説明

光照射により物体表面に立体構造を構築可能な感光性材料及びその方法

【課題】光デバイスの製造等に有用な新規材料の提供。
【解決手段】有機フォトクロミック化合物を用いて物体表面に所定の立体構造を構築する方法において、前記有機フォトクロミック化合物として、第一の光の照射により、第一のガラス転移温度を有する第一状態に変化する一方、前記第一の光の波長とは異なる第二の光の照射により、前記第一のガラス転移温度よりも低い第二のガラス転移温度を有する第二状態に変化する有機フォトクロミック化合物を選択すると共に、前記有機フォトクロミック化合物を前記物体表面に適用した後、前記第一のガラス転移温度よりも低く前記第二のガラス転移温度と同程度かより高い温度下で、前記有機フォトクロミック化合物を適用した部位の内、所望領域に前記第二の光を照射し、当該部位を平坦化する工程、を含むことを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の作用により状態の異なる2つの異性体を可逆的に生成可能な有機フォトクロミック化合物の新たに発見された性質を利用した、当該化合物による所望の立体構造を物品表面に構築するための新規方法及びそれに用いる感光性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトクロミック化合物とは、光の作用により状態の異なる2つの異性体を可逆的に生成する分子又は分子集合体を指し、光化学反応によって分子構造が変化し、この変化に応じて光吸収係数、屈折率、旋光性及び誘電率等の光学特性を可逆的に変える性質を有している。当該化合物を利用したものには、古くは、例えば、有機フォトクロミック化合物をプラスチック等の合成樹脂中に分散させたスキー用ゴーグル及びサングラスや自動車等の窓ガラス等がある(特許文献1、特許文献2等)。また、最近では、これらの光学特性の差を利用した、各種光デバイスも提案されている。例えば、特許文献3には、照射する光の波長を変えることによりデータの記録と消去を行うと共に、透過率変化(吸光度の差)によってデータの読み出しを行うという光記録媒体や、光照射によって分子構造が変化し、その分子構造の変化に応じて屈折率が可逆的に変化する点に着目しての、当該可逆的な屈折率変化を利用した光スイッチング素子が提案されている。
【特許文献1】特開平5−65477
【特許文献2】特開平5−320631
【特許文献3】特開2000−160153
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、本発明者は、光デバイスへの応用の観点から、各種有機フォトクロミック化合物について様々な角度から研究を行ってきた。ところで、フォトクロミック化合物を光記録媒体の記録層や光スイッチング素子として応用する場合、フォトクロミック化合物を含有させた薄膜の形成が必要となる。このような薄膜形成方法としては、真空蒸着法、塗布法、LB(Langmuir-Brodgett)法等の方法があるが、それらの内、ある種の有機フォトクロミック化合物を回折基板上に真空蒸着させたところ、これまで未知であった特性を有することを偶然発見した上で、当該特性を奏する原理を突き止めた結果、本発明を完成させたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
詳述すると、周期的に溝が形成された回折基板上にある種の有機フォトクロミック化合物を真空蒸着させたところ、ある状態の当該有機フォトクロミック化合物が蒸着した部位は回折光の強度変化を示さなかったが、別の状態の当該有機フォトクロミック化合物が蒸着した部位は徐々に当該強度が変化してしまうことが判明した。そして、この回折光の強度が変化する理由を探求した結果、前記ある状態の当該有機フォトクロミック化合物は、周囲温度よりも高いガラス転移温度を有しているため、物理的形状が保持される一方、前記別の状態の当該有機フォトクロミック化合物は、周囲温度と同程度かより低いガラス転移温度を有しているため、当該化合物が活発に移動可能である状況が構築された結果、物理的形状を保持できずに平坦化してしまうことを突き止めた。そして、両状態のガラス転移温度の相違に着目することにより、以下の発明(1)〜(11)を完成させたものである。
【0005】
即ち、本発明(1)は、有機フォトクロミック化合物を用いて物体表面に所定の立体構造を構築する方法において、
前記有機フォトクロミック化合物として、第一の光の照射により、第一のガラス転移温度を有する第一状態に変化する一方、前記第一の光の波長とは異なる第二の光の照射により、前記第一のガラス転移温度よりも低い第二のガラス転移温度を有する第二状態に変化する有機フォトクロミック化合物を選択すると共に、
前記有機フォトクロミック化合物を前記物体表面に適用した後、前記有機フォトクロミック化合物を適用した部位の内、当該化合物があらかじめ前記第一状態となっている表面の所望領域に前記第二の光を照射し、当該部位を前記第二状態にすることにより平坦化する工程、或いは、前記有機フォトクロミック化合物を前記物体表面に適用した後、前記有機フォトクロミック化合物を適用した部位の内、当該化合物があらかじめ前記第二状態となっている表面の所望領域に前記第一の光を照射し、当該部位を前記第一状態にすることにより当該部位以外の前記第二状態の部位を平坦化する工程、並びに、
場合により存在していてもよい、前記物品表面に保護膜を形成する工程
を含むことを特徴とする方法である。
【0006】
本発明(2)は、前記第一のガラス転移温度は常温よりも高く、前記第二のガラス転移温度は前記平坦化工程が行われる温度(例えば常温)と同程度かそれよりも低い、前記発明(1)の方法である。尚、本特許請求の範囲及び本明細書にいう「同程度」とは、±20℃を意味し、また、「常温」とは、10〜30℃内の任意の温度を指す。
【0007】
本発明(3)は、前記第一のガラス転移温度と前記第二のガラス転移温度との差が、50℃以上である、前記発明(1)又は(2)の方法である。
【0008】
本発明(4)は、前記有機フォトクロミック化合物が、第一状態においては下記式:
【化5】

