説明

光硬化性組成物

【課題】短時間かつ少量の光照射により、シラン化合物が速やかに架橋し、硬化物を与える光硬化性組成物を提供する。
【解決手段】加水分解性基がケイ素に結合したシラン化合物、前記シラン化合物の加水分解物、及び前記シラン化合物の加水分解物の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物(A)と、下記式(1)で表される成分(B)とを含む、光硬化性組成物。
【化1】


上記式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の有機基を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光が照射されると硬化する光硬化性組成物に関し、より詳細には、硬化成分としてのシラン化合物と、該シラン化合物を硬化させるためのベンゾフェノン誘導体とを含む光硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光が照射されると硬化する光硬化性組成物として、アルコキシシリル基などの加水分解性シリル基を有するシラン化合物を含む光硬化性組成物が種々提案されている。この光硬化性組成物は、塗料、コーティング剤、接着剤、感圧接着剤、シーラント及びシーリング剤等の様々な用途に用いられている。
【0003】
上記シラン化合物を架橋させ、光硬化性組成物を硬化させるために、オニウム塩や光酸発生剤が広く用いられている。しかしながら、オニウム塩や光酸発生剤は、短時間かつ少量の光照射では充分に活性化しないことがあった。よって、上記シラン化合物を架橋させて、光硬化性組成物を充分に硬化させるためには、長時間かつ多量の光を照射しなければならなかったり、多量のオニウム塩や光酸発生剤を用いなければならないことがあった。
【0004】
さらに、オニウム塩は溶剤に対する溶解性が比較的低く、光硬化性組成物においてオニウム塩が析出し易かった。また、光酸発生剤は、光が照射されると酸を発生するが、該酸が悪影響を及ぼすことがあった。
【0005】
一方、下記の特許文献1には、金属原子に加水分解性の官能基が結合した加水分解性金属化合物(A)と、光が照射されると酸素存在下で加水分解性金属化合物(A)の反応、重合又は架橋を促進させる化合物(B)とを含む光硬化性組成物が開示されている。上記加水分解性金属化合物(A)としては、加水分解性シリル基を有するシラン化合物等が用いられ得る。特許文献1では、光が照射されると、大気中の酸素によって上記化合物(B)が活性化され、上記加水分解性金属化合物(A)の反応、重合又は架橋が進行し、硬化物を与えるとされている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の光硬化性組成物でも、短時間かつ少量の光照射では、上記化合物(B)が充分に活性化せず、光硬化性組成物が充分に硬化しないことがあった。
【特許文献1】国際公開WO02/083764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、短時間かつ少量の光照射により、シラン化合物が速やかに架橋し、硬化物を与える光硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、加水分解性基がケイ素に結合したシラン化合物、該シラン化合物の加水分解物、及び該シラン化合物の加水分解物の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物(A)と、下記式(1)で表される成分(B)とを含むことを特徴とする、光硬化性組成物が提供される。
【0009】
【化1】

【0010】
上記式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の有機基を示す。
【0011】
本発明のある特定の局面では、前記シラン化合物(A)は、下記式(2)で表されるシラン化合物、該シラン化合物の加水分解物、及び該シラン化合物の加水分解物の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0012】
Si(X1)(X2)(X3)4−p−q・・・(2)
上記式(2)中、X1は水素又は炭素数が1〜30である非加水分解性の有機基を示し、X2はアルコキシ基を示し、X3はアルコキシ基以外の加水分解性基を示し、pは0〜3の整数を示し、qは1〜4の整数を示し、p+q≦4である。pが2又は3であるとき、複数のX1は同一であってもよく異なっていてもよい。qが2〜4であるとき、複数のX2は同一であってもよく異なっていてもよい。p+q≦2であるとき、複数のX3は同一であってもよく異なっていてもよい。
【0013】
本発明の他の特定の局面では、前記シラン化合物(A)は、下記式(3)で表される置換基を有するシラン化合物、該シラン化合物の加水分解物、及び該シラン化合物の加水分解物の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0014】
−Si(Z1)(Z2)・・・(3)
上記式(3)中、Z1は水素または炭素数が1〜30である非加水分解性の有機基を示し、Z2はアルコキシ基を示し、mは0〜2の整数を示し、nは1〜3の整数を示し、m+n≦3である。mが2であるとき、複数のZ1は同一であってもよく異なっていてもよい。nが2〜3であるとき、複数のZ2は同一であってもよく異なっていてもよい。
【0015】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0016】
