説明

光硬化性樹脂組成物

【課題】重力不良による色ムラの発生を、低温発泡を生ずることなく効果的に抑制できるカラムスペーサを製造することができる光硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記式で表される構造単位からなる、側鎖に(メタ)アクリル基とカルボキシル基とを有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体と、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物と、光反応開始剤とを含有する光硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温発泡を生ずることなく、重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制できるカラムスペーサを製造することができる光硬化性樹脂組成物、該光硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサ及び液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶表示素子は、2枚のガラス基板の間隙を一定に維持するためのスペーサを具備し、これらの他に透明電極や偏光板及び液晶物質を配向させる配向層等から構成されている。現在スペーサとしては、主に粒子径が数μm程度の微粒子スペーサが用いられている。しかし、従来の液晶表示素子の製造方法では、ガラス基板上に微粒子スペーサをランダムに散布していたことから、画素部内に微粒子スペーサが配置されてしまうことがあった。画素部内に微粒子スペーサがあると、スペーサ周辺の液晶配向の乱れから光が漏れて画像のコントラストが低下したりする等、画像品質を低下させることがあるという問題がある。これに対して、微粒子スペーサが画素部に配置されないような微粒子スペーサの配置方法が種々検討されているが、いずれも操作が煩雑であり実用性に乏しいものであった。
【0003】
また、近年、液晶表示素子の生産性を上げるために、ワンドロップフィル法(One Drop Fill Technology:ODF法)が提案されている。この方法は、ガラス基板の液晶封入面上に、所定量の液晶を滴下し、もう一方の液晶パネル用基板を真空下で所定のセルギャップを維持できる状態で対峙させ、貼り合わせることにより液晶表示素子を製造する方法である。この方法によれば、従来の方法に比べて液晶表示素子が大面積化し、セルギャップが狭小化しても、液晶の封入が容易であることから、今後はODF法が液晶表示素子の製造方法の主流になると考えられる。
しかし、ODF法において微粒子スペーサを用いると、液晶の滴下時、又は、対向基板の貼り合わせ時に散布した微粒子スペーサが液晶の流動とともに流されて、基板上における微粒子スペーサの分布が不均一となる問題が生じる。微粒子スペーサの分布が不均一になると、液晶セルのセルギャップにバラツキが生じ、液晶表示に色ムラが発生してしまうという問題があった。
【0004】
これに対して、従来の微粒子スペーサに代って、液晶基板上にフォトリソグラフの手法によってセルギャップを均一保持するための凸型パターンを形成したカラムスペーサが提案され、実用化されるようになってきている(例えば、特許文献1等)。
このようなカラムスペーサを用いれば、画素部内にスペーサが配置されてしまう問題や、ODF法においてスペーサムラが生じてしまう問題を解決することができる。
【0005】
しかしながら、カラムスペーサを用いてODF法により製造した大型液晶表示素子においては、表示装置の使用中に液晶セル内の液晶が下方へ流動することにより、表示パネルの上半面と下半面において色ムラが生じる「重力不良」と呼ばれる欠陥が発生することがあり、大きな問題となっていた。この「重力不良」の現象は、バックライトより発生する熱によって液晶セル内の液晶が膨張してセルギャップを押し広げ、その際にカラムスペーサから基板が浮き上がってしまい、このスペーサによって保持されなくなった体積分の液晶が重力によって下方へ流動することにより生じると考えられる。
【0006】
このような「重力不良」を解消するためには、バックライトより発生する熱によって液晶セル内の液晶が膨張してセルギャップを押し広げる際に、いったん圧縮されていたカラムスペーサを圧縮変形からの弾性回復によりセルギャップの変化に追随できるようにし、基
板とカラムスペーサとの間に隙間が生じないようにすれば解決可能であると考えられる。しかし、従来の方法では、カラムスペーサに高い変形回復力を持たせるためには、カラムスペーサを形成する樹脂を高度に架橋し圧縮時に塑性変形を起こりにくくする必要があるところ、このような高度な架橋構造を有する樹脂は一般的に圧縮弾性率が高く、硬くなってしまう傾向にある。このような硬い樹脂によりカラムスペーサを形成した場合には、カラムスペーサを圧縮変形させる課程において、大きな圧力が必要であり、得られた液晶表示素子においては、圧縮されたカラムスペーサによる液晶セルを押し広げようとする大きな力を内包することになる。このようなカラムスペーサが液晶セルを押し広げようとする力が大きい場合、低温時に液晶セル内の液晶の体積収縮が起こると液晶セル内の内圧が急激に低下して気泡が発生する「低温発泡」という現象を生じてしまうという問題があった。
【特許文献1】特開2001−91954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、低温発泡を生ずることなく、重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制できるカラムスペーサを製造することができる光硬化性樹脂組成物、光硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサ及び液晶表示素子を提供することを目的とする。
