説明

光硬化性組成物

【課題】高いコントラスト性、優れた画像安定性及び良好な硬化物性を実現できる光硬化性組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係る光硬化性組成物は、光酸発生剤と、電子供与性染料と、下記一般式(I)で表され、前記光酸発生剤の感光波長域外にも感光波長域を有するオキシムエステル系光重合開始剤と、エチレン性不飽和基含有化合物とを含有する。
【化11】


(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、又はフェニル基を表し、Rは、炭素数1〜7のアルキル基、又はフェニル基を表す)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾式画像形成方法に用いられる光硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、フォトリソグラフィー法による画像形成方法は、微細加工性に優れ、作業性の良さから大量生産に適しており、印刷業界やエレクトロニクス業界で幅広く用いられている。近年、例えば基材上に反射率の異なる画像を形成し、発光素子からの反射光を受光素子などで読み取るエンコーダーや変位センサなどのMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)分野などへの利用も進められている。
【0003】
このような画像形成方法において、環境負荷の低減の観点より、希アルカリ水溶液による湿式現像法が、主にプリント配線板の製造やソルダーレジストの形成、さらには半導体関連部材の製造などに用いられている。
【0004】
しかしながら、例えばMEMS分野の適用に際して、ウエハ上やアルミ配線上へのパターニングを要することから、アルカリ水溶液による絶縁劣化、或いは腐食等の問題が生じる。このため、有機溶剤系の現像液を利用せざるを得ない。
【0005】
一方、このような現像液を用いることなくコントラストを形成する技術として、光硬化と熱溶融を利用したフォトサーモグラフィーによる乾式画像形成方法が検討されている。この方法は、湿式画像形成の場合と異なり、廃棄物の問題がない為、環境負荷の低減の観点からも期待されている。
【0006】
乾式画像形成方法として、染料による発色を利用した発色型感熱記録法が挙げられ、発色性に優れるロイコ型感熱記録法と画像安定性に優れるジアゾ型感熱記録法の2つに大別される。しかしながら、これらの方法では高いコントラスト(高発色性)と画像形成後の品質安定性(画像安定性)の両立が困難であるという問題がある。
【0007】
これに対して、ロイコ型感熱記録法においては、例えば、電子受容性化合物と電子供与性染料とを、光硬化性組成物を含有するマイクロカプセルに分離して配置することにより、画像安定性を向上させる手法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、マイクロカプセル内の光硬化性組成物を十分に硬化させても、硬化部の発色を十分には抑制できず、未着色部がやや着色してしまい、コントラストが悪くなるという問題がある。
【0008】
また、酸性基を有するビニルモノマーと光重合開始剤からなる光重合性組成物を含有する層と隔離層と電子供与性染料からなる層を積層するという手法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。この場合、未着色部の着色(カブリ)は無くなるが、逆に全体的に発色度がやや低くなるという問題がある。
【0009】
これに対して、未着色部のカブリと低発色度を両立する試みとして、二成分の一方をマイクロカプセルに内包させ、他方の成分を光硬化性組成物の硬化性化合物として、もしくは、他方の成分を光硬化性組成物と共にマイクロカプセル外に配置する手法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。また、電子供与性染料を内包するマイクロカプセルと電子受容性化合物、重合性のビニルモノマーと光重合開始剤を含有する光硬化性組成物を含有する層を塗設する手法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0010】
これら画像安定化を改善する手法が多く提案されているが、一方で発色度の低下などの問題が浮上している。また、これらの手法では、根本的に発色部は硬化していないことから、硬化物としての物性が得られないという問題がある。
【0011】
このように、フォトサーモグラフィーによる画像形成方法において、電子部品などの基板周りやMEMSセンサなど使用環境が厳しい分野へ応用展開できるだけの技術は未だ確立できておらず、これまで感熱記録紙やプルーフ材などにその利用が限られている。したがって、コントラストの高い画像を形成し、その後の画像安定性と良好な硬化物性を得ることが可能な光硬化性組成物を開発することで、利用用途の拡大が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭52−89915号公報
【特許文献2】特開昭61−123838号公報
【特許文献3】特開平3−87827号公報
【特許文献4】特開平4−211252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上述の従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、コントラストの高い画像を形成することができるとともに、優れた画像安定性及び良好な硬化物性を実現できる光硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様によれば、光酸発生剤と、電子供与性染料と、下記一般式(I)で表され、前記光酸発生剤の感光波長域外にも感光波長域を有するオキシムエステル系光重合開始剤と、エチレン性不飽和基含有化合物とを含有することを特徴とする光硬化性組成物が提供される。
【化1】

