光照射装置
【課題】回折光学素子により照射範囲を制御するとともに多品種に展開することが容易であって、多品種で量産することが比較的容易である光照射装置を提供する。
【解決手段】光照射装置は、発光ダイオードからなる発光素子1と、発光素子1から放射された光を透過させ回折により光の伝播方向を制御する回折光学素子2とを備える。回折光学素子2は、回折ディフューザであって、入射光を回折させる格子パターンが形成された少なくとも1個の基本格子3からなり、基本格子3は、複数個の基本格子3を一体に配列した格子基板から切り離して形成されている。
【解決手段】光照射装置は、発光ダイオードからなる発光素子1と、発光素子1から放射された光を透過させ回折により光の伝播方向を制御する回折光学素子2とを備える。回折光学素子2は、回折ディフューザであって、入射光を回折させる格子パターンが形成された少なくとも1個の基本格子3からなり、基本格子3は、複数個の基本格子3を一体に配列した格子基板から切り離して形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子から放射された光の照射範囲を回折光学素子により制御する光照射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、発光素子から放射された光の強度プロフィールを所望形状とするために、回折光学素子を用いることが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1には、2枚のレンズの間に回折光学素子を配置した装置が記載され、一方のレンズを通して回折光学素子に入射した楕円形状の強度プロフィールを持つ光を、矩形の強度プロフィールを持つ光に整形する旨の記載がある。また、回折光学素子が回折ディフューザを含むことが記載されている。すなわち、特許文献1は、光を照射する際の形状や強度分布を制御するために回折光学素子を利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−199088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、回折光学素子は、発光素子が放射する光に対して透明な材料からなる基材の表面に、光を回折させるように格子パターンが形成されている。格子パターンは、微細な凹凸や、微細なスリットにより形成されている。また、この種の回折光学素子は、発光素子の発光面に合わせて1枚ずつ形成されている。そのため、多品種で量産することが難しいという問題を有している。
【0005】
本発明は、回折光学素子により照射範囲を制御するとともに多品種に展開することが容易であって、多品種で量産することが比較的容易である光照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、発光素子と、発光素子から放射された光を透過させ回折により光の伝播方向を制御する回折光学素子とを備え、回折光学素子は、入射光を回折させる格子パターンが形成された少なくとも1個の基本格子からなり、基本格子は、複数個の基本格子を一体に配列した格子基板から切り離して形成されていることを特徴とする。
【0007】
この光照射装置において、回折光学素子は回折ディフューザであって、格子基板は格子パターンが2次元で周期的に形成されており、基本格子は1周期の整数倍の格子パターンを含むことが好ましい。
【0008】
この光照射装置において、回折光学素子は、入射面と出射面との両面に回折を生じる格子パターンが形成されていることが好ましい。
【0009】
この光照射装置において、発光素子と回折光学素子との間に配置され発光素子からの光線束を集める収束光学素子をさらに備えることが好ましい。
【0010】
この光照射装置において、収束光学素子は、回折レンズであることがさらに好ましい。
【0011】
この光照射装置において、回折レンズは、複数個の回折レンズを一体に配列したレンズ基板から切り離して形成されていることがさらに好ましい。
【0012】
この光照射装置において、回折光学素子を複数枚備え、回折光学素子は、発光素子から放射された光が順に透過するように配置されていることが好ましい。
【0013】
この光照射装置において、回折光学素子は、互いに重ね合わされていることがさらに好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の構成によれば、回折光学素子により照射範囲を制御するとともに多品種に展開することが容易であり、多品種で量産することが比較的容易になるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1を示す分解斜視図である。
【図2】同上に用いる回折光学素子の例を示す正面図である。
【図3】同上の構成例を示す断面図である。
【図4】同上に用いる格子基板を示す斜視図である。
【図5】同上の他の構成例を示す分解斜視図である。
【図6】同上に用いる格子基板の構成例を示す断面図である。
【図7】同上の構成例を示す断面図である。
【図8】同上の構成例を示す断面図である。
【図9】実施形態2を示す分解斜視図である。
【図10】同上を示す概略断面図である。
【図11】同上の構成例を示す断面図である。
【図12】同上の他の構成例を示す分解斜視図である。
【図13】実施形態3を示す分解斜視図である。
【図14】実施形態4に用いる格子基板を示す断面図である。
【図15】(a)(b)はそれぞれ同上の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態1)
本実施形態の光照射装置は、図1に示すように、発光素子1と回折光学素子2とを用いて形成されている。回折光学素子2は、発光素子1の発光面に重ねて配置され、発光素子1から放射された光を透過させる際に、回折を利用して光の伝播方向を制御するように格子パターンが形成されている。この種の回折光学素子2は、DOE(=Digital Optical Element)と呼ばれている。ここに、回折光学素子2は発光素子1の発光面から離して配置されるが、回折光学素子2を発光素子1の発光面に密着させてもよい。発光素子1は、発光ダイオードを想定しているが、有機EL素子、半導体レーザなどでもよい。
【0017】
回折光学素子2は、発光素子1から放射された光を透過させるために、発光素子1から放射される光に対して透明な材料が基材として選択されている。すなわち、発光素子1が赤外領域の光を放射する場合、合成樹脂(ポリエチレンなど)やシリコンなどを基材に用いることが可能であり、発光素子1が紫外領域の光を放射する場合、石英ガラスなどを基材に用いることが可能である。発光素子1が可視光域の光を放射する場合は、ガラスや合成樹脂(ポリカーボネートなど)を基材に用いることが可能である。
