説明

光硬化性フィルム及び太陽電池

【課題】優れた外観を有し、硬化後でも優れた柔軟性を有する光硬化性フィルム及び光硬化性フィルムを活性エネルギー線で硬化して得られる硬化物を封止材として使用した太陽電池を提供する。
【解決手段】側鎖に光重合性基を有するアクリル樹脂(A)及び光重合開始剤(B)を含有する光硬化性フィルムであって、光硬化性フィルムの光硬化後の30℃における貯蔵弾性率が1×10Pa以下となる光硬化性フィルム及び光硬化性フィルムを活性エネルギー線で硬化して得られる硬化物を封止材として使用した太陽電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光硬化性フィルム及び太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アクリル樹脂フィルムは透明性、耐候性等に優れていることから種々の用途に使用されている。このような状況において、フィルムの透明性を長期にわたって良好とするために耐磨耗性に優れたアクリル樹脂フィルムが種々開発されている。
【0003】
しかしながら、フィルムの耐磨耗性を向上させようとするとフィルムの加工性が低下するという問題があった。
【0004】
この問題を改善する方法として、例えば、特許文献1及び特許文献2には、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(a−1)及び光重合開始剤(a−2)を含み、(a−1)以外の架橋性化合物を実質的に含まない光硬化性樹脂組成物(A)の層と、基材シート(B)とを含む光硬化性シートが提案されている。
【0005】
一方、最近では、太陽電池の開発が推進されているが、太陽電池の一般的な封止材としては、熱で封止材を溶かして太陽電池セルの隙間を埋めた後に、更に熱架橋によって耐クリープ特性を持たせる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−79,621号公報
【特許文献2】特開2002−80,550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の封止材では、熱で封止材を溶かして太陽電池セルの隙間を埋めるという作業は封止材に熱処理を施すので封止材の物性低下の原因ともなり、また、手間もかかる。
【0008】
また、光照射の前に加工性が良好な特許文献1及び特許文献2に開示されたフィルムを上記の封止材に利用することが考えられるが、特許文献1及び特許文献2に開示されたフィルムでは、光硬化後の弾性率が高いことから、外部からの衝撃を吸収するクッションとしての機能が低く、太陽電池用封止材として使用した場合に太陽電池セルの破損を招いたり、封止材に割れが生じたりする恐れがある。
【0009】
本発明の目的は、優れた外観を有し、硬化後でも優れた柔軟性を有する光硬化性フィルム及び光硬化性フィルムを活性エネルギー線で硬化して得られる硬化物を封止材として使用した太陽電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の要旨とするところは、側鎖に光重合性基を有するアクリル樹脂(A)及び光重合開始剤(B)を含有する光硬化性フィルムであって、光硬化性フィルムの光硬化後の30℃における貯蔵弾性率が1×10Pa以下となる光硬化性フィルム(以下、「本フィルム」という)を第1の発明とする。
【0011】
また、本発明の要旨とするところは、光硬化性フィルムを活性エネルギー線で硬化して得られる硬化物(以下、「本硬化物」という)を封止材として使用した太陽電池を第2の発明とする。
【発明の効果】
【0012】
本フィルムは光硬化前及び光硬化後のいずれでも柔軟性に優れていることから、太陽電池の製造に際しての封止材の原料の装填操作性に優れ、太陽電池として使用したときの封止材の割れや太陽電池セルの破損も生じにくく、太陽電池の封止材として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0013】

アクリル樹脂(A)

