説明

光照射装置および光照射方法

【課題】光に反応する被照射体を簡易な構成で効率よく反応させることができる光照射装置および光照射方法を提供すること。
【解決手段】光に反応する被照射体に光を照射する光照射装置1は、被照射体に対向可能に設けられ、当該被照射体に光を照射する発光手段4と、被照射体と発光手段4とを相対移動させる移動手段3と、移動手段3により相対移動される被照射体に所定の気体を吹き付ける吹付手段5とを備え、移動手段3により被照射体と発光手段4とを相対移動させつつ、被照射体の被照射領域に吹付手段5により気体を吹き付けながら、発光手段4により当該被照射領域に光を照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光に反応する被照射体に光を照射する光照射装置および光照射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ(以下、単にウェハという場合がある)の処理装置においては、例えば、ウェハの回路面に保護テープを貼付して裏面研削を行ったり、ダイシングテープを貼付して複数のチップに個片化したりする処理が行われる。このような処理に使用されるテープには、接着剤に紫外線硬化型のものが採用されており、上記のような処理の後、紫外線照射装置により紫外線を照射して接着剤を硬化させることによって接着力を弱め、ウェハが破損しないように容易に剥離が行えるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の紫外線照射装置は、中央に凹部を有する載置台と、接着剤が大気中の酸素によって硬化阻害を受けないように、不活性ガスとしての窒素ガスを凹部内に供給する窒素供給装置と、紫外線光を発光する発光装置とを筐体内に備え、テープが貼付されたウェハを載置台に載置して凹部でテープ全体を覆い、このテープを凹部内の窒素ガスにさらした状態で、発光装置から当該テープに紫外線を照射するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−173450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の紫外線照射装置では、筐体の外部でウェハを載置台に載置し、この載置台を筐体内に収容した後で、凹部内に窒素ガスを供給し、テープに紫外線を照射するため、単位時間あたりの処理能力を高くすることができないという不都合がある。また、凹部内への給排気機構が複雑になったり、凹部内の気圧制御が複雑になったりするという不都合がある。
【0006】
本発明の目的は、光に反応する被照射体を簡易な構成で効率よく反応させることができる光照射装置および光照射方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明の光照射装置は、光に反応する被照射体に光を照射する光照射装置であって、前記被照射体に対向可能に設けられ、当該被照射体に光を照射する発光手段と、前記被照射体と前記発光手段とを相対移動させる移動手段と、前記移動手段により相対移動される被照射体に所定の気体を吹き付ける吹付手段とを備え、前記移動手段により前記被照射体と前記発光手段とを相対移動させつつ、被照射体の被照射領域に前記吹付手段により気体を吹き付けながら、前記発光手段により当該被照射領域に光を照射することを特徴とする。
【0008】
本発明の光照射装置において、前記吹付手段は、前記発光手段を包囲可能な包囲手段を備え、当該包囲手段を介して前記被照射体に気体を吹き付け可能に構成されていることが好ましい。
また、本発明の光照射装置において、前記吹付手段は、前記被照射体に吹き付ける気体を冷却または加熱する温度調節手段を備えていることが好ましい。
【0009】
一方、本発明の光照射方法は、光に反応する被照射体に光を照射する光照射方法であって、被照射体と発光手段とを相対移動させつつ、被照射体の被照射領域に所定の気体を吹き付けながら、当該被照射領域に光を照射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上のような本発明によれば、被照射体と発光手段とを相対移動させつつ、被照射体の被照射領域に所定の気体を吹き付けながら、発光手段により被照射領域に光を照射するため、被照射体を筐体内に一旦収容したり、被照射体全体を覆ったりする必要がない。このため、単位時間あたりの処理能力を高くすることができるとともに、装置全体の構成を簡素化することができる。従って、被照射体を簡易な構成で効率よく反応させることができる。
【0011】
本発明において、発光手段を包囲可能な包囲手段を介して被照射体に気体を吹き付け可能に構成すれば、包囲手段内を流れる気体により発光手段を冷却することができ、放出されるだけで無駄に消費されてしまう気体を有効利用することができる。