【0018】
また、回折光学素子2は、図2に示すように、格子パターンが形成された少なくとも1個の基本格子3を備える。基本格子3は、基材の表面に光を回折させる格子パターンとして微細な凹凸が形成されている。基材として合成樹脂が用いられる場合、基材を成形することにより、回折光学素子2として必要な格子パターンが形成される。
【0019】
図2(a)に示す回折光学素子2は、回折ディフューザを形成するように基本格子3の格子パターンが設定されている。図2(a)に示す例では、回折光学素子2は、複数個(図示例では25個)の基本格子3が一体に配列されている。すなわち、回折光学素子2は、縦横に同数個(図示例は5個)ずつの基本格子3が配列された形状を有している。なお、基本格子3の個数は、発光素子1の発光面の形状や出射する光線束の断面形状に応じて適宜に設定される。なお、基本格子3の個数は1個であってもよい。
【0020】
図2(a)に示す回折光学素子2は、回折ディフューザを形成するために、光軸を有していないから、回折光学素子2を構成する基本格子3の個数は任意である。また、この回折光学素子2には光軸が設けられないから、発光素子1に対して回折光学素子2の位置がずれていたとしても光の伝播方向に対する影響はほとんど生じない。たとえば、発光素子1の発光面よりも面積が大きい回折光学素子2を用いることも可能である。
【0021】
一方、図2(b)に示す回折光学素子2は、所望の断面形状の平行光線束を出射するビーム整形素子を形成するように格子パターンが設定されている。つまり、基本格子3は中央に光軸を有し、回折光学素子2を透過した光の断面形状が、たとえば、円形、楕円形、長方形など光軸を対称軸とする適宜の形状になる格子パターンが設定される。この種の格子パターンは、フレネル型DOEとして知られている。また、図2(b)に示す回折光学素子2は光軸を有しているから基本格子3を1個だけ備えている。この回折光学素子2は、基本格子3の光軸を発光素子1の発光面の中央に一致させるように配置される。
【0022】
回折光学素子2を発光素子1と組み合わせた光照射装置は、たとえば図3に示す構造になる。図示例では、発光素子1は一面に開口窓11を備えた器体10の中に配置され、回折光学素子2は開口窓11を覆うように器体10に取り付けられている。器体10は不透明材料により形成される。なお、図示例では、回折光学素子2において格子パターン20が形成された面が発光素子1に対面するように、回折光学素子2を器体10に取り付けている。
【0023】
ところで、回折光学素子2は、図4に示すように、複数個の回折光学素子2を一体に配列した格子基板4から切り離して形成される。図示例の格子基板4は、9×9個の回折光学素子2を一体に配列して形成されており、必要な個数(本実施形態では、5×5個)の基本格子3を格子基板4から切り離すことにより、回折光学素子2が形成される。したがって、図4に示す格子基板4からは、25個の基本格子3を備えた回折光学素子2を81個切り出すことができる。
【0024】
なお、格子基板4における個々の回折光学素子2の間には切り代を設けておくことが好ましい。上述したように、あらかじめ成形した格子基板4から切り出して回折光学素子2を形成しているから、1個ずつの回折光学素子2を成形する場合に比較すると、成形に要する時間が短縮されることになる。その結果、回折光学素子2を個々に成形する場合に比較すると、1個の回折光学素子2を形成するのに要する時間が短縮される。すなわち、回折光学素子2の生産性が高まることになる。
【0025】
回折光学素子2が回折ディフューザである場合、上述した構成のように、基本格子3を複数個用いることが可能であるから、発光素子1の発光面のサイズに応じて適宜のサイズになるように格子基板4から切り離して回折光学素子2が形成される。すなわち、格子基板4を加工可能な最大サイズで形成し、一方、格子基板4を形成する基本格子3は格子パターンを同形状として比較的小さいサイズで形成しておくことが望ましい。このような格子基板4を用いると、発光素子1の発光面のサイズが異なっていても適宜サイズの回折光学素子2を形成して発光素子1に適合させることが可能になる。
【0026】
格子基板4を形成するすべての基本格子3を同形状に形成する場合、個々の基本格子3がそれぞれ独立して回折ディフューザとして機能するように形成されていることが望ましい。すなわち、各基本格子3に形成される格子パターンが周期構造を有し、回折ディフューザとして機能させるのに必要な1周期の整数倍の格子パターンが1個の基本格子3に形成されていることが好ましい。この場合、格子基板4には複数周期の格子パターンが2次元で配列されることになる。
【0027】
格子パターンの1周期のサイズは、発光素子1の発光面から放射された光が回折光学素子2に投影されるサイズに応じて決定される。すなわち、回折光学素子2に投影されるサイズよりも1周期のサイズが小さくなるように格子パターンが設定される。なお、発光素子1の発光面が正方形である場合を想定しているが、長方形、円形、楕円形などである場合でも同様であって、格子パターンの1周期のサイズは、発光素子1から回折光学素子2に光が投影されるサイズよりも小さく設定される。
【0028】
上述の構成によって、回折光学素子2を格子基板4から切り出す部位にかかわらず、格子基板4から切り出された回折光学素子2のサイズが等しければ、その回折光学素子2には同周期分の格子パターンが含まれることになる。ただし、切り代は無視する。回折ディフューザとして機能させる場合、格子パターンの位相は影響しないから、回折光学素子2のサイズが等しければ、格子パターンの位相が異なっていても回折ディフューザとして同機能が得られる。すなわち、格子基板4から回折光学素子2を切り出す際に、サイズに着目するだけで、切り出す位置を考慮する必要がないから、回折光学素子2の製造が容易になる。
【0029】
上述のように、複数の基本格子3を2次元配列することにより周期構造の格子パターンを形成した格子基板4から回折光学素子2を切り出す構成では、図5に示すように、回折光学素子2のサイズを発光素子1の発光面のサイズよりも大きくすることが好ましい。すなわち、図5に示す回折光学素子2の寸法W1,W2と、発光素子1の寸法U1,U2とが、W1>U1かつW2>U2となるように寸法を設定することが好ましい。この場合、発光素子1の発光面の全周に亘って回折光学素子2の周縁との間にマージンが形成されるように、発光素子1と回折光学素子2との位置を合わせる。つまり、発光素子1の発光面の全周に亘って回折光学素子2の周部が突出した形になる。このように、発光素子1に対して回折光学素子2がマージンを有していることによって、厳密な位置合わせが不要になり、量産が容易になる。
