説明

光硬化性樹脂組成物及びその硬化皮膜を有する物品、その製造方法

【解決手段】(1)平均粒子径が80nm以下の無機酸化物微粒子、
(2)(メタ)アクリル基を3個以上含有する化合物、
(3)(メタ)アクリル基を1個又は2個含有する化合物、
(4)R1234+-(R1、R2、R3、R4はCH3、C25、C24OCH3、C613、C817から選択される基。XはN(SO2CF32、BF4、PF6から選択される基である。)で表されるイオン性化合物、
(5)Li+-(YはClO4、SO2CF3、SO225、N(SO2CF32、N(SO2252、BF4、PF6から選択される基)で表されるイオン性化合物、
(6)ラジカル系光重合開始剤、
(7)デンドリック高分子
を含有してなる光硬化性樹脂組成物。
【効果】本発明の光硬化性樹脂組成物は、無機酸化物微粒子とイオン性化合物の相乗効果により帯電防止性と分散安定性の両方の効果に寄与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料、コーティング等に用いられる光硬化性樹脂組成物、及びその硬化皮膜を有する物品、その製造方法に関するもので、更に詳しくは、高硬度で透明性、帯電防止性、保存安定性、湿熱条件下での基材への密着性に優れ、かつ光照射による硬化の際に、塗工ラインの搬送速度に関係なく白化が生じない樹脂組成物、及びその硬化皮膜を有する物品、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、トリアセチルセルロース樹脂等の合成樹脂は、軽量・透明性・易加工性等の利点を有する。そこで、そのような合成樹脂は、近年、CD、DVD等の光ディスク、液晶、ELパネル等の表示窓、各種機能性フィルム等、種々の分野で利用されている。それらの表面の耐擦傷性を向上させるために、透明で且つ耐擦傷性を有するハードコートを媒体の記録及び/又は再生ビーム入射側表面に形成することが一般的に行われている。
【0003】
ハードコートの形成は、分子中に(メタ)アクリロイル基等の光反応性基を2個以上有する化合物や、(メタ)アクリロイル基等の光反応性基を有するアルコキシシランを塩基性触媒存在下で加水分解縮合した籠型構造のシロキサン化合物(特開2002−363414号公報、特開2004−143449号公報:特許文献1,2)や、光反応性基を有するアルコキシシランとコロイダルシリカの反応物等を含有する組成物を媒体表面に塗布し、これを紫外線等の活性エネルギー線の照射により硬化させることにより行われる。これらの帯電防止性の向上を目的に、各種帯電防止剤の添加が検討されている。ポリエーテル変性シリコーンと過塩素酸リチウムの反応物(特開平5−320625号公報:特許文献3)や、多官能アクリルと過塩素酸リチウムの反応物(特許第3673590号公報:特許文献4)、多官能アクリレートと(CF3SO22NLiの混合物(特開平9−278831号公報、特開2001−288325号公報:特許文献5,6)が提案されているが、耐擦傷性は不十分である。
【0004】
そこで、耐擦傷性を改善する目的で、シリカ及びシラン加水分解物と(CF3SO22NLiの混合物(特開2005−146110号公報、特開2006−70120号公報、特開2008−222951号公報:特許文献7〜9)が提案されているが、溶剤を含有するもので、硬化の際に溶剤を処理する設備が必要であり、設備コスト負担が大きくなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−363414号公報
【特許文献2】特開2004−143449号公報
【特許文献3】特開平5−320625号公報
【特許文献4】特許第3673590号公報
【特許文献5】特開平9−278831号公報
【特許文献6】特開2001−288325号公報
【特許文献7】特開2005−146110号公報
【特許文献8】特開2006−70120号公報
【特許文献9】特開2008−222951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、高硬度で透明性、帯電防止性、保存安定性、湿熱条件下での基材への密着性に優れ、かつ光照射による硬化の際に、塗工ラインの搬送速度に関係なく白化が生じない光硬化性樹脂組成物、及びその硬化皮膜を有する物品、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、(1)平均粒子径が80nm以下の無機酸化物微粒子、(2)(メタ)アクリル基を3個以上含有する化合物、(3)(メタ)アクリル基を1個又は2個含有する化合物、(4)下記に示す脂肪族アミン系イオン性化合物、(5)下記に示すリチウム系イオン性化合物、(6)ラジカル系光重合開始剤、及び(7)デンドリック高分子を特定割合で含有する光硬化性樹脂組成物が、保存安定性に優れ、光照射による硬化の際に、塗工ラインの搬送速度に関係なく白化を生じず、該組成物を硬化させてなる皮膜は、支持基体に対して湿熱条件下での密着性が良好であり、透明性が高く、耐擦傷性、帯電防止性に優れることを見出した。またこの場合、この光硬化性樹脂組成物は、溶剤を実質的に含有しない状態で好適に使用し得ることを知見し、本発明をなすに至った。
