説明

光源装置及びこれを用いた撮像装置

【課題】 波長掃引の高速化と、発振スペクトル線幅の狭小化と、を同時に達成し得る光源装置を提供する。
【解決手段】 光を増幅させる光利得媒体を備えた光共振器と、前記光利得媒体より放出された光を波長に応じて分散させる分散素子と、前記分散素子を経た特定の波長の光を反射または透過する波長選択部と、を有する光源装置であって、前記光利得媒体より放出された光が前記光共振器内を一往復する間に前記波長選択部で複数回の波長選択がなされ、該複数回の波長選択により得られた重複した波長帯域の光を出射させる光源装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振波長を変化させることが可能な光源装置、及びこれを用いた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光源、特にレーザ光源については、発振波長を可変とするものが通信ネットワーク分野や検査装置の分野で種々利用されてきている。
【0003】
通信ネットワーク分野では、高速な波長切替、また、検査装置の分野では高速で広範な波長掃引が、要望されている。
【0004】
検査装置における波長可変(掃引)光源の用途としては、レーザ分光器、分散測定器、膜厚測定器、波長掃引型光干渉トモグラフィー(Swept Source Optical Coherence Tomography:SS−OCT)装置等がある。
【0005】
光干渉トモグラフィーは、光干渉を用いて検体の断層像を撮像するもので、ミクロンオーダーの空間分解能が得られることや無侵襲性等の理由から医用分野における研究が近年、盛んになってきている撮像技術である。
【0006】
波長掃引型光干渉トモグラフィーでは、深さ情報を得るのにスペクトル干渉を用い、分光器を用いないことから光量のロスが少なく高SN比の像取得も期待されている。
【0007】
SS−OCT技術を適用した医用画像撮像装置を構成する場合には、掃引速度が速いほど画像取得時間を短縮でき、また、波長掃引幅が広いほど断層像の空間解像度を高めることが可能なためこれらのパラメータは重要である。
【0008】
具体的には波長掃引幅Δλ、発振波長λ0、検体の屈折率をnとするとき深さ分解能は
【0009】
【数1】

【0010】
で表される。したがって深さ分解能を高めるためには波長掃引幅の拡大が必要であり、広帯域な波長掃引光源が求められている。
【0011】
一方、SS−OCT装置においては検体の奥深い構造まで検知できること、すなわち長い可干渉距離を実現できることが望まれる。このため、SS−OCT装置の光源の性能としては、発振スペクトル線幅がより狭いほうが望ましい。
【0012】
具体的には発振スペクトル線幅δλ、とするとき可干渉距離(コヒーレンス長)は
【0013】
【数2】

【0014】
で表わされる。したがって検体の奥行き方向の測定範囲を広げるためには発振スペクトル線幅の狭小化が必要であり、狭い線幅の波長掃引光源が求められている。
【0015】
こうした中、SS−OCT装置に用いる光源として、光利得媒体と波長可変機構とを共振器の中に組み込んだ、外部共振器型の波長掃引光源が主に用いられている。このような光源の中で、波長可変機構としてスリットを移動させて波長を可変とする手法が特許文献1に開示されている。
【0016】
このスリット移動方式においては、光利得媒体からの出射光を平行として回折格子に入射させ、波長ごとに異なる角度で回折させる。このとき、ある角度で回折した回折光のみをスリットで切り出すことにより、特定波長のみを選択することができる。選択された光をミラーで光利得媒体へ戻して共振器を形成することで、レーザ発振が可能となる。スリットをモーターで機械的に移動させて選択波長を変化させることで、波長可変を実現している。
【0017】
また、スリットを回転円板上に円周に沿って作製することで、円板の回転速度によって波長掃引速度を変えることができる。回転円板はリニアエンコーダ等に使用されているものが使用でき、ポリゴンミラーに比べて重量が小さいので、比較的容易に高速回転させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2008−98395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
スリット移動方式による波長掃引光源においては、より高速な波長掃引を実現するためにスリットが形成されている円板の回転速度を上げる必要があるが、円板の回転速度はモーターの回転速度に制限されてしまうため、この手法によるさらなる高速化は難しい。
