説明

光硬化性樹脂組成物、光硬化性防滴絶縁塗料、それを用いた電気・電子部品およびその製造方法

【課題】短時間硬化が可能で、車載用に十分な耐湿性を呈する実装回路板用の光硬化性防滴絶縁塗料等を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)アクリル系ポリマー、(B)多官能エポキシ化合物、(C)オキセタン環を有する化合物、および(D)光重合開始剤を含有してなることを特徴とする光硬化性樹脂組成物、それを含む実装回路板用の光硬化性防滴絶縁塗料、それを用いた電気部品または電子部品、並びにその製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル系ポリマー、多官能エポキシ化合物、オキセタン環含有化合物、および光重合開始剤を含む光硬化性樹脂組成物、それを含む実装回路板用の光硬化性防滴絶縁塗料、それを用いた電気部品または電子部品、並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラスエポキシ、セラミック等の基板の上に所定の金属で配線図が印刷され、その所定の位置にIC、コンデンサ、抵抗体などが搭載されてなる電子部品が製造されている。そして近年、高温多湿の環境下において使用されても高い信頼性を有する電子部品を得るために、防湿絶縁コートが施されるようになってきた。これは、コーティングを施すことによって、高温多湿下でも湿気や結露水から保護され絶縁抵抗が維持されるためである。
【0003】
このような電子部品等の表面絶縁膜形成用の防湿絶縁コート剤としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等を、芳香族炭化水素類、ケトン類、エステル類等の塗料原料として一般的に用いられる有機溶媒に溶解した、溶剤系塗料の形態のものが用いられている。そしてそのコート剤をスプレー法、浸漬法、刷毛塗り法等によって電子部品等の表面に塗布し、加熱乾燥させて防湿絶縁コート被膜を形成している。
【0004】
他方、溶剤系塗料の形態のものでは環境への負荷が問題となるために、その溶剤系防湿絶縁塗料における有機溶媒に替えて、溶媒(分散媒)として環境負荷のない水を使用した水性防湿絶縁コート剤を提供することを目的として、特許文献1には、水と、水中に分散するコート成分とを含有する水性防湿絶縁コート剤であって、コート成分に、アクリル系樹脂と、石油系ワックス及び/又はポリエチレン系ワックスとを含有することを特徴とする水性防湿絶縁コート剤が提案されており、そして、特許文献2には、アクリル系樹脂を含有する水性防湿絶縁用コート剤であって、アクリル系樹脂が、(A)スチレン由来の構成単位と、(B)(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位とを有する共重合体であり、(A)成分と(B)成分との配合割合が質量比で(A):(B)=1:1〜2:1である水性防湿絶縁用コート剤が提案されている。
【0005】
しかしながら、これらの水性防湿絶縁用コート剤は、乾燥工程において、溶媒である水を揮発させるために、温度と時間をかけ処理する必要があり、処理時間が長くなることによるコスト上昇やCO排出が増加するという課題がある。
【0006】
また、特許文献3には、短時間処理が可能で、耐湿性、基材との接着性及び樹脂強度(硬度)に優れた光硬化性防湿絶縁塗料及びこれを塗布、硬化する防湿絶縁された電子部品及びその製造方法を提供することを目的として、(A)アクリロキシポリブタジエン又はアクリロキシ水添ポリブタジエンと、(B)ビスフェノールA系(メタ)アクリレートと、(C)一般式CH=C(R)−COO−R(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数5〜20のアルキル基又はアルケニル基を表す。)で表される化合物と、及び(D)光重合開始剤とを含有する光硬化性防湿絶縁塗料であって、前記(B)成分の含有量は、前記(A)成分及び前記(B)成分の全量に対して、1〜30重量%であることを特徴とする光硬化性防湿絶縁塗料が提案されている。
【0007】
しかしながら、その光硬化性防湿絶縁塗料は、車載用に十分な耐湿性を有するものではなくて、更なる改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−154004号公報
【特許文献2】特開2007−154005号公報