【0008】
本発明は、側鎖に(メタ)アクリル基とカルボキシル基とを有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物、及び、光反応開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物であって、前記アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体は、下記式(1a)、(1b)、(1c)、(1d)及び(1e)で表される構造単位からなる光硬化性樹脂組成物である。
【0009】
【化1】

式(1d)及び(1e)中、A及びAは、水素、下記式(2a)、(2b)、(2c)又は(2d)を表し、A又はAのいずれか一方が水素である場合、他方は下記式(2a)、(2b)、(2c)又は(2d)のいずれかである。Rは、水素及び/又はメチル基を表し、Rは、アルキル基、フェニル基、アルキル基若しくはアルコキシ基を含むフェニル基、ヒドロキシアルキル基又は脂環式炭化水素を表し、Rは、ニトリル基又はフェニル基を表し、Rは、アルキル基、ヒドロキシアルキル基又はラジカル重合性基含有脂肪族炭化水素を表す。また、a、b、c、d、eは、各成分のモル比率(%)を表し、a+b+c+d+e=100とするとき、a、b及びdは0〜90、cは5〜50、eは5〜60である。
【0010】
【化2】

以下に本発明を詳述する。
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、一般にレジスト用に用いられている硬化性樹脂組成物において、アルカリ可溶性樹脂として側鎖に(メタ)アクリル基とカルボキシル基とを有する所定構造のアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体を選択した場合には、圧縮変形からの高い回復性を有するとともに、柔軟で低弾性率であるカラムスペーサが得られることを見出した。このようなカラムスペーサによれば加熱時の液晶の膨張による「重力不良」と、低温時の液晶の収縮による「低温発泡」とを同時に抑制可能であることを見出した。更に、このような硬化性樹脂組成物において、架橋モノマーとして3官能以上の(メタ)アクリレート化合物を含有するものを用いた場合には、より高い圧縮変形からの回復性を示すカラムスペーサが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
側鎖に(メタ)アクリル基とカルボキシル基とを有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体を選択した場合により高い圧縮変形からの回復性が得られる理由としては、架橋モノマーとして3官能以上の(メタ)アクリレート化合物を用いることにより、塑性変形を抑えるための高度な架橋構造のなかに柔軟性を与える直鎖構造が程度に形成されることに加え、アルカリ可溶性樹脂の側鎖のアクリル基が反応することでアルカリ可溶性樹脂も架橋構造の中に取り込まれ、より塑性変形が抑制されるためであると考えられる。
【0012】
本発明の光硬化性樹脂組成物を用いれば、加熱時の「重力不良」の発生と、低温時の「低温発泡」の発生との間の温度差、即ち、液晶表示装置が正常に保たれる温度領域が極めて広いカラムスペーサを得ることができる。一般に、「重力不良」及び「低温発泡」の発生温度範囲は、液晶パネルの生産工程におけるカラムスペーサの高さや液晶注入量バラツキの影響により変動することから、液晶表示装置が正常に保たれる温度領域が極めて広いことにより、液晶表示装置の保証温度内における「重力不良」や「低温発泡」における製品不良の発生率が低減するという効果が得られる。
【0013】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、上記式(1a)、(1b)、(1c)、(1d)及び(1e)で表される構造単位からなる側鎖に(メタ)アクリル基とカルボキシル基とを有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体を含有する。このようなアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体を含有することにより、本発明の光硬化性樹脂組成物を硬化してな
るカラムスペーサは、圧縮変形からの高い回復性と、柔軟で低弾性率であることとを両立させることができる。また、上記アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体は、セグメントの極性が低いため組成物中での相溶性に優れる。これにより、カラムスペーサの製造時の現像処理において現像ムラ等の不具合が生じることもない。
【0014】
なかでも、柔軟性の高いウレタン結合を構造中に有するため高い架橋性を保ったまま柔軟性が付与できる、ウレタン結合が適度な極性を有するため組成物中での相溶性に優れる等の理由から、上記アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体中のA及び/又はAは、上記式(2b)で表されることが好ましい。
【0015】
また、ウレタン結合によって結合している構造単位中にラジカル重合性基を有する場合、より高い架橋と柔軟性とを同時に付与することが可能であり、また、ラジカル重合性基が他成分と光架橋することから相溶性が更に向上する等の理由から、上記アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体中のA及び/又はAは、上記式(2b)で表され、かつ、上記式(2b)中のRは、ラジカル重合性基含有脂肪族炭化水素であることが好ましい。
【0016】