【0020】
また、回折格子による回折角を小さくし、光束の空間的な広がり幅に対するスリットの通過時間を短くすることで高速化を実現する方法も考えられるが、スリットによる波長選択幅が広くなるという不都合を生じてしまう。
【0021】
このため、幅のより狭いスリットを用いて波長選択幅を狭くすることが考えられるが、スリット自体をより狭く作製するにも作製プロセス上の限界が存在する。
【0022】
それ故、より幅の狭いスリット作製には、限界があり、自ずと波長選択幅も限定されたものとなる。すなわち、波長掃引の高速化と発振スペクトルの狭小化にはトレードオフの関係があるため、狭いスペクトル線幅を満たしつつ高速に波長を掃引することが困難であるというのが実状である。
【0023】
本発明は、波長掃引の高速化と発振スペクトル線幅の狭小化とを同時に実現できる光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明により提供される光源装置は、光を増幅させる光利得媒体を備えた光共振器と、
前記光利得媒体より放出された光を波長に応じて分散させる分散素子と、前記分散素子を経た特定の波長の光を反射または透過する波長選択部と、を有する光源装置であって、
前記光利得媒体より放出された光が前記光共振器内を一往復する間に前記波長選択部で複数回の波長選択がなされ、該複数回の波長選択により得られた重複した波長帯域の光を出射させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明の光源装置では、光が共振器内を一往復する間に波長選択部で複数回の波長選択がなされる。そして、複数回の波長選択により得られた重複した波長帯域の光を出射させる。これにより発振スペクトルの発振線幅は狭小化する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の光源装置の一例を示す模式図
【図2】従来の光源装置の一例を示す模式図
【図3】本発明の実施例1の光源装置を説明する模式図
【図4】本発明の実施例2の光源装置を説明する模式図
【図5】本発明の実施例3の撮像装置を説明する模式図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図を参照しつつ、従来技術と対比して本発明の実施形態を説明する。
【0028】
図2は従来の光源装置の一例を示す模式図である。
【0029】
この図に示した光源装置においては、光利得媒体としての光増幅器201は、レーザ発振の発振波長に利得を有しているものであって、例えば半導体光増幅器(Semiconductor Optical Amplifier:SOA)を用いる。この光増幅器201の一方の端面からの出力光をコリメートレンズ202で平行光とする。この平行光を回折格子203に入射させ、光の波長に応じて異なる角度で回折させる。この回折光を集光レンズ204によって集光させ、集光された光の焦点位置にスリットミラー205を設ける。焦点位置は波長に応じて異なるため、スリットミラー205の位置に応じて特定の波長のみが反射され、光増幅器201に再び入射される。
【0030】
したがって、この波長の光が外部共振器型光源として機能し、レーザ発振する。スリットミラー205の位置を機械的に移動させることで、反射される光の波長が変化するため、波長可変が実現できる。
【0031】
また、光増幅器201の他方の端面からの出射光は、コリメートレンズ206を介して部分反射ミラー207によって一部の光は反射され、一部の光は透過される。部分反射ミラー207によって透過された光を出力光として取り出す。
【0032】
<本発明における発振スペクトル狭小化>
図1は本発明の光源装置の一例を示す模式図である。この図に示した光源装置において、半導体光増幅器等で構成される光増幅器101の一方の端面からの出力光を、コリメートレンズ102を介して分散素子としての回折格子103に入射させる。
【0033】
回折光を集光レンズ104で集光し、焦点位置にスリットミラー105を配置する。
【0034】
光増幅器101の他方の端面からの出射光は、コリメートレンズ106を介して部分反射ミラー107によって一部の光は反射され、一部の光は透過される。部分反射ミラー107によって透過された光を出力光として取り出す構成となっており、ここまでは図2に示す従来の光源装置と同様の構成である。
【0035】
ここで図2(A)に示すように、スリットミラー105を光軸に対しわずかに傾けて配置し、集光レンズ104で集光された光をスリットミラー105によってある角度をもって反射させる。ここでスリットミラー105は、波長選択部として機能している。