本願発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討した結果、加水分解性基がケイ素に結合したシラン化合物、その加水分解物、及びその加水分解物の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物(A)と、上述した式(1)で表される成分(B)とを含む構成とすることによって、短時間かつ少量の光照射でも、上記成分(B)が充分に活性化され、かつ上記シラン化合物(A)の架橋が速やかに進行し、硬化物を与えることを見出し、本発明をなすに至った。
【0017】
本発明に係る光硬化性組成物は、加水分解性基がケイ素に結合したシラン化合物、該シラン化合物の加水分解物、及び該シラン化合物の加水分解物の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物(A)を含む。
【0018】
上記シラン化合物(A)としては、下記式(2)で表されるシラン化合物、該シラン化合物の加水分解物、及び該シラン化合物の加水分解物の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0019】
Si(X1)(X2)(X3)4−p−q・・・(2)
上記式(2)中、X1は水素又は炭素数が1〜30である非加水分解性の有機基を示し、X2はアルコキシ基を示し、X3はアルコキシ基以外の加水分解性基を示し、pは0〜3の整数を示し、qは1〜4の整数を示し、p+q≦4である。pが2又は3であるとき、複数のX1は同一であってもよく異なっていてもよい。qが2〜4であるとき、複数のX2は同一であってもよく異なっていてもよい。p+q≦2であるとき、複数のX3は同一であってもよく異なっていてもよい。
【0020】
また、上記シラン化合物(A)としては、下記式(3)で表される置換基を有するシラン化合物、該シラン化合物の加水分解物、及び該シラン化合物の加水分解物の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種も好ましい。
【0021】
−Si(Z1)(Z2)・・・(3)
上記式(3)中、Z1は水素または炭素数が1〜30である非加水分解性の有機基を示し、Z2はアルコキシ基を示し、mは0〜2の整数を示し、nは1〜3の整数を示し、m+n≦3である。mが2であるとき、複数のZ1は同一であってもよく異なっていてもよい。nが2〜3であるとき、複数のZ2は同一であってもよく異なっていてもよい。
【0022】
上記非加水分解性の有機基X1及び非加水分解性の有機基Z1としては、特に限定されないが、加水分解を起こし難く、安定な疎水基である炭素数1〜30の有機基が挙げられる。安定な疎水基である炭素数1〜30の有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ペンチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基及びエイコシル基等の炭素数1〜30のアルキル基、アルキル基のフッ素化物、塩素化物、臭素化物等のハロゲン化アルキル基(例えば、3−クロロプロピル基、6−クロロプロピル基、6−クロロヘキシル基および、6,6,6−トリフルオロヘキシル基等)、ハロゲン置換ベンジル基等の芳香族置換アルキル基(例えば、ベンジル基、4−クロロベンジル基及び4−ブロモベンジル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、メシチル基、ナフチル基等)、ビニル基やエポキシ基を含む有機基、アミノ基を含む有機基、チオール基を含む有機基等が挙げられる。
【0023】
上記アルコキシ基X2、上記アルコキシ基Z2及びアルコキシ基以外の加水分解性基X3は、通常、過剰の水の共存下、無触媒で、室温(25℃)〜100℃の温度範囲内で加熱することにより、加水分解されてシラノール基を生成することができる基、またはさらに縮合してシロキサン結合を形成することができる基である。
【0024】
上記アルコキシ基X2及び上記アルコキシ基Z2としては、特に限定されないが、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、シクロヘキシル基等の炭素数1〜6のアルコキシ基等やフェノキシ基が挙げられる。
【0025】
上記アルコキシ基以外の加水分解性基X3としては、特に限定されないが、具体的には、塩素、臭素等のハロゲン基、アミノ基等が挙げられる。
【0026】
上記加水分解性基がケイ素に結合したシラン化合物の具体例としては、例えば、トリフェニルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、エチルジメチルメトキシシラン、メチルジエチルメトキシシラン、エチルジメチルエトキシシラン、メチルジエチルエトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、フェニルジエチルメトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、フェニルジエチルエトキシシラン、メチルジフェニルメトキシシラン、エチルジフェニルメトキシシラン、メチルジフェニルエトキシシラン、エチルジフェニルエトキシシラン、tert−ブトキシトリメチルシラン、ブトキシトリメチルシラン、ジメチルエトキシシラン、メトキシジメチルビニルシラン、エトキシジメチルビニルシラン、ジフェニルジエトキシラン、フェニルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジアセトキシメチルシラン、ジエトキシメチルシラン、3−クロロポロピルジメトキシメチルシラン、クロロメチルジエトキシメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジアセトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ジエトキシジエチルシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチル−トリ−n−プロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチル−トリ−n−プロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピル−トリ−n−プロポキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリプロポキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリプロポキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリプロポキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリプロポキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリプロポキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ドデシルトリプロポキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリエトキシシラン、テトラデシルトリプロポキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリプロポキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリプロポキシシラン、エイコシルデシルトリメトキシシラン、エイコシルトリエトキシシラン、エイコシルトリプロポキシシラン、6−クロロヘキシルトリメトキシシラン、6,6,6−トリフルオロヘキシルトリメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、4−クロロベンジルトリメトキシシラン、4−ブロモベンジルトリ−n−プロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、N−β−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリイソプロポキシシラン、トリ−n−プロポキシシラン、トリアセトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラアセトキシシラン等が挙げられる。また、ビス(メチルジメトキシシリル)ポリプロピレングリコール、ビス(トリメトキシシリル)ポリプロピレングリコール、ビス(メチルジメトキシシリル)ポリイソブチレン、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリレート、スチレン・3−(トリメトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート共重合体、アルキル(メタ)アクリレート・3−(トリメトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート・スチレン・アルキル(メタ)アクリレート・3−(トリメトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート共重合体、スチレン・3−(メチルジメトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート共重合体、アルキル(メタ)アクリレート・3−(メチルジメトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート・スチレン・アルキル(メタ)アクリレート・3−(メチルジメトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート共重合体等も挙げられる。これらの加水分解性基がケイ素に結合したシラン化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0027】
本発明に係る光硬化性組成物には、上記シラン化合物(A)として、上述した加水分解性基がケイ素に結合したシラン化合物、このシラン化合物の加水分解物、およびこのシラン化合物の加水分解物の縮合物からなる群から選択される少なくとも1種が含有されていればよく、2種以上が含まれていてもよい。
【0028】
本発明に係る光硬化性組成物は、上記シラン化合物(A)に加えて、下記式(1)で表される成分(B)をさらに含む。下記式(1)で表される成分(B)は、感度に極めて優れ、短時間かつ少量の光照射でも充分に活性化し、上記シラン化合物(A)を効果的に架橋させる。また、上記成分(B)は、各種溶剤等に対する溶解性にも優れている。
【0029】
【化2】

【0030】
