説明

光源装置及びプロジェクター

【課題】管球部における失透の発生を抑制することが可能な光源装置を提供する。
【解決手段】発光部13を内包する管球部12及び管球部12の両側に延びる一対の封止部14、16を有する高圧水銀ランプ10と、第1封止部14に配設され、発光部13から射出される光を被照明領域へ向けて反射するリフレクター20と、発光部13から射出される光のうちリフレクター20には直接入射しない光の一部又は全部を発光部13に向けて反射する副鏡30とを備える光源装置であって、管球部12の外表面のうち副鏡30に対向する面には、紫外光を吸収して可視光を放出する蛍光体を含有する蛍光層18が形成されている光源装置110。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置及びプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光部を内包する管球部及び管球部の両側に延びる一対の封止部を有する高圧水銀ランプと、一対の封止部のうち所定の第1封止部に配設され、発光部から射出される光を被照明領域へ向けて反射するリフレクターと、発光部から射出される光のうちリフレクターには直接入射しない光の一部又は全部を発光部に向けて反射する副鏡とを備える光源装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
従来の光源装置によれば、発光部から射出される光のうちリフレクターには直接入射しない光の一部又は全部を発光部に向けて反射する副鏡を備えるため、光源装置の輝度を高くすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−5183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、高圧水銀ランプの発光部から射出される光には、管球部を構成する材料(石英ガラス等)の失透を促進する作用を有する紫外光が含まれている。従来の光源装置においては、副鏡によって反射される紫外光が管球部を通過して発光部に到達するため、副鏡によって反射される紫外光の存在により、管球部を通過する紫外光の光量が多くなる。このため、従来の光源装置は、使用環境によっては管球部における失透の発生が増加することがあり、これを抑制する手段が求められている。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、管球部における失透の発生を抑制することが可能な光源装置を提供することを目的とする。また、このような光源装置を備えることによって高圧水銀ランプを交換する頻度を低くすることが可能なプロジェクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明の光源装置は、発光部を内包する管球部及び前記管球部の両側に延びる一対の封止部を有する高圧水銀ランプと、前記一対の封止部のうち所定の第1封止部に配設され、前記発光部から射出される光を被照明領域へ向けて反射するリフレクターと、前記発光部から射出される光のうち前記リフレクターには直接入射しない光の一部又は全部を前記発光部に向けて反射する副鏡とを備える光源装置であって、前記管球部の外表面のうち前記副鏡に対向する面には、紫外光を吸収して可視光を放出する蛍光体を含有する蛍光層が形成されていることを特徴とする。
【0008】
このため、本発明の光源装置によれば、管球部の外表面のうち副鏡に対向する面には紫外光を吸収して可視光を放出する蛍光体を含有する蛍光層が形成されていることから、副鏡によって反射される紫外光の光量を従来の光源装置の場合よりも低減することが可能となるため、管球部における失透の発生を抑制することが可能となり、本発明の目的が達成される。
【0009】
また、本発明の光源装置によれば、以下の(ア)及び(イ)の効果をも得ることができる。
【0010】
(ア)ところで、紫外光から人体や光学部材を保護するために紫外光フィルターを用いて紫外光を除去することがある。このような場合、紫外光を大きな割合で除去しようとすると、それに応じて可視光も吸収されてしまうため、光源装置の輝度を高くすることが困難となる。これに対して、本発明の光源装置によれば、上記したように管球部の外表面のうち副鏡に対向する面には紫外光を吸収して可視光を放出する蛍光体を含有する蛍光層が形成されているため、紫外光を除去する割合を低減することが可能となり、可視光の吸収を低減して光源装置の輝度を高くすることが可能となる。
【0011】