【0030】
なお、格子基板4を形成する基本格子3は、必ずしも同形状でなくてもよく、格子基板4を構成する基本格子3の個数および配置は、光照射装置を量産する際に、回折光学素子2の効率のよい取数になるように設計される。すなわち、多品種で量産することが容易になる。
【0031】
上述した例では、回折光学素子2の一面に格子パターンを形成する場合を想定しているが、回折光学素子2への入射面と出射面との両方に格子パターンを形成してもよい。この場合、回折光学素子2の各面に形成される格子パターンは、同じ形状であってもよいが、互いに異なる形状に形成することが好ましい。回折光学素子2の入射面と出射面とに異なる格子パターンが形成されていれば、1種類の格子パターンで光を拡散させる場合よりも拡散性が向上する可能性がある。とくに、回折光学素子2の1面にのみ格子パターンが形成されている場合よりも2面に格子パターンが形成されている場合のほうが、両格子パターンの効果の合成によって拡散性が高まる可能性がある。
【0032】
上述した構成例は、回折光学素子2の表裏の一面にのみ格子パターンを形成することを想定しているが、図6に示すように、回折光学素子2の表裏の両面にそれぞれ格子パターン21,22を形成してもよい。回折光学素子2の各面に形成される格子パターン21,22は、上述した回折ディフューザとビーム整形素子とから選択され、両面の格子パターン21,22は同種類であっても異種類であってもよい。すなわち、回折光学素子2は、2つの格子パターン21,22が、ともに回折ディフーザである場合と、ともにビーム整形素子である場合と、一方が回折ディフューザで他方がビーム整形素子である場合とのいずれかの構成になる。
【0033】
格子パターン21,22を両面に備える回折光学素子2を発光素子1と組み合わせた光照射装置は、たとえば図7に示す構造になる。図3に示した実施形態1の構成と同様に、発光素子1は一面に開口窓11を備えた器体10の中に配置され、回折光学素子2は開口窓11を覆うように器体10に取り付けられる。ここに、回折光学素子2は表裏の両面に格子パターン21,22を備えるから、一方の格子パターン21は、器体10の外側に露出することになる。この構成では、発光素子1から放射された光は、回折光学素子2を通して器体10の外部に放射される。したがって、回折光学素子2に付与した特性に応じた配光が得られることになる。
【0034】
図7に示した構成例は、回折光学素子2の表裏の両面に格子パターン21,22が形成されているから、回折光学素子2の表裏の両面を同時に成形しなければならない。格子パターン21,22は微細であるから、一般に、ナノインプリントのような技術を用いて形成される。そのため、回折光学素子2の表裏の両面を同時に成形する場合には高度な技術を要することになり、結果的にコスト高になる可能性がある。また、格子パターン21,22の組合せごとに、異なる品種の回折光学素子2を作製しなければならないから、多品種化する場合には、在庫数が増加する可能性があり、このこともコスト増につながる。
【0035】
回折光学素子2のコスト増を抑制する場合、図8に示すように、表裏の一面にのみ格子パターン21,22が形成された2枚の回折光学素子2を重ね合わせる構成を採用することが好ましい。すなわち、格子パターン21,22は、回折光学素子2の表裏の一面にのみ形成されているから、2枚の回折光学素子2の表裏の他面同士を重ね合わせることによって、図6に示した回折光学素子2と同様に機能させることが可能である。また、2枚の回折光学素子2の組合せによる多品種化が可能であるから、多品種化する場合でも、在庫数の増加を抑制することが可能になる。さらに、重ね合わされる2枚の回折光学素子2は互いに貼り合わせてあってもよい。重ね合わせる回折光学素子2は、3枚以上であってもよい。
【0036】
(実施形態2)
本実施形態は、図9、図10に示すように、発光素子1と回折光学素子2との間に、発光素子1からの光線束を集める収束光学素子5が配置される。収束光学素子5は具体的にはレンズが用いられている。また、回折光学素子2は、図2(a)に示した回折ディフューザとして機能するものを用いる。
【0037】
したがって、図3に示した実施形態1の構成と同様に、発光素子1が器体10に収納する場合、図11に示すように、器体10の開口窓11を覆うように収束光学素子5が配置され、回折光学素子2は、発光素子1との間に収束光学素子5を介して配置されることになる。
【0038】
この構成では、収束光学素子5を発光素子1と回折光学素子2との間に配置することにより、収束光学素子5の光軸を中心として光線束の広がりが調節されるから、回折光学素子2を通った光線束の発散角が調節されることになる。また、収束光学素子5には光軸があるが、回折ディフューザとして機能する回折光学素子2には光軸がないから、回折光学素子2と収束光学素子5との位置合わせは容易である。なお、収束光学素子5は回折光学素子2と一体化してもよい。
【0039】
収束光学素子5は、通常のレンズを用いるほか、図12に示すように、回折レンズ51を用いてもよい。回折レンズ51は、回折を利用して光の伝播方向を制御するレンズであって、実施形態1において用いたビーム整形素子と同様の構成を有する。すなわち、回折レンズ51は、発光素子1からの光に対して透明な基材の表面に、光を回折させる微細な凹凸からなる格子パターンが形成されている。
【0040】
収束光学素子5として回折レンズ51を用いる場合、実施形態1において説明した回折光学素子2と同様に、複数個の回折レンズ51を一体に配列したレンズ基板(回折光学素子2の格子基板4に相当)が形成される。したがって、回折レンズ51は、レンズ基板から切り離して形成される。なお、この構成を採用する場合、回折光学素子2となる基本格子3と回折レンズ51とを一体に配列した格子基板4を形成することが可能であるから、1枚の格子基板4から回折光学素子2と回折レンズ51とを形成することが可能になる。
【0041】
また、回折光学素子2と回折レンズ51とがともに回折を利用しているから、回折光学素子2と回折レンズ51との表面が平面状であって、両者の位置合わせが容易になる。さらに、回折光学素子2と回折レンズ51とは、2枚の基材を用いて個別に設けるほか、1枚の基材の表裏の一面に回折光学素子2となる格子パターンを形成し、他面に回折レンズ51となる格子パターンを形成することも可能である。
