説明

光硬化性樹脂組成物、光硬化性防湿絶縁塗料及びそれを用いた電子部品、フラットパネルディスプレイ

【課題】 環境負荷の少ない、電子部品、フラットパネルディスプレイの防湿絶縁に適した光硬化性防湿絶縁塗料に利用される光硬化性樹脂組成物、及び絶縁処理された信頼性の高い電子部品等を提供する。
【解決手段】 (A)(a1)ポリオレフィンポリオール化合物、(a2)ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和化合物及び(a3)1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物、を反応させて得られるエチレン性不飽和二重結合を有するウレタン化合物と、(B)多環系脂肪族基を含む光重合性単量体と、(C)ビニルエーテル基を有する光重合性単量体と、(D)光重合開始剤とを含有してなる光硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性樹脂組成物、この光硬化性樹脂組成物を用いた光硬化性防湿絶縁塗料及びそれを用いて絶縁処理した電子部品、フラットパネルディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器は、年々小型軽量化及び多機能化の傾向にあり、これを制御する各種電気機器に搭載した電子部品は、湿気、塵埃、ガス等から保護する目的で防湿絶縁処理が行われている。このシール処理法には、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等の塗料による防湿処理が広く採用されている。このような防湿絶縁塗料は、有機溶剤に溶解した状態で塗布、乾燥することにより目的とする塗膜を形成する方法が一般的に行われている。
【0003】
しかし、これらの防湿絶縁塗料は、塗装の際に大気中に有機溶剤が排出されるため、環境上好ましくなく、また、これらの有機溶剤が火災を引き起こす危険性も高く、環境への負荷が高いものとなっている。
【0004】
環境への負荷を軽減するため紫外線又は電子線の照射によって硬化可能な樹脂組成物が多く開発され、電子部品の防湿絶縁処理用途でも、既に、種々の光硬化性塗料が実用化され、使用に供されている。このような樹脂組成物として、ポリエステルポリオール化合物やポリオレフィンポリオール化合物等をポリイソシアネ−トと反応させたウレタン変性アクリレート樹脂組成物が知られている。
【0005】
さらに、例えば特許文献1には、耐湿性において優れた特性を示すアクリル変性水素添加ポリブタジエン樹脂を含有する光硬化性防湿絶縁塗料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−302946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ポリエステルポリオール化合物を使用したウレタン変性アクリレート樹脂組成物は、透湿度が大きいことから、これを電子部品の防湿絶縁塗料として用いるには、電子部品の信頼性に問題が生じる。
【0008】
しかし、ウレタン変性アクリレート樹脂組成物は、酸素濃度が高くても重合することに加え、硬化物の物性はその構造や配合を変えることにより多様に変化するために注目されている。
本発明は、環境負荷が少なく、高い防湿性能を有する光硬化性樹脂組成物及びそれを用いた光硬化性防湿絶縁塗料、電子部品、フラットパネルディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は(A)(a1)ポリオレフィンポリオール化合物、(a2)ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和化合物及び(a3)1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物、を反応させて得られるエチレン性不飽和二重結合を有するウレタン化合物と、(B)多環系脂肪族基を含む光重合性単量体と、(C)ビニルエーテル基を有する光重合性単量体と、(D)光重合開始剤とを含有してなる光硬化性樹脂組成物である。
【0010】
また、本発明は、前記(B)成分の光重合性単量体は、多環系脂肪族基と分子内に1〜4個のエチレン性不飽和二重結合を有し、前記(A)成分に対して、20〜80質量%含有され、前記(C)成分の光重合性単量体は、多環系脂肪族基と分子内に1〜4個のビニルエーテル基を有し、前記(B)成分に対して1〜30質量%含有され、前記(D)成分は、前記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の総和を基準として、1〜10質量%含有する光硬化性樹脂組成物である。
【0011】
また、本発明は、上記の光硬化性樹脂組成物を防湿絶縁塗料とした光硬化性防湿絶縁塗料である。
更に、本発明は、上記の光硬化性樹脂組成物又は上記の光硬化性防湿絶縁塗料を用いて防湿絶縁処理された電子部品である。
【0012】
