光源検出装置
【課題】複雑なハードウェア構成を必要とせず、また、撮影者による複雑な操作を必要とすることなく、より高度な色再現を手軽に実現可能とする。
【解決手段】撮影情報取得部710は、撮影時、撮影光学系404で設定されていた画角および撮影距離等の情報を含む撮影条件情報を取得する。スペクトル検出装置110は、集光光学系102によって集光された被写界からの光を受光し、撮像部700で色分解可能な色数よりも多い色数で色分解して検出するカラーセンサ106を有して、スペクトル情報を出力し、このスペクトル情報をスペクトル情報入力部714が入力する。色再現処理方法決定部712は、撮影条件情報に基づき、画像処理部706で行う色再現処理の方法を決定する。
【解決手段】撮影情報取得部710は、撮影時、撮影光学系404で設定されていた画角および撮影距離等の情報を含む撮影条件情報を取得する。スペクトル検出装置110は、集光光学系102によって集光された被写界からの光を受光し、撮像部700で色分解可能な色数よりも多い色数で色分解して検出するカラーセンサ106を有して、スペクトル情報を出力し、このスペクトル情報をスペクトル情報入力部714が入力する。色再現処理方法決定部712は、撮影条件情報に基づき、画像処理部706で行う色再現処理の方法を決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影時に被写体を照明していた光である撮影照明光の種類の判別または撮影照明光のスペクトルの推定を可能とする光源検出装置およびこれを含むカメラ、システムに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラのオートホワイトバランス性能や色再現性能、オートフォーカス性能を向上させるために、光源検出用のセンサを一眼レフカメラに設けるものが知られている。
【0003】
特許文献1には、カメラ外装のペンタプリズム前方に窓を設けて乳白色の拡散板を配置し、その後方に光源測光用センサを設けた一眼レフカメラが開示される。この一眼レフカメラはまた、撮影レンズを通して結像される被写体像の色を測色する(TTL測色)構成を有し、光源測光用センサからの出力と、TTL測色の結果とに基づいて被写体の色を判定し、判定された色に対応して露出補正を行う。これにより、射光式の測光方式における被写体の反射率の影響を低減する。
【0004】
特許文献2には、カメラ外装に設けられた開口に配置された拡散板の後方に光源センサを配置し、光源の種類を検出する構成が開示される。そして、検出された光源の種類に応じてTTL位相差検出式オートフォーカスの焦点検出結果に補正が加えられる。
【0005】
特許文献3には、TTL式の測光が可能な第1の測光手段および第2の測光手段を有する構成が開示される。第1の測光手段によって特定の波長域の測光が可能であり、第2の測光手段によって上記特定の波長域以外の波長域の測光が可能である。これら第1、第2の測光手段からの出力に基づき、照明光源の種別が判別され、その判別結果に基づき、自動焦点検出手段にて検出されるディフォーカス量検出結果に補正が加えられる。
【0006】
引用文献4には、カメラに設けられるアクセサリシュー部分にスポット計測式の測色計を装着し、被写体の一部分の色彩情報を得て、その色彩情報がカメラに出力される構成が開示される。測色計には、測色計の向きを検出する角度センサが設けられており、上記色彩情報とともに角度情報がカメラに出力される。カメラは、角度情報に基づき、撮影範囲内のどの部分の色彩情報が得られたかを検出可能に構成される。この色彩情報に基づき、カメラの撮像素子から得られたカラー画像データに補正処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−23215号公報
【特許文献2】特開2005−208235号公報
【特許文献3】特開2006−72084号公報
【特許文献4】特開2005−341175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1および2に開示される技術においては、光源センサが受光する光と、被写体を照明している光とが異なる場合がある。例えば、蛍光灯等の照明光が点灯している室内から屋外の被写体を撮影した場合、光源センサの検出結果は蛍光灯からの光の影響を多く受ける一方、屋外の被写体は太陽光に照らされている、という状況を生じ得る。このような状況では、望ましい撮影結果を得ることは難しい。また、光源センサは拡散光を受光する構成であるため、比較的広い範囲からの光を光源センサは受光する。その結果、被写体を照明している光以外の光も光源センサが受光する場合があり、光源センサの検出結果が、被写体を照明している光の特性と必ずしも一致しない場合がある。
【0009】
引用文献3に開示される技術では、ミラー、ハーフミラー、ペンタプリズム等の部材を有する一眼レフカメラが前提なので、いわゆるコンパクトカメラ等に適用することが難しい。また、一眼レフカメラであっても、集光レンズやセンサ等を追加して配置する必要があるため、カメラの複雑化を免れない。
【0010】
引用文献4に開示される技術では、被写体を撮影する都度、測色計の向きを調節する必要があり、動く被写体の撮影や高速の連続撮影といった用途には必ずしも適していない。
【0011】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたもので、複雑なハードウェア構成を必要とせず、また、撮影者による複雑な操作を必要とすることなく、より高度な色再現を手軽に実現可能とすることを目的とする。
【0012】
本発明のさらなる目的は、撮影をする場所と、撮影をして得られた画像を観察する場所が離れている状況であっても、撮影者や画像を観察する観察者による複雑な操作を必要とすることなく、より高度な色再現を手軽に実現可能とすることにより、精度のより高い遠隔病理診断を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1) 本発明の第1の態様によれば、被写界中の被写体に向けられた撮影光学系によって形成される被写体像を色分解して撮影する撮像部から出力されたカラーの画像データに色再現処理をする画像処理装置が、
前記撮影光学系で撮影が行われたときに設定されていた画角および撮影距離を導出可能な情報を含む撮影条件情報を取得する撮影条件情報取得部と、
前記撮影光学系とは異なる集光光学系によって集光された前記被写界からの光を受光し、前記撮像部で色分解可能な色数よりも多い色数で色分解して検出するカラーセンサを有して、前記カラーセンサの出力をもとにスペクトル情報を出力する外光式スペクトル検出装置から出力される前記スペクトル情報を入力するスペクトル情報入力部と、
前記撮影条件情報取得部で取得した撮影条件情報に基づき、前記外光式スペクトル検出装置から出力される前記スペクトル情報と、前記画像データを分析した結果とのうち、少なくともいずれかを参照して前記色再現処理を行うように決定する色再現処理方法決定部と
を備える。
(2) 本発明の第2の態様によれば、被写界中の被写体に向けられた撮影光学系によって形成される被写体像を色分解して撮影する撮像部から出力されたカラーの画像データに色再現処理をする画像処理装置が、
前記撮影光学系で撮影が行われたときに設定されていた画角および撮影距離を導出可能な情報を含む撮影条件情報を取得する撮影条件情報取得部と、
前記撮影光学系とは異なる集光光学系によって集光された前記被写界からの光を受光し、前記撮像部で色分解可能な色数よりも多い色数で色分解して検出するカラーセンサを複数有して、前記複数のカラーセンサそれぞれからの出力に対応して複数のスペクトル情報を出力する外光式スペクトル検出装置から出力される前記スペクトル情報を入力するスペクトル情報入力部と、
前記撮影条件情報取得部で取得した撮影条件情報に基づき、前記外光式スペクトル検出装置から出力される前記スペクトル情報と、前記画像データを分析した結果とのうち、少なくともいずれかを参照して前記色再現処理を行うように決定する色再現処理方法決定部と
を備える。
(3) 本発明の第3の態様によれば、被写界中の被写体に向けられた撮影光学系によって形成される被写体像を色分解して撮影する撮像部から出力されたカラーの画像データに色再現処理をする画像処理装置が、
前記撮影光学系で撮影が行われたときに設定されていた画角および撮影距離を導出可能な撮影条件情報を含む付加情報を前記画像データに付加して生成される画像ファイルを記憶する画像ファイル記憶部から前記画像ファイルを読み出す画像ファイル読み出し部と、
前記撮影光学系とは異なる集光光学系によって集光された前記被写界からの光を受光し、前記撮像部で色分解可能な色数よりも多い色数で色分解して検出するカラーセンサを複数有して、前記複数のカラーセンサそれぞれから出力される複数のスペクトル情報を含むスペクトル情報セットを出力する外光式スペクトル検出装置により、前記撮影光学系で撮影が行われたタイミングに同期して、あるいは前記タイミングとは同期せずに一定の時間間隔で、スペクトル検出が行われるたびごとに出力される前記スペクトル情報セットがスペクトル情報データログとして記憶されるスペクトル情報記憶部から前記スペクトル情報データログを読み出すスペクトル情報読み出し部と、
前記画像ファイル読み出し部で読み出された前記画像ファイルと、前記スペクトル情報読み出し部で読み出された前記スペクトル情報データログ中に含まれるスペクトル情報セットのうちの前記画像ファイルに対応するものとを関連付ける情報関連付け処理部と、
前記情報関連付け処理部で関連付けされた前記スペクトル情報セットに含まれる前記複数のスペクトル情報のうち、前記撮影条件情報に基づいて選択された1または複数のスペクトル情報と、前記画像データを分析した結果とのうち、前記撮影条件情報に基づいて少なくともいずれかを参照して前記色再現処理を行うように決定する色再現処理方法決定部と
を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、比較的単純なスペクトル検出装置の構成で、撮影に際して煩雑な操作を必要とせず、より高度の色再現が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】外光式で一点計測式のスペクトル検出装置の光学的構成を概略的に示す図である。
【図2】外光式で多点計測式のスペクトル検出装置の光学的構成を概略的に示す図である。
【図3】複数のカラーセンサのそれぞれが有する分光感度特性の一例を示す図である。
【図4】外光式のスペクトル検出装置をカメラに内蔵する実施形態の一例を示す外観斜視図である。
【図5】外光式で外付け式のスペクトル検出装置をカメラに装着する実施形態の一例を示す外観斜視図であり、図5(a)はカメラにスペクトル検出装置を取り付けた状態を示す図であり、図5(b)はスペクトル検出装置を外したカメラの外観を部分的に示す図である。
【図6】外光式スペクトル検出装置のセンサ受光範囲と、撮影範囲との関係が撮影光学系の画角や撮影距離を変えることによって変化する様子を概念的に説明する図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態を説明する図であり、一点計測式のスペクトル検出装置が内蔵されるカメラの情報処理系統の構成を概略的に説明するブロック図である。
【図8】色再現処理方法決定部で行われる色再現処理方法決定処理の内容をまとめた表である。
【図9】本発明の第2の実施の形態を説明する図であり、多点計測式のスペクトル検出装置およびこのスペクトル検出装置が接続されるカメラの情報処理系統の構成を概略的に説明するブロック図である。
【図10】多点式のスペクトル検出装置のセンサ受光範囲と撮影光学系の撮影範囲との関係を概念的に示す図であり、図10(a)は撮影光学系の焦点距離が広角側に設定され、撮影距離がより遠い状態に設定される例を、図10(b)は撮影光学系の焦点距離が広角側に設定され、撮影距離がより近い状態に設定される例を、図10(c)は撮影光学系の焦点距離が望遠側に設定され、撮影距離がより遠い状態に設定される例を、図10(d)は撮影光学系の焦点距離が望遠側に設定され、撮影距離がより近い状態に設定される例を、それぞれ示す図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態を説明する図であり、多点計測式のスペクトル検出装置およびこのスペクトル検出装置が接続されるカメラの情報処理系統の構成を概略的に説明するブロック図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態を説明する図であり、撮影情報およびスペクトル情報の付加された画像データに色再現処理をする画像処理装置の情報処理系統の構成を概略的に説明するブロック図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態に係る画像処理装置内の被写体情報導出部および色変換処理部の情報処理系統の構成をより詳細に説明するブロック図である。
【図14】スペクトル情報抽出部から得られるスペクトル情報をn次元空間座標系にプロットした様子を示す概念図である。
【図15】本発明の第3および第4の実施の形態の変形例を説明する図であり、スペクトル検出装置のセンサ受光範囲と撮影光学系の撮影範囲との関係を概念的に示し、図15(a)はペンダント状の白色色標を身につけた被写体を、図15(b)は撮影光学系の焦点距離が広角側に設定され、撮影距離がより遠い状態に設定される例を、図15(c)は撮影光学系の焦点距離が広角側に設定され、撮影距離がより近い状態に設定される例を、図15(d)は撮影光学系の焦点距離が望遠側に設定され、撮影距離がより遠い状態に設定される例を、図15(e)は撮影光学系の焦点距離が望遠側に設定され、撮影距離がより近い状態に設定される例を、それぞれ示し、白色色標からの光を受光するセンサブロックからのスペクトル情報が選択される様子を説明する図である。
【図16】本発明を遠隔病理診断システムに適用する、第5の実施の形態を説明する図であり、遠隔病理診断システムの情報処理系統の構成を概略的に説明するブロック図である。
【図17】本発明の第5の実施の形態に係る遠隔病理診断システム内の色変換処理部の情報処理系統の構成をより詳細に説明するブロック図である。
【図18】本発明の第6の実施の形態を説明する図であり、スペクトル情報データログを蓄積可能な多点計測式のスペクトル検出装置およびこのスペクトル検出装置が接続されるカメラの情報処理系統の構成を概略的に説明するブロック図である。
【図19】本発明の第6の実施の形態を説明する図であり、撮影日時情報の付加された画像ファイルと検出日時情報の付加されたスペクトル情報ログデータとを読み出して色再現処理を行う画像処理装置の情報処理系統の構成を概略的に説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
− スペクトル検出装置の構成 −
図1、図2は、スペクトル検出装置の光学的な構成を概略的に示す図であり、図1は一点計測式のスペクトル検出装置110の構成を、図2は多点計測式のスペクトル検出装置210の光学的な構成を、それぞれ示す。これらのスペクトル検出装置110、210は、いずれも外光式のものであり、カメラに内蔵または外付けされる。ここで、外光式のスペクトル検出装置とは、カメラの撮影光学系とは別の光学系によって被写界からの光を集光し、スペクトルを検出する装置を意味する。なお、スペクトル検出装置110、210の電気的な構成については後で説明する。
【0017】
最初に図1を参照して、一点計測式のスペクトル検出装置110の構成について説明する。スペクトル検出装置110は、集光レンズ102と、拡散板104と、センサモジュール106とを備える。集光レンズ102は、被写界からの光を集光し、集光レンズ102の後方に配置される拡散板104に導く。図1において集光レンズ102は単玉として示されているが、複数のレンズエレメントによって構成されていてもよい。拡散板104は、フライアイレンズが表面に形成された透明板または乳白色半透明の平板等で構成され、集光レンズ102を透過した光を略均一に拡散し、拡散板104の後方に配置されるセンサモジュール106に導く。このような構成により、被写界からの光は略均一に混合されて平均化され、センサモジュール106の受光面に入射する。
【0018】
センサモジュール106は、複数の光電変換部を備え、それぞれの光電変換部上には異なる分光透過特性を有するフィルタが設けられる。つまり、ある分光透過特性を有するフィルタ一つと、そのフィルタを透過した光を受光する一つの光電変換部とを備えて一つのカラーセンサ106a、106b、…が構成され、センサモジュール106は複数のカラーセンサ106a、106b、…を備えて構成される。
【0019】
図1には、センサモジュール106が15個のカラーセンサ106a、106b、…、106n、106oを備える例が示されている。カラーセンサ106a、106b、…の個数、形状、配置パターン等については図1に例示されるものに限られず、求められる仕様に応じて様々なものとすることが可能である。また、各カラーセンサ106a、106b、…の各光電変換部の面積は均等であっても、異なっていてもよい。
【0020】
センサモジュール106は、各カラーセンサ106a、106b、…から出力される光電流を増幅するアンプや、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ等を必要に応じて備えていてもよい。本明細書においては、センサモジュール106がアンプやA/Dコンバータを備えていて、センサモジュール106からは各カラーセンサ106a、106b、…に対応してデジタルのセンサデータが出力されるものとして説明する。
【0021】
各カラーセンサ106a、106b、…に設定される分光感度特性の一例を図3に示す。図3中、丸で囲ったaからoの符号を付して示した曲線のひとつ一つがカラーセンサ106a、106b、…それぞれに設定される分光感度特性の例を示している。図3に示される分光感度は一例であって、スペクトル検出装置110に求められる仕様に応じて様々な分光感度特性を設定することができる。ひとつ一つの分光感度特性の帯域は広帯域、狭帯域等、様々に設定可能である。また、可視域のみならず、用途に応じて赤外域や紫外域に分光感度を有していてもよい。
【0022】
集光レンズ102の焦点距離は、センサモジュール106の受光部のサイズに基づいて所望の受光角度が得られるように設定される。なお、センサモジュール106の受光部のアスペクト比はカメラで得られる画像のアスペクト比と略一致するように設定することが望ましい。画像のフォーマットが正方形以外であればスペクトル検出装置の受光角度(以下では「センサ受光角度」と称する)は画面の縦方向、横方向で異なる。本明細書中ではセンサ受光角度と撮影画角とを比較して説明をする場合があるが、その場合には縦方向、横方向、および対角方向のうち、いずれかの同じ方向同士で比較するものとする。
【0023】
図2を参照して、多点計測式のスペクトル検出装置210の構成について説明する。スペクトル検出装置210は、集光レンズ202と、センサモジュール206とを備える。集光レンズ202は、被写界からの光を集光し、後方に配置されるセンサモジュール206上に導いて像を形成する。図2において集光レンズ202は単玉として示されているが、複数のレンズエレメントにより構成されていてもよい。
【0024】
センサモジュール206は、複数のセンサブロック206−1、206−2、…を備えて構成される点がセンサモジュール106との大きな違いである。図2においては100個のセンサブロック206−1、206−2、…、206−100が10行10列に配列される例が示されている。それぞれのセンサブロック206−1、206−2、…は、図1、図3を参照して説明したのと同様のカラーセンサを複数備える。図2には、センサブロック206−1を拡大した様子が描かれている。センサブロック206−1は、15個のカラーセンサ206−1a、206−1b、…206−1oを備える。これらのカラーセンサ206−1a、206−1b、…の分光感度特性は、図3を参照して説明したものと同様とすることができる。
【0025】
多点計測式のスペクトル検出装置210では、集光レンズ202によって導かれる被写界からの光を複数のセンサブロック206−1、206−2、…でエリアごとに分割して検出する。これにより、複数のエリアに分割された被写界のそれぞれに対応してスペクトルを検出することが可能となる。
【0026】
なお、センサモジュール206の受光部上には集光レンズ202によって像が形成されるので、ひとつ一つのセンサブロック206−1、206−2、…の上に像が形成される。センサブロック206−1、206−2、…の面積が大きくなると、センサブロック中の各カラーセンサは像中の異なる部分の光を受光することになる。したがって、各カラーセンサは被写界からの異なる色の光を受光する可能性がある。そのようなことが想定される場合には、一つのセンサブロックに入射する光が略均一に混合されたものとなるように、集光レンズ202とセンサモジュール206との間にOLPF(光学的ローパスフィルタ)やフライアイレンズ等を配設することが望ましい。
【0027】
図2には、センサモジュール206が100個のセンサブロックを備え、各センサブロックが15個のカラーセンサを備える例が示されているが、これらのセンサブロックの配設数や各センサブロックに備えられるカラーセンサの数についてはスペクトル検出装置210に求められる仕様に応じて様々な値とすることが可能である。また、センサブロックやカラーセンサの形状、配置パターン等についても図2に例示されるものに限られず、求められる仕様に応じて様々なものとすることが可能である。
【0028】
センサモジュール206は、図1を参照して説明したセンサモジュール106と同様、各カラーセンサから出力される光電流を増幅するアンプや、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ等を必要に応じて備えていてもよい。本明細書においては、センサモジュール206がアンプやA/Dコンバータを備えていて、センサモジュール206からは各センサブロック中の各カラーセンサに対応してデジタルのセンサデータが出力されるものとして説明する。
【0029】
集光レンズ202の焦点距離は、センサモジュール206の受光部のサイズに基づいて所望の受光角度(センサ受光角度)が得られるように設定される。センサモジュール206の受光部のアスペクト比はカメラで得られる画像のアスペクト比と略一致するように設定することが望ましい。センサ受光角度と撮影画角とを比較する場合の考え方については図1を参照して説明したのと同様である。
【0030】
− スペクトル検出装置の実装形態 −
図4は、スペクトル検出装置110をカメラ400に内蔵する実装形態の例を示す。被写界F中の被写体objが撮影光学系404で撮影される。図4では、カメラ400に一点計測式のスペクトル検出装置110が内蔵される例について示しているが、多点計測式のスペクトル検出装置210が内蔵されてもよい。先にも説明したように、スペクトル検出装置110はカメラ400の撮影光学系404とは別の光学系、すなわち集光レンズ102によって集光された被写界Fおよび被写体objからの光を受光して被写界Fおよび被写体objのスペクトル情報を出力する。したがって、撮影光学系404と集光レンズ102とは、いわゆる視差を生じる。
【0031】
撮影光学系404の光軸A1と、集光レンズ102の光軸A2とは、互いに平行であってもよいが、所定の撮影距離、例えば3mの位置で交わるように集光レンズ102の光軸A2を傾けてもよい。本明細書中では光軸A2が傾けられていて、光軸A1と光軸A2とが角度θで交差するものとする。図4に示される例では、光軸A1と光軸A2とはカメラ400を保持した撮影者から見て左右方向および上下方向の双方にずれている。
【0032】
図5は、多点計測式のスペクトル検出装置210をカメラ500に外付けする実装形態の例を示す。図5(a)は、カメラ500にスペクトル検出装置210を装着した様子を、図5(b)は、スペクトル検出装置210を外した状態のカメラ500の上面を部分的に示す。図5(b)に示されるように、カメラ500の上面にはアクセサリシュー506と接点506aとが設けられる。
【0033】
図5において、スペクトル検出装置210はユニット化されていて、アクセサリシュー506を介してカメラ500に装着される。カメラ500とスペクトル検出装置210とは、接点506aなどを介して制御信号および情報を授受可能に構成される。あるいは、光通信や近距離無線通信の技術を用いて無接点の方式で制御信号および情報の授受を行うことが可能に構成されていてもよい。また、接点を介して電源をカメラ500より電源を供給可能な構成としてもよい。
【0034】
また、図5では多点計測式のスペクトル検出装置210がカメラ500に外付けされる例が示されているが、一点計測式のスペクトル検出装置110が外付けされるものであってもよい。
【0035】
図4を参照して説明したのと同様、スペクトル検出装置210はカメラ500の撮影光学系404とは別の光学系、すなわち集光レンズ202によって集光された被写界Fおよび被写体objからの光を受光し、対応するスペクトル情報を出力する。したがって、撮影光学系404と集光レンズ202とは、いわゆる視差を生じる。撮影光学系404の光軸A1と集光レンズ202の光軸A3とは、互いに平行であっても、所定の撮影距離で交わるように光軸A3を傾けてもよい。本明細書中では光軸A3が傾けられていて、光軸A1と光軸A3とが角度θで交差するものとする。図5に示される例では、光軸A1と光軸A3とは、カメラ500を保持した撮影者から見て左右方向にずれは無く、上下方向にのみずれている。もちろん、集光レンズ202を可変焦点距離になるよう構成することも可能である。この場合スペクトル検出装置210と撮影光学系404の撮影範囲の差は少なくなるが、光軸が異なるため完全に一致することはない。
【0036】
図6は、スペクトル検出装置210によるスペクトル検出範囲(以下、「センサ受光範囲」と称する)と、撮影光学系404による撮影範囲との関係を説明する図である。ここでの「範囲」は空間的な範囲を意味している。本明細書において、集光レンズ202は単焦点である一方、撮影光学系404は可変焦点距離であるものとする。
【0037】
上述のように集光レンズ202は単焦点であるため、センサ受光角度は一定であり、撮影距離の変化に応じてセンサ受光範囲の大きさが変化する。一方、撮影光学系404の設定焦点距離に応じて撮影画角は変化するので、同じ撮影距離であっても撮影範囲は変化し、さらに撮影距離が変化するとそれに応じて撮影範囲も変化する。本実施の形態において、センサ受光範囲は、撮影光学系404を望遠側に設定したときの撮影範囲よりも広く、広角側に設定したときの撮影範囲よりも狭くなるように設計されているものとする。別の表現を用いると、センサ受光角度は、撮影光学系404を望遠側に設定したときの撮影画角よりも広く、広角側に設定したときの撮影画角よりも狭くなるように設計されているものとする。
【0038】
ところで、先にも説明したとおり、光軸A1と光軸A3とは、カメラ500を保持した撮影者から見て左右方向にずれは無く、上下方向にずれている。このずれにより、センサ受光範囲と撮影範囲との間には以下で説明するように上下方向の視差を生ずる。その様子が図6には示されている。
【0039】
光軸A1と光軸A3とが所定の撮影距離で交わるように光軸A3は傾けられている。すなわち、この所定の撮影距離においては、センサ受光範囲の中心と撮影範囲の中心とが一致する。それ以外の撮影距離においては、センサ受光範囲の中心と撮影範囲の中心との間にずれを生じる。このとき、光軸A1と光軸A3とは上記のとおり左右方向にずれは無く、上下方向にずれているので、センサ受光範囲の中心と撮影範囲の中心との間に生じるずれも上下方向に沿ったものとなる。
【0040】
センサ受光範囲と、撮影光学系404が広角端に設定されているときの撮影範囲との位置関係の変化を、図6を参照して説明する。より遠い距離にある撮影距離2においては、撮影範囲はセンサ受光範囲よりも上側にU2、下側にL2だけ広く、U2はL2よりも大きい。すなわち、カメラ500を保持した撮影者から見て、センサ受光範囲は撮影範囲に対して下側に偏っている。
【0041】
一方、より近い距離にある撮影距離1においては、撮影範囲はセンサ受光範囲よりも上側にU1、下側にL1だけ広く、U1はL1よりも小さい。すなわち、カメラ500を保持した撮影者から見て、センサ受光範囲は撮影範囲に対して上側に偏っている。
【0042】
以上のように、撮影光学系404の設定焦点距離を変化させることによってセンサ受光範囲と撮影範囲との関係が変化するのに加え、撮影距離が変化してもセンサ受光範囲と撮影範囲との関係は変化する。本発明では、スペクトル検出装置110、210で検出して得られたスペクトル情報を用い、撮影光学系404で撮影して得られた画像に色再現処理を行う。その際に、上述したセンサ受光範囲と撮影範囲との関係の変化に応じて、色再現処理の方法を決定する。
【0043】
− 第1の実施の形態 −
本発明の第1の実施の形態は、図4に示されるように、カメラ400に一点計測式のスペクトル検出装置110が内蔵されるのとして説明をする。カメラ400は、レンズ交換式であってもレンズ固定式であってもよい。また、撮影光学系404は、単焦点レンズであっても可変焦点距離のレンズであってもよい。本実施の形態において、カメラ400はレンズ交換式のもので、カメラ400に装着されている撮影光学系404は可変焦点距離のレンズであるものとして説明をする。
【0044】
図7は、スペクトル検出装置110およびこのスペクトル検出装置110を内蔵するカメラ400の情報処理系統の構成を概略的に説明するブロック図である。スペクトル検出装置110は、センサモジュール106から出力されるデジタルのセンサデータを記憶するデータメモリ120を備える。スペクトル検出装置110はまた、データメモリ120に記憶されたセンサデータをもとにスペクトル推定処理を行い、スペクトル情報を出力するスペクトル推定処理部122を備える。
【0045】
図7において、センサデータは以下のように表記されている。
SD(k): k = 1〜N
ここでNは、カラーセンサの数である。図1を参照して説明したセンサモジュール106が用いられる場合、Nは15となる。
【0046】
図7において、スペクトル情報は以下のように表記されている。
SPD(j): j= 1〜M
ここでMは、カメラ400の仕様等によって決まる数である。つまり、N個のカラーセンサから出力されるセンサデータをもとに生成されるスペクトル情報の次元数をMは示しており、例えば380nmから780nmまでの可視光波長帯域のスペクトル情報を1nm間隔で出力する場合、M=401となる。あるいは、予め定められた例えば10点の波長におけるスペクトル情報が得られれば十分な精度が得られる応用形態であればM=10となる。つまり、上述したセンサデータの数Nとスペクトル情報の次元数Mとの間の関係に関して、必ずしもMがNを上回る必要はない。
【0047】
ここでセンサモジュール106から出力されるセンサデータSD(k)をもとにスペクトル情報を得る方法の一例について簡単に説明する。世の中に存在する自然光や人工光をセンサモジュール106で検出したときの出力パターン、すなわちセンサデータSD(1)、SD(2)、…、SD(k)の相対値(これをデータパターンと称する。)と、それらの自然光や人工光の分光スペクトルとの関係が予め求められてスペクトル検出装置110内にテーブルとして保持されているものとする。
【0048】
スペクトル推定処理部122は、データメモリ120中に記憶されるセンサデータSD(1)、SD(2)、…、SD(k)に正規化の処理を施してデータパターンを導出する。スペクトル推定処理部122はさらに、上記テーブルを参照して、センサデータのデータパターンに最も類似するデータパターンを探索し、このデータパターンに対応する分光スペクトルデータをテーブル中から読み出してスペクトル情報SPD(j)とする。
【0049】
カメラ400内の、上記スペクトル検出装置110以外の構成要素について説明する。カメラ400は、撮像部700と、色温度検出部702と、第1光源検出部704と、画像処理部706と、撮影条件情報取得部710と、色再現処理方法決定部712と、スペクトル情報入力部714と、第2光源検出部716とをさらに備える。
【0050】
撮像部700は、撮影光学系404によって形成される被写体像を光電変換して画像データを出力する撮像素子や、撮像素子から出力される画像データを処理する情報処理部等を含み、色温度検出部702、画像処理部706にデジタル画像データを出力する。
【0051】
本実施の形態において、撮像部700は、RGBの画像データを出力するものとするが、他の色空間の画像データを出力可能に構成されていても良いし、3色よりも多い色数の画像データを出力可能に構成されていてもよい。なお、センサモジュール106が備えるカラーセンサで色分解可能な数は、撮像部700から出力される画像データの色数よりも多くなるようにシステム設計がなされる。
【0052】
色温度検出部702は、撮像部700から出力される画像データを処理し、撮影時に被写体を照明していた光(以下ではこれを「撮影照明光」と称する)の色温度を推定する処理を行う。例えば、一つの画像を複数の領域に分割し、分割された領域ごとに画像データのRGB値を導出して、RGB値の比率に基づいて分割された領域ごとに色温度を推定する。そして、分割された領域ごとの色温度をもとに、公知のアルゴリズムに従って撮影照明光の色温度が推定される。