【0036】
さらに、スリットミラー105で反射された光を、凹面ミラー108により再びスリットミラー105へ入射させる。
【0037】
この際、図2(B)に示すようにスリットミラー105に対し、わずかにずらして入射させ、入射光の一部のみがスリットミラー105に当たるように入射させる。
【0038】
ここで、120は回折格子104により波長に応じて分散し、回転円板上に集光した光の帯を示している。151はスリットミラー105により最初に波長選択される光、151aは、凹面ミラー105により反射される光をそれぞれ示している。そして、152は、反射光151aのうち、スリットミラー151により二度目に波長選択された光を示している。スリットミラー105は円板上に配され、円板が回転することから、二度目の波長選択の際には、一度目に比較して位置が移動することから反射光151aのうちの一部が選択され152の光となる。
【0039】
これを波長領域で考えると図2(C)のようになる。
【0040】
図2(C)においては、横軸に一度目に波長選択された光151と、二度目に波長選択された光152と、についてそれぞれの波長帯域を示しており、それぞれの半値幅は、W1及びW2である。縦軸は、光の強度を示している。そして、最初の波長選択と、二度目の波長選択の重複した波長帯域の光152の発振が生ずることとなる。
【0041】
図2(C)より、二度目に波長選択された光152と、一度目に波長選択された光151に比べて、波長帯域が狭くなっており、発振スペクトルの狭小化が図れることが理解される。
【0042】
ここで、スリットミラー105による一度目の反射光の波長選択帯域の中心波長をλ1、二度目の波長選択帯域の中心波長をλ2、n回選択時の中心波長をλn、波長選択部としてのスリットミラーにより一度に波長選択される波長範囲をΔλとすると、|λ1−λn|<Δλを満たすことが好ましい。
【0043】
以上のように、光利得媒体より放出された光が光共振器内を一往復する間に波長選択部で複数回波長選択され、複数回の波長選択により得られた重複した波長帯域の光を出射させることで、スリットミラー105の幅が広い場合であってもスリットミラー105による波長選択幅を狭くできる。このため、発振スペクトル線幅の狭小化を達成することが可能となる。
【0044】
<その他採用し得る形態>
これまで光利得媒体として半導体光増幅器(SOA)を例に説明したが、この他、光増幅媒体としては、エルビウムやネオジウム等を含有する希土類添加(イオンドープ)光ファイバ、光ファイバ中に色素を添加して色素により増幅を行うもの等を採用することができる。
【0045】
希土類添加光ファイバは、高利得で良好な雑音特性を得るためには好適である。色素添加光ファイバは、蛍光色素材料やそのホスト材料などを適宜選択することで可変波長の選択肢が増す。
【0046】
半導体光増幅器は、小型で且つ高速制御が可能なことから好ましい。半導体光増幅器としては、共振器型光増幅器と進行波形光増幅器の双方を用いることができる。半導体光増幅器を構成する材料は、一般的な半導体レーザを構成する化合物半導体等を用いることができ、具体的にはInGaAs系、InAsP系、GaAlSb系、GaAsP系、AlGaAs系、GaN系等の化合物半導体を挙げることができる。半導体光増幅器は、利得の中心波長が、例えば、840nm、1060nm、1300nm、1550nmのものの中から光源の用途等に応じて適宜、選択して採用することができる。
【0047】
本発明で採用し得る光共振器は、上述した直線型共振器の他、リング型共振器やσ型共振器等を採用することができる。直線型共振器としては、一対の平行平面を備えた光共振器(所謂、ファブリー・ペロー共振器)や、光ファイバの端面をミラーとして直線状とした共振器等を挙げることができる。
【0048】
リング型共振器としては、光ファイバを用いた共振器の他、スラブ導波路、ミラーを用いて空中や真空中を光が伝播する光学系を用いたもの等を採用することができる。
【0049】
本発明において、光の波長に応じて分散させる分散素子は、回折格子(透過型,反射型)、プリズム、さらには回折格子とプリズムを合体させたもの等を採用することができる。
【0050】
波長選択部としては、例えば、反射部を備えた回転体を用いて構成することができる。
【0051】
回転体は、円板状をなし、該円板の周辺部に反射部として機能する複数のスリットを備えたものや、ポリゴンミラーを採用することができる。
【0052】