また、本発明によるフラットパネルディスプレイは、上記の光硬化性防湿絶縁塗料又は光硬化性防湿絶縁塗料をシール材として用いてシールされたものである。また、上記のフラットパネルディスプレイが、電子ペーパーである。
【発明の効果】
【0013】
本発明による光硬化性樹脂組成物は、透湿度の小さいポリオレフィンポリオール化合物を使用したウレタン変性アクリレートと特定の2種類の光重合開始剤を用いた樹脂組成物であり、環境負荷が少なく、高い防湿性により絶縁処理された信頼性の高い電子部品、フラットパネル、及び電子ペーパーに対応できる優れた光硬化性樹脂組成物及びそれを用いた光硬化性防湿絶縁塗料を提供する事が出来る。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明による光硬化性樹脂組成物、光硬化性防湿絶縁塗料、電子部品、フラットパネルディスプレイ、電子ペーパー及びその製造方法を、実施の形態により詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が制限されるものではない。
【0015】
[光硬化性樹脂組成物]
本発明による光硬化性樹脂組成物は、(A)成分として、(a1)ポリオレフィンポリオール化合物、(a2)ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和化合物及び(a3)1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物を反応させて得られるエチレン性不飽和二重結合を有するウレタン化合物と、(B)成分として、多環系脂肪族基を含む光重合性単量体と、(C)成分として、ビニルエーテル基を有する光重合開始剤とを含有する。以下、各成分について説明する。
【0016】
〔(A)成分〕
(a1)成分
(A)成分であるエチレン性不飽和二重結合を有するウレタン化合物のうち、(a1)ポリオレフィンポリオール化合物(以下、「(a1)成分」とする)としては、例えば、市販の種々の飽和及び不飽和のアルキル化合物のポリオール化物を使用することができ、これらの具体例としては、ポリエチレンポリオール、ポリプロピレンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、水添ポリイソプレンポリオール等が挙げられる。
【0017】
(a1)成分の数平均分子量は、得られる硬化物(フィルム)の柔軟性、即ち硬化物の伸びと、得られる塗料の特性のバランスの点から、500〜5,000であることが好ましく、1,000〜3,000であることがより好まく、1,500〜2,500であることがさらに好ましい。
【0018】
(a1)成分の数平均分子量が500未満であると、得られる硬化物が脆くなる傾向にあり、また、得られる硬化物表面にタック感(べたつき)が残る傾向にある。一方、(a1)成分の数平均分子量が5,000を超えると、得られる光硬化性樹脂組成物の粘度が増加し、そのため、塗料化したときの作業性が著しく低下する。なお、本発明における数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によって測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて求めた値である。
【0019】
(a2)成分
(a2)ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(以下、「(a2)成分」とする)としては、例えば、アルキル基の炭素数が2〜7であるヒドロキシアルキルアクリレート及びヒドロキシアルキルメタクリレート等が挙げられ、これらの具体例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート及びそれらのアクリレートに対応するメタクリレート等が挙げられる。
【0020】
また、(a2)成分としては、ε−カプロラクトン単量体を開環重合させて得られる、ヒドロキシル基とエチレン性不飽和二重結合を有する化合物も挙げられる。これらの化合物の中では、得られる硬化物表面にタック感がなく、硬化性に極めて優れる点から、2−ヒドロキシエチルアクリレートが好ましい。前記各(a2)成分は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0021】
(a3)成分
次に、(a3)1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物(以下、「(a3)成分」とする)としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート及びこれらの水素添加物等のジイソシアネート化合物が挙げられる。前記各(a3)成分は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0022】
