説明

光熱分光法及び光熱分光装置

【課題】あらゆる測定環境及び測定試料に対して有効性の高い光熱分光装置及び光熱分光装置を提供する。
【解決手段】試料10上に、カンチレバー9の一部が固定されるようにカンチレバー9の一方の面側を接触させる工程と、試料10に励起光Lを照射する工程と、励起光Lの照射することで、試料10中に発生した熱により他方の面側にたわむカンチレバー9のたわみ量を変位センサ11により検出する工程と、変位センサ11で検出されたたわみ量に対応する信号成分を検出する工程により、試料の光吸収係数が測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光吸収係数の測定が可能なカンチレバーを利用した光熱分光法及びカンチレバーを利用した光熱分光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薄膜太陽電池や光ディスクにおいて、それらのデバイス作製前の薄膜試料の欠陥密度と不純物濃度を同時に測定できる光熱偏向分光法(PDS:PhotothermalDeflection Spectroscopy)が用いられてきた。図13に、従来の光熱偏向分光法(PDS)の概略構成を示す。光熱偏向分光法(PDS)では、透明で屈折率の温度依存性が大きい溶液58中に、基板50上に薄膜形成した試料51を浸し、この試料51上に励起光52を照射する。そうすると、試料51が吸収した光エネルギーが、熱エネルギーに変換され、試料51周囲の溶液58に伝わる。図13では、発生した熱による温度分布を模式的に表示している。溶液58中の温度上昇に伴い、溶液58の熱膨張や、屈折率変化が起こる。試料51近傍に測定光(レーザ光)53を照射することにより、溶液58の熱膨張や屈折率変化を測定光53の偏向として検出することができる。このような方法により、試料51の光吸収に伴う熱量を感度良く測定することができ、試料51中のわずかな欠陥や不純物を評価することができる。
【0003】
しかしながら、上述した光熱偏向分光法では、試料を溶液中に浸漬する必要があり、試料への影響が大きい。また、溶液により、試料の界面物性が大きく影響される薄膜試料では、気体中や真空中での測定が必要となる。
【0004】
そのような問題点に鑑み、下記特許文献1では、気体中、液体中、真空中にて測定が可能な光熱ベンディング分光法(PBS:PhotothermalBending Spectroscopy)による光熱ベンディング分光装置が記載されている。特許文献1の光熱ベンディング分光装置では、図14に示すように、光透光性を有する薄膜基板54上に、測定したい材料を薄膜試料55として形成した試料を用いる。このとき、薄膜基板54と薄膜試料55との熱膨張係数は異なるものとされる。このように、バイモルフ構造とされた試料の片端を図示しない試料ホルダーに固定して、測定したい波長の励起光56を薄膜試料55の表面または裏面に照射させ試料に熱を発生させる。図14においても図13と同様、発生した熱による温度分布を模式的に表示している。そうすると薄膜基板54と薄膜試料55との熱膨張率が異なるため、試料が一方に反るようにたわむ。このたわみ量を測定光57の変位として検出することにより、薄膜試料55の光吸収スペクトルを測定することができる。
【0005】
【特許文献1】特許第3313994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、薄膜太陽電池や光ディスク等のデバイスはともに、ガラスやプラスチックからなる基板上に薄膜が積層された構造を有する。このようなデバイスにおいては、デバイス作製段階で、種々の異なる製膜プロセスを経るため、単一薄膜試料とは異なる温度、イオンダメージ等の履歴を有する。しかしながら、上述した従来の光熱偏向分光法(PDS)では、試料を溶液中に浸漬させる必要があり、また、光熱ベンディング分光法(PBS)では、薄い基板上に薄膜試料を作製する必要がある。このため、これらの方法では、完成されたデバイス構造における薄膜の品質評価を行うことは困難であり、実際のデバイスにおける薄膜の欠陥密度や不純物濃度を測定することができなかった。
【0007】
さらに、従来の光熱偏向分光法(PDS)では、液体中に試料を浸漬させる必要があり、また、光熱ベンディング分光法(PBS)では、薄膜基板に試料を薄膜形成させる必要があるので、測定できる試料の形態は固体に限られていた。
【0008】
上述の点に鑑み、本発明は、あらゆる測定環境及び測定試料に対して有効性の高いカンチレバーを利用した光熱分光法および光熱分光装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の光熱分光法は、試料上に、薄膜構成されたカンチレバーの一部が固定されるようにカンチレバーの一方の面側を接触する工程と、試料に励起光を照射する工程と、励起光を照射することで試料中に発生した熱により、試料に接触していない他方の面側にたわむカンチレバーのたわみ量を変位センサにより検出する工程と、変位センサで検出されたたわみ量に対応する信号成分を検出する工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の光熱分光法において、試料上へのカンチレバーの固定とは、カンチレバーの一部が、試料に対して固定される状態であることを示し、必ずしもカンチレバーの一部が試料上に接着固定される必要はない。また、カンチレバーのたわみ量とは、カンチレバーの変位する量であり、この変位する量が、変位センサで検出される。
