説明

光源装置およびそれを備えた擬似太陽光照射装置

【課題】放射角が制御され、且つ、小型化を実現した光源装置と、当該光源装置を備えた擬似太陽光照射装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る光源装置1は、光源部10と、光源部10からの光を入射する位置に配置された、入射面から出射面に向けてその幅が徐々に広くなるテーパー形状を成した導光体20と、導光体20から出射した光が入射する位置に配置された、特定の波長帯域のスペクトルを減衰させるように構成された光学フィルタ30と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、擬似太陽光を照射する擬似太陽光照射装置、および当該擬似太陽光照射装置に設けられる光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光に近い人工光(擬似太陽光)を照射できる装置の需要が高まっている。特に、太陽電池技術の急速な発展と普及とに伴い、太陽電池の検査、測定、および実験に利用可能な、高精度の擬似太陽光を照射できる装置が特に求められている。
【0003】
擬似太陽光に求められる主要な要素は、その発光スペクトルを自然の太陽光に近づけることである。特許文献1には、その一例として、拡散光照射方式を用いた擬似太陽光照射装置が開示されている。図10に、当該擬似太陽光照射装置の構成を示す。図10に示す擬似太陽光照射装置は、擬似太陽光の照射範囲より小面積の光放射面に光学フィルタ103を取り付け、内部にキセノンランプ102等のランプを設置しランプハウジング101と、該ランプハウジング101の光学フィルタ103に対向する側に配置した反射板105を具備して成り、キセノン光を光学フィルタ103に透過させることによって、擬似太陽光を照射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−28785号公報(公開日:2003年1月29日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した図10に示す構成では、光学フィルタ103に入射する光の指向性(放射角)が制御されていない。すなわち、キセノンランプ102から照射された光が光学フィルタ103に入射するまでにその指向性を制御する構成がない。そのため、散乱光が光学フィルタ103に入射する構成となっている。したがって、図10のような構成では、入射角依存性を有した光学フィルタ103において光の損失が大きく、且つ、光学フィルタ103の特性を充分に活かすことができず、所望の特性を得ることができないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、放射角を制御することができ、且つ、小型化を実現した光源装置と、当該光源装置を備えた擬似太陽光照射装置を提供することにある。
【0007】
すなわち、本発明に係る光源装置は、上記の課題を解決するために、
光源を有した光源部と、
上記光源部からの光を入射する位置に配置された導光体と、
上記導光体から出射した光が入射する位置に配置されたスペクトル変調用部材とを備えた光源装置であって、
上記導光体は、上記光源部からの光が入射する入射面と、当該入射面から入射した光が、その側面が光を反射させる光反射面として構成された導光領域へと導かれた後に出射する出射面とを有しており、且つ、当該入射面から当該出射面に向けてその幅が徐々に広くなるテーパー形状を成しており、
上記スペクトル変調用部材は、入射した光から特定の波長帯域のスペクトルを減衰させた光を出射するように構成されている、ことを特徴としている。
【0008】
上記の構成によれば、本発明に係る光源装置は、上記導光体によって、スペクトル変調用部材に入射する光の指向性(放射角)を制御することができる。
【0009】
具体的には、上記導光体は、その入射面から入射した光が、側面が光反射面として構成された導光領域に導かれる。この導光領域において、光は光反射面において反射を繰り返すことで、放射角が制御される。
【0010】
そして、導光体は、入射面から出射面に向けてその幅が徐々に広くなるテーパー形状を成していることから、導光体内部(導光領域)を透過する光の放射指向性を、ランダムなものから一定方向のものへと変化させることができる。
【0011】
よって、所定の指向性を有した光が、導光体の出射面から出射されることになる。
【0012】
そして、このような導光体を光源部とスペクトル変調用部材との間に配設することにより、所定の指向性を有した光をスペクトル変調用部材に入射させることが可能となる。
【0013】
