説明

光硬化型インクジェット記録用インク組成物、インクジェット記録方法

【課題】硬化性及び硬化膜の伸張性に優れ、かつ、厚膜を硬化した際の硬化シワの発生を防止可能な光硬化型インクジェット記録用インク組成物を提供する。
【解決手段】重合性化合物と光重合開始剤とを含有する光硬化型インクジェット記録用インク組成物であって、前記重合性化合物は、該インク組成物の総質量に対して10〜35質量%の一般式(I)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類と、該インク組成物の総質量に対して20〜60質量%の単官能(メタ)アクリレート(ただし、前記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を除く。)と、該インク組成物の総質量に対して10〜40質量%の多官能(メタ)アクリレートと、を含む、光硬化型インクジェット記録用インク組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化型インクジェット記録用インク組成物及びこれを用いたインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙などの被記録媒体に、画像データ信号に基づき画像を形成する記録方法として、種々の方式が利用されてきた。このうち、インクジェット方式は、安価な装置であり、必要とされる画像部のみにインクを吐出し被記録媒体上に直接画像を形成するため、インクを効率良く使用でき、ランニングコストが安い。さらに、インクジェット方式は騒音が小さいため、記録方法として優れている。
【0003】
近年、インクジェット方式の記録方法において、良好な耐水性、耐溶剤性、及び耐擦過性などを与えることのできるインク組成物として、光を照射すると硬化する光硬化型インク組成物が使用されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、薄膜における活性エネルギー線硬化性に優れるものとすること等を目的として、ビニロキシエトキシエチルアクリレート又はビニロキシエトキシエチルメタクリレート47.5重量部と、4−アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン47.5重量部と、トリエチレングリコールジアクリレート15重量部と、光重合開始剤5重量部と、からなる光硬化性組成物が開示されている(特許文献1の[0011]、[0081]、[0082])。
【0005】
例えば、特許文献2には、膜厚3μmの薄膜硬化性及びパターン精度に優れたインプリント用硬化性組成物を提供することを目的として、単官能アクリルモノマー15.4質量%と、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル19.3質量%と、2官能アクリルモノマー及び3官能アクリルモノマー51.3質量%(合計)と、光重合開始剤1.0質量%と、酸化防止剤、カップリング剤、及び界面活性剤と、からなるインプリント用硬化性組成物が開示されている(特許文献2の[0092]−[0098]、[0100]−[0103])。
【0006】
例えば、特許文献3には、室温下で低粘度であり、かつ、硬化膜が柔軟性に優れるインクジェット印刷用活性エネルギー線硬化型インクを提供することを目的として、ペンタエリスリトールテトラアクリレート2.5重量部と、ジエチレングリコールモノビニルエーテルアクリレート32.7重量部と、イソボルニルアクリレート6重量部と、テトラエチレングリコールジアクリレート22.7重量部と、N−ビニルピロリドン24.6重量部と、光重合開始剤、顔料、及び分散剤と、からなるインクジェット印刷用活性エネルギー線硬化型インクが開示されている(特許文献3の[0003]、[0069]−[0072]、[0077])。
【0007】
例えば、特許文献4は、VEEA(2−(ビニルエトキシ)エチルアクリレート)を24.38重量%、SR489(トリデシルアクリレート)を53.62重量%、M600(ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート)を19.50重量%、重合可能光開始剤INI−C1を2.50重量%混合して得るフリーラジカル硬化性液(INV−18)を開示している(特許文献4の[0315]の表18)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4204333号明細書
【特許文献2】特開2010−157706号公報
【特許文献3】特開2009−96910号公報
【特許文献4】特表2011−500932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1〜3に開示された組成物やインクは、硬化性に劣ったり、硬化膜の伸張性に劣ったり、特に厚さ10μm程度の厚みのあるインク塗膜を硬化した場合、硬化膜表面にシワ(以下、「硬化シワ」とも言う。)が発生したりするという問題が生じる。また、特許文献4に開示されたフリーラジカル硬化性液(INV−18)は色材を含まない。ここで、色材を含むフリーラジカル硬化性液やインク組成物は、色材を含まないフリーラジカル硬化性液やインク組成物よりも硬化性に劣り、特に厚膜記録を行う場合の厚膜内部の硬化性に劣る傾向にある。そのため、色材を含み、かつ硬化性に優れた光硬化型インクジェット記録用インク組成物が求められている。そこで、本発明は、厚膜硬化性、及び厚膜を硬化した際の硬化膜の伸張性に優れ、かつ、厚膜を硬化した際の硬化シワの発生を防止可能な光硬化型インクジェット記録用インク組成物を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した。その結果、色材に加えて、重合性化合物として、所定構造を有するビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類と、当該ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類以外の単官能(メタ)アクリレートと、2官能以上の多官能(メタ)アクリレートと、をそれぞれ所定量ずつ含む光硬化型インクジェット記録用インク組成物により、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は下記のとおりである。
[1]
重合性化合物と光重合開始剤とを含有する光硬化型インクジェット記録用インク組成物であって、
前記重合性化合物は、該インク組成物の総質量に対して10〜40質量%の下記一般式(I):
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(I)
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類と、
該インク組成物の総質量に対して20〜60質量%の単官能(メタ)アクリレート(ただし、前記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を除く。)と、
該インク組成物の総質量に対して10〜40質量%の多官能(メタ)アクリレートと、
色材と、を含む、光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
[2]
前記単官能(メタ)アクリレートは、該インク組成物の総質量に対して10〜60質量%のフェノキシエチル(メタ)アクリレートを含む、[1]に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
[3]
前記光重合開始剤は、該インク組成物の総質量に対して6〜13質量%のアシルフォスフィンオキサイド化合物を含む、[1]又は[2]に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
[4]
前記単官能(メタ)アクリレートの含有量が、該インク組成物の総質量に対して20〜40質量%である、[1]〜[3]のいずれかに記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
[5]
前記多官能(メタ)アクリレートの含有量が、該インク組成物の総質量に対して20〜30質量%である、[1]〜[4]のいずれかに記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
