説明

光硬化型樹脂組成物

【解決手段】 本発明に係る光カチオン硬化型樹脂組成物は、(A)カチオン重合性化合物、(B)光カチオン開始剤および(C)脂肪族チオエーテル化合物を含有することを特徴としている。
【効果】 本発明に係る光カチオン硬化型樹脂組成物は、低温での転化率に優れ、しかもその硬化物は優れた接着強度および耐透湿性を有する。該組成物からなるシール材によれば優れた接着強度および耐透湿性を有する液晶ディスプレイあるいはエレクトロルミネッセンスディスプレイを良好な生産性で提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の技術分野】本発明は、光カチオン硬化型樹脂組成物、その用途、特に液晶ディスプレイ用シール材およびエレクトロルミネッセンスディスプレイ用シール材に関する。さらに詳しくは、接着性、耐透湿性、低温下での光カチオン重合性に優れた光カチオン硬化型樹脂組成物及びその用途に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】近年、電子、電気業界において種々の表示素子を利用したフラットパネルディスプレイの開発、製造が行われている。これらのディスプレイの多くはガラスやプラスチックなどのフラットパネルからなるセルに表示素子を封止したものである。その代表として、液晶(LC)ディスプレイ、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイが挙げられる。
【0003】液晶ディスプレイは、通常、ガラス基板2枚をシール材により周囲をシールして張り合わせ、その中に液晶を封入したものである。従来、シール材には、熱硬化型エポキシ樹脂が使用されてきた。しかし、このような熱硬化型エポキシ樹脂では150℃〜180℃という高温で2時間程度加熱硬化させる必要があり、生産性が上がらないという問題があった。
【0004】一方、ELディスプレイは、高輝度、高効率、高速応答性などの点で優れ、次世代のフラットパネルディスプレイとして注目を集めている。ELの素子には、無機EL素子、有機EL素子があり、たとえば無機EL素子は時計のバックライト等で実用化されている。また有機EL素子は、高輝度、高効率、高速応答性、多色化の点で無機EL素子より優れているが、耐熱性が低く、耐熱温度は通常80〜100℃程度である。このため、有機ELディスプレイのシールにおいては、シール材として熱硬化型エポキシ樹脂を用いても十分に加熱硬化できないという問題があった。
【0005】これらの問題を解決するため、低温速硬化が可能な光硬化型シール材の開発が試みられている。光硬化型シール材としては、通常、光ラジカル硬化型シール材と光カチオン硬化型シール材がある。光ラジカル硬化型シール剤としては主としてアクリル系樹脂が用いられており、多様なアクリレートモノマー、オリゴマーを使用できるという利点をもっているが、耐透湿性が不十分であり、体積収縮率の低減や、接着力の更なる向上が必要とされていた。
【0006】一方、光カチオン硬化型シール材としては主としてエポキシ系樹脂が用いられており、接着性が比較的良好であるが、感光性、速硬化性等の光硬化性について更なる向上が求められていた。特に、光カチオン重合では、通常重合温度を比較的低い範囲にすることができるものの、重合温度が低いために重合性化合物の転化率が向上せず、優れた感光性、速硬化性を得にくいという問題があった。このため、光カチオン重合における重合性化合物の転化率を向上させるため、水酸基を有する化合物を配合する試みもなされているが、水酸基による連鎖移動のため高分子量の重合体を得ることができない場合があった。
【0007】したがって、比較的低温領域においても高い光硬化性を有する等、光硬化性に優れ、しかも、基材との接着性、耐透湿性にも優れた硬化物を与えるような光カチオン重合型樹脂組成物の出現が望まれていた。そこで本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意研究し、カチオン重合性化合物、光カチオン開始剤および脂肪族チオエーテル化合物からなる樹脂組成物が、低温での硬化性に優れ、しかも、その硬化物は優れた接着強度および耐透湿性を有するとともに、良好な生産性を有することを見出した。また、本発明者らは、このような光カチオン硬化型樹脂組成物が、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ等のフラットパネルにも好適に使用できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0008】
【発明の目的】本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、低温での重合転化性に優れ、しかも、優れた接着強度および耐透湿性を有するとともに、良好な生産性を有する硬化物を与える光カチオン硬化型樹脂組成物を提供することを目的としている。
【0009】また、本発明は、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ等のフラットパネルに好適なシール材、該シール材を用いる液晶ディスプレイおよびエレクトロルミネッセンスディスプレイ、該シール材を用いた液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイのシール方法および製造方法を提供することを目的としている。
【0010】
【発明の概要】本発明に係る光カチオン硬化型樹脂組成物は、(A)カチオン重合性化合物、(B)光カチオン開始剤および(C)脂肪族チオエーテル化合物を含有することを特徴としている。前記脂肪族チオエーテル化合物(C)は、下記一般式(I)で表される化合物であることが好ましい。
【0011】
【化2】


