説明

光源装置、放電灯の駆動方法およびプロジェクター

【課題】放電灯の黒化を抑制し、放電灯の電極間距離を一定の距離に保持して、放電灯を駆動することができる光源装置、放電灯の駆動方法およびプロジェクターを提供すること。
【解決手段】光源装置1は、放電媒体が封入された空洞部である放電空間512を含む発光容器、端部が前記空洞部内で対向して配置される1対の電極610、710、を有する放電灯500と、1対の電極610、710に電流を供給する放電灯駆動装置200とを備え、前記放電灯駆動装置200は、周波数が1kHz以上10GHz以下の交流電流を発生する交流電流発生部、方向が経時的に変化する直流電流を発生する直流電流発生部、を有し、前記交流電流と前記直流電流とを重畳し、当該重畳された電流を1対の電極610、710に供給するよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置、放電灯の駆動方法およびプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクターの光源として、高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等の放電灯(放電ランプ)が使用されている。
このような放電灯は、例えば、高周波数の交流電流を駆動電流として供給する駆動方法により駆動される。この駆動方法によれば、放電の安定性が得られ、放電灯本体の黒化や失透等を防止することができ、放電灯の寿命の低下を抑制することができる。
【0003】
しかしながら、放電灯が点灯している際は、1対の電極間にアーク放電が生じており、その電極が高温になっているので、電極が溶融し、電極間が広がってくる。例えば、プロジェクターの用途では、光の利用効率を向上させるために、電極間が狭い状態を維持し、発光の大きさを小さくすることが好ましく、点灯中に電極間が広がることは、光の利用効率を低下させることになり、好ましくない。また、電極間の変化は、その電極間におけるインピーダンスを変化させ、このため、点灯初期では効率良く放電灯を点灯することができていても、時間が経過すると、インピーダンス不整合を生じ、無効電力が増加し、効率が低下するという問題がある。
【0004】
一方、低周波数で、波形が矩形状をなす交流電流(直流交番電流)を駆動電流として供給する駆動方法もある。この駆動方法によれば、放電灯が点灯している際、1対の電極の先端部に突起が形成され、これにより、電極間が狭い状態を維持することができる。
しかしながら、放電灯本体の黒化や失透等が生じ、放電灯の寿命が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−115534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、放電灯の黒化を抑制し、放電灯の電極間距離を一定の距離に保持して、放電灯を駆動することができる光源装置、放電灯の駆動方法およびプロジェクターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の光源装置は、放電媒体が封入された空洞部を含む発光容器、端部が前記空洞部内で対向して配置される1対の電極、を有する放電灯と、
前記1対の電極に電流を供給する駆動装置と、を備え、
前記駆動装置は、周波数が1kHz以上10GHz以下の交流電流を発生する交流電流発生部、方向が経時的に変化する直流電流を発生する直流電流発生部、を有し、前記交流電流と前記直流電流とを重畳し、当該重畳された電流を前記1対の電極に供給することを特徴とする。
これにより、放電灯の黒化を抑制し、電極間距離を一定の距離に保持して、放電灯を駆動することができる。
【0008】
本発明の光源装置では、前記直流電流の方向の変化の周期は、前記交流電流の周期よりも大きいことが好ましい。
これにより、突起の形成が確実に促進される。
本発明の光源装置では、前記交流電流発生部で発生する前記交流電流は、その大きさが一定であることが好ましい。
これにより、より確実に、電極に突起を形成することができる。
【0009】
本発明の光源装置では、前記直流電流発生部で発生する前記直流電流は、その大きさが一定であることが好ましい。
これにより、より確実に、電極に突起を形成することができる。
