説明

光硬化性組成物

【課題】硬化後に高い耐熱性を有し、高精細なレリーフパターンを基材上に形成するのに使用される光硬化性組成物、このような特性を有する硬化膜、及びこの有機膜を有する電子部品を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)、イソシアヌル環を有する多官能(メタ)アクリレート(B)、マレイミド共重合体(C)、光重合開始剤(D)とを含有する光硬化性組成物を用い、この光硬化性組成物から得られるパターン状硬化膜を電子部品の適所に形成する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の絶縁材料や半導体装置におけるパッシベーション膜、バッファーコート膜、層間絶縁膜、平坦化膜等の耐熱性が求められるパターンの形成に用いられる光硬化性組成物、それによる硬化膜、及びこの膜を有する電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の絶縁材料や、半導体装置のパッシベーション膜、表面保護膜、層間絶縁膜等を形成するために、アルカリ水溶液で現像が可能で、焼成後の膜の耐熱性が高い硬化膜が求められている。(例えば特許文献1を参照)
しかしながら、その耐熱性はまだ十分とは言えず、より高い耐熱性を持つ硬化膜が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−053254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、硬化後に高い耐熱性を有し、高精細なレリーフパターンを基材上に形成するのに使用される光硬化性組成物、このような特性を有する硬化膜、及びこの硬化膜を有する電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ある特定の光硬化性組成物が高精細なパターン形成が可能で、なおかつ焼成後の硬化膜の耐熱性が非常に高いことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、以下のような光硬化性組成物、それを用いて製造される硬化膜、及びこれらを含む電子部品を提供する。
【0007】
[1]式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)、イソシアヌル環を有する多官能(メタ)アクリレート(B)、マレイミド共重合体(C)、および光重合開始剤(D)を含有する光硬化性組成物。


【0008】
[2]イソシアヌル環を有する多官能(メタ)アクリレート(B)が式(2)で表される化合物である項[1]に記載の光硬化性組成物。



(式(2)中、R、R、およびRは独立に水素またはメチルであり、a、b、およびcは独立に0〜10の整数である。)
【0009】
[3]マレイミド共重合体(C)がN−置換マレイミドとカルボキシ含有ラジカル重合性モノマーとを含有するモノマーの混合物を重合して得られる、カルボキシを有するラジカル共重合体である項[1]に記載の光硬化性組成物。
【0010】
[4]項[1]〜[3]のいずれか一項に記載の光硬化性組成物を用いて得られる硬化膜。
【0011】
[5]項[4]に記載の硬化膜を有する電子部品
【発明の効果】
【0012】
本発明の光硬化性組成物は、その硬化膜が高い耐熱性を有し、高精細なレリーフパターンを基材上に形成するのに使用することができ、したがって、耐熱性の高い硬化膜を必要とする電子部品に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<1 光硬化性組成物>
本発明の光硬化性組成物は、一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)(成分(A)と言うことがある)、イソシアヌル環を有する多官能(メタ)アクリレート(B)(成分(B)と言うことがある)、マレイミド共重合体(C)(成分(C)と言うことがある)、および光重合開始剤(D)(成分(D)と言うことがある)を含有する光硬化性組成物である。
【0014】
本発明の光硬化組成物は、マレイミド共重合体(C)100重量部に対し、イソシアヌル環を有する多官能(メタ)アクリレート(B)を10〜300重量部、一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)を5〜100重量部、及び光重合開始剤(D)を0.5〜50重量部含有することが、本発明の光硬化性組成物から得られる硬化膜の耐熱性を高める点で好ましい。
本発明の光硬化性組成物は、上記成分(A)〜(D)、およびその他の成分を溶媒に溶解し、ろ過することで得ることができる。
【0015】
<1−1. エポキシ樹脂(A)>
本発明に用いられるエポキシ樹脂(A)は、式(1)の構造を有しており、得られる硬化膜の耐熱性が高い。


【0016】
本発明の光硬化性組成物においては、エポキシ樹脂(A)に他のエポキシ樹脂を混合して用いてもよい。
【0017】
<1−2. 多官能(メタ)アクリレート(B)>
本発明に用いられる多官能(メタ)アクリレート(B)は、イソシアヌル環を有しており、得られる硬化膜の耐熱性が高い。式(2)で表される化合物が好ましい。



(式(2)中、R、R、およびRは独立に水素またはメチルであり、a、b、およびcは独立に0〜10の整数である。)
、R、およびRがすべて水素である多官能アクリレートの市販品には、例えば、東亞合成(株)のアロニックス(商品名)M−315(a=b=c=0)およびM−327(a+b+cがほぼ3)、新中村化学工業(株)のNKエステル(商品名)A−9300(a=b=c=0)およびA−9300−1CL(a+b+cがほぼ1)、日立化成工業(株)のFA−731A(a=b=c=0)がある。
【0018】