また、水酸基を有することでアルカリ現像性や基材との密着性に優れる、高極性の水酸基と低極性のRとを両有することで他成分との相溶性を発現することができる等の理由から、上記アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体中のA及びAは、上記式(2c)又は(2d)で表されることが好ましい。
【0017】
このような構造単位からなる上記側鎖に(メタ)アクリル基とカルボキシル基とを有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量としては特に限定されないが、好ましい下限は3000、好ましい上限は10万である。3000未満であると、カラムスペーサの現像性が低下することがあり、10万を超えると、解像度が低下することがある。より好ましい下限は5000、より好ましい上限は5万である。
【0018】
上記側鎖に(メタ)アクリル基とカルボキシル基とを有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体の製造方法としては特に限定されないが、例えば、側鎖にカルボキシル基を有する(メタ)アクリル共重合体に、脂環式エポキシ基含有不飽和化合物を開環付加重合させてカルボキシル基の一部を変性し、更に、変性により生じた水酸基及び/又は残存しているカルボキシル基の一部にイソシアネート化合物、エポキシ化合物、ラクトン化合物、アルコール化合物等を反応させる方法が挙げられる。
【0019】
また、具体的には、例えば、サイクロマーP(ダイセル化学社製)等の市販のものに対して、サイクロマーP中に含有される水酸基及びカルボキシル基の一部にイソシアネート化合物、エポキシ化合物、ラクトン化合物、アルコール化合物等を反応させることによって上記式(1)により表される側鎖に(メタ)アクリル基とカルボキシル基とを有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体を得ることができる。
【0020】
上記側鎖にカルボキシル基を有する(メタ)アクリル共重合体の製造方法としては特に限定されず、例えば、カルボキシル基含有単官能不飽和化合物と、(メタ)アクリル酸エステル系単量体とをラジカル重合開始剤及び必要に応じて分子量調整剤を用いて塊状重合、溶液重合、懸濁重合、分散重合、乳化重合等の従来公知の方法により共重合する方法が挙げられる。
【0021】
上記脂環式エポキシ基含有不飽和化合物としては特に限定されないが、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が好適に用いられる。
【0022】
上記イソシアネート化合物としては特に限定されないが、例えば、炭素数が2〜18のア
ルキルイソシアネート、重合性基含有イソシアネートが好適に用いられる。
炭素数が19以上のアルキルイソシアネートは、極性が低下するため、側鎖にカルボキシル基を有する(メタ)アクリル共重合体との相溶性が得られず、反応が円滑に進まないことがある。
上記重合性基含有イソシアネートを用いると、光硬化時の感度の上昇や、耐熱性、耐薬品性、タックフリー性等の様々な物性の更なる向上が実現される。
上記重合性基含有イソシアネートとしては特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリロイル基が炭素数2〜6のアルキレン基を介してイソシアネート基と結合したものを使用することが好ましい。具体的には、例えば、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルエチルイソシアネート、2−アクリロイルエチルイソシアネート等が挙げられ、2−メタクリロイルエチルイソシアネート、及び、2−アクリロイルエチルイソシアネートは、それぞれ、カレンズMOI、及び、カレンズAOI(いずれも昭和電工社製)として市販されている。
【0023】
上記変性により生じた側鎖に水酸基及びカルボキシル基を有する(メタ)アクリル共重合体に上記イソシアネート化合物を反応させる方法としては特に限定されず、少量の触媒存在下、上記イソシアネート化合物を、上記変性により生じた側鎖に水酸基及びカルボキシル基を有する(メタ)アクリル共重合体の溶液中に滴下又は混合する方法が挙げられる。この際に用いられる触媒としては特に限定されず、例えば、ラウリン酸、ジブチル錫等が挙げられる。
【0024】
また、必要に応じて、p−メトキシフェノール、ヒドロキノン、ナフチルアミン、tert−ブチルカテコール、2,3−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等の重合禁止剤を用いてもよい。
【0025】
また、増粘等を抑制する目的で、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール等のアルコールによる処理を行ってもよい。
【0026】
上記製造方法に従い、上記変性により生じた側鎖に水酸基及びカルボキシル基を有する(メタ)アクリル共重合体にイソシアネート化合物を反応させた場合には、式(2b)に示される構造単位が形成される。
【0027】
上記エポキシ樹脂化合物としては特に限定されず、例えば、炭素数2〜18のアルキルエポキシ化合物、炭素数が2〜18のアルコキシエポキシ化合物や重合性基含有エポキシ化合物が挙げられる。エポキシ化合物の炭素数が19以上である場合には、極性が低下するため、側鎖にカルボキシル基を有する(メタ)アクリル共重合体との相溶性が得られず、反応が円滑に進まないことがある。
上記重合性基含有エポキシ化合物を用いると、光硬化時の感度の上昇や、耐熱性、耐薬品性、タックフリー性等の様々な物性の更なる向上が実現される。
上記重合性基含有エポキシ化合物としては特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリロイル基が炭素数2〜6のアルキレン基を介してエポキシ基と結合したものを使用するのが好ましい。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられる。