(イ)従来の光源装置においては、副鏡によって反射され発光部に到達した紫外光は、プラズマ化した封入物に一旦吸収され、その後再射出される。このときに紫外光が有するエネルギーの一部が熱となるため、高圧水銀ランプが過熱してしまう場合がある。これに対して、本発明の光源装置によれば、上記したように管球部の外表面のうち副鏡に対向する面には紫外光を吸収して可視光を放出する蛍光体を含有する蛍光層が形成されているため、プラズマ化した封入物に吸収される紫外光の光量を低減することが可能となり、高圧水銀ランプが過熱することを抑制することが可能となる。
【0012】
なお、上記(イ)に記載した効果についてより大きな効果を得るためには、蛍光体は、紫外光領域における輝線を十分に吸収するものであることが好ましい。紫外光領域における輝線はプラズマ化した封入物に特に吸収されやすいことから、上記のような構成とすることにより、プラズマ化した封入物に吸収される紫外光の光量を低減することが可能となるため、高圧水銀ランプが過熱することを効果的に抑制することが可能となる。
【0013】
本明細書において、「高圧水銀ランプ」は、一般的な高圧水銀ランプのみならず超高圧水銀ランプをも含む意味で用いることとする。
【0014】
[2]本発明の光源装置においては、前記副鏡は、前記一対の封止部のうち前記第1封止部とは異なる第2封止部に配設され、前記発光部から被照明領域側に射出される光の一部又は全部を前記発光部に向けて反射することが好ましい。
【0015】
本発明は、このように、副鏡を備える高輝度な光源装置において好適に適用することが可能である。
【0016】
[3]本発明の光源装置においては、前記リフレクターは、回転中心軸を含む所定の平面で切断したときに一方側の少なくとも端部が削除された形状を有し、前記副鏡は、前記管球部における前記一方側を覆うように配設され、前記発光部から前記一方側に射出される光を前記発光部に向けて反射することが好ましい。
【0017】
本発明は、このように、副鏡を備える薄型の光源装置においても好適に適用することが可能である。
【0018】
[4]本発明の光源装置においては、前記蛍光体は、可視光として赤色光を放出することが好ましい。
【0019】
ところで、高圧水銀ランプによる光は一般的に赤色光成分の割合が低いため、光源装置の演色性は低くなる傾向にある。しかしながら、上記のような構成とすることにより、赤色光成分の割合を高くすることが可能となるため、光源装置の演色性を高くすることが可能となる。
【0020】
また、赤色光はプラズマ化した封入物にほとんど吸収されないため、上記のような構成とすることにより、高圧水銀ランプが過熱してしまうことをさらに強く抑制することが可能となる。
【0021】
[5]本発明の光源装置においては、前記蛍光層は、前記蛍光体として2種類以上の蛍光体を含有することが好ましい。
【0022】
このような構成とすることにより、2種類以上の蛍光体を用いて、より広い波長帯において紫外光を吸収することが可能となる。
【0023】
また、上記のような構成とすることにより、2種類以上の蛍光体を用いて、さまざまな波長帯の可視光を放出することにより光源装置の演色性をさらに高くすることが可能となる。
【0024】
[6]本発明の光源装置においては、前記蛍光層は、前記管球部の外表面のうち前記副鏡に対向する面の全面に形成されていることが好ましい。
【0025】
このような構成とすることにより、管球部における失透の発生を広い面積で抑制することが可能となる。
【0026】
[7]本発明の光源装置においては、前記蛍光層は、前記管球部の外表面のうち前記副鏡に対向する面に部分的に形成されていることが好ましい。
【0027】
このような構成とすることにより、蛍光層から放出される可視光の光量を適正なものとすることが可能となる。例えば、蛍光層が管球部の外表面のうち副鏡に対向する面の全面に形成されていると、放出される可視光の光量が過剰となり、色バランスが悪化する場合がある。このような場合において、管球部の外表面のうち副鏡に対向する面に蛍光層を部分的に形成することで、可視光の光量を適正なものとすることが可能となる。
【0028】
[8]本発明のプロジェクターは、本発明の光源装置を備える照明装置と、前記照明装置からの照明光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、前記光変調装置からの変調光を投写画像として投写する投写光学系とを備えることを特徴とする。
【0029】