ここで、スペクトル変調用部材は、いわゆる光学フィルタであり、上述したように入射角依存性を有している。そのため、従来構成では上述のように光学フィルタに対して所定の指向性を有した光が入射しないことによる種々の問題があったが、本構成によれば、スペクトル変調用部材の入射角依存性に合致した光を入射させることができるので光の損失を著しく抑制するができる。また、スペクトル変調用部材の特性を充分に活かすことができる。
【0014】
このように、本構成によれば、従来構成に比べてスペクトル変調用部材(光学フィルタ)において光が充分に調整(変調)される。したがって、本発明に係る光源装置を、いわゆる擬似太陽光照射装置の光源装置として配設することにより、より太陽光に近い光を提供する装置を実現することができる。
【0015】
また、本構成によれば、所定の指向性を有した光をスペクトル変調用部材に入射させることが可能であるため、従来構成に比べて、装置の小型化を実現することができる。このように小型化を実現したことで、本発明に係る光源装置を、擬似太陽光照射装置の光源装置として配設すれば、擬似太陽光照射装置を小型化することができる。
【0016】
また、本発明に係る光源装置によれば、上記の構成に加えて、上記光源部には、上記光源から上記導光体の上記入射面に直接入射しない光を反射させる反射部材が設けられていることが好ましい。
【0017】
上記の構成によれば、本発明に係る光源装置は、導光体以外の方向に出射される光源からの光を、反射部材によって、導光体に入射させることができることから、光源からの光を効率的にスペクトル変調用部材へ入射させることができる。
【0018】
また、本発明に係る光源装置によれば、上記の構成に加えて、上記光源部が、上記光源における上記導光体と対向する側とは反対側に、反射ミラーを有しており、
上記反射ミラーは、上記導光体に向けて開口したU字型を成していることが好ましい。
【0019】
上記の構成によれば、本発明に係る光源装置は、U字型の反射ミラーを、上記光源における上記導光体と対向する側とは反対側に配設することにより、導光体以外の方向に出射される光源からの光を、導光体の入射面に向けて収束させて入射させることができる。
【0020】
また、本発明に係る光源装置によれば、上記の構成に加えて、上記光源が、上記U字型の内部に配設されており、
上記U字型を成した上記反射ミラーにおける上記光源の配設領域は、更に、当該光源の形状の一部分に沿った形状の窪みが形成されていることが好ましい。
【0021】
上記の構成によれば、本発明に係る光源装置は、導光体以外の方向に出射される光源からの光を、より一層効率よく導光体の入射面に向けて収束させて入射させることができる。
【0022】
また、本発明に係る光源装置によれば、上記の構成に加えて、上記光源部が、上記導光体の上記入射面の近傍に向かう光を、上記反射ミラーに向けて反射させる戻しミラーを有していることが好ましい。
【0023】
上記の構成によれば、本発明に係る光源装置は、上記戻しミラーを配設していることから、導光体に向けて出射されているものの、僅かに放射角がずれて導光体の入射面近傍に反れてしまう光を、上記戻しミラーによって反射させて光源近傍に設けられた反射部材(例えば、上記U字型の反射ミラー)に戻すことができる。これにより、光源の光をより一層効率的に導光体の入射面に入射させることができる。
【0024】
また、本発明に係る光源装置によれば、上記の構成に加えて、上記光源は管状光源であって、
上記管状光源は、その長手軸の方向が上記導光体の上記幅を規定する方向と平行となるように、配設されており、
上記光源部は、更に、上記長手軸に対して垂直方向に広がった面を反射面とする側部ミラーを上記管状光源の端部に有していることが好ましい。
【0025】
これにより、光源の光をより一層効率的に導光体の入射面に入射させることができる。
【0026】
また、本発明に係る光源装置によれば、上記の構成に加えて、上記光源部が、上記導光体の上記入射面に入射する前の光を、その放射角を収束させるように屈折させる屈折素子を有しており、
上記反射部材は、上記屈折素子に向けて光を反射させるように構成されていることが好ましい。
【0027】
上記の構成によれば、本発明に係る光源装置は、上記屈折素子を配設することにより、より一層放射角が制御された光を導光体に入射させることができる。
【0028】
また、本発明は、上記した構成を具備する光源装置を備えた擬似太陽光照射装置も含まれる。
【0029】
そして、本発明に係る擬似太陽光照射装置は、更に、上記光源装置の上記スペクトル変調用部材から出射する光を入射する導光板を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0030】
以上のように、本発明に係る本発明に係る光源装置およびそれを備えた擬似太陽光照射装置は、
光源を有した光源部と、
上記光源部からの光を入射する位置に配置された導光体と、
