説明

光硬化性組成物

【課題】100〜150℃雰囲気の耐熱性試験を実施した時に物理特性、特に永久圧縮歪みが安定であり、塗布形状および保存安定性が安定した光硬化性シール剤を提供する。
【解決手段】(A)〜(C)成分を含み、(A)成分と(B)成分の質量比が3:7〜8:2である光硬化性組成物。(A)成分:主骨格が(メタ)アクリルモノマーの重合体であり、両末端に(メタ)アクリル基を2有する化合物(B)成分:主骨格が(メタ)アクリルモノマーの重合体であり、片末端に(メタ)アクリル基を1有する化合物(C)成分:光開始剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー線を照射することにより硬化し、硬化物は弾性を有すると共に耐熱性に優れた光硬化性組成物に関するものである。耐熱性の中でも特に圧縮永久歪みが良好であり、車載用シール剤として使用することができる。
【背景技術】
【0002】
従来より、100〜150℃雰囲気において硬さが変化しにくいなどの耐熱性を有する樹脂として、シリコーン樹脂が知られている。シリコーン樹脂の主骨格は螺旋状であり、この特有の骨格により耐熱性を有している。しなしながら、シリコーン樹脂は低分子量シロキサン(D3〜D10の環状シロキサン)を含有するため、電気・電子部品へ悪影響も懸念される。また、シリコーン樹脂を硬化する際に、湿気硬化タイプのシリコーン樹脂は深部硬化までに或る程度の時間がかかり、加熱硬化タイプのシリコーン樹脂は同様に加熱時間が必要である。そのため、作業性の点で紫外線などのエネルギー線の照射により硬化する光硬化タイプの樹脂と比較して劣る点が有る。
【0003】
両末端に(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリル重合体は公知の原料であり、当該重合体の硬化物は弾性を有し、シリコーン樹脂に変わる材料として知られている。当該(メタ)アクリル重合体は光硬化および/または加熱硬化することができると共に低分子量シロキサンが発生しない。しかしながら、シリコーン樹脂特有の軟質な硬化物を形成することが難しい。また、近年は片末端に(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリル重合体が公知になり、両末端の重合体と片末端の重合体を混合することによりシリコーン樹脂と同様の弾性を発現させる可能性も見いだされている。しかしながら、特許文献1の様に単純に混合するだけでは、粘着剤となり、シール剤や接着剤用途には適していない。
【0004】
また、両末端の重合体と片末端の重合体を混合することで、特許文献2の様に現場成形ガスケット用として記載されているが、特許文献2の明細書中には光照射によりシート状の硬化物を作成した上で永久圧縮歪みを測定している。現場成形ガスケットとは現場で塗布して、その場でエネルギー線を照射して硬化し、ガスケットを形成するものである。つまり、組成物に関して、粘度・流動性も含めた性状についても検討が必要である。通常、粘度調整するための有機・無機充填剤を添加しなければ、性状を維持することができず流れてしまいガスケットとして使用することができない。また、充填剤を添加すればそれに伴って硬化物物性も変化する。さらに、シート状に硬化させた後に打ち抜きによりシール剤を製造する場合、残りのシートが発生し、生産効率が悪い。そのため、現場で塗布することでシール剤を形成することが生産効率を向上させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−23206号公報
【特許文献2】再公表2005−87890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来は、耐久試験として100〜150℃雰囲気の耐熱性試験を実施した時に物理特性、特に永久圧縮歪みが不安定であると共に、塗布形状が安定した光硬化性シール剤を見いだすことは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討した結果、次に説明する実施態様により本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の要旨を次に説明する。本発明の第一の実施態様は、(A)〜(C)成分を含み、(A)成分と(B)成分の質量比が3:7〜8:2である光硬化性組成物である。
(A)成分:主骨格が(メタ)アクリルモノマーの重合体であり、両末端に(メタ)アクリル基を2有する化合物
(B)成分:主骨格が(メタ)アクリルモノマーの重合体であり、片末端に(メタ)アクリル基を1有する化合物
(C)成分:光開始剤
【0009】
本発明の第二の実施態様は、(A)成分および(B)成分の重量平均分子量が、10000〜50000である第一実施態様に記載の光硬化性組成物である。
【0010】
