説明

光硬化性インクジェットインク

【課題】十分な光硬化性を有し、基板に対する密着性、光透過性に優れ、さらに耐熱性にも優れる硬化膜およびマイクロレンズを形成することが可能な光硬化性インクジェットインクを提供すること。
【解決手段】下記式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル(A)および光重合開始剤(B)を含有する光硬化性インクジェットインクであって、
前記光重合開始剤(B)が、光重合開始剤濃度0.001重量%のアセトニトリル溶液のUV吸収スペクトル測定による、300nm以上の波長領域における吸光度が0.1以下である光重合開始剤であり、
該インクより得られた硬化膜(膜厚2.0〜3.0μm)を70℃で100時間熱処理した後の膜の波長400nmにおける光透過率が98%以上である、光硬化性インクジェットインク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイなどの光学機器を製造するために好適に用いられる光硬化性インクジェットインクに関する。更に詳しくは、本発明は、バックライト装置に使用されるマイクロレンズアレイや、タッチパネル等に使用される透明絶縁膜などに適した光硬化性インクジェットインクに関する。
【背景技術】
【0002】
かねてより、液晶ディスプレイなどの液晶表示素子には、バックライトに使用されるマイクロレンズアレイを有する導光板などが用いられており、また、タッチパネルには透明絶縁膜などが用いられている。
【0003】
特に導光板やタッチパネル用透明絶縁膜は高い光透過性が求められ、また、これらを液晶表示素子に使用する場合、発生する熱によって色味が変化(黄色化)しないことが求められている。
【0004】
特開平2−6562号公報(特許文献1)、特開2003−192943号公報(特許文献2)、特開2007−321034号公報(特許文献3)、特開2010−2912号公報(特許文献4)、特開2010−248352号公報(特許文献5)では、光透過性に優れた組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−6562号公報
【特許文献2】特開2003−192943号公報
【特許文献3】特開2007−321034号公報
【特許文献4】特開2010−2912号公報
【特許文献5】特開2010−248352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの組成物から形成される硬化膜は、光透過率は高いものの、耐熱性が低く、例えば70℃で100時間熱処理した後の膜の波長400nmにおける光透過率は低くなるといった問題があったため、該硬化膜は、マイクロレンズアレイ形成用またはタッチパネル用透明絶縁膜などとして用いることができなかった。
【0007】
本発明は前記の問題点に鑑みてなされたもので、十分な光硬化性を有し、基板に対する密着性および光透過性に優れ、さらに耐熱性にも優れる硬化膜およびマイクロレンズを形成することが可能な光硬化性インクジェットインクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、特定の(メタ)アクリル酸エステルおよび光重合開始剤を含有する光硬化性インクジェットインクであって、該インクより得られた硬化膜(膜厚2.0〜3.0μm)を70℃で100時間熱処理した後の膜の波長400nmにおける光透過率が98%以上となる、光硬化性インクジェットインクが、光硬化性に優れること、光透過性に優れ、さらに耐熱性にも優れる硬化膜およびマイクロレンズを形成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、以下の項を含む。
【0009】
[1] 下記式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル(A)および光重合開始剤(B)を含有する光硬化性インクジェットインクであって、
前記光重合開始剤(B)が、光重合開始剤濃度0.001重量%のアセトニトリル溶液のUV吸収スペクトル測定による、300nm以上の波長領域における吸光度が0.1以下である光重合開始剤であり、
該インクより得られた硬化膜(膜厚2.0〜3.0μm)を70℃で100時間熱処理した後の膜の波長400nmにおける光透過率が98%以上である、光硬化性インクジェットインク。
【0010】
【化1】

(式(1)中、n個のR1はそれぞれ独立に水素または炭素数1〜6のアルキルであり、R2は脂環構造またはヘテロ環構造を有する(但し、下記式(2−1)または式(2−2)で表される構造を含まない)有機基であり、nは1〜10の整数である。)
【0011】
【化2】

