説明

光硬化性組成物、硬化膜およびその製造方法

【課題】耐黄変性に優れ、かつ良好な特性を示す硬化膜を作製可能な光硬化性組成物、該光硬化性組成物を硬化させてなる硬化膜あるいはその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る光硬化性組成物は、(A)重合性化合物と、(B)380〜500nmの波長領域に極大吸収波長を有する光重合開始剤と、(C)380〜500nmの波長領域の光線に対するモル吸光係数が0.05(L/mol・cm)以下であり、かつ380nm以下の波長領域に極大吸収波長を有する光重合開始剤と、(D)紫外線吸収剤と、を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性組成物、それを硬化させてなる硬化膜およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紫外線による材料自身およびその周辺材料の劣化を低減させ、耐候性を付与する観点から、紫外線吸収剤を添加する例が多く見受けられる。例えば画像表示装置では、視認性および外部からの衝撃に対する強度を向上させる観点から、前面板と画像表示部との間にギャップフィル材とよばれる充填材を使用することがある。このギャップフィル材には、工程の簡便さ等の観点から光硬化性樹脂が用いられることがある。かかる光硬化性樹脂を硬化させる際に、紫外線を照射すると画像表示部を構成する液晶デバイス等にダメージを与えることがある。そこで、光硬化性樹脂に紫外線吸収剤を添加しておくことで、紫外線の一部を吸収して液晶デバイス等へのダメージを低減させることができる。また、紫外線等の光線によって硬化可能な光硬化性組成物に紫外線吸収剤を添加した場合には、得られる硬化膜が黄色に変色すること(黄色度(YI))を低減させることができる。
【0003】
その一方で、光硬化性組成物に紫外線吸収剤を添加した場合には、該紫外線吸収剤によって硬化反応に必要な光線の一部が吸収されてしまうため、光硬化性組成物の硬化効率が大幅に低下してしまうことがあった。かかる場合、光硬化性組成物の硬化効率を上げるためには、多大な照射量の光線が必要であった。
【0004】
このような問題を解決するために、可視光線領域を含む光線によって硬化反応を速やかに進行できる技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−53249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明に係る幾つかの態様は、紫外線吸収剤を含有する光硬化性組成物において、耐黄変性に優れ、かつ良好な特性を示す硬化膜を作製可能な光硬化性組成物、該光硬化性組成物を硬化させてなる硬化膜あるいはその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0008】
[適用例1]
本発明に係る光硬化性組成物の一態様は、
(A)重合性化合物と、
(B)380〜500nmの波長領域に極大吸収波長を有する光重合開始剤と、
(C)380〜500nmの波長領域の光線に対するモル吸光係数が0.05(L/mol・cm)以下であり、かつ380nm以下の波長領域に極大吸収波長を有する光重合開始剤と、
(D)紫外線吸収剤と、
を含有することを特徴とする。
【0009】
[適用例2]
適用例1の光硬化性組成物において、
前記(B)光重合開始剤と前記(C)光重合開始剤とを質量基準で1:3〜2:1となる量比で含むことができる。
【0010】
[適用例3]
適用例1または適用例2の光硬化性組成物において、
前記(A)重合性化合物100質量部に対する、前記(B)光重合開始剤と前記(C)光重合開始剤との合計量が、0.1質量部以上10質量部以下であることができる。
【0011】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか一例の光硬化性組成物において、
前記(D)紫外線吸収剤の含有量が0.5質量%以上10質量%以下であることができる。
【0012】
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか一例において、
前記(A)重合性化合物が、共役二重結合を有する化合物であることができる。
【0013】
[適用例6]
本発明に係る硬化膜の一態様は、
適用例1ないし適用例5のいずれか一例の光硬化性組成物を硬化させてなることを特徴とする。
【0014】
[適用例7]
本発明に係る硬化膜の製造方法の一態様は、
適用例1ないし適用例5のいずれか一例の光硬化性組成物からなる塗膜に380〜500nmの波長領域を含む光線を照射する工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る光硬化性組成物によれば、耐黄変性に優れると共に、良好な特性を示す硬化膜を作製することができる。
【0016】
また、本発明に係る硬化膜の製造方法によれば、紫外線吸収剤を含む光硬化性組成物を用いるため、380nm以下の紫外線によって引き起こされる弊害(例えば、液晶デバイスへのダメージや色素の分解等)を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】光学樹脂層を備えた画像表示装置を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変型例も含む。
【0019】
1.光硬化性組成物
本実施の形態に係る光硬化性組成物は、(A)重合性化合物と、(B)380〜500nmの波長領域に極大吸収波長を有する光重合開始剤と、(C)380〜500nmの波長領域の光線に対するモル吸光係数が0.05(L/mol・cm)以下であり、かつ380nm以下の波長領域に極大吸収波長を有する光重合開始剤と、(D)紫外線吸収剤と、を含有することを特徴とする。
【0020】
以下、本実施の形態に係る光硬化性組成物の各成分について詳細に説明する。なお、以下の記載において(A)ないし(D)の各材料を、それぞれ(A)成分ないし(D)成分と省略して記載することがある。
【0021】
1.1.(A)成分