の構造を採り、第二状態においては下記式:
【化6】

の構造を採るジアリールエテン類である、本発明(1)の方法である。
【0009】
本発明(5)は、所定の立体構造が構築された前記物体が、光学デバイスである、前記発明(1)〜(4)のいずれか一つの方法である。
【0010】
本発明(6)は、有機フォトクロミック化合物を用いて、所定の立体構造が構築された物体を製造する方法において、
前記有機フォトクロミック化合物として、第一の光の照射により、第一のガラス転移温度を有する第一状態に変化する一方、前記第一の光の波長とは異なる第二の光の照射により、前記第一のガラス転移温度よりも低い第二のガラス転移温度を有する第二状態に変化する有機フォトクロミック化合物を選択すると共に、
前記有機フォトクロミック化合物を前記物体表面に適用した後、前記有機フォトクロミック化合物を適用した部位の内、当該化合物があらかじめ前記第一状態となっている表面の所望領域に前記第二の光を照射し、当該部位を前記第二状態にすることにより平坦化する工程、或いは、前記有機フォトクロミック化合物を前記物体表面に適用した後、前記有機フォトクロミック化合物を適用した部位の内、当該化合物があらかじめ前記第二状態となっている表面の所望領域に前記第一の光を照射し、当該部位を前記第一状態にすることにより当該部位以外の前記第二状態の部位を平坦化する工程、並びに、
場合により存在していてもよい、前記物品表面に保護膜を形成する工程
を含むことを特徴とする方法である。
【0011】
本発明(7)は、前記第一のガラス転移温度は常温よりも高く、前記第二のガラス転移温度は前記平坦化工程が行われる温度(例えば常温)と同程度か又はそれよりも低い、前記発明(6)の方法である。
【0012】
本発明(8)は、前記第一のガラス転移温度と前記第二のガラス転移温度との差が、50℃以上である、前記発明(6)又は(7)の方法である。
【0013】
本発明(9)は、前記有機フォトクロミック化合物が、第一状態においては下記式:
【化7】