【0012】[ただし、前記一般式(I)中、Rは、炭素原子数1〜18のアルキル基を示す。]。前記カチオン重合性化合物(A)は、エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物であることが好ましい。前記脂肪族チオエーテル化合物(C)は、光カチオン硬化型樹脂組成物100重量部に対して、0.01〜5重量部の量で含まれることが好ましい。
【0013】前記光カチオン硬化型樹脂組成物は、さらに(D)微粒子無機フィラーを含有していてもよい。前記光カチオン硬化型樹脂組成物は、さらに(E)シランカップリング剤を含有していてもよい。前記カチオン重合性化合物(A)は5〜99.8重量部、前記光カチオン開始剤(B)は0.1〜10重量部、前記脂肪族チオエーテル化合物(C)は0.01〜5重量部、前記微粒子無機フィラー(D)は0〜70重量部、および前記シランカップリング剤(E)は0〜10重量部の量(ただし、光カチオン硬化型樹脂組成物100重量部に対する量を示す。)で含まれることが好ましい。
【0014】本発明に係る液晶ディスプレイ用シール材は、前記光カチオン硬化型樹脂組成物からなることを特徴としている。本発明に係るシール方法は、液晶ディスプレイの対向する基板をシール材により張り合わせる液晶ディスプレイのシール方法において、前記シール材として前記液晶ディスプレイ用シール材を用いることを特徴としている。
【0015】本発明に係る液晶ディスプレイの製造方法は、液晶ディスプレイの対向する基板をシール材により張り合わせる工程を含む液晶ディスプレイの製造方法において、前記シール材として前記液晶ディスプレイ用シール材を用いることを特徴としている。本発明に係る液晶ディスプレイは、液晶ディスプレイの対向する基板を張り合わせるシール材が前記液晶ディスプレイ用シール材からなることを特徴としている。
【0016】本発明に係るエレクトロルミネッセンスディスプレイ用シール材は、前記光カチオン硬化型樹脂組成物からなることを特徴としている。本発明に係るシール方法は、エレクトロルミネッセンスディスプレイの対向する基板をシール材により張り合わせるエレクトロルミネッセンスディスプレイのシール方法において、シール材として前記エレクトロルミネッセンスディスプレイ用シール材を用いることを特徴としている。
【0017】本発明に係るエレクトロルミネッセンスディスプレイの製造方法は、エレクトロルミネッセンスディスプレイの対向する基板をシール材により張り合わせる工程を含むエレクトロルミネッセンスディスプレイの製造方法において、シール材として前記エレクトロルミネッセンスディスプレイ用シール材を用いることを特徴としている。
【0018】本発明に係るエレクトロルミネッセンスディスプレイは、エレクトロルミネッセンスディスプレイの対向する基板を張り合わせるシール材が前記エレクトロルミネッセンスディスプレイ用シール材からなることを特徴としている。
【0019】
【発明の具体的説明】以下、本発明を詳細に説明する。
[(A)カチオン重合性化合物]本発明におけるカチオン重合性化合物(A)は、例えば、エポキシ化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
【0020】エポキシ化合物の具体例として、エポキシ基を1個有する化合物としては、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル等があり、エポキシ基を2個以上有する化合物としては、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ノボラック型エポキシ化合物等が挙げられる。
【0021】また、脂環式エポキシ基を有する化合物として、例えば、下記一般式(1)、一般式(2)で表される化合物等も挙げられる。
【0022】
【化3】


【0023】オキセタン化合物としては、下記一般式(3)
【0024】
【化4】


【0025】で表されるオキセタン環を少なくとも1つ有する化合物であればいずれも使用することができる。例えばオキセタン環を好ましくは1〜15含有する化合物、さらに好ましくは1〜10含有する化合物、特に好ましくは1〜4含有する化合物が挙げられる。
<オキセタン環を1個有する化合物>オキセタン環を1個有する化合物として、下記一般式(4)
【0026】
【化5】


