説明

光硬化性組成物

【課題】取扱が容易で自己修復力が高く、さらに加工性や反り性に優れた塗膜を与える光硬化性組成物の提供。
【解決手段】(a)一般式(I)


(式中、Aはジエン系ポリマー残基を示し、Rは脂肪族、脂環族または芳香族系のジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基であり、Rは、それぞれ独立して、炭素数6〜50の芳香族基、炭素数2〜20の脂肪族基、炭素数6〜50の脂環族基を示し、Rは水素原子またはメチル基を示し、nは1〜10の自然数を示す。)を有する(メタ)アクリロイル基を有する反応性ポリマー100質量部に対し、(b)光重合開始剤0.1〜10質量部を含むことを特徴とする自己修復性を有する光硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己修復性を有する光硬化性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物品の表面には、美観を付与するために塗料による被膜が形成されている。この被膜は、一度傷が付くと一般的には元に戻ることは少ない。物品が販売される前に被膜に傷が付いたら、物品の商品価値が大きく低下するので、補修や塗り直しに大きな労力を費やす必要がある。また、物品が販売された後でも、被膜表面に傷が生じると、美観の低下や再販価値の低下などが起こり、場合によっては補修したり塗り直したりする場合もある。多少の傷であれば、補修や塗り直しをしなくても、傷が元に戻れば、物品の商品価値は飛躍的に高くなる。このように被膜表面に生じた傷が回復する性質を、本発明では自己修復性という。
【0003】
自己修復性を有する塗料などの被膜を形成する硬化性樹脂組成物は、従来、多くの提案がある。しかし、一般に提案される自己修復性の樹脂組成物は、熱硬化性であって、被塗物が熱に弱い物品、特にプラスチック物品などには用いることができない。
【0004】
熱硬化でない、紫外線など光硬化性の樹脂組成物もいくつか提案されている。例えば、特開2003−302501号公報(特許文献1)や特開2004−244426号公報(特許文献2)には、有機イソシアネートとポリカプロラクトン変性アルキル(メタ)アクリレートとを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートを含有する自己修復性の活性エネルギー線硬化性組成物が提案されている。この組成物は、カプロラクトンを使用するので、柔軟性が大きくなりすぎて、自己修復性が低下すると共に耐擦り傷性も低下する。また、カプロラクトンは結晶性が高くなる傾向にあり、ワックス状になって、取扱が難しく、レベリング不良が生じて外観が悪くなる傾向ある。
【0005】
特開2007−284613号公報(特許文献3)には、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ビニルエーテル樹脂から選ばれた少なくとも1つの樹脂(A)、数平均分子量400以上の特定のポリオール(B)および活性エネルギー線感応触媒(C)を含有する活性エネルギー線硬化性コーティング剤が提案されている。このコーティング剤は、カチオン硬化系であって、カチオン硬化では後硬化が起こる。当該後硬化とは、エネルギー線照射など塗膜硬化工程を経た後でも、塗膜を放置している間に当該塗膜の硬化反応が徐々に進行する現象を示す。このような後硬化反応が発生するために、エネルギー線照射後2日間の放置が必要であるので、取扱が不便である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−3025001号公報
【特許文献2】特開2004−244426号公報
【特許文献3】特開2007−284613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、取扱が容易で自己修復力が高く、さらに加工性や反り性に優れた塗膜を与える光硬化性組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は、(a)一般式(I)
【化1】

(式中、Aはジエン系ポリマー残基を示し、Rは脂肪族、脂環族または芳香族系のジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基であり、Rは、炭素数6〜50の芳香族基、炭素数2〜20の脂肪族基、炭素数6〜50の脂環族基を示し、Rは水素原子またはメチル基を示し、nは1〜10の自然数を示す。)
を有する(メタ)アクリロイル基を有する反応性ポリマー100質量部に対し、(b)光重合開始剤0.1〜10質量部を含むことを特徴とする自己修復性を有する光硬化性組成物を提供する。
【0009】
本発明の光硬化性組成物には、更に、(メタ)アクリロイル化合物(c)が反応性ポリマー(a)100質量部に対して400質量部以下の量で配合されるのが好ましい。
【0010】
前記ジエン系ポリマー残基(A)の数平均分子量は、好ましくは300,000以下である。
【0011】
また、ジエン系ポリマー残基(A)はポリブタジエン残基またはポリイソプレン残基であるのが好ましい。
【0012】
前述のポリブタジエン残基は、より具体的には1,4−ポリブタジエン残基である。
【0013】
本発明の光硬化性組成物は、プラスチックフィルム用トップコート剤、プラスチック部品保護用コート剤、光学材料保護用コート剤、化粧合板用トップコート剤または自動車用クリヤー塗料として用いるのが好ましい。
【0014】