の構造を採り、第二状態においては下記式:
【化8】

の構造を採るジアリールエテン類である、前記発明(6)の方法である。
【0014】
本発明(10)は、所定の立体構造が構築された前記物体が、光学デバイスである、前記発明(6)〜(9)のいずれか一つの方法である。
【0015】
本発明(11)は、第一の光の照射により、第一のガラス転移温度を有する第一状態に変化する一方、前記第一の光の波長とは異なる第二の光の照射により、前記第一のガラス転移温度よりも低い第二のガラス転移温度を有する第二状態に変化する有機フォトクロミック化合物を含有する、前記発明(1)〜(10)のいずれか一つの方法に使用される感光性材料である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の最良形態を説明する。まず、本発明に係る感光性材料を説明し、次に、当該感光性材料の使用方法(所定の立体構造が構築された物品の製造方法)について説明することとする。尚、本発明は、以下の最良形態には何ら限定されるものではないことに留意すべきである。
【0017】
本発明に係る感光性材料は、第一の光の照射により、第一のガラス転移温度を有する第一状態に変化する一方、前記第一の光の波長とは異なる第二の光の照射により、前記第一のガラス転移温度よりも低い第二のガラス転移温度を有する第二状態に変化する有機フォトクロミック化合物を含有することを特徴とする。以下、各要素を説明する。
【0018】
まず、「感光性材料」とは、紫外光領域から可視光領域までの範囲内の波長を有する光を照射することによって、化学構造が変化する性質を有する有機系材料である。
【0019】
次に、本発明に係る有機フォトクロミック化合物は、第一の光の照射により、第一のガラス転移温度を有する第一状態に変化する一方、前記第一の光の波長とは異なる第二の光の照射により、前記第一のガラス転移温度よりも低い第二のガラス転移温度を有する第二状態に変化する性質を有する。ここで、好適には、少なくとも第二状態におけるガラス転移温度が処理温度と同程度又はそれよりも小さい一方で、第一状態におけるガラス転移温度がそれよりも顕著に高くなる化合物である。具体的には、第一のガラス転移温度と第二のガラス転移温度の差が50℃以上であることがより好適である。尚、本明細書における「ガラス転移温度」の測定には、示差走査熱量計(DSC)を用い、室温から毎分10℃の昇温速度で測定を行ったときの、ガラス転移に伴う吸熱過程の立ち上がり部分の勾配とベースラインとの交点に相当する温度をガラス転移温度とする。
【0020】
このような有機フォトクロミック化合物の例として、以下のジアリールエテン類を挙げることができる。ここで、当該ジアリールエテン類は、第一状態においては下記式:
【化9】