本発明における(A)成分は、前記(a1)〜(a3)成分を含む混合物を、(a3)成分のイソシアネート基1当量に対して、(a1)成分のヒドロキシル基が0.5〜0.75当量となり、(a2)成分のヒドロキシル基が0.25〜0.5当量となり、(a1)成分と(a2)成分のヒドロキシル基の合計が1〜1.1当量となる割合で配合し、付加反応させて得られる重合体であることが好ましい。
【0023】
(a3)成分のイソシアネート基1当量に対して(a1)成分のヒドロキシル基が0.5当量未満であると、得られる硬化物の柔軟性が劣り、0.75当量を超えると、得られる硬化物表面にタック感が生じる。また、(a3)成分のイソシアネート基1当量に対して(a2)成分のヒドロキシル基が0.25当量未満であると、得られる硬化物表面にタック感が生じ、0.5当量を超えると、得られる硬化物の柔軟性が劣る。さらに、(a3)成分のイソシアネート基1当量に対して(a1)成分及び(a2)成分のヒドロキシル基の合計が1当量未満であると、得られる光硬化性樹脂組成物の貯蔵安定性が劣って樹脂組成物がゲル化し、1.1当量を超えると、得られる光硬化性樹脂組成物の硬化性が劣る。
【0024】
本発明における(A)成分は、前記(a1)成分、(a2)成分及び(a3)成分を前記割合で配合して付加反応(ウレタン化反応)させて得ることができ、例えば、前記(a1)成分、(a2)成分及び(a3)成分を前記割合で混合して、好ましくは60〜80℃で5〜12時間反応させることにより得ることができる。
反応の際、そして保存の際には、望ましくないラジカル重合を防止するため重合禁止剤を配合することが好ましい。重合禁止剤は、重合禁止効果があればよく、特に制限はないが、例えば、t−ブチルカテコール等のカテコール類、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、t−ブチルヒドロキノン、及びp−メトキシフェノール等のヒドロキノン類、メトキノン等のアルコキシキノン類、p−ベンゾキノン、メチル−p−ベンゾキノン、及びt−ブチル−p−ベンゾキノン等のベンゾキノン類が挙げられる。重合禁止剤の含有量は、組成により異なるが、例えば、全固形分に対して20〜100質量ppmであり、20〜80質量ppmであることが好ましく、20〜65質量ppmであることがより好ましい。
【0025】
その際、必要に応じて有機溶媒を利用することができる。有機溶媒としては、例えば、エステル系、ケトン系、芳香族系等の有機溶媒が挙げられ、エステル系の有機溶媒としては、例えば、酢酸ブチル、酢酸エチル等が挙げられ、ケトン系の有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン等が挙げられ、芳香族系の有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらの有機溶媒を使用する場合、単独で又は2種類以上組み合わせて用いられる。
【0026】
また、後述する(B)エチレン性不飽和二重結合と環状脂肪族基(多環系脂肪族基)とを有する光重合性単量体等を反応性希釈剤として、前記有機溶媒の代わりに用いることもできる。光重合性単量を使用する場合、単独で又は2種類以上組み合わせて用いられ、また、有機溶媒と組み合せて用いてもよい。
【0027】
(A)成分の数平均分子量は、得られる硬化物の特性(塗膜の表面硬化性及び柔軟性)の点から、1,000〜20,000であることが好ましく、1,500〜10,000であることがより好ましく、2,000〜5,000であることがさらに好ましい。(A)成分の数平均分子量が1,000未満であると、得られる硬化物が脆く、硬化塗膜が十分な伸びを有しない傾向にあり、(A)成分の数平均分子量が20,000を超えると、塗料化した 時の粘度が著しく増加する。
【0028】
〔(B)成分〕
(B)成分である光重合性単量体は、多環系骨格(多環系脂肪族基)を有し、分子内に1個以上、4個以下のエチレン性不飽和二重結合を有する光重合成単量体である光重合性単量体である。
【0029】
(B)成分である多環系骨格を有し、分子内に1個以上、4個以下のエチレン性不飽和二重結合を有する光重合性単量体としては、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物として単官能性又は多官能性の光重合性単量体を単独で又は2種類以上組み合わせて用いることができる。エチレン性不飽和二重結合と多環系脂肪族基とを有することで、防湿性が向上する傾向がある。
【0030】
これらのエチレン性不飽和二重結合と多環系脂肪族基とを有する光重合性単量体のうち、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルナニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、ビニルノルボルネン、ビニルノルボルナン等のビニル基等を有するものを用いることもできる。これら光重合単量体のうち、防湿性の観点からジシクロペンタニル(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0031】