【0008】
従って、本発明は、下記に示す光硬化性樹脂組成物及びその硬化皮膜を有する物品、その製造方法を提供する。
〔請求項1〕
(1)平均粒子径が80nm以下の無機酸化物微粒子、
(2)(メタ)アクリル基を3個以上含有する化合物、
(3)(メタ)アクリル基を1個又は2個含有する化合物、
(4)R1234+-(R1、R2、R3、R4はCH3、C25、C24OCH3、C613、C817から選択される基で、それぞれの基は同一であっても異なってもよい。XはN(SO2CF32、BF4、PF6から選択される基である。)で表されるイオン性化合物、
(5)Li+-(YはClO4、SO2CF3、SO225、N(SO2CF32、N(SO2252、BF4、PF6から選択される基である。)で表されるイオン性化合物、
(6)ラジカル系光重合開始剤、
(7)デンドリック高分子
を含有してなり、(1),(2),(3)成分の合計100質量部中、(1)成分が25〜70質量部、(2)成分が20〜70質量部、(3)成分が5〜30質量部であり、(1),(2),(3)成分の合計100質量部に対して、(4)成分が0.05〜3質量部、(5)成分が0.1〜7質量部、(6)成分が1〜8質量部、(7)成分が1〜50質量部である光硬化性樹脂組成物。
〔請求項2〕
(1)成分の平均粒子径が80nm以下の無機酸化物微粒子が、シリカ微粒子である請求項1記載の光硬化性樹脂組成物。
〔請求項3〕
シリカ微粒子が、(メタ)アクリル基を含有するシランカップリング剤で処理されたものである請求項2記載の光硬化性樹脂組成物。
〔請求項4〕
実質的に溶剤を含有せず、25℃における粘度が300mPa・s以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の光硬化性樹脂組成物。
〔請求項5〕
(1)成分を(2)成分及び/又は(3)成分に予め分散した混合物に、(4),(5),(6)及び(7)成分を混合してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の光硬化性樹脂組成物。
〔請求項6〕
請求項1〜5のいずれか1項記載の光硬化性樹脂組成物の硬化皮膜が形成されてなり、全光線透過率が85%以上、Hazeが2%以下、ASTM D1044によるテーバー摩耗試験における荷重500g,100回転時におけるHazeと摩耗試験前のHazeとの差が8%以下、表面抵抗値が1×1015Ω以下であることを特徴とする物品。
〔請求項7〕
硬化皮膜が形成される物品が、ポリカーボネートを50質量%以上含有する樹脂組成物により成型されたものである請求項6記載の物品。
〔請求項8〕
請求項1〜5のいずれか1項記載の光硬化性樹脂組成物をマイクログラビア法で被処理物品上に塗工し、紫外線照射で硬化させることにより上記被処理物品上に硬化皮膜を形成させてなることを特徴とする物品の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、(メタ)アクリル基含有化合物中に分散された無機酸化物微粒子に、脂肪族アミン系イオン性化合物とリチウム系イオン性化合物を特定量混合することによって、無機酸化物微粒子とイオン性化合物の相乗効果により帯電防止性と分散安定性の両方の効果に寄与し、実質的に溶剤を配合しなくても、保存安定性が良好で、透明性が高く、耐摩耗性、帯電防止性、湿熱条件下での密着性に優れる皮膜が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、
(1)平均粒子径が80nm以下の無機酸化物微粒子、
(2)(メタ)アクリル基を3個以上含有する化合物、
(3)(メタ)アクリル基を1個又は2個含有する化合物、
(4)脂肪族アミン系イオン性化合物、
(5)リチウム系イオン性化合物、
(6)ラジカル系光重合開始剤、
(7)デンドリック高分子
を含有するものである。
【0011】
(1)無機酸化物微粒子
本発明の(1)無機酸化物微粒子は、例えば、Si、Ti、Al、Zn、Zr、In、Sn、Sb、Ce、Fe等の酸化物微粒子、あるいはこれらの複合酸化物微粒子等が挙げられる。金属酸化物微粒子として、具体的には、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、酸化セリウム等の微粒子が挙げられる。
【0012】
これらの無機酸化物微粒子の平均粒子径は80nm以下であり、好ましくは50nm以下である。80nmより大きいものを使用すると、安定性が悪くなり、皮膜に粒子状の異物が見られたり、透明性を損なってしまったりする。なお、その下限は、通常10nm以上である。また、本発明において、平均粒子径は、動的光散乱光子相関法による粒度分布測定装置により測定できる。
【0013】
特に好ましい無機酸化物微粒子としては、シリカ微粒子であり、平均粒子径が50nm以下であればより好ましい。また、シリカ微粒子は、低屈折率等の効果が期待される中空、多孔質のものを使用してもよい。シリカ微粒子の中でも、活性エネルギー線反応性基を有する加水分解性シラン化合物によって表面修飾されたものが好ましく用いられる。このような反応性シリカ微粒子は、組成物を硬化させる際の活性エネルギー線照射によって、架橋反応を起こし、ポリマーマトリックス中に固定される。