【0021】
の構造を採り、第二状態においては下記式:
【化10】

【0022】
の構造を採る。この化合物は、図1の吸収スペクトルで示されるように、例えば波長365nmの紫外光照射によって閉環反応(着色反応)し、可視域にも吸収を示すようになる(第一状態)。この着色状態の化合物に対して例えば波長633nmの可視光照射を行うと開環反応(消色反応)を起こし、第二状態となる。ここで、第一状態でのガラス転移温度は90℃であるのに対して、第二状態でのガラス転移温度は26℃である。したがって、当該化合物のアモルファス分子膜を形成した場合、室温(20℃)付近では活発に消色体分子が動くことが出来るために、第二状態下では、形状を保持できずに平坦化される。尚、当該化合物は、既知化合物であり製造方法も知られている。
【0023】
次に、本発明に係る感光性材料の使用方法について説明する。本発明に係る感光性材料は、所定温度(例えば、常温、高温領域、低温領域)下、第一状態の際には形状を保持し、第二状態の際には平滑化する、ということがポイントである。したがって、本発明に係る感光性材料を物品表面に適用した場合、第一状態の際には形状を保持し、第二状態の際には平滑化するような方式で適用することが好適である。即ち、第一に、当該感光性材料が適用される物品表面は、重力の影響を受ける領域が均一に形成されていることが好適であり、第二に、当該重力の影響を受ける領域に当該感光性材料が第二状態として存在している場合には、当該感光性材料が重力の影響を受けることができる程度の厚さで当該感光性材料に適用することが好適である。
【0024】
具体的に説明すると、まず、前者に関しては、感光性材料が適用される物品の表面には、均一な凹凸パターン(例えば、線状パターン、ドット状パターン)が形成されていることが好適である。このようなパターンが形成されていると、パターンの側壁に蒸着したフォトクロミック分子膜が第二状態となった場合、自重により下方に移動する結果、平坦化し易い状況が構築できる。
【0025】
次に、後者に関しては、真空蒸着法により物品表面に当該感光性材料(有機フォトクロミック化合物)を適用することが好適である。この際、蒸着の厚さは、前記パターンの形状や大きさにも依存するが、例えば、50nm〜100nm程度とすることが好適である。尚、真空蒸着法の場合、例えば、前記のジアリールエテン化合物と必要に応じて各種添加剤とを真空容器内に設置されたるつぼに入れ、真空容器内を真空ポンプで10-2〜10-5Pa程度にまで排気した後、るつぼを加熱して当該成分を蒸発させ、るつぼと向き合って置かれた基板上に蒸着させることにより、物品にフォトクロミック分子膜を形成する。
【0026】
その後、第一の光(例えば紫外線)を適用面の全面に照射して当該分子膜を固定化(第一状態化)した後に、第二の光(例えばレーザー)を所望のパターンで走査して当該部分を第二の状態にすることにより平坦化する。或いは、この分子膜は、通常蒸着直後は第二の状態となっているので、第一の光によって所望のパターンで走査して当該部分を第一の状態とし、それ以外の第二の状態の部分を平坦化する。即ち、これらのパターン形成手法は、ポジ型レジストやネガ型レジストと類似しているともいえる。
【0027】
尚、必要に応じて、この平坦化処理を行った後に安定化させる目的で、任意の保護膜をこの上に形成してもよい。ここで、保護膜としては、TeO等の各種誘電体の蒸着膜、ポリビニルアルコール等のポリマー膜、或いは、真空蒸着による金やAl等の様々な金属が挙げられる。
【0028】
ここで、当該手法は、様々な光学デバイスの作製に利用できる。例えば、光回路素子としてフォトニック結晶デバイスというものが研究開発されている。フォトニック結晶とは、誘電率に周期的に変調を形成した人工結晶で、フォトニック結晶内の光は周期的な誘電率変化によるポテンシャル散乱をうけ、バンド構造(フォトニックバンド)を形成する。これを利用した無損失の光導波路の研究が活発である。周期的な誘電率変調を実現するために、図4の様に周期的な誘電体パターン(二次元フォトニック結晶)の中に、図5の様に一部にそれを欠損させることにより光を導波させる道を形成する手法がある。この場合、光は欠損部分に従って導波される。この様なデバイスを形成するには、周期的なセルを形成する際に同時にセル欠損部分をつくる必要があり、デバイス設計の自由度が低い。しかしながら、本手法を用いると、このデバイスをより簡単に作ることが可能である。図4で示した均一に周期的なパターンが形成された基板に対して、本発明のフォトクロミック分子を蒸着し、すぐに紫外光照射により着色する。この状態では基板のパターンは表面に保持されている。次に、光を導波させたい(=欠損部分を形成したい)パターンに従ってレーザー等の光を照射し、消色反応させる。そのまま数時間放置すれば、異性化した部分は平坦化してセルの欠損部ができあがる。必要に応じてさらにその上から誘電体膜を形成すれば、フォトクロミック膜に残った周期的パターン部、平坦化部の形状がそのまま誘電体膜として反映され、図5と同等のフォトニック結晶による光回路デバイスを得ることが出来る。
【実施例】
【0029】
図1に示す構造式を有するフォトクロミック化合物を、ポリカーボネイト製の回折格子基板(溝深さ50nm、溝ピッチ0.8ミクロン)に膜厚60nmで蒸着形成した。この回折格子サンプルについて、蒸着直後に紫外光を充分照射して着色状態としたもの(サンプル1)、紫外光を照射せずに消色状態のままとしたもの(サンプル2)の二つを準備した{室温(20℃)下}。これらに波長633nmのレーザー光をパワー20μW(ビーム径1mm)で照射し、0次光に対する±1次回折光の強度の比(回折効率)の時間変化を調べた。尚、着色サンプル1については光反応が起こる恐れがあるので、回折効率を測定する時にのみ光が当たるように注意した。この結果を図2に示す。図2は、回折効率の経時変化を表したものであり、真空蒸着によるフォトクロミック膜形成直後からの経過時間を横軸にとってある。これからわかるように、着色状態のサンプル1では回折効率が変化しないが、消色状態のサンプル2では回折効率がおよそ1時間で10分の1に低下した。回折効率が低下するというこの結果は、時間とともに回折格子の溝が埋まってきているということを示唆している。
【0030】
次に、更に詳しく調べるため、回折格子基板の表面をAFM観察した。図3−Aはもともとの基板表面の様子を示す。AFMによる走査範囲は10ミクロン×10ミクロンである。これからこの基板は、溝ピッチが0.8ミクロン程度、溝深さが50nm程度であることがわかる。着色状態のサンプル1に関しては、300分後も図3−Aとほぼ同様の溝形状が観察された。一方、消色状態のサンプル2に関しては、300分後は図3−Bに示す様に、溝形状は完全に無くなり表面粗さ2〜3nmの範囲で平坦化していることがわかる。この結果は、例えば、予め周期的なパターンを形成した基板上にこのフォトクロミック分子膜を蒸着し、紫外光照射により全面着色してそのパターンを固定化した後に、レーザーなどの光を走査して所望のパターンで消色を行い、その異性化パターン部だけを平坦化することが出来ることを示したものである。
【0031】
尚、平坦化工程における温度(室温20℃)は、この化合物(第二の状態)のガラス転移温度である26℃よりも低い温度である。より望ましくは30〜40℃でこの工程を行う方が効率は良いが、しかしこの程度の差であれば充分に本発明を実施できる{前記のように、第二のガラス転移温度よりも20℃低い温度まで(本例の場合は6℃程度まで)は、本工程を実施できる温度である}。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、特定のジアリールエテン類の吸収スペクトルを示したものである。
【図2】図2は、実施例におけるサンプル1及びサンプル2の回折効率の経時変化を示したものである。
【図3】実施例におけるAFM観察の結果を示したものである(図3−A:もともとの基板表面、図3−B:サンプル2の表面の様子)。
【図4】本発明が適用され得る、均一に周期的なパターンが形成された基板例である。
【図5】図4の基板に本発明が適用された、光回路デバイスの一例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機フォトクロミック化合物を用いて物体表面に所定の立体構造を構築する方法において、
前記有機フォトクロミック化合物として、第一の光の照射により、第一のガラス転移温度を有する第一状態に変化する一方、前記第一の光の波長とは異なる第二の光の照射により、前記第一のガラス転移温度よりも低い第二のガラス転移温度を有する第二状態に変化する有機フォトクロミック化合物を選択すると共に、
前記有機フォトクロミック化合物を前記物体表面に適用した後、前記有機フォトクロミック化合物を適用した部位の内、当該化合物があらかじめ前記第一状態となっている表面の所望領域に前記第二の光を照射し、当該部位を前記第二状態にすることにより平坦化する工程、或いは、前記有機フォトクロミック化合物を前記物体表面に適用した後、前記有機フォトクロミック化合物を適用した部位の内、当該化合物があらかじめ前記第二状態となっている表面の所望領域に前記第一の光を照射し、当該部位を前記第一状態にすることにより当該部位以外の前記第二状態の部位を平坦化する工程、並びに、
場合により存在していてもよい、前記物体表面に保護膜を形成する工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第一のガラス転移温度は前記平坦化工程が行われる温度よりも高く、前記第二のガラス転移温度は当該温度と同程度か又はそれよりも低い、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第一のガラス転移温度と前記第二のガラス転移温度との差が、50℃以上である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記有機フォトクロミック化合物が、第一状態においては下記式:
【化1】

