説明

光硬化型塗料組成物

【課題】種々の基材に対して、特にプラスチック基材に対して、硬化膜が耐擦傷性、防汚性、透明性、密着性及び耐カール性に優れる光硬化型塗料組成物の提供。
【解決手段】下記(A)成分、重合性不飽和基を有する含フッ素化合物(B)、光重合開始剤(C)、有機溶剤(D)及び金属酸化物微粒子又は金属酸化物複合微粒子(e2)を重合性不飽和基とアルコキシシリル基を有する有機化合物(e1)で修飾した微粒子であって、(e1)及び(e2)成分の合計重量に対して(e1)成分を1.0〜45.0重量%の割合で反応させたもの(E)を含有する光硬化型塗料組成物。
(A)成分:(メタ)アクリロイル基を2個以上有し水酸基を1個以上有する(メタ)アクリレートとポリイソシアネートとの付加反応物及び(メタ)アクリロイル基を3個以上有し水酸基を有さない(メタ)アクリレートから構成される(メタ)アクリレート混合物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の基材、特にプラスチック基材に対して、耐擦傷性、防汚性、透明性、密着性及び耐カール性を有する硬化膜を形成可能な光硬化型塗料組成物に関し、光硬化型組成物及び塗料の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属、ガラス及びプラスチック等の種々の基材に対しては、基材表面を保護したり、美観や意匠性を付与する目的で、塗料組成物を使用して基材上に保護膜を形成する手法が用いられる。
特に、プラスチック基材は、軽量であり、耐衝撃性及び易成形性等に優れているが、表面が傷つきやすく硬度が低いため、そのまま使用すると外観を著しく損なうという欠点がある。このため、プラスチック基材の表面を塗料組成物で塗装し、いわゆるハードコート処理して、耐擦傷性を付与し表面硬度を向上することが求められる。加えてディスプレイやタッチパネル等の光学部材に使用する場合、視認性を確保する観点から指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れを付きにくくすることが求められている。
【0003】
従来、防汚性と耐擦傷性を両立する手法として、重合性不飽和基を有しないフッ素含有化合物、フッ素系シランカップリング剤、フッ素含有ポリジメチルシロキサン、重合性不飽和基を有するシリコン系化合物などをハードコート剤へ添加することが行われてきた。しかしこれらの塗料組成物及びその硬化物は指紋、皮脂、汗、化粧品などの汚れに対する防汚性が弱く汚れを拭き取りにくいものであったり(特許文献1)、また最初拭き取り性が良好でも拭き取りを繰り返すことにより防汚性が低下してしまうものであった(特許文献2、3)。また防汚性が良好であっても耐擦傷性を同時に満足しないものもあった(特許文献4、5、6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−7986号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平10−104403号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平10−110118号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開平11−116810号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特開平2000−169489号公報(特許請求の範囲)
【特許文献6】特許4215889号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、種々の基材に対して、特にプラスチック基材に対して、硬化膜が耐擦傷性、防汚性、透明性、密着性及び耐カール性に優れる光硬化型塗料組成物を見出すため鋭意検討を行った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、水酸基を1個以上有する特定の(メタ)アクリレートとイソシアネートを反応させたウレタンアダクト化合物と特定の多官能(メタ)アクリレートの混合物、重合性不飽和基を有する含フッ素化合物及び重合性不飽和基によって表面修飾された金属酸化物微粒子を含む組成物が、耐擦傷性、防汚性、透明性及び密着性に優れ、さらに耐カール性にも優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
以下、本発明を詳細に説明する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の組成物によれば、種々の基材に対して、特にプラスチック基材に対して、硬化膜が耐擦傷性、防汚性、透明性、密着性及び耐カール性に優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、下記(A)成分、重合性不飽和基を有する含フッ素化合物(B)〔以下、「(B)成分」という〕、光重合開始剤(C)〔以下、「(C)成分」という〕、有機溶剤(D)〔以下、「(D)成分」という〕及び金属酸化物微粒子又は金属酸化物複合微粒子(e2)を重合性不飽和基とアルコキシシリル基を有する有機化合物(e1)で修飾した微粒子であって、(e1)及び(e2)成分の合計重量に対して(e1)成分を1.0〜45.0重量%の割合で反応させたもの(E)〔以下、「(E)成分」という〕を含有する光硬化型塗料組成物に関する。
(A)成分:3価以上の多価アルコールから誘導される(メタ)アクリレートであって、(メタ)アクリロイル基を2個以上有し、水酸基を1個以上有する(メタ)アクリレートとポリイソシアネートとの付加反応で得られるウレタンアダクト化合物(a1)及び3価以上の多価アルコールから誘導される(メタ)アクリレートであって、(メタ)アクリロイル基を3個以上有し、水酸基を有さない(メタ)アクリレート(a2)から構成される(メタ)アクリレート混合物
以下、それぞれの成分及び組成物の詳細について説明する。
尚、本明細書においては、アクリロイル基又はメタクリロイル基を(メタ)アクリロイル基と表し、又、アクリレート又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと表す。
【0009】
1.(A)成分
本発明の(A)成分は、3価以上の多価アルコールから誘導される(メタ)アクリレートであって、(メタ)アクリロイル基を2個以上有し、水酸基を1個以上有する(メタ)アクリレートとポリイソシアネートとの付加反応で得られるウレタンアダクト化合物(a1)〔以下、「(a1)成分」という〕及び