【0012】
[2] 前記光重合開始剤(B)が、光硬化性インクジェットインクの総量(固形分換算)100重量%に対し、1〜20重量%の量で含まれる、[1]に記載の光硬化性インクジェットインク。
[3] 前記光重合開始剤(B)が、オキシフェニル酢酸エステル系開始剤、フェニルグリオキシレート系開始剤およびヒドロキシフェニルケトン系開始剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、[1]または[2]に記載の光硬化性インクジェットインク。
【0013】
[4]前記光重合開始剤(B)が、オキシフェニル酢酸エステル系開始剤およびフェニルグリオキシレート系開始剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、[1]〜[3]のいずれかに記載の光硬化性インクジェットインク。
[5] 前記光重合開始剤(B)が、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステル、およびフェニルグリオキシリックアシッドメチルエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、[1]〜[4]のいずれかに記載の光硬化性インクジェットインク。
【0014】
[6] 前記式(1)において、R2がシクロヘキサン、シクロペンタン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、トリシクロデカン、テトラヒドロフラン、5員以上のラクトン、ジシクロペンタン、ジシクロペンテン、アダマンタン、ピペリジン、イミド環、環状ホルマールおよび1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオンからなる群より選ばれる少なくとも1種を有する有機基である、[1]〜[5]のいずれかに記載の光硬化性インクジェットインク。
【0015】
[7] 前記(メタ)アクリル酸エステル(A)が、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキシルジメタノールジ(メタ)アクリレート、γ−ブチロラクトン(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、およびε-カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、[1]〜[6]のいずれかに記載の光硬化性インクジェットインク。
【0016】
[8] さらに、前記(メタ)アクリル酸エステル(A)以外のラジカル重合性二重結合を有する化合物(C)を含む、[1]〜[7]のいずれかに記載の光硬化性インクジェットインク。
[9] 前記化合物(C)が、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、およびカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、[8]に記載の光硬化性インクジェットインク。
【0017】
[10] さらに、界面活性剤(D)を含む、[1]〜[9]のいずれかに記載の光硬化性インクジェットインク。
[11] 前記界面活性剤(D)がシリコーン系界面活性剤、アクリル系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、[10]に記載の光硬化性インクジェットインク。
【0018】
[12] さらに、紫外線吸収剤(E)を含む、[1]〜[11]のいずれかに記載の光硬化性インクジェットインク。
[13] さらに、酸化防止剤(F)を含む、[1]〜[12]のいずれかに記載の光硬化性インクジェットインク。
【0019】
[14] [1]〜[13]のいずれかに記載の光硬化性インクジェットインクを硬化させて得られる硬化膜。
[15] [1]〜[13]のいずれかに記載の光硬化性インクジェットインクを硬化させて得られるマイクロレンズ。
【0020】
[16] [15]に記載のマイクロレンズを有する光学部品。
[17] [16]に記載の光学部品を有する液晶ディスプレイ。
【発明の効果】
【0021】
本発明の光硬化性インクジェットインクは光硬化性が良好であり、高い光透過性、高い耐熱性および高い強度を示し、基板に対する密着性に優れる硬化膜およびマイクロレンズを形成することができる。また、本発明の光硬化性インクジェットインクによれば、表面撥液性基板上に、密着性が良好なマイクロレンズを形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[1.光硬化性インクジェットインク]
本発明の光硬化性インクジェットインク(以下単に「本発明のインク」ともいう。)は、前記式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル(A)および光重合開始剤(B)を含んでなり、
前記光重合開始剤(B)が、光重合開始剤濃度0.001重量%のアセトニトリル溶液のUV吸収スペクトル測定による、300nm以上の波長領域における吸光度が0.1以下である光重合開始剤であり、
該インクより得られた硬化膜(膜厚2.0〜3.0μm)を70℃で100時間熱処理した後の膜の波長400nmにおける光透過率が98%以上を示す、光硬化性インクジェットインクである。
【0023】
本発明のインクは、前記特定の(メタ)アクリル酸エステル(A)および光重合開始剤(B)を含んでなるため、光硬化性が良好であり、光透過性、耐熱性、強度および基板に対する密着性に優れる硬化膜およびマイクロレンズ、特に高温下等の過酷な環境下におかれても光透過性の変化が少ない硬化膜およびマイクロレンズを形成することができる。
なお、以下本明細書では、「硬化膜およびマイクロレンズ」を「硬化膜等」ともいう。
【0024】
また、本発明のインクは、必要に応じて、前記(メタ)アクリル酸エステル(A)以外のラジカル重合性二重結合を有する化合物(C)、界面活性剤(D)、紫外線吸収剤(E)、酸化防止剤(F)、重合禁止剤、フェノール性水酸基を含有する樹脂、マレイミド化合物、メラミン樹脂、シランカップリング剤、エポキシ樹脂、エポキシ硬化剤および溶媒などを含んでもよい。
【0025】
本発明のインクは、光透過率の観点からは無色が好ましいが、発明の効果を妨げない範囲でさらに有色の化合物を含有してもよい。この場合、得られる硬化膜等の色が黄色味を帯びないことが好ましく、例えば、青色の化合物を用いることができる。また、例えば、硬化膜等の状態を検査する際に基板との識別を容易にするために、着色剤を含んでもよい。
【0026】
<1.1.式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル(A)>
本発明のインクが、前記式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル(A)(以下「化合物(A)」ともいう。)を含むと、光硬化性に優れるインクとなり、高い光透過性および高い耐熱性を示す硬化膜等を形成することができる。
【0027】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの両者または一方を示す。
【0028】
前記式(1)中、n個のR1はそれぞれ独立に水素または炭素数1〜6のアルキルであるが、この中でも特に、n個のR1がそれぞれ独立にHまたはCH3であると、光硬化性に優れるインクが得られ、また、高い光透過性を示す硬化膜等が得られることから好ましい。さらにR1が水素であると、光硬化性がより良好なインクが得られ、光透過率がより高い硬化膜等が得られるため好ましい。
【0029】
前記式(1)中、R2の脂環構造またはヘテロ環構造を有する有機基の具体例としては、シクロヘキサン、シクロペンタン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、トリシクロデカン、テトラヒドロフラン、5員以上のラクトン、ジシクロペンタン、ジシクロペンテン、アダマンタン、ピペリジン、イミド環、環状ホルマールおよび1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオンからなる群より選ばれる少なくとも1種を有する有機基が挙げられる。
【0030】
この中でも、式(1)中のR2が特に、シクロヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、トリシクロデカン、テトラヒドロフラン、ジシクロペンタンおよび1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオンからなる群より選ばれる少なくとも1種を有する有機基であると、光硬化性に優れるインクが得られ、基板に対する密着性および光透過性に優れるだけでなく、耐熱性の良好な硬化膜等が得られるため好ましい。
【0031】
なお、前記式(1)中のR2は前記式(2−1)または式(2−2)で表される構造を含まない。
本発明のインクから形成される硬化膜等は、脂環構造またはヘテロ環構造を有する樹脂を含むことが、高い耐熱性、高い強度および基板に対する高い密着性等の点から好ましい。これに対し、前記式(2−1)または式(2−2)で表される構造を含む(メタ)アクリル酸エステルは活性が高いため、前記式(2−1)または式(2−2)で表される環は水分や環境温度の影響を受けやすく、特に高温多湿条件下においては、開環し易い。このため、本発明の化合物(A)として、前記式(2−1)または式(2−2)で表される構造を有する(メタ)アクリル酸エステルのみを含むインクから形成される硬化膜等は、長期信頼性に劣る傾向がある。
【0032】
化合物(A)の具体例としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、3,5−ジメチル−7−ヒドロキシアダマンチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリレート、メタクリロイルオキシノルボルナン(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキシルジメタノールモノ(メタ)アクリレート、シクロヘキシルジメタノールジ(メタ)アクリレート、ペンタメチルピペリジニル(メタ)アクリレート、イミド環を有する(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、γ-ブチロラクトン(メタ)アクリレートおよびメバロノラクトン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0033】
この中でも特に、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキシルジメタノールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートまたはγ−ブチロラクトン(メタ)アクリレートを用いると、光硬化性に優れるインクが得られ、光透過性に優れるだけでなく、耐熱性の良好な硬化膜等が得られるため好ましい。
【0034】
さらに化合物(A)として、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートまたはε−カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートを用いると、より耐熱性の良好な硬化膜等が得られるため好ましい。
【0035】
前記化合物(A)は、上述した化合物等から選ばれる1種の化合物であってもよく、またこれらの2種以上の混合物であってもよい。
2種以上の化合物(A)を用いる場合には、単官能の化合物(A)と多官能の化合物(A)との混合物を用いることが、インクの光硬化性、ならびに得られる硬化膜等の光透過性、耐熱性および基板との密着性等の点から好ましい。
【0036】
なお、「単官能の化合物」とは、1分子中に1つの(メタ)アクリロイル基等の重合性基を有する化合物のことであり、「多官能の化合物」とは、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基等の重合性基を有する化合物のことである。
【0037】
前記化合物(A)としては、公知の方法で製造した化合物を用いてもよいし、また市販品を用いてもよい。
【0038】
市販品としては、例えば、シクロヘキシルメタクリレート(商品名:ライトエステルCH;共栄社化学(株)製)、シクロヘキシルアクリレート(商品名:V#155;大阪有機化学工業(株)製)、テトラヒドロフルフリルメタクリレート(商品名:ライトエステルTHF;共栄社化学(株)製)、テトラヒドロフルフリルアクリレート(商品名:ライトアクリレートTHF−A;共栄社化学(株)製)、イソボルニルメタクリレート(商品名:SR−423D;米国サートマー社製)、ジシクロペンテニルアクリレート(商品名:FA−511AS;日立化成工業(株)製)、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(商品名:FA−512AS;日立化成工業(株)製)、ジシクロペンタニルアクリレート(商品名:FA−513AS;日立化成工業(株)製)、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(商品名:IRR214−K;ダイセル・サイテック(株)製)、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート(商品名:M−315;東亞合成(株)製)、およびε−カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート(商品名:M−327;東亞合成(株)製)が挙げられる。
【0039】
本発明のインクにおいて、前記化合物(A)の含有量が、該インク総量(固形分換算)100重量%に対し、10〜80重量%であると、光硬化性に優れるインクが得られるだけでなく、光透過率、基板に対する密着性および強度にバランス良く優れる硬化膜等が得られるため好ましく、化合物(A)の含有量は、より好ましくは15〜70重量%であり、さらに好ましくは20〜65重量%であり、特に好ましくは25〜65重量%である。
【0040】
<1.2.光重合開始剤(B)>
本発明のインクは、光重合開始剤(B)を含む。前記光重合開始剤(B)は、光重合開始剤濃度0.001重量%のアセトニトリル溶液のUV吸収スペクトル測定((株)日立ハイテクノロジーズ製 U−3310(商品名))による、300nm以上の波長領域における吸光度が0.1以下、好ましくは0.05以下である光重合開始剤である。
【0041】
前記光重合開始剤(B)としては、特に制限されないが、紫外線または可視光線の照射によりラジカルを発生することのできる化合物であることが好ましく、オキシフェニル酢酸エステル系開始剤、フェニルグリオキシレート系開始剤またはヒドロキシフェニルケトン系開始剤が好ましく、この中でも特にオキシフェニル酢酸エステル系開始剤またはフェニルグリオキシレート系開始剤が、インクの光硬化性、該インクから得られる硬化膜等の光透過率などの観点からより好ましい。
【0042】
前記光重合開始剤(B)の具体例としては、2,2’−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステル、およびフェニルグリオキシリックアシッドメチルエステルが挙げられる。
【0043】