本発明は、また上記の光硬化性組成物を用いる塗膜形成方法を提供する。
【0015】
本発明は、更に上記の光硬化性組成物を用いて得られる自己修復性を有する塗膜も提供する。
【発明の効果】
【0016】
光硬化性であって、自己修復性を示す塗膜を得るために、本発明では、ゴム成分を光硬化性組成物中に導入した。具体的には、ゴム成分に(メタ)アクリロイル基をジイソシアネート化合物によるウレタン結合を介して導入し、それを光重合開始剤と組み合わせて光硬化性を付与した。本発明の光硬化性組成物を用いて得られた塗膜は驚くほど高い自己修復性を示すが、前述の後硬化がほとんど起こらないために、取扱は簡単である。また、本発明の光硬化性組成物は自己修復性だけではなく、加工性や耐反り性などに優れた塗膜外観を付与する塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、(a)一般式(I)
【化2】

(式中、Aはジエン系ポリマー残基を示し、Rは脂肪族、脂環族または芳香族系のジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基であり、Rは、それぞれ独立して、炭素数6〜50の芳香族基、炭素数2〜20の脂肪族基、炭素数6〜50の脂環族基を示し、Rは水素原子またはメチル基を示し、nは1〜10の自然数を示す。)
を有する(メタ)アクリロイル基を有する反応性ポリマー100質量部に対し、(b)光重合開始剤0.1〜10質量部を含むことを特徴とするものである。上記反応性ポリマー(A)は、ヒドロキシル基を有するジエン系ポリマーをジイソシアネートと反応させた後、未反応のイソシアネートとヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートとを反応して(メタ)アクリロイル基を導入することにより得られる。尚、本明細書中で「(メタ)アクリル」とは、アクリルまたはメタクリルの両方を表す用語である。
【0018】
ヒドロキシル基を有するジエン系ポリマーのジエン系ポリマー部分は、ポリブタジエン、ポリイソプレン、クロロプレン、スチレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム等が挙げられ、分子量は300,000以下、好ましくは500〜10000、より好ましくは1000〜5000である。ジエン系ポリマー部分の分子量が好ましい上限を超えると、得られる光硬化性組成物の粘度が上昇し過ぎて、塗装に適した粘度に調整するためには多量の溶剤を添加する必要があり好ましくない。また、官能基濃度が少なくなり、硬化性が低下するため好ましくない。ジエン系ポリマー部分の分子量が好ましい下限を下回ると、得られる塗膜の自己修復性を確保することが難しくなる傾向があり、好ましくない。ポリブタジエンは、1,4−ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエンの何れであっても良い。ヒドロキシル基の数は、上記一般式(I)のnの数に対応するが、好ましくはn=2である。ヒドロキシル基を有するジエン系ポリマーの好ましい具体例は、1,4−ポルブタジエンジオール、1,2−ポリブタジエンジオール、ポリイソプレンジオールまたはそれらの混合物が挙げられる。なお、上記数平均分子量は、ポリスチレンを評品としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定により得られた値である。
【0019】
上記ヒドロキシル基を有するジエン系ポリマーと反応するジイソシアネートは、OCN−R−NCOで表される有機ジイソシアネートであって、式中Rは、脂肪族、脂環族または芳香族系のジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基であり、具体的には炭素数6〜50の芳香族基、炭素数2〜20の脂肪族基、炭素数6〜50の脂環族基である。芳香族基は、好ましくは炭素数6〜15で、フェニレン基、ナフタレン基、ビフェニル基、トリレン基、キシリレン基などが挙げられる。脂肪族基は、好ましくは炭素数2〜20で、ヘキサメチレン基、2,2,4−トリメチルヘキサメチレン基、ペンタメチレン基、リジンなどが挙げられる。脂環族基は、好ましくは炭素数6〜50で、ノルボルナン基、シクロヘキシル基、イソボルニル基などが挙げられる。有機ジイソシアネートは、より具体的にはトリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチル−2,6−ジイソシアネートヘキサノエート、ノルボルナンジイソシアネート、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0020】
ヒドロキシル基を有するジエン系ポリマーとジイソシアネートとの反応は、温度40〜100℃で、1〜10時間行われる。反応は通常のウレタン化触媒、例えばジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート等を用いて行われる。
【0021】
本発明の反応性ポリマー(a)は、更にヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートと反応することにより得ることができる。ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートは、正確にはヒドロキシアルキル(またはアリールもしくはシクロアルキル)(メタ)アクリレートは、下記一般式(II)で表される化合物であり、具体的にはヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