【0014】
ここで、活性エネルギー線反応性基を有する加水分解性シラン化合物としては、(メタ)アクリル基を含有するシランカップリング剤が挙げられ、具体的には、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジクロロシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメチルクロロシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリクロロシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジクロロシラン、γ−アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルジメチルクロロシラン、γ−アクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシメチルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシメチルトリクロロシラン、γ−アクリロキシメチルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシメチルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシメチルメチルジクロロシラン、γ−アクリロキシメチルジメチルメトキシシラン、γ−アクリロキシメチルジメチルエトキシシラン、γ−アクリロキシメチルジメチルクロロシランが例示できる。
【0015】
また、活性エネルギー線反応性基を有する加水分解性シラン化合物の表面修飾量は、シリカ微粒子に対して好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜8質量%、特に好ましくは1〜5質量%である。
【0016】
活性エネルギー線反応性基を有する加水分解性シラン化合物による表面修飾の方法としては、シリカ微粒子存在下で活性エネルギー線反応性基を有する加水分解性シラン化合物を加水分解する方法が挙げられるが、その際に副生する活性エネルギー線反応性基を有する加水分解性シラン化合物の加水分解物は、保存安定性を悪化させる、もしくは、硬度を低下させる原因等になるので、それらをなくすようにしなければならない。
【0017】
これら(1)無機酸化物微粒子を、後述する(2)(メタ)アクリル基を3個以上含有する化合物や、(3)(メタ)アクリル基を1個又は2個含有する化合物に、1次粒子のまま分散したものを使用することが好ましく、1次粒子で存在させることで、透明性等の外観が良好な皮膜を得ることができる。
【0018】
具体的には、無機酸化物微粒子を、(メタ)アクリル基含有化合物中に分散剤や分散機器を用い、物理的に分散する方法や、無機酸化物微粒子が分散された溶液に(メタ)アクリル基含有化合物を添加した後、もともとの分散剤を留去する方法が挙げられる。
【0019】
(2)(メタ)アクリル基を3個以上含有する化合物
本発明の(2)(メタ)アクリル基を3個以上含有する化合物は、(1)無機酸化物微粒子及び(3)(メタ)アクリル基を1個又は2個含有する化合物と共に、硬化性成分の主成分となるものであり、硬化後に得られる皮膜のマトリックスを形成するものである。(メタ)アクリル基を3個以上含有する化合物は、(1)成分の無機酸化物微粒子を分散すると共にバインダー成分であり、該化合物により、耐摩耗性に優れ、高硬度な硬化物が得られるものである。
【0020】
(2)成分の(メタ)アクリル基含有化合物は、分子内に3つ以上の(メタ)アクリル基を有する化合物であり、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、メトキシレートペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシレートペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアクリル化イソシアヌレート等が挙げられる。また、3官能以上のウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、活性エネルギー線反応性基を有する加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物等のポリマー成分も挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
これらの化合物は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
(3)(メタ)アクリル基を1個又は2個含有する化合物
本発明の(3)(メタ)アクリル基を1個又は2個含有する化合物は、(1)無機酸化物微粒子及び(2)(メタ)アクリル基を3個以上含有する化合物と共に、硬化性成分の主成分となるものであり、硬化後に得られる皮膜のマトリックスを形成するものである。
【0022】
