21内に保持されたマイクロプレート20の二次元画像を動画像取得部40の撮像装置45で検出して、動画像データを取得する。動画像データは、予め設定された時間の間だけ取得される。動画像データの取得を開始するタイミングは、ウェル21の試料Sに投薬により刺激を与える前であってもよいし、ウェル21の試料Sに刺激を与えた後であってもよい。また、動画像データの取得中に投薬により刺激を与えてもよい。取得された動画像データは、データ取得装置10からデータ解析装置50へ入力される。
【0049】
工程S11は、データ解析装置50により実行され、工程S10でデータ取得装置10により取得された動画像データに対して解析処理を行う(解析処理ステップ)。工程S11は、解析の対象となる対象画素を特定するステップ(領域特定ステップ)及び対象画素について解析処理を実施するステップ(データ処理ステップ)を有する。
【0050】
工程S20は、データ解析装置50の領域特定部52により実行され、工程S10で取得された動画像データの画素における輝度値データに基づいて、解析の対象となる対象画素を特定する。工程S20は、画素毎の輝度値データを取得するステップ(輝度値データ取得ステップ:S21)、各画素の輝度値データからピーク値とボトム値とを取得するステップ(輝度値抽出ステップ:S22)、及びピーク値とボトム値とに基づいて対象画素を特定するステップ(画素特定ステップ:S23)とを有する。
【0051】
工程S21は、輝度値データ取得部52aにより実行され、画素毎の輝度値データを取得する。ここで、繰り返し現れる輝度値の経時変化の具体例について説明する。繰り返し現れる輝度値の経時変化の具体例は、図6に示された5つのグラフの輝度値の経時変化に例示される。図6(a)を参照すると、輝度値データには輝度値が一定の周期で変化する場合がある。このとき周期C1は1秒程度である。一方、輝度値データには輝度値のピークが現われる周期が時間経過とともに変化する場合がある。図6(b)は輝度値のピークが現われる周期が時間経過とともに長くなる場合であり、周期C2は周期C1よりも長い。また、図6(c)は輝度値のピークが現われる周期が時間経過とともに短くなる場合であり、周期C3は周期C1よりも短い。図6(d)は輝度値のピークが現われる周期が不規則に変化する場合である。また、図6(e)を参照すると、ボトム値からピーク値に変化し、再びボトム値に戻るまでの時間t1、t2、t3が時間経過と共に長くなる場合を示す。なお、繰り返し現れる輝度値の経時変化は、図6に例示されるものに限定されない。
【0052】
再び図5を参照すると、工程S22は、輝度値抽出部52bにより実行され、工程S21において取得された輝度値データからピーク値とボトム値を抽出する。ピーク値は、一つの画素における輝度値データの経時変化から、複数個抽出される。同様に、ボトム値は、一つの画素における輝度値データの経時変化から、複数個抽出される。
【0053】
工程S23では、画素特定部52cにより実行され、工程S22において取得されたピーク値及びボトム値に基づいて、心筋細胞の像を構成する対象画素を特定する。まず、繰り返し現われる輝度値の経時変化の状態を評価する評価値を計算する。この評価値には、ピーク値、輝度値の振幅、及び輝度値の変化率(レシオ値)などがある。ここで、再び図6(a)を参照すると、ピーク値とは、輝度値データに現われるピークの絶対値Lである。ボトム値とは、輝度値データに現われるボトムの絶対値Bである。なお、ボトム値は予め取得されたバックグラウンドの輝度値データをボトム値として用いてもよい。輝度値の振幅とは、ピーク値とボトム値との差分(L−B)である。輝度値の変化率とは、ボトム値に対するピーク値の比率(L/B)である。
【0054】
対象画素の特定は、上記評価値のうち、少なくとも一つの評価値が用いられる。例えば対象画素の特定に用いられる評価値として、以下のような(i)〜(vi)の組み合わせがある。
(i)輝度値の振幅のみを評価値として用いる
(ii)輝度値の変化率のみを評価値として用いる
(iii)ピーク値と、輝度値の振幅とを評価値として用いる
(iv)ピーク値と、輝度値の変化率とを評価値として用いる
(v)輝度値の振幅と、輝度値の変化率とを評価値として用いる
(vi)ピーク値と、輝度値の振幅と、輝度値の変化率とを評価値として用いる
【0055】
評価値と閾値との比較には、評価値が予め設定された閾値を超えた回数に基づいて、対象画素を特定する。例えば、一の画素が有する複数の評価値が、閾値をn回(nは1以上の整数)超えた場合に、当該一の画素は対象画素として特定される。また、評価値の平均値と予め設定された閾値とを比較して、対象画素を特定してもよい。例えば、一の画素が有する複数の評価値の平均値を算出する。そして該平均値が閾値を超えた場合に、当該一の画素は対象画素として特定される。このように、繰り返し現れる輝度値の経時変化が評価値に基づいて評価される。