3価以上の多価アルコールから誘導される(メタ)アクリレートであって、(メタ)アクリロイル基を3個以上有し、水酸基を有さない(メタ)アクリレート(a2)〔以下、「(a2)成分」という〕から構成される(メタ)アクリレート混合物である。
【0010】
(a1)成分では、原料化合物として、3価以上の多価アルコールから誘導される(メタ)アクリレートであって、(メタ)アクリロイル基を2個以上有し、水酸基を1個以上有する(メタ)アクリレート(以下、「水酸基含有多官能(メタ)アクリレート」という)を使用する。
水酸基含有多官能(メタ)アクリレートとしては種々の化合物が使用でき、具体的には、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのアルキレンオキサイド付加物のジ又はトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド付加物のジ又はトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのジ、トリ、テトラ又はペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのアルキレンオキサイド付加物のジ、トリ、テトラ又はペンタ(メタ)アクリレート及びイソシアヌレートのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
この場合、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0011】
水酸基含有多官能(メタ)アクリレートの中でも、3価以上の脂肪族多価アルコールから誘導される(メタ)アクリレートであって、(メタ)アクリロイル基を2個以上有し、水酸基を1個以上有する(メタ)アクリレート〔以下、「水酸基含有脂肪族多官能(メタ)アクリレート」という〕が耐摩傷性に優れるため好ましい。
水酸基含有脂肪族多官能(メタ)アクリレートの原料化合物である3価以上の脂肪族多価アルコールとしては、種々の化合物が使用でき、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン及びジペンタエリスリトール等が挙げられる。
水酸基含有脂肪族多官能(メタ)アクリレートとしては、種々の化合物が使用でき、具体的には、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンのジ又はトリ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールのジ、トリ、テトラ又はペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、硬化膜が耐擦傷性に優れる点で、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有し、水酸基を1個有する化合物が好ましく、具体的には、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0012】
ポリイソシアネートとしては、種々の化合物が使用可能である。
好ましいポリイソシアネートの例としては、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート及びこれらのヌレート型三量体等が挙げられる。
【0013】
(a1)成分は、水酸基含有多官能(メタ)アクリレートとポリイソシアネートとの付加反応により合成される。この付加反応は無触媒でも可能であるが、反応を効率的に進めるために、ジブチルスズジラウレート等の錫系触媒や、トリエチルアミン等のアミン系触媒等を添加しても良い。
【0014】
(a2)成分は、3価以上の多価アルコールから誘導される(メタ)アクリレートであって、(メタ)アクリロイル基を3個以上有し、水酸基を有さない(メタ)アクリレートである。
(a2)成分としては、種々の化合物が使用でき、具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのアルキレンオキサイド付加物のテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンのテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド付加物のテトラ(メタ)アクリレートジペンタエリスリトールのヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのアルキレンオキサイド付加物ヘキサ(メタ)アクリレート及びイソシアヌレートのアルキレンオキサイド付加物のテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
この場合、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0015】
(a2)成分としては、3価以上の脂肪族多価アルコールから誘導される(メタ)アクリレート〔以下、「脂肪族多官能(メタ)アクリレート」という〕が好ましい。
脂肪族多官能(メタ)アクリレートの原料化合物である3価以上の脂肪族多価アルコールとしては、前記で挙げたものと同様のものが使用できる。
脂肪族多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、硬化膜が耐擦傷性に優れる点で、4個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、具体的には、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0016】
(a1)成分の原料化合物の水酸基含有多官能(メタ)アクリレートは、水酸基含有多官能(メタ)アクリレートと、3価以上の多価アルコールから誘導される(メタ)アクリレートであって、(メタ)アクリロイル基を3個以上有し、水酸基を有さない(メタ)アクリレート〔(a2)成分〕の混合物として得られることが多い。
よって、(a1)成分を製造する場合、(a1)成分と(a2)成分の混合物として得られるが、本発明においては、当該反応混合物をそのまま使用して良い。
【0017】
本発明の(A)成分は、(a1)成分と(a2)成分の混合物である。
(a1)成分と(a2)成分の割合としては、目的に応じて適宜設定すれば良いが、(a1):(a2)=10:90〜90:10の重量比で含む混合物が好ましく、より好ましくは(a1):(a2)=30:70〜70:30の重量比で含む混合物である。
(a1)と(a2)の重量比をこの範囲とすることで、硬化膜が耐擦傷性、密着性に優れた組成物を得ることができる。
【0018】
2.(B)成分
(B)成分は、重合性不飽和基を有する含フッ素化合物である。