【特許文献3】特開2008−303362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、短時間硬化が可能で、車載用に十分な耐湿性を呈する光硬化性樹脂組成物、そのような光硬化性樹脂組成物を含む実装回路板用の光硬化性防滴絶縁塗料、そのような光硬化性防滴絶縁塗料を用いて防滴絶縁処理された電子回路基板等の電気部品または電子部品、並びにそのような電気部品または電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様である光硬化性樹脂組成物は、請求項1に記載のように、(A)アクリル系ポリマー、(B)多官能エポキシ化合物、(C)オキセタン環を有する化合物、および(D)光重合開始剤を含有してなることを特徴とするものである。
【0011】
かかる本願の第一発明では、電子回路板用の光硬化性防湿絶縁塗料として用いられ得る光硬化性樹脂組成物を提供することが可能である。
【0012】
その第1の態様である光硬化性樹脂組成物の一つの好ましい形態として、前記(C)成分の含有量が、前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分および前記(D)成分の合計量に対して10〜70重量%であることを特徴とする、光硬化性樹脂組成物が挙げられる(請求項2参照)。
【0013】
第1の態様である光硬化性樹脂組成物のもう一つの好ましい形態として、前記(A)成分が、アクリル系モノマーおよび酢酸ビニルモノマーの共重合体からなる群から選択される少なくとも一種のアクリル系ポリマーである、光硬化性樹脂組成物が挙げられる(請求項3参照)。
【0014】
第1の態様である光硬化性樹脂組成物のもう一つの好ましい形態として、前記(B)成分が、1分子中に2個以上のエポキシ基を含有する、芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の多官能エポキシ化合物である、光硬化性樹脂組成物が挙げられる(請求項4参照)。
【0015】
第1の態様である光硬化性樹脂組成物のもう一つの好ましい形態として、前記(C)成分が、オキセタン環を1個または2個含有する化合物からなる群から選択される少なくとも一種のオキセタン環を有する化合物である、光硬化性樹脂組成物が挙げられる(請求項5参照)。
【0016】
第1の態様である光硬化性樹脂組成物のもう一つの好ましい形態として、前記(D)成分が、光反応してルイス酸を放出するオニウム塩からなる群から選択される少なくとも一種の光重合開始剤である、光硬化性樹脂組成物が挙げられる(請求項6参照)。
【0017】
本発明の第2の態様である実装回路板用の光硬化性防滴絶縁塗料は、請求項7に記載のように、上記第1の態様である光硬化性樹脂組成物を含有することを特徴とするものである。
【0018】
かかる第2の態様である実装回路板用の光硬化性防滴絶縁塗料では、車載用の電子回路板において、高温高湿下でも十分に絶縁抵抗を維持することが可能である。
【0019】
本発明の第3の態様である電気部品または電子部品は、請求項8に記載のように、上記第2の態様である実装回路板用光硬化性防滴絶縁塗料を用いて絶縁処理されたことを特徴とするものである。
【0020】
かかる第3の態様である電気部品または電子部品では、車載用に十分な耐湿性を有することが可能である。
【0021】
本発明の第4の態様である電気部品または電子部品の製造方法は、請求項9に記載のように、上記第2の態様である実装回路板用の光硬化性防滴絶縁塗料を電気・電子部品の少なくとも一部の面に塗布し、次いで、塗布した前記実装回路板用光硬化性防滴絶縁塗料を硬化させて前記電気・電子部品の絶縁処理を行うことを特徴とするものである。
【0022】
かかる第4の態様である電気部品または電子部品の製造方法では、車載用電子回路板を得ることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明における(A)成分であるアクリル系ポリマーとしては、アクリル系モノマーと酢酸ビニルモノマーとの共重合体が好ましく、特にアクリル系モノマーと酢酸ビニルモノマーと官能基含有モノマーとの共重合体が好ましい。
【0024】
アクリル系モノマーとしては、特に限定されないが、例えばアクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等が挙げられる。これらの中でもアクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルの中から選ばれた1種以上のものが好ましい。
【0025】
また、官能基含有モノマーとしては、特に限定されないが、例えばメタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリルアミド、メチロールアクリルアミド、グリシジルメタクリレート、無水マレイン酸等が挙げられる。
【0026】
かかるアクリル系ポリマーのうちで、より好ましいものとしては、ポリエチルヘキシルアクリレート、ポリグリシジルメタクリレート等が挙げられる。