本発明の光源装置では、前記交流電流の大きさの平均値と前記直流電流の大きさとは、異なっていることが好ましい。
これにより、さらに確実に、電極に突起を形成することができる。
【0010】
本発明の光源装置では、前記交流電流の大きさの平均値は、前記直流電流の大きさよりも大きいことが好ましい。
これにより、さらに確実に、電極に突起を形成することができる。
本発明の光源装置では、前記交流電流の大きさの平均値は、前記直流電流の大きさよりも小さいことが好ましい。
これにより、さらに確実に、電極に突起を形成することができる。
【0011】
本発明の光源装置では、前記交流電流の周波数は、1kHz以上100kHz以下、または、3MHz以上10GHz以下であることが好ましい。
これにより、音響共鳴効果によって放電が不安定になることを防止することができる。
本発明の光源装置では、前記交流電流と前記直流電流とが重畳された電流の供給により前記放電灯が点灯している際、前記1対の電極の温度が変動し、該1対の電極の先端部に突起が形成されることが好ましい。
これにより、電極間距離を一定の距離に保持することができ、放電灯を効率良く駆動することができる。
【0012】
本発明の放電灯の駆動方法は、放電媒体が封入された空洞部を含む発光容器、端部が前記空洞部内で対向して配置される1対の電極、を有する放電灯の駆動方法であって、
周波数が1kHz以上10GHz以下の交流電流と、直流電流とを生成し、
前記交流電流と前記直流電流とを重畳し、
前記重畳された電流を前記1対の電極に供給することを特徴とする。
これにより、放電灯の黒化を抑制し、電極間距離を一定の距離に保持して、放電灯を駆動することができる。
【0013】
本発明のプロジェクターは、光を出射する光源装置と、
前記光源装置から出射した光を画像情報に基づいて変調する変調装置と、
前記変調装置により変調された光を投射する投射装置と、を有し、
前記光源装置は、放電媒体が封入された空洞部を含む発光容器、端部が前記空洞部内で対向して配置される1対の電極、を有する放電灯と、
前記1対の電極に駆動電流を供給する駆動装置と、を有し、
前記駆動装置は、周波数が1kHz以上10GHz以下の交流電流を発生する交流電流発生部、方向が経時的に変化する直流電流を発生する直流電流発生部、を有し、前記交流電流と前記直流電流とを重畳し、当該重畳された電流を前記1対の電極に供給することを特徴とする。
これにより、放電灯の黒化を抑制し、電極間距離を一定の距離に保持して、放電灯を駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の光源装置の第1実施形態を示す断面図(ブロック図も含まれる)である。
【図2】図1に示す光源装置の放電灯を示す断面図である。
【図3】図1に示す光源装置の放電灯駆動装置を示すブロック図である。
【図4】図1に示す光源装置の放電灯駆動装置で生成される電流を示す図((a)は高周波電流発生器で発生した交流電流を示し、(b)は直流電流発生器で発生した直流電流を示し、(c)は交流電流と直流電流とが重畳された電流を示す)である。
【図5】本発明の光源装置(第2実施形態)の放電灯駆動装置で生成される電流を示す図((a)は高周波電流発生器で発生した交流電流を示し、(b)は直流電流発生器で発生した直流電流を示し、(c)は交流電流と直流電流とが重畳された電流を示す)である。
【図6】本発明のプロジェクターの実施形態を摸式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の光源装置、放電灯の駆動方法およびプロジェクターを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の光源装置の第1実施形態を示す断面図(ブロック図も含まれる)、図2は、図1に示す光源装置の放電灯を示す断面図、図3は、図1に示す光源装置の放電灯駆動装置を示すブロック図、図4は、図1に示す光源装置の放電灯駆動装置で生成される電流を示す図((a)は高周波電流発生器で発生した交流電流を示し、(b)は直流電流発生器で発生した直流電流を示し、(c)は交流電流と直流電流とが重畳された電流を示す)である。なお、図2では、副反射鏡の図示は省略されている。また、図4中(図5についても同様)の二点鎖線は、「包絡線」を示す。
【0016】