【0042】
上述したように、回折光学素子2と収束光学素子5とを個別に設けておけば、回折光学素子2と収束光学素子5との位置を調節して、光線束の発散角を調節することが可能である。また、回折光学素子2と収束光学素子5との組合せを変更することによって、光線束の発散角を様々に変更することが可能になる。一方、回折光学素子2と収束光学素子5(回折レンズ51)とを基材の表裏に形成しておけば調節箇所が少なくなり、光照射装置の組立作業が容易になる。他の構成および動作は実施形態1と同様である。
【0043】
(実施形態3)
実施形態2は、回折ディフューザとして機能する回折光学素子2に収束光学素子5を組み合わせることにより光線束の発散角を調節している。これに対して、本実施形態は、図13に示すように、回折ディフューザとなる回折光学素子2と発光素子1との間に、回折ディフューザとなる別の回折光学素子6を配置することにより、光線束の発散角を調節する構成を採用している。回折光学素子6は、回折光学素子2と同様に複数個の基本格子3を一体に配列した格子基板4(図4参照)から切り離して形成される。
【0044】
図示例では、回折光学素子2と回折光学素子6とが、同じ個数の基本格子3を備えている。ただし、回折光学素子2と回折光学素子6とにおいて、基本格子3の個数が等しいことは必須ではない。また、回折光学素子2と回折光学素子6とは、異なる格子パターンを備えることが好ましいが、格子パターンは同じであってもよい。
【0045】
本実施形態の構成では、発光素子1から放射された光は、回折光学素子6により発散角が制御された後、さらに回折光学素子2により発散角が制御される。したがって、回折光学素子2のみを用いる場合とは異なる発散角が得られることになる。また、この構成では1枚の格子基板4から回折光学素子2と回折光学素子6とを切り出すことが可能であり、量産時の生産性が向上することになる。
【0046】
本実施形態では、2枚の回折光学素子2、6を用いた例を示したが、実施形態1において説明したように、1枚の基材の表裏の一面に回折光学素子2に相当する格子パターンを形成し、他面に回折光学素子6に相当する格子パターンを形成してもよい。すなわち、回折光学素子2と回折光学素子6とに相当する機能を1枚の基材で実現することも可能である。他の構成および動作は実施形態1と同様である。
【0047】
(実施形態4)
実施形態2において説明した構成は、図10、図12のように、回折光学素子2と収束光学素子5とを用いている。また、実施形態2では、収束光学素子5として回折レンズ51を用いるとともに1枚の基材の表裏の一面に回折光学素子2が設けられ、他面に回折レンズ51となる格子パターンが形成される場合についても説明した。
【0048】
これに対して本実施形態は、収束光学素子5として、図14に示すように、一面が連続した(微分可能な)曲面に形成され、光軸と平行な厚み寸法が連続的に変化するように形成されたレンズ52を用いる。レンズ52は基材の表裏の一面側に形成されている。この基材は他面に回折光学素子2となる格子パターン20が形成される。格子パターン20は、実施形態1と同様に、回折ディフューザまたはビーム整形素子として機能するように形成されている。
【0049】
本実施形態は、基材に1個の回折光学素子2としての格子パターン20と1個のレンズ52とを備えた構造物を基本格子3としている。そして、実施形態1と同様に、複数個の基本格子3が一体に配列された格子基板4から切り離した1個ないし複数個の基本格子3が、発光素子1の発光面に重ねて配置される。発光素子1が器体10に収納されている場合、図15(a)に示す構成と、図15(b)に示す構成とのいずれかが採用される。図15(a)に示す構成は、レンズ52が発光素子1に対面し格子パターン20が器体10の外側に露出しており、図15(b)に示す構成は、格子パターン20が発光素子1に対面しレンズ52が器体の外側に露出している。
【0050】
格子基板4は、透光性を有した熱可塑性合成樹脂の板材が基材に用いられ、加熱されるとともに成形されることによって、レンズ52が形成される。また、回折光学素子2として機能させるための格子パターンも、レンズ52の成形時に同時に成形される。
【0051】
本実施形態の構成を採用すると、1枚の格子基板4を成形し、この格子基板4から回折光学素子2を切り離すことによって、レンズ52を付加した複数個の回折光学素子2を製造することが可能になり、回折光学素子2の生産性が高まることになる。また、表面が連続した曲面であるレンズ52を用いるから、照射される光の強度分布に連続性があり、回折レンズ51を用いる場合に比べて強度分布のむらが少ないという利点もある。他の構成および動作は実施形態1と同様である。
【符号の説明】
【0052】
1 発光素子
2 回折光学素子
3 基本格子
4 格子基板
5 収束光学素子
6 回折光学素子
20 格子パターン
21 格子パターン
22 格子パターン
51 回折レンズ
52 レンズ
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子から放射された光の照射範囲を回折光学素子により制御する光照射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、発光素子から放射された光の強度プロフィールを所望形状とするために、回折光学素子を用いることが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1には、2枚のレンズの間に回折光学素子を配置した装置が記載され、一方のレンズを通して回折光学素子に入射した楕円形状の強度プロフィールを持つ光を、矩形の強度プロフィールを持つ光に整形する旨の記載がある。また、回折光学素子が回折ディフューザを含むことが記載されている。すなわち、特許文献1は、光を照射する際の形状や強度分布を制御するために回折光学素子を利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−199088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、回折光学素子は、発光素子が放射する光に対して透明な材料からなる基材の表面に、光を回折させるように格子パターンが形成されている。格子パターンは、微細な凹凸や、微細なスリットにより形成されている。また、この種の回折光学素子は、発光素子の発光面に合わせて1枚ずつ形成されている。そのため、多品種で量産することが難しいという問題を有している。