本実施の形態に係る光硬化性組成物は、(A)重合性化合物を含有する。(A)成分の機能の一つとしては、得られる硬化膜のマトリックスを形成することが挙げられる。
【0022】
(A)成分としては、ラジカル重合性の官能基を有するモノマー、オリゴマーおよびポリマーであればどのようなものでもよく、その種類は特に制限されない。これらの中でも、良好な特性を示す硬化膜が得られる観点から、共役二重結合を有する化合物が好ましい。共役二重結合を有する化合物としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリル酸エステル類;ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリル酸エステル類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有ビニルモノマー;スチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリルが挙げられる。共役二重結合を有しない化合物であっても、例えば塩化ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、ビニルピロリドン等を好適に用いることができる。
【0023】
また、(A)成分としてウレタン(メタ)アクリレートを使用することもできる。ウレタン(メタ)アクリレートは、ジイソシアネートと、ポリオールおよび/または水酸基含有(メタ)アクリレートと、を反応させることにより製造される。すなわち、ジイソシアネートのイソシアネート基と、ポリオールの水酸基および/または水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基と、をそれぞれ反応させることにより製造される。かかる反応としては、例えばジイソシアネート、ポリオールおよび/または水酸基含有(メタ)アクリレートを一括に仕込んで反応させる方法;ポリオールおよびジイソシアネートを反応させ、次いで水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させる方法;ジイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させ、次いでポリオールを反応させる方法;ジイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させ、次いでポリオールを反応させ、再び水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させる方法等が挙げられる。
【0024】
ポリオールとしては、例えばポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。これらのポリオールにおける各構造単位の配列状態は特に制限されず、ランダム重合、ブロック重合、グラフト重合のいずれであってもよい。
【0025】
これらのポリオールについてさらに詳しく述べると、脂肪族ポリエーテルジオールとしては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコール、あるいは2種以上のイオン重合性環状化合物を開環共重合させて得られるポリエーテルジオール等が挙げられる。前記イオン重合性環状化合物としては、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテン−1−オキシド、イソブテンオキシド、3,3−ビスクロロメチルオキセタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、テトラオキサン、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリン、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルカーボネート、ブタジエンモノオキシド、イソプレンモノオキシド、ビニルオキセタン、ビニルテトラヒドロフラン、ビニルシクロヘキセンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、安息香酸グリシジルエステル等の環状エーテル類が挙げられる。また、前記イオン重合性環状化合物と、エチレンイミン等の環状イミン類、β−プロピオラクトン、グリコール酸ラクチド等の環状ラクトン酸、あるいはジメチルシクロポリシロキサン類とを開環共重合させたポリエーテルジオールを使用することもできる。前記2種以上のイオン重合性環状化合物の具体的な組み合わせとしては、例えば、テトラヒドロフランとプロピレンオキシド、テトラヒドロフランと2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランと3−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランとエチレンオキシド、プロピレンオキシドとエチレンオキシド、ブテン−1−オキシドとエチレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブテン−1−オキシド、エチレンオキシドの三元重合体等が挙げられる。これらのイオン重合性環状化合物の開環共重合体はランダムに結合していてもよいし、ブロック状の結合をしていてもよい。これらの脂肪族ポリエーテルジオールは、PTMG650、PTMG1000、PTMG2000(以上、三菱化学株式会社製);PPG400、PPG1000、PPG2000、PPG3000、PPG4000、PPG8000、PPG10000、EXCENOL720、1020、2020(以上、旭硝子株式会社製);PEG1000、ユニセーフDC1100、DC1800(以上、日油株式会社製);PPTG2000、PPTG1000、PTG400、PTGL2000(以上、保土谷化学工業株式会社製);Z−3001−4、Z−3001−5、PBG2000A、PBG2000B(以上、第一工業製薬株式会社製)等の市販品としても入手することができる。
【0026】