【0027】で示される化合物等が挙げられる。前記一般式(4)において、Z、R1、R2は下記の原子又は置換基を意味する。Zは酸素原子または硫黄原子である。R1は水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素原子数1〜6個のアルキル基;トリフルオロメチル基、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基等の炭素原子数1〜6個のフルオロアルキル基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜18のアリール基、フリル基またはチエニル基である。
【0028】R2は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素原子数1〜6個のアルキル基;1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等の炭素原子数2〜6個のアルケニル基;ベンジル基、フルオロベンジル基、メトシキベンジル基、フェネチル基、スチリル基、シンナミル基、エトキシベンジル基等の置換または非置換の炭素原子数7〜18のアラルキル基;フェノキシメチル基、フェノキシエチル基等のアリーロキシアルキル基等のその他の芳香環を有する基;エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基等の炭素原子数2〜6個のアルキルカルボニル基;エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等の炭素原子数2〜6個のアルコキシカルボニル基;エチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基、ペンチルカルバモイル基等の炭素原子数2〜6個のN−アルキルカルバモイル基である。
【0029】また本願発明の効果を阻害しない範囲で上記以外の置換基を用いてもよい。オキセタン環を1個有する化合物のより具体的な例としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−(メタ)アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、4−メトキシ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル〕フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が挙げられる。
【0030】2個のオキセタン環を有する化合物としては、下記一般式(5)、(6)で示される化合物等が挙げられる。
【0031】
【化6】


【0032】前記一般式(5)、(6)において、R1は一般式(4)と同様に水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素原子数1〜6個のアルキル基;トリフルオロメチル基、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基等の炭素原子数1〜6個のフルオロアルキル基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜18のアリール基;フリル基またはチエニル基である。前記一般式(5)、(6)中のR1は互いに同じでも異なっていてもよい。
【0033】前記一般式(5)中、R3は、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の線状あるいは分岐状の炭素原子数1〜20のアルキレン基、ポリ(エチレンオキシ)基、ポリ(プロピレンオキシ)基等の線状あるいは分枝状の炭素原子数1〜120のポリ(アルキレンオキシ)基、プロペニレン基、メチルプロペニレン基、ブテニレン基等の線状あるいは分枝状の不飽和炭素水素基、カルボニル基、カルボニル基を含むアルキレン基、分子鎖の途中にカルバモイル基を含むアルキレン基である。
【0034】また、該R3は、下記一般式(7)、(8)、(9)および(10)で示される基から選択される多価の基でもよい。
【0035】
【化7】


【0036】前記一般式(7)において、R4は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素原子数1〜4個のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素原子数1〜4個のアルコキシ基、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルキルカルボキシル基、カルボキシル基、または、カルバモイル基を表し、Xは1〜4の整数である。
【0037】
【化8】


【0038】前記一般式(8)において、R4は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素原子数1〜4個のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素原子数1〜4個のアルコキシ基、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルキルカルボキシル基、カルボキシル基、または、カルバモイル基を表し、Xは1〜4の整数である。
【0039】
【化9】


【0040】前記一般式(9)において、R5は、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、−NH−、−SO−、−SO2−、−C(CF32−または−C(CH32−である。一般式(10)は以下の置換基である。
【0041】
【化10】


【0042】前記一般式(10)において、R6は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素原子数1〜4のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の炭素原子数6〜18のアリール基であり、yは、0〜200の整数である。R7はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素原子数1〜4のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の炭素原子数6〜18のアリール基である。
【0043】またR7は、下記一般式(11)で示される基でもよい。
【0044】
【化11】


【0045】前記一般式(11)において、R8は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素原子数1〜4のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の炭素原子数6〜18のアリール基である。Zは、0〜100の整数である。
<オキセタン環を2個有する化合物>より具体的なオキセタン環を2個有する化合物としては下記式(12)、(13)で表される化合物が挙げられる。
【0046】
【化12】


【0047】さらに、オキセタン環を2個有する化合物としては、たとえば、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトシキ)メチル〕ベンゼン、1,2−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕エタン、1,2−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレンビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ブタン、1,6−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ヘキサン、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールFビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が挙げられる。
【0048】<オキセタン環を3個以上有する化合物>3個以上のオキセタン環を有する化合物としては、下記式(14)、(21)、(22)で示される化合物等が挙げられる。
【0049】
【化13】


