説明

光硬化型塗料組成物

【課題】メッキ処理等を含む金属及び種々のプラスチック成型体上に金属蒸着された面や金属等の上に塗布された着色層に好適に塗布でき、優れた密着性を発現し、かつ硬度、耐擦傷性に優れた硬化塗膜を得ることができる光硬化型塗料組成物を提供することである。
【解決手段】リン酸基含有(メタ)アクリレート化合物と、水酸基含有アクリル系樹脂と、水酸基含有多官能(メタ)アクリレート化合物と光開始剤を含む事を特徴とする光硬化型塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線、電子線、放射線等で硬化可能な光硬化型樹脂組成物に関するものである。詳しくは、メッキ処理を含む金属及びプラスチック素材の金属蒸着面及び顔料配合着色層に対し優れた密着性を発現し、かつ硬度、耐擦傷性に優れた硬化塗膜を得ることができる光硬化型塗料組成物である。
【背景技術】
【0002】
光硬化塗料は光で硬化するため加熱が不要で、硬化がごく短時間で完了するという特徴から、非常に生産性、省エネルギー性に優れる塗料である。
近年、その紫外線硬化型塗料の特徴を活かして、木工やプラスチック用途だけでなく、アクリル樹脂/メラミン樹脂もしくはウレタン樹脂等の熱硬化塗料が使用されていた金属や金属蒸着用途にも、紫外線硬化塗料が使用され始めている。
金属およびプラスチックをニッケル、すず、クロム等のメッキ処理するのは、酸化を防いで、耐食性を向上させるだけでなく、金属等の表面に高級感や質感を施す事になり、携帯電話、デジカメ等の情報家電等に利用されている。
また、金属蒸着は、メッキ処理と同様に携帯電話、デジカメ等の情報家電用途だけでなく、ランプ反射板、エンブレム等の自動車部品や、化粧品などの容器などの表面外観が金属様の部品に多く使用されている。これらはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合(ABS)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、繊維強化複合材料(FRP)等の種々のプラスチックの成型体の上にその表面を平滑にするためのアンダーコートが塗布され、その上にアルミニウム、すず等の金属を真空蒸着し、その上に上塗りを塗布することによって作られている。
これらの上塗り塗料は、メッキを含む金属や金属蒸着表面に光沢や高級感などの意匠性付与と、硬度や耐擦傷性を付与するために塗布される。
金属光沢面にクリアー塗料が塗布された部材だけでなく、消費者ニーズの多様化により、着色した部材が必要とされる事がある。その場合は、メッキを含む金属や金属蒸着や金属めっきされたプラスチックの金属表面を着色するのに、2液ウレタン系塗料もしくはラッカー塗料が着色層として塗布され、硬度や磨耗性を向上させるために、着色層の上に紫外線塗料が塗布される。金属や金属蒸着面等だけでなく、着色層の上塗りにも、同じ紫外線硬化型塗料が塗布される事が要望されるため、着色層への密着性及び耐水性も要求性能に合う紫外線硬化塗料が望まれている。
【0003】
従来、メッキや金属蒸着の上塗り塗料には上記に表記した様なウレタン樹脂を架橋剤にし、主剤をアクリル樹脂、ポリエステル樹脂等を配合した2液混合硬化型の塗料が主に使用されていた。紫外線硬化型塗料を金属や金属蒸着面等に適用した場合、一般的な2液ウレタン硬化塗料と比較して密着性が不良であり、その事が原因で耐水性も劣り、使用できないという問題を抱えていた。
特許文献1,2は、リン酸基含有(メタ)アクリレート化合物とアルコキシメチル(メタ)アクリルアミド化合物を使用しているが、上塗り塗料としては、リン酸基含有(メタ)アクリレート化合物の配合量が多く、その密着性及び耐水性は不十分である。特許文献3は、水酸基含有の多官能モノマーを使用しているが、水酸基はエステル化反応で消費され、水酸基の残存量は非常に少ない。よって密着性は不十分である。
【特許文献1】特開平6−313127号公報
【特許文献2】特開2002−194013号公報
【特許文献3】特開2002−284832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の現状に鑑み、メッキ処理等を含む金属及び種々のプラスチック成型体上に金属蒸着された面や金属等の上に塗布された着色層に好適に塗布でき、優れた密着性を発現し、かつ硬度、耐擦傷性に優れた硬化塗膜を得ることができる光硬化型塗料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。本発明は、リン酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)と水酸基含有アクリル樹脂(a2)と、水酸基含有多官能(メタ)アクリレート化合物(a3)と、光開始剤(a5)を含む光硬化型塗料組成物である。 即ち、
[1]リン酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)と水酸基含有アクリル樹脂(a2)と、水酸基含有多官能(メタ)アクリレート化合物(a3)と、光開始剤(a5)を含み、(a2)と(a3)との合計100重量部に対して(a1)が0.1〜0.9重量部含まれることを特徴とする光硬化型塗料組成物。
[2]更に、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物(a4)を含有することを特徴とする[1]記載の光硬化型塗料組成物。
[3]リン酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)が、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するリン酸(メタ)アクリレートである、[1]又は[2]記載の光硬化型塗料組成物。