また、エポキシ(メタ)アクリレートのような環状エーテルと(メタ)アクリル酸との反応物もヒドロキシル基と(メタ)アクリロイル基を有しており、同様に用いることができる。
【0022】
【化3】

式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数6〜50の芳香族基、炭素数2〜20の脂肪族基、炭素数6〜50の脂環族基のいずれかを示す。
【0023】
一般式(II)で表される化合物とイソシアネート基の反応もウレタン化反応であるので、上記ヒドロキシル基を有するジエン系ポリマーとジイソシアネートとの反応と同じ反応条件で行うことができる。
【0024】
上記反応で得られた反応性ポリマー(a)は、本発明の光硬化性組成物の主成分となり、光重合開始剤と組み合わせて使用する。光重合開始剤の例としては、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、o−ベンゾイルメチルベンゾエート、アセトフェノン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、エチルアントラキノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(例えば、チバ・ジャパン株式会社製のイルガキュア184)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(例えば、チバ・ジャパン株式会社製のダロキュア1173)、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(例えば、チバ・ジャパン株式会社製のイルガキュア651)、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(例えば、チバ・ジャパン株式会社製のイルガキュア907)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(例えば、チバ・ジャパン株式会社製のイルガキュア369)、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(例えば、BASF・ジャパン株式会社製のLucirin TPO)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(例えば、チバ・ジャパン株式会社製のイルガキュア819)、メチルベンゾイルホルメートなどが挙げられる。
【0025】
また、光重合開始助剤としてp−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルなどを併用しても良い。
【0026】
光重合開始剤は、反応性ポリマー(a)100質量部に対して0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜8質量部、より好ましくは1〜5質量部の量で配合する。0.1質量部より少ないと、光重合性が不十分となる。10質量部を超えると、塗膜が低分子量化し、十分な機能が発現しなかったり、厚膜硬化性が損なわれ、塗膜下部が硬化しないため、密着性が損なわれる可能性があり好ましくない。さらに、光硬化して得られた塗膜中に開始剤が残存する場合があり、その硬化塗膜が太陽光等に晒された際に劣化の引き金となる可能性があるため好ましくない。
【0027】
本発明の光硬化性組成物は、(メタ)アクリロイル化合物(c)を含有してもよい。(メタ)アクリロイル化合物(c)は、光硬化性組成物の低粘度化およびハイソリッド化を可能にし、しかも光硬化して得られた塗膜の密着性や架橋密度の増大による耐溶剤性の向上を付与することができる。(メタ)アクリロイル化合物は、具体的には、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニルフェノールエトキシ(メタ)アクリレート、フェニルフェノールジエトキシ(メタ)アクリレート、フェニルフェノールペンタエトキシ(メタ)アクリレートなどの単官能性の(メタ)アクリロイルモノマー;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ビス〔2−メタクリロイルオキシ−3−(2,4,6−トリブロモフェノキシ)プロポキシ〕ベンゼン、ビスフェノキシエタノールフルオレンジ(メタ)アクリレート、フルオレン骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート、フルオレン骨格を有するε−カプロラクトン付加物の(メタ)アクリレート、硫黄含有(メタ)アクリレートとして例えば、4,4´−ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンジ(メタ)アクリレート、4,4´−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホンジ(メタ)アクリレート、2,5−ジアクリロイルオキシ−1,4−ジチアン、ビス−2−(メタ)アクリロイルチオエチルスルフィド、1,4−(メタ)アクリロイルチオベンゼン、4,4´−ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシ〕フェニルスルフィド、4,4´−ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ〕フェニルスルフィド、4,4´−ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ〕フェニルスルフィド、4,4´−ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ〕フェニルスルホン、4,4´−ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ〕フェニルスルホン、4,4´−ジヒドロキシフェニルスルフィドのエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、フェニルチオエチル(メタ)アクリレート〔例えば、BIMAX