説明

光源装置

【課題】 封止部の周りに接着剤を均一に充填することができ、振動・衝撃が光源装置に加わっても、凹面反射鏡、又は、ベースに接着剤によって固着された封止部が破損することがない光源装置を提供するものである。
【解決手段】 本願発明の光源装置は、ショートアーク型高圧水銀ランプ1と、この高圧水銀ランプ1を取り囲むと凹面反射鏡2とよりなる光源装置において、高圧水銀ランプ1は、一方の封止部11が凹面反射鏡2の首部21内部に挿入された状態において当該首部21内部に接着剤Sを充填して保持されるものであり、首部21の内部には、当該封止部11の外周において2点以上の接点P1、P2を構成する貫通孔30が形成された接着剤漏洩防止用ワッシャ3を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置に関するものであり、特に、半導体や液晶の製造分野などの露光用光源や映写機のバックライト用光源に適用されるショートアーク型放電ランプを用いた光源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
露光用光源や映写機のバックライト用光源に適用される光源装置は、ランプから放射された光を凹面反射鏡で反射し、凹面反射鏡の前方に放射するものである。
このような従来の光源装置を図7を用いて説明する。
この光源装置は、ショートアーク型高圧水銀ランプ1(以下、ランプ1とも呼ぶ)が凹面反射鏡2に組み込まれて構成されており、凹面反射鏡2の中心軸にランプ1の光軸が一致するように配置されている。凹面反射鏡2の頂部には首部21が設けられ、首部21の内部にランプ1の封止部11が挿入され、首部21の内部に接着剤Sを充填して、ランプ1を凹面反射鏡2に固定している。
また、首部21内であって、封止部11に挿通された接着剤漏洩防止用ワッシャ5(以下、ワシャ5とも呼ぶ)が設けられている。
【0003】
このような光源装置では、ランプ1を凹面反射鏡2に固着する場合、ランプ1を凹面反射鏡2に対して最適位置に合わせ、無機接着剤Sにて固着を行っている。
通常、ランプ1は水平点灯で使用され、接着剤でランプを凹面反射鏡に固着する際、水平で固着される。しかし、水平で固着させるため、粘性のある接着剤Sでは、ワッシャ5がなければ、首部21と封止部11の間に接着剤Sを均一に充填できずにムラになってしまう問題が発生する。
【0004】
接着剤Sが不均一に充填されていると、振動・衝撃が光源装置に加わると、接着剤Sによって首部21に固定されている封止部11が折れたりする問題があった。
そのために、首部21と封止部11との間に大量の接着剤Sを充填し、充填された接着剤Sが均一になるようにすると、接着剤Sが首部21から凹面反射鏡2の内部に漏れ出し、ランプ1の発光部に付着する場合がった。
【0005】
ランプ1の発光部に接着剤Sが付着すると、放射光が低下したり、或いは、ランプ点灯中に接着剤Sが高温となり、発光管が破損するという問題が発生する。
そのため、従来から接着剤漏洩防止用として封止部11にワッシャ5を設けていた。
【0006】
図8は、従来の光源装置の他の例であり、反射鏡の首部にベースが取り付けられた光源装置の説明図である。
図7との違いは、凹面反射鏡2の首部21にベース4が接着によって取り付けられており、このベース4にランプ1が接着剤Sによって固着されている。
【0007】
そして、ベース4内であって、封止部11に挿通された接着剤漏洩防止用ワッシャ5が設けられており、ベース4と封止部11の間に接着剤Sが充填されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−59637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図7、図8に示す従来の光源装置では、以下のような問題があった。
図9は、図7、図8の光源装置において、封止部とワッシャとの関係を示すものであり、ワッシャが封止部に挿通された状態における封止部の断面とワッシャの関係図である。
【0010】
従来のワッシャ5は、図9に示すように、中心に貫通孔50を有し、外周縁5aと内周縁5bが同一中心点の円形になっている。
封止部11は、シュリンクシールによって封止された構造であり、封止部11の外周面11aは略円形になっている。
