説明

光硬化性導電ペースト組成物とその応用

【課題】印刷法での高精細化の限界、フォトリソ法での高コストおよびリードタイムの長さ、さらに高温焼成タイプの感光性導電ペーストでの基板の制約を解決する材料およびプロセスを提供し、それらを用いてタッチパネル用基板、表示装置用基板、情報処理端末装置用基板および電気配線回路基板の製造を容易化する。
【解決手段】光の照射により硬化して現像液に対して不溶化するバインダーと、平均粒径が0.1〜10μmの導電性粒子を含む組成物であって、該組成物に該光を照射した場合に得られる硬化物が150℃以上の熱処理を行うことなく導電性を示すことを特徴とする、現像液に可溶な光硬化性導電ペースト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の基材上に所望の導電性パターンを形成するのに有用な現像液に可溶な光硬化性導電ペースト組成物、それを用いた電気配線回路パターン形成法、およびそれにより製造されるタッチパネル用基板、表示装置用基板、情報処理端末装置用基板等の電気配線回路基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板上に所望の電気配線回路パターンを形成する方法としては、その精度、特性に応じて従来より印刷法あるいはフォトリソ法が用いられてきた。しかしながら、印刷法では高精細パターンへの対応が困難で、一般的には0.2mmのラインアンドスペースが限界と考えられている。また、フォトリソ法においては数μm単位の高精細パターンまで対応が可能であるが、工程が長いために高コストとなるといった問題があった。
【0003】
一方、これらの欠点を補う手法としていくつかの感光性導電性ペーストが上市されているが、いずれも200℃以上の高温処理工程を必要とするもので、回路パターン形成に用いる基板は、ガラス、セラミック等の耐熱性基板に制限される(特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−140330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
印刷法での高精細化の限界、フォトリソ法での高コストおよびリードタイムの長さ、さらに高温焼成タイプの感光性導電ペーストでの基板の制約を解決する材料およびプロセスを提供し、それらを用いてタッチパネル用基板、表示装置用基板、情報処理端末装置用基板および電気配線回路基板の製造を容易化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、光の照射により硬化して現像液に対して不溶化するバインダーと、平均粒径が0.1〜10μmの導電性粒子を含む組成物であって、該組成物に該光を照射した場合に得られる硬化物が150℃以上の熱処理を行うことなく導電性を示すことを特徴とする、現像液に可溶な光硬化性導電ペースト組成物が提供される。
また、本発明によれば、(1):上記光硬化性導電ペースト組成物を基材上に塗布し塗膜を形成する工程、
(2):上記(1)の工程で塗布形成された塗膜に対し、マスクを介してパターン露光を行う工程、
(3):上記(2)の工程で非露光となった未硬化部分を現像液で除去し、パターンを形成する工程、
をこの順で含む、導電性パターンの形成方法が提供される。
更に、本発明によれば、上記導電性パターン形成法を用いて製造した電気配線回路基板が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の現像液に可溶な光硬化性導電ペースト組成物は(1)塗布、(2)露光、および(3)現像、の各工程を経ることで、印刷法に比べ高繊細な導電性パターンを形成でき、また、フォトリソ法に比べ製造工程が短くかつエッチング工程がないため低コストで導電性パターンを形成可能であるので、その利点を生かした高繊細な電気配線回路を安価に製造することができる。
また、導電性パターンを形成するこれら各工程においては150℃以上の温度を必要としないので、耐熱性がさほど高くない基板材料にも応用可能であり、目的に応じた基板材料の選択枝を広げることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明で使用するバインダーは、基板上に塗膜を形成することができ、かつ光が照射された部分が光重合して現像液に不溶化し、光が照射されなかった部分は、現像液に溶解するものであれば広範囲に使用することができる。アルカリ可溶型のバインダーが好ましい。例えば、代表的なものとしては光反応性基を有するポリマーやオリゴマーであり、それらと光反応性モノマーとの混合物であってもよい。また、光反応性基を有さないポリマーやオリゴマーであっても、光反応性モノマーと混合することで上記バインダーとしての要求特性を充足すれば当該混合物も使用可能である。また、光反応性モノマー、オリゴマー、及びポリマーは2種類以上混合して使用することもでき、又は単独で使用することができる。)
【0008】
通常、汎用的に用いられるバインダーとしては、紫外線硬化タイプであれば、ポリマー、光重合性モノマー、光重合開始剤、および必要であれば溶媒を配合して得ることができる。これらポリマー、光重合性モノマー、光重合開始剤および必要な有機溶媒は通常のネガタイプのフォトリソグラフィーに使用することができるものであってよい。
