説明

光硬化性樹脂組成物及びそれを用いた光学部材

【課題】メタロセン錯体を用いたり、注型や塗布の前に光照射工程を実施したりすることなく、光を照射して硬化する際に光が直接当たらない部分も硬化することが可能であり、かつ当該硬化により透明性の高い硬化物を得ることが可能な光硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)重合性化合物、(B)微粒子、及び(C)光重合開始剤を含む光硬化性樹脂組成物であって、前記(B)微粒子は、前記光硬化性樹脂組成物から前記(B)微粒子を除いた組成を有する微粒子非含有組成物との屈折率差の絶対値を|Δn|とし、前記微粒子非含有組成物を光照射してなる硬化物との屈折率差の絶対値を|Δn’|とした場合、下記関係式|Δn|>|Δn’|、及び|Δn’|<0.01を満たすものである光硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を照射して硬化する際に光が直接当たらない部分も硬化することが可能であり、かつ当該硬化により透明性の高い硬化物を得ることが可能な光硬化性樹脂組成物に関する。また、本発明は、この光硬化性樹脂組成物の硬化物を用いた、光学フィルム、透明基板、レンズ、接着剤、粘着剤、充填剤、光導波路、太陽電池用部材、発光ダイオード(LED)、フォトトランジスタ、フォトダイオード、固体撮像素子等の光半導体素子、画像表示用装置、照明装置等の光学部材に関する。
【背景技術】
【0002】
光硬化性樹脂組成物は、一般的に光(紫外線等)を照射することにより、重合開始剤から活性ラジカル又は酸などが発生し、重合性化合物が重合する。しかし、陰影部や狭隙部などの光が到達しない暗部は硬化しない。したがって、光硬化性樹脂組成物を例えば接着剤として用いる場合には、被着体が透明なものに制限されるという問題がある。また、光硬化性樹脂組成物を複雑な形状の成形型に注型し、光照射して注型品を得る場合、注型品の一部が十分に硬化されないことがあるという問題がある。
これらの問題を解決するために、暗反応硬化性樹脂組成物を用いることが行われている。なお、ここで「暗反応硬化性」とは、一度光を照射して組成物の反応硬化性を惹起すると、光照射を停止しても重合反応が維持する性質をいう。
【0003】
例えば、特許文献1には、エポキシ樹脂及びカチオン重合触媒からなる紫外線硬化型樹脂組成物に対して、予めガラス製の細管内に収容した状態で紫外線を万遍なく照射した後、注型又は塗布することが記載されている。
また、特許文献2には、不飽和二重結合を有する重合性化合物、スルフィミド化合物、アミン化合物、及びメタロセン錯体を含む暗反応硬化組成物に対して、予め光照射した後、被着体に張り合わせる等して嫌気状態にすることにより、硬化反応を進行させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平4−26333号公報
【特許文献2】特開平11−50014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている暗反応性樹脂組成物は、ガラス製の細管内に収容した状態で万遍なく紫外線を照射している途中で硬化が速やかに進行してしまうと、硬化物が細管から流出できなくなることから、硬化反応を遅くする必要が生じ、硬化に長時間を要するという問題がある。
また、特許文献2に記載されている暗反応性樹脂組成物は、暗反応硬化性を付与するためにメタロセン錯体等の多くの成分を用いる必要があり、また嫌気状態にしないと硬化反応が十分に進行しないという問題もある。
更に、特許文献1,2の樹脂組成物は、注型や塗布の前工程として、予めガラス製の細管内に収容する等して樹脂組成物に万遍なく光照射する工程を実施する必要があり、煩雑である。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、メタロセン錯体を用いたり、注型や塗布の前に光照射工程を実施したりすることなく、光を照射して硬化する際に光が直接当たらない部分も硬化することが可能であり、かつ当該硬化により透明性の高い硬化物を得ることが可能な光硬化性樹脂組成物を提供することを目的とするものである。また、本発明は、この光硬化性樹脂組成物を用いた光学部材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、光硬化性樹脂組成物中に微粒子を含ませ、かつこの微粒子として、光硬化性樹脂組成物の当該微粒子以外の部分とは屈折率の異なるものを用いることにより、光硬化時に、照射光が当該微粒子により散乱されて光硬化性樹脂組成物中を陰影部や狭隙部等にまで伝播し、陰影部や狭隙部等まで良好に硬化できることを見出した。
また、本発明者らは、上記光硬化性樹脂組成物の微粒子以外の部分の屈折率が硬化の前後で変化することを利用することにより、光硬化性樹脂組成物の上記陰影部や狭隙部等までの硬化と、光硬化後の硬化物における透明性の確保との両立を実現できることを見出した。すなわち、微粒子として、上記光硬化性樹脂組成物の微粒子以外の部分との屈折率差が大きく、かつ当該部分の硬化物との屈折率差が小さいものを選択する。これにより、光硬化時においては、光硬化性樹脂組成物中の微粒子以外の部分と微粒子との屈折率差が大きいため、光硬化性樹脂組成物内に照射された光が微粒子により十分に散乱されて陰影部や狭隙部等にまで伝播し、陰影部や狭隙部等が良好に硬化される。また、光硬化後の硬化物においては、微粒子とその他の部分との屈折率差が小さいため、微粒子による光の散乱が抑制され、硬化物の透明性が確保される。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0008】