本発明の第三の実施態様は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、(D)成分として表面にアルキル基を付加したヒュームドシリカを0.1〜30質量部含む第一または第二の実施態様に記載の光硬化性組成物である。
【0011】
本発明の第四の実施態様は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、(E)成分として1分子中に(メタ)アクリル基を1有する化合物を0.1〜10質量部含む第一〜第三の実施態様のいずれかに記載の光硬化性組成物である。
【0012】
本発明の第五の実施態様は、第一〜第四の実施態様のいずれかに記載の制御装置用光硬化性組成物である。
【0013】
本発明の第六の実施態様は、第一〜第五の実施態様のいずれかに記載の車載用エレクトロニックコントロールユニット用光硬化性組成物である。
【0014】
本発明の第七の実施態様は、第一〜第六の実施態様のいずれかに記載の光硬化性シール剤である。
【発明の効果】
【0015】
本発明では100〜150℃雰囲気の耐熱性試験を実施した時に物理特性、特に永久圧縮歪みが安定であり、塗布形状および保存安定性が安定した光硬化性シール剤を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は圧縮永久歪みを測定するための治具である。
【図2】図2は圧縮永久歪み測定時の断面図である。
【図3】図3はリーク試験時の模式図であり、圧縮永久歪みの治具を使用する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の詳細を次に説明する。本発明で使用することができる(A)成分としては、主骨格が(メタ)アクリルモノマーの重合体からなり、分子内に2の(メタ)アクリル基を有する化合物である。ここで(メタ)アクリルとはアクリルとメタクリルの総称である。(A)成分には反応性を有する(メタ)アクリル基が残っており、分子の側鎖及び/又は末端のいずれに存在していても構わないが、ゴム弾性および柔軟性の点からは、主骨格の両末端に存在することが好ましい。
【0018】
(A)成分の主骨格を構成する(メタ)アクリルモノマーとしては特に限定されず、各種のものを用いることができる。(メタ)アクリルモノマーとは、アクリル基たまはメタクリル基を有するモノマーの総称である。例示するならば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−t−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明においては、前記(メタ)アクリルモノマーより選択して重合させることができるが、好ましくは炭化水素基を有する(メタ)アクリルモノマーを選択することが好ましい。
【0019】
(A)成分の重量平均分子量は、好ましくは10000〜50000である。重量平均分子量が1万未満であると硬化物が有する弾性が発現されにくくなる傾向があり、耐熱試験において硬化物に割れが発生する。一方、重量平均分子量が5万を超えると粘性が高くなりすぎて光硬化性組成物を塗布する際に糸引きが発生する。
【0020】
(A)成分は種々の重合法により得ることができ、その方法は特に限定されないが、モノマーの汎用性及び反応制御の容易性の点からラジカル重合法が好ましい。ラジカル重合の中でも制御ラジカル重合が好ましく、リビングラジカル重合がより好ましく、原子移動ラジカル重合が特に好ましい。また、主骨格である(メタ)アクリルモノマーの重合体に対して、(メタ)アクリル基の導入法は、(1)末端に水酸基を有するビニル系重合体と、塩素、臭素、または水酸基含有(メタ)アクリレート化合物、との反応による方法、(2)末端にハロゲン基を有するビニル系重合体とアルカリ金属イオンまたは4級アンモニウムイオン含有(メタ)アクリレート化合物との反応による方法、(3)末端に水酸基を有するビニル系重合体にジイソシアネート化合物を反応させ、残存イソシアネート基と水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られる方法などが挙げられる。これらの方法は既に公知な方法であり、特開昭61−133201号公報、特開平11−80250号公報、特開2000−38404号公報、特開2001−271055号公報、特開2002−69121号公報などに記載されている。
【0021】
本発明で使用することができる(B)成分としては、主骨格が(メタ)アクリルモノマーの重合体からなり、分子内に1の(メタ)アクリル基を有する化合物である。(B)成分には反応性を有する(メタ)アクリル基が残っており、分子の側鎖及び/又は末端のいずれに存在していても構わないが、ゴム弾性および柔軟性の点からは、主骨格の末端に存在することが好ましい。(B)成分の製造方法は(A)成分に準じる。また、分子内に(メタ)アクリル基を全く有していない(メタ)アクリルモノマーの重合体が可塑剤として知られているが、分子内に1の(メタ)アクリル基を有する本発明の(B)成分とは異なる化合物である。