好ましい組成比としては、ポリマー:光重合性モノマー:光重合開始剤:必要な溶媒=8〜95:1〜50:0.01〜20:0〜90重量%であり、更に好ましくはポリマー:光重合性モノマー:光重合開始剤:必要な溶媒=20〜90:5〜40:1〜30:0〜75重量wt%である。
【0009】
本発明に使用するバインダーには、必要に応じて、本発明の目的を妨げない範囲において、密着助剤、消泡剤、ハジキ防止剤、酸化防止剤等の添加剤を配合することができる。
【0010】
使用するポリマーとしては、現像処理工程において現像液に可溶な高分子化合物であればよく、特に限定されないが、分子中にカルボキシル基やスルホン基等を有する高分子化合物を好ましく挙げることができ、これらの基を有する高分子化合物は、現像液がアルカリ水溶液である場合に特に好ましい。
【0011】
ポリマーの具体例1としては、1個以上のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体成分(A)と、これと共重合可能なエチレン性不飽和単量体成分(B)との共重合体(A+B)が例示される。
単量体成分(A)としては、(メタ)アクリル酸、ケイ皮酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸およびマレイン酸から選択される少なくとも一種類が挙げられる。
単量体成分(B)の一つ目としては、(メタ)アクリル酸エステル系不飽和単量体が挙げられる。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が例示される。
単量体成分(B)の二つ目としては、エチレングリコールエステル系(メタ)アクリレート、プロピレングリコール系(メタ)アクリレート、ブチレングリコール系モノ(メタ)アクリレートおよびグリセロールモノ(メタ)アクリレート類の群から選択される少なくとも一種類が挙げられる。具体的には、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等が例示される。
単量体成分(B)の三つ目としては、(メタ)アクリルアミド系不飽和単量体が挙げられる。具体的には、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド等が例示される。
単量体成分(B)の四つ目としては、N−置換マレイミド類が挙げられる。具体的にはフェニルマレレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が例示される。
単量体成分(B)は、上記以外にも例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルエーテル、ビニルピロリドン、(メタ)アクリロニトリル等でもよい。
【0012】
ポリマーの具体例2としては、光重合性不飽和基を持つポリマーも使用可能である。例えば、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、カルボキシル変性セルロース及びウレタン系樹脂等に光重合性不飽和基として(メタ)クリロイル基等導入されたポリマーが例示される。
【0013】
ポリマーの具体例2は、不飽和多塩基酸無水物(例えば無水マレイン酸等)と、ビニル基を有する芳香族炭化水素(例えばスチレン等)又はビニルアルキルエーテル等との共重合体に、分子中に光反応性のエチレン性不飽和基と1個のヒドロキシル基とを有する化合物とを反応させて得られるカルボキシル基を有するポリマー等が1つ目として例示される。
【0014】
また、ポリマーの具体例2は、カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和単量体とカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体とからなる共重合体中のカルボキシル基の一部を、エポキシ基を1個のみ有するエチレン性不飽和化合物と反応して得られるカルボキシル基を有するポリマー等が2つ目として例示される。
【0015】
更に、ポリマーの具体例2は、エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体を重合単位として含む重合体又は共重合体にエチレン性不飽和モノカルボン酸、及び飽和又は不飽和の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基を有するポリマー等も3つ目として例示される。
【0016】
使用するポリマーは、現像性、形成されるレジストの密着性等性能のバランスから重量平均分子量が4000〜250000であることが好ましく、特に10000〜100000の範囲のものがより好ましい。酸価は好ましくは、50〜300mgKOH/g、更に好ましくは、80〜240mgKOH/gである。
【0017】
光重合性モノマーとしては、光重合可能なものであれば特に限定されることはない。
例えば、エチレン性不飽和基が1個含むものとして、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロ〔5.2.1.0〕デカニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0018】