すなわち、本発明は、(A)重合性化合物、(B)微粒子、及び(C)光重合開始剤を含む光硬化性樹脂組成物であって、前記(B)微粒子は、前記光硬化性樹脂組成物から前記微粒子(B)を除いた組成を有する微粒子非含有組成物との屈折率差の絶対値を|Δn|とし、前記微粒子非含有組成物を光照射してなる硬化物との屈折率差の絶対値を|Δn’|とした場合、下記関係式|Δn|>|Δn’|、及び|Δn’|<0.01を満たすものである光硬化性樹脂組成物に関する。
前記(B)微粒子は、前記微粒子非含有組成物の未硬化物との屈折率差が、絶対値として0.01以上であることが好ましい。
これにより、光が散乱して、光が直接照射されない部分にも光が到達して硬化反応が進行し易くなる。
また、前記(B)微粒子は、(メタ)アクリル樹脂系微粒子であることが好ましい。これにより、光硬化性樹脂組成物の(B)微粒子を含まないものの光硬化後の屈折率と、(B)微粒子の屈折率との差を絶対値として0.01未満にすることが容易になる。
また本発明は、前記いずれかに記載の光硬化性樹脂組成物を光硬化してなる光学部材に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、メタロセン錯体を用いたり、注型や塗布の前に光照射工程を実施したりすることなく、光を照射して硬化する際に光が直接当たらない部分も硬化することが可能であり、かつ当該硬化により透明性の高い硬化物を得ることが可能な光硬化性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、この光硬化性樹脂組成物を用いた光学部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】液晶表示装置の一実施形態を模式的に示す側面断面図である。
【図2】別の液晶表示装置の別の実施形態を模式的に示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本明細書における「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味する。同様に「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及びそれに対応する「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリロイル」とは「アクリロイル」及びそれに対応する「メタクリロイル」を意味する。
【0012】
[光硬化性樹脂組成物]
本発明の光硬化性樹脂組成物は、(A)重合性化合物、(B)微粒子、及び(C)光重合開始剤を含む光硬化性樹脂組成物であって、前記(B)微粒子は、前記光硬化性樹脂組成物から前記微粒子(B)を除いた組成を有する微粒子非含有組成物との屈折率差の絶対値を|Δn|とし、前記微粒子非含有組成物を光照射してなる硬化物との屈折率差の絶対値を|Δn’|とすると、|Δn|>|Δn’|、及び|Δn’|<0.01との式を満たすものである。
【0013】
<(A)重合性化合物>
(A)重合性化合物としては、特に制限はなく、好ましくは、不飽和結合を分子内に1個又は2個以上有するものが用いられる。特に、アクリル酸又はメタクリル酸、それらの誘導体(以下、(メタ)アクリル酸系誘導体という場合もある)等が好ましいものとして挙げられる。具体的には、エチレン性不飽和結合を分子内に1個有する光重合性化合物としては、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソノニルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等のアルキルメタクリレート、メチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート、n−オクチルアクリレート等のアルキルアクリレート、ベンジルメタクリレート等のアラルキルメタクリレート、ベンジルアクリレート等のアラルキルアクリレート、ブトキシエチルメタクリレート等のアルコキシアルキルメタクリレート、ブトキシエチルアクリレート等のアルコキシアルキルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等のアミノアルキルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート等のアミノアルキルアクリレート、ジエチレングリコールエチルエーテルのメタクリル酸エステル、トリエチレングリコールブチルエーテルのメタクリル酸エステル、ジプロピレングリコールメチルエーテルのメタクリル酸エステル等のポリアルキレングリコールアルキルエーテルのメタクリル酸エステル、ジエチレングリコールエチルエーテルのアクリル酸エステル、トリエチレングリコールブチルエーテルのアクリル酸エステル、ジプロピレングリコールメチルエーテルのアクリル酸エステル等のポリアルキレングリコールアルキルエーテルのアクリル酸エステル、ヘキサエチレングリコールフェニルエーテルのメタクリル酸エステル等のポリアルキレングリコールアリールエーテルのメタクリル酸エステル、ヘキサエチレングリコールフェニルエーテルのアクリル酸エステル等のポリアルキレングリコールアリールエーテルのアクリル酸エステル、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、メトキシ化シクロデカトリエンメタクリレート、イソボルニルアクリレート、メトキシ化シクロデカトリエンアクリレート等の脂環式基を有するメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステル、ヘプタデカフロロデシルメタクリレート等のフッ素化アルキルメタクリレート、ヘプタデカフロロデシルアクリレート等のフッ素化アルキルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、グリセロールモノメタクリレート、グリセロールモノアクリレート等の水酸基を有するメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート等のグリシジル基を有するメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上を併用することができる。
これらのエチレン性不飽和結合を分子内に1個有する重合性化合物は、1種で又は2種以上併用して用いることができる。
【0014】
上記のエチレン性不飽和結合を分子内に1個有する光重合性化合物と共に又は単独で、エチレン性不飽和結合を分子内に2個以上有する光重合性化合物を使用することができる。
このような重合性化合物としては、ビスフェノールAジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、アクリルメタクリレート、ウレタンメタクリレート、エポキシメタクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、グリセロールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アクリルアクリレート、ウレタンアクリレート及びエポキシアクリレート等が挙げられる。
エチレン性不飽和結合を分子内に2個以上有する重合性化合物としては、さらに、一般式(a)
【0015】
【化1】

【0016】
(ただし、式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、エチレン基又はプロピレン基を示し、m及びnはそれぞれ独立に、1〜20の整数を示し、m及びnがそれぞれ2以上の場合、複数のR1−Oは同一でも異なっていてもよく、複数のR2−Oは同一でも異なっていてもよい。)で示されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のジアクリレート、一般式(b)
【0017】
【化2】

【0018】
(ただし、式中、a及びbはそれぞれ独立に、1〜10の整数を示す)で示されるビスフェノールAのプロピレングリコール付加物とアクリル酸の付加エステル化物、一般式(c)
【0019】
【化3】

【0020】
(ただし、式中、R3及びR4は、それぞれ独立にエチレン基又はプロピレン基を示し、c及びdはそれぞれ独立に、1〜20の整数を示し、c及びdがそれぞれ2以上の場合、複数のR3−Oは同一でも異なっていてもよく、複数のR4−Oは同一でも異なっていてもよい。)で示されるリン酸のアルキレンオキシド付加物のジアクリレート、一般式(d)
【0021】
【化4】

【0022】
(ただし、式中、e及びfはそれぞれ独立に、1〜10の整数を示す)で示されるフタル酸のエピクロルヒドリン変性物とアクリル酸の付加エステル化物、一般式(e)
【0023】
【化5】

【0024】
(ただし、式中、g及びhはそれぞれ独立に、1〜20の整数を示す)で示される1,6−ヘキサンジオールのプロピレングリコール付加物とアクリル酸の付加エステル化物(アクリル基を一分子中に2個有するもの)、一般式(f)
【0025】
【化6】

【0026】
(ただし、式中、R5はエチレン基又はプロピレン基を示し、3個のiはそれぞれ独立に、
1〜20の整数を示し、iが2以上の場合、複数のR5−Oは同一でも異なっていてもよい。)で示されるリン酸のアルキンオキシド付加物のトリアクリレート、一般式(g)
【0027】
【化7】

【0028】
(ただし、式中、R6、R7及びR8は、それぞれ独立にエチレン基又はプロピレン基を示し、j、k及びpはそれぞれ独立に、1〜20の整数を示し、j、k及びpがそれぞれ2以上の場合、複数のR6−O、R7−O及びR8−Oはそれぞれにおいて同一でも異なっていてもよい。)で示されるトリメチロールプロパンのアルキレンオキシド付加物のトリアクリレートなどが挙げられる。これらの光重合性化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