[6]
発光ピーク波長が350〜420nmの範囲にある紫外線を、300mJ/cm2以下の照射エネルギーで照射することにより硬化可能である、[1]〜[5]のいずれかに記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
[7]
前記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類が、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルである、[1]〜[6]のいずれかに記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
[8]
前記単官能(メタ)アクリレートの皮膚一次刺激指数が0〜4である、[1]〜[7]のいずれかに記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
[9]
[1]〜[8]のいずれかに記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物を用いたインクジェット記録方法であって、
前記光硬化型インクジェット記録用インク組成物を被記録媒体に付着させ、付着させた光硬化型インクジェット記録用インク組成物に、発光ダイオードを用いて、発光ピーク波長が350〜420nmの範囲にある紫外線を照射する、インクジェット記録方法。
[10]
前記紫外線の照射エネルギーは、300mJ/cm2以下である、[9]に記載のインクジェット記録方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0013】
本明細書において、「硬化」とは、重合性化合物を含むインクに放射線を照射すると、重合性化合物が重合してインクが固化することをいう。「硬化性」とは、光を感応して硬化する性質をいう。「伸張性」とはインクの硬化膜(塗膜)の伸びと換言でき、インク塗膜を硬化させて作製した記録物を引っ張ったときに、硬化膜がクラック(ひび)を生じることなく伸びる性質をいう。
【0014】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びそれに対応するメタクリレートのうち少なくともいずれかを意味し、「(メタ)アクリル」はアクリル及びそれに対応するメタクリルのうち少なくともいずれかを意味し、「(メタ)アクリロイル」はアクリロイル及びそれに対応するメタクリロイルのうち少なくともいずれかを意味する。
【0015】
本明細書において、「記録物」とは、被記録媒体上にインクが記録されて硬化物が形成されたものをいう。なお、本明細書における硬化物は、インクの硬化膜や塗膜を含む、硬化された物質を意味する。
【0016】
[光硬化型インクジェット記録用インク組成物]
本発明の一実施形態に係る光硬化型インクジェット記録用インク組成物(以下、単に「インク組成物」とも言う。)は、重合性化合物と光重合開始剤とを含有する。これらのうち重合性化合物は、当該インク組成物の総質量(100質量%)に対して10〜40質量%の下記一般式(I):
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(I)
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類と、当該インク組成物の総質量に対して20〜60質量%の単官能(メタ)アクリレート(ただし、上記の一般式(I)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を除く。)と、当該インク組成物の総質量に対して10〜40質量%の多官能(メタ)アクリレートと、を含むものである。
以下、本実施形態のインク組成物に含まれるか、又は含まれ得る添加剤(成分)を説明する。
【0017】
〔重合性化合物〕
本実施形態のインク組成物に含まれる重合性化合物は、後述する光重合開始剤の作用により紫外線照射時に重合し、印刷されたインクを硬化させることができる。
【0018】
(ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類)
本実施形態において必須の重合性化合物であるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類は、上記一般式(I)で示される。
【0019】
インク組成物が当該ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含有することにより、インクの硬化性を優れたものとすることができ、さらにインクを低粘度化することもできる。さらに言えば、ビニルエーテル基を有する化合物及び(メタ)アクリル基を有する化合物を別々に使用するよりも、ビニルエーテル基及び(メタ)アクリル基を一分子中に共に有する化合物を使用する方が、インクの硬化性を良好にする上で好ましい。
【0020】
上記の一般式(I)において、R2で表される炭素数2〜20の2価の有機残基としては、炭素数2〜20の直鎖状、分枝状又は環状の置換されていてもよいアルキレン基、構造中にエーテル結合及び/又はエステル結合による酸素原子を有する置換されていてもよい炭素数2〜20のアルキレン基、炭素数6〜11の置換されていてもよい2価の芳香族基が好適である。これらの中でも、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、及びブチレン基などの炭素数2〜6のアルキレン基、オキシエチレン基、オキシn−プロピレン基、オキシイソプロピレン基、及びオキシブチレン基などの構造中にエーテル結合による酸素原子を有する炭素数2〜9のアルキレン基が好適に用いられる。
【0021】
上記の一般式(I)において、R3で表される炭素数1〜11の1価の有機残基としては、炭素数1〜10の直鎖状、分枝状又は環状の置換されていてもよいアルキル基、炭素数6〜11の置換されていてもよい芳香族基が好適である。これらの中でも、メチル基又はエチル基である炭素数1〜2のアルキル基、フェニル基及びベンジル基などの炭素数6〜8の芳香族基が好適に用いられる。
【0022】
上記の各有機残基が置換されていてもよい基である場合、その置換基は、炭素原子を含む基及び炭素原子を含まない基に分けられる。まず、上記置換基が炭素原子を含む基である場合、当該炭素原子は有機残基の炭素数にカウントされる。炭素原子を含む基として、以下に限定されないが、例えばカルボキシル基、アルコキシ基等が挙げられる。次に、炭素原子を含まない基として、以下に限定されないが、例えば水酸基、ハロ基が挙げられる。
【0023】
上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類としては、以下に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−ビニロキシメチルプロピル、(メタ)アクリル酸2−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1,1−ジメチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸m−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸o−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、及び(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールモノビニルエーテルが挙げられる。
【0024】