この中でも特に、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステル、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンを用いると、光硬化性に優れるインクが得られ、光透過性に優れる硬化膜等が得られるため好ましく、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステル、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステルを用いると、より光硬化性に優れるインクが得られるため好ましい。
【0044】
前記光重合開始剤(B)は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0045】
前記光重合開始剤(B)としては、公知の方法で製造した化合物を用いてもよいし、また、市販品を用いてもよい。
【0046】
市販品としては、例えば、2,2’−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名:IRGACURE651;BASF製)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名:IRGACURE184;BASF製)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:IRGACURE1173;BASF製)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンとベンゾフェノンとの混合物(商品名:IRGACURE500;BASF製)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(商品名:IRGACURE2959;BASF製)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン(商品名:IRGACURE127;BASF製)、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステルとオキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステルとの混合物(商品名:IRGACURE754;BASF製)、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル(商品名:DAROCUR MBF;BASF製)、および1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンとビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイドとの混合物(商品名:IRGACURE1800;BASF製)が挙げられる。
【0047】
本発明のインクにおいて、前記光重合開始剤(B)の含有量が、該インク総量(固形分換算)100重量%に対し、1〜20重量%であると、紫外線に対する光硬化性に特に優れるインクが得られ、光透過性に優れる硬化膜等が得られるため好ましく、より好ましくは2〜15重量%であり、さらに好ましくは3〜10重量%である。
【0048】
<1.3.化合物(A)以外のラジカル重合性二重結合を有する化合物(C)>
前記化合物(A)以外のラジカル重合性二重結合を有する化合物(C)は、本発明のインクのインクジェット装置による吐出性(ジェッティング性)および光硬化性、ならびに、該インクから得られる硬化膜等の光透過性および耐熱性に影響を与えない範囲で添加することができる。
【0049】
前記化合物(A)として、単官能の(メタ)アクリル酸エステルのみを用いる場合には、多官能の化合物(C)を用いることが、前記化合物(A)として、多官能の(メタ)アクリル酸エステルのみを用いる場合には、単官能の化合物(C)を用いることが、インクの光硬化性、ならびに、得られる硬化膜等の光透過性、耐熱性および基板との密着性等の点から好ましい。
【0050】
つまり、本発明のインクは、単官能の重合性化合物と多官能の重合性化合物の両方を含むことが、インクの光硬化性、ならびに、得られる硬化膜等の光透過性、耐熱性および基板との密着性等の点から好ましい。このようなインクとしては、単官能の化合物(A)および多官能の化合物(A)を含むインク、単官能の化合物(A)および多官能の化合物(C)を含むインク、単官能の化合物(C)および多官能の化合物(A)を含むインク等を挙げることができる。
【0051】
前記化合物(C)は特に限定されないが、前記化合物(C)として、特にn−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、および/またはジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートを用いた場合、ジェッティング性および光硬化性に優れるインクが得られ、光透過性および耐熱性にバランス良く優れる硬化膜等が得られるため好ましい。
【0052】
その他の化合物(C)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、へプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エチルジグリコール(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF エチレンオキサイド(EO)変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタン、p−ビニルフェニル−3−エチルオキセタン−3−イルメチルエーテル、2−フェニル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、2−トリフロロメチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、N−ビニルホルムアミド、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、ビニルピリジン、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ダイマー、クロトン酸、α−クロルアクリル酸、ケイ皮酸、マレイン酸、フマル酸、β−カルボキシルエチル(メタ)アクリレート、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、コハク酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、2−(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メチルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレートのエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイド付加モノマー、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、ビニルトルエン、スチレン、メチルスチレン、クロルメチルスチレンおよびポリスチレンマクロモノマー等が挙げられる。
【0053】
前記化合物(C)は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0054】
本発明のインクにおいて、前記化合物(C)の含有量が、該インク総量(固形分換算)100重量%に対し、1〜85重量%であると、インク粘度を調整しやすく、また、光硬化性に優れるインクが得られ、光透過性および基板との密着性に優れる硬化膜等が得られるため好ましい。
【0055】
<1.4.界面活性剤(D)>
本発明のインクは、例えば、基板への濡れ性や該インクから得られる硬化膜等の膜面均一性および基板との密着性を向上させるために界面活性剤を含んでもよい。
【0056】
界面活性剤(D)としては、シリコーン系界面活性剤、アクリル系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤などが好ましい。
【0057】
界面活性剤の具体例としては、BYK−300、同306、同335、同310、同341、同344および同370(商品名:ビックケミー・ジャパン(株)製)などのシリコーン系界面活性剤、BYK−354、同358および同361(商品名:ビックケミー・ジャパン(株)製)などのアクリル系界面活性剤、DFX−18、フタージェント250、同251(商品名:(株)ネオス製)、メガファックF−475、F−477、F−553、F−554(商品名:DIC(株)製)などのフッ素系界面活性剤を挙げることができる。
【0058】
また、界面活性剤(D)が反応性官能基を有する化合物であると、インクジェット法で形成された硬化膜等から界面活性剤がブリードアウトしにくく、直径、高さのばらつきが小さいマイクロレンズを形成することができるため、より好ましい。
【0059】
前記反応性官能基としてはヒドロキシ、カルボキシ、酸無水物、アミノ、エポキシ、オキセタン、オキサゾリン、オキサゾール、および(メタ)アクリロイル等が好ましく、エポキシ、オキセタン、および(メタ)アクリロイルがより好ましく、(メタ)アクリロイルが最も好ましい。
【0060】
(メタ)アクリロイル基を有する界面活性剤の具体例としては、RS−72K(商品名:DIC(株)製)、BYK UV 3500、BYK UV 3570(商品名:ビックケミー・ジャパン(株)製)、TEGO Rad 2220N、TEGO Rad 2250、TEGO Rad 2300、TEGO Rad 2500(商品名:エボニック・デグサ・ジャパン製)を挙げることができる。また、エポキシ基を有する界面活性剤としては、RS−211K(商品名:DIC(株)製)を挙げることができる。
【0061】
本発明のインクに用いられうる界面活性剤(D)は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0062】
本発明のインクにおいて、界面活性剤(D)の含有量が、該インク総量(固形分換算)100重量%に対し、0.01〜10重量%であると、インクジェット法で形成された硬化膜等から界面活性剤がブリードアウトしにくく、直径、高さのばらつきが小さいマイクロレンズを形成することができるため好ましい。
【0063】
<1.5.紫外線吸収剤(E)>
本発明のインクは、得られる硬化膜等がバックライトなどの光によって劣化することを防止するために、紫外線吸収剤(E)を含有してもよい。
【0064】
紫外線吸収剤(E)としては、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール化合物、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール等のトリアジン化合物、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物、および2−エトキシ−2’−エチルオキサリック酸ビスアニリド等のシュウ酸アニリド化合物などが挙げられる。
【0065】
本発明のインクに用いられうる紫外線吸収剤(E)は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0066】
本発明のインクにおいて、紫外線吸収剤(E)の含有量は、該インク総量(固形分換算)100重量%に対し、通常3重量%以下、添加効果および硬化性等の観点から好ましくは0.005〜2重量%である。
【0067】
<1.6.酸化防止剤(F)>
本発明のインクは、得られる硬化膜等の酸化を防止するために、酸化防止剤(F)を含有してもよい。
【0068】
酸化防止剤(F)としては、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル等のヒンダードフェノール化合物、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミノメチルメタクリレート等のアミン化合物などが挙げられる。
【0069】
本発明のインクに用いられうる酸化防止剤(F)は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0070】
本発明のインクにおいて、酸化防止剤(F)の含有量は、該インク総量(固形分換算)100重量%に対し、通常3重量%以下、添加効果および塗工安定性等の観点から好ましくは0.005〜2重量%である。
【0071】
<1.7.その他>
本発明のインクは、各種特性を向上させるために重合禁止剤、フェノール性水酸基を含有する樹脂、マレイミド化合物、メラミン樹脂、シランカップリング剤、エポキシ樹脂、エポキシ硬化剤および溶媒などのその他の成分を本発明の効果を損なわない範囲で含んでもよい。
【0072】
<1.7−1.重合禁止剤>
本発明のインクは、保存安定性を向上させるために重合禁止剤を含有してもよい。重合禁止剤の具体例としては、4−メトキシフェノール、ヒドロキノンおよびフェノチアジンを挙げることができる。これらの中でもフェノチアジンを用いることが長期の保存においても粘度の増加が小さいインクが得られるため好ましい。
本発明のインクに用いられうる重合禁止剤は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0073】
本発明のインクにおいて、重合禁止剤の含有量が、該インク総量(固形分換算)100重量%に対し、0.01〜1重量%であると、長期の保存においても粘度の増加が小さいインクが得られるために好ましく、他特性とのバランスを考慮すると、より好ましくは0.01〜0.5重量%であり、さらに好ましくは0.01〜0.1重量%である。
【0074】
<1.7−2.溶媒>
本発明のインクは、インクジェット法による塗布時の吐出性および光硬化性、ならびに、得られる硬化膜等の基板に対する密着性および光透過性を損なわない範囲で、溶媒を含有してもよい。
インクジェット法による塗布時にインクジェットヘッドを加熱する場合は、溶媒を含まないインクを用いることが好ましい。
【0075】
本発明に用いることができる溶媒としては、沸点が100〜300℃の溶媒が、インクジェット法による塗布時の吐出性が良好になるため好ましい。また、インクジェットヘッドを高温(例えば70〜120℃)に加熱する場合に溶媒を用いるとすれば、沸点が200〜300℃の溶媒が好ましい。
【0076】
沸点が100〜300℃である溶媒の具体例としては、酢酸ブチル、プロピオン酸ブチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トルエン、キシレン、アニソール、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンおよびジメチルイミダゾリジノンが挙げられる。
【0077】
本発明のインクに用いられうる溶媒は1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0078】
本発明のインクにおいて、溶媒の含有量が、該インク総量(固形分換算)100重量%に対し、1〜60重量%であると、インクジェット法によりインクを塗布する際に、インクジェットヘッドの吐出孔が閉塞しにくくなるため好ましい。他特性とのバランスを考慮すると、より好ましくは1〜50重量%であり、さらに好ましくは1〜40重量%である。
【0079】
<1.7−3.エポキシ樹脂>
本発明のインクは、得られる硬化膜等の強度を向上させるために、エポキシ樹脂を含有してもよい。
前記エポキシ樹脂は、1分子中に少なくとも1つの下記式(2−1)または式(2−2)で表される構造を有する樹脂であれば、特に限定されない。
【0080】
【化3】