脂環式ポリエーテルジオールとしては、例えばビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加ジオール、ハイドロキノンのアルキレンオキサイド付加ジオール、ナフトハイドロキノンのアルキレンオキサイド付加ジオール、アントラハイドロキノンのアルキレンオキサイド付加ジオール、1,4−シクロヘキサンジオールおよびそのアルキレンオキサイド付加ジオール、トリシクロデカンジオール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジオール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン等が挙げられ、これらの中でも、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加ジオール、トリシクロデカンジメタノールが好ましい。これらの脂環式ポリエーテルジオールは、ユニオールDA400、DA700、DA1000、DA1500、DB400、DB800(以上、日油株式会社製);トリシクロデカンジメタノール(三菱化学株式会社製)等の市販品として入手することもできる。
【0027】
ポリエステルジオールとしては、二価アルコールと多塩基酸とを反応させて得られるポリエステルジオール等が挙げられる。前記二価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等が挙げられる。前記多塩基酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマール酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられる。このようなポリエステルジオールは、クラポールP−2010、PMIPA、PKA−A、PKA−A2、PNA−2000(以上、株式会社クラレ製)等の市販品として入手することもできる。
【0028】
ポリカーボネートジオールとしては、例えばポリテトラヒドロフランのポリカーボネート、1,6−ヘキサンジオールのポリカーボネート等が挙げられる。このようなポリカーボネートジオールは、DN−980、981、982、983(以上、日本ポリウレタン株式会社製);PC−8000(米国PPG株式会社製)、PC−THF−CD(BASF社製)等の市販品として入手することができる。
【0029】
ポリカプロラクトンジオールとしては、ε−カプロラクトンと、例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,2−ポリブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブタンジオール等のジオールとを反応させて得られるポリカプロラクトンジオールが挙げられる。このようなポリカプロラクトンジオールとしては、プラクセル205、205AL、212、212AL、220、220AL(以上、ダイセル化学工業株式会社製)等の市販品として入手することができる。
【0030】
上記以外のポリオールを併用してもよい。このようなポリオールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジシクロペンタジエンのジメチロール化合物、トリシクロデカンジメタノール、β−メチル−δ−バレロラクトン、ヒドロキシ末端ポリブタジエン、ヒドロキシ末端水添ポリブタジエン、ヒマシ油変性ポリオール、ポリジメチルシロキサンの末端ジオール化合物、ポリジメチルシロキサンカルビトール変性ポリオール等が挙げられる。
【0031】
また、上記したようなポリオールを併用する以外にも、ポリオ−ルと共にジアミンを併用することもできる。このようなジアミンとしては、例えばエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、パラフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン等のジアミンやヘテロ原子を含むジアミン、ポリエーテルジアミン等が挙げられる。
【0032】
ジイソシアネートとしては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、4−ジフェニルプロパンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,5(または6)-ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等が挙げられる。これらの中でも、2,4−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)が好ましい。これらのジイソシアネートは、1種単独あるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリロイルフォスフェート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、下記一般式(1)または下記一般式(2)
【化1】

【化2】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、nは1〜15の数を表す。)
で表される(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、アルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物と、(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物も使用することができる。これらの中でも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが好ましい。これらの水酸基含有(メタ)アクリレート化合物は、1種単独あるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0034】
ポリオール、ジイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートの使用割合は、ポリオールに含まれる全水酸基をウレタン化するのではなく、ポリオール1分子鎖中の1ないし2つの水酸基をジイソシアネートに含まれるイソシアネート基が1〜2当量、水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基が0.2〜1.5当量となるようにするのが好ましい。