図1に示すように、光源装置1は、放電灯500を有する光源ユニット110と、放電灯500を駆動する放電灯駆動装置(駆動装置)200とを備えている。放電灯500は、放電灯駆動装置200から電力の供給を受けて放電し、光を放射する。
光源ユニット110は、放電灯500と、凹状の反射面を有する主反射鏡112と、出射光をほぼ平行光にする平行化レンズ114とを備えている。主反射鏡112と放電灯500とは、無機接着剤116により接着されている。また、主反射鏡112は、放電灯500側の面(内面)が反射面となっており、この反射面は、図示の構成では、回転楕円面をなしている。
【0017】
なお、主反射鏡112の反射面の形状は、前記の形状には限定されず、その他、例えば、回転放物面等が挙げられる。また、主反射鏡112の反射面が回転放物面である場合は、放電灯500の発光部を回転放物面のいわゆる焦点に配置すれば、平行化レンズ114を省略することができる。
放電灯500は、放電灯本体510と、凹状の反射面を有する副反射鏡520とを備えている。放電灯本体510と副反射鏡520とは、無機接着剤522により接着されている。また、副反射鏡520は、放電灯500側の面(内面)が反射面となっており、この反射面は、図示の構成では、球面をなしている。
【0018】
放電灯本体510の中央部には、後述の放電媒質が封入され、気密的に密閉された放電空間(空洞部)512を含む発光容器が形成されている。この放電灯本体510の少なくとも放電空間512に対応する部位は、光透過性を有している。放電灯本体510の構成材料としては、例えば、石英ガラス等のガラス、光透過性セラミックス等が挙げられる。
この放電灯本体510には、1対の電極610、710と、1対の導電性を有する接続部材620、720と、1対の電極端子630、730とが設けられている。電極610と電極端子630とは、接続部材620により電気的に接続されている。同様に、電極710と電極端子730とは、接続部材720により電気的に接続されている。
【0019】
各電極610、710は、放電空間512に収納されている。すなわち、各電極610、710は、その先端部が放電灯本体510の放電空間512において、互いに所定距離離間し、互いに対向するように配置されている。
電極610と電極710との間の最短距離である電極間距離は、1μm以上5mm以下であることが好ましく、500μm以上1.5mm以下であることがより好ましい。
【0020】
図2に示すように、前記電極610は、芯棒612と、コイル部614と、本体部616とを有している。この電極610は、放電灯本体510内への封入前の段階において、芯棒612に電極材(タングステン等)の線材を巻き付けてコイル部614を形成し、形成されたコイル部614を加熱・溶融することにより形成される。これにより、電極610の先端側には、熱容量が大きい本体部616が形成される。電極710も前記電極610と同様に、芯棒712と、コイル部714と、本体部716とを有しており、電極610と同様に形成される。
【0021】
放電灯500を1度も点灯させていない状態では、本体部616、716には、突起618、718は形成されていないが、後述する条件で放電灯500を1度でも点灯させると、本体部616、716の先端部に、それぞれ突起618、718が形成される。この突起618、718は、放電灯500の点灯中、維持され、また、消灯後も維持される。
なお、各電極610、710の構成材料としては、例えば、タングステン等の高融点金属材料等が挙げられる。
【0022】
また、放電空間512には、放電媒体が封入されている。放電媒体は、例えば、放電開始用ガス、発光に寄与するガス等を含んでいる。また、放電媒体には、その他のガスが含まれていてもよい。
放電開始用ガスとしては、例えば、ネオン、アルゴン、キセノン等の希ガス等が挙げられる。また、発光に寄与するガスとしては、例えば、水銀、ハロゲン化金属の気化物等が挙げられる。また、その他のガスとしては、例えば、黒化を防止する機能を有するガス等が挙げられる。黒化を防止する機能を有するガスとしては、例えば、ハロゲン(例えば、臭素等)、ハロゲン化合物(例えば、臭化水素等)、またはこれらの気化物等が挙げられる。
また、点灯時の放電灯本体510内の気圧は、0.1atm以上300atm以下であることが好ましく、50atm以上300atm以下であることがより好ましい。
【0023】