これらの中でも、インクをより低粘度化でき、引火点が高く、かつ、インクの硬化性に一層優れるため、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、すなわち、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル及びメタクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルのうち少なくともいずれかが好ましく、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルがより好ましい。特にアクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル及びメタクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルは、何れも単純な構造であって分子量が小さいため、インクを顕著に低粘度化することができる。(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルとしては、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル及び(メタ)アクリル酸2−(1−ビニロキシエトキシ)エチルが挙げられ、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルとしては、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル及びアクリル酸2−(1−ビニロキシエトキシ)エチルが挙げられる。なお、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルの方が、メタクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルに比べて硬化性の面で優れている。
【0025】
ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、10〜40質量%である。含有量が10質量%以上であると、特にインクの硬化性が優れたものとなる。一方で、含有量が40質量%以下であると、特に硬化シワの発生を防止することができる。また、上記含有量は、インクの硬化性を一層優れたものとし、かつ、硬化シワの発生を一層効果的に防止するため、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、10〜35質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましく、20〜30質量%がさらに好ましい。
【0027】
上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の製造方法としては、以下に限定されないが、(メタ)アクリル酸と水酸基含有ビニルエーテルとをエステル化する方法(製法B)、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物と水酸基含有ビニルエーテルとをエステル化する方法(製法C)、(メタ)アクリル酸無水物と水酸基含有ビニルエーテルとをエステル化する方法(製法D)、(メタ)アクリル酸エステルと水酸基含有ビニルエーテルとをエステル交換する方法(製法E)、(メタ)アクリル酸とハロゲン含有ビニルエーテルとをエステル化する方法(製法F)、(メタ)アクリル酸アルカリ(土類)金属塩とハロゲン含有ビニルエーテルとをエステル化する方法(製法G)、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとカルボン酸ビニルとをビニル交換する方法(製法H)、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとアルキルビニルエーテルとをエーテル交換する方法(製法I)が挙げられる。
【0028】
これらの中でも、本実施形態に所望の効果を一層発揮することができるため、製法Eが好ましい。
【0029】
(単官能(メタ)アクリレート)
本実施形態のインク組成物は単官能(メタ)アクリレートを含む。インク組成物が単官能(メタ)アクリレートを含有することにより、特に硬化膜の伸張性を優れたものとすることができる。ただし、当該単官能(メタ)アクリレートは、上記の一般式(I)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を除くものとする。
【0030】
単官能(メタ)アクリレートとしては、以下に限定されないが、例えば、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ラクトン変性可とう性(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0031】
これらの中でも、光重合開始剤などの添加剤との相溶性が良好となり、さらに粘度及び臭気を低下させることができ、かつ、インクの硬化性を一層優れたものとできるため、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが好ましく、フェノキシエチルアクリレートがより好ましい。
【0032】
また、単官能(メタ)アクリレートの皮膚一次刺激指数(P.I.I.:Primary Irritation Index)は、皮膚刺激性を低く抑えることができインクの安全性が良好となるため、0〜4が好ましく、0〜3がより好ましい。
【0033】
単官能(メタ)アクリレートは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
単官能(メタ)アクリレートの含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、20〜60質量%である。含有量が20質量%以上であると、硬化膜の伸張性が優れたものとなる。一方で、含有量が60質量%以下であると、硬化シワの発生を防止することができる。また、上記含有量は、硬化膜の伸張性を一層優れたものとし、かつ、硬化シワの発生を一層効果的に防止するため、25〜55質量%が好ましく、30〜50質量がより好ましい。また、上記含有量は、特に硬化シワの発生を防止するため、40質量%以下が好ましく、20〜40質量%がより好ましい。
【0035】
単官能(メタ)アクリレートの中でも、フェノキシエチル(メタ)アクリレートの含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、10〜60質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。含有量が上記範囲内であると、インクの硬化性をより一層優れたものとすることができる。また、光重合開始剤としてアシルフォスフィンオキサイド化合物を用いる場合、その溶解性を良好にすることができる。
【0036】
(多官能(メタ)アクリレート)
本実施形態のインク組成物は多官能(メタ)アクリレートを含む。インク組成物が多官能(メタ)アクリレートを含有することにより、特に硬化シワの発生を防止することができる。なお、本明細書における多官能(メタ)アクリレートは、2官能以上の(メタ)アクリレートを意味する。
【0037】
多官能(メタ)アクリレートのうち、2官能(メタ)アクリレートとしては、以下に限定されないが、例えば、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO(エチレンオキサイド)付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO(プロピレンオキサイド)付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、及びポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中でも、安全性や低皮膚刺激性に優れるため、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、及びジメチロールトリシクロデカンジアクリレートからなる群より選択される一種以上が好ましい。
【0038】
多官能(メタ)アクリレートのうち、3官能以上の(メタ)アクリレートとしては、以下に限定されないが、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、カウプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、及びカプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中でも、安全性や低皮膚刺激性に優れるため、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが好ましい。
【0039】