【0005】
本発明は、回折光学素子により照射範囲を制御するとともに多品種に展開することが容易であって、多品種で量産することが比較的容易である光照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、発光素子と、発光素子から放射された光を透過させ回折により光の伝播方向を制御する回折光学素子とを備え、回折光学素子は、入射光を回折させる格子パターンが形成された少なくとも1個の基本格子からなり、基本格子は、複数個の基本格子を一体に配列した格子基板から切り離して形成されていることを特徴とする。
【0007】
この光照射装置において、回折光学素子は回折ディフューザであって、格子基板は格子パターンが2次元で周期的に形成されており、基本格子は1周期の整数倍の格子パターンを含むことが好ましい。
【0008】
この光照射装置において、回折光学素子は、入射面と出射面との両面に回折を生じる格子パターンが形成されていることが好ましい。
【0009】
この光照射装置において、発光素子と回折光学素子との間に配置され発光素子からの光線束を集める収束光学素子をさらに備えることが好ましい。
【0010】
この光照射装置において、収束光学素子は、回折レンズであることがさらに好ましい。
【0011】
この光照射装置において、回折レンズは、複数個の回折レンズを一体に配列したレンズ基板から切り離して形成されていることがさらに好ましい。
【0012】
この光照射装置において、回折光学素子を複数枚備え、回折光学素子は、発光素子から放射された光が順に透過するように配置されていることが好ましい。
【0013】
この光照射装置において、回折光学素子は、互いに重ね合わされていることがさらに好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の構成によれば、回折光学素子により照射範囲を制御するとともに多品種に展開することが容易であり、多品種で量産することが比較的容易になるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1を示す分解斜視図である。
【図2】同上に用いる回折光学素子の例を示す正面図である。
【図3】同上の構成例を示す断面図である。
【図4】同上に用いる格子基板を示す斜視図である。
【図5】同上の他の構成例を示す分解斜視図である。
【図6】同上に用いる格子基板の構成例を示す断面図である。
【図7】同上の構成例を示す断面図である。
【図8】同上の構成例を示す断面図である。
【図9】実施形態2を示す分解斜視図である。
【図10】同上を示す概略断面図である。
【図11】同上の構成例を示す断面図である。
【図12】同上の他の構成例を示す分解斜視図である。
【図13】実施形態3を示す分解斜視図である。
【図14】実施形態4に用いる格子基板を示す断面図である。
【図15】(a)(b)はそれぞれ同上の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態1)
本実施形態の光照射装置は、図1に示すように、発光素子1と回折光学素子2とを用いて形成されている。回折光学素子2は、発光素子1の発光面に重ねて配置され、発光素子1から放射された光を透過させる際に、回折を利用して光の伝播方向を制御するように格子パターンが形成されている。この種の回折光学素子2は、DOE(=Digital Optical Element)と呼ばれている。ここに、回折光学素子2は発光素子1の発光面から離して配置されるが、回折光学素子2を発光素子1の発光面に密着させてもよい。発光素子1は、発光ダイオードを想定しているが、有機EL素子、半導体レーザなどでもよい。
【0017】
回折光学素子2は、発光素子1から放射された光を透過させるために、発光素子1から放射される光に対して透明な材料が基材として選択されている。すなわち、発光素子1が赤外領域の光を放射する場合、合成樹脂(ポリエチレンなど)やシリコンなどを基材に用いることが可能であり、発光素子1が紫外領域の光を放射する場合、石英ガラスなどを基材に用いることが可能である。発光素子1が可視光域の光を放射する場合は、ガラスや合成樹脂(ポリカーボネートなど)を基材に用いることが可能である。
【0018】
また、回折光学素子2は、図2に示すように、格子パターンが形成された少なくとも1個の基本格子3を備える。基本格子3は、基材の表面に光を回折させる格子パターンとして微細な凹凸が形成されている。基材として合成樹脂が用いられる場合、基材を成形することにより、回折光学素子2として必要な格子パターンが形成される。
【0019】
図2(a)に示す回折光学素子2は、回折ディフューザを形成するように基本格子3の格子パターンが設定されている。図2(a)に示す例では、回折光学素子2は、複数個(図示例では25個)の基本格子3が一体に配列されている。すなわち、回折光学素子2は、縦横に同数個(図示例は5個)ずつの基本格子3が配列された形状を有している。なお、基本格子3の個数は、発光素子1の発光面の形状や出射する光線束の断面形状に応じて適宜に設定される。なお、基本格子3の個数は1個であってもよい。
【0020】
図2(a)に示す回折光学素子2は、回折ディフューザを形成するために、光軸を有していないから、回折光学素子2を構成する基本格子3の個数は任意である。また、この回折光学素子2には光軸が設けられないから、発光素子1に対して回折光学素子2の位置がずれていたとしても光の伝播方向に対する影響はほとんど生じない。たとえば、発光素子1の発光面よりも面積が大きい回折光学素子2を用いることも可能である。
【0021】
一方、図2(b)に示す回折光学素子2は、所望の断面形状の平行光線束を出射するビーム整形素子を形成するように格子パターンが設定されている。つまり、基本格子3は中央に光軸を有し、回折光学素子2を透過した光の断面形状が、たとえば、円形、楕円形、長方形など光軸を対称軸とする適宜の形状になる格子パターンが設定される。この種の格子パターンは、フレネル型DOEとして知られている。また、図2(b)に示す回折光学素子2は光軸を有しているから基本格子3を1個だけ備えている。この回折光学素子2は、基本格子3の光軸を発光素子1の発光面の中央に一致させるように配置される。
【0022】