【0053】
第1光源検出部704は、色温度検出部702から入力した撮影照明光の色温度情報に基づき、撮影照明光の種類を特定する。第1光源検出部704で特定可能な撮影照明光の種類としては、晴天太陽光、曇天、タングステン灯、白色蛍光灯、昼光色蛍光灯などがある。
【0054】
撮影条件情報取得部710は、撮影時に撮影光学系404で設定されていた焦点距離および合焦距離に関する情報をレンズ制御部406から入力する。ここでレンズ制御部406について説明する。レンズ制御部406は、撮影光学系404内に備えられ、撮影光学系404内の焦点調節用レンズの動作の制御や絞り装置の動作の制御を行う。レンズ制御部406はまた、撮影光学系404で設定されている焦点距離に関する情報や、撮影光学系404の合焦距離を検出可能に構成されている。
【0055】
具体的には、撮影光学系404の焦点距離を変化させる変倍装置内に組み込まれるエンコーダ等から信号を読み出すことにより、撮影光学系404で設定されている焦点距離を検出する。また、焦点調節用レンズを駆動する機構内に備えられる、レンズ位置検出用エンコーダ等から信号を読み出すことにより、合焦距離を検出する。
【0056】
撮影条件情報取得部710は、これらの焦点距離や合焦距離に関する情報をレンズ制御部406から入力する。なお、撮影条件情報取得部710がレンズ制御部406から入力する情報としては、撮影画角に関する情報や撮影倍率に関する情報であってもよい。
【0057】
色再現処理方法決定部712は、撮影条件情報取得部710から撮影条件情報を入力する。この撮影条件情報中には、撮影が行われたときに撮影光学系404で設定されていた撮影画角および撮影距離を導出可能な情報を含む。すなわち、撮影条件情報中には、撮影が行われたときに撮影光学系404で設定されていた焦点距離または撮影画角に関連する情報と、合焦距離または撮影倍率に関連する情報とを含む。撮影倍率に関連する情報が撮影条件情報中に含まれる場合、この撮影倍率に関連する情報と、焦点距離または撮影画角に関連する情報とに基づいて撮影距離を導出することができる。
【0058】
色再現処理方法決定部712はさらに、撮影条件情報取得部710から入力した上記撮影条件情報に基づき、後で詳しく説明するように、画像処理部706で行われる色再現処理の色再現処理方法を決定し、決定した色再現処理方法に関する情報を画像処理部706に出力する。
【0059】
スペクトル情報入力部714は、スペクトル検出装置110からスペクトル情報SPD(j)を入力する。第2光源検出部716は、スペクトル情報入力部714で入力したスペクトル情報SPD(j)をもとに、撮影照明光の種類を特定する処理を行う。ここで第1光源検出部704における処理との違いについて説明する。
【0060】
第1光源検出部704では、色温度検出部702から入力した撮影照明光の色温度情報に基づいて撮影照明光の種類を特定する。一方、第2光源検出部716は、スペクトル情報SPD(j)をもとに撮影照明光の種類を特定する処理を行うので、撮影照明光のスペクトルの類似度などを利用して撮影照明光の種類を第1光源検出部704で特定可能な種類数よりも多い数で特定することが可能となる。また、被写体が複数種類の照明により照射された状況であっても高精度に推定することが出来る。
【0061】
画像処理部706は、色再現処理方法決定部712で決定された色再現処理方法に基づき、色再現処理を行う。ここで、色再現処理方法決定部712で行われる色再現処理方法決定処理と画像処理部706で行われる色再現処とについて説明する。
【0062】
図8は、色再現処理方法決定部712で行われる色再現処理方法決定処理の内容をまとめた表である。色再現処理方法決定部712は、撮影条件情報取得部710から取得した撮影条件情報より、撮影が行われたときに撮影光学系404で設定されていた撮影画角および撮影距離を導出する。そして、撮影距離の遠近と、撮影画角とセンサ受光角との関係とに基づいて以下で説明する方法に従って色再現処理方法を決定する。
【0063】
撮影距離が所定の基準距離以遠、例えば1m以遠であると判定された場合、第1光源検出部での光源特定結果の信頼度に関する判定は行わず、撮影画角の判定が行われる。第1光源検出部での光源特定結果の信頼度に関しては後で説明する。撮影画角がセンサ受光角度の1.5倍以下と判定されると、スペクトル検出装置110からの出力(第2光源検出部716での光源特定結果)を参照して色再現処理(図8中の色再現処理1)が行われる。一方、撮影画角がセンサ受光角度の1.5倍を超すと判定されると、撮像部700からの出力(第1光源検出部704での光源特定結果)を参照して色再現処理(図8中の色再現処理2)を行われる。
【0064】
上記の処理について説明をする。撮影画角がセンサ受光角度の1.5倍以下と判定される状況は、撮影画角とセンサ受光角度とがほぼ一致している状況と考えることができる。したがって、このような状況ではスペクトル検出装置110からの出力(第2光源検出部716での光源特定結果)を参照して色再現処理を行うことにより、色再現処理の精度を高めることが可能となる。あるいは、カメラ400に装着可能な交換レンズとしてそのような短焦点距離のものが提供されていなければ、常にスペクトル検出装置110を参照して色再現処理を行うことも考えられる。
【0065】
無論、撮影光学系404で設定可能な焦点距離がかなり長ければ、撮影画角も相応に小さくなるので、撮影画角とセンサ受光角度とがほぼ一致しているとは云えなくなる。そのような状況を考慮し、例えばセンサ受光角の半分よりも撮影画角が小さい場合、撮像部700からの出力(第1光源検出部704での光源特定結果)を参照して色再現処理を行うように決定がなされてもよい。あるいは、カメラ400に装着可能な交換レンズとしてそのような長焦点距離のものが提供されていなければ、図8を参照して以上に説明した色再現処理方法決定処理を行えばよい。
【0066】
一方、撮影画角がセンサ受光角度の1.5倍を超すと判定される状況では、撮影光学系404で設定された撮影画角が大きく、結果としてセンサモジュール106の中央重点度(スポット性)が増すことになる。このような状況でスペクトル検出装置110から得られるスペクトル情報は、被写体の分光反射率の影響を受けやすい。したがって、撮影画角がセンサ受光角度の1.5倍を超すと判定される状況では撮像部700からの出力(第1光源検出部704での光源特定結果)を参照して色再現処理(図8中の色再現処理2)を行うように決定がなされる。
【0067】
続いて、撮影距離が所定の基準距離よりも近いと判定された場合の処理について説明する。撮影距離が所定の基準距離よりも近いと判定されると、第1光源検出部704での光源特定結果の信頼度に関する判定が最初に行われる。具体的には、撮像部700から出力される画像データにより生成される画像中に含まれる白い部分の割合に基づいて上記信頼度に関する判定が行われる。
【0068】
すなわち、被写体中に白い部分が存在すれば、その白い部分の画像から得られる色情報は撮影照明光の分光特性をより強く反映したものとなる。したがって、上記画像中に含まれる白い部分の割合が例えば画素数比で10%を越す場合、上記信頼度は高いと判定され、10%以下の場合には上記信頼度は低いと判定される。
【0069】
上記信頼度が高いと判定されると、撮像部700からの出力(第1光源検出部704での光源特定結果)を参照して色再現処理(図8中の色再現処理3)が行われる。一方、上記信頼度が低いと判定されると、スペクトル検出装置110からの出力(第2光源検出部716での光源特定結果)を参照して色再現処理(図8中の色再現処理4)が行われる。
【0070】
撮影距離が所定の基準距離よりも近いと判定された場合に撮影画角とセンサ受光角度との関係に基づく判定が行われない理由は、以下のとおりである。すなわち、先に図6を参照して説明したように、撮影距離が近いと撮像部700とセンサモジュール106との間の視差が大きくなり、スペクトル検出装置110から得られるスペクトル情報が撮影時に被写体を照明していた撮影照明光の特性を必ずしも反映しなくなる可能性が高まるからである。
【0071】
一方、撮影距離が近い場合には、被写体がより大きく写されるので、第1光源検出部704での光源特定結果は被写体中の特定の色の分光反射特性の影響を受けやすい(例えば赤や黄色等、単色に近い花のクローズアップ撮影が行われた場合、第1光源検出部704での光源特定結果は花の色の影響を強く受ける)。そこで、画像中に含まれる白い部分の割合に基づいて第1光源検出部704での光源特定結果の信頼度を判定し、上述したように色再現処理3または4が選択される。
【0072】
ところで、上記説明で、色再現処理1、4はスペクトル検出装置110からの出力(第2光源検出部716での光源特定結果)を参照しての色再現処理であると説明したが、撮像部700からの出力(第1光源検出部704での光源特定結果)も参照してそれぞれの結果を重み付けするなどして色再現処理をしてもよい。また、色再現処理2、3は撮像部700からの出力(第1光源検出部704での光源特定結果)を参照しての色再現処理であると説明したが、以下のような色再現処理が行われても良い。
【0073】
すなわち、カメラ400の背面に備えられる液晶表示装置等に、カメラ400のユーザに対して撮影照明光の種類を入力するように促す表示をして、ユーザの入力を受け付けるようにしてもよい。ユーザが入力可能な撮影照明光の種類は、一例として、晴天屋外、曇天屋外、タングステン灯、白色蛍光灯、昼白色蛍光灯、昼光色蛍光灯、LED灯などがある。あるいは、撮影照明光の種類ではなく、色温度(K)をユーザが入力できるようにしてもよい。そして、入力された撮影照明光の種類(あるいは色温度)と、撮像部700からの出力(第1光源検出部704での光源特定結果)あるいはスペクトル検出装置110からの出力(第2光源検出部716での光源特定結果)とを参照して色再現処理をするように決定してもよい。
【0074】
画像処理部706は、上記色再現処理1から4のうち、色再現処理方法決定部712で決定されたいずれかの色再現処理によって色再現処理を行う。画像処理部706で行われる色再現処理としては、撮像部700から出力される画像データに対して色バランスを調節する処理とすることが可能である。あるいは、RAWデータに付加するための撮影照明情報を生成する処理とすることも可能である。
【0075】
以上に説明したように、本発明の第1の実施の形態によれば、外光式のスペクトル検出装置110から得られるスペクトル情報を参照するか否かが、撮影光学系404で撮影が行われたときに設定されていた画角および撮影距離に基づいて決定される。そして、スペクトル情報を参照しないと決定された場合にはスペクトル検出装置110から出力されるスペクトル情報を参照せず、撮像部700から出力される画像データを分析した結果に基づいて色再現処理を行うように決定される。
【0076】
一方、スペクトル情報を参照すると決定された場合には、撮像部700から出力される画像データを分析した結果とスペクトル情報とのうち、少なくともスペクトル情報を参照して色再現処理を行うように決定される。これにより、より高い精度で色再現処理を行うことが可能となる。
【0077】
以上では、スペクトル検出装置110がカメラ400に内蔵されるものとして説明をしたが、スペクトル検出装置110がカメラに対して外付け可能に構成されていてもよい。
【0078】
また、撮影条件情報取得部710、色再現処理方法決定部712、色温度検出部702、第1光源検出部704、スペクトル情報入力部714、第2光源検出部716、画像処理部706がカメラ400に備えられるものとして説明したが、これらの要素がスペクトル検出装置110の中に備えられていてもよい。
【0079】
例えば、スペクトル検出装置110が外付け式のものである場合、カメラ400から画像データと撮影条件情報とをスペクトル検出装置110が受ける。スペクトル検出装置110は、撮影条件情報と、スペクトル検出して得たスペクトル情報とを用いて画像データに色再現処理を行い、処理後の画像データをカメラ400に戻す。
【0080】
あるいは、上記の撮影条件情報取得部710、色再現処理方法決定部712、色温度検出部702、第1光源検出部704、スペクトル情報入力部714、第2光源検出部716、画像処理部706を備える画像処理装置として本発明を実施することも可能である。この画像処理装置は、PCと、PC上で実行されるソフトウェアとによって構成可能である。
【0081】
一方、カメラ400はスペクトル検出装置110を内蔵するか、スペクトル検出装置110が外付けされ、撮像部700から出力される画像データに撮影条件情報とスペクトル情報とが付加されてメモリカード等の記憶媒体に記憶される。画像処理装置は、カメラ400の記憶媒体中から、撮影条件情報とスペクトル情報が付加された画像データを読み出し、色再現の処理をする。
【0082】
ところで、色再現処理方法決定部712が図8を参照して説明した色再現処理方法決定の処理を行い、その際に、第1光源検出部704での光源特定結果の信頼度を色再現処理方法決定部712で判定することについて先に説明した。この光源特定結果の信頼度の判定に際して、色再現処理方法決定部712は画像データを入力することが必要となる。図7において、色再現処理方法決定部712が画像データを入力する際の情報の流れが記載されていないが、色再現処理方法決定部712は撮像部700、色温度検出部702、および第1光源検出部704のうち、いずれかから画像データを入力すればよい。
【0083】
以上の実施の形態において、カメラ400は静止画または動画、あるいは両方を記録可能なものとすることができる。
【0084】
− 第2の実施の形態 −
本発明の第2の実施の形態は、図5に例示されるような、カメラ500にスペクトル検出装置210が外付けされるものとして説明をする。カメラ500は、レンズ交換式であってもレンズ固定式であってもよい。また、撮影光学系404は、単焦点レンズであっても可変焦点距離のレンズであってもよい。本実施の形態において、カメラ500はレンズ交換式のもので、カメラ500に装着されている撮影光学系404は可変焦点距離のレンズであるものとして説明をする。
【0085】
図9は、スペクトル検出装置210およびカメラ500の情報処理系統の構成を概略的に説明するブロック図である。スペクトル検出装置210は、センサモジュール206から出力されるデジタルのセンサデータを記憶するデータメモリ120Aを備える。スペクトル検出装置210はまた、データメモリ120Aに記憶されたセンサデータをもとにスペクトル推定処理を行い、スペクトル情報を出力するスペクトル推定処理部122Aを備える。
【0086】
図9において、センサデータは以下のように表記されている。
SDi(k): k = 1〜N
i = 1〜P
ここでNは、カラーセンサの数である。また、Pはセンサブロックの数である。図2を参照して説明したセンサモジュール206が用いられる場合、Nは15となり、Pは100となる。
【0087】
図9において、スペクトル情報は以下のように表記されている。
SPDi(j): j= 1〜M
i= 1〜P
ここでMは、カメラ500やスペクトル検出装置210の仕様等によって決まる数であり、第1の実施の形態で説明したのと同様である。上述したセンサデータの数Nとスペクトル情報の次元数Mとの間の関係に関して、必ずしもMがNを上回る必要はないのも第1の実施の形態と同様である。Pは先に説明したとおり、センサブロックの数である。
【0088】
センサモジュール206から出力されるセンサデータSDi(k)をもとにスペクトル情報を得る方法については、第1の実施の形態で説明したのと同様の方法とすることができる。すなわち、世の中に存在する自然光や人工光をセンサモジュール206中の一つのセンサブロック206−iで検出したときの出力パターン、すなわちセンサデータSDi(1)、SDi(2)、…、SDi(k)の相対値(これをデータパターンと称する。)と、それらの自然光や人工光の分光スペクトルとの関係が予め求められてスペクトル検出装置210内にテーブルとして保持されているものとする。
【0089】
スペクトル推定処理部122Aは、データメモリ120A中に記憶されるセンサデータSDi(k) (k=1〜N) に正規化の処理を施してデータパターンを導出することを、P個のセンサブロックのそれぞれに対応して行う(i=1〜P)。スペクトル推定処理部122Aはさらに、センサデータのデータパターンに最も類似するデータパターンを探索し、このデータパターンに対応する分光スペクトルデータをテーブル中から読み出してスペクトル情報SPDi(k)とすることを、P個のセンサブロックのそれぞれに対応して行う。以上の処理により、スペクトル推定処理部122Aはスペクトル情報SPDi(j) (i=1〜P j=1〜M)を出力することが可能となる。
【0090】
カメラ500は、撮像部700と、色温度検出部702と、第1光源検出部704と、画像処理部706Aと、撮影条件情報取得部710と、色再現処理方法決定部712Aと、スペクトル情報入力部714Aと、スペクトル情報抽出部718と、第2光源検出部716Aとをさらに備える。また、撮影光学系404はレンズ制御部406を備える。これらの構成要素のうち、第1の実施の形態において説明したものと同様の機能を有するものについては図9において同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0091】
第2の実施の形態においても、撮像部700は、RGBの画像データを出力するものとするが、他の色空間の画像データを出力可能に構成されていても良いし、3色よりも多い色数の画像データを出力可能に構成されていてもよい。そして、センサモジュール206が備える各センサブロック中のカラーセンサで色分解可能な数は、撮像部700から出力される画像データの色数よりも多くなるようにシステム設計がなされる。
【0092】
色再現処理方法決定部712Aは、撮影条件情報取得部710から撮影条件情報を入力する。この撮影条件情報中には、撮影が行われたときに撮影光学系404で設定されていた撮影画角および撮影距離を導出可能な情報を含む。
【0093】
また、色再現処理方法決定部712Aは、撮影条件情報取得部710から入力した上記撮影条件情報に基づき、以下で説明するように、スペクトル情報と、画像データを分析した結果とのうち、少なくともいずれかを参照して色再現処理を行うように決定する。
【0094】
スペクトル情報に関しては、複数のスペクトル情報SPDi(j) (i=1〜P、j=1〜M)のうち、参照する対象のスペクトル情報を撮影条件情報に基づいて選択し、この選択結果に対応する情報であるスペクトル選択情報をスペクトル情報抽出部718に出力する。そして、選択されたスペクトル情報と、画像データを分析した結果とのうち、少なくともいずれかを参照して色再現処理を行うように決定する。
【0095】
上記の色再現処理方法決定処理におけるスペクトル情報の選択方法について図10を参照して説明する。図10は、スペクトル検出装置210のセンサ受光範囲と撮影光学系404の撮影範囲との関係を概念的に示す図である。図10(a)から図10(d)のそれぞれにおいて示される100個の矩形は、センサモジュール206中の100個のセンサブロックそれぞれで検出される範囲を示している。また、図10(a)から図10(d)のそれぞれにおいて示される100個の矩形のうち、太い線で描かれた矩形は、色再現処理方法決定部712Aで選択されたスペクトル情報に対応するものを示している。図10(a)から図10(d)はいずれもセンサ受光範囲の大きさが同じとなるように描かれている。
【0096】
図10(a)、図10(b)は、撮影光学系404の設定焦点距離が短めに設定された場合の例を示しており、このうち図10(a)は撮影距離が遠めに設定された場合の例を、図10(b)は撮影距離が近めに設定された場合の例を示している。
【0097】
図10(c)、図10(d)は、撮影光学系404の設定焦点距離が長めに設定された場合の例を示しており、このうち図10(c)は撮影距離が遠めに設定された場合の例を、図10(d)は撮影距離が近めに設定された場合の例を示している。
【0098】
つまり、図6を参照して説明すると、図10(a)は広角の撮影範囲および撮影距離2に対応する状況を示しており、図10(b)は広角の撮影範囲および撮影距離1に対応する状況を示しており、図10(c)は望遠の撮影範囲および撮影距離2に対応する状況を示しており、図10(d)は望遠の撮影範囲および撮影距離1に対応する状況を示していると考えると理解しやすい。
【0099】
図10(a)、図10(b)に例示される、焦点距離が広角側に設定された状況では、センサ受光範囲が撮影範囲内に収まっている結果として、センサブロック206−1、206−2、…、206−100から出力されるセンサデータに基づくスペクトル情報が全て選択される様子が示されている。なお、焦点距離が相当に短い状況では、センサ受光範囲に比して撮影範囲が広くなる。その結果、相対的にセンサ受光範囲が狭くなり、中央重点度が高くなる。そのような場合にはスペクトル情報を参照しない、という決定を色再現処理方法決定部712Aで行うことが可能である。なお、図10(a)、図10(b)においてセンサ受光範囲と撮影範囲との間の相対位置関係が変化している様子が描かれているが、これは先に説明した視差の影響によるものである。
【0100】
図10(c)、図10(d)に例示される、焦点距離が望遠側に設定された状況では、センサ受光範囲の一部が撮影範囲となる。これに対応して、センサブロック206−1、206−2、…、206−100のうち、被写界中の撮影範囲と略一致する部分からの光を検出するセンサブロックに対応するスペクトル情報が選択される様子が図10(c)、図10(d)に示されている。図10(c)、図10(d)においても、先に説明した視差によってセンサ受光範囲と撮影範囲との間の相対位置関係が変化している様子が描かれている。色再現処理方法決定部712Aでは、撮影条件情報に基づいてスペクトル情報を選択するので、撮影範囲の変化に加え、センサ受光範囲と撮影範囲との間の相対位置関係の変化にも対応して、スペクトル情報を選択することができる。
【0101】
なお、視差に関しては、撮影距離、画撮影画角に加えて、スペクトル検出装置210と撮影光学系404との間の光軸間距離(図6において符号Dで示される)にも依存する。撮影光学系404の光軸とスペクトル検出装置210の光軸とが所定の距離で交差するように(非平行に)設定されている場合、厳密には光軸間距離と称することはできない。そこで、この寸法Dは、一例として、撮像面(撮影光学系404の結像面)に対して撮影光学系404の光軸が交わる点と、同じく撮像面に対してスペクトル検出装置210の光軸が交わる点との間の距離として定義することが可能である。この距離Dに関する情報に関しては、カメラ500内またはスペクトル検出装置210内に予め記憶しておけばよい。
【0102】
再び図9を参照し、スペクトル情報入力部714Aは、スペクトル検出装置210からスペクトル情報SPDi(j) (i=1〜P、j=1〜M)を入力する。スペクトル情報抽出部718は、スペクトル情報入力部714Aに入力されたスペクトル情報のうち、色再現処理方法決定部712Aから出力されたスペクトル選択情報に対応するものを抽出し、第2光源検出部716Aに出力する。第2光源検出部716Aは、スペクトル情報抽出部718から入力したスペクトル情報をもとに、撮影照明光の種類を特定する処理を行う。第2光源検出部716Aにおける撮影照明光の種類特定の処理は、第1の実施の形態で説明した第2光源検出部716での処理と同様であるので説明を省略する。
【0103】
色再現処理方法決定部712Aでは、上述したスペクトル情報選択の処理の他に、第1の実施の形態で図8を参照して説明した処理も行う。すなわち、撮影条件情報取得部710から入力した上記撮影条件情報に基づき、スペクトル情報と、画像データを分析した結果とのうち、少なくともいずれかを参照して色再現処理を行うように決定する。
【0104】
第1光源検出部704での光源特定結果の信頼度を色再現処理方法決定部712Aで判定する際には、第1の実施の形態で説明したのと同様、色再現処理方法決定部712Aは撮像部700、色温度検出部702、および第1光源検出部704のうち、いずれかから画像データを入力すればよい。
【0105】
画像処理部706Aは、上記色再現処理1から4のうち、色再現処理方法決定部712Aで選択されたスペクトル情報と、同じく色再現処理方法決定部712Aで決定されたいずれかの色再現処理とによって色再現処理を行う。画像処理部706Aで行われる色再現処理としては、撮像部700から出力される画像データに対して色バランスを調節する処理とすることが可能である。あるいは、RAWデータに付加する撮影照明情報を生成する処理とすることも可能である。
【0106】
以上に説明したように、本発明の第2の実施の形態によれば、撮影条件情報取得部710から入力した上記撮影条件情報に基づき、外光式のスペクトル検出装置210から得られるスペクトル情報と、撮像部700から出力される画像データを分析した結果とのうち、少なくともいずれかを参照して色再現処理を行う。これにより、撮影距離の変化や撮影画角の変化等の影響が減じられて、より高い精度で色再現処理を行うことが可能となる。
【0107】
以上では、スペクトル検出装置210がカメラ500に外付けされるものとして説明をしたが、スペクトル検出装置210がカメラ500に内蔵されるものであってもよい。
【0108】
また、撮影条件情報取得部710、色再現処理方法決定部712A、色温度検出部702、第1光源検出部704、スペクトル情報入力部714A、スペクトル情報抽出部718、第2光源検出部716A、画像処理部706Aについては、第1の実施の形態で説明したのと同様に、スペクトル検出装置210内に内蔵されていても、PCと、PC上で実行されるソフトウェアとによって構成される画像処理装置に内蔵されていてもよい。
【0109】
以上の実施の形態においても、カメラ500は静止画または動画、あるいは両方を記録可能なものとすることができる。
【0110】
− 第3の実施の形態 −
本発明の第3の実施の形態も、第2の実施の形態と同様、図5に示されるように、カメラ500にスペクトル検出装置210が外付けされるのとして説明をする。カメラ500は、レンズ交換式であってもレンズ固定式であってもよい。また、撮影光学系404は、単焦点レンズであっても可変焦点距離のレンズであってもよい。カメラ内部の構成が第2の実施の形態と異なるので、以下ではカメラ500Aと称する。第3の実施の形態においても、カメラ500Aはレンズ交換式のもので、カメラ500Aに装着されている撮影光学系404は可変焦点距離のレンズであるものとして説明をする。
【0111】
図11は、スペクトル検出装置210およびカメラ500Aの情報処理系統の構成を概略的に説明するブロック図である。図11に示される各構成要素中、第1、第2の実施の形態で説明したものと同じ構成要素については図7、図9中の構成要素に付されるのと同じ符号を付してその説明を省略する。
【0112】
第3の実施の形態と第2の実施の形態との違いは、第3の実施の形態においてカメラ500Aが白色点抽出処理部720をさらに備える点である。そして、色再現処理方法決定部712Bは、撮影条件情報取得部710から撮影条件情報を、白色点抽出処理部720から白色点位置情報を、それぞれ入力する。
【0113】
ここで白色点抽出処理部720の作用について説明する。白色点抽出処理部720は、撮像部700から出力される画像データにより生成される画像中に含まれる白色部分を抽出する処理を行う。この、白色部分を抽出する処理とは、画像中で白いもの(あるいは白色に近いもの)が写っている場所を抽出する処理である。
【0114】
当然、被写体表面の色が白であっても、被写体の色は撮影照明光の色の影響を受ける。そのことを想定して、R、G、Bの画素値の比率が所定の範囲内にあるときにその色は白であると判定してもよい。あるいは、色温度検出部702での色温度検出結果や第1光源検出部704での光源特定結果をもとに画像データの色バランスを変更してから白色点抽出処理部720が白色部分を抽出する処理をしてもよい。あるいは画素値の輝度レベルを参照して輝度レベルが高い部分を白色部分であるものとして抽出する処理を行っても良い。
【0115】
色再現処理方法決定部712Bは、撮影条件情報取得部710から入力した撮影条件情報と、白色点抽出処理部720から入力した白色点位置情報とに基づき、スペクトル情報を参照するか否かを決定する。そして、スペクトル情報を参照しないと決定した場合には、スペクトル情報を参照せず、画像データを分析した結果に基づいて色再現処理を行うように決定する。
【0116】
一方、スペクトル情報を参照すると決定した場合には、複数のスペクトル情報SPD1(j)、SPD2(j)、… のうち、参照する対象のスペクトル情報を撮影条件情報と白色点位置情報とに基づいて選択する。そして選択したスペクトル情報と、画像データを分析した結果とのうち、少なくとも選択したスペクトル情報を参照して色再現処理を行うように決定する。
【0117】
つまり、白色点位置情報により、画像中のどの位置に白色点が位置しているかがが特定可能で、その白色点位置に対応するセンサブロックがどれであるかは撮影条件情報から特定可能であるので、上述のように白色点位置に対応するスペクトル情報が、参照する対象のスペクトル情報として選択される。
【0118】
被写体中の白色点(白いものが写っている領域)からの光を受光するセンサブロックが存在する場合、そのセンサブロックからの出力をもとに得られるスペクトル情報は撮影照明光の分光放射輝度をより正確に反映したものとなる。したがって、被写体中の白色点からの光を受光するセンサブロックからのスペクトル情報が選択されることにより、第2光源検出部716Aでの光源特定精度を高めることが可能とる。その結果、画像処理部706Aでの色再現精度も高めることが可能となる。
【0119】
白色点抽出処理部720が白色点を抽出できなかった場合、色再現処理方法決定部712Bは第1、第2の実施の形態で図8を参照して説明した方法に従って色再現処理方法を決定する。第1光源検出部704での光源特定結果の信頼度を色再現処理方法決定部712Bで判定する際には、第1、第2の実施の形態で説明したのと同様、色再現処理方法決定部712Bは撮像部700、色温度検出部702、第1光源検出部704、および白色点抽出処理部720のうち、いずれかから画像データを入力すればよい。
【0120】
以上では撮像部700から出力される画像データをもとに被写体中の白色点を抽出する例について説明したが、以下のようにしてもよい。すなわち、色再現処理方法決定部712Bが撮影条件情報に基づいてスペクトル情報を選択する際に、撮影範囲よりも広く設定した範囲内からの光を受光するセンサブロックからのスペクトル情報を選択する。そして、このスペクトル情報を解析して、被写体および被写界中の白い部分からの光を受光しているものとみなせるセンサブロックからのスペクトル情報を選択する。このようにスペクトル情報を選択することにより、第2光源検出部716Aでの光源特定精度を高めることが可能となる。
【0121】
例えば、撮影画角が小さめ(あるいは撮影倍率が大きめ)で、画面一杯に特定の色の被写体が写されているような場合、撮像部700から出力される画像データに基づく白色点抽出の処理は難しくなることが予想される。その点、撮影範囲よりも広く設定した範囲内からの光を受光するセンサブロックからのスペクトル情報中から被写体および被写界中の白い部分からの光を受光しているものとみなせるセンサブロックからのスペクトル情報を選択することにより、第2光源検出部での光源特定精度を高めることが期待できる。
【0122】
色再現処理方法決定部712Bが上記のようにスペクトル情報を解析し、被写体および被写界中の白い部分からの光を受光しているものとみなせるセンサブロックからのスペクトル情報を選択する場合、図11には示されていないが、色再現処理方法決定部712Bはスペクトル情報入力部714Aからスペクトル情報を取得すればよい。
【0123】
以上では、スペクトル検出装置210がカメラ500Aに外付けされるものとして説明をしたが、スペクトル検出装置210がカメラ500Aに内蔵されるものであってもよい。
【0124】
また、撮影条件情報取得部710、色再現処理方法決定部712B、色温度検出部702、第1光源検出部704、白色点抽出処理部720、スペクトル情報入力部714A、スペクトル情報抽出部718、第2光源検出部716A、画像処理部706Aについては、第1の実施の形態で説明したのと同様に、スペクトル検出装置210内に内蔵されていても、PCと、PC上で実行されるソフトウェアとによって構成される画像処理装置に内蔵されていてもよい。
【0125】
以上の実施の形態においても、カメラ500Aは静止画または動画、あるいは両方を記録可能なものとすることができる。
【0126】
− 第4の実施の形態 −
第1〜第3の実施の形態においては、画像処理装置がカメラ内に備えられるものとして説明をした。これに対して、本発明の第4の実施の形態においては、カメラと独立した画像処理装置において画像処理が行われる例について説明する。この画像処理装置は、カメラで生成されて保存された画像ファイル中の画像データに色再現処理をする。
【0127】