【0050】前記一般式(14)において、R1は一般式(4)と同様に水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素原子数1〜6個のアルキル基、トリフルオロメチル基、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基等の炭素原子数1〜6個のフルオロアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜18のアリール基、フリル基またはチエニル基である。一般式(14)中のR1は互いに同じでも異なっていてもよい。
【0051】R9は、3〜10価の有機基を示し、例えば、下記式(15)〜(17)で示される基等の炭素原子数1〜30の分枝状または線状のアルキレン基、下記式(18)で示される基等の分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基または下記式(19)または式(20)で示される線状または分枝状ポリシロキサン含有基等が挙げられる。
【0052】式(14)中、jは、R9の価数に等しい3〜10の整数を示す。
【0053】
【化14】


【0054】前記式(15)において、R10はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素原子数1〜6個のアルキル基である。
【0055】
【化15】


【0056】前記式(18)においてLは1〜10の整数であり、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0057】
【化16】


【0058】3個以上のオキセタン環を有する化合物の具体例としては、下記式(21)、一般式(22)で示される化合物等が挙げられる。
【0059】
【化17】


【0060】一般式(22)で表される化合物とは1〜10個のオキセタン環を有し以下の通りである。
【0061】
【化18】


【0062】前記一般式(22)において、R1は一般式(4)と同様に水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素原子数1〜6個のアルキル基、トリフルオロメチル基、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基等の炭素原子数1〜6個のフルオロアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜18のアリール基、フリル基またはチエニル基である。一般式(22)中のR1は互いに同じでも異なっていてもよい。
【0063】R8は式(11)と同様にR8は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素原子数6〜18のアリール基である。Zは、0〜100の整数である。このときR8は互いに同じでも異なっていてもよい。R11はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素原子数1〜4のアルキル基または炭素原子数3〜12のトリアルキルシリル基(トリアルキルシリル基中の、アルキル基は互いに同一でも異なっていてもよい。例えばトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリブチルシリル基等である)である。
【0064】rは1〜10の整数を示す。3個以上のオキセタン環を有する化合物としては、より具体的には、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が挙げられる。
【0065】(高分子量化合物)さらに、オキセタン環を有する化合物(A)としては、上述の例以外にも、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の数平均分子量1000〜5000程度の高分子量を有する化合物も挙げられる。このような例として、以下の一般式(23)、(24)、(25)で表される化合物が挙げられる。
【0066】
【化19】


