説明

光照射デバイス、光照射モジュールおよび印刷装置

【課題】 紫外線発光素子の発する光を有効に取り出し、高い紫外線照射エネルギーを実現する光照射デバイスを提供する。
【解決手段】 基体10の貫通孔12に収容される発光素子20を備え、基体10は、第1貫通孔12aを有する第1基板10aと、第1基板10aの両面に配置された、対応する第1貫通孔12aよりも太い第2貫通孔12bを有する一対の第2基板10bと、第1電力供給回路40aおよび第2電力供給回路40bとを有しており、発光素子20は、ベース基板21と半導体層22と第1電極23および第2電極24とを有し、熱伝導性接着剤50を介して第1貫通孔12aの内壁に接着され、第1電力供給回路40aと第1電極23とが、および第2電力供給回路40bと第2電極24とがそれぞれ第1金属線15a、および第2金属線15bを介して接続されている光照射デバイスである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化型樹脂や塗料の硬化に使用される光照射デバイス、光照射モジュールおよび印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線照射装置は、医療やバイオ分野での蛍光反応観察、殺菌用途、電子部品の接着や紫外線硬化型樹脂およびインクの硬化などを目的に広く利用されている。特に電子部品の分野などで小型部品の接着等に使われる紫外線硬化型樹脂の硬化や、印刷の分野で使われる紫外線硬化型インクの硬化などに用いられる紫外線照射装置のランプ光源には、高圧水銀ランプやメタルハライドランプなどが使用されている。
【0003】
近年、世界規模で地球環境負荷の軽減が切望されていることから、比較的長寿命かつ省エネルギーであり、しかもオゾン発生を抑制することができる紫外線発光素子をランプ光源に採用する動きが活発になってきている。
【0004】
ところが、紫外線発光素子の照度は比較的低いため、例えば特許文献1に記載されているように、複数の発光素子を1つの基板に搭載したデバイスを用意し、複数のデバイスを支持体に搭載した構成のモジュールが一般的に使用されて、紫外線硬化型インクの硬化に必要な紫外線照射エネルギーを確保している。
【0005】
しかしながら、紫外線発光素子からの光は、発光素子の上面からのみではなく下面からも照射されるため、上述の光照射モジュールでは発光素子が発する光を有効に取り出すことができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−244165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、紫外線発光素子の発する光を有効に取り出し、高い紫外線照射エネルギーを実現することができる光照射デバイス、光照射モジュールおよび印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光照射デバイスは、複数の貫通孔を有する基体と、前記貫通孔のそれぞれに収容される複数の発光素子とを備え、前記基体は、前記複数の貫通孔を構成する複数の第1貫通孔を有する第1基板と、該第1基板の両面にそれぞれ配置された、前記複数の第1貫通孔のそれぞれと連なって前記貫通孔を構成する、対応する前記第1貫通孔よりも太い複数の第2貫通孔を有する一対の第2基板と、前記第1基板と前記一対の第2基板との間の少なくとも一方に配置された第1電力供給回路および第2電力供給回路とを有しており、前記発光素子は、ベース基板と、該ベース基板の上面に形成された、発光層を含む半導体層と、前記ベース基板または前記半導体層に設けられた第1電極および第2電極とを有し、前記発光素子は、熱伝導性接着剤を介して前記第1貫通孔の内壁に接着され、前記第1電力供給回路と前記第1電極とが、および前記第2電力供給回路と前記第2電極とがそれぞれ第1金属線、および第2金属線を介して接続されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の光照射デバイスは、上記構成において、前記第2貫通孔の径は、前記第1基板から遠ざかるにつれて漸次大きくなっていることを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明の光照射デバイスは、上記構成において、前記第1金属線および第2金属線が導電性ペーストを用いて形成されており、前記第1金属線は、前記第1電力供給回路の上面と、前記第1電極の上面と、前記第1電力供給回路および前記第1電極の間に位置する前記熱伝導性接着剤の上面とを連続的に覆っており、前記第2金属線は、前記第2電力供給回路の上面と、前記第2電極の上面と、前記第2電力供給回路および前記第2電極の間に位置する前記熱伝導性接着剤の上面とを連続的に覆っていることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明の光照射デバイスは、上記構成において、前記熱伝導性接着剤、前記第1金属線および前記第2金属線が導電性ペーストを用いて形成されており、前記熱伝導性接着剤は、前記第1電力供給回路側の前記第1貫通孔の内壁と前記第1電極側の前記発光素子とを接着する第1熱伝導性接着剤と、前記第2電力供給回路側の前記第1貫通孔の内壁と前記第2電極側の前記発光素子とを接着する第2熱伝導性接着剤とを有し、前記第1熱伝導性接着剤と前記第1金属線とが、および前記第2熱伝導性接着剤と前記第2金属線とがそれぞれ一体的に形成されているとともに、前記第1熱伝導性接着剤と前記第1金属線とが前記第1電力供給回路の上面と前記第1電極の上面とを、および前記第2熱伝導性接着剤と前記第2金属線とが前記第2電力供給回路の上面と前記第2電極の上面とをそれぞれ連続的に覆っていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の光照射デバイスは、上記構成において、前記第1基板の内部、前記第2基板の内部および前記第1基板と前記第2基板との間の少なくともいずれか1つに、冷媒が挿通可能な流路が形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の光照射モジュールは、上述したいずれかの本発明の光照射デバイスと、該光照射デバイスの両面のそれぞれに面して前記複数の発光素子からの光を前記基体の側面方向に反射するように配置された反射鏡とを有することを特徴とする。
【0014】
本発明の印刷装置は、記録媒体に対して印刷を行なう印刷手段と、印刷された前記記録媒体に対して光を照射する上述したいずれかの本発明の光照射デバイスまたは上述した本発明の光照射モジュールとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光照射デバイスによれば、複数の貫通孔を有する基体と、前記貫通孔のそれぞれに収容される複数の発光素子とを備え、前記基体は、前記複数の貫通孔を構成する複数の第1貫通孔を有する第1基板と、該第1基板の両面にそれぞれ配置された、前記複数の第1貫通孔のそれぞれと連なって前記貫通孔を構成する、対応する前記第1貫通孔よりも太い複数の第2貫通孔を有する一対の第2基板と、前記第1基板と前記一対の第2基板との間の少なくとも一方に配置された第1電力供給回路および第2電力供給回路とを有しており、前記発光素子は、ベース基板と、該ベース基板の上面に形成された、発光層を含む半導体層と、前記ベース基板または前記半導体層に設けられた第1電極および第2電極とを有し、前記発光素子は、熱伝導性接着剤を介して前記第1貫通孔の内壁に接着され、前記第1電力供給回路と前記第1電極とが、および前記第2電力供給回路と前記第2電極とがそれぞれ第1金属線、および第2金属線を介して接続されていることから、発光素子の発する光は基体の両面から照射されるとともに、発光素子の発する熱を有効の放散させることが可能であるので、発光素子が発する紫外線を有効に活用できるとともに、高い紫外線照射エネルギーを実現することができる光照射デバイスが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の光照射デバイスおよび光照射モジュールの実施の形態の一例を示す平面図である。
【図2】図1に示した光照射モジュールの1I−1I線に沿った断面図である。
【図3】図1に示した光照射デバイスを用いた光照射モジュールの側面図である。
【図4】図3に示した光照射モジュールを用いた印刷装置の一例を示す上面図である。
【図5】図4に示した印刷装置の側面図である。
【図6】図1に示した光照射デバイスの第1変形例を示す断面図である。
【図7】図1に示した光照射デバイスの第2変形例を示す断面図である。
【図8】図1に示した光照射デバイスの第3変形例を示す断面図である。