【0028】
上記変性により生じた側鎖に水酸基及びカルボキシル基を有する(メタ)アクリル共重合体に上記エポキシ化合物を反応させる方法としては特に限定されず、少量の触媒存在下、上記エポキシ化合物を、上記変性により生じた側鎖に水酸基及びカルボキシル基を有する(メタ)アクリル共重合体の溶液中に滴下又は混合する方法が挙げられる。
この際に用いられる触媒としては特に限定されず、例えば、トリエチルアミン、トリプロミルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ジメチルラウリルアミン、トリエチルベン
ジルアンモニウムクロライド、トリメチルセチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリメチルブチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムブロマイド等が挙げられる。また、必要に応じて、p−メトキシフェノール、ヒドロキノン、ナフチルアミン、tert−ブチルカテコール、2,3−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等の重合禁止剤を用いてもよい。
【0029】
上記製造方法に従い、上記変性により生じた側鎖に水酸基及びカルボキシル基を有する(メタ)アクリル共重合体にエポキシ化合物を反応させた場合には、式(2c)及び(2d)に示される構造単位が形成される。
【0030】
側鎖に水酸基及びカルボキシル基を有する(メタ)アクリル共重合体に上記イソシアネート化合物やエポキシ化合物、ラクトン化合物、アルコール化合物等を反応させる際には、(メタ)アクリル共重合体中に含まれる水酸基のうち0〜100モル%に相当する量を反応させることができるが、好ましい下限は10モル%である。10モル%未満では、水酸基が多量に残存するため、樹脂の極性が高くなり、特に架橋モノマーとしてカプロラクトン変性された3官能以上の(メタ)アクリレート化合物を含有するものを用いた場合に充分な相溶性が得られないことがある。
【0031】
また、側鎖に水酸基及びカルボキシル基を有する(メタ)アクリル共重合体に上記イソシアネート化合物やエポキシ化合物、ラクトン化合物、アルコール化合物等を反応させる際には、(メタ)アクリル共重合体中に含まれるカルボキシル基のうち、0〜90モル%に相当する量を反応させることができる。90モル%を超えると、残存するカルボキシル基の量が少なくなりすぎるため、アルカリ可溶性が損なわれ、現像性が低下することがある。
【0032】
上記式(1a)、(1b)、(1c)、(1d)及び(1e)中のa、b、c、d、eは各成分のモル比率(%)を表し、a+b+c+d+e=100とするとき、a、b及びdの下限は0%、上限は90%である。また、cの下限は5%、上限は50%である。また、eの下限は5%、上限は60%である。cの下限は5%、上限は50%であるが、5%未満、即ち、カルボキシル基含有の構造単位のモル比率が5%未満であると、アルカリ可溶性を付与することが困難であり、50%を超えると、現像時の膨潤が著しく、パターンの形成が困難となる。また、eの好ましい下限は5%、好ましい上限は60%であるが、5%未満であるとアルカリ可溶性樹脂の架橋構造への取り込みが不充分となり、圧縮変形からの回復率の向上効果が得られず、60%を超えると、架橋構造の架橋密度が高くなり、柔軟な特性が損なわれる。
【0033】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、3官能以上(メタ)アクリレート化合物を有する。このような化合物を含有することにより、本発明の光硬化性樹脂組成物を硬化してなるカラムスペーサは、より高い圧縮変形からの回復性を発揮する。
【0034】
上記3官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては特に限定されないが、例えば、3官能では、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタン(メタ)アクリレートジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が好適であり、4官能以上では、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(メタ)テトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が好適である。これらの3官能以上の(メタ)アクリレート化合物は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
また、上記3官能以上の(メタ)アクリレート化合物がカプロラクトン変性体である場合には、圧縮変形からの高い回復性を有するとともに、柔軟で低弾性率であるカラムスペーサを得ることができることから好適である。
【0036】
(メタ)アクリレート化合物をカプロラクトン変性する具体的な方法としては特に限定されず、例えば、触媒の存在下に高温でアルコールとカプロラクトンとを反応させ、カプロラクトン変性アルコールを合成した後に、該カプロラクトン変性アルコールと(メタ)アクリル酸とを酸性触媒の存在下、脱水溶媒を使用してエステル化反応させる方法;(メタ)アクリル酸とカプロラクトンとを反応させ、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸を合成した後に、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸とアルコールとをエステル化反応させる方法等が挙げられる。
【0037】