【0022】
(B)成分の好ましい重量平均分子量は、(A)成分と同様に10000〜50000である。重量平均分子量が1万未満であると硬化物が有する弾性が発現されにくくなる傾向があり、耐熱試験において硬化物に割れが発生する。一方、重量平均分子量が5万を超えると粘性が高くなりすぎて光硬化性組成物を塗布する際に糸引きが発生する。
【0023】
(A)成分と(B)成分の質量比は8:2〜4:6が好ましい。(A)成分と(B)成分の合計に対して(A)成分が80%より多く含まれると、硬度が高くなるため、圧縮永久歪みの特定が低下する。一方、(A)成分と(B)成分の合計に対して(B)成分が60%より多く含まれると、硬化物に弾性が発現せず圧縮永久歪みの試験の際に、そのまま押しつぶされてしまう。
【0024】
本発明の(C)成分として用いることができる光開始剤は、紫外線などの活性エネルギー線を照射することにより活性ラジカル種が発生し(A)成分及び(B)成分をラジカル重合させるものである。(C)成分の具体例としては、アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、キサントール、フルオレイン、ベンズアルデヒド、アンスラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−メチルアセトフェノン、3−ペンチルアセトフェノン、4−メトキシアセトフェノン、3−ブロモアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジアセチルベンゼン、3−メトキシベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、オリゴ(2−ヒドロキシー2−メチルー1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)、4−アリルアセトフェノン、カンファーキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、4−メチルベンゾフェノン、4−クロロ−4’−ベンジルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルー1−フェニルー1−プロパノン、3−クロロキサントーン、3,9−ジクロロキサントーン、3−クロロ−8−ノニルキサントーン、ベンゾイル、ベンゾイルメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、ベンジルメトキシケタール、2−クロロチオキサントーン、o−メチルベンゾエート、ベンジルジメチルケタール、メチルベンゾイルホーメートなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、(C)成分は0.1〜10質量部添加されることが好ましい。(C)成分が0.1質量部より少ないと光硬化性が低下し、10質量部より多いと、ラジカル種の発生量が多くなり硬化物が硬くなる傾向が見られる。
【0026】
本発明で使用することができる(D)成分は、表面にアルキル基を付加したヒュームドシリカである。ヒュームドシリカの表面にはシラノールが残留しているため未処理の状態では親水性であるが、前記シラノールにジメチルジクロロシランなどを付加させることで表面を疎水化する手法が知られている。本発明では、炭素数が2以上で直鎖状のアルキル基を付加したヒュームドシリカが好ましい。具体的な商品名とては、日本アエロジル株式会社製のNKC130、R805などが挙げられる。ヒュームドシリカの表面処理の種類は多数存在するが、アルキル基以外の処理は光硬化性組成物中に分散させた後、長期保存中に沈降する傾向があり本発明の(D)成分が適している。
【0027】
(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、(D)成分は5〜35質量部添加されることが好ましい。(D)成分が10〜30質量部添加されることが特に好ましい。(D)成分が5質量部より少ないと粘度が低すぎて流れてしまい、塗布形状を維持することができない。一方、35質量部より多いと、表面が波をうち、塗布形状の断面が半円状にならず安定しない。
【0028】
本発明で使用することができる(E)成分は、1分子中に1の(メタ)アクリル基を有し、分子量が1000未満の低分子量化(メタ)アクリル化合物である。(A)成分および/または(B)成分の主骨格を構成する(メタ)アクリルモノマーと同様の成分である。
【0029】