ここでカメラは図5に示されるような、スペクトル検出装置210が外付けされたカメラ500であるものとする。画像ファイルは、画像データにタグ情報が付加されて所定のフォーマットで記録されたものである。画像データはいわゆるRAWデータであるものとし、付加されるタグ情報中には撮影条件情報とスペクトル情報とを含む。このスペクトル情報は、画像撮影時にスペクトル検出装置210でスペクトル検出が行われた際の、全センサブロックから得られたセンサデータに基づいて生成されたスペクトル情報(図2の例では100組のスペクトル情報)を含むものとする。
【0128】
カメラ500は、レンズ交換式であってもレンズ固定式であってもよい。また、撮影光学系404は、単焦点レンズであっても可変焦点距離のレンズであってもよい。第4の実施の形態においても、カメラ500はレンズ交換式のもので、カメラ500に装着されている撮影光学系404は可変焦点距離のレンズであるものとする。
【0129】
図12は、画像処理装置1200の内部構成を概略的に説明するブロック図である。画像処理装置1200は、PCおよびPC上で実行されるプログラムによって構成されたものとすることができる。また、ストレージビューワやデジタルフォトフレーム、あるいはディスプレイモニタに接続されるセットトップボックス等に画像処理装置1200が備えられるものとして実施することも可能である。
【0130】
図12に示される各構成要素中、第1〜第3の実施の形態で説明したものと同じ構成要素については図7、図9、図11中の構成要素に付されるのと同じ符号を付してその説明を省略する。
【0131】
第4の実施の形態において、画像処理装置1200は第3の実施の形態で説明したカメラ500Aが有していた色温度検出部702、第1光源検出部704、第2光源検出部716A、画像処理部706Aを備えておらず、代わりに画像データ記憶部1202、情報分離部1204、スペクトル導出処理部1206、被写体情報導出部1208、色変換処理部1210を備えている。
【0132】
図13には、図12中の被写体情報導出部1208および色変換処理部1210の詳細を示す。被写体情報導出部1208は、分光反射スペクトル導出部1212と被写体統計データ導出部1214とを備える。色変換処理部1210は、色変換データ作成部1216と出力デバイス色変換部1218とを備える。
【0133】
画像データ記憶部1202は、半導体記憶装置や磁気記憶装置で構成され、画像ファイルが記憶される。画像ファイルは、先にも説明したように、RAW画像データとタグ情報とを含んでおり、そのタグ情報中には撮影条件情報とスペクトル検出装置210の全センサブロックから得られたスペクトル情報が含まれる。
【0134】
情報分離部1204は、画像データ記憶部1202から読み出された画像ファイル中から画像データ、撮影条件情報、スペクトル情報を分離して抽出する。撮影条件情報取得部710Aは、情報分離部1204から撮影条件情報を入力する。スペクトル情報入力部714Aは、情報分離部1204からスペクトル情報を入力する。
【0135】
白色点抽出処理部720Aおよび色変換処理部1210は、情報分離部1204から画像データを入力する。なお、情報分離部1204は、RAW画像データを現像する機能を有するものとしてよい。その場合、情報分離部1204から白色点抽出処理部720Aおよび色変換処理部1210に出力される画像データはデモザイクやシェーディング補正等の処理が行われた画像データとなる。あるいは、白色点抽出処理部720Aおよび色変換処理部1210は情報分離部1204からRAW画像データを入力し、それぞれで必要に応じた処理をしてもよい。
【0136】
白色点抽出処理部720Aで行われる白色点抽出処理は、第3の実施の形態中の白色点抽出処理部720で行われる処理と同様であるのでその説明を省略する。色再現処理方法決定部712Cは、撮影条件情報取得部710Aから入力した撮影条件情報と、白色点抽出処理部720Aから入力した白色点位置情報とに基づき、複数のスペクトル情報の中から参照すべきスペクトル情報を決定する。
【0137】
ここで、色再現処理方法決定部712Cにおいて参照すべきスペクトル情報として選択される対象は2種類ある。一つは、被写体中の白色点からの光を受光するセンサブロックからの出力をもとに得られたスペクトル情報である。これを第1スペクトル情報と称する。もう一つは、被写体(撮影範囲)中の、白色点以外の部分からの光を受光するセンサブロックからの出力をもとに得られたスペクトル情報である。これを第2スペクトル情報と称する。
【0138】
スペクトル情報抽出部718は、スペクトル情報入力部714Aに入力されたスペクトル情報のうち、色再現処理方法決定部712Cで選択された、第1スペクトル情報、第2スペクトル情報に該当するものを抽出し、スペクトル導出処理部1206に出力する。
【0139】
スペクトル導出処理部1206は、第1スペクトル情報に基づき、撮影照明情報を導出する。撮影照明情報は、撮影照明光の分光スペクトルを特定可能な情報である。スペクトル導出処理部1206はまた、第2スペクトル情報に基づき、被写体スペクトル情報を導出する。ここで図14を参照して被写体スペクトル情報の導出処理について説明する。
【0140】
図14は、スペクトル情報抽出部718から得られる第1スペクトル情報および第2スペクトル情報をn次元空間座標系(多次元スペクトル空間)にプロットした様子を示す概念図である。ここで、スペクトル情報抽出部718で抽出される第1スペクトル情報および第2スペクトル情報はM次元のスペクトル情報であるので、n=Mということになる。
【0141】
図14において、第1スペクトル情報に基づいてプロットすると、光源のスペクトル分布範囲を把握することが可能となる。理由は、被写体の白色部分で反射された光は撮影照明光のスペクトル分布をより忠実に反映するからである。さらに、第2スペクトル情報に基づいてプロットすると、一例として図14中において破線の楕円で囲われたようなプロット点群が得られる。
【0142】
これらのプロット点群のうち、光源のスペクトル分布範囲内にプロットされる点群は撮影照明光由来のスペクトル成分であると見なす。光源のスペクトル分布範囲に比較的近い領域にプロットされる点群は、撮影照明光由来のものか、被写体色由来のものか弁別が難しいので参照対象から外す。そして、光源のスペクトル分布範囲から十分に離れた領域にプロットされる点群は、被写体色由来のものであるとする。
【0143】
スペクトル導出処理部1206は、以上に説明した方法によって、第1スペクトル情報から撮影照明情報を導出し、第2スペクトル情報から被写体スペクトル情報を導出する。そして、被写体スペクトル情報および撮影照明情報を被写体情報導出部1208内の分光反射スペクトル導出部1212に出力する。スペクトル導出処理部1206はまた、撮影照明情報を色変換処理部1210内の色変換データ作成部1216に出力する。
【0144】
分光反射スペクトル導出部1212は、被写体スペクトル情報を撮影照明情報で正規化する(除する)処理を行い、分光反射スペクトルを導出して被写体統計データ導出部1214に出力する。被写体統計データ導出部1214は、被写体の分光反射スペクトルをもとに被写体統計データを導出する。
【0145】
ところで、被写体統計データとは、RGB3バンドの画像データ等、限られた色情報の画像データから、より高精度の色再現を行う際に参照される情報である。被写体統計データを参照することにより、被写体の色がどのような分光特性を有しているかを知ることができる。この被写体統計データは、予め予想される被写体に対して前もって分光特性を計測し、生成しておくことも可能である。
【0146】
前もって分光特性を計測する場合、分光計などを用いて380nmから780nmまでの可視光範囲で高精度に測定することも可能である。例えば、皮膚科での診察に応用する場合、前もって肌の分光特性を計測しておくことができる。そして、上皮組織のメラニン、皮膚の下を流れる血液のヘモグロビンといった物質に由来する分光特性を被写体統計情報として蓄積することにより、高精度の色再現処理を行うことが可能となる。
【0147】
一方、本実施の形態では、撮影が行われたときの情報をもとに被写体統計データがその場で生成される。本実施の形態のように15バンドのカラーセンサを用いた場合、被写体統計データの精度を高めることは難しいが、被写体統計データを用いない場合と比較すると色再現精度を向上させることが可能となる。また、撮影対象の被写体が何であるかを撮影者または画像処理装置のユーザが設定可能に構成されていてもよい。その情報も加味することにより、被写体統計データの精度を高め、その結果として色再現精度を向上させることが可能となる。
【0148】
色変換データ作成部1216は、スペクトル導出処理部1206から撮影照明情報を、被写体情報導出部1208(被写体統計データ導出部1214)から被写体統計データを入力して色変換データを作成する処理を行う。ところで、色変換処理部1210には、撮像部分光感度、観察環境照明光源スペクトル、出力機器色空間、モニタ色特性、観察者等色関数に関する情報が入力される。
【0149】
撮像部分光感度の情報は、カメラ500の分光感度特性に関する情報を含む。この撮像部分光感度の情報には撮影光学系404の分光透過特性も反映されているものとする。観察環境照明光源スペクトルは、画像を表示するモニタの設置される環境を照明している光源(観察環境照明光源)のスペクトルに関する情報を含む。出力機器色空間の情報は、画像を表示するモニタの色空間に関する情報を含む。モニタ色特性の情報は、モニタの色再現特性に関する情報(モニタプロファイル)を含む。
【0150】
観察者等色関数の情報は、画像を観視する観察者の視感度(分光感度)に関する情報を含む。すなわち、人間の視覚系の分光感度はCIEによって標準が定められているが、この分光感度には個人差がある。この個人差が無視できない応用形態においては、各個人の分光感度に対応して等色関数の形態で表現したものが観察者等色関数として画像処理装置1200内に記憶され、色変換データ作成部1216に入力される。
【0151】
色変換データ作成部1216は、撮影照明情報、被写体統計データとともに上記の情報を用いて色変換マトリクスやルックアップテーブル等の色変換データを生成し、出力デバイス色変換部1218に出力する。出力デバイス色変換部1218は、色変換データを用いて画像データに色変換の処理をし、変換後画像データを生成する。この変換後画像データは、ディスプレイモニタ等に出力される。
【0152】
以上では、一つの画像に対応して一つの被写体統計データが生成される例について説明した。しかし、一つの画像中には様々な分光反射特性を有する被写体が写っている可能性がある。それらの被写体に一様の被写体統計データを適用すると、一つの画像中に存在する被写体によっては望ましい色再現ができない可能性もある。しかし、被写体の肌の色を高精度に再現したり、商品カタログ中の服の色を高精度に再現したりする用途においては十分な効果を発揮する。
【0153】
上記の被写体統計データに関して、センサモジュールに備えられるセンサブロックの数を多くすることが可能であれば、撮影範囲内を複数の領域に分割して、分割された領域ごとに被写体統計データを生成することも可能である。そのようにすることにより、一つの画像内に異なる分光反射特性を有する被写体が写っていても、それらの分光反射特性に対応して高精度の色再現が可能となる。
【0154】
本発明の第4の実施の形態によれば、以上に説明したように、撮影条件情報に基づいて選択されたスペクトル情報を用いて撮影照明情報と被写体統計データとが生成され、これらの撮影照明情報、被写体統計データに基づき、より高度の色再現処理が行われる。このとき、撮像部分光感度、観察環境照明光源スペクトル、出力機器色空間、モニタ色特性、観察者等色関数の各情報が参照されて色変換マトリクスが生成されるので、観察者の視感度、モニタの色再現特性、観察環境照明光の影響を減じてより高度の色再現を行うことが可能となる。
【0155】
尚、本発明の第4の実施の形態では、撮影条件情報に基づいて選択されたスペクトル情報を用いて撮影照明情報と被写体統計データとが生成され、これらの撮影照明情報、被写体統計データに基づき、より高度の色再現処理が行われている。これに対して、例えば撮影条件情報に基づいて選択されたスペクトル情報を撮影照明情報の生成にのみ用いるという構成も考えられる。この場合被写体統計データは前述のようにあらかじめ予想される被写体に対して前もって分光特性を計測して作成しておくか、ある一般的な値を用意するか、精度は落ちるものの、使用しないというような構成にするということも考えられる。被写体統計データを使用しない場合、色再現性能若干は落ちるが、それでも撮影照明情報の精度がよいので、一般的な(本発明にはよらない)画像処理に比べては依然として優位で、かつデータ量が少ない軽いシステムが得られる。さらにこのような場合にはまた、スペクトル検出装置としてスペクトル検出装置110のような一点計測式のものを用いることもできるので、スペースやコストの点で有利なシステムを提供することが出来る。
【0156】
以上の第3、第4の実施の形態において、白色点抽出処理部720、720Aは、画像中で白いもの(あるいは白色に近いもの)が写っている場所を抽出する処理を行うことについて説明した。より高度な色再現を実現するためには、より高い精度で撮影照明光のスペクトルを検出することが欠かせない。
【0157】
ここで、撮影照明光のスペクトルの検出精度をさらに高める方法について図15を参照して説明する。図15(a)は、ペンダント状の白色色標1000を身につけた被写体objを示している。この白色色標1000は、既知の分光反射率を有する反射面を備える。白色色標1000の形状や形態に関しては、様々なものとすることが可能である。例えば、医療の分野であれば、分光反射率が既知の布でできた服(白衣など)を患者に着せてもよい。また、分光反射率が既知の壁面等を背景にして被写体を撮影することも可能である。
【0158】
図10に示されるのと同様、図15(b)、図15(c)は、撮影光学系404の設定焦点距離が短めに設定された場合の例を示しており、このうち図15(b)は撮影距離が遠めに設定された場合の例を、図15(c)は撮影距離が近めに設定された場合の例を示している。
【0159】
図15(d)、図15(e)は、撮影光学系404の設定焦点距離が長めに設定された場合の例を示しており、このうち図15(d)は撮影距離が遠めに設定された場合の例を、図15(e)は撮影距離が近めに設定された場合の例を示している。
【0160】
白色点抽出処理部720、720Aは、画像中で白色色標1000の写されている位置を検出し、その位置からの光を受けるセンサブロックからの出力に基づくスペクトル情報を選択する。図15(b)、図15(c)、図15(d)、図15(e)のそれぞれにおいて、100個のセンサブロックによって検出されるエリアのうち、太い線で描かれた小さな矩形が選択されたスペクトル情報に対応するものを示している。
【0161】
上述のように、白色色標1000の分光反射率は既知であるので、撮影照明光のスペクトルをより高精度に検出することが可能となり、結果として色再現処理の精度を高めることが可能となる。
【0162】
− 第5の実施の形態 −
本発明の第5の実施の形態は、第2、第3の実施の形態と同様、図5に示されるような、カメラ500に多点計測式のスペクトル検出装置210が外付けされるものとして説明をする。カメラ500は、レンズ交換式であってもレンズ固定式であってもよい。また、撮影光学系404は、単焦点レンズであっても可変焦点距離のレンズであってもよい。カメラ内部の構成が第2の実施の形態と異なるので、以下ではカメラ500Bと称する。第5の実施の形態においても、カメラ500Bはレンズ交換式のもので、カメラ500Bに装着されている撮影光学系404は可変焦点距離のレンズであるものとして説明をする。
【0163】
図16は、多点計測式のスペクトル検出装置と、そのスペクトル検出装置が接続されるカメラと、そのカメラから伝送されたNVデータを受信して色変換処理をする色変換処理部と、色変換処理部で処理された画像データに基づく画像を表示するディスプレイモニタとを備える遠隔病理診断システムの情報処理系統の構成を概略的に説明するブロック図である。図16に示される各構成要素中、第1、第2、第3の実施の形態で説明したものと同じ構成要素については図7、図9、図11中の構成要素に付されるのと同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0164】
第5の実施の形態において、第3の実施の形態との違いは、カメラ500BがNVデータを生成し、カメラ500BとネットワークNWを介して接続される色変換処理部1602にNVデータを送信可能に構成される点である。そして、このNVデータを色変換処理部1602が受信して色変換処理を行い、ディスプレイモニタ1606に出力する。
【0165】
ここでNVデータについて説明する。3よりも多いバンド数、例えば6バンド、16バンドといったバンド数の色情報を有する画像データをもとに生成される表示画像を、3よりも多い表示原色数、例えば6原色を有する多原色表示装置に表示する技術が開発されている。この技術はナチュラルビジョンと称され、今までに数多くの研究成果が報告されている。
【0166】
ナチュラルビジョンの技術の応用が期待される分野の一つが医療分野である。例えば、離島にいる患者の皮膚や病理組織のサンプルを撮影して画像データを伝送し、遠隔地にいる医師が表示画像を観察して診断する、遠隔病理診断などへの応用が可能である。その際に、より正確に色再現された画像を医師が観察することにより、的確な診断を下すことが可能となる。
【0167】
色再現性に優れた画像データを伝送する際のフォーマットとして、ナチュラルビジョンフォーマットが以下の文献で提案されている。
ナチュラルビジョン(次世代映像表示・伝送システム)の研究開発プロジェクト、”平成16年度 ナチュラルビジョンの研究開発プロジェクト[動画](次世代映像表示・伝送システム)研究開発報告書”、平成17年3月31日、独立行政法人情報通信研究機構(拠点研究推進部門)、インターネット<URL : http://www2.nict.go.jp/q/q262/3107/end102/NVHP(new)/index-j.html>
上記のナチュラルビジョンフォーマットに従って生成・記憶されたデータを本明細書においてはNVデータと称する。本実施の形態においては、撮像部700は3バンド以上の画像データを出力可能なものを利用可能である。一方、スペクトル検出装置210は、集光レンズ202によって集光された被写界からの光を、撮像部700で色分解可能な色数よりも多い色数で色分解可能なカラーセンサを有するセンサモジュール206からの出力をもとにスペクトル情報を生成する。このスペクトル情報のバンド数は、撮像部700から出力される画像データのバンド数を上回るように仕様が定められる。
【0168】
カメラ500Bは、撮像部700と、撮影条件情報取得部710と、色再現処理方法決定部712Cと、スペクトル情報入力部714Aと、スペクトル情報抽出部718と、白色点抽出処理部720と、スペクトル導出処理部1206Aと、被写体情報導出部1208Aと、NVデータ生成部1600とを有する。
【0169】
色再現処理方法決定部712Cは、撮影条件情報取得部710から画角、撮影距離に関する情報を含む撮影条件情報を入力する。色再現処理方法決定部712Cはまた、白色点抽出処理部720から白色点位置情報を入力する。入力したこれらの情報に基づき、色再現処理方法決定部712Cは、スペクトル検出装置210から入力した複数のスペクトル情報SPDi(j)の中から参照すべきスペクトル情報を決定する。
【0170】
色再現処理方法決定部712Cで決定されるスペクトル情報は、第4の実施の形態で説明した第1スペクトル情報および第2スペクトル情報である。すなわち、被写体中の白色点からの光を受光するセンサブロックからの出力をもとに得られたスペクトル情報が第1スペクトル情報である。そして、被写体(撮影範囲)中の、白色点以外の部分からの光を受光するセンサブロックからの出力をもとに得られたスペクトル情報が第2スペクトル情報である。
【0171】
色再現処理方法決定部712Cで決定された第1スペクトル情報、第2スペクトル情報を特定するスペクトル選択情報がスペクトル情報抽出部718に出力される。スペクトル情報抽出部718は、スペクトル選択情報で指定される第1スペクトル情報および第2スペクトル情報をスペクトル導出処理部1206Aに出力する。スペクトル導出処理部1206Aは、第1スペクトル情報に基づき、撮影照明情報を導出してNVデータ生成部1600に出力する。すなわち、被写体中の白い部分で反射された光を受けて得られた第1スペクトル情報に基づいて導出される撮影照明情報は、撮影照明光の分光スペクトルを特定可能な情報である。
【0172】
スペクトル導出処理部1206Aはまた、第2スペクトル情報に基づき、被写体スペクトル情報を導出する。すなわち、第4の実施の形態で図14を参照して説明したのと同様の方法により、スペクトル導出処理部1206Aは第2スペクトル情報中から被写体色由来の情報を抽出して被写体スペクトル情報を導出する。
【0173】
被写体情報導出部1208Aは、スペクトル導出処理部1206Aから入力した被写体スペクトル情報に基づき、被写体統計データを生成してNVデータ生成部1600に出力する。ところで、被写体情報導出部1208Aで導出される被写体統計データは、第4の実施の形態で説明したように被写体表面の分光反射特性に基づくものとすることも可能であるが、第5の実施の形態において被写体統計データは撮影照明光で照明された被写体表面の色に基づくものであるとする。つまり、被写体情報導出部1208Aは、第4の実施の形態における被写体情報導出部1208とは異なり、被写体スペクトル情報を撮影照明情報で正規化して被写体の分光反射率を導出することは行わない。代わりに、撮影照明光によって照明された被写体表面の色に基づいて被写体統計データを導出する。
【0174】
NVデータ生成部1600は、カメラ500B内に予め記憶されている、撮像部700の分光感度情報を読み出す。この撮像部700の分光感度情報には、撮影光学系404の分光透過特性に関する情報も含まれていることが望ましい。NVデータ生成部1600は、撮像部700から出力されるRAW画像データに上述した撮影照明情報、被写体統計データ、撮像部分光感度情報を付加してNVデータを生成する。
【0175】
このNVデータは、ネットワークNWを介してカメラ500Bと接続された色変換処理部1602に伝送される。ネットワークNWは、LANであってもWANであってもよく、有線、無線の別を問わない。また、ネットワークNWを介することなく、カメラ500Bと色変換処理部1602とがケーブルや無線通信手段を介して接続されていてもよい。またNVデータは、ファイル化して伝送されても、いわゆるストリーミングの方式で伝送されてもよい。
【0176】
色変換処理部1602は、カメラ500Bから受信したNVデータを処理してディスプレイモニタ1606に出力する。このとき、色変換処理部1602は、後で詳しく説明するように、ディスプレイモニタ1606の設置される環境を照明する環境を照明する照明装置ILMの分光放射輝度特性、ディスプレイモニタ1606の色再現特性、観察者obsの視感度に対応して色変換処理を行う。
【0177】
図17は、色変換処理部1602の内部構成を概略的に説明するブロック図である。色変換処理部1602には、スペクトルセンサ1604とディスプレイモニタ1606とが接続される。スペクトルセンサ1604は、ディスプレイモニタ1606の設置される環境を照明する照明光ILM(図16)の分光放射輝度特性と、ディスプレイモニタ1606の色再現特性とを計測可能に構成される。
【0178】
ディスプレイモニタ1606の色再現特性の計測は、例えば一日の中でディスプレイモニタ1606の電源を最初に投入してから所定の時間、例えば30分経過した後等に行う。照明光ILMの分光放射輝度特性は、所定の時間間隔、例えば60秒、5分、1時間等の時間間隔で行う。スペクトルセンサ1604は、上記計測を行った後、観察光源スペクトル情報を色変換マトリクス生成部1614に出力し、モニタ色特性情報をモニタプロファイル生成部1616に出力する。観察光源スペクトル情報は、照明装置ILMの分光放射輝度特性に関連する情報である。モニタ色特性情報は、ディスプレイモニタ1606に既定の映像信号を入力したときにディスプレイモニタ1606に表示される色の特性を特定可能な情報である。
【0179】
色変換処理部1602はコンピュータと、このコンピュータによって実行されるソフトウェアとによって構成されていてもよいし、専用のハードウェアによって構成されていてもよい。色変換処理部1602はまた、ディスプレイモニタ1606に内蔵されていても、セットトップボックスのような形態でディスプレイモニタ1606に外付けされてもよい。また、スペクトルセンサ1604は、色変換処理部1602に内蔵されていてもよい。以下では、色変換処理部1602がディスプレイモニタ1606に接続されるセットトップボックスであるものとして説明をする。
【0180】
色変換処理部1602は、信号分離部1610と、色変換データ作成部1612と、出力デバイス色変換部1618とを有する。色変換データ作成部1612は、色変換マトリクス生成部1614とモニタプロファイル生成部1616とを有する。出力デバイス色変換部1618は、マトリクス作用部1620とプロファイル作用部1622とを有する。
【0181】
信号分離部1610は、ネットワークNWを介してカメラ500Bから伝送されるNVデータから被写体統計データ、撮影照明情報、撮像部分光感度情報、画像データを抽出する。これらのうち、被写体統計データ、撮影照明情報、撮像部分光感度情報が色変換マトリクス生成部1614に出力され、画像データがマトリクス作用部1620に出力される。なお、NVデータはRAW画像データを含むものであることについて先に説明したが、このRAW画像データは信号分離部1610にて現像処理されるものとする。
【0182】
色変換マトリクス生成部1614は、信号分離部1610から上記被写体統計データ、撮影照明情報、撮像部分光感度情報を入力し、スペクトルセンサ1604から観察光源スペクトル情報を入力する。また、色変換処理部1602には観察者obsの視感度に関連する情報である観察者等色関数情報が予め入力されて記憶されており、色変換マトリクス生成部1614はこの観察者等色関数情報も入力する。この観察者等色関数情報は、第4の実施の形態で説明したものと同じであるので説明を省略する。
【0183】
色変換マトリクス生成部1614は、上述した観察光源スペクトル情報、被写体統計データ、撮影照明情報、撮像部分光感度情報、観察者等色関数情報に基づいて色変換マトリクスを生成してマトリクス作用部1620に出力する。
【0184】
モニタプロファイル生成部1616は、スペクトルセンサ1604からモニタ色特性情報を入力する。モニタプロファイル生成部1616はまた、出力色空間情報を入力する。この出力色空間情報は、ディスプレイモニタ1606の色空間を規定する情報である。例えば、ディスプレイモニタ1606がR(赤)G(緑)B(青)O(橙)C(水色)P(紫)の6原色入力のものである場合や、Adobe RGB(登録商標)等に準拠したものである場合、これらの色空間規格に対応する情報をモニタプロファイル生成部1616は入力する。この出力色空間情報は、色変換処理部1602に予め入力されて記憶されていてもよいし、ディスプレイモニタ1606から入力されてもよい。
【0185】
モニタプロファイル生成部1616は、入力したモニタ色特性情報と出力色空間情報とに基づいてモニタプロファイルを生成し、プロファイル作用部1622に出力する。このモニタプロファイルは、ルックアップテーブルおよびマトリクスのうち、少なくともいずれかとすることができる。
【0186】
信号分離部1610で抽出され、現像された画像データは出力デバイス色変換部1618に入力され、色変換マトリクス生成部で生成された色変換マトリクスが作用される。その結果、画像データはXYZ信号(測色値信号)に変換されてプロファイル作用部1622に入力される。プロファイル作用部1622では、入力されたXYZ信号に対してモニタプロファイル生成部1616で生成されたモニタプロファイルが作用される。そして、出力デバイス色変換部1618からディスプレイモニタ1606に信号が出力され、ディスプレイモニタ1606上には高度に色再現された画像が表示される。
【0187】
以上、第5の実施の形態によれば、いわゆる照明変換の処理が行われて、被写体があたかも観察者obsの眼の前にあって、照明光ILMによって照明されているかのような画像がディスプレイモニタ1606に表示される。また、環境光順応やディスプレイモニタの管面反射の影響(ディスプレイモニタに同じ色の画像が表示されていても照明光ILMの分光特性が変わると、ディスプレイモニタに表示される画像の色が異なる色に感じられてしまうこと)を減じることが可能となる。その結果、観察者objは被写体の色を正確に把握することが可能となる。
【0188】
− 第6の実施の形態 −
本発明の第6の実施の形態は、第2、第3の実施の形態と同様、図5に示されるような、カメラ500に多点計測式のスペクトル検出装置210が外付けされるものとして説明をする。カメラ500は、レンズ交換式であってもレンズ固定式であってもよい。また、撮影光学系404は、単焦点レンズであっても可変焦点距離のレンズであってもよい。カメラ内部の構成が第2の実施の形態や第5の実施の形態と異なるので、以下ではカメラ500Cと称する。
【0189】
第6の実施の形態においても、カメラ500Cはレンズ交換式のもので、カメラ500Cに装着されている撮影光学系404は可変焦点距離のレンズであるものとして説明をする。また、スペクトル検出装置内部の構成が図9や図11等に示されるものと異なるので、以下ではスペクトル検出装置210Aと称する。
【0190】
図18は、スペクトル検出装置210Aおよびカメラ500Cの情報処理系統の構成を概略的に説明するブロック図である。図18に示される各構成要素中、第1、第2、第3、第5の実施の形態で説明したものと同じ構成要素については図7、図9、図11、図16中の構成要素に付されるのと同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0191】
スペクトル検出装置210Aは、集光レンズ202と、センサモジュール206と、データメモリ120Aと、スペクトル推定処理部122Aと、RTC(リアルタイムクロック)1800と、スペクトル情報記憶部1802とを備える。センサモジュール206で1回の計測が行われると、センサモジュール206中の全センサブロックから出力されるセンサデータSD(k)がデータメモリ120Aに記憶される。
【0192】
スペクトル推定処理部122Aは、データメモリ120AからセンサデータSDi(k)を読み出し、センサデータSDi(k)をもとにスペクトル推定処理を行い、スペクトル情報SPDi(j)を生成する。このとき、1回の計測に対応して全てのセンサブロックから出力されるセンサデータSDi(k)のそれぞれに対応してスペクトル情報SPDi(j)が生成される。このように、1回の計測で得られた全てのセンサブロックそれぞれに対応するスペクトル情報SPDi(j)の集まりを本明細書ではスペクトル情報セットと称する。
【0193】
RTC1800は、スペクトル検出装置210Aの電源のオン/オフに拘わらず動作し続けて現在の日時を刻み続ける。RTC1800は、日時に加えて年月も管理可能に構成されることが望ましい。
【0194】
スペクトル検出装置210Aで1回のスペクトル検出が行われる度に、スペクトル推定処理部122Aで一組のスペクトル情報セットが生成される。スペクトル情報記憶部1802には、このスペクトル情報セットに、当該スペクトル情報セットを得るためのスペクトル検出がスペクトル検出装置210Aで行われたときの日時を導出可能な検出日時情報が付加されて記憶される。
【0195】
スペクトル検出装置210Aは、以下の2つのスペクトル検出動作モードを有していていずれかのモードをユーザが選択可能に構成される。すなわち、一つは撮影同期検出方式のスペクトル検出動作モードであり、もう一つは一定間隔検出方式のスペクトル検出動作モードである。
【0196】
撮影同期検出方式のスペクトル検出動作モードは、カメラ500Cで撮影が行われるタイミングに同期してスペクトル検出を行う動作モードである。例えば、カメラ500Cで撮影が行われるタイミングを、フラッシュシンクロ接点等を介して検出可能な場合、撮影同期検出方式でスペクトル検出動作が行われる。図18はその例を示している。
【0197】
一定間隔検出方式のスペクトル検出動作モードは、略一定の時間間隔、例えば10秒、30秒といった時間間隔でスペクトル検出を繰り返し行う動作モードである。例えば、カメラ500Cがフラッシュシンクロ接点を有していないか、あるいは撮影が行われるタイミングを知ることのできる信号を出力可能に構成されていない場合、一定間隔検出方式でのスペクトル検出動作が行われる。
【0198】
上述したいずれのスペクトル検出動作モードにおいても、生成されたスペクトル情報セットにRTC1800から出力された日時情報に基づいて生成された検出日時情報が付加され、スペクトル情報データログとしてスペクトル情報記憶部1802に記憶される。すなわち、スペクトル情報データログは、検出日時情報の付加されたスペクトル情報セットが時系列に蓄積されたものである。
【0199】
カメラ500Cは、撮像部700と、撮影条件情報取得部710と、画像ファイル記憶部1812と、RTC1810とを備える。RTC1810は、カメラ500Cの電源のオン/オフに拘わらず動作し続けて現在の日時を刻み続ける。RTC1810は、日時に加えて年月も管理可能に構成されることが望ましい。
