光源装置、画像表示装置及びモニター装置
【課題】外部共振器型のレーザー光源を前提として、出力レーザー光の可干渉性を低下させることでスペックルノイズを確実に低減し得る光源装置を提供する。
【解決手段】レーザー光を射出するエミッター22を有する第1発光素子12と、エミッター22から射出されたレーザー光が入射するように配置されたエミッター23を有する第2発光素子を備え、エミッター23は、射出されたレーザー光がエミッター22へ入射するように配置され、エミッター22と異なる2つのエミッター23の間の光路上に、空間的に選択波長が異なる波長選択素子17が配置されていることを特徴とする。
【解決手段】レーザー光を射出するエミッター22を有する第1発光素子12と、エミッター22から射出されたレーザー光が入射するように配置されたエミッター23を有する第2発光素子を備え、エミッター23は、射出されたレーザー光がエミッター22へ入射するように配置され、エミッター22と異なる2つのエミッター23の間の光路上に、空間的に選択波長が異なる波長選択素子17が配置されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置、画像表示装置及びモニター装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクターにおいては、光源として超高圧水銀ランプなどの放電ランプが用いられるのが一般的であった。ところが、この種の放電ランプは、寿命が比較的短い、瞬時点灯が難しい、色再現性範囲が狭い、ランプから放射される紫外線が液晶ライトバルブを劣化させる、等の課題がある。そこで、放電ランプに代わる高出力の光源として、単色光を照射するレーザー光源を用いた投射型画像表示装置が提案されている。
【0003】
高出力のレーザー光を得られるレーザー光源装置としては、外部共振器構造を持つレーザー光源装置が上げられる。このようなレーザー光源装置では、外部共振器の使用により特定の波長の光が強められ高出力のレーザー光が得られる。このような外部共振器構造においては、共振ミラーとしてボリューム・ブラッグ・グレーティング(VBG)など狭帯域ミラーとして働く素子や、特許文献1に示すようなVBGよりも安価なバンドパスフィルターを利用する構造が提案されている。
【0004】
このような外部共振器型のレーザー光源においては、共振器構造内の光路上に特定の波長を透過させる波長選択素子(バンドパスフィルター、エタロン他)を配置する構成が知られている(例えば、特許文献2参照)。このような構成にすることで、波長選択素子を透過した波長のレーザー光を共振させ、発振する波長を決定している。
【0005】
ところで、これらのレーザー光源は、プロジェクターの光源として適応する場合、上述のように光源の高出力化が解決できる反面、スクリーン等の散乱体でレーザー光の干渉が生じることによって明点と暗点が縞模様あるいは斑模様に分布する、いわゆるスペックルノイズと呼ばれる現象が発生する場合がある。そこで、レーザー光源を用いて鮮明な画像を表示させるプロジェクターを実現するためには、スペックルノイズの対策が必要となる。
【0006】
スペックルノイズは、レーザー光の可干渉性に起因して生じる現象である。よって、スペックルノイズを低減するには、レーザー光の可干渉性を低下させる対策が有効である。可干渉性はレーザー光の出力スペクトル幅に概ね反比例しており、出力スペクトル幅が広がると可干渉性が低下するため、スペクトル幅を広くすることによってスペックルノイズを低減することができる。
【0007】
このようなレーザー光を射出するレーザー光源装置として、具体的には、複数の発光素子を2次元に配列したアレイ状光源において、各発光素子の出力波長をずらすことで全体のスペクトル幅を広げることでスペックルノイズの発生を抑制する装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平08−190111号公報
【特許文献2】特開2006−30288号公報
【特許文献3】特表2004−503923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献3の構成において、光源の高出力化を図るために外部共振器型のレーザー光源を適用した場合には、次のような問題が生じる。
【0010】
すなわち、外部共振器型のレーザー光源においてレーザー発振させるためには、共振ミラーの対応波長幅を狭くする必要がある。そのため、特許文献3の構成のように、アレイ状光源の各発光素子の出力波長をずらしてスペクトル幅を広げたとしても、発振するレーザー光は、共振ミラーの対応波長幅に応じて狭帯域となり、結果、スペックル低減に効果を示さない。
【0011】
一方で、出力波長幅を広げるために共振ミラーの対応波長幅を広げた場合、レーザー共振が困難となり、共振ミラーとしての役割を果たさなくなる。したがって、可干渉性を低下させるために、単純に共振ミラーの選択波長幅を広くすることはできない。
【0012】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、外部共振器型のレーザー光源を前提として、出力レーザー光の可干渉性を低下させることでスペックルノイズを確実に低減し得る光源装置を提供することを目的とする。また、上記の光源装置を備え、画質に優れた画像表示装置およびモニター装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題の少なくとも一部を解決するため、本発明の光源装置は、レーザー光を射出する第1発光部と、前記第1発光部から射出されたレーザー光が入射するように配置された第2発光部と、前記第1発光部から射出されたレーザー光が入射するように配置された第3発光部と、を備え、前記第2発光部および前記第3発光部は、該第2発光部および該第3発光部が射出したレーザー光が前記第1発光部へ入射するように配置され、前記第1発光部と前記第2発光部との間の光路上、および前記第1発光部と前記第3発光部との間の光路上に、空間的に選択波長が異なる波長選択手段が配置されていることを特徴とする。
【0014】
まず、2個の発光部を対峙させた外部共振器構造では、共振器の両端に発光素子が配置されており、2個の発光部間でレーザー光を往復させることにより誘導放出を連続的に起こし、レーザー光を増幅させることが可能となる。また、発光部と外部共振ミラーとを用いた場合と比べてレーザー光の増幅が大きくなる可能性があり、高出力化に好適なレーザー光源装置を実現することが可能となる。ここで、一対の発光部を両端に有する外部共振器構造を用いると、一方の発光部の発光部から射出されたレーザー光からは1箇所でしかレーザー発振を生じず、1本のレーザー光しか生じさせることができない。対して、この構成によれば、第1発光部から射出されるレーザー光は、第2発光部および第3発光部との間で往復しレーザー発振を生じる。そのため、第1発光部から射出されるレーザー光から、空間的に分離された2本のレーザー光を生じさせることができる。
【0015】
更に、発光部間の光路上には、空間的に選択波長域が異なる波長選択手段が設けられているため、空間的に分離された2本のレーザー光がこのような波長選択手段を透過すると、レーザー光が透過する領域の選択波長に応じて、複数の波長のレーザー光が選択されることとなる。
【0016】
これらの作用により、本発明の光源装置では、一対の発光部を両端に有する共振器構造からは得られない、複数の波長成分からなるスペクトル分布のレーザー光を射出させることができ、スペックルノイズを確実に低減することができる。
【0017】
上記に記載の光源装置においては、前記第1発光部を有する第1発光素子と、前記第2発光部および前記第3発光部を有する第2発光素子と、を有し、前記第1発光素子と前記第2発光素子とは、互いに一方の発光素子から射出されたレーザー光が他方の発光素子に入射するように配置されていることが望ましい。
【0018】
この構成によれば、容易に複数の波長成分からなるスペクトル分布のレーザー光を射出させることができる光源装置を提供することが可能となる。例えば、同じ構成の2つの発光素子を用いた場合に、発光部から射出されるレーザー光の光軸をずらして配置し、一方の発光部から照射されたレーザー光が他方の複数の発光部にまたがって照射されるように配置することで、得られる波長の種類を容易に増やすことができる。
【0019】
上記に記載の光源装置においては、前記波長選択手段は、表面が湾曲し前記レーザー光の入射角度が空間的に異なることが望ましい。
【0020】
この構成によれば、入射するレーザー光の位置ごとに入射角度が異なることで、波長選択手段の内部を透過するレーザー光の光路長が異なる。この光路長の差に起因して、選択波長が異なることで、入射するレーザー光の位置ごとに選択波長を異ならせることができるため、複数の波長のレーザー光を射出させることができ、スペックルノイズを確実に低減することが可能となる。
【0021】
上記に記載の光源装置においては、前記波長選択手段は、前記レーザー光が入射する一方の表面を構成する形成材料と、他方の表面を構成する形成材料と、の熱膨張率が互いに異なることが望ましい。
【0022】
この構成によれば、使用に伴い照射されるレーザー光によって波長選択手段が暖められ、熱膨張率の差によって反りが生じる。そのため、入射するレーザー光の位置ごとに容易に選択波長を異ならせることが可能となる。
【0023】
上記に記載の光源装置においては、前記波長選択手段は、前記発光部から射出されるレーザー光の全波長域のうち、所定の選択波長域のレーザー光を選択的に透過させる音響光学媒体と、音響波を生成する音響波生成手段と、を含む可変波長選択素子であり、前記音響波生成手段を用いて前記音響光学媒体内の前記レーザー光の光路と交差する方向に音響波を伝播させることにより、前記選択波長域を空間的かつ時間的に変化させることが望ましい。
【0024】
この構成によれば、光源と共振ミラーとの間の光路上に可変波長選択素子が設けられているため、複数の発光部から射出された複数の光の全波長域のうち、所定の選択波長域の光が可変波長選択素子の音響光学媒体を選択的に透過する。
【0025】
このとき、可変波長選択素子を構成する音響光学媒体に対し、音響波生成手段を用いて複数の光の光路と交差する方向に音響波を伝播させる。すると、音響波は光に比べて伝播速度がはるかに遅いため、音響光学媒体における複数の光の入射位置で音響波(縦波)の到達時刻にずれが生じ、各々の選択波長域が空間的に変化する。このため、ある時刻で複数の光に着目したときに選択波長域がそれぞれ異なり、全体として選択される波長の種類が増える。
【0026】
それと同時に、複数の光の各々の選択波長域が時間的にも変化するため、一つの発光部から射出されるレーザー光に着目したときに、選択波長域が目の積算時間内で時間をおって変化する。その結果、複数の波長が目の積算時間内で重畳され擬似的に波長域を拡大することが可能となる。発光部から射出されるレーザー光の波長は、発光部の温度によって変化するが、発光部から射出されるレーザー光の波長が変化したとしても、選択波長域が時間的にも変化するため、同じ発光部から射出されるレーザー光は、擬似的に波長域が広がる。
【0027】
この空間的作用、時間的作用の双方により、可変波長選択素子では複数の波長のレーザー光を選択することとなり、スペックルノイズを確実に低減し得る光源装置を実現できる。
【0028】
上記に記載の光源装置においては、前記可変波長選択素子を構成する音響光学媒体が複数個に分割され、分割された各々の音響光学媒体に前記レーザー光がそれぞれ入射されるともに、前記各々の音響光学媒体毎に前記音響波生成手段が設けられたことが望ましい。
【0029】
この構成によれば、分割された音響光学媒体毎に音響波生成手段が設けられているため、可変波長選択素子の選択波長域を空間的に変化させる際の自由度が高くなり、波長幅がより広い所望のスペクトル分布が得やすくなる。
【0030】
上記に記載の光源装置においては、前記第1発光部と前記波長選択手段との間の光路上、または、前記第2発光部および前記第3発光部と前記波長選択手段との間の光路上に、複数の発光部から射出された複数のレーザー光を、当該レーザー光の波長域とは異なる波長域のレーザー光に変換する波長変換素子と、当該波長変換素子が変換する変換波長域を時間的に変化させる変換波長変化手段と、を含む可変波長変換素子が設けられ、前記音響波生成手段が、時間的に連続して変化する音響周波数を有する音響波を生成し、前記音響波生成手段が生成する音響波の音響周波数の変化と、前記変換波長変化手段が変化させる変換波長域の変化と、が同期していることが望ましい。
【0031】
この構成によれば、所望の波長域のレーザー光が直接得られる光源が入手し難かったとしても、波長変換素子によって光源から射出されたレーザー光を当該レーザー光の波長域とは異なる波長域のレーザー光に変換し、所望の波長域のレーザー光を得ることができる。ここで、波長変換素子における変換波長域を同期して変えることができるため、変換波長域の変化と可変波長選択素子における選択波長域の変化とを合わせることができる。そのため、レーザー光の変換効率および利用効率を高めることができる。
【0032】
上記に記載の光源装置においては、前記1発光部、前記第2発光部、前記第3発光部の少なくともいずれか1つから射出されたレーザー光のスペクトルを検知する検知手段を有し、前記制御部は、検知したスペクトルに基づいて、前記可変波長選択素子の選択波長域が前記スペクトルのスペクトル分布の全域を含むように前記音響波生成手段を制御することが望ましい。
【0033】
この構成によれば、レーザー光のスペクトル分布全域を有効に用いて複数の波長のレーザー光を射出することができるため、レーザー光の利用効率を上昇させることが可能となる。
【0034】
本発明の画像表示装置は、上述した本発明の光源装置と、前記光源装置から射出されたレーザー光を画像信号に応じて変調する光変調装置と、前記光変調装置により形成された画像を投射する投射装置と、を備えたことを特徴とする。
【0035】
この構成によれば、本発明の画像表示装置は、上述した本発明の光源装置を備えているので、光源装置から射出されたレーザー光は可干渉性が低下しており、被投射面に照射される画像はスペックルノイズが抑えられたものとなる。したがって、輝度ムラがなく良質な画像を提供することができる。