また、エチレン性不飽和基が2個以上含むものとして、多価アルコールとα、β―不飽和カルボン酸との反応生成物が挙げられ、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(エチレン基の数が2〜14のもの)、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレングリコール付加物トリアクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(プロピレン基の数が2〜14のもの)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
光重合性モノマーとしては上記以外に(メタ)アクリル酸のアルキルエステル((メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル等のアクリル酸エステルや、ウレタンアクリレート等のその他のアクリレートが挙げられる。
【0020】
また、使用することができる光重合開始剤としては、ベンゾインとそのアルキルエーテ類、アセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等のアセトフェノン類、2−メチルアントラキノン等のアントラキノン類、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド等のベンゾフェノン類、2,4−ジイソプロピルキサントン等のキサントン類、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等のα−ヒドロキシケトン類、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン等の窒素原子を含むもの、及び(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド等が挙げられる。
これらはp−ジメチル安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート等の第三級アミン系等の公知の光重合促進剤及び増感剤等と併用しても良い。
また、上記以外では可視光、近赤外線露光用として一般的に使用される光重合開始剤も使用可能である。
これらの光重合開始剤は、各々単独で、又は複数種を適宜互いに組み合わせて配合してよい。
【0021】
使用することができる溶媒としては、上記バインダーを溶解させる液媒体であれば広範囲に使用可能であるが、完全溶解は必須ではなく本願の発明である光硬化性導電ペースト組成物が全体としてペースト状を維持し得るものであれば該組成物の全成分を溶解させる能力は必ずしも要求されない。例えばエタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2−ブチルアルコール、ヘキサノール、エチレングリコール等の直鎖、分岐、2級あるいは多価のアルコール類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、スワゾールシリーズ(丸善石油化学社製)、ソルベッソシリーズ(エクソン・ケミカル社製)等の石油系芳香族系混合溶剤、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、プロピレングリコールメチルエーテル等のプロピレングリコールアルキルエーテル類、ジプロピレングリコールメチルエーテル等のポリプロピレングリコールアルキルエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類、N−メチルピロリドン、及びジアルキルグリコールエーテル類等が挙げられ、これらは各々単独であるいは適宜互いに組み合わせて使用することができる。
【0022】
本発明の光硬化性導電ペーストには、重合禁止剤を含有させることができる。具体的には、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ナフチルアミン、フェノチアジン、ピリジン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p−トルキノン、クロラニル、アリールフォスファイト、t−ブチルカテコール、塩化第1銅、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,2′−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、モノ第三ブチルハイドロキノン、ベンゾキノン、2,5−ジフエニル−p−ベンゾキノン、ピクリン酸、ジ−p−フルオロフエニルアミン、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が例示されるが、これらの中でもフェノール類、ヒドロキノン類、カテコール類、レゾルシン類などのフェノール類が好ましい。これらは各々単独であるいは適宜互いに組み合わせて使用することができる。
【0023】
本発明で使用する導電性粒子は比抵抗値が1×10^3Ω・cm以下の導電性材料の粉末であれば幅広く用いることができ、銀、金、ニッケル、銅、アルミニウム、錫、鉛、亜鉛、鉄、白金、パラジウム、タングステン、モリブデンなどの単体とその合金のほか、酸化錫、酸化インジウムなどを用いることができる。金属以外ではグラファイトやカーボン粒子でもよい。これらは単独でまたは2種類以上の混合粉として用いることができる。前記の導電性の粉末の形状は球状、フレーク状、デンドライト状など種々のものを用いることができる。また、平均粒径としては0.01〜10μmであってよいが、好ましくは0.1〜5μmのものを用いることが解像度の点で有利である。