本発明の光硬化性組成物においては、多官能(メタ)アクリレート(B)にイソシアヌル環を有しない他の多官能(メタ)アクリレートを混合して用いてもよく、特にカルボキシを有する多官能(メタ)アクリレートと混合して用いると、現像により得られるレリーフパターンの解像度が高くなるので好ましい。
【0019】
<1−3. マレイミド共重合体(C)>
本発明に用いられるマレイミド共重合体(C)は、イミド構造を有しているため、得られる硬化膜の耐熱性が高くなる。また、カルボキシルを有している重合性モノマーとの共重合体であると、現像により得られるレリーフパターンの解像度が高くなるので好ましい。
【0020】
マレイミド共重合体(C)は、N−置換マレイミドとカルボキシ含有ラジカル重合性モノマーとを含有するモノマーの混合物を重合して得られる、カルボキシを有するラジカル共重合体であれば特に限定されないが、好ましくは、N−置換マレイミドを2〜50重量%と、カルボキシ含有ラジカル重合性モノマーを2〜50重量%と、その他のラジカル重合性モノマーを20〜90重量%とをラジカル重合させて得られた共重合体である。このような共重合体であると、感度、現像性、保存安定性が共に良好であるため好ましい。特にN−置換マレイミドを5〜40重量%と、カルボキシ含有ラジカル重合性モノマーを5〜30重量%と、その他の重合性モノマーを40〜80重量%とをラジカル重合させて得られた共重合体がより一層好ましい。
【0021】
マレイミド共重合体(C)の合成方法は、特に制限されないが、溶媒を用いた溶液中でのラジカル重合が好ましい。重合温度は使用する重合開始剤からラジカルが十分発生する温度であれば特に限定されないが、通常50℃〜150℃の範囲である。重合時間も特に限定されないが、通常3〜24時間の範囲である。
【0022】
マレイミド共重合体(C)の重合反応に使用する溶媒は、N−置換マレイミド、カルボキシ含有ラジカル重合性モノマー、その他の重合性モノマー、及び生成するマレイミド共重合体(C)を溶解する溶媒が好ましい。その具体例は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトン、2−ブタノン、酢酸エチル、酢酸プロピル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジオキサン、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、又はN−メチル−2−ピロリドン等であり、溶媒はこれらの混合物であってもよい。
【0023】
マレイミド共重合体(C)を合成する際に用いる重合開始剤は、熱によりラジカルを発生する化合物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤や、過酸化ベンゾイル等の過酸化物系開始剤を使用することができる。得られるマレイミド共重合体(C)の分子量を調節するために、チオグリコール酸等の連鎖移動剤を適量添加してもよい。
【0024】
マレイミド共重合体(C)のJIS K0070に基づいて測定した酸価は、20〜400mgKOH/gが好ましい。この範囲の酸価であると、未露光部分がアルカリ現像液で溶解されるまでの現像時間をより一層適正化する観点から好ましい。さらに、マレイミド共重合体(C)の酸価が25〜200mgKOH/gであると、現像時間の適正化と、現像時における膜荒れの抑制との観点からより一層好ましい。
【0025】
マレイミド共重合体(C)は、ポリスチレンを標準としたGPC分析で求めた重量平均分子量が2,000〜100,000の範囲であると、現像残渣の防止と、現像時における膜の表面における荒れの防止との観点から好ましい。さらに、重量平均分子量が2,500〜50,000の範囲であると、加えて、未露光部分がアルカリ現像液で溶解されるまでの現像時間を適正にする観点からより一層好ましい。
【0026】
なお、本明細書において重量平均分子量とは、GPCにより測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。ここで、GPC測定は、標準のポリスチレンには重量平均分子量が645〜132900のポリスチレン(例えば、VARIAN社製のポリスチレンキャリブレーションキットPL2010−0102)、カラムにはPLgel MIXED−D(VARIAN社製)を用い、移動相としてTHFを使用して、カラム温度:35℃、流速:1ml/minの条件で実施する。
【0027】
<1−3−1. N−置換マレイミド>
N−置換マレイミドは、マレイミドの窒素に結合する水素が炭素数1〜20の炭化水素基で置換された化合物であり、炭化水素基には、炭素数1〜20の直鎖又は分岐のアルキル、炭素数3〜20の置換基を有してよいシクロアルキル又はシクロアルケニル、及び炭素数6〜20の置換基を有してよいアリール等が挙げられる。マレイミド共重合体(C)の合成に使用されるN−置換マレイミドの具体例として、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、又はN−シクロヘキシルマレイミド等を挙げることができる。中でも、N−フェニルマレイミド又はN−シクロヘキシルマレイミドを使用すると、得られる硬化膜の耐熱性が高いので好ましい。N−置換マレイミドは、単独でも、又は2つ以上を混合しても使用することができる。
【0028】
<1−3−2. カルボキシ含有ラジカル重合性モノマー>
マレイミド共重合体(C)の合成に使用されるカルボキシ含有ラジカル重合性モノマーは、カルボキシと、ラジカル重合性官能基とを有する化合物であれば特に限定されない。ラジカル重合性官能基には、例えばビニル、ビニレン、ビニリデン、(メタ)アクリロイル、及びスチリル等が挙げられる。カルボキシ含有ラジカル重合性モノマーにおいて、カルボキシは一分子中に一つあればよく、またラジカル重合性官能基も一分子中に一つあればよい。
【0029】