特に粘度を低下させるための成分であると共に、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、トリアセチルセルロース樹脂等との密着性を向上させるための成分である。
【0023】
(3)成分は、粘度を低下させるためには、25℃における粘度が100mPa・s以下、特には50mPa・s以下であることが好ましい。下限は特に制限されないが、通常1mPa・s以上である。なお、粘度は回転粘度計により測定できる(以下、同じ)。
【0024】
この(メタ)アクリル基含有化合物は、特に密着性を向上させるためには、分子内に水酸基、エポキシ基等の官能基を有するものが好ましい。また、皮膚刺激性PII値が4.0以上のものが好ましい。なお、各化合物の皮膚刺激性PII値は、文献等により調べることができる。
【0025】
例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアクリル化イソシアヌレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
これらの化合物は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
(1)成分の配合量は、(1)成分と(2)成分と(3)成分の合計100質量部中、25〜70質量部、好ましくは35〜60質量部であり、(2)成分の配合量は、(1)成分と(2)成分と(3)成分の合計100質量部中、20〜70質量部、好ましくは30〜55質量部であり、(3)成分の配合量は、(1)成分と(2)成分と(3)成分の合計100質量部中、5〜30質量部、好ましくは10〜20質量部である。
(1)成分と(2)成分と(3)成分の合計100質量部中、(1)成分の配合量が25質量部未満であると、硬度が低下し、十分な耐摩耗性が得られなくなり、70質量部を超えると、皮膜の外観が悪くなる。また、(2)成分の配合量が20質量部未満であると、分散安定性が悪く、皮膜外観を悪化させてしまい、70質量部を超えると、硬度が低下する。(3)成分の配合量が5質量部未満であると、密着性が悪くなり、30質量部を超えると、硬度が低下する。
【0027】
(4)脂肪族アミン系イオン性化合物
本発明において、(4)R1234+-(R1、R2、R3、R4はCH3、C25、C24OCH3、C613、C817から選択される基で、それぞれの基は同一であっても異なってもよい。XはN(SO2CF32、BF4、PF6から選択される基である。)で表される脂肪族アミン系イオン性化合物は、相溶性及び溶解性が良好な帯電防止剤として使用される。また、分散性改善の効果があり、添加することで保存時の凝集や沈降が抑制でき、更に光照射の硬化の際に、塗工ラインの搬送速度に関係なく、皮膜が白化するのを防ぐことができる。これらの中でも、常温(通常5〜40℃、特に25℃)で液体である脂肪族アミン系イオン性化合物が特に好ましい。
【0028】
ここで、R1〜R4は、CH3、C25、C24OCH3、C613、C817から選択される基であり、それぞれの基は同一であっても異なってもよい。また、XはN(SO2CF32、BF4、PF6から選択される基である。R1234+-で表される脂肪族アミン系イオン性化合物として、具体的には、下記のもの等が挙げられる。
【0029】
(C254+BF4-、(CH3)(C253+BF4-、(CH3)(C252(C24OCH3)N+BF4-、(CH33(C613)N+BF4-、(CH3)(C8173+BF4-、(C254+PF6-、(CH3)(C253+PF6-、(CH3)(C252(C24OCH3)N+PF6-、(CH33(C613)N+PF6-、(CH3)(C8173+PF6-、(C254+(CF3SO22-、(CH3)(C253+(CF3SO22-、(CH3)(C252(C24OCH3)N+(CF3SO22-、(CH33(C613)N+(CF3SO22-、(CH3)(C8173+(CF3SO22-
【0030】
(4)成分の配合量は、(1)成分と(2)成分と(3)成分の合計100質量部に対して0.05〜3質量部であり、好ましくは0.1〜2.5質量部、特に好ましくは0.1〜2質量部である。配合量が少なすぎると、帯電防止効果が得られなくなり、更には安定性も悪くなる。配合量が多すぎると、硬度が低下する。
【0031】
(5)リチウム系イオン性化合物
本発明において、(5)Li+-(YはClO4、SO2CF3、SO225、N(SO2CF32、N(SO2252、BF4、PF6から選択される基である。)で表されるリチウム系イオン性化合物は、脂肪族アミン系イオン性化合物同様に相溶性及び溶解性が良好な帯電防止剤として使用される。また、分散性改善の効果があり、添加することで保存時の凝集や沈降が抑制でき、更に光照射の硬化の際に、塗工ラインの搬送速度に関係なく、皮膜が白化するのを防ぐことができる。
【0032】
Li+-で表されるリチウム系イオン性化合物として、具体的には、下記のもの等が挙げられる。
Li+ClO4-、Li+SO2CF3-、Li+SO225-、Li+N(SO2CF32-、Li+N(SO2252-、Li+BF4-、Li+PF6-
【0033】