【0036】
本発明の画像表示装置は、上述した本発明の光源装置と、前記光源装置から射出されたレーザー光を被投射面上で走査する走査手段と、を備えたことを特徴とする。
【0037】
この構成によれば、本発明の画像表示装置は、上述した本発明の光源装置を備えているので、光源装置から射出されたレーザー光は可干渉性が低下しており、被投射面に照射される画像はスペックルノイズが抑えられたものとなる。したがって、輝度ムラがなく良質な画像を提供することができる。
【0038】
本発明のモニター装置は、上述した本発明の光源装置と、前記光源装置により照明された被写体を撮像する撮像部と、を備えたことを特徴とする。
【0039】
この構成によれば、本発明のモニター装置は、上述した本発明の光源装置を備えているので、光源装置はコヒーレンスが短いレーザー光を射出し、輝度ムラのない明るい光により被写体が照射される。したがって、撮像手段により被写体を鮮明に撮像することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1実施形態のレーザー光源装置の概略斜視図である。
【図2】射出されるレーザー光の波長について示した説明図である。
【図3】射出されるレーザー光の波長について示した説明図である。
【図4】本発明の第1実施形態のレーザー光源装置の平面図である。
【図5】本実施形態の変形例を示した説明図である。
【図6】本発明の第2実施形態のレーザー光源装置の平面図である。
【図7】本発明の第3実施形態のレーザー光源装置の概略構成図である。
【図8】本発明の第3実施形態のレーザー光源装置の平面図である。
【図9】本光源装置の可変波長選択素子と圧電素子の駆動信号の特性を示す図である。
【図10】可変波長選択素子の駆動信号の他の特性例を示す図である。
【図11】可変波長選択素子の駆動信号のさらに他の特性例を示す図である。
【図12】本発明の画像表示装置の一例を示す図である。
【図13】本発明の画像表示装置の他の例を示す図である。
【図14】本発明のモニター装置の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
[第1実施形態]
以下、図1〜図5を参照しながら、本発明の第1実施形態に係るレーザー光源装置について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の膜厚や寸法の比率などは適宜異ならせてある。
【0042】
図1は、本実施形態のレーザー光源装置1を示す概略斜視図である。図1に示すように、レーザー光源装置1は、基台11と、第1半導体レーザー素子としての第1発光素子12と、第2半導体レーザー素子としての第2発光素子13と、ダイクロイックミラー14と、反射ミラー15と、波長変換素子(波長変換手段)16と、波長選択素子(波長選択手段)17とを主に備えている。
【0043】
第1発光素子12、および第2発光素子13(第1,第2発光素子12,13ともいう)は、互いに同一の構成であり、例えば1065nmの波長の赤外レーザー光であるレーザー光IR1,IR2を射出する面発光型レーザーダイオードである。第1,第2発光素子12,13は、基台11上に設けられたレーザー基板18上に設けられており、レーザー光IR1,IR2の射出端面が基台11と反対方向を向くように配置されている。そのため、第1,第2発光素子12,13から射出されたレーザー光IR1,IR2は、いずれもレーザー基板18の上面の法線方向上方に射出される。
【0044】
第1発光素子12の射出端面には、平面視が円形状のエミッター(第1発光部)22が複数形成され、複数のエミッター22は第1発光素子12の長手方向に配列している。第2発光素子13側のエミッター(第2発光部、第3発光部)23の構成も同一である。エミッター22,23は、不図示のDBR(Distributed Bragg Reflector)層上に、活性層が積層された構成になっている。
【0045】
第1発光素子12からのレーザー光IR1の射出方向には、ダイクロイックミラー14が配置されている。同様に、第2発光素子13からのレーザー光IR2の射出方向には、反射ミラー15が配置されている。
【0046】
ダイクロイックミラー14は、第1,第2発光素子12,13から射出されるレーザー光IR1,IR2と同じ波長のレーザー光を反射する一方、可視光を透過させて第1,第2発光素子12,13とは異なる方向へ射出させるミラーである。具体的な構成として、ダイクロイックミラー14は、反射面に誘電体多層膜が形成されており、第1,第2発光素子12,13から射出される赤外領域の波長の光を反射させ、該赤外線の半分程度の波長を有する可視光領域の波長の光を透過させる特性を有している。
【0047】
ダイクロイックミラー14および反射ミラー15は、互いの反射面が向き合うように、且つレーザー光IR1,IR2の光路に対して所定の角度(例えば45°)を成すように光路上に配置されている。そのため、第1発光素子12から射出されたレーザー光IR1は、ダイクロイックミラー14および反射ミラー15を介して、第2発光素子13のエミッター23に入射し、同じく第2発光素子13から射出されたレーザー光IR2は、ダイクロイックミラー14および反射ミラー15を介して、第1発光素子12のエミッター22に入射する構成となっている。
【0048】
このような配置により、第1発光素子12と第2発光素子13との間を射出されたレーザー光IR1,IR2が往復してレーザー発振が生じる。すなわち、第1発光素子12と第2発光素子13(エミッター22とエミッター23)は、自身を両端とする外部共振器構造を構成している。
【0049】
また、ダイクロイックミラー14と反射ミラー15との間の光路上には、波長選択素子17が配置されている。この波長選択素子17は、所定の波長の光を透過させそれ以外の波長の光を反射させることで、所定の波長の光のみに波長に揃える役目を果たす。
【0050】
本実施形態の波長選択素子17は、光が透過する箇所によって透過可能な波長(選択波長)が異なる構成となっており、複数の波長を選択することが可能な構成となっている。このような波長選択素子17としては、例えば、表面の誘電体多層膜が勾配蒸着されることにより形成されたものや、選択波長が異なる波長選択素子を切り貼りしてつなぎ合わせ、一体としたものを用いることができる。
【0051】
更に、反射ミラー15と波長選択素子17との間の光路上には、支持部材21上に設けられた波長変換素子16が配置されている。波長変換素子16としては、分極反転周期構造を有する非線形光学結晶であるPPLN(Periodically Poled Lithium Niobate)が好適に用いられ、入射光である赤外レーザー光を略半分の波長の可視光に変換し、第2次高調波を発生させる第2次高調波発生(Second Harmonic Generation:SHG)素子として機能する。
【0052】
本実施形態の波長変換素子16は、波長選択素子17が複数の波長を選択する構成であることに対応し、選択された波長の光が各々透過する複数の箇所において、空間的に変換波長が異なる構成となっている。すなわち、波長変換素子16では、透過する箇所に応じて複数の波長の光を略半分の波長の可視光に変換する。
【0053】
これらの構成を備えるため、第1,第2発光素子12,13から射出された赤色レーザー光のうち、波長選択素子17で選択された波長の光は、波長変換素子16において略半分の波長の緑色レーザー光に変換される。また、上述のようにダイクロイックミラー14は、可視光領域の波長の光を透過させる特性を有しているため、第2発光素子13から第1発光素子12に向かう途中で緑色に変換された緑色レーザー光は、ダイクロイックミラー14を通過し、装置外部に向けて射出される。
【0054】
なお、光路上に偏光選択フィルターを配置して、波長変換素子16における分極構造と波長変換素子16への入射光の偏光方向とを対応させ、変換効率を向上させることとしても良い。
本実施形態のレーザー光源装置1の概略は、以上のようになっている。
【0055】
本実施形態のレーザー光源装置1は、第1,第2発光素子12,13が備えるエミッター22,23が光共振器構造の両端を成しているが、両エミッター22,23の相対的な配置に特徴がある。以下、図を用いて、この特徴部分について説明する。
【0056】
図2,3は、レーザー光源装置1が有するエミッターの配置について説明する説明図であり、図2は比較のためのレーザー光源装置1Xの共振器構造を示す説明図、図3はレーザー光源装置1を示す説明図である。各図(a)は、エミッターの相対的な配置関係を示す概略図、各図(b)は、得られるレーザー光の波長を示す説明図である。
【0057】
図2では、発光素子12Xと発光素子13Xとが外部共振構造を形成しており、各発光素子12X,13Xは各々2つのエミッター22X,23Xを有することとして示している。また、レーザー発振をしているレーザー光Lx,Lyの光路上に、本実施形態のレーザー光源装置1と同様、空間的に選択波長が異なる波長選択素子17を配置することとする。ここでは、レーザー入射位置によって厚さが異なり、厚さに対応して選択波長を異ならせる構成の波長選択素子17を略記して図示している。
【0058】
まず、図2に示すレーザー光源装置1Xは、発光素子12Xが有するエミッター22Xから射出するレーザー光Lx、及び、発光素子13Xが有するエミッター23Xから射出するレーザー光Lyの光軸が一致しており、互いに対向する1つのエミッターに入射している。すなわち、互いのエミッターは1対1に対応している。このような場合、レーザー光Lxとレーザー光Lyとは、対となるエミッター間でレーザー発振をするため、レーザー発振により2本のレーザー光La,Lbが生じる。つまり、エミッター総数の半分のレーザー光が生じる。
【0059】
またレーザー発振の過程では、生じる2本のレーザー光La,Lbは、空間的に選択波長が異なる波長選択素子17に入射し、入射位置の選択波長に対応する波長の光が選択される。波長選択素子17には、2本のレーザー光が2箇所に入射するため、レーザー光源装置1X全体としては、図2(b)に示すように2種の波長λa,λbを射出するレーザー光となる。
【0060】
対して、図3に示すレーザー光源装置1では、第1発光素子12が有するエミッター22から射出するレーザー光Lx、及び、第2発光素子13が有するエミッター23から射出するレーザー光Lyの光軸が異なり、1つのエミッターから射出されたレーザー光が対向する2つのエミッターに入射する構成を含んでいる。よって、図3に示すエミッター231を本発明で言うところの第1発光部と考え、2つのエミッター22を第2、第3発光部と考えること、もできる。
【0061】
半導体レーザー素子である第1,第2発光素子12,13を対向させて共振器構造を構成する場合、エミッター22,23部分を共振器構造の両端の共振ミラーとして利用する。そのため、各エミッター22,23から射出されるレーザー光は、対向する第1,第2発光素子12,13のエミッター22,23に入射する成分のみが反射され、照射位置にエミッター22,23が無い場合には反射されず、レーザー発振を起こさない。
【0062】
エミッター231を例に取ると、エミッター231から射出されるレーザー光のうち、エミッター22と重なる領域AR1に照射されるレーザー光成分は反射されてレーザー発振を生じ、エミッター22と重ならない領域AR2に照射されるレーザー光成分は、反射されないためレーザー発振を生じない。
【0063】
その結果、レーザー光Lxとレーザー光Lyとは、対となるエミッターの重なり部分でレーザー発振をするため、レーザー発振により3本のレーザー光Lc,Ld,Leが生じる。生じる3本のレーザー光Lc,Ld,Leは、同様に波長選択素子17に入射し入射位置の選択波長に対応する波長の光が選択される。その結果、レーザー光源装置1全体としては、図3(b)に示すように3種の波長λc,λd,λeを射出するレーザー光となる。
【0064】
結果として、本実施形態のレーザー光源装置1では、1つのエミッターから照射されたレーザー光が対向する複数のエミッターにまたがって照射されるように配置することで、得られる波長の種類が増えることとなる。
【0065】
図4は、本実施形態のレーザー光源装置1の平面図である。ここでは図を見やすくするために、ダイクロイックミラーおよび反射ミラーを省略して図示している。
【0066】
波長変換素子16は、入射光をほぼ半分の波長に変換する非線形光学素子である。波長変換素子16による波長変換効率は非線形の特性を有しており、例えば、波長変換素子16に入射するレーザー光の強度が強いほど、変換効率が向上する。また、波長変換素子16の変換効率は40〜50%程度である。つまり、射出されたレーザー光のすべてが所定波長のレーザー光に変換されるわけではない。
【0067】
波長変換素子16としては、自身を透過するレーザー光の光軸に交わる方向に連続的に分極反転構造(ドメインDM)の幅が変化している。このような波長変換素子16では、変換波長が、レーザー光の光軸に直交する方向に連続的に変化する。この分極反転周期構造内を光が透過することにより、透過位置毎に異なる波長のレーザー光の波長を変換するようになっている。
【0068】
このような分極反転周期構造は、例えば次のようにして形成する。まず、非線形強誘電体材料(例えばLiTaO3)からなる基板に、レーザー光の光軸方向に沿って電極が有る領域と無い領域とが交互に並んだ電極パターンを形成する。この時、各電極パターンの幅及び電極パターン同士の間隔は、所望の分極反転周期構造と同じものとする。次に、これら電極パターンにパルス状の電圧を印加することにより、図に示したような分極反転周期構造が得られる。このようにして分極反転周期構造を形成した後、通常電極パターンは除去されるが、そのまま残しておいても良い。
【0069】
また、第1,第2発光素子12,13は、第1発光素子12が射出するレーザー光のビームスポットBaが、複数のエミッター23にまたがって照射され、同様に第2発光素子13が射出するレーザー光のビームスポットBbが、複数のエミッター22にまたがって照射されるように、レーザー光の光軸を相対的にずらして配置されている。
【0070】