上記の(メタ)アクリル酸系誘導体以外に、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル、エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和結合を分子内に1個有するモノマーを使用することができる。また、上記の(メタ)アクリル酸系誘導体以外のモノマーであって、エチレン性不飽和結合を分子内に2個以上有するモノマー(ジビニルベンゼン等)を使用することもできる。
本発明において(A)重合性化合物の含有量は、光硬化性樹脂組成物の総量に対して、30〜99質量%が好ましく、40〜99質量%がより好ましく、50〜95質量%が特に好ましい。含有量が30質量%以上であると樹脂組成物の硬化物が良好な硬さを有し、99質量%以下であると、遮光部分の硬化性が良好となる。
【0030】
<(B)微粒子>
(B)微粒子は、光硬化性樹脂組成物から微粒子(B)を除いた組成を有する微粒子非含有組成物との屈折率差の絶対値を|Δn|とし、当該微粒子非含有組成物を光照射してなる硬化物との屈折率差の絶対値を|Δn’|とした場合、以下の関係式|Δn|>|Δn’|、及び|Δn’|<0.01を満たすことが必要である。
このように、|Δn’|<0.01であると、光硬化性樹脂組成物の硬化物中における微粒子(B)とその他の部分との屈折率差が小さいため、微粒子(B)による光散乱が抑制され、透明性が高くなる。
また、|Δn|>|Δn’|であると、陰影部や狭隙部等までの硬化を実現できる。すなわち、|Δn|が大きく、微粒子とその他の部分との屈折率差が大きいため、光硬化時においては、光硬化性樹脂組成物内に照射された光が微粒子により十分に散乱されて陰影部や狭隙部等にまで伝播し、陰影部や狭隙部等が良好に硬化される。
上記観点からは、|Δn’|は、好ましくは0.009以下であり、より好ましくは0.008以下であり、更に好ましくは0.001以下である。
また、上記観点からは、|Δn|は、好ましくは0.01以上であり、より好ましくは0.02以上であり、更に好ましくは0.04以上である。
【0031】
本発明において(B)の微粒子は、光を反射すれば良いためその形状については特に制限されないが、例えば球形、扁平、金平糖様、雪だるま状、繊維状、円柱、円錐等が挙げられる。これらは、一種または二種以上を併用でしても良い。またその材質は、使用される用途に適した材料を適宜使用して良く、例えば、有機高分子化合物、無機物、有機物等が挙げられる。
本発明において、当該微粒子が有機高分子化合物の場合、懸濁重合、乳化重合、パール重合等の公知の方法で、様々な形状、大きさの微粒子を得ることができる。
上記(B)微粒子は、(メタ)アクリル樹脂系微粒子が好ましい。(メタ)アクリル樹脂系微粒子は、公知の懸濁重合等で合成することができる。
一般に(メタ)アクリル樹脂系微粒子を得るための懸濁重合は、分散剤を含む水系分散媒に、重合開始剤として有機過酸化物を溶解した(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸系誘導体を分散させて行われる。
前記(メタ)アクリル酸系誘導体としては、(A)重合性化合物で例示したものが挙げられるが、屈折率の観点からは、メチルメタクリレートに由来する構造単位を有することが好ましい。
【0032】
本発明において(B)微粒子の平均粒径は、10nm〜500μmが好ましく、30nm〜100μmがより好ましく、50nm〜30μmが特に好ましい。平均粒径が10nm以上であると、光の散乱が透過よりも優先し、陰影部等の硬化が十分進行する。また、500μm以下の場合は、微粒子の物性が硬化物全体の物性に影響を与えることが防止又は抑制される。なお、本発明において、微粒子の大きさが10nm以下であっても組成物中で凝集し、凝集物として10nm以上の大きさになっていれば、陰影部等の硬化反応は十分進行する。
本発明において(B)微粒子の含有量は、光硬化性樹脂組成物の総量に対して、1〜75質量%が好ましく、10〜50質量%が特に好ましい。含有量が1質量%以上であると微粒子を含有させた硬化が発揮され、一方75質量%以下であると、光硬化性樹脂組成物の粘度が上昇することが防止又は抑制され、取り扱い性に優れる。また、硬化物の特性が大きく変わる可能性がある。
【0033】
<(C)光重合開始剤>
(C)光重合開始剤としては、特に制限はなく、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤及びアニオン重合開始剤を用いることができ、例えば、ベンゾフェノン系、アントラキノン系、ベンゾイン系、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩、オニウム塩等の公知の材料を使用することができる。これらは、特に紫外線に感度を有する。