(5)成分の配合量は、(1)成分と(2)成分と(3)成分の合計100質量部に対して0.1〜7質量部であり、好ましくは0.2〜5質量部、特に好ましくは0.5〜4質量部である。配合量が少なすぎると、帯電防止効果が得られなくなり、また紫外線照射時に皮膜が白化する場合があり、更には安定性も悪くなる。配合量が多すぎると、硬度が低下する。
【0034】
(4),(5)成分のイオン性化合物を併用して用いた場合、それぞれを単独で使用した場合に比べて、無溶剤にもかかわらず皮膜成形性に優れ、表面平滑性、透明性に優れた皮膜を得ることができ、密着性に優れることが確認された。また、表面抵抗値を低くすることができ、帯電防止性に優れた皮膜を得ることができる。
【0035】
(6)ラジカル系光重合開始剤
本発明の組成物には、(6)ラジカル系光重合開始剤が含有される。ラジカル系光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾイン系、アシルフォスフィンオキサイド系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系等の通常のものから選択することができる。具体的には、ベンゾフェノン、ベンジル、ミヒラーズケトン、チオキサントン誘導体、ベンゾインエチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、オキシフェニル酢酸2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物、アシルフォスフィンオキサイド誘導体、2−メチル−1−{4−(メチルチオ)フェニル}−2−モルフォリノプロパン−1−オン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルファイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィン等が挙げられる。
【0036】
これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−{4−(メチルチオ)フェニル}−2−モルフォリノプロパン−1−オン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルファイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンが、表面硬化性が良好である点から好ましい。
【0037】
ラジカル系光重合開始剤の配合量は、(1)成分と(2)成分と(3)成分の合計100質量部に対して1〜8質量部であり、好ましくは2〜6質量部である。配合量が少なすぎると硬化性が悪化し、多すぎると密着性が低下する。
【0038】
(7)デンドリック高分子
本発明の組成物には、(7)デンドリック高分子が含有される。デンドリック高分子とは、多分岐高分子、樹枝状高分子ともいわれる。従来の高分子は一般的に紐状の直鎖状ポリマーであるのに対し、これらのデンドリック高分子は分岐を積極的に導入していることから三次元球形のモルフォロジーをしている。この三次元球形のモルフォロジーにより、形成される硬化皮膜に柔軟性を与えることで、基材への密着性が良化するとともに、硬度の優れた硬化皮膜となる。
【0039】
デンドリック高分子は、デンドリマーとハイパーブランチポリマーに分けられる。下記にデンドリマーの模式(模式1)とハイパーブランチポリマーの模式(模式2)を示す。
【0040】
【化1】

【0041】
模式1、模式2に示すように、デンドリマー及びハイパーブランチポリマーはともに中心部より三次元放射状に分枝が広がり、更にその末端から分枝を有する部位を含む化合物である。模式2に示すハイパーブランチポリマーと模式1に示すデンドリマーは樹枝分岐の規則性で分類され、全ての方向に均一に枝が成長している規則性の高いデンドリマーに対し、その規則性の低いものをハイパーブランチポリマーとされる。
【0042】
中でも、本発明で使用されるデンドリック高分子にあってはハイパーブランチポリマーを好適に用いることができる。ハイパーブランチポリマーは、保護−脱保護を繰り返し行うことで合成されるデンドリマーと比べ、一般的にモノマーの一段階重合によって合成されるので安価に入手可能である点でデンドリマーより適する。
【0043】
デンドリック高分子としては、具体的には、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ポリエーテルスルホン系、ポリカーボネート系、ポリアルキルアミン系、ポリカルボシラン系、ポリカルボシロキサン系等、種々のタイプが挙げられる。
【0044】
本発明の光硬化樹脂組成物に含まれるデンドリック高分子は、分岐鎖末端の少なくとも一部に、重合性基を1つ以上有していることが好ましい。重合性基としては、本発明で使用される(2)(メタ)アクリル基を3個以上含有する化合物あるいは(3)(メタ)アクリル基を1個又は2個含有する化合物とラジカル重合可能な不飽和二重結合を有する基が好ましい。また、重合性基の基数が4〜50個を有するものが好ましく、基数が多いほど硬化皮膜に硬さを付与できる。
【0045】