好ましい(E)成分としては、分子内に水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーおよび/または飽和脂環構造を有する(メタ)アクリルモノマーである。好ましい添加量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、(E)成分が0.1〜10質量部である。(E)成分が10質量部より多いと、硬化物が脆くなり耐熱試験にて物理特性を保持することができない。一方、(E)成分が0.1質量部より少ないと、粘度が高くなり塗布性が低下すると共に、光硬化性組成物の粘性が高くなり糸引きの問題が発生する。その目的に合わせて、(E)成分は適宜使用する。
【0030】
水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーの具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレートなどが挙げられる。最も好ましくは、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートおよび/または2−ヒドロキシエチルメタクリレートが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0031】
飽和脂環構造を有する(メタ)アクリルモノマーの具体例としては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アダマンタニル(メタ)アクリレート、などが挙げられる。最も好ましくは、イソボルニル骨格および/またはジシクロペンタニル骨格を有する(メタ)アクリルモノマーである。
【0032】
光が照射されない陰部を硬化させるため、本発明の光硬化性組成物には有機過酸化物を添加して加熱硬化性を付与することもできる。有機過酸化物の具体例を挙げると、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類;t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;ジt−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキサイド類;アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、サクシニックアシッドパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジn−プロピルパーオキシジカーボネート、ビス−(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジミリスチルパーオキシジカーボネート、ジ2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカルボネート、ジアリルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類;t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジt−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクトエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシネオヘキサノエート、クミルパーオキシネオヘキサノエート等のパーオキシエステル類;及びアセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド、t−ブチルパーオキシアリルカーボネートがあるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
本発明の光硬化性組成物には、物性を調整するために各種の添加剤、例えば、老化防止剤、可塑剤、物性調整剤、溶剤等を配合してもよい。老化防止剤は必ずしも必要ではないが、従来公知の酸化防止剤、光安定剤を適宜用いることができる。また、老化防止剤は、重合時の重合制御にも用いることができ、物性制御を行うこともできる。
【0034】
酸化防止剤は各種のものが知られており、チオエーテル系、リン系、ヒンダードフェノール系、モノアクリレートフェノール系、ニトロキシド系が挙げられる。なかでも、以下に示したようなヒンダードフェノール系化合物が好ましい。
【0035】
チオエーテル系酸化防止剤の具体例として、MARK PEP−36、MARK AO−23(以上いずれもアデカアーガス化学製)などが挙げられる。
【0036】
リン系酸化防止剤の具体例として、Irgafos38、Irgafos168、IrgafosP−EPQ(以上いずれも日本チバガイギー製)などが挙げられる。
【0037】