また、本発明において、被照射体に吹き付ける気体を冷却または加熱するように構成すれば、被照射体を反応に適した温度にすることができるので、被照射体をさらに効率よく反応させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光照射装置の側面図。
【図2】本発明の第2実施形態に係る光照射装置の側面図。
【図3】本発明の第3実施形態に係る光照射装置の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、第2実施形態以降において、次の第1実施形態で説明する構成部材と同じ構成部材および同様な機能を有する構成部材には、第1実施形態の構成部材と同じ符号を付し、それらの説明を省略または簡略化する。
また、各実施形態における明示のない例えば、上、下、左、右、または、手前、奥という方向を示す表現は、全て各実施形態を示した図を基準に用いられている。
【0014】
〔第1実施形態〕
図1に示すように、本実施形態の光照射装置1は、ウェハWの上側に位置する回路面に貼付された保護テープPTに光を照射するものである。ここで、ウェハWは、回路面とは反対側の面に貼付されたダイシングテープDTを介してリングフレームRFと一体化されている。保護テープPTは、基材シートBS1の一方の面に紫外線硬化型の被照射体としての接着剤層AD1が積層された構成を有し、当該接着剤層AD1を介してウェハWに貼付されている。ダイシングテープDTは、基材シートBS2の一方の面に紫外線硬化型の接着剤層AD2が積層された構成を有し、当該接着剤層AD2を介してウェハWに貼付されている。
【0015】
図1において、光照射装置1は、リングフレームRFと一体化されたウェハWを保持するテーブル2と、このテーブル2の下方に設けられた移動手段であって駆動機器としての単軸ロボット3と、保護テープPTに光を照射する発光手段4と、保護テープPTに気体を吹き付ける吹付手段5と、発光手段4の温度を検出する温度センサ6とを備えている。
【0016】
テーブル2は、図示しない複数の吸引口によってダイシングテープDT側からウェハWを吸着保持可能に構成されるとともに、単軸ロボット3のスライダ31を介して左右方向にスライド移動可能に構成されている。
【0017】
発光手段4は、断面円弧状の集光板41と、この集光板41の内面側に保持された発光ユニット42とを備えている。集光板41は、発光ユニット42が発光した光を集光して単軸ロボット3の移動方向に直交する方向に延びるライン光を形成し、保護テープPTの接着剤層AD1を被照射領域として当該被照射領域に紫外線領域の波長を含む波長の光を照射する。
【0018】
吹付手段5は、発光手段4を包囲する包囲手段としてのチャンバ51と、チャンバ51に連通する給気通路52と、給気通路52に接続された加圧ポンプ等の気体供給装置53と、給気通路52の途中に設けられ、気体供給装置53からの気体の供給タイミングおよび供給量を調節する開閉弁54と、同じく給気通路52の途中に設けられ、気体供給装置53からの気体を加熱または冷却可能な温度調節手段55とを備えている。この吹付手段5は、気体供給装置53からの気体を温度調節手段55を介してチャンバ51内に供給することで、チャンバ51内の発光手段4を冷却しつつ、チャンバ51の噴出口51Aから保護テープPTに気体を吹き付けるように構成されている。
【0019】
なお、本実施形態の場合、気体として窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスが採用されるが、気体としては、接着剤層AD1の硬化を妨げるものでなければ他のガスや混合気であってもよく、例えば、ドライアイスを気化させた二酸化炭素を用いてもよい。
また、温度調節手段55として、気体を加熱可能なものにはコイルヒータや赤外線ヒータ等が例示でき、気体を冷却可能なものにはフロンやペルチェ素子を備えた冷却装置が例示できる。
【0020】
次に、光照射装置1による光の照射動作について説明する。
先ず、光照射装置1は、単軸ロボット3によりウェハWが搬送されてきたことを図示しないセンサで検知すると、発光ユニット42に対して電力を供給するとともに、開閉弁54を開いてチャンバ51内への気体の供給を開始する。気体供給装置53から供給された気体は、チャンバ51内を通過することで発光手段4を冷却した後、噴出口51Aから噴出する。そして、光照射装置1は、ウェハWを吸着保持したテーブル2を左方向へ移動させることで、チャンバ51の噴出口51Aから保護テープPTに気体を吹き付けつつ、保護テープPTに紫外線光を含む光を照射して、保護テープPTの接着剤層AD1を硬化させる。
【0021】