【0067】(ここで、pは20〜200の整数である。)
【0068】
【化20】


【0069】(ここで、qは15〜200の整数である。)
【0070】
【化21】


【0071】(ここで、sは20〜200の整数である。)
これらのオキセタン環を有する化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明の樹脂組成物におけるカチオン重合性化合物(A)の含有割合は、光カチオン硬化型樹脂組成物100重量部中、好ましくは5〜99.8重量部、より好ましくは好ましくは5〜99.6重量部、さらに好ましくは10〜90重量部であり、特に好ましくは30〜90重量部、最も好ましくは50〜90重量部であることが望ましい。
【0072】カチオン重合性化合物(A)が30重量部以上であると、特に感光性、速硬化性等に優れ好ましい。他のカチオン重合性化合物としては、例えば、オキソラン化合物、環状アセタール化合物、環状ラクトン化合物、チイラン化合物、チエタン化合物、スピロオルソエステル化合物、ビニルエーテル化合物、エチレン性不飽和化合物、環状エーテル化合物、環状チオエーテル化合物、ビニル化合物等が挙げられる。
【0073】これらは、1種単独でも複数種を組み合わせて使用してもよい。
[(B)光カチオン開始剤]本発明の光カチオン開始剤(B)は、光により、(A)成分の樹脂のカチオン重合を開始する化合物であれば特に限定はなく、いずれでも使用することができる。
【0074】光カチオン開始剤の好ましい例としては、下記一般式(26)で表される構造を有するオニウム塩を挙げることができる。このオニウム塩は、光反応し、ルイス酸を放出する化合物である。
[R12a13b14c15dW]m+[MXn+mm- (26)
上記式中、カチオンはオニウムイオンであり、Wは、S、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、I、Br、Cl、またはN≡Nであり、R12、R13、R14、およびR15は同一または異なる有機基であり、a、b、cおよびdはそれぞれ0〜3の整数であって、(a+b+c+d)は((Wの価数)+m)に等しい。
【0075】Mは、ハロゲン化錯体[MXn+m]の中心原子を構成する金属またはメタロイドであり、例えば、B、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Co等である。Xは例えば、F、Cl、Br等のハロゲン原子であり、mはハロゲン化物錯体イオンの正味の電荷であり、nはMの原子価である。一般式(26)においてオニウムイオンの具体例としては、ジフェニルヨードニウム、4−メトキシジフェニルヨードニウム、ビス(4−メチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム、トリフェニルスルホニウム、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウム、ビス〔4−(ジフェニルスルフォニオ)−フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル)スルホニオ)−フェニル〕スルフィド、η5−2,4−(シクロペンタジェニル)〔1,2,3,4,5,6−η−(メチルエチル)ベンゼン〕−鉄(1+)等が挙げられる。
【0076】一般式(26)において陰イオンの具体例としては、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサクロロアンチモネート等が挙げられる。また、前記式(26)において陰イオンとしてハロゲン化錯体[MXn+m]の代わりに、過塩素酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、トリニトロトルエンスルホン酸イオン等であってもよい。
【0077】さらに、前記一般式(26)において陰イオンとしてハロゲン化錯体[MXn+m]の代わりに芳香族陰イオンであってもよい。具体的には、たとえば、テトラ(フルオロフェニル)ボレート、テトラ(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラ(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラ(テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラ(パーフルオロフェニル)ボレート、テトラ(トリフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(ジ(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートなどを挙げることができる。
【0078】これらの光カチオン開始剤は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明の樹脂組成物における光カチオン開始剤(B)の含有割合は、光カチオン硬化型樹脂組成物100重量部中、好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.3〜4重量部、特に好ましくは0.3〜3重量部であることが望ましい。前記光カチオン開始剤(B)の含有割合を0.1重量部以上とすることにより樹脂組成物の硬化状況が良好となり好ましく、また硬化後に光カチオン開始剤が溶出するのを予防する観点から10重量部以下であることが好ましい。
【0079】[(C)脂肪族チオエーテル化合物]本発明に係る光カチオン硬化型樹脂組成物は、脂肪族チオエーテル化合物(C)を含有している。このような脂肪族チオエーテル化合物(C)としては、たとえば、下記一般式(I)で表される化合物であることが好ましい。
【0080】
【化22】