ヒンダードフェノール系化合物としては、具体的には以下のものが例示できる。2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、モノ(又はジ又はトリ)(α−メチルベンジル)フェノール、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,4−2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]o−クレゾール、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、メチル−3−[3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート−ポリエチレングリコール(分子量約300)との縮合物、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール誘導体、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。商品名で言えば、ノクラック200、ノクラックM−17、ノクラックSP、ノクラックSP−N、ノクラックNS−5、ノクラックNS−6、ノクラックNS−30、ノクラック300、ノクラックNS−7、ノクラックDAH(以上いずれも大内新興化学工業製)、MARK AO−30、MARK AO−40、MARK AO−50、MARK AO−60、MARK AO−616、MARK AO−635、MARK AO−658、MARK AO−80、MARKAO−15、MARK AO−18、MARK 328、MARK AO−37(以上いずれもアデカアーガス化学製)、IRGANOX−245、IRGANOX−259、IRGANOX−565、IRGANOX−1010、IRGANOX−1024、IRGANOX−1035、IRGANOX−1076、IRGANOX−1081、IRGANOX−1098、IRGANOX−1222、IRGANOX−1330、IRGANOX−1425WL(以上いずれも日本チバガイギー製)、SumilizerGA−80(住友化学製)等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
モノアクリレートフェノール系酸化防止剤の具体例として、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(商品名スミライザーGM)、2,4−ジ−t−アミル−6−[1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル]フェニルアクリレート(商品名スミライザーGS)等が例示される。
【0039】
ニトロキシド系酸化防止剤の具体例として、2,2,6,6−置換−1−ピペリジニルオキシラジカルや2,2,5,5−置換−1−ピロリジニルオキシラジカル等、環状ヒドロキシアミンからのニトロキシフリーラジカルが例示される。置換基としてはメチル基やエチル基等の炭素数4以下のアルキル基が適当である。具体的なニトロキシフリーラジカル化合物としては、限定はされないが、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル(TEMPO)、2,2,6,6−テトラエチル−1−ピペリジニルオキシラジカル、2,2,6,6−テトラメチル−4−オキソ−1−ピペリジニルオキシラジカル、2,2,5,5−テトラメチル−1−ピロリジニルオキシラジカル、1,1,3,3−テトラメチル−2−イソインドリニルオキシラジカル、N,N−ジ−t−ブチルアミンオキシラジカル等が挙げられる。ニトロキシフリーラジカルの代わりに、ガルビノキシル(galvinoxyl)フリーラジカル等の安定なフリーラジカルを用いても構わない。
【0040】
また、酸化防止剤は光安定剤と併用してもよい。光安定剤の具体例としてはビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(商品名サノール)などが挙げられる。併用することによりその効果をさらに発揮し、特に耐熱性が向上することがあるため特に好ましい。なお、予め酸化防止剤と光安定剤を混合してあるチヌビンC353、チヌビンB75(以上いずれも日本チバガイギー製)等を使用しても良い。
【0041】
本発明の光硬化性組成物はシール部、ポッティング部などに塗布した後、紫外線や可視光などの活性エネルギー線の照射により硬化することができるため作業性が良好である。さらに、被着体の形状が複数種類ある場合や形状が複雑な場合は、現場で形状に合わせて光硬化性組成物を塗布して硬化することでシール剤が形成されるため、本発明により様々なバリエーションのシールに対応することができる。また、本発明は耐熱試験後の圧縮永久歪みが特に良好であり、特に車載用のシール用途に適している。電子部品、電子基板またはモーターなどをケースにより密封することで外部環境からの悪影響を回避する。当該ケースのシール面が平面の場合はシール剤に対する負担が少ないが、一般的にシール面が平面ではないまたは凹凸がある場合に凸部でシール剤の破損が発生しやすい傾向が見られる。そのため、シール面に凹凸が有る場合、シール剤の圧縮永久歪みがより低い方がシール性を保つことができる。