【0200】
ところで、カメラ500Cとスペクトル検出装置210Aとの間で情報の伝達が可能に構成される場合、スペクトル検出装置210AのRTC1800を省いてもよい。そして、スペクトル検出装置210Aは、カメラ500CのRTC1810から日時に関する情報を取得して検出日時情報を生成する。
【0201】
カメラ500Cで撮影動作が行われると、撮像部700で生成された画像データに、撮影条件情報取得部710から出力された撮影条件情報と、RTC1810から出力された日時情報に基づいて生成された撮影日時情報とが付加され、画像ファイルとして画像ファイル記憶部1812に記憶される。
【0202】
図19は、画像処理装置1900の概略的構成を説明するブロック図である。画像処理装置1900は、PCおよびPC上で実行されるプログラムによって構成されたものとすることができる。図19に示される各構成要素中、第1〜第3の実施の形態で説明したものと同じ構成要素については図7、図9、図11中の構成要素に付されるのと同じ符号を付してその説明を省略する。
【0203】
第6の実施の形態において、画像処理装置1900は最初に、画像ファイル記憶部1812に記憶されている画像ファイルと、スペクトル情報記憶部1802に記憶されているスペクトル情報データログとを読み出し、以下に説明する情報関連付けの処理をする。情報関連付けの処理とは、画像ファイル中の撮影日時情報と、スペクトル情報データログ中の検出日時情報とに基づき、撮影日時と検出日時とが最も近い組み合わせとなるように画像ファイルとスペクトル情報セットとを関連付ける処理である。
【0204】
スペクトル検出装置210Aが撮影同期検出方式のスペクトル検出動作モードでスペクトル検出が行われた場合には、画像ファイルとスペクトル情報セットとの関連付けは、比較的単純な処理によって情報関連付けの処理をすることが可能である。
【0205】
一方、一定間隔検出方式のスペクトル検出動作モードでスペクトル検出が行われた場合には、撮影が行われた日時とスペクトル検出が行われた日時とは必ずしも一致しない。したがって、ある画像ファイルと関連付ける対象のスペクトル情報セットを探索する際には、その画像ファイルが生成される際に撮影が行われた日時に最も近いタイミングで検出されて得られたスペクトル情報セットを抽出する処理が行われる。
【0206】
上述した情報関連付けの処理に続き、関連付けされた画像ファイルとスペクトル情報セットとを用い、画像処理(色再現処理)が行われる。このときに、画像ファイルに付加される撮影条件情報に基づき、スペクトル情報と、画像ファイル中の画像データを分析した結果とのうち、すくなくともいずれかを参照して色再現処理を行うように決定される。
【0207】
スペクトル情報を参照する際には、スペクトル情報セットに含まれる複数のスペクトル情報のうち、参照する対象となるスペクトル情報が撮影条件情報に基づいて1または複数が選択される。
【0208】
画像処理装置1900について図19を参照して説明する。画像処理装置1900は、画像ファイル読み出し部1902と、情報関連付け部1904と、スペクトル情報読み出し部1906と、色温度検出部702Aと、第1光源検出部704と、白色点抽出処理部
720Bと、色再現処理方法決定部712Dと、スペクトル情報抽出部718Aと、第2光源検出部716Aと、画像処理部706Bとを有する。
【0209】
画像ファイル読み出し部1902は、画像ファイル記憶部1812に記憶される画像ファイルを一つずつ、あるは一回の読み出し動作で複数の画像ファイルを読み出す。本実施の形態において画像ファイル記憶部1812はカメラ500Cに内蔵されるメモリ、あるいはカメラ500Cに着脱自在に装着されるメモリカードであるものとする。
【0210】
画像ファイル記憶部1812がカメラ500Cに内蔵されるメモリである場合、カメラ500Cと画像処理装置1900とは有線または無線の形態で接続され、画像ファイル読み出し部1902はカメラ500Cから転送される画像ファイルを受信する。
【0211】
画像ファイル記憶部1812がメモリカードである場合、カメラ500Cから取り外されたメモリカードが、画像処理装置1900に備えられるメモリカードリーダに装着され、画像ファイル読み出し部1902はメモリカードから画像ファイルを読み出す。
【0212】
画像ファイル読み出し部1902は、受信した、あるいは読み出した画像ファイルから画像データ、撮影日時情報、および撮影条件情報を抽出する。画像ファイルがRAW画像データを含む場合、画像ファイル読み出し部1902は現像処理も行う。そして、画像データを画像処理部706B、色温度検出部702A、白色点抽出処理部720Bに、撮影条件情報を色再現処理方法決定部712Dに、撮影日時情報を情報関連付け部1904に、それぞれ出力する。
【0213】
スペクトル情報読み出し部1906は、スペクトル情報記憶部1802に記憶されるスペクトル情報データログを読み出す。本実施の形態においてスペクトル情報記憶部1802はスペクトル検出装置210Aに内蔵されるメモリ、あるいはスペクトル検出装置210Aに着脱自在に装着されるメモリカードであるものとする。
【0214】
スペクトル情報記憶部1802がスペクトル検出装置210Aに内蔵されるメモリである場合、スペクトル検出装置210Aと画像処理装置1900とは有線または無線の形態で接続され、スペクトル情報読み出し部1906はスペクトル検出装置210Aから転送されるスペクトル情報データログを受信する。
【0215】
スペクトル情報記憶部1802がメモリカードである場合、スペクトル検出装置210Aから取り外されたメモリカードが、画像処理装置1900に備えられるメモリカードリーダに装着され、スペクトル情報読み出し部1906はメモリカードからスペクトル情報データログを読み出す。
【0216】
スペクトル情報読み出し部1906は、受信または読み出したスペクトル情報データログから検出日時情報およびスペクトル情報セットを抽出する。そして検出日時情を情報関連付け部1904に出力する。
【0217】
情報関連付け部1904は、画像ファイル読み出し部1902から入力した撮影日時情報とスペクトル情報読み出し部1906から入力した検出日時情報とに基づき、画像ファイルとスペクトル情報セットとを関連付ける処理である情報関連付け処理を行う。つまり、画像ファイル読み出し部1902で受信した、あるいは読み出したある画像ファイルに対し、この画像ファイルが生成される際にカメラ500Cで撮影が行われたタイミングに最も近いタイミングにおいてスペクトル検出装置210Aで検出して生成されたスペクトル情報セットを特定し、これらの画像ファイルとスペクトル情報セットとを関連付ける処理を行う。情報関連付け部1904は、画像ファイル読み出し部1902で受信または読み出したすべての画像ファイルに対して上述した情報関連付け処理を行う。
【0218】
情報関連付け部1904は、画像ファイル読み出し部1902に対し、上記情報関連付け処理によって得られた関連付け情報を出力する。この関連付け情報は、画像ファイルとスペクトル情報セットとを関連付けする情報である。画像ファイル読み出し部1902は、画像ファイル中に上記関連付け情報を付加する。あるいは、画像ファイル読み出し部1902は、上記関連付け情報に対応するスペクトル情報セットをスペクトル情報読み出し部1906から取得して画像ファイル中に付加することも可能である。
【0219】
なお、上述した画像ファイル読み出し部1902、情報関連付け部1904、スペクトル情報読み出し部1906についてはスペクトル検出装置210A内に内蔵することも可能である。この場合、画像ファイルを記憶したメモリカードをカメラ500Cから取り出してスペクトル検出装置210Aに備えられるコネクタにメモリカードを挿入することにより、上記情報関連付けの処理が行われる。
【0220】
色温度検出部702Aは、画像ファイル読み出し部1902から出力された画像データを処理し、撮影時に被写体を照明していた撮影照明光の色温度を推定する処理を行う。この、撮影照明光の色温度を推定する処理は第1の実施の形態中の色温度検出部702(図7)で行われる処理と同様であるのでその説明を省略する。
【0221】
第1光源検出部704は、色温度検出部702Aから入力した撮影照明光の色温度情報に基づき、撮影照明光の種類を特定する。第1光源検出部704で特定可能な撮影照明光の種類としては、第1の実施の形態で説明したのと同様、晴天太陽光、曇天、タングステン灯、白色蛍光灯、昼光色蛍光灯などがある。
【0222】
白色点抽出処理部720Bは、画像ファイル読み出し部1902から出力される画像データにより生成される画像中に含まれる白色部分を抽出する処理を行う。この白色部分を抽出する処理については第3の実施の形態中の白色点抽出処理部720(図11)で行われる処理と同様であるのでその説明を省略する。
【0223】
色再現処理方法決定部712Dは、画像ファイル読み出し部1902から入力した撮影条件情報と、白色点抽出処理部720Bから入力した白色点位置情報とに基づき、撮影スペクトル情報と、画像データを分析した結果とのうち、少なくともいずれかに基づいて色再現処理を行うように決定する。
【0224】
スペクトル情報を参照する際に、色再現処理方法決定部712Dは画像ファイル読み出し部1902から入力した関連づけ情報をスペクトル情報抽出部718Aに出力する。色再現処理方法決定部712Dはまた、複数のスペクトル情報SPD1(j)、SPD2(j)、… のうち、参照する対象のスペクトル情報を撮影条件情報と白色点位置情報とに基づいて選択する。色再現処理方法決定部712Dは、この選択結果に対応する情報であるスペクトル選択情報をスペクトル情報抽出部718Aに出力する。色再現処理方法決定部712Dは、選択したスペクトル情報と、画像データを分析した結果とのうち、少なくともいずれかを参照して色再現処理を行うように決定する。
【0225】
色再現処理方法決定部712Dでスペクトル情報が選択される際の方法については第3の実施の形態で図6や図10を参照して説明したものと同様とすることが可能である。このとき、図6に示される寸法Dについては、ユーザが画像処理装置1900に備えられるキーボードやコンピュータマウス等を操作して入力することが可能に構成されていてもよいし、撮影に用いられるカメラ500Cの機種名とそれに対応する寸法Dとの関係が予め画像処理装置1900内に記憶されていてもよい。その場合、画像ファイル中のタグ情報に含まれる機種名情報に基づいて対応する寸法Dの情報を読み出すことができる。
【0226】
また、第3の実施の形態でも説明したとおり、被写体中の白色点(白いものが写っている領域)からの光を受光するセンサブロックが存在する場合、そのセンサブロックからの出力をもとに得られるスペクトル情報は撮影照明光の分光放射輝度をより正確に反映したものとなる。したがって、色再現処理方法決定部712Dは、被写体中の白色点からの光を受光するセンサブロックからのスペクトル情報を選択するように決定することが望ましい。
【0227】
スペクトル情報抽出部718Aは、スペクトル情報読み出し部1906が受信または読み出したスペクトル情報データログ中、関連づけ情報で特定されるスペクトル情報セットを抽出する。スペクトル情報抽出部718Aはさらに、抽出されたスペクトル情報セット中からスペクトル選択情報で特定される一または複数のスペクトル情報を抽出して第2光源検出部716Aに出力する。
【0228】
第2光源検出部716Aは、スペクトル情報抽出部718Aから入力したスペクトル情報をもとに、撮影照明光の種類を特定する処理を行う。第2光源検出部716Aにおける撮影照明光の種類特定の処理は、第1の実施の形態で説明した第2光源検出部716での処理と同様であるので説明を省略する。
【0229】
色再現処理方法決定部712Dは、上述したスペクトル情報選択の処理の他に、第1の実施の形態で図8を参照して説明した色再現処理方法決定の処理も行う。この処理の詳細については第1、第2の実施の形態で説明したので説明を省略する。
【0230】
画像処理部706Bは、画像ファイル読み出し部1902から入力された画像データに対し、色再現処理方法決定部712Dで決定された色再現処理1から4のうちのいずれかによって色再現処理を行う。画像処理部706Bで行われる色再現処理としては、画像データに対して色バランスを調節する処理とすることが可能である。
【0231】
以上では、画像処理装置1900が、PCおよびPC上で実行されるプログラムによって構成されたものである例について説明した。しかし、この画像処理装置1900はカメラ500C内に備えられていても、スペクトル検出装置210A内に設けられていてもよい。
【0232】
画像処理装置1900がカメラ500C内に設けられる場合、カメラ500Cおよびスペクトル検出装置210Aの双方には有線または無線の形態で互いに接続し、情報の授受が可能な通信部を備えるものとする。撮影動作中、カメラ500Cとスペクトル検出装置210Aとは電気的に接続されていなくてもよい。そして、カメラ500Cとスペクトル検出装置210Aとを、ユーザが上記通信部を介して接続したときに、スペクトル情報読み出し部1906がスペクトル検出装置210Aからスペクトル情報データログを受信する。そして画像処理装置1900が上述した処理を行うことが可能である。
【0233】
画像処理装置1900がスペクトル検出装置210A内に設けられる場合、スペクトル検出装置210Aにメモリカードを接続するためのコネクタ等を備えるものとする。そして、画像ファイルを記憶したメモリカードがカメラ500Cから取り外されてスペクトル検出装置210Aのコネクタに接続されたときに、画像処理装置1900が上述した処理を行うことが可能である。
【0234】
以上に説明したように、本発明の第6の実施の形態によれば、カメラ500Cで撮影が行われているとき、外光式のスペクトル検出装置210Aとカメラ500Cとは電気的に接続されている必要が無い。したがって、カメラ500Cが例えば旧製品で、スペクトル検出装置210Aからのスペクトル情報を用いることを想定した仕様を有していなくても、より高度の色再現が可能となる。
【0235】
また、例えばカメラ500Cが早いコマ速での連続撮影機能を有している場合等で、色再現処理が連続撮影の速度に追いつかないような場合、カメラ500Cでの撮影動作中にスペクトル検出装置210Aで逐次スペクトル検出が行われてスペクトル情報データログが生成され、後処理によって高度の色再現処理を行うことが可能となる。
【0236】
以上では撮影日時情報と検出日時情報とに基づいて情報関連付けの処理をする例について説明したが、本発明はこの例に限られるものではない。例えば、カメラ500Cとスペクトル検出装置210Aとの双方にGPSセンサを有している場合、撮影時およびスペクトル検出時にGPS値を記録することが可能である。そして、画像ファイル中のGPS値とスペクトル情報セットに付加されるGPS値とが互いに最も近い組み合わせとなるように情報関連付けをすればよい。
【0237】
あるいは、カメラ500Cで撮影をしたときに、カメラ500Cのモニタディスプレイ上に画像IDが表示されるようにしてもよい。画像IDを見たユーザが、スペクトル検出装置210Aにその画像IDを入力することにより、後で情報関連付けをすることが可能となる。
【0238】
また、カメラ500Cとスペクトル検出装置210Aとの間で通信が可能に構成されている場合、カメラ500Cで撮影が行われたときにカメラ500Cから画像IDを出力することができる。スペクトル検出装置210は、受信した画像IDをスペクトル情報セットに付加する。このようにすることにより、後で情報関連付けの処理をすることが可能となる。
【0239】
カメラ500Cは静止画および動画のうち、少なくともいずれかを撮影可能に構成される。カメラ500Cで動画撮影が行われ、スペクトル検出装置210Aは撮影同期検出方式のスペクトル検出動作モードで動作可能な場合、以下のようにスペクトル検出動作が行われることが望ましい。
【0240】
すなわち、カメラ500Cで動画の撮影が開始されたのに同期してスペクトル検出装置210Aはスペクトル検出動作を行う。その後、カメラ500Cで動画撮影が継続して行われている間は、スペクトル検出装置210Aにおいて所定の時間間隔、たとえば5秒、10秒、30秒といった時間間隔でスペクトル検出動作が行われてスペクトル情報データログが生成される。後で動画を再生する際にスペクトル情報が参照されて色再現処理が行われる。このとき、スペクトル検出動作はカメラ500Cでの動画撮影開始後も一定の時間間隔で行われるので、撮影シーンが大きく変化するような状況でもそのシーンに応じた色再現処理を行うことが可能となる。
【0241】
以上、第1から第6の実施の形態によって本発明について説明したが、本明細書中には以下に示す態様の発明も含まれる。
【0242】
[1] 被写界中の被写体に向けられた撮影光学系によって形成される被写体像を色分解して撮影する撮像部から出力されたカラーの画像データに色再現処理をする画像処理装置であって、
前記撮影光学系で撮影が行われたときに設定されていた画角および撮影距離を導出可能な情報を含む撮影条件情報を取得する撮影条件情報取得部と、
前記撮影光学系とは異なる集光光学系によって集光された前記被写界からの光を受光し、前記撮像部で色分解可能な色数よりも多い色数で色分解して検出するカラーセンサを有して、前記カラーセンサの出力をもとにスペクトル情報を出力する外光式スペクトル検出装置から出力される前記スペクトル情報を入力するスペクトル情報入力部と、
前記撮影条件情報取得部で取得した撮影条件情報に基づき、前記スペクトル情報を参照するか否かを決定し、前記スペクトル情報を参照しないと決定した場合には前記スペクトル情報を参照せず、前記画像データを分析した結果に基づいて前記色再現処理を行うように決定し、前記スペクトル情報を参照すると決定した場合には、前記画像データを分析した結果と前記外光式スペクトル検出装置から出力される前記スペクトル情報とのうち、少なくとも前記スペクトル情報を参照して前記色再現処理を行うように決定する色再現処理方法決定部と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
[2] 被写界中の被写体に向けられた撮影光学系によって形成される被写体像を色分解して撮影する撮像部から出力されたカラーの画像データに色再現処理をする画像処理装置であって、
前記撮影光学系で撮影が行われたときに設定されていた画角および撮影距離を導出可能な情報を含む撮影条件情報を取得する撮影条件情報取得部と、
前記撮影光学系とは異なる集光光学系によって集光された前記被写界からの光を受光し、前記撮像部で色分解可能な色数よりも多い色数で色分解して検出するカラーセンサを複数有して、前記複数のカラーセンサそれぞれからの出力に対応して複数のスペクトル情報を出力する外光式スペクトル検出装置から出力される前記スペクトル情報を入力するスペクトル情報入力部と、
前記撮影条件情報取得部で取得した撮影条件情報に基づき、前記スペクトル情報を参照するか否かを決定し、前記スペクトル情報を参照しないと決定した場合には前記スペクトル情報を参照せず、前記画像データを分析した結果に基づいて前記色再現処理を行うように決定し、前記スペクトル情報を参照すると決定した場合には、前記複数のスペクトル情報のうち、参照する対象のスペクトル情報を前記撮影条件情報に基づいて選択し、前記選択したスペクトル情報と、前記画像データを分析した結果とのうち、少なくとも前記選択したスペクトル情報を参照して前記色再現処理を行うように決定する色再現処理方法決定部と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
[3] 被写界中の被写体に向けられた撮影光学系によって形成される被写体像を色分解して撮影する撮像部から出力されたカラーの画像データに色再現処理をする画像処理装置であって、
前記撮影光学系で撮影が行われたときに設定されていた画角および撮影距離を導出可能な撮影条件情報と、前記撮影光学系で撮影が行われたときの日時である撮影日時を導出可能な撮影日時情報とを含む付加情報を前記画像データに付加して生成される画像ファイルを記憶する画像ファイル記憶部から前記画像ファイルを読み出す画像ファイル読み出し部と、
前記撮影光学系とは異なる集光光学系によって集光された前記被写界からの光を受光し、前記撮像部で色分解可能な色数よりも多い色数で色分解して検出するカラーセンサを複数有して、前記複数のカラーセンサそれぞれから出力される複数のスペクトル情報を含むスペクトル情報セットを出力する外光式スペクトル検出装置により、前記撮影光学系で撮影が行われたタイミングに同期して、あるいは前記タイミングとは同期せずに一定の時間間隔で、スペクトル検出が行われるたびごとに出力される前記スペクトル情報セットに前記スペクトル検出が行われたときの日時であるスペクトル検出日時を導出可能な検出日時情報を付加してスペクトル情報データログとして記憶するスペクトル情報記憶部から前記スペクトル情報データログを読み出すスペクトル情報読み出し部と、
前記画像ファイル読み出し部で読み出された前記画像ファイル中の前記撮影日時情報と、前記スペクトル情報読み出し部で読み出された前記スペクトル情報データログ中の前記検出日時情報とに基づき、前記撮影日時と前記スペクトル検出日時とが最も近い組み合わせとなるように前記画像ファイルと前記スペクトル情報セットとを関連付ける情報関連付け処理部と、
前記情報関連付け処理部で関連付けされた前記画像ファイルおよび前記スペクトル情報セットを用い、前記画像ファイルに付加される前記撮影条件情報に基づき、前記スペクトル情報を参照するか否かを決定し、前記スペクトル情報を参照しないと決定した場合には前記スペクトル情報を参照せず、前記画像データを分析した結果に基づいて前記色再現処理を行うように決定し、前記スペクトル情報を参照すると決定した場合には、前記スペクトル情報セットに含まれる前記複数のスペクトル情報のうち、参照する対象となるスペクトル情報を前記撮影条件情報に基づいて1または複数選択し、前記参照する対象となるスペクトル情報と、前記画像データを分析した結果とのうち、少なくとも前記参照する対象となるスペクトル情報を参照して前記色再現処理を行うように決定する色再現処理方法決定部と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【0243】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の改良・変更が可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0244】
本発明は、ディスプレイモニタ、ディスプレイモニタに接続されるセットトップボックス、画像処理装置、スチルカメラやムービーカメラ等の撮影装置、撮影装置に装着可能なスペクトル検出装置などに適用可能である。
【符号の説明】
【0245】
102、202 …集光レンズ
104 … 拡散板
106、206 … センサモジュール
110 … 一点計測式スペクトル検出装置
122、122A … スペクトル推定処理部
210、210A … 多点計測式スペクトル検出装置
400、500、500A、500B、500C … カメラ
404 … 撮影光学系
406 … レンズ制御部
700 … 撮像部
702、702A … 色温度検出部
704 … 第1光源検出部
706、706A … 画像処理部
710 … 撮影条件取得部
712、712A、712B、712C、712D …色再現処理方法決定部
714、714A … スペクトル情報入力部
716、716A … 第2光源検出部
718、718A … スペクトル情報抽出部
720、720A、720B … 白色点抽出部
1200、1900 … 画像処理装置
1202 … 画像データ記憶部
1204 … 情報分離部
1206、1206A … スペクトル導出処理部
1208、1208A … 被写体情報導出部
1210 … 色変換処理部
1212 … 分光反射スペクトル導出部
1214 … 被写体統計データ導出部
1216 … 色変換データ作成部
1218 … 出力デバイス色変換部
1600 … NVデータ生成部
1602 … 色変換処理部
1604 … スペクトルセンサ
1606 … ディスプレイモニタ
1610 … 信号分離部
1612 … 色変換データ作成部
1614 … 色変換マトリクス生成部
1616 … モニタプロファイル生成部
1618 … 出力デバイス色変換部
1620 … マトリクス作用部
1622 … プロファイル作用部
1800、1810 … リアルタイムクロック
1802 … スペクトル情報記憶部
1812 … 画像ファイル記憶部
1902 … 画像ファイル読み出し部
1904 … 情報関連付け部
1906 … スペクトル情報読み出し部
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影時に被写体を照明していた光である撮影照明光の種類の判別または撮影照明光のスペクトルの推定を可能とする光源検出装置およびこれを含むカメラ、システムに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラのオートホワイトバランス性能や色再現性能、オートフォーカス性能を向上させるために、光源検出用のセンサを一眼レフカメラに設けるものが知られている。
【0003】
特許文献1には、カメラ外装のペンタプリズム前方に窓を設けて乳白色の拡散板を配置し、その後方に光源測光用センサを設けた一眼レフカメラが開示される。この一眼レフカメラはまた、撮影レンズを通して結像される被写体像の色を測色する(TTL測色)構成を有し、光源測光用センサからの出力と、TTL測色の結果とに基づいて被写体の色を判定し、判定された色に対応して露出補正を行う。これにより、射光式の測光方式における被写体の反射率の影響を低減する。
【0004】
特許文献2には、カメラ外装に設けられた開口に配置された拡散板の後方に光源センサを配置し、光源の種類を検出する構成が開示される。そして、検出された光源の種類に応じてTTL位相差検出式オートフォーカスの焦点検出結果に補正が加えられる。
【0005】
特許文献3には、TTL式の測光が可能な第1の測光手段および第2の測光手段を有する構成が開示される。第1の測光手段によって特定の波長域の測光が可能であり、第2の測光手段によって上記特定の波長域以外の波長域の測光が可能である。これら第1、第2の測光手段からの出力に基づき、照明光源の種別が判別され、その判別結果に基づき、自動焦点検出手段にて検出されるディフォーカス量検出結果に補正が加えられる。
【0006】
引用文献4には、カメラに設けられるアクセサリシュー部分にスポット計測式の測色計を装着し、被写体の一部分の色彩情報を得て、その色彩情報がカメラに出力される構成が開示される。測色計には、測色計の向きを検出する角度センサが設けられており、上記色彩情報とともに角度情報がカメラに出力される。カメラは、角度情報に基づき、撮影範囲内のどの部分の色彩情報が得られたかを検出可能に構成される。この色彩情報に基づき、カメラの撮像素子から得られたカラー画像データに補正処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−23215号公報
【特許文献2】特開2005−208235号公報
【特許文献3】特開2006−72084号公報
【特許文献4】特開2005−341175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1および2に開示される技術においては、光源センサが受光する光と、被写体を照明している光とが異なる場合がある。例えば、蛍光灯等の照明光が点灯している室内から屋外の被写体を撮影した場合、光源センサの検出結果は蛍光灯からの光の影響を多く受ける一方、屋外の被写体は太陽光に照らされている、という状況を生じ得る。このような状況では、望ましい撮影結果を得ることは難しい。また、光源センサは拡散光を受光する構成であるため、比較的広い範囲からの光を光源センサは受光する。その結果、被写体を照明している光以外の光も光源センサが受光する場合があり、光源センサの検出結果が、被写体を照明している光の特性と必ずしも一致しない場合がある。
【0009】
引用文献3に開示される技術では、ミラー、ハーフミラー、ペンタプリズム等の部材を有する一眼レフカメラが前提なので、いわゆるコンパクトカメラ等に適用することが難しい。また、一眼レフカメラであっても、集光レンズやセンサ等を追加して配置する必要があるため、カメラの複雑化を免れない。
【0010】
引用文献4に開示される技術では、被写体を撮影する都度、測色計の向きを調節する必要があり、動く被写体の撮影や高速の連続撮影といった用途には必ずしも適していない。
【0011】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたもので、複雑なハードウェア構成を必要とせず、また、撮影者による複雑な操作を必要とすることなく、より高度な色再現を手軽に実現可能とすることを目的とする。
【0012】
本発明のさらなる目的は、撮影をする場所と、撮影をして得られた画像を観察する場所が離れている状況であっても、撮影者や画像を観察する観察者による複雑な操作を必要とすることなく、より高度な色再現を手軽に実現可能とすることにより、精度のより高い遠隔病理診断を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1) 本発明の第1の態様によれば、被写界中の被写体に向けられた撮影光学系によって形成される被写体像を色分解して撮影する撮像部から出力されたカラーの画像データに色再現処理をする画像処理装置が、
前記撮影光学系で撮影が行われたときに設定されていた画角および撮影距離を導出可能な情報を含む撮影条件情報を取得する撮影条件情報取得部と、
前記撮影光学系とは異なる集光光学系によって集光された前記被写界からの光を受光し、前記撮像部で色分解可能な色数よりも多い色数で色分解して検出するカラーセンサを有して、前記カラーセンサの出力をもとにスペクトル情報を出力する外光式スペクトル検出装置から出力される前記スペクトル情報を入力するスペクトル情報入力部と、
前記撮影条件情報取得部で取得した撮影条件情報に基づき、前記外光式スペクトル検出装置から出力される前記スペクトル情報と、前記画像データを分析した結果とのうち、少なくともいずれかを参照して前記色再現処理を行うように決定する色再現処理方法決定部と
を備える。
(2) 本発明の第2の態様によれば、被写界中の被写体に向けられた撮影光学系によって形成される被写体像を色分解して撮影する撮像部から出力されたカラーの画像データに色再現処理をする画像処理装置が、
前記撮影光学系で撮影が行われたときに設定されていた画角および撮影距離を導出可能な情報を含む撮影条件情報を取得する撮影条件情報取得部と、
前記撮影光学系とは異なる集光光学系によって集光された前記被写界からの光を受光し、前記撮像部で色分解可能な色数よりも多い色数で色分解して検出するカラーセンサを複数有して、前記複数のカラーセンサそれぞれからの出力に対応して複数のスペクトル情報を出力する外光式スペクトル検出装置から出力される前記スペクトル情報を入力するスペクトル情報入力部と、
前記撮影条件情報取得部で取得した撮影条件情報に基づき、前記外光式スペクトル検出装置から出力される前記スペクトル情報と、前記画像データを分析した結果とのうち、少なくともいずれかを参照して前記色再現処理を行うように決定する色再現処理方法決定部と
を備える。
(3) 本発明の第3の態様によれば、被写界中の被写体に向けられた撮影光学系によって形成される被写体像を色分解して撮影する撮像部から出力されたカラーの画像データに色再現処理をする画像処理装置が、
前記撮影光学系で撮影が行われたときに設定されていた画角および撮影距離を導出可能な撮影条件情報を含む付加情報を前記画像データに付加して生成される画像ファイルを記憶する画像ファイル記憶部から前記画像ファイルを読み出す画像ファイル読み出し部と、
前記撮影光学系とは異なる集光光学系によって集光された前記被写界からの光を受光し、前記撮像部で色分解可能な色数よりも多い色数で色分解して検出するカラーセンサを複数有して、前記複数のカラーセンサそれぞれから出力される複数のスペクトル情報を含むスペクトル情報セットを出力する外光式スペクトル検出装置により、前記撮影光学系で撮影が行われたタイミングに同期して、あるいは前記タイミングとは同期せずに一定の時間間隔で、スペクトル検出が行われるたびごとに出力される前記スペクトル情報セットがスペクトル情報データログとして記憶されるスペクトル情報記憶部から前記スペクトル情報データログを読み出すスペクトル情報読み出し部と、
前記画像ファイル読み出し部で読み出された前記画像ファイルと、前記スペクトル情報読み出し部で読み出された前記スペクトル情報データログ中に含まれるスペクトル情報セットのうちの前記画像ファイルに対応するものとを関連付ける情報関連付け処理部と、
前記情報関連付け処理部で関連付けされた前記スペクトル情報セットに含まれる前記複数のスペクトル情報のうち、前記撮影条件情報に基づいて選択された1または複数のスペクトル情報と、前記画像データを分析した結果とのうち、前記撮影条件情報に基づいて少なくともいずれかを参照して前記色再現処理を行うように決定する色再現処理方法決定部と
を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、比較的単純なスペクトル検出装置の構成で、撮影に際して煩雑な操作を必要とせず、より高度の色再現が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】外光式で一点計測式のスペクトル検出装置の光学的構成を概略的に示す図である。