本発明で使用されるアクリル樹脂(A)は側鎖に光重合性基を有する光硬化性の樹脂であり、光硬化後の30℃における貯蔵弾性率が1×10Pa以下となるものである。
【0014】
アクリル樹脂(A)としては、例えば、以下に示す単量体(a−1)〜(a−7)から選ばれる少なくとも1種のビニル単量体を重合させて得られるアクリル樹脂に、後述する方法(イ)〜(ニ)から選ばれる少なくとも1つの方法により光重合性基を導入したものが挙げられる。
【0015】
単量体(a−1)としては、N−メチロールアクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するビニル単量体が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0016】
単量体(a−2)としては、(メタ)アクリル酸、アクリロイルオキシエチルモノサクシネート等のカルボキシル基を有するビニル単量体が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0017】
単量体(a−3)としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有する単量体が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0018】
単量体(a−4)としては、2−アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、2−アジリジニルプロピオン酸アリル等のアジリジニル基を有するビニル単量体が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0019】
単量体(a−5)としては、(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基を有するビニル単量体が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0020】
単量体(a−6)としては、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン基を有するビニル単量体が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0021】
単量体(a−7)としては、2,4−トルエンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチルアクリレートとの等モル付加物で代表されるジイソシアネートと活性水素を有するビニル単量体との付加物、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基を有するビニル単量体が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0022】
また、本発明においては、アクリル樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)や本フィルムの物性を調整するために、上記の単量体(a−1)〜(a−7)から選ばれる少なくとも1種と他の共重合可能な単量体とを共重合させることができる。
【0023】
上記の他の共重合可能な単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート;N−フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、N−ブチルマレイミド等のイミド誘導体;ブタジエン等のオレフィン系ビニル単量体;及びスチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0024】
本発明においては、本フィルムの柔軟性の点で、アクリル樹脂(A)の原料となる単量体としては、ホモポリマーとしたときに−40℃以下のTgを与えるビニル単量体を30質量%以上含有するものを使用することが好ましく、30〜70質量%含有するものを使用することがより好ましく、50〜70質量%含有するものを使用することが更に好ましい。
【0025】
−40℃以下のTgを与えるビニル単量体としては、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート及び2−メトキシエチルアクリレートが挙げられる。
【0026】
本発明においては、前述の単量体(a−1)〜(a−7)から選ばれる少なくとも1種のビニル単量体を重合させて得られるアクリル樹脂の重合法としては、例えば、溶液重合法、乳化重合法及び懸濁重合法が挙げられる。
【0027】
単量体(a−1)〜(a−7)から選ばれる少なくとも1種のビニル単量体を重合させて得られるアクリル樹脂に光重合性基を導入する方法の具体例としては以下の方法が挙げられる。
方法(イ):単量体(a−1)を含有する単量体を重合して得られるアクリル樹脂に単量体(a−2)を縮合させる方法。
方法(ロ):単量体(a−2)及び単量体(a−6)から選ばれる少なくとも1種の単量体を含有する単量体を重合して得られるアクリル樹脂に単量体(a−1)を縮合させる方法。
方法(ハ):単量体(a−3)、単量体(a−4)及び単量体(a−7)から選ばれる少なくとも1種の単量体を含有する単量体を重合して得られるアクリル樹脂に単量体(a−1)及び単量体(a−2)から選ばれる少なくとも1種の単量体を付加させる方法。
方法(ニ):単量体(a−1)及び単量体(a−2)から選ばれる少なくとも1種の単量体を含有する単量体を重合して得られるアクリル樹脂に単量体(a−3)、単量体(a−4)、単量体(a−7)及びジイソシアネート化合物と水酸基含有アクリル酸エステル単量体との等モル付加物から選ばれる少なくとも1種の単量体を付加させる方法。
【0028】
上記の方法においては、微量のハイドロキノン等の重合禁止剤を加え、乾燥空気を送りながら行うことが好ましい。
【0029】
本発明においては、単量体(a−1)〜(a−7)から選ばれる少なくとも1種のビニル単量体を重合させて得られるアクリル樹脂に光重合性基を導入する際に、単量体(a−1)〜(a−7)から選ばれる少なくとも1種のビニル単量体を重合させて得られるアクリル樹脂を有機溶媒に溶解した溶液を用いてアクリル樹脂に光重合性基を導入してアクリル樹脂(A)の溶液を得ることができる。

光重合開始剤(B)

本発明で使用される光重合開始剤(B)としては、例えば、光照射によってラジカルを発生させる公知の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0030】
光重合開始剤(B)としては、アセトフェノン系開始剤、ベンゾフェノン系開始剤、アシルホスフィンオキサイド系開始剤等の分子内にアミノ基を含まないものが好ましい。
【0031】
光重合開始剤(B)の具体例としては、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイド及びビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイドが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。