CHEMICALS社製 BX−PTEA(フェニルチオエチルアクリレート)〕、1,3−ビス〔2−(メタ)アクリロイル−3−(1,3−ジチオラン−2−イル)エチルチオ−プロポキシ〕ベンゼン、2−フェニル−4−アクリロイルチオメチル−1,3−ジチオラン及び4,4´−ジ(β−メタクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルスルホン、2,5−ビス(アクリロイルオキシエチルチオメチル)−1,4−ジチアン、1,4−ビス〔2−メタクリロイルオキシエチルチオ〕キシリレンなどの二官能性の(メタ)アクリロイルモノマー;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンの3モルプロピレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンの6モルエチレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのカプロラクトン付加物のヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能性の(メタ)アクリロイルモノマー;不飽和ポリエステル、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリロイル化合物が挙げられる。
【0028】
(メタ)アクリロイル化合物(c)は、上記反応性ポリマー(a)100質量部に対して、400重量部まで配合してもよい。400質量部より多いと、自己修復性が低下するなどの欠点を有する。
【0029】
本発明の光硬化性組成物は、種々の用途に用いることができる。加熱せずに硬化することから、被塗物としては、プラスチック製品に用いるのが好適であるが、金属製品に用いても何ら不都合はない。特に、本発明の光硬化性組成物は、光、具体的には活性エネルギー硬化により、透明性、耐油性、耐薬品性、耐摩耗性、耐傷付き性、自己修復性、伸長性(真空成形性)に優れた硬化物、特にコーティング膜を形成しうる。このため、コーティング剤として用いる場合は、被塗物を傷付きから保護する保護層形成に好ましく用いられる。被塗物としては、特に限定されず、自動車等の金属製品、フィルムや成型品などのプラスチック製品、光学材料などのガラス製品、家具などの木材製品、紙などに使用することが可能である。中でも、透明性が求められる、カラーフィルターなどの光学材料の保護層形成用コーティング剤や、自動車のボディに塗工するクリア塗料、プラスチックフィルムの表面保護用のトップコート剤、プラスチック部品保護用コート剤、プラスチックフィルムにトップコートして真空成形などの熱成形やインモールド成形に用いられるコート剤などに特に好ましく用いられる。
【0030】
コーティング剤として用いる時には、塗工性等を調節する目的で、有機溶媒などの溶剤を使用することが好ましい。上記溶剤としては、配合成分の種類によっても異なり、特に限定されないが、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、酢酸ブチル、メトキシプロパノール、メトキシプロピルアセテート、メトブタ(3-メトキシブタノール)、メトアセ(3-メトキシブチルアセテート)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどが好ましく用いられる。また、溶剤を用いる場合、塗布後のコーティング層の乾燥条件は、溶剤に応じて設定し、特に限定されないが、例えば、60〜200℃で、1〜30分間の条件で行うことが好ましい。
【0031】
コーティング剤として用いる場合には、上記の他にも、本発明の効果を阻害しない範囲内で、他の樹脂や消泡剤、反応性希釈剤、光増感剤、界面活性剤、帯電防止剤、レベリング剤、シランカップリング剤、濡れ改良剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、粘性調整剤、無機微粒子、有機微粒子などの各種の添加剤が含有されていてもよい。
【0032】
コーティング剤の場合、粘度(25℃)は、塗布性、加工性の観点から、1〜1000mPa・sが好ましく、より好ましくは2〜500mPa・sである。コーティング剤の粘度は、組成物の原材料、組成、分子量、希釈剤、粘性調整剤の量などによって制御することができる。
【0033】