【0035】
これらの化合物の反応においては、通常ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、ラウリン酸ジn−ブチルスズ、トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン、2,6,7−トリメチル−1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン等のウレタン化触媒を、反応物の総量100質量部に対して0.01〜1質量部用いることが好ましい。また、反応温度は、通常10〜90℃、特に30〜80℃で行うのが好ましい。
【0036】
水酸基含有(メタ)アクリレートの一部をイソシアネート基に付加しうる官能基を持った化合物で置き換えて用いることもできる。このような化合物としては、例えばγ−メルカプトトリメトキシシラン、γ−アミノトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0037】
また、ジイソシアネート1モルに対して水酸基含有(メタ)アクリレート化合物2モルを反応させたウレタン(メタ)アクリレートを使用してもよい。かかるウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと2,4−トリレンジイソシアネートの反応物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと2,5(または6)−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンの反応物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとイソホロンジイソシアネートの反応物、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと2,4−トリレンジイソシアネートの反応物、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとイソホロンジイソシアネートの反応物が挙げられる。
【0038】
1.2.(B)成分
本実施の形態に係る光硬化性組成物は、(B)380〜500nmの波長領域に極大吸収波長を有する光重合開始剤を含有する。(B)成分は、380〜500nmの波長領域に極大吸収波長を有するため、紫外線吸収剤の存在下においても380〜500nmの波長領域を含む光線によって開始剤ラジカルを生成することができる。この開始剤ラジカルによって、後述する機構により光硬化性組成物の硬化反応を進行させることができる。
【0039】
(B)成分としては、例えば2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルホリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルホリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0040】
1.3.(C)成分
本実施の形態に係る光硬化性組成物は、(C)380〜500nmの波長領域の光線に対するモル吸光係数が0.05(L/mol・cm)以下であり、かつ380nm以下の波長領域に極大吸収波長を有する光重合開始剤を含有する。(C)成分の380〜500nmの波長領域に対するモル吸光係数は、0.03(L/mol・cm)以下であることが好ましく、0.01(L/mol・cm)以下であることがより好ましい。
【0041】
(C)成分は、380〜500nmの波長領域の光線に対するモル吸光係数が0.05(L/mol・cm)以下であり、かつ380nm以下の波長領域に極大吸収波長を有するため、紫外線吸収剤の存在下では380〜500nmの波長領域を含む光線によって開始剤ラジカルはほとんど発生しない。ところが、上述したように(B)成分は、紫外線吸収剤の存在下においても開始剤ラジカルを生成することができる。この開始剤ラジカルが(C)成分を攻撃することによって、新たな開始剤ラジカルが生成される。これらの開始剤ラジカルによって、光硬化性組成物の硬化反応を促進させることができると共に、良好な特性を示す硬化膜を形成することができるようになる。
【0042】
なお、本実施の形態に係る光硬化性組成物において、(B)成分を単独で用いると硬化反応の速度が非常に遅くなる。一方、(C)成分を単独で用いると硬化反応がほとんど進行しない。
【0043】
(C)成分としては、例えば1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等が挙げられる。
【0044】
本実施の形態に係る光硬化性組成物において、(B)光重合開始剤と(C)光重合開始剤を合計した添加量は、(A)重合性化合物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上10質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上10質量部以下、特に好ましくは1質量部以上5質量部以下である。添加量が0.1質量部未満では、反応率が低下して硬化膜の硬度が低くなる場合がある。一方、添加量が10質量部を超えると、光硬化性組成物の硬化特性および取扱い性の点で問題を生じる場合がある。
【0045】
なお、本実施の形態に係る光硬化性組成物においては、(B)成分と(C)成分とを質量基準で、好ましくは1:3〜2:1、より好ましくは1:2〜1:1となる量比で含むことができる。(B)成分と(C)成分との量比が前記範囲にあると、光硬化性組成物の硬化反応をより促進させることができると共に、良好な特性を示す硬化膜が得られやすい。
【0046】
1.4.(D)紫外線吸収剤