の構造を採り、第二状態においては下記式:
【化2】

の構造を採るジアリールエテン類である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
所定の立体構造が構築された前記物体が、光学デバイスである、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
有機フォトクロミック化合物を用いて、所定の立体構造が構築された物体を製造する方法において、
前記有機フォトクロミック化合物として、第一の光の照射により、第一のガラス転移温度を有する第一状態に変化する一方、前記第一の光の波長とは異なる第二の光の照射により、前記第一のガラス転移温度よりも低い第二のガラス転移温度を有する第二状態に変化する有機フォトクロミック化合物を選択すると共に、
前記有機フォトクロミック化合物を前記物体表面に適用した後、前記有機フォトクロミック化合物を適用した部位の内、当該化合物があらかじめ前記第一状態となっている表面の所望領域に前記第二の光を照射し、当該部位を前記第二状態にすることにより平坦化する工程、或いは、前記有機フォトクロミック化合物を前記物体表面に適用した後、前記有機フォトクロミック化合物を適用した部位の内、当該化合物があらかじめ前記第二状態となっている表面の所望領域に前記第一の光を照射し、当該部位を前記第一状態にすることにより当該部位以外の前記第二状態の部位を平坦化する工程、並びに、
場合により存在していてもよい、前記物体表面に保護膜を形成する工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
前記第一のガラス転移温度は前記平坦化工程が行われる温度よりも高く、前記第二のガラス転移温度は当該温度と同程度か又はそれよりも低い、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記第一のガラス転移温度と前記第二のガラス転移温度との差が、50℃以上である、請求項6又は7記載の方法。
【請求項9】
前記有機フォトクロミック化合物が、第一状態においては下記式:
【化3】

の構造を採り、第二状態においては下記式:
【化4】

の構造を採るジアリールエテン類である、請求項6記載の方法。
【請求項10】
所定の立体構造が構築された前記物体が、光学デバイスである、請求項6〜9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
第一の光の照射により、第一のガラス転移温度を有する第一状態に変化する一方、前記第一の光の波長とは異なる第二の光の照射により、前記第一のガラス転移温度よりも低い第二のガラス転移温度を有する第二状態に変化する有機フォトクロミック化合物を含有する、請求項1〜10のいずれか一項記載の方法に使用される感光性材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−245113(P2007−245113A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−76060(P2006−76060)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(304025138)国立大学法人 大阪教育大学 (13)
【Fターム(参考)】