放電灯500の電極端子630、730は、それぞれ放電灯駆動装置200の出力端子に接続されている。そして、放電灯駆動装置200は、放電灯500に高周波数の交流電流ACと直流電流DCとが重畳された合成電流RCを供給する。なお、詳しくは後述するが、直流電流DCは直流電流を複数回交番させて供給する場合を含む。すなわち、放電灯駆動装置200は、電極端子630、730を介して電極610、710に、交流電流ACと直流電流DCとが重畳された合成電流RCを駆動電流として供給することにより放電灯500に電力を供給する。電極610、710に駆動電流が供給されると、放電空間512内の1対の電極610、710の先端部の間でアーク放電(アークAR)が生じる。アーク放電により発生した光(放電光)は、そのアークARの発生位置(放電位置)から全方向に向かって放射される。副反射鏡520は、一方の電極710の方向に放射される光を、主反射鏡112に向かって反射する。このように、電極710の方向に放射される光を主反射鏡112に向かって反射することにより、電極710の方向に放射される光を有効に利用することができる。なお、本実施形態において、放電灯500は副反射鏡520を備えているが、放電灯500は副反射鏡520を備えていない構成とすることも可能である。
【0024】
次に、放電灯駆動装置200について説明する。
図3に示すように、放電灯駆動装置200は、高周波数の交流電流ACを発生する高周波電流発生器(交流電流発生部)31と、増幅器33と、方向が経時的に変化する直流電流DCを発生する直流電流発生器(直流電流発生部)35と、例えばCPU(Central Processing Unit)で構成され、高周波電流発生器31、増幅器33および直流電流発生器35の作動をそれぞれ制御する機能を有する制御部34とを備えており、合成電流RCを駆動電流として放電灯500の1対の電極610、710に供給する装置である。
【0025】
この放電灯駆動装置200では、高周波電流発生器31で発生した交流電流ACを増幅器33で増幅して出力する。また、放電灯駆動装置200では、直流電流発生器35で発生した直流電流DCを出力する。その際、前記出力された交流電流AC(図4(a)参照)と、前記出力された直流電流DC(図4(b)参照)とが重畳されて、合成電流RC(図4(c)参照)となる。そして、この合成電流RCが放電灯500に供給されることとなる。この供給により、前述したように、1対の電極610、710の先端部の間でアーク放電が生じ、放電灯500が点灯する。
【0026】
ここで、この光源装置1では、後述する条件の合成電流RC(駆動電流)を用いて放電灯500を点灯するので、その放電灯500が点灯している際、電極610、710の温度が変動し、その変動により、電極610、710の先端部に、それぞれ突起618、718が形成され、その突起618、718を維持することができる。
すなわち、図4(c)に示す合成電流RCを電極610、710に供給すると、電極610、710は、陽極として動作する状態(以下「第1の状態」と言う)と陰極として動作する状態(以下「第2の状態」と言う)とを取り得る。電極610、710は、第1の状態での電極温度が第2の状態の電極温度に比べて高くなる。この電極温度が高くなることで、電極610、710の先端部の一部が、溶融し、その溶融した電極材が表面張力によって電極610、710の先端部に集まる。そして、第1の状態から第2の状態となると、電極温度が低下して、前記溶融した電極材が凝固する。このような溶融した電極材が電極610、710の先端部に集まる状態と、前記溶融した電極材が凝固する状態とを繰り返すことで突起618、718の成長が起こる。これにより、突起618、718が確実に形成され、よって、電極間距離を一定の距離に保持することができる。この状態の光源装置1では、放電灯500は効率良く駆動することができる。
【0027】
また、図4(a)に示す高周波数の交流電流ACのみを用いたり、図4(b)に示す直流電流DCのみを用いたりする場合に比べ、光源装置1では、交流電流ACと直流電流DCとを重畳した、図4(c)に示す合成電流RCを用いているので、突起618、718成長(形成)が促進されることとなり、その他、放電灯500の黒化も防止することでき、よって、長寿命化が図れる。
【0028】