(C)光重合開始剤の中のラジカル重合開始剤の具体例としては、ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2−エチルアントラキノン、t−ブチルアントラキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2,3−ジクロロアントラキノン、3−クロル−2−メチルアントラキノン、1,2−ベンゾアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等の芳香族ケトン化合物、ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンジル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、β−(アクリジン−9−イル)アクリル酸のエステル化合物、9−フェニルアクリジン、9−ピリジルアクリジン、1,7−ジアクリジノヘプタン等のアクリジン化合物、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)5−フェニルイミダゾール二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メチルメルカプトフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モリホリノフェニル)−1−ブタノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)が挙げられる。
【0034】
また、特に、光硬化性樹脂組成物を着色させず、透明性を向上させるラジカル重合開始剤としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等のα−ヒドロキシアルキルフェノン系化合物、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド系化合物、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)及びこれらを組み合わせたものが好ましい。
カチオン重合開始剤は、光照射によりルイス酸を発生するため、金属の存在下で使用すると、金属部分が腐食することがある。よって、金属配線を有する被着体を接着する場合のように、金属の存在下で光硬化性樹脂組成物を使用するときには、光重合開始剤としてラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。
【0035】
重合開始剤として、上記光重合開始剤のみを用いる場合においては、この光重合開始剤の含有量は、光硬化性樹脂組成物の総量に対して、0.01〜5質量%が好ましく、0.05〜4質量%がより好ましく、0.1〜3質量%が特に好ましい
【0036】
<熱重合開始剤>
なお、上記光重合開始剤と共に、熱重合開始剤が用いられてもよい。これにより、陰影部や狭隙部等を好適に硬化することができる。
熱重合開始剤の具体例としては、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシドの様な有機過酸化物が挙げられる。また、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニル)。2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]のようなアゾ系化合物が挙げられる。
重合開始剤として、上記光重合開始剤の他に熱重合開始剤をも用いる場合には、重合開始剤の総含有量は、光硬化性樹脂組成物の総量に対して、0.01〜5質量%が好ましく、0.05〜4質量%がより好ましく、0.1〜3質量%が特に好ましい。
【0037】
<その他の成分>
本発明の光硬化性樹脂組成物は、必要に応じて様々な添加剤を含有しても良く、例えば、シランカップリング剤等の密着性向上剤、ヒンダードアミン系の光安定剤やフェノール系やリン系の酸化防止剤、硬化促進剤、ポリマー、オリゴマー、チオール化合物、染料、充填剤、顔料、チキソトロピー付与剤、可塑剤、難燃剤、離型剤、界面活性剤、滑剤、帯電防止剤、各種フィラー、重金属不活性化剤などの添加剤を加えることができる。これらは、一種または二種以上を併用しても良い。
【0038】
前記チオール化合物としては、例えば、トリメチロールプロパン−トリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコール−ビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチリルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)等が挙げられる。チオール化合物は、ラジカルに対する連鎖移動反応を促進する効果を有する。
【0039】
また、本発明の光硬化性樹脂組成物においては、耐湿熱信頼性、及び硬化物中の気泡発生を抑制する観点から、有機溶媒(溶剤)は実質的に含まない方が好ましい。「実質的に」とは、本発明の光硬化性樹脂組成物の光硬化後の特性を著しく低下させない程度で、有機溶媒が光硬化性樹脂組成物中に微量(1質量%以下)に存在してもよいことを意味するが、好ましくは含有しないことである。
光硬化性樹脂組成物が実質的に有機溶媒を含有しない場合、光硬化性樹脂組成物の粘度(25℃)は、10〜50000mPa・sであることが好ましく、100〜10000mPa・sであることがより好ましい。粘度は、E型粘度計(東機産業製RE−80L)より、3°cone rotorを用いて0.5rpmで測定した値とする。
【0040】
<その他>