このため、本発明のプロジェクターは、本発明の光源装置を備えるため、高圧水銀ランプにおける失透の発生を抑制することが可能な光源装置の効果によって、高圧水銀ランプを交換する頻度を低くすることが可能なプロジェクターとなる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態1に係るプロジェクター1000の光学系を示す上面図。
【図2】実施形態1に係る光源装置110を説明するために示す図。
【図3】実施形態2に係る光源装置112の斜視図。
【図4】実施形態2に係る光源装置112を説明するために示す図。
【図5】変形例1における高圧水銀ランプ80を説明するために示す図。
【図6】変形例2における高圧水銀ランプ81を説明するために示す図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の光源装置及びプロジェクターについて、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0032】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係るプロジェクター1000の光学系を示す上面図である。図2は、光源装置110を説明するために示す図である。図2(a)は光源装置110の断面図であり、図2(b)は第2封止部16側から高圧水銀ランプ10を見た図であり、図2(c)は高圧水銀ランプ10の斜視図である。
【0033】
なお、以下の説明においては、互いに直交する3つの方向をそれぞれz軸方向(図1における照明光軸100ax方向)、x軸方向(図1における紙面に平行かつz軸に垂直な方向)及びy軸方向(図1における紙面に垂直かつz軸に垂直な方向)とする。
また、以下の説明においては、プロジェクター1000をいわゆる据え置き状態に配置する場合を例示的に示しているため、重力方向は紙面の下側方向(例えば、図2(a)においてはy(−)方向。)となる。
【0034】
実施形態1に係るプロジェクター1000は、図1に示すように、照明光軸100axに沿う照明光を射出する照明装置100と、照明装置100からの照明光を赤色光、緑色光及び青色光の3つの色光に分離して被照明領域に導光する色分離導光光学系200と、色分離導光光学系200で分離導光された3つの色光のそれぞれを画像情報に応じて変調する光変調装置としての3つの液晶装置400R,400G,400Bと、3つの液晶装置400R,400G,400Bによって変調された各色光を合成するクロスダイクロイックプリズム500と、クロスダイクロイックプリズム500によって合成された光をスクリーンSCR等の投写面に投写する投写光学系600とを備える。
【0035】
照明装置100は、被照明領域側に集束光を射出する光源装置110と、光源装置110からの集束光を略平行光として射出する凹レンズ90と、凹レンズ90から射出される光を複数の部分光束に分割するための複数の第1小レンズ122を有する第1レンズアレイ120と、第1レンズアレイ120の複数の第1小レンズ122に対応する複数の第2小レンズ132を有する第2レンズアレイ130と、第2レンズアレイ130からの各部分光束を偏光方向の揃った略1種類の直線偏光光に変換して射出する偏光変換素子140と、偏光変換素子140から射出される各部分光束を被照明領域で重畳させるための重畳レンズ150とを有する。
【0036】
光源装置110は、図1及び図2(a)に示すように、高圧水銀ランプ10と、発光部13から射出される光を被照明領域へ向けて反射するリフレクター20と、発光部13から射出される光のうちリフレクター20には直接入射しない光(発光部13から被照明領域側に射出される光)の一部を発光部13に向けて反射する副鏡30とを備える。光源装置110は、回転対称軸20axを中心軸とする光を射出する。なお、図2(a)における回転対称軸20axは、図1における照明光軸100axと一致している。
【0037】
高圧水銀ランプ10は、発光部13を内包する管球部12、管球部12の両側に延びる一対の封止部14,16、リフレクター20の回転対称軸20axに沿って配置された一対の電極42,52、一対の封止部14,16内にそれぞれ封止された一対の金属箔44,54及び一対の金属箔44,54にそれぞれ電気的に接続された一対のリード線46,56を有する。発光部13は、後述する反射面24の第1焦点近傍に位置している。
【0038】
高圧水銀ランプ10の構成要素の条件等を例示的に示すと、管球部12及び封止部14,16は、例えば石英ガラスからなり、管球部12内には、水銀、希ガス及び少量のハロゲンが封入されている。電極42,52は、例えばタングステン電極であり、金属箔44,54は、例えばモリブデン箔である。リード線46,56は、例えばモリブデン又はタングステンから構成されている。