【0027】
また、光硬化性樹脂組成物におけるアクリル系ポリマーの含有割合としては、前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分および前記(D)成分の合計量に対して、5〜94重量%が好ましく、さらに7〜50重量%が好ましく、特に10〜20重量%が好ましい。かかるアクリル系ポリマーの含有割合が、5重量%より低くなると配合の系がみだれ、均一分散しなくなり、また94重量%を超えると高温高湿時の絶縁抵抗維持が困難となり好ましくない。
【0028】
本発明における(B)成分である多官能エポキシ化合物は1分子中に2個以上のエポキシ基を含有する化合物であって、その好ましいものとしては、例えば、芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。
【0029】
芳香族エポキシ樹脂として好ましいものは、少なくとも1個の芳香核を有する多価フェノール又はそのアルキレンオキサイド付加体のポリグルシジルエーテルであって、例えばビスフェノールAやビスフェノールF又はそのアルキレンオキサイド付加体と、エピクロルヒドリンとの反応によって製造されるグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂が挙げられる。
【0030】
また、脂環族エポキシ樹脂として好ましいものは、少なくとも1個の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル又は、シクロヘキセン、シクロペンテン環含有化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化する事によって得られるシクロヘキセンオキサイド、又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が挙げられる。脂環族エポキシ樹脂の代表例としては、3,4‐エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ビスフェノール‐Aグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノ−ルAジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3、4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシルなどが挙げられる。
【0031】
更に脂肪族エポキシ樹脂として好ましいものは、脂肪族多価アルコール、又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートのホモポリマー、コポリマーなどがあり、その代表例としては、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコ−ルのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加する事によって得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖2塩基酸のジグリシジルエステルが挙げられる。さらに脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルやフェノール、クレゾール、ブチルフェノール又はこれらにアルキレンオキサイドを付加する事により得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。
【0032】
かかる多官能エポキシ化合物のうちで、より好ましいものとして、3,4‐エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ビスフェノール‐Aグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0033】
また、光硬化性樹脂組成物における多官能エポキシ化合物の含有割合としては、前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分および前記(D)成分の合計量に対して、1〜94重量%が好ましく、さらに15〜65重量%が好ましく、特に20〜50重量%が好ましい。かかる多官能エポキシ化合物の含有割合が、1重量%より低くなると高温高湿時の絶縁抵抗維持が困難となり好ましくなく、また94重量%を超えると配合の系がみだれ均一分散しなくなり好ましくない。
【0034】
本発明における(C)成分であるオキセタン環を有する化合物は、下記一般式(1)
【化1】