本発明の光硬化性樹脂組成物中の(B)微粒子を除く部分(以下、「他の部分」と称することがある)は、硬化前後における屈折率差が大きいことが好ましい。この場合、(B)微粒子として上記他の部分との屈折率差が大きく、かつ当該他の部分の硬化物との屈折率差が小さいものを選択する。これにより、光硬化性樹脂組成物の硬化物の透明性が確保されると共に、当該他の部分(未硬化物)と(B)微粒子との屈折率が大きくなり、光硬化時に光が(B)微粒子により良好に散乱され、陰影部や狭隙部等が良好に硬化される。
【0041】
[光学部材]
本発明の光学部材は、上記の光硬化性樹脂組成物を光硬化してなるものである。
この光学部材としては、例えば、光学フィルム、光学シート、透明基板、レンズ、接着剤、光導波路、太陽電池用部材、発光ダイオード(LED)、フォトトランジスタ、フォトダイオード、固体撮像素子等の光半導体素子、照明装置、画像表示用装置等が挙げられる。特に、画像表示用装置に用いることが好適である。
次に、画像表示用装置の一例である液晶表示装置について説明する。
【0042】
<液晶表示装置>
図1は、液晶表示装置の一実施形態を模式的に示す側面断面図である。図1に示す液晶表示装置は、バックライトシステム50、偏光板22、液晶表示セル10及び偏光板20がこの順で積層されてなる画像表示ユニット1と、液晶表示装置の視認側となる偏光板20の上面に設けられた透明樹脂層32と、その表面に設けられた透明保護基板(保護パネル)40とから構成される。透明樹脂層32は、本実施形態の光硬化性樹脂組成物の硬化体から構成される。
【0043】
図2は、液晶表示装置の一実施形態である、タッチパネルを搭載した液晶表示装置を模式的に示す側面断面図である。図2に示す液晶表示装置は、バックライトシステム50、偏光板22、液晶表示セル10及び偏光板20がこの順で積層されてなる画像表示ユニット1と、液晶表示装置の視認側となる偏光板20の上面に設けられた透明樹脂層32と、透明樹脂層32の上面に設けられたタッチパネル30と、タッチパネル30の上面に設けられた透明樹脂層31と、その表面に設けられた透明保護基板40とから構成される。
なお、図2の液晶表示装置においては、画像表示ユニット1とタッチパネル30との間、及びタッチパネル30と透明保護基板40との間の両方に透明樹脂層が介在しているが、透明樹脂層はこれらの少なくとも一方に介在していればよい。また、タッチパネルがオンセルとなる場合は、タッチパネルと液晶表示セルが一体化される。その具体例としては、図1の液晶表示装置の液晶表示セル10が、オンセルで置き換えられたものが挙げられる。
【0044】
図1及び2に示す液晶表示装置によれば、本実施形態の光硬化性樹脂組成物の硬化体を透明樹脂層31又は32として備えるので、耐衝撃性を有し、二重写りがなく鮮明でコントラストの高い画像が得られる。すなわち、この光硬化性樹脂組成物への光照射時に(B)微粒子によって光が良好に散乱されて陰影部や狭隙部等にまで伝播し、当該陰影部や狭隙部等が硬化されるため、未硬化部が無く、耐衝撃性に優れる。また、この光硬化性樹脂組成物の硬化体中における(B)微粒子とそれ以外の部分との屈折率差が小さいため、光の散乱が抑制され、二重移りがなく鮮明でコントラストの高い画像が得られる。
【0045】
液晶表示セル10は、当技術分野で周知の液晶材料から構成されるものを使用することができる。また、液晶材料の制御方法によって、TN(Twisted Nematic)方式、STN(Super−twisted nematic)方式、VA(Virtical Alignment)方式、IPS(In−Place−Switching)方式等に分類されるが、いずれの制御方法を使用した液晶表示セルであってもよい。
偏光板20及び22としては、当技術分野で一般的な偏光板を使用することができる。それら偏光板の表面は、反射防止、防汚、ハードコート等の処理がなされていてもよい。そのような表面処理は、偏光板の片面に対して、又はその両面に対して実施されていてよい。
タッチパネル30としては、当技術分野で一般的に用いられているものを使用することができる。
透明樹脂層31又は32は、例えば0.02mm〜3mmの厚さで形成することができる。特に、本実施形態の光硬化性樹脂組成物においては厚膜に対して有効であり、0.1mm以上の透明樹脂層31又は32を形成する場合に好適に用いることができる。
透明保護基板40としては、一般的な光学用透明基板を使用することができる。その具体例としては、ガラス板、石英板等の無機物の板、アクリル樹脂板、ポリカーボネート板等の樹脂板、厚手のポリエステルシート等の樹脂シートが挙げられる。高い表面硬度が必要とされる場合にはガラス、アクリル樹脂等の板が好ましく、ガラス板がより好ましい。これらの透明保護基板の表面には、反射防止、防汚、ハードコート等の処理がなされていてもよい。そのような表面処理は、透明保護基板の片面に対して、又は両面に対して実施されていてよい。透明保護基板は、その複数枚を組み合わせて使用することもできる。
バックライトシステム50は、代表的には反射板等の反射手段とランプ等の照明手段とから構成される。
【0046】
上述の図1の液晶表示装置は、画像表示ユニット1と透明保護基板(保護パネル)40との間に上記本実施形態の光硬化性樹脂組成物を介在させる工程と、上記保護パネル40面側から光照射して上記光硬化性樹脂組成物を硬化させ、透明樹脂層32を形成する工程と、を含む製造方法により製造することができる。