【0081】
エポキシ樹脂の具体例としては、ノボラック型(フェノールノボラック型およびクレゾールノボラック型)、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、トリスフェノールメタン型、水添ビスフェノールA型、水添ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、テトラフェニロールエタン型、ビキシレノール型、ビフェノール型エポキシ樹脂、脂環式および複素環式エポキシ樹脂、ならびに、ジシクロペンタジエン骨格やナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂が挙げられ、好ましくはノボラック型、ビスフェノールA型またはビスフェノールF型またはトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂である。
【0082】
エポキシ樹脂としては公知の方法で製造した樹脂を用いてもよいし、また市販品を用いてもよい。
【0083】
市販品の例としては、jER828、同834、同1001、同1004(商品名:三菱化学(株)製)、エピクロン840、同850、同1050、同2055、(商品名:DIC(株)製)、エポトートYD−011、同YD−013、同YD−127、同YD−128(商品名:新日鐵化学(株)製)、D.E.R.317、同331、同661、同664(商品名:ダウ・ケミカル日本(株)製)、アラルダイト6071、同6084、同GY250、同GY260(商品名:ハンツマン・ジャパン(株)製)、スミ−エポキシESA−011、同ESA−014、同ELA−115、同ELA−128(商品名:住友化学工業(株)製)、A.E.R.330、同331、同661、同664(商品名:旭化成イーマテリアルズ(株)製)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;
jER152、154(商品名:三菱化学(株)製)、D.E.R.431、同438(商品名:ダウ・ケミカル日本(株)製)、エピクロンN−730、同N−770、同N−865(商品名:DIC(株)製)、エポトートYDCN−701、同YDCN−704(商品名:新日鐵化学(株)製)、アラルダイトECN1235、同ECN1273、同ECN1299(商品名:ハンツマン・ジャパン(株)製)、XPY307、EPPN−201、EOCN−1025、EOCN−1020、EOCN−104S、RE−306(商品名:日本化薬(株)製)、スミ−エポキシESCN−195X、同ESCN−220(商品名:住友化学工業(株)製)、A.E.R.ECN−235、同ECN−299(商品名:旭化成イーマテリアルズ(株)製)等のノボラック型エポキシ樹脂;
エピクロン830(商品名:DIC(株)製)、jER807(商品名:三菱化学(株)製)、エポトートYDF−170(商品名:新日鐵化学(株)製)、YDF−175、YDF−2001、YDF−2004、アラルダイトXPY306(商品名:ハンツマン・ジャパン(株)製)等のビスフェノールF型エポキシ樹脂;
エポトートST−2004、同ST−2007、同ST−3000(商品名:新日鐵化学(株)製)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;
セロキサイド2021P(商品名:ダイセル化学工業(株)製)、アラルダイトCY175、同CY179(商品名:ハンツマン・ジャパン(株)製)等の脂環式エポキシ樹脂;
YL−6056、YX−4000、YL−6121(商品名:三菱化学(株)製)等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂またはそれらの混合物;
EBPS−200(商品名:日本化薬(株)製)、EPX−30(商品名:(株)ADEKA製)、EXA−1514(商品名:DIC(株)製)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;
jER157S(商品名:三菱化学(株)製)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;
YL−931(商品名:三菱化学(株)製)、アラルダイト163(商品名:ハンツマン・ジャパン(株)製)等のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;
アラルダイトPT810(商品名:ハンツマン・ジャパン(株)製)、TEPIC(商品名:日産化学工業(株)製)等の複素環式エポキシ樹脂;
HP−4032、EXA−4750、EXA−4700(商品名:DIC(株)製)等のナフタレン基含有エポキシ樹脂;
HP−7200、HP−7200H、HP−7200HH(商品名:DIC(株)製)等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;
テクモアVG3101L(商品名:三井化学(株)製)、YL−933(商品名:三菱化学(株)製)、EPPN−501、EPPN−502(商品名:ダウ・ケミカル日本(株)製)等のトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0084】
これらの中でも、jER828、同834、同1001、同1004(商品名:三菱化学(株)製)、TECHMORE VG3101L(商品名:三井化学(株)製)、EPPN−501、EPPN−502(商品名:ダウ・ケミカル日本(株)製)を用いると、各種基板への密着性が高い硬化膜等が得られるため好ましい。
本発明のインクに用いられうるエポキシ樹脂は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0085】
エポキシ樹脂の含有量が、本発明のインク総量(固形分換算)100重量%に対し、0.5〜20重量%であると、得られる硬化膜等の各種基板に対する密着性が向上するため好ましく、より好ましくは0.5〜10重量%であり、さらに好ましくは0.5〜7重量%である。
【0086】
<1.7−4.マレイミド化合物>
マレイミド化合物としては、特に制限されないが、例えば、下記式(6)で表される化合物が好ましい。下記式(6)で表されるマレイミド化合物は、例えばジアミンと酸無水物とを反応させて得ることができる。
【0087】
【化4】