【0011】
本発明の光熱分光法では、励起光の照射により試料に発生した熱で、カンチレバーがたわみ、そのたわみ量を変位センサで検出することにより、試料に発生した熱量が検出される。
【0012】
本発明の光熱分光装置は、試料に発生する熱によりたわむように薄膜形成されたカンチレバーと、カンチレバーの一部を試料に対して固定するための固定部と、試料に励起光を照射するための励起光源と、カンチレバーのたわみ量を検出する変位センサと、変位センサで検出されたたわみ量に対応する信号成分を検出する信号検出器とから構成されることを特徴とする。
【0013】
本発明の光熱分光装置において、固定部は、必ずしもカンチレバーの一部を試料上に対して接着固定する構成である必要はなく、カンチレバーの一部が試料上で固定の状態を保持できる構成であればよい。
また、本発明において、カンチレバーのたわみ量とは、カンチレバーの変位する量のことであり、変位センサでは、この変位する量を検出することができるものである。
【0014】
本発明の光熱分光装置では、励起光の照射により試料に熱が発生され、その熱によるカンチレバーのたわみ量が変位センサにより検出される。そして、そのたわみ量に対応する信号成分が信号検出器により検出されることにより、試料に発生した熱量が測定される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光熱分光法によれば、試料の光吸収係数を簡便に測定することができる。
【0016】
本発明の光熱分光装置によれば、測定環境、及び試料の形態を問わず、試料の光吸収係数を簡便に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図1〜図10を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
図1に、本発明の第1の実施形態における光熱分光装置の概略構成を示す。本実施形態例のカンチレバーを利用した光熱分光装置1は、カンチレバーを利用した光熱分光法(PSC:PhotothermalSpectroscopy using Cantilever)を用いるものであり、試料10に発生する熱によりたわむように構成されたカンチレバー9と、カンチレバー9の一部を試料10に対して固定するための固定部14と、試料10に励起光Lを照射するための励起光源系16と、カンチレバー9上に測定光Lを照射するための測定光源4と、測定光Lの反射光Lによりカンチレバー9のたわみ量を検出する変位センサ11と、変位センサ11により検出されたたわみ量に対応する信号成分を検出する信号検出器15とから構成される。
【0019】
本実施形態例の励起光源系16は、励起光源2と、反射ミラー3と、モノクロメータ5と、光学チョッパー6と、光学フィルタ7と、集光レンズ8とから構成され、信号検出器15は、ロックインアンプ12と、コンピュータ13とから構成される。
また、本実施形態例においては、試料10を載置できるXYステージを構成することにより、試料10を所望の位置に走査できる走査型の光熱分光装置1とされている。
【0020】
本実施形態例のカンチレバーを利用した光熱分光装置1において、カンチレバー9は、透明な薄膜で構成されるものである。図2Aに、カンチレバー9の一例を斜視図で示す。図2Aに示す例は、厚さtを約20μm、縦幅w1を10mm、横幅w2を約1mmの短冊状の薄膜とした例である。カンチレバー9は短冊状に限られるものではなく、例えば図2Bに示すような三角形状のカンチレバー9であってもよい。すなわち、試料に発生する熱によりたわむ構成であればどのような形状に作製してもよい。カンチレバー9の厚さは、好ましくは、0.5μm〜0.1mm程度であることが好ましく、また、薄く形成する場合には、それに合わせて、縦幅や横幅も小さくする必要がある。また、厚さが0.5μmのカンチレバーとしては、例えば、ナノワールド(NanoWorld)/ナノセンサーズ(NANOSENSORS)社製の、走査型プローブ顕微鏡(SPM)用プローブ/カンチレバーを用いることができる。
【0021】
また、このカンチレバー9の材料としては、0.5μm〜0.1mm程度の薄膜状に加工できる材料であればよく、例えば、水晶、石英ガラス、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス、フッ化物ガラス、カルコゲナイドガラス、マイカ、シリコン、サファイア、窒化シリコン、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム、フッ化バリウム、臭沃化タリウム、臭塩化タリウム、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、フッ素樹脂等を用いることができる。カンチレバー9は、上述した材料から選択される1種類の材料による単層薄膜であってもよいし、異なる熱膨張係数を有する2種類の材料による薄膜を積層させた2層薄膜、すなわちバイモルフ構造であってもよい。図2Cに、バイモルフ構造を有するカンチレバー9の概略斜視図を示す。この図2Cに示されるようなバイモルフ構造とする場合の一例として、石英ガラスとポリエチレンの2層薄膜とすることが考えられる。このバイモルフ構造とした場合には、熱膨張係数の大きな材料を試料10側に面するように配置するようにする。