[4]水酸基含有アクリル樹脂(a2)が、水酸基価1〜200mgKOH/g、分子量が5,000〜100,000である[1]〜[3]の何れかに記載の光硬化型塗料組成物。
[5]水酸基含有多官能(メタ)アクリレート化合物(a3)が、2〜5官能の(メタ)アクリレート化合物である[1]〜[4]の何れかに記載の光硬化型塗料組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、メッキ処理等を含む金属及び、種々のプラスチック成型体上に施された金属蒸着面の上に、優れた密着性を発現し、かつ硬度、耐擦傷性に優れた硬化塗膜を得ることができる。また本発明は生産性が高く省エネルギーである光硬化によって塗膜を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明について以下、詳細に説明する。
【0008】
《リン酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)》
リン酸基含有(メタ)アクリレート(a1) 成分は、基材への付着性・耐水性の観点から、水酸基含有アクリル樹脂(a2)と、水酸基含有多官能(メタ)アクリレート化合物(a3)との合計100重量部に対して(a1)が0.1〜0.9重量部、好ましくは0.1〜0.45重量部の範囲である。
【0009】
リン酸基含有(メタ)アクリレート(a1) は、具体的には、リン酸(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸ジ(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸トリ(メタ)アクリロイルオキシエチル、カプロラクトン変性リン酸(メタ)アクリロイルオキシエチル等の1分子中に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するリン酸基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。中でもリン酸(メタ)アクリロイルオキシエチルが金属、金属蒸着膜、着色層コート剤に対する密着性を良好にするため好ましい。
ここで、メチル(メタ)アクリレートのような記載は、メチルアクリレート及び/又はメチルメタアクリレートを示し、以下(メタ)とは同様の意味である。
【0010】
《水酸基含有アクリル系重合体(a2)》
本発明におけるアクリル系重合体(a2)は、優れた密着性と耐擦傷性を発現するために、水酸基を含有する単量体(b1)とその他の単量体(b2)を共重合することによって得ることができる。
水酸基を含有する単量体(b1)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有ビニル類が挙げられる。
【0011】
また、その他の単量体(b2)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、等のアルキル(メタ)アクリレート類;;スチレン、2−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、及びこれらの無水物等の不飽和カルボン酸類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン類;N、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジエチルアミノエチル(メタアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N、N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジヒドロキシエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類;スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ソーダ等の不飽和スルホン酸類;2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、アリルグリシジルエーテル、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、塩化ビニル、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、クロロプレン、ビニルピロリドン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエ.チルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0012】
その他の単量体(b2)として、これ等の中で、良好な密着性を得るため、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のアルキルの炭素数が4以下のアルキル(メタ)アクリレート類を使用することが好ましい。
本発明におけるアクリル系重合体(a2)は密着性と硬度を発現するために、通常水酸基価1〜200mgKOH/gの水酸基を含有するものであり、好ましくは10〜180mgKOH/g、更に好ましくは30〜120mgKOH/gの水酸基を含有するものである。
【0013】
また、本発明におけるアクリル系重合体(a2)の分子量は、良好な塗膜の硬度及び耐擦傷性を発現するため、また、塗料組成物の粘度を塗装可能な範囲にするために、通常5,000〜100,000、好ましくは10,000〜60,000、更に好ましくは20,000〜30,000である。