(B)成分の含有量は、(A)成分と(B)成分との総和を基準として、好ましくは20〜80質量%含有され、より好ましくは40〜60質量%で含有される。言い換えると、前記(A)成分に対して、20〜80質量%含有され、(A)成分を80〜20質量%含有する。この含有量が20質量%未満では粘度が著しく高くなり、80質量%を超えると得られる硬化物が脆く、硬化塗膜が十分な伸びを有しない傾向にある、また表面硬化性、伸び、強度等の特性が全般的に低下してしまう。(B)成分を配合すると低粘度化によりハンドリング性が向上する点でも好ましい。
【0032】
[(C)成分]
(C)成分は、多環系脂肪族基を有し、分子内に1個以上、4個以下のビニルエーテル基を有する光重合性単量体を含む。
(C)成分である多環系骨格(多環系脂肪族基)を有し、分子内に1個以上、4個以下のビニルエーテル基を有する光重合性単量体として、単官能性又は多官能性の光重合性単量体を単独で又は2種類以上組み合わせて用いることができる。ビニルエーテル基と多環系脂肪族基とを有することで、防湿性が向上する傾向がある。
【0033】
これらの多環系骨格を有し、分子内に1個以上、4個以下のビニルエーテル基を有する光重合性単量としては、トリシクロデカンモノメタノールビニルエーテル、トリシクロデカンジメタノールジビニルエーテル等があげられ、弾性率の観点からトリシクロデカンモノメタノールビニルエーテルが好ましい。
【0034】
(C)成分は、前記(B)成分を基準として、好ましくは1〜30質量%含有され、より好ましくは5〜20質量%含むと好ましい。1質量%未満では防湿性を高める効果が低く、30質量%を超えると硬化膜がもろくなる。
【0035】
〔(D)成分〕
本発明で用いる(D)成分、すなわち光重合開始剤としては、例えば、カルボニル系光重合開始剤、スルフィド系光重合開始剤、キノン系光重合開始剤、アゾ系光重合開始剤、スルホクロリド系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、過酸化物系光重合開始剤等が挙げられる。
【0036】
カルボニル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ω−ブロモアセトフェノン、クロロアセトン、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p′−ジクロロベンゾフェノン、p,p′−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンジルメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、メチルベンゾイルホルメート、2,2−ジエトキシアセトフェノン、4−N,N′−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0037】
スルフィド系光重合開始剤としては、例えば、ジフェニルジスルフィド、ジベンジルジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルアンモニウムモノスルフィ等が挙げられる。
キノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾキノン、アントラキノン等が挙げられる。
アゾ系光重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビスプロパン、ヒドラジン等が挙げられる。
【0038】
チオキサントン系光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン等が挙げられる。
過酸化物系光重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ジ−t−ブチルペルオキシド等が挙げられる。
これらの光重合開始剤の中では、得られる光硬化性樹脂組成物における溶解性の点から、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンが好ましい。これらの光重合開始剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0039】
(D)成分の含有量は、光硬化性及び得られる硬化物の特性(硬化性、柔軟性(伸び)及び密着性等)のバランスの点から、(A)成分と(B)成分及び(C)成分との総量(総和)に対して、1〜10質量%とすることが好ましく、2〜5質量%とすることがより好ましい。この含有量が1質量%未満であると、光硬化が不十分となる傾向にあり、10質量%を超えると、得られる硬化物の特性(硬化性、柔軟性(伸び)及び密着性等)が全般的に低下する傾向にある。
【0040】
[光硬化性防湿絶縁塗料]