重合性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基及び(メタ)アリル基等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
含フッ素化合物としては、重合性不飽和基を有する含フッ素重合体が好ましい。
【0019】
(B)成分としては、分子内に3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(b1)〔以下、「(b1)成分」という〕に活性水素を有するパーフルオロポリエーテル化合物又は活性水素を有するパーフルオロアルキル化合物(b2)〔以下、「(b2)成分」という〕及び活性水素と重合性不飽和基を有する化合物(b3)〔以下、「(b3)成分」という〕を反応物である重合性不飽和基を2個以上有し且つパーフルオロポリエーテル基又はパーフルオロアルキル基を1個以上有する化合物が好ましい。
【0020】
(b1)成分である分子内に3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートとしては、種々の化合物が使用可能である。
(b1)成分の好ましい例としては、ジイソシアネートのヌレート型三量体等が挙げられ、ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート及びジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
これらの中でも、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体が好ましい。当該化合物は、イソシアヌレート骨格を有し、3個のイソシアネート基を有する化合物である。
【0021】
(b2)成分は、活性水素を有するパーフルオロポリエーテル化合物又は活性水素を有するパーフルオロアルキル化合物である。
(b2)成分における活性水素を有する基としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、メルカプト基等が挙げられ、水酸基が好ましい。
パーフルオロポリエーテル又はパーフルオロアルキル鎖部分の数平均分子量としては、1,000〜7,000が好ましく、より好ましくは1500〜3500である。
この数平均分子量を1,000以上とすることで防汚性に優れるものとすることができ、7,000以下とすることで、組成物への溶解性に優れるものとすることができる。
【0022】
(b3)成分は、活性水素と重合性不飽和基を有する化合物である。
(b3)成分における活性水素を有する基としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、メルカプト基等が挙げられ、水酸基が好ましい。
重合性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基及びビニル基が挙げられる。
(b3)成分の好ましい例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ3−アクリロイロプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0023】
(B)成分としては、(b1)、(b2)及び(b3)成分の反応物である、イソシアヌル骨格を有し、2個の重合性不飽和基と1個以上のパーフルオロポリエーテル基を有する化合物が好ましい。
当該(B)成分は市販されており、ダイキン工業(株)製のオプツールDAC−HPが挙げられる。
【0024】
(B)成分の含有割合としては、(A)成分のみを使用する場合は、(A)成分100重量部に対して、又は(A)成分と後記する不飽和化合物を併用する場合はこれらの合計量100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部である。以下、(A)成分又は/及び不飽和化合物をまとめて「硬化性成分」という。
(B)成分の含有割合を0.01〜10重量部とすることで、組成物の硬化膜が防汚性と透明性に優れたものとなる。
【0025】
3.(C)成分
(C)成分は、光重合開始剤であり、種々の化合物を使用することができる。
(C)成分の具体例としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(1−メチルビニル)フェニル〕プロパノン}及び2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル〕フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン及び4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルファイド等のベンゾフェノン系化合物;メチルベンゾイルフォルメート、オキシフェニル酢酸の2−(2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ)エチルエステル及びオキシフェニル酢酸の2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステル等のα−ケトエステル系化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のフォスフィンオキサイド系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル及びベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系化合物;チタノセン系化合物;1−〔4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル〕−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルフィニル)プロパン−1−オン等のアセトフェノン/ベンゾフェノンハイブリッド系光開始剤;2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−〔4−(フェニルチオ)〕−1,2−オクタンジオン等のオキシムエステル系光重合開始剤;並びにカンファーキノン等が挙げられる。
(C)成分としては、これら化合物の1種のみを使用しても、2種類以上を組合わせて使用してもよい。
【0026】
(C)成分の含有割合としては、硬化性成分100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.5〜7重量部、特に好ましくは1〜5重量部である。
(C)成分の含有割合を0.1〜10重量部とすることで、組成物が硬化性に優れるものとなり、組成物の硬化膜が耐擦傷性に優れたものとなる。