【0014】
《水酸基含有多官能(メタ)アクリレート化合物(a3)》
本発明における水酸基含有多官能(メタ)アクリレート化合物(a3)は、優れた耐磨耗性と硬度を発現するために、配合する。
この化合物(a3) 成分の具体例としては、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、が挙げられる。好ましくは、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートである。また、2〜5官能の(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。
ここで、(a1)と(a2)との重量比は、塗膜の硬度・耐磨耗性の観点より、(a1)/(a2)=20〜80/80〜20重量部である。
【0015】
《エチレン性不飽和二重結合を有する化合物(a4)》
本発明におけるエチレン性不飽和二重結合を有する化合物(a4)としてはアクリル基を有する化合物である。
例えば、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス((メタ)アクリロキシエチル)ビスフェノールA、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε−カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート、その他活性二重結合を持つアクリロイルモルホリン、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ヒドロキシエチルジビニルエーテル、スチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0016】
さらには、フタル酸、アジピン酸等の多塩基酸と、エチレングリコール、ブタジオール等の多価アルコールと、(メタ)アクリル酸化合物との反応で得られるポリエステルポリ(メタ)アクリレート;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸化合物との反応で得られるエポキシポリ(メタ)アクリレート;ポリシロキサンと(メタ)アクリル酸化合物との反応によって得られるポリシロキサンポリ(メタ)アクリレート;ウレタンアクリレート等が挙げられる。
【0017】
ウレタンアクリレートは、ジイソシアネート化合物とグリコール種の付加反応により重合を行い、残存するイソシアネート基にさらに水酸基等の活性水素基を有する(メタ)アクリレートを付加することで合成される。ジイソシアネート化合物は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,3−ジイソシアナトメチルシクロヘキサン(H6 XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)である。 また、グリコール種は、例えば、ポリカプロラクトンポリオール等のポリエステルポリオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルポリオール;ポリヘキサメチレンカーボネートグリコール等のポリカーボネートポリオール;エチレングリコール、プロパンジオール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等である。さらに、水酸基等の活性水素基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有ビニル類である。
ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0018】
エチレン性不飽和二重結合を有する化合物(a4)の添加量は、任意成分であるが、粘度の調整・塗膜物性の観点より、水酸基含有アクリル樹脂(a2)と、水酸基含有多官能(メタ)アクリレート化合物(a3)との合計100重量部に対して0〜50重量部、好ましくは5〜20重量部である。
【0019】
《光開始剤(a5)》
本発明の光開始剤(a5)とは、紫外線、電子線、放射線等でラジカルを発生することが可能な化合物であり、具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトイン、ブチロイン、トルオイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4−ビス(ジメチルアミノベンゾフェノン)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物;2−エチルアントラキノン等のアントラキノン類;ベンゾイルパーオキシド、ジターシャリーブチルパーオキシド等のパーオキシド化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド化合物を挙げることができる。 好ましい開始剤の例としては、ベンゾフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドであり、これらを単独で使用、または、2種以上併用してもよい。
【0020】
光開始剤(a5)の割合は、(a1)〜(a4)の総合計100重量部に対して、通常0.1〜10重量部、好ましくは1〜8重量部である。
【0021】