このような構成のレーザー光源装置1では、第1,第2発光素子12,13のエミッター22,23と、射出されたレーザー光のビームスポットBa,Bbと、の重なりの数だけレーザー発振を生じる。波長選択素子17では、レーザー光の入射位置に対応する選択波長のレーザー光が選択され、更に、選択された各レーザー光が波長変換素子16において各々略半分の波長に変換される。変換された波長のレーザー光は、第1,第2発光素子12,13の間に構成される光共振器構造で増幅され、装置外部に射出されることとなる。
【0071】
したがって、以上のような構成のレーザー光源装置1では、複数の波長のレーザー光を射出することができる。これにより、射出されるレーザー光は、複数のパターンのスペックルノイズを被投射面で発生させ、複数のスペックル同士を同時に重畳させることができるため、スペックルノイズを確実に低減し得る光源装置を実現できる。
【0072】
なお、本実施形態では、第1,第2発光素子12,13において、エミッター22,23が長手方向である1方向に配列する1次元のレーザーアレイを用いることとしたが、エミッターが2方向に配列する2次元レーザーアレイを用いることとしても良い。
【0073】
図5は、第1,第2発光素子12,13の代わりに2次元レーザーアレイ82,83を用いた場合の、2次元レーザーアレイ82でのビームスポットBSの重なりを示す概略平面図である。2次元レーザーアレイ82,83を用いる場合においても、1つのエミッター93から射出されたレーザー光のビームスポットBSが複数のエミッター92と重なり、複数のエミッター92に対してレーザー光が入射するように、2次元レーザーアレイ82,83を配置する。
【0074】
すると、両レーザー光のビームスポットBSの重なり部分ARでレーザー発振を起こすために、空間的に分離された複数のレーザー光を射出することができる。このように得られた空間的に分離されたレーザー光が、本実施形態の波長選択素子17を透過すると、レーザー光が透過する領域の選択波長に応じて、複数の波長のレーザー光が選択されることとなり、スペックルノイズを確実に低減し得る光源装置を実現できる。
【0075】
また、本実施形態では、光学的に対向する2つの発光素子を用い、第1発光素子12が有するエミッター22から射出される1つのレーザー光IR1が、第2発光素子13が有する2つのエミッター23にまたがって入射されることとしたが、これに限らない。例えば、本実施形態で示した第2発光素子23の位置に、2つの発光素子が並んで配置され、第1発光素子12が有するエミッター22から射出される1つのレーザー光が、2つの発光素子が各々有するエミッターにまたがって入射されることとしても構わない。
【0076】
[第2実施形態]
図6は、本発明の第2実施形態に係るレーザー光源装置2の説明図であり、第1実施形態の図4に対応する図である。本実施形態のレーザー光源装置2は、第1実施形態のレーザー光源装置1と一部共通している。異なるのは、波長選択素子がレーザー光の光軸方向に湾曲していることである。したがって、本実施形態において第1実施形態と共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0077】
図6に示すように、本実施形態のレーザー光源装置2は、レーザー光の光軸方向に湾曲する波長選択素子27を有しており、光が透過する箇所によって選択波長が異なる構成となっている。
【0078】
波長選択素子27は、膨張率の異なる二つの誘電体膜27a,27bを積層することによって形成されており、誘電体膜27aの熱膨張率よりも誘電体膜27bの熱膨張率の方が大きくなっている。そのため、使用に際しレーザー光が照射されると、透過するレーザー光によって加熱され、熱膨張率の差によって波長選択素子27に反りが生じる。
【0079】
すると、波長選択素子27へのレーザー光の入射位置ごとに入射角度が異なるため、波長選択素子27の内部を透過するレーザー光の光路長が、複数のレーザー光毎に異なる。この光路長の差に起因して、入射するレーザー光の位置ごとに選択波長を異ならせることができ、複数の波長のレーザー光を射出させることができる。
【0080】
以上のような構成のレーザー光源装置2でも、スペックルノイズを確実に低減し得る光源装置を実現できる。
【0081】
また、本実施形態の波長選択素子27は、熱膨張により反りを発生させたが、機械的に応力を加え、変形させて反らせることとしても良い。
【0082】
[第3実施形態]
図7は、本発明の第3実施形態に係るレーザー光源装置3の説明図である。本実施形態のレーザー光源装置3は、第1実施形態のレーザー光源装置1と一部共通する構成を有している。したがって、本実施形態において第1実施形態と共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0083】
図7は、本実施形態のレーザー光源装置3の構成を示す模式図である。
【0084】
図7に示すように、本実施形態のレーザー光源装置3は、ダイクロイックミラー14、反射ミラー15の間の光路上に波長変換素子36および可変波長選択素子37が設けられている。波長変換素子36は、供給する駆動信号に応じて、時間的および空間的に変換波長が変化する構成となっている。同様に、可変波長選択素子37は、供給する駆動信号に応じて、時間的および空間的に変換波長が変化する構成となっている。波長変換素子36および可変波長選択素子37については、後に詳述する。
【0085】
第1発光素子12とダイクロイックミラー14との間の光路上には、第1発光素子12から射出されるレーザー光IR1のスペクトル分布を検知するスペクトル検知部(検知手段)40が設けられている。スペクトル検知部40は、分光ミラー41、受光素子42、スペクトル解析部43を含んでいる。
【0086】
第1発光素子12から射出されるレーザー光IR1は、まず分光ミラー41に入射し、所定の比率でモニター光IR3が分離される。分光ミラー41における光分離の比率については、適宜設定可能であるが、レーザー発振に用いるレーザー光IR1の光量を最大化する観点でモニター光IR3の比率を最小化することが好ましい。例えば、受光素子42がモニター光IR3の光量を精度よく検出することができる範囲内で、モニター光IR3の比率を最小にするとよい。
【0087】
分光ミラー41により分離されたモニター光IR3は、受光素子42に入射する。受光素子42は、入射したモニター光IR3の光量に応じて電荷を発生させるものであり、例えばCCDセンサーやCMOSセンサー等により構成される。
【0088】
受光素子42に発生した電荷は、スペクトル解析部43に伝達され。検知したモニター光IR3の波長毎の強度、すなわちモニター光IR3のスペクトルを検知する。スペクトル解析部43により検出されたスペクトルは、制御部50に出力される。
【0089】
制御部50では、演算処理部51にて、得られたレーザー光IR1のスペクトル分布の実測値と、不図示の記録部(メモリー)等に記憶され非線形光学結晶の歪みに対する波長変換素子36の変換波長の変化や、音響光学媒体の歪みに対する可変波長選択素子37の選択波長の変化を記録したルックアップテーブル等に基づいて、可変波長選択素子37の選択波長や波長変換素子36の変換波長が波長幅全体を網羅するように駆動条件を算出し、可変波長選択素子制御回路54、波長変換素子駆動回路55に出力する。
【0090】
可変波長選択素子制御回路54では、算出された駆動条件に基づいて駆動信号を形成し、波長選択素子に接続された信号源に供給する。同様に、波長変換素子駆動回路55では、演算処理部51で算出された駆動条件に基づいて駆動信号を形成し、波長変換素子に接続された信号源に供給する。
【0091】
このように制御することで、可変波長選択素子37の選択波長域や波長変換素子36の変換波長域をレーザー光IR1のスペクトル分布の全域を含むものとすることができる。合わせて、可変波長選択素子37と波長変換素子36との駆動を同期させ、波長選択と波長変換を効率的に行うことができる。
以下、これらの構成について説明する。
【0092】
図8は、本実施形態のレーザー光源装置3を平面的に見た図であり、図4に対応する図である。
【0093】
可変波長選択素子37は、いわゆる音響光学チューナブルフィルター(Acousto−Optic Tunable Filter:AOTF)と呼ばれるものであり、音響光学媒体371と、音響波発生素子372(音響波生成手段)と、吸収材373と、を備えている。
【0094】
音響光学媒体371は、例えばLiNbO2、TeO2、PbMoO4等、内部に音響波が伝播される媒体となる圧電体結晶である。音響光学媒体371を伝播する音響波の速度は音響光学媒体371の材料に依存するため、所望の音響波伝播速度に応じて圧電体結晶の種類を選択することができる。
【0095】
音響光学媒体371には、音響光学媒体371に入射する複数の光の光路と直交する方向の一端(図8における左端)に音響波発生素子372が設けられ、他端(図8における右端)に吸収材373が設けられている。本実施形態においては、音響波発生素子372として圧電素子が用いられる。
【0096】
音響波発生素子372には信号源374が接続され、信号源374から、時間的に連続して変化する周波数(以下、音響周波数と称する)の音響波を発生させる駆動信号が供給される。また、吸収材373は、音響波を吸収し得るものであればいかなるものであっても良い。なお、本実施形態では音響波発生素子372として圧電素子を用いたが、この構成に代えて、音響光学媒体371の一端に一対の櫛歯電極を設け、櫛歯電極に電気信号を与えることで音響波を発生させるものを用いても良い。
【0097】
可変波長選択素子37では、音響波発生素子372に駆動信号を供給すると、音響光学媒体371の内部に、音響波発生素子372側から吸収材373側に向けて進行する音響波が発生する。圧縮波である音響波は、縦波として音響光学媒体371の内部を伝播するため、縦波の疎密によって音響光学媒体371が擬似的な回折格子として機能し、0次回折光、±1次回折光が発生する。
【0098】
可変波長選択素子37の選択波長は音響周波数に依存し、一般的には音響周波数が高くなる程、選択波長が小さくなる傾向を示すが、このような傾向を示すのは±1次回折光のみである。可変波長選択素子37から射出される+1次回折光、−1次回折光のいずれか一方の光軸は、可変波長選択素子37への入射光の光軸に対して2〜3°傾く。
【0099】
したがって、+1次回折光、−1次回折光のいずれか一方が第1,第2発光素子12,13に垂直に入射するように第1,第2発光素子12,13を可変波長選択素子37に対して相対的に傾けて配置することにより、回折光のうち、+1次回折光、−1次回折光のいずれか一方のみが共振する。
【0100】
更に、回折角度は、回折格子と入射光の波長との関係によって決まるが、音響波の疎密に応じて、すなわちレーザー光の入射位置によって回折格子のピッチが異なることから、同じ角度に回折する光の波長も入射位置によって異なる。そのため、入射位置によって選択波長が異なる。
【0101】
そのため、可変波長選択素子37に入射するレーザー光は、入射位置によって複数の波長のレーザー光が選択され、第1,第2発光素子12,13に入射する。第1,第2発光素子12,13は、互いに外部共振ミラーとして機能しレーザー発振を生じさせる。
【0102】
また、波長変換素子36には、非線形光学結晶361に入射する複数の光の光路と直交する方向の一端(図8における左端)に圧電素子362(歪み付与手段)が設けられ、他端(図8における右端)に吸収材363が設けられている。
【0103】
圧電素子362には信号源364が接続され、信号源364から時間的に連続して変化する電圧値を内包する駆動信号が供給される。圧電素子362に駆動信号を供給することにより、波長変換素子36を構成する非線形光学結晶361内に大きさが時間的に連続して変化する歪みが付与される。また、吸収材363は、非線形光学結晶の歪みを吸収し得るものであればいかなるものであっても良い。
【0104】
圧電素子362に駆動信号を供給すると、波長変換素子36を構成する非線形光学結晶361に歪みが生じ、圧電素子362側から吸収材363側に向けて歪みが伝播する。歪みは、圧電素子362の変形によって生じる圧縮波(縦波)として非線形光学結晶361の内部を伝播するため、縦波の疎密により光路に直交する方向に沿って大きさが異なる歪みを付与することができる。このとき、歪みによって非線形光学結晶361の格子間隔が光路と直交する方向での場所によって変化するが、波長変換素子36の変換波長は、非線形光学結晶361に格子間隔に依存するため、波長変換素子36の変換波長が場所によって変化することとなる。
【0105】
そのため、波長変換素子36に入射するレーザー光は、入射位置によって異なる複数の変換波長に応じてレーザー光が変換され、第1,第2発光素子12,13間でレーザー発振を起こす。
【0106】
次いで、図9は、図8における可変波長選択素子37および波長変換素子36に供給する駆動信号の特性を示す図である。以下、図8で付した符号をそのまま用いて説明を行う。
【0107】
まず、音響光学媒体371に入射する複数の光のうち、一つの光についてのみ着目する。図9(a)に示すように、本実施形態では可変波長選択素子37の駆動信号として、音響周波数がf1(例えば100MHz)からf2(例えば200MHz)に一定時間直線的に増加した後、f2からf1に一定時間直線的に減少し、その後、数十m秒の周期でその増減を繰り返す信号を用いる。
【0108】
このような駆動信号を供給することで、音響光学媒体371には音響周波数が時間的に連続して変化する音響波が供給される。可変波長選択素子37の選択波長は、音響光学媒体371に供給される音響周波数に依存するため、選択波長が時間的に連続して変化する。1つの光について着目すると、その光の入射位置において時間を追って選択波長が変化することになる。
【0109】
一方、波長変換素子36に対しては、信号源364から、時間的に連続して変化する電圧値を内包する駆動信号を供給する。ここでは、電圧値がV1からV2まで一定時間直線的に増加した後、V2からV1まで一定時間直線的に減少し、その後、一定周期でその増減を繰り返す駆動信号を用いる。また、この駆動信号の電圧値の増減周期は、可変波長選択素子37に供給する駆動信号の音響周波数の増減周期と同期させる。