上記導光体から出射した光が入射する位置に配置されたスペクトル変調用部材とを備えた光源装置であって、
上記導光体は、上記光源部からの光が入射する入射面と、当該入射面から入射した光が、その側面が光を反射させる光反射面として構成された導光領域へと導かれた後に出射する出射面とを有しており、且つ、当該入射面から当該出射面に向けてその幅が徐々に広くなるテーパー形状を成しており、
上記スペクトル変調用部材は、入射した光から特定の波長帯域のスペクトルを減衰させた光を出射するように構成されている、ことを特徴としている。
【0031】
これにより、放射角が制御され、且つ、小型化を実現した光源装置と、当該光源装置を備えた擬似太陽光照射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係る擬似太陽光照射装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示した擬似太陽光照射装置の一部を拡大した図である。
【図3】図1に示した擬似太陽光照射装置に設けられた光源装置の構成を示す図である。
【図4】図1に示した擬似太陽光照射装置に設けられた光源装置の一部の構成を示す図である。
【図5】図1に示した擬似太陽光照射装置に設けられた光源装置の一部の構成を示す図である。
【図6】図1に示した擬似太陽光照射装置に設けられた光源装置の指向性の検証の結果を示したグラフであり、(a)は、導光体の出射面x方向の指向性分布を示したグラフであり、(b)は、導光体の出射面y方向の指向性分布を示したグラフである。
【図7】太陽光の基準スペクトルを示したグラフである。
【図8】本発明の一実施形態に係る擬似太陽光照射装置に設けられた光源装置の別の構成を示した図である。
【図9】図8に示した光源装置の指向性の検証の結果を示したグラフであり、(a)は、導光体の出射面x方向の指向性分布を示したグラフであり、(b)は、導光体の出射面y方向の指向性分布を示したグラフである。
【図10】従来の擬似太陽光照射装置の構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
〔実施形態1〕
本発明に係る一実施形態について、図1から図7を参照して以下に説明する。本実施形態では、図1に示すように擬似太陽光を照射面80に照射するための擬似太陽光照射装置70について、詳細に説明する。擬似太陽光とは人工光の一種であり、自然光(太陽光)の発光スペクトルに限りなく似た発光スペクトルを有している。照射面には、例えば太陽電池が配置される。
【0034】
本発明は、特に、擬似太陽光照射装置に設けられた光源装置に特徴を有する。そこでまずは全体構成として擬似太陽光照射装置を説明し、続いて、光源装置の詳細について説明する。
【0035】
(擬似太陽光照射装置の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る擬似太陽光照射装置70の要部構成を示す図である。図1に示すように、擬似太陽光照射装置70は、光源装置1と、筐体3と、反射体2と、導光板4とを備えている。
【0036】
光源装置1は、光源11から出射した光が矢印で示すように透過して反射体2に入射するように構成されている。詳細は後述する。
【0037】
光源装置1は、筐体3の左右にそれぞれ保持されている。本実施形態では、左右に1つずつの光源装置1が配設されているが、その数はこれに限定されるものではない。
【0038】
筐体3には、光源装置1を保持している位置の近傍に、冷却装置3aが設けられている。冷却装置3aにより、光源11に因る擬似太陽光照射装置70全体の温度上昇による測定結果のばらつきを抑制することができる。
【0039】
反射体2は、筐体3の上部において、光源装置1から出射する光を入射できる位置に配設されており、光源装置1から出射する光の光路を所望の方向に変更することができるように構成されている。反射体2としては、反射ミラーを用いることができる。反射体2によって反射された光は、導光板4に入射するように構成されている。
【0040】
導光板4は、筐体3の上部に配設されており、反射体2によって反射された光を入射して、その内部へ導き、照射面80に向けて表面領域60から出射するように構成されている。
【0041】
導光板4の表面領域60から、照射面80に向けて擬似太陽光を照射する際、導光板4の内部における光の反射機構を利用する。図2は、図1に示す導光板4の領域50の一部分の構成を拡大して示した図である。図2に示すように、導光板4の内部には、いずれも光を反射する性質を有する複数の散乱溝4aが設けられている。図2に示すように、導光板4の内部に入射した光は、散乱溝4aによって反射され、照射面80に向けて導かれる。散乱溝4aのピッチおよび形状を工夫することによって、照度の均一性をある程度は高めることができる。これらピッチおよび形状は、導光板4に入射される光の放射指向性に応じて最適化する必要がある。したがって、例えば光源11にキセノンランプを用いた場合、キセノン光の放射指向性に合わせて、導光板4のピッチおよび形状を設計すればよい。