本発明の光硬化性樹脂組成物に、有機溶剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、黄変防止剤、染料、顔料、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、帯電防止剤、防曇剤、はじき防止剤、湿潤剤、分散剤、だれ防止剤、カップリング剤等の各種添加剤を含有させることができる。
【0022】
このような光硬化型塗料組成物を基材に塗布する方法に限定はなく、スプレーコート、ディップコート、スピンコート、ハケ塗りなどの常法によって行われる。
十分な硬度と被膜にクラックを発生させず良好な密着性を発現させるためには、塗布量として、硬化被膜の膜厚が5〜30μmであることが好ましい。
基材に塗布された被膜を硬化させる手段としては、紫外線、電子線、放射線等の活性エネルギー線を照射する公知の方法を用いることができ、紫外線発生源としては実用的、経済性の面から紫外線ランプが一般に用いられている。
具体的には、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ガリウムランプ、メタルハライドランプ、太陽光等の紫外線などが挙げられる。照射雰囲気は空気でもよいし、窒素、アルゴン等の不活性ガスでもよい。
金属の処理として、メッキの種類はニッケル、クロム、亜鉛等が挙げられる。
金属蒸着は、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、メッキなどの方法を用いて行われるが、真空蒸着が生産性の点からより好ましい。
蒸着される金属としては、Al、Zn、Cu、Ag、Au、Sn、Ni、あるいはこれらの合金などである。金属蒸着の基材となるプラスチックとしては、各種の合成樹脂成型品が挙げられる。
【0023】
合成樹脂成型品の具体例は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合(ABS)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、繊維強化複合材料(FRP)、ポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂、ポリアリルジグリコールカーボネート樹脂などが挙げられる。また合成樹脂成型品とは、これらの樹脂からなるシート状成型品、フィルム状成型品、各種射出成型品などである。
メッキを含む金属や金属蒸着表面を着色する時は、着色層はアクリルラッカー、もしくはアクリルポリオールとウレタン樹脂の組み合わせの2液ウレタン硬化型塗料、もしくは水酸基含有のアクリル樹脂、ポリエステル樹脂と硬化剤がメラミン樹脂の焼付塗料などである。
【0024】
本発明の光硬化性樹脂組成物よって得られた塗膜は、メッキ処理を施された金属や種々のプラスチック成型体上に金属蒸着された面に優れた密着性を発現し、かつ硬度、耐擦傷性に優れたものとなるため、自動車部品、電化製品部品、容器、建築材料などの用途で好適に使用できるものである。
【実施例】
【0025】
以下に、本発明の合成例、実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
[合成例1]
<アクリル系重合体(a2)の合成例(Ac1)>
メチルメタクリレート(MMA)85g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)14g、メタクリル酸(MAA)1g、アゾビスイソブチロニトリル1gの混合溶液を、酢酸ブチル85g、メチルイソブチルケトン(MIBK)37gを仕込んだ反応容器に、空気気流下で100℃で4時間かけて滴下した。
さらに100℃を維持し、重合を完結させるためにアゾビスイソブチロニトリル0.2gを1時間ごとに2回添加した。
滴下終了から3時間後に冷却し、不揮発分45%、重量平均分子量25,000のアクリル系重合体(a2)溶液(Ac1)を得た。
【0026】
[合成例2]
<アクリル系重合体(a2)の合成例(Ac2)>
スチレン及びアクリルモノマーの混合比率を表1に示すように変更し、合成例1と同様な操作によりアクリル系重合体(a2)溶液(Ac2)を得た。
【0027】
[実施例1]
リン酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)としてリン酸基含有メタアクリレートのカヤマーPM−2を0.3部、水酸基含有アクリル樹脂(a2)として合成例1のアクリル系重合体(Ac1)を89部、水酸基含有多官能(メタ)アクリレート化合物(a3)としてアロニックスM305(東亜合成(株)社製ペンタエリスリトールトリアクリレート)を55部、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物(a4)としてNKエステルA−NPG(新中村化学工業(株)社製ネオペンチルグリコールジアクリレート)を5部、光開始剤(a5)としてイルガキュア184(チバスペシャリティ社製の光開始剤)5部、希釈シンナーとしてメチルエチルケトン51部を混合し、光硬化型塗料組成物を得た。
【0028】
[実施例2〜6]
リン酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)と水酸基含有アクリル樹脂(a2)と、水酸基含有多官能(メタ)アクリレート化合物(a3)と、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物(a4)と光開始剤(a5)の種類と混合比率を表1に示すように変更し、実施例1と同様な操作により光硬化型塗料組成物を得た。
【0029】
[比較例1〜4]