コーティング剤の塗布方法としては、公知の方法で行うことができ、被塗物によっても異なり特に限定されないが、例えば、スピンコート法、はけ塗り、スプレー法(吹き付け)、ディップコート法、ブレードコート法、ロールコート法、インクジェット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、バーコート法、ダイコート法などが挙げられる。中でも、自動車用途の場合には、エアスプレー、エアレススプレーなどのスプレー法、回転霧化塗装機、静電塗装機などを用いた方法;プラスチックフィルムに塗布する場合には、グラビア印刷、フレキソ印刷などの印刷、ディップコート法、ブレードコート法、ロールコート法、バーコート法などの方法が好ましい。なお、上記コーティング剤の塗布の際には、密着性などの観点から、被塗物に下塗り層を設けてもよい。また、本発明のコーティング剤が溶剤を用いる場合には、上記塗布後に前記の条件で乾燥を行うことが好ましい。
【0034】
塗布された光硬化性組成物の硬化の際は、作業性、生産性や適用できる対象物の範囲が広いなどの観点から、活性エネルギー線照射を行う。照射する活性エネルギー線としては、可視光、赤外線、紫外線、X線、α線、β線、γ線、電子線などを用いることができる。中でも、安全性、反応効率などの工業性の観点などから紫外線が最も好ましく用いられる。用いられる紫外線の波長は200〜400nmが好ましく、好ましい照射条件としては、例えば、照度1〜1000mW/cm2、照射量0.1〜10000mJ/cm2である。活性エネルギー線の照射装置としては、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマランプなどのランプ光源、アルゴンイオンレーザーやヘリウムネオンレーザーなどのパルス、連続のレーザー光源、LED光源などを用いることが可能である。
【0035】
コーティング層の厚みは、用途によって異なり、特に限定されないが、例えば、3〜100μmが好ましく、より好ましくは5〜40μmである。中でも、自動車用途の場合には10〜100μmが好ましく、プラスチックフィルム用トップコートの場合には3〜50μmが好ましい。上記好ましい範囲よりもコーティング層が薄い場合には自己修復性が低下する場合があり、厚いとコスト面で不利となり、また意匠性が低下する場合や、コーティング層自体が剥離しやすくなる場合がある。
【0036】
本発明で得られたコーティング層は優れた自己修復性を有する。自己修復性とは、コーティング層表面に生じた傷が経時で消失しうる特性を表す。具体的には、23℃、50%RHの雰囲気下、日本スチールウール(株)製スチールウール(#0000)に400gfの錘を載せ(荷重面積20cm2)、塗膜面(コーティング層表面)を20往復擦る試験を行い、試験直後からの塗膜面のヘイズ値変化(経時的減少)により評価することができる。磨耗直後のヘイズ値に対して30分後のヘイズ値が減少していることが好ましく、より好ましくは3%以上減少していることである。自己修復は、傷が可逆変形(弾性変形)的に生じることに起因する。優れた自己修復性は、コーティング層を形成する樹脂が、高い応力に対してまで弾性変形領域を有していること、即ち優れた強靱性(粘り強さ)を有することにより達成される。これは、一般式(I)に示した化合物が本発明の光硬化性組成物に含まれることにより、得られる光硬化膜の架橋点に、ゴム弾性を有することが期待できるAで表されるジエン系ポリマー残基と、ウレタン構造が導入されることになる。ウレタン構造は高い凝集力を当該光硬化膜に付与することが期待できる。これらのゴム弾性挙動と高い凝集力を併せ持つ架橋点を形成するという、本発明独自の性質を有する光硬化膜により、適度な加工性・反り性と、自己修復性(あるいは傷修復性ともいう)という性質を併せ持つ光硬化膜を得ることができるものと推定される。
【0037】
上記コーティング層の光透過率(島津製作所(株)製、分光光度計「UV−2450」、波長400nm、硬化物(コーティング層)の厚み5μm、基材がポリエチレンテレフタレートフィルムで厚み100μmの場合)は、90T%以上が好ましい。光透過率が90T%未満である場合には、光学材料として使用困難な場合や、意匠性が低下する場合がある。
【0038】
上記コーティング層の硬化収縮は、硬化膜を形成した基材をさらに二次加工する場合の作業性の観点から小さい方が望ましく、基材に硬化膜を形成したときに反り性やカール性などの変形がないものが好ましい。
【0039】
本発明のコーティング剤からなるトップコート剤を、プラスチックフィルムの少なくとも一方の表面に塗布・硬化させ、トップコート層を形成することによって、トップコートフィルムが得られる。
【0040】
上記トップコートフィルムに用いられるプラスチックフィルムの樹脂としては、用途によっても異なり特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、PBT、PEN等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ノルボルネン系の環状ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン、ABS、スチレン−ブタジエン共重合体などのポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリイミド樹脂、セルローストリアセテート(TAC)などのセルロースアセテート、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォン等が挙げられる。中でも、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン樹脂、TACである。これらのプラスチックフィルムは、溶融製膜または溶液製膜などの方法によって作製することもできるし、または、市場で販売されているポリエステルフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリオレフィンフィルム等を用いることもできる。