【0042】
(光源装置の構成)
次に、図3(a)及び(b)に基づいて、光源装置1の詳細について説明する。図3(a)及び(b)は、光源装置1の構成を示した図であり、図3(a)は、図1と同じ向きからみたときの光源装置1であり、図3(b)は、図3(a)の構成を横からみたときの光源装置1である。
【0043】
図3(a)及び(b)に示すように、光源装置1は、光源部10と、導光体20と、光学フィルタ30(スペクトル変調用部材)とを備えている。各々の構成は、光源部10から出射した光が導光体20に入射し、導光体20によって導かれて出射した光が光学フィルタ30に入射するように配置されている。
【0044】
(光源部)
光源部10は、光源11と、反射部材12とを有している。
【0045】
光源11は、従来周知の擬似太陽光照射装置の光源として用いられるものを採用することができる。例えば、キセノンランプやハロゲンランプなどである。また、光源11の形状としては、例えば、管状のものを用いることができる。本実施形態では、管状の光源11を備えている構成について説明する。管状の光源11は、その周囲から放射状に光を出射するように構成されている。
【0046】
反射部材12は、光源11から出射される光のうち、導光体20以外の方向に出射される光源からの光を入射し、導光体20に向けて反射する機能を有する。反射部材12は、図3(a)に示すように、円リフクレクタ13(U字型の反射ミラー、窪み)と、楕円リフレクタ14(U字型の反射ミラー)と、サイドミラー15(側部ミラー)と、フロントリフレクタ16(戻しミラー)とから構成されている。以下、反射部材12の各部材について説明する。
【0047】
円リフクレクタ13は、管状の光源11の長手軸の方向に沿って、管状の光源11における導光体20に対向していない側を覆うように形成された溝の形状を有した反射ミラーである。管状の光源11における導光体20に対向していない側から出射した光はそのままだと導光体20に入射することは不可能だが、この光を円リフクレクタ13が導光体20に向けて反射させる。これにより、管状の光源11における導光体20に対向していない側から出射した光を、導光体20に入射させることができる。
【0048】
楕円リフレクタ14は、円リフクレクタ13の溝形状の端部から導光体20に伸びるように略テーパー形状を成している。ここで、楕円リフレクタ14と円リフクレクタ13とは一体的に構成することができ、当該一体構造を、管状の光源11の長手軸に対して垂直に切断した切断面(図3(a)で示す状態)でみると、略U字型を成しているといえる。楕円リフレクタ14は、導光体20以外の方向に出射される光源からの光や、円リフクレクタ13によって反射されたものの導光体20以外の方向に反射される光などの光を、導光体20に向けて反射することができる。楕円リフレクタ14は、反射ミラーによって構成することができる。
【0049】
サイドミラー15は、図3(b)に示すように、管状の光源11における端部に2箇所設けられていて、各々は、互いに離間して設けられており、その離間距離(幅)は、導光体20の入射面よりも広ければ良い。サイドミラー15は、管状の光源11の長手軸に対して垂直方向に広がった面を反射面とするミラーから構成されている。これにより、楕円リフレクタ14と同じく、導光体20以外の方向に出射される光源からの光や、円リフクレクタ13によって反射されたものの導光体20以外の方向に反射される光などの光を、導光体20に向けて反射することができる。
【0050】
フロントリフレクタ16は、導光体20の入射面の近傍に配されている。例えば、図3(a)に示すように、フロントリフレクタ16は、導光体20の入射面と隣接する位置に配置される。フロントリフレクタ16は、楕円リフレクタ14及び円リフクレクタ13と対向するように反射ミラーを有した構成となっている。フロントリフレクタ16は、僅かに放射角がずれて導光体の入射面から反れて当該入射面近傍に向かってしまう光を反射させて、他の反射部材(例えば、楕円リフレクタ14や円リフクレクタ13)に向かわせることができる。これは、導光体の入射面近傍に届いた光を、一旦、光源が配設された側いわゆる一旦戻していると言える。このように、フロントリフレクタ16によれば、光源11の光をより一層効率的に導光体20の入射面に入射させることができる。
【0051】