【図9】図1に示した光照射デバイスの第4変形例を示す断面図である。
【図10】図1に示した光照射デバイスの第5変形例を示す断面図である。
【図11】図4に示した印刷装置に図1に示した光照射モジュールを組み込んだ場合の一例を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の光照射デバイス、光照射モジュールおよび印刷装置の実施の形態の例について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の例は本発明の実施の形態を例示するものであって、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
【0018】
(光照射デバイス)
図1および図2に示す光照射デバイス1は、紫外線硬化型インクを使用するオフセット印刷装置またはインクジェット印刷装置等の印刷装置に組み込まれ、記録媒体に紫外線硬化型インクを被着した後に紫外線を照射することで紫外線硬化型インクを硬化させる、紫外線照射モジュールの紫外線発生光源として機能する。
【0019】
光照射デバイス1は、複数の貫通孔12を有する基体10と、貫通孔12内に設けられた複数の接続パッド13と、複数の貫通孔12のそれぞれに収容される発光素子20と、各貫通孔12内に充填され発光素子20を被覆する封止材30とを有している。
【0020】
基体10は、貫通孔12を構成する複数の第1の貫通孔12aを有する第1基板10aと、第1基板10aの両面にそれぞれ配置された、複数の第1貫通孔12aのそれぞれと連なって貫通孔12を構成する複数の第2貫通孔12bを有する一対の第2基板10bと、第1基板10aの一方主面11に発光素子20同士を接続するための第1電力供給回路40aおよび第2電力供給回路40bとを備え、一方主面11側から平面視して略矩形状をなしており、貫通孔12内でシリコーン樹脂などの熱伝導性接着剤50を介して発光素子20を支持している。
【0021】
基体10を構成する基板10aおよび基板10bは、例えば、酸化アルミニウム質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体およびガラスセラミックスなどのセラミックス、ならびにエポキシ樹脂、および液晶ポリマー(LCP)などの樹脂、ならびに銅(Cu)およびアルミニウム(Al)などの金属をエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などの樹脂で被覆した複合材などによって形成される。
【0022】
次に、第1電力供給回路40aおよび第2電力供給回路40bは、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)および銅(Cu)等の導電性材料により所定のパターンに形成されており、発光素子20への電流または発光素子20からの電流を供給するための給電配線として機能する。
【0023】
次に、第1貫通孔12aの内壁には、熱伝導性接着剤50を介して第1貫通孔12aの
内壁と対向する発光素子20の外周面が接着されている。このように発光素子20の外周面を熱伝導性接着材50で接着することにより、発光素子20が駆動により発する熱を有効に基体10に拡散することができる。
【0024】
次に、第2貫通孔12bは、各々の形状が第1基板10a側から第1基板10a側と反対に位置する表面側に向かって貫通孔の径が漸次大きくなるように、その内周面14が傾斜している。第2貫通孔12bの径は、対応する第1貫通孔12aの径よりも太くされている。本例における第1貫通孔の平面視における形状は矩形であり、第2貫通孔の平面視における形状は円形であるが、貫通孔の形状は矩形、円形あるいは楕円形など、どのような形状であってもよい。
【0025】
このような貫通孔12bは、その内周面14で発光素子20の発する光を上方または下方に反射し、光の取り出し効率を向上させる機能を有する。
【0026】
光の取り出し効率を向上させるため、第2の絶縁層42の材料として、紫外線領域の光に対して比較的良好な反射性を有する多孔質のセラミック材料、例えば酸化アルミニウム質焼結体、酸化ジルコニウム質焼結体および窒化アルミニウム質焼結体のいずれかによって形成することが好ましい。また、光の取り出し効率を向上させるという観点では、貫通孔12bの内周面14に金属製の反射膜を設けてもよい。