そして、ワッシャ5の貫通孔50の内径は封止部11との勘合度を考慮し、封止部11の外径よりもやや大きめに設計されている。
【0011】
この結果、封止部11にワッシャ5を挿通した状態で、ランプ1を水平にして凹面反射鏡の首部21に挿入配置すると、図9に示すように、ワッシャ5が自重によって下方に下がり、封止部11の上方と1点(P)で接触した状態になる。
【0012】
次に、上記図9に示す状態の封止部とワッシャとの関係において、接着剤を充填した時の模式図を図10に示す。
図10では、封止部11とワッシャ5をランプの光軸と直交する方向から見た平面図であり、接着剤は省略している。
図9に示すように、接着剤を充填すると、封止部11の上部P点で、封止部11とワッシャ3が接触しており、封止部11の下部とワッシャ5が接触していないため、充填された接着剤が封止部11の下方に位置するワッシャ5を図面の右側に押し圧することになり、ワッシャ5はP点を支点として反時計周りに傾くことになる。
このワッシャの傾きは、光軸Xに対してθ2となる。
【0013】
この結果、封止部11にワッシャ5を挿入しても、接着剤が均一に充填されない状態となり、封止部11の周りに接着剤が不均一に充填されるため、振動・衝撃が光源装置に加わると、接着剤によって固定されている封止部11が折れるという問題があった。
【0014】
この発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑みて、封止部の周りに接着剤を均一に充填することができ、振動・衝撃が光源装置に加わっても、凹面反射鏡、又は、ベースに接着剤によって固着された封止部が破損することがない光源装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の光源装置は、ショートアーク型高圧水銀ランプと、この高圧水銀ランプを取り囲むと凹面反射鏡と、よりなる光源装置において、前記高圧水銀ランプは、一方の封止部が前記凹面反射鏡の首部内部に挿入された状態において当該首部内部に接着剤を充填して保持されるものであり、前記首部の内部には、当該封止部の外周において2点以上の接点を構成する貫通孔が形成された接着剤漏洩防止用ワッシャを有することを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の光源装置は、ショートアーク型高圧水銀ランプと、この高圧水銀ランプを取り囲むと凹面反射鏡と、凹面反射鏡の首部に取り付けられる絶縁性材料よりなるベースとよりなる光源装置において、前記高圧水銀ランプは、一方の封止部が前記ベースの内部挿入された状態において当該ベース内に接着剤を充填して保持されるものであり、前記ベースの内部には、当該封止部の外周において2点以上の接点を構成する貫通孔が形成された接着剤漏洩防止用ワッシャを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ショートアーク型高圧水銀ランプの一方の封止部が凹面反射鏡の首部内部に挿入された状態において、当該首部内に接着剤が充填され、首部の内部には、一方の封止部の外周において2点以上の接点を構成する貫通孔が形成された接着剤漏洩防止用ワッシャを有しているので、封止部の周りに接着剤を均一に充填することができ、振動・衝撃が光源装置に加わっても、凹面反射鏡に接着剤によって固着された封止部が破損することがないものである。
【0018】
本発明によれば、ショートアーク型高圧水銀ランプの一方の封止部が凹面反射鏡の首部に取り付けられたベース内部に挿入された状態において、当該ベース内に接着剤が充填され、ベース内部には、一方の封止部の外周において2点以上の接点を構成する貫通孔が形成された接着剤漏洩防止用ワッシャを有しているので、封止部の周りに接着剤を均一に充填することができ、振動・衝撃が光源装置に加わっても、ベースに接着剤によって固着された封止部が破損することがないものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の光源装置の説明図である。
【図2】本発明の光源装置の説明図である。
【図3】本発明の光源装置に利用される接着剤漏洩防止用ワッシャの平面図である。
【図4】図3に示す接着剤漏洩防止用ワッシャと封止部との関係を示す説明である。