【0039】
管球部12の外表面のうち副鏡30に対向する面には、紫外光を吸収して赤色光を放出する1種類の蛍光体を含有する蛍光層18が形成されている。蛍光層18は、図2(b)、(c)に示すように、管球部12の外表面のうち副鏡30に対向する面の全面に形成されている。
【0040】
蛍光層18は、例えば、蛍光材を含む溶液を管球部12上に塗布し、溶媒を蒸発させることにより形成することができる。また、蛍光層18は、所定の蛍光体を含有する蛍光ガラスを管球部12上に配置することによって形成することもできる。
【0041】
蛍光体としては、例えば、Y:Eu、YSiO:Eu、YAl12:Eu、Zn(PO:Mn、YBO:Eu、(Y,Gd)BO:Eu、GdBO:Eu、ScBO:Eu、LuBO:Eu等を用いることができる。
【0042】
なお、蛍光体は、紫外光領域における輝線を十分に吸収するものであることが好ましい。このような構成とすることにより、プラズマ化した封入物に吸収される紫外光の光量を低減することが可能となるため、高圧水銀ランプが過熱することを効果的に抑制することが可能となる。
【0043】
リフレクター20は、図2(a)に示すように、高圧水銀ランプ10の第1封止部14を挿通・固定するための開口部22と、光を被照明領域側へ向けて反射する反射面24とを有する。反射面24は楕円面であり、第1焦点近傍に位置している発光部13から射出される光を被照明領域側の第2焦点近傍に集まる集束光として反射する。リフレクター20は、開口部22に充填されたセメントなどの無機系接着剤によって一対の封止部14,16のうち第1封止部14に配設されている。
【0044】
反射面24を構成する基材の材料としては、例えば、結晶化ガラスやアルミナ(Al)などを好適に用いることができる。反射面24の内面には、例えば、酸化チタン(TiO)と酸化シリコン(SiO)との誘電体多層膜からなる可視光反射層が形成されている。
【0045】
副鏡30は、図2(a)に示すように、高圧水銀ランプ10の第2封止部16を挿通・固定するための開口部32と、発光部13から射出された光を発光部13へ向けて反射する反射面34とを有する。副鏡30は、開口部32に充填されたセメントなどの無機系接着剤によって一対の封止部14,16のうち第1封止部14とは異なる第2封止部16に配設されている。
【0046】
反射面34を構成する基材の材料としては、例えば、結晶化ガラスやアルミナ(Al)などを好適に用いることができる。反射面34の内面には、例えば、酸化チタン(TiO)と酸化シリコン(SiO)との誘電体多層膜からなる可視光反射層が形成されている。
【0047】
凹レンズ90は、図1に示すように、リフレクター20の被照明領域側に配置されている。そして、リフレクター20からの光を第1レンズアレイ120に向けて射出するように構成されている。
【0048】
第1レンズアレイ120は、凹レンズ90からの光を複数の部分光束に分割する光束分割光学素子としての機能を有し、複数の第1小レンズ122が照明光軸100axと直交する面内に複数行・複数列のマトリクス状に配列された構成を有する。図示による説明は省略するが、第1小レンズ122の外形形状は、液晶装置400R,400G,400Bの画像形成領域の外形形状に関して相似形である。
【0049】
第2レンズアレイ130は、重畳レンズ150とともに、第1レンズアレイ120の各第1小レンズ122の像を液晶装置400R,400G,400Bの画像形成領域近傍に結像させる機能を有する。第2レンズアレイ130は、第1レンズアレイ120と略同様な構成を有し、複数の第2小レンズ132が照明光軸100axに直交する面内に複数行・複数列のマトリクス状に配列された構成を有する。
【0050】
偏光変換素子140は、第1レンズアレイ120により分割された各部分光束の偏光方向を、偏光方向の揃った略1種類の直線偏光光として射出する偏光変換素子である。
偏光変換素子140は、光源装置110からの照明光束に含まれる偏光成分のうち一方の直線偏光成分を透過し他方の直線偏光成分を照明光軸100axに垂直な方向に反射する偏光分離層と、偏光分離層で反射された他方の直線偏光成分を照明光軸100axに平行な方向に反射する反射層と、偏光分離層を透過した一方の直線偏光成分を他方の直線偏光成分に変換する位相差板とを有する。
【0051】