【0027】
貫通孔12は、基板10の全体に渡って縦横の並びに配列されている。例えば、本例では、いわゆる千鳥足状に、すなわち複数列のジグザグ状の並びに配列されている。このように千鳥足状に配列することによって、発光素子20をより高密度に配置することが可能となり、単位面積当たりの照度を比較的高くすることが可能となる。ここで、千鳥足状に配列するとは、斜め格子の格子点に位置するように配置することと同義である。
【0028】
本例の光照射デバイス1では、貫通孔12の配列を千鳥足状としたが、正格子の格子点に位置するような配列としてもよく、要求される照度および照度分布を満足すればどのように配列してもよい。
【0029】
なお、当然のことながら、本例の複数の発光素子20の光出力は略同じ値のものである。例えば、本例における複数の発光素子20の全体としての光出力のばらつきは10%以内である。
【0030】
以上のような、第1基板10aおよび第2基板10bを備えた基体10は、第1基板10aや第2基板10bがセラミックスなどから成る場合であれば、次のような工程を経て製造される。まず、従来周知の方法により製作された複数のセラミックグリーンシートを準備する。第1基板10aとなるセラミックグリーンシートには貫通孔12aに対応する孔を、第2基板10bとなるセラミックグリーンシートには貫通孔12bに対応する孔をそれぞれパンチング等の方法により形成する。
【0031】
次に、第1電力供給回路40aおよび第2電力供給回路40bとなる金属ペーストをグリーンシート上に印刷(図示せず)した上で、この印刷された金属ペーストがグリーンシートの間に位置するようにグリーンシートを積層して積層体とする。この第1電力供給回路40aおよび第2電力供給回路40bとなる金属ペーストとしては、例えばタングステン(W)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)および銅(Cu)などの金属を含有させたものが挙げられる。
【0032】
次に、この積層体を焼成することにより、グリーンシートおよび金属ペーストを併せて焼成することによって、第1電力供給回路40aおよび第2電力供給回路40bおよび貫
通孔12を有する基体10を形成することができる。
【0033】
また、第1基板10aや第2基板10bが樹脂から成る場合であれば、基体10の製造方法は、例えば、次のような方法が考えられる。まず、熱硬化型樹脂の前駆体シートを準備する。次に、第1電力供給回路40aおよび第2電力供給回路40bとなる金属材料からなるリード端子を前駆体シート間に配置し、かつリード端子を前駆体シートに埋設させるように複数の前駆体シートを積層する。このリード端子の形成材料としては、例えば銅(Cu)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)−ニッケル(Ni)−コバルト(Co)合金および鉄(Fe)−ニッケル(Ni)合金などの金属材料が挙げられる。
【0034】
そして、前駆体シートに貫通孔12に対応する穴をレーザー加工やエッチング等の方法によって形成した後、これを熱硬化させることにより、基板10が完成する。なお、レーザー加工によって貫通孔12を形成する場合には、前駆体シートを熱硬化させた後でもよい。また、熱硬化型樹脂の代わりに、銅(Cu)およびアルミニウム(Al)などの金属体に熱硬化型樹脂を被覆したものを用いてもよい。
【0035】
一方、基体10の貫通孔12内には、第1基板10aの一方主面11に形成されて発光素子20に電気的に接続された接続パッド13と、この接続パッド13に半田、金(Au)線およびアルミ(Al)線等からなる第1金属線15aおよび第2金属線15bによって接続された発光素子20と、発光素子20を第1貫通孔12aの内壁に接着する熱伝導性接着剤50と、発光素子20を封止する封止材30とが設けられている。
【0036】
接続パッド13は、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)および銅(Cu)などの金属材料から成る金属層によって形成されている。なお、必要に応じて、金属層上にニッケル(Ni)層、パラジウム(Pd)層および金(Au)層などをさらに積層してもよい。かかる接続パッド13は、半田、金(Au)線およびアルミ(Al)線等からなる第1金属線15aおよび第2金属線15bによって発光素子20に接続される。