回折光学素子2を発光素子1と組み合わせた光照射装置は、たとえば図3に示す構造になる。図示例では、発光素子1は一面に開口窓11を備えた器体10の中に配置され、回折光学素子2は開口窓11を覆うように器体10に取り付けられている。器体10は不透明材料により形成される。なお、図示例では、回折光学素子2において格子パターン20が形成された面が発光素子1に対面するように、回折光学素子2を器体10に取り付けている。
【0023】
ところで、回折光学素子2は、図4に示すように、複数個の回折光学素子2を一体に配列した格子基板4から切り離して形成される。図示例の格子基板4は、9×9個の回折光学素子2を一体に配列して形成されており、必要な個数(本実施形態では、5×5個)の基本格子3を格子基板4から切り離すことにより、回折光学素子2が形成される。したがって、図4に示す格子基板4からは、25個の基本格子3を備えた回折光学素子2を81個切り出すことができる。
【0024】
なお、格子基板4における個々の回折光学素子2の間には切り代を設けておくことが好ましい。上述したように、あらかじめ成形した格子基板4から切り出して回折光学素子2を形成しているから、1個ずつの回折光学素子2を成形する場合に比較すると、成形に要する時間が短縮されることになる。その結果、回折光学素子2を個々に成形する場合に比較すると、1個の回折光学素子2を形成するのに要する時間が短縮される。すなわち、回折光学素子2の生産性が高まることになる。
【0025】
回折光学素子2が回折ディフューザである場合、上述した構成のように、基本格子3を複数個用いることが可能であるから、発光素子1の発光面のサイズに応じて適宜のサイズになるように格子基板4から切り離して回折光学素子2が形成される。すなわち、格子基板4を加工可能な最大サイズで形成し、一方、格子基板4を形成する基本格子3は格子パターンを同形状として比較的小さいサイズで形成しておくことが望ましい。このような格子基板4を用いると、発光素子1の発光面のサイズが異なっていても適宜サイズの回折光学素子2を形成して発光素子1に適合させることが可能になる。
【0026】
格子基板4を形成するすべての基本格子3を同形状に形成する場合、個々の基本格子3がそれぞれ独立して回折ディフューザとして機能するように形成されていることが望ましい。すなわち、各基本格子3に形成される格子パターンが周期構造を有し、回折ディフューザとして機能させるのに必要な1周期の整数倍の格子パターンが1個の基本格子3に形成されていることが好ましい。この場合、格子基板4には複数周期の格子パターンが2次元で配列されることになる。
【0027】
格子パターンの1周期のサイズは、発光素子1の発光面から放射された光が回折光学素子2に投影されるサイズに応じて決定される。すなわち、回折光学素子2に投影されるサイズよりも1周期のサイズが小さくなるように格子パターンが設定される。なお、発光素子1の発光面が正方形である場合を想定しているが、長方形、円形、楕円形などである場合でも同様であって、格子パターンの1周期のサイズは、発光素子1から回折光学素子2に光が投影されるサイズよりも小さく設定される。
【0028】
上述の構成によって、回折光学素子2を格子基板4から切り出す部位にかかわらず、格子基板4から切り出された回折光学素子2のサイズが等しければ、その回折光学素子2には同周期分の格子パターンが含まれることになる。ただし、切り代は無視する。回折ディフューザとして機能させる場合、格子パターンの位相は影響しないから、回折光学素子2のサイズが等しければ、格子パターンの位相が異なっていても回折ディフューザとして同機能が得られる。すなわち、格子基板4から回折光学素子2を切り出す際に、サイズに着目するだけで、切り出す位置を考慮する必要がないから、回折光学素子2の製造が容易になる。
【0029】
上述のように、複数の基本格子3を2次元配列することにより周期構造の格子パターンを形成した格子基板4から回折光学素子2を切り出す構成では、図5に示すように、回折光学素子2のサイズを発光素子1の発光面のサイズよりも大きくすることが好ましい。すなわち、図5に示す回折光学素子2の寸法W1,W2と、発光素子1の寸法U1,U2とが、W1>U1かつW2>U2となるように寸法を設定することが好ましい。この場合、発光素子1の発光面の全周に亘って回折光学素子2の周縁との間にマージンが形成されるように、発光素子1と回折光学素子2との位置を合わせる。つまり、発光素子1の発光面の全周に亘って回折光学素子2の周部が突出した形になる。このように、発光素子1に対して回折光学素子2がマージンを有していることによって、厳密な位置合わせが不要になり、量産が容易になる。
【0030】
なお、格子基板4を形成する基本格子3は、必ずしも同形状でなくてもよく、格子基板4を構成する基本格子3の個数および配置は、光照射装置を量産する際に、回折光学素子2の効率のよい取数になるように設計される。すなわち、多品種で量産することが容易になる。
【0031】
上述した例では、回折光学素子2の一面に格子パターンを形成する場合を想定しているが、回折光学素子2への入射面と出射面との両方に格子パターンを形成してもよい。この場合、回折光学素子2の各面に形成される格子パターンは、同じ形状であってもよいが、互いに異なる形状に形成することが好ましい。回折光学素子2の入射面と出射面とに異なる格子パターンが形成されていれば、1種類の格子パターンで光を拡散させる場合よりも拡散性が向上する可能性がある。とくに、回折光学素子2の1面にのみ格子パターンが形成されている場合よりも2面に格子パターンが形成されている場合のほうが、両格子パターンの効果の合成によって拡散性が高まる可能性がある。
【0032】
上述した構成例は、回折光学素子2の表裏の一面にのみ格子パターンを形成することを想定しているが、図6に示すように、回折光学素子2の表裏の両面にそれぞれ格子パターン21,22を形成してもよい。回折光学素子2の各面に形成される格子パターン21,22は、上述した回折ディフューザとビーム整形素子とから選択され、両面の格子パターン21,22は同種類であっても異種類であってもよい。すなわち、回折光学素子2は、2つの格子パターン21,22が、ともに回折ディフーザである場合と、ともにビーム整形素子である場合と、一方が回折ディフューザで他方がビーム整形素子である場合とのいずれかの構成になる。
【0033】
格子パターン21,22を両面に備える回折光学素子2を発光素子1と組み合わせた光照射装置は、たとえば図7に示す構造になる。図3に示した実施形態1の構成と同様に、発光素子1は一面に開口窓11を備えた器体10の中に配置され、回折光学素子2は開口窓11を覆うように器体10に取り付けられる。ここに、回折光学素子2は表裏の両面に格子パターン21,22を備えるから、一方の格子パターン21は、器体10の外側に露出することになる。この構成では、発光素子1から放射された光は、回折光学素子2を通して器体10の外部に放射される。したがって、回折光学素子2に付与した特性に応じた配光が得られることになる。