【0081】ただし、前記一般式(I)中、Rは、好ましくは炭素原子数1〜18のアルキル基、さらに好ましくは炭素原子数6〜18のアルキル基が望ましい。前記カチオン重合性化合物(A)の光カチオン開始剤(B)を用いる重合において、このような置換基を有する脂肪族チオエーテル化合物(C)を併用すると、低温領域、たとえば好ましくは0〜100℃、さらに好ましくは20〜100℃でのカチオン重合性化合物の転化率が向上し、しかもその硬化物は優れた接着強度および耐透湿性を発揮することができる。
【0082】これらの脂肪族チオエーテル化合物(C)は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。このような脂肪族チオエーテル化合物(C)の含有割合は、光カチオン硬化型樹脂組成物100重量部に対して、好ましくは0.01〜5重量部、さらに好ましくは0.05〜3重量部、特に好ましくは0.1〜3重量部であることが望ましい。
【0083】脂肪族チオエーテル化合物(C)をこのような範囲で用いると、転化率がより向上し、硬化性をさらに高めることができる。
[(D)微粒子無機フィラー]本願発明の樹脂組成物は微粒子無機フィラー(D)を含有することが好ましい。微粒子無機フィラーとは、一次粒子の平均径が0.005〜10μmの無機フィラーである。
【0084】具体的には、シリカ、タルク、アルミナ、ウンモ、炭酸カルシウム等が挙げられる。微粒子無機フィラーは、表面未処理のもの、表面処理したものともに使用できる。表面処理した微粒子無機フィラーとして、例えば、メトキシ基化、トリメチルシリル基化、オクチルシリル基化、又はシリコーンオイルで表面処理した微粒子無機フィラー等が挙げられる。
【0085】これらの微粒子無機フィラー(D)は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明の樹脂組成物における微粒子無機フィラー(D)の含有割合は、好ましくは0〜70重量部、さらに好ましくは0.1〜70重量部、特に好ましくは1〜30重量部である。
【0086】このような範囲で微粒子無機フィラーを添加すると、耐透湿性、接着力、揺変性付与等が向上する。
[(E)シランカップリング剤]本発明に係る光カチオン硬化型樹脂組成物は、必要に応じ、シランカップリング剤(E)を含有してもよい。シランカップリング剤(E)としては、エポキシ基、カルボキシル基、メタクリロイル基、イソシアネート基等の反応性基を有するシラン化合物が挙げられる。
【0087】具体的には、トリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトシキシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトシキシラン等が挙げられる。
【0088】これらのシランカップリング剤(E)は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。シランカップリング剤(E)の使用量は、光カチオン硬化型樹脂組成物100重量部に対して、好ましくは0〜10重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部、特に好ましくは0.3〜8重量部であることが望ましい。
【0089】このようなシランカップリング剤(E)を上記の範囲で添加すると接着力が向上し好ましい。したがって、本発明に係る光カチオン硬化型樹脂組成物は、前記カチオン重合性化合物(A)が5〜99.8重量部、前記光カチオン開始剤(B)が0.1〜10重量部、前記脂肪族チオエーテル化合物(C)が0.01〜5重量部、前記微粒子無機フィラー(D)が0〜70重量部、および前記シランカップリング剤(E)が0〜10重量部の量(ただし、光カチオン硬化型樹脂組成物100重量部に対する量を示す。)で含まれることが好ましい。
【0090】また、前記微粒子無機フィラー(D)と前記シランカップリング剤(E)とを併用する場合には、前記カチオン重合性化合物(A)が5〜99.6重量部、前記光カチオン開始剤(B)が0.1〜10重量部、前記脂肪族チオエーテル化合物(C)が0.01〜5重量部、前記微粒子無機フィラー(D)が0.1〜70重量部、および前記シランカップリング剤(E)が0.1〜10重量部の量(ただし、光カチオン硬化型樹脂組成物100重量部に対する量を示す。)で含まれることが好ましい。
【0091】[その他の成分]本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲においてその他樹脂成分、充填剤、改質剤、安定剤、酸化防止剤等その他成分を含有させることができる。
<その他の樹脂成分>前記その他の樹脂成分としては、例えば、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリブタジェン、ポリクロロプレン、ポリエーテル、ポリエステル、スチレン−ブタジェン−スチレンブロック共重合体、石油樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、セルロース樹脂、フッ素系オリゴマー、シリコン系オリゴマー、ポリスルフィド系オリゴマー等が挙げられる。
【0092】これらは、1種単独でも複数種を組み合わせて使用してもよい。
<充填剤>前記充填剤としては、例えば、ガラスビーズ、スチレン系ポリマー粒子、メタクリレート系ポリマー粒子、エチレン系ポリマー粒子、プロピレン系ポリマー粒子等が挙げられる。
【0093】これらは、1種単独でも複数種を組み合わせて使用してもよい。