リン酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)と水酸基含有アクリル樹脂(a2)と、水酸基含有多官能(メタ)アクリレート化合物(a3)と、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物(a4)と光開始剤(a5)の種類と混合比率を表1に示すように変更し、実施例1と同様な操作により光硬化型塗料組成物を得た。
[評価方法] 上記で得られた光硬化型塗料組成物を、以下に示す方法で試験を行った。
その結果を表2に示す。
【0030】
<分子量の測定>
アクリル系重合体(a2)の分子量をGPC(Shodex GPC SYSTEM−11:昭和電工製)でRI検出器により、重量平均分子量を測定した。
【0031】
<水酸基価の測定>
水酸基価をJIS K0070 によって評価した。
【0032】
<基材>
クロムメッキ鋼板は、JIS G3141クロムメッキ鋼板(Crと略す。)を用いた。 ABS板に、紫外線硬化型塗料や2液ウレタン硬化型塗料のアンダーコートを塗装した後、真空蒸着法でアルミニウムを蒸着した基材(Al1と略す)を、蒸着基材として用いた。蒸着基材Al1に顔料を配合したアクリルポリオールとウレタン樹脂を配合した塗料を塗装した基材(Al2略す)を、着色層付き蒸着基材として用いた。
【0033】
<紫外線硬化条件>
それぞれの基材に、光硬化型塗料組成物をバーコーターで10μmになる様に塗装し、60℃x1minで乾燥した後、100w/cmの高圧水銀灯を3灯有する紫外線照射装置で照射距離10cm、ライン速度10m/minで紫外線を照射した。
これで得られた同試験片を、以降の試験に供した。
【0034】
<密着性>
密着性を碁盤目試験(JIS K5600−5−6)によって評価した。
【0035】
<耐温水性>
85℃の温水に4時間、試験片を浸漬し、外観に変化がないものを○、塗膜が微かに白くなったものを△、塗膜が完全に白くなったものを×とした。
【0036】
<硬度>
鉛筆硬度を(JIS K5600−5−6)によって評価した。
実用的にはHB以上である。
【0037】
<耐磨耗性>
テーバー磨耗試験法(JIS K5600−5−9)によりCS−10F磨耗輪で荷重250g、50回転で外観の変化を調べた。
外観の良好なものを◎、塗膜に傷が極わずかに入ったものを○、塗膜に傷が入り白くなったものを△、塗膜に傷が入り完全に金属様が失われたものを×とした。
[評価結果]
【0038】
【表1】

【0039】
<第1表脚注>第1表中の配合処方の数値はすべて重量部を表す。
MMA:メチルメタアクリレート、ST:スチレン、HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート、MAC:メタクリル酸、MIBK:メチルイソブチルケトン
【0040】
【表2】

【0041】
<第2表脚注>第2表中の配合処方の数値はすべて重量部を表す。
リン酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)カヤマーPM−2:〔日本化薬(株)社製エチレンオキサイド変性リン酸メタクリレート〕、水酸基含有多官能(メタ)アクリレート化合物(a3)アロニックスM−305:〔東亜合成(株)社製ペンタエリスリトールトリアクリレート〕、アロニックスM−403:〔東亜合成(株)社製ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートペンタエリスリトールトリアクリレート/ジペンタエリスリトールペンタアクリレートペンタエリスリトールトリアクリレート=1/1〕、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物(a4)NKエステルA−NPG:〔新中村化学工業(株)社製ネオペンチルグリコールジアクリレート〕、光開始剤(a5)イルガキュア184:(チバ・スペシャリテイーケミカル社製1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル-ケトン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)と水酸基含有アクリル樹脂(a2)と、水酸基含有多官能(メタ)アクリレート化合物(a3)と、光開始剤(a5)を含み、(a2)と(a3)との合計100重量部に対して(a1)が0.1〜0.9重量部含まれることを特徴とする光硬化型塗料組成物。
【請求項2】
更に、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物(a4)を含有することを特徴とする請求項1記載の光硬化型塗料組成物。
【請求項3】
リン酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a1)が、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するリン酸(メタ)アクリレートである、請求項1又は2記載の光硬化型塗料組成物。
【請求項4】
水酸基含有アクリル樹脂(a2)が、水酸基価1〜200mgKOH/g、分子量が5,000〜100,000である請求項1〜3の何れかに記載の光硬化型塗料組成物。
【請求項5】
水酸基含有多官能(メタ)アクリレート化合物(a3)が、2〜5官能の(メタ)アクリレート化合物である請求項1〜4の何れかに記載の光硬化型塗料組成物。

【公開番号】特開2010−77281(P2010−77281A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247154(P2008−247154)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】