【図2】外光式で多点計測式のスペクトル検出装置の光学的構成を概略的に示す図である。
【図3】複数のカラーセンサのそれぞれが有する分光感度特性の一例を示す図である。
【図4】外光式のスペクトル検出装置をカメラに内蔵する実施形態の一例を示す外観斜視図である。
【図5】外光式で外付け式のスペクトル検出装置をカメラに装着する実施形態の一例を示す外観斜視図であり、図5(a)はカメラにスペクトル検出装置を取り付けた状態を示す図であり、図5(b)はスペクトル検出装置を外したカメラの外観を部分的に示す図である。
【図6】外光式スペクトル検出装置のセンサ受光範囲と、撮影範囲との関係が撮影光学系の画角や撮影距離を変えることによって変化する様子を概念的に説明する図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態を説明する図であり、一点計測式のスペクトル検出装置が内蔵されるカメラの情報処理系統の構成を概略的に説明するブロック図である。
【図8】色再現処理方法決定部で行われる色再現処理方法決定処理の内容をまとめた表である。
【図9】本発明の第2の実施の形態を説明する図であり、多点計測式のスペクトル検出装置およびこのスペクトル検出装置が接続されるカメラの情報処理系統の構成を概略的に説明するブロック図である。
【図10】多点式のスペクトル検出装置のセンサ受光範囲と撮影光学系の撮影範囲との関係を概念的に示す図であり、図10(a)は撮影光学系の焦点距離が広角側に設定され、撮影距離がより遠い状態に設定される例を、図10(b)は撮影光学系の焦点距離が広角側に設定され、撮影距離がより近い状態に設定される例を、図10(c)は撮影光学系の焦点距離が望遠側に設定され、撮影距離がより遠い状態に設定される例を、図10(d)は撮影光学系の焦点距離が望遠側に設定され、撮影距離がより近い状態に設定される例を、それぞれ示す図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態を説明する図であり、多点計測式のスペクトル検出装置およびこのスペクトル検出装置が接続されるカメラの情報処理系統の構成を概略的に説明するブロック図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態を説明する図であり、撮影情報およびスペクトル情報の付加された画像データに色再現処理をする画像処理装置の情報処理系統の構成を概略的に説明するブロック図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態に係る画像処理装置内の被写体情報導出部および色変換処理部の情報処理系統の構成をより詳細に説明するブロック図である。
【図14】スペクトル情報抽出部から得られるスペクトル情報をn次元空間座標系にプロットした様子を示す概念図である。
【図15】本発明の第3および第4の実施の形態の変形例を説明する図であり、スペクトル検出装置のセンサ受光範囲と撮影光学系の撮影範囲との関係を概念的に示し、図15(a)はペンダント状の白色色標を身につけた被写体を、図15(b)は撮影光学系の焦点距離が広角側に設定され、撮影距離がより遠い状態に設定される例を、図15(c)は撮影光学系の焦点距離が広角側に設定され、撮影距離がより近い状態に設定される例を、図15(d)は撮影光学系の焦点距離が望遠側に設定され、撮影距離がより遠い状態に設定される例を、図15(e)は撮影光学系の焦点距離が望遠側に設定され、撮影距離がより近い状態に設定される例を、それぞれ示し、白色色標からの光を受光するセンサブロックからのスペクトル情報が選択される様子を説明する図である。
【図16】本発明を遠隔病理診断システムに適用する、第5の実施の形態を説明する図であり、遠隔病理診断システムの情報処理系統の構成を概略的に説明するブロック図である。
【図17】本発明の第5の実施の形態に係る遠隔病理診断システム内の色変換処理部の情報処理系統の構成をより詳細に説明するブロック図である。
【図18】本発明の第6の実施の形態を説明する図であり、スペクトル情報データログを蓄積可能な多点計測式のスペクトル検出装置およびこのスペクトル検出装置が接続されるカメラの情報処理系統の構成を概略的に説明するブロック図である。
【図19】本発明の第6の実施の形態を説明する図であり、撮影日時情報の付加された画像ファイルと検出日時情報の付加されたスペクトル情報ログデータとを読み出して色再現処理を行う画像処理装置の情報処理系統の構成を概略的に説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
− スペクトル検出装置の構成 −
図1、図2は、スペクトル検出装置の光学的な構成を概略的に示す図であり、図1は一点計測式のスペクトル検出装置110の構成を、図2は多点計測式のスペクトル検出装置210の光学的な構成を、それぞれ示す。これらのスペクトル検出装置110、210は、いずれも外光式のものであり、カメラに内蔵または外付けされる。ここで、外光式のスペクトル検出装置とは、カメラの撮影光学系とは別の光学系によって被写界からの光を集光し、スペクトルを検出する装置を意味する。なお、スペクトル検出装置110、210の電気的な構成については後で説明する。
【0017】
最初に図1を参照して、一点計測式のスペクトル検出装置110の構成について説明する。スペクトル検出装置110は、集光レンズ102と、拡散板104と、センサモジュール106とを備える。集光レンズ102は、被写界からの光を集光し、集光レンズ102の後方に配置される拡散板104に導く。図1において集光レンズ102は単玉として示されているが、複数のレンズエレメントによって構成されていてもよい。拡散板104は、フライアイレンズが表面に形成された透明板または乳白色半透明の平板等で構成され、集光レンズ102を透過した光を略均一に拡散し、拡散板104の後方に配置されるセンサモジュール106に導く。このような構成により、被写界からの光は略均一に混合されて平均化され、センサモジュール106の受光面に入射する。
【0018】
センサモジュール106は、複数の光電変換部を備え、それぞれの光電変換部上には異なる分光透過特性を有するフィルタが設けられる。つまり、ある分光透過特性を有するフィルタ一つと、そのフィルタを透過した光を受光する一つの光電変換部とを備えて一つのカラーセンサ106a、106b、…が構成され、センサモジュール106は複数のカラーセンサ106a、106b、…を備えて構成される。
【0019】
図1には、センサモジュール106が15個のカラーセンサ106a、106b、…、106n、106oを備える例が示されている。カラーセンサ106a、106b、…の個数、形状、配置パターン等については図1に例示されるものに限られず、求められる仕様に応じて様々なものとすることが可能である。また、各カラーセンサ106a、106b、…の各光電変換部の面積は均等であっても、異なっていてもよい。
【0020】
センサモジュール106は、各カラーセンサ106a、106b、…から出力される光電流を増幅するアンプや、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ等を必要に応じて備えていてもよい。本明細書においては、センサモジュール106がアンプやA/Dコンバータを備えていて、センサモジュール106からは各カラーセンサ106a、106b、…に対応してデジタルのセンサデータが出力されるものとして説明する。
【0021】
各カラーセンサ106a、106b、…に設定される分光感度特性の一例を図3に示す。図3中、丸で囲ったaからoの符号を付して示した曲線のひとつ一つがカラーセンサ106a、106b、…それぞれに設定される分光感度特性の例を示している。図3に示される分光感度は一例であって、スペクトル検出装置110に求められる仕様に応じて様々な分光感度特性を設定することができる。ひとつ一つの分光感度特性の帯域は広帯域、狭帯域等、様々に設定可能である。また、可視域のみならず、用途に応じて赤外域や紫外域に分光感度を有していてもよい。
【0022】
集光レンズ102の焦点距離は、センサモジュール106の受光部のサイズに基づいて所望の受光角度が得られるように設定される。なお、センサモジュール106の受光部のアスペクト比はカメラで得られる画像のアスペクト比と略一致するように設定することが望ましい。画像のフォーマットが正方形以外であればスペクトル検出装置の受光角度(以下では「センサ受光角度」と称する)は画面の縦方向、横方向で異なる。本明細書中ではセンサ受光角度と撮影画角とを比較して説明をする場合があるが、その場合には縦方向、横方向、および対角方向のうち、いずれかの同じ方向同士で比較するものとする。
【0023】
図2を参照して、多点計測式のスペクトル検出装置210の構成について説明する。スペクトル検出装置210は、集光レンズ202と、センサモジュール206とを備える。集光レンズ202は、被写界からの光を集光し、後方に配置されるセンサモジュール206上に導いて像を形成する。図2において集光レンズ202は単玉として示されているが、複数のレンズエレメントにより構成されていてもよい。
【0024】
センサモジュール206は、複数のセンサブロック206−1、206−2、…を備えて構成される点がセンサモジュール106との大きな違いである。図2においては100個のセンサブロック206−1、206−2、…、206−100が10行10列に配列される例が示されている。それぞれのセンサブロック206−1、206−2、…は、図1、図3を参照して説明したのと同様のカラーセンサを複数備える。図2には、センサブロック206−1を拡大した様子が描かれている。センサブロック206−1は、15個のカラーセンサ206−1a、206−1b、…206−1oを備える。これらのカラーセンサ206−1a、206−1b、…の分光感度特性は、図3を参照して説明したものと同様とすることができる。
【0025】
多点計測式のスペクトル検出装置210では、集光レンズ202によって導かれる被写界からの光を複数のセンサブロック206−1、206−2、…でエリアごとに分割して検出する。これにより、複数のエリアに分割された被写界のそれぞれに対応してスペクトルを検出することが可能となる。
【0026】
なお、センサモジュール206の受光部上には集光レンズ202によって像が形成されるので、ひとつ一つのセンサブロック206−1、206−2、…の上に像が形成される。センサブロック206−1、206−2、…の面積が大きくなると、センサブロック中の各カラーセンサは像中の異なる部分の光を受光することになる。したがって、各カラーセンサは被写界からの異なる色の光を受光する可能性がある。そのようなことが想定される場合には、一つのセンサブロックに入射する光が略均一に混合されたものとなるように、集光レンズ202とセンサモジュール206との間にOLPF(光学的ローパスフィルタ)やフライアイレンズ等を配設することが望ましい。
【0027】
図2には、センサモジュール206が100個のセンサブロックを備え、各センサブロックが15個のカラーセンサを備える例が示されているが、これらのセンサブロックの配設数や各センサブロックに備えられるカラーセンサの数についてはスペクトル検出装置210に求められる仕様に応じて様々な値とすることが可能である。また、センサブロックやカラーセンサの形状、配置パターン等についても図2に例示されるものに限られず、求められる仕様に応じて様々なものとすることが可能である。
【0028】
センサモジュール206は、図1を参照して説明したセンサモジュール106と同様、各カラーセンサから出力される光電流を増幅するアンプや、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ等を必要に応じて備えていてもよい。本明細書においては、センサモジュール206がアンプやA/Dコンバータを備えていて、センサモジュール206からは各センサブロック中の各カラーセンサに対応してデジタルのセンサデータが出力されるものとして説明する。
【0029】
集光レンズ202の焦点距離は、センサモジュール206の受光部のサイズに基づいて所望の受光角度(センサ受光角度)が得られるように設定される。センサモジュール206の受光部のアスペクト比はカメラで得られる画像のアスペクト比と略一致するように設定することが望ましい。センサ受光角度と撮影画角とを比較する場合の考え方については図1を参照して説明したのと同様である。
【0030】
− スペクトル検出装置の実装形態 −
図4は、スペクトル検出装置110をカメラ400に内蔵する実装形態の例を示す。被写界F中の被写体objが撮影光学系404で撮影される。図4では、カメラ400に一点計測式のスペクトル検出装置110が内蔵される例について示しているが、多点計測式のスペクトル検出装置210が内蔵されてもよい。先にも説明したように、スペクトル検出装置110はカメラ400の撮影光学系404とは別の光学系、すなわち集光レンズ102によって集光された被写界Fおよび被写体objからの光を受光して被写界Fおよび被写体objのスペクトル情報を出力する。したがって、撮影光学系404と集光レンズ102とは、いわゆる視差を生じる。
【0031】
撮影光学系404の光軸A1と、集光レンズ102の光軸A2とは、互いに平行であってもよいが、所定の撮影距離、例えば3mの位置で交わるように集光レンズ102の光軸A2を傾けてもよい。本明細書中では光軸A2が傾けられていて、光軸A1と光軸A2とが角度θで交差するものとする。図4に示される例では、光軸A1と光軸A2とはカメラ400を保持した撮影者から見て左右方向および上下方向の双方にずれている。
【0032】
図5は、多点計測式のスペクトル検出装置210をカメラ500に外付けする実装形態の例を示す。図5(a)は、カメラ500にスペクトル検出装置210を装着した様子を、図5(b)は、スペクトル検出装置210を外した状態のカメラ500の上面を部分的に示す。図5(b)に示されるように、カメラ500の上面にはアクセサリシュー506と接点506aとが設けられる。
【0033】
図5において、スペクトル検出装置210はユニット化されていて、アクセサリシュー506を介してカメラ500に装着される。カメラ500とスペクトル検出装置210とは、接点506aなどを介して制御信号および情報を授受可能に構成される。あるいは、光通信や近距離無線通信の技術を用いて無接点の方式で制御信号および情報の授受を行うことが可能に構成されていてもよい。また、接点を介して電源をカメラ500より電源を供給可能な構成としてもよい。
【0034】
また、図5では多点計測式のスペクトル検出装置210がカメラ500に外付けされる例が示されているが、一点計測式のスペクトル検出装置110が外付けされるものであってもよい。
【0035】
図4を参照して説明したのと同様、スペクトル検出装置210はカメラ500の撮影光学系404とは別の光学系、すなわち集光レンズ202によって集光された被写界Fおよび被写体objからの光を受光し、対応するスペクトル情報を出力する。したがって、撮影光学系404と集光レンズ202とは、いわゆる視差を生じる。撮影光学系404の光軸A1と集光レンズ202の光軸A3とは、互いに平行であっても、所定の撮影距離で交わるように光軸A3を傾けてもよい。本明細書中では光軸A3が傾けられていて、光軸A1と光軸A3とが角度θで交差するものとする。図5に示される例では、光軸A1と光軸A3とは、カメラ500を保持した撮影者から見て左右方向にずれは無く、上下方向にのみずれている。もちろん、集光レンズ202を可変焦点距離になるよう構成することも可能である。この場合スペクトル検出装置210と撮影光学系404の撮影範囲の差は少なくなるが、光軸が異なるため完全に一致することはない。
【0036】
図6は、スペクトル検出装置210によるスペクトル検出範囲(以下、「センサ受光範囲」と称する)と、撮影光学系404による撮影範囲との関係を説明する図である。ここでの「範囲」は空間的な範囲を意味している。本明細書において、集光レンズ202は単焦点である一方、撮影光学系404は可変焦点距離であるものとする。
【0037】
上述のように集光レンズ202は単焦点であるため、センサ受光角度は一定であり、撮影距離の変化に応じてセンサ受光範囲の大きさが変化する。一方、撮影光学系404の設定焦点距離に応じて撮影画角は変化するので、同じ撮影距離であっても撮影範囲は変化し、さらに撮影距離が変化するとそれに応じて撮影範囲も変化する。本実施の形態において、センサ受光範囲は、撮影光学系404を望遠側に設定したときの撮影範囲よりも広く、広角側に設定したときの撮影範囲よりも狭くなるように設計されているものとする。別の表現を用いると、センサ受光角度は、撮影光学系404を望遠側に設定したときの撮影画角よりも広く、広角側に設定したときの撮影画角よりも狭くなるように設計されているものとする。
【0038】
ところで、先にも説明したとおり、光軸A1と光軸A3とは、カメラ500を保持した撮影者から見て左右方向にずれは無く、上下方向にずれている。このずれにより、センサ受光範囲と撮影範囲との間には以下で説明するように上下方向の視差を生ずる。その様子が図6には示されている。
【0039】
光軸A1と光軸A3とが所定の撮影距離で交わるように光軸A3は傾けられている。すなわち、この所定の撮影距離においては、センサ受光範囲の中心と撮影範囲の中心とが一致する。それ以外の撮影距離においては、センサ受光範囲の中心と撮影範囲の中心との間にずれを生じる。このとき、光軸A1と光軸A3とは上記のとおり左右方向にずれは無く、上下方向にずれているので、センサ受光範囲の中心と撮影範囲の中心との間に生じるずれも上下方向に沿ったものとなる。
【0040】
センサ受光範囲と、撮影光学系404が広角端に設定されているときの撮影範囲との位置関係の変化を、図6を参照して説明する。より遠い距離にある撮影距離2においては、撮影範囲はセンサ受光範囲よりも上側にU2、下側にL2だけ広く、U2はL2よりも大きい。すなわち、カメラ500を保持した撮影者から見て、センサ受光範囲は撮影範囲に対して下側に偏っている。
【0041】
一方、より近い距離にある撮影距離1においては、撮影範囲はセンサ受光範囲よりも上側にU1、下側にL1だけ広く、U1はL1よりも小さい。すなわち、カメラ500を保持した撮影者から見て、センサ受光範囲は撮影範囲に対して上側に偏っている。
【0042】
以上のように、撮影光学系404の設定焦点距離を変化させることによってセンサ受光範囲と撮影範囲との関係が変化するのに加え、撮影距離が変化してもセンサ受光範囲と撮影範囲との関係は変化する。本発明では、スペクトル検出装置110、210で検出して得られたスペクトル情報を用い、撮影光学系404で撮影して得られた画像に色再現処理を行う。その際に、上述したセンサ受光範囲と撮影範囲との関係の変化に応じて、色再現処理の方法を決定する。
【0043】
− 第1の実施の形態 −
本発明の第1の実施の形態は、図4に示されるように、カメラ400に一点計測式のスペクトル検出装置110が内蔵されるのとして説明をする。カメラ400は、レンズ交換式であってもレンズ固定式であってもよい。また、撮影光学系404は、単焦点レンズであっても可変焦点距離のレンズであってもよい。本実施の形態において、カメラ400はレンズ交換式のもので、カメラ400に装着されている撮影光学系404は可変焦点距離のレンズであるものとして説明をする。
【0044】
図7は、スペクトル検出装置110およびこのスペクトル検出装置110を内蔵するカメラ400の情報処理系統の構成を概略的に説明するブロック図である。スペクトル検出装置110は、センサモジュール106から出力されるデジタルのセンサデータを記憶するデータメモリ120を備える。スペクトル検出装置110はまた、データメモリ120に記憶されたセンサデータをもとにスペクトル推定処理を行い、スペクトル情報を出力するスペクトル推定処理部122を備える。
【0045】
図7において、センサデータは以下のように表記されている。
SD(k): k = 1〜N
ここでNは、カラーセンサの数である。図1を参照して説明したセンサモジュール106が用いられる場合、Nは15となる。
【0046】
図7において、スペクトル情報は以下のように表記されている。
SPD(j): j= 1〜M
ここでMは、カメラ400の仕様等によって決まる数である。つまり、N個のカラーセンサから出力されるセンサデータをもとに生成されるスペクトル情報の次元数をMは示しており、例えば380nmから780nmまでの可視光波長帯域のスペクトル情報を1nm間隔で出力する場合、M=401となる。あるいは、予め定められた例えば10点の波長におけるスペクトル情報が得られれば十分な精度が得られる応用形態であればM=10となる。つまり、上述したセンサデータの数Nとスペクトル情報の次元数Mとの間の関係に関して、必ずしもMがNを上回る必要はない。
【0047】
ここでセンサモジュール106から出力されるセンサデータSD(k)をもとにスペクトル情報を得る方法の一例について簡単に説明する。世の中に存在する自然光や人工光をセンサモジュール106で検出したときの出力パターン、すなわちセンサデータSD(1)、SD(2)、…、SD(k)の相対値(これをデータパターンと称する。)と、それらの自然光や人工光の分光スペクトルとの関係が予め求められてスペクトル検出装置110内にテーブルとして保持されているものとする。
【0048】
スペクトル推定処理部122は、データメモリ120中に記憶されるセンサデータSD(1)、SD(2)、…、SD(k)に正規化の処理を施してデータパターンを導出する。スペクトル推定処理部122はさらに、上記テーブルを参照して、センサデータのデータパターンに最も類似するデータパターンを探索し、このデータパターンに対応する分光スペクトルデータをテーブル中から読み出してスペクトル情報SPD(j)とする。
【0049】
カメラ400内の、上記スペクトル検出装置110以外の構成要素について説明する。カメラ400は、撮像部700と、色温度検出部702と、第1光源検出部704と、画像処理部706と、撮影条件情報取得部710と、色再現処理方法決定部712と、スペクトル情報入力部714と、第2光源検出部716とをさらに備える。
【0050】
撮像部700は、撮影光学系404によって形成される被写体像を光電変換して画像データを出力する撮像素子や、撮像素子から出力される画像データを処理する情報処理部等を含み、色温度検出部702、画像処理部706にデジタル画像データを出力する。
【0051】
本実施の形態において、撮像部700は、RGBの画像データを出力するものとするが、他の色空間の画像データを出力可能に構成されていても良いし、3色よりも多い色数の画像データを出力可能に構成されていてもよい。なお、センサモジュール106が備えるカラーセンサで色分解可能な数は、撮像部700から出力される画像データの色数よりも多くなるようにシステム設計がなされる。
【0052】
色温度検出部702は、撮像部700から出力される画像データを処理し、撮影時に被写体を照明していた光(以下ではこれを「撮影照明光」と称する)の色温度を推定する処理を行う。例えば、一つの画像を複数の領域に分割し、分割された領域ごとに画像データのRGB値を導出して、RGB値の比率に基づいて分割された領域ごとに色温度を推定する。そして、分割された領域ごとの色温度をもとに、公知のアルゴリズムに従って撮影照明光の色温度が推定される。
【0053】
第1光源検出部704は、色温度検出部702から入力した撮影照明光の色温度情報に基づき、撮影照明光の種類を特定する。第1光源検出部704で特定可能な撮影照明光の種類としては、晴天太陽光、曇天、タングステン灯、白色蛍光灯、昼光色蛍光灯などがある。
【0054】
撮影条件情報取得部710は、撮影時に撮影光学系404で設定されていた焦点距離および合焦距離に関する情報をレンズ制御部406から入力する。ここでレンズ制御部406について説明する。レンズ制御部406は、撮影光学系404内に備えられ、撮影光学系404内の焦点調節用レンズの動作の制御や絞り装置の動作の制御を行う。レンズ制御部406はまた、撮影光学系404で設定されている焦点距離に関する情報や、撮影光学系404の合焦距離を検出可能に構成されている。
【0055】
具体的には、撮影光学系404の焦点距離を変化させる変倍装置内に組み込まれるエンコーダ等から信号を読み出すことにより、撮影光学系404で設定されている焦点距離を検出する。また、焦点調節用レンズを駆動する機構内に備えられる、レンズ位置検出用エンコーダ等から信号を読み出すことにより、合焦距離を検出する。
【0056】
撮影条件情報取得部710は、これらの焦点距離や合焦距離に関する情報をレンズ制御部406から入力する。なお、撮影条件情報取得部710がレンズ制御部406から入力する情報としては、撮影画角に関する情報や撮影倍率に関する情報であってもよい。
【0057】
色再現処理方法決定部712は、撮影条件情報取得部710から撮影条件情報を入力する。この撮影条件情報中には、撮影が行われたときに撮影光学系404で設定されていた撮影画角および撮影距離を導出可能な情報を含む。すなわち、撮影条件情報中には、撮影が行われたときに撮影光学系404で設定されていた焦点距離または撮影画角に関連する情報と、合焦距離または撮影倍率に関連する情報とを含む。撮影倍率に関連する情報が撮影条件情報中に含まれる場合、この撮影倍率に関連する情報と、焦点距離または撮影画角に関連する情報とに基づいて撮影距離を導出することができる。
【0058】
色再現処理方法決定部712はさらに、撮影条件情報取得部710から入力した上記撮影条件情報に基づき、後で詳しく説明するように、画像処理部706で行われる色再現処理の色再現処理方法を決定し、決定した色再現処理方法に関する情報を画像処理部706に出力する。
【0059】
スペクトル情報入力部714は、スペクトル検出装置110からスペクトル情報SPD(j)を入力する。第2光源検出部716は、スペクトル情報入力部714で入力したスペクトル情報SPD(j)をもとに、撮影照明光の種類を特定する処理を行う。ここで第1光源検出部704における処理との違いについて説明する。
【0060】
第1光源検出部704では、色温度検出部702から入力した撮影照明光の色温度情報に基づいて撮影照明光の種類を特定する。一方、第2光源検出部716は、スペクトル情報SPD(j)をもとに撮影照明光の種類を特定する処理を行うので、撮影照明光のスペクトルの類似度などを利用して撮影照明光の種類を第1光源検出部704で特定可能な種類数よりも多い数で特定することが可能となる。また、被写体が複数種類の照明により照射された状況であっても高精度に推定することが出来る。
【0061】
画像処理部706は、色再現処理方法決定部712で決定された色再現処理方法に基づき、色再現処理を行う。ここで、色再現処理方法決定部712で行われる色再現処理方法決定処理と画像処理部706で行われる色再現処とについて説明する。
【0062】
図8は、色再現処理方法決定部712で行われる色再現処理方法決定処理の内容をまとめた表である。色再現処理方法決定部712は、撮影条件情報取得部710から取得した撮影条件情報より、撮影が行われたときに撮影光学系404で設定されていた撮影画角および撮影距離を導出する。そして、撮影距離の遠近と、撮影画角とセンサ受光角との関係とに基づいて以下で説明する方法に従って色再現処理方法を決定する。
【0063】
撮影距離が所定の基準距離以遠、例えば1m以遠であると判定された場合、第1光源検出部での光源特定結果の信頼度に関する判定は行わず、撮影画角の判定が行われる。第1光源検出部での光源特定結果の信頼度に関しては後で説明する。撮影画角がセンサ受光角度の1.5倍以下と判定されると、スペクトル検出装置110からの出力(第2光源検出部716での光源特定結果)を参照して色再現処理(図8中の色再現処理1)が行われる。一方、撮影画角がセンサ受光角度の1.5倍を超すと判定されると、撮像部700からの出力(第1光源検出部704での光源特定結果)を参照して色再現処理(図8中の色再現処理2)を行われる。
【0064】
上記の処理について説明をする。撮影画角がセンサ受光角度の1.5倍以下と判定される状況は、撮影画角とセンサ受光角度とがほぼ一致している状況と考えることができる。したがって、このような状況ではスペクトル検出装置110からの出力(第2光源検出部716での光源特定結果)を参照して色再現処理を行うことにより、色再現処理の精度を高めることが可能となる。あるいは、カメラ400に装着可能な交換レンズとしてそのような短焦点距離のものが提供されていなければ、常にスペクトル検出装置110を参照して色再現処理を行うことも考えられる。
【0065】
無論、撮影光学系404で設定可能な焦点距離がかなり長ければ、撮影画角も相応に小さくなるので、撮影画角とセンサ受光角度とがほぼ一致しているとは云えなくなる。そのような状況を考慮し、例えばセンサ受光角の半分よりも撮影画角が小さい場合、撮像部700からの出力(第1光源検出部704での光源特定結果)を参照して色再現処理を行うように決定がなされてもよい。あるいは、カメラ400に装着可能な交換レンズとしてそのような長焦点距離のものが提供されていなければ、図8を参照して以上に説明した色再現処理方法決定処理を行えばよい。
【0066】
一方、撮影画角がセンサ受光角度の1.5倍を超すと判定される状況では、撮影光学系404で設定された撮影画角が大きく、結果としてセンサモジュール106の中央重点度(スポット性)が増すことになる。このような状況でスペクトル検出装置110から得られるスペクトル情報は、被写体の分光反射率の影響を受けやすい。したがって、撮影画角がセンサ受光角度の1.5倍を超すと判定される状況では撮像部700からの出力(第1光源検出部704での光源特定結果)を参照して色再現処理(図8中の色再現処理2)を行うように決定がなされる。
【0067】
続いて、撮影距離が所定の基準距離よりも近いと判定された場合の処理について説明する。撮影距離が所定の基準距離よりも近いと判定されると、第1光源検出部704での光源特定結果の信頼度に関する判定が最初に行われる。具体的には、撮像部700から出力される画像データにより生成される画像中に含まれる白い部分の割合に基づいて上記信頼度に関する判定が行われる。
【0068】
すなわち、被写体中に白い部分が存在すれば、その白い部分の画像から得られる色情報は撮影照明光の分光特性をより強く反映したものとなる。したがって、上記画像中に含まれる白い部分の割合が例えば画素数比で10%を越す場合、上記信頼度は高いと判定され、10%以下の場合には上記信頼度は低いと判定される。
【0069】
上記信頼度が高いと判定されると、撮像部700からの出力(第1光源検出部704での光源特定結果)を参照して色再現処理(図8中の色再現処理3)が行われる。一方、上記信頼度が低いと判定されると、スペクトル検出装置110からの出力(第2光源検出部716での光源特定結果)を参照して色再現処理(図8中の色再現処理4)が行われる。
【0070】
撮影距離が所定の基準距離よりも近いと判定された場合に撮影画角とセンサ受光角度との関係に基づく判定が行われない理由は、以下のとおりである。すなわち、先に図6を参照して説明したように、撮影距離が近いと撮像部700とセンサモジュール106との間の視差が大きくなり、スペクトル検出装置110から得られるスペクトル情報が撮影時に被写体を照明していた撮影照明光の特性を必ずしも反映しなくなる可能性が高まるからである。
【0071】
一方、撮影距離が近い場合には、被写体がより大きく写されるので、第1光源検出部704での光源特定結果は被写体中の特定の色の分光反射特性の影響を受けやすい(例えば赤や黄色等、単色に近い花のクローズアップ撮影が行われた場合、第1光源検出部704での光源特定結果は花の色の影響を強く受ける)。そこで、画像中に含まれる白い部分の割合に基づいて第1光源検出部704での光源特定結果の信頼度を判定し、上述したように色再現処理3または4が選択される。
【0072】
ところで、上記説明で、色再現処理1、4はスペクトル検出装置110からの出力(第2光源検出部716での光源特定結果)を参照しての色再現処理であると説明したが、撮像部700からの出力(第1光源検出部704での光源特定結果)も参照してそれぞれの結果を重み付けするなどして色再現処理をしてもよい。また、色再現処理2、3は撮像部700からの出力(第1光源検出部704での光源特定結果)を参照しての色再現処理であると説明したが、以下のような色再現処理が行われても良い。
【0073】
すなわち、カメラ400の背面に備えられる液晶表示装置等に、カメラ400のユーザに対して撮影照明光の種類を入力するように促す表示をして、ユーザの入力を受け付けるようにしてもよい。ユーザが入力可能な撮影照明光の種類は、一例として、晴天屋外、曇天屋外、タングステン灯、白色蛍光灯、昼白色蛍光灯、昼光色蛍光灯、LED灯などがある。あるいは、撮影照明光の種類ではなく、色温度(K)をユーザが入力できるようにしてもよい。そして、入力された撮影照明光の種類(あるいは色温度)と、撮像部700からの出力(第1光源検出部704での光源特定結果)あるいはスペクトル検出装置110からの出力(第2光源検出部716での光源特定結果)とを参照して色再現処理をするように決定してもよい。
【0074】