【0056】
さらに、上記(iii)〜(vi)のように対象画素の特定に複数の評価値を用いるときには、対象画素の特定に用いられた全ての評価値が閾値により規定された条件を満たすときに、当該画素が対象画素として特定される。
【0057】
工程S30は、データ処理部53により実行され、工程S20において特定された心筋細胞の像を構成する対象画素について解析処理を実施する。工程S30は、対象画素の輝度値データを補正するステップ(補正ステップ:S31)及び補正された輝度値データに基づいてデータ処理を行うステップ(輝度値データ処理ステップ:S32)とを有する。
【0058】
工程S31は、位相補正部53aにより実行され、ボトム値からピーク値に変化するタイミングを補正することにより、補正輝度値データを算出する。心筋細胞の位置や投薬により心筋細胞から放射される輝度値の経時変化では、刺激の伝わり方により反応が現われるタイミングにずれが生じる場合がある。例えば、刺激の中心から離れた位置にある心筋細胞の像を構成する画素において反応が現われるタイミングは、刺激の中心に近い位置にある画素において反応が現われるタイミングよりも遅い。これ故、位相補正部53aにより、ボトム値からピーク値に変化するタイミングを複数の画素間で合わせるように補正する。これにより、測定感度を向上させることができる。なお、タイミングのずれが予め設定された時間の範囲内である場合には、工程S31を省略してもよい。
【0059】
工程S32は、輝度値データ処理部53bにより実行され、補正された輝度値データに基づいて輝度値データの処理が行われる。この処理では、例えば、ウェル21における対象画素の輝度値データを二次元画像データ毎に平均した平均輝度値データを各時間で算出する処理が実行される。これにより、特定の時間における細胞からの放出される光の平均輝度を算出することができる。工程S31で位相補正された補正輝度値データを用いて、各時間における平均輝度値データを算出するので、測定感度を向上させることができる。また、ウェル21中に複数の心筋細胞がある場合は、対象画素が構成する心筋細胞の領域毎に対象画素の輝度値データを平均した平均輝度データを算出してもよい。
【0060】
上述した各工程を実施することにより、ウェル21毎または心筋細胞領域毎の平均輝度値データが得られる。ウェル21毎の解析結果を表示装置61に表示する場合には、図7に示すように画面を二次元に配列された複数の表示領域(図7では8×12=96個の表示領域)に区分し、そのそれぞれに対応するウェル21での平均輝度値データの時間変化を表示してもよい。
【0061】
なお、工程S32では、ウェル21毎の輝度値の変化率を算出してもよい。ウェル21毎の輝度値の変化率を算出するときには、まずウェル21における対象画素の輝度値データを平均化する。そして、平均化された輝度値データからピーク値とボトム値とを抽出して、輝度値の変化率を算出してもよい。また、画素毎の輝度値データから画素毎のピーク値とボトム値とを抽出して、画素毎の輝度値の変化率を算出した後に、画素毎の輝度値の変化率を平均化してもよい。
【0062】
上述した光測定方法は、例えば心筋細胞の評価において、心筋細胞の拍動周期の測定に用いることができる。
【0063】
以下、コンピュータを光測定装置1として動作させる光測定プログラムについて説明する。
【0064】
本発明の実施形態に係る光測定プログラムは、記録媒体に格納されて提供される。記録媒体としては、フロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROM、DVD、あるいはROM等の記録媒体、あるいは半導体メモリ等が例示される。
【0065】
図8は、記録媒体に記録されたプログラムを実行するためのコンピュータのハードウェア構成を示す図であり、図9は、記録媒体に記憶されたプログラムを実行するためのコンピュータの斜視図である。コンピュータとして、CPUを具備しソフトウエアによる処理や制御を行うサーバ装置、パーソナルコンピュータ等の各種データ処理装置を含む。
【0066】
図8に示すように、コンピュータ70は、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ装置、CD−ROMドライブ装置、DVDドライブ装置等の読取装置72と、オペレーティングシステムを常駐させた作業用メモリ(RAM)73と、記録媒体71に記憶されたプログラムを記憶するメモリ74と、ディスプレイといった表示装置75と、入力装置であるマウス76及びキーボード77と、データ等の送受を行うための通信装置78と、プログラムの実行を制御するCPU79とを備えている。コンピュータ70は、記録媒体71が読取装置72に挿入されると、読取装置72から記録媒体71に格納された光測定プログラムにアクセス可能になり、当該光測定プログラムによって、本実施形態の光測定装置1として動作することが可能になる。