<改質剤>前記改質剤としては、例えば、重合開始助剤、老化防止剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。これらは、1種単独でも複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0094】<酸化防止剤>酸化防止剤としては、フェノール化合物が挙げられる。具体的には、フェノール化合物としては、ハイドロキノン、レゾルシン、2,6−ジ−tert−ブチル−P−クレゾール、4,4'−チオビス−(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス−(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2'−メチレンビス−(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、1,1,3−トリス(2−メチル−4ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリエチレングリコールビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]等が挙げられる。
【0095】これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
[光カチオン硬化型樹脂組成物の調整]本発明に係る光カチオン硬化型樹脂組成物は、各組成物を均一に混合するように調製する。0.01〜300Pa・sの粘度範囲は塗布作業がより効率的に実施でき、各組成の混合安定性が良い。粘度範囲は、0.1〜100Pa・sであることがより好ましい。
【0096】粘度は、樹脂の配合比やその他の成分を添加することにより調整すれば良い。また、粘度が高い場合は、3本ロール等を使用する常法により混練すれば良い。
[シール材、シール方法、製造方法、液晶ディスプレイおよびエレクトロルミネッセンスディスプレイ]本発明に係るシール材は、前記光カチオン硬化型樹脂組成物からなっている。
【0097】このようなシール材は、カチオン重合性化合物の重合転化率が高く、生産性に優れ、しかも接着強度、耐透湿性に優れることから、液晶ディスプレイ用シール材あるいはエレクトロルミネッセンスディスプレイ用シール材として好適である。このような光カチオン硬化型樹脂組成物からなるシール材を用いるディスプレイのシール方法は下記の通りである。
【0098】まず本発明に係る液晶ディスプレイ用シール材あるいはエレクトロルミネッセンスディスプレイ用シール材を、それぞれ液晶ディスプレイ基材上、あるいはエレクトロルミネッセンスディスプレイ基材上へ塗布する。塗布の方法は、均一にシール材が塗布できれば制限はない。例えばスクリーン印刷やディスペンサーを用いて塗布する方法等公知の方法により実施すればよい。
【0099】本発明に係るシール材をディスプレイの基材上に塗布後、ディスプレイ基材を貼り合わせ、光を照射し、塗布したシール材を硬化させる。ここで使用できる光源としては、所定の作業時間内で硬化させることができるものであればいずれでも良い。通常、紫外線光、可視光の範囲の光が照射できるより具体的には、低圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライド灯等が挙げられる。
【0100】また、通常、照射光量は、照射光量が過少である場合には、樹脂組成物の未硬化部が残存しない範囲又は、接着不良が発生しない範囲で適宜選定できるが、通常500〜3000mJ/cm2である。照射量の上限は特にないが過多である場合には不要なエネルギーを浪費し生産性が低下するので好ましくない。
【0101】このようにして、液晶ディスプレイあるいはエレクトロルミネッセンスディスプレイにおける対向する基板を、本発明に係る前記シール材により張り合わせることができる。このような液晶ディスプレイまたはエレクトロルミネッセンスディスプレイのシール方法は、カチオン重合性化合物の重合転化率が高く生産性に優れ、接着強度、耐透湿性に優れた液晶ディスプレイまたはエレクトロルミネッセンスディスプレイを提供するシール方法である。
【0102】また、本発明に係る液晶ディスプレイまたはエレクトロルミネッセンスディスプレイの製造方法は、液晶ディスプレイまたはエレクトロルミネッセンスディスプレイにおける対向する基板を、本発明のシール材により張り合わせる方法である。さらに、本発明に係る液晶ディスプレイは、本発明に係るシール材を液晶ディスプレイの対向する基板を張り合わせるシールに用いるものであり、本発明に係るエレクトロルミネッセンスディスプレイは、本発明に係るシール材をエレクトロルミネッセンスディスプレイの対向する基板を張り合わせるシール材に用いている。
【0103】
【発明の効果】本発明に係る光カチオン硬化型樹脂組成物は、低温での転化率に優れ、しかも、その硬化物は優れた接着強度および耐透湿性を有する。該組成物からなるシール材によれば優れた接着強度および耐透湿性を有する液晶ディスプレイあるいはエレクトロルミネッセンスディスプレイを良好な生産性で提供することができる。
【0104】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<測定法>得られた樹脂組成物及び硬化物について以下の評価を行った(転化率)IRスペクトルの、エポキシ基またはオキセタン環の吸収減少率より転化率を計算した。
(接着強度)接着強度は、2枚のガラス板を樹脂組成物(厚み100μm)ではさみ、光照射し、接着させ、これら2枚のガラス板を引き剥がすときの接着強度を引っ張り速度は2mm/minで測定した。
【0105】(フィルム透湿量)JIS Z0208に準じて光硬化させた樹脂組成物フィルム(厚み100μm)の透湿量を40℃90%RH条件で測定した。
<原材料>(カチオン重合性化合物(A))
エポキシ化合物a−1:ビスフェノールFジグリシジルエーテルオキセタン化合物a−2: 1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン(光カチオン開始剤(B))
光開始剤b−1:下記式で表される化合物。
【0106】
【化23】


