説明

光照射装置

【課題】マスク保持部材及びそのマスク保持部材に密着保持された遮光マスクを介して被照射物に光を照射する光照射装置において、マスク保持部材を平坦化する。
【解決手段】マスク保持部材22における周縁部22a以外の部分に固定された連結部35には、吊下部としてのワイヤ40が連結され、その連結部35をワイヤ40により吊り上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス等の光透過部材よりなるマスク保持部材に遮光マスクが保持される構成を備えた光照射装置に係り、詳しくは、液晶等のフラットパネルディスプレイ(FPD:Flat Panel Display)に用いる2枚の基板の貼り合わせ工程に使用する光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の光照射装置において、マスク保持部材の上方に設けられた光源からの光は、該マスク保持部材及びその下面に吸着保持された遮光マスクを介して、遮光マスク下方に配置される貼り合わせ基板に照射されるようになっている(例えば特許文献1参照)。このような光照射装置のマスク保持部材では、光源からの光の通過する部分を確保するために、マスク保持部材周縁部のみがマスクステージにて支持されている。これにより、マスク保持部材下面において遮光マスクを保持する保持面を広くとることができる。
【特許文献1】特開2006−66585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような光照射装置では、マスク保持部材を周縁部で支持しているため、該保持部材が自重によって撓んでしまうという問題が生じる。マスク保持部材が撓むと、その下面に遮光マスクを密着させ難くなり、吸着保持させるのが困難となる。また、遮光マスクはマスク保持部材に倣って撓んだ状態で吸着保持されるため、遮光マスクと貼り合わせ基板との間の間隔(プロキシミティギャップ)を、遮光マスクの撓みを考慮に入れた大きな値に設定する必要がある。このプロキシミティギャップが拡大した状態では、貼り合わせ基板に対するシャープな照射が難しくなり、遮光したい部分にも光が照射されてしまう虞がある。
【0004】
このようなマスク保持部材の撓みは、近年、大型化傾向にあるフラットパネルディスプレイの貼り合わせに用いる光照射装置において、パネルサイズの大型化に伴って遮光マスク及びマスク保持部材が大型になるため、特に顕著に現れてしまう。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、マスク保持部材及びそのマスク保持部材に密着保持された遮光マスクを介して被照射物に光を照射する光照射装置において、マスク保持部材を平坦化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、周縁部が支持されたマスク保持部材の下面に遮光マスクを密着保持し、前記遮光マスクの下方に配置される被照射板に対して、前記マスク保持部材の上方に設けられた光源から前記マスク保持部材及び前記遮光マスクを介して光を照射する光照射装置であって、前記マスク保持部材における前記周縁部以外の部分に連結されるとともに、その連結部を吊り上げる吊上部材を備えたことをその要旨とする。
【0007】
この発明では、マスク保持部材において自重により下方に撓む虞のある周縁部以外の部分に吊上部材が連結され、その吊上部材により連結部が上方に引き上げられるため、マスク保持部材を平坦化することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光照射装置において、前記吊上部材は、前記マスク保持部材より上方に設けられた保持部と、該保持部に吊下保持され下端が前記マスク保持部材と連結された吊下部とからなることをその要旨とする。
【0009】
この発明では、吊上部材は、マスク保持部材より上方に設けられた保持部と、該保持部に吊下保持され下端がマスク保持部材と連結された吊下部とからなるため、マスク保持部材における吊下部との連結部を上方に引き上げてマスク保持部材の平坦化が可能となる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の光照射装置において、前記遮光マスクは交換可能であり、前記吊下部は、前記マスク保持部材に保持可能な複数種類の遮光マスクにおいて共通に遮光される領域の上方に設けられたことをその要旨とする。
【0011】
この発明では、遮光マスクをマスクパターンの異なるものに交換した場合に、光源から出射される光のうち遮光マスクを通過させて被照射物に照射すべき光を、吊下部が遮ってしまうことを防止することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の光照射装置において、前記吊下部は、水平方向に移動可能に設けられたことをその要旨とする。
