説明

光硬化性組成物及びその硬化膜

【課題】透明性及び耐熱性に優れ、かつ高い屈折率と高度な平滑性を有する硬化膜を形成できる光硬化性組成物を提供する。
【解決手段】(A)一次粒径が3〜100nmである無機酸化物被覆酸化チタン粒子又は有機ケイ素化合物被覆酸化チタン粒子、(B)分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、(C)光重合開始剤、(D)下記式(1)


(式中、R1及びR2は、同一又は異なって、炭素数1〜20のアルキル基を示し、R3は水素原子、メチル基又はエチル基を示し、m及びnは正の整数で、m+n=10〜1,000である)で表される化合物、(E)溶剤を含有する光硬化性組成物であって、該組成物中における(E)溶剤を除く成分全量を100質量%としたときに、成分(A)の含有量が30〜85質量%であるディスクコート用光硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性組成物及び、それを硬化させてなる硬化膜に関する。さらに詳しくは、記録媒体の表面保護層や中間層の形成、記録媒体用の集光レンズの形成に有用な組成物、これを硬化させてなる硬化膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大容量のデジタルデータを記録するための記録媒体として、CD、DVD、BD等のレーザー光を用いて記録または再生を行う光ディスクが広く用いられている。光ディスクに照射されるレーザー光は集光され、情報を記録するための層において所定の径のビームスポットを形成する。
光ディスクの高密度化を達成するために、使用するレーザー光の波長を短くしたり、近接場光を使用したりすることが検討されている。特に近接場光を使用する場合には、光ディスクの表面を形成する硬化膜には高度な平滑性が求められる。現在では、例えば、表面粗さは20nm以下、好ましくは15nm以下であることが必要である。
【0003】
このような硬化膜に使用される高屈折率材料について、種々検討がされており、例えば、特許文献1には、金属酸化物粒子として、酸化ジルコニウムを用い、1.7程度の屈折率を有し、保存安定性を改良した高屈折率材料が記載されている。また、特許文献1には、さらに屈折率を増大させるため、屈折率の高い金属酸化物粒子である酸化チタン粒子を用いることが示唆されている。
【0004】
しかしながら、酸化チタン粒子を用いて1.8以上の屈折率を有する平滑な硬化膜を得るためには、酸化チタンの粒子含量を大きくする必要があるが、その場合には、酸化チタン粒子の分散性を向上させるために大量に分散剤を添加しなくてはならず、光ディスク等の表面を形成する硬化膜に十分な平滑性と硬度を与えることは困難であった。
このように、光ディスク等の表面を形成する硬化膜に高い屈折率と十分な平滑性を与えることができる高屈折率膜用材料が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−186216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高い屈折率と高度な平滑性を有する硬化膜を形成できる光硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究を行い、高屈折率の酸化チタンナノ粒子を用いることにより、屈折率の調節を容易にし、かつN,N−ジアルキルアミノポリアルキレングリコールエーテルを使用することにより、高度な平滑性を有する硬化膜を形成できる光硬化性組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、下記成分(A)〜(E):
(A)一次粒径が3〜100nmである無機酸化物被覆酸化チタン粒子又は有機ケイ素化合物被覆酸化チタン粒子、
(B)分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、
(C)光重合開始剤、
(D)下記式(1)
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、R1及びR2は、同一又は異なって、炭素数1〜20のアルキル基を示し、R3はメチル基又はエチル基を示し、m及びnはそれぞれ0又は正の整数で、m+n=10〜1,000である)
で表される化合物、
(E)溶剤
を含有する光硬化性組成物であって、
該組成物中における(E)溶剤を除く成分全量を100質量%としたときに、成分(A)の含有量が30〜85質量%であるディスクコート用光硬化性組成物を提供するものである。
また、本発明は、当該光硬化性組成物を硬化させてなる硬化膜、及び当該硬化膜を有する光ディスクを提供するものである