ここで、放電灯500の定格電力は、用途等に応じて適宜設定され、特に限定されないが、10W以上5kW以下であることが好ましく、100W以上500W以下であることがより好ましい。
また、交流電流ACの周波数は、1kHz以上10GHz以下であり、1kHz以上100kHz以下、または、3MHz以上10GHz以下であることが好ましく、1kHz以上20kHz以下、または、3MHz以上3GHz以下であることがより好ましい。
【0029】
電極610、710では、前述したように陽極として動作するときは陰極として動作するときに比べて電極温度が高くなるが、交流電流ACの周波数を前記下限値以上に設定することにより、その交流電流ACの1周期内における電極温度の変動を防止することができる。
しかし、交流電流ACの周波数が前記下限値よりも小さいと、その交流電流ACの1周期毎に、電極610、710の温度が変動し、これにより突起618、718の形成や維持ができなくなり、また、黒化が生じる場合がある。また、前記上限値よりも大きいものはコストが高くなる。
【0030】
また、交流電流ACの周波数が100kHzよりも大きく、3MHzよりも小さいと、他の条件によっては、音響共鳴効果により放電が不安定となる。
また、直流電流発生器35は、直流電流DCを供給する際、前述したように電流の流れる方向を経時的に変化させている、すなわち、極性を変化させている(反転させている)。このように光源装置1では、放電灯500に「直流交番電流」が供給されると言うことができる。
【0031】
そして、直流電流DCの方向の変化の周期は、交流電流ACの周期よりも大きくなっており、例えば、10〜1000Hzであることが好ましく、50〜500Hzであるのがより好ましい。
このような周期により、突起618、718の形成が確実に促進される。
また、直流電流DCの大きさは、一定である、すなわち、経時的に変化がほとんどない。一方、交流電流ACの大きさ(振幅)も、ほぼ一定である、すなわち、経時的に変化がほとんどない。これにより、確実にランプ(放電灯500)の黒化を抑制できる。
【0032】
さらに、交流電流ACの大きさの平均値aと直流電流DCの大きさ(電流値b)とは、異なっている、すなわち、本実施形態では、交流電流ACの大きさの平均値a(図4(a)参照)は、直流電流DCの電流値b(図4(b)参照)よりも小さくなっている。これにより、図4(c)に示すように、合成電流RCは、その方向が直流電流DCの半周期ごとに変化する、すなわち、その電流値が「正」の値をとる場合と「負」の値をとる場合とがあり、これらの場合が交互に繰り返される。このような合成電流RCが電極610、710に付与されることにより、突起618、718をさらに確実に形成することができる。
以上説明したように、この光源装置1によれば、放電灯500の黒化を防止し、長寿命化を図ることができる。また、電極610、710に突起618、718が形成され、電極間距離を一定の距離に保持することができ、放電灯500を効率良く駆動することができる。
【0033】
<第2実施形態>
図5は、本発明の光源装置(第2実施形態)の放電灯駆動装置で生成される電流を示す図((a)は高周波電流発生器で発生した交流電流を示し、(b)は直流電流発生器で発生した直流電流を示し、(c)は交流電流と直流電流とが重畳された電流を示す)である。
【0034】
以下、この図を参照して本発明の光源装置、放電灯の駆動方法およびプロジェクターの第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、放電灯駆動装置での電流の態様が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0035】
図5に示すように、本実施形態では、交流電流ACの大きさの平均値aは、直流電流DCの電流値bよりも大となっている。これにより、合成電流RCは、その電流値が直流電流DCの半周期の期間内で「正」の値をとる場合と「負」の値をとる場合とがあり、これらの場合が交互に繰り返される。このような合成電流RCが電極610、710に付与された場合でも、前記第1実施形態と同様に、突起618、718をさらに確実に形成することができる。
【0036】
<プロジェクター>
図6は、本発明のプロジェクターの実施形態を摸式的に示す図である。