【0027】
4.(D)成分
(D)成分は有機溶剤であり、種々の化合物を使用することができる。
(D)成分としては、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を溶解するものが好ましい。
【0028】
(D)成分の好ましい具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びブタノール等のアルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノエーテル;ダイアセトンアルコール等のアセトンアルコール;ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族化合物;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン;ジブチルエーテル等のエーテル;並びにN−メチルピロリドン等が挙げられる。
(D)成分としては、これら化合物の1種のみを使用しても、2種類以上を組合わせて使用してもよい。
【0029】
(D)成分の含有割合としては、硬化性成分100重量部に対して、10〜1000重量部が好ましく、より好ましくは50〜500重量部、さらに好ましくは50〜300重量部である。
(D)成分の含有割合を10〜1000重量部とすることで、組成物を塗工に適当な粘度とすることができ、後記する公知の塗布方法で組成物を塗布することができる。
【0030】
5.(E)成分
本発明の(E)成分は、金属酸化物微粒子又は金属酸化物複合微粒子(e2)を重合性不飽和基とアルコキシシリル基を有する有機化合物(e1)で修飾した微粒子であって、(e1)及び(e2)成分の合計重量に対して(e1)成分を1.0〜45.0重量%の割合で反応させたものである。
(e1)成分で(e2)成分の表面を修飾することにより、硬化物における(A)成分及び(B)成分の重合ネットワーク中に、(e2)成分を組み込むことができる。これにより、耐擦傷性を維持したまま耐カール性を向上することが可能になる。
【0031】
(e1)成分としては、重合性不飽和基とアルコキシシリル基を有する有機化合物であれば種々の化合物を使用することができる。
重合性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基及びアリル基等が挙げられる。
(e1)成分の具体例としては、下記一般式(1)又は(2)で表される化合物が好ましい。
【0032】
【化1】

【0033】
【化2】

【0034】
(一般式(1)及び(2)において、R1は炭素数1〜6のアルキル基であり、R2は炭素数1〜6のアルキル基であり、R3は炭素数0〜8の飽和炭化水素基であり、R4は水素原子又はメチル基であり、nは0又は1又は2である。)
【0035】
(e1)成分の具体的な例としては、γ‐メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ‐メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ‐アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ‐アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ‐メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ‐メタクリロイルオキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ‐アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ‐アクリロイルオキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ‐メタクリロイルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ‐メタクリロイルオキシプロピルジエチルエトキシシラン、γ‐アクリロイルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ‐アクリロイルオキシプロピルジエチルエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルエチルジエトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジエチルエトキシシランが挙げられる。
(e1)成分としては、これら化合物の1種のみを使用しても、2種類以上を組合わせて使用してもよい。
【0036】
(e2)成分は、金属酸化物微粒子又は金属酸化物複合微粒子である。
(e2)成分の具体例としては、珪素、ジルコニア、チタニア、アンチモン、スズ、セリウム、アルミニウム、亜鉛及びインジウム等が挙げられる。から1種類選ばれてなる金属酸化物微粒子又は複数選ばれてなる金属酸化物複合微粒子である。
【0037】
これらの平均粒子径は用途に応じて選択すればよいが、1〜1000nmが好ましく、5〜500nmがさらに好ましく、10〜100nmが特に好ましい。
平均粒子径が1000nmを超えると透明性が得られず、塗膜の外観が悪化する。
尚、本発明において平均粒子径とは、BET法によって得られる試料の比表面積から真球状粒子と仮定したときの粒子径を意味する。
【0038】
また(e2)成分は、他成分との相溶性や分散性の観点から金属酸化物微粒子又は金属酸化物複合微粒子が有機溶剤中に分散した分散体が好ましい。
有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びブタノール等のアルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノエーテル;ダイアセトンアルコール等のアセトンアルコール;ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族化合物;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン;ジブチルエーテル等のエーテル;並びにN−メチルピロリドン等が挙げられる。
これらの中でも、メタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが好ましい。
【0039】
金属酸化物微粒子又は金属酸化物複合微粒子の分散体は市販されており、日産化学工業(株)製のメタノールシリカゾル、IPA−ST、MEK−ST、MIBK−ST、PGM−ST、XBA−ST、セルナックスシリーズ、扶桑化学工業((株))製のPL−1−IPA、PL−1−TOL、PL−2−IPA、PL−2−MEK、PL−3−TOL、触媒化成工業(株)製のオスカルシリーズ、オプトレイクシリーズ、住友大阪セメント(株)製のナノジルコニア等が挙げられる。