【0034】
図7に示した構成例は、回折光学素子2の表裏の両面に格子パターン21,22が形成されているから、回折光学素子2の表裏の両面を同時に成形しなければならない。格子パターン21,22は微細であるから、一般に、ナノインプリントのような技術を用いて形成される。そのため、回折光学素子2の表裏の両面を同時に成形する場合には高度な技術を要することになり、結果的にコスト高になる可能性がある。また、格子パターン21,22の組合せごとに、異なる品種の回折光学素子2を作製しなければならないから、多品種化する場合には、在庫数が増加する可能性があり、このこともコスト増につながる。
【0035】
回折光学素子2のコスト増を抑制する場合、図8に示すように、表裏の一面にのみ格子パターン21,22が形成された2枚の回折光学素子2を重ね合わせる構成を採用することが好ましい。すなわち、格子パターン21,22は、回折光学素子2の表裏の一面にのみ形成されているから、2枚の回折光学素子2の表裏の他面同士を重ね合わせることによって、図6に示した回折光学素子2と同様に機能させることが可能である。また、2枚の回折光学素子2の組合せによる多品種化が可能であるから、多品種化する場合でも、在庫数の増加を抑制することが可能になる。さらに、重ね合わされる2枚の回折光学素子2は互いに貼り合わせてあってもよい。重ね合わせる回折光学素子2は、3枚以上であってもよい。
【0036】
(実施形態2)
本実施形態は、図9、図10に示すように、発光素子1と回折光学素子2との間に、発光素子1からの光線束を集める収束光学素子5が配置される。収束光学素子5は具体的にはレンズが用いられている。また、回折光学素子2は、図2(a)に示した回折ディフューザとして機能するものを用いる。
【0037】
したがって、図3に示した実施形態1の構成と同様に、発光素子1が器体10に収納する場合、図11に示すように、器体10の開口窓11を覆うように収束光学素子5が配置され、回折光学素子2は、発光素子1との間に収束光学素子5を介して配置されることになる。
【0038】
この構成では、収束光学素子5を発光素子1と回折光学素子2との間に配置することにより、収束光学素子5の光軸を中心として光線束の広がりが調節されるから、回折光学素子2を通った光線束の発散角が調節されることになる。また、収束光学素子5には光軸があるが、回折ディフューザとして機能する回折光学素子2には光軸がないから、回折光学素子2と収束光学素子5との位置合わせは容易である。なお、収束光学素子5は回折光学素子2と一体化してもよい。
【0039】
収束光学素子5は、通常のレンズを用いるほか、図12に示すように、回折レンズ51を用いてもよい。回折レンズ51は、回折を利用して光の伝播方向を制御するレンズであって、実施形態1において用いたビーム整形素子と同様の構成を有する。すなわち、回折レンズ51は、発光素子1からの光に対して透明な基材の表面に、光を回折させる微細な凹凸からなる格子パターンが形成されている。
【0040】
収束光学素子5として回折レンズ51を用いる場合、実施形態1において説明した回折光学素子2と同様に、複数個の回折レンズ51を一体に配列したレンズ基板(回折光学素子2の格子基板4に相当)が形成される。したがって、回折レンズ51は、レンズ基板から切り離して形成される。なお、この構成を採用する場合、回折光学素子2となる基本格子3と回折レンズ51とを一体に配列した格子基板4を形成することが可能であるから、1枚の格子基板4から回折光学素子2と回折レンズ51とを形成することが可能になる。
【0041】
また、回折光学素子2と回折レンズ51とがともに回折を利用しているから、回折光学素子2と回折レンズ51との表面が平面状であって、両者の位置合わせが容易になる。さらに、回折光学素子2と回折レンズ51とは、2枚の基材を用いて個別に設けるほか、1枚の基材の表裏の一面に回折光学素子2となる格子パターンを形成し、他面に回折レンズ51となる格子パターンを形成することも可能である。
【0042】
上述したように、回折光学素子2と収束光学素子5とを個別に設けておけば、回折光学素子2と収束光学素子5との位置を調節して、光線束の発散角を調節することが可能である。また、回折光学素子2と収束光学素子5との組合せを変更することによって、光線束の発散角を様々に変更することが可能になる。一方、回折光学素子2と収束光学素子5(回折レンズ51)とを基材の表裏に形成しておけば調節箇所が少なくなり、光照射装置の組立作業が容易になる。他の構成および動作は実施形態1と同様である。
【0043】
(実施形態3)
実施形態2は、回折ディフューザとして機能する回折光学素子2に収束光学素子5を組み合わせることにより光線束の発散角を調節している。これに対して、本実施形態は、図13に示すように、回折ディフューザとなる回折光学素子2と発光素子1との間に、回折ディフューザとなる別の回折光学素子6を配置することにより、光線束の発散角を調節する構成を採用している。回折光学素子6は、回折光学素子2と同様に複数個の基本格子3を一体に配列した格子基板4(図4参照)から切り離して形成される。
【0044】
図示例では、回折光学素子2と回折光学素子6とが、同じ個数の基本格子3を備えている。ただし、回折光学素子2と回折光学素子6とにおいて、基本格子3の個数が等しいことは必須ではない。また、回折光学素子2と回折光学素子6とは、異なる格子パターンを備えることが好ましいが、格子パターンは同じであってもよい。
【0045】
本実施形態の構成では、発光素子1から放射された光は、回折光学素子6により発散角が制御された後、さらに回折光学素子2により発散角が制御される。したがって、回折光学素子2のみを用いる場合とは異なる発散角が得られることになる。また、この構成では1枚の格子基板4から回折光学素子2と回折光学素子6とを切り出すことが可能であり、量産時の生産性が向上することになる。
【0046】
本実施形態では、2枚の回折光学素子2、6を用いた例を示したが、実施形態1において説明したように、1枚の基材の表裏の一面に回折光学素子2に相当する格子パターンを形成し、他面に回折光学素子6に相当する格子パターンを形成してもよい。すなわち、回折光学素子2と回折光学素子6とに相当する機能を1枚の基材で実現することも可能である。他の構成および動作は実施形態1と同様である。
【0047】
(実施形態4)