波長選択部は、回転体の反射部で反射された光を該反射部に向けて反射させる別の反射部材を備える構成とすることもできる。また、回転体の2つの反射部を光共振器を構成する反射面とし、光利得媒体を挟んで一対の分散素子を備える構成とすることもできる。
【0053】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0054】
図3に本実施例の光源装置の模式図を示す。
【0055】
半導体光増幅器301は波長800nmから880nmの間で利得を有しており、この半導体光増幅器301の一方の端面からの出力光をコリメートレンズ302で平行光とする。
【0056】
この平行光を回折格子303に入射させ、光の波長に応じて異なる角度で回折させる。この回折格子303の格子線数は1200本/mmである。
【0057】
回折光を集光レンズ304によって集光させ、集光された光の焦点位置にスリットミラー305を設ける。このスリットミラー305のスリット幅は3μmである。
【0058】
スリットミラー305によって反射された光を、凹面ミラー306によって反射させ、再びスリットミラー305へ入射させる。
【0059】
スリットミラー305は、回転円板307の円周に沿って一定間隔で多数配置される。駆動部308は回転円板307を一定速度でその中心軸に沿って駆動する。
【0060】
また、半導体光増幅器301の他方の端面からの出射光は、コリメートレンズ309を介して部分反射ミラー310によって一部の光は反射され、一部の光は透過される。凹面ミラー306と部分反射ミラー310との間で外部共振器が形成され、その共振器長は100mmである。部分反射ミラー310を透過した光を出力光として外部に取り出す構成となっている。
【0061】
以下にこの実施形態での動作について説明する。
【0062】
半導体光増幅器301を駆動することによって半導体光増幅器301より放出された光束がコリメートレンズ302を介して回折格子303に入射される。このとき回折格子303からの回折光は集光レンズ304を介して集光される。
【0063】
回転円板307上に配置されたスリットミラー305によって、回折角に応じた波長成分の光のみが反射される。このとき、回折光は回転円板307の面上に空間的に1mmの大きさで広がっており、スリット幅3μmのスリットミラー305により波長幅0.24nmの光が反射される。
【0064】
この反射光は凹面ミラー306へ入射され、入射方向と180°反転した方向へ反射される。凹面ミラー306による反射光は再びスリットミラー305へ入射されるが、入射光の一部のみがスリットミラー305に当たるように配置される。
【0065】
したがって、入射光に含まれる波長成分の一部のみがスリットミラー305で再び反射されることとなり、反射光の波長幅が狭くなる。
【0066】
本実施例では、凹面ミラー306による反射光を再びスリットミラー305へ入射する際、入射光の半分がスリットミラー305に当たるように配置したため、スリットミラー305による再度の反射光の波長幅は0.12nmとなった。
【0067】
この反射光を半導体光増幅器301へ戻すことで、凹面ミラー306と部分反射ミラー310との間で外部共振器が構成されてレーザ発振する。
【0068】
そして回転円板307の回転に従い、回折格子303で反射される角度が異なった波長の光が選択されて発振波長が変化する。半導体光増幅器301の利得帯域を超えると発振しなくなり、回転によって次のスリットミラー305を回折光が通過できるようになると、スリットミラー305によって再び光が反射され発振する。したがって発振波長はのこぎり波状に変化することとなる。
【0069】
以上のように、光が共振器内を一往復する間にスリットミラー305で二回波長選択されることになる。二回目の波長選択の際に、一部の光のみがスリットミラー305に当たるため、一部の波長成分のみがスリットミラー305で再び反射されることとなり、選択波長範囲は狭くなる。幅の非常に狭いスリットミラー305で反射されるのと同じ効果が得られることになるため、スリットミラー305の幅が広くてもスリットミラー305による波長選択幅を狭くできる。このため、発振スペクトル線幅の狭小化を達成することが可能となる。
【実施例2】
【0070】
図4に本実施例の光源装置の模式図を示す。
【0071】
半導体光増幅器401は波長800nmから880nmの間で利得を有しており、この半導体光増幅器401の一方の端面からの出力光をコリメートレンズ402で平行光とする。
【0072】
この平行光を回折格子403に入射させ、光の波長に応じて異なる角度で回折させる。この回折格子403の格子線数は1200本/mmである。
【0073】