画像処理部706は、上記色再現処理1から4のうち、色再現処理方法決定部712で決定されたいずれかの色再現処理によって色再現処理を行う。画像処理部706で行われる色再現処理としては、撮像部700から出力される画像データに対して色バランスを調節する処理とすることが可能である。あるいは、RAWデータに付加するための撮影照明情報を生成する処理とすることも可能である。
【0075】
以上に説明したように、本発明の第1の実施の形態によれば、外光式のスペクトル検出装置110から得られるスペクトル情報を参照するか否かが、撮影光学系404で撮影が行われたときに設定されていた画角および撮影距離に基づいて決定される。そして、スペクトル情報を参照しないと決定された場合にはスペクトル検出装置110から出力されるスペクトル情報を参照せず、撮像部700から出力される画像データを分析した結果に基づいて色再現処理を行うように決定される。
【0076】
一方、スペクトル情報を参照すると決定された場合には、撮像部700から出力される画像データを分析した結果とスペクトル情報とのうち、少なくともスペクトル情報を参照して色再現処理を行うように決定される。これにより、より高い精度で色再現処理を行うことが可能となる。
【0077】
以上では、スペクトル検出装置110がカメラ400に内蔵されるものとして説明をしたが、スペクトル検出装置110がカメラに対して外付け可能に構成されていてもよい。
【0078】
また、撮影条件情報取得部710、色再現処理方法決定部712、色温度検出部702、第1光源検出部704、スペクトル情報入力部714、第2光源検出部716、画像処理部706がカメラ400に備えられるものとして説明したが、これらの要素がスペクトル検出装置110の中に備えられていてもよい。
【0079】
例えば、スペクトル検出装置110が外付け式のものである場合、カメラ400から画像データと撮影条件情報とをスペクトル検出装置110が受ける。スペクトル検出装置110は、撮影条件情報と、スペクトル検出して得たスペクトル情報とを用いて画像データに色再現処理を行い、処理後の画像データをカメラ400に戻す。
【0080】
あるいは、上記の撮影条件情報取得部710、色再現処理方法決定部712、色温度検出部702、第1光源検出部704、スペクトル情報入力部714、第2光源検出部716、画像処理部706を備える画像処理装置として本発明を実施することも可能である。この画像処理装置は、PCと、PC上で実行されるソフトウェアとによって構成可能である。
【0081】
一方、カメラ400はスペクトル検出装置110を内蔵するか、スペクトル検出装置110が外付けされ、撮像部700から出力される画像データに撮影条件情報とスペクトル情報とが付加されてメモリカード等の記憶媒体に記憶される。画像処理装置は、カメラ400の記憶媒体中から、撮影条件情報とスペクトル情報が付加された画像データを読み出し、色再現の処理をする。
【0082】
ところで、色再現処理方法決定部712が図8を参照して説明した色再現処理方法決定の処理を行い、その際に、第1光源検出部704での光源特定結果の信頼度を色再現処理方法決定部712で判定することについて先に説明した。この光源特定結果の信頼度の判定に際して、色再現処理方法決定部712は画像データを入力することが必要となる。図7において、色再現処理方法決定部712が画像データを入力する際の情報の流れが記載されていないが、色再現処理方法決定部712は撮像部700、色温度検出部702、および第1光源検出部704のうち、いずれかから画像データを入力すればよい。
【0083】
以上の実施の形態において、カメラ400は静止画または動画、あるいは両方を記録可能なものとすることができる。
【0084】
− 第2の実施の形態 −
本発明の第2の実施の形態は、図5に例示されるような、カメラ500にスペクトル検出装置210が外付けされるものとして説明をする。カメラ500は、レンズ交換式であってもレンズ固定式であってもよい。また、撮影光学系404は、単焦点レンズであっても可変焦点距離のレンズであってもよい。本実施の形態において、カメラ500はレンズ交換式のもので、カメラ500に装着されている撮影光学系404は可変焦点距離のレンズであるものとして説明をする。
【0085】
図9は、スペクトル検出装置210およびカメラ500の情報処理系統の構成を概略的に説明するブロック図である。スペクトル検出装置210は、センサモジュール206から出力されるデジタルのセンサデータを記憶するデータメモリ120Aを備える。スペクトル検出装置210はまた、データメモリ120Aに記憶されたセンサデータをもとにスペクトル推定処理を行い、スペクトル情報を出力するスペクトル推定処理部122Aを備える。
【0086】
図9において、センサデータは以下のように表記されている。
SDi(k): k = 1〜N
i = 1〜P
ここでNは、カラーセンサの数である。また、Pはセンサブロックの数である。図2を参照して説明したセンサモジュール206が用いられる場合、Nは15となり、Pは100となる。
【0087】
図9において、スペクトル情報は以下のように表記されている。
SPDi(j): j= 1〜M
i= 1〜P
ここでMは、カメラ500やスペクトル検出装置210の仕様等によって決まる数であり、第1の実施の形態で説明したのと同様である。上述したセンサデータの数Nとスペクトル情報の次元数Mとの間の関係に関して、必ずしもMがNを上回る必要はないのも第1の実施の形態と同様である。Pは先に説明したとおり、センサブロックの数である。
【0088】
センサモジュール206から出力されるセンサデータSDi(k)をもとにスペクトル情報を得る方法については、第1の実施の形態で説明したのと同様の方法とすることができる。すなわち、世の中に存在する自然光や人工光をセンサモジュール206中の一つのセンサブロック206−iで検出したときの出力パターン、すなわちセンサデータSDi(1)、SDi(2)、…、SDi(k)の相対値(これをデータパターンと称する。)と、それらの自然光や人工光の分光スペクトルとの関係が予め求められてスペクトル検出装置210内にテーブルとして保持されているものとする。
【0089】
スペクトル推定処理部122Aは、データメモリ120A中に記憶されるセンサデータSDi(k) (k=1〜N) に正規化の処理を施してデータパターンを導出することを、P個のセンサブロックのそれぞれに対応して行う(i=1〜P)。スペクトル推定処理部122Aはさらに、センサデータのデータパターンに最も類似するデータパターンを探索し、このデータパターンに対応する分光スペクトルデータをテーブル中から読み出してスペクトル情報SPDi(k)とすることを、P個のセンサブロックのそれぞれに対応して行う。以上の処理により、スペクトル推定処理部122Aはスペクトル情報SPDi(j) (i=1〜P j=1〜M)を出力することが可能となる。
【0090】
カメラ500は、撮像部700と、色温度検出部702と、第1光源検出部704と、画像処理部706Aと、撮影条件情報取得部710と、色再現処理方法決定部712Aと、スペクトル情報入力部714Aと、スペクトル情報抽出部718と、第2光源検出部716Aとをさらに備える。また、撮影光学系404はレンズ制御部406を備える。これらの構成要素のうち、第1の実施の形態において説明したものと同様の機能を有するものについては図9において同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0091】
第2の実施の形態においても、撮像部700は、RGBの画像データを出力するものとするが、他の色空間の画像データを出力可能に構成されていても良いし、3色よりも多い色数の画像データを出力可能に構成されていてもよい。そして、センサモジュール206が備える各センサブロック中のカラーセンサで色分解可能な数は、撮像部700から出力される画像データの色数よりも多くなるようにシステム設計がなされる。
【0092】
色再現処理方法決定部712Aは、撮影条件情報取得部710から撮影条件情報を入力する。この撮影条件情報中には、撮影が行われたときに撮影光学系404で設定されていた撮影画角および撮影距離を導出可能な情報を含む。
【0093】
また、色再現処理方法決定部712Aは、撮影条件情報取得部710から入力した上記撮影条件情報に基づき、以下で説明するように、スペクトル情報と、画像データを分析した結果とのうち、少なくともいずれかを参照して色再現処理を行うように決定する。
【0094】
スペクトル情報に関しては、複数のスペクトル情報SPDi(j) (i=1〜P、j=1〜M)のうち、参照する対象のスペクトル情報を撮影条件情報に基づいて選択し、この選択結果に対応する情報であるスペクトル選択情報をスペクトル情報抽出部718に出力する。そして、選択されたスペクトル情報と、画像データを分析した結果とのうち、少なくともいずれかを参照して色再現処理を行うように決定する。
【0095】
上記の色再現処理方法決定処理におけるスペクトル情報の選択方法について図10を参照して説明する。図10は、スペクトル検出装置210のセンサ受光範囲と撮影光学系404の撮影範囲との関係を概念的に示す図である。図10(a)から図10(d)のそれぞれにおいて示される100個の矩形は、センサモジュール206中の100個のセンサブロックそれぞれで検出される範囲を示している。また、図10(a)から図10(d)のそれぞれにおいて示される100個の矩形のうち、太い線で描かれた矩形は、色再現処理方法決定部712Aで選択されたスペクトル情報に対応するものを示している。図10(a)から図10(d)はいずれもセンサ受光範囲の大きさが同じとなるように描かれている。
【0096】
図10(a)、図10(b)は、撮影光学系404の設定焦点距離が短めに設定された場合の例を示しており、このうち図10(a)は撮影距離が遠めに設定された場合の例を、図10(b)は撮影距離が近めに設定された場合の例を示している。
【0097】
図10(c)、図10(d)は、撮影光学系404の設定焦点距離が長めに設定された場合の例を示しており、このうち図10(c)は撮影距離が遠めに設定された場合の例を、図10(d)は撮影距離が近めに設定された場合の例を示している。
【0098】
つまり、図6を参照して説明すると、図10(a)は広角の撮影範囲および撮影距離2に対応する状況を示しており、図10(b)は広角の撮影範囲および撮影距離1に対応する状況を示しており、図10(c)は望遠の撮影範囲および撮影距離2に対応する状況を示しており、図10(d)は望遠の撮影範囲および撮影距離1に対応する状況を示していると考えると理解しやすい。
【0099】
図10(a)、図10(b)に例示される、焦点距離が広角側に設定された状況では、センサ受光範囲が撮影範囲内に収まっている結果として、センサブロック206−1、206−2、…、206−100から出力されるセンサデータに基づくスペクトル情報が全て選択される様子が示されている。なお、焦点距離が相当に短い状況では、センサ受光範囲に比して撮影範囲が広くなる。その結果、相対的にセンサ受光範囲が狭くなり、中央重点度が高くなる。そのような場合にはスペクトル情報を参照しない、という決定を色再現処理方法決定部712Aで行うことが可能である。なお、図10(a)、図10(b)においてセンサ受光範囲と撮影範囲との間の相対位置関係が変化している様子が描かれているが、これは先に説明した視差の影響によるものである。
【0100】
図10(c)、図10(d)に例示される、焦点距離が望遠側に設定された状況では、センサ受光範囲の一部が撮影範囲となる。これに対応して、センサブロック206−1、206−2、…、206−100のうち、被写界中の撮影範囲と略一致する部分からの光を検出するセンサブロックに対応するスペクトル情報が選択される様子が図10(c)、図10(d)に示されている。図10(c)、図10(d)においても、先に説明した視差によってセンサ受光範囲と撮影範囲との間の相対位置関係が変化している様子が描かれている。色再現処理方法決定部712Aでは、撮影条件情報に基づいてスペクトル情報を選択するので、撮影範囲の変化に加え、センサ受光範囲と撮影範囲との間の相対位置関係の変化にも対応して、スペクトル情報を選択することができる。
【0101】
なお、視差に関しては、撮影距離、画撮影画角に加えて、スペクトル検出装置210と撮影光学系404との間の光軸間距離(図6において符号Dで示される)にも依存する。撮影光学系404の光軸とスペクトル検出装置210の光軸とが所定の距離で交差するように(非平行に)設定されている場合、厳密には光軸間距離と称することはできない。そこで、この寸法Dは、一例として、撮像面(撮影光学系404の結像面)に対して撮影光学系404の光軸が交わる点と、同じく撮像面に対してスペクトル検出装置210の光軸が交わる点との間の距離として定義することが可能である。この距離Dに関する情報に関しては、カメラ500内またはスペクトル検出装置210内に予め記憶しておけばよい。
【0102】
再び図9を参照し、スペクトル情報入力部714Aは、スペクトル検出装置210からスペクトル情報SPDi(j) (i=1〜P、j=1〜M)を入力する。スペクトル情報抽出部718は、スペクトル情報入力部714Aに入力されたスペクトル情報のうち、色再現処理方法決定部712Aから出力されたスペクトル選択情報に対応するものを抽出し、第2光源検出部716Aに出力する。第2光源検出部716Aは、スペクトル情報抽出部718から入力したスペクトル情報をもとに、撮影照明光の種類を特定する処理を行う。第2光源検出部716Aにおける撮影照明光の種類特定の処理は、第1の実施の形態で説明した第2光源検出部716での処理と同様であるので説明を省略する。
【0103】
色再現処理方法決定部712Aでは、上述したスペクトル情報選択の処理の他に、第1の実施の形態で図8を参照して説明した処理も行う。すなわち、撮影条件情報取得部710から入力した上記撮影条件情報に基づき、スペクトル情報と、画像データを分析した結果とのうち、少なくともいずれかを参照して色再現処理を行うように決定する。
【0104】
第1光源検出部704での光源特定結果の信頼度を色再現処理方法決定部712Aで判定する際には、第1の実施の形態で説明したのと同様、色再現処理方法決定部712Aは撮像部700、色温度検出部702、および第1光源検出部704のうち、いずれかから画像データを入力すればよい。
【0105】
画像処理部706Aは、上記色再現処理1から4のうち、色再現処理方法決定部712Aで選択されたスペクトル情報と、同じく色再現処理方法決定部712Aで決定されたいずれかの色再現処理とによって色再現処理を行う。画像処理部706Aで行われる色再現処理としては、撮像部700から出力される画像データに対して色バランスを調節する処理とすることが可能である。あるいは、RAWデータに付加する撮影照明情報を生成する処理とすることも可能である。
【0106】
以上に説明したように、本発明の第2の実施の形態によれば、撮影条件情報取得部710から入力した上記撮影条件情報に基づき、外光式のスペクトル検出装置210から得られるスペクトル情報と、撮像部700から出力される画像データを分析した結果とのうち、少なくともいずれかを参照して色再現処理を行う。これにより、撮影距離の変化や撮影画角の変化等の影響が減じられて、より高い精度で色再現処理を行うことが可能となる。
【0107】
以上では、スペクトル検出装置210がカメラ500に外付けされるものとして説明をしたが、スペクトル検出装置210がカメラ500に内蔵されるものであってもよい。
【0108】
また、撮影条件情報取得部710、色再現処理方法決定部712A、色温度検出部702、第1光源検出部704、スペクトル情報入力部714A、スペクトル情報抽出部718、第2光源検出部716A、画像処理部706Aについては、第1の実施の形態で説明したのと同様に、スペクトル検出装置210内に内蔵されていても、PCと、PC上で実行されるソフトウェアとによって構成される画像処理装置に内蔵されていてもよい。
【0109】
以上の実施の形態においても、カメラ500は静止画または動画、あるいは両方を記録可能なものとすることができる。
【0110】
− 第3の実施の形態 −
本発明の第3の実施の形態も、第2の実施の形態と同様、図5に示されるように、カメラ500にスペクトル検出装置210が外付けされるのとして説明をする。カメラ500は、レンズ交換式であってもレンズ固定式であってもよい。また、撮影光学系404は、単焦点レンズであっても可変焦点距離のレンズであってもよい。カメラ内部の構成が第2の実施の形態と異なるので、以下ではカメラ500Aと称する。第3の実施の形態においても、カメラ500Aはレンズ交換式のもので、カメラ500Aに装着されている撮影光学系404は可変焦点距離のレンズであるものとして説明をする。
【0111】
図11は、スペクトル検出装置210およびカメラ500Aの情報処理系統の構成を概略的に説明するブロック図である。図11に示される各構成要素中、第1、第2の実施の形態で説明したものと同じ構成要素については図7、図9中の構成要素に付されるのと同じ符号を付してその説明を省略する。
【0112】
第3の実施の形態と第2の実施の形態との違いは、第3の実施の形態においてカメラ500Aが白色点抽出処理部720をさらに備える点である。そして、色再現処理方法決定部712Bは、撮影条件情報取得部710から撮影条件情報を、白色点抽出処理部720から白色点位置情報を、それぞれ入力する。
【0113】
ここで白色点抽出処理部720の作用について説明する。白色点抽出処理部720は、撮像部700から出力される画像データにより生成される画像中に含まれる白色部分を抽出する処理を行う。この、白色部分を抽出する処理とは、画像中で白いもの(あるいは白色に近いもの)が写っている場所を抽出する処理である。
【0114】
当然、被写体表面の色が白であっても、被写体の色は撮影照明光の色の影響を受ける。そのことを想定して、R、G、Bの画素値の比率が所定の範囲内にあるときにその色は白であると判定してもよい。あるいは、色温度検出部702での色温度検出結果や第1光源検出部704での光源特定結果をもとに画像データの色バランスを変更してから白色点抽出処理部720が白色部分を抽出する処理をしてもよい。あるいは画素値の輝度レベルを参照して輝度レベルが高い部分を白色部分であるものとして抽出する処理を行っても良い。
【0115】
色再現処理方法決定部712Bは、撮影条件情報取得部710から入力した撮影条件情報と、白色点抽出処理部720から入力した白色点位置情報とに基づき、スペクトル情報を参照するか否かを決定する。そして、スペクトル情報を参照しないと決定した場合には、スペクトル情報を参照せず、画像データを分析した結果に基づいて色再現処理を行うように決定する。
【0116】
一方、スペクトル情報を参照すると決定した場合には、複数のスペクトル情報SPD1(j)、SPD2(j)、… のうち、参照する対象のスペクトル情報を撮影条件情報と白色点位置情報とに基づいて選択する。そして選択したスペクトル情報と、画像データを分析した結果とのうち、少なくとも選択したスペクトル情報を参照して色再現処理を行うように決定する。
【0117】
つまり、白色点位置情報により、画像中のどの位置に白色点が位置しているかがが特定可能で、その白色点位置に対応するセンサブロックがどれであるかは撮影条件情報から特定可能であるので、上述のように白色点位置に対応するスペクトル情報が、参照する対象のスペクトル情報として選択される。
【0118】
被写体中の白色点(白いものが写っている領域)からの光を受光するセンサブロックが存在する場合、そのセンサブロックからの出力をもとに得られるスペクトル情報は撮影照明光の分光放射輝度をより正確に反映したものとなる。したがって、被写体中の白色点からの光を受光するセンサブロックからのスペクトル情報が選択されることにより、第2光源検出部716Aでの光源特定精度を高めることが可能とる。その結果、画像処理部706Aでの色再現精度も高めることが可能となる。
【0119】
白色点抽出処理部720が白色点を抽出できなかった場合、色再現処理方法決定部712Bは第1、第2の実施の形態で図8を参照して説明した方法に従って色再現処理方法を決定する。第1光源検出部704での光源特定結果の信頼度を色再現処理方法決定部712Bで判定する際には、第1、第2の実施の形態で説明したのと同様、色再現処理方法決定部712Bは撮像部700、色温度検出部702、第1光源検出部704、および白色点抽出処理部720のうち、いずれかから画像データを入力すればよい。
【0120】
以上では撮像部700から出力される画像データをもとに被写体中の白色点を抽出する例について説明したが、以下のようにしてもよい。すなわち、色再現処理方法決定部712Bが撮影条件情報に基づいてスペクトル情報を選択する際に、撮影範囲よりも広く設定した範囲内からの光を受光するセンサブロックからのスペクトル情報を選択する。そして、このスペクトル情報を解析して、被写体および被写界中の白い部分からの光を受光しているものとみなせるセンサブロックからのスペクトル情報を選択する。このようにスペクトル情報を選択することにより、第2光源検出部716Aでの光源特定精度を高めることが可能となる。
【0121】
例えば、撮影画角が小さめ(あるいは撮影倍率が大きめ)で、画面一杯に特定の色の被写体が写されているような場合、撮像部700から出力される画像データに基づく白色点抽出の処理は難しくなることが予想される。その点、撮影範囲よりも広く設定した範囲内からの光を受光するセンサブロックからのスペクトル情報中から被写体および被写界中の白い部分からの光を受光しているものとみなせるセンサブロックからのスペクトル情報を選択することにより、第2光源検出部での光源特定精度を高めることが期待できる。
【0122】
色再現処理方法決定部712Bが上記のようにスペクトル情報を解析し、被写体および被写界中の白い部分からの光を受光しているものとみなせるセンサブロックからのスペクトル情報を選択する場合、図11には示されていないが、色再現処理方法決定部712Bはスペクトル情報入力部714Aからスペクトル情報を取得すればよい。
【0123】
以上では、スペクトル検出装置210がカメラ500Aに外付けされるものとして説明をしたが、スペクトル検出装置210がカメラ500Aに内蔵されるものであってもよい。
【0124】
また、撮影条件情報取得部710、色再現処理方法決定部712B、色温度検出部702、第1光源検出部704、白色点抽出処理部720、スペクトル情報入力部714A、スペクトル情報抽出部718、第2光源検出部716A、画像処理部706Aについては、第1の実施の形態で説明したのと同様に、スペクトル検出装置210内に内蔵されていても、PCと、PC上で実行されるソフトウェアとによって構成される画像処理装置に内蔵されていてもよい。
【0125】
以上の実施の形態においても、カメラ500Aは静止画または動画、あるいは両方を記録可能なものとすることができる。
【0126】
− 第4の実施の形態 −
第1〜第3の実施の形態においては、画像処理装置がカメラ内に備えられるものとして説明をした。これに対して、本発明の第4の実施の形態においては、カメラと独立した画像処理装置において画像処理が行われる例について説明する。この画像処理装置は、カメラで生成されて保存された画像ファイル中の画像データに色再現処理をする。
【0127】
ここでカメラは図5に示されるような、スペクトル検出装置210が外付けされたカメラ500であるものとする。画像ファイルは、画像データにタグ情報が付加されて所定のフォーマットで記録されたものである。画像データはいわゆるRAWデータであるものとし、付加されるタグ情報中には撮影条件情報とスペクトル情報とを含む。このスペクトル情報は、画像撮影時にスペクトル検出装置210でスペクトル検出が行われた際の、全センサブロックから得られたセンサデータに基づいて生成されたスペクトル情報(図2の例では100組のスペクトル情報)を含むものとする。
【0128】
カメラ500は、レンズ交換式であってもレンズ固定式であってもよい。また、撮影光学系404は、単焦点レンズであっても可変焦点距離のレンズであってもよい。第4の実施の形態においても、カメラ500はレンズ交換式のもので、カメラ500に装着されている撮影光学系404は可変焦点距離のレンズであるものとする。
【0129】
図12は、画像処理装置1200の内部構成を概略的に説明するブロック図である。画像処理装置1200は、PCおよびPC上で実行されるプログラムによって構成されたものとすることができる。また、ストレージビューワやデジタルフォトフレーム、あるいはディスプレイモニタに接続されるセットトップボックス等に画像処理装置1200が備えられるものとして実施することも可能である。
【0130】
図12に示される各構成要素中、第1〜第3の実施の形態で説明したものと同じ構成要素については図7、図9、図11中の構成要素に付されるのと同じ符号を付してその説明を省略する。
【0131】
第4の実施の形態において、画像処理装置1200は第3の実施の形態で説明したカメラ500Aが有していた色温度検出部702、第1光源検出部704、第2光源検出部716A、画像処理部706Aを備えておらず、代わりに画像データ記憶部1202、情報分離部1204、スペクトル導出処理部1206、被写体情報導出部1208、色変換処理部1210を備えている。
【0132】
図13には、図12中の被写体情報導出部1208および色変換処理部1210の詳細を示す。被写体情報導出部1208は、分光反射スペクトル導出部1212と被写体統計データ導出部1214とを備える。色変換処理部1210は、色変換データ作成部1216と出力デバイス色変換部1218とを備える。
【0133】
画像データ記憶部1202は、半導体記憶装置や磁気記憶装置で構成され、画像ファイルが記憶される。画像ファイルは、先にも説明したように、RAW画像データとタグ情報とを含んでおり、そのタグ情報中には撮影条件情報とスペクトル検出装置210の全センサブロックから得られたスペクトル情報が含まれる。
【0134】
情報分離部1204は、画像データ記憶部1202から読み出された画像ファイル中から画像データ、撮影条件情報、スペクトル情報を分離して抽出する。撮影条件情報取得部710Aは、情報分離部1204から撮影条件情報を入力する。スペクトル情報入力部714Aは、情報分離部1204からスペクトル情報を入力する。
【0135】
白色点抽出処理部720Aおよび色変換処理部1210は、情報分離部1204から画像データを入力する。なお、情報分離部1204は、RAW画像データを現像する機能を有するものとしてよい。その場合、情報分離部1204から白色点抽出処理部720Aおよび色変換処理部1210に出力される画像データはデモザイクやシェーディング補正等の処理が行われた画像データとなる。あるいは、白色点抽出処理部720Aおよび色変換処理部1210は情報分離部1204からRAW画像データを入力し、それぞれで必要に応じた処理をしてもよい。
【0136】
白色点抽出処理部720Aで行われる白色点抽出処理は、第3の実施の形態中の白色点抽出処理部720で行われる処理と同様であるのでその説明を省略する。色再現処理方法決定部712Cは、撮影条件情報取得部710Aから入力した撮影条件情報と、白色点抽出処理部720Aから入力した白色点位置情報とに基づき、複数のスペクトル情報の中から参照すべきスペクトル情報を決定する。
【0137】
ここで、色再現処理方法決定部712Cにおいて参照すべきスペクトル情報として選択される対象は2種類ある。一つは、被写体中の白色点からの光を受光するセンサブロックからの出力をもとに得られたスペクトル情報である。これを第1スペクトル情報と称する。もう一つは、被写体(撮影範囲)中の、白色点以外の部分からの光を受光するセンサブロックからの出力をもとに得られたスペクトル情報である。これを第2スペクトル情報と称する。
【0138】
スペクトル情報抽出部718は、スペクトル情報入力部714Aに入力されたスペクトル情報のうち、色再現処理方法決定部712Cで選択された、第1スペクトル情報、第2スペクトル情報に該当するものを抽出し、スペクトル導出処理部1206に出力する。
【0139】
スペクトル導出処理部1206は、第1スペクトル情報に基づき、撮影照明情報を導出する。撮影照明情報は、撮影照明光の分光スペクトルを特定可能な情報である。スペクトル導出処理部1206はまた、第2スペクトル情報に基づき、被写体スペクトル情報を導出する。ここで図14を参照して被写体スペクトル情報の導出処理について説明する。
【0140】
図14は、スペクトル情報抽出部718から得られる第1スペクトル情報および第2スペクトル情報をn次元空間座標系(多次元スペクトル空間)にプロットした様子を示す概念図である。ここで、スペクトル情報抽出部718で抽出される第1スペクトル情報および第2スペクトル情報はM次元のスペクトル情報であるので、n=Mということになる。
【0141】
図14において、第1スペクトル情報に基づいてプロットすると、光源のスペクトル分布範囲を把握することが可能となる。理由は、被写体の白色部分で反射された光は撮影照明光のスペクトル分布をより忠実に反映するからである。さらに、第2スペクトル情報に基づいてプロットすると、一例として図14中において破線の楕円で囲われたようなプロット点群が得られる。
【0142】
これらのプロット点群のうち、光源のスペクトル分布範囲内にプロットされる点群は撮影照明光由来のスペクトル成分であると見なす。光源のスペクトル分布範囲に比較的近い領域にプロットされる点群は、撮影照明光由来のものか、被写体色由来のものか弁別が難しいので参照対象から外す。そして、光源のスペクトル分布範囲から十分に離れた領域にプロットされる点群は、被写体色由来のものであるとする。
【0143】
スペクトル導出処理部1206は、以上に説明した方法によって、第1スペクトル情報から撮影照明情報を導出し、第2スペクトル情報から被写体スペクトル情報を導出する。そして、被写体スペクトル情報および撮影照明情報を被写体情報導出部1208内の分光反射スペクトル導出部1212に出力する。スペクトル導出処理部1206はまた、撮影照明情報を色変換処理部1210内の色変換データ作成部1216に出力する。
【0144】
分光反射スペクトル導出部1212は、被写体スペクトル情報を撮影照明情報で正規化する(除する)処理を行い、分光反射スペクトルを導出して被写体統計データ導出部1214に出力する。被写体統計データ導出部1214は、被写体の分光反射スペクトルをもとに被写体統計データを導出する。
【0145】
ところで、被写体統計データとは、RGB3バンドの画像データ等、限られた色情報の画像データから、より高精度の色再現を行う際に参照される情報である。被写体統計データを参照することにより、被写体の色がどのような分光特性を有しているかを知ることができる。この被写体統計データは、予め予想される被写体に対して前もって分光特性を計測し、生成しておくことも可能である。
【0146】
前もって分光特性を計測する場合、分光計などを用いて380nmから780nmまでの可視光範囲で高精度に測定することも可能である。例えば、皮膚科での診察に応用する場合、前もって肌の分光特性を計測しておくことができる。そして、上皮組織のメラニン、皮膚の下を流れる血液のヘモグロビンといった物質に由来する分光特性を被写体統計情報として蓄積することにより、高精度の色再現処理を行うことが可能となる。
【0147】
一方、本実施の形態では、撮影が行われたときの情報をもとに被写体統計データがその場で生成される。本実施の形態のように15バンドのカラーセンサを用いた場合、被写体統計データの精度を高めることは難しいが、被写体統計データを用いない場合と比較すると色再現精度を向上させることが可能となる。また、撮影対象の被写体が何であるかを撮影者または画像処理装置のユーザが設定可能に構成されていてもよい。その情報も加味することにより、被写体統計データの精度を高め、その結果として色再現精度を向上させることが可能となる。
【0148】
色変換データ作成部1216は、スペクトル導出処理部1206から撮影照明情報を、被写体情報導出部1208(被写体統計データ導出部1214)から被写体統計データを入力して色変換データを作成する処理を行う。ところで、色変換処理部1210には、撮像部分光感度、観察環境照明光源スペクトル、出力機器色空間、モニタ色特性、観察者等色関数に関する情報が入力される。
【0149】
撮像部分光感度の情報は、カメラ500の分光感度特性に関する情報を含む。この撮像部分光感度の情報には撮影光学系404の分光透過特性も反映されているものとする。観察環境照明光源スペクトルは、画像を表示するモニタの設置される環境を照明している光源(観察環境照明光源)のスペクトルに関する情報を含む。出力機器色空間の情報は、画像を表示するモニタの色空間に関する情報を含む。モニタ色特性の情報は、モニタの色再現特性に関する情報(モニタプロファイル)を含む。
【0150】
観察者等色関数の情報は、画像を観視する観察者の視感度(分光感度)に関する情報を含む。すなわち、人間の視覚系の分光感度はCIEによって標準が定められているが、この分光感度には個人差がある。この個人差が無視できない応用形態においては、各個人の分光感度に対応して等色関数の形態で表現したものが観察者等色関数として画像処理装置1200内に記憶され、色変換データ作成部1216に入力される。
【0151】
色変換データ作成部1216は、撮影照明情報、被写体統計データとともに上記の情報を用いて色変換マトリクスやルックアップテーブル等の色変換データを生成し、出力デバイス色変換部1218に出力する。出力デバイス色変換部1218は、色変換データを用いて画像データに色変換の処理をし、変換後画像データを生成する。この変換後画像データは、ディスプレイモニタ等に出力される。