【発明の効果】
【0011】
本発明の光硬化性組成物は、ハジキ、塗布ムラが無く塗布性に優れ、屈折率の調節が容易であり、これを硬化させることによって、高屈折率で、透明性及び耐熱性に優れ、かつ高度な平滑性を有する硬化膜を形成することができる。
本発明の硬化膜は、光ディスクの表面保護層や中間層として使用することができ、光ディスクの記録密度を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
I.光硬化性組成物:
本発明の光硬化性組成物は、前記成分(A)〜(E)を含有するものである。
以下、各成分について説明する。
【0013】
(A)一次粒径が3〜100nmである無機酸化物被覆酸化チタン粒子又は有機ケイ素化合物被覆酸化チタン粒子:
本発明で用いられる成分(A)の酸化チタン粒子は、無機酸化物又は有機ケイ素化合物によって被覆されていることが必要である。本発明において、「無機酸化物被覆」又は「有機ケイ素化合物被覆」とは酸化チタン粒子の表面が完全に無機酸化物で覆われている必要はなく、粒子表面に無機酸化物又は有機ケイ素化合物が露出している状態であればよい。ここで、酸化チタンは光触媒活性を有しているため、酸化チタン粒子は、無機酸化物で被覆されていることが好ましい。酸化チタン粒子の被覆に使用される無機酸化物は、酸化チタンの光触媒活性を抑制することができれば公知の物質を適用できる。この様な無機酸化物の例としては、ケイ素、亜鉛、スズ、ジルコニウム、アルミニウム等の酸化物が挙げられ、さらに複数の素材を使用した複合酸化物であってもよい。また、有機ケイ素化合物によって被覆されていることにより、組成物中での粒子の流動性が向上し、平坦な表面を有する硬化膜が得られる。また、酸化チタン粒子を無機酸化物で被覆した後、さらに有機ケイ素化合物で処理した場合も、無機酸化物被覆酸化チタン粒子又は有機ケイ素化合物被覆酸化チタン粒子に含むものとする。
酸化チタン粒子の結晶型は特に制限されず、アナターゼ型、ルチル型のいずれであってもよい。
【0014】
無機酸化物被覆酸化チタン粒子の一次粒径は3〜100nmであることが必要であり、好ましくは10〜60nmである。一次粒径が100nmを超えると、平坦な表面を有する硬化膜を得ることができないおそれがある。さらに、組成物を基材等に塗布したときに、ハジキ、ストリエーション等の塗布不良を生じるおそれがある。
本発明において、一次粒径は、電子顕微鏡を用いた観測によって測定される。
【0015】
酸化チタン粒子を、無機酸化物である二酸化ケイ素で被覆するには、公知の方法、例えば、特開2003−112923号公報、特開平8−48940号公報、特開2007−246351号公報等に記載の方法を用いることができる。また、酸化チタン粒子をシランカップリング剤等の有機ケイ素化合物で被覆する方法は、公知の方法を用いることができる。
【0016】
より具体的には、例えば、酸化チタン粒子を0.1〜10質量%になるように水に分散させる。この分散液に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物、アンモニア、4級アミン等の塩基性窒素化合物を添加し、pHを9〜12に調整する。分散液の温度を50〜100℃に調整し、ここに、シリカ源としてケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のアルカリ金属ケイ酸塩を、連続的に又は断続的に添加して前記酸化チタン粒子表面に析出させ、二酸化ケイ素被覆酸化チタン粒子を得ることができる。得られた二酸化ケイ素被覆酸化チタン粒子は、必要に応じて、加熱熟成、洗浄、濃縮、乾燥を行うことも好ましい。
粒子表面のケイ素原子の割合を調節するには、被覆する二酸化ケイ素やケイ素化合物の量を調節すればよく、例えば、上記の方法では、添加するアルカリ金属ケイ酸塩の量を調節すればよい。
【0017】
成分(A)の粒子は、1種単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
本発明の組成物中における成分(A)の含有量は、組成物中の(E)溶剤を除く成分全量を100質量%としたときに、30〜85質量%であることが必要であり、好ましくは40〜80質量%である。30質量%未満であると、得られる硬化膜の屈折率が高くならず、85質量%を超えると、粒子成分が多くなりすぎて硬化膜が得られないことがある。
特に、成分(A)の含有量が40〜80質量%の場合には、1.60以上の高い屈折率が得られると共に優れた膜強度が得られる。
なお、本発明において屈折率は、23℃で測定した波長405nmの屈折率を意味する。
【0018】