【0110】
このような駆動信号を供給することで、非線形光学結晶361には時間的に連続して変化する歪みが発生する。波長変換素子36の変換波長は、非線形光学結晶361の歪みに依存するため、変換波長も時間的に連続して変化する。さらに、圧電素子362への駆動信号の電圧値の変動周期、すなわち歪みの大きさの変動周期と、可変波長選択素子37が生成する音響波の音響周波数の変動周期とが同期しているため、波長変換素子36の変換波長域が可変波長選択素子37の選択波長域と同期して変化する。
【0111】
したがって、波長変換素子36の変換波長の変化、および、可変波長選択素子37の選択波長の変化に伴って、時刻t1のときに波長λ1、時刻t2のときに波長λ2、時刻t3のときに波長λ3、時刻t4のときに波長λ4、時刻t5のときに波長λ5というように、射出するレーザー光の波長が時間的に連続して変化する。
【0112】
これにより、人間の目で積算された光の波長幅は、図9(b)に示したように、全ての波長域で光強度が略等しい、いわゆるトップハット形状のスペクトル分布となる。
【0113】
更に、複数の光に着目すると、可変波長選択素子37内を伝播する音響波は、可変波長選択素子37を透過するレーザー光に比べて速度がはるかに遅いため、ある時刻において音響光学媒体371内では音響波の疎密を生じる。そのため、選択波長が空間的に連続して変化し、複数の光のそれぞれから異なる選択波長の光を選択することとなる。
【0114】
選択される各々の波長の光は、上述のように図9(b)に示したトップハット形状のスペクトル分布となることから、人間の目で積算される光の波長幅は、複数のトップハット形状のスペクトル分布を重畳させたものとなる。
【0115】
したがって、以上のような構成のレーザー光源装置3では、スペックルノイズをより確実に低減し得る光源装置が実現できる。
【0116】
なお、本実施形態では、可変波長選択素子37を1つ用いることとしたが、複数の可変波長選択素子を用い、これらの可変波長選択素子毎に異なる駆動信号を供給して選択波長を異ならせる事としても良い。このような構成の場合には、複数の可変波長選択素子の選択波長域に対して可変波長変換素子の変換波長域をより精密に合わせ込むため、可変波長変換素子に複数の圧電素子を設けても良いし、可変波長変換素子を複数に分割することとしても良い。
【0117】
また、本実施形態では、音響周波数が時間的に連続して変化する駆動信号の例として、音響周波数が直線的に増加、減少する駆動信号の例を挙げたが、このような駆動信号の他、図10に示すように、音響周波数が曲線的に増加、減少する駆動信号を用いても良い。あるいは、図11に示すように、音響周波数が振幅、周期ともにランダムに増加、減少する駆動信号を用いても良い。
【0118】
[画像表示装置]
図12は、本発明に係る一実施形態としての画像表示装置の概略構成図である。
本実施形態のプロジェクター(画像表示装置)100は、赤色光、緑色光、青色光をそれぞれ射出する赤色のレーザー光源装置1R,緑色のレーザー光源装置1G、青色のレーザー光源装置1Bを備えており、これら光源装置は上記第1から第3実施形態で説明したレーザー光源装置1から3のいずれかである。
【0119】
プロジェクター100は、レーザー光源装置1R,1G,1Bから射出された各色光をそれぞれ変調する透過型の液晶ライトバルブ(画像形成装置)104R,104G,104Bと、液晶ライトバルブ104R,104G,104Bから射出された光を合成して投射レンズ107に導くクロスダイクロイックプリズム106と、クロスダイクロイックプリズム106よって合成された像を拡大してスクリーン110に投射する投射レンズ107と、を備えている。
【0120】
さらに、プロジェクター100は、レーザー光源装置1R,1G,1Bから射出されたレーザー光の照度分布を均一化させるための均一化光学系102R,102G,102Bを備えており、照度分布が均一化されたレーザー光によって液晶ライトバルブ104R,104G,104Bを照明している。本実施形態では、均一化光学系102R,102G,102Bは、例えばホログラム102aとフィールドレンズ102bによって構成されている。
【0121】
各液晶ライトバルブ104R,104G,104Bによって変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム106に入射する。このプリズムは4つの直角プリズムを貼り合わせて形成され、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に配置されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が重畳され、カラー画像を表す光が合成される。そして、合成された光は投射光学系である投射レンズ107によりスクリーン110上に投写され、拡大された画像が表示される。
【0122】
本実施形態のプロジェクター100においては、赤色のレーザー光源装置1R,緑色のレーザー光源装置1G,青色のレーザー光源装置1Bとして上記第1実施形態のレーザー光源装置1が用いられているので、スペックルを低減し良好な画像表示が可能なプロジェクターを実現することができる。
【0123】
なお、光変調装置として透過型の液晶ライトバルブを用いたが、反射型のライトバルブを用いても良いし、液晶以外の光変調装置を用いても良い。このようなライトバルブとしては、例えば、反射型液晶ライトバルブやデジタルミラーデバイス(Digital Mirror Device)が挙げられる。投射光学系の構成は、使用されるライトバルブの種類によって適宜変更すればよい。
【0124】
また、色光合成手段として、クロスダイクロイックプリズムを用いることとしたが、これに限るものではない。色光合成手段としては、例えば、ダイクロイックミラーをクロス配置とし色光を合成するもの、ダイクロイックミラーを平行に配置し色光を合成するものを用いることができる。また、双方のエミッターに対し光路を変換するダイクロイックミラーが設置された構成のレーザー光源装置を例に挙げて説明したが、エミッターの配列はこれに限るものではない。例えば、一方のエミッターにのみダイクロイックミラーが設置されていても良い。
【0125】
[走査型画像表示装置]
図13は、本発明に係る別実施形態としての画像表示装置の概略構成図であり、走査型画像表示装置の構成図を示す。
本実施形態のプロジェクター(画像表示装置)200は、上記第1から第3実施形態で説明したレーザー光源装置1から3のいずれかと、レーザー光源装置から射出された光をスクリーン210に向かって走査するMEMSミラー(画像形成装置)202と、レーザー光源装置1から射出された光をMEMSミラー202に集光させる集光レンズ203とを備えている。レーザー光源装置1から射出された光は、MEMSミラー202の駆動によってスクリーン210上を水平方向、垂直方向に走査される。カラー画像を表示する場合は、例えばレーザーダイオードを構成する複数のエミッターを、赤、緑、青のピーク波長を持つエミッターの組み合わせによって構成すれば良い。
【0126】
本実施形態のプロジェクター200においても、上記第1実施形態のレーザー光源装置1が光源として用いられているので、スペックルを低減し良好な画像表示が可能なプロジェクターを実現することができる。
【0127】
[モニター装置]
図14は、本発明に係る一実施形態としてのモニター装置の概略構成図である。
本実施形態のモニター装置300は、装置本体310と、光伝送部320と、を備える。装置本体310は、上記第1から第3実施形態で説明したレーザー光源装置1から3のいずれかを備えている。
【0128】
光伝送部320は、光を送る側と受ける側の2本のライトガイド321,322を備えている。各ライトガイド321,322は、多数本の光ファイバーを束ねたものであり、レーザー光を遠方に送ることができる。光を送る側のライトガイド321の入射側にはレーザー光源装置1が設置され、その出射側には拡散板323が設置されている。レーザー光源装置1から射出されたレーザー光は、ライトガイド321を通じて光伝送部320の先端に設けられた拡散板323に送られ、拡散板323により拡散されて被写体を照射する。
【0129】
光伝送部320の先端には、結像レンズ324も設けられており、被写体からの反射光を結像レンズ324で受けることができる。受けた反射光は、受け側のライトガイド322を通じて装置本体310内に設けられた撮像手段としてのカメラ311に送られる。この結果、レーザー光源装置1から射出されたレーザー光で被写体を照射して得られた反射光に基づく画像をカメラ(撮像部)311で撮像することができる。
【0130】
本実施形態のモニター装置300によれば、上記第1実施形態のレーザー光源装置1が用いられているので、鮮明な撮像が可能なモニター装置を実現することができる。
【0131】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば上記実施形態では、第1発光素子12と第2発光素子13との間を往復する光の光路上において第1,第2発光素子12,13と波長変換素子との間にダイクロイックミラー14と反射ミラー15を配置し、光路を2回折り曲げる構成とした。この構成に代えて、第1,第2発光素子12,13のいずれか一方と波長変換素子との間にのみダイクロイックミラーを配置し、光路を1回折り曲げた構成に本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0132】
1,2,3…レーザー光源装置(光源装置)、12…第1発光素子、13…第2発光素子、16…波長選択素子(波長選択手段)、22…エミッター(第1発光部)、23…エミッター(第2発光部、第3発光部)、36…可変波長変換素子、37…可変波長選択素子、40…スペクトル検知部(検知手段)、50…制御部、100,200…プロジェクター(画像表示装置)、104R,104G,104B…液晶ライトバルブ(光変調装置)、107…投射レンズ(投射装置)、202…MEMSミラー(走査手段)、300…モニター装置、311…カメラ(撮像部)、361…波長変換素子、362…圧電素子(変換波長変化手段)、371…音響光学媒体、372…音響波発生素子(音響生成手段)、IR1,IR2…レーザー光。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置、画像表示装置及びモニター装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクターにおいては、光源として超高圧水銀ランプなどの放電ランプが用いられるのが一般的であった。ところが、この種の放電ランプは、寿命が比較的短い、瞬時点灯が難しい、色再現性範囲が狭い、ランプから放射される紫外線が液晶ライトバルブを劣化させる、等の課題がある。そこで、放電ランプに代わる高出力の光源として、単色光を照射するレーザー光源を用いた投射型画像表示装置が提案されている。
【0003】
高出力のレーザー光を得られるレーザー光源装置としては、外部共振器構造を持つレーザー光源装置が上げられる。このようなレーザー光源装置では、外部共振器の使用により特定の波長の光が強められ高出力のレーザー光が得られる。このような外部共振器構造においては、共振ミラーとしてボリューム・ブラッグ・グレーティング(VBG)など狭帯域ミラーとして働く素子や、特許文献1に示すようなVBGよりも安価なバンドパスフィルターを利用する構造が提案されている。
【0004】
このような外部共振器型のレーザー光源においては、共振器構造内の光路上に特定の波長を透過させる波長選択素子(バンドパスフィルター、エタロン他)を配置する構成が知られている(例えば、特許文献2参照)。このような構成にすることで、波長選択素子を透過した波長のレーザー光を共振させ、発振する波長を決定している。
【0005】
ところで、これらのレーザー光源は、プロジェクターの光源として適応する場合、上述のように光源の高出力化が解決できる反面、スクリーン等の散乱体でレーザー光の干渉が生じることによって明点と暗点が縞模様あるいは斑模様に分布する、いわゆるスペックルノイズと呼ばれる現象が発生する場合がある。そこで、レーザー光源を用いて鮮明な画像を表示させるプロジェクターを実現するためには、スペックルノイズの対策が必要となる。
【0006】
スペックルノイズは、レーザー光の可干渉性に起因して生じる現象である。よって、スペックルノイズを低減するには、レーザー光の可干渉性を低下させる対策が有効である。可干渉性はレーザー光の出力スペクトル幅に概ね反比例しており、出力スペクトル幅が広がると可干渉性が低下するため、スペクトル幅を広くすることによってスペックルノイズを低減することができる。
【0007】
このようなレーザー光を射出するレーザー光源装置として、具体的には、複数の発光素子を2次元に配列したアレイ状光源において、各発光素子の出力波長をずらすことで全体のスペクトル幅を広げることでスペックルノイズの発生を抑制する装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平08−190111号公報
【特許文献2】特開2006−30288号公報
【特許文献3】特表2004−503923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献3の構成において、光源の高出力化を図るために外部共振器型のレーザー光源を適用した場合には、次のような問題が生じる。
【0010】
すなわち、外部共振器型のレーザー光源においてレーザー発振させるためには、共振ミラーの対応波長幅を狭くする必要がある。そのため、特許文献3の構成のように、アレイ状光源の各発光素子の出力波長をずらしてスペクトル幅を広げたとしても、発振するレーザー光は、共振ミラーの対応波長幅に応じて狭帯域となり、結果、スペックル低減に効果を示さない。
【0011】
一方で、出力波長幅を広げるために共振ミラーの対応波長幅を広げた場合、レーザー共振が困難となり、共振ミラーとしての役割を果たさなくなる。したがって、可干渉性を低下させるために、単純に共振ミラーの選択波長幅を広くすることはできない。