で表されるオキセタン環を少なくとも1つ有する化合物であればいずれでも使用することができる。例えばオキセタン環を1ないし15含有する化合物が挙げられ、好ましくは1ないし10含有する化合物、特に好ましくは1または2個含有する化合物である。
【0035】
オキセタン環を1個有する化合物としては、オキセタン環を1個有する化合物であればいずれでも用いることができるが、下記の化合物が好適に用いることができる。例えば、下記一般式(2)
【化2】

で示される化合物等が挙げられる。一般式(2)において、Z、R1、R2は下記の原子又は置換基を意味する。Zは酸素原子または硫黄原子を示す。R1は水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素原子数1〜6個のアルキル基、トリフルオロメチル基、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基等の炭素原子数1〜6個のフルオロアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜18のアリール基、フリル基またはチエニル基である。R2は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素原子数1〜6個のアルキル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等の炭素原子数2〜6個のアルケニル基;ベンジル基、フルオロベンジル基、メトシキベンジル基、フェネチル基、スチリル基、シンナミル基、エトキシベンジル基等の置換または非置換の炭素原子数7〜18のアラルキル基;フェノキシメチル基、フェノキシエチル基等のアリーロキシアルキル基等のその他の芳香環を有する基;エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基等の炭素原子数2〜6個のアルキルカルボニル基;エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等の炭素原子数2〜6個のアルコキシカルボニル基;エチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基、ペンチルカルバモイル基等の炭素原子数2〜6個のN−アルキルカルバモイル基が挙げられる。又本願発明の効果を阻害しない範囲で上記以外の置換基を用いてもよい。
【0036】
オキセタン環を1個有する化合物のより具体的な例としては、アロンオキセタンOXT−101、アロンオキセタンOXT−211、アロンオキセタンOXT−212、アロンオキセタンOXT−213(以上は東亜合成(株)製)、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−(メタ)アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、4−メトキシ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル〕フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が挙げられる。
【0037】
2個のオキセタン環を有する化合物としては、下記一般式(3)および下記一般式(8)で示される化合物等が挙げられる。
【0038】
即ち、一般式(3)で表される化合物とは以下の通りである。
【化3】

ここで、R1は一般式(2)と同様に水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素原子数1〜6個のアルキル基、トリフルオロメチル基、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基等の炭素原子数1〜6個のフルオロアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜18のアリール基、フリル基またはチエニル基である。一般式(3)中のR1は互いに同じでも異なっていてもよい。R3は、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の線状あるいは分岐状の炭素原子数1〜20のアルキレン基、ポリ(エチレンオキシ)基、ポリ(プロピレンオキシ)基等の線状あるいは分枝状の炭素原子数1〜120のポリ(アルキレンオキシ)基、プロペニレン基、メチルプロペニレン基、ブテニレン基等の線状あるいは分枝状の不飽和炭素水素基、カルボニル基、カルボニル基を含むアルキレン基、分子鎖の途中にカルバモイル基を含むアルキレン基である。また、R3は、下記一般式(4)〜(6)で示される基から選択される多価の基でもよい。
【0039】
一般式(4)は以下の置換基である。
【化4】

一般式(4)において、R4は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素原子数1〜4個のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素原子数1〜4個のアルコキシ基、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルキルカルボキシル基、カルボキシル基、または、カルバモイル基であり、Xは1〜4の整数である。
【0040】
一般式(5)は以下の置換基である。
【化5】

一般式(5)において、R5は、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、−NH−、−SO−、−SO2−、−C(CF32−または−C(CH32−である。
【0041】
一般式(6)は以下の置換基である。
【化6】

一般式(6)において、R6は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素原子数6〜18のアリール基であり、yは、0〜200の整数である。R7はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素原子数6〜18のアリール基である。又R7は、下記一般式(7)で示される基でもよい。
【化7】

一般式(7)において、R8は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素原子数6〜18のアリール基である。Zは、0〜100の整数である。
【0042】
一般式(8)で表される化合物とは以下の通りである。
【化8】

一般式(8)において、 R1は一般式(2)と同様に水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素原子数1〜6個のアルキル基、トリフルオロメチル基、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基等の炭素原子数1〜6個のフルオロアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜18のアリール基、フリル基またはチエニル基である。一般式(2)中のR1は互いに同じでも異なっていてもよい。
【0043】
より具体的なオキセタン環を2個有する化合物としては、下記式(9)
【化9】