(B)分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物:
光照射による開始剤の分解で成分(B)が互いに反応して架橋することで、塗膜としての強度を確保し、機械的強度や耐熱性を高めるという機能を果たす。具体的には、露光後の現像液に浸漬している間の塗膜の膨潤、粒子の流出を抑制したり、塗膜に耐擦傷性を付与する等の効果が得られる。
【0019】
成分(B)としては、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であれば特に限定されないが、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましい。
このような(メタ)アクリルエステル類としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングルコールジ(メタ)アクリレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、及びこれらの化合物を製造する際の出発アルコール類のエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物のポリ(メタ)アクリレート類、分子内に2以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴエステル(メタ)アクリレート類、オリゴエーテル(メタ)アクリレート類、オリゴウレタン(メタ)アクリレート類、及びオリゴエポキシ(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。
【0020】
これらの市販品としては、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサメタアクリレート(アロニックスTO−1786、東亜合成社製)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物(KAYARAD DPHA、日本化薬社製)、トリメチロールプロパントリアクリレート(ビスコート♯295、大阪有機化学工業社製)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(ビスコート♯300、大阪有機化学工業社製)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(NK エステル A−TMM−3LM−N、新中村化学工業社製)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(SARTOMER SR399E、巴工業社製)等が挙げられる。
【0021】
また、成分(B)として、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレートを用いることもでき、得られる硬化膜の耐熱性をさらに向上させることができる。ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビスフェノールA型エポキシアクリレート、ビスフェノールA型エポキシメタクリレート等が挙げられる。また、市販品としては、リポキシVR−77(昭和高分子社製)、EB3700(ダイセル・サイテック社製、NKオリゴEMA−1020(新中村化学社製)等が挙げられる。
【0022】
成分(B)の化合物は、1種単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
本発明の組成物中における成分(B)の含有量は、組成物の(E)溶剤を除く成分全量を100質量%としたときに、通常5〜50質量%、好ましくは7〜42質量%、より好ましくは10〜40質量%である。5質量%未満であると、現像液浸漬時に塗膜が膨潤・崩壊したり、パターニング性が低下したりするおそれがあり、50質量%を超えると、高屈折率が見込めない場合がある。
【0023】
(C)光重合開始剤:
光重合開始剤の添加により、効率的に成分(B)を架橋させることができる。光重合開始剤を添加しない場合、光照射しても架橋反応が起こらず、硬化がほとんど進まないため、塗膜としての強度が確保できない上、パターニングが不可能となる。
【0024】
光重合開始剤は、活性エネルギー線の照射により活性種を発生する化合物であり、活性種としてラジカルを発生する光ラジカル発生剤等が挙げられる。