【0088】
式(6)中、R10およびR12はそれぞれ独立に水素またはメチルであり、R11は下記式(7)で表される二価の基である。
【0089】
【化5】

【0090】
式(7)中、R13およびR14はそれぞれ独立に、連続しない(隣り合わない)任意のメチレンが酸素で置き換えられてもよい炭素数1〜18のアルキレン、置換基を有してもよい芳香環を有する二価の基、または置換基を有してもよいシクロアルキレンである。前記置換基としては、例えば、カルボキシル、ヒドロキシ、炭素数1〜5のアルキル、および炭素数1〜5のアルコキシが挙げられる。耐熱性の高い硬化膜等が得られる点で、R13およびR14はそれぞれ独立に下記群(8)から選ばれる1種の二価の基であることが好ましい。
【0091】
【化6】

【0092】
式(7)中、Xは下記群(9)から選ばれる1種の二価の基である。
【0093】
【化7】

【0094】
本発明のインクに用いられうるマレイミド化合物は1種の化合物でも、2種以上の化合物の混合物でもよい。
【0095】
<1.7−5.フェノール性水酸基を含有する樹脂>
フェノール性水酸基を含有する樹脂としては、フェノール性水酸基を有する芳香族化合物とアルデヒド類との縮合反応により得られるノボラック樹脂、ビニルフェノールの単独重合体(水素添加物を含む)、ビニルフェノールとこれと共重合可能な化合物とのビニルフェノール系共重合体(水素添加物を含む)などが好ましく用いられる。
【0096】
フェノール性水酸基を有する芳香族化合物としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−ブチルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、p−フェニルフェノール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、テルペン骨格含有ジフェノール、没食子酸、没食子酸エステル、α−ナフトール、およびβ−ナフトールなどが挙げられる。
【0097】
アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、およびアセトアルデヒドなどが挙げられる。
【0098】
ビニルフェノールと共重合可能な化合物としては、(メタ)アクリル酸またはその誘導体、スチレンまたはその誘導体、無水マレイン酸、酢酸ビニル、およびアクリロニトリルなどが挙げられる。
【0099】
フェノール性水酸基を含有する樹脂の具体例としては、レヂトップPSM−6200(商品名:群栄化学工業(株)製)、ショウノールBRG−555(商品名:昭和電工(株)製)、マルカリンカーMS−2P、マルカリンカーCST70、マルカリンカーPHM−C(商品名:丸善石油化学(株)製)が挙げられる。
【0100】
本発明のインクに用いられうるフェノール性水酸基を含有する樹脂は1種の化合物でも、2種以上の化合物の混合物でもよい。
【0101】
<1.7−6.メラミン樹脂>
メラミン樹脂は、メラミンとホルムアルデヒドとの重縮合により製造される樹脂であれば特に限定されず、メチロールメラミン、エーテル化メチロールメラミン、ベンゾグアナミン、メチロールベンゾグアナミンおよびエーテル化メチロールベンゾグアナミン等の縮合物などが挙げられる。これらの中でも、得られる硬化膜等の耐薬品性が良好である点で、エーテル化メチロールメラミンの縮合物が好ましい。
【0102】
メラミン樹脂の具体例としては、ニカラックMW−30、MW−30HM、MW−390、MW−100LM、MX−750LM(商品名:三和ケミカル(株)製)が挙げられる。
本発明のインクに用いられうるメラミン樹脂は1種の化合物でも、2種以上の化合物の混合物でもよい。
【0103】
<1.7−7.エポキシ硬化剤>
本発明のインクは、得られる硬化膜等の耐薬品性をより向上させるためにエポキシ硬化剤を含有してもよい。エポキシ硬化剤としては、酸無水物系硬化剤またはポリアミン系硬化剤などが好ましい。
【0104】
酸無水物系硬化剤としては、マレイン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロトリメリット酸無水物、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、およびスチレン−無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。
【0105】
ポリアミン系硬化剤としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジシアンジアミド、ポリアミドアミン(ポリアミド樹脂)、ケチミン化合物、イソホロンジアミン、m−キシレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N−アミノエチルピペラジン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、およびジアミノジフェニルスルフォンなどが挙げられる。
本発明のインクに用いられうるエポキシ硬化剤は1種の化合物でも、2種以上の化合物の混合物でもよい。
【0106】
<1.7−8.シランカップリング剤>
本発明のインクは、得られる硬化膜等の基板への密着性を向上させるためにシランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤の具体例としては、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、および3−メルカプトプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。これらの中でも3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、および3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランは、反応基を有しており他成分と共重合することができるので好ましい。
本発明のインクに用いられうるシランカップリング剤は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0107】
<1.8.インクの粘度>
本発明のインクの、E型粘度計で測定した25℃における粘度は200mPa・s以下であることが好ましく、粘度が1〜200mPa・sであると、インクジェット装置によるジェッティング特性が良好なインクとなりより好ましい。インクの粘度は、さらに好ましくは2〜100mPa・sであり、特に好ましくは3〜50mPa・sである。
【0108】
25℃における粘度が30mPa・sを超えるインクを使用する場合には、インクジェットヘッドを加温して吐出時のインクの粘度を下げることで、より安定した吐出が可能となる。インクジェットヘッドを加温してジェッティングを行う場合は、加温温度(好ましくは25〜120℃)におけるインクジェットインクの粘度は1〜30mPa・sであることが好ましく、2〜25mPa・sであることがさらに好ましく、3〜20mPa・sであることが特に好ましい。
【0109】
<1.9.インクの調製方法>
本発明のインクは、原料となる各成分を公知の方法により混合することで調製することができる。
特に、本発明のインクは、前記(A)および(B)成分ならびに必要に応じて前記(C)〜(F)成分および/またはその他の成分を混合し、得られた溶液を、例えばフッ素樹脂製のメンブレンフィルターを用いてろ過して脱気することにより調製されることが好ましい。このようにして調製されたインクは、ジェッティング性に優れる。
【0110】
<1.10.インクの保存>
本発明のインクは、−20〜25℃で保存すると保存中の粘度変化(増加)が小さく、保存安定性が良好となる。
【0111】
[2.インクジェット法によるインクの塗布]
本発明のインクは、公知のインクジェット法を用いて塗布することができる。インクジェット法としては、例えば、インクに力学的エネルギーを作用させてインクをインクジェットヘッドから吐出(塗布)させる方法(いわゆるピエゾ方式)、およびインクに熱エネルギーを作用させてインクを塗布する塗布方法(いわゆるサーマル方式)が挙げられる。
【0112】
インクジェット法を用いることにより、本発明のインクを予め定められたパターン状に容易に塗布することができ、均一なパターンを大きな基板上に形成することができる。
【0113】
インクジェットヘッドとしては、例えば、金属および/または金属酸化物からなる発熱部を有するものが挙げられる。金属および/または金属酸化物の具体例としては、Ta、Zr、Ti、Ni、Al等の金属、およびこれらの金属の酸化物が挙げられる。
【0114】
本発明のインクを用いて塗布を行う際に用いる好ましい塗布装置としては、例えば、インクが収容されるインク収容部を有するインクジェットヘッド内のインクに、塗布信号に対応したエネルギーを与え、前記エネルギーによりインク液滴を発生させながら、前記塗布信号に対応した塗布(描画)を行う装置が挙げられる。
【0115】
前記インクジェット塗布装置は、インクジェットヘッドとインク収容部とが分離されているものに限らず、それらが分離不能に一体になったものを用いてもよい。また、インク収容部はインクジェットヘッドに対し分離可能または分離不能に一体化されて、キャリッジに搭載されるものでもよく、装置の固定部位に設けられてもよい。後者の場合、インク供給部材、例えばチューブを介してインクジェットヘッドにインクを供給する形態のものでもよい。
【0116】
また、塗布(ジェッティング)温度は10〜120℃が好ましく、このジェッティング温度における本発明のインクの粘度は、1〜30mPa・sであることが好ましい。
【0117】
[3.インクの用途]
本発明のインクは、光硬化性が良好であり、高い光透過性、高い耐熱性および高い強度を示し、基板に対する密着性に優れる硬化膜等を形成することができるので、バックライト装置等に使用されるマイクロレンズアレイや、タッチパネル等に使用される透明絶縁膜等の製造に好適に用いられる。
【0118】
[4.硬化膜等]
本発明の硬化膜およびマイクロレンズは、上述した本発明のインクを硬化させることで得られ、上述した本発明のインクをインクジェット法により基板表面に塗布した後に、該インクに紫外線や可視光線等の光を照射して塗膜やドットを硬化させることで得られる膜やレンズが好ましい。
本発明の硬化膜およびマイクロレンズは、本発明のインクを硬化させることで得られるため、高い光透過性であり、高温下等の過酷な環境下におかれても光透過性の変化が少ない高い信頼性の硬化膜およびマイクロレンズである。
【0119】
本発明の硬化膜(膜厚2.0〜3.0μm)は、70℃で100時間熱処理した後の波長400nmにおける光透過率が98%以上、好ましくは98.5%以上である。このような硬化膜は、前記化合物(A)および光重合開始剤(B)を含むインクをインクジェット法により基板表面に塗布し塗膜を形成した後に、該塗膜に紫外線や可視光線等の光を照射して塗膜を硬化させることで得ることができ、特に、前記化合物(A)およびインクの総量(固形分換算)100重量%に対し1〜20重量%の光重合開始剤(B)を含むインクをインクジェット法により基板表面に塗布し塗膜を形成した後に、該塗膜に紫外線や可視光線等の光を照射して塗膜を硬化させることで得ることができる。
【0120】
紫外線や可視光線等を照射する場合、照射する露光量は、本発明のインクの組成に応じて適宜調節すればよいが、積算光量計(CUSTOM UVメーター UVC−254)で測定した値で、100〜3,000mJ/cm2程度が好ましく、200〜2,000mJ/cm2程度がより好ましく、300〜1,000mJ/cm2程度がさらに好ましい。また、照射する紫外線や可視光線等の波長は、200〜500nmが好ましく、200〜400nmがより好ましく、200〜300nmがさらに好ましい。