【0024】
上記のバインダーと導電性粒子は、三本ロールミル、二本ロールミル、サンドミル、ボールミル等の各種分散手法を用いて混練することができ、現像液に可溶な光硬化性導電ペースト組成物を得ることができる。3本ロールが均一分散の点で好ましい。
【0025】
本発明による電気配線回路パターン形成法では、まず、上記の現像液に可溶な光硬化性導電ペースト組成物を所望の基材上に塗布する。溶媒を含む場合には該塗布後に乾燥させてよい。ここで用いられる基材は、従前から用いられている耐熱性のあるガラス、セラミック以外にも広範囲に使用することができ、例えば、樹脂基板、フィルム状樹脂基板等でもよく、この場合、耐熱温度が200℃以下の基材も使用することができる。
【0026】
塗布法も特に制限は無く、ロール塗布、スリット塗布、スプレイ塗布、スクリーン塗布、インクジェット塗布などの手法を用いることができる。スクリーン塗布がハンドリング性の点で好ましい。
塗布後乾燥する場合には、一般的には50〜150℃の温度で、5〜20分程度の時間をかけて行ってよいが、温度および時間は、使用する基材の耐熱性、あるいは感光性成分の露光感度を考慮して決めてよい。また、乾燥装置としてはホットプレート、オーブンのほかに減圧乾燥装置も使用可能である。
【0027】
次いで、得られた塗膜に対して所望の電気配線回路パターンが形成されたマスクを介して露光を行う。露光に使用する光は、当該現像液に可溶な光硬化性導電ペースト組成物を光硬化させ得る光であれば波長を選ばす使用することができる。例えば、紫外線、可視光線の他、X線、ガンマ線であってよいが、好ましくは電離放射線(紫外線、X線、ガンマ線)であって、特に好ましいのは紫外線である。400nm以下の波長領域の紫外線が好ましい。露光量は10〜5000mJ/cm2の範囲が好ましい。
【0028】
露光方法は特に制限は無く、光の種類により様々な露光光源を使用することができるが、例えば、紫外領域の光源には低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ等が好ましく用いられる。また、露光方式としてはマスクとの密着露光、プロキシミティ露光あるいは投影露光等のいずれでも良い。
【0029】
その後、現像処理を行い、塗膜の非露光部分を溶解、除去する。現像液としては、本願発明である光硬化性導電ペースト組成物の未露光状態部分を可溶化させ得るものであれば、液のpHを問わず、また水性・油性を問わず様々な液性であってよい。また、「現像」の本来的目的が当該光硬化性導電ペースト組成物の未露光部分を基材から取り除くことであることから、ここで言う可溶化とは該組成物を全て可溶させることまでは意味せず、該未露光部分を取り除くことができる程度に組成物を構成する少なくとも1成分が可溶化できればよい。
使用するバインダーがアルカリ可溶型である場合は、好ましくは炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸アンモニウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸水素カリウム水溶液、炭酸水素アンモニウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化アンモニウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、珪酸ソーダなどを例示することができる。また、上記以外でもモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の有機アミンを使用することができ、これらは、単独でも組み合わせても用いることができる。このアルカリ溶液の溶媒としては、水単独のみならず、例えば水と低級アルコール類等の親水性のある有機溶媒の混合物を用いることも可能である。炭酸ナトリウム水溶液が最も好ましい。pHが12〜14の範囲であることが好ましい。現像方式としてはディップ式、スプレー式、バレル式等の方法が挙げられる。これらの条件は使用する当該光硬化性導電ペースト組成物の性質との関係で適宜決められる。
【0030】
その後必要に応じて、現像処理で得られた回路パターンの基材との密着性向上のために加熱処理を行うのが好ましい。加熱温度は80〜150℃、加熱時間は5〜30分で行ってよい。加熱温度は上記の塗膜形成工程での乾燥温度よりも少なくとも5℃高い温度範囲に設定するのがよい。
【0031】
上記現像処理後またはその後の加熱処理後に必要に応じて、更に得られた回路パターンの抵抗値低減およびハンダ適性等、後工程の適性向上のために回路パターン上に選択的にメッキを行ってもよい。メッキの種類は問わないが、無電解メッキであってよい。
【0032】
以上これらの工程を経ることで、本発明の現像液に可溶な光硬化性導電ペースト組成物を用いて、種々の基材上に所望の電気配線回路を形成することができる。
これらの電気配線回路は10−5Ω・cm以下の良好な導電性を示す。
【0033】
本願の発明である現像液に可溶な光硬化性導電ペースト組成物および電気配線回路パターン形成法を使用して、タッチパネル用基板、表示装置用基板、情報処理端末装置用基板等の電気配線回路基板が提供される。
【実施例】
【0034】