【0012】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、外部共振器型のレーザー光源を前提として、出力レーザー光の可干渉性を低下させることでスペックルノイズを確実に低減し得る光源装置を提供することを目的とする。また、上記の光源装置を備え、画質に優れた画像表示装置およびモニター装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題の少なくとも一部を解決するため、本発明の光源装置は、レーザー光を射出する第1発光部と、前記第1発光部から射出されたレーザー光が入射するように配置された第2発光部と、前記第1発光部から射出されたレーザー光が入射するように配置された第3発光部と、を備え、前記第2発光部および前記第3発光部は、該第2発光部および該第3発光部が射出したレーザー光が前記第1発光部へ入射するように配置され、前記第1発光部と前記第2発光部との間の光路上、および前記第1発光部と前記第3発光部との間の光路上に、空間的に選択波長が異なる波長選択手段が配置されていることを特徴とする。
【0014】
まず、2個の発光部を対峙させた外部共振器構造では、共振器の両端に発光素子が配置されており、2個の発光部間でレーザー光を往復させることにより誘導放出を連続的に起こし、レーザー光を増幅させることが可能となる。また、発光部と外部共振ミラーとを用いた場合と比べてレーザー光の増幅が大きくなる可能性があり、高出力化に好適なレーザー光源装置を実現することが可能となる。ここで、一対の発光部を両端に有する外部共振器構造を用いると、一方の発光部の発光部から射出されたレーザー光からは1箇所でしかレーザー発振を生じず、1本のレーザー光しか生じさせることができない。対して、この構成によれば、第1発光部から射出されるレーザー光は、第2発光部および第3発光部との間で往復しレーザー発振を生じる。そのため、第1発光部から射出されるレーザー光から、空間的に分離された2本のレーザー光を生じさせることができる。
【0015】
更に、発光部間の光路上には、空間的に選択波長域が異なる波長選択手段が設けられているため、空間的に分離された2本のレーザー光がこのような波長選択手段を透過すると、レーザー光が透過する領域の選択波長に応じて、複数の波長のレーザー光が選択されることとなる。
【0016】
これらの作用により、本発明の光源装置では、一対の発光部を両端に有する共振器構造からは得られない、複数の波長成分からなるスペクトル分布のレーザー光を射出させることができ、スペックルノイズを確実に低減することができる。
【0017】
上記に記載の光源装置においては、前記第1発光部を有する第1発光素子と、前記第2発光部および前記第3発光部を有する第2発光素子と、を有し、前記第1発光素子と前記第2発光素子とは、互いに一方の発光素子から射出されたレーザー光が他方の発光素子に入射するように配置されていることが望ましい。
【0018】
この構成によれば、容易に複数の波長成分からなるスペクトル分布のレーザー光を射出させることができる光源装置を提供することが可能となる。例えば、同じ構成の2つの発光素子を用いた場合に、発光部から射出されるレーザー光の光軸をずらして配置し、一方の発光部から照射されたレーザー光が他方の複数の発光部にまたがって照射されるように配置することで、得られる波長の種類を容易に増やすことができる。
【0019】
上記に記載の光源装置においては、前記波長選択手段は、表面が湾曲し前記レーザー光の入射角度が空間的に異なることが望ましい。
【0020】
この構成によれば、入射するレーザー光の位置ごとに入射角度が異なることで、波長選択手段の内部を透過するレーザー光の光路長が異なる。この光路長の差に起因して、選択波長が異なることで、入射するレーザー光の位置ごとに選択波長を異ならせることができるため、複数の波長のレーザー光を射出させることができ、スペックルノイズを確実に低減することが可能となる。
【0021】
上記に記載の光源装置においては、前記波長選択手段は、前記レーザー光が入射する一方の表面を構成する形成材料と、他方の表面を構成する形成材料と、の熱膨張率が互いに異なることが望ましい。
【0022】
この構成によれば、使用に伴い照射されるレーザー光によって波長選択手段が暖められ、熱膨張率の差によって反りが生じる。そのため、入射するレーザー光の位置ごとに容易に選択波長を異ならせることが可能となる。
【0023】
上記に記載の光源装置においては、前記波長選択手段は、前記発光部から射出されるレーザー光の全波長域のうち、所定の選択波長域のレーザー光を選択的に透過させる音響光学媒体と、音響波を生成する音響波生成手段と、を含む可変波長選択素子であり、前記音響波生成手段を用いて前記音響光学媒体内の前記レーザー光の光路と交差する方向に音響波を伝播させることにより、前記選択波長域を空間的かつ時間的に変化させることが望ましい。
【0024】
この構成によれば、光源と共振ミラーとの間の光路上に可変波長選択素子が設けられているため、複数の発光部から射出された複数の光の全波長域のうち、所定の選択波長域の光が可変波長選択素子の音響光学媒体を選択的に透過する。
【0025】
このとき、可変波長選択素子を構成する音響光学媒体に対し、音響波生成手段を用いて複数の光の光路と交差する方向に音響波を伝播させる。すると、音響波は光に比べて伝播速度がはるかに遅いため、音響光学媒体における複数の光の入射位置で音響波(縦波)の到達時刻にずれが生じ、各々の選択波長域が空間的に変化する。このため、ある時刻で複数の光に着目したときに選択波長域がそれぞれ異なり、全体として選択される波長の種類が増える。
【0026】
それと同時に、複数の光の各々の選択波長域が時間的にも変化するため、一つの発光部から射出されるレーザー光に着目したときに、選択波長域が目の積算時間内で時間をおって変化する。その結果、複数の波長が目の積算時間内で重畳され擬似的に波長域を拡大することが可能となる。発光部から射出されるレーザー光の波長は、発光部の温度によって変化するが、発光部から射出されるレーザー光の波長が変化したとしても、選択波長域が時間的にも変化するため、同じ発光部から射出されるレーザー光は、擬似的に波長域が広がる。
【0027】
この空間的作用、時間的作用の双方により、可変波長選択素子では複数の波長のレーザー光を選択することとなり、スペックルノイズを確実に低減し得る光源装置を実現できる。
【0028】
上記に記載の光源装置においては、前記可変波長選択素子を構成する音響光学媒体が複数個に分割され、分割された各々の音響光学媒体に前記レーザー光がそれぞれ入射されるともに、前記各々の音響光学媒体毎に前記音響波生成手段が設けられたことが望ましい。
【0029】
この構成によれば、分割された音響光学媒体毎に音響波生成手段が設けられているため、可変波長選択素子の選択波長域を空間的に変化させる際の自由度が高くなり、波長幅がより広い所望のスペクトル分布が得やすくなる。
【0030】
上記に記載の光源装置においては、前記第1発光部と前記波長選択手段との間の光路上、または、前記第2発光部および前記第3発光部と前記波長選択手段との間の光路上に、複数の発光部から射出された複数のレーザー光を、当該レーザー光の波長域とは異なる波長域のレーザー光に変換する波長変換素子と、当該波長変換素子が変換する変換波長域を時間的に変化させる変換波長変化手段と、を含む可変波長変換素子が設けられ、前記音響波生成手段が、時間的に連続して変化する音響周波数を有する音響波を生成し、前記音響波生成手段が生成する音響波の音響周波数の変化と、前記変換波長変化手段が変化させる変換波長域の変化と、が同期していることが望ましい。
【0031】
この構成によれば、所望の波長域のレーザー光が直接得られる光源が入手し難かったとしても、波長変換素子によって光源から射出されたレーザー光を当該レーザー光の波長域とは異なる波長域のレーザー光に変換し、所望の波長域のレーザー光を得ることができる。ここで、波長変換素子における変換波長域を同期して変えることができるため、変換波長域の変化と可変波長選択素子における選択波長域の変化とを合わせることができる。そのため、レーザー光の変換効率および利用効率を高めることができる。
【0032】
上記に記載の光源装置においては、前記1発光部、前記第2発光部、前記第3発光部の少なくともいずれか1つから射出されたレーザー光のスペクトルを検知する検知手段を有し、前記制御部は、検知したスペクトルに基づいて、前記可変波長選択素子の選択波長域が前記スペクトルのスペクトル分布の全域を含むように前記音響波生成手段を制御することが望ましい。
【0033】
この構成によれば、レーザー光のスペクトル分布全域を有効に用いて複数の波長のレーザー光を射出することができるため、レーザー光の利用効率を上昇させることが可能となる。
【0034】
本発明の画像表示装置は、上述した本発明の光源装置と、前記光源装置から射出されたレーザー光を画像信号に応じて変調する光変調装置と、前記光変調装置により形成された画像を投射する投射装置と、を備えたことを特徴とする。
【0035】
この構成によれば、本発明の画像表示装置は、上述した本発明の光源装置を備えているので、光源装置から射出されたレーザー光は可干渉性が低下しており、被投射面に照射される画像はスペックルノイズが抑えられたものとなる。したがって、輝度ムラがなく良質な画像を提供することができる。
【0036】
本発明の画像表示装置は、上述した本発明の光源装置と、前記光源装置から射出されたレーザー光を被投射面上で走査する走査手段と、を備えたことを特徴とする。
【0037】
この構成によれば、本発明の画像表示装置は、上述した本発明の光源装置を備えているので、光源装置から射出されたレーザー光は可干渉性が低下しており、被投射面に照射される画像はスペックルノイズが抑えられたものとなる。したがって、輝度ムラがなく良質な画像を提供することができる。
【0038】
本発明のモニター装置は、上述した本発明の光源装置と、前記光源装置により照明された被写体を撮像する撮像部と、を備えたことを特徴とする。
【0039】
この構成によれば、本発明のモニター装置は、上述した本発明の光源装置を備えているので、光源装置はコヒーレンスが短いレーザー光を射出し、輝度ムラのない明るい光により被写体が照射される。したがって、撮像手段により被写体を鮮明に撮像することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1実施形態のレーザー光源装置の概略斜視図である。
【図2】射出されるレーザー光の波長について示した説明図である。
【図3】射出されるレーザー光の波長について示した説明図である。
【図4】本発明の第1実施形態のレーザー光源装置の平面図である。
【図5】本実施形態の変形例を示した説明図である。
【図6】本発明の第2実施形態のレーザー光源装置の平面図である。
【図7】本発明の第3実施形態のレーザー光源装置の概略構成図である。
【図8】本発明の第3実施形態のレーザー光源装置の平面図である。
【図9】本光源装置の可変波長選択素子と圧電素子の駆動信号の特性を示す図である。
【図10】可変波長選択素子の駆動信号の他の特性例を示す図である。
【図11】可変波長選択素子の駆動信号のさらに他の特性例を示す図である。
【図12】本発明の画像表示装置の一例を示す図である。
【図13】本発明の画像表示装置の他の例を示す図である。
【図14】本発明のモニター装置の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
[第1実施形態]
以下、図1〜図5を参照しながら、本発明の第1実施形態に係るレーザー光源装置について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の膜厚や寸法の比率などは適宜異ならせてある。
【0042】
図1は、本実施形態のレーザー光源装置1を示す概略斜視図である。図1に示すように、レーザー光源装置1は、基台11と、第1半導体レーザー素子としての第1発光素子12と、第2半導体レーザー素子としての第2発光素子13と、ダイクロイックミラー14と、反射ミラー15と、波長変換素子(波長変換手段)16と、波長選択素子(波長選択手段)17とを主に備えている。
【0043】
第1発光素子12、および第2発光素子13(第1,第2発光素子12,13ともいう)は、互いに同一の構成であり、例えば1065nmの波長の赤外レーザー光であるレーザー光IR1,IR2を射出する面発光型レーザーダイオードである。第1,第2発光素子12,13は、基台11上に設けられたレーザー基板18上に設けられており、レーザー光IR1,IR2の射出端面が基台11と反対方向を向くように配置されている。そのため、第1,第2発光素子12,13から射出されたレーザー光IR1,IR2は、いずれもレーザー基板18の上面の法線方向上方に射出される。
【0044】
第1発光素子12の射出端面には、平面視が円形状のエミッター(第1発光部)22が複数形成され、複数のエミッター22は第1発光素子12の長手方向に配列している。第2発光素子13側のエミッター(第2発光部、第3発光部)23の構成も同一である。エミッター22,23は、不図示のDBR(Distributed Bragg Reflector)層上に、活性層が積層された構成になっている。
【0045】
第1発光素子12からのレーザー光IR1の射出方向には、ダイクロイックミラー14が配置されている。同様に、第2発光素子13からのレーザー光IR2の射出方向には、反射ミラー15が配置されている。
【0046】
ダイクロイックミラー14は、第1,第2発光素子12,13から射出されるレーザー光IR1,IR2と同じ波長のレーザー光を反射する一方、可視光を透過させて第1,第2発光素子12,13とは異なる方向へ射出させるミラーである。具体的な構成として、ダイクロイックミラー14は、反射面に誘電体多層膜が形成されており、第1,第2発光素子12,13から射出される赤外領域の波長の光を反射させ、該赤外線の半分程度の波長を有する可視光領域の波長の光を透過させる特性を有している。
【0047】