カプロラクトン変性された3官能以上の(メタ)アクリレート化合物の変性度としては、ベースとなる3官能以上の(メタ)アクリレート化合物の官能基数をnとしたときに、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物1モルに対して0.5n〜5nモルのカプロラクトンを導入して変性することが好ましい。カプロラクトンの導入量が0.5nモル未満であると、得られるカラムスペーサの柔軟性が不充分となることがあり、5nモルを超えると、露光時に反応性が低下してスペーサのパターニングが困難となることがある。より好ましくは1n〜3nモルである。
【0038】
上記カプロラクトン変性された3官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては特に限定されないが、3官能では、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタン(メタ)アクリレートジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性体が好適であり、4官能以上では、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(メタ)テトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性体が好適である。これらのカプロラクトン変性された3官能以上の(メタ)アクリレート化合物は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記カプロラクトン変性された3官能以上の(メタ)アクリレート化合物は、上述の方法により(メタ)アクリレート化合物をカプロラクトン変性して用いてもよいし、日本化薬社製の「KAYARAD DPCA−120」(カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)、新中村化学工業社製の「NKエステル AD−TMP−4CL」(カプロラクトン変性ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート)等の市販品を用いてもよい。
【0039】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、光反応開始剤を含有する。
上記光反応開始剤としては特に限定されず、例えば、ベンゾイン、ベンゾフェノン、ベンジル、チオキサントン及びこれらの誘導体等の従来公知の光反応開始剤を用いることができる。具体的には、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ミヒラーケトン、(4−(メチルフェニルチオ)フェニル)フェイルメタノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1(4−メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチ
ルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等が挙げられる。これらの光反応開始剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
本発明の光硬化性樹脂組成物における上記光重合開始剤の配合量としては、上記3官能以上の(メタ)アクリレート化合物100重量部に対して好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が50重量部である。0.01重量部未満であると、光硬化しないことがあり、50重量部を超えると、フォトリソグラフィーにおいてアルカリ現像できないことがある。より好ましい下限は0.05重量部、より好ましい上限は20重量部である。
【0041】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、酸素による反応障害を軽減するために反応助剤を含有してもよい。このような反応助剤と水素引き抜き型の光反応開始剤とを併用することにより光照射したときの硬化速度を向上させることができる。
上記反応助剤としては、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンテトラミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等のアミン系;トリ−n−ブチルホスフィン等のホスフィン系;s−ベンジルイソチウロニウム−p−トルエンスルフィネート等のスルホン酸のもの等を用いることができる。これらの反応助剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、更に、2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物を含有してもよい。上記2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物は熱架橋剤として働き、本発明の光硬化性樹脂組成物に熱硬化性を付与することができる。
上記2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物としては特に限定されず、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、及び、これらのオリゴマーからなる多官能イソシアネートを、活性メチレン系、オキシム系、ラクタム系、アルコ−ル系等のブロック剤化合物によりブロック化することにより得られるものが挙げられる。これらの2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