図6に示すプロジェクター300は、前述した光源装置1と、インテグレータレンズ302および303を有する照明光学系と、色分離光学系(導光光学系)と、赤色に対応した(赤色用の)液晶ライトバルブ84と、緑色に対応した(緑色用の)液晶ライトバルブ85と、青色に対応した(青色用の)液晶ライトバルブ86と、赤色光のみを反射するダイクロイックミラー面811および青色光のみを反射するダイクロイックミラー面812が形成されたダイクロイックプリズム(色合成光学系)81と、投射レンズ(投射光学系)82とを備えている。
【0037】
色分離光学系は、ミラー304、306、309、青色光および緑色光を反射する(赤色光のみを透過する)ダイクロイックミラー305、緑色光のみを反射するダイクロイックミラー307、青色光のみを反射するダイクロイックミラー308、集光レンズ310、311、312、313および314を有している。
液晶ライトバルブ85は、液晶パネル16と、液晶パネル16の入射面側に接合された第1の偏光板(図示せず)と、液晶パネル16の出射面側に接合された第2の偏光板(図示せず)とを有している。液晶ライトバルブ84および86も、液晶ライトバルブ85と同様の構成をなしている。これら液晶ライトバルブ84、85および86の各液晶パネル16は、それぞれ、図示しない駆動回路にそれぞれ接続されている。
なお、このプロジェクター300では、液晶ライトバルブ84、85、86および駆動回路により、光源装置1から出射した光を画像情報に基づいて変調する変調装置の主要部が構成され、投射レンズ82により、その変調装置により変調された光を投射する投射装置の主要部が構成される。
【0038】
次に、プロジェクター300の作用を説明する。
まず、光源装置1から出射した白色光(白色光束)は、インテグレータレンズ302および303を透過する。この白色光の光強度(輝度分布)は、インテグレータレンズ302および303により均一化される。
インテグレータレンズ302および303を透過した白色光は、ミラー304で図6中左側に反射し、その反射光のうちの青色光(B)および緑色光(G)は、それぞれダイクロイックミラー305で図6中下側に反射し、赤色光(R)は、ダイクロイックミラー305を透過する。
【0039】
ダイクロイックミラー305を透過した赤色光は、ミラー306で図6中下側に反射し、その反射光は、集光レンズ310により整形され、赤色用の液晶ライトバルブ74に入射する。
ダイクロイックミラー305で反射した青色光および緑色光のうちの緑色光は、ダイクロイックミラー307で図6中左側に反射し、青色光は、ダイクロイックミラー307を透過する。
【0040】
ダイクロイックミラー307で反射した緑色光は、集光レンズ311により整形され、緑色用の液晶ライトバルブ85に入射する。
また、ダイクロイックミラー307を透過した青色光は、ダイクロイックミラー308で図6中左側に反射し、その反射光は、ミラー309で図6中上側に反射する。前記青色光は、集光レンズ312、313および314により整形され、青色用の液晶ライトバルブ86に入射する。
【0041】
このように、光源装置1から出射した白色光は、色分離光学系により、赤色、緑色および青色の三原色に色分離され、それぞれ、対応する液晶ライトバルブ84、85および86に導かれ、入射する。
この際、液晶ライトバルブ84の液晶パネル16の各画素は、赤色用の画像信号に基づいて作動する駆動回路により、スイッチング制御(オン/オフ)され、また、液晶ライトバルブ85の液晶パネル16の各画素は、緑色用の画像信号に基づいて作動する駆動回路により、スイッチング制御され、また、液晶ライトバルブ86の液晶パネル16の各画素は、青色用の画像信号に基づいて作動する駆動回路により、スイッチング制御される。
【0042】
これにより、赤色光、緑色光および青色光は、それぞれ、液晶ライトバルブ84、85および86で変調され、赤色用の画像、緑色用の画像および青色用の画像がそれぞれ形成される。
前記液晶ライトバルブ84により形成された赤色用の画像、すなわち液晶ライトバルブ84からの赤色光は、入射面813からダイクロイックプリズム81に入射し、ダイクロイックミラー面811で図6中左側に反射し、ダイクロイックミラー面812を透過して、出射面816から出射する。
【0043】