本フィルム

本フィルムはアクリル樹脂(A)及び光重合開始剤(B)を含有するもので、且つ本フィルムの光硬化後の30℃における貯蔵弾性率が1×10Pa以下となるものである。
【0032】
本フィルムの光硬化後の30℃における貯蔵弾性率が1×10Pa以下となるものを使用することにより、後述する本硬化物を太陽電池の封止材として使用すると、太陽電池に強い衝撃がかかっても、太陽電池セルの破損や封止材の割れを抑制することができる。
【0033】
また、本フィルムとしては、太陽電池セルの位置ずれの防止の点で、本フィルムの光硬化後の30℃における貯蔵弾性率が1×10Pa以上となるものが好ましい。
【0034】
本発明においては、本フィルムの90℃における貯蔵弾性率としては1×10Pa以下が好ましい。本フィルムの90℃における貯蔵弾性率を1×10Pa以下とすることにより、本フィルムを太陽電池の封止材として使用した場合に低エネルギーで太陽電池セルの隙間を十分に埋められる傾向にある。また、太陽電池の封止工程における加熱、加圧の際に、本フィルムが流動して太陽電池の端面に本フィルム成分のはみ出しによる製品の歩留まり低下を防ぐ点で、本フィルムの90℃における貯蔵弾性率は1×10Pa以上が好ましい。
【0035】
本フィルム中のアクリル樹脂(A)及び光重合開始剤(B)の含有量としては、アクリル樹脂(A)100質量部に対して光重合開始剤(B)0.1〜5質量部が好ましい。光重合開始剤(B)の含有量が0.1質量部以上でアクリル樹脂(A)の硬化性が良好となる傾向にある。また、光重合開始剤(B)の含有量が5質量部以下で本硬化部物中の光重合開始剤(B)の残存による耐候性への影響を抑制することができる傾向にある。尚、光重合開始剤(B)としてアミノ系開始剤を使用する場合は、本硬化物の黄変の点で、光重合開始剤(B)の添加量としては、アクリル樹脂(A)100質量部に対して1質量部以下が好ましい。
【0036】
本発明においては、本フィルム中に必要に応じて増感剤、紫外線吸収剤、光安定剤、変性用樹脂、酸化安定剤等の各種添加剤を配合することができる。
【0037】
増感剤としては本フィルムの硬化反応を促進するものが挙げられる。増感剤の具体例としては、ベンゾフェノン、ベンゾインイソプロピルエーテル及びチオキサントンが挙げられる。増感剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0038】
紫外線吸収剤は、有害な紫外線を吸収して熱エネルギーに変換することにより本硬化物の光励起や光化学反応を抑制し、光硬化物の変色、物性低下等の光劣化を抑制できる傾向にある。
【0039】
紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤や無機系紫外線吸収剤のいずれも使用することができる。紫外線吸収剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0040】
有機系紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤及びトリアジン系紫外線吸収剤が挙げられる。
【0041】
無機系紫外線吸収剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化チタン等の粒子径0.2μm以下の微粒子状の無機化合物が挙げられる。
【0042】
尚、紫外線吸収剤を使用するに際しては、本フィルムの硬化性、本硬化物の耐候性や機械物性の低下を抑制するために、紫外線吸収剤の吸収波長領域と光重合開始剤(B)の吸収波長領域が重ならないようにすることが好ましい。
【0043】
上記の紫外線吸収剤の中で、有機系紫外線吸収剤が本硬化物の透明性の点で好ましい。
【0044】
光安定剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート等のヒンダードアミン系ラジカル補足剤、ピペリジン系ラジカル補足剤等のラジカル補足剤が挙げられる。光安定剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0045】
本フィルム中への前記の各種添加剤の配合時期はアクリル樹脂(A)を得る前又は得た後のいずれの時期でもよいが、アクリル樹脂(A)の製造の際の重合を阻害することがない点でアクリル樹脂(A)を得た後が好ましい。
【0046】
本発明においては、本フィルム中に本発明の目的を逸脱しない範囲で架橋性ビニル単量体を含有することができる。
【0047】
本フィルムの製造方法としては、例えば、アクリル樹脂(A)に光重合開始剤(B)を添加して得られる光硬化性樹脂組成物の溶融物を使用してフィルム状塗膜を形成させた後に冷却してフィルム状物とする方法又はアクリル樹脂(A)の有機溶媒溶液に光重合開始剤(B)を添加して得られる光硬化性樹脂組成物の溶液を使用してフィルム状塗膜を形成させた後に、熱風乾燥機を用いて有機溶媒を揮発させてフィルム状物とする方法が挙げられる。
【0048】
フィルム状塗膜を形成させる方法としては、例えば、カレンダー法、ロール法、Tダイ押出法、インフレーション法及び流延法が挙げられる。
【0049】
本フィルムの製膜に際しては、ブロッキングを防止するため又はガラス若しくは太陽電池セルとの圧着時の脱気を容易にするために本フィルムの表面にエンボスを付与することができる。