実施形態2において説明した構成は、図10、図12のように、回折光学素子2と収束光学素子5とを用いている。また、実施形態2では、収束光学素子5として回折レンズ51を用いるとともに1枚の基材の表裏の一面に回折光学素子2が設けられ、他面に回折レンズ51となる格子パターンが形成される場合についても説明した。
【0048】
これに対して本実施形態は、収束光学素子5として、図14に示すように、一面が連続した(微分可能な)曲面に形成され、光軸と平行な厚み寸法が連続的に変化するように形成されたレンズ52を用いる。レンズ52は基材の表裏の一面側に形成されている。この基材は他面に回折光学素子2となる格子パターン20が形成される。格子パターン20は、実施形態1と同様に、回折ディフューザまたはビーム整形素子として機能するように形成されている。
【0049】
本実施形態は、基材に1個の回折光学素子2としての格子パターン20と1個のレンズ52とを備えた構造物を基本格子3としている。そして、実施形態1と同様に、複数個の基本格子3が一体に配列された格子基板4から切り離した1個ないし複数個の基本格子3が、発光素子1の発光面に重ねて配置される。発光素子1が器体10に収納されている場合、図15(a)に示す構成と、図15(b)に示す構成とのいずれかが採用される。図15(a)に示す構成は、レンズ52が発光素子1に対面し格子パターン20が器体10の外側に露出しており、図15(b)に示す構成は、格子パターン20が発光素子1に対面しレンズ52が器体の外側に露出している。
【0050】
格子基板4は、透光性を有した熱可塑性合成樹脂の板材が基材に用いられ、加熱されるとともに成形されることによって、レンズ52が形成される。また、回折光学素子2として機能させるための格子パターンも、レンズ52の成形時に同時に成形される。
【0051】
本実施形態の構成を採用すると、1枚の格子基板4を成形し、この格子基板4から回折光学素子2を切り離すことによって、レンズ52を付加した複数個の回折光学素子2を製造することが可能になり、回折光学素子2の生産性が高まることになる。また、表面が連続した曲面であるレンズ52を用いるから、照射される光の強度分布に連続性があり、回折レンズ51を用いる場合に比べて強度分布のむらが少ないという利点もある。他の構成および動作は実施形態1と同様である。
【符号の説明】
【0052】
1 発光素子
2 回折光学素子
3 基本格子
4 格子基板
5 収束光学素子
6 回折光学素子
20 格子パターン
21 格子パターン
22 格子パターン
51 回折レンズ
52 レンズ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、前記発光素子から放射された光を透過させ回折により光の伝播方向を制御する回折光学素子とを備え、前記回折光学素子は、入射光を回折させる格子パターンが形成された少なくとも1個の基本格子からなり、前記基本格子は、複数個の前記基本格子を一体に配列した格子基板から切り離して形成されていることを特徴とする光照射装置。
【請求項2】
前記回折光学素子は回折ディフューザであって、前記格子基板は前記格子パターンが2次元で周期的に形成されており、前記基本格子は1周期の整数倍の前記格子パターンを含むことを特徴とする請求項1記載の光照射装置。
【請求項3】
前記回折光学素子は、入射面と出射面との両面に回折を生じる格子パターンが形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の光照射装置。
【請求項4】
前記発光素子からの光線束を集める収束光学素子をさらに備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光照射装置。
【請求項5】
前記収束光学素子は、回折レンズであることを特徴とする請求項4記載の光照射装置。
【請求項6】
前記回折レンズは、複数個の前記回折レンズを一体に配列したレンズ基板から切り離して形成されていることを特徴とする請求項5記載の光照射装置。
【請求項7】
前記回折光学素子を複数枚備え、前記回折光学素子は、前記発光素子から放射された光が順に透過するように配置されていることを特徴とする請求項2記載の光照射装置。
【請求項8】
前記回折光学素子は、互いに重ね合わされていることを特徴とする請求項7記載の光照射装置。
【請求項1】
発光素子と、前記発光素子から放射された光を透過させ回折により光の伝播方向を制御する回折光学素子とを備え、前記回折光学素子は、入射光を回折させる格子パターンが形成された少なくとも1個の基本格子からなり、前記基本格子は、複数個の前記基本格子を一体に配列した格子基板から切り離して形成されていることを特徴とする光照射装置。
【請求項2】
前記回折光学素子は回折ディフューザであって、前記格子基板は前記格子パターンが2次元で周期的に形成されており、前記基本格子は1周期の整数倍の前記格子パターンを含むことを特徴とする請求項1記載の光照射装置。
【請求項3】
前記回折光学素子は、入射面と出射面との両面に回折を生じる格子パターンが形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の光照射装置。
【請求項4】
前記発光素子からの光線束を集める収束光学素子をさらに備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光照射装置。
【請求項5】
前記収束光学素子は、回折レンズであることを特徴とする請求項4記載の光照射装置。
【請求項6】
前記回折レンズは、複数個の前記回折レンズを一体に配列したレンズ基板から切り離して形成されていることを特徴とする請求項5記載の光照射装置。
【請求項7】
前記回折光学素子を複数枚備え、前記回折光学素子は、前記発光素子から放射された光が順に透過するように配置されていることを特徴とする請求項2記載の光照射装置。
【請求項8】
前記回折光学素子は、互いに重ね合わされていることを特徴とする請求項7記載の光照射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−29795(P2013−29795A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−275021(P2011−275021)
【出願日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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