そして、このように構成されたカンチレバー9の片端が、測定時に試料10に対して固定部14により固定される。
このカンチレバー9は、後述するように、試料10中に発生する熱に起因して、試料10とは反対側の方向にたわむものである。
【0022】
固定部14は、カンチレバー9の片端が試料10に対して固定されるような構成であればよく、例えば粘着テープで貼り付ける構成や、シリコンからなるシリコングリースや、磁石で固定する構成等が挙げられる。
【0023】
励起光源2は、タングステンハロゲンランプ、キセノンランプ、シリコンカーバイド発熱体、レーザ光源等から選択して構成され、電磁波が出射されるものであればよい。タングステンハロゲンランプ及びキセノンランプは、可視光領域から近赤外線領域の光の波長領域を測定する為に用いられ、シリコンカーバイド発熱体は、赤外線領域をより詳細に測定する為に用いられる。励起光源2からは励起光Lが出射される。
【0024】
反射ミラー3は、励起光源2から出射される励起光Lの光路上に構成されており、反射ミラー3において、励起光Lが集光されて反射される。
【0025】
モノクロメータ5は、反射ミラー3により反射された励起光Lの光路上に構成されている。モノクロメータ5では、反射ミラー3により反射されて入射した励起光Lが、所望の測定波長となるように単色化される。そして、モノクロメータ5からは、単色化された励起光Lが出射される。
【0026】
光学チョッパー6は、モノクロメータ5から出射された励起光Lの光路上に構成される。光学チョッパー6に入射された励起光Lは、一定周波数の断続光とされて出射される。本実施形態例において使用されるチョッピング周波数は、0.1Hz程度から10kHz程度の信号対雑音比(S/N比)が大きくとれる周波数である。すなわち、光学チョッパー6を用いることにより、S/N比が改善される。また、チョッピング周波数を試料の形状と励起光が照射される試料位置で決まる共振周波数に設定すれば、測定感度を向上させる効果を有する。
【0027】
光学フィルタ7は、光学チョッパー6から出射された励起光Lの光路上に構成されている。光学フィルタ7により、高次光の余分な光が除去される。
【0028】
集光レンズ8は、例えばサファイアレンズや石英レンズからなり、光学フィルタ7から出射された励起光Lの光路上に構成される。この集光レンズ8により、励起光Lが試料10の所定の位置に集光されるように照射される。レンズに限らず集光作用があればよく、例えば凹面ミラー等でもよい。
【0029】
測定光源4は、測定光源4から出射される測定光Lがカンチレバー9の所望の位置に照射されるように配置される。測定光源4としては、例えば、ヘリウムネオンレーザや近赤外から可視光領域の半導体レーザを用いることができる。測定光源4から出射された測定光Lは、カンチレバー9上で反射し、前述したチョッピング周波数と同じ周期で変位する反射光Lは、変位センサ11に入射される。
【0030】
変位センサ11は、カンチレバー9上に照射される測定光Lの反射光Lを検出するものであり、測定光Lの反射光路上に設けられる。変位センサ11では、反射光Lが検出されることにより、カンチレバー9のたわみ量が検出され、この検出されたカンチレバー9のたわみ量に対応した信号成分が、ロックインアンプ12に送られる。
【0031】
ロックインアンプ12は、変位センサ11から送られてきた信号成分を増幅して検出する装置であり、光学チョッパー6の周波数と同調した信号成分のみを取りだして増幅する。このロックインアンプ12を用いることにより、カンチレバー9のたわみ量に対応する信号成分を感度よく測定することができる。
【0032】
コンピュータ13は、ロックインアンプ12及びモノクロメータ5に接続されており、ロックインアンプ13により増幅された出力信号のデータの取り込み及び蓄積を行うとともに、モノクロメータ5の波長送りの変更を行う。
【0033】
以上説明したように、本実施形態例のカンチレバーを利用した光熱分光装置1は、試料10中の発熱に起因したカンチレバー9のたわみ量を検出することにより、試料10に発生する熱量を検出している。これにより、試料10の光吸収係数が計測される。以下に、カンチレバーを利用した光熱分光法の原理を説明する。
【0034】
図3に、本実施形態例のカンチレバーを利用した光熱分光装置1のカンチレバー9が、被測定物である試料10上に固定されている部分の拡大図を示す。本実施形態例では、基板10b上に薄膜10aが形成された試料10を被測定物として用いることとする。この試料10は、カンチレバー9に比べて十分に厚いものである。
【0035】
カンチレバーを利用した光熱分光装置1において、励起光源2から出射された励起光Lは、図3に示すように、カンチレバー9を透過して試料10上に照射される。そして、試料10に照射された光は試料10の薄膜10a中に吸収され、非輻射再結合により熱に変換される。図3では、発生した熱による温度分布を模式的に表示している。
【0036】
そうすると、薄膜10a中に発生した熱の拡散により、カンチレバー9に温度分布が生じる。カンチレバー9の試料10に接した面がより大きく熱膨張し、カンチレバー9の固定部14に固定された端部とは反対側の端部が、試料10とは反対側の方向にたわむ。図3において、たわむ前のカンチレバー9を二点鎖線で示し、たわんだときのカンチレバー9を実線で示す。このように、薄膜10a中に発生した熱量はカンチレバー9のたわみ量に変換される。そして、このたわみ量は、薄膜10a中に発生した熱量に加え、薄膜10a中に発生した熱量の空間分布にも関係する。つまり、試料10の薄膜10a中に発生した熱量及びその空間分布がカンチレバー9のたわみ量となる。