【0067】
図9に示すように、光測定プログラムは、搬送波に重畳されたコンピュータデータ信号79としてネットワークを介して提供されるものであってもよい。この場合、コンピュータ70は、通信装置78によって受信した光測定プログラムをメモリ74に格納し、当該光測定プログラムを実行することができる。
【0068】
以上説明した光測定装置1及びこれを用いた光測定方法によれば、複数のウェル21に対応する領域毎の二次元光像の動画像データを取得する(S10)。次に、動画像データを構成する複数の各画素における輝度値の経時変化を示す輝度値データを取得して(S21)、輝度値データから輝度値のピーク値とボトム値とを抽出する(S22)。そして、ピーク値とボトム値とに基づいて輝度値の変化の状態を評価する評価値を計算し、この評価値の繰り返し状態に基づいて複数の画素から解析の対象となる心筋細胞の像を構成する対象画素を特定する(S23)。このように、画素が有する輝度値の経時変化に基づいて対象領域を特定する。従って、経時的に輝度値が変化する光が繰り返し放出されている心筋細胞の像を構成する画素を特定することができる。さらに、輝度値の経時変化を示す輝度値データに基づいて対象画素を特定しているので、心筋細胞のように拍動により細胞の領域が変化するときであっても、心筋細胞の境界を容易に特定することができる。
【0069】
また、光測定装置1は、評価値が、ピーク値とボトム値との差分により得られる輝度値の振幅であってもよい。これによれば、一定の輝度値である領域の画素では輝度値の振幅はゼロであるので、所定の振幅閾値を設定することにより、閾値以上の輝度値の振幅を有する画素のみを特定することができる。従って、経時的に輝度値が変化する光が繰り返し放出されている心筋細胞の像を構成する画素を好適に特定することができる。
【0070】
また、光測定装置1は、評価値が、ボトム値に対するピーク値の比率により得られる輝度値の変化率であってもよい。これによれば、一定の輝度値である領域の画素では輝度値の変化率は1であるので、所定の変化率閾値を設定することにより、閾値以上の輝度値の変化率を有する画素のみを特定することができる。従って、経時的に輝度値が変化する光が繰り返し放出されている心筋細胞の像を構成する画素を好適に特定することができる。
【0071】
また、光測定装置1は、画素特定部52cが、予め取得された閾値を評価値が超えた回数に基づいて、対象画素を特定してもよい。これによれば、経時的に輝度値が変化する光が繰り返し放出されている心筋細胞の像を構成する画素をより好適に特定することができる。
【0072】
また、光測定装置1は、画素特定部52cが、評価値の平均値と予め取得された閾値とを比較して、対象画素を特定してもよい。経時的に輝度値が変化する光が繰り返し放出されている心筋細胞の像を構成する画素をより好適に特定することができる。
【0073】
また、光測定装置1は、解析処理部51が、対象画素の輝度値データを解析データとして、解析処理を行うデータ処理部53をさらに含んでいる。これによれば、画素特定部52cにより選択された画素の輝度値データを用いて試料Sの評価を行うことができる。これ故、試料Sからの光に対する測定感度を向上させた解析処理を行うことができる。即ち、一のウェル21が占める領域を一つの解析領域とする場合よりも、画素毎の輝度値データに基づいて類似した経時変化をする輝度値データを有する画素を特定して平均を算出するので、心筋細胞の像を構成する画素からの光に対する測定感度を向上させた解析処理を行うことができる。
【0074】
次に、光測定装置1を細胞の評価に用いる例を説明する。
【0075】
前述した実施形態では、評価値としてピーク値、輝度値の振幅、及び輝度値の変化率を用いた。これ以外の評価値として、輝度値の周期を用いてもよい。また、複数の対象画素により構成される領域が有する面積の経時変化を用いてもよい。また、ピーク値、輝度値の振幅、及び輝度値の変化率、輝度値の周期及び面積の経時変化から複数個の評価値を組み合わせて各種解析処理を行ってもよい。さらに、二つの輝度値データが表示された画像に基づいて得られる、蛍光エネルギー移動(FRET)反応の有無を対象画素の特定に用いてもよい。
【0076】