本実施の形態に係る光硬化性組成物は、(D)紫外線吸収剤を含有する。(D)成分としては、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ヒドロキシベンゾエート系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば2−(2−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルフェニル)−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル]−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(4−ヒドロキシブチル)フェニル]−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(4−ヒドロキシブチル)フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(4−ヒドロキシブトキシ)フェニル]−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(4−ヒドロキシブトキシ)フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルフェニル)−4,6−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−s−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−4,6−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−s−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−4,6−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−s−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル]−4,6−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−s−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]−4,6−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−s−トリアジン、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール等が挙げられる。
【0048】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジ(2−ヒドロキシエチル)ベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメトキシ−5,5'−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメトキシ−5,5'−ジ(2−ヒドロキシエチル)ベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−3,3'−ジ(ヒドロキシメチル)−5,5'−ジメトキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−3,3'−ジ(2−ヒドロキシエチル)−5,5'−ジメトキシベンゾフェノン、2,2−ジヒドロキシ−4,4−ジメトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0049】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば2−[2'−ヒドロキシ−5'−t−オクチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−5'−(ヒドロキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−5'−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−5'−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3'−メチル−5'−(ヒドロキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3'−メチル−5'−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3'−メチル−5'−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−(ヒドロキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3'−t−オクチル−5'−(ヒドロキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3'−t−オクチル−5'−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3'−t−オクチル−5'−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール等、あるいは2,2'−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(ヒドロキシメチル)フェノール]、2,2';−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール]、2,2'−メチレンビス[6−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール]、2,2'−メチレンビス[6−(5−ブロモ−2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール]、2,2'−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(3−ヒドロキシプロピル)フェノール]、2,2'−メチレンビス[6−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(3−ヒドロキシプロピル