この発明では、遮光マスクの交換時におけるズレ等によって、光を透過させる領域の上方に吊下部が配置されてまった場合に、吊下部の設置位置を遮光マスクにおいて遮光される領域の上方に移動させることが可能となる。また、マスクパターンが新規な遮光マスクを使用する場合においても、吊下部を遮光される領域の上方に移動させることが可能となる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4のいずれか1項に記載の光照射装置において、前記吊下部はワイヤであり、前記吊上部材には、前記ワイヤを上方に向かって付勢する付勢部材が設けられたことをその要旨とする。
【0014】
この発明では、ワイヤの熱伸び等によりマスク保持部材が下方に撓むことが抑制される。
請求項6に記載の発明は、請求項2〜4のいずれか1項に記載の光照射装置において、前記吊下部は、真空吸着により前記マスク保持部材と連結されたことをその要旨とする。
【0015】
この発明では、マスク保持部材を吊下部に容易に着脱させることが可能である。また、マスク保持部材に吊上部材への連結用部材を設ける必要がなくなるため、吊上部材を水平方向に移動可能に構成した場合に、マスク保持部材はそのままのものを用いて連結位置(吸引位置)を変更することができる。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項2〜6のいずれか1項に記載の光照射装置において、前記光源は、前記保持部の上方において水平方向に移動可能に設けられるものであり、前記光源とともに移動し前記保持部下方の箇所を照射する補助光源を備えたことをその要旨とする。
【0017】
この発明では、主となる光源の下方に設けられた保持部によって照射されにくい箇所に対し補助光源が補完的に照射するため、その主光源からの光の不足分を補うことができ、その結果、照射ムラを抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
従って、上記記載の発明によれば、マスク保持部材及びそのマスク保持部材に密着保持された遮光マスクを介して被照射物に光を照射する光照射装置において、マスク保持部材を平坦化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、液晶ディスプレイ(LCD)のパネルを製造するパネル製造装置に用いられる紫外線照射装置に本発明を具体化した第1実施形態を図面に従って説明する。
【0020】
図1に示す紫外線照射装置は、液晶パネルを構成する貼り合わせ基板W(図中、中央上部)の間に介在された紫外線硬化性樹脂よりなるシール材(図示略)に紫外線を照射することで、そのシール材を硬化させるためのものである。尚、シール材が介在された貼り合わせ基板Wは、パネル製造装置におけるシール材塗布工程、液晶滴下工程及びプレス工程にて成形されるものである。これらの工程により、貼り合わせ基板W間にはシール材が板面に沿って枠状に形成され、そのシール材の枠中には滴下された液晶(図示略)が存在している。
【0021】
図1に示すように、平面をなす基部1上には上記プレス工程後に搬送される貼り合わせ基板Wを載置するためのワークステージ部11が設けられている。ワークステージ部11下段のワーク移動機構12は、基部1上面に沿う方向に移動可能に設けられるとともに、基部1上面に対し水平方向に回転可能に設けられている。ワーク移動機構12の上段にはワークステージ部11の上下動作を行うための駆動部13が設けられている。駆動部13には一対のリフトピン14が立設されるとともに、リフトピン14の上下方向中間位置には各リフトピン14に跨る支持台15が固定されている。駆動部13における各リフトピン14の間には、支持台15に挿通された柱状の可動部16が上下方向に移動可能となるように設けられている。
【0022】
可動部16の上端には載置台としてのワークステージ本体17が固定されるとともに、そのワークステージ本体17の上面には平面状をなす載置面17aが形成されている。ワークステージ本体17は、上記ワーク移動機構12の動作に伴って平面移動及び回転するとともに、可動部16の動作に伴って上下移動するようになっている。ワークステージ本体17にはリフトピン14がそれぞれ挿通される挿通孔17bが貫通形成されるとともに、挿通孔17bの両側位置には貫通孔17cがそれぞれ形成されている。尚、貫通孔17cの開口下端は透明板17dによって閉塞されている。また、貫通孔17c下端と透明板17dとの間、及び挿通孔17bとリフトピン14との間はそれぞれ封止されている。照射加工時において、このようなワークステージ本体17の載置面17aに上記貼り合わせ基板Wが載置される。
【0023】