以上のように、光源11から直接導光体20の入射面に入射する光に加えて、反射部材12を構成する種々の反射材があることによって、直接導光体20の入射面に入射しない光も反射させて採取的に導光体20の入射面に入射させることができるため、光源11の光の利用効率を向上させることが可能となる。
【0052】
(導光体)
導光体20は、図3(b)に示すように、その一端(光の入射面)から他端(光の出射面)に向けて、導光体の幅(図3中のx軸方向の長さ)が徐々に増加する構造である。この幅方向は、上記管状の光源の長手軸と平行になっている。
【0053】
導光体20の入射面から入射した光は、内部へ導かれ、出射面から出射する。入射面から入射した直後の光は、その放射方向がランダムに散らばっている。しかしながら、図3(b)に示す構造の導光体20内を通過する際、その放射方向が一定方向に揃うように変化する。図4は、図3(b)に示す導光体20内を光が通過する様子の一例を示している。図4に示すように、導光体20の側面(テーパー面)は、光を反射させることができるように構成されている。これにより、反射しながら(反射を繰り返しながら)、その放射方向が一定方向に揃う。
【0054】
導光体20は、4つの側面を有しており、そのうち2面が対向していて、残りの2面が対向している構造となっている。すなわち、図3(a)に示す一対の対向面(図3(a)ではそのうちの片方の1面が示されている)と、図3(b)に示す一対の対向面(図3(b)ではそのうちの片方の1面が示されている)から構成されている。図4は、図3(a)及び(b)に示した導光体20の面の拡大図である。図4をみるとわかるように、導光体20は、双方の面が、光の出射側に向けて幅が広がったテーパー形状を有している。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、図5に示すように、一方の対向面は、長方形を有したものであってもよいが、図4に示す構成のほうが、光の放射角(指向性)をより制御することができる。図5には、模式的に、反射されながら出射面に向かう光の光路22を示している。
【0055】
ここで、光の放射角とは、光軸(z軸)と導光体20の出射面から出射された光がなす角度である。
【0056】
(光学フィルタ)
光学フィルタ30は、導光体20の出射面近傍に配置されており、導光体20内を透過した光が入射するように構成されている。光学フィルタ30は、導光体20の出射面と同じ大きさか、当該出射面よりもわずかに大きく構成されているものが好ましい。
【0057】
光学フィルタ30は、特定の波長帯域のスペクトルを減衰させるように構成されたものであり、言い換えれば、或る波長帯域のスペクトルのみを透過するように構成されたものである。このような機能を有するものであれば、採用することができる。
【0058】
(光源装置の指向性の検証)
図6(a)及び(b)は、本実施形態に係る光源装置1の指向性を検証した結果である。図6(a)は、導光体20の出射面x方向の指向性分布を示したグラフであり、図6(b)は、導光体20の出射面y方向の指向性分布を示したグラフである。尚、x方向及びy方向は、図3(a)及び(b)に示している。
【0059】
図6(a)及び(b)から、放射角(指向性)が制御された光源部10と、導光体20とを用いることにより、指向性を制御した光を光軸方向に出射することが容易に行うことができる。
【0060】
(本実施形態の作用効果)
上記の構成によれば、本実施形態に係る光源装置は、導光体20によって、光学フィルタ30に入射する光の指向性(放射角)を制御することができる。すなわち、導光体20は、その入射面から入射した光を、その側面が光反射面として構成された導光領域に導く。この導光領域において、光は側面において反射を繰り返すことで、放射角が制御される。そして、導光体20は、入射面から出射面に向けてその幅が徐々に広くなるテーパー形状を成していることから、導光体内部(導光領域)を透過する光の放射指向性を、ランダムなものから一定方向のものへと変化させることができる。
【0061】
よって、所定の指向性を有した光が、導光体20の出射面から出射されることになる。
【0062】
そして、このような導光体20を光源部10と光学フィルタ30との間に配設することにより、所定の指向性を有した光を光学フィルタ30に入射させることが可能となる。光学フィルタ30は入射角依存性を有しているため、従来構成では上述のように光学フィルタに対して所定の指向性を有した光が入射しないことによる種々の問題があったが、本構成によれば、光学フィルタ30の入射角依存性に合致した光を入射させることができるので光の損失を著しく抑制するができる。また、光学フィルタ30の特性を充分に活かすことができる。
【0063】
このように、本構成によれば、従来構成に比べて光学フィルタ30において光が充分に調整(変調)される。したがって、本実施形態の光源装置1を図1に示した擬似太陽光照射装置70の光源装置として配設することにより、より太陽光に近い光を提供する装置を実現することができる。太陽光のスペクトルを、図7に示す(JIS C 8941)。