)フェノール]、2,2'−メチレンビス[6−(5−ブロモ−2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(3−ヒドロキシプロピル)フェノール]、2,2'−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(4−ヒドロキシブチル)フェノール]、2,2'−メチレンビス[6−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(4−ヒドロキシブチル)フェノール]、2,2'−メチレンビス[6−(5−ブロモ−2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(4−ヒドロキシブチル)フェノール]、3,3−{2,2'−ビス[6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−1−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]}プロパン、2,2−{2,2'−ビス[6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−1−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]}ブタン、2,2'−オキシビス[6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール]、2,2'−ビス[6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール]スルフィド、2,2'−ビス[6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール]スルホキシド、2,2'−ビス[6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール]スルホン、2,2'−ビス[6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール]アミン等が挙げられる。
【0050】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3'−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3'−ジフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0051】
ヒドロキシベンゾエート系紫外線吸収剤としては、フェニルサルシレート、4−t−ブチルフェニルサルシレート、2,5−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸n−ヘキサデシルエステル、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3',5−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
【0052】
ヒンダードアミン系紫外線吸収剤としては、ポリ(N−ヒドロキシエチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシ)ピペリジルスクシネート、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミン}]等が挙げられる。
【0053】
これらの中でも、短波長域から長波長域に亘る広範囲の波長(約280〜360nm)の紫外線吸収性が高い点で、トリアジン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤のいずれかを用いるのが好ましい。
【0054】
本実施の形態に係る光硬化性組成物における(D)成分の含有量は、好ましくは0.5質量%以上10質量%以下、より好ましくは1質量%以上5質量%以下である。(D)成分の含有量が前記範囲にあれば、得られる硬化膜に十分な紫外線吸収性を付与できると共に、劣化による黄色度(YI)の上昇を低減できる。(D)成分の含有量が前記範囲未満では、紫外線吸収性が不十分となる場合がある。(D)成分の含有量が前記範囲を超えると、反応性が低下したり、得られる硬化膜の黄色度(YI)が高くなったり、密着性が低下したりする場合がある。
【0055】
1.5.その他の添加剤
本実施の形態に係る光硬化性組成物は、上記成分以外に必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、シランカップリング剤、塗面改良剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、離型剤、溶剤、フィラー、老化防止剤、濡れ性改良剤等を添加してもよい。
【0056】
本実施の形態に係る光硬化性組成物は溶剤を含まない状態で使用することもできるが、塗膜の厚さを調節する観点から溶剤で希釈して粘度を調節してもよい。なお、本実施の形態に係る光硬化性組成物の粘度は、通常1000〜10000mPa・s/25℃であり、好ましくは1500〜3000mPa・s/25℃であるとよい。
【0057】
前記溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類等が挙げられる。
【0058】
本実施の形態に係る光硬化性組成物において、必要に応じて用いられる溶剤の含有量は、溶剤を除く成分の合計を100質量部としたときに、50〜10000質量部の範囲内であることが好ましい。溶剤の含有量は、塗布膜厚、光硬化性組成物の粘度等を考慮して適宜決定することができる。
【0059】
1.6.光硬化性組成物の製造方法
本実施の形態に係る光硬化性組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、必要に応じてその他の添加剤をそれぞれ添加して、室温または加熱条件下で混合することにより調製することができる。具体的には、ミキサー、ニーダー、ボールミル、三本ロール等の混合機を用いて調製することができる。
【0060】
2.硬化膜およびその製造方法