図10(a)に示されるように、測定領域R1において細胞の有無を判定するときには、例えばピーク値を評価値として用いることができる。測定領域R1には心筋細胞の領域A1、心筋細胞ではない細胞の領域A2、及び複数のゴミの領域A3が存在している。測定領域R1に含まれる複数の正方形の一領域は、一画素に対応する。このとき、それぞれの要素が含まれた画素の輝度値に対して、それぞれの要素が含まれた画素の数を整理すると図10(b)を得る。グラフG1は心筋細胞の領域A1における輝度値の度数を示し、グラフG2は心筋細胞ではない細胞の領域A2における輝度値の度数を示す。ここで、所定の輝度値の範囲S1を設定することにより、測定領域R1から心筋細胞の領域A1、及び心筋細胞ではない細胞の領域A2の画像に含まれた画素を特定することができる。
【0077】
図11(a)に示されるように、異なる種類の細胞を含んだ領域において、例えば心筋細胞を特定するときには、輝度値の振幅又は輝度値の変化率を評価値として用いることができる。測定領域R2には、心筋細胞の領域A1、心筋細胞ではない細胞の領域A2が存在している。この心筋細胞は拍動する。この拍動に対応して、図11(b)のグラフG5に示されるように、領域A1に含まれる画素の輝度値は時間的に変化する。一方、心筋細胞ではない細胞は拍動することがないので、グラフG6に示されるように輝度値は一定である。これ故、輝度値の振幅又は輝度値の変化率を用いることにより、測定領域R2から心筋細胞の領域A1の画像に含まれる画素を特定することができる。なお、心筋細胞は、一定の周期C1で拍動するので、輝度値の周期を用いることにより、さらに確実に心筋細胞の領域A1の画像に含まれる画素を特定することができる。
【0078】
図12(a)に示されるように、複数の心筋細胞を含んだ領域R3において、所定の心筋細胞の領域A1aを特定するときには、輝度値の周期を評価値として用いることができる。図12(b)のグラフG7は、心筋細胞の領域A1aに含まれる画素の輝度値の経時変化を示し、グラフG8は心筋細胞の領域A1bに含まれる画素の輝度値の経時変化を示す。例えば心筋細胞の領域A1aにおける輝度値の周期C8と、心筋細胞の領域A1bにおける輝度値の周期C9とは異なっている。これ故、周期C8と周期C9とを比較することにより、所定の心筋細胞を特定することができる。これによれば、心筋細胞ではあるが、解析には適さないものを排除することができる。即ち、より好適な解析対象を特定するスクリーニングの実施に用いることができる。
【0079】
また、複数の互いに異なる心筋細胞、及び心筋細胞でない細胞を含んだ領域において、各細胞を判別するときには、ピーク値と、輝度値の振幅又は輝度値の変化率のいずれか一方と、輝度値の周期を評価値として、組み合わせて用いることができる。これによれば、まず、ピーク値を用いることにより所定のピーク値閾値を超える細胞を特定することができる。即ち、染色状態のよい細胞を特定することができる。そして、輝度値の振幅又は輝度値の変化率のいずれか一方を用いて心筋細胞と心筋細胞ではない細胞とを判別することができる。そして、輝度値の周期を用いて一の心筋細胞と他の心筋細胞とを判別することができる。
【0080】
図13(a)に示されるように、測定領域R4から解析対象となり得ないゴミの領域A3a、A3b、及び背景を特定するときには、ピーク値、輝度値の振幅、輝度値の変化率、及び輝度値の周期を評価値として用いることができる。例えば、図13(b)を参照すると、領域A3aの輝度値データであるグラフG9は飽和しているので、解析対象とはなり得ず、領域A3aはゴミ又は背景として排除される。また、領域A3bの輝度値データであるグラフG10は、ピーク値閾値G11を下回るので、解析対象とはなり得ず、領域A3bはゴミ又は背景として排除される。
【0081】
図14に示されるように、測定領域R5から解析対象となり得ないゴミの領域A3a、A3bを特定するときには、対象画素が構成する領域の面積を評価値として用いることができる。例えば、対象画素として特定された複数の画素e1〜e24からなる領域A3bは、心筋細胞の領域A1と比較して極端に大きい面積を有している。このような極端に大きい面積を有している領域A3bは、心筋細胞等である可能性は低い。これ故、解析対象となり得ないゴミの領域A3bを特定することができる。
【0082】
また、光測定装置1が心筋細胞の像を構成する対象画素の輝度値データを基に評価する際には、輝度値の周期に基づいて心筋細胞の拍動数を検出してもよい。輝度値の変化率と周期とに基づいて不整脈の状態を判定してもよいし、輝度値の変化率と周期とに基づいて細胞に投与された薬剤の効果を判定してもよい。
【符号の説明】
【0083】