【0037】
このカンチレバー9のたわみ部分に、測定光源4からの測定光Lを照射する。そうすると、測定光Lは、カンチレバー9のたわみ部分で反射され、測定光Lの反射光Lが変位センサ11(図1参照)方向に出射される。図3では、たわむ前のカンチレバー9によって反射された反射光Lを二点鎖線で示し、たわんだときのカンチレバー9によって反射された反射光Lを実線で示す。図3からわかるように、反射光Lの反射角の変化Δθは、カンチレバー9のたわみ量に比例するので、反射光Lの変位センサ11への入射位置を検出することで、たわみ量を検出することができる。この結果、薄膜10a中に発生した熱量が検出される。
【0038】
以上が光熱分光法の測定原理である。
以上のようなカンチレバーを利用した光熱分光法では、試料10の薄膜10a中に発生する熱量を検出することで薄膜10aの光吸収特性を測定することができる。このような光熱分光法では、カンチレバー9を、熱膨張係数の異なる2層薄膜からなるバイモルフ構造とした場合には、小さな熱量で、より大きくたわむ構成とすることができる。また、カンチレバー9を、上述した材料の中でも特に熱膨張係数の高い材料で構成することにより、より大きなたわみ量を検出することができるので、熱量の測定精度を向上させることができる。
また、カンチレバー9の測定光Lが照射される位置に、金属片を貼り付ける構成としてもよく、この場合は、反射光Lの反射効率が上昇する。
【0039】
図4に、従来の光熱偏向法(PDS)と光熱ベンディング法(PBS)と、本実施形態例のカンチレバーを利用した光熱分光法(PSC)とにおける、測定環境、試料の対象、測定感度の比較図を示す。
【0040】
まず、測定環境についてみると、光熱偏向法においては、例えば四塩化炭素(CCl)等の溶媒(液体)中であることが必要であるが、一方、光熱ベンディング法及び光熱分光法においては、真空等の任意の雰囲気中で実施が可能である。
【0041】
次に、試料の対象についてみると、光熱偏向法においては、図13に示したように、試料51を液体中に浸漬させる必要があるため、試料51がその液体に対して不溶性であることが必要である。そして、光熱ベンディング法においては、図14に示したように、試料55を薄膜基板54上に形成する必要がある。一方、カンチレバーを利用した光熱分光法においては、図3に示すように、試料10上にカンチレバー9が接触されればよいので、カンチレバー9に接触できる試料であればよい。すなわち、試料として、固体、液体、気体、プラズマ等を用いることができる。
【0042】
次に、測定感度についてみる。ある光の波長での試料の吸収係数をα、その試料の厚みをdとしたとき、測定感度はαdで示され、αdが小さいほど、測定感度が良いとされる。
図4によれば、測定感度αdは、光熱偏光法が一番良く、光熱ベンディング法及びカンチレバーを利用した光熱分光法は同程度であることがわかる。
以上の特徴から、測定環境及び測定可能な試料の対象の観点からすると、カンチレバーを利用した光熱分光法が従来の方法よりも優れていることがわかる。
【0043】
次に、本実施形態例のカンチレバーを利用した光熱分光装置1の使用方法を説明する。この使用方法は、上述した光熱分光法の原理に基づいたものである。
【0044】
図1に示すように、本実施形態例では、まず、励起光源2から励起光Lが出射される。出射された励起光Lは反射ミラー3において集光され、反射される。反射ミラー3により反射された励起光Lは、モノクロメータ5に入射される。モノクロメータ5をコンピュータ13で制御することにより、モノクロメータ5に入射された励起光Lが分光され、所望の測定波長を有するように単色化される。単色化された励起光Lがモノクロメータ5から出射され、次に光学チョッパー6に入射される。光学チョッパー6において、励起光Lは一定周波数の断続光とされる。そして、断続光とされた励起光Lは、光学フィルタ7を介して集光レンズ8に入射され、集光レンズ8により集光されて試料10上に照射される。
【0045】
そして、試料10上に集光された励起光Lが、試料10の薄膜10a中で熱に変換されることにより、試料10上に固定されたカンチレバー9がたわむ。このたわみ部分に測定光源4からの測定光Lが照射されると、その反射光Lが変位センサ11に入射される。その結果、反射光Lの入射位置によってカンチレバー9のたわみ量が検出される。この変位センサ11によって検出された信号成分は、ロックインアンプ12に送られ、ロックインアンプ12により増幅される。なお、ロックインアンプ12を光学チョッパー6と同期させることにより、光学チョッパー6の周波数と同調した信号成分のみを取りだして増幅することができる。そして増幅された信号成分は、コンピュータ13にデータとして取り込まれ、蓄積される。
【0046】
このように、本実施形態例では、試料10の薄膜10a中に発生する熱に起因するカンチレバー9のたわみ量を検出することにより、測定波長に対する薄膜10aの光吸収係数がわかる。そして、測定波長を変化させることにより、薄膜10a中に発生する熱量が変化し、それに対応してカンチレバー9のたわみ量が変化するので、変位センサ11に入射される反射光Lの位置も変化し、これにより、薄膜10aの光吸収スペクトルを測定することができる。