【0107】(脂肪族チオエーテル化合物(C))
チオエーテル化合物c−1:ジラウリルチオジプロピオネート(微粒子無機フィラー(D))
微粒子シリカd−1:1次粒子の平均径が12nmの表面未処理、微粒子シリカ。
【0108】
【実施例1】(樹脂組成物の調製)表1に示す配合処方により、オキセタン環を有する化合物(A)成分としてa−1(ビスフェノールFジグリシジルエーテルを96.9重量部、光カチオン開始剤(B)成分として光開始剤b−1(式(26))を3重量部、脂肪族チオエーテル(C)成分としてc−1(ジラウリルチオジプロピオネート)を0.1重量部配合し、1時間攪拌することにより、透明な液状組成物を得た。
【0109】(光硬化)メタルハライドランプで3000mJ/cm2の光照射を行い硬化させた。その評価結果を表2に示す。
【0110】
【実施例2】表1に示す組成の成分を使用した以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0111】
【比較例1〜3】表1に示す組成の成分を使用した以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0112】
【表1】


【0113】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】(A)カチオン重合性化合物、(B)光カチオン開始剤および(C)脂肪族チオエーテル化合物を含有することを特徴とする光カチオン硬化型樹脂組成物。
【請求項2】 前記脂肪族チオエーテル化合物(C)が、下記一般式(I)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の光カチオン硬化型樹脂組成物;
【化1】


[ただし、前記一般式(I)中、Rは、炭素原子数1〜18のアルキル基を示す。]。
【請求項3】 前記カチオン重合性化合物(A)が、エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の光カチオン硬化型樹脂組成物。
【請求項4】 前記脂肪族チオエーテル化合物(C)が、光カチオン硬化型樹脂組成物100重量部に対して、0.01〜5重量部の量で含まれることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光カチオン硬化型樹脂組成物。
【請求項5】 前記光カチオン硬化型樹脂組成物が、さらに(D)微粒子無機フィラーを含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光カチオン硬化型樹脂組成物。
【請求項6】 前記光カチオン硬化型樹脂組成物が、さらに(E)シランカップリング剤を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光カチオン硬化型樹脂組成物。
【請求項7】 前記カチオン重合性化合物(A)が5〜99.8重量部、前記光カチオン開始剤(B)が0.1〜10重量部、前記脂肪族チオエーテル化合物(C)が0.01〜5重量部、前記微粒子無機フィラー(D)が0〜70重量部、および前記シランカップリング剤(E)が0〜10重量部の量(ただし、光カチオン硬化型樹脂組成物100重量部に対する量を示す。)で含まれることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光カチオン硬化型樹脂組成物。
【請求項8】 請求項1〜7のいずれかに記載の光カチオン硬化型樹脂組成物からなる液晶ディスプレイ用シール材。
【請求項9】 液晶ディスプレイの対向する基板をシール材により張り合わせる液晶ディスプレイのシール方法において、前記シール材として請求項8に記載の液晶ディスプレイ用シール材を用いることを特徴とするシール方法。
【請求項10】 液晶ディスプレイの対向する基板をシール材により張り合わせる工程を含む液晶ディスプレイの製造方法において、前記シール材として請求項8に記載の液晶ディスプレイ用シール材を用いることを特徴とする液晶ディスプレイの製造方法。
【請求項11】 液晶ディスプレイの対向する基板を張り合わせるシール材が請求項8に記載の液晶ディスプレイ用シール材からなることを特徴とする液晶ディスプレイ。
【請求項12】 請求項1〜7のいずれかに記載の光カチオン硬化型樹脂組成物からなるエレクトロルミネッセンスディスプレイ用シール材。
【請求項13】 エレクトロルミネッセンスディスプレイの対向する基板をシール材により張り合わせるエレクトロルミネッセンスディスプレイのシール方法において、前記シール材として請求項12に記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイ用シール材を用いることを特徴とするシール方法。
【請求項14】 エレクトロルミネッセンスディスプレイの対向する基板をシール材により張り合わせる工程を含むエレクトロルミネッセンスディスプレイの製造方法において、前記シール材として請求項12に記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイ用シール材を用いることを特徴とするエレクトロルミネッセンスディスプレイの製造方法。
【請求項15】 エレクトロルミネッセンスディスプレイの対向する基板を張り合わせるシール材が請求項12に記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイ用シール材からなることを特徴とするエレクトロルミネッセンスディスプレイ。

【公開番号】特開2003−96185(P2003−96185A)
【公開日】平成15年4月3日(2003.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−105516(P2002−105516)
【出願日】平成14年4月8日(2002.4.8)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】