ダイクロイックミラー14および反射ミラー15は、互いの反射面が向き合うように、且つレーザー光IR1,IR2の光路に対して所定の角度(例えば45°)を成すように光路上に配置されている。そのため、第1発光素子12から射出されたレーザー光IR1は、ダイクロイックミラー14および反射ミラー15を介して、第2発光素子13のエミッター23に入射し、同じく第2発光素子13から射出されたレーザー光IR2は、ダイクロイックミラー14および反射ミラー15を介して、第1発光素子12のエミッター22に入射する構成となっている。
【0048】
このような配置により、第1発光素子12と第2発光素子13との間を射出されたレーザー光IR1,IR2が往復してレーザー発振が生じる。すなわち、第1発光素子12と第2発光素子13(エミッター22とエミッター23)は、自身を両端とする外部共振器構造を構成している。
【0049】
また、ダイクロイックミラー14と反射ミラー15との間の光路上には、波長選択素子17が配置されている。この波長選択素子17は、所定の波長の光を透過させそれ以外の波長の光を反射させることで、所定の波長の光のみに波長に揃える役目を果たす。
【0050】
本実施形態の波長選択素子17は、光が透過する箇所によって透過可能な波長(選択波長)が異なる構成となっており、複数の波長を選択することが可能な構成となっている。このような波長選択素子17としては、例えば、表面の誘電体多層膜が勾配蒸着されることにより形成されたものや、選択波長が異なる波長選択素子を切り貼りしてつなぎ合わせ、一体としたものを用いることができる。
【0051】
更に、反射ミラー15と波長選択素子17との間の光路上には、支持部材21上に設けられた波長変換素子16が配置されている。波長変換素子16としては、分極反転周期構造を有する非線形光学結晶であるPPLN(Periodically Poled Lithium Niobate)が好適に用いられ、入射光である赤外レーザー光を略半分の波長の可視光に変換し、第2次高調波を発生させる第2次高調波発生(Second Harmonic Generation:SHG)素子として機能する。
【0052】
本実施形態の波長変換素子16は、波長選択素子17が複数の波長を選択する構成であることに対応し、選択された波長の光が各々透過する複数の箇所において、空間的に変換波長が異なる構成となっている。すなわち、波長変換素子16では、透過する箇所に応じて複数の波長の光を略半分の波長の可視光に変換する。
【0053】
これらの構成を備えるため、第1,第2発光素子12,13から射出された赤色レーザー光のうち、波長選択素子17で選択された波長の光は、波長変換素子16において略半分の波長の緑色レーザー光に変換される。また、上述のようにダイクロイックミラー14は、可視光領域の波長の光を透過させる特性を有しているため、第2発光素子13から第1発光素子12に向かう途中で緑色に変換された緑色レーザー光は、ダイクロイックミラー14を通過し、装置外部に向けて射出される。
【0054】
なお、光路上に偏光選択フィルターを配置して、波長変換素子16における分極構造と波長変換素子16への入射光の偏光方向とを対応させ、変換効率を向上させることとしても良い。
本実施形態のレーザー光源装置1の概略は、以上のようになっている。
【0055】
本実施形態のレーザー光源装置1は、第1,第2発光素子12,13が備えるエミッター22,23が光共振器構造の両端を成しているが、両エミッター22,23の相対的な配置に特徴がある。以下、図を用いて、この特徴部分について説明する。
【0056】
図2,3は、レーザー光源装置1が有するエミッターの配置について説明する説明図であり、図2は比較のためのレーザー光源装置1Xの共振器構造を示す説明図、図3はレーザー光源装置1を示す説明図である。各図(a)は、エミッターの相対的な配置関係を示す概略図、各図(b)は、得られるレーザー光の波長を示す説明図である。
【0057】
図2では、発光素子12Xと発光素子13Xとが外部共振構造を形成しており、各発光素子12X,13Xは各々2つのエミッター22X,23Xを有することとして示している。また、レーザー発振をしているレーザー光Lx,Lyの光路上に、本実施形態のレーザー光源装置1と同様、空間的に選択波長が異なる波長選択素子17を配置することとする。ここでは、レーザー入射位置によって厚さが異なり、厚さに対応して選択波長を異ならせる構成の波長選択素子17を略記して図示している。
【0058】
まず、図2に示すレーザー光源装置1Xは、発光素子12Xが有するエミッター22Xから射出するレーザー光Lx、及び、発光素子13Xが有するエミッター23Xから射出するレーザー光Lyの光軸が一致しており、互いに対向する1つのエミッターに入射している。すなわち、互いのエミッターは1対1に対応している。このような場合、レーザー光Lxとレーザー光Lyとは、対となるエミッター間でレーザー発振をするため、レーザー発振により2本のレーザー光La,Lbが生じる。つまり、エミッター総数の半分のレーザー光が生じる。
【0059】
またレーザー発振の過程では、生じる2本のレーザー光La,Lbは、空間的に選択波長が異なる波長選択素子17に入射し、入射位置の選択波長に対応する波長の光が選択される。波長選択素子17には、2本のレーザー光が2箇所に入射するため、レーザー光源装置1X全体としては、図2(b)に示すように2種の波長λa,λbを射出するレーザー光となる。
【0060】
対して、図3に示すレーザー光源装置1では、第1発光素子12が有するエミッター22から射出するレーザー光Lx、及び、第2発光素子13が有するエミッター23から射出するレーザー光Lyの光軸が異なり、1つのエミッターから射出されたレーザー光が対向する2つのエミッターに入射する構成を含んでいる。よって、図3に示すエミッター231を本発明で言うところの第1発光部と考え、2つのエミッター22を第2、第3発光部と考えること、もできる。
【0061】
半導体レーザー素子である第1,第2発光素子12,13を対向させて共振器構造を構成する場合、エミッター22,23部分を共振器構造の両端の共振ミラーとして利用する。そのため、各エミッター22,23から射出されるレーザー光は、対向する第1,第2発光素子12,13のエミッター22,23に入射する成分のみが反射され、照射位置にエミッター22,23が無い場合には反射されず、レーザー発振を起こさない。
【0062】
エミッター231を例に取ると、エミッター231から射出されるレーザー光のうち、エミッター22と重なる領域AR1に照射されるレーザー光成分は反射されてレーザー発振を生じ、エミッター22と重ならない領域AR2に照射されるレーザー光成分は、反射されないためレーザー発振を生じない。
【0063】
その結果、レーザー光Lxとレーザー光Lyとは、対となるエミッターの重なり部分でレーザー発振をするため、レーザー発振により3本のレーザー光Lc,Ld,Leが生じる。生じる3本のレーザー光Lc,Ld,Leは、同様に波長選択素子17に入射し入射位置の選択波長に対応する波長の光が選択される。その結果、レーザー光源装置1全体としては、図3(b)に示すように3種の波長λc,λd,λeを射出するレーザー光となる。
【0064】
結果として、本実施形態のレーザー光源装置1では、1つのエミッターから照射されたレーザー光が対向する複数のエミッターにまたがって照射されるように配置することで、得られる波長の種類が増えることとなる。
【0065】
図4は、本実施形態のレーザー光源装置1の平面図である。ここでは図を見やすくするために、ダイクロイックミラーおよび反射ミラーを省略して図示している。
【0066】
波長変換素子16は、入射光をほぼ半分の波長に変換する非線形光学素子である。波長変換素子16による波長変換効率は非線形の特性を有しており、例えば、波長変換素子16に入射するレーザー光の強度が強いほど、変換効率が向上する。また、波長変換素子16の変換効率は40〜50%程度である。つまり、射出されたレーザー光のすべてが所定波長のレーザー光に変換されるわけではない。
【0067】
波長変換素子16としては、自身を透過するレーザー光の光軸に交わる方向に連続的に分極反転構造(ドメインDM)の幅が変化している。このような波長変換素子16では、変換波長が、レーザー光の光軸に直交する方向に連続的に変化する。この分極反転周期構造内を光が透過することにより、透過位置毎に異なる波長のレーザー光の波長を変換するようになっている。
【0068】
このような分極反転周期構造は、例えば次のようにして形成する。まず、非線形強誘電体材料(例えばLiTaO3)からなる基板に、レーザー光の光軸方向に沿って電極が有る領域と無い領域とが交互に並んだ電極パターンを形成する。この時、各電極パターンの幅及び電極パターン同士の間隔は、所望の分極反転周期構造と同じものとする。次に、これら電極パターンにパルス状の電圧を印加することにより、図に示したような分極反転周期構造が得られる。このようにして分極反転周期構造を形成した後、通常電極パターンは除去されるが、そのまま残しておいても良い。
【0069】
また、第1,第2発光素子12,13は、第1発光素子12が射出するレーザー光のビームスポットBaが、複数のエミッター23にまたがって照射され、同様に第2発光素子13が射出するレーザー光のビームスポットBbが、複数のエミッター22にまたがって照射されるように、レーザー光の光軸を相対的にずらして配置されている。
【0070】
このような構成のレーザー光源装置1では、第1,第2発光素子12,13のエミッター22,23と、射出されたレーザー光のビームスポットBa,Bbと、の重なりの数だけレーザー発振を生じる。波長選択素子17では、レーザー光の入射位置に対応する選択波長のレーザー光が選択され、更に、選択された各レーザー光が波長変換素子16において各々略半分の波長に変換される。変換された波長のレーザー光は、第1,第2発光素子12,13の間に構成される光共振器構造で増幅され、装置外部に射出されることとなる。
【0071】
したがって、以上のような構成のレーザー光源装置1では、複数の波長のレーザー光を射出することができる。これにより、射出されるレーザー光は、複数のパターンのスペックルノイズを被投射面で発生させ、複数のスペックル同士を同時に重畳させることができるため、スペックルノイズを確実に低減し得る光源装置を実現できる。
【0072】
なお、本実施形態では、第1,第2発光素子12,13において、エミッター22,23が長手方向である1方向に配列する1次元のレーザーアレイを用いることとしたが、エミッターが2方向に配列する2次元レーザーアレイを用いることとしても良い。
【0073】
図5は、第1,第2発光素子12,13の代わりに2次元レーザーアレイ82,83を用いた場合の、2次元レーザーアレイ82でのビームスポットBSの重なりを示す概略平面図である。2次元レーザーアレイ82,83を用いる場合においても、1つのエミッター93から射出されたレーザー光のビームスポットBSが複数のエミッター92と重なり、複数のエミッター92に対してレーザー光が入射するように、2次元レーザーアレイ82,83を配置する。
【0074】
すると、両レーザー光のビームスポットBSの重なり部分ARでレーザー発振を起こすために、空間的に分離された複数のレーザー光を射出することができる。このように得られた空間的に分離されたレーザー光が、本実施形態の波長選択素子17を透過すると、レーザー光が透過する領域の選択波長に応じて、複数の波長のレーザー光が選択されることとなり、スペックルノイズを確実に低減し得る光源装置を実現できる。
【0075】
また、本実施形態では、光学的に対向する2つの発光素子を用い、第1発光素子12が有するエミッター22から射出される1つのレーザー光IR1が、第2発光素子13が有する2つのエミッター23にまたがって入射されることとしたが、これに限らない。例えば、本実施形態で示した第2発光素子23の位置に、2つの発光素子が並んで配置され、第1発光素子12が有するエミッター22から射出される1つのレーザー光が、2つの発光素子が各々有するエミッターにまたがって入射されることとしても構わない。
【0076】
[第2実施形態]
図6は、本発明の第2実施形態に係るレーザー光源装置2の説明図であり、第1実施形態の図4に対応する図である。本実施形態のレーザー光源装置2は、第1実施形態のレーザー光源装置1と一部共通している。異なるのは、波長選択素子がレーザー光の光軸方向に湾曲していることである。したがって、本実施形態において第1実施形態と共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0077】
図6に示すように、本実施形態のレーザー光源装置2は、レーザー光の光軸方向に湾曲する波長選択素子27を有しており、光が透過する箇所によって選択波長が異なる構成となっている。
【0078】
波長選択素子27は、膨張率の異なる二つの誘電体膜27a,27bを積層することによって形成されており、誘電体膜27aの熱膨張率よりも誘電体膜27bの熱膨張率の方が大きくなっている。そのため、使用に際しレーザー光が照射されると、透過するレーザー光によって加熱され、熱膨張率の差によって波長選択素子27に反りが生じる。
【0079】
すると、波長選択素子27へのレーザー光の入射位置ごとに入射角度が異なるため、波長選択素子27の内部を透過するレーザー光の光路長が、複数のレーザー光毎に異なる。この光路長の差に起因して、入射するレーザー光の位置ごとに選択波長を異ならせることができ、複数の波長のレーザー光を射出させることができる。
【0080】
以上のような構成のレーザー光源装置2でも、スペックルノイズを確実に低減し得る光源装置を実現できる。
【0081】
また、本実施形態の波長選択素子27は、熱膨張により反りを発生させたが、機械的に応力を加え、変形させて反らせることとしても良い。
【0082】
[第3実施形態]
図7は、本発明の第3実施形態に係るレーザー光源装置3の説明図である。本実施形態のレーザー光源装置3は、第1実施形態のレーザー光源装置1と一部共通する構成を有している。したがって、本実施形態において第1実施形態と共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0083】
図7は、本実施形態のレーザー光源装置3の構成を示す模式図である。
【0084】