重畳レンズ150は、第1レンズアレイ120、第2レンズアレイ130及び偏光変換素子140を経た複数の部分光束を集光して液晶装置400R,400G,400Bの画像形成領域近傍に重畳させるための光学素子である。重畳レンズ150の光軸と照明装置100の照明光軸100axとが略一致するように、重畳レンズ150が配置されている。なお、重畳レンズ150は、複数のレンズを組み合わせた複合レンズで構成されていてもよい。第1レンズアレイ120、第2レンズアレイ130及び重畳レンズ150は、光変調装置に入射する光の面内強度分布を均一化する光均一化光学系を構成する。
【0052】
色分離導光光学系200は、ダイクロイックミラー210,220と、反射ミラー230,240,250と、入射側レンズ260と、リレーレンズ270とを有する。色分離導光光学系200は、照明装置100からの照明光を、赤色光、緑色光及び青色光の3つの色光に分離して、それぞれの色光を照明対象となる3つの液晶装置400R,400G,400Bに導く機能を有する。
【0053】
液晶装置400R,400G,400Bの光路前段には、集光レンズ300R,300G,300Bが配置されている。
【0054】
液晶装置400R,400G,400Bは、画像情報に応じて照明光を変調するものであり、照明装置100の照明対象となる。
液晶装置400R,400G,400Bは、一対の透明なガラス基板に電気光学物質である液晶を密閉封入したものであり、例えば、ポリシリコンTFTをスイッチング素子として、与えられた画像情報に従って、入射側偏光板から射出された1種類の直線偏光の偏光方向を変調する。
【0055】
また、ここでは図示を省略したが、集光レンズ300R,300G,300Bと各液晶装置400R,400G,400Bとの間には、それぞれ入射側偏光板が介在配置され、各液晶装置400R,400G,400Bとクロスダイクロイックプリズム500との間には、それぞれ射出側偏光板が介在配置されている。これら入射側偏光板、液晶装置400R,400G,400B及び射出側偏光板によって入射する各色光の光変調が行われる。
【0056】
クロスダイクロイックプリズム500は、射出側偏光板から射出された各色光毎に変調された光学像を合成してカラー画像を形成する光学素子である。このクロスダイクロイックプリズム500は、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視略正方形状をなし、直角プリズム同士を貼り合わせた略X字状の界面には、誘電体多層膜が形成されている。略X字状の一方の界面に形成された誘電体多層膜は、赤色光を反射するものであり、他方の界面に形成された誘電体多層膜は、青色光を反射するものである。これらの誘電体多層膜によって赤色光及び青色光は曲折され、緑色光の進行方向と揃えられることにより、3つの色光が合成される。
【0057】
クロスダイクロイックプリズム500から射出されたカラー画像は、投写光学系600によって拡大投写され、スクリーンSCR上で大画面画像を形成する。
【0058】
以上のように構成された実施形態1に係る光源装置110によれば、管球部12の外表面のうち副鏡30に対向する面には紫外光を吸収して可視光を放出する蛍光体を含有する蛍光層18が形成されていることから、副鏡30によって反射される紫外光の光量を従来の光源装置の場合よりも低減することが可能となるため、管球部12における失透の発生を抑制することが可能となる。
【0059】
また、実施形態1に係る光源装置110によれば、管球部12の外表面のうち副鏡30に対向する面には紫外光を吸収して可視光を放出する蛍光体を含有する蛍光層18が形成されているため、プラズマ化した封入物に吸収される紫外光の光量を低減することが可能となり、高圧水銀ランプ10が過熱することを抑制することが可能となる。
【0060】
また、実施形態1に係る光源装置110によれば、蛍光体が可視光として赤色光を放出するため、赤色光成分の割合を高くすることが可能となり、光源装置110の演色性を高くすることが可能となる。
【0061】
また、実施形態1に係る光源装置110によれば、赤色光はプラズマ化した封入物にほとんど吸収されないため、高圧水銀ランプ10が過熱してしまうことをさらに強く抑制することが可能となる。
【0062】
また、実施形態1に係る光源装置110によれば、蛍光層18が管球部12の外表面のうち副鏡30に対向する面の全面に形成されているため、管球部12における失透の発生を広い面積で抑制することが可能となる。
【0063】