【0037】
また、発光素子20は、例えば、GaAsやGaN等の半導体材料からなるp型半導体層およびn型半導体層等をサファイア基板等のベース基板21上に積層してなる発光ダイオード、あるいは半導体層が有機材料からなる有機EL素子等により構成されている。
【0038】
この発光素子20は、発光層を有する半導体層22と、基体10上に配置された接続パッド13に金(Au)線およびアルミ(Al)線等からなる第1金属線15aおよび第2金属線15bをそれぞれ介して接続されたAg等の金属材料からなる第1電極23および第2電極24とを備えており、基体10に形成された接続パッド13に対してワイヤボンディング接続されている。ここで、発光素子20の第1電極23は接続パッド13を介して第1電力供給回路40aに、第2電極24は接続パッド13を介して第2電力供給回路40bにそれぞれ接続されている。そして、発光素子20は、第1電極23および第2電極24間に流れる電流に応じて所定の波長を持った光を所定の輝度で発するので、その光をベース基板21を介して、または直接外部へ出射する。なお、ベース基板21は、省略することが可能なのは周知の通りである。
【0039】
本例では、発光素子20に、発する光の波長のスペクトルのピークが、例えば250〜395〔nm〕以下のUV光を発するLED素子を採用している。つまり、本例では、発光素子20としてUV−LED素子を採用している。なお、発光素子20は、従来周知の薄膜形成技術によって形成される。
【0040】
そして、かかる発光素子20は、上述した封止材30によって封止されている。
【0041】
封止材30は、光透過性の樹脂材料等の絶縁材料で形成されており、発光素子20を良好に封止することにより、外部からの水分の浸入を防止したり、あるいは外部からの衝撃を吸収したりして、発光素子20を保護する。
【0042】
また、封止材30は、発光素子20を構成するベース基板21の屈折率(サファイアの場合:1.7)と空気の屈折率(約1.0)との間の屈折率を有する材料、例えばシリコーン樹脂(屈折率:約1.4)等で形成されることで、発光素子20の光の取り出し効率を向上させることができる。
【0043】
かかる封止材30は、発光素子20を基体10上に実装した後、シリコーン樹脂等の前駆体を貫通孔12bに充填し、これを硬化させることで形成される。
【0044】
このように構成された光照射デバイス1は、発光素子20が発する光を基板10aから基板10aの両面に配置された基板10bに設けられたそれぞれの貫通孔12bから両方向に照射することができる。
【0045】
(光照射モジュールの実施形態)
図3に示す例の光照射モジュール100は、上述の光照射デバイス1と、光照射デバイス1の両面に面して、発光素子20からの光を光照射デバイス1を構成する基体10の側面方向に反射するように配置された一対の反射鏡110とを備えている。
【0046】
本例の光照射モジュール100における反射鏡110は、一対の平面鏡であり、光照射デバイス1の両面から照射された光を基体10の一側面方向に反射するように、光照射デバイス1の一側面と反対側の一端側でいずれの反射鏡も光照射デバイス1との距離が短くなり、一側面と同じ側の他端側で光照射デバイス1との距離が長くなるように傾斜して配置されている。
【0047】
このような光照射モジュール100は、光照射デバイス1からの光を反射鏡110によって反射させるとともに、基体10の一側面側で集光させることによって、光照射モジュール1の小型化と光の高照度化とが同時に実現できる。
【0048】
(印刷装置の実施形態)
本発明の印刷装置の実施の形態の一例として、図4および図5に示した印刷装置200を例に挙げて説明する。この印刷装置200は、記録媒体250を搬送するための搬送機構210と、搬送された記録媒体250に印刷を行なうための印刷機構としてのインクジェットヘッド220と、印刷後の記録媒体250に対して紫外光を照射する、上述した光照射モジュール100と、この光照射モジュール100の発光を制御する制御機構230とを備えている。
【0049】
搬送機構210は、記録媒体250をインクジェットヘッド220、光照射モジュール1の順に通過するように搬送するためのものであり、載置台211と、互いに対向配置され、回転可能に支持された一対の搬送ローラ212とを含んで構成されている。この載置台211によって支持された記録媒体250を一対の搬送ローラ212の間に送り込み、この搬送ローラ212を回転させることにより、記録媒体250を搬送方向へ送り出すためのものである。