1…光測定装置、20…マイクロプレート、21…ウェル、40…動画像取得部、50…データ処理装置、51…解析処理部、52a…輝度値データ取得部、52b…輝度値抽出部、52c…画素特定部、S…試料。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心筋細胞を含む試料を保持する保持部を有する試料ケースによって保持された前記心筋細胞から放出された光を測定する光測定装置であって、
前記試料ケースの前記保持部の内部に保持された前記試料から放出された光を含む前記試料ケースの二次元光像を検出して、前記二次元光像の動画像データを取得する動画像取得手段と、
前記動画像データに対して解析処理を行う解析処理手段と、
を備え、
前記解析処理手段は、
前記動画像データに含まれる前記保持部に対応する領域から、前記保持部に対応する領域を構成する前記複数の画素における輝度値の経時変化を示す輝度値データを取得する輝度値データ取得手段と、
前記輝度値データから前記輝度値のピーク値とボトム値とを抽出する輝度値抽出手段と、
前記輝度値データにおいて繰り返し現れる前記輝度値の経時変化を評価する評価値を前記ピーク値と前記ボトム値とに基づいて計算し、前記評価値に基づいて前記複数の画素から前記心筋細胞の像を構成する対象画素を特定する画素特定手段と、
を含むことを特徴とする光測定装置。
【請求項2】
前記評価値は、前記ピーク値と前記ボトム値との差分により得られる輝度値の振幅であることを特徴とする請求項1に記載の光測定装置。
【請求項3】
前記評価値は、前記ボトム値に対する前記ピーク値の比率により得られる輝度値の変化率であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光測定装置。
【請求項4】
前記画素特定手段は、前記評価値が予め取得された閾値を超えた回数に基づいて、前記対象画素を特定することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の光測定装置。
【請求項5】
前記画素特定手段は、前記評価値の平均値と予め取得された閾値とを比較して、前記対象画素を特定することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の光測定装置。
【請求項6】
前記解析処理手段は、前記対象画素の前記輝度値データを解析データとして、解析処理を行うデータ処理手段をさらに含むことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の光測定装置。
【請求項7】
心筋細胞を含む試料を保持する保持部を有する試料ケースによって保持された前記心筋細胞から放出された光を測定する光測定方法であって、
前記試料ケースの前記保持部の内部に保持された前記試料から放出された光を含む前記試料ケースの二次元光像を検出して、前記二次元光像の動画像データを取得する動画像取得ステップと、
前記動画像データに対して解析処理を行う解析処理ステップと、
を備え、
前記解析処理ステップは、
前記動画像データに含まれる前記保持部に対応する領域から、前記保持部に対応する領域を構成する前記複数の画素における輝度値の経時変化を示す輝度値データを取得する輝度値データ取得ステップと、
前記輝度値データから前記輝度値のピーク値とボトム値とを抽出する輝度値抽出ステップと、
前記輝度値データにおいて繰り返し現れる前記輝度値の経時変化を評価する評価値を前記ピーク値と前記ボトム値とに基づいて計算し、前記評価値に基づいて前記複数の画素から前記心筋細胞の像を構成する対象画素を特定する画素特定ステップと、
を含むことを特徴とする光測定方法。
【請求項8】
心筋細胞を含む試料を保持する保持部を有する試料ケースによって保持された前記心筋細胞から放出された光を測定する光測定プログラムであって、
コンピュータを、
動画像取得手段によって取得された、前記試料ケースの前記保持部の内部に保持された前記試料から放出された光を含む前記試料ケースの二次元光像を検出した動画像データに対し、前記動画像データに含まれる前記保持部に対応する領域から、前記保持部に対応する領域を構成する前記複数の画素における輝度値の経時変化を示す輝度値データを取得する輝度値データ取得手段、
前記輝度値データから前記輝度値のピーク値とボトム値とを抽出する輝度値抽出手段、
前記輝度値データにおいて繰り返し現れる前記輝度値の経時変化を評価する評価値を前記ピーク値と前記ボトム値とに基づいて計算し、前記評価値に基づいて前記複数の画素から前記心筋細胞の像を構成する対象画素を特定する画素特定手段、
として機能させることを特徴とする光測定プログラム。
【請求項1】
心筋細胞を含む試料を保持する保持部を有する試料ケースによって保持された前記心筋細胞から放出された光を測定する光測定装置であって、