デンドリック高分子のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の数平均での分子量は、1,000〜10,000の範囲内であることが好ましい。更には、デンドリック高分子の数平均での分子量は、1,000〜3,000の範囲内であることが好ましい。分子量が1,000未満であると硬化皮膜の湿熱密着性が不十分となり、10,000を超えると硬化皮膜の硬度が不十分となる。
【0046】
このようなデンドリック高分子としては市販品を用いることができる。例えば、ポリエステル系のものとして、CN2300,2301,2302,2303,2304(以上、サートマー社製)、V#1000,V#1020(以上、大阪有機化学工業社製)が挙げられる。
【0047】
なお、デンドリック高分子の配合量は、(1)成分と(2)成分と(3)成分の合計100質量部に対して1〜50質量部であり、好ましくは5〜20質量部である。1質量部未満では十分な湿熱密着性を付与することができず、50質量部を超えると、硬化皮膜の硬度が不十分になるため好ましくない。
【0048】
このようにデンドリック高分子として、ハイパーブランチポリマーを用い、その分子量あるいは添加量が上記条件を満たすことにより、更に、湿熱密着性と硬さのバランスが保たれた硬化皮膜を形成することができる。
【0049】
本発明の光硬化性樹脂組成物には、更に必要に応じて、(4),(5)成分以外のイオン性化合物、シランカップリング剤、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、レベリング剤、表面張力低下剤等を本発明の目的を損なわない範囲で含んでいても差し支えないが、溶剤は実質的に含有しないことが好ましい。ここで、実質的に含有しないとは、組成物中3質量%以下、特に1質量%以下の割合で含有することは許容するということを意味する。
【0050】
本発明の組成物は、上記各成分を常法に準じて均一に混合することにより得られるが、本発明においては、上記(1)成分を(2)成分あるいは(3)成分と予め混合し、これと、残りの成分とを混合することが望ましい。
【0051】
更に、これらの組成物は25℃における粘度が300mPa・s以下になるように調整することが好ましい。粘度が高すぎると、塗布作業性が悪化し、スジムラ等が発生しやすくなる。なお、本組成物の25℃における粘度は10mPa・s以上であることが好ましい。
【0052】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、表面に耐摩耗性、帯電防止性の付与が必要とされる物品、具体的には、ポリカーボネートを50質量%以上、特に70〜100質量%含有する樹脂組成物により成型された物品である、再生専用光ディスク、光記録ディスク、光磁気記録ディスク等の光情報媒体の表面、より詳しくは、記録あるいは再生ビーム入射側表面や、光学レンズ、光学フィルター、反射防止膜、反射防止膜下層膜、及び液晶ディスプレー、CRTディスプレー、プラズマディスプレー、ELディスプレー等の各種表示素子等の表面に塗布し、硬化皮膜とすることにより、これらの表面の耐擦傷性、防汚性を付与することができ、この硬化皮膜を有する物品は、耐擦傷性、耐摩耗性及び帯電防止性に優れるものとなり得る。
【0053】
具体的には、濁度計(NDH2000、日本電色工業製)により測定した全光線透過率が85%以上、及びHazeが2%以下、ASTM D1044によるテーバー摩耗試験における荷重500g,100回転時におけるHazeと摩耗試験前のHazeとの差が8%以下、超絶縁計(東亜電波工業(株)製SM−8210)により測定した表面抵抗値が1×1015Ω以下の特性を得るものとなり得る。
【0054】
上記光硬化性樹脂組成物の皮膜を形成する方法としては、ロールコート法、スピンコート法、バーコート法、マイクログラビア法等により皮膜を作製することができ、これらの中でもマイクログラビア法により塗工し、紫外線照射により硬化して皮膜を作製することが好ましい。形成された皮膜の膜厚は、0.1〜50μm、特に0.5〜30μmの範囲にあることが好ましい。膜厚が薄すぎると耐摩耗性が低下する場合があり、また厚すぎると耐クラック性が低下する場合がある。
【0055】
光硬化性樹脂組成物を硬化させるための光源としては、通常、200〜450nmの範囲の波長の光を含む光源、例えば高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、キセノン灯、カーボンアーク灯等を使用することができる。照射量は特に制限されないが、10〜5,000mJ/cm2、特に20〜2,000mJ/cm2であることが好ましい。光照射機による硬化はバッチ式とコンベア式があるが、生産性の高いコンベア式が好ましい。硬化時間は、通常0.01〜60秒、好ましくは0.1〜10秒である。その際の塗工ラインの搬送速度は特に制限はないが0.1〜40m/min、特に1〜20m/minの範囲が好ましい。搬送速度が遅いと生産性が悪く、速いと搬送時に傷がつきやすいという問題がある。
【0056】