このような2以上のブロックイソシアネート基を有する熱架橋剤のうち市販されているものとしては、例えば、デュラネート17B−60PX、デュラネートE−402−B80T(以上、旭化成ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0043】
本発明の光硬化性樹脂組成物における上記2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物の配合量としては、上記側鎖にアクリル基とカルボキシル基とを有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体100重量部に対して好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が50重量部である。0.01重量部未満であると、充分に熱硬化しないことがあり、50重量部を超えると、得られる硬化物の架橋度が高くなりすぎて上述の弾性特性を満たさないことがある。より好ましい下限は0.05重量部、より好ましい上限は20重量部である。
【0044】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、粘度を調整するために希釈剤により希釈してもよい。上記希釈剤としては、本発明の光硬化性樹脂組成物との相溶性、塗工方法、乾燥時の膜均一性、乾燥効率等を考慮して選択すればよく特に限定されないが、本発明の光硬化性樹脂組成物をスピンコーター、スリットコーターを用いて塗工する場合には、例えば、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、エチルセルソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、イソプロピルアルコール等の有機溶媒が好適である。これらの希釈剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、基板との密着性を向上するためのシランカップリング剤等の従来公知の添加剤を含有してもよい。
【0046】
本発明の光硬化性樹脂組成物を製造する方法としては特に限定されず、例えば、上記3官能以上の(メタ)アクリレート化合物、側鎖に(メタ)アクリル基とカルボキシル基とを有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体、光反応開始剤、2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物、及び、必要に応じて使用する希釈剤等を従来公知の方法により混合する方法が挙げられる。
【0047】
本発明の光硬化性樹脂組成物を用いれば、光硬化(又は熱硬化)させることにより圧縮変形からの極めて高い回復性と、柔軟で低弾性率であることとを両立したカラムスペーサを製造することができる。このようなカラムスペーサを用いれば、低温発泡を生ずることなく、重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制した液晶表示素子を得ることができる。また、本発明の光硬化性樹脂組成物においては、上記アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体におけるセグメントの極性が低いため組成物中での相溶性に優れるため、カラムスペーサの製造時の現像処理において現像ムラ等の不具合が生じることもない。
【0048】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、光照射及び/又は加熱により硬化させたときの硬化物の25℃における15%圧縮時の弾性係数の好ましい下限が0.2GPa、好ましい上限が1.0GPaである。0.2GPa未満であると、軟らかすぎてセルギャップの保持が困難となることがあり、1.0GPaを超えると、硬すぎて基板貼り合わせ時にカラーフィルター層に突入してしまったり、回復に必要な充分な弾性変形が得られなかったりすることがある。より好ましい下限は0.3GPa、より好ましい上限は0.9GPaであり、更に好ましい下限は0.5GPa、更に好ましい上限は0.7GPaである。
【0049】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、光照射及び/又は加熱により硬化させたときの硬化物の25℃において15%圧縮変形したときの回復率の好ましい下限が70%である。70%未満であると、得られた液晶表示素子の基板間におけるカラムスペーサが回復しようとする力が弱すぎて、充分な重力不良抑制効果が得られないことがある。より好ましい下限は80%である。回復率の上限については特に限定されない。
【0050】
次に、本発明の光硬化性樹脂組成物を用いてカラムスペーサを製造する方法を説明する。本発明の光硬化性樹脂組成物を用いてカラムスペーサを製造する場合には、まず、本発明の光硬化性樹脂組成物を所定の厚さになるように基板上に塗工して被膜を形成させる。塗工の方法としては特に限定されず、例えば、スピンコート、スリットコート、スプレーコート、ディップコート、バーコート等の従来公知の塗工法を用いることができる。
【0051】
次いで、得られた被膜上に、所定のパターンが形成されたマスクを介して、紫外線等の活性光線を照射する。これにより、光照射部においては、本発明の光硬化性樹脂組成物に含まれる3官能以上の(メタ)アクリレート化合物と光反応開始剤とが反応して光硬化する。これをアルカリ現像すれば、基板上に光硬化した光硬化性樹脂組成物からなる所定のパターンが得られる。
本発明の光硬化性樹脂組成物が2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物を含有する場合には、更に加熱することにより、含有されるアルカリ可溶性カルボキシル基含有高分子化合物と2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物とが反応する。