(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、又はフェニル基を表し、Rは、炭素数1〜7のアルキル基、又はフェニル基を表す)
【0015】
このような構成により、発色のための露光波長と異なる波長で、発色を抑えて画像定着のための露光を行うことができ、コントラストの高い画像を形成することができるとともに、優れた画像安定性及び良好な硬化物性を得ることができる。
【0016】
また、本発明の一態様において、オキシムエステル系光重合開始剤が、下記式(II)、で表されることが好ましい。
【化2】

このようなオキシムエステル系光重合開始剤を用いることにより、可視光源で汎用されている波長405nmで露光を行うことにより、十分に画像定着させることが可能となる。
【0017】
また、本発明の一態様において、オキシムエステル系光重合開始剤が、下記一般式(III)又は下記一般式(IV)で表される構造を有することが好ましい。
【化3】

(式中、R、Rは、それぞれ独立に炭素数1〜12のアルキル基を表し、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、MはO、S又はNHを表し、nは0〜5の整数を表し、R、R10は、炭素数1〜12のアルキル基を表し、R11は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基を表す)
【0018】
このようなオキシムエステル系光重合開始剤を用いることにより、少量の添加でも十分な光硬化が得られる高い感度を有するので、配合する光重合開始剤に起因する着色を抑え、樹脂の透明性を活かすことができる。
【0019】
また、本発明の一態様によれば、このような光硬化性組成物の塗布膜を形成し、前記光酸発生剤の感光波長域の少なくとも一部を含む第1の活性エネルギー線を所定パターンに照射し、酸を発生させ、電子供与性染料を発色させて着色部を形成した後、光酸発生剤の感光波長域外で、かつオキシムエステル系光重合開始剤の感光波長域の第2の活性エネルギー線を全面に照射して、オキシムエステル系光重合開始剤よりラジカルを発生させ、エチレン性不飽和基含有化合物を重合させて得られることを特徴とする硬化物を提供することができる。
このようにして硬化物において、コントラストの高い画像が形成されるとともに、優れた画像安定性及び良好な硬化物性を得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様の光硬化性組成物によれば、コントラストの高い画像を形成することができるとともに、優れた画像安定性及び良好な硬化物性を得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明者らが上記課題を解決するために鋭意検討した結果、コントラストを形成する第一露光工程と、光硬化により画像定着を行う第二露光工程の2段階の露光工程を設け、それぞれ異なる波長で露光することにより、高コントラストの画像と、優れた画像安定性及び良好な硬化物性の双方を得ることができることを見出した。すなわち、光酸発生剤が酸を発生する波長で第1段の露光を行い、所望の発色パターンを形成した後、光酸発生剤が酸を発生しない波長で第2段の露光を行うことにより、発色させることなく光硬化させることができる。
【0022】
そして、光酸発生剤と、電子供与性染料と、下記一般式(I)で表され、前記光酸発生剤の感光波長域外に感光波長域を有するオキシムエステル系光重合開始剤と、エチレン性不飽和基含有化合物とを含有する光硬化性組成物が、このような2段階の露光工程を行う際に好適であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【化4】