本発明の光硬化性樹脂組成物は、上記のように(A)エチレン性不飽和二重結合を有するウレタン化合物と、(B)多環系脂肪族基を含む光重合性単量体と、(C)ビニルエーテル基を有する光重合性単量体と、(D)光重合開始剤とを含有し、これに必要に応じ充填剤、改質剤、消泡剤、着色剤および接着性付与剤などを任意に添加することで光硬化性防湿絶縁塗料とすることができる。
【0041】
充填剤としては、微粉末酸化けい素、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム等が挙げられ、通常光硬化性樹脂組成物の(A)、(B)、(C)成分の総計100質量部に対し0.01〜100質量部添加することができる。
【0042】
改質剤としては例えば、乾燥性を向上させるためにナフテン酸マンガン、オクテン酸マンガン等の有機酸金属塩などが使用でき、通常光硬化性樹脂組成物の(A)、(B)、(C)成分の総計100質量部に対し0.01〜10質量部添加することができる。
【0043】
消泡剤としては例えば、シリコン系オイル、フッ素系オイル、ポリカルボン酸系ポリマーなど公知の消泡剤が挙げられ、通常光硬化性樹脂組成物の(A)、(B)、(C)成分の総計100質量部に対し0.001〜5質量部添加することができる。
【0044】
着色剤としては、公知の無機顔料、有機系顔料、及び有機系染料等が挙げられ、所望する色調に応じてそれぞれを配合する。これらは、2種以上組み合わせて使用しても良い。通常、これら顔料及び染料の添加量は光硬化性樹脂組成物の(A)、(B)、(C)成分の総計100質量部に対し、0.01〜50質量部添加することができる。
【0045】
粘着付与剤としては、溶剤に溶解しやすく、室温(25℃)で固形で、軟化点が、好ましくは50〜180℃、より好ましくは60〜170℃の水素添加ロジン系樹脂、脂環族系飽和炭化水素樹脂等が挙げられ、通常光硬化性樹脂組成物の(A)、(B)、(C)成分の総計100質量部に対し10〜100質量部添加することができる。
【0046】
[電子部品]
本発明による電子部品は、上述した光硬化性樹脂組成物又は光硬化性防湿絶縁塗料を用いて防湿絶処理縁された電子部品である。このような電子部品としては、マイクロコンピュータ、トランジスタ、コンデンサ、抵抗、リレー、トランス等、及びこれらを搭載した実装回路板などが挙げられ、さらにこれら電子部品に接合されるリード線、ハーネス、フィルム基板等も含むことができる。
【0047】
[フラットパネルディスプレイ]
本発明によるフラットパネルディスプレイは、上述した光硬化性樹脂組成物又は光硬化性防湿絶縁塗料を用いて防湿絶縁処理されたフラットパネルディスプレイである。このようなフラットパネルディスプレイとしては、液晶ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル、有機エレクトロルミネッセンスパネル、フィールドエミッションディスプレイパネル等のフラットパネルディスプレイパネルの信号入力部、外縁部も、フラットパネルディスプレイとして挙げられる。
【0048】
[電子ペーパー]
本発明による電子ペーパーはまた、上述した光硬化性樹脂組成物又は光硬化性防湿絶縁塗料を用いて防湿絶縁処理され電子ペーパーであり、信号入力部、外縁部も、電子ペーパーとして挙げられる。
【0049】
[電子部品の製造方法]
本発明による電子部品、フラットパネルディスプレイ、電子ペーパーは、光硬化性樹脂組成物又は光硬化性防湿絶縁塗料を用いて絶縁することにより製造される。電子部品、フラットパネルディスプレイ、電子ペーパーの製造方法は、一般に知られている浸漬法、ハケ塗り法、スプレー法、線引き塗布法、ディスペンス法等の方法によって上述した光硬化性樹脂組成物又は防湿絶縁塗料を上記電子部品に塗布する。そして、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、LED等を光源として紫外線を照射することにより、電子部品、フラットパネルディスプレイ、電子ペーパーに塗布した塗膜を硬化することにより、電子部品、フラットパネルディスプレイ、電子ペーパーが得られる。
【実施例】
【0050】
以下に本発明を実施例及び比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、「部」及び「%」は、それぞれ、「質量部」及び「質量%」を示す。
【0051】
合成例1
撹拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を装備した反応容器に空気ガスを導入させた後、(a2)ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和化合物として2−ヒドロキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、商品名:HEA)53部(ヒドロキシル基:2.0当量)、(a1)ポリオレフィンポリオール化合物として水添ポリブタジエンジオール(日本曹達株式会社製、商品名:GI−1000、数平均分子量:約1,500)600部(ヒドロキシル基:2.0当量)及びハイドロキノンモノメチルエーテル(和光純薬工業株式会社製)0.5部を仕込み、70℃に昇温後、70〜75℃で30分間保温し、これに、(a3)1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物としてトリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名:コロネート T−65)70部(イソシアネート基:2.0当量)を3時間で均一滴下し、反応させた。