上記物品を成型する樹脂組成物に用いるポリカーボネートは、好ましくは、二価フェノールとカーボネート前駆体を溶液法又は溶融法で反応させて製造される芳香族ポリカーボネート樹脂であり、二価フェノールの代表的な例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン及び2,2’−メチル−4,4’−ビフェニルジオール等が挙げられる。好ましい二価フェノールは、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン系であり、特にビスフェノールAが好ましい。
【0057】
カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カーボネートエステル、ハロホルメート等が挙げられ、具体的には、ホスゲン、ジフェニルカーボネート、二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
【0058】
ポリカーボネート樹脂を製造するに当り、上記二価フェノールは単独で又は2種以上併用することができ、また必要に応じて分子量調節剤、分岐剤、触媒等を用いることができる。
【0059】
ポリカーボネート樹脂の分子量は、粘度平均分子量で表して1.0×104〜10.0×104であり、好ましくは1.5×104〜4.5×104であり、より好ましくは1.8×104〜3.0×104である。本発明でいう粘度平均分子量は、塩化メチレン100mLにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-40.83
c=0.7
【0060】
また、物品を成型する樹脂組成物には、必要に応じて添加剤、例えば亜燐酸エステル、燐酸エステル、ホスホン酸エステル等の熱安定剤(0.001〜0.1質量%)、トリアゾール系、アセトフェノン系、サリチル酸エステル系等の紫外線吸収剤(0.1〜0.7質量%)、テトラブロムビスフェノールA、テトラブロムビスフェノールAの低分子量ポリカーボネート、デカブロモジフェニルエーテル等の難燃剤(3〜15質量%)、着色剤、蛍光増白剤等を配合してもよい。
【実施例】
【0061】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例において、粘度は回転粘度計により測定した値である。
【0062】
[実施例1]
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン処理シリカが分散されたエトキシレートペンタエリスリトールテトラアクリレート(以下、S−PETTA;シリカ濃度50質量%、シリカ粒子径30nm)80質量部、ヘキサンジオールジアクリレート(以下、HDODA、PII値5.5)20質量部、(CH3)(C8173+(CF3SO22-(以下、MTOTFSI)0.2質量部、Li+(CF3SO22-(以下、LiTFSI)1.8質量部、ダロキュアー1173(以下、D1173;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ラジカル系光重合開始剤、チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名)3質量部、ハイパーブランチポリマー CN−2301(以下、CN−2301と称することがある。ポリエステル系、サートマー社製、商品名)を10質量部混合し、25℃における粘度が208mPa・sである光硬化性樹脂組成物を得た。この光硬化性樹脂組成物を芳香族ポリカーボネートフィルム(ビスフェノールAとホスゲンとから製造された粘度平均分子量2.3×104の芳香族ポリカーボネートフィルム;幅140mm、厚さ92μm)に、マイクログラビアコーター法(康井精機社製 番手200)で厚さ5μmとなるように塗布し、次いで160W高圧水銀灯を持つコンベア式紫外線照射装置(アイグラフィクス社製)を用いて硬化皮膜を作製した。その際の条件は、搬送速度2m/minで積算照射量は1,000mJ/cm2であった。得られた透明皮膜を用いて、下記に示す評価を行った。これらの結果を表1に示す。
【0063】
保存安定性:
40℃,14日後に、沈降物があるかないかを目視判定し、下記基準で評価した。
○:沈降物なし
×:沈降物あり
【0064】
皮膜透明性:
硬化した膜を、JIS K7105に準拠して、濁度計(NDH2000、日本電色工業製)を用いて測定し、全光線透過率、Hazeを評価した。白化の基準として、実用上問題のない全光線透過率85%以上、Haze2%以下を合格とした。
【0065】
耐擦傷性、耐摩耗性:
ASTM D1044に準拠し、テーバー摩耗試験機(摩耗輪CS−10F使用)を用いて硬化皮膜の摩耗試験(500g荷重、100回転)を行い、摩耗試験前後の硬化皮膜のHazeを、濁度計(NDH2000、日本電色工業製)を用いて測定し、摩耗試験後のHaze−摩耗試験前のHazeをΔHazeとした(ΔHazeは8%以下の場合に耐擦傷性、耐摩耗性が良好である)。
【0066】
表面抵抗値:
超絶縁計(東亜電波工業(株)製SM−8210)を用い、25℃、50%RHの雰囲気下で測定した。
【0067】
湿熱密着性:
80℃,90%RHの雰囲気下に500時間放置してから、常温に24時間放置後、JIS K5400に準拠して塗工面に10×10にマス目を作製し、セロハンテープを貼り、上方に引っ張り剥離状況を確認した。