【0152】
以上では、一つの画像に対応して一つの被写体統計データが生成される例について説明した。しかし、一つの画像中には様々な分光反射特性を有する被写体が写っている可能性がある。それらの被写体に一様の被写体統計データを適用すると、一つの画像中に存在する被写体によっては望ましい色再現ができない可能性もある。しかし、被写体の肌の色を高精度に再現したり、商品カタログ中の服の色を高精度に再現したりする用途においては十分な効果を発揮する。
【0153】
上記の被写体統計データに関して、センサモジュールに備えられるセンサブロックの数を多くすることが可能であれば、撮影範囲内を複数の領域に分割して、分割された領域ごとに被写体統計データを生成することも可能である。そのようにすることにより、一つの画像内に異なる分光反射特性を有する被写体が写っていても、それらの分光反射特性に対応して高精度の色再現が可能となる。
【0154】
本発明の第4の実施の形態によれば、以上に説明したように、撮影条件情報に基づいて選択されたスペクトル情報を用いて撮影照明情報と被写体統計データとが生成され、これらの撮影照明情報、被写体統計データに基づき、より高度の色再現処理が行われる。このとき、撮像部分光感度、観察環境照明光源スペクトル、出力機器色空間、モニタ色特性、観察者等色関数の各情報が参照されて色変換マトリクスが生成されるので、観察者の視感度、モニタの色再現特性、観察環境照明光の影響を減じてより高度の色再現を行うことが可能となる。
【0155】
尚、本発明の第4の実施の形態では、撮影条件情報に基づいて選択されたスペクトル情報を用いて撮影照明情報と被写体統計データとが生成され、これらの撮影照明情報、被写体統計データに基づき、より高度の色再現処理が行われている。これに対して、例えば撮影条件情報に基づいて選択されたスペクトル情報を撮影照明情報の生成にのみ用いるという構成も考えられる。この場合被写体統計データは前述のようにあらかじめ予想される被写体に対して前もって分光特性を計測して作成しておくか、ある一般的な値を用意するか、精度は落ちるものの、使用しないというような構成にするということも考えられる。被写体統計データを使用しない場合、色再現性能若干は落ちるが、それでも撮影照明情報の精度がよいので、一般的な(本発明にはよらない)画像処理に比べては依然として優位で、かつデータ量が少ない軽いシステムが得られる。さらにこのような場合にはまた、スペクトル検出装置としてスペクトル検出装置110のような一点計測式のものを用いることもできるので、スペースやコストの点で有利なシステムを提供することが出来る。
【0156】
以上の第3、第4の実施の形態において、白色点抽出処理部720、720Aは、画像中で白いもの(あるいは白色に近いもの)が写っている場所を抽出する処理を行うことについて説明した。より高度な色再現を実現するためには、より高い精度で撮影照明光のスペクトルを検出することが欠かせない。
【0157】
ここで、撮影照明光のスペクトルの検出精度をさらに高める方法について図15を参照して説明する。図15(a)は、ペンダント状の白色色標1000を身につけた被写体objを示している。この白色色標1000は、既知の分光反射率を有する反射面を備える。白色色標1000の形状や形態に関しては、様々なものとすることが可能である。例えば、医療の分野であれば、分光反射率が既知の布でできた服(白衣など)を患者に着せてもよい。また、分光反射率が既知の壁面等を背景にして被写体を撮影することも可能である。
【0158】
図10に示されるのと同様、図15(b)、図15(c)は、撮影光学系404の設定焦点距離が短めに設定された場合の例を示しており、このうち図15(b)は撮影距離が遠めに設定された場合の例を、図15(c)は撮影距離が近めに設定された場合の例を示している。
【0159】
図15(d)、図15(e)は、撮影光学系404の設定焦点距離が長めに設定された場合の例を示しており、このうち図15(d)は撮影距離が遠めに設定された場合の例を、図15(e)は撮影距離が近めに設定された場合の例を示している。
【0160】
白色点抽出処理部720、720Aは、画像中で白色色標1000の写されている位置を検出し、その位置からの光を受けるセンサブロックからの出力に基づくスペクトル情報を選択する。図15(b)、図15(c)、図15(d)、図15(e)のそれぞれにおいて、100個のセンサブロックによって検出されるエリアのうち、太い線で描かれた小さな矩形が選択されたスペクトル情報に対応するものを示している。
【0161】
上述のように、白色色標1000の分光反射率は既知であるので、撮影照明光のスペクトルをより高精度に検出することが可能となり、結果として色再現処理の精度を高めることが可能となる。
【0162】
− 第5の実施の形態 −
本発明の第5の実施の形態は、第2、第3の実施の形態と同様、図5に示されるような、カメラ500に多点計測式のスペクトル検出装置210が外付けされるものとして説明をする。カメラ500は、レンズ交換式であってもレンズ固定式であってもよい。また、撮影光学系404は、単焦点レンズであっても可変焦点距離のレンズであってもよい。カメラ内部の構成が第2の実施の形態と異なるので、以下ではカメラ500Bと称する。第5の実施の形態においても、カメラ500Bはレンズ交換式のもので、カメラ500Bに装着されている撮影光学系404は可変焦点距離のレンズであるものとして説明をする。
【0163】
図16は、多点計測式のスペクトル検出装置と、そのスペクトル検出装置が接続されるカメラと、そのカメラから伝送されたNVデータを受信して色変換処理をする色変換処理部と、色変換処理部で処理された画像データに基づく画像を表示するディスプレイモニタとを備える遠隔病理診断システムの情報処理系統の構成を概略的に説明するブロック図である。図16に示される各構成要素中、第1、第2、第3の実施の形態で説明したものと同じ構成要素については図7、図9、図11中の構成要素に付されるのと同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0164】
第5の実施の形態において、第3の実施の形態との違いは、カメラ500BがNVデータを生成し、カメラ500BとネットワークNWを介して接続される色変換処理部1602にNVデータを送信可能に構成される点である。そして、このNVデータを色変換処理部1602が受信して色変換処理を行い、ディスプレイモニタ1606に出力する。
【0165】
ここでNVデータについて説明する。3よりも多いバンド数、例えば6バンド、16バンドといったバンド数の色情報を有する画像データをもとに生成される表示画像を、3よりも多い表示原色数、例えば6原色を有する多原色表示装置に表示する技術が開発されている。この技術はナチュラルビジョンと称され、今までに数多くの研究成果が報告されている。
【0166】
ナチュラルビジョンの技術の応用が期待される分野の一つが医療分野である。例えば、離島にいる患者の皮膚や病理組織のサンプルを撮影して画像データを伝送し、遠隔地にいる医師が表示画像を観察して診断する、遠隔病理診断などへの応用が可能である。その際に、より正確に色再現された画像を医師が観察することにより、的確な診断を下すことが可能となる。
【0167】
色再現性に優れた画像データを伝送する際のフォーマットとして、ナチュラルビジョンフォーマットが以下の文献で提案されている。
ナチュラルビジョン(次世代映像表示・伝送システム)の研究開発プロジェクト、”平成16年度 ナチュラルビジョンの研究開発プロジェクト[動画](次世代映像表示・伝送システム)研究開発報告書”、平成17年3月31日、独立行政法人情報通信研究機構(拠点研究推進部門)、インターネット<URL : http://www2.nict.go.jp/q/q262/3107/end102/NVHP(new)/index-j.html>
上記のナチュラルビジョンフォーマットに従って生成・記憶されたデータを本明細書においてはNVデータと称する。本実施の形態においては、撮像部700は3バンド以上の画像データを出力可能なものを利用可能である。一方、スペクトル検出装置210は、集光レンズ202によって集光された被写界からの光を、撮像部700で色分解可能な色数よりも多い色数で色分解可能なカラーセンサを有するセンサモジュール206からの出力をもとにスペクトル情報を生成する。このスペクトル情報のバンド数は、撮像部700から出力される画像データのバンド数を上回るように仕様が定められる。
【0168】
カメラ500Bは、撮像部700と、撮影条件情報取得部710と、色再現処理方法決定部712Cと、スペクトル情報入力部714Aと、スペクトル情報抽出部718と、白色点抽出処理部720と、スペクトル導出処理部1206Aと、被写体情報導出部1208Aと、NVデータ生成部1600とを有する。
【0169】
色再現処理方法決定部712Cは、撮影条件情報取得部710から画角、撮影距離に関する情報を含む撮影条件情報を入力する。色再現処理方法決定部712Cはまた、白色点抽出処理部720から白色点位置情報を入力する。入力したこれらの情報に基づき、色再現処理方法決定部712Cは、スペクトル検出装置210から入力した複数のスペクトル情報SPDi(j)の中から参照すべきスペクトル情報を決定する。
【0170】
色再現処理方法決定部712Cで決定されるスペクトル情報は、第4の実施の形態で説明した第1スペクトル情報および第2スペクトル情報である。すなわち、被写体中の白色点からの光を受光するセンサブロックからの出力をもとに得られたスペクトル情報が第1スペクトル情報である。そして、被写体(撮影範囲)中の、白色点以外の部分からの光を受光するセンサブロックからの出力をもとに得られたスペクトル情報が第2スペクトル情報である。
【0171】
色再現処理方法決定部712Cで決定された第1スペクトル情報、第2スペクトル情報を特定するスペクトル選択情報がスペクトル情報抽出部718に出力される。スペクトル情報抽出部718は、スペクトル選択情報で指定される第1スペクトル情報および第2スペクトル情報をスペクトル導出処理部1206Aに出力する。スペクトル導出処理部1206Aは、第1スペクトル情報に基づき、撮影照明情報を導出してNVデータ生成部1600に出力する。すなわち、被写体中の白い部分で反射された光を受けて得られた第1スペクトル情報に基づいて導出される撮影照明情報は、撮影照明光の分光スペクトルを特定可能な情報である。
【0172】
スペクトル導出処理部1206Aはまた、第2スペクトル情報に基づき、被写体スペクトル情報を導出する。すなわち、第4の実施の形態で図14を参照して説明したのと同様の方法により、スペクトル導出処理部1206Aは第2スペクトル情報中から被写体色由来の情報を抽出して被写体スペクトル情報を導出する。
【0173】
被写体情報導出部1208Aは、スペクトル導出処理部1206Aから入力した被写体スペクトル情報に基づき、被写体統計データを生成してNVデータ生成部1600に出力する。ところで、被写体情報導出部1208Aで導出される被写体統計データは、第4の実施の形態で説明したように被写体表面の分光反射特性に基づくものとすることも可能であるが、第5の実施の形態において被写体統計データは撮影照明光で照明された被写体表面の色に基づくものであるとする。つまり、被写体情報導出部1208Aは、第4の実施の形態における被写体情報導出部1208とは異なり、被写体スペクトル情報を撮影照明情報で正規化して被写体の分光反射率を導出することは行わない。代わりに、撮影照明光によって照明された被写体表面の色に基づいて被写体統計データを導出する。
【0174】
NVデータ生成部1600は、カメラ500B内に予め記憶されている、撮像部700の分光感度情報を読み出す。この撮像部700の分光感度情報には、撮影光学系404の分光透過特性に関する情報も含まれていることが望ましい。NVデータ生成部1600は、撮像部700から出力されるRAW画像データに上述した撮影照明情報、被写体統計データ、撮像部分光感度情報を付加してNVデータを生成する。
【0175】
このNVデータは、ネットワークNWを介してカメラ500Bと接続された色変換処理部1602に伝送される。ネットワークNWは、LANであってもWANであってもよく、有線、無線の別を問わない。また、ネットワークNWを介することなく、カメラ500Bと色変換処理部1602とがケーブルや無線通信手段を介して接続されていてもよい。またNVデータは、ファイル化して伝送されても、いわゆるストリーミングの方式で伝送されてもよい。
【0176】
色変換処理部1602は、カメラ500Bから受信したNVデータを処理してディスプレイモニタ1606に出力する。このとき、色変換処理部1602は、後で詳しく説明するように、ディスプレイモニタ1606の設置される環境を照明する環境を照明する照明装置ILMの分光放射輝度特性、ディスプレイモニタ1606の色再現特性、観察者obsの視感度に対応して色変換処理を行う。
【0177】
図17は、色変換処理部1602の内部構成を概略的に説明するブロック図である。色変換処理部1602には、スペクトルセンサ1604とディスプレイモニタ1606とが接続される。スペクトルセンサ1604は、ディスプレイモニタ1606の設置される環境を照明する照明光ILM(図16)の分光放射輝度特性と、ディスプレイモニタ1606の色再現特性とを計測可能に構成される。
【0178】
ディスプレイモニタ1606の色再現特性の計測は、例えば一日の中でディスプレイモニタ1606の電源を最初に投入してから所定の時間、例えば30分経過した後等に行う。照明光ILMの分光放射輝度特性は、所定の時間間隔、例えば60秒、5分、1時間等の時間間隔で行う。スペクトルセンサ1604は、上記計測を行った後、観察光源スペクトル情報を色変換マトリクス生成部1614に出力し、モニタ色特性情報をモニタプロファイル生成部1616に出力する。観察光源スペクトル情報は、照明装置ILMの分光放射輝度特性に関連する情報である。モニタ色特性情報は、ディスプレイモニタ1606に既定の映像信号を入力したときにディスプレイモニタ1606に表示される色の特性を特定可能な情報である。
【0179】
色変換処理部1602はコンピュータと、このコンピュータによって実行されるソフトウェアとによって構成されていてもよいし、専用のハードウェアによって構成されていてもよい。色変換処理部1602はまた、ディスプレイモニタ1606に内蔵されていても、セットトップボックスのような形態でディスプレイモニタ1606に外付けされてもよい。また、スペクトルセンサ1604は、色変換処理部1602に内蔵されていてもよい。以下では、色変換処理部1602がディスプレイモニタ1606に接続されるセットトップボックスであるものとして説明をする。
【0180】
色変換処理部1602は、信号分離部1610と、色変換データ作成部1612と、出力デバイス色変換部1618とを有する。色変換データ作成部1612は、色変換マトリクス生成部1614とモニタプロファイル生成部1616とを有する。出力デバイス色変換部1618は、マトリクス作用部1620とプロファイル作用部1622とを有する。
【0181】
信号分離部1610は、ネットワークNWを介してカメラ500Bから伝送されるNVデータから被写体統計データ、撮影照明情報、撮像部分光感度情報、画像データを抽出する。これらのうち、被写体統計データ、撮影照明情報、撮像部分光感度情報が色変換マトリクス生成部1614に出力され、画像データがマトリクス作用部1620に出力される。なお、NVデータはRAW画像データを含むものであることについて先に説明したが、このRAW画像データは信号分離部1610にて現像処理されるものとする。
【0182】
色変換マトリクス生成部1614は、信号分離部1610から上記被写体統計データ、撮影照明情報、撮像部分光感度情報を入力し、スペクトルセンサ1604から観察光源スペクトル情報を入力する。また、色変換処理部1602には観察者obsの視感度に関連する情報である観察者等色関数情報が予め入力されて記憶されており、色変換マトリクス生成部1614はこの観察者等色関数情報も入力する。この観察者等色関数情報は、第4の実施の形態で説明したものと同じであるので説明を省略する。
【0183】
色変換マトリクス生成部1614は、上述した観察光源スペクトル情報、被写体統計データ、撮影照明情報、撮像部分光感度情報、観察者等色関数情報に基づいて色変換マトリクスを生成してマトリクス作用部1620に出力する。
【0184】
モニタプロファイル生成部1616は、スペクトルセンサ1604からモニタ色特性情報を入力する。モニタプロファイル生成部1616はまた、出力色空間情報を入力する。この出力色空間情報は、ディスプレイモニタ1606の色空間を規定する情報である。例えば、ディスプレイモニタ1606がR(赤)G(緑)B(青)O(橙)C(水色)P(紫)の6原色入力のものである場合や、Adobe RGB(登録商標)等に準拠したものである場合、これらの色空間規格に対応する情報をモニタプロファイル生成部1616は入力する。この出力色空間情報は、色変換処理部1602に予め入力されて記憶されていてもよいし、ディスプレイモニタ1606から入力されてもよい。
【0185】
モニタプロファイル生成部1616は、入力したモニタ色特性情報と出力色空間情報とに基づいてモニタプロファイルを生成し、プロファイル作用部1622に出力する。このモニタプロファイルは、ルックアップテーブルおよびマトリクスのうち、少なくともいずれかとすることができる。
【0186】
信号分離部1610で抽出され、現像された画像データは出力デバイス色変換部1618に入力され、色変換マトリクス生成部で生成された色変換マトリクスが作用される。その結果、画像データはXYZ信号(測色値信号)に変換されてプロファイル作用部1622に入力される。プロファイル作用部1622では、入力されたXYZ信号に対してモニタプロファイル生成部1616で生成されたモニタプロファイルが作用される。そして、出力デバイス色変換部1618からディスプレイモニタ1606に信号が出力され、ディスプレイモニタ1606上には高度に色再現された画像が表示される。
【0187】
以上、第5の実施の形態によれば、いわゆる照明変換の処理が行われて、被写体があたかも観察者obsの眼の前にあって、照明光ILMによって照明されているかのような画像がディスプレイモニタ1606に表示される。また、環境光順応やディスプレイモニタの管面反射の影響(ディスプレイモニタに同じ色の画像が表示されていても照明光ILMの分光特性が変わると、ディスプレイモニタに表示される画像の色が異なる色に感じられてしまうこと)を減じることが可能となる。その結果、観察者objは被写体の色を正確に把握することが可能となる。
【0188】
− 第6の実施の形態 −
本発明の第6の実施の形態は、第2、第3の実施の形態と同様、図5に示されるような、カメラ500に多点計測式のスペクトル検出装置210が外付けされるものとして説明をする。カメラ500は、レンズ交換式であってもレンズ固定式であってもよい。また、撮影光学系404は、単焦点レンズであっても可変焦点距離のレンズであってもよい。カメラ内部の構成が第2の実施の形態や第5の実施の形態と異なるので、以下ではカメラ500Cと称する。
【0189】
第6の実施の形態においても、カメラ500Cはレンズ交換式のもので、カメラ500Cに装着されている撮影光学系404は可変焦点距離のレンズであるものとして説明をする。また、スペクトル検出装置内部の構成が図9や図11等に示されるものと異なるので、以下ではスペクトル検出装置210Aと称する。
【0190】
図18は、スペクトル検出装置210Aおよびカメラ500Cの情報処理系統の構成を概略的に説明するブロック図である。図18に示される各構成要素中、第1、第2、第3、第5の実施の形態で説明したものと同じ構成要素については図7、図9、図11、図16中の構成要素に付されるのと同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0191】
スペクトル検出装置210Aは、集光レンズ202と、センサモジュール206と、データメモリ120Aと、スペクトル推定処理部122Aと、RTC(リアルタイムクロック)1800と、スペクトル情報記憶部1802とを備える。センサモジュール206で1回の計測が行われると、センサモジュール206中の全センサブロックから出力されるセンサデータSD(k)がデータメモリ120Aに記憶される。
【0192】
スペクトル推定処理部122Aは、データメモリ120AからセンサデータSDi(k)を読み出し、センサデータSDi(k)をもとにスペクトル推定処理を行い、スペクトル情報SPDi(j)を生成する。このとき、1回の計測に対応して全てのセンサブロックから出力されるセンサデータSDi(k)のそれぞれに対応してスペクトル情報SPDi(j)が生成される。このように、1回の計測で得られた全てのセンサブロックそれぞれに対応するスペクトル情報SPDi(j)の集まりを本明細書ではスペクトル情報セットと称する。
【0193】
RTC1800は、スペクトル検出装置210Aの電源のオン/オフに拘わらず動作し続けて現在の日時を刻み続ける。RTC1800は、日時に加えて年月も管理可能に構成されることが望ましい。
【0194】
スペクトル検出装置210Aで1回のスペクトル検出が行われる度に、スペクトル推定処理部122Aで一組のスペクトル情報セットが生成される。スペクトル情報記憶部1802には、このスペクトル情報セットに、当該スペクトル情報セットを得るためのスペクトル検出がスペクトル検出装置210Aで行われたときの日時を導出可能な検出日時情報が付加されて記憶される。
【0195】
スペクトル検出装置210Aは、以下の2つのスペクトル検出動作モードを有していていずれかのモードをユーザが選択可能に構成される。すなわち、一つは撮影同期検出方式のスペクトル検出動作モードであり、もう一つは一定間隔検出方式のスペクトル検出動作モードである。
【0196】
撮影同期検出方式のスペクトル検出動作モードは、カメラ500Cで撮影が行われるタイミングに同期してスペクトル検出を行う動作モードである。例えば、カメラ500Cで撮影が行われるタイミングを、フラッシュシンクロ接点等を介して検出可能な場合、撮影同期検出方式でスペクトル検出動作が行われる。図18はその例を示している。
【0197】
一定間隔検出方式のスペクトル検出動作モードは、略一定の時間間隔、例えば10秒、30秒といった時間間隔でスペクトル検出を繰り返し行う動作モードである。例えば、カメラ500Cがフラッシュシンクロ接点を有していないか、あるいは撮影が行われるタイミングを知ることのできる信号を出力可能に構成されていない場合、一定間隔検出方式でのスペクトル検出動作が行われる。
【0198】
上述したいずれのスペクトル検出動作モードにおいても、生成されたスペクトル情報セットにRTC1800から出力された日時情報に基づいて生成された検出日時情報が付加され、スペクトル情報データログとしてスペクトル情報記憶部1802に記憶される。すなわち、スペクトル情報データログは、検出日時情報の付加されたスペクトル情報セットが時系列に蓄積されたものである。
【0199】
カメラ500Cは、撮像部700と、撮影条件情報取得部710と、画像ファイル記憶部1812と、RTC1810とを備える。RTC1810は、カメラ500Cの電源のオン/オフに拘わらず動作し続けて現在の日時を刻み続ける。RTC1810は、日時に加えて年月も管理可能に構成されることが望ましい。
【0200】
ところで、カメラ500Cとスペクトル検出装置210Aとの間で情報の伝達が可能に構成される場合、スペクトル検出装置210AのRTC1800を省いてもよい。そして、スペクトル検出装置210Aは、カメラ500CのRTC1810から日時に関する情報を取得して検出日時情報を生成する。
【0201】
カメラ500Cで撮影動作が行われると、撮像部700で生成された画像データに、撮影条件情報取得部710から出力された撮影条件情報と、RTC1810から出力された日時情報に基づいて生成された撮影日時情報とが付加され、画像ファイルとして画像ファイル記憶部1812に記憶される。
【0202】
図19は、画像処理装置1900の概略的構成を説明するブロック図である。画像処理装置1900は、PCおよびPC上で実行されるプログラムによって構成されたものとすることができる。図19に示される各構成要素中、第1〜第3の実施の形態で説明したものと同じ構成要素については図7、図9、図11中の構成要素に付されるのと同じ符号を付してその説明を省略する。
【0203】
第6の実施の形態において、画像処理装置1900は最初に、画像ファイル記憶部1812に記憶されている画像ファイルと、スペクトル情報記憶部1802に記憶されているスペクトル情報データログとを読み出し、以下に説明する情報関連付けの処理をする。情報関連付けの処理とは、画像ファイル中の撮影日時情報と、スペクトル情報データログ中の検出日時情報とに基づき、撮影日時と検出日時とが最も近い組み合わせとなるように画像ファイルとスペクトル情報セットとを関連付ける処理である。
【0204】
スペクトル検出装置210Aが撮影同期検出方式のスペクトル検出動作モードでスペクトル検出が行われた場合には、画像ファイルとスペクトル情報セットとの関連付けは、比較的単純な処理によって情報関連付けの処理をすることが可能である。
【0205】
一方、一定間隔検出方式のスペクトル検出動作モードでスペクトル検出が行われた場合には、撮影が行われた日時とスペクトル検出が行われた日時とは必ずしも一致しない。したがって、ある画像ファイルと関連付ける対象のスペクトル情報セットを探索する際には、その画像ファイルが生成される際に撮影が行われた日時に最も近いタイミングで検出されて得られたスペクトル情報セットを抽出する処理が行われる。
【0206】
上述した情報関連付けの処理に続き、関連付けされた画像ファイルとスペクトル情報セットとを用い、画像処理(色再現処理)が行われる。このときに、画像ファイルに付加される撮影条件情報に基づき、スペクトル情報と、画像ファイル中の画像データを分析した結果とのうち、すくなくともいずれかを参照して色再現処理を行うように決定される。
【0207】
スペクトル情報を参照する際には、スペクトル情報セットに含まれる複数のスペクトル情報のうち、参照する対象となるスペクトル情報が撮影条件情報に基づいて1または複数が選択される。
【0208】
画像処理装置1900について図19を参照して説明する。画像処理装置1900は、画像ファイル読み出し部1902と、情報関連付け部1904と、スペクトル情報読み出し部1906と、色温度検出部702Aと、第1光源検出部704と、白色点抽出処理部
720Bと、色再現処理方法決定部712Dと、スペクトル情報抽出部718Aと、第2光源検出部716Aと、画像処理部706Bとを有する。
【0209】
画像ファイル読み出し部1902は、画像ファイル記憶部1812に記憶される画像ファイルを一つずつ、あるは一回の読み出し動作で複数の画像ファイルを読み出す。本実施の形態において画像ファイル記憶部1812はカメラ500Cに内蔵されるメモリ、あるいはカメラ500Cに着脱自在に装着されるメモリカードであるものとする。
【0210】
画像ファイル記憶部1812がカメラ500Cに内蔵されるメモリである場合、カメラ500Cと画像処理装置1900とは有線または無線の形態で接続され、画像ファイル読み出し部1902はカメラ500Cから転送される画像ファイルを受信する。
【0211】
画像ファイル記憶部1812がメモリカードである場合、カメラ500Cから取り外されたメモリカードが、画像処理装置1900に備えられるメモリカードリーダに装着され、画像ファイル読み出し部1902はメモリカードから画像ファイルを読み出す。
【0212】
画像ファイル読み出し部1902は、受信した、あるいは読み出した画像ファイルから画像データ、撮影日時情報、および撮影条件情報を抽出する。画像ファイルがRAW画像データを含む場合、画像ファイル読み出し部1902は現像処理も行う。そして、画像データを画像処理部706B、色温度検出部702A、白色点抽出処理部720Bに、撮影条件情報を色再現処理方法決定部712Dに、撮影日時情報を情報関連付け部1904に、それぞれ出力する。
【0213】
スペクトル情報読み出し部1906は、スペクトル情報記憶部1802に記憶されるスペクトル情報データログを読み出す。本実施の形態においてスペクトル情報記憶部1802はスペクトル検出装置210Aに内蔵されるメモリ、あるいはスペクトル検出装置210Aに着脱自在に装着されるメモリカードであるものとする。
【0214】
スペクトル情報記憶部1802がスペクトル検出装置210Aに内蔵されるメモリである場合、スペクトル検出装置210Aと画像処理装置1900とは有線または無線の形態で接続され、スペクトル情報読み出し部1906はスペクトル検出装置210Aから転送されるスペクトル情報データログを受信する。
【0215】
スペクトル情報記憶部1802がメモリカードである場合、スペクトル検出装置210Aから取り外されたメモリカードが、画像処理装置1900に備えられるメモリカードリーダに装着され、スペクトル情報読み出し部1906はメモリカードからスペクトル情報データログを読み出す。
【0216】
スペクトル情報読み出し部1906は、受信または読み出したスペクトル情報データログから検出日時情報およびスペクトル情報セットを抽出する。そして検出日時情を情報関連付け部1904に出力する。
【0217】
情報関連付け部1904は、画像ファイル読み出し部1902から入力した撮影日時情報とスペクトル情報読み出し部1906から入力した検出日時情報とに基づき、画像ファイルとスペクトル情報セットとを関連付ける処理である情報関連付け処理を行う。つまり、画像ファイル読み出し部1902で受信した、あるいは読み出したある画像ファイルに対し、この画像ファイルが生成される際にカメラ500Cで撮影が行われたタイミングに最も近いタイミングにおいてスペクトル検出装置210Aで検出して生成されたスペクトル情報セットを特定し、これらの画像ファイルとスペクトル情報セットとを関連付ける処理を行う。情報関連付け部1904は、画像ファイル読み出し部1902で受信または読み出したすべての画像ファイルに対して上述した情報関連付け処理を行う。
【0218】
情報関連付け部1904は、画像ファイル読み出し部1902に対し、上記情報関連付け処理によって得られた関連付け情報を出力する。この関連付け情報は、画像ファイルとスペクトル情報セットとを関連付けする情報である。画像ファイル読み出し部1902は、画像ファイル中に上記関連付け情報を付加する。あるいは、画像ファイル読み出し部1902は、上記関連付け情報に対応するスペクトル情報セットをスペクトル情報読み出し部1906から取得して画像ファイル中に付加することも可能である。
【0219】
なお、上述した画像ファイル読み出し部1902、情報関連付け部1904、スペクトル情報読み出し部1906についてはスペクトル検出装置210A内に内蔵することも可能である。この場合、画像ファイルを記憶したメモリカードをカメラ500Cから取り出してスペクトル検出装置210Aに備えられるコネクタにメモリカードを挿入することにより、上記情報関連付けの処理が行われる。
【0220】
色温度検出部702Aは、画像ファイル読み出し部1902から出力された画像データを処理し、撮影時に被写体を照明していた撮影照明光の色温度を推定する処理を行う。この、撮影照明光の色温度を推定する処理は第1の実施の形態中の色温度検出部702(図7)で行われる処理と同様であるのでその説明を省略する。
【0221】
第1光源検出部704は、色温度検出部702Aから入力した撮影照明光の色温度情報に基づき、撮影照明光の種類を特定する。第1光源検出部704で特定可能な撮影照明光の種類としては、第1の実施の形態で説明したのと同様、晴天太陽光、曇天、タングステン灯、白色蛍光灯、昼光色蛍光灯などがある。
【0222】
白色点抽出処理部720Bは、画像ファイル読み出し部1902から出力される画像データにより生成される画像中に含まれる白色部分を抽出する処理を行う。この白色部分を抽出する処理については第3の実施の形態中の白色点抽出処理部720(図11)で行われる処理と同様であるのでその説明を省略する。
【0223】
色再現処理方法決定部712Dは、画像ファイル読み出し部1902から入力した撮影条件情報と、白色点抽出処理部720Bから入力した白色点位置情報とに基づき、撮影スペクトル情報と、画像データを分析した結果とのうち、少なくともいずれかに基づいて色再現処理を行うように決定する。
【0224】
スペクトル情報を参照する際に、色再現処理方法決定部712Dは画像ファイル読み出し部1902から入力した関連づけ情報をスペクトル情報抽出部718Aに出力する。色再現処理方法決定部712Dはまた、複数のスペクトル情報SPD1(j)、SPD2(j)、… のうち、参照する対象のスペクトル情報を撮影条件情報と白色点位置情報とに基づいて選択する。色再現処理方法決定部712Dは、この選択結果に対応する情報であるスペクトル選択情報をスペクトル情報抽出部718Aに出力する。色再現処理方法決定部712Dは、選択したスペクトル情報と、画像データを分析した結果とのうち、少なくともいずれかを参照して色再現処理を行うように決定する。
【0225】