上記式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の有機基を示す。炭素数1〜20の有機基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル記、tert−ブチル基、アミル基、sec−アミル基、イソアミル基、tert−アミル基、ヘキシル基、ベンジル基、フェニル基等が挙げられる。
【0031】
上記成分(B)としては、光照射により酸を発生しないものが好ましい。この場合、光酸発生剤のように、光が照射されると酸を発生しないので、光硬化性組成物の硬化物において酸が悪影響を及ぼすことがない。本発明に係る光硬化性組成物は、上記成分(B)の感度が極めて高いので、上述したオニウム塩や光酸発生剤を含まないことが好ましい。
【0032】
上記式(1)で表される成分(B)の配合割合としては、上記シラン化合物(A)100重量部に対して、0.01〜30重量部の範囲が好ましい。より好ましくは、0.1〜20重量部の範囲である。上記成分(B)が少なすぎると、光照射によりシラン化合物(A)が充分に架橋しないことがあり、多すぎると、成分(B)に由来する非架橋成分が増え、十分な架橋度が得られないことがある。
【0033】
本発明に係る光硬化性組成物は、適宜の溶剤をさらに含有していてもよい。光硬化性組成物に溶剤を配合することにより、塗布性を高めることができる。
【0034】
上記溶剤としては、特に限定されないが、ベンゼン、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、スチレン、トリメチルベンゼン、ジエチルベンゼンなどの芳香族炭化水素化合物;シクロヘキサン、シクロヘキセン、ジペンテン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン、イソヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、n−ノナン、イソノナン、n−デカン、イソデカン、テトラヒドロナフタレン、スクワランなどの飽和または不飽和炭化水素化合物;ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジ−イソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、p−メンタン、o−メンタン、m−メンタン;ジプロピルエーテル、ジブチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルアミルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルセロソルブ、酢酸エチルセロソルブ、酢酸ブチルセロソルブ、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソアミル、ステアリン酸ブチルなどのエステル類などが挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0035】
本発明に係る光硬化性組成物には、必要に応じて、他の添加剤をさらに添加してもよい。添加剤としては、充填剤、顔料、染料、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、分散剤、分散助剤、表面改質剤、可塑剤、可塑促進剤、タレ防止剤などが挙げられる。
【0036】
本発明に係る光硬化性組成物の製造方法としては、特に限定されず、上記シラン化合物(A)と、上記成分(B)と、必要に応じて添加される各成分とを溶融混合する方法、あるいはこれらを溶剤に溶解させて得る方法などが挙げられる。
【0037】
本発明に係る光硬化性組成物は特に限定されないが、レジスト材料、塗料、コーティング剤、接着剤、感圧接着剤、シーラント及びシーリング剤等として好適に用いることができる。
【0038】
また、本発明に係る光硬化性組成物は、様々な装置において、膜を形成するのにも用いられ、例えば電子機器の絶縁保護膜として上記光硬化性組成物を硬化させて得られた硬化物からなる膜が用いられる。このような電子機器の絶縁保護膜の例としては、例えば、液晶表示素子において、薄膜トランジスタ(TFT)を保護するためのTFT保護膜や、カラーフィルタにおいてフィルタを保護する保護膜などが挙げられる。また、上記硬化物からなる膜は、半導体素子の層間絶縁膜、あるいはパッシベーション膜、有機EL素子のTFT保護膜、ICチップの層間保護膜、センサの絶縁層などの様々な電子機器用絶縁保護膜としても用いられる。
【0039】
本発明に係る光硬化性組成物を用いて膜を形成するに際しては、先ず、本発明の光硬化性組成物を基板上に所定の厚みに塗工し、基板上に光硬化性組成物層を形成する。この塗工方法は特に限定されず、スピンコーティング、ダイコーティング、スクリーン印刷などの適宜の方法を用いることができる。次に、基板上に形成された光硬化性組成物層に光を照射する。それによって、緻密でかつ硬質の膜を得ることができる。
【0040】
また、パターニングを行う場合には、基板上に形成された光硬化性組成物層にマスク等を介して部分的に光を照射した後に、アルカリ溶液等を用いた現像工程を実施すればよく、それによって、微細なパターン状の膜を得ることができる。
【0041】
本発明に係る光硬化性組成物に照射される光源としては、特に限定されないが、超高圧水銀灯、Deep UV ランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、LED光源、エキシマレーザーなどが用いられる。これらの光源は、光硬化性組成物に含まれる成分の感光波長に応じて適宜選択される。
【0042】