【0052】
滴下完了後、70〜75℃で約5時間保温して反応させ、IR測定によりイソシアネート基が消失したことを確認した後、反応を終了させ、エチレン性不飽和二重結合を有するウレタン化合物(以下、「R−0」とする)を得た。
【0053】
(実施例1)
撹拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を装備した反応容器に空気ガスを導入させた後、(A)成分として前記で合成したエチレン性不飽和二重結合を有するウレタン化合物(R−0)50部、(B)成分としてジシクロペンタニルアクリレート(日立化成工業株式会社製、商品名:FA-513A)42部、(C)成分としてトリシクロデカンモノメタノールビニルエーテル(丸善石油化学株式会社製、商品名:TDMMVE)8部を仕込み、90℃に昇温後、85〜90℃で3時間保温し、均一に攪拌・混合させた。さらに、(D)成分としてイルガキュア369(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)4部を加え攪拌・溶解し、光硬化性樹脂組成物(以下、「R−1」とする)を得た。
【0054】
(比較例1)
撹拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を装備した反応容器に空気ガスを導入させた後、エチレン性不飽和二重結合を有するウレタン化合物(R−0)50部、ジシクロペンタニルアクリレート(日立化成工業株式会社製、商品名:FA-513A)50部を仕込み、90℃に昇温後、85〜90℃で3時間保温し、均一に攪拌・混合させた。さらに、イルガキュア369(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)4部を加え攪拌・溶解し、光硬化性樹脂組成物(以下、「R−2」とする)を得た。
【0055】
(比較例2)
撹拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を装備した反応容器に空気ガスを導入させた後、エチレン性不飽和二重結合を有するウレタン化合物(R−0)50部、ベンジルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、商品名:V#160)50部を仕込み、90℃に昇温後、85〜90℃で3時間保温し、均一に攪拌・混合させた。さらに、イルガキュア369(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)4部を加え攪拌・溶解し、光硬化性樹脂組成物(以下、「R−3」とする)を得た。
【0056】
(比較例3)
撹拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を装備した反応容器に空気ガスを導入させた後、エチレン性不飽和二重結合を有するウレタン化合物(R−0)50部、イソオクチルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、商品名:IOAA)50部を仕込み、90℃に昇温後、85〜90℃で3時間保温し、均一に攪拌・混合させた。さらに、イルガキュア369(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)4部を加え攪拌・溶解し、光硬化性樹脂組成物(以下、「R−4」とする)を得た。
【0057】
(比較例4)
撹拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を装備した反応容器に空気ガスを導入させた後、エチレン性不飽和二重結合を有するウレタン化合物(R−0)50部、エチルカルビトールアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、商品名:V#190)50部を仕込み、90℃に昇温後、85〜90℃で3時間保温し、均一に攪拌・混合させた。さらに、イルガキュア369(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)4部を加え攪拌・溶解し、光硬化性樹脂組成物(以下、「R−5」とする)を得た。
【0058】
(比較例5)