ここで、発光手段4の温度は温度センサ6により検出されているため、発光手段4の温度が高い場合には、温度調節手段55により気体の温度を低下させることで、発光手段4を一段と冷却することができる。また、温度センサ6は、チャンバ51内の気体の温度も検出できるため、気体の温度が保護テープPTの光反応に適していない温度まで低下している場合には、温度調節手段55により気体の温度を上昇させることで、保護テープPTを確実に硬化させることができる。
そして、保護テープPTの接着剤層AD1の硬化が終了すると、ウェハWは、図示しない搬送装置によって次工程に搬送され、ウェハWの回路面から保護テープPTが剥離された後、ダイシング等の所定処理が施される。
【0022】
以上のような本実施形態によれば、次のような効果がある。
すなわち、光照射装置1は、保護テープPTと発光手段4とを相対移動させつつ、保護テープPTの接着剤層AD1における被照射領域に所定の気体を吹き付けながら、発光手段4により当該被照射領域に光を照射するため、保護テープPTが貼付されたウェハWを筐体内に一旦収容したり、保護テープPT全体を覆ったりする必要がない。このため、単位時間あたりの処理能力を高くすることができるとともに、光照射装置1全体の構成を簡素化することができる。従って、接着剤層AD1を簡易な構成で効率よく反応させることができる。
【0023】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態を図2に基づいて説明する。
本実施形態の光照射装置1は、ダイシングテープDTの接着剤層AD2が被照射体である点と、吹付手段5の構成とが前記第1実施形態と相違する。
【0024】
本実施形態の光照射装置1は、ウェハWの一方の面に貼付されたダイシングテープDTに光を照射するものである。ここで、ウェハWの上側に位置する回路面に貼付されていた保護テープPTは剥離され、ウェハWはダイシングにより個片化されたチップWEの状態でダイシングテープDTに貼付されている。
【0025】
光照射装置1は、ダイシングテープDTに光を照射する発光手段4と、ダイシングテープDTに気体を吹き付ける吹付手段5と、発光手段4の温度を検出する温度センサ6と、吸着パッドを有する移動手段であって駆動機器としての搬送ロボット7とを備えている。この光照射装置1は、発光手段4が基材シートBS2側からダイシングテープDTに光を照射するとともに、吹付手段5が接着剤層AD2側からダイシングテープDTに気体を吹き付けるように構成されている。
【0026】
吹付手段5は、発光手段4を包囲する包囲手段としての第1チャンバ56と、第1チャンバ56に連通する給気通路52と、給気通路52に接続された気体供給装置53と、給気通路52の途中に設けられた開閉弁54および温度調節手段55と、ダイシングテープDTを間に挟んで発光手段4と対向配置された第2チャンバ57と、この第2チャンバ57と第1チャンバ56とを連通する連通路58とを備えている。第1チャンバ56における発光手段4からの光が通る部分はガラス等の透明部材で構成されており、発光手段4からの光を透過させてダイシングテープDTに照射することができるとともに、第1チャンバ56内を通る気体が第1チャンバ56から外部に流出しないようになっている。
【0027】
以上の光照射装置1において、ダイシングテープDTに光を照射する手順としては、先ず、発光ユニット42に対して電力を供給するとともに、開閉弁54を開いて第1チャンバ56内への気体の供給を開始する。気体供給装置53から供給された気体は、第1チャンバ56内を通過することで発光手段4を冷却した後、連通路58を通って第2チャンバ57に流れ込み、噴出口57Aから噴出する。そして、光照射装置1は、チップWEが一体化されたリングフレームRFを搬送ロボット7により左方向へ移動させることで、噴出口57AからダイシングテープDTに気体を吹き付けつつ、ダイシングテープDTに紫外線光を含む光を照射して、ダイシングテープDTの接着剤層AD2を硬化させる。
【0028】
以上の本実施形態によっても、前記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、ダイシングテープDTに接着剤層AD2側から気体を吹き付けるため、発光手段4による光の照射中に接着剤層AD2の露出部分が空気中の酸素によって硬化が阻害されることを防止することができる。従って、当該露出部分を確実に硬化することができるので、接着剤層AD2が硬化されずにチップWEがダイシングテープDTから剥離できなくなることを防止することができる。なお、図中二点鎖線で示すように、第2チャンバ57内に第1チャンバ56と同様の発光手段4や温度センサ6を設けてもよい。
【0029】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態を図3に基づいて説明する。