○:異常なし
×:マス目の1/3以上剥離した箇所が1マス以上あり
【0068】
テーバー摩耗試験では、ΔHazeは3%と耐摩耗性も高かった。また、表面抵抗値は2×1012Ωと低かった。
【0069】
[実施例2〜10及び比較例1〜13]
同様に、下記表1,2に示すように配合を代えて膜を得、評価を行った。これらの結果を表1,2に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
S−PETTA:γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン処理シリカが分散されたエトキシレートペンタエリスリトールテトラアクリレート、シリカ濃度50質量%、シリカ粒子径30nm
S−PETTA−2:γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン処理シリカが分散されたエトキシレートペンタエリスリトールテトラアクリレート、シリカ濃度50質量%、シリカ粒子径120nm
HDODA:ヘキサンジオールジアクリレート
MTOTFSI:(CH3)(C8173+(CF3SO22-
LiTFSI:Li+(CF3SO22-
D1173:ダロキュアー1173、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名
CN−2301:ハイパーブランチポリマー(サートマー社製/数平均分子量1,000〜2,000)
【0072】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)平均粒子径が80nm以下の無機酸化物微粒子、
(2)(メタ)アクリル基を3個以上含有する化合物、
(3)(メタ)アクリル基を1個又は2個含有する化合物、
(4)R1234+-(R1、R2、R3、R4はCH3、C25、C24OCH3、C613、C817から選択される基で、それぞれの基は同一であっても異なってもよい。XはN(SO2CF32、BF4、PF6から選択される基である。)で表されるイオン性化合物、
(5)Li+-(YはClO4、SO2CF3、SO225、N(SO2CF32、N(SO2252、BF4、PF6から選択される基である。)で表されるイオン性化合物、
(6)ラジカル系光重合開始剤、
(7)デンドリック高分子
を含有してなり、(1),(2),(3)成分の合計100質量部中、(1)成分が25〜70質量部、(2)成分が20〜70質量部、(3)成分が5〜30質量部であり、(1),(2),(3)成分の合計100質量部に対して、(4)成分が0.05〜3質量部、(5)成分が0.1〜7質量部、(6)成分が1〜8質量部、(7)成分が1〜50質量部である光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
(1)成分の平均粒子径が80nm以下の無機酸化物微粒子が、シリカ微粒子である請求項1記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
シリカ微粒子が、(メタ)アクリル基を含有するシランカップリング剤で処理されたものである請求項2記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
実質的に溶剤を含有せず、25℃における粘度が300mPa・s以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
(1)成分を(2)成分及び/又は(3)成分に予め分散した混合物に、(4),(5),(6)及び(7)成分を混合してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の光硬化性樹脂組成物の硬化皮膜が形成されてなり、全光線透過率が85%以上、Hazeが2%以下、ASTM D1044によるテーバー摩耗試験における荷重500g,100回転時におけるHazeと摩耗試験前のHazeとの差が8%以下、表面抵抗値が1×1015Ω以下であることを特徴とする物品。
【請求項7】
硬化皮膜が形成される物品が、ポリカーボネートを50質量%以上含有する樹脂組成物により成型されたものである請求項6記載の物品。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項記載の光硬化性樹脂組成物をマイクログラビア法で被処理物品上に塗工し、紫外線照射で硬化させることにより上記被処理物品上に硬化皮膜を形成させてなることを特徴とする物品の製造方法。

【公開番号】特開2012−184348(P2012−184348A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49064(P2011−49064)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000215888)帝人化成株式会社 (504)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】