上記の他、多官能(メタ)アクリレートとして、エポキシ(メタ)アクリレート、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート及び芳香族ウレタン(メタ)アクリレートといったウレタン(メタ)アクリレート、並びにポリエステル(メタ)アクリレート等のオリゴマーを用いてもよい。中でも、柔軟性に優れるため、ウレタンアクリレートオリゴマーが好ましい。
【0040】
多官能(メタ)アクリレートは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
多官能(メタ)アクリレートの含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、10〜40質量%である。含有量が10質量%以上であると、硬化シワの発生を防止することができる。一方で、含有量が40質量%以下であると、硬化膜の伸張性が優れたものとなる。また、上記含有量は、硬化シワの発生を一層効果的に防止することができ、かつ、硬化膜の伸張性が一層優れたものとなるため、15〜35質量%が好ましく、20〜30質量%がより好ましい。
【0042】
(上記以外の重合性化合物)
また、上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類、単官能(メタ)アクリレート、及び多官能(メタ)アクリレート以外に、従来公知の、単官能及び多官能の種々のモノマー及びオリゴマーもさらに使用可能である(以下、「その他の重合性化合物」という。)。上記モノマーとしては、例えば、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸及びマレイン酸等の不飽和カルボン酸やそれらの塩又はエステル、ウレタン、アミド及びその無水物、アクリロニトリル、スチレン、種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、並びに不飽和ウレタンが挙げられる。また、上記オリゴマーとしては、例えば、上記のモノマーから形成されるオリゴマーが挙げられる。
【0043】
その他の重合性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。その他の重合性化合物の含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対して50質量%以下であればよい。
【0044】
〔光重合開始剤〕
本実施形態のインク組成物に含まれる光重合開始剤は、紫外線の照射による光重合によって、被記録媒体の表面に存在するインクを硬化させて印字を形成するために用いられる。放射線の中でも紫外線(UV)を用いることにより、安全性に優れ、且つ光源ランプのコストを抑えることができる。光(紫外線)のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、上記重合性化合物の重合を開始させるものであれば、制限はないが、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤を使用することができ、中でも光ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。
【0045】
上記の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物が挙げられる。
【0046】
これらの中でも、特にインクの硬化性を良好にすることができるため、アシルフォスフィンオキサイド化合物を用いることが好ましく、アシルフォスフィンオキサイド化合物及びチオキサントン化合物の併用がより好ましい。
【0047】
光ラジカル重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン、及びビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシドが挙げられる。
【0048】
光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、IRGACURE 651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、IRGACURE 184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、DAROCUR 1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)、IRGACURE 2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン)、IRGACURE 127(2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オン}、IRGACURE 907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン)、IRGACURE 369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1)、IRGACURE 379(2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン)、DAROCUR TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド)、IRGACURE 819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド)、IRGACURE 784(ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム)、IRGACURE OXE 01(1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)])、IRGACURE OXE 02(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム))、IRGACURE 754(オキシフェニル酢酸、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物)(以上、BASF社製)、KAYACURE DETX−S(2,4−ジエチルチオキサントン)(日本化薬社(Nippon Kayaku Co., Ltd.)製)、Lucirin TPO、LR8893、LR8970(以上、BASF社製)、及びユベクリルP36(UCB社製)などが挙げられる。
【0049】
光重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
光重合開始剤の含有量は、紫外線硬化速度を向上させて硬化性を優れたものとすることができ、かつ、光重合開始剤の溶け残りや光重合開始剤に由来する着色を避けるため、インク組成物の総質量(100質量%)に対して、5〜20質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。
【0051】
光重合開始剤がアシルフォスフィンオキサイド化合物を含む場合、特にLED(好ましい発光ピーク波長:350nm〜420nm)による硬化の際に十分な硬化速度が得られるため硬化性に一層優れることから、当該アシルフォスフィンオキサイド化合物の含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対して、6〜13質量%であることが好ましく、7〜12質量%であることがより好ましい。
【0052】
〔色材〕
本実施形態のインク組成物は、色材をさらに含んでもよい。色材は、顔料及び染料のうち少なくとも一方を用いることができる。
【0053】
(顔料)
本実施形態において、色材として顔料を用いることにより、インク組成物の耐光性を向上させることができる。顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。
【0054】
無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック 7)類、酸化鉄、酸化チタンを使用することができる。
【0055】
有機顔料としては、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料が挙げられる。