【0047】
本実施形態例では、カンチレバー9の端部が試料10に対して固定された状態で、かつ、カンチレバー9の一方の面側が試料10に接触された状態であれば、試料10に発生する熱量を検出することができる。すなわち、基板上に薄膜形成されて完成された薄膜太陽電池や光ディスク等のデバイスに、カンチレバー9を接触させることにより、それらの完成されたデバイスの薄膜状態を調べることが可能となる。したがって、デバイスの製膜プロセスにおいて発生したイオンダメージ等の履歴を、デバイス作製後に評価することが可能である。そして、本実施形態例の光熱分光装置1によれば、真空中などの任意の測定環境において測定が可能であるので、完成されたデバイスを液体中に浸漬させる必要がなく、測定によって、デバイスの特性が変わることもない。
【0048】
また、本実施形態例においては、被測定物である試料10として、基板10b上に薄膜10aが形成された試料10を用いたが、測定することのできる形態は、固体に限定されるものではなく、固体の他、液体、気体、プラズマの測定が可能である。
【0049】
図5に、本実施形態例のカンチレバーを利用した光熱分光装置1を用いて測定した光吸収スペクトルを示す。図5は、被測定物となる試料10として、薄膜太陽電池材料を用いた場合の測定結果であり、薄膜太陽電池を構成する、アモルファスシリコン薄膜の光吸収係数を示すものである。また、図5において、横軸が光子エネルギー、縦軸が光吸収係数であり、光吸収係数は任意の値で示されている。光子エネルギーは測定波長に反比例し、モノクロメータ5で励起光Lの測定波長を変えることにより変化されるものである。
【0050】
図5に示す光吸収係数のうち、光子エネルギーがIで示す範囲、すなわち、2eV〜2.5eVの範囲では、図6に示すように、試料に光が照射されたときに、価電子帯から伝導帯に電子が遷移するときの光吸収係数がわかる。また、光子エネルギーがIIで示す範囲、すなわち、1eV〜2eVの範囲では、図6に示すように、試料に光が照射されたときに、シリコンの未結合手に由来する欠陥準位から伝導帯に電子が遷移するときの光吸収係数がわかる。また、光子エネルギーがIIIで示す範囲、すなわち、0.5eV〜1eVの範囲では、格子振動による光吸収係数がわかる。これらの、I,II,IIIで示す範囲は、測定する試料の材料によって変わるものである。このように、本実施形態例の光熱分光装置1を用いれば、試料の光吸収スペクトルを求めることができ、この測定結果から、試料の欠陥準位の種類、密度および不純物濃度等を読み取ることができる。
【0051】
次に、図7に、本実施形態例のカンチレバーを利用した光熱分光装置1を用いて測定した光吸収スペクトルと、従来の光熱偏向法を用いて測定した光吸収スペクトルを示す。図7において、測定値Aがカンチレバーを利用した光熱分光装置1を用いた測定値であり、測定値Bで示す値が光熱偏向法を用いた測定値である。また、図7において、カンチレバーを利用した光熱分光装置1を用いて測定した試料は、膜厚が100nmに形成された相変化光ディスク材料であり、光熱偏向法を用いて測定した試料は、膜厚が500nmに形成された相変化光ディスク材料である。この例における相変化光ディスク材料は、GeSbTe薄膜であり、例えば、DVD−RAMとして用いられるものである。
【0052】
図7においては、光子エネルギーが0.8eV〜1.2eVの範囲に示される光吸収係数が、バンド間遷移による光吸収係数を示すものである。この範囲においては、カンチレバーを利用した光熱分光装置1を用いた測定値Aと光熱偏向法を用いた測定値Bとが一致している。この結果から、カンチレバーを利用した光熱分光法(PSC)でも、測定精度が良いとされている従来の光熱偏向法(PDS)と同様の測定結果を得ることができることがわかる。すなわち、本実施形態例の光熱分光法及び光熱分光装置は、従来の光熱偏向法等に代替可能であることがわかる。
なお、図7において、光子エネルギーが大きい範囲と小さい範囲において、光吸収係数A,Bがそれぞれ大きくずれてしまっているのは、それぞれに用いられた試料の膜厚が大きく異なることと、カンチレバーの不純物に起因するものと考えられる。
【0053】
また、図8は、本実施形態例のカンチレバーを利用した光熱分光装置1における、縦幅10(mm)×横幅w2(mm)×厚さ20(mm)のカンチレバー9において、横幅w2(mm)を変化させたときに検出される出力信号の測定値である。図8における横軸は、カンチレバー9の横幅w2(mm)であり、縦軸は出力信号(mV)である。図8の測定結果より、本実施形態例の光熱分光装置1では、カンチレバーの幅が1mmのときに、より大きな出力信号が得られることがわかる。
【0054】
また、図9は、本実施形態例において、励起光Lのパワー(μW)を変化させたときに検出される出力信号(μV)の測定結果である。この測定においては、励起光源2として4mWのヘリウムネオンレーザを用い、減衰フィルタを用いて励起光Lのパワーを4mWから減少させながら出力信号(μV)を測定している。この測定により励起光Lのパワーに対して、本実施形態例の光熱分光装置1で、試料10に発生する熱量をどれだけ検出できるかをみることができる。図9の測定結果よれば、本実施形態例の光熱分光装置1では、励起光Lのパワーに比例した発熱量を出力信号として検出できることがわかる。これにより、本実施形態例の光熱分光装置1では、試料10に発生する熱量が確実に出力信号として出力されているといえる。