回折光を集光レンズ404によって集光させ、集光された光の焦点位置にスリットミラー405を設ける。このスリットミラー405のスリット幅は3μmである。
【0074】
また、半導体光増幅器401の他方の端面からの出射光は、コリメートレンズ406を介して回折格子407に入射させ、回折光を集光レンズ408で集光させる。
【0075】
この回折格子407の格子線数は1200本/mmである。
【0076】
集光された光の焦点位置に、上記のスリットミラー405とは異なるスリットミラー409を設ける。このスリットミラー409のスリット幅は3μmである。
【0077】
スリットミラー405、スリットミラー409は、回転円板410の円周に沿って一定間隔で多数配置される。駆動部411は回転円板410を一定速度でその中心軸に沿って駆動する。
【0078】
スリットミラー405とスリットミラー409との間で外部共振器が形成され、その共振器長は100mmである。回折格子403からの0次回折光を出力光として外部に取り出す構成となっている。
【0079】
以下にこの実施形態での動作について説明する。
【0080】
半導体光増幅器401を駆動することによって、半導体光増幅器401の一方の端面から放出された光束がコリメートレンズ402を介して回折格子403に入射される。このとき回折格子403からの回折光は集光レンズ404を介して集光される。
【0081】
回転円板410上に配置されたスリットミラー405によって、回折角に応じた波長成分の光のみが反射される。このとき、回折光は回転円板410の面上に空間的に1mmの大きさで広がっており、スリット幅3umのスリットミラー405により波長幅0.24nmの光が反射される。
【0082】
この反射光は半導体光増幅器401へ戻され増幅された後、半導体光増幅器401の他方の端面から出射される。この出射光はコリメートレンズ406を介して回折格子407に入射され、回折光は集光レンズ408で集光される。
【0083】
集光された光はスリットミラー409へ入射されるが、入射光の一部のみがスリットミラー409に当たるように配置される。したがって、入射光に含まれる波長成分の一部のみがスリットミラー409で再び反射されることとなり、反射光の波長幅が狭くなる。
【0084】
本実施例では、スリットミラー409へ入射する際、入射光の半分がスリットミラー409に当たるように配置したため、スリットミラー409による反射光の波長幅は0.12nmとなった。この反射光を再び半導体光増幅器401へ戻すことで、スリットミラー405とスリットミラー409との間で外部共振器が構成されてレーザ発振する。
【0085】
以上のように、光が共振器内を一往復する間にスリットミラー405とスリットミラー409とで二回波長選択されることになる。二回目の波長選択の際に、一部の光のみがスリットミラー409に当たるため、一部の波長成分のみがスリットミラー409で再び反射されることとなり、選択波長範囲は狭くなる。したがって、発振スペクトル線幅の狭小化を達成することが可能となる。
【実施例3】
【0086】
本実施例では、本発明の光源を用いた光干渉断層撮像装置の例を示す。
【0087】
図5は本例のOCT装置の模式図である。
【0088】
図5のOCT装置は、基本的には光源部(501等)、検体測定部(507等)、参照部(502等)、干渉部(503)、光検出部(509等)、画像処理部(511)で構成されている。以下、各構成要素を説明する。
【0089】
光源部は、波長可変光源501と該波長可変光源を制御する光源制御部512を有して構成され、波長可変光源501は照射用ファイバ510を介して干渉部を構成するファイバカップラ503に接続されている。
【0090】
干渉部のファイバカップラ503は、光源の波長帯域でシングルモードのもので構成し、各種ファイバカップラは3dBカップラで構成した。
【0091】
反射ミラー504は、参照光光路用ファイバ502に接続されて参照ミラーからの反射光を伝達させる参照部を構成し、ファイバ502は、ファイバカップラ503に接続されている。
【0092】
検査光光路用505ファイバ、照射集光光学系506、照射位置走査用ミラー507により測定部が構成され、検査光光路用505ファイバは、ファイバカップラ503に接続されている。ファイバカップラ503では、検査物体514の内部及び表面から発生した後方散乱光と、参照部からの戻り光とが干渉して干渉光となる。
【0093】
光検出部は、受光用ファイバ508とフォトディテクタ509で構成され、ファイバカップラ503で生ずる干渉光をフォトディテクタ509に導く。
【0094】