本発明の光硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサもまた、本発明の1つである。
【0052】
本発明のカラムスペーサの高さをセルギャップより若干高くなるように設計して、ODF法等の従来公知の方法により製造することにより、重力不良による色ムラのない液晶表示
素子が得られる。
本発明の光硬化性樹脂組成物、又は、本発明のカラムスペーサを用いてなる液晶表示素子もまた、本発明の1つである。
【発明の効果】
【0053】
本発明によれば、低温発泡を生ずることなく、重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制できるカラムスペーサを製造することができる光硬化性樹脂組成物、該光硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサ及び液晶表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
(1)ラジカル重合性基含有イソシアネート化合物によるカルボキシル基含有アクリル共重合体の変性
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた内容積3Lのセパラブルフラスコに、アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体としてサイクロマーP(ダイセル化学社製、ACA−250)1000g、ラウリン酸ジブチル錫0.5g、ヒドロキノン0.05g、及び、ジエチレングリコールジメチルエーテル500gを仕込み、40℃に昇温した後、2−メタクロイルエチルイソシアネート94.6g(サイクロマーP中の水酸基のうち50モル%に相当)を2時間かけて滴下し、更に40℃で3時間熟成した。得られた反応溶液の固形分は35重量%、樹脂酸価は60mgKOH/g、重量平均分子量はポリスチレン換算で11500であった。
【0056】
(2)光硬化性樹脂組成物の調製
得られた反応溶液100重量部に対し、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製、KAYARAD DPCA−120)80重量部、光重合開始剤(チバスペシャルティケミカルズ社製、イルガキュアー369)15重量部、熱架橋剤(旭化成ケミカルズ社製、デュラネート E−402−B80T)8重量部、及び、溶剤としてジエチレングリコールジメチルエーテル60重量部を混合して光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0057】
(3)カラムスペーサの形成
透明導電膜が形成されたガラス基板上に得られたカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物をスピンコートにより塗布し、100℃、2分間乾燥して塗膜を得た。得られた塗膜に20μm角のドットパターンマスクを介して150mJ/cmの紫外線を照射した後、0.04%KOH水溶液により90秒現像し、純水にて30秒洗浄することによりカラースペーサのパターンを形成した。220℃で30分間のベーキング処理を行った後、カラムスペーサの断面積は20μm×20μm(400μm)、高さは3.0μmであった。
【0058】
(4)液晶表示素子の製造
得られたカラムスペーサが形成されたガラス基板上に、シール剤(積水化学工業社製)を長方形の枠を描くようにディスペンサーで塗布した。次いで、液晶(チッソ社製、JC−5004LA)の微小滴をガラス基板の枠内全面に滴下塗布し、すぐに他方のガラス基板を重ね合わせてシール部に高圧水銀ランプを用いて紫外線を50mW/cm2で60秒照射した。その後、液晶アニールを120℃で1時間行うことにより熱硬化させ、液晶表示素子を製造した。
【0059】
(実施例2)
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた内容積3Lのセパラブルフラスコに、アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体としてサイクロマーP(ダイセル化学社製、ACA−250)1000g、α−オレフィンエポキシド(ダイセル化学社製、AOE−X24)58.0g(サイクロマーP中のカルボン酸基のうち50モル%に相当)、トリフェニルホスフィン0.5g、ヒドロキノン0.05g、及び、ジエチレングリコールジメチルエーテル500gを仕込み、100℃で10時間反応させた。
得られた反応溶液の固形分は33.5%、樹脂酸価は42mgKOH/g、重量平均分子量はポリスチレン換算で11600であった。
その後、得られた反応溶液を用いた以外は実施例1と同様の方法により、カラムスペーサ及び液晶表示素子を得た。
【0060】
(比較例1)
実施例1で得られた反応溶液100重量部に対し、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学社製、DPHA)80重量部、光重合開始剤(チバスペシャルティケミカルズ社製、イルガキュアー369)15重量部、熱架橋剤(旭化成ケミカルズ社製、デュラネートE−402−B80T)8重量部、及び、溶剤としてジエチレングリコールジメチルエーテル60重量部を混合した。その後、実施例1と同様の方法により、カラムスペーサ及び液晶表示素子を得た。
【0061】
(比較例2)
実施例2で得られた反応溶液100重量部に対し、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学社製、DPHA)80重量部、光重合開始剤(チバスペシャルティケミカルズ社製、イルガキュアー369)15重量部、熱架橋剤(旭化成ケミカルズ社製、デュラネートE−402−B80T)8重量部、及び、溶剤としてジエチレングリコールジメチルエーテル60重量部を混合した。その後、実施例1と同様の方法により、カラムスペーサ及び液晶表示素子を得た。