また、前記液晶ライトバルブ85により形成された緑色用の画像、すなわち液晶ライトバルブ85からの緑色光は、入射面814からダイクロイックプリズム81に入射し、ダイクロイックミラー面811および812をそれぞれ透過して、出射面816から出射する。
また、前記液晶ライトバルブ86により形成された青色用の画像、すなわち液晶ライトバルブ86からの青色光は、入射面815からダイクロイックプリズム81に入射し、ダイクロイックミラー面812で図6中左側に反射し、ダイクロイックミラー面811を透過して、出射面816から出射する。
【0044】
このように、前記液晶ライトバルブ84、85および86からの各色の光、すなわち液晶ライトバルブ84、85および86により形成された各画像は、ダイクロイックプリズム81により合成され、これによりカラー画像が形成される。この画像は、投射レンズ82により、所定の位置に設置されているスクリーン320上に投影(拡大投射)される。
以上説明したように、このプロジェクター300によれば、前述した光源装置1を有しているので、消費電力を低減でき、また、安定した良好な画像を表示することができる。
【0045】
以上、本発明の光源装置、放電灯の駆動方法およびプロジェクターを図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。また、光源装置およびプロジェクターを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
また、本発明の光源装置、放電灯の駆動方法およびプロジェクターは、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
また、交流電流の大きさ(振幅)は、前記各実施形態では一定であるが、これに限定されず、段階的に変化していてもよい、すなわち、段階的に増加または減少していてもよい。
【実施例】
【0046】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
(実施例1)
図1に示され、下記の構成の光源装置を作成した。
放電灯本体の構成材料:石英ガラス
放電灯本体内の封入物:アルゴン、水銀、臭素、臭素メチル
放電灯本体内の点灯時の気圧:200atm
電極の構成材料:タングステン
電極間距離:1.1mm
放電灯の定格電力:200W
交流電流の周波数:5kHz
交流電流値(平均):3A
直流電流の方向の変化の周波数:150Hz
直流電流値:3A
直流電流の正負方向のデューティー比:50%
【0047】
(比較例1)
駆動電流として、周波数が150Hz、デューティー比が50%であり、波形が矩形状をなす交流電流(直流交番電流)のみを用いた以外は、前記実施例1と同様の光源装置を作成した。
(比較例2)
駆動電流として、周波数が5kHz、デューティー比が50%であり、波形が矩形状をなす交流電流(直流交番電流)を用いた以外は、前記実施例1と同様の光源装置を作成した。
【0048】
[評価]
実施例1、比較例1、比較例2に対し、それぞれ、下記のようにして各評価を行った。その結果は、下記表1に示す通りである。
(突起)
点灯開始から500時間における電極間距離の変動を観察した。
その観察結果を表1に示す。表1中の「○」は極間距離に変動がまったくない(突起の成長が良好)ことを示し、「△」は10%以下の変動があったことを示し、「×」は光源装置が使用に耐え得る程度に突起が好適に成長しないこと(突起の成長が不良)を示す。
【0049】
(耐黒化性)
点灯開始から500時間直後に電力をoffし、そのときのランプの赤熱状態を観察した。
その観察結果を表1に示す。表1中の「○」は黒化が観察されないまたは観察されても軽微であることを示し、「×」は黒化が著しく観察されたことを示す。
【0050】
【表1】

【0051】
上記表1から明らかなように、実施例1では、電極の先端に確実に突起が形成され、また、黒化は発生せず、良好な結果が得られた。また、図5に示すような制御を行なっても同様の結果が得られた。
これに対し、比較例1では黒化が生じ、比較例2では突起が形成されず、電極が消耗した。
【符号の説明】
【0052】