尚、活性エネルギー線とは、活性種を発生する化合物を分解して活性種を発生させることのできるエネルギー線と定義される。このような活性エネルギー線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線等の光エネルギー線が挙げられる。これらのうち、一定のエネルギーレベルを有し、硬化速度が速く、しかも照射装置が比較的安価で、小型な観点から、紫外線を使用することが好ましい。
【0025】
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、アントラキノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、カルバゾール、キサントン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,1−ジメトキシデオキシベンゾイン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、チオキサントン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、トリフェニルアミン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、フルオレノン、フルオレン、ベンズアルデヒド、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、3−メチルアセトフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(BTTB)、2−(ジメチルアミノ)−1−〔4−(モルフォリニル)フェニル〕−2−フェニルメチル)−1−ブタノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、ベンジル、又はBTTBとキサンテン、チオキサンテン、クマリン、ケトクマリン、その他の色素増感剤との組み合わせ等を挙げることができる。
【0026】
これらの光重合開始剤のうち、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−1−〔4−(モルフォリニル)フェニル〕−2−フェニルメチル)−1−ブタノン等が好ましく、さらに、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−1−〔4−(モルフォリニル)フェニル〕−2−フェニルメチル)−1−ブタノン等が好ましい。
【0027】
光重合開始剤の市販品としては、例えば、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IRGACURE184、BASF社製)、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(IRGACURE907、BASF社製)、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン(DAROCURE1173、BASF社製)、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)(IRGACURE OXE02、BASF社製)等が挙げられる。
【0028】
これらの光重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の組成物中における成分(C)の含有量は、組成物の(E)溶剤を除く成分全量を100質量%としたときに、通常0.1〜20質量%、好ましくは1〜15質量%である。
0.1質量%未満であると、充分な硬化反応が進まないおそれがあり、20質量%を超えると、分解残渣の増加等により塗膜強度が低下するおそれがある。
【0029】
(D)前記式(1)で表される化合物:
本発明で用いられる成分(D)は、前記式(1)で表されるもので、得られる硬化膜の表面の平坦性をより向上させるために用いられる。
また、式(1)中、下記式(2)で示されるポリアルキレンオキサイド鎖は、式(3)及び式(4)で示される繰り返し単位が、ブロック又はランダムに共重合したものである。
【0030】
【化2】

【0031】
成分(D)は、活性水素基を有する脂肪族二級アミンに、アルキレンオキサイドを付加させた、ブロック型又はランダム型の、分子の片末端に三級アミノ基を有する数平均分子量500〜60,000、好ましくは1,000〜10,000のポリアルキレンオキサイドである。脂肪族二級アミンとしては、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基を有するもの、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、ジラウリルアミン、ジステアリルアミン等が使用でき、更に、ヒドロキシエチルジアルキルアミン又はヒドロキシプロピルジアルキルアミンも使用することができる。また、アルキレンオキサイドとしては、炭素数2〜4のもの、すなわち、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド又はブチレンオキサイドが挙げられる。前記のような脂肪族二級アミンへのアルキレンオキサイドの付加反応の方法は、特に制限されない。