【0062】
<評価>
実施例1、2及び比較例1、2で得られたカラムスペーサ及び液晶表示素子について以下の方法により評価を行った。結果を表1に示した。
【0063】
(1)カラムスペーサの評価
温度25℃に調整した室内において、カラムスペーサを10mN/sの荷重印加速度で圧縮し、初期高さHの85%に相当する高さになるまで圧縮した。ここで10mNの荷重を印加した際のカラムスペーサ高さをH、Hの85%に相当するカラムスペーサ高さをH、Hに達した時点での荷重をFとした。次いで、この荷重Fを5秒間保持し、定荷重での変形を与えた後、10mN/秒の荷重印加速度で負荷を取り除き弾性回復によるカラムスペーサ高さの回復変形を測定した。この間の圧縮変形が最大となった時点のカラムスペーサ高さをHとし、カラムスペーサの変形を回復する過程における10mNの荷重印可時のカラムスペーサ高さをHとした。得られた各値を用いて、下記式(1)及び下記式(2)により15%圧縮時の圧縮弾性係数E及び15%圧縮変形したときの回復率Rを算出した。

E=F/(D×S) (1)
E:圧縮弾性係数(Pa)
F:荷重(N)
D:カラムスペーサの高さ変形率=(H−H)/H
S:カラムスペーサの断面積(m

R=(H−H)/(H−H)×100 (2)
【0064】
(2)液晶表示素子の評価
液晶表示素子を点灯表示し、表示画面を目視することによりセルギャップの均一性を観察して、以下の基準により評価した。
また、液晶表示素子を垂直に立てた状態で、60℃の条件下にて2日間放置した。放置後、クロスニコル間に液晶表示素子を設置し、目視により表示画像を観察して、重力不良の発生について以下の基準により評価した。
更に、液晶表示素子を0℃の条件下にて24時間放置した後、クロスニコル間に液晶表示素子を設置し、目視により観察して、低温発泡の発生について以下の基準により評価した。
セルギャップの評価
〇:均一
×:色ムラあり
重力不良の評価
〇:均一
×:色ムラあり
低温発泡の評価
〇:発泡なし
×:発泡あり
【0065】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、低温発泡を生ずることなく、重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制できるカラムスペーサを製造することができる光硬化性樹脂組成物、該光硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサ及び液晶表示素子を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側鎖に(メタ)アクリル基とカルボキシル基とを有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物、及び、光反応開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物であって、前記アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体は、下記式(1a)、(1b)、(1c)、(1d)及び(1e)で表される構造単位からなることを特徴とする光硬化性樹脂組成物。
【化1】

式(1a)、(1b)、(1c)、(1d)及び(1e)中、A及びAは、水素、下記式(2a)、(2b)、(2c)又は(2d)を表し、A又はAのいずれか一方が
水素である場合、他方は下記式(2a)、(2b)、(2c)又は(2d)のいずれかである。Rは、水素及び/又はメチル基を表し、Rは、アルキル基、フェニル基、アルキル基若しくはアルコキシ基を含むフェニル基、ヒドロキシアルキル基又は脂環式炭化水素を表し、Rは、ニトリル基又はフェニル基を表し、Rは、アルキル基、ヒドロキシアルキル基又はラジカル重合性基含有脂肪族炭化水素を表す。また、a、b、c、d、eは、各成分のモル比率(%)を表し、a+b+c+d+e=100とするとき、a、b及びdは0〜90、cは5〜50、eは5〜60である。
【化2】

【請求項2】
アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体中のA及び/又はAは、式(2b)で表されることを特徴とする請求項1記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体中のA及び/又はAは、式(2b)で表され、かつ、前記式(2b)中のRは、ラジカル重合性基含有脂肪族炭化水素であることを特徴とする請求項1又は2記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
アルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体中のA及びAは、式(2c)又は(2d)で表されることを特徴とする請求項1記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
3官能以上の(メタ)アクリレート化合物は、カプロラクトン変性体であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5記載の光硬化性樹脂組成物を用いてなることを特徴とするカラムスペーサ。
【請求項7】
請求項1、2、3、4又は5記載の光硬化性樹脂組成物又は請求項6記載のカラムスペーサを用いてなることを特徴とする液晶表示素子。

【公開番号】特開2006−184521(P2006−184521A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−377658(P2004−377658)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】