ワークステージ部11の周囲において基部1に立設されたマスクステージ21は、その上端部が内側に屈曲されるとともに、該上端部には矩形状の開口21aが形成されている。マスクステージ21は、その側方から上記貼り合わせ基板Wを挿入してワークステージ本体17に載置可能となるように設けられている。また、マスクステージ21の上下方向中間位置において内側に延出するように設けられた一対の支持部21bにはそれぞれ、前記ワークステージ部11の位置合わせを行うためのアライメントカメラ21cが前記貫通孔17cの真下位置で固定されている。
【0024】
マスクステージ21の上部には、矩形板状の高透過ガラスよりなるマスク保持部材22が開口21aを覆うように着脱可能に固定されている。このマスク保持部材22は、水平方向において開口21aよりも若干大きなサイズに形成されるとともに、その周縁部22a全体に亘ってマスクステージ21により支持されている。尚、本実施形態では、マスク保持部材22は平面視において、一辺長さが2000mm以上に形成されるとともに、その板厚は15mm〜20mmに形成されている。図1では、説明の便宜のため、マスク保持部材22の板厚を誇張して図示している。
【0025】
マスク保持部材22の下面22bには枠状をなす吸着溝23が形成されるとともに、マスク保持部材22には吸着溝23内を減圧可能に接続された真空ポンプ(図示略)が接続されている。マスク保持部材22の下面22bには、吸着溝23全体を覆うように配置された板状の遮光マスク24が、その吸着溝23の減圧により吸着保持されている。尚、遮光マスク24は光透過性の板状部材の下面に所定のマスクパターンが形成されてなる。このような遮光マスク24は、貼り合わせ基板Wの種類に応じた複数種類のものが用意され、貼り合わせ基板Wの種類の変更に応じて交換可能となっている。
【0026】
マスク保持部材22の上方には、図示しない筐体に支持固定されたランプハウス25が配置されるとともに、そのランプハウス25内には光源(紫外線源)としてのランプ26が取り付けられている。ランプ26から下方に出射された紫外線は、遮光マスク24によって一部遮光され、前記貼り合わせ基板Wのシール材のみに紫外線が照射されるようになっている。
【0027】
ランプハウス25の上方において前記筐体に支持された保持部としての固定ベース31には、吊下部としてのワイヤ40を固定するための固定部32が設けられている。尚、固定部32はマスク保持部材22の上方において2×3の6つ(図1においては2つのみ図示)が設けられている。固定部32には、下端が固定ベース31に当接する付勢部材としての圧縮コイルバネ33が設けられるとともに、そのバネ33の上端は上下方向に移動可能に設けられた係合部34と当接している。この圧縮コイルバネ33は固定ベース31と係合部34との間において圧縮状態で介在されている。
【0028】
各固定部32の係合部34にはそれぞれワイヤ40の上端が固定されるとともに、各ワイヤ40は固定ベース31及びランプハウス25を貫通して吊り下げられている。そして、各ワイヤ40の下端はそれぞれ、マスク保持部材22上面に接着固定された連結部35に対し、リング36を介して着脱可能に固定されている。尚、固定ベース31及びワイヤ40が吊上部材を構成している。各連結部35はそれぞれ各固定部32の真下位置に設けられるとともに、マスク保持部材22の周縁部22a以外の部分に設けられている。また、各連結部35はマスク保持部材22の水平方向中心に対して対称的に設けられている。尚、ワイヤ40の長さは固定部32及び連結部35間の距離を考慮して設定されるとともに、このワイヤ40による引っ張り力は、マスク保持部材22の水平状態を保つような大きさに設定されている。
【0029】
また、ワイヤ40及び連結部35は、マスク保持部材22に保持可能な前記複数種類の遮光マスクにおいて共通に遮光される領域の上方に設けられている。これにより、遮光マスク24をマスクパターンの異なるものに交換した場合に、ランプ26から出射される光のうち遮光マスク24を通過させて貼り合わせ基板Wのシール材に照射すべき紫外線を、ワイヤ40及び連結部35が遮ってしまうことが防止される。
【0030】
上記のように、遮光マスク24を保持するマスク保持部材22は、その周縁部22aがマスクステージ21にて支持されるとともに、連結部35には固定部32から吊り下げられたワイヤ40により上方への引っ張り力が付与されている。これにより、周縁部22a以外の部分が自重により下方に撓むことなく、マスク保持部材22は平坦化されている。また、係合部34に固定されたワイヤ40は、前記圧縮コイルバネ33によって上方への引っ張り力が付与されている。これにより、ワイヤ40が熱膨張等により上下方向に伸びてしまった場合に、バネ33がワイヤ40を上方に引き上げるため、マスク保持部材22が下方に撓んでしまうことが防止されている。
【0031】