【0042】
具体的な用途としては、耐熱性が求められる車載用電子基板や車載用電気電子部品の組立て、電子基板の車載用制御装置ケースや車載用モーターケースのシール等が挙げられる。特に、車載用の制御装置ケースはエレクトロニックコントロールユニットとも呼ばれ、具体例としてはエンジン制御装置(エンジンコントロールユニット)、スロットル制御装置、排気ガス再循環制御装置などが挙げられる。また、車載用のモーターケースの具体例としては、パワーウィンドーやワイパーのモーターケースなどが挙げられる。車載用制御装置のケースをシールする際に、シール面が平面ではないまたは3次元の凹凸がある場合があり、この部位においてシール性を発揮するためには硬化物により低い圧縮永久歪みが求められる。本発明は良好な耐熱性および圧縮永久歪みを有するため、前記用途への適用が可能である。
【実施例】
【0043】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0044】
[製造例1]
主骨格が(メタ)アクリルモノマーの重合体からなり、分子内に少なくとも2の(メタ)アクリル基を有する化合物を以下の通り製造した。臭化第一銅を触媒、ペンタメチルジエチレントリアミンを配位子、ジエチル−2,5−ジブロモアジペートを開始剤として、アクリル酸n−ブチルを重合し、この重合体300gをN,N−ジメチルアセトアミド(300mL)に溶解させ、アクリル酸カリウム5.3gを加え、窒素雰囲気下、70℃で3時間加熱攪拌し、両末端にアクリル基を有するポリ(アクリル酸n−ブチル)(以下、重合体1という)の混合物を得た。この混合液中のN,N−ジメチルアセトアミドを減圧留去した後、残さにトルエンを加えて、不溶分をろ過により除去した。濾液のトルエンを減圧留去して、重合体1を精製した。精製後の重合体1の重量平均分子量は32308、分散度は1.36、平均末端アクリル基数は2.0(即ち、末端へのアクリル基の導入率は100%)であった。
【0045】
[製造例2]
主骨格が(メタ)アクリルモノマーの重合体からなり、分子内に少なくとも2の(メタ)アクリル基を有する化合物を以下の通り製造した。臭化第一銅を触媒、ペンタメチルジエチレントリアミンを配位子、ジエチル−2,5−ジブロモアジペートを開始剤として、アクリル酸n−ブチルを重合し、この重合体300gをN,N−ジメチルアセトアミド(300mL)に溶解させ、アクリル酸カリウム2.6gを加え、窒素雰囲気下、70℃で3時間加熱攪拌し、片末端にアクリル基を有するポリ(アクリル酸n−ブチル)(以下、重合体1という)の混合物を得た。この混合液中のN,N−ジメチルアセトアミドを減圧留去した後、残さにトルエンを加えて、不溶分をろ過により除去した。濾液のトルエンを減圧留去して、重合体2を精製した。精製後の重合体2の重量平均分子量は14334、分散度は1.31、平均末端アクリル基数は1.0(即ち、末端へのアクリル基の導入率は50%)であった。
【0046】
前記の「数平均分子量」および「分散度(重量平均分子量と数平均分子量の比)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。ただし、GPCカラムとしてポリスチレン架橋ゲルを充填したものを2本(shodex GPC K−802.5;昭和電工(株)製)(shodex GPCK−804;昭和電工(株)製)直列につないで用い、GPC溶媒としてクロロホルムを用いた。
【0047】
[実施例1〜14、比較例1〜5]
光硬化性組成物を調製するために下記成分を準備した。(以下、光硬化性組成物を組成物と表記する。)
【0048】
(A)成分:主骨格が(メタ)アクリルモノマーの重合体であり、両末端に(メタ)アクリル基を2有する化合物
・重合体1
(B)成分:主骨格が(メタ)アクリルモノマーの重合体であり、片末端に(メタ)アクリル基を1有する化合物
・重合体2
(B’)成分:反応基を有さない(メタ)アクリルモノマーの重合体
・可塑剤: 重量平均分子量:6000のアクリルポリマー系可塑剤(ARUFON UP−1080 東亞合成株式会社製)
(C)成分:光開始剤
・光開始剤:ベンゾフェノンと1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの1:2の混合物。
(D)成分:表面にアルキル基を付加したヒュームドシリカ
・シリカ1:オクチルシラン基を付加したヒュームドシリカ(AEROSIL R805 日本アエロジル株式会社製)
(D’)成分:(D)成分以外のヒュームドシリカ
・シリカ2:メタクリル基を付加したヒュームドシリカ(AEROSIL R7200 日本アエロジル株式会社製)