および下記式(10)が挙げられる。
【化10】

【0044】
さらに、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトシキ)メチル〕ベンゼン、1,2−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕エタン、1,2−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレンビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ブタン、1,6−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ヘキサン、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールFビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が挙げられる。
【0045】
かかるオキセタン環を有する化合物のうちで、より好ましいものとして、アロンオキセタンOXT−211、アロンオキセタンOXT−212等が挙げられ、特にアロンオキセタンOXT−211が好ましい。
【0046】
また、光硬化性樹脂組成物におけるオキセタン環を有する化合物の含有割合としては、前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分および前記(D)成分の合計量に対して、5〜75重量%が好ましく、さらに10〜70重量%が好ましく、特に30〜60重量%が好ましい。かかるオキセタン環を有する化合物の含有割合が、5重量%より低くなると高温高湿時の電子回路板絶縁抵抗が保持できなくなり好ましくなく、また75重量%を超えると混合物が均一分散しなくなり好ましくない。
【0047】
本発明における(D)成分である光重合開始剤は、光により、(C)成分のオキセタン環を有する化合物の重合を開始する化合物であれば特に限定はなく、いずれでも使用することができる。光重合開始剤の好ましい例として一般式(11)
[R12131415W]m+[MXn+mm− (11)
(式中、カチオンはオニウムイオンであり、Wは、S、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、I、Br、Cl、またはN≡Nであり、R12、R13、R14、およびR15は同一または異なる有機基であり、a、b、cおよびdはそれぞれ0〜3の整数であって、(a+b+c+d)はWの価数に等しい。Mは、ハロゲン化錯体[MXn+m]の中心原子を構成する金属またはメタロイドであり、例えば、B、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Co等である。Xは例えば、F、Cl、Br等のハロゲン原子であり、mはハロゲン化物錯体イオンの正味の電荷であり、nはMの原子価である。)で表される構造を有するオニウム塩を挙げることができる。このオニウム塩は、光反応し、ルイス酸を放出する化合物である。
【0048】
一般式(11)においてオニウムイオンの具体例としては、イソプロピル‐メチルジフェニルヨードニウム、ジフェニルヨードニウム、4−メトキシジフェニルヨードニウム、ビス(4−メチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム、トリルクミルヨードニウム、トリフェニルスルホニウム、トリフェニルスルホニウム、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウム、ビス〔4−(ジフェニルスルフォニオ)−フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル)スルホニオ)−フェニル〕スルフィド、η5−2,4−(シクロペンタジェニル)〔1,2,3,4,5,6−η−(メチルエチル)ベンゼン〕−鉄(1+)等が挙げられる。一般式(23)において陰イオンの具体例としては、テトラフルオロボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサクロロアンチモネート等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0049】
かかる光重合開始剤のうちで、特にイソプロピル‐メチルジフェニルヨードニウム等が好ましい。
【0050】
また、光硬化性樹脂組成物における光重合開始剤の含有割合としては、前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分および前記(D)成分の合計量に対して、0.1〜5重量%が好ましく、特に0.5〜2重量%が好ましい。かかる光重合開始剤の含有割合が、0.1重量%より低くなると硬化不足により硬化物が得られなくなり好ましくなく、また5重量%を超えると材料費が高額になり実用的でなくなるため好ましくない。
【0051】
また、本発明における電気部品または電子部品の製造方法は、上記の実装回路板用光硬化性防滴絶縁塗料を電気・電子部品の少なくとも一部の面に塗布し、次いで、塗布した実装回路板用光硬化性防滴絶縁塗料を硬化させて電気・電子部品の絶縁処理を行うこと含むものである。そこでの実装回路板用光硬化性防滴絶縁塗料の塗布の方法としては、通常用いられる方法であってよく、具体的には刷毛塗り、ディップ塗布、スプレー塗布等が挙げられる。また、塗布した実装回路板用光硬化性防滴絶縁塗料を硬化させる方法としては、通常用いられる方法であってよく、具体的には紫外線硬化、加熱硬化等が挙げられる。