カルボキシ含有ラジカル重合性モノマーは、炭素数3〜20の不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、及びそのモノエステル等の不飽和カルボン酸及びその誘導体であることが好ましい。カルボキシ含有ラジカル重合性モノマーの具体例として、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、α−クロルアクリル酸、けい皮酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、コハク酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル] 、マレイン酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、又はシクロヘキセン−3,4−ジカルボン酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]を挙げることができる。中でも、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、又はコハク酸モノ(2−アクリロイロキシエチル)が好ましく、特に(メタ)アクリル酸であると、現像残渣がなく、保存安定性に優れた感光性組成物を得る観点から好ましい。カルボキシ含有ラジカル重合性モノマーは、マレイミド共重合体(C)のモノマーとして、単独でも、又は2つ以上を混合しても使用することができる。
【0030】
<1−3−3. その他のラジカル重合性モノマー>
マレイミド共重合体(C)は、N−置換マレイミド及びカルボキシ含有ラジカル重合性モノマーの他に、その他のラジカル重合性モノマーを含むモノマーの混合物を重合させてなる共重合体であると、現像時間を適正にコントロールする観点から好ましい。マレイミド共重合体(C)の合成に使用されるその他のラジカル重合性モノマーは、一種でも二種以上でもよく、前記その他のラジカル重合性モノマーとしては、例えば環状構造を有する(メタ)アクリレート及びヒドロキシを有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0031】
環状構造を有する(メタ)アクリレートは、環状構造を一つ有していればよく、このような環状構造を有する(メタ)アクリレートとしては、例えばトリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、又はフェニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0032】
ヒドロキシを有する(メタ)アクリレートは、ヒドロキシを一つ有していればよく、このようなヒドロキシを有する(メタ)アクリレートとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、又はグリセロールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0033】
これらの(メタ)アクリレート以外にも、前記その他のラジカル重合性モノマーには、ラジカル重合性官能基を有する種々の化合物を用いることができる。このような化合物としては、例えばスチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルメチルスチレン、(メタ)アクリルアミド、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、N−アクリロイルモルホリン、又はインデンが挙げられる。
【0034】
その他のラジカル重合性モノマーは、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル(メタ)アクリレート、又はジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートの一又は二以上を使用すると、耐熱性、耐クラック性の観点から好ましい。
【0035】
<1−4. 光重合開始剤(D)>
本発明に用いられる光重合開始剤(D)は、光によりラジカルを発生させる化合物であり、少ない露光量でレリーフパターンを得ることができる。分子中にリン原子を有していると得られる硬化膜の耐熱性が高いので好ましい。
【0036】
本発明で用いられる光重合開始剤(D)の具体例としては、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、イソプロピルキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−4’−イソプロピルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、カンファーキノン、ベンズアントロン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4,4’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4,4’−トリ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2−(4’−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’,4’−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2’,4’−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2’−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−ペンチルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−[p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)