色再現処理方法決定部712Dでスペクトル情報が選択される際の方法については第3の実施の形態で図6や図10を参照して説明したものと同様とすることが可能である。このとき、図6に示される寸法Dについては、ユーザが画像処理装置1900に備えられるキーボードやコンピュータマウス等を操作して入力することが可能に構成されていてもよいし、撮影に用いられるカメラ500Cの機種名とそれに対応する寸法Dとの関係が予め画像処理装置1900内に記憶されていてもよい。その場合、画像ファイル中のタグ情報に含まれる機種名情報に基づいて対応する寸法Dの情報を読み出すことができる。
【0226】
また、第3の実施の形態でも説明したとおり、被写体中の白色点(白いものが写っている領域)からの光を受光するセンサブロックが存在する場合、そのセンサブロックからの出力をもとに得られるスペクトル情報は撮影照明光の分光放射輝度をより正確に反映したものとなる。したがって、色再現処理方法決定部712Dは、被写体中の白色点からの光を受光するセンサブロックからのスペクトル情報を選択するように決定することが望ましい。
【0227】
スペクトル情報抽出部718Aは、スペクトル情報読み出し部1906が受信または読み出したスペクトル情報データログ中、関連づけ情報で特定されるスペクトル情報セットを抽出する。スペクトル情報抽出部718Aはさらに、抽出されたスペクトル情報セット中からスペクトル選択情報で特定される一または複数のスペクトル情報を抽出して第2光源検出部716Aに出力する。
【0228】
第2光源検出部716Aは、スペクトル情報抽出部718Aから入力したスペクトル情報をもとに、撮影照明光の種類を特定する処理を行う。第2光源検出部716Aにおける撮影照明光の種類特定の処理は、第1の実施の形態で説明した第2光源検出部716での処理と同様であるので説明を省略する。
【0229】
色再現処理方法決定部712Dは、上述したスペクトル情報選択の処理の他に、第1の実施の形態で図8を参照して説明した色再現処理方法決定の処理も行う。この処理の詳細については第1、第2の実施の形態で説明したので説明を省略する。
【0230】
画像処理部706Bは、画像ファイル読み出し部1902から入力された画像データに対し、色再現処理方法決定部712Dで決定された色再現処理1から4のうちのいずれかによって色再現処理を行う。画像処理部706Bで行われる色再現処理としては、画像データに対して色バランスを調節する処理とすることが可能である。
【0231】
以上では、画像処理装置1900が、PCおよびPC上で実行されるプログラムによって構成されたものである例について説明した。しかし、この画像処理装置1900はカメラ500C内に備えられていても、スペクトル検出装置210A内に設けられていてもよい。
【0232】
画像処理装置1900がカメラ500C内に設けられる場合、カメラ500Cおよびスペクトル検出装置210Aの双方には有線または無線の形態で互いに接続し、情報の授受が可能な通信部を備えるものとする。撮影動作中、カメラ500Cとスペクトル検出装置210Aとは電気的に接続されていなくてもよい。そして、カメラ500Cとスペクトル検出装置210Aとを、ユーザが上記通信部を介して接続したときに、スペクトル情報読み出し部1906がスペクトル検出装置210Aからスペクトル情報データログを受信する。そして画像処理装置1900が上述した処理を行うことが可能である。
【0233】
画像処理装置1900がスペクトル検出装置210A内に設けられる場合、スペクトル検出装置210Aにメモリカードを接続するためのコネクタ等を備えるものとする。そして、画像ファイルを記憶したメモリカードがカメラ500Cから取り外されてスペクトル検出装置210Aのコネクタに接続されたときに、画像処理装置1900が上述した処理を行うことが可能である。
【0234】
以上に説明したように、本発明の第6の実施の形態によれば、カメラ500Cで撮影が行われているとき、外光式のスペクトル検出装置210Aとカメラ500Cとは電気的に接続されている必要が無い。したがって、カメラ500Cが例えば旧製品で、スペクトル検出装置210Aからのスペクトル情報を用いることを想定した仕様を有していなくても、より高度の色再現が可能となる。
【0235】
また、例えばカメラ500Cが早いコマ速での連続撮影機能を有している場合等で、色再現処理が連続撮影の速度に追いつかないような場合、カメラ500Cでの撮影動作中にスペクトル検出装置210Aで逐次スペクトル検出が行われてスペクトル情報データログが生成され、後処理によって高度の色再現処理を行うことが可能となる。
【0236】
以上では撮影日時情報と検出日時情報とに基づいて情報関連付けの処理をする例について説明したが、本発明はこの例に限られるものではない。例えば、カメラ500Cとスペクトル検出装置210Aとの双方にGPSセンサを有している場合、撮影時およびスペクトル検出時にGPS値を記録することが可能である。そして、画像ファイル中のGPS値とスペクトル情報セットに付加されるGPS値とが互いに最も近い組み合わせとなるように情報関連付けをすればよい。
【0237】
あるいは、カメラ500Cで撮影をしたときに、カメラ500Cのモニタディスプレイ上に画像IDが表示されるようにしてもよい。画像IDを見たユーザが、スペクトル検出装置210Aにその画像IDを入力することにより、後で情報関連付けをすることが可能となる。
【0238】
また、カメラ500Cとスペクトル検出装置210Aとの間で通信が可能に構成されている場合、カメラ500Cで撮影が行われたときにカメラ500Cから画像IDを出力することができる。スペクトル検出装置210は、受信した画像IDをスペクトル情報セットに付加する。このようにすることにより、後で情報関連付けの処理をすることが可能となる。
【0239】
カメラ500Cは静止画および動画のうち、少なくともいずれかを撮影可能に構成される。カメラ500Cで動画撮影が行われ、スペクトル検出装置210Aは撮影同期検出方式のスペクトル検出動作モードで動作可能な場合、以下のようにスペクトル検出動作が行われることが望ましい。
【0240】
すなわち、カメラ500Cで動画の撮影が開始されたのに同期してスペクトル検出装置210Aはスペクトル検出動作を行う。その後、カメラ500Cで動画撮影が継続して行われている間は、スペクトル検出装置210Aにおいて所定の時間間隔、たとえば5秒、10秒、30秒といった時間間隔でスペクトル検出動作が行われてスペクトル情報データログが生成される。後で動画を再生する際にスペクトル情報が参照されて色再現処理が行われる。このとき、スペクトル検出動作はカメラ500Cでの動画撮影開始後も一定の時間間隔で行われるので、撮影シーンが大きく変化するような状況でもそのシーンに応じた色再現処理を行うことが可能となる。
【0241】
以上、第1から第6の実施の形態によって本発明について説明したが、本明細書中には以下に示す態様の発明も含まれる。
【0242】
[1] 被写界中の被写体に向けられた撮影光学系によって形成される被写体像を色分解して撮影する撮像部から出力されたカラーの画像データに色再現処理をする画像処理装置であって、
前記撮影光学系で撮影が行われたときに設定されていた画角および撮影距離を導出可能な情報を含む撮影条件情報を取得する撮影条件情報取得部と、
前記撮影光学系とは異なる集光光学系によって集光された前記被写界からの光を受光し、前記撮像部で色分解可能な色数よりも多い色数で色分解して検出するカラーセンサを有して、前記カラーセンサの出力をもとにスペクトル情報を出力する外光式スペクトル検出装置から出力される前記スペクトル情報を入力するスペクトル情報入力部と、
前記撮影条件情報取得部で取得した撮影条件情報に基づき、前記スペクトル情報を参照するか否かを決定し、前記スペクトル情報を参照しないと決定した場合には前記スペクトル情報を参照せず、前記画像データを分析した結果に基づいて前記色再現処理を行うように決定し、前記スペクトル情報を参照すると決定した場合には、前記画像データを分析した結果と前記外光式スペクトル検出装置から出力される前記スペクトル情報とのうち、少なくとも前記スペクトル情報を参照して前記色再現処理を行うように決定する色再現処理方法決定部と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
[2] 被写界中の被写体に向けられた撮影光学系によって形成される被写体像を色分解して撮影する撮像部から出力されたカラーの画像データに色再現処理をする画像処理装置であって、
前記撮影光学系で撮影が行われたときに設定されていた画角および撮影距離を導出可能な情報を含む撮影条件情報を取得する撮影条件情報取得部と、
前記撮影光学系とは異なる集光光学系によって集光された前記被写界からの光を受光し、前記撮像部で色分解可能な色数よりも多い色数で色分解して検出するカラーセンサを複数有して、前記複数のカラーセンサそれぞれからの出力に対応して複数のスペクトル情報を出力する外光式スペクトル検出装置から出力される前記スペクトル情報を入力するスペクトル情報入力部と、
前記撮影条件情報取得部で取得した撮影条件情報に基づき、前記スペクトル情報を参照するか否かを決定し、前記スペクトル情報を参照しないと決定した場合には前記スペクトル情報を参照せず、前記画像データを分析した結果に基づいて前記色再現処理を行うように決定し、前記スペクトル情報を参照すると決定した場合には、前記複数のスペクトル情報のうち、参照する対象のスペクトル情報を前記撮影条件情報に基づいて選択し、前記選択したスペクトル情報と、前記画像データを分析した結果とのうち、少なくとも前記選択したスペクトル情報を参照して前記色再現処理を行うように決定する色再現処理方法決定部と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
[3] 被写界中の被写体に向けられた撮影光学系によって形成される被写体像を色分解して撮影する撮像部から出力されたカラーの画像データに色再現処理をする画像処理装置であって、
前記撮影光学系で撮影が行われたときに設定されていた画角および撮影距離を導出可能な撮影条件情報と、前記撮影光学系で撮影が行われたときの日時である撮影日時を導出可能な撮影日時情報とを含む付加情報を前記画像データに付加して生成される画像ファイルを記憶する画像ファイル記憶部から前記画像ファイルを読み出す画像ファイル読み出し部と、
前記撮影光学系とは異なる集光光学系によって集光された前記被写界からの光を受光し、前記撮像部で色分解可能な色数よりも多い色数で色分解して検出するカラーセンサを複数有して、前記複数のカラーセンサそれぞれから出力される複数のスペクトル情報を含むスペクトル情報セットを出力する外光式スペクトル検出装置により、前記撮影光学系で撮影が行われたタイミングに同期して、あるいは前記タイミングとは同期せずに一定の時間間隔で、スペクトル検出が行われるたびごとに出力される前記スペクトル情報セットに前記スペクトル検出が行われたときの日時であるスペクトル検出日時を導出可能な検出日時情報を付加してスペクトル情報データログとして記憶するスペクトル情報記憶部から前記スペクトル情報データログを読み出すスペクトル情報読み出し部と、
前記画像ファイル読み出し部で読み出された前記画像ファイル中の前記撮影日時情報と、前記スペクトル情報読み出し部で読み出された前記スペクトル情報データログ中の前記検出日時情報とに基づき、前記撮影日時と前記スペクトル検出日時とが最も近い組み合わせとなるように前記画像ファイルと前記スペクトル情報セットとを関連付ける情報関連付け処理部と、
前記情報関連付け処理部で関連付けされた前記画像ファイルおよび前記スペクトル情報セットを用い、前記画像ファイルに付加される前記撮影条件情報に基づき、前記スペクトル情報を参照するか否かを決定し、前記スペクトル情報を参照しないと決定した場合には前記スペクトル情報を参照せず、前記画像データを分析した結果に基づいて前記色再現処理を行うように決定し、前記スペクトル情報を参照すると決定した場合には、前記スペクトル情報セットに含まれる前記複数のスペクトル情報のうち、参照する対象となるスペクトル情報を前記撮影条件情報に基づいて1または複数選択し、前記参照する対象となるスペクトル情報と、前記画像データを分析した結果とのうち、少なくとも前記参照する対象となるスペクトル情報を参照して前記色再現処理を行うように決定する色再現処理方法決定部と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【0243】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の改良・変更が可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0244】
本発明は、ディスプレイモニタ、ディスプレイモニタに接続されるセットトップボックス、画像処理装置、スチルカメラやムービーカメラ等の撮影装置、撮影装置に装着可能なスペクトル検出装置などに適用可能である。
【符号の説明】
【0245】
102、202 …集光レンズ
104 … 拡散板
106、206 … センサモジュール
110 … 一点計測式スペクトル検出装置
122、122A … スペクトル推定処理部
210、210A … 多点計測式スペクトル検出装置
400、500、500A、500B、500C … カメラ
404 … 撮影光学系
406 … レンズ制御部
700 … 撮像部
702、702A … 色温度検出部
704 … 第1光源検出部
706、706A … 画像処理部
710 … 撮影条件取得部
712、712A、712B、712C、712D …色再現処理方法決定部
714、714A … スペクトル情報入力部
716、716A … 第2光源検出部
718、718A … スペクトル情報抽出部
720、720A、720B … 白色点抽出部
1200、1900 … 画像処理装置
1202 … 画像データ記憶部
1204 … 情報分離部
1206、1206A … スペクトル導出処理部
1208、1208A … 被写体情報導出部
1210 … 色変換処理部
1212 … 分光反射スペクトル導出部
1214 … 被写体統計データ導出部
1216 … 色変換データ作成部
1218 … 出力デバイス色変換部
1600 … NVデータ生成部
1602 … 色変換処理部
1604 … スペクトルセンサ
1606 … ディスプレイモニタ
1610 … 信号分離部
1612 … 色変換データ作成部
1614 … 色変換マトリクス生成部
1616 … モニタプロファイル生成部
1618 … 出力デバイス色変換部
1620 … マトリクス作用部
1622 … プロファイル作用部
1800、1810 … リアルタイムクロック
1802 … スペクトル情報記憶部
1812 … 画像ファイル記憶部
1902 … 画像ファイル読み出し部
1904 … 情報関連付け部
1906 … スペクトル情報読み出し部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写界中の被写体に向けられた撮影光学系によって形成される被写体像を色分解して撮影する撮像部から出力されたカラーの画像データに色再現処理をする画像処理装置であって、
前記撮影光学系で撮影が行われたときに設定されていた画角および撮影距離を導出可能な情報を含む撮影条件情報を取得する撮影条件情報取得部と、
前記撮影光学系とは異なる集光光学系によって集光された前記被写界からの光を受光し、前記撮像部で色分解可能な色数よりも多い色数で色分解して検出するカラーセンサを有して、前記カラーセンサの出力をもとにスペクトル情報を出力する外光式スペクトル検出装置から出力される前記スペクトル情報を入力するスペクトル情報入力部と、
前記撮影条件情報取得部で取得した撮影条件情報に基づき、前記外光式スペクトル検出装置から出力される前記スペクトル情報と、前記画像データを分析した結果とのうち、少なくともいずれかを参照して前記色再現処理を行うように決定する色再現処理方法決定部と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記色再現処理方法決定部が、前記撮影条件情報取得部で取得した撮影条件情報に基づき、前記スペクトル情報を参照するか否かを決定し、前記スペクトル情報を参照しないと決定した場合には前記スペクトル情報を参照せず、前記画像データを分析した結果に基づいて前記色再現処理を行うように決定し、前記スペクトル情報を参照すると決定した場合には、前記画像データを分析した結果と前記外光式スペクトル検出装置から出力される前記スペクトル情報とのうち、少なくとも前記スペクトル情報を参照して前記色再現処理を行うように決定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
被写界中の被写体に向けられた撮影光学系によって形成される被写体像を色分解して撮影する撮像部から出力されたカラーの画像データに色再現処理をする画像処理装置であって、
前記撮影光学系で撮影が行われたときに設定されていた画角および撮影距離を導出可能な情報を含む撮影条件情報を取得する撮影条件情報取得部と、
前記撮影光学系とは異なる集光光学系によって集光された前記被写界からの光を受光し、前記撮像部で色分解可能な色数よりも多い色数で色分解して検出するカラーセンサを複数有して、前記複数のカラーセンサそれぞれからの出力に対応して複数のスペクトル情報を出力する外光式スペクトル検出装置から出力される前記スペクトル情報を入力するスペクトル情報入力部と、
前記撮影条件情報取得部で取得した撮影条件情報に基づき、前記外光式スペクトル検出装置から出力される前記スペクトル情報と、前記画像データを分析した結果とのうち、少なくともいずれかを参照して前記色再現処理を行うように決定する色再現処理方法決定部と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
前記色再現処理方法決定部が、前記撮影条件情報取得部で取得した撮影条件情報に基づき、前記スペクトル情報を参照するか否かを決定し、前記スペクトル情報を参照しないと決定した場合には前記スペクトル情報を参照せず、前記画像データを分析した結果に基づいて前記色再現処理を行うように決定し、前記スペクトル情報を参照すると決定した場合には、前記複数のスペクトル情報のうち、参照する対象のスペクトル情報を前記撮影条件情報に基づいて選択し、前記選択したスペクトル情報と、前記画像データを分析した結果とのうち、少なくとも前記スペクトル情報を参照して前記色再現処理を行うように決定することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記色再現処理方法決定部が、前記複数のスペクトル情報のうち、前記撮影光学系によって撮影される範囲からの光を受光する1または複数のカラーセンサからの出力に対応する前記スペクトル情報を、参照する対象のスペクトル情報として選択することを特徴とする請求項3または4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記画像データによって形成される画像中に写っている被写体像中における白色部分の抽出を試み、前記白色部分が存在する場合には前記白色部分の写っている前記画像中の位置に関する白色点位置情報を出力する白色点抽出処理部をさらに備え、
前記色再現処理方法決定部は、前記撮影条件情報取得部で取得した撮影条件情報と、前記白色点抽出処理部から出力された前記白色点位置情報とに基づき、前記複数のスペクトル情報のうち、前記被写体中の前記白色部分に対応する位置からの光を受光する1または複数のカラーセンサからの出力に対応するスペクトル情報を、参照する対象のスペクトル情報として選択することを特徴とする請求項3または4に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記白色点抽出処理部が、前記画像データによって形成される画像中に前記被写体とともに写し込まれている白色色標の前記画像中における位置に対応する情報を前記白色点位置情報として出力することを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記色再現処理方法決定部で選択された前記スペクトル情報を参照して、撮影時に前記被写体を照明していた光源の特性情報である撮影照明情報を導出し、前記被写体中の前記白色部分に対応する位置以外の位置からの光を受光するセンサから出力されるスペクトル情報を参照して前記被写体表面のスペクトルに関する情報である被写体スペクトル情報を導出する撮影照明情報導出部と、
前記撮影照明情報導出部で導出された前記被写体スペクトル情報と前記撮影照明情報とに基づいて前記被写体の分光反射スペクトル特性を導出し、導出された前記分光反射スペクトルに基づいて被写体統計データを生成する被写体統計データ導出部と
をさらに備えることを特徴とする請求項6または7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
被写界中の被写体に向けられた撮影光学系によって形成される被写体像を色分解して撮影する撮像部から出力されたカラーの画像データに色再現処理をする画像処理装置であって、
前記撮影光学系で撮影が行われたときに設定されていた画角および撮影距離を導出可能な撮影条件情報を含む付加情報を前記画像データに付加して生成される画像ファイルを記憶する画像ファイル記憶部から前記画像ファイルを読み出す画像ファイル読み出し部と、
前記撮影光学系とは異なる集光光学系によって集光された前記被写界からの光を受光し、前記撮像部で色分解可能な色数よりも多い色数で色分解して検出するカラーセンサを複数有して、前記複数のカラーセンサそれぞれから出力される複数のスペクトル情報を含むスペクトル情報セットを出力する外光式スペクトル検出装置により、前記撮影光学系で撮影が行われたタイミングに同期して、あるいは前記タイミングとは同期せずに一定の時間間隔で、スペクトル検出が行われるたびごとに出力される前記スペクトル情報セットがスペクトル情報データログとして記憶されるスペクトル情報記憶部から前記スペクトル情報データログを読み出すスペクトル情報読み出し部と、
前記画像ファイル読み出し部で読み出された前記画像ファイルと、前記スペクトル情報読み出し部で読み出された前記スペクトル情報データログ中に含まれるスペクトル情報セットのうちの前記画像ファイルに対応するものとを関連付ける情報関連付け処理部と、
前記情報関連付け処理部で関連付けされた前記スペクトル情報セットに含まれる前記複数のスペクトル情報のうち、前記撮影条件情報に基づいて選択された1または複数のスペクトル情報と、前記画像データを分析した結果とのうち、前記撮影条件情報に基づいて少なくともいずれかを参照して前記色再現処理を行うように決定する色再現処理方法決定部と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項10】
前記色処理方法決定部が、前記スペクトル情報セットに含まれる前記複数のスペクトル情報のうち、前記撮影光学系によって撮影される範囲からの光を受光する1または複数のカラーセンサからの出力に対応するスペクトル情報を、前記参照する対象となるスペクトル情報として選択することを特徴とする請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記情報関連付け処理部で関連付けされた前記画像ファイル中の画像データによって形成される画像中に写っている被写体の像中における白色部分の抽出を試み、前記白色部分が存在する場合には前記白色部分の写っている前記画像中の位置に関する白色点位置情報を出力する白色点抽出処理部をさらに備え、
前記色処理方法決定部が、前記白色点抽出処理部から出力された前記白色点位置情報に基づき、前記スペクトル情報セットに含まれる前記複数のスペクトル情報のうち、前記被写体中の前記白色部分に対応する位置からの光を受光する1または複数のカラーセンサからの出力に対応するスペクトル情報を、前記参照する対象となるスペクトル情報として選択することを特徴とする請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項1】
被写界中の被写体に向けられた撮影光学系によって形成される被写体像を色分解して撮影する撮像部から出力されたカラーの画像データに色再現処理をする画像処理装置であって、
前記撮影光学系で撮影が行われたときに設定されていた画角および撮影距離を導出可能な情報を含む撮影条件情報を取得する撮影条件情報取得部と、
前記撮影光学系とは異なる集光光学系によって集光された前記被写界からの光を受光し、前記撮像部で色分解可能な色数よりも多い色数で色分解して検出するカラーセンサを有して、前記カラーセンサの出力をもとにスペクトル情報を出力する外光式スペクトル検出装置から出力される前記スペクトル情報を入力するスペクトル情報入力部と、
前記撮影条件情報取得部で取得した撮影条件情報に基づき、前記外光式スペクトル検出装置から出力される前記スペクトル情報と、前記画像データを分析した結果とのうち、少なくともいずれかを参照して前記色再現処理を行うように決定する色再現処理方法決定部と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記色再現処理方法決定部が、前記撮影条件情報取得部で取得した撮影条件情報に基づき、前記スペクトル情報を参照するか否かを決定し、前記スペクトル情報を参照しないと決定した場合には前記スペクトル情報を参照せず、前記画像データを分析した結果に基づいて前記色再現処理を行うように決定し、前記スペクトル情報を参照すると決定した場合には、前記画像データを分析した結果と前記外光式スペクトル検出装置から出力される前記スペクトル情報とのうち、少なくとも前記スペクトル情報を参照して前記色再現処理を行うように決定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
被写界中の被写体に向けられた撮影光学系によって形成される被写体像を色分解して撮影する撮像部から出力されたカラーの画像データに色再現処理をする画像処理装置であって、
前記撮影光学系で撮影が行われたときに設定されていた画角および撮影距離を導出可能な情報を含む撮影条件情報を取得する撮影条件情報取得部と、
前記撮影光学系とは異なる集光光学系によって集光された前記被写界からの光を受光し、前記撮像部で色分解可能な色数よりも多い色数で色分解して検出するカラーセンサを複数有して、前記複数のカラーセンサそれぞれからの出力に対応して複数のスペクトル情報を出力する外光式スペクトル検出装置から出力される前記スペクトル情報を入力するスペクトル情報入力部と、
前記撮影条件情報取得部で取得した撮影条件情報に基づき、前記外光式スペクトル検出装置から出力される前記スペクトル情報と、前記画像データを分析した結果とのうち、少なくともいずれかを参照して前記色再現処理を行うように決定する色再現処理方法決定部と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
前記色再現処理方法決定部が、前記撮影条件情報取得部で取得した撮影条件情報に基づき、前記スペクトル情報を参照するか否かを決定し、前記スペクトル情報を参照しないと決定した場合には前記スペクトル情報を参照せず、前記画像データを分析した結果に基づいて前記色再現処理を行うように決定し、前記スペクトル情報を参照すると決定した場合には、前記複数のスペクトル情報のうち、参照する対象のスペクトル情報を前記撮影条件情報に基づいて選択し、前記選択したスペクトル情報と、前記画像データを分析した結果とのうち、少なくとも前記スペクトル情報を参照して前記色再現処理を行うように決定することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記色再現処理方法決定部が、前記複数のスペクトル情報のうち、前記撮影光学系によって撮影される範囲からの光を受光する1または複数のカラーセンサからの出力に対応する前記スペクトル情報を、参照する対象のスペクトル情報として選択することを特徴とする請求項3または4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記画像データによって形成される画像中に写っている被写体像中における白色部分の抽出を試み、前記白色部分が存在する場合には前記白色部分の写っている前記画像中の位置に関する白色点位置情報を出力する白色点抽出処理部をさらに備え、
前記色再現処理方法決定部は、前記撮影条件情報取得部で取得した撮影条件情報と、前記白色点抽出処理部から出力された前記白色点位置情報とに基づき、前記複数のスペクトル情報のうち、前記被写体中の前記白色部分に対応する位置からの光を受光する1または複数のカラーセンサからの出力に対応するスペクトル情報を、参照する対象のスペクトル情報として選択することを特徴とする請求項3または4に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記白色点抽出処理部が、前記画像データによって形成される画像中に前記被写体とともに写し込まれている白色色標の前記画像中における位置に対応する情報を前記白色点位置情報として出力することを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記色再現処理方法決定部で選択された前記スペクトル情報を参照して、撮影時に前記被写体を照明していた光源の特性情報である撮影照明情報を導出し、前記被写体中の前記白色部分に対応する位置以外の位置からの光を受光するセンサから出力されるスペクトル情報を参照して前記被写体表面のスペクトルに関する情報である被写体スペクトル情報を導出する撮影照明情報導出部と、
前記撮影照明情報導出部で導出された前記被写体スペクトル情報と前記撮影照明情報とに基づいて前記被写体の分光反射スペクトル特性を導出し、導出された前記分光反射スペクトルに基づいて被写体統計データを生成する被写体統計データ導出部と
をさらに備えることを特徴とする請求項6または7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
被写界中の被写体に向けられた撮影光学系によって形成される被写体像を色分解して撮影する撮像部から出力されたカラーの画像データに色再現処理をする画像処理装置であって、
前記撮影光学系で撮影が行われたときに設定されていた画角および撮影距離を導出可能な撮影条件情報を含む付加情報を前記画像データに付加して生成される画像ファイルを記憶する画像ファイル記憶部から前記画像ファイルを読み出す画像ファイル読み出し部と、
前記撮影光学系とは異なる集光光学系によって集光された前記被写界からの光を受光し、前記撮像部で色分解可能な色数よりも多い色数で色分解して検出するカラーセンサを複数有して、前記複数のカラーセンサそれぞれから出力される複数のスペクトル情報を含むスペクトル情報セットを出力する外光式スペクトル検出装置により、前記撮影光学系で撮影が行われたタイミングに同期して、あるいは前記タイミングとは同期せずに一定の時間間隔で、スペクトル検出が行われるたびごとに出力される前記スペクトル情報セットがスペクトル情報データログとして記憶されるスペクトル情報記憶部から前記スペクトル情報データログを読み出すスペクトル情報読み出し部と、
前記画像ファイル読み出し部で読み出された前記画像ファイルと、前記スペクトル情報読み出し部で読み出された前記スペクトル情報データログ中に含まれるスペクトル情報セットのうちの前記画像ファイルに対応するものとを関連付ける情報関連付け処理部と、
前記情報関連付け処理部で関連付けされた前記スペクトル情報セットに含まれる前記複数のスペクトル情報のうち、前記撮影条件情報に基づいて選択された1または複数のスペクトル情報と、前記画像データを分析した結果とのうち、前記撮影条件情報に基づいて少なくともいずれかを参照して前記色再現処理を行うように決定する色再現処理方法決定部と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項10】
前記色処理方法決定部が、前記スペクトル情報セットに含まれる前記複数のスペクトル情報のうち、前記撮影光学系によって撮影される範囲からの光を受光する1または複数のカラーセンサからの出力に対応するスペクトル情報を、前記参照する対象となるスペクトル情報として選択することを特徴とする請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記情報関連付け処理部で関連付けされた前記画像ファイル中の画像データによって形成される画像中に写っている被写体の像中における白色部分の抽出を試み、前記白色部分が存在する場合には前記白色部分の写っている前記画像中の位置に関する白色点位置情報を出力する白色点抽出処理部をさらに備え、
前記色処理方法決定部が、前記白色点抽出処理部から出力された前記白色点位置情報に基づき、前記スペクトル情報セットに含まれる前記複数のスペクトル情報のうち、前記被写体中の前記白色部分に対応する位置からの光を受光する1または複数のカラーセンサからの出力に対応するスペクトル情報を、前記参照する対象となるスペクトル情報として選択することを特徴とする請求項9に記載の画像処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−211317(P2011−211317A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74733(P2010−74733)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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