【図5】図3に示す接着剤漏洩防止用ワッシャと封止部との関係を示す説明である。
【図6】本願発明の光源装置において、封止部とワッシャをランプの光軸と直交する方向から見た平面図である。
【図7】従来の光源装置の説明図である。
【図8】従来の光源装置の説明図である。
【図9】従来の光源装置の接着剤漏洩防止用ワッシャと封止部との関係を示す説明である。
【図10】従来の光源装置において、封止部とワッシャをランプの光軸と直交する方向から
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は本願発明の光源装置の説明図である。
この光源装置は、ショートアーク型高圧水銀ランプ1(以下、ランプ1とも呼ぶ)が凹面反射鏡2に組み込まれて構成されており、凹面反射鏡2の中心軸にランプ1の光軸が一致するように配置されている。凹面反射鏡2の頂部には首部21が設けられ、首部21の内部にランプ1の封止部11が挿入され、首部21の内部に接着剤Sを充填して、ランプ1を凹面反射鏡2に固定している。
また、首部21内であって、封止部11に挿通された接着剤漏洩防止用ワッシャ3(以下、ワシャ3とも呼ぶ)が設けられている。
【0021】
図2は、本願発明の光源装置の他の実施例の説明図である。
この光源装置は、ショートアーク型高圧水銀ランプ1(以下、ランプ1とも呼ぶ)が凹面反射鏡2に組み込まれて構成されており、凹面反射鏡2の中心軸にランプ1の光軸が一致するように配置されている。凹面反射鏡2の頂部には首部21が設けられ、首部21にベース4が接着によって取り付けられており、このベース4にランプ1が接着剤Sによって固着されている。
そして、ベース4内であって、封止部11に挿通された接着剤漏洩防止用ワッシャ3(以下、ワシャ3とも呼ぶ)が設けられており、ベース4と封止部11の間に接着剤Sが充填されている。
【0022】
図3は、本願発明の光源装置に用いられる接着剤漏洩防止用ワッシャの平面図である。
図3では、(a)〜(e)に示すように、5種類の接着剤漏洩防止用ワッシャを示すものである。
全てのワッシャ3は、内部に貫通孔30を有し、外周縁3aは円形になっている。
【0023】
図3(a)に示すワッシャ3は、貫通孔30を構成する内周縁3bが三角形になっている。
図3(b)に示すワッシャ3は、貫通孔30を構成する内周縁3bが四角形になっている。
図3(c)に示すワッシャ3は、貫通孔30を構成する内周縁3bが六角形になっている。
図3(d)に示すワッシャ3は、貫通孔30を構成する内周縁3bが八角形になっている。
図3(e)に示すワッシャ3は、貫通孔30を構成する内周縁3bは、貫通孔30の中心に向かって広がる円弧が4つ連続して形成された形状になっている。
つまり、全てのワッシャ3の貫通孔30を構成する内周縁3bは、非円形である。そして、この貫通孔30に封止部11が挿通されるものである。
この接着剤漏洩防止用ワッシャ3は、セラミックファイバー素線によって製造された紙状部材であり、厚みは1mmである。
【0024】
図4は、図3(a)に示す接着剤漏洩防止用ワッシャと封止部との関係を示すものであり、ワッシャが封止部に挿通された状態における封止部の断面とワッシャの関係図である。
封止部11は、シュリンクシールによって封止された構造であり、封止部11の外周面11aは略円形になっている。
ワッシャ3の貫通孔30は、外周縁3aは円形になっており、内周縁3bは三角形になっている。また、封止部11が、この貫通孔30に挿通された状態になっている。
【0025】
そして、ワッシャ3は、封止部11の外周において3点(P1、P2、P3)の接点を構成する貫通孔30が形成され、貫通孔30の内周縁3bは、封止部11の外周面11aと、P1、P2、P3の3点で接触している。
【0026】
図5は、図3(a)に示す接着剤漏洩防止用ワッシャと封止部との関係を示すものであり、ワッシャが封止部に挿通された状態における封止部の断面とワッシャの関係図である。
封止部11は、シュリンクシールによって封止された構造であり、封止部11の外周面11aは略円形になっているが、図4に示す封止部の外径より小さな外径を有するものである。
【0027】