図2(a)(b)はそれぞれ、従来の紫外線照射装置と本実施形態の紫外線照射装置とにおけるマスク保持部材の下方への撓みの分布を示す模式図である。尚、図2(a)と図2(b)とにおいて、撓みの様子を同様な階調で示しているが、それらのスケールは異なるものである。図2(a)に示すように、マスク保持部材41の周縁部41aのみが支持された従来の紫外線照射装置では、マスク保持部材41の下方への撓み量(周縁部41aを基準とする変形量)が周縁部41aから中央にかけて徐々に大きくなっており、マスク保持部材41の中心部で撓み量が最大となっている。本実施形態のような平面サイズに対して板厚が薄いマスク保持部材(1辺2000mm以上、板厚15mm〜20mm)を支持する場合、その最大撓み量は6〜7mm程度に及ぶ。
【0032】
一方、図2(b)に示すように、本実施形態の紫外線照射装置では、マスク保持部材22の周縁部22aからやや内側にかけて微少ながら撓んでいるが、その撓み量はワイヤ連結部分35aに近づくにつれて減少し、該連結部分35aは周縁部22aと同じ高さ(撓み量0mm)となっている。図2(b)において、最も濃い階調で示す部分が最も撓み量が大きい部分であるが、その撓み量は0.1〜0.2mm程度であり、マスク保持部材22は略水平な状態が保たれている。
【0033】
尚、このようなマスク保持部材22に遮光マスク24を吸着保持させる際には、遮光マスク24を載置したワークステージ本体17を上昇させて、遮光マスク24をマスク保持部材22の下面22bに当接させた後、吸着溝23内を前記真空ポンプにより減圧する。これにより、遮光マスク24とマスク保持部材22との間に残存する空気が吸着溝23に吸い込まれ、遮光マスク24が吸着保持される。このとき、上記したように、マスク保持部材22はワイヤ40の吊り上げによって撓みが抑制されているため、マスク保持部材22の下面22bに遮光マスク24が密着し易くなり、その結果、遮光マスク24を吸着保持させ易くなっている。
【0034】
尚、マスク保持部材22の着脱の際には、ワークステージ本体17を上昇させ、その載置面17aとマスク保持部材22の下面22bとを当接させることで、ワークステージ本体17がマスク保持部材22を下方から支持するようになっている。
【0035】
次に、本実施形態の特徴的な作用効果を記載する。
(1)マスク保持部材22における周縁部22a以外の部分に固定された連結部35には吊下部としてのワイヤ40が連結され、その連結部35はワイヤ40により吊り上げられる。これにより、マスク保持部材22における連結部35がワイヤ40によって上方へ引き上げられるため、マスク保持部材22を平坦化することができる。
【0036】
(2)遮光マスク24は交換可能であり、ワイヤ40及び連結部35はマスク保持部材22に保持可能な複数種類の遮光マスクにおいて共通に遮光される領域の上方に設けられる。このため、遮光マスク24をマスクパターンの異なるものに交換した場合に、ランプ26から出射される光のうち遮光マスク24を通過させて貼り合わせ基板Wのシール材に照射すべき紫外線を、ワイヤ40及び連結部35が遮ってしまうことを防止することができる。
【0037】
(3)固定部32にはワイヤ40を上方に向かって付勢する付勢部材としての圧縮コイルバネ33が設けられるため、ワイヤの熱伸び等によってマスク保持部材22が下方に撓むことが防止される。
【0038】
(4)ワイヤ40を保持するための固定ベース31はランプ26の上方に設けられるため、固定ベース31がランプ26から出射される紫外線を遮ってしまうことが防止される。
【0039】
(5)マスク保持部材22はワイヤ40に着脱可能に連結されるため、マスク保持部材22が劣化した場合等に、マスク保持部材22を容易に交換することができる。
尚、上記第1実施形態は、以下のように変更してもよい。
【0040】
・上記実施形態では、吊下部としてワイヤ40を用いたが、これ以外に例えば、図3に示すような構成としてもよい。図3に示すように、保持部としての固定ベース31上の所定位置において水平方向に移動可能に設けられた固定部51には、真空管52が保持されている。真空管52はその上端が図示しない真空ポンプに接続されるとともに、下端が真空パッド53に連通されている。尚、真空管52及び真空パッド53が吊下部を構成している。また、固定部51(昇降手段)は真空管52及び真空パッド53を昇降可能に構成されている。真空パッド53はマスク保持部材22の上面と当接された状態でその内部が真空ポンプにより減圧され、これにより、マスク保持部材22を吸着保持している。尚、昇降手段としての固定部51が真空管52及び真空パッド53を昇降させることで、真空パッド53とマスク保持部材22との連結部に上下方向への力を付与することが可能となっている。この構成によれば、吊下部を構成する真空管52及び真空パッド53は、真空吸引によりマスク保持部材22と連結されるため、マスク保持部材22の着脱を容易にすることが可能である。また、真空管52を保持する固定部51が水平方向に移動可能に設けられるため、遮光マスク24の交換時におけるズレ等によって、光を透過させる領域の上方に真空管52及び真空パッド53が配置されてまった場合に、それらの設置位置を遮光マスク24において遮光される領域の上方に移動させることが可能となる。また、マスクパターンが新規な遮光マスクを使用する場合においても、真空管52及び真空パッド53を遮光される領域の上方に移動させることが可能となる。さらに、マスク保持部材22の上面に吊上部材への連結用部材を設ける必要がなくなる。尚、上記実施形態おいて、固定部32を水平方向に移動可能に設けるとともに、連結部35をマスク保持部材22の上面に真空吸着により着脱可能に設けても、上記と同様な作用効果が得られる。また、例えば、マスク保持部材22に吸着保持された遮光マスク24を取り外す際に、マスク保持部材22を上下方向に敢えて撓ませることで、遮光マスク24を剥離させやすくすることが可能である。