画像表示ユニット1と保護パネル40との間に、光硬化性樹脂組成物を介在させる方法としては、例えばディスペンサーを用いて、画像表示ユニット1又は保護パネル40上に光硬化性樹脂組成物を塗布した後に真空(減圧)又は大気圧で貼合する方法や、一定の間隔を開けて配置された画像表示ユニット1及び保護パネル40の間に光硬化性樹脂組成物を注型する方法が挙げられる。なお、光硬化性樹脂組成物を注型する際には、画像表示ユニット1及び保護パネル40の周囲にダム(光硬化性樹脂組成物の流出を防止するための枠体)を形成してもよい。
【0047】
上述の図2の液晶表示装置は、画像表示ユニット1と前記タッチパネル30との間、及び/又は、前記タッチパネル30と前記保護パネル40との間に上記本実施形態の光硬化性樹脂組成物を介在させる工程と、上記保護パネル40面側から光照射して上記光硬化性樹脂組成物を硬化させ、透明樹脂層32,31を形成する工程と、を含む製造方法により製造することができる。光硬化性樹脂組成物を介在させる方法としては、上述の図1の液晶表示装置の場合と同様の方法が挙げられる。
【0048】
上記光照射は、例えば、紫外線照射装置を用いて、露光量500mJ/cm2〜5000mJ/cm2の条件で行うことができる。なお露光量とは、オーク社製 紫外線照度計UV−M02(受光器:UV−36)等で測定できる照度に照射時間(秒)を掛けた値をいう。また、紫外線照射用の光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、LEDランプ等であってよいが、高圧水銀灯、又はメタルハライドランプを使用することが好ましい。
なお、光照射の際は、保護パネル40面側からの照射と、側面から照射を併用してもよい。
また、光照射と同時に光硬化性樹脂組成物を含む積層体を加熱する等して、硬化を促進させることもできる。
【0049】
以上、本実施形態の光硬化性樹脂組成物を用いることにより製造することが可能な液晶表示装置について説明したが、本実施形態の光硬化性樹脂組成物を用いることにより製造することが可能な画像表示用装置はこれに限られず、プラズマディスプレイ(PDP)、陰極線管(CRT)、電界放出ディスプレイ(FED)、有機ELディスプレイ、3Dディスプレイ、電子ペーパー等に適用することも可能である。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲を限定するものではない。
<原料等>
なお、原料等としては、次のものを用いた。
(1)(A)重合性化合物
FA−240A;ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレングリコールの
繰り返し数が約9)、日立化成工業株式会社製
FA−324A;ビスフェノールAのEO変性付加物ジアクリレート(一般式(a)
において、R1及びR2がエチレン基で、n+mが約4)
BP−4EA;ビスフェノールAのEO変性付加物ジアクリレート(一般式(a)
において、R1及びR2がエチレン基で、n+mが約4)、
共栄社化学株式会社製
FA−121M;エチレングリコールジメタクリレート、日立化成工業株式会社製
【0051】
(2)(B)微粒子
微粒子1
組成:メチルメタクリレート(MMA)/エチレングリコールジメタクリレート
[質量比70/30]の重合体粒子
(日立化成工業社製の商品名「FA−121M」)、平均粒径:15μm
微粒子2
組成:メチルメタクリレート(MMA)/ベンジルメタクリレート(BzMA)/
ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレングリコールの繰り返し
数:約4)[質量比55/35/10]の重合体粒子
(日立化成工業社製の商品名「FA−220M」)、平均粒径:19μm
微粒子3
組成:微粒子2と同一、平均粒径:15μm
微粒子4
組成:微粒子2と同一、平均粒径:50nm
微粒子5
組成:微粒子2と同一、平均粒径:500μm
なお微粒子1〜5は公知の懸濁重合法により調整した。
【0052】
(3)(C)光重合開始剤
イルガキュア−184(商品名);1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、
BASF社製
(以下、i−184と称することがある)
(4)その他の成分
PE−1;ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトブチレート)、
昭和電工株式会社製
【0053】
<実施例1>
(A)重合性化合物としてFA−240A(1.86g)及びFA−324A(0.14g)、(C)光重合開始剤としてi−184(0.02g)、並びに(B)微粒子として微粒子1(0.02g)をスクリュー管に加え、ローターで8時間攪拌し、微粒子1が分散した光硬化性樹脂組成物を得た。
【0054】
<実施例2>
(A)重合性化合物としてBP−4EA(0.12g)及びFA−121M(0.88g)、その他の化合物としてPE−1(1g)、(C)光重合開始剤としてi−184(0.02g)、並びに(B)微粒子として微粒子2(0.02g)をスクリュー管に加え、ローターで8時間攪拌し、微粒子2が分散した光硬化性樹脂組成物を得た。
<実施例3〜9>