つまり、図5に示すワッシャと図4に示すワッシャは同一のものであっても、ワッシャ3は、封止部11の外周において2点(P1、P2)の接点を構成する貫通孔30が形成され、貫通孔30の内周縁3bは、封止部11の外周面11aとP1、P2の2点で接触している。
【0028】
これは、封止部11にワッシャ3を挿通した状態で、ランプ1を水平にして凹面反射鏡の首部内やベース内に挿入配置すると、図5に示すように、ワッシャ3が自重によって下方に下がり、封止部11の左右の上方の2点(P1、P2)で接触した状態となるものである。
【0029】
次に、上記図5に示す状態の封止部とワッシャとの関係において、接着剤を充填した時の模式図を図6に示す。
図6では、封止部11とワッシャ3をランプの光軸と直交する方向から見た平面図であり、接着剤は省略している。
図6に示すように、接着剤を充填すると、封止部11の下部とワッシャ3が接触していないが、封止部11の上部2点(P1、P2)で、封止部11とワッシャ3が接触しており、充填された接着剤が封止部11の下方に位置するワッシャ3を図面の右側に押し圧することになり、ワッシャ3はP1、P2の2点を支点として反時計周りに傾くことになるが、封止部に対してワッシャが1点で接触している従来の場合と比較して、ワッシャ3と封止部11の摩擦抵抗が大きくなり、ワッシャ3の傾きは、光軸Xに対してθ1となり、図10に示すワッシャ3の傾きθ2より小さくできる。
【0030】
この結果、接着剤を充填しても、封止部11に対してワッシャ3の傾きを小さくでき、接着剤を封止部11の周りに均一に充填することができ、振動・衝撃が光源装置に加わっても、接着剤によって固定されている封止部11が破損することがない。
【0031】
上記図4に示す状態の封止部とワッシャとの関係においては、ワッシャ3の貫通孔30の内周縁3bは、封止部11の外周面11aとP1、P2、P3の3点で接触しているので、ワッシャ3と封止部11の摩擦抵抗が非常に大きくなり、封止部11の周りに接着剤を充填しても、封止部11に対してワッシャ3が傾くことがなく、接着剤を封止部11の周りに略完全に均一に充填することができ、封止部11の破損を確実に防止することができる。
【0032】
図3(b)〜(e)に示すワッシャ3も、封止部11の外周において2点以上の接点を構成する貫通孔30が形成されたものであり、封止部に対してワッシャが1点で接触している従来の場合と比較して、ワッシャと封止部の摩擦抵抗が大きくなり、ワッシャの傾きを従来と比較して小さくできる。
よって、封止部の周りに接着剤を充填しても、封止部に対してワッシャの傾きを小さくでき、或いは、ワッシャが傾くことがなく、接着剤を封止部の周りに均一に充填することができ、封止部の破損を確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 ショートアーク型放電ランプ
11 封止部
11a 封止部の外周面
2 凹面反射鏡
3 ワッシャ
30 貫通孔
3a ワッシャの外周縁
3b ワッシャの内周縁
4 ベース
P1 接点
P2 接点
P3 接点
S 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショートアーク型高圧水銀ランプと、この高圧水銀ランプを取り囲むと凹面反射鏡と、よりなる光源装置において、
前記高圧水銀ランプは、一方の封止部が前記凹面反射鏡の首部内部に挿入された状態において当該首部内部に接着剤を充填して保持されるものであり、
前記首部の内部には、当該封止部の外周において2点以上の接点を構成する貫通孔が形成された接着剤漏洩防止用ワッシャを有することを特徴とする光源装置。
【請求項2】
ショートアーク型高圧水銀ランプと、この高圧水銀ランプを取り囲むと凹面反射鏡と、凹面反射鏡の首部に取り付けられる絶縁性材料よりなるベースとよりなる光源装置において、
前記高圧水銀ランプは、一方の封止部が前記ベースの内部挿入された状態において当該ベース内に接着剤を充填して保持されるものであり、
前記ベースの内部には、当該封止部の外周において2点以上の接点を構成する貫通孔が形成された接着剤漏洩防止用ワッシャを有することを特徴とする光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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