本硬化物

本発明において、本硬化物は本フィルムを活性エネルギー線で硬化させたものである。
【0050】
活性エネルギー線としては、例えば、電子線、紫外線及びγ線が挙げられる。
【0051】
活性エネルギー線の照射条件は任意に設定できるが、通常、照射エネルギーで100〜10,000mJ/cm程度である。
【0052】
本フィルムに活性エネルギー線を照射する時期としては、本フィルムとガラス、フロントフィルム、太陽電池セル、バックシート等を積層した後に光照射するのがよい。
【0053】
本発明においては、本フィルムの硬化に際して、必要に応じて熱重合開始剤による熱硬化を併用することができる。
【0054】
熱重合開始剤としては各種過酸化物が挙げられるが、十時間半減期温度が60〜100℃の過酸化物が好ましい。
【0055】
そのような過酸化物としては、例えば、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート及び1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンが挙げられる。
【0056】
本硬化物の用途としては、例えば、太陽電池用封止材、LED用封止材、有機EL用封止材、無機EL用封止材及びガラス中間膜が挙げられる。

太陽電池

本発明の太陽電池は本硬化物を封止材として使用したものである。
【実施例】
【0057】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明する。尚、以下において、「部」は「質量部」を示す。また、光硬化性フィルムの光硬化前及び光硬化後の貯蔵弾性率について以下の方法により評価した。
(1)貯蔵弾性率
光硬化性フィルムの光硬化前の90℃における貯蔵弾性率及び光硬化後の30℃における貯蔵弾性率を動的粘弾性測定装置((株)ユービーエム製、Rheosol−G3000)を用いて測定した。
[実施例1]
窒素導入口、攪拌機、コンデンサー及び温度計を備えた1Lの4つ口フラスコに、溶媒としてメチルエチルケトン50部を入れ、80℃に昇温した。
【0058】
次いで、フラスコ内を窒素雰囲気下とし、メチルメタクリレート20部、n−ブチルアクリレート60部、グリシジルメタクリレート20部及びアゾビスイソブチロニトリル0.5部の単量体混合物を3時間かけて滴下した。
【0059】
この後、フラスコ内にメチルエチルケトン80部及びアゾビスイソブチロニトリル0.2部の混合物を加え、重合を開始した。
【0060】
重合開始から4時間経過した後にメチルエチルケトン50部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.5部、トリフェニルホスフィン2.5部及びアクリル酸10部の単量体混合物を加え、空気を吹き込みながら80℃で30時間攪拌した。
【0061】
次いで、フラスコ内を冷却した後、反応物をフラスコより取り出し、側鎖に光重合性基を有するアクリル樹脂(A−1)の溶液を得た。
【0062】
得られたアクリル樹脂(A)の溶液に光重合開始剤(B)として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン3部を添加して得られた光硬化性樹脂組成物をプロペラ型ミキサーで攪拌して得られた溶液を、平滑なガラス板上に塗布した後に熱風乾燥機を用いて乾燥する操作を数回繰り返し、厚さ0.5mmの光硬化性フィルムを得た。得られた光硬化性フィルムの90℃における貯蔵弾性率は2×10Paであった。
【0063】
次いで、紫外線照射装置を用いて、光硬化性フィルムに約700mJ/cmの紫外線を照射して光硬化性フィルムの硬化物を得た。光硬化性フィルムの硬化物の30℃における貯蔵弾性率は9×10Paであった。
【0064】
【表1】

表中の略号は以下の化合物を示す。
MMA:メチルメタクリレート
BA:n−ブチルアクリレート
GMA:グリシジルメタクリレート
AA:アクリル酸
[比較例1]
アクリル樹脂の組成を表1のように変更する以外は実施例1と同様にして光硬化性フィルム及び光硬化性フィルムの硬化物を得た。評価結果を表1に示す。
【0065】
実施例1で得られた光硬化性フィルムの硬化物では衝撃を加えても割れは生じなかった。しかしながら、比較例1で得られた光硬化性フィルムの硬化物では衝撃を加えると割れが生じてしまった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側鎖に光重合性基を有するアクリル樹脂(A)及び光重合開始剤(B)を含有する光硬化性フィルムであって、光硬化性フィルムの光硬化後の30℃における貯蔵弾性率が1×10Pa以下となる光硬化性フィルム。
【請求項2】
光硬化性フィルムの光硬化前の90℃における貯蔵弾性率が1×10Pa以下である請求項1に記載の光硬化性フィルム。
【請求項3】
側鎖に光重合性基を有するアクリル樹脂(A)が、ホモポリマーのガラス転移温度が−40℃以下であるビニル単量体を少なくとも30質量%含む単量体を重合させて得られる重合体である請求項1又は2に記載の光硬化性フィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の光硬化性フィルムを活性エネルギー線で硬化して得られる硬化物を封止材として使用した太陽電池。

【公開番号】特開2012−251008(P2012−251008A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122101(P2011−122101)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】