実施例3〜9では、(B)微粒子の種類と配合量を表1のように変えて調整した以外は、実施例2と同じ方法で光硬化性樹脂組成物を得た。
【0055】
【表1】

*表中の数値単位は全て質量部とする。
【0056】
<実施例10〜17及び比較例1〜2>
実施例10〜17では、(A)重合性化合物の配合を表2のように変えて調製した以外は、実施例2と同じ方法で光硬化性樹脂組成物を得た。また比較例1及び2では、(B)微粒子を加えないことと、(A)重合性化合物の配合を表2のように変えて調製したこと以外は、実施例2と同様の方法で光硬化性樹脂組成物を得た。
【0057】
【表2】

*表中の数値単位は全て質量部とする。
【0058】
<評価>
(陰影部の硬化の評価)
上記実施例及び比較例で得られた光硬化性樹脂組成物の硬化性は、以下の方法で評価した。すなわち、10×10cmのガラス上に、3cm×3cmの穴の開いた厚さ100μmのスペーサを敷き、この穴内に光樹脂組成物を充填したあとに、10cm×10cmのガラスで上からカバーした。次に3cm×3cmの樹脂部分の半分を黒い布で覆い、この樹脂部分の半分を陰影部とし、他の半分を光照射部とした。次に、露光機(キタムラ製縦型露光機、ハイパワーメタルハライドランプ)を用いて、1000mJ/cm2エネルギー量で光硬化した。その後、黒い布及びカバーガラスを外し、硬化したサンプルを取り出した。サンプルのうち、陰影部と光照射部との境界よりも陰影部側に硬化している長さ(mm)を測定した。
【0059】
(全光線透過率)
全光線透過率は、上記の硬化したサンプルの硬化部分について、日本電色性色度計(300A)で評価した。
【0060】
(屈折率)
各実施例及び比較例の各々について、光硬化性樹脂組成物から(B)微粒子を除いた組成を有する組成物(微粒子非含有組成物)を調製し、この微粒子非含有組成物の屈折率n1と、これを光硬化性樹脂組成物と同様の条件で光硬化してなる硬化物の屈折率n1’とを測定した。
また、各実施例及び比較例の各々について、(B)微粒子の屈折率n2を測定した。
これらの屈折率は、アッベの屈折計(アタゴ社製NAR−2T、測定温度25℃)を用いて測定した。
次いで、微粒子非含有組成物の屈折率n1と(B)微粒子の屈折率n2との差の絶対値|Δn|を算出し、また、微粒子非含有組成物の硬化物の屈折率n1’と(B)微粒子の屈折率n2との差の絶対値|Δn’|を算出した。
これらの結果を表3及び表4に示す。
【0061】
【表3】

*表中のワニスとは、光硬化性樹脂組成物から微粒子(B)を除いた組成を有する微粒子非含有組成物のことをいう。
*表中の|Δn|とは、|n2−n1|のことをいう。
*表中の|Δn’|とは、|n2−n1’|のことをいう。
【0062】
【表4】

*表中のワニスとは、光硬化性樹脂組成物から微粒子(B)を除いた組成を有する微粒子非含有組成物のことをいう。
*表中の|Δn|とは、|n2−n1|のことをいう。
*表中の|Δn’|とは、|n2−n1’|のことをいう。
【0063】
実施例1〜17で得られた光硬化性樹脂組成物は、陰影部の硬化性に優れていた。また、全光線透過率が高く、透明性にも優れていた。一方、比較例1及び2で得られた光硬化性樹脂組成物は、陰影部が硬化しなかった。
【符号の説明】
【0064】
1 画像表示ユニット
10 液晶表示セル
20,22 偏光板
30 タッチパネル
31,32 透明樹脂層
40 透明保護基板
50 バックライトシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重合性化合物、
(B)微粒子、及び
(C)光重合開始剤
を含む光硬化性樹脂組成物であって、
前記(B)微粒子は、前記光硬化性樹脂組成物から前記(B)微粒子を除いた組成を有する微粒子非含有組成物との屈折率差の絶対値を|Δn|とし、前記微粒子非含有組成物を光照射してなる硬化物との屈折率差の絶対値を|Δn’|とした場合、下記関係式
|Δn|>|Δn’|、及び
|Δn’|<0.01
を満たすものである光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)微粒子は、前記微粒子非含有組成物の未硬化物との屈折率差が、絶対値として0.01以上である請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)微粒子が、(メタ)アクリル樹脂系微粒子である請求項1又は2に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)重合性化合物が(メタ)アクリル系化合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(C)光重合開始剤が光ラジカル重合開始剤である請求項1〜4のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物を光硬化してなる光学部材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−35979(P2013−35979A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174758(P2011−174758)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】