図7に示すように、本実施形態のレーザー光源装置3は、ダイクロイックミラー14、反射ミラー15の間の光路上に波長変換素子36および可変波長選択素子37が設けられている。波長変換素子36は、供給する駆動信号に応じて、時間的および空間的に変換波長が変化する構成となっている。同様に、可変波長選択素子37は、供給する駆動信号に応じて、時間的および空間的に変換波長が変化する構成となっている。波長変換素子36および可変波長選択素子37については、後に詳述する。
【0085】
第1発光素子12とダイクロイックミラー14との間の光路上には、第1発光素子12から射出されるレーザー光IR1のスペクトル分布を検知するスペクトル検知部(検知手段)40が設けられている。スペクトル検知部40は、分光ミラー41、受光素子42、スペクトル解析部43を含んでいる。
【0086】
第1発光素子12から射出されるレーザー光IR1は、まず分光ミラー41に入射し、所定の比率でモニター光IR3が分離される。分光ミラー41における光分離の比率については、適宜設定可能であるが、レーザー発振に用いるレーザー光IR1の光量を最大化する観点でモニター光IR3の比率を最小化することが好ましい。例えば、受光素子42がモニター光IR3の光量を精度よく検出することができる範囲内で、モニター光IR3の比率を最小にするとよい。
【0087】
分光ミラー41により分離されたモニター光IR3は、受光素子42に入射する。受光素子42は、入射したモニター光IR3の光量に応じて電荷を発生させるものであり、例えばCCDセンサーやCMOSセンサー等により構成される。
【0088】
受光素子42に発生した電荷は、スペクトル解析部43に伝達され。検知したモニター光IR3の波長毎の強度、すなわちモニター光IR3のスペクトルを検知する。スペクトル解析部43により検出されたスペクトルは、制御部50に出力される。
【0089】
制御部50では、演算処理部51にて、得られたレーザー光IR1のスペクトル分布の実測値と、不図示の記録部(メモリー)等に記憶され非線形光学結晶の歪みに対する波長変換素子36の変換波長の変化や、音響光学媒体の歪みに対する可変波長選択素子37の選択波長の変化を記録したルックアップテーブル等に基づいて、可変波長選択素子37の選択波長や波長変換素子36の変換波長が波長幅全体を網羅するように駆動条件を算出し、可変波長選択素子制御回路54、波長変換素子駆動回路55に出力する。
【0090】
可変波長選択素子制御回路54では、算出された駆動条件に基づいて駆動信号を形成し、波長選択素子に接続された信号源に供給する。同様に、波長変換素子駆動回路55では、演算処理部51で算出された駆動条件に基づいて駆動信号を形成し、波長変換素子に接続された信号源に供給する。
【0091】
このように制御することで、可変波長選択素子37の選択波長域や波長変換素子36の変換波長域をレーザー光IR1のスペクトル分布の全域を含むものとすることができる。合わせて、可変波長選択素子37と波長変換素子36との駆動を同期させ、波長選択と波長変換を効率的に行うことができる。
以下、これらの構成について説明する。
【0092】
図8は、本実施形態のレーザー光源装置3を平面的に見た図であり、図4に対応する図である。
【0093】
可変波長選択素子37は、いわゆる音響光学チューナブルフィルター(Acousto−Optic Tunable Filter:AOTF)と呼ばれるものであり、音響光学媒体371と、音響波発生素子372(音響波生成手段)と、吸収材373と、を備えている。
【0094】
音響光学媒体371は、例えばLiNbO2、TeO2、PbMoO4等、内部に音響波が伝播される媒体となる圧電体結晶である。音響光学媒体371を伝播する音響波の速度は音響光学媒体371の材料に依存するため、所望の音響波伝播速度に応じて圧電体結晶の種類を選択することができる。
【0095】
音響光学媒体371には、音響光学媒体371に入射する複数の光の光路と直交する方向の一端(図8における左端)に音響波発生素子372が設けられ、他端(図8における右端)に吸収材373が設けられている。本実施形態においては、音響波発生素子372として圧電素子が用いられる。
【0096】
音響波発生素子372には信号源374が接続され、信号源374から、時間的に連続して変化する周波数(以下、音響周波数と称する)の音響波を発生させる駆動信号が供給される。また、吸収材373は、音響波を吸収し得るものであればいかなるものであっても良い。なお、本実施形態では音響波発生素子372として圧電素子を用いたが、この構成に代えて、音響光学媒体371の一端に一対の櫛歯電極を設け、櫛歯電極に電気信号を与えることで音響波を発生させるものを用いても良い。
【0097】
可変波長選択素子37では、音響波発生素子372に駆動信号を供給すると、音響光学媒体371の内部に、音響波発生素子372側から吸収材373側に向けて進行する音響波が発生する。圧縮波である音響波は、縦波として音響光学媒体371の内部を伝播するため、縦波の疎密によって音響光学媒体371が擬似的な回折格子として機能し、0次回折光、±1次回折光が発生する。
【0098】
可変波長選択素子37の選択波長は音響周波数に依存し、一般的には音響周波数が高くなる程、選択波長が小さくなる傾向を示すが、このような傾向を示すのは±1次回折光のみである。可変波長選択素子37から射出される+1次回折光、−1次回折光のいずれか一方の光軸は、可変波長選択素子37への入射光の光軸に対して2〜3°傾く。
【0099】
したがって、+1次回折光、−1次回折光のいずれか一方が第1,第2発光素子12,13に垂直に入射するように第1,第2発光素子12,13を可変波長選択素子37に対して相対的に傾けて配置することにより、回折光のうち、+1次回折光、−1次回折光のいずれか一方のみが共振する。
【0100】
更に、回折角度は、回折格子と入射光の波長との関係によって決まるが、音響波の疎密に応じて、すなわちレーザー光の入射位置によって回折格子のピッチが異なることから、同じ角度に回折する光の波長も入射位置によって異なる。そのため、入射位置によって選択波長が異なる。
【0101】
そのため、可変波長選択素子37に入射するレーザー光は、入射位置によって複数の波長のレーザー光が選択され、第1,第2発光素子12,13に入射する。第1,第2発光素子12,13は、互いに外部共振ミラーとして機能しレーザー発振を生じさせる。
【0102】
また、波長変換素子36には、非線形光学結晶361に入射する複数の光の光路と直交する方向の一端(図8における左端)に圧電素子362(歪み付与手段)が設けられ、他端(図8における右端)に吸収材363が設けられている。
【0103】
圧電素子362には信号源364が接続され、信号源364から時間的に連続して変化する電圧値を内包する駆動信号が供給される。圧電素子362に駆動信号を供給することにより、波長変換素子36を構成する非線形光学結晶361内に大きさが時間的に連続して変化する歪みが付与される。また、吸収材363は、非線形光学結晶の歪みを吸収し得るものであればいかなるものであっても良い。
【0104】
圧電素子362に駆動信号を供給すると、波長変換素子36を構成する非線形光学結晶361に歪みが生じ、圧電素子362側から吸収材363側に向けて歪みが伝播する。歪みは、圧電素子362の変形によって生じる圧縮波(縦波)として非線形光学結晶361の内部を伝播するため、縦波の疎密により光路に直交する方向に沿って大きさが異なる歪みを付与することができる。このとき、歪みによって非線形光学結晶361の格子間隔が光路と直交する方向での場所によって変化するが、波長変換素子36の変換波長は、非線形光学結晶361に格子間隔に依存するため、波長変換素子36の変換波長が場所によって変化することとなる。
【0105】
そのため、波長変換素子36に入射するレーザー光は、入射位置によって異なる複数の変換波長に応じてレーザー光が変換され、第1,第2発光素子12,13間でレーザー発振を起こす。
【0106】
次いで、図9は、図8における可変波長選択素子37および波長変換素子36に供給する駆動信号の特性を示す図である。以下、図8で付した符号をそのまま用いて説明を行う。
【0107】
まず、音響光学媒体371に入射する複数の光のうち、一つの光についてのみ着目する。図9(a)に示すように、本実施形態では可変波長選択素子37の駆動信号として、音響周波数がf1(例えば100MHz)からf2(例えば200MHz)に一定時間直線的に増加した後、f2からf1に一定時間直線的に減少し、その後、数十m秒の周期でその増減を繰り返す信号を用いる。
【0108】
このような駆動信号を供給することで、音響光学媒体371には音響周波数が時間的に連続して変化する音響波が供給される。可変波長選択素子37の選択波長は、音響光学媒体371に供給される音響周波数に依存するため、選択波長が時間的に連続して変化する。1つの光について着目すると、その光の入射位置において時間を追って選択波長が変化することになる。
【0109】
一方、波長変換素子36に対しては、信号源364から、時間的に連続して変化する電圧値を内包する駆動信号を供給する。ここでは、電圧値がV1からV2まで一定時間直線的に増加した後、V2からV1まで一定時間直線的に減少し、その後、一定周期でその増減を繰り返す駆動信号を用いる。また、この駆動信号の電圧値の増減周期は、可変波長選択素子37に供給する駆動信号の音響周波数の増減周期と同期させる。
【0110】
このような駆動信号を供給することで、非線形光学結晶361には時間的に連続して変化する歪みが発生する。波長変換素子36の変換波長は、非線形光学結晶361の歪みに依存するため、変換波長も時間的に連続して変化する。さらに、圧電素子362への駆動信号の電圧値の変動周期、すなわち歪みの大きさの変動周期と、可変波長選択素子37が生成する音響波の音響周波数の変動周期とが同期しているため、波長変換素子36の変換波長域が可変波長選択素子37の選択波長域と同期して変化する。
【0111】
したがって、波長変換素子36の変換波長の変化、および、可変波長選択素子37の選択波長の変化に伴って、時刻t1のときに波長λ1、時刻t2のときに波長λ2、時刻t3のときに波長λ3、時刻t4のときに波長λ4、時刻t5のときに波長λ5というように、射出するレーザー光の波長が時間的に連続して変化する。
【0112】
これにより、人間の目で積算された光の波長幅は、図9(b)に示したように、全ての波長域で光強度が略等しい、いわゆるトップハット形状のスペクトル分布となる。
【0113】
更に、複数の光に着目すると、可変波長選択素子37内を伝播する音響波は、可変波長選択素子37を透過するレーザー光に比べて速度がはるかに遅いため、ある時刻において音響光学媒体371内では音響波の疎密を生じる。そのため、選択波長が空間的に連続して変化し、複数の光のそれぞれから異なる選択波長の光を選択することとなる。
【0114】
選択される各々の波長の光は、上述のように図9(b)に示したトップハット形状のスペクトル分布となることから、人間の目で積算される光の波長幅は、複数のトップハット形状のスペクトル分布を重畳させたものとなる。
【0115】
したがって、以上のような構成のレーザー光源装置3では、スペックルノイズをより確実に低減し得る光源装置が実現できる。
【0116】
なお、本実施形態では、可変波長選択素子37を1つ用いることとしたが、複数の可変波長選択素子を用い、これらの可変波長選択素子毎に異なる駆動信号を供給して選択波長を異ならせる事としても良い。このような構成の場合には、複数の可変波長選択素子の選択波長域に対して可変波長変換素子の変換波長域をより精密に合わせ込むため、可変波長変換素子に複数の圧電素子を設けても良いし、可変波長変換素子を複数に分割することとしても良い。
【0117】
また、本実施形態では、音響周波数が時間的に連続して変化する駆動信号の例として、音響周波数が直線的に増加、減少する駆動信号の例を挙げたが、このような駆動信号の他、図10に示すように、音響周波数が曲線的に増加、減少する駆動信号を用いても良い。あるいは、図11に示すように、音響周波数が振幅、周期ともにランダムに増加、減少する駆動信号を用いても良い。
【0118】
[画像表示装置]
図12は、本発明に係る一実施形態としての画像表示装置の概略構成図である。
本実施形態のプロジェクター(画像表示装置)100は、赤色光、緑色光、青色光をそれぞれ射出する赤色のレーザー光源装置1R,緑色のレーザー光源装置1G、青色のレーザー光源装置1Bを備えており、これら光源装置は上記第1から第3実施形態で説明したレーザー光源装置1から3のいずれかである。
【0119】
プロジェクター100は、レーザー光源装置1R,1G,1Bから射出された各色光をそれぞれ変調する透過型の液晶ライトバルブ(画像形成装置)104R,104G,104Bと、液晶ライトバルブ104R,104G,104Bから射出された光を合成して投射レンズ107に導くクロスダイクロイックプリズム106と、クロスダイクロイックプリズム106よって合成された像を拡大してスクリーン110に投射する投射レンズ107と、を備えている。
【0120】
さらに、プロジェクター100は、レーザー光源装置1R,1G,1Bから射出されたレーザー光の照度分布を均一化させるための均一化光学系102R,102G,102Bを備えており、照度分布が均一化されたレーザー光によって液晶ライトバルブ104R,104G,104Bを照明している。本実施形態では、均一化光学系102R,102G,102Bは、例えばホログラム102aとフィールドレンズ102bによって構成されている。
【0121】
各液晶ライトバルブ104R,104G,104Bによって変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム106に入射する。このプリズムは4つの直角プリズムを貼り合わせて形成され、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に配置されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が重畳され、カラー画像を表す光が合成される。そして、合成された光は投射光学系である投射レンズ107によりスクリーン110上に投写され、拡大された画像が表示される。
【0122】