【0050】
インクジェットヘッド220は、搬送機構210を介して搬送される記録媒体250に対して、感光性材料を付着させる機能を有している。このインクジェットヘッド220は、この感光性材料を含む液滴を記録媒体250に向けて吐出し、記録媒体250に被着さ
せるように構成されている。本例では、感光性材料として紫外線硬化型インクを採用している。この感光性材料としては、紫外線硬化型インクの他に、例えば感光性レジストあるいは光硬化型樹脂などが挙げられる。
【0051】
本例では、インクジェットヘッド220としてライン型のインクジェットヘッドを採用している。このインクジェットヘッド220は、ライン状に配列された複数の吐出孔220aを有しており、この吐出孔220aから紫外線硬化型インクを吐出するように構成されている。インクジェットヘッド220は、吐出孔220aの配列に対して直交する方向に搬送される記録媒体250に対して、吐出孔220aからインクを吐出し、記録媒体にインクを被着させることにより、記録媒体に対して印刷を行なう。
【0052】
なお、本例では、印刷機構としてライン型のインクジェットヘッドを例に挙げたが、これに限られるものではなく、例えば、シリアル型のインクジェットヘッドを採用してもよいし、ライン型またはシリアル型の噴霧ヘッドを採用してもよい。さらに、印刷機構として、記録媒体250に静電気を蓄え、この静電気で感光性材料を付着させる静電式ヘッドを採用してもよいし、記録媒体250を液状の感光性材料に浸して、この感光性材料を付着させる浸液装置を採用してもよい。さらに、印刷機構として刷毛、ブラシおよびローラなどを採用してもよい。
【0053】
印刷装置200において光照射モジュール100は、搬送機構210を介して搬送される記録媒体250に付着した感光性材料を感光させる機能を担っている。この光照射モジュール100は、インクジェットヘッド220に対して搬送方向の下流側に設けられている。また、印刷装置200において発光素子20および第2発光素子30bは、記録媒体250に付着した感光性材料を露光する機能を担っている。
【0054】
制御機構230は、光照射モジュール100の発光を制御する機能を担っている。この制御機構230のメモリには、インクジェットヘッド220から吐出されるインク滴を硬化するのが比較的良好になるような光の特徴を示す情報が格納されている。この格納情報の具体例を挙げると、吐出するインク滴を硬化するのに適した波長分布特性、および発光強度(各波長域の発光強度)を表す数値が挙げられる。本例の印刷装置200では、この制御機構230を有することによって、制御機構230の格納情報に基づいて、複数の発光素子20に入力する駆動電流の大きさを調整することもできる。このことから、本例の印刷装置200によれば、使用するインクの特性に応じた適正な紫外線照射エネルギーで光を照射することができ、比較的低エネルギーの光でインク滴を硬化させることができる。
【0055】
この印刷装置200では、搬送機構210が記録媒体250を搬送方向に搬送している。インクジェットヘッド220は、搬送されている記録媒体250に対して紫外線硬化型インクを吐出して、記録媒体250の表面に紫外線硬化型インクを付着させる。このとき、記録媒体250に付着させる紫外線硬化型インクは、全面付着であっても、部分付着であっても、所望パターンでの付着であってもよい。この印刷装置200では、記録媒体250に付着した紫外線硬化型インクに光照射モジュール100の発する紫外線を照射して、紫外線硬化型インクを硬化させる。
【0056】
本例の印刷装置200によれば、光照射モジュール100の有する上述の効果を享受することができる。
【0057】
以上、本発明の具体的な実施の形態の例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
【0058】