【0056】
更に詳しくは、ブラックインクとして使用されるカーボンブラックとしては、No.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B等(以上、三菱化学社(Mitsubishi Chemical Corporation)製商品名)、Raven 5750、Raven 5250、Raven 5000、Raven 3500、Raven 1255、Raven 700等(以上、コロンビアカーボン(Carbon Columbia)社製商品名)、Rega1 400R、Rega1 330R、Rega1 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400等(キャボット社(CABOT JAPAN K.K.)製商品名)、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color B1ack S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black 4等(以上、デグッサ(Degussa)社製商品名)が挙げられる。
【0057】
ホワイトインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントホワイト 6、18、21が挙げられる。
【0058】
イエローインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントイエロー 1,2,3,4,5,6,7,10,11,12,13,14,16,17,24,34,35,37,53,55,65,73,74,75,81,83,93,94,95,97,98,99,108,109,110,113,114,117,120,124,128,129,133,138,139,147,151,153,154,167,172,180が挙げられる。
【0059】
マゼンタインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントレッド 1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38,40,41,42,48(Ca),48(Mn),57(Ca),57:1,88,112,114,122,123,144,146,149,150,166,168,170,171,175,176,177,178,179,184,185,187,202,209,219,224,245、又はC.I.ピグメントヴァイオレット 19,23,32,33,36,38,43,50が挙げられる。
【0060】
シアンインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントブルー 1,2,3,15,15:1,15:2,15:3,15:34,15:4,16,18,22,25,60,65,66,又はC.I.バットブルー 4,60が挙げられる。
【0061】
また、マゼンタ、シアン及びイエロー以外の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン 7,10、又はC.I.ピグメントブラウン 3,5,25,26、又はC.I.ピグメントオレンジ 1,2,5,7,13,14,15,16,24,34,36,38,40,43,63が挙げられる。
【0062】
上記顔料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
(染料)
本実施形態において、色材として染料を用いることができる。染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能である。前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
【0064】
上記染料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
色材の含有量は、良好な発色性を有し、色材自身の光吸収による塗膜の硬化阻害を低減できるため、インク組成物の総質量(100質量%)に対して、1〜20質量%が好ましい。色材を含むインク組成物は、色材を含まないインク組成物よりも硬化性に劣り、特に厚膜記録を行う場合の厚膜内部の硬化性に劣るのが通常である。だが、本実施形態のインク組成物は、所定の構成を採ることにより、色材を含有するインク組成物であっても、良好な記録物を得ることができるインク組成物とすることができる。
【0066】
〔分散剤〕
本実施形態のインク組成物が顔料を含む場合、顔料分散性をより良好なものとするため、分散剤をさらに含んでもよい。分散剤として、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤などの顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤が挙げられる。その具体例として、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ビニル系ポリマー及びコポリマー、アクリル系ポリマー及びコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、及びエポキシ樹脂のうち一種以上を主成分とするものが挙げられる。高分子分散剤の市販品として、味の素ファインテクノ社製のアジスパーシリーズ(商品名)、アビシア社(Avecia Co.)から入手可能なソルスパーズシリーズ(Solsperse 36000等〔商品名〕)、BYKChemie社製のディスパービックシリーズ(商品名)、楠本化成社製のディスパロンシリーズ(商品名)が挙げられる。
【0067】
分散剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、分散剤の含有量は特に制限されず適宜好ましい量を添加すればよい。
【0068】
〔その他の添加剤〕
本実施形態のインク組成物は、上記に挙げた添加剤以外の添加剤(成分)を含んでもよい。このような成分としては、特に制限されないが、例えば従来公知の、重合促進剤、重合禁止剤、スリップ剤(界面活性剤)、浸透促進剤、及び湿潤剤(保湿剤)、並びにその他の添加剤があり得る。上記のその他の添加剤として、例えば従来公知の、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、及び増粘剤が挙げられる。
【0069】
また、上記インク組成物は、好ましくは350〜420nmの範囲、より好ましくは360〜400nmの範囲に発光ピーク波長を有する紫外線を照射することにより硬化可能である。本実施形態のインク組成物が上記範囲内の発光ピーク波長で硬化可能であると、当該インク組成物の組成に起因して低エネルギー且つ高速での硬化が可能となる。特に、低エネルギーで硬化可能であることは、環境面などから近年注目されている発光ダイオード(LED)を紫外線の照射源として使用できることにつながるため、好ましいと言える。つまり、本実施形態のインク組成物は、LEDによる硬化性に優れている。
また、300mJ/cm2以下の紫外線の照射エネルギーで硬化するインク組成物が好ましく、200mJ/cm2以下の紫外線の照射エネルギーで硬化するインク組成物がより好ましい。このようなインク組成物を用いることにより、低コストで画像を形成することができる。なお、照射エネルギーは、照射時間に照射強度を乗じて算出される。
【0070】
このように、本実施形態によれば、硬化性及び硬化膜の伸張性に優れ、かつ、厚膜を硬化した際の硬化シワの発生を防止可能な光硬化型インクジェット記録用インク組成物を提供することができる。
【0071】
[被記録媒体]
本実施形態のインク組成物は、後述するインクジェット記録方法によって、被記録媒体上に吐出されること等により、記録物が得られる。この被記録媒体として、例えば、吸収性又は非吸収性の被記録媒体が挙げられる。後述する実施形態のインクジェット記録方法は、水性インクの浸透が困難な非吸収性被記録媒体から、水性インクの浸透が容易な吸収性被記録媒体まで、様々な吸収性能を持つ被記録媒体に幅広く適用できる。ただし、上記のインク組成物を非吸収性の被記録媒体に適用した場合は、紫外線を照射し硬化させた後に乾燥工程を設けること等が必要となる場合がある。
【0072】