【0055】
また、図10は、本実施形態例において、光学チョッパー6のチョッピング周波数を変化させたときに検出される出力信号(μV)の測定結果である。図10により、チョッピング周波数が3Hz〜10Hz程度の低周波ときに、大きな出力信号が得られることがわかる。すなわち、ノイズが一定値であるとすると、3Hz〜10Hzのときに、よりS/N比が改善されるといえる。また、チョッピング周波数が10Hz周辺の値において、検出される出力信号が一部大きくなるところがある。これは、試料の形状と励起光が照射される試料位置で決まる共振周波数に相当する周波数である。試料の形状と励起光が照射される試料位置で決まる共振周波数が高くなるようにカンチレバーの形状を決定すれば、この部分でよりS/N比を改善することができ得る。
【0056】
本実施形態例におけるカンチレバーを利用した光熱分光装置1では、図8、図10に示す測定結果から求められる最適な条件を用いることにより、より測定感度を向上させることができる。
【0057】
また、本実施形態例においては、測定光源4から出射される測定光Lの反射光Lを変位センサ11で検出するという光学的手法により、カンチレバー9のたわみ量を検出する構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、電気的手法を用いる変位センサ11により、カンチレバー9のたわみ量を検出する構成とすることもできる。電気的手法を用いる場合には、カンチレバー9のたわむ側の面に、一部金属片を貼り付ける構成とする必要がある。このような構成とすることで、カンチレバー9に貼り付けられた金属片の変位を、例えばコイルが内蔵されたセンサヘッドで検出することにより、カンチレバーのたわみ量を検出することができる。また、電気的手法としては、より測定精度の高い方法として、トンネル電流を用いた方法が挙げられる。その他、変位センサの構成としては、超音波を用いてカンチレバーのたわみ量を検出する方法等が適用できる。
【0058】
また、本実施形態例においては、試料10をXYステージ17上に配置することにより、励起光Lが試料の所望の位置に照射されるように微調整可能となり、走査型の光熱分光装置を構成することができる。
【0059】
次に、図11に本発明の第2の実施形態に係る光熱分光装置20の概略構成を示す。本実施形態例に係る光熱分光装置20は、小型化された、例えばハンディタイプのカンチレバーを利用した光熱分光装置である。
【0060】
本実施形態例のカンチレバーを利用した光熱分光装置20は、試料に発生する熱によりたわむように構成されたカンチレバー24と、カンチレバー24の一部を固定するための固定部25と、試料に励起光Lを照射するための励起光源21と、カンチレバー24上に測定光Lを照射するための測定光源22と、カンチレバー24のたわみ量に応じて変化する測定光Lの反射光Lを検出する変位センサ23と、変位センサ23で検出された反射光Lの位置に対応する信号成分を検出する信号検出器26と、信号検出器26で検出された値を表示する表示器27と、駆動源となる電源29が、1つの筐体30内に構成されている。また、本実施形態例においては、カンチレバーを利用した光熱分光装置20の小型化のため、測定光Lは、反射ミラー28を介してカンチレバー24上に照射される構成とする。励起光源21、測定光源22、反射ミラー28、変位センサ23からなる光学系は、好ましくは、変形しにくい金属板33上に構成する。
【0061】
本実施形態例において、カンチレバー24は、カンチレバー24の一方の面側が筐体30の外側に臨むように筐体開口部31に構成されており、カンチレバー24の片端が固定部25により筐体30に固定されている。本実施形態例のカンチレバー24は、第1の実施形態と同様の構成が可能である。
【0062】
励起光源21は、必要な測定波長の励起光Lを発振できる半導体レーザ等から構成される。本実施形態例では、試料32に照射される励起光Lの波長は、評価したい対象に合わせて選択される。例えば、アモルファスシリコン薄膜を有する薄膜太陽電池において、薄膜の未結合欠陥の評価をする場合には、波長830nm、エネルギー1.5eVの励起光Lを発振する半導体レーザを用いればよい。また、アモルファスシリコン薄膜を有する薄膜太陽電池において、薄膜の水素含有量の評価をする場合には、波長5000nmの励起光Lを発振する半導体レーザ等の光源を選択して用いればよい。
【0063】
測定光源22は、例えば半導体レーザから構成され、測定光源22から出射された測定光L2は、反射ミラー28によって反射されてカンチレバー24上に照射される。そして測定光L2は、カンチレバー24上で反射し、その反射光Lは、変位センサ23に入射される。
【0064】
変位センサ23は、カンチレバー24上に照射される測定光Lの反射光Lを検出するものであり、測定光Lの反射光路上に構成される。変位センサ23では、反射光Lを検出されることにより、カンチレバー24のたわみ量が検出され、この検出されたカンチレバー24のたわみ量に対応した信号成分が、信号検出器26に送られる。
【0065】