本発明に係る光硬化性組成物に照射される光の照射エネルギーは、50〜10000mJ/cmの範囲である。光の照射エネルギーが50mJ/cmよりも小さいと、光硬化性組成物が充分に硬化しないことがあり、10000mJ/cmより大きいと、照射時間が長すぎることがある。
【発明の効果】
【0043】
本発明に係る光硬化性組成物では、加水分解性基がケイ素に結合したシラン化合物、該シラン化合物の加水分解物、及び該シラン化合物の加水分解物の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物(A)と、上述した式(1)で表される成分(B)とを含むので、短時間かつ少量の光照射によって、成分(B)が充分に活性化され、シラン化合物の架橋が速やかに進行し、硬化物を与える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0045】
(実施例1)
上記シラン化合物(A)としてのポリ(ジメトキシシラン)100重量部と、上記式(1)中、R1及びR2がメチル基であり、かつR3及びR4がt−ブチル基である化合物(上記(1)で表される成分(B))10重量部とを混合することにより、光硬化性組成物を得た。
【0046】
(実施例2)
上記シラン化合物(A)をポリ(グリシジルメトキシシラン)100重量部に代えたこと以外は実施例1と同様にして、光硬化性組成物を得た。
【0047】
(比較例1)
上記式(1)で表される成分(B)を、イルガキュア819(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製)10重量部に代えたこと以外は実施例1と同様にして、光硬化性組成物を得た。
【0048】
(評価)
シリコーンウエハー上に、実施例1,2の各光硬化性組成物をスピンコートすることにより、厚さ5μmの光硬化性組成物層を形成した。得られた光硬化性組成物層に、上記式(1)で表される成分(B)の最大感度波長である254nmの波長の紫外線を、照射エネルギーが200mJ/cmとなるように、10mW/cmの紫外線照度で20秒間照射し、光硬化性組成物の硬化物からなる薄膜を得た。
【0049】
また、シリコーンウエハー上に、比較例1の光硬化性組成物をスピンコートすることにより、厚さ5μmの光硬化性組成物層を形成した。得られた光硬化性組成物層に、イルガキュア819の最大感度波長である365nmの波長の紫外線を、照射エネルギーが200mJ/cmとなるように、10mW/cmの紫外線照度で20秒間照射したが、光硬化性組成物の硬化物からなる薄膜を得ることが出来なかった。照射エネルギーを1500mJ/cmとなるように、10mW/cmの紫外線照度で150秒間照射することで、光硬化性組成物の硬化物からなる薄膜を得ることが出来た。
【0050】
得られた薄膜について、耐溶剤性を評価した。その結果、実施例1及び実施例2で得られた膜は、イソプロピルアルコール中に5分浸漬しても、溶出することは無かったが、比較例1で得られた膜については、若干、溶出し、膜のアルコール膨潤が観察された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解性基がケイ素に結合したシラン化合物、該シラン化合物の加水分解物、及び該シラン化合物の加水分解物の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物(A)と、下記式(1)で表される成分(B)とを含むことを特徴とする、光硬化性組成物。
【化1】

上記式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の有機基を示す。
【請求項2】
前記シラン化合物(A)が、下記式(2)で表されるシラン化合物、該シラン化合物の加水分解物、及び該シラン化合物の加水分解物の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の光硬化性組成物。
Si(X1)(X2)(X3)4−p−q・・・(2)
上記式(2)中、X1は水素又は炭素数が1〜30である非加水分解性の有機基を示し、X2はアルコキシ基を示し、X3はアルコキシ基以外の加水分解性基を示し、pは0〜3の整数を示し、qは1〜4の整数を示し、p+q≦4である。pが2又は3であるとき、複数のX1は同一であってもよく異なっていてもよい。qが2〜4であるとき、複数のX2は同一であってもよく異なっていてもよい。p+q≦2であるとき、複数のX3は同一であってもよく異なっていてもよい。
【請求項3】
前記シラン化合物(A)が、下記式(3)で表される置換基を有するシラン化合物、該シラン化合物の加水分解物、及び該シラン化合物の加水分解物の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の光硬化性組成物。
−Si(Z1)(Z2)・・・(3)
上記式(3)中、Z1は水素または炭素数が1〜30である非加水分解性の有機基を示し、Z2はアルコキシ基を示し、mは0〜2の整数を示し、nは1〜3の整数を示し、m+n≦3である。mが2であるとき、複数のZ1は同一であってもよく異なっていてもよい。nが2〜3であるとき、複数のZ2は同一であってもよく異なっていてもよい。

【公開番号】特開2009−35676(P2009−35676A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202984(P2007−202984)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】