例えば図6に示す第1変形例のように、第1金属線15aおよび第2金属線15bを、銀(Ag)ペースト、カーボンペーストおよびエポキシ樹脂などの樹脂に貴金属粉末を混合したペーストなどの導電性ペーストで形成してもよい。この場合、発光素子20の備える第1電極23の上面と、第1電力供給回路40aの一端に配置される電極パッド13の上面と、第1電極23および第1電力供給回路40aの一端に配置される電極パッド13との間に位置する熱伝導性接着材50の上面および基板10aの一方主面11の上面とを連続的に導電性ペーストが覆っている。同様に、発光素子20の備える第2電極24の上面と、第2電力供給回路40bの一端に配置される電極パッド13の上面と、第2電極24および第2電力供給回路40bの一端に配置される電極パッド13との間に位置する熱伝導性接着材50の上面および基板10aの一方主面11の上面とを連続的に導電性ペーストが覆っている。このような構成とすることにより、発光素子20の上方の空間に金(Au)線またはアルミニウム(Al)線などからなる第1金属線15aおよび第2金属線15bが存在しないことから、発光素子20の発した光が第1金属線15aおよび第2金属線15bで遮られることがないので、発光強度が低下するのを抑制することができる。
【0059】
また、例えば図7に示す第2変形例のように、熱導電性接着剤50および第1金属線15aおよび第2金属線15bを銀(Ag)ペースト、カーボンペーストおよびエポキシ樹脂などの樹脂に貴金属粉末を混合したペーストなどの導電性ペーストで一体的に形成してもよい。
【0060】
このような構成とすることで、上述の第1金属線15aおよび第2金属線15bを導電性ペーストで形成する場合の効果を享受することができるとともに、発光素子20を熱伝導性接着材50で第1貫通孔12aの内壁に接着する工程と、第1電極23および第2電極24と第1電力供給回路40aおよび第2電力供給回路40bの一端に形成される接続パッド13との第1金属線15aおよび第2金属線15bによる接続工程とを同時に行なうことができるため、製造工程の簡素化が行なえる。
【0061】
さらに、例えば図8、図9および図10に示す第3変形例、第4変形例および第5変形例のように、第1基板10aの内部に流路120を、第2基板10bの内部に流路120を、および第1基板10aと第2基板10bとの間に流路120を設けてもよい。この流路120は第1基板10aまたは第2基板10bの全体に渡って配置されているのが好ましく、1つの流路が第1基板10aまたは第2基板10bの両端で反転するように蛇行して設けられてもよいし、複数の流路が第1基板10aまたは第2基板10bの一端から多端まで直線状に設けられていてもよいし、発光素子20が駆動することによって第1基板10aまたは第2基板10bの基板温度が最も高くなる基板中央部から基板外周部に向かって複数の流路が設けられてもよい。このような流路120に冷媒としての流体を流すことによって、発光素子20が駆動によって発する熱を有効に外部に放出することができる。
【0062】
また、印刷装置200の実施の形態の例は、以上の例に限定されない。例えば、軸支されたローラを回転させ、このローラ表面に沿って記録媒体を搬送する、いわゆるオフセット印刷型のプリンタであってもよく、この場合にも同様の効果を奏する。
【0063】
本例では、光照射モジュール100を印刷装置200に組み込んだ例を示しているが、光照射デバイス1を印刷装置200に組み込むことも可能である。図11に光照射デバイス1を印刷装置200に組み込んだ場合の一例の要部断面図を示すが、記録媒体250に光照射デバイス1の一方面から出射される紫外線を照射した後に、搬送ローラ212によって記録媒体250を反転させ、光照射デバイス1の他方面から出射される紫外線を照射する機構とすることで、紫外線の積算光量を比較的多くすることができるとともに、紫外線照射装置の記録媒体250の送り方向における小型化を図ることができる。
【0064】
本例では、インクジェットヘッド220を用いた印刷装置200に光照射モジュール100を適用した例を示しているが、この光照射モジュール1は、例えば対象体表面にスピンコートした光硬化樹脂を硬化させる専用装置など、各種類の光硬化樹脂の硬化にも適用することができる。また、光照射モジュール1を、例えば露光装置における照射光源などに用いてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 光照射デバイス
10 基体
10a 第1基板
10b 第2基板
11 一方主面
12 貫通孔
13 接続パッド
14 内周面
15a 第1金属線
15b 第2金属線
20 発光素子
21 ベース基板
22 半導体層
23 第1素子電極
24 第2素子電極
30 封止材