]−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(2’−クロロフェニル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(4’−メトキシフェニル)−s−トリアジン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、2−(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’ビス(2,4−ジブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、3−(2−メチル−2−ジメチルアミノプロピオニル)カルバゾール、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−ドデシルカルバゾール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(η−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジ(メトキシカルボニル)−4,4’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4’−ジ(メトキシカルボニル)−4,3’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’−ジ(メトキシカルボニル)−3,3’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2−(3−メチル−3H−ベンゾチアゾール−2−イリデン)−1−ナフタレン−2−イル−エタノン、又は2−(3−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−2(3H)−イリデン)−1−(2−ベンゾイル)エタノンを挙げることができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用することも有効である。
【0037】
中でも、光重合開始剤(D)が、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、3,3’−ジ(メトキシカルボニル)−4,4’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4’−ジ(メトキシカルボニル)−4,3’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’−ジ(メトキシカルボニル)−3,3’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2−(3−メチル−3H−ベンゾチアゾール−2−イリデン)−1−ナフタレン−2−イル−エタノン、及び2−(3−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−2(3H)−イリデン)−1−(2−ベンゾイル)エタノンから選ばれる1つ以上であることは、本発明の感光性組成物の感度を高める観点から好ましい。
【0038】
<1−5. その他の成分>
本発明の光硬化性組成物は、各種特性をさらに向上させるために、その他のモノマー、重合体、又は共重合体を含んでもよい。また、溶媒、界面活性剤、着色剤、重合禁止剤などを、必要に応じて含んでもよい。
【0039】
<1−5−1. 溶媒>
本発明の光硬化性組成物の構成成分として用いられる溶媒の具体例としては、水、酢酸ブチル、プロピオン酸ブチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トルエン、キシレン、アニソール、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、又はジメチルイミダゾリジノンが挙げられる。これらの溶媒は1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0040】
<1−5−2. 界面活性剤>
本発明の光硬化性組成物は、例えば、下地基板への濡れ性や、硬化膜の膜面均一性を向上させるために界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤としては、シリコン系界面活性剤、アクリル系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤などが用いられる。
【0041】
界面活性剤の市販品としては、Byk−300、同306、同335、同310、同341、同344、及び同370(商品名;ビックケミー・ジャパン(株)製)などのシリコン系界面活性剤、Byk−354、同358、及び同361(商品名;ビックケミー・ジャパン(株)製)などのアクリル系界面活性剤、DFX−18、フタージェント250、又は同251(商品名;(株)ネオス製)、メガファックF−479(商品名;DIC(株)製)などのフッ素系界面活性剤を挙げることができる。
【0042】
本発明に用いられる界面活性剤は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0043】
界面活性剤の含有量が、光硬化性組成物中の固形分の0.001〜1重量%であると硬化膜の膜面均一性が向上するので好ましく、他特性とのバランスを考慮すると、より好ましくは0.001〜0.1重量%であり、さらに好ましくは0.001〜0.05重量%である。
【0044】
<1−5−3. 着色剤>
本発明の光硬化性組成物は、例えば、硬化膜の状態を検査する際に基板との識別を容易にするために、着色剤を含んでもよい。着色剤としては、染料、顔料が好ましい。
【0045】
本発明に用いられる着色剤は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0046】
着色剤の含有量が、光硬化性組成物中の固形分の0.1〜5重量%であると硬化膜の検査が容易であるので好ましい。他特性とのバランスを考慮すると、より好ましくは0.1〜1重量%であり、さらに好ましくは0.1〜0.5重量%である。
【0047】
<1−5−4. 重合禁止剤>
本発明の光硬化性組成物は、例えば、保存安定性を向上させるために重合禁止剤を含んでもよい。重合禁止剤の具体例としては、4−メトキシフェノール、ヒドロキノン、又はフェノチアジンを挙げることができる。これらの中でも、フェノチアジンが長期の保存においても粘度の変化が小さいために好ましい。
【0048】
本発明に用いられる重合禁止剤は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0049】
重合禁止剤の含有量が、光硬化性組成物中の固形分の0.01〜1重量%であると長期の保存においても粘度の変化が小さいために好ましい。他特性とのバランスを考慮すると、より好ましくは0.01〜0.5重量%であり、さらに好ましくは0.01〜0.1重量%である。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0051】
[合成例1]マレイミド共重合体溶液(C−1)の合成
攪拌器付4つ口フラスコに下記重量のモノマー、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル(以下、「EDM」と略す)、重合開始剤を仕込み、窒素をバブリングしながら80℃で4時間加熱して重合を行った。
EDM 200.0g
ジシクロペンタニルメタクリレート 40.0g
N−シクロヘキシルマレイミド 35.0g
メタクリル酸 25.0g
2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 4.0g
【0052】
重合反応後の溶液を室温まで冷却した後、0.5g採取して常圧180℃で2時間加熱して溶媒を蒸発させることで固形分濃度を算出したところ、固形分濃度は33.1%であった。また、重合反応後の溶液をGPCで分析したところ、得られた重合体(C−1)の重量平均分子量は7,500であった。
【0053】
[合成例2]比較用共重合体溶液(H−1)の合成
攪拌器付4つ口フラスコに下記重量のモノマー、溶媒、重合開始剤を仕込み、窒素をバブリングしながら80℃で4時間加熱して重合を行った。
ジエチレングリコールメチルエチルエーテル 200.0g
ジシクロペンタニルメタクリレート 40.0g
ベンジルメタクリレート 35.0g
メタクリル酸 25.0g
2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 4.0g
【0054】
重合反応後の溶液を室温まで冷却した後、0.5g採取して常圧180℃で2時間加熱して溶媒を蒸発させることで固形分濃度を算出したところ、固形分濃度は32.8%であった。また、重合反応後の溶液をGPCで分析したところ、得られた重合体(H−1)の重量平均分子量は7,100であった。
【0055】
[実施例1]
一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)として(株)プリンテック製テクモアVG3101L(以下、「VG」と略す)、イソシアヌル環を有する多官能(メタ)アクリレート(B)としてトリス(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレートである東亞合成(株)製アロニックスM−315(商品名:以下、「M−315」と略す)、マレイミド共重合体(C)として合成例1で得られた重合体溶液(C−1)(以下、C−1溶液という)、光重合開始剤(D)として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(以下「TPO」と略す)、カルボキシを有する多官能アクリレートとして東亜合成(株)製TO2349、界面活性剤としてビックケミー・ジャパン(株)製Byk−344(以下Bykと略す)、溶媒としてEDMを用い、下記組成にて混合溶解し、テフロン(登録商標)製メンブレンフィルター(0.2μm)で濾過し、光硬化性組成物を得た。粘度は26.4mPa・sであった。
EDM 17.50g
VG 2.00g
M−315 10.00g
TO2349 2.00g
C−1溶液 30.00g
Byk 0.05g
TPO 1.00g
【0056】
得られた光硬化性組成物を4cm×4cmのガラス基板上に800rpmで10秒間スピンコートし、80℃のホットプレート上で3分間乾燥した。この基板をライン&スペースパターンのマスクを介して、プロキシミティー露光機(商品名;TME−400PRC、(株)トプコン製)を使用し、波長カットフィルターを通して350nm以下の光をカットしてg、h、i線を取り出し、露光ギャップ100μmで露光した。露光量は積算光量計及び受光器(商品名;UIT−150及びUVD−S365、ともにウシオ電機(株)製)で測定して100mJ/cm2とした。
【0057】
使用したマスクは、ラインの幅を50μmから5μm刻みに5μmまで段階的に変え、それに合わせてライン間のスペースの幅も50μmから5μm刻みに5μmまで段階的に変えた。(以下、「ライン&スペース」という)ラインの長さは5mmとした。
【0058】
露光後のガラス基板を、0.4重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間ディップ現像し、未露光部を除去した。現像後の基板を純水で20秒間洗ってから100℃のホットプレートで2分間乾燥した。現像後の残膜率(現像後膜厚×100/現像前膜厚)は96.2%であり、十分な感度を有していることを確認した。現像前後の膜厚は、それぞれ触針式膜厚計(商品名;αステップ200、KLA−Tencor Japan(株)製)を使用し、3箇所の測定値の平均値とした。