なお、以下実施例に記載の紫外線(UV)露光量は積算光量計(CUSTOM UVメーター UVC−254)で測定した値である。
【0121】
光を照射するには露光機を用いればよく、露光機としては、高圧水銀灯ランプ、低圧水銀灯ランプ、無電極ランプ、メタルハライドランプまたはハロゲンランプ等を搭載し、200〜500nmの範囲で、紫外線や可視光線等を照射する装置であれば特に限定されないが、200〜300nmの範囲で、強い紫外線を照射することが可能な低圧水銀灯ランプ、無電極ランプまたはメタルハライドランプを搭載する露光機がより好ましい。
【0122】
また、必要に応じて、光の照射により硬化した本発明の硬化膜等をさらに加熱・焼成してもよく、例えば、80〜250℃で10〜60分間加熱・焼成することによって、より強固な硬化膜等を得ることができる。
【0123】
本発明のインクが塗布される「基板」は、本発明のインクが塗布される対象となり得るものであれば特に限定されず、その形状は平板状に限られず、曲面状等であってもよい。
【0124】
前記基板としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリブチレンテレフタレート(PBT)などからなるポリエステル系樹脂基板;ポリエチレンおよびポリプロピレンなどからなるポリオレフィン樹脂基板;ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリカーボネートおよびポリイミドなどからなる有機高分子フィルム;セロハンからなる基板;金属箔;ポリイミドと金属箔との積層フィルム;目止め効果があるグラシン紙、パーチメント紙、ポリエチレン、クレーバインダー、ポリビニルアルコール、でんぷんまたはカルボキシメチルセルロース(CMC)などで目止め処理した紙;およびガラス基板を挙げることができる。
これらの中でも、アクリル系樹脂基板を用いることが好ましい。
【0125】
前記基板としては、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲において、酸化防止剤、劣化防止剤、充填剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤および/または電磁波防止剤などの添加剤を含有した基板を用いてもよい。また、前記基板としては、基板の表面の少なくとも一部に、必要により撥液処理、コロナ処理、プラズマ処理またはブラスト処理など表面処理を施した基板であってもよく、表面に易接着層やカラーフィルター用保護膜、ハードコート膜を設けた基板であってもよい。
本発明のインクをマイクロレンズ形成用として用いる際には、撥液処理したアクリル系樹脂基板等の基板を用いることが好ましい。
【0126】
前記基板の厚さは特に限定されないが、通常、10μm〜4mm程度であり、使用する目的により適宜調整されるが、50μm〜2mmが好ましく、100μm〜1mmがさらに好ましい。
【0127】
本発明の硬化膜等の用途は特に限定されないが、本発明の硬化膜等は基板に対する密着性に優れ、高い光透過性を示すため、特に、バックライト装置等に使用されるマイクロレンズアレイやタッチパネル等に使用される透明絶縁膜等の製造に用いることが好ましい。
【0128】
なお、本発明のインクからマイクロレンズを形成する際には、該マイクロレンズのレンズ(ドット)径は特に限定されないが、通常10〜100μmが好ましく、20〜60μmがさらに好ましく、30〜50μmが特に好ましい。
レンズ(ドット)高さについても特に限定されないが、通常0.5〜20μmが好ましく、2〜15μmがさらに好ましく、4〜10μmが特に好ましい。
また、レンズ径に対するレンズ高さの比は特に限定されないが、光の取り出し効率に優れる光学部品等を製造できる点から、好ましくは0.18以上、より好ましくは0.2以上である。
【0129】
また、本発明のインクから絶縁膜を形成する際には、該絶縁膜の膜厚は特に限定されないが、好ましくは0.1〜30μmであり、より好ましくは0.2〜20μmであり、さらに好ましくは0.3〜10μmである。
【0130】
本発明の硬化膜は、膜厚(2.0〜3.0μm)における光透過率が好ましくは98%以上、より好ましくは98.5%以上である。また、70℃で100時間熱処理した後の光透過率は98%以上であり、好ましくは98.5%以上である。本発明の硬化膜等は、マイクロレンズアレイや透明絶縁膜に用いられる。このため、バックライト等からの光を有効に利用し、高い信頼性の光学部品を得るためには、本発明の硬化膜の膜厚(2.0〜3.0μm)における光透過率が98%以上であることが必要である。
【0131】
[5.光学部品]
本発明の光学部品は、前記マイクロレンズを有する。このため、高い光透過性であり、信頼性の高い光学部品である。
【0132】
[6.液晶ディスプレイ]
本発明の液晶ディスプレイは、前記光学部品を有する。このため、表示特性に優れ、信頼性の高い液晶ディスプレイである。
【実施例】
【0133】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0134】
<インクジェットインクの調製および硬化膜付基板の作製>
まず、インクジェットインクの調製および該インクを用いて形成した硬化膜付基板について説明する。
【0135】
[実施例1]
化合物(A)として、テトラヒドロフルフリルアクリレートであるライトアクリレートTHF−A(商品名:共栄社化学(株)製、以後「THF−A」と略す。)と、光重合開始剤(B)として、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンであるIRGACURE184(商品名:BASF製、以後「Ir184」と略す。光重合開始剤濃度0.001重量%のアセトニトリル溶液のUV吸収スペクトル測定による、300nm以上の波長領域における吸光度が0.1以下である。)と、化合物(C)として、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートであるアロニックスM−305(商品名:東亞合成(株)製、以後「M305」と略す。)とを下記組成割合にて混合し、溶液を得た後、孔径1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製のメンブレンフィルターでろ過し、ろ液(インクジェットインク1)を得た。
(A) THF−A:50.00g
(B) Ir184: 7.00g
(C) M305: 50.00g
【0136】
E型粘度計(東機産業(株)製 TV−22(商品名)、以下同じ)を用い、25℃におけるインクジェットインク1の粘度を測定した結果、18.2mPa・sであった。
【0137】
(硬化膜の形成)
UVオゾンクリーナー(セン特殊光源(株)製)によるUVアッシングを行って表面の親液性を高めた4cm角のガラス基板(厚さ:0.7mm)を用意した。インクジェットインク1をインクジェットカートリッジに注入し、これをインクジェット装置(FUJIFILM Dimatix Inc.製のDMP−2831(商品名))に装着し、10pl(ピコリットル)用のインクジェットヘッドを用いて、吐出電圧(ピエゾ電圧)20V、ヘッド温度34℃、駆動周波数5kHz、塗布回数1回の吐出条件で、印刷解像度を512dpiに設定して一片が3cmの正方形パターンを塗布した。このガラス基板に、波長254nmでの露光照度が15mW/cmである低圧水銀灯を用いて、波長254nmでのUV露光量が300mJ/cm2または500mJ/cm2になるように調整して光を照射することで、正方形パターンの硬化膜付基板1a(UV露光量;300mJ/cm2)および基板1b(UV露光量;500mJ/cm2)を得た。
【0138】
次に、得られた1b基板の硬化膜の一部をカッターで削り、段差部分の膜厚をKLA−Tencor Japan(株)製触針式膜厚計P−15(商品名)を使用して測定したところ、3箇所の測定の平均値は2.5μmであった。
【0139】
[実施例2]
光重合開始剤(B)として、Ir184の代わりに、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル(DAROCUR MBF(商品名;BASF製、以後「MBF」と略す。光重合開始剤濃度0.001重量%のアセトニトリル溶液のUV吸収スペクトル測定による、300nm以上の波長領域における吸光度が0.1以下である。)を用い、下記組成割合とした以外は、実施例1と同様にして、インクジェットインク2を調製した。
(A) THF−A:50.00g
(B) MBF: 7.00g
(C) M305: 50.00g
【0140】
E型粘度計を用い、25℃におけるインクジェットインク2の粘度を測定した結果、15.8mPa・sであった。
【0141】
インクジェットインク2を用い、ヘッド温度を32℃にした以外は実施例1と同様の方法で一片が3cmの正方形パターンの硬化膜付基板2aおよび2bを得た。
次に、基板2bを用い、実施例1と同様の方法で膜厚測定を行った結果、膜厚は2.3μmであった。
【0142】
[実施例3]
光重合開始剤(B)として、Ir184の代わりに、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステルとオキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステルとの混合物であるIRGACURE754(商品名:BASF製、以後「Ir754」と略す。光重合開始剤濃度0.001重量%のアセトニトリル溶液のUV吸収スペクトル測定による、300nm以上の波長領域における吸光度が0.1以下である。)を用い、下記組成割合とした以外は、実施例1と同様にして、インクジェットインク3を調製した。
(A) THF−A:50.00g
(B) Ir754: 7.00g
(C) M305: 50.00g
【0143】
E型粘度計を用い、25℃におけるインクジェットインク3の粘度を測定した結果、17.2mPa・sであった。
【0144】
インクジェットインク3を用い、ヘッド温度を33℃にした以外は実施例1と同様の方法で一片が3cmの正方形パターンの硬化膜付基板3aおよび3bを得た。
次に、基板3bを用い、実施例1と同様の方法で膜厚測定を行った結果、膜厚は2.4μmであった。
【0145】
[実施例4]
化合物(A)として、THF−Aの代わりに、シクロヘキシルアクリレートであるV#155(商品名:大阪有機化学工業(株)製)を用い、下記組成割合とした以外は、実施例3と同様にして、インクジェットインク4を調製した。
(A) V#155:50.00g
(B) Ir754: 7.00g
(C) M305: 50.00g
【0146】
E型粘度計を用い、25℃におけるインクジェットインク4の粘度を測定した結果、17.0mPa・sであった。
【0147】
インクジェットインク4を用い、ヘッド温度を33℃にした以外は実施例1と同様の方法で一片が3cmの正方形パターンの硬化膜付基板4aおよび4bを得た。
次に、基板4bを用い、実施例1と同様の方法で膜厚測定を行った結果、膜厚は2.4μmであった。
【0148】
[実施例5]
化合物(A)として、THF−Aの代わりに、ジシクロペンタニルアクリレートであるFA−513AS(商品名:日立化成工業(株)製)を用い、下記組成割合とした以外は、実施例3と同様にして、インクジェットインク5を調製した。
(A) FA−513AS:58.30g
(B) Ir754: 7.00g
(C) M305: 41.70g
【0149】
E型粘度計を用い、25℃におけるインクジェットインク5の粘度を測定した結果、18.5mPa・sであった。
【0150】
インクジェットインク5を用い、実施例1と同様の方法で一片が3cmの正方形パターンの硬化膜付基板5aおよび5bを得た。