本実施の形態に係る硬化膜の製造方法は、前述した光硬化性組成物からなる塗膜に380〜500nmの波長領域を含む光線を照射する工程を有することを特徴とする。かかる光硬化性組成物は、前述したように380〜500nmの波長領域を含む光線を用いた場合において、耐黄変性に優れると共に良好な特性を示す硬化膜を形成することができる。
【0061】
本実施の形態に係る硬化膜の製造方法によれば、光硬化性組成物に紫外線吸収剤が含まれているため、380nm以下の紫外線によって引き起こされる弊害(例えば液晶デバイスへのダメージや色素の分解等)を防止することができる。
【0062】
本実施の形態に係る硬化膜の製造方法は、例えば画像表示装置を構成する前面板と画像表示部との間に挟持させる光学樹脂層(いわゆるギャップフィル材)を形成する用途に使用することができる。
【0063】
以下、光学樹脂層を備えた画像表示装置について図面を参照しながら説明する。図1は、光学樹脂層を備えた画像表示装置を模式的に示した断面図である。
【0064】
図1に示すように、画像表示装置100では、図示しない駆動回路に接続され所定の画像を表示する画像表示部10と、画像表示部10上に形成された光学樹脂層20と、光学樹脂層20上に形成された前面板30と、が順次積層されている。
【0065】
画像表示部10としては、特に限定されるものではなく、例えば液晶表示装置(LCD)、3Dディスプレイ、タッチパネル等が挙げられる。
【0066】
光学樹脂層20は、前述した光硬化性組成物を硬化させてなる層であり、画像表示部10および前面板30の各々と密着するように形成されている。
【0067】
前面板30は、画像表示部の保護およびデザイン性向上等の観点から設けられている。前面板30は、画像表示部10と同程度の大きさの板状の部材からなるもので、例えば光学ガラスやプラスチック(アクリル樹脂等)を好適に用いることができる。
【0068】
次に、光学樹脂層20の製造方法について説明する。
【0069】
まず、前述した光硬化性組成物を前面板30に塗布する。該光硬化性組成物を前面板30に塗布する方法は特に制限されず、例えばバーコート塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、グラビアリバース塗工、リバースロール塗工、リップ塗工、ダイ塗工、ディップ塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等の公知の方法を用いることができる。
【0070】
次いで、前面板30の光硬化性組成物の塗布面と画像表示部10とを貼り合わせる。その後、前面板30の方向から380〜500nmの波長領域を含む光線を照射して光硬化性組成物を硬化させる。かかる工程であれば、光硬化性組成物に紫外線吸収剤が含まれているため、画像表示部10に組み込まれている液晶配向膜やカラーフィルター等にダメージを与えることを防止できる。
【0071】
放射光照射装置としては、市販の装置を用いることができる。また、放射光の照射量は、好ましくは10〜10000mJ/cmであり、より好ましくは100〜5000mJ/cmである。
【0072】
3.実施例
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0073】
3.1.製造例1(ウレタンアクリレートAの合成)
撹拌機を備えた反応容器に、イソホロンジイソシアネート18.8質量部、ジブチル錫ジラウレート0.2質量部を仕込み、これらを撹拌しながら液温度が10℃となるように氷冷した。そこに、ペンタエリスリトールトリアクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名「NKエステルA−TMM−3LM−N」、トリエステル57%)93質量部を1時間かけて滴下し、その後60℃に昇温して6時間撹拌して反応させた。このようにして、多官能ウレタンアクリレートAを得た。
【0074】
3.2.光硬化性組成物の調製
撹拌機を備えた反応容器に、製造例1で得られたウレタンアクリレートA30.0質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、商品名「KAYARAD DPHA」)40.0質量部、ビニルピロリドン(ISPジャパン社製、商品名「V−PYROL(RC)」20.0質量部、イソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「IBXA」)10.0質量部を投入して、撹拌・混合することにより(A)重合性化合物の混合物を調製した。次いで、得られた(A)重合性化合物の混合物100質量部に対して、表1に記載の配合割合となるように各成分を添加して撹拌・混合することにより、表1に記載の実施例1〜6および比較例1〜3の光硬化性組成物を得た。
【0075】
なお、表1に記載の各成分は、以下の市販品を使用した。
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、商品名「KAYARAD DPHA」)
・ビニルピロリドン(ISPジャパン社製、商品名「V−PYROL(RC)」)
・イソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「IBXA」)
・TINUVIN329(商品名、BASF社製、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール)
・TINUVIN622LD(商品名、BASF社製、ポリ(N−ヒドロキシエチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシ)ピペリジルスクシネート)
・DAROCURE TPO(商品名、BASF社製、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド)
・Irgacure819(商品名、BASF社製、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル−フェニルフォスフィンオキサイド)
・Irgacure184(商品名、BASF社製、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)