吸収性被記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、水性インクの浸透性が高い電子写真用紙などの普通紙、インクジェット用紙(シリカ粒子やアルミナ粒子から構成されたインク吸収層、あるいは、ポリビニルアルコール(PVA)やポリビニルピロリドン(PVP)等の親水性ポリマーから構成されたインク吸収層を備えたインクジェット専用紙)から、水性インクの浸透性が比較的低い一般のオフセット印刷に用いられるアート紙、コート紙、キャスト紙等が挙げられる。
【0073】
非吸収性被記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチック類のフィルム、シート、及びプレート、鉄、銀、銅、アルミニウム等の金属類のプレート、又はそれら各種金属を蒸着により製造した金属プレートやプラスチック製のフィルム、ステンレスや真鋳等の合金のプレート等が挙げられる。
【0074】
[インクジェット記録方法]
本発明の一実施形態は、インクジェット記録方法に係る。上記実施形態の光硬化型インクジェット記録用インク組成物は、本実施形態のインクジェット記録方法に用いることができる。当該インクジェット記録方法は、被記録媒体上に、上記インク組成物を吐出する吐出工程と、上記吐出工程により吐出されたインク組成物に紫外線を照射して、上記インク組成物を硬化する硬化工程と、を含む。このようにして、被記録媒体上で硬化したインク組成物により、塗膜(硬化膜)が形成される。
【0075】
〔吐出工程〕
吐出工程において、被記録媒体上にインク組成物が吐出され、インク組成物が被記録媒体に付着する。吐出時におけるインク組成物の粘度は、5〜30mPa・sが好ましい。インク組成物の粘度が、インク組成物の温度を室温として、あるいは、インク組成物を加熱しない状態として上記のものであれば、インク組成物の温度を室温として、あるいはインク組成物を加熱せずに吐出させればよい。その際、吐出時のインクの温度は20〜30℃であることが好ましい。一方、インク組成物を所定の温度に加熱することによって粘度を好ましいものとして吐出させてもよい。このようにして、良好な吐出安定性が実現される。
【0076】
本実施形態の光硬化型インクジェット記録用インク組成物は、通常の水性インク組成物より粘度が高いため、吐出時の温度変動による粘度変動が大きい。このようなインクの粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴吐出速度の変化に対して大きな影響を与え、ひいては画質劣化を引き起こし得る。したがって、吐出時のインクの温度はできるだけ一定に保つことが好ましい。
【0077】
〔硬化工程〕
次に、上記硬化工程においては、被記録媒体上に吐出され付着したインク組成物が、光(紫外線)の照射によって硬化する。これは、インク組成物に含まれる光重合開始剤が紫外線の照射により分解して、ラジカル、酸、及び塩基などの開始種を発生し、重合性化合物の重合反応が、その開始種の機能によって促進されるためである。あるいは、紫外線の照射によって、重合性化合物の重合反応が開始するためである。このとき、インク組成物において光重合開始剤と共に増感色素が存在すると、系中の増感色素が紫外線を吸収して励起状態となり、光重合開始剤と接触することによって光重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。
【0078】
紫外線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、光硬化型インクジェット記録用インク組成物の硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。その一方で、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。さらに、紫外線発光ダイオード(UV−LED)及び紫外線レーザダイオード(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット用光源として期待されている。これらの中でも、UV−LEDが好ましい。
【0079】
ここで、LEDの出力を上げやすいため、発光ピーク波長が好ましくは350〜420nmの範囲にあるUV−LEDを用いて、好ましくは300mJ/cm2以下の照射エネルギーで硬化可能な光硬化型インクジェット記録用インク組成物をインクジェット記録方法に用いるとよい。この場合、低コスト印刷且つ大きな印刷速度が実現できる。このようなインク組成物は、上記波長範囲の紫外線照射により分解する光重合開始剤、及び上記波長範囲の紫外線照射により重合を開始する重合性化合物のうち少なくともいずれかを含むことにより得られる。
【0080】
このように、本実施形態によれば、硬化性及び硬化膜の伸張性に優れ、かつ、厚膜を硬化した際の硬化シワの発生を防止可能な光硬化型インクジェット記録用インク組成物を用いて、低コストで印刷速度が大きく、かつ、環境保護に資するインクジェット記録方法を提供することができる。
【実施例】
【0081】
以下、本発明の実施形態を実施例によってさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0082】
[使用成分]
下記の実施例及び比較例において使用した成分は、以下の通りである。
〔ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類〕
・VEEA(アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、日本触媒社(Nippon Shokubai Co., Ltd.)製商品名、以下では「VEEA」と略記した。)
〔単官能(メタ)アクリレート〕
・2−MTA(2−メトキシエチルアクリレート、大阪有機化学工業社(OSAKA ORGANIC CHEMICAL INDUSTRY LTD.)製商品名、以下では「2MEA」と略記した。)
・3−MBA(3−メトキシブチルアクリレート、大阪有機化学工業社製商品名、以下では「3MBA」と略記した。)
・V#160(ベンジルアクリレート、日立化成化学工業社(Hitachi Chemical Co., Ltd.)製商品名、以下では「BZA」と略記した。)
・FA−THFA(テトラヒドロフルフリルアクリレート、日立化成工業社製商品名、以下では「THFA」と略記した。)
・SR395(イソデシルアクリレート、Sartomer社製商品名、以下では「IDA」と略記した。)
・LA(ラウリルアクリレート、大阪有機化学工業社製商品名、以下では「LA」と略記した。)
・MEDOL10((2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレート、大阪有機化学社製商品名)
・V#150D(テトラヒドロフルフリルオリゴアクリレート、大阪有機化学工業社製商品名、以下では「THFOA」と略記した。)
・IBXA(イソボルニルアクリレート、大阪有機化学社製商品名、以下では「IBXA」と略記した。)
・4−HBA(4−ヒドロキシブチルアクリレート、大阪有機化学工業社製商品名、以下では「4HBA」と略記した。)
・ACMO(アクリロイルモルホリン、興人社(Kohjin co.,Ltd.)製商品名、以下では「ACMO」と略記した。)
・ビスコート#192(フェノキシエチルアクリレート、大阪有機化学社製商品名、以下では「PEA」と略記した。)
・ライトアクリレートP2H−A(フェノキシジエチレングリコールアクリレート、共栄社化学社(Kyoeisha Chemical Co., Ltd .)製商品名、以下では「PDEGA」と略記した。)
・FA−513AS(ジシクロペンタニルアクリレート、日立化成工業社製商品名、以下では「DCPtaA」と略記した。)
・FA−511AS(ジシクロペンテニルアクリレート、日立化成工業社製商品名、以下では「DCPteA」と略記した。)
・FA−512AS(ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、日立化成工業社製商品名、以下では「DCPteOEA」と略記した。)
・DA−141(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ナガセケムテックス(Nagasechemtex)社製商品名、以下では「HPPA」と略記した。)