(E)成分:1分子中に(メタ)アクリル基を1有する化合物
・モノマー1:イソボルニルアクリレート(ライトアクリレート IB−XA 共栄社化学株式会社製)
(E’)成分:(E)成分以外の(メタ)アクリル樹脂
・モノマー2:ポリエステル骨格を有する2官能アクリルオリゴマー(紫光UV−3000B 日本合成化学工業株式会社製)
・モノマー3:トリメチロールプロパントリアクリレート(ライトアクリレートTMP−A 共栄社化学株式会社製)
【0049】
(A)成分および(B)成分((E)成分を含む組成物は(E)成分も同時に秤量する。)を撹拌機の釜に秤量し、均一になるまで15分間撹拌する。次に、(D)成分を秤量し、(D)成分の固まりが無くなり均一になるまで30分間真空脱泡を行う。最後に(E)成分を秤量して1時間撹拌する。詳細な調製量は表1に従い、数値は全て質量部で表記する。
【表1】

【0050】
未硬化の実施例1〜14および比較例1〜5について、物理特性として硬度、引張剪断強さ、伸び率、圧縮永久歪みを測定し、性状に関しては保存安定性の確認を行った。耐久試験として、耐熱性確認試験を実施した。初期の測定結果および耐久試験後の物理特性変化率を表2にまとめた。
【0051】
[保存安定性確認]
組成物を40℃雰囲気で30日間放置した時に、目視により外観を確認し組成物に変化の有無を確認する。変化が無い場合は「良」とし、充填剤の沈降が発生している場合は「不良」とする。
【0052】
[硬度測定(ショアーCまたはショアーA)]
組成物の厚さを6mmに設定した状態で、紫外線照射機で45kJ/mを照射してシート状の硬化物を作成する。A型デュロメータ(硬度計)の加圧面をシート状硬化物に対して平行に保ちながら、衝撃を伴うことなく速やかに10Nの力で押しつけ、加圧面と試料とを密着させる。測定時に最大値を読み取り、最大値を「硬度(単位無し)」とする。詳細はJIS K 6253に従う。高温雰囲気に於いて硬度の低い方が体積の膨張収縮に追従することができるため、A硬度であればA15より柔らかく、C硬度であればC70より柔らかいことが好ましい。
【0053】
[引張剪断強さ測定]
組成物の厚さを2mmに設定し、45kJ/mを照射してシート状の硬化物を作成する。3号ダンベルで打ち抜いてテストピースを作製しする。テストピースの長軸とチャックの中心が一直線になる様に、テストピースの両端をチャックに固定する。引張速度50mm/minでテストピースを引張り、最大荷重を測定する。当該最大荷重時の強度を「剪断接着強さ(MPa)」とする。詳細はJIS K 6850に従う。引張剪断強さとしては、0.3MPa以上有することが好ましい。
【0054】
[伸び率測定]
組成物の厚さを2mmに設定し、45kJ/mを照射してシート状の硬化物を作成する。3号ダンベルで打ち抜いてテストピースを作製し、25mm間隔の標線をテストピースに記入する。引張剪断強さの測定と同じ容量でチャックに固定して、引張速度500mm/minでによって試験片の切断に至るまで引っ張る。測定時にテストピースが伸びて標線の間隔の広がるため、テストピースが切断されるまでノギスにより標線の間隔を計測する。初期の標線間隔を基準として、伸びた割合を「伸び率(%)」とする。膨張収縮に追従するためには伸び率が100%以上有することが好ましい。
[高温耐久試験]
初期の測定に際して複数作成した硬度、剪断接着強さ、伸び率のテストピースについて一部を150℃雰囲気に設定した熱風乾燥炉に250時間放置する。テストピースを取り出して、室温になるまで放置した後に測定を行う。硬度に関しては試験後、A硬度であればA18より柔らかく、C硬度であればC84より柔らかい事が好ましい。剪断接着強さおよび伸び率に関しては、初期と150℃放置後の各特性の「変化率(%)」を数式1に従い計算し、変化率の絶対値が20%以内に入ることが好ましい。
【数1】

[圧縮永久歪み測定、限界圧縮率測定]
圧縮永久歪みについても150℃雰囲気で250時間後の変化を確認した。図1の様な内径56mm、外径70mm、フランジ幅7mmのアルミ製フランジを用いて、図2の様に組成物を高さ2mm、幅3mmのビート塗布して紫外線照射により硬化し、圧縮率45%でフランジを貼り合わせてテストピースを作成する。250時間放置後、室温に戻った後に、測定を行い数式2の通り計算して「圧縮永久歪み(%)」を導く。一方、別の硬化物に対して、数式3の様に定義される圧縮率(%)の数値を上げていき、各組成物の硬化物にクラックが入る「限界圧縮率(%)」を確認した。圧縮永久歪みは30%以下であることが好ましく、限界圧縮率は45%以上であることが好ましい。また、通常用いられるACM系Oリングも同時に試験を行った。表2には記載していないが、同条件で行った圧縮永久歪みは79%であった。
【数2】

【表2】

【0055】
[リーク試験]