【0032】
成分(D)の含有量は、組成物の(E)溶剤を除く成分全量を100質量%としたときに、通常0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。10質量%を超えると、架橋に関与しない成分の増加により塗膜強度が低下するおそれがある。
【0033】
(E)溶剤:
本発明の組成物は、(E)溶剤を含有する。溶剤を含有することで、組成物を塗布する際のレベリング性を付与し、均一な塗膜を得ることが可能となる。また、組成物中の全成分((A)粒子、(B)多官能(メタ)アクリレート、(C)光重合開始剤、(D)N,N−ジアルキルアミノポリアルキレンオキサイド等)を均一に混合させるためには、全成分を良好に溶解する組成の溶剤を選択することが好ましい。尚、本発明において、エチレン性不飽和基を有する化合物は溶剤には含まない。
【0034】
本発明で用いる(E)溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;乳酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0035】
本発明の組成物中における(E)溶剤の含有量は、組成物の(E)溶剤を除く成分全量100質量部に対して、通常50〜1,000質量部、更に100〜500質量部であるのが好ましい。50質量部未満では、粒子の分散安定性低下による貯蔵安定性の低下、レベリング不十分で均一な塗膜が得られない等のおそれがあり、1,000質量部を超えると、得られる塗膜の膜厚が薄くなり、目的用途での使用が困難になるおそれがある。
【0036】
(F)その他の添加剤:
本発明の組成物は、前記成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、種々の添加剤を含有することができる。
かかる添加剤としては、例えば、分散剤、表面改質剤、重合性化合物等が挙げられる。
【0037】
本発明の組成物は、上記成分(A)〜(E)や各種添加剤を加え、均一に撹拌することによって得ることができる。
【0038】
本発明の組成物は、ハジキ、塗布ムラが無く塗布性に優れ、屈折率の調節が容易であり、これを硬化させることによって、透明性、耐熱性に優れ、かつ高度な平滑性を有する硬化膜を形成することができる。本発明の組成物は、高屈折率の硬化膜を与えることができるため、高密度光記録ディスク用の高屈折率層形成用材料として有用である。
【0039】
本発明の組成物は、屈折率1.8以上でも面内の最大高低差が10nm以下の平滑性が高い硬化膜を供することができる。また、高い屈折率と平滑性を有する硬化膜を形成できる光硬化性組成物を供することができるため、例えば、高密度光記録ディスク用の高屈折率層形成用材料として有用である。
【0040】
II.硬化膜:
本発明の硬化膜は、前記本発明の組成物を硬化させてなるものである。
より詳細には、本発明の硬化膜は、本発明の組成物からなる塗膜を、放射線照射及び/又は加熱することによって硬化させて得られる。
以下、各工程について説明する。
【0041】
(1)塗布:
本発明の組成物は、孔径0.05〜1μm程度のフィルター、更に0.5μmのフィルターで予めろ過しておくことが好ましい。
また、本発明の組成物を塗布する基板はHMDS(ヘキサメチルジシラザン)で表面処理されていてもよい。HMDSの処理方法は、例えば、HMDSを基板上に滴下し、スピンコータで基板を回転させて余剰のHMDSを除去する方法や、気化したHMDSが存在する雰囲気に基板を曝す方法等が挙げられる。本発明の組成物を塗布する方法は、スピンコート、ロールコート、バーコート、ダイコート、グラビア印刷等が挙げられるが、膜厚の均一性を得やすいことからスピンコートが好ましい。上記、塗布基板は、さらにホットプレートやオーブンでベークすることが好ましい。ベークの条件は組成物により適宜調整できるが、例えば50〜120℃、好ましくは70〜90℃のホットプレートで、30〜300秒、好ましくは60〜120秒加熱することにより、塗膜を作製することができる。
【0042】
(2)露光:
露光の際に用いるマスクは特に限定されず、目的に応じて適切なものを選択すればよい。