〔その他の単官能の重合性化合物〕
・NVF(N−ビニルホルムアミド、荒川化学工業社(Arakawa Chemical Industries, Ltd.)製商品名、以下では「NVF」と略記した。)
・V−CAP(N−ビニルカプロラクタム、ISPジャパン社(ISP Japan Ltd.)製商品名、以下では「NVC」と略記した。)
〔多官能(メタ)アクリレート〕
・NKエステル APG−100(ジプロピレングリコールジアクリレート、新中村化学工業社(SHIN-NAKAMURA CHEMICAL CO., LTD.)製商品名、以下では「2PGA」と略記した。)
・NKエステル APG−200(トリプロピレングリコールジアクリレート、新中村化学工業社製商品名、以下では「3PGA」と略記した。)
・R−684(ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、日本化薬社製商品名、以下では「DMTCDDA」と略記した。)
・A−DPH(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、新中村化学工業社製商品名、以下では「DPHA」と略記した。)
・EBECRYL8402(ウレタンアクリレートオリゴマー、ダイセルサイテック社(DAICEL-CYTEC Co, Ltd.)製商品名、以下では「UA」と略記した。)
〔その他の多官能の重合性化合物〕
・TDVE(トリエチレングリコールジビニルエーテル、丸善石油化学社(Maruzen Petrochemical CO, LTD.)製商品名、以下では「TEG−DVE」と略記した。)
〔光重合開始剤〕
・IRGACURE 819(BASF社製商品名、固形分量100%、以下では「819」と略記した。)
・DAROCUR TPO(BASF社製商品名、固形分量100%、以下では「TPO」と略記した。)
・KAYACURE DETX−S(日本化薬社製商品名、固形分量100%、以下では「DETX−S」と略記した。)
〔顔料〕
・MICROLITH−WA Black C−WA(カラーインデックス名:C.I.ピグメントブラック 7、BASF社製商品名、以下では「ブラック」と略記した。)
〔分散剤〕
・Solsperse 36000(LUBRIZOL社製商品名、以下では「SOL36000」と略記した。)
【0083】
[実施例1〜33、比較例1〜19、参考例1]
下記表1〜表5に記載の成分を、表1〜表5に記載の組成(単位:質量%)となるように混合し、これを高速水冷式撹拌機により撹拌することにより、ブラック色の光硬化型インクジェット記録用インク組成物を得た。なお、各実施例で使用した単官能アクリレートは、いずれもP.I.I.が0〜4である。また、表中、数値が空欄の部分は無添加であることを表す。
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
【表3】

【0087】
【表4】

【0088】
【表5】

【0089】
[評価項目]
各実施例及び各比較例で調製した光硬化型インクジェット記録用インク組成物について、以下の方法により硬化性、伸張性、及び硬化シワを評価した。
【0090】
(1.硬化性)
インクジェットプリンターPX−G5000(セイコーエプソン社(Seiko Epson Corporation)製商品名)を用いて、各実施例及び各比較例の光硬化型インクジェット記録用インク組成物をそれぞれのノズル列に充填した。常温、常圧下でPETフィルム(ルミラー125E20〔商品名〕、東レ社製)上に、インクのドット径が中ドットで印刷物の膜厚が10μmとなるような塗膜、即ちベタパターン画像(記録解像度720dpi×720dpi)を印刷した。次にプリンターから排出した印刷済みのPETフィルムに紫外線照射装置内のUV−LEDから、照射強度が1,500mW/cm2であり、且つ波長が395nmである紫外線を200mJ/cm2照射してベタパターン画像を硬化させた。以上のようにして、PETフィルム上にベタパターン画像が印刷された記録物を作製した。なお、ベタパターン画像とは、記録解像度で規定される最小記録単位領域である画素の全ての画素に対してドットを記録した画像である。
照射エネルギー[mJ/cm2]は、光源から照射される被照射表面における照射強度[mW/cm2]を測定し、これと照射継続時間[s]との積から求めた。照射強度の測定は、紫外線強度計UM−10、受光部UM−400(いずれもコニカミノルタセンシング社(KONICA MINOLTA SENSING, INC.)製)を用いて行った。
塗膜(膜厚10μm)に関する硬化性は、タックフリー時の照射エネルギーを指標として評価した。ここで、タックフリーといえるか否かは、下記の条件で判断した。すなわち、綿棒にインクが付着するか否か、又は被記録媒体上のインク硬化物に擦り傷が付くか否かで判断し、綿棒にインクが付着せず、かつ被記録媒体上のインク硬化物に擦り傷が付かない場合をタックフリーとした。その際、使用した綿棒は、ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)社製のジョンソン綿棒であった。擦る回数は往復10回とし、擦る強さは100g荷重とした。
評価基準は下記のとおりである。評価結果を下記表6〜表10に示す。
A:タックフリー時の照射エネルギー:200mJ/cm2以下、
B:タックフリー時の照射エネルギー:200mJ/cm2超300mJ/cm2以下、
C:タックフリー時の照射エネルギー:300mJ/cm2超。
【0091】
(2.伸張性)
各実施例及び各比較例の光硬化型インクジェット記録用インク組成物を、10mm×100mm試験片 IJ−180−10(3M社製商品名、PVC(塩ビ)メディア)の全面に厚さ10μmとなるよう塗布した。この塗膜に対し、発光ピーク波長が395nmであるUV−LEDの紫外線を200mJ/cm2照射しインクを硬化させて硬化膜を作製した。
引張り試験機 TENSILON(ORIENTEC社製商品名)を用いて、硬化膜が作製された各試験片を長手方向に両方から引張り、硬化膜にクラック(ひび)が発生したときの伸び率(2倍に伸びたら100%の伸び率とする。)を測定した。
評価基準は下記のとおりである。評価結果を下記表6〜表10に示す。
A:伸び率が100%以上、
B:伸び率が50%超100%未満、
C:伸び率が50%以下。
【0092】
(3.硬化シワ)
上記の硬化性評価において得られた、硬化終了後のベタパターン画像の表面にどの程度シワが発生したかという指標で評価した。シワの発生の程度は目視及び光学顕微鏡で観察した。
なお、タックフリー状態の確認方法、ベタパターン画像、並びに照射エネルギー及び照射強度の測定・算出については、上記の硬化性評価の項で述べたとおりである。
評価基準は下記のとおりである。評価結果を下記表6〜表10に示す。
A:目視及び顕微鏡観察のいずれにおいてもシワが確認できなかった。
B:目視ではシワが確認できないが、顕微鏡観察でシワが確認できた。
C:目視でシワが確認できた。
【0093】
【表6】

【0094】
【表7】

【0095】
【表8】

【0096】
【表9】

【0097】
【表10】

【0098】
【表11】

【0099】
以上の結果より、重合性化合物と光重合開始剤とを含有し、当該重合性化合物が10〜40質量%の一般式(I)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類と、20〜60質量%の単官能(メタ)アクリレートと、10〜40質量%の多官能(メタ)アクリレートと、を含むインク組成物は、そうでないインク組成物と比較して、硬化性及び硬化膜の伸張性に優れ、かつ、硬化シワの発生を防止できることが分かった。
【0100】
詳細に考察すると、まず、一般式(I)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含むインク組成物は、これを含まないインク組成物と比較して、硬化性に優れることが分かった(各実施例、比較例1,3〜5)。また、上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の含有量が10質量%以上(但し40質量%以下)であるインク組成物は、そうでないインク組成物と比較して、硬化性に優れることが分かった(各実施例及び比較例2、さらに比較例6,10も参照)。また、上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の含有量が40質量%以下(但し10質量%以上)であるインク組成物は、そうでないインク組成物と比較して、硬化シワの発生防止の点で優れ、さらに硬化性及び硬化膜の伸張性も良好であることが分かった(各実施例及び比較例9、さらに比較例8,13,14も参照)。