フォトディテクタ509で受光された光は信号処理装置511にてスペクトル信号に変換され、さらにフーリエ変換を施すことで被験物体の奥行き情報を取得する。取得された奥行き情報は画像出力モニター513に断層像(画像)として表示される。
【0095】
ここで、信号処理装置511は、パーソナルコンピュータ等で構成することができ、画像出力モニター513は、パーソナルコンピュータの表示画面等で構成できる。
【0096】
本実施例で特徴的なのは光源部であり、波長可変光源501は光源制御装置512によりその発振波長や強度及びその時間変化が制御される。
【0097】
光源制御装置512は、照射位置走査用ミラー507の駆動信号等をも制御する信号処理装置511に接続され、走査用ミラー507の駆動と同期して波長可変光源501が制御される。
【0098】
本発明の光源装置を用いた波長可変光源501は波長掃引中のスペクトル線幅が狭く、光干渉断層撮像の際、参照ミラーと等距離の位置から遠い位置までの干渉像を取得することが可能となる。波長掃引における発振波長のスペクトル幅が狭いことは、コヒーレンス長が長いことに相当する。すなわち干渉光学系を構成する二つの光路の光路長差が長くても干渉信号を得られることになる。つまり、スペクトル線幅が狭い本発明の光源装置を用いたOCT装置は、被検査物体の奥深い構造まで検知できるという効果を奏する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を増幅させる光利得媒体を備えた光共振器と、
前記光利得媒体より放出された光を波長に応じて分散させる分散素子と、前記分散素子を経た特定の波長の光を反射または透過する波長選択部と、を有する光源装置であって、
前記光利得媒体より放出された光が前記光共振器内を一往復する間に前記波長選択部で複数回の波長選択がなされ、該複数回の波長選択により得られた重複した波長帯域の光を出射させることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記複数回の波長選択で選択される光の波長は、中心波長が互いに異なることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記波長選択部により一度に波長選択される波長範囲をΔλ、前記波長選択部により最初に選択される波長の中心波長をλ1、n回選択時の中心波長をλnとして、
【数1】


を満たすことを特徴とする請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記分散素子は、回折格子であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の光源装置。
【請求項5】
前記波長選択部は、反射部を備えた回転体を用いてなることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の光源装置。
【請求項6】
前記回転体は、円板状をなし、該円板の周辺部に複数のスリットを備えてなることを特徴とする請求項5に記載の光源装置。
【請求項7】
前記回転体は、ポリゴンミラーであることを特徴とする請求項5に記載の光源装置。
【請求項8】
前記スリットは、反射部として機能することを特徴とする請求項6に記載の光源装置。
【請求項9】
前記波長選択部は、前記回転体の前記反射部で反射された光を該反射部に向けて反射させる別の反射部材を備えることを特徴とする請求項5に記載の光源装置。
【請求項10】
前記回転体の2つの反射部を前記共振器を構成する反射面とし、前記光利得媒体を挟んで一対の分散素子を備えることを特徴とする請求項6に記載の光源装置。
【請求項11】
請求項1乃至9の何れか一項に記載の光源装置を用いた光源部と、
前記光源部からの光を検体に照射し、検体からの反射光を伝達させる検体測定部と、
前記光源部からの光を参照ミラーに照射し、該参照ミラーからの反射光を伝達させる参照部と、
前記検体測定部からの反射光と前記参照部からの反射光とを干渉させる干渉部と、
前記干渉部からの干渉光を検出する光検出部と、
前記光検出部で検出された光に基づいて、前記検体の断層像を得る画像処理部と、
を有することを特徴とする光干渉断層撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−51332(P2013−51332A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189137(P2011−189137)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】