上記で作製した塗膜に、マスクを介して露光し、パターン形成を行う。露光は、マスクアライナーや縮小投影露光装置等を用いることができる。露光の光源は、本発明の組成物の成分(C)が感応する波長の光を含んでいれば特に限定されないが、高圧水銀ランプ、紫外線レーザー等を適用することができる。
【0043】
本発明においては、酸化ケイ素被覆酸化チタン粒子又は有機ケイ素化合物被覆酸化チタン粒子を使用した場合、粒子表面に所定量以上のケイ素原子が存在しているため、未露光部分が現像液に容易に分散し、精細なパターニング性に優れた硬化膜を容易に製造できる。
本発明の硬化膜はTMAH等のアルカリ性水溶液で現像することが可能であり、任意の形状を形成することができる。
本発明の硬化性樹脂組成物は基材の形状に追随することなく、平坦な表面を有する硬化膜を形成することができる。
本発明の硬化膜は、固体撮像素子の高屈折率層として使用されることにより、固体撮像素子の集光効率を向上させることができる。
本発明の硬化膜は、固体撮像素子の高屈折率部材その他の、高屈折率が必要とされるものにも使用できる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら制限されるものではない。
【0045】
製造例1((D)成分(化合物1)の製造)
温度計、攪拌装置、滴下ボンベを装着したガラス製オートクレーブにジエチルアミン73.1g(1.0mol)を加え、窒素ガスで置換後、減圧下(0.1MPa以下)、100℃に昇温した。次に、エチレンオキサイド52.8g(1.2mol)を90〜110℃の範囲で3時間かけて滴下し、滴下終了後90〜110℃の範囲で2時間攪拌した。室温まで冷却した後、得られたジエチルアミンエチレンオキサイドにテトラメチルアンモニウムヒドロキシド20%水溶液5.0gを添加し、100℃に昇温後、減圧下(0.1MPa以下)で1時間攪拌した。50℃まで冷却後、エチレンオキサイド4,404g(100mol)を80〜90℃の範囲で7時間かけて滴下し、滴下終了後70〜80℃の範囲で0.5時間攪拌した。さらに室温まで冷却した後、硫酸ヒドロキシルアミン0.04g(0.2mmol)を加え、減圧下(0.1MPa以下)150℃で1時間攪拌した後、化合物1(N,N−ジエチルアミノポリエチレンオキサイド)を得た。得られた化合物の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したところ、ポリスチレン換算数平均分子量は4,500であった。
【0046】
製造例2((D)成分(化合物2)の製造)
エチレンオキサイド4,404g(100mol)の代わりにエチレンオキサイド2,202g(50mol)とプロピレンオキサイド2,902g(50mol)を用いた以外は製造例1と同様の方法で、化合物2を得た。得られた化合物のポリスチレン換算数平均分子量は5,200であった。
【0047】
製造例3((D)成分(化合物3)の製造)
エチレンオキサイド4,404g(100mol)の代わりにエチレンオキサイド3,522g(80mol)とプロピレンオキサイド1,161g(20mol)を用い、エチレンオキサイド以外の化合物の使用量を1/10とした以外は製造例1と同様の方法で、化合物3を得た。得られた化合物のポリスチレン換算数平均分子量は47,000であった。
【0048】
製造例4((D)成分(化合物4)の製造)
ジエチルアミン73.1g(1.0mol)の代わりにジオクチルアミン241g(1.0mol)を、エチレンオキサイド52.8g(1.2mol)の代わりにプロピレンオキサイド116g(2mol)を用いた以外は製造例1と同様の方法で、化合物4を得た。得られた化合物のポリスチレン換算数平均分子量は4,700であった。
【0049】
製造例5((D)成分(化合物5)の製造)
エチレンオキサイド4,404g(100mol)の代わりにエチレンオキサイド88.1g(2mol)とプロピレンオキサイド116g(2mol)を用いた以外は製造例1と同様の方法で、化合物5を得た。得られた化合物のポリスチレン換算数平均分子量は330であった。
【0050】
製造例6(酸化チタン粒子の製造)
(1)酸化チタンヒドロゾルの製造:
1Lのガラスビーカーに、TiO2濃度25%のオキシ塩化チタン水溶液240g(TiO2として60g)と、ZrO2濃度35%のオキシ塩化ジルコニウム粉末5g(ZrO2として1.8g)を入れ、水を加えて全量を1Lとし、オキシ塩化ジルコニウム粉末が溶解したことを確認した。この溶液をA液と呼ぶ。