次に、基板5bを用い、実施例1と同様の方法で膜厚測定を行った結果、膜厚は2.5μmであった。
【0151】
[実施例6]
化合物(A)として、THF−Aの代わりに、ε-カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートであるアロニックスM−327(商品名:東亞合成(株)製、以後「M−327」と略す。)を用い、化合物(C)として、M305の代わりに、4−ヒドロキシブチルアクリレートである4HBA(商品名:日本化成(株)製)を用い、下記組成割合とした以外は、実施例2と同様にして、インクジェットインク6を調製した。
(A) M−327:33.30g
(B) MBF: 7.00g
(C) 4HBA: 66.70g
【0152】
E型粘度計を用い、25℃におけるインクジェットインク6の粘度を測定した結果、32.0mPa・sであった。
【0153】
インクジェットインク6を用い、ヘッド温度を50℃にした以外は実施例1と同様の方法で一片が3cmの正方形パターンの硬化膜付基板6aおよび6bを得た。
次に、基板6bを用い、実施例1と同様の方法で膜厚測定を行った結果、膜厚は2.8μmであった。
【0154】
[実施例7]
化合物(A)としてM−327(33.30g)およびFA−513AS(33.30g)を用い、下記組成割合とした以外は、実施例6と同様にして、インクジェットインク7を調製した。
(A) M−327: 33.30g
(A) FA−513AS:33.30g
(B) MBF: 7.00g
(C) 4HBA: 33.40g
【0155】
E型粘度計を用い、25℃におけるインクジェットインク7の粘度を測定した結果、35.2mPa・sであった。
【0156】
インクジェットインク7を用い、ヘッド温度を52℃にした以外は実施例1と同様の方法で一片が3cmの正方形パターンの硬化膜付基板7aおよび7bを得た。
次に、基板7bを用い、実施例1と同様の方法で膜厚測定を行った結果、膜厚は2.8μmであった。
【0157】
[実施例8]
化合物(C)として、M305の代わりに、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートであるKAYARAD DPCA−20(商品名:日本化薬(株)製)を用い、下記組成割合とした以外は、実施例3と同様にして、インクジェットインク8を調製した。
(A) THF−A: 60.00g
(B) Ir754: 7.00g
(C) DPCA−20:40.00g
【0158】
E型粘度計を用い、25℃におけるインクジェットインク8の粘度を測定した結果、15.8mPa・sであった。
【0159】
インクジェットインク8を用い、ヘッド温度を32℃にした以外は実施例1と同様の方法で一片が3cmの正方形パターンの硬化膜付基板8aおよび8bを得た。
次に、基板8bを用い、実施例1と同様の方法で膜厚測定を行った結果、膜厚は2.4μmであった。
【0160】
[比較例1]
光重合開始剤(B)であるIr184の代わりに、光重合開始剤として、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンであるIRGACURE907(商品名:BASF製、以後「Ir907」と略す。光重合開始剤濃度0.001重量%のアセトニトリル溶液のUV吸収スペクトル測定による、300nm以上の波長領域における吸光度が0.1を超える。)を用い、下記組成割合とした以外は、実施例1と同様にして、インクジェットインク9を調製した。
(A) THF−A:50.00g
(B) Ir907: 7.00g
(C) M305: 50.00g
【0161】
E型粘度計を用い、25℃におけるインクジェットインク9の粘度を測定した結果、18.1mPa・sであった。
【0162】
インクジェットインク9を用い、ヘッド温度を34℃にした以外は実施例1と同様の方法で一片が3cmの正方形パターンの硬化膜付基板9aおよび9bを得た。
次に、基板9bを用い、実施例1と同様の方法で膜厚測定を行った結果、膜厚は2.5μmであった。
【0163】
[比較例2]
化合物(A)であるTHF−Aの代わりに、化合物(C)であるフェノキシアクリレート(V#192(商品名)、大阪有機化学工業(株)製、以後「V#192」と略す。)を用い、下記組成割合とした以外は、実施例3と同様にして、インクジェットインク10を調製した。
(B) Ir754: 7.00g
(C) M305: 50.00g
(C) V#192:50.00g
【0164】
E型粘度計を用い、25℃におけるインクジェットインク10の粘度を測定した結果、22.2mPa・sであった。
【0165】
インクジェットインク10を用い、ヘッド温度を40℃にした以外は実施例1と同様の方法で一片が3cmの正方形パターンの硬化膜付基板10aおよび10bを得た。
次に、基板10bを用い、実施例1と同様の方法で膜厚測定を行った結果、膜厚は2.6μmであった。
【0166】
[比較例3]
化合物(A)であるTHF−Aの代わりに、化合物(C)である4HBAを用い、下記組成割合とした以外は、実施例3と同様にして、インクジェットインク11を調製した。
(B) Ir754: 7.00g
(C) M305: 50.00g
(C) 4HBA: 50.00g
【0167】
E型粘度計を用い、25℃におけるインクジェットインク11の粘度を測定した結果、21.6mPa・sであった。
【0168】
インクジェットインク11を用い、ヘッド温度を39℃にした以外は実施例1と同様の方法で一片が3cmの正方形パターンの硬化膜付基板11aおよび11bを得た。
次に、基板11bを用い、実施例1と同様の方法で膜厚測定を行った結果、膜厚は2.2μmであった。
【0169】
[比較例4]
化合物(A)であるM−327の代わりに、化合物(C)であるビスフェノールF型EO変性ジアクリレート(M208(商品名)、東亞合成(株)製、以後「M−208」と略す。)を用い、下記組成割合とした以外は、実施例6と同様にして、インクジェットインク12を調製した。
(B) MBF: 7.00g
(C) M−208:50.00g
(C) 4HBA: 50.00g
【0170】
E型粘度計を用い、25℃におけるインクジェットインク12の粘度を測定した結果、25.4mPa・sであった。
【0171】
インクジェットインク12用い、ヘッド温度を45℃にした以外は実施例1と同様の方法で一片が3cmの正方形パターンの硬化膜付基板12aおよび12bを得た。
次に、基板11bを用い、実施例1と同様の方法で膜厚測定を行った結果、膜厚は2.6μmであった。
【0172】
<インクジェットインクおよび硬化膜の評価>
続いて、上記で得られたインクジェットインクの光硬化性、硬化膜の透過率、耐熱試験後の透過率および強度を評価した。
また、表面撥液性基板(基板13)上にインクジェットインク(1〜12)を150μm間隔に1滴ずつ吐出し、UV硬化することで形成されたマイクロレンズの形状、ドット径および基板との密着性を観察した。
なお、各試験方法は以下のとおりで、評価結果を表1〜4に示す。
【0173】
(光硬化性試験)
各実施例および比較例で得られた3cm角の正方形パターンの硬化膜付基板(1a〜12aおよび1b〜12b)の表面を指触し、硬化膜の表面状態を顕微鏡観察した。評価基準は以下のとおりである。
◎:基板aおよびbのどちらにおいても硬化膜表面に指触跡が全く残らない。
○:基板bにおいては硬化膜表面に指触跡が全く残らないが、基板aでは硬化膜表面に指触跡が僅かに残る。
△:基板aおよびbどちらにおいても硬化膜表面に指触跡が僅かに残る。
×:基板aおよびbどちらにおいても硬化膜表面に指触跡が完全に残る。
【0174】
(硬化膜の透過率測定)
透過率測定装置V−670(商品名:日本分光(株)製)を用いて各実施例および比較例で得られた3cm角の正方形パターンの硬化膜付基板(1b〜12b)を用い、波長400nmでの透過率を測定した。なお、リファレンスとして、硬化膜を形成していない4cm角のガラス基板(厚さ:0.7mm)を用いた。
【0175】
(耐熱試験後の透過率)
各実施例および比較例で得られた3cm角の正方形パターンの硬化膜付基板(1b〜12b)を用い、70℃で100時間静置させた後の波長400nmでの透過率を透過率測定装置V−670を用いて測定した。なお、リファレンスとして、70℃で100時間静置させた後の硬化膜を形成していない4cm角のガラス基板(厚さ:0.7mm)を用いた。
【0176】
(強度測定)
各実施例および比較例で得られた3cm角の正方形パターンの硬化膜付基板(1b〜12b)を用い、JIS K 5400に準じて、鉛筆硬度を測定することで、強度を調べた。
【0177】
(マイクロレンズ形状の観察)
インクジェットインク1をインクジェットカートリッジに注入し、これをインクジェット装置(FUJIFILM Dimatix Inc.製のDMP−2831(商品名))に装着し、10pl用のインクジェットヘッドを用いて、吐出電圧(ピエゾ電圧)20V、ヘッド温度34℃、駆動周波数5kHz、塗布回数1回の吐出条件で、印刷解像度を170dpiに設定して、150μm間隔に1滴ずつ表面撥液性基板(基板13)上に吐出し、この基板に波長254nmでの露光照度が15mW/cmである低圧水銀灯を用いて波長254nmでのUV露光量が500mJ/cm2になるように調整して光を照射することでドットパターン付基板1cを得た。同様に、インクジェットインク2〜12を用いて、それぞれドットパターン付基板2c〜12cを得た。その後、基板(1c〜12c)上に形成されたマイクロレンズの形状を光学顕微鏡で観察した結果、きれいな円形で大きさが揃っている場合を○、形がいびつになっていたり、大きさにばらつきがある場合を×とした。また、マイクロレンズのドット径(D)、高さ(H)、ドット形状(H/D)も測定した。なお、ドット径測定については、OLYMPUS(株)製光学式顕微鏡BX51(商品名)を用い、高さ測定については、KLA−Tencor Japan(株)製触針式膜厚計P−15(商品名)を使用して測定した。得られたドット高さをドット径で割った値をドット形状(H/D)とした。
【0178】
表面撥液性基板(基板13)の製造方法を以下に示す。
表面処理剤1をインクジェットカートリッジに注入し、これをインクジェット装置(FUJIFILM Dimatix Inc.製のDMP−2831(商品名))に装着し、10pl用のインクジェットヘッドを用いて、吐出電圧(ピエゾ電圧)16V、ヘッド温度30℃、駆動周波数5kHz、塗布回数1回の吐出条件で、アクリル基板(厚さ:2.0mm)上に、印刷解像度を512dpiに設定して一片が3cmの正方形パターンを塗布した。この塗布基板に、波長254nmでの露光照度が15mW/cmである低圧水銀灯を用いて波長254nmでのUV露光量が500mJ/cm2になるように調整して照射することで、表面撥液性基板(基板13、撥液性硬化膜付基板)を得た。
【0179】
なお、表面の撥液性硬化膜の一部をカッターで削り、段差部分の膜厚をKLA−Tencor Japan(株)製触針式膜厚計P−15(商品名)を使用して測定したところ、3箇所の測定の平均値は0.96μmであった。
【0180】
続いて、表面処理剤1の調製方法を以下に示す。
プロピレングリコールモノメチルエーテル(東京化成(株)製、以後「PGME」と略す。)、M402(商品名:東亞合成(株)製、以後「M402」と略す。)、下記式(10)で表されるウレタンアクリレートを含む成分であるU6LPA(商品名:新中村化学工業(株)製、以後「U6LPA」と略す。)、BYK UV 3500(商品名:ビックケミー・ジャパン(株)製、以後「BYK3500」と略す。)、およびIr754を下記組成にて混合した後、超高分子量ポリエチレン(UPE)製のメンブレンフィルター(孔径0.2μm)でろ過し、ろ液(表面処理剤1)を得た。
【0181】
【化8】