【0041】
上記トップコートフィルム用いるプラスチックフィルムは、用途に応じて、未延伸シートを用いてもよいし、1軸延伸、2軸延伸などの延伸配向させたフィルムを用いてもよい。また、単層フィルムを用いてもよいし、共押出や貼り合わせなどによる積層フィルムを用いてもよい。また、用途に応じて、本発明のトップコート層と反対側の表面に、粘着層、紫外線吸収層、印刷層、帯電防止層などの機能層を設けてもよい。プラスチックフィルムのフィルム厚みも、用途に応じて異なり、特に限定されないが、一般的に、10μm〜2mmが好ましく、より好ましくは、25〜200μmである。
【0042】
本発明のトップコートフィルムは、優れた自己修復性を有する。このため、化粧品のような日用品、建材、建具、床材などの建屋内装、自動車および自動車のパーツ類、携帯電話やテレビなどの電気製品、フラットパネルディスプレイの表示部などの電子機器などの保護フィルム、防犯用などの窓貼りフィルム、包装用フィルムなどに好適に用いられる。中でも、特に好ましくは、液晶ディスプレイ、自動車のパーツ類、床材である。
【0043】
上記トップコートフィルムのヘイズ値は、散乱光線透過率を低く抑える観点から、10%以下が好ましく、より好ましくは5%以下である。
また、液晶ディスプレイなどの表示装置などでは、防眩性付与のため、上記の範囲のヘイズ値を有する材料が求められる場合がある。そのような場合、本発明の光硬化性組成物に粒子などの添加により得られる塗膜のヘイズ値を適宜調整して用いてもよい。
【実施例】
【0044】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。なお、以下「部」との記載は「質量部」を意味する。
【0045】
合成例1
反応性ポリマーa−1の合成例
撹拌羽根、空気導入管、冷却管を備えた500mlにフラスコ中に1、4-ポリブタジエンジオール(数平均分子量1200)555g、メチルイソブチルケトン897gおよびジブチルスズジラウレート0.9gを仕込み80℃に加温した。この混合物にイソホロンジイソシアネート222gを加え、1時間反応させた。その反応液にハイドロキノン0.9g、ジブチルスズジラウレート1.8g、ヒドロキシエチルアクリレート116gを加え、空気をバブリングしながら、さらに2時間反応させた。IRによりイソシアナートの吸収が消失したのを確認した後、反応を終了した。得られた樹脂(a−1)の固形分濃度は50%であった。
【0046】
合成例2
反応性ポリマーa−2の合成例
合成例1におけるヒドロキシエチルアクリレートを2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート222gに変更し、メチルイソブチルケトンの量が固形分濃度50%となるように変更した以外は同様に行い、樹脂(a−2)を得た。
【0047】
合成例3
反応性ポリマーa−3の合成例
合成例1におけるヒドロキシエチルアクリレートを(ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物)506gに変更し、メチルイソブチルケトンの量が固形分濃度50%となるように変更した以外は同様に行い、樹脂(a−3)を得た。
【0048】
合成例4
反応性ポリマーa−4の合成例
合成例1におけるイソホロンジイソシアネートを水添キシリレンジイソシアネート194gに変更し、メチルイソブチルケトンの量が固形分濃度50%となるように変更した以外は同様に行い、樹脂(a−4)を得た。
【0049】
合成例5
反応性ポリマーa−5の合成例
合成例2におけるイソホロンジイソシアネートを水添キシリレンジイソシアネート194gに変更し、メチルイソブチルケトンの量が固形分濃度50%となるように変更した以外は同様に行い、樹脂(a−5)を得た。
【0050】
合成例6
反応性ポリマーa−6の合成例
合成例3におけるイソホロンジイソシアネートを水添キシリレンジイソシアネート194gに変更し、メチルイソブチルケトンの量が固形分濃度50%となるように変更した以外は同様に行い、樹脂(a−6)を得た。
【0051】
合成例7
反応性ポリマーa−7の合成例
合成例5における1、4-ポリブタジエンジオール(数平均分子量1200)をを1、4-ポリブタジエンジオール(数平均分子量2800)1234gに変更し、メチルイソブチルケトンの量が固形分濃度50%となるように変更した以外は同様に行い、樹脂(a−7)を得た。
【0052】
合成例8
反応性ポリマーa−8の合成例
合成例5における1、4-ポリブタジエンジオール(数平均分子量1200)を1、2-ポリブタジエンジオール(数平均分子量1450)758gに変更し、メチルイソブチルケトンの量が固形分濃度50%となるように変更した以外は同様に行い、樹脂(a−8)を得た。
【0053】
合成例9
反応性ポリマーa−9の合成例
合成例5における1、4-ポリブタジエンジオール(数平均分子量1200)をポリイソプレンジオール(数平均分子量2500)1204gに変更し、メチルイソブチルケトンの量が固形分濃度50%となるように変更した以外は同様に行い、樹脂(a−9)を得た。
【0054】
実施例1