1…光源装置 31…高周波電流発生器(交流電流発生部) 33…増幅器 34…制御部 35…直流電流発生器(直流電流発生部) 110…光源ユニット 112…主反射鏡 114…平行化レンズ 116…無機接着剤 200…放電灯駆動装置(駆動装置) 500…放電灯 510…放電灯本体 512…放電空間(空洞部) 520…副反射鏡 522…無機接着剤 610、710…電極 612、712…芯棒 614、714…コイル部 616、716…本体部 618、718…突起 620、720…接続部材 630、730…電極端子 16…液晶パネル 81…ダイクロイックプリズム 811、812…ダイクロイックミラー面 813〜815…入射面 816…出射面 82…投射レンズ 84〜86…液晶ライトバルブ 300…プロジェクター 302、303…インテグレータレンズ 304、306、309…ミラー 305、307、308…ダイクロイックミラー 310〜314…集光レンズ 320…スクリーン AR…アーク AC…交流電流 DC…直流電流 RC…合成電流 a…平均値 b…電流値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電媒体が封入された空洞部を含む発光容器、端部が前記空洞部内で対向して配置される1対の電極、を有する放電灯と、
前記1対の電極に電流を供給する駆動装置と、を備え、
前記駆動装置は、周波数が1kHz以上10GHz以下の交流電流を発生する交流電流発生部、方向が経時的に変化する直流電流を発生する直流電流発生部、を有し、前記交流電流と前記直流電流とを重畳し、当該重畳された電流を前記1対の電極に供給することを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記直流電流の方向の変化の周期は、前記交流電流の周期よりも大きい請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記交流電流発生部で発生する前記交流電流は、その大きさが一定である請求項1または2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記直流電流発生部で発生する前記直流電流は、その大きさが一定である請求項1ないし3のいずれかに記載の光源装置。
【請求項5】
前記交流電流の大きさの平均値と前記直流電流の大きさとは、異なっている請求項1ないし4のいずれかに記載の光源装置。
【請求項6】
前記交流電流の大きさの平均値は、前記直流電流の大きさよりも大きい請求項5に記載の光源装置。
【請求項7】
前記交流電流の大きさの平均値は、前記直流電流の大きさよりも小さい請求項5に記載の光源装置。
【請求項8】
前記交流電流の周波数は、1kHz以上100kHz以下、または、3MHz以上10GHz以下である請求項1ないし7のいずれかに記載の光源装置。
【請求項9】
前記交流電流と前記直流電流とが重畳された電流の供給により前記放電灯が点灯している際、前記1対の電極の温度が変動し、該1対の電極の先端部に突起が形成される請求項1ないし8のいずれかに記載の光源装置。
【請求項10】
放電媒体が封入された空洞部を含む発光容器、端部が前記空洞部内で対向して配置される1対の電極、を有する放電灯の駆動方法であって、
周波数が1kHz以上10GHz以下の交流電流と、直流電流とを生成し、
前記交流電流と前記直流電流とを重畳し、
前記重畳された電流を前記1対の電極に供給することを特徴とする放電灯の駆動方法。
【請求項11】
光を出射する光源装置と、
前記光源装置から出射した光を画像情報に基づいて変調する変調装置と、
前記変調装置により変調された光を投射する投射装置と、を有し、
前記光源装置は、放電媒体が封入された空洞部を含む発光容器、端部が前記空洞部内で対向して配置される1対の電極、を有する放電灯と、
前記1対の電極に駆動電流を供給する駆動装置と、を有し、
前記駆動装置は、周波数が1kHz以上10GHz以下の交流電流を発生する交流電流発生部、方向が経時的に変化する直流電流を発生する直流電流発生部、を有し、前記交流電流と前記直流電流とを重畳し、当該重畳された電流を前記1対の電極に供給することを特徴とするプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−4277(P2013−4277A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133455(P2011−133455)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】