【0182】
PGME: 7.000g
M402: 2.560g
U6LPA: 2.560g
BYK3500:0.330g
Ir754: 0.770g
【0183】
E型粘度計(東機産業(株)製 TV−22(商品名)、以下同じ)を用い、25℃における表面処理剤1の粘度を測定した結果、5.1mPa・sであった。
【0184】
(表面処理基板に対するマイクロレンズの密着性試験)
得られたドットパターン付基板(1c〜12c)に粘着テープ(住友スリーエム(株)製「No.600」テープ(商品名))を貼り付け、その後、剥離した際に基板上に残ったドットパターンの状態を観察することで、マイクロレンズの表面撥液性基板への密着性を評価した。なお、評価基準は以下の通りである。
○:ドットパターンは全く変化なかった
×:一部もしくは、全てのドットが剥がれた
【0185】
【表1】

【0186】
【表2】

【0187】
【表3】

【0188】
【表4】

【0189】
表1に示す結果から明らかなように、実施例1の基板1aは硬化膜表面に指触跡が僅かに残るものの、実施例1の基板1bおよび実施例2〜8については全ての基板において、硬化膜表面に指触跡が全く残らず、本発明のインクの光硬化性は良好であった。
【0190】
波長400nmでの透過率を測定したところ、インクジェットインク1〜8から得られる硬化膜は98%以上と高い透過率を示し、光透過性は良好であったが、インクジェットインク9から得られる硬化膜の透過率は98%以下と低い値を示した。
さらに、70℃で100時間静置させた後の波長400nmでの透過率を測定したところ、インクジェットインク1〜8から得られる硬化膜は98%以上と高い透過率を示し、光透過性は良好であったが、インクジェットインク9〜12から得られる硬化膜の透過率は98%以下と低い値を示した。
【0191】
基板1c〜8c上のマイクロレンズ形状を確認したところ、どの基板もきれいな円形で大きさが揃っていた。また、ドット径を測定したところ、本発明のインクから得られる、マイクロレンズのドット径は32μm〜34μmと小さく、H/Dは、0.2以上であった。このため、本発明のインクは、光の取り出し効率に優れる導光板などの光学部品の製造に好適に用いられる。
【0192】
また、表面撥液性基板に対するマイクロレンズの密着性を確認したところ、本発明のインクから得られるマイクロレンズは該基板から剥離せず、良好な密着性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0193】
本発明のインクは、光硬化性が良好で、得られる硬化膜およびマイクロレンズは高い光透過性、高い耐熱性、高い強度を示す。このため、本発明のインクはバックライト装置等に使用されるマイクロレンズアレイやタッチパネル等に使用される透明絶縁膜等の製造に好適に用いられる。
また、表面撥液性基板上においては、密着性が良好なマイクロレンズを形成することができることから、特に液晶ディスプレイや表示パネルの導光板などを製造するために好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル(A)および光重合開始剤(B)を含有する光硬化性インクジェットインクであって、
前記光重合開始剤(B)が、光重合開始剤濃度0.001重量%のアセトニトリル溶液のUV吸収スペクトル測定による、300nm以上の波長領域における吸光度が0.1以下である光重合開始剤であり、
該インクより得られた硬化膜(膜厚2.0〜3.0μm)を70℃で100時間熱処理した後の膜の波長400nmにおける光透過率が98%以上である、光硬化性インクジェットインク。
【化1】

(式(1)中、n個のR1はそれぞれ独立に水素または炭素数1〜6のアルキルであり、R2は脂環構造またはヘテロ環構造を有する(但し、下記式(2−1)または式(2−2)で表される構造を含まない)有機基であり、nは1〜10の整数である。)
【化2】

【請求項2】
前記光重合開始剤(B)が、光硬化性インクジェットインクの総量(固形分換算)100重量%に対し、1〜20重量%の量で含まれる、請求項1に記載の光硬化性インクジェットインク。
【請求項3】
前記光重合開始剤(B)が、オキシフェニル酢酸エステル系開始剤、フェニルグリオキシレート系開始剤およびヒドロキシフェニルケトン系開始剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1または2に記載の光硬化性インクジェットインク。
【請求項4】
前記光重合開始剤(B)が、オキシフェニル酢酸エステル系開始剤およびフェニルグリオキシレート系開始剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光硬化性インクジェットインク。
【請求項5】
前記光重合開始剤(B)が、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステル、およびフェニルグリオキシリックアシッドメチルエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光硬化性インクジェットインク。
【請求項6】
前記式(1)において、R2がシクロヘキサン、シクロペンタン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、トリシクロデカン、テトラヒドロフラン、5員以上のラクトン、ジシクロペンタン、ジシクロペンテン、アダマンタン、ピペリジン、イミド環、環状ホルマールおよび1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオンからなる群より選ばれる少なくとも1種を有する有機基である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光硬化性インクジェットインク。
【請求項7】
前記(メタ)アクリル酸エステル(A)が、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキシルジメタノールジ(メタ)アクリレート、γ−ブチロラクトン(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、およびε−カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光硬化性インクジェットインク。
【請求項8】
さらに、前記(メタ)アクリル酸エステル(A)以外のラジカル重合性二重結合を有する化合物(C)を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の光硬化性インクジェットインク。
【請求項9】
前記化合物(C)が、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、およびカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項8に記載の光硬化性インクジェットインク。
【請求項10】
さらに、界面活性剤(D)を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の光硬化性インクジェットインク。
【請求項11】
前記界面活性剤(D)がシリコーン系界面活性剤、アクリル系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項10に記載の光硬化性インクジェットインク。
【請求項12】
さらに、紫外線吸収剤(E)を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の光硬化性インクジェットインク。
【請求項13】
さらに、酸化防止剤(F)を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の光硬化性インクジェットインク。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の光硬化性インクジェットインクを硬化させて得られる硬化膜。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の光硬化性インクジェットインクを硬化させて得られるマイクロレンズ。
【請求項16】
請求項15に記載のマイクロレンズを有する光学部品。
【請求項17】
請求項16に記載の光学部品を有する液晶ディスプレイ。

【公開番号】特開2013−14740(P2013−14740A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−279904(P2011−279904)
【出願日】平成23年12月21日(2011.12.21)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【Fターム(参考)】