【0040】
(e2)成分を(e1)成分に修飾する方法は常法に従えば良く、(e1)成分と(e2)成分〔好ましくは有機溶剤分散体〕の混合物に、加水分解触媒を加え、常温又は加熱下で0.5〜24時間撹拌することにより加水分解反応を行う方法等が挙げられる。
本発明では、(e1)及び(e2)成分の割合として、(e1)及び(e2)成分の合計重量に対して(e1)成分が1.0〜45.0重量%の割合で反応させたものを使用する。(e1)成分の割合を1.0重量%以上とすることにより、得られる硬化物を、防汚性及び耐擦傷に優れるものとすることができ、45.0重量%以下とすることにより、得られる硬化物を、基材に対する密着性、防汚性及び耐カール性に優れるものとすることができる。さらに、この割合としては、(e1)成分を2.0〜30.0重量%が好ましい。
【0041】
(E)成分の含有割合としては、硬化性成分100重量部に対して、固形分換算で25〜400重量部が好ましく、より好ましくは30〜200重量部、特に好ましくは50〜150重量部である。
(E)成分の含有割合を25〜400重量部とすることで、透明性、密着性、耐擦傷性、耐カール性に優れた塗膜を得ることができる。
【0042】
6.光硬化型塗料組成物
本発明の組成物は、前記(A)〜(E)成分を必須とする光硬化型塗料組成物に関する。
組成物の製造方法としては、常法に従えば良く、前記必須成分及び必要に応じてその他成分を、攪拌・混合して製造することができる。
【0043】
本発明の組成物は、前記(A)〜(E)成分を必須とするものであるが、目的に応じて、顔料、染料、表面調整剤、紫外線吸収剤、ラジカル重合性不飽和基を有する化合物及びポリマー等の種々の成分を配合することができる。
【0044】
本発明の組成物には、1分子中に1個以上の光ラジカル重合性不飽和基を有する、(A)成分及び(B)成分以外の化合物(以下、「不飽和化合物」という)を配合しても良い。
【0045】
不飽和化合物は、プラスチック基材への密着性を高めるために配合することができる。
不飽和化合物における光ラジカル重合性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基及びアリル基等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
不飽和化合物の配合割合としては、耐擦傷性が悪化するのを防ぐ観点から、(A)成分、(B)成分及び不飽和化合物の合計100重量部に対して、20重量部以下とすることが好ましい。
【0046】
不飽和化合物において、1分子中に1個のラジカル重合性不飽和基を有する化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸、アクリル酸のマイケル付加型のダイマー、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、アルキルフェノールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、パラクミルフェノールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、オルトフェニルフェノール(メタ)アクリレート、オルトフェニルフェノールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンメチロール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、N−(2−(メタ)アクリロキシエチル)ヘキサヒドロフタルイミド、N−(2−(メタ)アクリロキシエチル)テトラヒドロフタルイミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等が挙げられる。
【0047】
不飽和化合物において、1分子中に2個以上の光ラジカル重合性不飽和基を有する化合物(以下、「多官能不飽和化合物」という)は、密着性や耐擦傷性を改善させる目的等で配合しても良い。
多官能不飽和化合物におけるラジカル重合性不飽和基の数は、耐磨耗性、耐擦傷性を低下させないためには1分子中に2個以上であることが好ましく、3〜20個であることがより好ましい。
【0048】
多官能不飽和化合物としては、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールZのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、チオビスフェノールのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールZのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSのジ(メタ)アクリレート、チオビスフェノールのジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリンのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ダイマー酸ジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのトリ及びテトラアクリレート、ペンタエリスリトールのアルキレンオキサイド付加物のトリ及びテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ及びペンタアクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、末端に(メタ)アクリロイル基を有するシリコーン樹脂等が挙げられる。
【0049】
ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、ポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸との脱水縮合物が挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、シクロヘキサンジメチロール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、及びトリメチロールプロパン等の低分子量ポリオール、並びにこれらのアルキレンオキシド付加物等のポリオールと、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びテレフタル酸等の二塩基酸又はその無水物等の酸成分とからの反応物等が挙げられる。又、各種デンドリマー型ポリオールと(メタ)アクリル酸との脱水縮合物が挙げられる。