【0059】
さらにオーブン中220℃で30分間焼成した。焼成後の膜厚は4.7μmであった。この基板を1,000倍の光学顕微鏡で観察したところ、ライン幅(スペース幅)が10μmのパターンはライン幅が広がってスペースがつぶれていたが、ライン幅(スペース幅)が15μm以上のライン&スペースが形成できていた。本明細書では、あるライン幅のライン&スペースが形成できていたか、形成できていなかったかを、例えば、「15μmのライン&スペースが解像していた」とか「15μmのライン&スペースが解像していなかった」と言うことがある。
【0060】
この基板上の被膜を削り取り、示差熱熱重量同時測定装置(商品名;TG/DTA6200、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製)を用いて、大気雰囲気下において30〜350℃(昇温速度:10℃/min)のTG−DTAを測定した結果、1%重量減少温度は322℃、5%重量減少温度は368℃であった。なお、昇温時に試料の重量が1%減少した温度を「1%重量減少温度」と言い、試料の重量が5%減少した温度を「5%重量減少温度」と言う。
【0061】
[比較例1]
実施例1で用いた一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)であるVGの代わりに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である三菱化学(株)製jER828を使用し、下記組成にて混合溶解し、テフロン(登録商標)製メンブレンフィルター(0.2μm)で濾過し、光硬化性組成物を得た。粘度は26.2mPa・sであった。
EDM 17.50g
jER828 2.00g
M−315 10.00g
TO2349 2.00g
C−1溶液 30.00g
Byk 0.05g
TPO 1.00g
【0062】
この光硬化性組成物を用い、実施例1と同様の評価を行なった。焼成後の膜厚は4.6μmであった。この基板を1,000倍の光学顕微鏡で観察したところ、15μmのライン&スペースが解像していた。また、TG−DTAを測定した結果、1%重量減少温度は312℃、5%重量減少温度は345℃であった。
【0063】
[比較例2]
実施例1で用いたイソシアヌル環を有する多官能(メタ)アクリレート(B)であるM315の代わりに、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを使用し、下記組成にて混合溶解し、テフロン(登録商標)製メンブレンフィルター(0.2μm)で濾過し、光硬化性組成物を得た。粘度は28.2mPa・sであった。
EDM 17.50g
VG 2.00g
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 10.00g
TO2349 2.00g
C−1溶液 30.00g
Byk 0.05g
TPO 1.00g
【0064】
この光硬化性組成物を用い、実施例1と同様の評価を行なった。焼成後の膜厚は4.8μmであった。この基板を1,000倍の光学顕微鏡で観察したところ、20μmのライン&スペースは解像したが、15μmのライン&スペースは解像しなかった。また、TG−DTAを測定した結果、1%重量減少温度は310℃、5%重量減少温度は341℃であった。
【0065】
[比較例3]
実施例1で用いたマレイミド共重合体(C)であるC−1溶液の代わりに、合成例2で得られた重合体溶液(H−1)(以下、H−1溶液という)を使用し、下記組成にて混合溶解し、テフロン(登録商標)製メンブレンフィルター(0.2μm)で濾過し、光硬化性組成物を得た。粘度は27.1mPa・sであった。
EDM 17.50g
VG 2.00g
M−315 10.00g
TO2349 2.00g
H−1溶液 30.00g
Byk 0.05g
TPO 1.00g
【0066】
この光硬化性組成物を用い、実施例1と同様の評価を行なった。焼成後の膜厚は4.5μmであった。この基板を1,000倍の光学顕微鏡で観察したところ、15μmのライン&スペースが解像していた。また、TG−DTAを測定した結果、1%重量減少温度は309℃、5%重量減少温度は342℃であった。
【0067】
表1


【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の光硬化性組成物は、例えば微細なパターン状硬化膜を含む電子部品の製造に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)、イソシアヌル環を有する多官能(メタ)アクリレート(B)、マレイミド共重合体(C)、および光重合開始剤(D)を含有する光硬化性組成物。


【請求項2】
イソシアヌル環を有する多官能(メタ)アクリレート(B)が式(2)で表される化合物である請求項1に記載の光硬化性組成物。



(式(2)中、R、R、およびRは独立に水素またはメチルであり、a、b、およびcは独立に0〜10の整数である。)
【請求項3】
マレイミド共重合体(C)がN−置換マレイミドとカルボキシ含有ラジカル重合性モノマーとを含有するモノマーの混合物を重合して得られる、カルボキシを有するラジカル共重合体である請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の光硬化性組成物を用いて得られる硬化膜。
【請求項5】
請求項4に記載の硬化膜を有する電子部品

【公開番号】特開2012−31357(P2012−31357A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174300(P2010−174300)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【Fターム(参考)】