実施形態1に係るプロジェクター1000は、実施形態1に係る光源装置110を備えるため、高圧水銀ランプ10における失透の発生を抑制することが可能な光源装置110の効果によって、高圧水銀ランプ10を交換する頻度を低くすることが可能なプロジェクターとなる。
【0064】
本発明は、上記のように、副鏡30を備える高輝度な光源装置である光源装置110において好適に適用することが可能である。
【0065】
[実施形態2]
図3は、実施形態2に係る光源装置112の斜視図である。図4は、実施形態2に係る光源装置112を説明するために示す図である。図4(a)は光源装置112の断面図であり、図4(b)は高圧水銀ランプ11の斜視図である。
【0066】
実施形態2に係る光源装置112は、基本的には実施形態1に係る光源装置110と同様の構成を有するが、リフレクター及び副鏡の構成並びに蛍光層の形成位置が実施形態1に係る光源装置110の場合とは異なる。すなわち、実施形態2に係る光源装置112においては、図3及び図4(a)に示すように、リフレクター60は、回転中心軸60axを含む所定の平面で切断したときに一方側(y(−)方向)の端部を含む領域(略半分の反射面。図3及び図4(a)の符号60D参照。)が削除された形状を有し、副鏡70は、管球部12における一方側を覆うように配設され、発光部13から一方側に射出される光を発光部13に向けて反射する。また、蛍光層19は管球部12の外表面のうち副鏡70に対向する面に形成されている。
【0067】
リフレクター60は、図4(a)に示すように、高圧水銀ランプ11の第1封止部14及び副鏡70の開口部72を挿通・固定するための開口部62と、光を被照明領域側へ向けて反射する反射面64とを有する。反射面64は楕円面であり、第1焦点近傍に位置している発光部13から射出される光を被照明領域側の第2焦点近傍に集まる集束光として反射する。リフレクター60は、開口部62に充填されたセメントなどの無機系接着剤によって一対の封止部14,16のうち第1封止部14に配設されている。
【0068】
副鏡70は、図4(a)に示すように、高圧水銀ランプ11の第1封止部14を挿通・固定するための開口部72と、発光部13から射出された光を発光部13へ向けて反射する反射面74と、反射面74を支持する支持部78とを有する。副鏡70は、開口部72に充填されたセメントなどの無機系接着剤によって第1封止部14に配設されている。
【0069】
管球部12の外表面のうち副鏡70に対向する面には、紫外光を吸収して赤色光を放出する蛍光体を含有する蛍光層19が形成されている。蛍光層19は、図4(b)に示すように、管球部12の外表面のうち副鏡70に対向する面の全面に形成されている。
【0070】
上記のように、実施形態2に係る光源装置112は、リフレクター及び副鏡の構成並びに蛍光層の形成位置が実施形態1に係る光源装置110の場合とは異なるが、管球部12の外表面のうち副鏡70に対向する面には紫外光を吸収して可視光を放出する蛍光体を含有する蛍光層19が形成されていることから、蛍光層が形成されていない副鏡を備える薄型の光源装置の場合よりも、副鏡70によって反射される紫外光の光量を低減することが可能となるため、実施形態1に係る光源装置110の場合と同様に、管球部12における失透の発生を抑制することが可能となる。
【0071】
なお、実施形態2に係る光源装置112は、リフレクター及び副鏡の構成並びに蛍光層の形成位置以外の点においては、実施形態1に係る光源装置110と同様の構成を有するため、実施形態1に係る光源装置110が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0072】
本発明は、上記のように、副鏡70を備える薄型の光源装置112においても好適に適用することが可能である。
【0073】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の様態において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0074】
(1)上記各実施形態においては、プロジェクターとして、紫外光を除去する紫外光フィルターをさらに備えるプロジェクターを用いてもよい。このような構成とすることにより、紫外光から人体や光学部材を保護することが可能となる。このようなプロジェクターを用いる場合であっても、管球部における失透の発生を抑制することが可能となる。また、管球部の外表面のうち副鏡に対向する面には紫外光を吸収して可視光を放出する蛍光体を含有する蛍光層が形成されているため、紫外光フィルターにおいて紫外光を除去する割合を低減することが可能となり、可視光の吸収を低減して光源装置の輝度を高くすることが可能となる。