攪拌手段及び還流冷却器を備えた2Lフラスコに、水1kgと、SnO2濃度30%の塩化第二スズ水溶液20g(SnO2として6g)を仕込み、攪拌下加熱し、温度が60℃に達した時点で60℃を維持しながらA液を15分かけて滴下し、滴下終了後沸騰するまで加熱し、還流下3時間沸騰状態を維持した。その後40℃に冷却し、28%アンモニア水溶液でpHを7.0に調整し、濾過し、洗浄してケーキを得た。このケーキに、水と36%塩酸を加えて攪拌し、pH1.3、TiO2濃度20%で、TiO2に対して、SnO2として10%、ZrO2として3%を含有する酸化チタンヒドロゾル300gを製造した。このゾルを100℃で乾燥した粉末のX線回折による結晶系はルチル型で、結晶径は8nmであった。
【0051】
(2)ヒドロゾルの被覆処理:
2Lガラスビーカーに、上記(1)で得たTiO2濃度20%の酸化チタンヒドロゾル200g(TiO2として40g)を入れ、イオン交換水を加えてTiO2濃度4%に希釈し、これに攪拌しながら3−グリシドキシプロピルトリメトキシラン(信越化学工業社製、オルガノシランKBM−403)5.2gを添加した。この溶液をB液と呼ぶ。
別の5Lガラスビーカーに、SiO2濃度10%のケイ酸ナトリウム水溶液40g(SiO2として4g)と、48%水酸化ナトリウム水溶液2gを仕込み、イオン交換水で希釈して全量を1200gとした。この溶液に、攪拌しながらB液を15分かけて滴下した。滴下終了後のpHは10であった。次にこの混合溶液へ、SnO2濃度30%の塩化第二スズ水溶液20g(SnO2として6g)を、48%水酸化ナトリウム水溶液と同時に、pH10を維持しながら15分かけて滴下し、引き続きSiO2濃度10%のケイ酸ナトリウム水溶液20g(SiO2として2g)を添加し、80℃に加熱した後、1%塩酸でpH8に調整し、同温度で120分間熟成した。これを20℃に冷却し、濃度10%のクエン酸水溶液でpH3に調整し、この液を限外濾過モジュール(旭化成ケミカルズ製、マイクローザSLP−1053)に濾過量と同量のイオン交換水を補水しながら通液し、TiO2濃度3%で電気伝導度3×10-3S/cm以下になるまで電解質成分を低減させた。この段階でpH調整剤として使用したクエン酸は除去され、残存していなかった。さらに、t−ブチルアミンでpH8に調整し、さらに同じ限外濾過モジュールを用いて固形分濃度が20%になるまで濃縮し、固形分濃度20%で、TiO2に対して、SiO2として15%、SnO2として15%を被覆した酸化チタンヒドロゾルを得た。
【0052】
(3)ヒドロゾルのプロピレングリコールモノメチルエーテル溶媒置換:
上記(2)で得た被覆処理酸化チタンヒドロゾルをプロピレングリコールモノメチルエーテルでTiO2濃度5%に希釈し、同じ限外濾過モジュールを用いて濾過量と同量のプロピレングリコールモノメチルエーテルを補給しながら通液し、最後にプロピレングリコールモノメチルエーテルの補給を止めて水分が1%以下、固形分濃度20%で、TiO2に対して、SiO2として15%、SnO2として15%を被覆したプロピレングリコールモノメチルエーテル分散酸化チタンオルガノゾル(SiO2被覆ルチル型酸化チタン粒子のプロピレングリコールモノメチルエーテル分散ゾル)を得た。得られた酸化チタンオルガノゾルの粒子径を電子顕微鏡で測定したところ、11nmであった。
【0053】
実施例1
1Lのガラスフラスコに、製造例6で得たプロピレングリコールモノメチルエーテル分散酸化チタンオルガノゾル452.0g(酸化チタンとして90.4g)、ビスフェノールA型エポキシアクリレート(EB3700、ダイセル・サイテック社製)29.0g、製造例1で得た化合物1を3.8g、光重合開始剤(IRGACURE907、BASF社製)3.8g、シリコーン系レベリング剤(SH190、東レ・ダウコーニング社製)1.3g、プロピレングリコールモノメチルエーテル10.5gを投入し、室温にて1時間攪拌して、光硬化性組成物を得た。
【0054】
実施例2〜9及び比較例1〜3
表1及び表2に示す組成とした以外は実施例1と同様にして、各組成物を製造した。
【0055】
実施例及び比較例で製造した各組成物を、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)処理したシリコンウェハ上にスピンコート塗布して、80℃のホットプレート上で1分間加熱し、膜厚0.5μmの塗膜を形成させた。マスクアライナーPLA−501F(Canon製)を用い、365nm(光源は高圧水銀ランプ)で、照射光量300mJ/cm2で露光して、硬化膜を製造した。
【0056】
<硬化膜の特性評価>
上記のようにして得た硬化膜を用い、下記項目について特性を評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0057】
(a)平滑性(面内の最大高低差):