本実施形態例では、信号検出器26は電圧計で構成され、変位センサ23で検出された信号成分に対応して発生する電圧が測定される。測定された電圧は、表示器27に表示される。表示器27の表示面は、例えば筐体30外部に臨むように構成され、随時表示面を視認できる構成とされる。
【0066】
以上の構成からなるカンチレバーを利用した光熱分光装置20を用いて、試料の光吸収係数を測定することができる。
以下、図12を用いて本実施形態例の光熱分光装置20の使用方法を説明する。本実施形態例では、試料32として、基板32b上に薄膜32aが形成された試料を被測定物として用いることとする。
【0067】
まず、図12に示すように本実施形態例のカンチレバーを利用した光熱分光装置20の筐体開口部31に設けられたカンチレバー24の、筐体外部に面する面側を、試料32の薄膜32a面に密着させる。カンチレバー24の端部は、筐体30に固定されているので、この状態において、カンチレバーの端部は、試料32aに対して固定の状態となる。
【0068】
次に、励起光源21から、所定の測定波長の励起光Lを出射し、試料32上に照射する。そうすると、試料32上に照射された励起光Lの光エネルギーが、非輻射再結合により薄膜32a中で熱エネルギーに変換され、薄膜32a中には熱が発生する。薄膜32a中に発生した熱により、カンチレバー24の固定されていない片端が、試料32とは反対側、すなわち、筐体30の内部方向にたわむ。
【0069】
続いて、カンチレバー24のたわみ部分に測定光源22から出射される測定光L1を照射し、その反射光L3を変位センサ23で検出する。変位センサ23で検出された信号成分を信号検出器26により検出し、その値を表示器27で表示する。本実施形態例では、信号検出器26は電圧計で構成されるので、表示器27には電圧値が表示されることとなる。
【0070】
本実施形態例では、薄膜32a中に発生した熱量をカンチレバー24のたわみ量として検出することができ、たわみ量を電圧値に変換して計測することができる。このように薄膜32a中に発生する熱量を検出することができ、これにより薄膜32a光吸収係数を測定される。
【0071】
本実施形態例のカンチレバーを利用した光熱分光装置20は、カンチレバーを利用した光熱分光法に必要な構成を一つの筐体30内に設け、カンチレバー24の一方の面が筐体30外部に臨むように構成されている。これにより、カンチレバーを利用した光熱分光装置20のカンチレバー24を、測定したい試料に密着させるだけで、試料の品質を簡便に測定することができる。例えば、薄膜太陽電池等の大きなデバイスにおける任意の場所の品質を調べたい場合であっても、カンチレバーを利用した光熱分光装置20のカンチレバー24をデバイス表面に接触させるだけでよいので、容易に薄膜の光吸収係数が測定できる。また、本実施形態例においては、カンチレバー24と、試料32が空間的に分離独立した関係であるので、試料32若しくは、本実施形態例の光熱分光装置20の位置を走査することにより、光吸収スペクトルの2次元評価が可能となる。
【0072】
また、試料の光吸収係数測定に必要な構成を1つの筐体内に配置したハンディタイプのカンチレバーを利用した光熱分光装置20とすることで、持ち運びが可能であり、様々な測定環境、測定試料に適応可能である。
【0073】
本実施形態例においても、第1の実施形態と同様、測定光源から出射される測定光の反射光を変位センサで検出するという光学的手法により、カンチレバーのたわみ量を検出する構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、電気的手法を用いる変位センサにより、カンチレバーのたわみ量を検出する構成とすることもでき、第1の実施形態と同様、種々の構成が可能である。
【0074】
第2の実施形態においても、被測定物である試料32として、基板32b上に薄膜32aが形成された試料を用いたが、測定することのできる形態は、固体に限定されるものではなく、固体の他、液体、気体、プラズマの測定が可能である。すなわち、カンチレバー24に接触可能なものであればよい。
【0075】
本発明のカンチレバーを利用した光熱分光法及びカンチレバーを利用した光熱分光装置を用いれば、試料の電子の状態密度、分子・格子振動の状態密度などがわかる高感度光吸収スペクトル(非破壊、前処理不要)の2次元分布を測定することができる。また、本発明によれば、エレクトロニクス分野では、バンドギャップ、欠陥密度、不純物濃度の測定が可能であり、化学分野では、化学反応過程、微量元素の同定が可能であり、また、バイオ分野においては、微量ウィルス、細菌の同定が可能である。
【0076】
以上のように、本発明のカンチレバーを利用した光熱分光法及びカンチレバーを利用した光熱分光装置は、様々な測定環境において実施可能であり、従来法では制限のある様々な試料に応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるカンチレバーを利用した熱分光装置の概略構成図である。
【図2】A,B,C カンチレバーの構成例を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における光熱分光装置の要部を示す概略構成図である。
【図4】光熱偏向分光法(PDS)、光熱ベンディング分光法(PBS)、カンチレバーを利用した光熱分光法(PSC)を用いたときの比較図である。
【図5】第1の実施形態におけるカンチレバーを利用した光熱分光装置で測定された光吸収スペクトルを示す。