(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、又はフェニル基を表し、Rは、炭素数1〜7のアルキル基、又はフェニル基を表す)
【0023】
以下、本実施形態の光硬化性組成物について詳細に説明する。
本実施形態の光硬化性組成物における光酸発生剤は、電子供与性染料に対し、顕色効果を示す電子受容性化合物であり、電子活性エネルギー線の照射により酸を発生し、後述する電子供与性染料を発色させるために用いられる。
【0024】
このような光酸発生剤としては、例えば、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、ブロモニウム塩、クロロニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、ピリリウム塩、チアピリリウム塩、ピリジニウム塩等のオニウム塩;トリス(トリハロメチル)−s−トリアジン(例えば2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン)、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(フラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフエニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のハロゲン化化合物;スルホン酸の2−ニトロベンジルエステル;イミノスルホナート;1−オキソ−2−ジアゾナフトキノン−4−スルホナート誘導体;N−ヒドロキシイミド=スルホナート;トリ(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン誘導体;ビススルホニルジアゾメタン類;スルホニルカルボニルアルカン類;スルホニルカルボニルジアゾメタン類;ジスルホン化合物;鉄アレン錯体等を挙げることができる。
これらの光酸発生剤は、単独で、又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0025】
このような光酸発生剤の配合量は、組成物の固形分100質量部に対して、5〜40質量部が好ましい。5質量部より少ない場合は発色が不十分となる。また、40質量部より多い場合は画像形成後の画像安定性が悪くなる。より好ましくは10〜30質量部である。
【0026】
本実施形態の光硬化性組成物における電子供与性染料は、上述した光酸発生剤より発生した酸により発色し、パターンを形成するために用いられる。
【0027】
このような化合物としては、例えば、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−メチルアミノフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)フタリド等のトリアリルメタン系化合物、4,4’−ビス−ジメチルアミノベンズヒドリルベンジルエーテル、N−ハロフェニル−ロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン等のジフェニルメタン系化合物、7−ジメチルアミノ−3−クロロフルオラン、7−ジメチルアミノ−3−クロロ−2−メチルフルオラン、2−フェニルアミノ−3−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン等のフルオラン系化合物、ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンジルロイコメチレンブルー等のチアジン系化合物、3−メチル−スピロ−ジナフトピラン、3−エチル−スピロ−ジナフトピラン、3−プロピル−スピロ−ジナフトピラン、3−プロピル−スピロ−ジベンゾピラン等のスピロ系化合物等が挙げられる。
【0028】
これらの電子供与性染料は、単独で、又は必要に応じて2種類以上のものを併用することも可能である。また、画像安定性を高める公知の手段として、電子供与性染料をカプセル化して使用してもよい。また、これらの染料に、発色性をあげるための四臭化炭素のような光酸化剤や、暗発色を防止するキノリノールのような添加剤を加えてもよい。
【0029】
このような電子供与性染料の配合量は、組成物の固形分100質量部に対して、3〜20質量部が好ましい。3質量部より少ない場合は発色が不十分となる。また、20質量部より多い場合はより優れた効果を期待できない。より好ましくは8〜15質量部である。
【0030】
本実施形態の光硬化性組成物におけるオキシムエステル系光重合開始剤は、活性エネルギー線の照射により、ラジカルを発生し、後述するエチレン性不飽和基含有化合物を重合させるために用いられる。このようなオキシムエステル系光重合開始剤は、上述の光酸発生剤の感光波長域外に感光波長域を有する必要がある。すなわち、オキシムエステル系光重合開始剤と光酸発生剤との感光波長域がオーバーラップする波長域の他に、オキシムエステル系光重合開始剤のみがもつ感光波長域が存在することが必要である。
【0031】
上述した光酸発生剤は、400nm以下、特に紫外域で感光するものが多い。このような光酸発生剤を感光させずに、ラジカルを発生させるためには、光重合開始剤の中でも、光酸発生剤の感光波長域以外にも吸収・活性を示すことが好ましい。また、配合する光重合開始剤に起因する着色を抑え、樹脂の透明性を活かすためにも、少量の添加で十分な光硬化が得られる高い感度の光重合開始剤を用いる必要がある。本実施形態に用いられる下記一般式(I)で表されるオキシムエステル系光重合開始剤は、光酸発生剤の感光波長域以外にも感光波長域を有し、特に高い光感度を有するものである。
【化5】

(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、又はフェニル基を表し、Rは、炭素数1〜7のアルキル基、又はフェニル基を表す)
このようなオキシムエステル系光重合開始剤としては、可視光源で汎用されている405nmに良好な感度を有することから、下記式(II)で表される2−(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン−9−オンが好ましい。
【化6】