【0050】
エポキシ(メタ)アクリレートとしては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸付加物、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸付加物、フェノール又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸付加物、ビフェニル型エポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸付加物、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルのジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、ポリブタジエンのジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、ポリブタジエン内部エポキシ化物の(メタ)アクリル酸付加物、エポキシ基を有するシリコーン樹脂の(メタ)アクリル酸付加物、リモネンジオキサイドの(メタ)アクリル酸付加物、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートの(メタ)アクリル酸付加物等が挙げられる。
【0051】
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、有機ポリイソシアネートとヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを付加反応させた化合物や、有機ポリイソシアネートとポリオールとヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを付加反応させた化合物が挙げられる。
ここで、ポリオールとしては、低分子量ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
低分子量ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメチロール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、及びグリセリン等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、ポリプロピレングリコールやポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、これら低分子量ポリオール及び/又はポリエーテルポリオールと、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びテレフタル酸等の二塩基酸又はその無水物等の酸成分との反応物が挙げられる。
有機ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、及びイソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0052】
本発明の組成物には、透明性を維持しながら硬化時のカールを低減させる目的等で、有機ポリマーを配合することもできる。
好適なポリマーとしては、(メタ)アクリル系ポリマーが挙げられ、好適な構成モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、N−(2−(メタ)アクリロキシエチル)テトラヒドロフタルイミド等が挙げられる。(メタ)アクリル酸を共重合したポリマーの場合、グリシジル(メタ)アクリレートを付加させて(メタ)アクリロイル基をポリマー鎖に導入しても良い。
【0053】
7.塗装方法
本発明の組成物が適用できる基材としては、種々の材料に適用でき、金属、ガラス及びプラスチック等が挙げられる。
プラスチックの具体例としては、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂及びポリウレタン樹脂等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
本発明の組成物は、特にプラスチック基材に好ましく適用でき、いわゆるハードコート剤として使用することができる。
【0054】
本発明の組成物の塗装方法としては、常法に従えば良い。
具体的には、塗料組成物を基材に塗布した後乾燥し、活性エネルギー線を照射する方法等が挙げられる。
本発明の塗料組成物の基材への塗布方法としては、バーコート、ロールコート、スピンコート、ディップコート、グラビアコート、フローコート、ナイフコート、ダイコート、キャップコート及びスプレーコート等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0055】
基材に対する組成物の塗装方法及び乾燥後の膜厚は、目的に応じて適宜設定すれば良い。
乾燥温度は、適用する基材が変形等の問題を生じない温度以下であれば特に限定されるものではない。
【0056】
本発明の組成物を硬化させるための活性エネルギー線としては、紫外線及び可視光線等が挙げられるが、紫外線が特に好ましい。
紫外線照射装置としては、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、タングステンランプ、メタルハライドランプ、UV無電極ランプ、LEDランプ等が挙げられる。
照射エネルギーは、活性エネルギー線の種類や配合組成に応じて適宜設定すべきものであるが、一例として高圧水銀ランプを使用する場合を挙げると、UV−A領域の照射エネルギーで100〜5,000mJ/cm2が好ましく、200〜1,000mJ/cm2がより好ましい。
【0057】
本発明の組成物の硬化膜は、耐擦傷性、防汚性、透明性、密着性及び耐カール性に優れるものであり、本発明の組成物の硬化膜を有する材料は、この特性を生かして種々の用途に使用することができる。
例えば、表示板用前面板、タッチパネル、携帯電話のディスプレイや筐体、液晶テレビ等の前面板、家電製品の筐体、照明器具、眼鏡等の各種レンズが挙げられる。
【実施例】
【0058】
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。尚、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
又、以下において「部」とは重量部を意味し、「%」とは重量%を意味する。
【0059】
○製造例1〔(A)成分の製造(HDI−M305)〕