【0075】
(2)上記各実施形態においては、蛍光体が可視光として赤色光を放出するが、本発明はこれに限定されるものではない。蛍光体が赤色光以外の可視光を放出してもよい。
【0076】
(3)上記各実施形態においては、蛍光層が1種類の蛍光体を含有するが、本発明はこれに限定されるものではない。蛍光層が蛍光体として2種類以上の蛍光体を含有してもよい。このような構成とすることにより、2種類以上の蛍光体を用いて、より広い波長帯において紫外光を吸収することが可能となる。また、2種類以上の蛍光体を用いて、さまざまな波長帯の可視光を放出することにより光源装置の演色性をさらに高くすることが可能となる。
【0077】
(4)上記各実施形態においては、蛍光層が管球部の外表面のうち副鏡に対向する面の全面に形成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。蛍光層が管球部の外表面のうち副鏡に対向する面に部分的に形成されていてもよい。図5は、変形例1における高圧水銀ランプ80を説明するために示す図である。図5(a)は第2封止部86側から高圧水銀ランプ80を見た図であり、図5(b)は高圧水銀ランプ80の斜視図である。図6は、変形例2における高圧水銀ランプ81を説明するために示す図である。図6(a)は第2封止部86側から高圧水銀ランプ81を見た図であり、図6(b)は高圧水銀ランプ81の斜視図である。変形例1においては、図5に示すように、蛍光層88が同心円状に形成されており、変形例2においては、図6に示すように、蛍光層89が放射状に形成されている。このような構成とすることにより、蛍光層から放出される可視光の光量を適正なものとすることが可能となる。
【0078】
(5)上記実施形態2においては、副鏡70が第1封止部14に配設されているが、本発明はこれに限定されるものではない。副鏡が第2封止部に配設されていてもよい。
【0079】
(6)上記各実施形態においては、リフレクターにおける反射面は楕円面であるが、本発明はこれに限定されるものではない。リフレクターにおける反射面が放物面であってもよい。
【0080】
(7)上記各実施形態においては、光均一化光学系として、レンズアレイからなるレンズインテグレータ光学系を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。ロッド部材からなるロッドインテグレータ光学系を用いてもよい。
【0081】
(8)上記各実施形態においては、プロジェクターは透過型のプロジェクターであるが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は反射型のプロジェクターにも適用することが可能である。ここで、「透過型」とは、透過型の液晶装置等のように光変調手段としての光変調装置が光を透過するタイプであることを意味しており、「反射型」とは、反射型の液晶装置等のように光変調手段としての光変調装置が光を反射するタイプであることを意味している。反射型のプロジェクターにこの発明を適用した場合にも、透過型のプロジェクターと同様の効果を得ることができる。
【0082】
(9)上記各実施形態においては、3つの液晶装置400R,400G,400Bを用いたプロジェクターを例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。1つ、2つ又は4つ以上の液晶装置を用いたプロジェクターにも適用可能である。
【0083】
(10)上記各実施形態においては、光変調装置として液晶装置を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。光変調装置としては、一般に、画像情報に応じて入射光を変調するものであればよく、マイクロミラー型光変調装置などを利用してもよい。マイクロミラー型光変調装置としては、例えば、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)(TI社の商標)を用いることができる。
【0084】
(11)本発明は、投写画像を観察する側から投写するフロント投写型プロジェクターに適用する場合にも、投写画像を観察する側とは反対の側から投写するリア投写型プロジェクターに適用する場合にも可能である。
【0085】
(12)上記各実施形態においては、本発明の光源装置をプロジェクターに適用した例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明の光源装置を他の光学機器(例えば、光ディスク装置、自動車のヘッドランプ等。)に適用することもできる。