合成例1で得た樹脂(a−1)を200質量部、光重合開始剤であるヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを5質量部、TegoRad2200N(側鎖にアクリロイル基を含有するポリエーテル基で変性されたポリジメチルシロキサン;TEGO CHEMIE社製)を0.1質量部を溶媒であるプロピレングリコールモノメチルエーテルに混合して、固形分濃度が40%となるように光硬化性樹脂組成物を作成した。
【0055】
こうして得られた光硬化性樹脂組成物を、厚さ100μmの易接着処理PETフィルム上に、ワイヤーバーを用いて、塗装した後、熱風循環乾燥炉に80℃で1分間入れ、溶剤を除去した。次いで紫外線を500mJ/cmで照射し、膜厚10μmの硬化塗膜を有する試験板を得た。試験板について、下記方法で塗膜透明性、密着性、傷回復性、加工性および反り性を評価した。評価結果を表1に示す。尚、表1には製造した光硬化性樹脂組成物の組成も記載した。
【0056】
(1)塗膜透明性
各試験板について東京電色株式会社製HazeMeter NDH2000を使って全光線透過率(%)を測定した。
【0057】
(2)密着性
前記各試験板についてJISK5400に準拠して碁盤目剥離試験を行なった。
【0058】
(3)傷回復性
前記各試験板について23℃、50%RHの雰囲気下、日本スチールウール株式会社製スチールウール(#0000)に400g(1cmあたり)の錘を載せ、試験板表面を擦り、傷つけた。
【0059】
傷を付ける前の試験板のヘイズ値をH0とし。傷付け後、23℃、50%RHの雰囲気下で30分放置した後に、再度測定したヘイズ値をH1とした時、
傷回復性=(H1/H0)×100
なる式を用いて傷回復性を評価した。傷付け前の状態に傷が回復すれば、傷回復性=100となり、110以下であれば、目視での傷の残存確認が困難になる。同様に傷を付ける前のヘイズ値と60℃の熱風循環乾燥炉で1分間加熱した後のヘイズ値より、加温時の傷回復性を評価した。
【0060】
(4)加工性
前記各試験板を裁断したときに、裁断面にバリの発生がないものを○、バリの発生があるものを×と評価した。
【0061】
(5)反り性
前記試験板(A4サイズ)を平坦な台の上に置き、23℃、50%RHの雰囲気に24時間放置した後、試験片が台から浮き上がる量を「反り」とした。浮き上がり量が1.0mm未満のものを○、1.0mm以上のものを×と評価した。
【0062】
実施例2
実施例1における樹脂(a−1)を樹脂(a−2)に変更した以外はすべて実施例1と同様に処理を行った。評価も実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0063】
実施例3
実施例1における樹脂(a−1)を樹脂(a−3)に変更した以外はすべて実施例1と同様に処理を行った。評価も実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0064】
実施例4
実施例1における樹脂(a−1)を樹脂(a−4)に変更した以外はすべて実施例1と同様に処理を行った。評価も実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0065】
実施例5
実施例1における樹脂(a−1)を樹脂(a−5)に変更した以外はすべて実施例1と同様に処理を行った。評価も実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0066】
実施例6
実施例1における樹脂(a−1)を樹脂(a−6)に変更した以外はすべて実施例1と同様に処理を行った。評価も実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0067】
実施例7
実施例1における樹脂(a−1)を樹脂(a−7)に変更した以外はすべて実施例1と同様に処理を行った。評価も実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0068】
実施例8
実施例1における樹脂(a−1)を樹脂(a−8)に変更した以外はすべて実施例1と同様に処理を行った。評価も実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0069】
実施例9
実施例1における樹脂(a−1)を樹脂(a−9)に変更した以外はすべて実施例1と同様に処理を行った。評価も実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0070】
実施例10
実施例1で用いた光硬化性樹脂組成物を紫外線照射を300mJ/cmで行った以外はすべて実施例1と同様に処理を行った。評価も実施例1と同様に行った。結果を表3に示す。
【0071】
実施例11
合成例1で得た樹脂(a−1)を180質量部、アロニックスM−305(東亞合成株式会社製、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物)10質量部、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン5質量部、TegoRad2200N0.1質量部を溶媒であるプロピレングリコールモノメチルエーテルに混合して、固形分濃度が40質量%となるよう光硬化性樹脂組成物を作成した。紫外線照射を300mJ/cmで行った以外はすべて実施例1と同様に処理を行った。評価も実施例1と同様に行った。結果を表3に示す。
【0072】
実施例12