撹拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を装備した反応容器に空気ガスを導入させた後、エチレン性不飽和二重結合を有するウレタン化合物(R−0)50部、テトラヒドロフランアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、商品名:THF-A)50部を仕込み、90℃に昇温後、85〜90℃で3時間保温し、均一に攪拌・混合させた。さらに、イルガキュア369(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)4部を加え攪拌・溶解し、光硬化性樹脂組成物(以下、「R−6」とする)を得た。
【0059】
[透湿度の測定]
水蒸気バリア性の評価は、JIS Z-0208に準じて行った。40℃、相対湿度90%の条件で、24時間で樹脂膜を透過した水分量を測定した。試験片は、光硬化性樹脂組成物(R-1)〜(R-6)を、それぞれPETフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、A-53)上に塗工装置(ベーカー式アプリケーター、YBA-4型)で0.1mmの厚みに塗布した。
この試料をウシオ電機株式会社製のUV露光装置(プロキシミティ炉光装置、UX-1000SM-XJ01)を用い、酸素雰囲気下、照射強度約20mW/cm、照射量700mJ/cmで試料を硬化させた。この硬化物をPETフィルムから剥がし、透湿度測定用試験片とした。その測定結果を配合とともに纏めて表1に示した。
【0060】
【表1】

【0061】
表1に示したように、本発明の実施例1による光硬化性樹脂組成物は、透湿度が低いことから高い防湿性を持つ。従って、本発明の光硬化性樹脂組成物又は光硬化性防湿絶縁塗料は、環境負荷の物質である有機溶剤等の揮発性有機化合物を殆どもしくは全く含有せず、高い防湿性を持つことが判った。これに対して、比較例1〜5による光硬化性樹脂組成物では、防湿性が低い結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上のように、本発明にかかる光硬化性樹脂組成物は、環境負荷が少なく、透湿度が小さく、高い防湿性を有する光硬化性防湿絶縁塗料を提供することができる。本発明は、液晶パネル、有機ELディスプレイパネル、電子ペーパー等のパネル等のシール剤や封止剤としての利用の他、耐湿性を要求される他の用途、例えば、半導体の封止剤、乾電池等のシーリング剤、光ディスクコート剤、光ディスク用接着剤、光学材料用素材、光学材料用接着剤、食品包装シートの表面コート剤、あるいは水蒸気バリアフィルム用素材等としても使用することができる。
また、実装回路板用の光硬化性防湿絶縁塗料により絶縁処理された電子部品は信頼性が高く、マイクロコンピュータや各種の部品を搭載した実装回路板にも有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(a1)ポリオレフィンポリオール化合物、(a2)ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和化合物及び(a3)1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物、を反応させて得られるエチレン性不飽和二重結合を有するウレタン化合物と、(B)多環系脂肪族基を含む光重合性単量体と、(C)ビニルエーテル基を有する光重合性単量体と、(D)光重合開始剤とを含有してなる光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)成分の光重合性単量体は、多環系脂肪族基と分子内に1〜4個のエチレン性不飽和二重結合を有し、前記(A)成分に対して、20〜80質量%含有され、前記(C)成分の光重合性単量体は、多環系脂肪族基と分子内に1〜4個のビニルエーテル基を有し、前記(B)成分に対して1〜30質量%含有され、前記(D)成分は、前記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の総和を基準として、1〜10質量%含有する請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の光硬化性樹脂組成物を防湿絶縁塗料とした光硬化性防湿絶縁塗料。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の光硬化性樹脂組成物又は請求項3に記載の光硬化性防湿絶縁塗料を用いて防湿絶縁処理された電子部品。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の光硬化性樹脂組成物又は請求項3に記載の光硬化性防湿絶縁塗料をシール材として用いたフラットパネルディスプレイ。
【請求項6】
請求項5に記載のフラットパネルディスプレイが、電子ペーパーであるフラットパネルディスプレイ。

【公開番号】特開2010−254891(P2010−254891A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109106(P2009−109106)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】