前記試料ケースの前記保持部の内部に保持された前記試料から放出された光を含む前記試料ケースの二次元光像を検出して、前記二次元光像の動画像データを取得する動画像取得手段と、
前記動画像データに対して解析処理を行う解析処理手段と、
を備え、
前記解析処理手段は、
前記動画像データに含まれる前記保持部に対応する領域から、前記保持部に対応する領域を構成する前記複数の画素における輝度値の経時変化を示す輝度値データを取得する輝度値データ取得手段と、
前記輝度値データから前記輝度値のピーク値とボトム値とを抽出する輝度値抽出手段と、
前記輝度値データにおいて繰り返し現れる前記輝度値の経時変化を評価する評価値を前記ピーク値と前記ボトム値とに基づいて計算し、前記評価値に基づいて前記複数の画素から前記心筋細胞の像を構成する対象画素を特定する画素特定手段と、
を含むことを特徴とする光測定装置。
【請求項2】
前記評価値は、前記ピーク値と前記ボトム値との差分により得られる輝度値の振幅であることを特徴とする請求項1に記載の光測定装置。
【請求項3】
前記評価値は、前記ボトム値に対する前記ピーク値の比率により得られる輝度値の変化率であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光測定装置。
【請求項4】
前記画素特定手段は、前記評価値が予め取得された閾値を超えた回数に基づいて、前記対象画素を特定することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の光測定装置。
【請求項5】
前記画素特定手段は、前記評価値の平均値と予め取得された閾値とを比較して、前記対象画素を特定することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の光測定装置。
【請求項6】
前記解析処理手段は、前記対象画素の前記輝度値データを解析データとして、解析処理を行うデータ処理手段をさらに含むことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の光測定装置。
【請求項7】
心筋細胞を含む試料を保持する保持部を有する試料ケースによって保持された前記心筋細胞から放出された光を測定する光測定方法であって、
前記試料ケースの前記保持部の内部に保持された前記試料から放出された光を含む前記試料ケースの二次元光像を検出して、前記二次元光像の動画像データを取得する動画像取得ステップと、
前記動画像データに対して解析処理を行う解析処理ステップと、
を備え、
前記解析処理ステップは、
前記動画像データに含まれる前記保持部に対応する領域から、前記保持部に対応する領域を構成する前記複数の画素における輝度値の経時変化を示す輝度値データを取得する輝度値データ取得ステップと、
前記輝度値データから前記輝度値のピーク値とボトム値とを抽出する輝度値抽出ステップと、
前記輝度値データにおいて繰り返し現れる前記輝度値の経時変化を評価する評価値を前記ピーク値と前記ボトム値とに基づいて計算し、前記評価値に基づいて前記複数の画素から前記心筋細胞の像を構成する対象画素を特定する画素特定ステップと、
を含むことを特徴とする光測定方法。
【請求項8】
心筋細胞を含む試料を保持する保持部を有する試料ケースによって保持された前記心筋細胞から放出された光を測定する光測定プログラムであって、
コンピュータを、
動画像取得手段によって取得された、前記試料ケースの前記保持部の内部に保持された前記試料から放出された光を含む前記試料ケースの二次元光像を検出した動画像データに対し、前記動画像データに含まれる前記保持部に対応する領域から、前記保持部に対応する領域を構成する前記複数の画素における輝度値の経時変化を示す輝度値データを取得する輝度値データ取得手段、
前記輝度値データから前記輝度値のピーク値とボトム値とを抽出する輝度値抽出手段、
前記輝度値データにおいて繰り返し現れる前記輝度値の経時変化を評価する評価値を前記ピーク値と前記ボトム値とに基づいて計算し、前記評価値に基づいて前記複数の画素から前記心筋細胞の像を構成する対象画素を特定する画素特定手段、
として機能させることを特徴とする光測定プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−3091(P2013−3091A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137314(P2011−137314)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
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