攪拌装置及び空気の吹き込み管を備えた0.5Lセパラブルフラスコに、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETri)とペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETet)の混合物(東亞合成(株)製アロニックスM−305。以下、「M−305」という。〕159.2g(PETri0.3モルとPETet0.2モル含有)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(以下、「BHT」という)0.092g、ジブチルスズジラウレート(以下、「DBTL」という)0.055gを仕込み、液温を70〜75℃で攪拌しながら、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」という)25.2g(0.15モル)を滴下した。
滴下終了後、80℃で3時間攪拌し、反応生成物のIR(赤外吸収)分析でイソシアネート基が消失していることを確認して反応を終了した。以下、この反応生成物をHDI−M305という。
【0060】
HDI−M305は、PETriとHDIのウレタンアダクト化合物(a1)とPETet(a2)を含み、(a1)と(a2)の重量比が(a1):(a2)=6:4で含有する混合物である。
【0061】
○製造例2〔(A)成分の製造(NBDI−M451)〕
製造例1と同様のフラスコに、PETriとPETetの混合物〔東亞合成(株)製アロニックスM−451。以下、「M−451」という。〕の248.1g(PETriを0.3モルとPETet0.45モル含有)、BHTの0.14g、DBTLの0.084gを仕込み、液温を70〜75℃で攪拌しながら、ノルボルネンジイソシアネート(以下、「NBDI」という)30.9g(0.15モル)を滴下した。
滴下終了後、80℃で3時間攪拌し、反応生成物のIR(赤外吸収)分析でイソシアネート基が消失していることを確認して反応を終了した。以下、この反応生成物をNBDI−M451という。
【0062】
NBDI−M451は、PETriとIPDIのウレタンアダクト化合物(a1)とPETet(a2)を含み、(a1)と(a2)の重量比が(a1):(F)=4:6で含有する混合物である。
【0063】
○製造例3〔(E)成分の製造(シリカA)〕
攪拌機及び温度計を備えた4つ口フラスコに、メチルエチルケトン(以下、「MEK」という)分散のシリカゾル〔商品名MEK−ST:日産化学工業(株)製、固形分30%、粒子径12nm(BET法により測定した値)、以下、「MEK−ST」という〕を300gとγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン〔商品名KBM−503:信越化学工業(株)製。以下、「KBM−503」という〕を10.0g、0.01規定の塩酸を2.2gを仕込んだ。
これを還流下で3時間撹拌させて加水分解を行った。以下、これをシリカAという。
※(e1)及び(e2)に対する(e1)の割合:10.0%
【0064】
○製造例4〔(E)成分の製造(シリカB)〕
仕込量をMEK−STを267g、KBM−503を20.0g、0.01規定の塩酸を4.4gに変えた以外は製造例3と同様の操作を行った。以下、これをシリカBという。
※(e1)及び(e2)に対する(e1)の割合:20.0%
【0065】
○製造例5〔(E)成分の製造(シリカC)〕
MEK分散のシリカゾルをプロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、「PGM」という)分散のシリカゾル(商品名PGM−ST:日産化学工業(株)製、固形分30%、粒子径12nm、以下「PGM−ST」という)に変えた以外は製造例3と同様の操作を行った。以下、これをシリカCという。
※(e1)及び(e2)に対する(e1)の割合:10.0%
【0066】
○製造例6〔(E)'成分の製造例(シリカD)〕
仕込量をMEK−STを167g、KBM−503を50g、0.01規定の塩酸を8.8g、MEKを70gに変えた以外は製造例3と同様の操作を行った。以下、これをシリカDという。:
※(e1)及び(e2)に対する(e1)の割合:50.0%
【0067】
(実施例1〜実施例7)
表1に示す成分を常法に従い攪拌・混合し、光硬化型塗料組成物を製造した。
尚、表1の数値は、重量部数を表す。又、表中の略称は、前記で定義したもの以外は下記を意味する。
【0068】
○略称
(B)成分
・DAC−HP:ダイキン工業(株)製フッ素系UV硬化型添加剤、有効成分20%、商品名オプツールDAC−HP。
(C)成分
・Irg−184:チバ・ジャパン(株)製光ラジカル重合開始剤、商品名イルガキュア184;1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン。
(E)成分
・AC2101:日産化学工業(株)製アクリル修飾コロイダルシリカ、固形分33%、商品名MEK−AC2101
※(e1)及び(e2)に対する(e1)の割合:9.1%
その他の成分
・M−402:ジペンタエリスリトールのペンタアクリレート及びヘキサアクリレートの混合物、東亞合成(株)製アロニックスM−402
【0069】
【表1】

【0070】
(比較例1〜比較例8)
表2に示す成分を常法に従い攪拌・混合し、光硬化型塗料組成物を製造した。
尚、表2の数値は、重量部数を表す。又、表中の略称は、前記で定義したもの以外は下記を意味する。
【0071】
○略称
(A)'成分
・M−1600:ポリエーテル系ウレタンアクリレート、東亞合成(株)製アロニックスM−1600。
・M−305:ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート混合物、東亞合成(株)製アロニックスM−305。
(B)’成分
・F−477:DIC(株)製フッ素系非反応型添加剤、有効成分100%、商品名メガファックF−477。
・UV−3570:ビックケミー社製シリコン系UV硬化型添加剤、有効成分100%、商品名BYK−UV−3570。
【0072】
【表2】

【0073】
表1及び表2に示す組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名コスモシャインA4300、125μm厚、東洋紡(株)製)に、乾燥後の塗膜厚さが約5μmとなるようにバーコーターで塗布し、70℃の熱風乾燥機で5分間乾燥した後、紫外線照射を行って硬化膜を作成した。
紫外線照射は、アイグラフィックス(株)製紫外線照射機(高圧水銀ランプ)を使用し、ランプ高さを24cm、コンベア速度8.8m/分で3パス照射した。1パス当りの照射エネルギーは、EIT社製のUV POWER PUCKのUV−A領域で、200mJ/cm2であった(合計600mJ/cm2)。又、ピーク照度はUV−A領域で220mW/cm2であった。