【0076】
3.3.評価方法
3.3.1.硬化膜サンプルの作製
前記「3.2.光硬化性組成物の調製」で得られた光硬化性組成物を、表面離型処理PETフィルム(膜厚100μm)上に膜厚20μmとなるように塗布した。その後、窒素雰囲気下、下記の条件で光線を照射して硬化膜サンプルを作製した。
<光照射条件>
・紫外線照射装置;アイグラフィックス株式会社製、型式「UBX0311−00」
・照度計;アイグラフィックス株式会社製、型式「UV METER UVPF−36」
・照射強度;200mW/cm
上記のようにして得られたそれぞれの硬化膜サンプルについて、反応率、鉛筆硬度、黄色度(YI)および密着性を測定した。
【0077】
3.3.2.反応率の測定
赤外分光光度計(BIORAD社製、形式「FTS−6000」、FT−IR)にDuraScope(株式会社エス・テイ・ジャパン製、ダイヤモンドATRシリーズ)を装着して、1720cm−1(カルボニル伸縮)を基準ピークとして、810cm−1(アクリル基二重結合の伸縮)の光照射前後での減少率から反応率(%)を求めた。その結果を表1に併せて示す。
【0078】
3.3.3.鉛筆硬度の測定
JIS K5400に準拠して、鉛筆で引っかき試験を行い、傷がつかない最も硬い硬度を調べた。その結果を表1に併せて示す。
【0079】
3.3.4.黄色度(YI)の測定
硬化膜の黄色度(YI)の測定は、JIS K7105に準拠して行った。黄色度(YI)の測定装置として、カラーヘーズコンピューター(スガ試験機製、型式「SV−3H」)を使用した。なお、硬化膜の黄色度(YI)は、3以下であればよいが、より小さな数値であることが好ましい。
【0080】
3.3.5.密着性の測定
硬化膜サンプルの硬化膜が形成された面側について、JIS D0202−1998に準拠して碁盤目剥離テープ試験を実施した。具体的には、セロハンテープ(ニチバン株式会社製CT−18)を硬化膜に密着させた後剥離した。評価結果は、100マスのうち剥離しないマスの数で表し、全く剥離しない場合を100/100、全て剥離する場合を0/100として表した。その結果を表1に併せて示す。
【0081】
【表1】

【0082】
3.4.評価結果
表1の結果から明らかなように、実施例1〜6の光硬化性組成物を硬化させてなる硬化膜サンプルは、いずれも反応率が80%を超えており、鉛筆硬度および密着性の結果から良好な硬化特性を示すことが判った。また、黄色度(YI)も十分に低減できることが判った。
【0083】
一方、比較例1の光硬化性組成物を硬化させてなる硬化膜サンプルは、反応率が5%となり、ほとんど硬化していないことが判った。比較例1の光硬化性組成物は、(B)光重合開始剤を含有していない。そのため、硬化反応を開始させる開始剤ラジカルがほとんど発生しなかったと考えられる。
【0084】
比較例2の光硬化性組成物を硬化させてなる硬化膜サンプルは、反応率が不十分であり、密着性の結果から良好な硬化特性を示しているとはいえなかった。比較例2の光硬化性組成物は、(C)光重合開始剤を含有していない。そのため、硬化反応を継続または促進させるラジカルの発生が不十分であったと考えられる。
【0085】
比較例3の光硬化性組成物を硬化させてなる硬化膜サンプルは、良好な硬化特性を示したが、黄色度(YI)の値が4.5となり黄変が認められた。比較例3の光硬化性組成物に含まれるIrgacure819は、可視光領域の光の吸収が大きいため、黄色度(YI)の値が大きくなったと考えられる。
【0086】
以上の結果から、本発明に係る光硬化性組成物によれば、(B)光重合開始剤と(C)光重合開始剤と(D)紫外線吸収剤とを併用することにより、耐黄変性に優れると共に、良好な特性を示す硬化膜を作製できることが理解される。
【0087】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0088】
10…画像表示部、20…光学樹脂層、30…前面板、100…画像表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重合性化合物と、
(B)380〜500nmの波長領域に極大吸収波長を有する光重合開始剤と、
(C)380〜500nmの波長領域の光線に対するモル吸光係数が0.05(L/mol・cm)以下であり、かつ380nm以下の波長領域に極大吸収波長を有する光重合開始剤と、
(D)紫外線吸収剤と、
を含有することを特徴とする、光硬化性組成物。
【請求項2】
請求項1において、
前記(B)光重合開始剤と前記(C)光重合開始剤とを質量基準で1:3〜2:1となる量比で含む、光硬化性組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記(A)重合性化合物100質量部に対する、前記(B)光重合開始剤と前記(C)光重合開始剤との合計量が、0.1質量部以上10質量部以下である、光硬化性組成物。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
前記(D)紫外線吸収剤の含有量が、0.5質量%以上10質量%以下である、光硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
前記(A)重合性化合物が、共役二重結合を有する化合物である、光硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の光硬化性組成物を硬化させてなる、硬化膜。
【請求項7】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の光硬化性組成物からなる塗膜に380〜500nmの波長領域を含む光線を照射する工程を有することを特徴とする、硬化膜の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−1832(P2013−1832A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135127(P2011−135127)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】