【0041】
(第2実施形態)
以下、本発明を具体化した第2実施形態を図面に従って説明する。
本実施形態の紫外線照射装置は、光源を水平方向に走査させるランプスキャン方式のものであり、前記第1実施形態の紫外線照射装置と比べて、光源及び保持部の構成を中心として変更されている。従って、以下には、その光源及び保持部を中心に説明し、前記第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0042】
図4(a)(b)に示すように、マスクステージ21の上面に設けられた一対の支持部61には、保持部としての柱状の保持梁62が掛け渡されて固定されている。保持梁62上面の所定位置には固定部63が固定されるとともに、該固定部63には保持梁62を貫通して吊り下げられた吊下部としてのワイヤ64の上端が固定されている。ワイヤ64の下端は、第1実施形態と同様に、マスク保持部材22上面に接着固定された連結部35に対し、リング36を介して着脱可能に固定されている。マスク保持部材22は、前記第1実施形態と同様に、その周縁部22aがマスクステージ21にて支持されるとともに、連結部35にはワイヤ64によって上方への引っ張り力が付与されている。これにより、マスク保持部材22の自重による撓みが抑制されている。
【0043】
図4(b)は、図4(a)の紫外線照射装置を水平方向に90°反転させた概略図である。図4(b)に示すように、マスクステージ21の上面に設けられた一対の走査ステージ71には、保持梁62の上方及び側方を覆うようにランプハウス72が掛け渡されている。ランプハウス72の掛け渡し方向は、保持梁62の掛け渡し方向と直交するとともに、該ランプハウス72は、図4(b)において紙面直交方向(図4(a)において左右方向)に移動可能に構成されている。ランプハウス72内には、光源(紫外線源)としてのランプ73が設けられており、該ランプ73から出射された紫外線はマスク保持部材22及び遮光マスク24を介してその下方に配置された貼り合わせ基板W(図1参照)に照射されるようになっている。また、ランプハウス72には下方に延びる支持部74が固定されるとともに、その下端には補助光源としての補助ランプ75が設けられている。この補助ランプ75は、保持梁62の下方の箇所を照射するように設けられている。
【0044】
貼り合わせ基板Wへの紫外線照射加工時において、ランプハウス72は水平方向(図4(a)において右から左)に走査しつつ、ランプ73及び補助ランプ75から紫外線を出射する。尚、ランプ73とともに補助ランプ75も水平方向に移動する。このとき、補助ランプ75は、保持梁62によってランプ73から出射された紫外線が照射されにくい箇所に対して補完的に照射するため、そのランプ73からの光の不足分を補うことができ、その結果、照射ムラを抑えることができる。
【0045】
本実施形態の紫外線照射装置は、前記第1実施形態の紫外線照射装置と比べて若干の変更点はあるが、前記第1実施形態で記載した作用効果を有している。
尚、上記各実施形態は、以下のように変更してもよい。
【0046】
・上記第1実施形態では、ワイヤ40を上方に向かって付勢する付勢部材として圧縮コイルバネ33が設けられたが、これに限定されるものではない。
・上記第1実施形態では、6つの吊上部材(ワイヤ40)が設けられたが、これに限定されるものではなく、例えば1つ〜5つ、又は7つ以上設けてもよい。
【0047】
・上記第2実施形態では、固定部63は保持梁62に固定されたが、水平方向に移動可能に設けてもよい。
・上記第2実施形態では、吊下部としてワイヤ64が用いられたが、上記したような真空管52及び真空パッド53(図3参照)を用いてもよい。
【0048】
・上記各実施形態では、連結部35はマスク保持部材22の上面に接着固定されたが、これに限定されるものではなく、例えば吸着固定でもよい。この構成によれば、マスク保持部材22上面における連結部35の設置位置を容易に変更可能となる。
【0049】
・上記各実施形態では、マスクステージ21は、その上部に開口21aが形成され、マスク保持部材22の周縁部22a全体に亘って支持したが、特にこれに限定されるものではなく、例えば、マスクステージ21をマスク保持部材22の周囲四方に設け、マスク保持部材22の周縁部22aを部分的に支持してもよい。
【0050】