以下の実施例によって、本発明の現像液に可溶な光硬化性導電ペースト組成物の効果を説明する。
表1に記載する、現像液に可溶な光硬化性導電ペースト組成物(アルカリ可溶性)をPET基材上に塗布し、80℃10分間の雰囲気下で乾燥した。続いて、下記所定のフォトマスクを介してメタルハライドランプを積算値で400mJ/cm照射し、未露光部分を現像液で洗浄除去した。続いて、PET基材との密着性を上げる為に100℃で30分間オーブンにて加熱処理を行った。得られた回路パターンについて、比抵抗、現像による解像度、基材との密着性を評価した。なお、現像液は1%炭酸ナトリウム水溶液を使用した。
【0035】
用いたバインダーはポリマー、光重合性モノマー、光重合開始剤および溶媒を含む、アルカリ可溶型のレジストFE−100(進和工業株式会社製)である。導電性粒子は、福田金属箔粉工業株式会社製の粒状銀粉のシルコートAgC−103(平均粒径:1.4μm)、フレーク状銀粉のシルコートAgC−212D(平均粒径:3.1μm)、球状銀粉のHWQ−2.5μm(平均粒径:2.5μm)をそれぞれ用いた。これらの導電性粒子をバインダーに加え、3本ロールで充分に混合分散し、ペーストを調整した。
一方、比較例として、フレーク状銀粉AgC−219(平均粒径:13.5μm)で同様にペーストを調整した。
【0036】
〔評価方法〕
比抵抗は、ダイアインスツルメンツ社製の4端子4探針法低低効率計「ロレスターEP」を用いてJISK7194に従って測定した。測定温度は、20℃である。
【0037】
解像度は、予めラインアンドスペースが50/50μmのパターンが形成されたフォトマスクを用意し、そのマスクを介してメタルハライドランプで露光し、現像液で未露光箇所を洗浄除去した場合にマスクと同様なラインアンドスペースが形成されているかを目視で判断した。目視で未露光箇所残渣が無い場合を合格として○と記載した。
【0038】
密着性は、厚み100μmのPETフィルムに乾燥後に厚みが10μmになるように、感光性導電ペーストをバーコーターで塗布した。続いて、メタルハライドランプを400mj/cm照射し、感光性導電ペーストを光硬化させたサンプルを作成した。それをJIS H8504テープ試験方法に準じて、カッターで2mm角の条こんを100個した後にテープによる引き剥がし試験を実施した。現像後に得られた回路パターン上にテープを貼り付け、回路パターン剥離されるかを評価した。剥離されない場合を○とし、剥離される場合は×とする。
尚、評価基準は以下の通りとした。
○:剥離全くなし。×:剥離発生。
【0039】
【表1】

【0040】
表1に記載した通り、実施例1〜9の現像液に可溶な光硬化性導電ペースト組成物は、比抵抗値、及び解像性、付着性ともに良好な結果となった。
比抵抗値に関しては、タッチパネルに使用される、市販されている光硬化性銀ペースト、例えば藤倉化成株式会社製「ドータイトFAー333(体積抵抗値4×10−5Ω・cm)と比較して同等の値が得られている。
比較例に関しては、解像度については、平均粒径が10μmを越えるとメタルハライドランプが遮蔽され、粒子の蔭に位置する光重合性成分が十分に硬化されず、光が照射された部分までも現像の際に洗浄除去された。また、基材との付着性についても同じ理由で光が照射された部分が全体として硬化不足傾向となり基材との密着性低下を引き起こした。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本願発明は各種電気配線回路基板の製造分野において有効に利用することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の照射により硬化して現像液に対して不溶化するバインダーと、平均粒径が0.1〜10μmの導電性粒子を含む組成物であって、該組成物に該光を照射した場合に得られる硬化物が150℃以上の熱処理を行うことなく導電性を示すことを特徴とする、現像液に可溶な光硬化性導電ペースト組成物。
【請求項2】
光が紫外線であり、かつ現像液がアルカリ性水溶液であることを特徴とする請求項1に記載のアルカリ可溶型光硬化性導電ペースト組成物。
【請求項3】
(1):請求項1又は2係る光硬化性導電ペースト組成物を基材上に塗布し塗膜を形成する工程、
(2):上記(1)の工程で塗布形成された塗膜に対し、マスクを介してパターン露光を行う工程、
(3):上記(2)の工程で非露光となった未硬化部分を現像液で除去し、導電性パターンを形成する工程、
をこの順で含む、電気配線回路パターンの形成方法。
【請求項4】
請求項3の、「(3)上記(2)の工程で非露光となった未硬化部分を現像液で除去し、パターンを形成する工程、」よりも後に、更に、
(4):上記(3)の工程で形成された導電性パターン上に選択的にメッキを行う工程
を含む、請求項3に係る導電性パターンの形成方法。
【請求項5】
請求項3又は4に係る導電性パターン形成法を用いて製造した電気配線回路基板。

【公開番号】特開2012−14015(P2012−14015A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151412(P2010−151412)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【出願人】(591186903)進和工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】