【0032】
また、オキシムエステル系光重合開始剤としては、一般式(III)、一般式(IV)で表される構造を有することが好ましい。
【化7】

(式中、R、Rは、それぞれ独立に炭素数1〜12のアルキル基を表し、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、MはO、S又はNHを表し、nは0〜5の整数を表し、R、R10は、炭素数1〜12のアルキル基を表し、R11は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基を表す)
【0033】
上述のオキシムエステル系光重合開始剤の中でも、式(II)で表される2−(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン−9−オンが特に好ましい。市販品としては、CGI−325、イルガキュア(登録商標)OXE01、イルガキュアOXE02(いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、N−1919(ADEKA社製)等が挙げられる。
このようなオキシムエステル系光重合開始剤は、単独で、又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0034】
このようなオキシムエステル系光重合開始剤は、エチレン性不飽和基含有化合物の固形分100質量部に対して、0.05〜10質量部が好ましい。0.05質量部より少ない場合は光硬化が不十分となり画像の定着が悪くなる。また、10質量部より多い場合はより優れた効果を期待できない。より好ましくは0.5〜5質量部である。
【0035】
なお、オキシムエステル系光重合開始剤以外の光重合開始剤を併せて用いることもできる。この場合、オキシムエステル系光重合開始剤と同様の感光波長域を有していることが好ましい。
【0036】
本実施形態の光硬化性組成物に用いられるエチレン性不飽和基含有化合物は、活性エネルギー線の照射で光重合開始剤より発生したラジカルにより光重合し、画像定着させるために用いられる。
【0037】
このような化合物としては、例えば、エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのジアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコール又はこれらのエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、及びこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの多価アクリレート類;メラミンアクリレート及び/又は上記アクリレートに対応する各メタクリレート類等が挙げられる。
【0038】
さらに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などの多官能エポキシ樹脂に、アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート樹脂や、さらにそのエポキシアクリレート樹脂の水酸基に、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどのヒドロキシアクリレートとイソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネートのハーフウレタン化合物を反応させたエポキシウレタンアクリレート化合物などが挙げられる。このようなエポキシアクリレート系樹脂は、指触乾燥性を低下させることなく、光硬化性を向上させることができる。
これらエチレン性不飽和基含有化合物は、1種又は2種以上任意に組み合わせることができる。
【0039】
このようなエチレン性不飽和基含有化合物の配合量は、組成物の固形分100質量部に対して、50〜95質量部が好ましい。50質量部より少ない場合は画像の定着が悪くなる。また、95質量部より多い場合は発色度が低下する。より好ましくは60〜90質量部である。
【0040】
また、本実施形態の光硬化性組成物において、粘度調整を目的として、必要に応じて有機溶剤を添加することができる。このような有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などの公知の有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は、単独で又は二種類以上組み合わせて用いることができる。
【0041】
また、本実施形態の光硬化性組成物には、必要に応じて、種々の添加剤、例えばシリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機フイラーやアクリルビーズやウレタンビーズなどの有機フイラーなどの充填剤、カップリング剤、消泡剤 レベリング剤等の添加剤などを含有させることができる。
このような本実施形態の光硬化性組成物を用いて、例えば以下のようにして所定のパターンを有する画像を形成することができる。ただし、本発明の光硬化性組成物を用いた画像形成方法は、コントラストの高い画像を形成でき、優れた画像安定性と良好な硬化物性を実現できるものであれば、以下の方法に限定されるものではなく、例えば、以下に説明する「第一露光工程」と「第二露光工程」を逆にすることもできる。
【0042】
本実施形態の光硬化性組成物を、例えば、回路形成されたプリント配線板に、スクリーン印刷法、カーテンコート法、スプレーコート法、ロールコート法、スピンコート法等の方法により塗布し、60〜80℃程度の温度で15〜60分程度加熱することにより塗膜を形成する。
【0043】
形成された塗膜に、光酸発生剤の感光波長域の活性エネルギー線を照射し、基板等に形成された塗膜に着色部(コントラスト)を形成する(第一露光工程)。この工程では、光酸発生剤、オキシムエステル系光重合開始剤、エチレン性不飽和基含有化合物、電子供与性染料のすべてが反応する。すなわち、第一露光工程においては、光酸発生剤が酸を発生して、電子供与性染料を発色させて着色部を形成するとともに、オキシムエステル系光重合開始剤もラジカルを発生し、エチレン性不飽和基含有化合物の光重合が行われる。このようにして、着色部の形成と同時に、着色部の一段階目の硬化が行われる。
【0044】
ここで用いられる活性エネルギー線の波長は、光酸発生剤の感光波長域の少なくとも一部を含む必要がある。さらに、併せて一段階目の硬化を進行させるためには、オキシムエステル系光重合開始剤の感光波長域を含むことが好ましい。具体的には、例えば紫外域のi線などの単一波長光や、紫外域、可視域、近赤外域に広い分光分布(複数の発光スペクトル)を有する活性エネルギー線を用いることができ、特に限定されない。そして、その光源としては、公知の低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプなど、適宜選択して利用することができる。
【0045】
第一露光工程においては、光重合を優先すると発色度の点で不十分になる場合があり、また発色度を優先すると光架橋度が低下し、硬化物性が低下する場合がある。一般に、光酸発生剤は、光重合開始剤とは異なり、酸素阻害を受けないことが知られており、酸素雰囲気下での露光でも安定して酸が供給できる利点がある。従って、ここでの露光方法は、用途に応じて、真空密着露光、プロキシミテイ露光、ダイレクトイメージイングなど、適宜選択することができる。
【0046】
第一露光工程の後に、光酸発生剤から発生した酸を塗膜内で拡散させるために、露光後加熱処理(Post Exposure Bake:PEB)を行ってもよい。露光後加熱処理としては、公知の方法、条件を適用することができる。
【0047】
着色部(コントラスト)を形成した後に、光酸発生剤の感光波長域外で、かつオキシムエステル系光重合開始剤の感光波長域の活性エネルギー線を照射し、未着色部の硬化及び着色部の再硬化(二段階目の硬化)を行う(第二露光工程)。この工程では、エチレン性不飽和基含有化合物、オキシムエステル系光重合開始剤が反応する。すなわち、第二露光工程においては、オキシムエステル系光重合開始剤がラジカルを発生して、エチレン性不飽和基含有化合物の光重合が行われる。このようにして、電子供与性染料の発色反応を抑えて全面を光硬化させ、第一露光工程で形成された着色部(コントラスト)を定着させることにより、所定のパターンを有する画像が形成される。
【0048】
ここで用いられる活性エネルギー線の波長は、光酸発生剤の感光波長域外であり、かつオキシムエステル系光重合開始剤の感光波長域であればよい。但し、第二露光工程での未着色部のカブリを防ぐために、光酸発生剤の感光波長域から離れていることが好ましい。
【0049】
例えば、オキシムエステル系光重合開始剤が吸収・活性を有する波長であるh線(405nm)を利用することができる。そして、光源としては、公知の低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、レーザーなどを適宜選択して利用することができる。
【0050】
このように、本実施形態の光硬化性組成物を用いることにより、従来の画像形成方法では成しえなかったコントラストの高い画像を形成することができるとともに、優れた画像安定性と良好な硬化物性を得ることが可能となる。従って、従来の感熱記録紙やプルーフ材のみならず、例えば、使用環境の厳しい電子基板やディスプレイ関連分野でのマーキング用途や遮光用途にも幅広く利用することができる。さらに、湿式画像形成方法では腐食の問題で対応できないアルミ配線上へのコントラスト形成が可能となるため、受光素子や変位センサなど、MEMS分野にまで応用展開することが可能となる。
【実施例】
【0051】
以下に実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではないことはもとよりである。尚、以下において「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0052】
まず、以下の合成例で樹脂ワニスを調製した。
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた2リットルのセパラブルフラスコに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂のエピクロンN−680(DIC社製、エポキシ当量=215g/当量)107.5部を入れ、カルビトールアセテート108部、出光石油化学製のイプゾール(登録商標)#150 108部を加え、加熱溶解し、樹脂溶液を得た。
【0053】
この樹脂溶液に、重合禁止剤としてハイドロキノン0.05部と、反応触媒としてトリフェニルホスフィン1.0部を加えた。この混合物を85〜95℃に加熱し、アクリル酸36部を徐々に滴下し、24時間反応させた。得られたエポキシアクリレートに、予めイソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートを1:1モルで反応させたハーフウレタン257.5部を徐々に滴下し、60〜70℃で4時間反応させ、樹脂ワニスを調製した。
【0054】
表1に示すように、得られた樹脂ワニスを含む種々の成分を、割合(質量部)にて配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルで混練して、光硬化性組成物1〜4を得た。
【0055】
【表1】