【図6】光エネルギーによる電子の遷移の概念図である。
【図7】第1の実施形態におけるカンチレバーを利用した光熱分光装置で測定された光吸収スペクトルと、光熱偏向分光法(PDS)を用いて測定された光吸収スペクトルの比較図である。
【図8】第1の実施形態のカンチレバーを利用した光熱分光装置におけるカンチレバーの形状を変化させたときの出力信号の測定値を示す図である。
【図9】第1の実施形態のカンチレバーを利用した光熱分光装置における励起光のパワーを変化させたときの出力信号の測定値を示す図である。
【図10】第1の実施形態のカンチレバーを利用した光熱分光装置における励起光の周波数を変化させたときの出力信号の測定値を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施形態におけるカンチレバーを利用した光熱分光装置の概略構成図である。
【図12】第2の実施形態におけるカンチレバーを利用した光熱分光装置を用いて試料を測定するとき様子を示した概略構成図である。
【図13】従来例に係る光熱偏向分光法(PDS)を用いるための概略構成を示す図である。
【図14】従来例に係る光熱ベンディング分光法(PBS)を用いるための概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0078】
1,20・・光熱分光装置、2,21・・励起光源、3,28・・反射ミラー、4,22・・測定光源、5・・モノクロメータ、6・・光学チョッパー、7・・光学フィルター、8・・集光レンズ、9,24・・カンチレバー、10,32・・試料、11,23・・変位センサ、12・・ロックインアンプ、13・・コンピュータ、14,25・・固定部、15・・信号検出器、16・・励起光源系、29・・電源、30・・筐体、31・・筐体開口部、33・・金属板、L・・励起光、L・・測定光、L・・反射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料上に、カンチレバーの一部が固定されるようにカンチレバーの一方の面側を接触させる工程と、
前記試料の位置を変える工程と、
前記試料に励起光を照射する工程と、
前記励起光の照射により試料中に発生した熱で、前記試料に接触していない他方の面側にたわむカンチレバーのたわみ量を、変位センサにより検出する工程と、
前記変位センサで検出したたわみ量に対応する信号成分を検出する工程と、
を含むことを特徴とする光熱分光法。
【請求項2】
前記変位センサにより検出するたわみ量は、前記カンチレバーに測定光を照射し、前記測定光の反射光を検出することによって測定される、
ことを特徴とする請求項1記載の光熱分光法。
【請求項3】
試料に発生する熱でたわむように薄膜形成されたカンチレバーと、
前記カンチレバーの一部を前記試料に対して固定するための固定部と、
前記試料に励起光を照射するための励起光源と、
前記カンチレバーのたわみ量を検出する変位センサと、
前記変位センサで検出されたたわみ量に対応する信号成分を検出する信号検出器と、
を備えたことを特徴とする光熱分光装置。
【請求項4】
前記試料を載置し、前記試料の位置を制御するためのXYステージを有する
ことを特徴とする光熱分光装置。
【請求項5】
前記カンチレバーは、水晶、石英ガラス、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス、フッ化物ガラス、カルコゲナイドガラス、マイカ、シリコン、サファイア、窒化シリコン、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム、フッ化バリウム、臭沃化タリウム、臭塩化タリウム、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、フッ素樹脂から選択される1種類の材料からなる単層薄膜で構成される
ことを特徴とする請求項3記載の光熱分光装置。
【請求項6】
前記カンチレバーは、熱膨張係数の異なる材料からなる薄膜が2層積層されたバイモルフ構造である
ことを特徴とする請求項3記載の光熱分光装置。
【請求項7】
前記カンチレバーは、水晶、石英ガラス、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス、フッ化物ガラス、カルコゲナイドガラス、マイカ、シリコン、サファイア、窒化シリコン、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム、フッ化バリウム、臭沃化タリウム、臭塩化タリウム、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、フッ素樹脂から選択される2種類の熱膨張係数の異なる材料からなる薄膜が2層積層されたバイモルフ構造である
ことを特徴とする請求項6記載の光熱分光装置。
【請求項8】
さらに、前記カンチレバー上に測定光を照射するための測定光源を有し、
前記変位センサは、前記カンチレバー上に照射される前記測定光源からの測定光の反射光を検出することにより、前記カンチレバーのたわみ量を検出する
ことを特徴とする請求項3記載の光熱分光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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