実施例1〜3および8と比較例1、2および4に対してリーク試験を行った。圧縮永久歪み測定と同様のフランジおよびビート形状により試験を行った。圧縮率45%で150℃雰囲気の熱風乾燥炉に100時間投入した後、熱風乾燥炉から取り出して室温まで放置してから測定を行った。圧力ゲージにて圧力が調整できる圧縮空気を送り込むため、加圧ホースを図3の様にフランジにつなげる。圧縮率45%で0.01MPa/10secの昇圧でフランジの内部圧力を上げていき、最大0.1MPaまで昇圧する。リークした際の最大圧力および以下の通りビート状態を三段階で評価する。その結果を表3に示す。
ビート状態の確認
○:最大圧力0.1MPaまで亀裂無し
△:ビート界面に亀裂有り
×:ビート内部に亀裂有り
【表3】

【0056】
実施例と比較例を比較すると、高温耐久性においてその物理特性を維持するためには、(A)成分と(B)成分の混合質量比の最適な範囲が限られている。(A)成分と(B)成分の最適な混合質量比は、8:2〜6:4である。硬化性官能基が少ない(B)成分は添加量が多すぎると、比較例2の様にシール剤としてよりも粘着剤としての性質が強く、外部からの力に対して反発することが出来ないと推測される。また、比較例1の様に(B)成分が少なすぎると、硬化物に弾性が発現せずに圧縮永久歪みの性能が低下し、比較例5の様に、(B)成分の代わりに反応基を有さない(メタ)アクリルモノマーの重合体を用いても性能を維持することは困難である。特に、シール用途では硬化物に弾性が無いと被着体に対する圧力が確保できず、表3の様なリーク試験において気密性を保つことができない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の光硬化性組成物は、他の硬化形態である加熱硬化、湿気硬化と比較しても短時間で硬化するため、ラインタクトの短縮に繋がるため部品や基板等の製造効率を向上させる。また、一般的に軟質な硬化物は高温耐久試験後は物理特性の劣化が激しいが、本発明は特に150℃雰囲気の圧縮永久歪みにおいて変化が少なく安定した物理特性を維持することができる。弾性を維持できることで温度変化による膨張収縮に追従することができ、硬化物のクラックなどの不具合を起こしにくい。これらの特性を有する本発明は、電気分野はもちろんのこと特に厳しい耐久性を要求される自動車分野において車載用の電気・電子部品、ケースなどのシールに最適である。
【符号の説明】
【0058】
1:上部フランジ
2:下部フランジ
3:ボルトおよびナット用の穴
4:シール剤
5:UV照射
6:硬化物
7:スペーサ
8:ボルト
9:ナット
10:内部加圧用ホース接続部
11:加圧ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)〜(C)成分を含み、(A)成分と(B)成分の質量比が3:7〜8:2である光硬化性組成物。
(A)成分:主骨格が(メタ)アクリルモノマーの重合体であり、両末端に(メタ)アクリル基を2有する化合物
(B)成分:主骨格が(メタ)アクリルモノマーの重合体であり、片末端に(メタ)アクリル基を1有する化合物
(C)成分:光開始剤
【請求項2】
(A)成分および(B)成分の重量平均分子量が、10000〜50000である請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項3】
(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、(D)成分として表面にアルキル基を付加したヒュームドシリカを0.1〜30質量部含む請求項1または2に記載の光硬化性組成物。
【請求項4】
(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、(E)成分として1分子中に(メタ)アクリル基を1有する化合物を0.1〜10質量部含む請求項1〜3のいずれかに記載の光硬化性組成物。
【請求項5】
シール面が平面ではないケースに用いられる請求項1〜4のいずれかに記載のシール剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の制御装置ケース用またはモーターケース用のシール剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の車載用エレクトロニックコントロールユニット用シール剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−229338(P2012−229338A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98444(P2011−98444)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000132404)株式会社スリーボンド (140)
【Fターム(参考)】