本実施形態のプロジェクター100においては、赤色のレーザー光源装置1R,緑色のレーザー光源装置1G,青色のレーザー光源装置1Bとして上記第1実施形態のレーザー光源装置1が用いられているので、スペックルを低減し良好な画像表示が可能なプロジェクターを実現することができる。
【0123】
なお、光変調装置として透過型の液晶ライトバルブを用いたが、反射型のライトバルブを用いても良いし、液晶以外の光変調装置を用いても良い。このようなライトバルブとしては、例えば、反射型液晶ライトバルブやデジタルミラーデバイス(Digital Mirror Device)が挙げられる。投射光学系の構成は、使用されるライトバルブの種類によって適宜変更すればよい。
【0124】
また、色光合成手段として、クロスダイクロイックプリズムを用いることとしたが、これに限るものではない。色光合成手段としては、例えば、ダイクロイックミラーをクロス配置とし色光を合成するもの、ダイクロイックミラーを平行に配置し色光を合成するものを用いることができる。また、双方のエミッターに対し光路を変換するダイクロイックミラーが設置された構成のレーザー光源装置を例に挙げて説明したが、エミッターの配列はこれに限るものではない。例えば、一方のエミッターにのみダイクロイックミラーが設置されていても良い。
【0125】
[走査型画像表示装置]
図13は、本発明に係る別実施形態としての画像表示装置の概略構成図であり、走査型画像表示装置の構成図を示す。
本実施形態のプロジェクター(画像表示装置)200は、上記第1から第3実施形態で説明したレーザー光源装置1から3のいずれかと、レーザー光源装置から射出された光をスクリーン210に向かって走査するMEMSミラー(画像形成装置)202と、レーザー光源装置1から射出された光をMEMSミラー202に集光させる集光レンズ203とを備えている。レーザー光源装置1から射出された光は、MEMSミラー202の駆動によってスクリーン210上を水平方向、垂直方向に走査される。カラー画像を表示する場合は、例えばレーザーダイオードを構成する複数のエミッターを、赤、緑、青のピーク波長を持つエミッターの組み合わせによって構成すれば良い。
【0126】
本実施形態のプロジェクター200においても、上記第1実施形態のレーザー光源装置1が光源として用いられているので、スペックルを低減し良好な画像表示が可能なプロジェクターを実現することができる。
【0127】
[モニター装置]
図14は、本発明に係る一実施形態としてのモニター装置の概略構成図である。
本実施形態のモニター装置300は、装置本体310と、光伝送部320と、を備える。装置本体310は、上記第1から第3実施形態で説明したレーザー光源装置1から3のいずれかを備えている。
【0128】
光伝送部320は、光を送る側と受ける側の2本のライトガイド321,322を備えている。各ライトガイド321,322は、多数本の光ファイバーを束ねたものであり、レーザー光を遠方に送ることができる。光を送る側のライトガイド321の入射側にはレーザー光源装置1が設置され、その出射側には拡散板323が設置されている。レーザー光源装置1から射出されたレーザー光は、ライトガイド321を通じて光伝送部320の先端に設けられた拡散板323に送られ、拡散板323により拡散されて被写体を照射する。
【0129】
光伝送部320の先端には、結像レンズ324も設けられており、被写体からの反射光を結像レンズ324で受けることができる。受けた反射光は、受け側のライトガイド322を通じて装置本体310内に設けられた撮像手段としてのカメラ311に送られる。この結果、レーザー光源装置1から射出されたレーザー光で被写体を照射して得られた反射光に基づく画像をカメラ(撮像部)311で撮像することができる。
【0130】
本実施形態のモニター装置300によれば、上記第1実施形態のレーザー光源装置1が用いられているので、鮮明な撮像が可能なモニター装置を実現することができる。
【0131】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば上記実施形態では、第1発光素子12と第2発光素子13との間を往復する光の光路上において第1,第2発光素子12,13と波長変換素子との間にダイクロイックミラー14と反射ミラー15を配置し、光路を2回折り曲げる構成とした。この構成に代えて、第1,第2発光素子12,13のいずれか一方と波長変換素子との間にのみダイクロイックミラーを配置し、光路を1回折り曲げた構成に本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0132】
1,2,3…レーザー光源装置(光源装置)、12…第1発光素子、13…第2発光素子、16…波長選択素子(波長選択手段)、22…エミッター(第1発光部)、23…エミッター(第2発光部、第3発光部)、36…可変波長変換素子、37…可変波長選択素子、40…スペクトル検知部(検知手段)、50…制御部、100,200…プロジェクター(画像表示装置)、104R,104G,104B…液晶ライトバルブ(光変調装置)、107…投射レンズ(投射装置)、202…MEMSミラー(走査手段)、300…モニター装置、311…カメラ(撮像部)、361…波長変換素子、362…圧電素子(変換波長変化手段)、371…音響光学媒体、372…音響波発生素子(音響生成手段)、IR1,IR2…レーザー光。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を射出する第1発光部と、
前記第1発光部から射出されたレーザー光が入射するように配置された第2発光部と、
前記第1発光部から射出されたレーザー光が入射するように配置された第3発光部と、を備え、
前記第2発光部および前記第3発光部は、該第2発光部および該第3発光部が射出したレーザー光が前記第1発光部へ入射するように配置され、
前記第1発光部と前記第2発光部との間の光路上、および前記第1発光部と前記第3発光部との間の光路上に、空間的に選択波長が異なる波長選択手段が配置されていることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記第1発光部を有する第1発光素子と、
前記第2発光部および前記第3発光部を有する第2発光素子と、を有し、
前記第1発光素子と前記第2発光素子とは、互いに一方の発光素子から射出されたレーザー光が他方の発光素子に入射するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記波長選択手段は、表面が湾曲し前記レーザー光の入射角度が空間的に異なることを特徴とする請求項1または2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記波長選択手段は、前記レーザー光が入射する一方の表面を構成する形成材料と、他方の表面を構成する形成材料と、の熱膨張率が互いに異なることを特徴とする請求項3に記載の光源装置。
【請求項5】
前記波長選択手段は、前記発光部から射出されるレーザー光の全波長域のうち、所定の選択波長域のレーザー光を選択的に透過させる音響光学媒体と、音響波を生成する音響波生成手段と、を含む可変波長選択素子であり、
前記音響波生成手段を用いて前記音響光学媒体内の前記レーザー光の光路と交差する方向に音響波を伝播させることにより、前記選択波長域を空間的かつ時間的に変化させることを特徴とする請求項1または2に記載の光源装置。
【請求項6】
前記可変波長選択素子を構成する音響光学媒体が複数個に分割され、分割された各々の音響光学媒体に前記レーザー光がそれぞれ入射されるとともに、前記各々の音響光学媒体毎に前記音響波生成手段が設けられたことを特徴とする請求項5に記載の光源装置。
【請求項7】
前記第1発光部と前記波長選択手段との間の光路上、または、前記第2発光部および前記第3発光部と前記波長選択手段との間の光路上に、複数の発光部から射出された複数のレーザー光を、当該レーザー光の波長域とは異なる波長域のレーザー光に変換する波長変換素子と、当該波長変換素子が変換する変換波長域を時間的に変化させる変換波長変化手段と、を含む可変波長変換素子が設けられ、
前記音響波生成手段が、時間的に連続して変化する音響周波数を有する音響波を生成し、
前記音響波生成手段が生成する音響波の音響周波数の変化と、前記変換波長変化手段が変化させる変換波長域の変化と、が同期していることを特徴とする請求項5または6に記載の光源装置。
【請求項8】
前記1発光部、前記第2発光部、前記第3発光部の少なくともいずれか1つから射出されたレーザー光のスペクトルを検知する検知手段を有し、
前記制御部は、検知したスペクトルに基づいて、前記可変波長選択素子の選択波長域が前記スペクトルのスペクトル分布の全域を含むように前記音響波生成手段を制御することを特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の光源装置と、
前記光源装置から射出されたレーザー光を画像信号に応じて変調する光変調装置と、
前記光変調装置により形成された画像を投射する投射装置と、を備えたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載の光源装置と、
前記光源装置から射出されたレーザー光を被投射面上で走査する走査手段と、を備えたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか一項に記載の光源装置と、
前記光源装置により照明された被写体を撮像する撮像部と、を備えたことを特徴とするモニター装置。
【請求項1】
レーザー光を射出する第1発光部と、
前記第1発光部から射出されたレーザー光が入射するように配置された第2発光部と、
前記第1発光部から射出されたレーザー光が入射するように配置された第3発光部と、を備え、
前記第2発光部および前記第3発光部は、該第2発光部および該第3発光部が射出したレーザー光が前記第1発光部へ入射するように配置され、
前記第1発光部と前記第2発光部との間の光路上、および前記第1発光部と前記第3発光部との間の光路上に、空間的に選択波長が異なる波長選択手段が配置されていることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記第1発光部を有する第1発光素子と、
前記第2発光部および前記第3発光部を有する第2発光素子と、を有し、
前記第1発光素子と前記第2発光素子とは、互いに一方の発光素子から射出されたレーザー光が他方の発光素子に入射するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記波長選択手段は、表面が湾曲し前記レーザー光の入射角度が空間的に異なることを特徴とする請求項1または2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記波長選択手段は、前記レーザー光が入射する一方の表面を構成する形成材料と、他方の表面を構成する形成材料と、の熱膨張率が互いに異なることを特徴とする請求項3に記載の光源装置。
【請求項5】
前記波長選択手段は、前記発光部から射出されるレーザー光の全波長域のうち、所定の選択波長域のレーザー光を選択的に透過させる音響光学媒体と、音響波を生成する音響波生成手段と、を含む可変波長選択素子であり、
前記音響波生成手段を用いて前記音響光学媒体内の前記レーザー光の光路と交差する方向に音響波を伝播させることにより、前記選択波長域を空間的かつ時間的に変化させることを特徴とする請求項1または2に記載の光源装置。
【請求項6】
前記可変波長選択素子を構成する音響光学媒体が複数個に分割され、分割された各々の音響光学媒体に前記レーザー光がそれぞれ入射されるとともに、前記各々の音響光学媒体毎に前記音響波生成手段が設けられたことを特徴とする請求項5に記載の光源装置。
【請求項7】
前記第1発光部と前記波長選択手段との間の光路上、または、前記第2発光部および前記第3発光部と前記波長選択手段との間の光路上に、複数の発光部から射出された複数のレーザー光を、当該レーザー光の波長域とは異なる波長域のレーザー光に変換する波長変換素子と、当該波長変換素子が変換する変換波長域を時間的に変化させる変換波長変化手段と、を含む可変波長変換素子が設けられ、
前記音響波生成手段が、時間的に連続して変化する音響周波数を有する音響波を生成し、
前記音響波生成手段が生成する音響波の音響周波数の変化と、前記変換波長変化手段が変化させる変換波長域の変化と、が同期していることを特徴とする請求項5または6に記載の光源装置。
【請求項8】
前記1発光部、前記第2発光部、前記第3発光部の少なくともいずれか1つから射出されたレーザー光のスペクトルを検知する検知手段を有し、
前記制御部は、検知したスペクトルに基づいて、前記可変波長選択素子の選択波長域が前記スペクトルのスペクトル分布の全域を含むように前記音響波生成手段を制御することを特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の光源装置と、
前記光源装置から射出されたレーザー光を画像信号に応じて変調する光変調装置と、
前記光変調装置により形成された画像を投射する投射装置と、を備えたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載の光源装置と、
前記光源装置から射出されたレーザー光を被投射面上で走査する走査手段と、を備えたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか一項に記載の光源装置と、
前記光源装置により照明された被写体を撮像する撮像部と、を備えたことを特徴とするモニター装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−165787(P2011−165787A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25166(P2010−25166)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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