得られた硬化膜について、耐擦傷性、防汚性、密着性、透明性及び耐カール性を、以下に示す方法で評価した。それらの評価結果を表4に示す。
【0074】
○耐擦傷性
耐擦傷性は、日本スチールウール(株)製ボンスター#0000に500g荷重をかけ50往復擦ったときのキズの本数に基づき下記表3の基準で判定した。評価B以上を耐擦傷性良好とした。
【0075】
【表3】

【0076】
○防汚性
防汚性は、ZEBRA製マッキー黒の油性マジックで弾き具合と拭取り易さについて評価した。
<マジック弾き性>
○:インキを大きく弾く
△:インキを少し弾く
×:インキを全く弾かない
<マジック拭取り性>
○:インキを拭取り易い
△:インキを拭取り難い
×:インキを拭取ることができない
【0077】
○密着性
硬化塗膜にカッターナイフで縦横各11本の1mm間隔の切り込みを入れて100枡の碁盤目を形成し、この碁盤目上にニチバン(株)製#405のセロハンテープを貼り付け、JIS K5400に準じてセロハンテープを剥離した。セロハンテープ剥離後の残存膜の割合(%)が100%のものを密着性良好と評価した。
【0078】
○透明性
目視にて曇り等の不具合が発生していないか塗膜の外観確認を行った。
【0079】
○カール性
フィルムに塗布し硬化させた後、このフィルムを10cm四方にカットし、4角の浮き上がりの平均値(mm)をとった時、この値が小さいほど耐カール性に優れていると評価した。
<カール性>
○:3mm以下のとき
△:4〜7mmのとき
×:8mm以上のとき
【0080】
【表4】

【0081】
実施例1〜同7の組成物は、硬化物が耐擦傷性、防汚性、密着性及び透明性に優れ、さらに耐カール性にも優れるものであった。
これに対して、(B)及び(E)成分を含まない比較例1の組成物は、硬化物の防汚性及び耐カール性が悪いものであった。(E)成分を含まず、(B)成分に代え非反応性フッ素含有添加剤を含む比較例2の組成物は、硬化物の防汚性が不十分で、耐カール性も悪かった。(B)成分に代え非反応性フッ素含有添加剤を含む比較例3の組成物は、硬化物の防汚性が不十分で、耐擦傷性も悪化した。(B)成分に代え重合性不飽和基を有するシリコン系添加剤を含む比較例4の組成物は、硬化物の防汚性が不十分であった。(E)成分と異なる(メタ)アクリル修飾していないシリカ粒子を含む比較例5の組成物は、硬化物の防汚性及び耐擦傷性が悪化した。(A)成分に代えポリオール鎖を有するウレタンアクリレートを含む比較例6の組成物は、硬化物の耐擦傷性が悪化した。(A)成分に代えペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレートを含む比較例7の組成物は、硬化物の密着性及び耐カール性が不充分なものとなった。(e1)成分の反応割合が(E)成分の上限45%を超過する50%で反応させたアクリル修飾シリカ粒子を含む比較例8の組成物は、硬化物の密着性及び耐擦傷性が悪化し、耐カール性が不充分なものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の光硬化型塗料組成物は、金属、ガラス及びプラスチック等の種々の基材の塗装に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分、重合性不飽和基を有する含フッ素化合物(B)、光重合開始剤(C)、有機溶剤(D)及び金属酸化物微粒子又は金属酸化物複合微粒子(e2)を重合性不飽和基とアルコキシシリル基を有する有機化合物(e1)で修飾した微粒子であって、(e1)及び(e2)成分の合計重量に対して(e1)成分を1.0〜45.0重量%の割合で反応させたもの(E)を含有する光硬化型塗料組成物。
(A)成分:3価以上の多価アルコールから誘導される(メタ)アクリレートであって、(メタ)アクリロイル基を2個以上有し、水酸基を1個以上有する(メタ)アクリレートとポリイソシアネートとの付加反応で得られるウレタンアダクト化合物(a1)及び3価以上の多価アルコールから誘導される(メタ)アクリレートであって、(メタ)アクリロイル基を3個以上有し、水酸基を有さない(メタ)アクリレート(a2)から構成される(メタ)アクリレート混合物
【請求項2】
前記(A)成分100重量部に対して、
(B)成分を0.01〜10重量部、
(C)成分を0.1〜10重量部、
(D)成分を10〜1000重量部及び
(E)成分(固形分換算)を25〜400重量部
の割合で含有する請求項1記載の光硬化型塗料組成物。
【請求項3】
前記(a1)成分と(a2)成分を重量比が10:90〜90:10で含む請求項2又は請求項3に記載の光硬化型塗料組成物。
【請求項4】
前記(a1)成分が、3価以上の脂肪族多価アルコールから誘導される(メタ)アクリレートであって、(メタ)アクリロイル基を2個以上有し、水酸基を1個以上有する(メタ)アクリレートとポリイソシアネートとの付加反応で得られるウレタンアダクト化合物であり、前記(a2)成分が、3価以上の脂肪族多価アルコールから誘導される(メタ)アクリレートであって、(メタ)アクリロイル基を3個以上有し、水酸基を有さない(メタ)アクリレートである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の光硬化型塗料組成物。
【請求項5】
前記(B)成分が、2個以上の重合性不飽和基と1個以上のパーフルオロポリエーテル基又はパーフルオロアルキル基を有する化合物である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の光硬化型塗料組成物。
【請求項6】
前記(B)成分が、イソシアヌル骨格を有し、2個の重合性不飽和基と1個以上のパーフルオロポリエーテル基を有する化合物である請求項5に記載の光硬化型塗料組成物。
【請求項7】
前記請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の組成物を含むプラスチック用光硬化型塗料組成物。
【請求項8】
前記請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の組成物の硬化物。
【請求項9】
基材に、前記請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の組成物の硬化物を有する物品。

【公開番号】特開2012−31312(P2012−31312A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172961(P2010−172961)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】