【0064】
また、本実施形態の光源装置1の構成によれば、所定の指向性を有した光を光学フィルタ30に入射させることが可能であるため、従来構成に比べて、装置の小型化を実現することができる。このように小型化を実現した光源装置1を擬似太陽光照射装置70に配設すれば、擬似太陽光照射装置を小型化することも可能となる。
【0065】
また、無指向性の光源から放射された光に対して、反射面を効率的に配置し、所望の放射特性を得られる光だけを導光体に入射することにより小型化を実現している。すなわち、多重反射や大面積の反射面を駆使しなくても、所望の放射特性を得ることができる。よって、光源装置自体を小型化することが可能となる。
【0066】
〔実施形態2〕
本発明に係る他の実施形態について、図8及び図9に基づいて説明すれば以下の通りである。尚、本実施形態では、上記実施形態1との相違点について説明するため、説明の便宜上、実施形態1で説明した部材と同一の機能を有する部材には同一の部材番号を付し、その説明を省略する。
【0067】
図8は、本実施形態に係る光源装置1´の構成を示した図である。本実施形態の光源装置1´は、図3に示した上記した実施形態1の光源装置1に設けられた光源部10に代えて、図8に示す光源部10´を備えている。以下、光源部10´について詳述する。
【0068】
光源部10´は、光源11と、反射部材12´と、屈折素子17とを有している。尚、光源11は、実施形態1の光源11と同一構成であるため、説明は省略する。
【0069】
反射部材12´は、バックリフレクタ18と、サイドミラー15と、サイドリフレクタ19とを有している。
【0070】
バックリフレクタ18は、上記実施形態1において説明した楕円リフレクタ14と円リフクレクタ13とに相当する。
【0071】
サイドリフレクタ19は、光源から放射された光の内、導光体20に至らない光を導光体20方向に反射し効率の改善を図るものである。
【0072】
屈折素子17は、導光体20の入射面に入射する光が、当該入射面に入射する直前に入射できる位置に配設されている。屈折素子17は、入射した光の放射角を制御する。具体的には、入射した光の放射角を収束させるように作用する。放射角が収束した光が屈折素子17から出射し、出射した光は続いて導光体20に入射する。屈折素子17としては、光学レンズを採用することができる。
【0073】
(光源装置の指向性の検証)
図9(a)及び(b)は、本実施形態に係る光源装置1´の指向性を検証した結果である。図9(a)は、導光体20の出射面x方向の指向性分布を示したグラフであり、図9(b)は、導光体20の出射面y方向の指向性分布を示したグラフである。尚、x方向及びy方向は、図8(a)及び(b)に示している。
【0074】
図9(a)及び(b)から、放射角(指向性)が制御された光源部10と、導光体20とを用いることにより、指向性を制御した光を光軸方向に出射することが容易に行うことができる。
【0075】
(本実施形態の作用効果)
上記の構成によれば、本実施形態に係る光源装置は、屈折素子17を配設することにより、より一層放射角が制御された光を導光体20に入射させることができる。
【0076】
尚、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0077】
尚、本発明は次の点を特徴としていると換言することができる。すなわち、本発明に係る擬似太陽光照射装置は、
(1) 光源と、導光体と、スペクトル変調用部材とを備えた光照射装置であって、上記導光体は、光源から入射した光を入射面からその内部へと導き、当該光を当該導光体の側面に反射させて、指向性が制御された光を出射面から出射し、上記スペクトル変調用部材は、指向性が制御された上記光における、特定の波長帯域のスペクトルを減衰させ、上記導光体では、上記入射面は上記出射面よりも小さく、上記スペクトル変調用部材を、上記導光体の出射面側に備えていることを特徴としている。
(2) 上記指向性を制御した光は、光源からの反射光を反射面の断面が楕円弧となる凹面ミラーによって得られることを特徴とする上記(1)の擬似太陽光照射装置。
(3) 上記、反射面の断面が楕円弧となる凹面ミラーの、上記光源から出て、上記楕円ミラーからの出射方向と逆方向に向かう光を反射する、断面が光源位置を略中心とする円弧の凹面ミラーを有することを特徴とする上記(2)の擬似太陽光照射装置。
(4) 上記、反射面の断面が楕円弧となるミラーから光の出射方向に配置され、断面が光源位置を略中心とする円弧であり、光が出射するための開口部を有した凹面ミラーを有することを特徴とする(3)記載の光照射装置。