40a 第1電力供給回路
40b 第2電力供給回路
50 熱伝導性接着剤
100 光照射モジュール
110 反射鏡
120 流路
200 印刷装置
210 搬送機構
211 載置台
212 搬送ローラ
220 インクジェットヘッド
220a 吐出孔
230 制御機構
250 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の貫通孔を有する基体と、前記貫通孔のそれぞれに収容される複数の発光素子とを備え、
前記基体は、前記複数の貫通孔を構成する複数の第1貫通孔を有する第1基板と、
該第1基板の両面にそれぞれ配置された、前記複数の第1貫通孔のそれぞれと連なって前記貫通孔を構成する、対応する前記第1貫通孔よりも太い複数の第2貫通孔を有する一対の第2基板と、
前記第1基板と前記一対の第2基板との間の少なくとも一方に配置された第1電力供給回路および第2電力供給回路とを有しており、
前記発光素子は、ベース基板と、
該ベース基板の上面に形成された、発光層を含む半導体層と、
前記ベース基板または前記半導体層に設けられた第1電極および第2電極とを有し、
前記発光素子は、熱伝導性接着剤を介して前記第1貫通孔の内壁に接着され、
前記第1電力供給回路と前記第1電極とが、および前記第2電力供給回路と前記第2電極とがそれぞれ第1金属線、および第2金属線を介して接続されていることを特徴とする光照射デバイス。
【請求項2】
前記第2貫通孔の径は、前記第1基板から遠ざかるにつれて漸次大きくなっていることを特徴とする請求項1に記載の光照射デバイス。
【請求項3】
前記第1金属線および第2金属線が導電性ペーストを用いて形成されており、前記第1金属線は、前記第1電力供給回路の上面と、前記第1電極の上面と、前記第1電力供給回路および前記第1電極の間に位置する前記熱伝導性接着剤の上面とを連続的に覆っており、前記第2金属線は、前記第2電力供給回路の上面と、前記第2電極の上面と、前記第2電力供給回路および前記第2電極の間に位置する前記熱伝導性接着剤の上面とを連続的に覆っていることを特徴とする請求項1または2に記載の光照射デバイス。
【請求項4】
前記熱伝導性接着剤、前記第1金属線および前記第2金属線が導電性ペーストを用いて形成されており、
前記熱伝導性接着剤は、
前記第1電力供給回路側の前記第1貫通孔の内壁と前記第1電極側の前記発光素子とを接着する第1熱伝導性接着剤と、
前記第2電力供給回路側の前記第1貫通孔の内壁と前記第2電極側の前記発光素子とを接着する第2熱伝導性接着剤とを有し、
前記第1熱伝導性接着剤と前記第1金属線とが、および前記第2熱伝導性接着剤と前記第2金属線とがそれぞれ一体的に形成されているとともに、
前記第1熱伝導性接着剤と前記第1金属線とが前記第1電力供給回路の上面と前記第1電極の上面とを、および前記第2熱伝導性接着剤と前記第2金属線とが前記第2電力供給回路の上面と前記第2電極の上面とをそれぞれ連続的に覆っていることを特徴とする請求項1または2に記載の光照射デバイス。
【請求項5】
前記第1基板の内部、前記第2基板の内部および前記第1基板と前記第2基板との間の少なくともいずれか1つに、冷媒が挿通可能な流路が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光照射デバイス。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光照射デバイスと、該光照射デバイスの両面のそれぞれに面して前記複数の発光素子からの光を前記基体の側面方向に反射するように配置された反射鏡とを有することを特徴とする光照射モジュール。
【請求項7】
記録媒体に対して印刷を行なう印刷手段と、
印刷された前記記録媒体に対して光を照射する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光照射デバイスまたは請求項6に記載の光照射モジュールとを有することを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−115377(P2013−115377A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262813(P2011−262813)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】