備考
*1:ネオマー(登録商標)DA-600(三洋化成工業社製)
*2:BYK(登録商標)-361N(ビックケミー・ジャパン社製)
*3:KS-66(信越シリコーン社製)
*4:CGI 325(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
*5:IRGACURE(登録商標) OXE-02(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
*6:IRGACURE OXE-01(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
*7:IRGACURE 907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
*8:アデカ(登録商標)オプトマー SP-152(ADEKA社製)
*9:S-205(山田化学工業社製)
【0056】
試験基板の作成:
表1に示す組成物例1〜4の光硬化性組成物を、それぞれ銅ベタ基板をバフ研磨した後、スクリーン印刷法にて全面印刷し、80℃×30分乾燥することで、基板上に無色透明の塗膜を形成し、実施例1〜3、比較例4〜8の試験基板を得た。
【0057】
得られた試験基板について、それぞれ表2に示す条件で露光を行った。なお、各露光工程は以下の条件とした。
第一露光工程:
ネガマスク越しにメタルハライドランプを用い、全光波長領域で1000J/cmで光照射を行った。その後、80℃で10分間PEB処理を行った。
第二露光工程:
第一露光工程を経た試験基板に対して、光酸発生剤の感光波長域外で、オキシムエステル系光重合開始剤の感光波長域である405nmの波長を発振する直描露光機(PENTAX社製DI−μ)を用い、試験基板上の塗膜全体を 300J/cmで光照射を行った。
【0058】
このような実施例1〜3、比較例4〜8の試験基板について、以下に示すように塗膜特性の評価を行った。
【0059】
コントラスト評価:
実施例1〜3、比較例1〜5の試験基板について、塗膜の発色を目視で確認した。評価基準は以下の通りである。
発色あり・・・露光後の発色が見られる
発色なし・・・露光前後に色彩変化なし
【0060】
タック性評価:
実施例1〜4及び比較例1〜5の試験基板について、露光前、第一露光処理後及び第二露光処理後のタック性により、塗膜の硬化状態を評価した。評価基準は以下の通りである。
○・・・指蝕時に塗膜表面に指跡が全く残らない
×・・・指蝕時に塗膜表面に指跡が残る
【0061】
耐溶剤性評価:
実施例1〜3及び比較例1〜5の試験基板について、露光処理後の塗膜(硬化物)の硬化性を確認するため、着色部・未着色部において、それぞれプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)を用いてラビングテストを10回行い、塗膜の溶解・剥がれを目視で確認した。評価基準は以下の通りである。
○・・・PMAラビング後、塗膜の溶解・剥がれなし
△・・・PMAラビング後、塗膜表面に濁り部あり
×・・・PMAラビング後、塗膜の溶解・剥がれあり
【0062】
画像安定性(耐候性)評価:
実施例1〜4及び比較例1〜4の試験基板について、露光処理後の塗膜(硬化物)について、蛍光灯下で1週間放置し、目視評価でカブリを確認した。評価基準は以下の通りである。
○・・・一週間放置しても、未着色部のカブリは見られず、コントラストが維持された状態
×・・・一週間放置すると、未着色部のカブリが見られ、コントラストが維持できない状態
【表2】