走査型プローブ顕微鏡SPA−400(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)により、10×10μmの範囲内での測定結果から最大高低差を求めた。最大高低差が20nm以下の場合に平滑性が高いと判断し、「○」で示した。
【0058】
(b)屈折率:
n&k Analyzer(n&k Technology社(米国)製)を用いて、405nmの屈折率を23℃で測定した。
【0059】
(c)膜強度:
硬化膜をベンコットS−2(商品名、旭化成せんい社製)でラビングし、硬化膜の外観を目視にて観察し下記基準に従って評価した。
○:初期と比較して変化がなかった。
×:初期と比較して変化があった。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
表1中の成分は下記のものを示す。
モノマー1:ビスフェノールA型エポキシアクリレート(EB3700、ダイセル・サイテック社製)
モノマー2:ペンタエリスリトールトリアクリレート(ビスコート#300、大阪有機化学工業社製)
光重合開始剤:2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(IRGACURE907:BASF社製)
【0063】
表1の結果から、本発明の組成物により得られる硬化膜はいずれも、平滑性、及び屈折率の特性に優れたものであった。(D)成分の使用量が多い場合を除き、膜強度においても優れた特性が得られた。
これに対し、N,N−ジアルキルアミノポリアルキレンオキサイド(化合物1〜化合物5)を含有しない比較例1及び比較例2では面内最大高低差が大きく、平滑性が悪いものであった。N,N−ジアルキルアミノポリアルキレンオキサイドの分子量が小さすぎる場合、すなわち式(1)において、n+mが10に満たない場合(比較例3)も平坦性が悪かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)〜(E):
(A)一次粒径が3〜100nmである無機酸化物被覆酸化チタン粒子又は有機ケイ素化合物被覆酸化チタン粒子、
(B)分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、
(C)光重合開始剤、
(D)下記式(1)
【化1】

(式中、R1及びR2は、同一又は異なって、炭素数1〜20のアルキル基を示し、R3はメチル基又はエチル基を示し、m及びnは0又は正の整数で、m+n=10〜1,000である)
で表される化合物、
(E)溶剤
を含有する光硬化性組成物であって、
該組成物中における(E)溶剤を除く成分全量を100質量%としたときに、成分(A)の含有量が30〜85質量%であるディスクコート用光硬化性組成物。
【請求項2】
成分(A)の一次粒径が10〜60nmである請求項1に記載のディスクコート用光硬化性組成物。
【請求項3】
組成物中における(E)溶剤を除く成分全量を100質量%としたとき、成分(A)の含有量が40〜80質量%である請求項1又は2に記載のディスクコート用光硬化性組成物。
【請求項4】
組成物中における(E)溶剤を除く成分全量を100質量%としたとき、成分(D)の含有量が0.01〜10質量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載のディスクコート用光硬化性組成物。
【請求項5】
組成物中における(E)溶剤を除く成分全量を100質量%としたとき、成分(D)の含有量が0.1〜5質量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載のディスクコート用光硬化性組成物。
【請求項6】
組成物中における(E)溶剤を除く成分全量100質量部に対して、(E)溶剤の配合量が50〜1000質量部である請求項1〜5のいずれか1項に記載のディスクコート用光硬化性組成物。
【請求項7】
成分(B)が、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレートである請求項1〜6のいずれか1項に記載のディスクコート用光硬化性組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の光硬化性組成物を硬化させてなる硬化膜。
【請求項9】
請求項8記載の硬化膜を有する光ディスク。

【公開番号】特開2013−8428(P2013−8428A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141938(P2011−141938)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】