(5) 上記光源が管状光源であって、上記、光源の長手軸線方向に直交するミラーが配置されたことを特徴とする上記(2)から(4)の何れかの光照射装置。
(6) 上記指向性を制御した光は、光源からの出射光の放射角を狭くする方向に屈折する屈折素子、及び光源から上記屈折素子と反対の位置に配置されて断面が光源位置を略中心とする円弧である凹面ミラーとによって得られることを特徴とする(1)記載の光照射装置。
(7) 上記屈折素子と上記断面が円弧の凹面ミラーとの間に配置され、光源から直接屈折素子、及び凹面ミラーに入射しない光を、上記屈折素子に向けて反射させるためのミラーを有することを特徴とする(6)記載の光照射装置。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、太陽電池の検査、測定、および実験に利用できる。また、化粧品、塗料、接着剤、各種材料の退色および耐光試験にも利用できる。更に、光触媒の検査および実験、ならびに自然光を必要とするその他の各種実験にも利用できる。
【符号の説明】
【0079】
1 光源装置
2 反射体
3 筐体
3a 冷却装置
4 導光板
4a 散乱溝
10 光源部
11 光源
12 反射部材
13 円リフクレクタ(U字型の反射ミラー、窪み)
14 楕円リフレクタ(U字型の反射ミラー)
15 サイドミラー(側部ミラー)
16 フロントリフレクタ(戻しミラー)
17 屈折素子
18 バックリフレクタ(反射部材)
19 サイドリフレクタ
20 導光体
22 光路
30 光学フィルタ(スペクトル変調用部材)
50 領域
60 表面領域
70 擬似太陽光照射装置
80 照射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を有した光源部と、
上記光源部からの光を入射する位置に配置された導光体と、
上記導光体から出射した光が入射する位置に配置されたスペクトル変調用部材とを備えた光源装置であって、
上記導光体は、上記光源部からの光が入射する入射面と、当該入射面から入射した光が、その側面が光を反射させる光反射面として構成された導光領域へと導かれた後に出射する出射面とを有しており、且つ、当該入射面から当該出射面に向けてその幅が徐々に広くなるテーパー形状を成しており、
上記スペクトル変調用部材は、入射した光から特定の波長帯域のスペクトルを減衰させた光を出射するように構成されている、ことを特徴とする光源装置。
【請求項2】
上記光源部には、上記光源から上記導光体の上記入射面に直接入射しない光を反射させる反射部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
上記光源部は、上記光源における上記導光体と対向する側とは反対側に、反射ミラーを有しており、
上記反射ミラーは、上記導光体に向けて開口したU字型を成していることを特徴とする請求項1または2に記載の光源装置。
【請求項4】
上記光源は、上記U字型の内部に配設されており、
上記U字型を成した上記反射ミラーにおける上記光源の配設領域は、更に、当該光源の形状の一部分に沿った形状の窪みが形成されていることを特徴とする請求項3に記載の光源装置。
【請求項5】
上記光源部は、上記導光体の上記入射面の近傍に向かう光を、上記反射ミラーに向けて反射させる戻しミラーを有していることを特徴とする請求項3に記載の光源装置。
【請求項6】
上記光源は管状光源であって、
上記管状光源は、その長手軸の方向が上記導光体の上記幅を規定する方向と平行となるように、配設されており、
上記光源部は、更に、上記長手軸に対して垂直方向に広がった面を反射面とする側部ミラーを上記管状光源の両端に有していることを特徴とする請求項1から5までの何れか1項に記載の光源装置。
【請求項7】
上記光源部は、上記導光体の上記入射面に入射する前の光を、その放射角を収束させるように屈折させる屈折素子を有しており、
上記反射部材は、上記屈折素子に向けて光を反射させるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の光源装置。
【請求項8】

請求項1から7までの何れか1項に記載の光源装置を備えていることを特徴とする擬似太陽光照射装置。
【請求項9】
上記光源装置の上記スペクトル変調用部材から出射する光を入射する導光板を更に備えていることを特徴とする請求項8に記載の擬似太陽光照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−3474(P2011−3474A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146957(P2009−146957)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】