【実施例】
【0052】
以下に本願発明についての実施例を挙げて更に具体的に本願発明を説明するが、それらの実施例によって本願発明が何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例および比較例における配合組成を表す各成分の量は、特に断らない限り「重量部」で表したものである。
【0053】
実施例等における「耐湿性」とは、JISのII型くし形基板を用いて、温度80℃で相対湿度95%の湿度環境下で、印加電圧が20Vで測定された絶縁抵抗値[Ω]で示されるものである。
【0054】
実施例等における「相溶性」とは、各組成を混ぜ合わせた混合物が均一分散している状態を意味し、目視判断されるものであって、混合物を作成後、凝集物が確認されない場合が〇、混合物を作成後、凝集物が確認された場合が×で表される。
【0055】
実施例1〜5、比較例1
アクリル系ポリマーとしてポリエチルヘキシルアクリレート(三洋化成工業(株)製)(実施例1〜5、比較例1)またはポリグリシジルメタクリレート(日本油脂(株)製)(実施例1〜5、比較例1)、多官能エポキシ化合物として3,4‐エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(純正化学(株)製)(実施例1〜5、比較例1)またはビスフェノール‐Aグリシジルエーテル(ジャパンエポキシレジン(株)製)(実施例1〜5、比較例1)、オキセタン環を有する化合物としてアロンオキセタン(東亞合成(株)製)(実施例1〜5、比較例1)、光重合開始剤としてイソプロピル‐メチルジフェニルヨードニウム(東京化成工業(株)製)(実施例1〜5、比較例1)をそれぞれ使用して、表1に示すような組成で、遊星攪拌機を用い混合することによって、光硬化性樹脂組成物を作製した。
【0056】
得られた各々の光硬化性樹脂組成物のサンプルを使用して、それらの相溶性と絶縁抵抗値[Ω]を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
表1に示されるように、(C)成分であるオキセタン環を有する化合物を含有しない比較例1に比べて、(C)成分であるオキセタン環を有する化合物を含有した実施例1〜5のいずれにおいても、10台〜10台の高い絶縁抵抗値[Ω]が得られており、良好な耐湿性、即ち防湿絶縁性が得られた。尚、相溶性に関しては、オキセタン環を有する化合物を80wt%と最も多く含有した実施例5のみ、相溶性が得られない結果であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アクリル系ポリマー、(B)多官能エポキシ化合物、(C)オキセタン環を有する化合物、および(D)光重合開始剤を含有してなることを特徴とする、光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(C)成分の含有量が、前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分および前記(D)成分の合計量に対して10〜70重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)成分が、アクリル系モノマーおよび酢酸ビニルモノマーの共重合体からなる群から選択される少なくとも一種のアクリル系ポリマーである、請求項1または2に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)成分が、1分子中に2個以上のエポキシ基を含有する、芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の多官能エポキシ化合物である、請求項1または2に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(C)成分が、オキセタン環を1個または2個含有する化合物からなる群から選択される少なくとも一種のオキセタン環を有する化合物である、請求項1または2に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(D)成分が、光反応してルイス酸を放出するオニウム塩からなる群から選択される少なくとも一種の光重合開始剤である、請求項1または2に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物を含有することを特徴とする、実装回路板用の光硬化性防滴絶縁塗料。
【請求項8】
請求項7に記載の実装回路板用光硬化性防滴絶縁塗料を用いて絶縁処理されたことを特徴とする、電気部品または電子部品。
【請求項9】
請求項7に記載の実装回路板用光硬化性防滴絶縁塗料を電気・電子部品の少なくとも一部の面に塗布し、次いで、塗布した前記実装回路板用光硬化性防滴絶縁塗料を硬化させて前記電気・電子部品の絶縁処理を行うことを特徴とする、電気部品または電子部品の製造方法。

【公開番号】特開2010−280876(P2010−280876A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137622(P2009−137622)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】