本実施形態の光照射装置1は、発光手段4をチャンバ51により包囲していない点で前記第1および第2実施形態と相違する。
【0030】
図3において、光照射装置1は、ダイシングテープDTに光を照射する発光手段4と、ダイシングテープDTを挟んで発光手段4と対向配置され、当該ダイシングテープDTに気体を吹き付ける吹付手段5と、発光手段4の温度を検出する温度センサ6と、移動手段としての搬送ロボット7とを備えている。
【0031】
以上の本実施形態によっても、前記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、発光手段4が包囲手段により包囲されていないため、光照射装置1を簡易な構成とすることができとともに、発光ユニット42の交換等の発光手段4のメンテナンスを容易に行うことができる。なお、図中二点鎖線で示すように、チャンバ51内に発光手段4や温度センサ6を設けてもよい。
【0032】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。また、上記に開示した形状、材質等を限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質等の限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0033】
例えば、前記各実施形態では、発光手段4および吹付手段5に対して保護テープPTやダイシングテープDTを移動させていたが、これらテープPT,DTに対して発光手段4および吹付手段5を移動させてもよいし、テープPT,DTと発光手段4および吹付手段5との両方を移動させてもよい。
【0034】
前記各実施形態では、紫外線領域の波長を含む光を照射していたが、照射する光としてはこれに限られない。例えば、加熱によって軟化する被照射体が採用された場合は、赤外線であってよい。要するに、接着剤層が光と反応することができればよく、他の波長を含む光を用いてもよい。さらに、被照射体が貼付される被着体は、ガラス板、鋼板、樹脂板等や、その他の板状部材のみならず、任意の形態の部材や物品なども対象とすることができる。被着体が半導体ウェハである場合は、シリコン半導体ウェハや化合物半導体ウェハ等が例示できる。また、被照射体としては、保護テープPTを構成する接着剤層AD1やダイシングテープDTを構成する接着剤層AD2以外に樹脂、印刷用のインク等、所定の波長の光に反応するものであれば、いかなるものを適用してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 光照射装置
3 単軸ロボット(移動手段)
4 発光手段
5 吹付手段
7 搬送ロボット(移動手段)
51 チャンバ(包囲手段)
55 温度調節手段
56 第1チャンバ(包囲手段)
AD1,AD2 接着剤層(被照射体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光に反応する被照射体に光を照射する光照射装置であって、
前記被照射体に対向可能に設けられ、当該被照射体に光を照射する発光手段と、
前記被照射体と前記発光手段とを相対移動させる移動手段と、
前記移動手段により相対移動される被照射体に所定の気体を吹き付ける吹付手段とを備え、
前記移動手段により前記被照射体と前記発光手段とを相対移動させつつ、被照射体の被照射領域に前記吹付手段により気体を吹き付けながら、前記発光手段により当該被照射領域に光を照射することを特徴とする光照射装置。
【請求項2】
前記吹付手段は、前記発光手段を包囲可能な包囲手段を備え、当該包囲手段を介して前記被照射体に気体を吹き付け可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。
【請求項3】
前記吹付手段は、前記被照射体に吹き付ける気体を冷却または加熱する温度調節手段を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光照射装置。
【請求項4】
光に反応する被照射体に光を照射する光照射方法であって、
被照射体と発光手段とを相対移動させつつ、被照射体の被照射領域に所定の気体を吹き付けながら、当該被照射領域に光を照射することを特徴とする光照射方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−192313(P2012−192313A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56641(P2011−56641)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】