【0101】
次に、単官能(メタ)アクリレートを含むインク組成物は、これを含まないインク組成物と比較して、少なくとも硬化膜の伸張性に優れ、さらに硬化性に優れるとともに厚膜を硬化した際の硬化シワの発生を防止可能なことが分かった(各実施例、比較例6,8)。また、単官能(メタ)アクリレートの含有量が20質量%以上(但し60質量%以下)であるインク組成物は、そうでないインク組成物と比較して、硬化膜の伸張性に優れることが分かった(各実施例及び比較例16、さらに比較例1,13も参照)。
ここで、単官能(メタ)アクリレートの含有量が20質量%以上(但し60質量%以下)であるインク組成物は、単官能の重合性化合物の含有量が20質量%以上(但し60質量%以下)であるものの単官能(メタ)アクリレートの含有量が20質量%未満であるインク組成物と比較して、硬化シワの発生を防止できることも分かった(各実施例、比較例18,19)。このように、比較例18及び19は、伸張性の結果が良好な一方で硬化シワの結果が悪いことが分かる。この結果は、NVFやNVCに起因するものと推測される。具体的に言えば、NVFやNVCの重合性反応基はビニル基であり、アクリル基含有モノマーに比べて反応性が非常に優れる(但し、アクリレートと併用することが前提である。)。したがって、ビニル基とアクリル基との間の反応速度の違いから、硬化ムラが起こりやすくなり、シワが発生しやすくなるものと推測される。同様に、VEEAもビニルエーテル基を含有するため、過剰に添加すると、アクリル基との反応速度の違いに起因して硬化シワを生じ得る(比較例13)。
また、単官能(メタ)アクリレートの含有量が60質量%以下(但し20質量%以上)であるインク組成物は、そうでないインク組成物と比較して、硬化シワの発生を防止できることが分かった(各実施例及び比較例17、さらに比較例4,5,10,12も参照)。
【0102】
次に、多官能(メタ)アクリレートを含むインク組成物は、これを含まないインク組成物と比較して、少なくとも硬化シワの発生防止の点で優れ、さらに硬化性及び硬化膜の伸張性も良好であることが分かった(各実施例、比較例10,12〜14)。また、多官能(メタ)アクリレートの含有量が10質量%以上(但し40質量%以下)であるインク組成物は、そうでないインク組成物と比較して、硬化シワの発生を防止できることが分かった(各実施例及び比較例11、さらに比較例4,8も参照)。ここで、多官能(メタ)アクリレートの含有量が10質量%以上(但し40質量%以下)であるインク組成物は、多官能の重合性化合物の含有量が10質量%以上(但し40質量%以下)であるものの多官能(メタ)アクリレートの含有量が10質量%未満であるインク組成物と比較して、硬化シワの発生を防止できることに加えて、硬化性に優れることも分かった(各実施例、比較例15)。また、多官能(メタ)アクリレートの含有量が40質量%以下(但し10質量%以上)であるインク組成物は、そうでないインク組成物と比較して、硬化膜の伸張性に優れ、かつ、硬化性が良好であることが分かった(各実施例及び比較例7、さらに比較例1,3,6も参照)。
さらに、比較例17に対して顔料及び分散剤を含まない参考例1は、比較例17が硬化シワの発生防止の点で優れないものであったのにもかかわらず、硬化シワの発生防止の点で優れたものであったが、色材を含まないインク組成物でありカラー画像の記録に用いることのできないものであった。このことから、上記の各実施例のインク組成物は、硬化性、伸張性、硬化シワの発生防止に優れ、カラー画像の記録に用いることができるインク組成物であることが分かった。
なお、参考例2及び参考例3はそれぞれ、比較例11及び比較例17のインク組成物を用いて、上述の各評価用のサンプル作成時に、UV−LEDを用いて照射させる代わりに、メタルハライドランプ(照射強度1,000mW/cm2)を用いて照射を行ったこと以外は、比較例11及び比較例17と同様の方法で評価を行ったものである。比較例11及び比較例17が硬化シワの発生防止の点で優れないものであったのにかかわらず、硬化シワの発生防止の点で優れたものであったが、メタルハライドからの発熱のため、PETフィルムに変形が見られた。このことから、上記の各実施例のインク組成物は、硬化性、伸張性、硬化シワの発生防止に優れ、LEDを照射に用いることにより、フィルムの熱変形のない優れた記録物の作成に用いることができるインク組成物であることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性化合物と光重合開始剤とを含有する光硬化型インクジェット記録用インク組成物であって、
前記重合性化合物は、該インク組成物の総質量に対して10〜40質量%の下記一般式(I):
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(I)
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類と、
該インク組成物の総質量に対して20〜60質量%の単官能(メタ)アクリレート(ただし、前記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を除く。)と、
該インク組成物の総質量に対して10〜40質量%の多官能(メタ)アクリレートと、
色材と、を含む、光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
【請求項2】
前記単官能(メタ)アクリレートは、該インク組成物の総質量に対して10〜60質量%のフェノキシエチル(メタ)アクリレートを含む、請求項1に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
【請求項3】
前記光重合開始剤は、該インク組成物の総質量に対して6〜13質量%のアシルフォスフィンオキサイド化合物を含む、請求項1又は2に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
【請求項4】
前記単官能(メタ)アクリレートの含有量が、該インク組成物の総質量に対して20〜40質量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
【請求項5】
前記多官能(メタ)アクリレートの含有量が、該インク組成物の総質量に対して20〜30質量%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
【請求項6】
発光ピーク波長が350〜420nmの範囲にある紫外線を、300mJ/cm2以下の照射エネルギーで照射することにより硬化可能である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
【請求項7】
前記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類が、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
【請求項8】
前記単官能(メタ)アクリレートの皮膚一次刺激指数が0〜4である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物を用いたインクジェット記録方法であって、
前記光硬化型インクジェット記録用インク組成物を被記録媒体に付着させ、付着させた光硬化型インクジェット記録用インク組成物に、発光ダイオードを用いて、発光ピーク波長が350〜420nmの範囲にある紫外線を照射する、インクジェット記録方法。
【請求項10】
前記紫外線の照射エネルギーは、300mJ/cm2以下である、請求項9に記載のインクジェット記録方法。

【公開番号】特開2013−60548(P2013−60548A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200809(P2011−200809)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】