【0063】
表2に示すように、組成物中の光酸発生剤の感光波長域外に感光域を持つ光重合開始剤を用い、2段階の露光を行った実施例1〜3においては、高コントラスト化と優れた画像安定性が共に得られていることがわかる。
【0064】
一方、組成物中の光酸発生剤の感光波長域外に感光波長域を持たない光重合開始剤を用いた比較例1においては、コントラストを維持することが困難となり、十分な画像安定性(耐候性)を得ることができないことがわかる。また、従来の1段階の露光を行った比較例2〜5においては、コントラストは形成できるが、未着色部が硬化していないため、同様にコントラストを維持することが困難となり、十分な画像安定性(耐候性)を得ることができないことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光酸発生剤と、
電子供与性染料と、
下記一般式(I)で表され、前記光酸発生剤の感光波長域外にも感光波長域を有するオキシムエステル系光重合開始剤と、
エチレン性不飽和基含有化合物と、を含有することを特徴とする光硬化性組成物。
【化8】

(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、又はフェニル基を表し、Rは、炭素数1〜7のアルキル基、又はフェニル基を表す)
【請求項2】
前記オキシムエステル系光重合開始剤が、下記式(II)で表されること、又は下記一般式(III)若しくは下記一般式(IV)で表される構造を含むことを特徴とする請求項1に記載の光硬化性組成物。
【化9】

【化10】

(式中、R、Rは、それぞれ独立に炭素数1〜12のアルキル基を表し、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、MはO、S又はNHを表し)、nは0〜5の整数を表し、R、R10は、炭素数1〜12のアルキル基を表し、R11は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基を表す)
【請求項3】
基板上に、請求項1又は請求項2に記載の光硬化性組成物の塗布膜を形成し、
前記光酸発生剤の感光波長域の少なくとも一部を含む第1の活性エネルギー線を所定パターンに照射し、酸を発生させ、前記電子供与性染料を発色させて着色部を形成した後、
前記光酸発生剤の感光波長域外で、かつ前記オキシムエステル系光重合開始剤の感光波長域の第2の活性エネルギー線を全面に照射して、前記オキシムエステル系光重合開始剤よりラジカルを発生させ、前記エチレン性不飽和基含有化合物を重合させて得られることを特徴とする硬化物。

【公開番号】特開2011−68755(P2011−68755A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220413(P2009−220413)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(591021305)太陽ホールディングス株式会社 (327)
【Fターム(参考)】