・上記各実施形態では、マスク保持部材22の周縁部22aはマスクステージ21により支持されたが、これに限定されるものではなく、例えば吊下支持でもよい。
・上記各実施形態では、マスク保持部材22は板状矩形をなしたが、これ以外に例えば、板状円形でもよい。また、マスク保持部材22の大きさに関しても上記各実施形態に限定されるものではない。
【0051】
・上記各実施形態では、液晶ディスプレイのパネルを製造するパネル製造装置に用いられる紫外線照射装置に本発明を適用したが、これに限らず、液晶以外のフラットパネルディスプレイのパネル製造装置でもよく、また、紫外線以外の例えば可視光を照射する光照射装置に本発明を適用してもよい。
【0052】
次に、上記各実施形態及び別例から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ) 吊上部材を昇降させてマスク保持部材に上下方向への力を付与する昇降手段を備える。
【0053】
この構成によれば、例えばマスク保持部材に吸着保持された遮光マスクを取り外す際に、マスク保持部材を上下方向に敢えて撓ませることで、遮光マスクを剥離させやすくすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1実施形態の紫外線照射装置を示す概略図。
【図2】(a)従来の紫外線照射装置におけるマスク保持部材の撓みを示す模式図、(b)第1実施形態の紫外線照射装置におけるマスク保持部材の撓みを示す模式図。
【図3】別例の紫外線照射装置示す概略図。
【図4】(a)(b)第2実施形態の紫外線照射装置を示す概略図。
【符号の説明】
【0055】
W…被照射板としての貼り合わせ基板、22…マスク保持部材、22a…周縁部、24…遮光マスク、26,73…光源としてのランプ、31…吊上部材を構成する保持部としての固定ベース、32…固定部、33…付勢部材としての圧縮コイルバネ、35…連結部、40,64…吊下部としてのワイヤ、51…固定部、52…吊下部を構成する真空管、53…吊下部を構成する真空パッド、62…吊上部材を構成する保持部としての保持梁、75…補助光源としての補助ランプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周縁部が支持されたマスク保持部材の下面に遮光マスクを密着保持し、前記遮光マスクの下方に配置される被照射板に対して、前記マスク保持部材の上方に設けられた光源から前記マスク保持部材及び前記遮光マスクを介して光を照射する光照射装置であって、
前記マスク保持部材における前記周縁部以外の部分に連結されるとともに、その連結部を吊り上げる吊上部材を備えたことを特徴とする光照射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光照射装置において、
前記吊上部材は、前記マスク保持部材より上方に設けられた保持部と、該保持部に吊下保持され下端が前記マスク保持部材と連結された吊下部とからなることを特徴とする光照射装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光照射装置において、
前記遮光マスクは交換可能であり、
前記吊下部は、前記マスク保持部材に保持可能な複数種類の遮光マスクにおいて共通に遮光される領域の上方に設けられたことを特徴とする光照射装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の光照射装置において、
前記吊下部は、水平方向に移動可能に設けられたことを特徴とする光照射装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の光照射装置において、
前記吊下部はワイヤであり、
前記吊上部材には、前記ワイヤを上方に向かって付勢する付勢部材が設けられたことを特徴とする光照射装置。
【請求項6】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の光照射装置において、
前記吊下部は、真空吸着により前記マスク保持部材と連結されたことを特徴とする光照射装置。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか1項に記載の光照射装置において、
前記光源は、前記保持部の上方において水平方向に移動可能に設けられるものであり、
前記光源とともに移動し前記保持部下方の箇所を照射する補助光源を備えたことを特徴とする光照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−58630(P2009−58630A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224218(P2007−224218)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】