【符号の説明】
【0086】
10,11,80,81…高圧水銀ランプ、12,82…管球部、13…発光部、14,84…第1封止部、16,86…第2封止部、18,19,88,89…蛍光層、20,60…リフレクター、20ax,60ax…回転対称軸、22,62…(リフレクターの)開口部、24,64…(リフレクターの)反射面、30,70…副鏡、32,72…(副鏡の)開口部、34,74…(副鏡の)反射面、42,52…電極、44,54…金属箔、46,56…リード線、60D…略半分の反射面、78…支持部、90…凹レンズ、100…照明装置、100ax…照明光軸、110,112…光源装置、120…第1レンズアレイ、122…第1小レンズ、130…第2レンズアレイ、132…第2小レンズ、140…偏光変換素子、150…重畳レンズ、200…色分離導光光学系、210,220…ダイクロイックミラー、230,240,250…反射ミラー、260…入射側レンズ、270…リレーレンズ、300R,300G,300B…集光レンズ、400R,400G,400B…液晶装置、500…クロスダイクロイックプリズム、600…投写光学系、1000…プロジェクター、SCR…スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部を内包する管球部及び前記管球部の両側に延びる一対の封止部を有する高圧水銀ランプと、
前記一対の封止部のうち所定の第1封止部に配設され、前記発光部から射出される光を被照明領域へ向けて反射するリフレクターと、
前記発光部から射出される光のうち前記リフレクターには直接入射しない光の一部又は全部を前記発光部に向けて反射する副鏡とを備える光源装置であって、
前記管球部の外表面のうち前記副鏡に対向する面には、紫外光を吸収して可視光を放出する蛍光体を含有する蛍光層が形成されていることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光源装置において、
前記副鏡は、前記一対の封止部のうち前記第1封止部とは異なる第2封止部に配設され、前記発光部から被照明領域側に射出される光の一部又は全部を前記発光部に向けて反射することを特徴とする光源装置。
【請求項3】
請求項1に記載の光源装置において、
前記リフレクターは、回転中心軸を含む所定の平面で切断したときに一方側の少なくとも端部が削除された形状を有し、
前記副鏡は、前記管球部における前記一方側を覆うように配設され、前記発光部から前記一方側に射出される光の一部又は全部を前記発光部に向けて反射することを特徴とする光源装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の光源装置において、
前記蛍光体は、蛍光として赤色光を放出することを特徴とする光源装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の光源装置において、
前記蛍光層は、前記蛍光体として2種類以上の蛍光体を含有することを特徴とする光源装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の光源装置において、
前記蛍光層は、前記管球部の外表面のうち前記副鏡に対向する面の全面に形成されていることを特徴とする光源装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の光源装置において、
前記蛍光層は、前記管球部の外表面のうち前記副鏡に対向する面に部分的に形成されていることを特徴とする光源装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の光源装置を備える照明装置と、
前記照明装置からの照明光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、
前記光変調装置からの変調光を投写画像として投写する投写光学系とを備えることを特徴とするプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−100631(P2011−100631A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254718(P2009−254718)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】