合成例1で得た樹脂(a−1)を180質量部、イソボルニルアクリレート(共栄社化学株式会社からライトアクリレートIB−XAとして市販)10質量部、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン5質量部、TegoRad2200N0.1質量部を溶媒であるプロピレングリコールモノメチルエーテルに混合して、固形分濃度が40質量%となるよう光硬化性樹脂組成物を作成した。紫外線照射を300mJ/cmで行った以外はすべて実施例1と同様に処理を行った。評価も実施例1と同様に行った。結果を表3に示す。
【0073】
比較例1
実施例1における樹脂(a−1)を1,2−ポリブタジエンジアクリレート(日本曹達株式会社からEA−3000として市販)に変更した以外はすべて実施例1と同様に処理を行った。評価も実施例1と同様に行った。結果を表3に示す。
【0074】
比較例2
実施例1における樹脂(a−1)をペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物(東亞合成株式会社からアロニックスM−305として市販)に変更した以外はすべて実施例1と同様に処理を行った。評価も実施例1と同様に行った。結果を表3に示す。
【0075】
【表1】

*2)水添キシリレンジイソシアネート
*3)2−ヒドロキシエチルアクリレート
*4)アロニックス M−5700:2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(東亜合成株式会社から市販)
*5)アロニックス M−305:ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物(東亜合成株式会社から市販)
*6)日本曹達株式会社からEA−3000として市販;数平均分子量2900
*7)共学社化学株式会社からライトアクリレートIB−XAとして市販
【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【0078】
上記実施例から明らかなように、本発明の光硬化性組成物は、傷回復性が高く、密着性や加工性も優れている。また、本発明の光硬化性組成物は、透明性も高く、反り性も優れている。特に(メタ)アクリロイル化合物(c)を配合した実施例10と11では、少ない紫外線照射量でも上記所望の性質を実施例1〜8と同じレベルで付与できることが解る。実施例9では(メタ)アクリロイル化合物(c)を含まないために、少ない紫外線照射量であっても、傷回復性が若干劣るが、それでも十分合格レベルであった。比較例1は、ポリブタジエンジアクリレートを用いた例であり、本発明のように、ウレタン結合を介して重合性(メタ)アクリロイル基をゴム分子に導入したものではなく、ゴム分子に直接重合性(メタ)アクリロイル基を導入したものである。この例では、ゴム分子と重合性(メタ)アクリロイル基との間に、ジイソシアネート化合物でウレタン結合を導入すると傷回復性が優れてくること解る。比較例2は、ゴム分子が無い例であって、加工性や反り例が悪く、傷回復性については評価するまでもなく、使用できないことが解る。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の光硬化性組成物は、種々の硬化性組成物が用いられる用途に利用できるが、特に塗料やその他の被膜を形成する用途に有利に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)一般式(I)
【化1】

(式中、Aはジエン系ポリマー残基を示し、Rは脂肪族、脂環族または芳香族系のジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基であり、Rは、それぞれ独立して、炭素数6〜50の芳香族基、炭素数2〜20の脂肪族基、炭素数6〜50の脂環族基を示し、Rは水素原子またはメチル基を示し、nは1〜10の自然数を示す。)
を有する(メタ)アクリロイル基を有する反応性ポリマー100質量部に対し、(b)光重合開始剤0.1〜10質量部を含むことを特徴とする自己修復性を有する光硬化性組成物。
【請求項2】
更に、(メタ)アクリロイル化合物(c)が反応性ポリマー(a)100質量部に対して400質量部以下の量で配合される請求項1記載の自己修復性を有する光硬化性組成物。
【請求項3】
ジエン系ポリマー残基(A)の数平均分子量が300,000以下である請求項1記載の光硬化性組成物。
【請求項4】
ジエン系ポリマー残基(A)がポリブタジエン残基またはポリイソプレン残基である請求項1記載の自己修復性を有する光硬化性組成物。
【請求項5】
ポリブタジエン残基が1,4−ポリブタジエン残基である請求項4に記載の光硬化性組成物。
【請求項6】
プラスチックフィルム用トップコート剤、プラスチック部品保護用コート剤、光学材料保護用コート剤、化粧合板用トップコート剤または自動車用クリヤー塗料である請求項1記載の自己修復性を有する光硬化性組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかの光硬化性組成物を用いることによる、塗膜形成方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかの光硬化性組成物を用いて得られる、自己修復性を有する塗膜。

【公開番号】特開2010−260905(P2010−260905A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110806(P2009−110806)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】